(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】微細気泡発生装置
(51)【国際特許分類】
B01F 23/2373 20220101AFI20240306BHJP
B01F 25/312 20220101ALI20240306BHJP
B01F 23/2326 20220101ALI20240306BHJP
C02F 1/68 20230101ALI20240306BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20240306BHJP
A47K 3/28 20060101ALI20240306BHJP
E03C 1/084 20060101ALI20240306BHJP
D06F 39/08 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B01F23/2373
B01F25/312
B01F23/2326
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 530C
B01F35/71
A47K3/28
E03C1/084
D06F39/08 301Z
(21)【出願番号】P 2023514434
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2023000549
【審査請求日】2023-03-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523070908
【氏名又は名称】有限会社岡本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100127166
【氏名又は名称】本間 政憲
(74)【代理人】
【識別番号】100187399
【氏名又は名称】上西 敏文
(72)【発明者】
【氏名】岡本 譲
(72)【発明者】
【氏名】岡本 雄大
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-116554(JP,A)
【文献】特開2019-147086(JP,A)
【文献】特開2003-126665(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115977594(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00 - 25/90
B01F 35/00 - 35/95
B01B 1/00 - 1/08
B01D 1/00 - 8/00
C02F 1/68
A47K 3/28
E03C 1/084
D06F 39/08
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体送入路と、
微細気泡発生部と、
液体送出路と、
気体流入路と、
気体分配部と、
を備え、
前記微細気泡発生部が、
液体流路縮小部と、
気液混合部と、
を備え、
該気液混合部が、
階段状に流路径が拡大する階段流路に形成され、
各々の前記階段流路において壁面に気体導入口が備えられ、
前記
液体送入路から前記液体流路縮小部に流入した水流が、縮径された流路により流速が増大し、水中に溶存した空気が気泡化し、
前記水流で生じる負圧によって前記気体導入口から吸引された空気の気泡化が促進され、
前記階段流路の段差後ろ側で生じる乱水流によって、前記気泡が分裂し細分化され、
前記気液混合部の拡径が前記水流を低速にし水圧を高め、前記気泡の内破を発生させ該気泡の微細化が促進されること、
を特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記気体分配部が、
前記液体流路縮小部と前記階段流路との間において、前記気液混合部の外側に配置された気体一時貯蔵部と、
該気体一時貯蔵部から各々の前記気体導入口に対応して最短距離に設けられた気体導入路と、
を備えたこと、
を特徴とする請求項1に記載する微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記気体一時貯蔵部が、
前記気液混合部の外周を囲んで配置され、
前記気体混合部が、
前記階段流路壁面周方向の等間隔に前記気体導入口を複数配置したこと、
前記気体導入路が、
前記気体一時貯蔵部から各々の前記気体導入口に対応して最短距離に設けられたこと、
を特徴とする請求項2に記載する微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記気体流入路が、
