(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】高炉内装入物の表面プロフィール検出装置
(51)【国際特許分類】
C21B 7/24 20060101AFI20240306BHJP
F27B 1/28 20060101ALI20240306BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C21B7/24 302
F27B1/28
F27D21/00 A
(21)【出願番号】P 2022195958
(22)【出願日】2022-12-07
【審査請求日】2023-09-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593207271
【氏名又は名称】株式会社WADECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】萱野 早衛
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-179120(JP,A)
【文献】国際公開第2020/241008(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/24
F27B 1/28
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石やコークス、石灰等の装入物が供給される高炉において、前記高炉に開口した開口部を通じて、炉内に堆積している前記装入物の表面に向けて検出波を送信し、前記装入物の表面で反射された前記検出波を受信して前記装入物の表面プロフィールを検出する検出装置であって、
該検出装置の前記検出波を送受信するための開口を閉鎖するとともに、前記開口の中心を軸線として前記高炉の前記開口部
と平行を維持して回転する検出波透過板と、
前記高炉の前記開口部を開閉可能であり、前記検出波透過板を覆う遮断板と、
前記遮断板に取り付けられ、前記検出波透過板と前記遮断板との間に配置され、かつ、前記検出波透過板の高炉側の面に対して下方からパージ用媒体を噴出する第1ノズルと、を備えるとともに、
炉内に浮遊し、前記高炉の前記開口部から侵入して前記検出波透過板の前記高炉側の面に付着している粉塵を、前記第1ノズルから前記パージ用媒体を噴出して除去することを特徴とする、
高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項2】
前記パージ用媒体を、前記遮断板を開閉可能にするための回転軸の内部に通じる穴を介して前記第1ノズルに供給することを特徴とする、
請求項
1に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項3】
前記第1ノズルは、前記検出波透過板の半径方向に沿って線状に配置されていることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項4】
前記検出波透過板の前記高炉側の面に対して、前記高炉の前記開口部の水平方向からパージ用媒体を噴出する第2ノズルを更に備えるともに、
前記第1ノズルからのパージ用媒体の噴出と、第2ノズルからのパージ用媒体の噴出とを組み合わせて行うことを特徴とする、
請求項1
又は2に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項5】
前記検出波透過板の前記高炉側の面に対して、前記高炉の前記開口部の水平方向からパージ用媒体を噴出する第2ノズルを更に備えるともに、
前記第1ノズルからのパージ用媒体の噴出と、第2ノズルからのパージ用媒体の噴出とを組み合わせて行うことを特徴とする、
請求項3に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項6】
前記粉塵が前記検出波透過板に付着して前記遮断板からの反射波の受信強度が、所定の閾値よりも低下した時に、前記第1ノズルから前記パージ用媒体を前記検出波透過板に向けて噴出することを特徴とする、
請求項1
又は2に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項7】
前記粉塵が前記検出波透過板に付着して前記遮断板からの反射波の受信強度が、所定の閾値よりも低下した時に、前記第1ノズルから前記パージ用媒体を前記検出波透過板に向けて噴出することを特徴とする、
請求項
3に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項8】
