(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】複合繊維、これを含む固体電解質、及びこれを含む金属空気電池
(51)【国際特許分類】
C25B 13/08 20060101AFI20240306BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240306BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20240306BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20240306BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20240306BHJP
H01M 8/1018 20160101ALN20240306BHJP
【FI】
C25B13/08 301
C25B9/00 A
C25B13/04 301
H01B1/06 A
H01M12/08 K
H01M8/1018
(21)【出願番号】P 2022549878
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2021002214
(87)【国際公開番号】W WO2021167431
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0021252
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0021253
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0021894
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0164652
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0164653
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518453545
【氏名又は名称】漢陽大学校エリカ産学協力団
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY-UNIVERSITY COOPERATION FOUNDATION HANYANG UNIVERSITY ERICA CAMPUS
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】李政昊
(72)【発明者】
【氏名】シンデ サンバジ シバジ
(72)【発明者】
【氏名】金東亨
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105733004(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106784949(CN,A)
【文献】国際公開第2018/008500(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104874427(CN,A)
【文献】国際公開第2013/042720(WO,A1)
【文献】特表2019-530128(JP,A)
【文献】星 徹,バクテリアセルロースゲルを利用した材料の調整と構造,熱測定,日本,日本熱測定学会,2013年,Vol.40,No.2,p.78-85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 13/08
H01B 1/06
H01M 12/08
C25B 9/00
C25B 13/04
H01M 8/1018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バクテリアセルロースと、前記バクテリアセルロースに結合されたキトサンとを有するベース複合繊維を含
み、
前記キトサンが結合された前記バクテリアセルロースの表面が酸化されたものを含むことを特徴とする固体電解質。
【請求項2】
前記ベース複合繊維は、結晶質相及び非晶質相が混在していることを特徴とする請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
前記キトサンが結合された前記バクテリアセルロースの表面は、TEMPO水溶液を用いて酸化されることを特徴とする請求項
1に記載の固体電解質。
【請求項4】
バクテリアセルロースと、前記バクテリアセルロースに結合されたキトサンとを有するベース複合繊維を含み、
前記キトサンが結合された前記バクテリアセルロースの表面は、窒素を有する第1の機能基と結合され
たものを含むことを特徴とす
る固体電解質。
【請求項5】
前記第1の機能基は、下記の化学式1で表されることを特徴とする請求項
4に記載の固体電解質。
【化1】
【請求項6】
バクテリアセルロースと、前記バクテリアセルロースに結合されたキトサンとを有するベース複合繊維を含み、
前記ベース複合繊維の表面が酸化された第1の複合繊維と、
前記ベース複合繊維の表面が、窒素を有する第1の機能基と結合された第2の複合繊維とを含むことを特徴とす
る固体電解質。
【請求項7】
前記第1の複合繊維の割合は、30wt%超え70wt%未満であり、
前記第2の複合繊維の割合は、70wt%未満30wt%超えであることを特徴とする請求項
6に記載の固体電解質。
【請求項8】
前記第1の複合繊維及び前記第2の複合繊維は、架橋結合されることを特徴とする請求項
6に記載の固体電解質。
【請求項9】
セルロースを含むメンブレンと、
前記メンブレンの前記セルロースに結合され、30wt%超え70wt%未満のキトサンとを含み、
前記キトサンが結合された前記セルロースの表面が酸化されたものを含むことを特徴とする固体電解質。
【請求項10】
セルロースを含むメンブレンと、
前記メンブレンの前記セルロースに結合され、30wt%超え70wt%未満のキトサンとを含み、
前記キトサンが結合された前記バクテリアセルロースの表面は、窒素を有する第1の機能基と結合されたものを含むことを特徴とする固体電解質。
【請求項11】
キトサン誘導体を準備するステップと、
前記キトサン誘導体から、セルロースに結合されたキトサンが生成されるステップと、
前記キトサンが結合された前記セルロースを用いて、固体電解質を製造するステップとを含
み、
前記セルロースに結合されたキトサンが生成されるステップは、前記キトサン誘導体を有する培養培地を準備するステップと、前記培養培地内にバクテリア菌株を注入し培養するステップとを含むことを特徴とする固体電解質の製造方法。
【請求項12】
前記セルロースは、バクテリアセルロースを含むことを特徴とする請求項
11に記載の固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合繊維、これを含む固体電解質、及びこれを含む金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の小型デバイス及び家電製品用の二次電池を超えて、電気自動車及びエネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)など、中大型の高エネルギー応用分野が急激に成長することにつれ、二次電池産業の市場価値は、2018年、約220億ドルに過ぎなかったが、2025年には、約1,180億ドルに成長することと見込まれる。このように二次電池が、中大型エネルギーの記憶媒体として活用されるためには、現在の水準よりも画期的に向上した価格競争力、エネルギー密度、及び安定性が要求される。
【0003】
このような技術的ニーズによって、固体電解質を用いた二次電池に対する研究が活発に行われている。
【0004】
例えば、国際公開第2014/200198号には、複合電極層及び複合電解質層が一体化された複合電極-複合電解質アセンブリであり、前記複合電極層は、集電体と、集電体上に形成された電極混合物層とを含み、前記電極混合物層は、電極活物質、導電材、架橋高分子マトリックス、解離可能な塩、及び有機溶媒を含み、前記複合電解質層は、架橋高分子マトリックス、無機粒子、解離可能な塩、及び有機溶媒を含み、前記電極混合物層及び前記複合電解質層は重ね合って物理的に結合されることを含む複合電極-複合電解質アセンブリを開示している。
【0005】
また、韓国登録特許第10-1734301号公報には、Li前駆体からなる第1の金属前駆体、Al前駆体からなる第2の金属前駆体、Ti前駆体からなる第3の金属前駆体、及びP前駆体をキレート形成剤と反応させて、ゾルを製造する第1のステップと、前記ゾルを加熱して、ゲルを製造する第2のステップと、前記ゲルを加熱して、熱分解させる第3のステップと、前記熱分解されたゲルを空気と接触し、熱処理する第4のステップと、前記第4のステップにより得られた粉末を冷却させる第5のステップと、前記第5のステップにおいて、冷却した粉末に焼結調剤Bi2O3を0.2乃至1wt%混合する第6のステップと、前記第6のステップで得られた混合粉末を加圧成形し、空気と接触しながら850℃で焼結する第7のステップとを含み、焼結体の相対密度(%)が90.0乃至99.7であり、イオン伝導度(Scm-1)が7.9×10-4乃至9.9×10-4を有することを特徴とするリチウム電池用固体電解質の製造方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高信頼性及び高イオン伝導度の固体電解質及びこれを含む金属空気電池を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、長寿命の固体電解質及びこれを含む金属空気電池を提供することである。
【0008】
本発明の更に他の目的は、フレキシブルで且つ高い機械的安定性を有する固体電解質及びこれを含む金属空気電池を提供することである。
【0009】
また、本発明の更に他の目的は、充放電容量及び寿命が向上した金属空気電池を提供することである。
【0010】
更に、本発明の他の目的は、固体電解質用複合繊維及びメンブレン、及びこれらの製造方法を提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、高温及び低温環境で動作可能な固体電解質及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、高温及び低温環境で高いイオン伝導度を維持する固体電解質及びその製造方法を提供することである。
【0013】
また、本発明の他の目的は、高温及び低温環境でフレキシブルで且つ高い機械的安定性を有する固体電解質及びその製造方法を提供することである。
【0014】
また、本発明の他の目的は、高温及び低温環境で動作可能な固体電解質を含む金属空気電池を提供することである。
【0015】
また、本発明の他の目的は、高温及び低温環境で高い充放電容量を有し、長寿命を有する金属空気電池を提供することにある。
【0016】
本発明の目的は、前述したことに限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を解決するために、本発明は、固体電解質を提供する。
【0018】
前記固体電解質は、バクテリアセルロースと、前記バクテリアセルロースに結合されたキトサンとを有するベース複合繊維を含むことを特徴とする。
【0019】
前記ベース複合繊維は、結晶質相及び非晶質相が混在している。
【0020】
前記キトサンが結合された前記バクテリアセルロースの表面が、酸化されている。
【0021】
前記キトサンが結合された前記バクテリアセルロースの表面は、TEMPO水溶液を用いて酸化される。
【0022】