逆止弁を備えていること、
を特徴とする請求項1に記載する微細気泡発生装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載する微細気泡発生装置を備えたこと、
を特徴とするシャワーヘッド。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載する微細気泡発生装置を備えたこと、
を特徴とする洗濯機。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載する微細気泡発生装置を備えたこと、
を特徴とする水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に洗浄に使用される微細気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
「ファインバブル」は、気泡の大きさにより「マイクロバブル」と「ウルトラファインバブル」に大別される。ISO20480-1では、直径が100μm未満の気泡を総称して「ファインバブル」と定義され、さらに詳細に100μm未満1μm以上の気泡を「マイクロバブル」、直径1μm未満の気泡を「ウルトラファインバブル」と呼ぶように定義されている。
【0003】
気泡を形成する気体は、空気、酸素、窒素、又はオゾンなど用途によって様々な気体が選択して使用される。気泡が含まれる液体は、主として水が使用される。使用する気体又は液体によってバブルの発生装置の材質及び流路の断面積を変更する必要がある。以下では、気体を空気、液体を水の組み合わせを例示して説明を行う。
【0004】
「マイクロバブル」は、肉眼でも確認することができ、「マイクロバブル」が多く含まれる水は、白濁して見える。「マイクロバブル」は、時間経過とともにゆっくりと水中を浮上して行き、水は時間を掛けて透明になっていく。
【0005】
一方、「ウルトラファインバブル」は、さらに気泡が小さいため、肉眼では確認することができず、「ウルトラファインバブル」が多く含まれる水は、透明である。また、「ウルトラファインバブル」は、微粒子の特徴的な性質であるブラウン運動を行うため、水中から浮上することが少なく長期間留まることができる。
【0006】
「マイクロバブル」の生成方法は、気泡を液体の強い流れによってせん断する方法、気体を含む液体に急激な圧力変化を与えて気泡を粉砕する方法、気体を含む液体に急激な温度変化を加えて気泡を析出させる方法がある。しかし、これらに限らず多くの「マイクロバブル」の生成方法が存在する。「マイクロバブル」を生成させた際には、「ウルトラファインバブル」も混在する場合が多い。
【0007】
「ウルトラファインバブル」を多量に得るための方法は、気泡を粉砕して「マイクロバブル」と「ウルトラファインバブル」とを発生させた後、「マイクロバブル」のみを浮上させて「ウルトラファインバブル」を残留させる方法、界面活性剤によって、気液の界面張力を低下させた後に微細孔を通過させる方法がある。しかし、これらに限らず他の「ウルトラファインバブル」の生成方法が存在する。
【0008】
上記のように、「マイクロバブル」と「ウルトラファインバブル」とは、生成方法が異なる。
【0009】
「ファインバブル」は、共通の性質である界面活性作用をはじめとして、「マイクロバブル」、「ウルトラファインバブル」の各々が、多くの有用な性質を有している。
【0010】
「マイクロバブル」は、ガス溶解促進作用、衝撃作用、及び反応促進作用を有し、多くは洗浄に活用される。
【0011】
「ウルトラファインバブル」は、ガス封入作用、生理活性作用、及び高洗浄性などを有し、精密部品の洗浄に加え、農水産業における成長促進などにも活用される。
【0012】
一般生活分野においては、比較的容易に生成できる「マイクロバブル」がシャワーなどの美容や洗濯、食器などの洗浄に活用されている。
【0013】
簡易にバブルを発生させる装置としては、以下の先行技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許第5556220号公報