前記粉塵が前記検出波透過板に付着して前記遮断板からの反射波の受信強度が、所定の閾値よりも低下した時に、前記第1ノズルから前記パージ用媒体を前記検出波透過板に向けて噴出することを特徴とする、
請求項
4に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項9】
前記粉塵が前記検出波透過板に付着して前記遮断板からの反射波の受信強度が、所定の閾値よりも低下した時に、前記第1ノズルから前記パージ用媒体を前記検出波透過板に向けて噴出することを特徴とする、
請求項
5に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉内の鉄鉱石やコークス、石灰等(以下、まとめて「装入物」ともいう。)の表面プロフィールを検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉では、装入物の堆積状態を適正にして、炉内のガスの流れを安定させることにより、燃料費低減や炉体の長寿命化が可能となる。適正な堆積状態を得るためには、これら装入物の表面プロフィールを短時間で正確に測定し、予め求めておいた理論的な堆積状態、即ち「理論堆積プロフィール」となるように装入物を補給する必要がある。
【0003】
このような高炉の装入物の表面プロフィールを検出するために、高炉に開口した開口部に設置され、開口部を通じて、炉内に堆積している装入物の表面に向けて検出波を送信し、装入物の表面で反射された検出波を受信して装入物の表面プロフィールを検出する検出装置が広く用いられている。
【0004】
本出願人も先に、例えば特許文献1に記載の検出装置を提案しており、該検出装置によれば、検出波の反射面高炉側への傾斜角度を可変にした角度可変反射板と、角度固定反射板とを用いるとともに、角度可変反射板及び角度固定反射板を、高炉の開口部と水平に回動する回転板に取り付け、回転板を回動させることにより、高炉内に堆積している装入物の表面プロフィールを線状または面状に、迅速に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の検出装置では、装入物の破砕物や様々な反応生成物など(以下、まとめて「粉塵」という。)が高炉内に浮遊しており、これら粉塵が開口部を通じて装置内に侵入し、例えば、耐熱性の有する材料などの材料構成部材に付着して検出波の送受信に悪影響を及ぼすおそれある。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高炉内に浮遊している粉塵の検出装置内への侵入を防止するとともに、検出波の送受信をより正確に安定して行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、下記(1)の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置を提供する。
【0009】
(1) 鉄鉱石やコークス、石灰等の装入物が供給される高炉において、前記高炉に開口した開口部を通じて、炉内に堆積している前記装入物の表面に向けて検出波を送信し、前記装入物の表面で反射された前記検出波を受信して前記装入物の表面プロフィールを検出する検出装置であって、
該検出装置の前記検出波を送受信するための開口を閉鎖するとともに、前記開口の中心を軸線として前記高炉の前記開口部と略平行を維持して回転する検出波透過板と、
前記検出波透過板を覆う遮断板と、
前記検出波透過板と前記遮断板との間に配置され、かつ、前記検出波透過板の高炉側の面に対して下方からパージ用媒体を噴出する第1ノズルと、を備えるとともに、
炉内に浮遊し、前記高炉の前記開口部から侵入して前記検出波透過板の前記高炉側の面に付着している粉塵を、前記第1ノズルから前記パージ用媒体を噴出して除去することを特徴とする、
高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【0010】
また、本発明の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置は、下記(2)~(12)のいずれかであることが好ましい。
【0011】
(2) 前記遮断板が、前記高炉の前記開口部を開閉可能であり、かつ、
該遮断板に前記第1ノズルが取り付けられていることを特徴とする、
上記(1)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(3) 前記パージ用媒体を、前記遮断板を開閉可能にするための回転軸の内部に通じる穴を介して前記第1ノズルに供給することを特徴とする、
