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  • 特許-鋼管杭 図1
  • 特許-鋼管杭 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】鋼管杭
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/48 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
E02D5/48
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023139367
(22)【出願日】2023-08-29
【審査請求日】2023-09-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115360
【氏名又は名称】ヨシモトポール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲橋▼ 一矩
(72)【発明者】
【氏名】小杉 達郎
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6589677(JP,B2)
【文献】特開2008-025156(JP,A)
【文献】特開2023-076227(JP,A)
【文献】特開平04-179754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22-5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に打ち込まれる先端側であって、他の杭と接合される管状の小径部と、
前記先端側と反対の後端側であって、建築構造物の直下に配置される管状の大径部と、
前記大径部から前記小径部に向かって外径が縮径する管状のテーパ部と、を有し、
前記テーパ部は、テーパ比が0.2より大きく、
前記小径部は、長さが50~250mmであり、
前記大径部は、長さが1330mm~6000mmであり、
前記大径部の長さをL1、前記小径部及び前記テーパ部の長さをL2とすると、2≦L1/L2≦11であり、
前記小径部の板厚は、前記大径部の板厚より厚く、
前記小径部と前記大径部と前記テーパ部とが継ぎ目のない中空の一部品である、
ことを特徴とする鋼管杭。
【請求項2】
前記大径部の直径をD1、前記小径部の直径をD2とすると、縮径率((D1-D2)/D1)は、0.2~0.4であることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭。
【請求項3】
前記小径部の外径D2は、前記大径部の外径D1よりも40mm以上小さいことを特徴とする請求項に記載の鋼管杭。
【請求項4】
全長が3000~7000mmである請求項1又は2に記載の鋼管杭。
【請求項5】
前記小径部及び前記テーパ部は、プレス加工されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物を安定して支持するために地盤に打ち込まれる鋼管杭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の支持層となる固い地盤が深い場合、運搬可能な長さの杭を連結しながら打ち込む必要がある。固い地盤に到達する部分となる杭の先端は、杭径が細い方が打ち込む際の貫入性(掘削性能)がよくなるため好ましい。一方、地盤が比較的軟らかい浅い部分では、地震等による水平力によって杭にかかる荷重を考慮すると杭径が太い方が強度が高くなるため好ましい。そこで、大径の杭材と小径の杭材とを連結する異径鋼管杭が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-25156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の異径鋼管杭は大径の杭と小径の杭とを接合するためのものであり、基礎杭全体として少なくとも3種類の部品が必要となる。また、異径鋼管杭の上部及び下部において他の杭材と結合する必要があり作業が煩雑となる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、地盤に打ち込まれる基礎杭として掘削性能と耐荷重を両立し得る新たな鋼管杭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の鋼管杭は、地盤に打ち込まれる先端側の小径部と、先端側と反対の後端側の大径部と、大径部から小径部に向かって外径が縮径するテーパ部と、を有する。テーパ部は、テーパ比が0.2より大きい。
【0007】
この態様によると、地盤の浅い部分で水平力を受ける大径部を太くして耐荷重を増しつつ、地盤に打ち込まれる側の小径部を細くすることで掘削性能を向上できる。
【0008】
小径部は、長さが50~250mmであってもよい。これにより、大径部と直径が同じストレートな鋼管の端部の短い領域を加工するだけで小径部を形成できる。
【0009】
大径部の直径をD1、小径部の直径をD2とすると、縮径率((D1-D2)/D1)は、0.2~0.4であってもよい。これにより、より太い大径部からより細い小径部を形成できる。
【0010】
小径部の外径D2は、大径部の外径D1よりも40mm以上小さい。これにより、より太い大径部とより細い小径部を有する鋼管杭を実現できる。
【0011】
全長が3000~6000mmであってもよい。これにより、可搬性を満たしつつ水平力を受ける大径部を長くできる。
【0012】
小径部及びテーパ部は、プレス加工されていてもよい。これにより、地盤に打ち込まれる杭が結合される小径部とテーパ部とを1つの工程で形成できる。
【0013】
大径部の長さをL1、小径部及びテーパ部の長さをL2とすると、2≦L1/L2≦11であってもよい。これにより、十分な長さの大径部を有する鋼管杭を実現できる。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、掘削性能と耐荷重を両立し得る新たな鋼管杭を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態に係る基礎杭の概略構成を示す正面図である。