前記キトサンが結合された前記バクテリアセルロースの表面は、窒素を有する第1の機能基と結合される。
【0023】
前記第1の機能基は、下記の化学式1で表される。
【化1】
【0024】
前記固体電解質は、前記ベース複合繊維の表面が酸化された第1の複合繊維と、前記ベース複合繊維の表面が、窒素を有する第1の機能基と結合した第2の複合繊維とを含む。
【0025】
前記第1の複合繊維の割合は、30wt%超え70wt%未満であり、前記第2の複合繊維の割合は、70wt%未満30wt%超えである。
【0026】
前記第1の複合繊維及び前記第2の複合繊維は、架橋結合される。
【0027】
前記固体電解質は、セルロースを含むメンブレンと、前記メンブレンの前記セルロースに結合され、30wt%超え70wt%未満のキトサンとを含むことを特徴とする。
【0028】
前記キトサンが50wt%の場合、XPS分析結果、C1sスペクトルでC-N結合の割合が最大値を有する。
【0029】
前記セルロースは、バクテリアセルロースを含む。
【0030】
前記キトサンの割合によって、結晶性、イオン伝導度、及び膨潤比が制御される。
【0031】
前記キトサンの割合が増加するほど、結晶性が逐次減少する。
【0032】
前記目的を達成するために、本発明は、固体電解質の製造方法を提供する。
【0033】
前記固体電解質の製造方法は、キトサン誘導体を準備するステップと、前記キトサン誘導体から、セルロースに結合されたキトサンが生成されるステップと、前記キトサンが結合された前記セルロースを用いて、固体電解質を製造するステップとを含むことを特徴とする。
【0034】
前記キトサン誘導体の割合によって、結晶性、イオン伝導度、及び膨潤比が制御される。
【0035】
前記セルロースは、バクテリアセルロースを含む。
【0036】
前記セルロースに結合された前記キトサンが生成されるステップは、前記キトサン誘導体を有する培養培地を準備するステップと、前記培養培地内にバクテリア菌株を注入し培養するステップとを含む。
【0037】
前記固体電解質の製造方法は、更に、酸化剤を用いて、前記キトサンが結合された前記セルロースの表面を酸化させて、第1の複合繊維を製造するステップ、又は、前記キトサンが結合された前記セルロースの表面に臭素を結合させ、窒素を含む第1の機能基を臭素と置換させて、第2の複合繊維を製造するステップを含む。
【0038】
前記固体電解質の製造方法は、更に、酸化剤を用いて前記キトサンが結合された前記セルロースの表面を酸化させて、第1の複合繊維を製造するステップと、前記キトサンが結合された前記セルロースの表面に臭素を結合させ、窒素を含む第1の機能基を臭素と置換させて、第2の複合繊維を製造するステップと、前記第1の複合繊維及び前記第2の複合繊維を架橋させるステップとを含む。
【発明の効果】
【0039】
本発明の実施例による固体電解質は、セルロースを含むメンブレンと、前記メンブレンの前記セルロースに結合されたキトサンとを含む。前記固体電解質は、前記ベース複合繊維がネットワークを構成するメンブレン形態で提供される。前記固体電解質は、前記キトサンにより、多量のOHイオン及び水分を含有し、高いイオン伝導度を有することができる。
【0040】
これにより、前記固体電解質を含む金属空気電池の充放電容量及び寿命の特性を向上することができる。
【0041】
また、前記固体電解質は、キトサン誘導体を有する培養培地に、バクテリア菌株を注入し、培養する方法で製造される。これにより、前記固体電解質内に前記キトサンの含量が向上し、前記キトサンの含量を容易に制御することができる。
【0042】
これにより、前記固体電解質のイオン伝導度、膨潤比、及び水分含浸率を向上することができる。
【0043】
前記固体電解質を含む金属空気電池は、-20℃乃至80℃まで充放電動作を行うことができ、これにより、高温及び低温環境で安定して使用可能な固体電解質及びこれを含む金属空気電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、本発明の実施例による固体電解質の製造方法を説明するためのシーケンス図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例によるベース複合繊維を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例による第1の複合繊維を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例による第2の複合繊維を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例によるベース複合繊維を含む固体電解質を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例による固体電解質を含む金属空気電池を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実験例1-2による第1の複合繊維及びその製造方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の実験例1-3による第2の複合繊維及びその製造方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本発明の実験例1-4による固体電解質の製造方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明の実験例1-4による固体電解質のイオン移動原理を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本発明の実験例1-2乃至1-4により製造された第1の複合繊維、第2の複合繊維、及び固体電解質の水素NMR分析結果を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実験例1-4乃至実験例1-7により製造された固体電解質、バクテリアセルロース、一般のバクテリアセルロース、及びセルロースに対するXRD分析結果を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の実験例1-4乃至1-6により製造された固体電解質、バクテリアセルロース、及び一般のバクテリアセルロースに対するFT-IR分析結果を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の実験例1-4により製造された固体電解質を撮影したSEM写真である。
【
図15】
図15は、本発明の実験例1-4により製造された固体電解質のTGA及びDSC分析結果を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の実験例1-4及び1-5による固体電解質及びバクテリアセルロースのXPS分析結果グラフである。
【
図17】
図17は、本発明の実験例1-4及び1-5による固体電解質及びバクテリアセルロースのXPS分析結果グラフである。
【
図18】
図18は、本発明の実験例1-4及び1-5による固体電解質及びバクテリアセルロースのXPS分析結果グラフである。
【
図19】
図19は、本発明の実験例1-4及び1-5による固体電解質及びバクテリアセルロースのXPS分析結果グラフである。
【
図20】
図20は、本発明の実験例1-4により製造された固体電解質の耐塩基性テスト結果を説明するためのイオン伝導度測定結果を示す図である。
【
図21】
図21は、本発明の実験例1-4により製造された固体電解質の耐塩基性テスト結果を説明するためのXRD分析結果を示す図である。
【
図22】
図22は、本発明の実験例1-4による固体電解質の耐塩基性テスト結果を説明するための写真である。
【
図23】
図23は、本発明の実験例1-4による固体電解質の水分含浸率による応力-ひずみグラフである。
【
図24】
図24は、本発明の実験例1-4による固体電解質の機械的変形によるイオン伝導度を測定した結果グラフである。
【
図25】
図25は、本発明の実験例1-4による固体電解質の貯蔵弾性率(storage modulus)を測定したグラフである。
【
図26】
図26は、本発明の実験例1-4による固体電解質の機械的安定性を説明するための写真である。
【
図27】
図27は、本発明の実験例1-4による固体電解質の様々なイオン伝達率を測定したグラフである。
【
図28】
図28は、本発明の実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質のXRD分析結果を示す図である。
【
図29】
図29は、本発明の実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質のFT-IR分析結果を示す図である。
【
図30】
図30は、本発明の実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質の温度によるイオン伝導度を測定した図である。
【
図31】
図31は、本発明の実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質の水分含浸率及び膨潤比(Swelling ratio)を測定したグラフである。
【
図32】
図32は、本発明の実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質の伝導率に対するアレニウス線図(Arrhenius plot)を示す図である。
【
図33】
図33は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースのXPS分析結果を示す図である。
【
図34】
図34は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースのXPS分析結果を示す図である。
【
図35】
図35は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースのXPS分析結果を示す図である。
【
図36】
図36は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースの元素比率を分析したグラフである。
【
図37】
図37は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースのC1sスペクトラの構成比率を分析した結果を示す図である。
【
図38】
図38は、本発明の実験例3-1乃至3-5による固体電解質、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースのN1sペクトラの構成比率を分析した結果を示す図である。
【
図39】
図39は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースのXRD分析結果を示す図である。
【
図40】
図40は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、実験例1-5によるバクテリアセルロース、及び実験例1-6による一般のバクテリアセルロースの温度によるイオン伝導度を測定した図である。
【
図41】
図41は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、実験例1-5によるバクテリアセルロース、及び実験例1-6による一般のバクテリアセルロースの温度による膨潤比を測定した図である。
【
図42】
図42は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、実験例1-5によるバクテリアセルロース、及び実験例1-6による一般のバクテリアセルロースの温度による水分含浸率を測定した図である。
【
図43】