上記(2)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(4) 前記第1ノズルが、前記高炉の前記開口部から突出するように、前記遮断板の蓋部材ではなく、前記高炉に設けた固定部に取り付け入られていることを特徴とする、
上記(1)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(5) 前記第1ノズルが、前記パージ用媒体を外部に噴出するための噴出口と、前記パージ用媒体を前記噴出口に導入するための本体部を有し、
前記噴出口が、前記本体部の長手方向に沿って配置された横長の開口形状を有することを特徴とする、
上記(4)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(6) 前記本体部の軸線方向が、前記検出波透過板の径方向に配置されることを特徴とする、
上記(5)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(7) 前記第1ノズル及び前記本体部に入射する前記検出波において、入射方向と同方向に反射される前記検出波が、入射方向とは異なる方向に反射される前記検出波よりも少ないことを特徴とする、
上記(5)または(6)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(8) 前記検出波透過板の前記高炉側の面に対して、前記高炉の前記開口部の水平方向からパージ用媒体を噴出する第2ノズルを更に備えるともに、
前記第1ノズルからのパージ用媒体の噴出と、第2ノズルからのパージ用媒体の噴出とを組み合わせて行うことを特徴とする、
上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(9) 前記検出波透過板の前記高炉側の面に対して、前記高炉の前記開口部の水平方向からパージ用媒体を噴出する第2ノズルを更に備えるともに、
前記第1ノズルからのパージ用媒体の噴出と、第2ノズルからのパージ用媒体の噴出とを組み合わせて行うことを特徴とする、
上記(7)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(10) 前記粉塵が前記検出波透過板に付着して前記遮断板からの反射波の受信強度が、所定の閾値よりも低下した時に、前記第1ノズルから前記パージ用媒体を前記検出波透過板に向けて噴出することを特徴とする、
上記(1)~(7)のいずれか1項に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(11) 前記粉塵が前記検出波透過板に付着して前記遮断板からの反射波の受信強度が、所定の閾値よりも低下した時に、前記第1ノズルから前記パージ用媒体を前記検出波透過板に向けて噴出することを特徴とする、
上記(8)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(12) 前記粉塵が前記検出波透過板に付着して前記遮断板からの反射波の受信強度が、所定の閾値よりも低下した時に、前記第1ノズルから前記パージ用媒体を前記検出波透過板に向けて噴出することを特徴とする、
上記(9)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【0012】
なお、以降の説明においては、「高炉内装入物の表面プロフィール検出装置」を単に「検出装置」と呼ぶこともある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の検出装置によれば、検出波を送信する開口を、検出波を透過する検出波透過板で閉鎖して、装入物の表面プロフィールの測定時における高炉内に浮遊している粉塵の装置内への侵入を防止することができる。さらには、遮断板で閉鎖したときに、遮断板に付随する第1ノズルからパージ用媒体を検出波透過板に向けて噴出して、装入物の表面プロフィールの非測定時に検出波透過板に付着した粉塵を吹き飛ばして除去することができる。また、第1ノズルが高炉の開口部に突出して取り付けられている場合も、第1ノズルからパージ用媒体を検出波透過板に向けて噴出して、非測定時または測定時に検出波透過板に付着した粉塵を吹き飛ばして除去することができる。
【0014】
このように、本発明の検出装置によれば、高炉内に浮遊している装入物の装置内への侵入を防止するとともに、高炉の操業を停止することもなく、検出波の送受信を正確に、安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、検出装置の一例の全体構成を示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、