【文献】特許第5790139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1では、シャワー装置において、給水部と、通過する水を下流側に噴射するための絞り部と、絞り部を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成す空気混入部と、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が形成されている散水部とを備え、空気混入部には開口が形成されているので、噴射水仮想直線に沿って噴射された水が気液界面から溜まった水に対して突入し、空気混入部に存在する空気を巻き込んで気泡混入水として散水孔から吐出するシャワー装置が開示されている。大きく開いた開口から空気が取り込まれるため、生成される気泡の量は多くなるが、気泡の生成は、開口から負圧で取り入れた空気を、複数の水流同士が及ぼす影響によって水流に混入させ、溜まった水に突入させて気泡に引きちぎるのみであるため、微細な気泡を生成することが難しい課題があった。
【0016】
特許文献2では、噴出ノズルの下流端に設けられた噴出水流が噴出されるオリフィスを、上流側の第1オリフィス部と、この第1オリフィス部よりも断面積が大きい下流側の第2オリフィス部とにより構成し、第2オリフィス部を、第1オリフィス部の下流端に少なくとも周方向一部に断面積を拡大する段差部を有して連設し、吸気孔が段差部を跨ぐように開口形成されてこの段差部の背面に生じる負圧を利用して吸気孔から空気を取り入れオリフィスを通過する比較的低速の水流に気泡を吸引するように構成する気泡発生装置が開示されている。いったん断面積が縮小した第1オリフィスから断面積が大きい第2オリフィスに水流が移動した際に吸気孔から空気を取り入れ水流に混入させて気泡を生成するので気泡の発生量は多いが、比較的低速の水流を用いているので、さほど圧力が上がらないため気泡の内破が行われず、微細な気泡を得ることが難しい課題があった。
【0017】
また、上記の先行技術では、大きな気泡は多量に発生するが、マイクロバブルの発生量が多くないため、高い洗浄力が期待できない問題があった。また、大きな気泡は瞬時に浮上し消滅してしまい、マイクロバブルも水中における残存時間は短く、マイクロバブルの発生量が少ないと、短時間でマイクロバブルの大半の量が消滅するため、容器にマイクロバブルを含有する水を溜めて行う洗浄には適していない問題もあった。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で多量のマイクロバブルを含有するファインバブルを得ることができる微細気泡発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の微細気泡発生装置は、液体送入路と、微細気泡発生部と、液体送出路と、気体流入路と、気体分配部と、を備え、前記微細気泡発生部が、液体流路縮小部と、気液混合部と、を備え、該気液混合部が、階段状に流路径が拡大する階段流路に形成され、各々の前記階段流路において壁面に気体導入口が備えられ、前記液体送入路から前記液体流路縮小部に流入した水流が、縮径された流路により流速が増大し、水中に溶存した空気が気泡化し、前記水流で生じる負圧によって前記気体導入口から吸引された空気の気泡化が促進され、前記階段流路の段差後ろ側で生じる乱水流によって、前記気泡が分裂し細分化され、前記気液混合部の拡径が前記水流を低速にし水圧を高め、前記気泡の内破を発生させ該気泡の微細化が促進されること、を特徴とする。
【0021】
また、本発明の微細気泡発生装置は、前記気体分配部が、前記液体流路縮小部と前記階段流路との間において、前記気液混合部の外側に配置された気体一時貯蔵部と、該気体一時貯蔵部から各々の前記気体導入口に対応して最短距離に設けられた気体導入路と、を備えたこと、を特徴とする。
【0022】
また、本発明の微細気泡発生装置は、前記気体一時貯蔵部が、前記気液混合部の外周を囲んで配置され、前記気体混合部が、前記階段流路壁面周方向の等間隔に前記気体導入口を複数配置したこと、前記気体導入路が、前記気体一時貯蔵部から各々の前記気体導入口に対応して最短距離に設けられたこと、を特徴とする。
【0023】
また、本発明の微細気泡発生装置は、前記気体流入路が、逆止弁を備えていること、を特徴とする。
【0024】
本発明のシャワーヘッドは、請求項1又は請求項2に記載する微細気泡発生装置を備えたこと、を特徴とする。
【0025】
本発明の洗濯機は、請求項1又は請求項2に記載する微細気泡発生装置を備えたこと、を特徴とする。
【0026】
本発明の水栓は、請求項1又は請求項2に記載する微細気泡発生装置を備えたこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明による微細気泡発生装置によれば、水流に含まれた空気に加えて、外部の空気を気液混合部の階段状に形成された部分の各々に負圧で吸引させることで、第1階段流路では、キャビテーションが生じ気泡が生成される。第2階段流路では、新たに取り込まれた空気がキャビテーションにより気泡となり、階段段差後ろ側の乱水流が生じている箇所においては、気泡がぶつかり合って小さな気泡に分裂する。第3階段流路では、さらに取り込まれた空気により生じた気泡がぶつかり合って細分化するとともに、水流の速度が遅くなることにより、圧力が高まり気泡の内破が発生し、気泡が微細化されて、多量のマイクロバブルを含むファインバブルが発生する効果を奏する。また、機械装置に必要なメンテナンス作業も必要としない。