図43は、本発明の実験例1-4による固体電解質の電圧を測定した結果を説明するためのグラフである。
【
図44】
図44は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の充放電容量を説明するためのグラフである。
【
図45】
図45は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の充放電回数による電圧値を測定したグラフである。
【
図46】
図46は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の外部温度条件による充放電特性変化を説明するためのグラフである。
【
図47】
図47は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の低温及び高温環境において、充放電回数によるリテンション特性を説明するための図である。
【
図48】
図48は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の外部温度による充放電特性を説明するためのグラフである。
【
図49】
図49は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の外部温度による容量特性を説明するためのグラフである。
【
図50】
図50は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の外部温度による充放電サイクルによる充放電特性変化を説明するためのグラフである。
【
図51】
図51は、本発明の実施例による電気自動車のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳述する。しかし、本発明の技術的思想は、ここに説明される実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化することもできる。ここで紹介する実施例は、開示された内容が徹底的で且つ完全になるように、そして、当業者に本発明の思想が十分伝達されるようにするため、提供されるものである。
【0046】
本明細書において、ある構成要素が他の構成要素上にあるとすると、それは、他の構成要素上に直接形成されるか、又は、それらの間に第3の構成要素が介在されるということを意味する。また、図面において、膜及び領域の厚さは、技術的内容の効果的な説明のために誇張されている。
【0047】
また、本明細書の様々な実施例において、第1、第2、第3などの用語が、様々な構成要素を述べるために使われているが、これらの構成要素が、このような用語により限定されてはいけない。これらの用語は、単に、ある構成要素を他の構成要素と区別するために使われているだけである。そこで、ある一実施例に、第1の構成要素として言及されたものが、他の実施例では、第2の構成要素として言及されている。ここに説明及び例示される各実施例は、その相補的な実施例も含む。また、本明細書において、「及び/又は」は、前後に羅列した構成要素の少なくとも1つを含む意味として使用されている。
【0048】
本明細書において、単数の表現は、文脈上、明らかに異なることを意味しない限り、複数の表現を含む。また、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、構成要素、又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとすることであり、1つ又はその以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を排除することと理解してはいけない。また、本発明を説明することに当たり、関連する公知機能又は構成に対する具体的な説明が、本発明の要旨を不要に濁していると判断される場合は、その詳細な説明は、省略する。
【0049】
図1は、本発明の実施例による固体電解質の製造方法を説明するためのシーケンス図であり、
図2は、本発明の実施例によるベース複合繊維を示す図であり、
図3は、本発明の実施例による第1の複合繊維を示す図であり、
図4は、本発明の実施例による第2の複合繊維を示す図であり、
図5は、本発明の実施例によるベース複合繊維を含む固体電解質を示す図である。
【0050】
図1乃至
図5に示しているように、キトサン誘導体を準備する(S110)。
【0051】
前記キトサン誘導体は、キトサン前駆体が溶媒に混合したものである。一実施例によると、前記キトサン誘導体は、キトサン塩化物及び溶媒に、溶解剤を添加している。これにより、前記キトサン塩化物が溶媒で容易に溶解され、後述する培地に、前記キトサン誘導体が容易に提供されて、キトサンが結合されたセルロースを容易に製造することができる。
【0052】
例えば、前記溶媒は、水性酢酸であり、前記溶解剤は、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、(2-アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(2-クロロエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(3-カルボキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、又は(ホルミルメチル)トリメチルアンモニウムクロリドのうち、少なくともいずれか1つを含む。
【0053】
前記キトサンは、優れた熱及び化学的安定性を有し、高いイオン伝導度を有し、OHイオンを長期間、ロスなく含有することができる。また、後述するように、金属空気電池に使用する場合、亜鉛負極及び銅、リン、及び硫黄の化合物構造体と高い互換性を有することができる。
【0054】
前記キトサン誘導体から、セルロースに結合されたキトサンが生成される(S120)。前記キトサンが結合された前記セルロースが生成されるステップは、前記キトサン誘導体を有する培養培地を準備するステップと、前記培養培地内にバクテリア菌株を注入し培養して、キトサン114が結合されたセルロース112を含むベース複合繊維110を生成するステップとを含む。この場合、前記セルロース112は、バクテリアセルロースである。
【0055】
一実施例において、前記キトサン114が結合された前記セルロース112は、前記培養培地でバクテリアペリクル(pellicle)を培養した後、前記バクテリアペリクルを脱塩して製造される。前記バクテリアペリクルは、酵母及びバクテリア培養のための原料(例えば、パイナップルジュース、ペプトン、リン酸二ナトリウム、クエン酸)と共に、前記キトサン誘導体を含む培養培地を準備し、菌株を注入した後、培養して製造される。例えば、前記菌株は、 アセトバクター・キシリナム(Acetobacter Xylinum)である。
【0056】
培養された前記バクテリアペリクルを洗浄及び乾燥した後、酸性溶液(例えば、HCI)で脱塩し、中性化させた後、溶媒を除去して、前記キトサン114が結合された前記セルロース112を含む前記ベース複合繊維110が製造される。脱塩過程において、残存されたNa、K、又は細胞遮蔽物及び破片が除去されて、高純度の前記キトサン114が結合された前記セルロース112を製造することができる。
【0057】
また、前記キトサン114は、前記セルロース112と化学的に結合される。これにより、前記キトサン114が結合された前記セルロース112は、XPS分析に際して、C-Nに対応する伸縮振動が観られる。
【0058】
一実施例において、酸化剤を用いて、前記キトサン114が結合された前記セルロース112の表面、すなわち前記ベース複合繊維110の表面が酸化されて、第1の複合繊維110aが製造される。
【0059】
具体的に、前記第1の複合繊維110aを製造するステップは、酸化剤を含む水溶液に、前記ベース複合繊維110を添加して、ソース溶液を製造するステップと、前記ソース溶液のpHを塩基性に調整するステップと、前記ソース溶液のpHを中性に調整するステップと、前記ソース溶液内のパルプを洗浄し乾燥して、前記第1の複合繊維110aを製造するステップとを含む。
【0060】
例えば、前記酸化剤を含む水溶液は、TEMPO水溶液である。又は、前記酸化剤を含む水溶液は、4-ヒドロキシ-TEMPO、(ジアセトキシヨード)ベンゼン、4-アミノ-TEMPO、4-カーボキシ-TEMPO、4-メトキシ-TEMPO、メタクリル酸TEMPO、4-アセトアミド-TEMPO、3-カーボキシ-PROXYL、4-マレイミド-TEMPO、4-ヒドロキシ-TEMPOベンゾアート、又は4-ホスホノオキシ-TEMPOのうち、少なくともいずれか1つを含む。
【0061】
前記ソース溶液は、前記ベース複合繊維110の酸化反応のための犠牲試薬及び追加酸化剤を更に含むことができる。例えば、前記犠牲試薬は、NaBr、ヨウ化ナトリウム、臭素酸ナトリウム、亜臭素酸ナトリウム、ホウ砂、亜塩素酸ナトリウム、又は塩化ナトリウムのうち、少なくともいずれか1つを含み、前記追加酸化剤は、NaClO、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸、過塩素酸カリウム、過塩素酸リチウム.過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸亜鉛、過酸化水素、又は過酸化ナトリウムのうち、少なくともいずれか1つを含む。
【0062】
前記ソース溶液のpHを塩基性に調整するステップにおいて、前記ソース溶液のpHを10に調整することができる。これにより、沈殿物を最小化し且つ酸化反応を容易に誘導することができ、pH8~9の反応条件と比較して、前記第1の複合繊維110aの酸化度を向上させる。
【0063】
一実施例において、前記酸化剤を含む水溶液に、前記ベース複合繊維110及び前記犠牲試薬が提供された後、前記追加酸化剤を提供する。また、前記追加酸化剤は、点滴されて提供される。これにより、前記ベース複合繊維110の急激な酸化現象が防止され、結果として、前記ベース複合繊維110の表面がムラなく安定して酸化される。
【0064】
また、一実施例において、前記キトサン114が結合された前記セルロース112の表面に臭素を結合させ、窒素を含む第1の機能基116を、臭素と置換させて、第2の複合繊維110bを製造する。
【0065】
前記第1の機能基116は、下記の化学式1のように表され、前記第1の機能基116は、前記キトサン114及び/又は前記セルロース112と結合される。
【0066】
【0067】
すなわち、前記第2の複合繊維110bは、 第四級N(quaternary N)を有する。
【0068】
具体的に、前記第2の複合繊維110bを製造するステップは、第1の溶媒に、前記ベース複合繊維110を分散させ、臭素ソースを添加して、第1のソース溶液を製造するステップと、前記第1のソース溶液にカップリング剤を添加し反応させて、反応懸濁液を製造するステップと、前記反応懸濁液をろ過、洗浄、及び凍結乾燥して、臭素化されたベース複合繊維を製造するステップと、前記臭素化されたベース複合繊維を第2の溶媒に分散して、第2のソース溶液を製造するステップと、前記第2のソース溶液に前記第1の機能基116の前駆体を添加し、反応させるステップと、反応された溶液をろ過、洗浄、及び凍結乾燥して、前記第2の複合繊維110bを製造するステップとを含む。
【0069】
例えば、前記第1の溶媒及び前記第2の溶媒は、互いに同一であり、N、N-ジメチルアセトアミド、アセトアミド、アセトニトリル、エタノール、エチレンジアミン、ジエチルエーテル、又はベンズアルデヒドのうち、少なくともいずれか1つを含む。
【0070】
例えば、前記臭素ソースは、LiBr、臭化ナトリウム、又は臭化カリウムのうち、少なくともいずれか1つを含む。
【0071】