図2に示す検出装置に本発明を適用した第1実施形態について、検出装置における高炉の開口部の周辺を示す要部断面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態について、遮断板の蓋部材の周辺を、検出波透過板側から見た図である。
【
図6A】
図6Aは、第3実施形態における第1ノズルの構造を示す図であり、(a)は検出波透過板側から見た上面図、(b)は(a)のA-A矢視図、(c)は(a)のB-B矢視図である。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aに示す第1ノズルを用いた時の検出波Mの反射状態を示す模試図であって、
図6A(a)のC-C断面図である。
【
図6C】
図6Cは、
図6Aに示す第1ノズルを用いた時の検出波Mの反射状態を示す模試図であって、
図6A(a)のD-D断面図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態に係る検出装置を
図3Aに準じて示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、高炉1内には、シュート10により装入物20である鉄鉱石やコークス、石灰等が供給される。シュート10は、高炉1の軸線Cを中心に図中の符号R1で示す方向に旋回し、軸線Cに対する傾斜角度R2を変えることで、装入物20の落下位置を制御している。そして、シュート10から落下した装入物20が、高炉1の炉内に堆積する。
【0018】
<第1実施形態>
まず、検出装置100の基本構成について説明する。高炉1の炉頂近傍には開口部2が形成されており、開口部2に検出装置100が設置される。また、検出装置100は、
図2に示すように、回転軸110を中心にして、符号Yで示すように高炉1の開口部2に対して平行に回転する回転板120を備える。回転板120は、その中央部が開口した円環状の円板であり、回転板120の中央部の開口を符号121で示す。
【0019】
回転軸110は、円筒状で、その内部にアンテナ135を収容しており、回転板120の開口121と同心状に取り付けられる。アンテナ135は、導波管133を介して検出波Mの送受信手段130に接続している。また、導波管133は、回転軸110の軸線と一致している。なお、アンテナ135には、検出波Mの指向性を高めるために、アンテナ面に、フッ素樹脂等からなる誘電体レンズ136を付設してもよい。
【0020】
回転軸110の外周面にはギア112が設けられており、ギア112には、モータ113のギア155が噛合している。したがって、モータ113を駆動させることにより、回転軸110が図中の符号Yで示すように回動し、それに伴って回転板120が、回転軸110と同方向に、高炉1の開口部2に対して平行に回転する。また、モータ113の回転はエンコーダ150で検出される。
【0021】
回転板120の下方の、高炉1の開口部2との間の空間には、炉内に検出波Mを送信し、受信するための角度固定反射板138と、角度可変反射板140とが配設されている。
【0022】
角度固定反射板138は、その反射面の傾斜角度が45°に固定されている反射板であり、第1の角度固定反射板138A、第2の角度固定反射板138B、第3の角度固定反射板138Cで構成されている。第1の角度固定反射板138Aは、回転板120の開口121を通じてアンテナ135のアンテナ面(図の例では、誘電体レンズ136)と対向している。第2の角度固定反射板138Bは、第1の角度固定反射板138Aと対向配置しており、第2の角度固定反射板138Bとは第3の角度固定反射板138Cが対向配置している。そのため、図中の一点鎖線で示すように、アンテナ135から送信された検出波Mは、第1の角度固定反射板138Aで反射されて第2の角度固定反射板138Bに送られ、第2の角度固定反射板138Bで反射された後、第3の角度固定反射板138Cに送られる。そして、第3の角度固定反射板138Cで反射されて、角度可変反射板140に送られる。
【0023】
これら第1の角度固定反射板138A、第2の角度固定反射板138B及び第3の角度固定反射板138Cは、回転板120から高炉1の開口部2に向かって垂下する固定部材(図示せず)、もしくは側壁170(
図2参照)に取り付けられる。
【0024】
なお、検出波Mとしては、炉内が高温で、粉塵や水蒸気等が存在していることから、マイクロ波やミリ波を用いることが好ましい。特に、ミリ波はマイクロ波よりも波長が短く、指向性が高いことからより好ましい。