【0028】
本発明による微細気泡発生装置によれば、気体分配部に気体一時貯蔵部を備えるため、水流に空気を間断なく供給することができる。
【0029】
本発明による微細気泡発生装置によれば、気液混合部に各々の階段流路側壁周方向の複数の気体導入口から空気を流入させることにより、気泡の発生量を増加させることができるとともに、水中に気泡が散乱し密度が均一になる効果を得られる。
【0030】
本発明による微細気泡発生装置によれば、空気は、水流によって生じる負圧で流路に吸引させるが、気体流入路に逆止弁を設けることによって、水圧の変化に伴って、気体流入路に水流が逆流することを防止する効果を奏する。
【0031】
また、本発明による微細気泡発生装置を備えたシャワーヘッドによれば、多量のファインバブルが皮膚の汚れを吸着して取り除くことができるので、洗浄力が向上する。さらに、ファインバブルを含む水を皮膚に当てることによる保温効果を得ることができる。
【0032】
また、本発明による微細気泡発生装置を備えた洗濯機によれば、ファインバブルを多量に含む水を洗濯槽に溜めて洗濯を行うことにより、洗濯物の汚れをファインバブルが吸着して取り除くことができるので、洗濯能力が向上する。それに伴い、洗剤の使用量を減少させることができるので環境保全に資することになる。
【0033】
また、本発明による微細気泡発生装置を備えた水栓によれば、ファインバブルを多量に含む水を使用して食器を洗浄することにより、食器の汚れをファインバブルが吸着して取り除くことができるので、洗浄力が向上する。それに伴い、洗剤の使用量を減少させることができ、環境保全に資することになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る微細気泡発生装置1の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る微細気泡発生装置1の構造を示す図である。
【
図3】本発明に係る微細気泡発生装置1の流路断面図である。
【
図4】本発明に係る微細気泡発生装置1のファインバブル発生イメージを示す図である。
【
図5A】気体を気液混合部24に導入する気体分配部50の拡大図である。
【
図5B】本発明に係る微細気泡発生装置1において、気液混合部24外周を囲んで気体一時貯蔵部52を配置した構造を示す
図3におけるA-A断面図である。
【
図6A】本発明に係る微細気泡発生装置1を用いて発生させたファインバブルの状態写真である。
【
図6B】本発明に係る微細気泡発生装置1と同じ気液混合流路を構成して、気体導入口248を第1階段流路242の1箇所に限定して発生させたファインバブルの状態写真である。
【
図7A】本発明に係る微細気泡発生装置1において、気体導入口248を周方向に複数配置した実施例を示す側面断面図である。
【
図7B】本発明に係る微細気泡発生装置1において、気体導入口248を周方向に複数配置した実施例を示す
図7AにおけるB-B断面図である。
【
図8】本発明に係る微細気泡発生装置1の気体流入路40に逆止弁44を備えた実施例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に係る微細気泡発生装置1を実施するための形態について、図を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る微細気泡発生装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、本発明に係る微細気泡発生装置1の構造を示す図である。
図3は、本発明に係る微細気泡発生装置1の流路断面図である。
【0036】
本発明に係る微細気泡発生装置1の外観は、シャワーや洗濯機、水道などの水路の途中に容易に挿入することができるように流路管の円柱に近い形状に設計される。微細気泡発生装置1には、液体送入口12、液体送出口32及び気体流入口42を備える。液体(以下、水を例示する)は、液体送入口12から液体送出口32に向かって流れ、水路途中で、気体流入口42から取り込まれた気体(以下、空気を例示する)を混合してファイバブル化された状態で送出される。
【0037】