図2】本実施の形態に係る鋼管杭の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。本実施の形態に係る鋼管杭は、地盤の支持層に打ち込まれることで構造物を安定して支持する基礎杭として利用できる。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る基礎杭の概略構成を示す正面図である。図1に示す建築構造物10を建設する場合、耐震や建物の傾き防止のために地盤面Hより下部に基礎杭12を打ち込む場合がある。基礎杭12は、支持地盤となる固い地盤14まで掘削が可能なオーガスクリュー16が先端に設けられている。一般的に固い地盤14の上部には軟らかい地盤18が広がっており、ここを掘削する際には掘削抵抗の観点から杭は小径の方が好ましい。一方、軟らかい地盤18の上部は、地震発生時に大きな水平力が発生するため、基礎杭12の上部は水平力に対して曲がらない程度の強度(耐荷重)が必要である。
【0019】
そこで、本実施の形態に係る基礎杭12は、オーガスクリュー16によって深いところまで掘り進めるための小径杭20と、建築構造物10の直下で水平力に耐えるだけの強度を有する鋼管杭22とを有する。
【0020】
図2は、本実施の形態に係る鋼管杭の断面図である。本実施の形態に係る鋼管杭22は、地盤に打ち込まれる先端側の小径部22aと、先端側と反対の後端側の大径部22bと、大径部22bから小径部22aに向かって外径が縮径するテーパ部22cと、を有する。
【0021】
本実施の形態に係る鋼管杭22は、全長Lが3000~7000mmである。全長Lの最大値は、製造設備の大きさや製造場所から設置場所までの可搬性、製品特性(水平力を受ける部分の長さ)を考慮した値である。全長Lの最小値は、製造上の制約や、地盤の浅い部分で水平力に対する所望の耐荷重を実現するために必要な長さを考慮した値である。全長Lは、好ましくは3000~6000mm、より好ましくは3500~5000mmである。
【0022】
大径部22bの長さL1は、1330~6000mmである。長さL1の最大値は、鋼管杭22の全長の範囲で水平力を受ける部分をより長くできる値である。長さL1の最小値は、水平力を受ける部分が所望の耐荷重を得るために必要な値である。長さL1は、好ましくは3000~4000mmである。
【0023】
小径部22aからテーパ部22cまでの長さL2は、500~2529mmである。長さL2の最大値や最小値は、外径が一定の管の一部をプレス加工することで小径部を製造できる装置の性能を考慮した値である。
【0024】
大径部22bの外径D1は、165.2~558.8mmである。外径D1の最大値は、外径が一定の管の一部をプレス加工することで小径部を製造できる装置の性能を考慮した値である。外径D1の最小値は、それ以上小さいと十分な耐荷重の鋼管杭が得られず、異径鋼管杭として利用するメリットが小さい値である。外径D1は、好ましくは300~450mmである。
【0025】
小径部22aの外径D2は、114.3~406.4mmである。外径D2の最大値は、小径部22aに接合される先端側の他の杭を考慮すれば、掘削性能を妨げない範囲であまり大きくする必要はない。一方、外径D2の最小値は、地盤を掘削して掘り進める際に必要な強度や、製造装置の性能を考慮した値である。外径D2は、好ましくは250~350mmである。
【0026】
大径部22bの板厚T1は、5.0~19.0mmである。板厚T1の最大値は、装置によるプレス加工が可能な値であり、大きすぎると加工が困難となる。一方、板厚T1の最小値は、加工によって鋼管が割れたりしない範囲の値である。板厚T1は、好ましくは10~15mmである。
【0027】
テーパ部22cの板厚T3や小径部22aの板厚T2は、T2,T3≧T1である。テーパ部22cや小径部22aをプレス加工で形成すると、板厚T2,T3は大径部22bの板厚T1より厚くなる。板厚T2,T3は、好ましくは13~18mmである。
【0028】
本実施の形態に係る鋼管杭22の小径部22a及びテーパ部22cは、型を用いたプレス加工で形成されている。これにより、地盤に打ち込まれる杭が結合される小径部22aとテーパ部22cとを1つの工程で形成できる。
【0029】
[実施例]
前述の各諸元の範囲の鋼管杭として、具体的に実施例1乃至3の鋼管杭を作製した。各諸元の値を表1に示す。
【表1】
【0030】
また、小径部22aの長さL3、テーパ部22cの長さL2’(L2-L3)の値を表2に示す。
【表2】
【0031】
表2に示すように、各実施例に係る鋼管杭22は、テーパ比((D1-D2)/L2’)が0.2より大きい。地盤の浅い部分で水平力を受ける大径部を太くして耐荷重を増しつつ、地盤に打ち込まれる側の小径部を細くすることで掘削性能を向上できる。また、小径部が細くなることで製造コストや材料コストを低減できる。
【0032】
また、各実施例に係る鋼管杭22の小径部22aは、長さL3が50~250mmである。これにより、大径部22bと直径が同じストレートな鋼管の端部の短い領域を加工するだけで小径部22aを形成できる。小径部22aの長さL3は、好ましくは50~150mmである。
【0033】
また、各実施例に係る鋼管杭22は、表2に示すように、縮径率((D1-D2)/D1)が、0.2~0.4である。これにより、より太い大径部22bからより細い小径部22aを形成できる。具体的には、各実施例に係る小径部22aの外径D2は、大径部22bの外径D1よりも40mm以上小さい。より好ましくは、外径D2が外径D1よりも50.8mm以上小さいとよい。これにより、より太い大径部22bとより細い小径部22aを有する鋼管杭22を実現できる。
【0034】
また、各実施例に係る鋼管杭22は、表2に示すように、大径部22bの長さをL1、小径部22a及びテーパ部22cの長さをL2とすると、2≦L1/L2≦11である。より好ましくは、6≦L1/L2≦11である。これにより、十分な長さの大径部22bを有する鋼管杭22を実現できる。
【0035】
本実施の形態に係る鋼管杭22の材質は、強度やコスト、加工性を考慮して適宜選択される。
【0036】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0037】
10 建築構造物、 12 基礎杭、 14 固い地盤、 16 オーガスクリュー、 18 軟らかい地盤、 20 小径杭、 22 鋼管杭、 22a 小径部、 22b 大径部、 22c テーパ部。
【要約】
【課題】掘削性能と耐荷重を両立し得る新たな鋼管杭を提供する。
【解決手段】鋼管杭22は、地盤に打ち込まれる先端側の小径部22aと、先端側と反対の後端側の大径部22bと、大径部から小径部に向かって外径が縮径するテーパ部22cと、を有する。テーパ部22cは、テーパ比が0.2より大きい。
【選択図】図2
図1
図2