【0025】
角度可変反射板140は、反射面140aの傾斜角度が図中の符号Xで示す方向に可変する反射板である。この角度可変反射板140では、反射面140aとは反対側の面(裏面)の中心に、リンク機構117の第1リンク117aが連結しており、第1リンク117aには第2リンク117bが連結している。また、第2リンク117bには、回転軸110の開口121を通じて回転軸110の内部を貫通する連結棒114が連結しており、連結棒114の第2リンク117bとは反対側の端部にラックギア118が形成されている。
【0026】
連結棒114は、アンテナ135と送受信手段130とを接続する導波管133を内管とする外管部114aを有し、外管部114aの外周面にラックギア118が形成されている。このラックギア118には、モータ125のギア119が噛合しており、モータ125を駆動することによりギア119が回転し、ラックギア118で直線運動に変換される。ここで、モータ125には、エンコーダ126が接続しており、モータ125の回転量、更にはギア119の回転量が検出される。
【0027】
また、連結棒114は、回転軸110の内部で、アンテナ135を避けるように回転板120に向かって延びる中間部114bを有している。外管部114aの回転軸110側の端部は外方に屈曲しており、この屈曲部分に中間部114bが連続している。
【0028】
更には、中間部114bは、回転板120の開口121を通じて高炉1の開口部2に延びる下端部114cを有している。この下端部114cが、リンク機構117の第2リンク117bに連結している。
【0029】
連結棒114はこのように構成され、モータの回転がギア119を通じてラックギア118により直線運動に変換され、図中に符号Hで示すように、連結棒114が角度可変反射板140の側、あるいは反対側へと直線状に移動する。
【0030】
角度可変反射板140の直径両端には、支軸141、141が突設しており、支軸141、141が回転板120に取り付けられた支持腕保持棒145に取り付けられている。
【0031】
そして、連結棒114が角度可変反射板140の側へと移動(図中の下降方向)すると、リンク機構117を介して角度可変反射板140の反射面140aが高炉1の径方向を向くように傾斜し、連結棒114が角度可変反射板140とは反対側へと移動(図中の上昇方向)すると、リンク機構117を介して角度可変反射板140の反射面140aが高炉1の軸線Cを向くように傾斜する。即ち、連結棒114の下降及び上昇により、角度可変反射板140の反射面140aの傾斜を、図中の符号X方向に変えることができる。
【0032】
それに伴って、角度固定反射板138の第3の角度固定反射板138Cから角度可変反射板140に送られた検出波Mは、開口175を通じて符号Zで示すように図中左右方向に振られ、回転板120の径方向に沿った線状となって炉内に送られる。そして、検出波Mは、炉内に堆積している装入物20の表面で反射され、送信時と同経路を辿って送受信手段130で受信される。送受信は、例えばFM-CW方式で行うことができる。
【0033】
この線状の検出波Mの送受信を、回転軸110を中心にして回転板120を回転させながら行うことにより、高炉1の炉内全域にわたる円形の走査領域における距離情報が得られる。
【0034】
以上、
図1及び
図2に示した検出装置100の基本構成について説明したが、更に詳細については、例えば、特許文献1を参照することができる。
【0035】
続いて、本発明の技術的特徴部分について説明する。
図3Aは、
図2に示す検出装置100に、本発明を適用した場合を示す断面図であり、検出装置100における高炉1の開口部2の周辺を示す要部断面図である。また、
図3Bは、
図3Aに示す遮断板210の蓋部材215の周辺を、検出波透過板200側から見た図である。
【0036】
図2に示すように、検出装置100の角度固定反射板138及び角度可変反射板140を収容している筒状の側壁170の高炉1側の底面に、検出波Mを送受信するための開口175が形成されている、また、側壁170の開口175は、回転板120に平行である。
そして、本発明では
図3Aに示すように、側壁170の開口175を、検出波Mを透過し、耐熱性を有する材料、例えば石英ガラス板からなる検出波透過板200で閉鎖する。
【0037】
また、
図2に示すように、回転板120と側壁170とは一体化されていることから、側壁170は回転板120とともにY方向に回転する。そのため、側壁170の開口175に取り付けられている検出波透過板200もまた、側壁170の開口175の中心を軸線として回転軸110と同方向、即ちY方向に回転する。即ち、