例えば、前記カップリング剤は、N-ブロモスクシンイミド及びトリフェニルホスフィンを含む。前記カップリング剤により、前記ベース複合繊維110の表面に臭素が容易に結合される。具体的に、N-ブロモスクシンイミド内の臭素は、前記ベース複合繊維110と結合され、トリフェニルホスフィンは、臭素前駆体(臭素ソスン、又はN-ブロモスクシンイミド)を還元させて、反応速度を向上させる。
【0072】
前述したように、前記反応懸濁液から、前記臭素化されたベース複合繊維を得た後、前記臭素化されたベース複合繊維は、凍結乾燥する。これにより、前記臭素化されたベース複合繊維の臭素のロスを最小化し、臭素が異なる元素と2次反応することを最小化することができる。
【0073】
例えば、前記第1の機能基116前駆体は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを含む。
【0074】
前記キトサン114が結合された前記セルロース112を用いて、固体電解質を製造する(S130)。
【0075】
前記固体電解質は、
図5に示しているように、前記キトサン114が結合された前記セルロース112を含む前記ベース複合繊維110が、ネットワークを構成するメンブレン形態で製造される。これにより、前記固体電解質は、内部に複数の気孔が提供されて、高い表面積を有することができ、柔軟性及び機械的特性に優れている。
【0076】
前記固体電解質は、結晶質相及び非晶質相が混在された状態である。より具体的に、前記固体電解質は、非晶質相の割合が結晶質相の割合よりも高い。これにより、前記固体電解質が高イオン移動度を有することができる。
【0077】
また、前記固体電解質が金属空気電池に装着すると、-20℃乃至80℃まで、前記金属空気電池が円滑に充放電動作を行う。すなわち、本発明の実施例による前記固体電解質を含む前記金属空気電池は、低い温度及び高い温度で円滑に動作し、広い動作温度範囲を有して、様々な環境に活用可能である。
【0078】
一実施例において、前記第1の複合繊維110a及び前記第2の複合繊維110bを用いたゼラチン工程により、前記固体電解質が製造される。この場合、前記固体電解質は、前記第1の複合繊維110a及び前記第2の複合繊維110bを含み、前記第1の複合繊維110a及び前記第2の複合繊維110bは、互いに架橋結合される。前記第1の複合繊維110aにより、前記固体電解質内のOHイオンの数が増加し、イオン伝導度が向上し、負電荷濃度(negative charge density)が増加し、膨潤抵抗性が向上する。また、前記第2の複合繊維110bにより、分子量が増加して、熱的安定性が向上し、イオン交換能(ion exchange capacity)が向上して、高い水分含浸率及び高い膨潤抵抗性を有し、前記第1の複合繊維110aと架橋結合力が向上し、特定の溶媒に選択的に高い溶解度(ion discerning selectivity)を有することができる。これにより、前記固体電解質を含む二次電池の充放電特性及び寿命特性が向上する。
【0079】
具体的に、前記固体電解質を製造するステップは、前記第1の複合繊維110a及び前記第2の複合繊維110bを溶媒に混合して、混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液に架橋剤及び開始剤を添加し反応させて、懸濁液を製造するステップと、前記懸濁液を基板上にキャストし乾燥させて、複合繊維膜を製造するステップと、前記複合繊維膜にイオン交換工程を行うステップとを含む。
【0080】
例えば、前記溶媒は、メチレンクロライド、1,2-プロパンジオール、及びアセトンの混合溶媒を含み、前記架橋制は、グルタルアルデヒドを含み、前記開始剤は、N、N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含む。
【0081】
また、例えば、前記複合繊維膜に対するイオン交換工程は、前記複合繊維膜にKOH水溶液及びZnTFSI水溶液を提供するステップを含む。これにより、前記固体電解質内のOHイオン含量が向上する。
【0082】
前述したように、前記固体電解質は、前記ベース複合繊維110、前記第1の複合繊維110a、又は前記第2の複合繊維110bの少なくともいずれか1つを含む前記メンブレン(M)を含む。
【0083】
前記固体電解質内における前記キトサン114の割合は、前記培養培地内に提供される前記キトサン誘導体の含量によって容易に制御することができる。前記キトサン114の割合によって、前記固体電解質の結晶性、イオン伝導度、及び膨潤比を制御する。具体的に、前記キトサン114の割合が増加するほど、前記固体電解質の結晶性が逐次減少される。
【0084】
一実施例において、前記キトサン114の含量は、30wt%超え70wt%未満である。もし、前記キトサン114の含量が30wt%以下又は70wt%以上の場合、前記固体電解質のイオン伝導度が顕著に低下し、膨潤比が顕著に増加することになる。
【0085】
しかし、本発明の実施例によると、前記固体電解質内で前記キトサン114の割合が、30wt%超え70wt%未満であり、これにより、前記固体電解質が高イオン伝導度の特性を維持し、且つ、低い膨潤比の値を有することができる。
【0086】
図6は、本発明の実施例による固体電解質を含む金属空気電池を示す図である。
【0087】
図6に示しているように、本発明の実施例による金属空気電池が提供される。前記金属空気電池は、負極200と、正極300と、前記負極200及び前記正極300間の固体電解質100とを含む。
【0088】
前記固体電解質100は、
図1乃至
図5で説明した前記ベース複合繊維110、前記第1の複合繊維110a、又は前記第2の複合繊維110bの少なくともいずれか1つを含むメンブレン形態で提供される。
【0089】
前記負極200は、亜鉛を含む。又は、これとは異なり、前記負極200は、リチウムを含んでもよい。
【0090】
一実施例において、前記正極300は、Pt/C及びRuO
2を含む。又は、前記正極300は、銅、リン、及び硫黄の化合物構造体を含む。この場合、前記銅、リン、及び硫黄の化合物構造体は、フィブリル化された複数の繊維がメンブレンを構成する形態で提供され、(101)結晶面を有する。前記銅、リン、及び硫黄の化合物構造体の具体的な製造工程は、
図41を参照して後述する。
【0091】
本発明の実施例による前記金属空気電池に含まれた前記固体電解質100は、多量のOHイオン及び水分を含み、高いイオン伝導度を有する。これにより、前記金属空気電池の充放電容量及び寿命特性が向上し、その上、前記金属空気電池の充放電過程において、前記負極200の表面でデンドライトが成長することを最小化することができる。
【0092】
本発明の実施例による固体電解質は、様々な形態の中間生成物で、流通、納品、取引、及び保管される。以下、本発明の実施例による固体電解質を製造するための様々な形態の中間生成物について説明する。
【0093】
第1の変形例によると、後述する実験例1-5により、キトサン誘導体を省略し、脱塩過程を省略して、キトサンを含まないバクテリアセルロースの場合、合成された直後のゲル状態であるか、又は、乾燥後の固体状態(パウダー)を有するか、又は、溶媒内に提供された溶液状態を有する。前記溶媒は、例えば、脱イオン水(DI water)又は有機溶媒(例えば、メチレンクロリド、DMSO、DMF、THF、IPA)である。
【0094】
第2の変形例によると、前述した本発明の実施例によるキトサン誘導体の場合、合成された直後のゲル状態であるか、又は、乾燥後の固体状態(パウダー)を有するか、又は溶媒内に提供された溶液状態を有する。前記溶媒は、例えば、脱イオン水、又はエタノールである。
【0095】
第3の変形例によると、前述した本発明の実施例によるキトサンが結合されたセルロースを含む前記ベース複合繊維110の場合、合成された直後のゲル状態であるか、又は、乾燥後の固体状態(パウダー)を有するか、又は溶媒内に提供された溶液状態を有する。前記溶媒は、例えば、脱イオン水、DMSO、エタノール、メチレンクロリド、IPA、N、N、-DMF、又はTHFである。
【0096】
第4の変形例によると、前述した本発明の実施例による前記ベース複合繊維110の表面が酸化された前記第1の複合繊維110aの場合、合成された直後のゲル状態であるか、又は乾燥後の固体状態(パウダー)を有するか、又は、溶媒内に提供された溶液状態を有する。前記溶媒は、例えば、CHCl3、又はDMSOである。
【0097】
第5の変形例によると、前述した本発明の実施例による前記ベース複合繊維110の表面に臭素が結合された前記臭素化されたベース複合繊維の場合、合成された直後のゲル状態であるか、又は乾燥後の固体状態(パウダー)を有するか、又は溶媒内に提供された溶液状態を有する。前記溶媒は、例えば、CHCl3、DMSO、又はエタノールである。
【0098】
第6の変形例によると、前述した本発明の実施例による前記第1の機能基が、前記ベース複合繊維110の表面に結合された第四級Nを有する前記第2の複合繊維110bの場合、合成された直後のゲル状態であるか、又は乾燥後の固体状態(パウダー)を有するか、又は溶媒内に提供された溶液状態を有する。前記溶媒は、例えば、CHCl3、又はDMSOである。
【0099】
第7の変形例によると、前述した本発明の実施例により、前記第1の複合繊維110a及び前記第2の複合繊維110bが架橋された固体電解質の場合、固体状態(メンブレン)を有するか、又は溶媒内に提供された溶液状態を有する。前記溶媒は、例えば、CHCl3、又はDMSOである。
【0100】
以下、本発明の具体的な実験例によるベース複合繊維、第1の複合繊維、第2の複合繊維、及び固体電解質の製造方法について説明する。
【0101】
図7は、本発明の実験例1-2による第1の複合繊維及びその製造方法を説明するための図であり、
図8は、本発明の実験例1-3による第2の複合繊維及びその製造方法を説明するための図であり、
図9は、本発明の実験例1-4による固体電解質の製造方法を説明するための図であり、
図10は、本発明の実験例1-4による固体電解質のイオン移動原理を説明するための図である。
【0102】
<実験例1-1によるベース複合繊維(CBC)の製造>
バクテリア菌株として、アセトバクター・キシリナムを準備し、キトサン誘導体を準備した。キトサン誘導体は、1gのキトサン塩化物を、1%(v/v)の水性酢酸で溶解させた懸濁液を、1Mのグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドで、N2雰囲気で、65℃で24時間処理した後、沈殿させ、エタノールで複数回ろ過して製造した。
【0103】
パイナップルジュース(2% w/v)、酵母(0.5% w/v)、ペプトン(0.5% w/v)、リン酸二ナトリウム(0.27% w/v)、クエン酸(0.015% w/v)、及び前記キトサン誘導体(2% w/v)を含むヘストリン-シュラム(Hestrin-Schramm)(HS)培地を準備し、20分間、121℃で蒸気滅菌させた。また、アセトバクター・キシリナムを、前培養(pre-cultivation)ヘストリン-シュラム(HS)培地において、30℃で、24時間活性化させた後、酢酸を添加して、pH6に維持させた。
【0104】
以後、アセトバクター・キシリナムを、ヘストリン-シュラム(HS)培地において、30℃で、7日間、培養した。
【0105】
得られたバクテリアペリクルを脱イオン水で洗浄して、上澄液のpHを中性化させ、105℃の真空で脱水した。生成されたセルロースを、1NのHClを用いて、30分間、脱塩(demineralized)して、(質量比1:15、w/v)過量の試薬を除去した後、上澄液が中性pHとなるまで、脱イオン水を用いて、複数回遠心分離して精製した。最終的に、全ての溶媒を100℃で蒸発させた後、ベース複合繊維(キトサン-バクテリアセルロース(CBC))を製造した。