図3Aのとおり、検出波透過板200は、開口175の中心を軸線として高炉1の開口部2と平行を維持してY方向に回転する。
【0038】
高炉1の開口部2には、検出装置100の全体を包囲するケーシング180の高炉1側の底部が挿通されている。なお、ケーシング180は円筒状部材であり、底部が開口している。この開口を、符号185で示す。
【0039】
ケーシング180の開口185の高炉1側下方には、遮断板210が配置されている。図の例では、遮断板210をいわゆる「スイング式」としている。スイング式の遮断板210は、ケーシング180の開口185の全面を覆う形状の蓋部材215と、蓋部材215の一端に連続する支持部材217とで形成され、全体として断面L字状を呈している。
【0040】
また、支持部材217の他端は回転軸220に接続しており、遮断板210は回転軸220を支点にして、図中、矢印Sで示すように回動する。遮断板210の回動は、シリンダ300を操作して行う。
なお、本実施形態において、スイング式の遮断板210の断面L字状の形状は、必ずしも厳密な断面L字状である必要はなく、下記で示す遮断板210の機構を妨げないものであれば、例えば、蓋部材215と支持部材217とが厳密な垂直ではないもの、すなわち、略断面L字状の形状のものも包含される。
【0041】
また、遮断板210はスイング式のため、高炉1の開口部2は支持部材217の可動域として開口径が大きくなっている。そのため、開口部2を閉鎖するためのカバー190がケーシング180の外側に取り付けられている。
【0042】
遮断板210の蓋部材215には、第1ノズル230が付随している。第1ノズル230は、配管240を通じてパージ用媒体Gの供給源(図示せず)に接続している。配管240は、遮断板210とともに、図中、矢印Sで示すように回動する。また、第1ノズル230は、検出波透過板200の半径方向に沿って線状に複数個(図の例では5個)配列されており、蓋部材215に形成された第1ノズル用開口218に収容されている。なお、第1ノズル230は、検出波透過板200の半径部分全体をカバーできるものであれば、ノズルが1つでも良い。
【0043】
また、第1ノズル230は、
図3Aや
図3Bにも示すように、符号230Aと230Bの「2分割構成」とすることもできる。2分割構成にすることにより、パージ用媒体Gの供給量を増やすことができる。また、必要により、2分割構成のみならず、3分割構成以上の複数個の構成であってもよい。なお、第1ノズル230が、検出波透過板200の半径部分全体をカバーできる長尺の長穴であれば、必ずしも分割していなくてもよい。
【0044】
そして、各第1ノズル230(230A,230B)から、パージ用媒体Gが、検出波透過板200の高炉1側の面201に向けて、検出波透過板200に対して
図3A中の下方から噴出(噴射)する。そして、噴出されたパージ用媒体Gは、遮断板210の蓋部材215とケーシング180の端部との隙間Dを通じて排出される。なお、隙間Dは任意に設定できるが、この隙間Dを大きくすることにより、パージ用媒体Gの噴出量を多くすることができる。なお、パージ用媒体Gが、検出波透過板200の高炉1側の面201に向けて噴出する方向は、必ずしも検出波透過板200の高炉1側の面201に対して直角である必要はなく、検出波透過板200の面201に対して、少々直角からずれていてもよい。
【0045】
なお、パージ用媒体Gとしては、例えば窒素ガス(N2)等の不活性ガスや空気、水、水蒸気等を用いることができるが、不活性ガスが好ましい。
【0046】
図3Cは、パージ用媒体Gの流路を示す図であり、遮断板210の蓋部材215で開口185を覆った状態を、遮断板210の支持部材217の側から見た図である。遮断板210の蓋部材215の回動に使用される回転軸220にはパージ用媒体Gを流す穴221が開いており、回転軸220が回転しても回転軸220の外周から高炉内部のガスが外部に流出させないようにするためのグランドパッキンハウジング502に挿通されている。グランドパッキンハウジング502の外周はカバー190に溶接され高炉ガスが外部に流出しないようにしている。図中に太線で示されるように、パージ用媒体Gの供給源(図示せず)からのパージ用媒体Gが回転軸220の両端から回転ジョイント501を介して穴221に流入し、配管240を通じて第1ノズル230A(230B)から噴出される。
【0047】
本実施形態に係る高炉内装入物の表面プロフィール検出装置の装置構成は、上記したとおりであり、装入物20の表面プロフィールの測定時には、遮断板210を、
図3Aの点線で示すように、蓋部材215を開口部2の側に上げて開口部2を露出させて行う。
高炉内装入物の表面プロフィールの測定時には、高炉1からの粉塵が検出波透過板200の面201に付着する。そして、付着した粉塵を除去するために、シリンダ300により遮断板210を回動し、蓋部材215でケーシング180の開口185を覆うとともに、第1ノズル230からパージ用媒体Gを検出波透過板200の面201に向けて噴出する。第1ノズル230は、検出波透過板200の半径に沿って、すなわち径方向に沿って線状に配列しているが、検出波透過板200はY方向に回転しているため、第1ノズル230からのパージ用媒体Gは検出波透過板200の面201の全面に噴出される。したがって、この除去作業により、検出波透過板200の面201の全面にわたり、付着している粉塵を除去できる。なお、除去された粉塵は、隙間Dを通じて炉内へと排出される。
また、遮断板210の蓋部材215を開口部2の側に上げて開口部2を露出させたときにも、パージ用媒体Gを測定時にも第1ノズル230から噴出させることにより、検出装置100の冷却用とすることもできる。
【0048】
<第2実施形態>
上記の第1実施形態では、遮断板210がスイング式であったが、
図4に示すように、遮断板210の蓋部材215が高炉1の開口部2と平行に回動し、検出波透過板200の面201を覆う、いわゆる「回転式」にすることができる。蓋部材215は、回転軸225を支点として図中のT方向に回動し、測定時には二点鎖線で示す位置にあり、蓋部材215で検出波透過板200(図示せず)を覆う時は、実線で示す位置に回動して移動する。なお、第1実施形態と同様に、蓋部材215には第1ノズル230が付随しているが、
図4では蓋部材215のみを示している。
【0049】
回転軸225には、第1実施形態と同様の穴(図示せず)からパージ用媒体Gが供給され、回転軸225の内部及び配管240を通じて第1ノズル230(図示せず)へと送られる。
【0050】
<第3実施形態>
上記の第1実施形態では、第1ノズル230を遮断板210に取り付け、遮断板210とともに回動して検出波透過板200を覆う構成としていた。しかし、第3実施形態では、
図5A及び
図5Bに示すように、遮断板210の蓋部材215に取り付けるのではなく、第1ノズル230を高炉1の開口部2に突出するように、高炉1に設けた固定部(図示せず)に取り付けることもできる。第1ノズル230は、第1実施形態と同様に、検出波透過板200の半径に沿って対応するように、線状に配列されて開口部2から突出している。また、遮断板210の蓋部材215は、シリンダ300に連結している回転軸600を回動させることにより図中のS方向にスイング式に回動し、ケーシング180の開口部185の開閉を行う。また、回転軸600は、遮断板210の蓋部材215を回動させるための部材であり、第1実施形態における回転軸220のように、内部にパージ用媒体Gを流通させる構成にはなっていない。
【0051】
また、図示は省略するが、上記の第2実施形態のように、遮断板210の蓋部材215をスライド式に回動させてケーシング180の開口部185を開閉することもできる。
【0052】
第1ノズル230は、パージ用媒体Gの供給源(図示せず)に接続している配管250に接続しており、パージ用媒体Gは第1ノズル230から検出波透過板200の高炉1側の面201に向けて、下方から噴出する。
【0053】
この第3実施形態においても、測定時に検出波透過板200の面201に付着した粉塵を除去するために、第1実施形態と同様に、遮断板210の蓋部材215でケーシング180の開口185を覆うとともに、第1ノズル230から検出波透過板200の面201に向けてパージ用媒体Gを噴出する。
【0054】
なお、第3実施形態では、第1ノズル230は、遮断板210の蓋部材215ではなく、高炉1に設けた固定部に取り付けられて開口部2から突出しており、常時検出波Mを遮断しているため、装入物20の表面プロフィールの測定にあたり、検出波Mの送受信に少なからず影響するおそれがある。送受信への影響を抑えるために、第1ノズル230を、例えば
図6Aに示す構造とすることが好ましい。
【0055】
図6Aの(a)は、第1ノズル230を検出波透過板200から見た上面図、(b)は(a)のA-A矢視図、(c)は(a)のB-B矢視図である。図示されるように、各第1ノズル230は、円形パイプ(円管)からなる本体部230aから突出し、パージ用媒体Gの噴出口(噴射口)230bに向かって徐々に広がる突出部230cから構成されている。また、本体部230aが、
図5Aに示す配管250に接続しており、配管250が高炉1の固定部に取り付けられている。