【0106】
<実験例1-2による第1の複合繊維(oCBC)製造>
前記ベース複合繊維の表面が酸化された第1の複合繊維(TEMPO-酸化されたCBC(oCBCs))は、
図7に示しているように、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、臭素化ナトリウム(NaBr)、及び次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を用いる酸化反応により、ヒドロキシメチル及びオルト・パラ配向性(ortho para directing)のアセトアミドベース複合繊維(CBC)をTEMPOの酸化物に共役(conjugation)する方法で設計された。
【0107】
具体的に、2mMのTEMPO水溶液に分散した2gのベース複合繊維繊維を、NaBr(1.9mM)と反応させた。5mMのNaClOを追加酸化剤として使用した。
【0108】
反応懸濁液を超音波で撹拌し、室温で3時間、反応を行った。0.5MのNaOH溶液を連続的に添加することで、懸濁液のpHが10を維持するようにした。ついで、懸濁液に1NのHClを添加して、3時間の間、pHを中性に維持させた。懸濁液内に生成された酸化されたパルプを、0.5NのHClを用いて、3回洗浄し、脱イオン水を用いて、上澄液が中性pHとなるようにした。
【0109】
洗浄されたパルプを30分間、アセトン、トルエンに交換し、乾燥して、溶媒を蒸発させ、最終的に、第1の複合繊維(oCBC)繊維を得た。
【0110】
図7から分かるように、前記ベース複合繊維の表面が酸化される。
【0111】
<実験例1-3による第2の複合繊維(qCBC)の製造>
前記ベース複合繊維に、窒素を有する第1の機能基が結合された第2の複合(Covalently quaternized CBC(qCBC))は、
図8に示しているように、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いたカップリング剤による臭素化されたベース複合繊維(CBC)、及び4次アミングループの共役する方法で製造された。
【0112】
具体的に、N、N-ジメチルアセトアミド(35ml)溶液に分散した1gのベース複合繊維を、LiBr(1.25g)懸濁液と30分間、撹拌しながら反応させた。N-ブロモスクシンイミド(2.1g)、及びトリフェニルホスフィン(3.2g)をカップリング剤として用いた。2つの反応混合物を10分間、撹拌し、60分間、80℃で反応させた。
【0113】
ついで、反応懸濁液を室温で冷却させ、脱イオン水に添加し、ろ過し、脱イオン水及びエタノールでリンスし、凍結乾燥して、臭素化されたベース複合繊維(bCBC)を得た。
【0114】
臭素化されたベース複合繊維を、100mlのN、N-ジメチルホルムアミドで溶解させ、1.2gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンと反応させた。
【0115】
以後、混合物を30分間、超音波処理した後、室温で24時間の間、反応させた。生成された溶液をジエチルエーテルに混合し、ジエチルエーテル/酢酸エチルで5回洗浄し、凍結乾燥させて、第2の複合繊維(Covalently quaternized CBC(qCBC))を得た。
【0116】
図8から、前記ベース複合繊維の表面に、窒素を有する第1の機能基が結合したことが分かる。
【0117】
<実験例1-4による固体電解質(CBCs)の製造>
固体電解質は、
図8に示しているように、前記第1の複合繊維(oCBC)及び前記第2の複合繊維(qCBC)を用いたゼラチン工程で製造した。具体的に、超音波を用いて、前記第1の複合繊維(oCBC)及び前記第2の複合繊維(qCBC)を、同一の重量比で、メチレンクロリド及び1,2-プロパンジオール及びアセトンの混合物(8:1:1 v/v/v%)で溶解させ、架橋剤として1wt%のグルタルアルデヒド、及び開始剤として0.3wt%のN、N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを添加した。
【0118】
真空室(200Pa)を用いて、ゲル懸濁液の気泡を除去し、60℃で6時間、ガラス上にキャストした。複合繊維膜を脱イオン水で凝固しながら剥離し、脱イオン水でリンスし、真空乾燥させた。
【0119】
1MのKOH水溶液、及び0.1MのZnTFSIで常温でそれぞれ6時間の間、イオン交換して、固体電解質(CBCs)を製造した。この後、CO2と反応及び炭酸塩の形成を避けるため、N2雰囲気で、脱イオン水で洗浄及び浸漬工程を行った。
【0120】
図9から、前記第1の複合繊維(oCBC)及び前記第2の複合繊維(qCBC)は、互いに架橋結合されて、前記固体電解質(CBCs)を構成することが分かる。
【0121】
また、
図10に示しているように、前記固体電解質(CBCs)の架橋された前記第1の複合繊維(oCBC)、及び前記第2の複合繊維(qCBC)の表面では、OHイオンがホッピング(hopping、grotthuss移動(grotthuss transport))し、前記第1の複合繊維及び前記第2の複合繊維の表面から離隔した内部では、拡散により移動することができる。また、前記固体電解質(CBCs)は、
図12で後述するように、非晶質相を有し、これにより、結晶質構造と比較して、高いイオン伝導度を有することができる。
【0122】
<実験例1-5によるバクテリアセルロースの製造>
前述した実験例1-1のベース複合繊維の製造方法において、キトサン誘導体を省略し、脱塩過程を省略して、キトサンを含まないバクテリアセルロースを製造した。
【0123】
<実験例1-6による一般のバクテリアセルロースの製造>
グルコース(2wt%)、ペプトン(0.5wt%)、酵母(0.5wt%)、リン酸二ナトリウム(0.2wt%)、及びクエン酸(0.1wt%)を含む培養培地を用い、キトサン誘導体を省略し、脱塩過程を省略して、実験例1-1と同一の方法でバクテリアセルロースを製造した。
【0124】
<実験例1-7によるセルロースの製造>
サトウキビバガス(bagasse)を準備し、エタノールに、脱イオン水、NaOH、及び硝酸を混合した溶媒を準備した。溶媒に、サトウキビバガスを分散させて洗浄した後に、ろ過し、中性pHとなるまで、脱イオン水で複数回洗浄した。
【0125】
洗浄されたサトウキビバガスを、100℃で3時間乾燥し、16メッシュIKA MF-10ミルのステンレススチールふるいで研磨して、繊維パルプを製造した。
【0126】
繊維パルプを、55℃で1時間、過酸化水素(1%、pH13.5)で漂白する単位工程を、計3回繰返し実行し、大気雰囲気で、3時間の間、NaOH溶液で残留物を除去した後に、エタノール及びアセトンで洗浄し、50℃で6時間、乾燥して、セルロースを製造した。
【0127】
実験例1-1乃至実験例1-7は、下記の表1のようにまとめられる。
【0128】
【0129】
図11は、本発明の実験例1-2乃至1-4により製造された第1の複合繊維、第2の複合繊維、及び固体電解質の水素NMR分析結果を示す図である。
【0130】
図11に示しているように、前記実験例1-2乃至1-4により製造された第1の複合繊維、第2の複合繊維、及び固体電解質に対して、水素NMRを分析した。
【0131】
図11の分析結果において、数字が記載された丸みは、
図9において、同じ数字が記載された丸みに該当する水素原子に対応される。すなわち、
図9に数字が記載された丸みのNMR分析結果を、
図11から確認することができる。
図11から分かるように、前記第1の複合繊維及び前記第2の複合繊維が交互に且つ反復的に同一の割合で架橋結合されている。
【0132】
図12は、本発明の実験例1-4乃至実験例1-7により製造された固体電解質、バクテリアセルロース、一般のバクテリアセルロース、及びセルロースに対するXRD分析結果を示す図である。
【0133】
図12に示しているように、前記実験例1-4乃至1-7により製造された固体電解質、バクテリアセルロース、一般のバクテリアセルロース、及びセルロースに対して、XRD分析を行った。
【0134】
図12から分かるように、実験例1-7のセルロース繊維は、高い結晶性を有し、(200)、(110)、(1-10)結晶面に対応するピーク値を有して、六方晶系の結晶構造を有する。一方、実験例1-6のバクテリアセルロース(C(I))は、結晶性が相対的に減少しており、(200)結晶面に対応するピークの2θ値が減少したことが分かる。
【0135】
本発明の実施例により製造された実験例1-5のバクテリアセルロースは、実験例1-7の一般のセルロース繊維と比較して、顕著に結晶性が減少し、実験例1-7の一般のセルロース繊維、及び実験例1-6の一般のバクテリアセルロースとは異なり、(020)及び(110)結晶面に対応するピーク値を有し、(1-10)結晶面に対応して、2つのピーク値を有することが確認できる。また、(110)結晶面に対応するピーク値が、他の結晶面(例えば、(101)、(1-10))に対応するピーク値よりも高いことが分かる。
【0136】
また、本発明の実施例により製造された実験例1-4の固体電解質は、結晶質相及び非晶質相を同時に有し、非晶質相の割合が顕著に高いことが分かる。
【0137】
図13は、本発明の実験例1-4乃至1-6により製造された固体電解質、バクテリアセルロース、及び一般のバクテリアセルロースに対するFT-IR分析結果を示す図である。
【0138】
図13に示しているように、前述した実験例1-4乃至1-6により、固体電解質、バクテリアセルロース、及び一般のバクテリアセルロースに対して、FT-IR分析を行った。
【0139】
図13から、実験例1-6の一般のバクテリアセルロースと比較して、実験例1-5のバクテリアセルロースの場合、C-O及びO-Hの伸縮振動(stretching vibration)が、1056cm
-1及び2932cm
-1から、1022cm
-1及び2895cm
-1に移動したことが分かる。また、本発明の実施例による実験例1-4の固体電解質の場合、C-N+伸縮振動が1458cm
-1で見られ、四級化(quaternization)反応が起きたことが分かる。2916cm
-1及び3320cm
-1における振動は、O-H伸縮振動に対応し、1652cm
-1及び1750cm
-1は、水に対応することで、非晶質の固体電解質内に十分な水分子が存在することが分かり、実験例1-4の固体電解質においてC-Oの伸縮振動の強度が増加したことは、キトサン及びバクテリアセルロースの反応によることである。また、実験例1-4の固体電解質内に炭酸塩が実質的に存在しないことが確認でき、これにより、商用化されたPVA電解質と比較して、メリットを有することが分かる。
【0140】
図14は、本発明の実験例1-4により製造された固体電解質を撮影したSEM写真である。
【0141】
図14に示しているように、前記実験例1-4により製造された固体電解質のSEM写真を撮影した。
【0142】
図14から、複数の気孔が内部に多数存在し、キトサンが結合されたバクテリアセルロース繊維が、フィブリル化された形態で提供され、5~10nmの径を有することが分かる。
【0143】
測定された気孔のサイズは、約20~200nmであり、固体電解質内でキトサンが結合されたバクテリアセルロース繊維が、高い気孔及び高い表面積でネットワークを構成して、膨潤に対する高い強度を有することが分かる。
【0144】
図15は、本発明の実験例1-4により製造された固体電解質のTGA及びDSC分析結果を示す図である。
【0145】
図15に示しているように、前記実験例1-4により製造された固体電解質に対して、窒素雰囲気で、5℃/minの条件で温度を増加しながら、TGA及びDSC分析を行った。
【0146】
図15から、本発明の実験例1-4による固体電解質が、約225℃まで安定して熱的安定性を有することが分かる。すなわち、本発明の実施例により製造された固体電解質が、高温安定性を有することが分かる。
【0147】
図16乃至
図19は、本発明の実験例1-4及び1-5による固体電解質及びバクテリアセルロースのXPS分析結果グラフである。
【0148】
図16乃至
図19に示しているように、前記実験例1-4及び1-5により製造された固体電解質及びバクテリアセルロースに対して、XPS分析を行った。
図17は、C1sスペクトラであり、
図18は、N1sペクトラであり、
図19は、O1sスペクトラである。
【0149】
図17において、284.5eV、285.9eV、288eV、及び289.7eVはそれぞれ、C=C、C-N、C-O、及びC-OHにそれぞれ対応され、
図18において、399.9eV、401.3eV、及び402.5eVはそれぞれ、pyrrolic、第四級、及び酸化したN(oxidized N)に対応される。
【0150】
図16乃至
図19から、キトサンが省略された実験例1-5のバクテリアセルロースと比較して、キトサンが結合されたバクテリアセルロースを有する実験例1-4の固体電解質は、XPS分析結果、N1sペクトルで、pyrrolic、第四級、及び酸化したNに対応するピーク値を有することが分かる。
【0151】
図20は、本発明の実験例1-4により製造された固体電解質の耐塩基性テスト結果を説明するためのイオン伝導度測定結果を示す図である。
【0152】
図20に示しているように、前述した実験例1-4により製造された固体電解質、PVAフィルム、及び負イオン交換膜であるA201メンブレン(Tokuyama)を、100℃の1MのKOH溶液に浸漬させた後、2500時間の間、時間によるイオン伝導度を測定した。
図20に挿入された写真は、本発明の実験例1-4により製造された固体電解質(30cm×30cm、5um)を撮影したものである。
【0153】
図20から、本発明の実験例1-4による固体電解質は、実質的にイオン伝導度の変化がないことが分かる。一方、A201メンブレン及びPVAフィルムは、イオン伝導度が急激に低下することが分かる。すなわち、本発明の実施例による固体電解質が塩基性環境で使用されても、イオン伝導度の変化なく、長期信頼性を有することが分かる。
【0154】
図21は、本発明の実験例1-4により製造された固体電解質の耐塩基性テスト結果を説明するためのXRD分析結果を示す図である。
【0155】
図21に示しているように、
図20で説明したように、実験例1-4の固体電解質を、KOH溶液に浸漬させた後、XRD分析を行った。
【0156】
図21から、長時間塩基性溶液に浸漬された後にも、固体電解質内に、実質的な結晶学的変化がないことが分かる。すなわち、本発明の実施例による固体電解質が塩基性環境で使用されても、結晶学的変化なく、長期信頼性を有することが確認できる。
【0157】
図22は、本発明の実験例1-4による固体電解質の耐塩基性テスト結果を説明するための写真である。
【0158】
図22に示しているように、
図20で説明したように、実験例1-4の固体電解質を、KOH溶液に浸漬させた後、写真を撮影した。
【0159】
図22から、長時間塩基性溶液に浸漬された後にも、固体電解質メンブレンの実質的な外観の変化がないことが分かる。すなわち、本発明の実施例による固体電解質が塩基性環境で使用されても、外形的な変化なく、長期信頼性を有することが確認できる。
【0160】
図23は、本発明の実験例1-4による固体電解質の水分含浸率による応力-ひずみグラフを示している。
【0161】
図23に示しているように、前記実験例1-4により製造された固体電解質(CBCs)の水分含浸率による応力-ひずみ分析を、常温で40%相対湿度の条件で行った。同一の条件で、A201メンブレン(水分含浸率44wt%)に対しても、応力-ひずみ分析を行った。
【0162】
図23から、水分含浸率によって与えられる応力に対するひずみ値が変わることが分かる。具体的に、水分含浸率が増加するほど、降伏強度が低くなることが確認できる。
【0163】
特に、市販のA201メンブレンと比較して、本発明の実験例による固体電解質は、顕著に高い水分含浸率を有すると共に、顕著に高い機械的特性を有することが分かる。
【0164】
図24は、本発明の実験例1-4による固体電解質の機械的変形によるイオン伝導度を測定した結果グラフである。
【0165】
図24に示しているように、前記実験例1-4により製造された固体電解質(CBCs)及びA201メンブレンを、0度から180度まで曲げてイオン伝導度を測定し、丸めるか又は巻いた後、イオン伝導度を測定した。
【0166】
図24から、本発明の実験例1-4により製造された固体電解質は、様々な機械的変形にも、実質的なイオン伝導度の変化がないことが分かる。一方、市販のA201メンブレンは、曲げ回数によって、イオン伝導度が減少し、丸めるか又は巻いた場合、イオン伝導度が急激に低下することが確認できる。
【0167】
すなわち、本発明の実験例による固体電解質が、様々な機械的変形にも、イオン伝導度の実質的な変化なく、安定した性能を維持することが分かる。
【0168】
図25は、本発明の実験例1-4による固体電解質の貯蔵弾性率(storage modulus)を測定したグラフである。
【0169】
図25に示しているように、前述した実験例1-4により製造された固体電解質に外力が与えられる周波数を変化させて、貯蔵弾性率を測定した。
図25から、周波数が増加することにつれ、固体電解質の貯蔵弾性率がリニアに増加することが分かる。
【0170】
図26は、本発明の実験例1-4による固体電解質の機械的安定性を説明するための写真である。
【0171】
図26に示しているように、前述した実験例1-4により製造された固体電解質を、常温(
図26のa、b、c)及び-20℃(
図26のd、e、f)で丸めた後、復元可否を撮影した。
図26から分かるように、常温はもちろん、低温でも、容易に元状態に戻ることが確認できる。すなわち、本発明の実験例1-4による固体電解質が、常温ではもちろん、低温環境で様々な機械的変形にも実質的な外形の変化なく、安定して復元されることが分かる。
【0172】
図27は、本発明の実験例1-4による固体電解質の様々なイオン伝達率を測定したグラフである。
【0173】
図27に示しているように、前記実験例1-4により製造された固体電解質に対して、K
+、Zn
2+、OH
-、TFSI
-、[Ch]
+イオンに対するイオン伝達率を計算した。
図27に示しているように、OH
-イオンに対して、最も高い伝達率を有し、OH
-イオンについで、K
+イオンが高い伝達率を有することと確認された。
【0174】
具体的なイオン伝導度は、下記の表2の通りである。
【0175】
【0176】
<実験例2-1乃至2-5による固体電解質の製造>
前記実験例1-4と同一の方法で固体電解質を製造する一方、実験例1-2の第1の複合繊維(oCBC)の割合、及び実験例1-3の第2の複合繊維(qCBC)の割合を、下記表3のように調節して、実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質を製造した。
【0177】
【0178】
図28は、本発明の実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質のXRD分析結果を示す図である。
【0179】
図28に示しているように、前記実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質に対するXRD分析を行った。
【0180】
図28から、実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質が、(101)及び(002)結晶面に対応するピーク値を有し、第1の複合繊維(oCBC)及び第2の複合繊維(qCBC)の割合によって、結晶構造は、実質的に変わらないが、第2の複合繊維の割合が増加することにつれ、(002)結晶面に対応するピーク値の2θ値が微細に増加することが分かる。
【0181】
図29は、本発明の実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質のFT-IR分析結果を示す図である。
【0182】
図29に示しているように、前記実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質に対して、FT-IR分析を行った。
【0183】
図29から、2916cm
-1及び3320cm
-1での振動は、O-H伸縮振動に対応することで、実験例2-3により、第1の複合繊維及び第2の複合繊維の割合が同一である固体電解質のO-H伸縮振動の強度が、実験例2-1、実験例2-2、実験例2-4、及び実験例2-5による固体電解質よりも、顕著に高いことが分かる。
【0184】
換言すると、第1の複合繊維の割合を、30wt%超え70wt%未満に制御し、第2の複合繊維の割合を、70wt%未満30wt%超えに制御するのが、固体電解質内のOHイオンの含量を高め、結果として、OHイオンのイオン伝導度を向上させる効率的な方法と予想される。
【0185】
図30は、本発明の実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質の温度によるイオン伝導度を測定した図である。
【0186】
図30に示しているように、前記実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質に対して、イオン伝導度を温度によって測定し、市販のA201メンブレンのイオン伝導度を、温度によって測定して比較した。
【0187】
図30から、温度が増加するほど、実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質、及びA201メンブレンのイオン伝導度が増加した。また、実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質のイオン伝導度が、A201メンブレンと比較して、顕著に高いことが分かる。
【0188】
これに加えて、実験例2-3により、第1の複合繊維及び第2の複合繊維の割合が同一である固体電解質のイオン伝導度が、実験例2-1、実験例2-2、実験例2-4、及び実験例2-5による固体電解質よりも顕著に高いことが分かる。結果として、第1の複合繊維の割合を、30wt%超え70wt%未満に制御し、第2の複合繊維の割合を、70wt%未満30wt%超えに制御することが、OHイオンのイオン伝導度を向上させる効率的な方法であることが確認できる。
【0189】
図31は、本発明の実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質の水分含浸率及び膨潤比を測定したグラフである。
【0190】
図31に示しているように、前記実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質に対して、水分含浸率及び膨潤比を温度によって測定し、市販のA201メンブレンの水分含浸率及び膨潤比を、温度によって測定して比較した。
【0191】
図31から、温度が増加するほど、実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質、及びA201メンブレンの水分含浸率が増加した。また、実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質の水分含浸率が、A201メンブレンと比較して、顕著に高いことが分かる。
【0192】
これに加えて、実験例2-3により、第1の複合繊維及び第2の複合繊維の割合が同一である固体電解質の水分含浸率が、実験例2-1、実験例2-2、実験例2-4、及び実験例2-5による固体電解質よりも顕著に高いことが分かる。