なお、噴出口230bは、パージ用媒体Gを外部に噴出するためのものであり、また、本体部230a及び突出部230cは、パージ用媒体Gを噴出口230bに導入するためのものである。
【0056】
図6Bは、
図6A(a)のC-C断面図、
図6Cは
図6A(a)のD-D断面図である。検出波透過板200を透過し、第1ノズル230に入射する検出波Mにおいて、
図6Bに実線で示すように、検出波Mの一部は、ノズル先端の噴出口230bにより入射方向と同方向に反射される。この入射方向と同方向の反射波が、検出波透過板200を透過する検出波Mと干渉し、送受信手段130から送信される検出波Mの送信強度を減衰させる。そのため、噴出口230bで反射される検出波Mをより少なくするためには噴出口230bの開口面積をより小さくすればよく、例えば噴出口230bを本体部230aに沿って線状に配置するとともに、噴出口230bの開口形状を、
図6A(a)に示すように、本体部230aの長手方向を長径とする横長にする。噴出口230bの短径が短いほど、噴出口230bで反射される検出波Mを少なくすることができる。
また、
図6Cに実線で示すように、噴出口230bと噴出口230bとの間では、検出波Mは本体部230aの外周面で反射され、その一部が入射方向と同方向に反射される。
このように、検出波Mの一部が、本体部230aの長手方向に沿って、線状に反射される。
【0057】
一方、その他の検出波Mは、
図6B及び
図6Cに破線で示すように、本体部230aの外周面により種々の方向に反射される。
【0058】
上記のように、入射方向と同方向に反射される検出波を、入射方向とは異なる方向に反射される検出波よりも少なくすることにより、高炉1の開口部2に突出している第1ノズル230による反射波の影響を、実質的に排除することができる。
【0059】
<第4実施形態>
図7に示すように、検出波透過板200の高炉1側の面201に向けて横方向、すなわち、検出波透過板200の面方向に水平な方向からパージ用媒体Gを噴出する第2ノズル260を更に付加することもできる。第4実施形態は第1実施形態と組み合わせることで、測定時において、第2ノズル260は、ケーシング180の開口185を通じてパージ用媒体Gを噴出し、検出波透過板200の面201への高炉1からの粉塵の付着を抑制することができ、非測定時において、遮断板210を閉じ、第1ノズル230から検出波透過板200の面201に向けパージ用媒体Gを噴出し、面201に付着した粉塵を除去することができるため、確実に面201の粉塵付着を防止することができる。
【0060】
上記第1~第4実施形態において、検出波透過板200の面201に付着した粉塵を除去する時期としては、定期的に測定を停止する(即ち、非測定時)他、以下のように判断することができる。
【0061】
例えば、受信強度をモニターし、粉塵が検出波透過板200に付着して遮断板210からの反射波の受信強度が所定の閾値よりも低下した時に、第1ノズル230からパージ用媒体Gを噴出することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 高炉
2 開口部
100 検出装置(高炉内装入物の表面プロフィール検出装置)
110 回転軸
113 モータ
114 連結棒
117 リンク機構
120 回転板
130 送受信手段
135 アンテナ
138 角度固定反射板
138A 第1の角度固定反射板
138B 第2の角度固定反射板
138C 第3の角度固定反射板
140 角度可変反射板
170 側壁
175 開口
180 ケーシング
185 開口
200 検出波透過板
201 (検出波透過板における)高炉側の面
210 遮断板
215 蓋部材
220 回転軸
225 回転軸
230 第1ノズル
240 配管
250 配管
260 第2ノズル
300 シリンダ
G パージ用媒体
M 検出波
【要約】
【課題】高炉内に浮遊している粉塵の検出装置内への侵入を防止するとともに、検出波の送受信をより正確に安定して行う。
【解決手段】高炉内装入物の表面プロフィール検出装置100は、検出波Mを送受信するための開口175を閉鎖するとともに、開口175の中心を軸線として高炉1の開口部2と略平行を維持して平行に回転する検出波透過板200と、検出波透過板200を覆う遮断板210と、検出波透過板200と遮断板210との間に配置され、かつ、検出波透過板200の高炉1側の面201に対して下方からパージ用媒体Gを噴出する第1ノズル230とを備え、炉内に浮遊し、高炉1の開口部2から侵入して検出波透過板200の高炉側の面201に付着している粉塵を、第1ノズル230からパージ用媒体Gを噴出して除去する。
【選択図】
図3A