【0193】
また、温度が増加するほど、A201メンブレンの膨潤比が顕著に増加することが分かる。それに対して、実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質は、温度増加による膨潤比が顕著に低く、実験例2-3による固体電解質は、温度が増加しても、実質的に膨潤比が変わらないことが分かる。
【0194】
結果として、第1の複合繊維の割合を、30wt%超え70wt%未満に制御し、第2の複合繊維の割合を、70wt%未満30wt%超えに制御することが、水分含浸率を向上させ、温度による膨潤比、及び膨潤比の変化量を最小化させる効率的な方法であることが分かる。
【0195】
図32は、本発明の実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質の伝導率に対するアレニウス線図を示している。
【0196】
図32に示しているように、前記実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質、及びA201メンブレンのアレニウス線図を示している。
【0197】
図32から、温度が増加するほど、実験例2-1乃至2-5による固体電解質の伝導率が増加することが分かる。また、実験例2-1乃至実験例2-5による固体電解質の伝導率が、A201メンブレンと比較して、顕著に高いことが確認できる。
【0198】
これに加えて、実験例2-3により、第1の複合繊維及び第2の複合繊維の割合が同一である固体電解質の伝導率が、実験例2-1、実験例2-2、実験例2-4、及び実験例2-5による固体電解質よりも、顕著に高いことが分かる。
【0199】
結果として、第1の複合繊維の割合を、30wt%超え70wt%未満に制御し、第2の複合繊維の割合を、70wt%未満30wt%超えに制御することが、伝導率を向上させる効率的な方法であることが分かる。
【0200】
<実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質の製造>
前記実験例により、ベース複合繊維を製造する一方、キトサン誘導体の添加割合を調節して、キトサン含量が互いに異なるベース複合繊維を製造した。以後、前記実験例1-4により、キトサン含量が互いに異なるベース複合繊維を用いて、固体電解質を製造した。
【0201】
<実験例3-6によるキトサンの準備>
前記実験例3-1乃至3-5に対する比較例として、純粋キトサンを準備した。
【0202】
実験例3-1乃至実験例3-6による固体電解質内のキトサンの含量は、下記表4の通りである。
【0203】
【0204】
図33乃至
図35は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースのXPS分析結果であり、
図36は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースの元素比率を分析したグラフであり、
図37は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースのC1sスペクトラの構成比率を分析した結果を示す図であり、
図38は、本発明の実験例3-1乃至3-5による固体電解質、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースのN1sペクトラの構成比率を分析した結果を示す図である。
【0205】
図33乃至
図38に示しているように、前記実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、及び前記実験例1-5によるキトサンが省略されたバクテリアセルロースに対して、XPS分析を行い、
図36のように、固体電解質内元素の割合を分析し、
図37のように、C1sスペクトラの構成比率を分析し、
図38のように、N1sペクトラの構成比率を分析した。
図33は、C1sスペクトラであり、
図34は、O1sスペクトラであり、
図35は、N1sペクトラである。
【0206】
実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質の場合、キトサンが省略された実験例1-5のバクテリアセルロースと比較して、キトサン及びバクテリアセルロースの結合によって、C-N結合が観られる。
【0207】
また、
図33及び
図37から、キトサンの割合が0から50wt%まで増加するほど、C-Nの割合が増加し、キトサンの割合が50wt%から90wt%まで増加するほど、C-N割合が減少することが分かる。換言すると、キトサンの割合が30wt%超え70wt%未満の場合、固体電解質内のC-N割合が顕著に高いことが確認できる。
【0208】
また、
図35及び
図38から、キトサンが省略された実験例1-5のバクテリアセルロースは、窒素ピークが検出されておらず、キトサンの割合が増加することにつれ、酸化したNの割合は、概略的に増加したが、pyrrolic Nの割合は、キトサンの割合が0から50wt%まで増加するほど増加し、キトサンの割合が50wt%から90wt%まで増加するほど減少することが分かる。言い換えると、キトサンの割合が30wt%超え70wt%未満の場合、固体電解質内のpyrrolic N割合が顕著に高いことが確認できる。
【0209】
また、
図36から、キトサンの割合が増加するほど、窒素の割合が増加し、実験例3-5により、キトサン割合が90wt%の場合、6.63at%の窒素割合を有することが分かる。
【0210】
図39は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、及び実験例1-5によるバクテリアセルロースのXRD分析結果を示す図である。
【0211】
図39に示しているように、前記実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、及び前記実験例1-5によるキトサンが省略されたバクテリアセルロースに対して、XRD分析を行った。
【0212】
図39から、実験例3-6のキトサン自体は、特定のピークが観られず、実験例1-5のバクテリアセルロースと比較して、実験例3-1乃至実験例3-6による固体電解質は、結晶性がやや低いことが分かる。
【0213】
また、キトサンの割合が逐次増加することにつれ、結晶性が減少されて、キトサンのように非晶質相を有することが分かり、特に、実験例3-4により、キトサンの割合が70wt%以上の場合、結晶性が急激に低下することが確認できる。
【0214】
図40は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、実験例1-5によるバクテリアセルロース、及び実験例1-6による一般のバクテリアセルロースの温度によるイオン伝導度を測定した図である。
【0215】
図40に示しているように、実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、実験例1-5によるキトサンが省略されたバクテリアセルロース、及び実験例1-6による一般のバクテリアセルロース対して、イオン伝導度を温度によって測定した。
【0216】
図40から、温度が増加するほど、実験例3-1乃至実験例3-5の固体電解質、実験例3-6のキトサン、実験例1-5のキトサンが省略されたバクテリアセルロース、及び実験例1-6の一般のバクテリアセルロースのイオン伝導度が増加している。また、本発明の実験例1-5によるバクテリアセルロースが、実験例1-6の一般のバクテリアセルロース、及び実験例3-6のキトサンと比較して、高いイオン伝導度を有することが分かり、実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質のイオン伝導度が、実験例1-5のキトサンが省略されたバクテリアセルロース、実験例1-6の一般のバクテリアセルロース、及び実験例3-6のキトサンと比較して、顕著に高いことが分かる。
【0217】
これに加えて、実験例3-3により、50wt%のキトサンを有する固体電解質のイオン伝導度が、実験例3-1、実験例3-2、実験例3-4、及び実験例3-5による固体電解質よりも顕著に高いことが分かる。結果として、固体電解質内におけるキトサンの割合を、30wt%超え70wt%未満に制御することが、OHイオンのイオン伝導度を向上させる効率的な方法であることが分かる。
【0218】
図41は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、実験例1-5によるバクテリアセルロース、及び実験例1-6による一般のバクテリアセルロースの温度による膨潤比を測定した図である。
【0219】
図41に示しているように、前記実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、実験例1-5によるバクテリアセルロース、及び実験例1-6による一般のバクテリアセルロースに対して、膨潤比を温度によって測定した。
【0220】
図41から分かるように、温度が増加するほど、実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6のキトサン、実験例1-5のキトサンが省略されたバクテリアセルロース、及び実験例1-6の一般のバクテリアセルロースの膨潤比が増加した。また、本発明の実験例1-5によるバクテリアセルロースが、実験例1-6の一般のバクテリアセルロース、及び実験例3-6のキトサンはもちろん、実験例3-1、実験例3-2、実験例3-4、及び実験例3-5と比較して、低い膨潤比を有することが分かる。
【0221】
これに加えて、実験例3-3により、50wt%のキトサンを有する固体電解質の膨潤比が、実験例3-1、実験例3-2、実験例3-4、及び実験例3-5による固体電解質はもちろん、本発明の実験例1-5によるバクテリアセルロースよりも顕著に低いことが分かる。結果として、固体電解質内におけるキトサンの割合を、30wt%超え70wt%未満に制御することが、膨潤比を減少させる効率的な方法であることが分かる。
【0222】
図42は、本発明の実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、実験例1-5によるバクテリアセルロース、及び実験例1-6による一般のバクテリアセルロースの温度による水分含浸率を測定した図である。
【0223】
図42に示しているように、前記実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6によるキトサン、実験例1-5によるバクテリアセルロース、及び実験例1-6による一般のバクテリアセルロースに対して、水分含浸率を温度によって測定した。
【0224】
図42から分かるように、温度が増加するほど、実験例3-1乃至実験例3-5による固体電解質、実験例3-6のキトサン、実験例1-5のキトサンが省略されたバクテリアセルロース、実験例1-6の一般のバクテリアセルロースの水分含浸率が増加している。
【0225】
常温範囲で、実験例3-3により、50wt%のキトサンを有する固体電解質の水分含浸率が、実験例3-1、実験例3-2、実験例3-4、及び実験例3-5による固体電解質はもちろん、実験例1-5のキトサンが省略されたバクテリアセルロース、実験例1-6の一般のバクテリアセルロース、及び実験例3-6のキトサンよりも水分含浸率が高いことが分かる。結果として、固体電解質内におけるキトサンの割合を、30wt%超え70wt%未満に制御するのが、水分含浸率を向上させる効率的な方法であることが分かる。
【0226】
図43は、本発明の実験例1-4による固体電解質の電圧を測定した結果を説明するためのグラフである。
【0227】
図43に示しているように、前記実験例1-4による固体電解質を亜鉛電極の間に挿入し、5mAcm
-2、10mAcm
-2、及び20mAcm
-2の電流密度条件で電圧を測定し、同一の条件で、実験例1-4による固体電解質の代わりに、A201メンブレンを亜鉛電極の間に挿入して電圧を測定した。
図43における上段のグラフは、999回及び1000回連続したサイクルで電圧値を示したものであり、
図43の下段の写真は、1000回以後の亜鉛電極を撮影したSEM写真である。
【0228】
図43から、A201メンブレンを用いた場合、約23時間後、動作していないが、本発明の実験例1-4による固体電解質を用いた場合、高電流密度で、1000回まで安定して駆動することが分かる。
【0229】
また、
図43の下段のSEM写真から、長時間高密度の電流が与えられても、デンドライトが生成されず、安定して駆動することが確認できる。
【0230】
図44は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の充放電容量を説明するためのグラフである。
【0231】
図44に示しているように、前記実験例1-4による固体電解質、銅、リン、及び硫黄の化合物構造体正極、及びパターニングされた亜鉛負極を用いて、金属空気電池を製造した。同一の条件で、正極として、銅、リン、及び硫黄の化合物構造体に代えて、商用化されたPt/C及びRuO
2を用いて、金属空気電池(Pt/C)を製造した。
【0232】
銅、リン、及び硫黄の化合物構造体正極は、以下のような方法で製造した。
【0233】
エタノール/エチレンジアミンの懸濁液を3つ準備し、ジチオオキサミド、テトラデシルホスホン酸/イホスファミド、及び塩化銅をそれぞれ、添加し撹拌した。
【0234】
ついで、ジチオオキサミド溶液及びテトラデシルホスホン酸/イホスファミドを、塩化銅溶液に連続して、逐次注入及び撹拌し、水酸化アンモニウムを添加して、2時間の間、撹拌した。
【0235】
生成された銅-ジチオオキサミド-テトラデシルホスホン酸-イホスファミド黒色懸濁液を、120℃で、6時間、還流させ、遠心分離により収集し、脱イオン水及びエタノールを用いて洗浄し、真空で乾燥させた。
【0236】
この後、得られた銅-ジチオオキサミド-テトラデシルホスホン酸-イホスファミド前駆体懸濁液を、Triton X-165を有する脱イオン水、及び亜硫酸水素ナトリウムと氷浴で混合した。反応懸濁液を加圧熱処理(autoclave)し、室温に冷却させた。得られた黒色固体スポンジを、上澄液が中性pHとなるまで、脱イオン水及びエタノールで洗浄した。
【0237】
生成された生成物を2時間の間、-70℃の環境に移し、液体窒素に浸漬させ、真空条件で凍結乾燥して、銅、リン、及び硫黄の化合物構造体正極素材を製造し、正極素材(90wt%)、スーパーPカーボン(5wt%)、及びPTFE(5wt%)を0.5wt%のナフィオン(Nafion)溶液を含むN-メチル-ピロリドンに混合して、スラリーを製造した。スラリーをステンレススチールメッシュにコートし、溶媒を蒸発させた。以後、6cm×1.5cmのサイズに切り出し、真空で乾燥して、正極を製造した。
【0238】
図44から、25mAcm
-2及び50mAcm
-2の条件で、優れた充放電容量を有することが分かり、前記のように製造された銅、リン、及び硫黄の化合物構造体を用いる場合、Pt/C及びRuO
2を用いる場合と比較して、顕著に高い容量を有することが分かる。
【0239】
図45は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の充放電回数による電圧値を測定したグラフである。
【0240】
図45に示しているように、
図44で説明した前記実験例1-4による固体電解質、銅、リン、及び硫黄の化合物構造体正極、及びパターニングされた亜鉛負極を用いた金属空気電池に対して、50mAcm
-2条件、及び25mAcm
-2の条件で、充放電回数による電圧値を測定した。
【0241】
図45から、約600回の充放電回数の間、安定して駆動されることが分かる。すなわち、前述した本発明の実施例により製造される固体電解質が、金属空気電池の固体電解質で安定して用いられることが確認できる。
【0242】
図46は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の外部温度条件による充放電特性の変化を説明するためのグラフである。
【0243】
図46に示しているように、
図44で説明した前記実験例1-4による固体電解質(CBCs)、銅、リン、及び硫黄の化合物構造体正極、及びパターニングされた亜鉛負極を用いた金属空気電池に対して、外部温度を、-20℃から80℃まで変えて、充放電特性変化を測定した。
図46の(b)は、電流密度を25mAcm
-2で測定したものである。
【0244】
図46から、温度が増加することにつれ、電圧値が増加し、低い過電圧を有することが分かる。すなわち、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む二次電池が高温及び低温環境で安定して駆動されることが確認できる。
【0245】
図47は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の低温及び高温環境で充放電回数によるリテンション特性を説明するための図である。
【0246】
図47に示しているように、
図44で説明した前記実験例1-4による固体電解質(CBCs)、銅、リン、及び硫黄の化合物構造体正極、及びパターニングされた亜鉛負極を用いた金属空気電池に対して、外部温度を、-20℃及び80℃に制御し、25mAcm
-2の条件で充放電サイクルを行った。
【0247】
図44から、-20℃の条件で、微細にリテンション特性が低下することが確認されるが、高温及び低温で1500回の充放電が行われた後にも、約94.5%の高いリテンション特性を維持し、安定して駆動することが確認できる。
【0248】
図48は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の外部温度による充放電特性を説明するためのグラフである。
【0249】
図48には、
図44で説明した前記実験例1-4による固体電解質(CBCs)、銅、リン、及び硫黄の化合物構造体正極、及びパターニングされた亜鉛負極を用いた金属空気電池の外部温度を、-20℃、25℃、及び80℃に制御し、25mAcm
-2の条件で充放電電圧を測定し、ナイキスト線図を示している。
【0250】
図48から、低温環境で微細な特性低下が見られだけで、低温、常温、高温でいずれも、安定して動作することが確認できる。
【0251】
図49は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の外部温度による容量特性を説明するためのグラフである。
【0252】
図49に示しているように、前記実験例1-4による固体電解質(CBCs)、銅、リン、及び硫黄の化合物構造体正極、及びパターニングされた亜鉛負極を用いた金属空気電池の外部温度を、-40℃~105℃まで制御し、25mAcm
-2の条件で、容量を測定している。
【0253】
図49から、-20℃~80℃範囲で1Ah以上の高い容量を有することが確認できる。一方、-20℃未満では、固体電解質内にOHイオンの移動度が急激に低下して、容量が急激に低下することが確認でき、80℃超えでは、固体電解質内の溶媒(solvent)の蒸発で容量特性が急激に劣化することが確認できる。具体的に、-40℃では、0.234Ahに大きく減少し、105℃では、0.394Ahに大きく減少している。
【0254】
図50は、本発明の実験例1-4による固体電解質を含む金属空気電池の外部温度による充放電サイクルによる充放電特性変化を説明するためのグラフである。
【0255】
図50に示しているように、
図44で説明した前記実験例1-4による固体電解質(CBCs)、銅、リン、及び硫黄の化合物構造体正極、及びパターニングされた亜鉛負極を用いた金属空気電池の外部温度を、-20℃及び80℃に制御し、25mAcm
-2の条件で200時間の間、1500回の充放電を行った。
図50の(a)は、-20℃の条件で充放電を行った結果であり、
図50の(b)は、80℃で充放電を行った結果である。
【0256】
図50から、-20℃の低温環境で充放電特性が微細に低下されるが、長時間の間、安定して駆動することが分かり、80℃の高温環境でも、長時間の間、安定して駆動することが確認できる。
【0257】
図51は、本発明の実施例による電気自動車のブロック図である。
【0258】
図51に示しているように、本発明の実施例による電気自動車1000は、モータ1010、変速機1020、アクスル1030、バッテリーパック1040、パワー制御部1050、及び充電部1060の少なくとも1つを含む。
【0259】
前記モータ1010は、前記バッテリーパック1040の電気エネルギーを運動エネルギーに変換する。前記モータ1010は、変換された運動エネルギーを、前記変速機1020により、前記アクスル1030に提供する。前記モータ1010は、単一モータ又は複数のモータからなる。例えば、前記モータ1010が複数のモータからなる場合、前記モータ1010は、前輪アクスルに運動エネルギーを供給する前輪モータと、後輪アクスルに運動エネルギーを供給する後輪モータとを含む。
【0260】
前記変速機1020は、前記モータ1010と前記アクスル1030の間に位置して、前記モータ1010からの運動エネルギーを、運転手が所望する運転環境に合うように変速して、前記アクスル1030に提供する。
【0261】
前記バッテリーパック1040は、前記充電部1060からの電気エネルギーを貯蔵し、貯蔵された電気エネルギーを、前記モータ1010に提供する。前記バッテリーパック1040は、前記モータ1010へ直接電気エネルギーを供給することもでき、前記パワー制御部1050を介して、電気エネルギーを供給することができる。
【0262】
ここで、前記バッテリーパック1040は、少なくとも1つのバッテリーセルを含む。また、バッテリーセルは、前述した本発明の実施例による固体電解質を含む金属空気二次電池を含むが、これに限定されるものではなく、様々な方式の二次電池を含むことができる。一方、バッテリーセルは、個々のバッテリーを称する用語であり、バッテリーパックは、所望する電圧及び/又は容量を有するように、個々のバッテリーセルが相互連結されたバッテリーセル集合体を称する。
【0263】
前記パワー制御部1050は、前記バッテリーパック1040を制御する。言い換えると、前記パワー制御部1050は、前記バッテリーパック1040から前記モータ1010へのパワーが求められる電圧、電流、波形などを有するように制御することができる。このために、前記パワー制御部1050は、受動電力素子及び能動電力素子の少なくとも1つを含む。
【0264】
前記充電部1060は、
図43における外部電力源1070から電力を提供されて、前記バッテリーパック1040に提供する。前記充電部1060は、充電状態を全般的に制御する。例えば、前記充電部1060は、充電のオン・オフ及び充電速度などを制御することができる。
【0265】
以上、本発明を好適な実施例を用いて、詳しく説明したが、本発明の範囲は、特定の実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲により解析されるべきである。また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の範囲から逸脱しないながらも、多くの修正と変形が可能であることを理解するだろう。
【産業上の利用可能性】
【0266】
本発明の実施例による固体電解質は、二次電池、エネルギー貯蔵素子、電気自動車用バッテリー、水電解セル、及び燃料電池のような電気化学素子などの様々な産業分野に利用可能である。