本発明に係る微細気泡発生装置1の構造は、液体送入路10、微細気泡発生部20、液体送出路30、気体流入路40、及び気体分配部50を備え、微細気泡発生部20において複数の気体導入口248を備える。
【0038】
液体送入路10は、液体送入口12から導入された水を微細気泡発生部20に送り込む。
【0039】
微細気泡発生部20は、液体流路縮小部22、気液混合部24、及び気体導入口248から構成され、水中に空気のファインバブルを生成する。液体送入路10に接続された液体流路縮小部22は、テーパ状に縮径される。液体流路縮小部22の後段である気液混合部24では、液体送出路30に向かって徐々に拡径される。ここでは、液体流路縮小部22におけるテーパの長さより長い距離の間で徐々に拡径させた形状のペンチュリ管を構成する。
【0040】
気液混合部24においては、複数の階段を形成して徐々に拡径させる。
図2及び
図3では、2箇所の段差を設け、第1階段流路242から、第2階段流路244、第3階段流路246に向かって3種類の直径を有する流路が形成される。例えば、シャワーヘッドに使用される微細気泡発生装置1では、第1階段流路242を3.8mm、第2階段流路244を4.5mm、第3階段流路246を5.5mmに構成した。
【0041】
気液混合部24の後段は、液体送出路30に接続され、ファインバブルを含んだ水が液体送出口32から送出される。
【0042】
本発明に係る微細気泡発生装置1では、空気をペンチュリ管の流路途中で混合して多量のファインバブルを発生させて水に含有するために、気体流入路40及び気体分配部50を備える。これにより、空気を含んだ水流に外部から取り込んだ空気を混合して多量に生成させた気泡を微細化してファインバブルを生成する微細気泡発生装置1を得ることができる。
【0043】
気体流入路40は、気体流入口42から気体分配部50へと接続するための流路である。気体流入路40と気体分配部50との流路の接続は、バルブクッション43を介して行われる。バルブクッション43は、中心空間部432と外周空間部434と連通する貫通穴436が直径方向に二箇所設けられた流路接続のためのジョイントである。
図3では、貫通穴436は、気体流入路40から気体分配部50への気流をスムーズにするために気体分配部50の方向に向けて配置した。
【0044】
気体分配部50は、気体一時貯蔵部52及び気体導入路54から構成される。気体導入路54は、気体一時貯蔵部52から気液混合部24の第1階段流路242、第2階段流路244及び第3階段流路246の側壁面に備えられた複数の気体導入口248を介して空気の供給を行う機能を備える。気体一時貯蔵部52は、複数の気体導入路54において空気が欠乏することなく配分できるように設けた空間である。気体導入路54は、気体一時貯蔵部52から気体導入口248に向かい最短距離で連通される。気体導入口248は、気液混合部24に生じる負圧を効率よく利用するために小径に設けられる。例えば、シャワーに使用される微細気泡発生装置1では1mmに構成した。気体導入路54は、気体導入口248に十分な空気を供給できるように気体導入口248より大きな径に設定されることが好ましい。本発明を実施するための形態では、気体導入路54は、スムーズな気流が生じるように流路途中から気体導入口248に向かって縮径するテーパ形状とした。
【0045】
気液混合部24を流れる水流によって生じる負圧で、気体流入口42から空気が吸引され気体流入路40及び気体分配部50を介して気液混合部24に導入される。
【0046】
図4は、本発明に係る微細気泡発生装置1のファインバブル発生イメージを示した図である。液体流入路から流入する水には元々多少の空気が含まれ、水中に溶存しているか、気泡の状態で存在しているが、気泡は、通常はマイクロバブルより大きいので、容器に溜めた際には、直ちに浮上して消滅する。液体送入路10から液体流路縮小部22に流入した水流は、流路が縮径されることにより、流速が増大していく。その際に、水中に溶存した空気はキャビテーションにより気泡化して顕在化し始める(
図4中aゾーン前半)。
【0047】
第1階段流路242に到達した気泡を含む水流は、高速化した流速により負圧が生じる。その際、側壁面に配置された気体導入口248から空気を吸引する。吸引された空気は負圧であることから、キャビテーションによる気泡化が促進され多量の気泡が発生する(
図4中aゾーン後半)。
【0048】
第2階段流路244では、新たに取り込まれた空気が、第1階段流路242と同様にキャビテーションにより多量の気泡となって水中に混合される。さらに、階段の段差後ろ側では、矢印で示したように乱水流が生じ気泡がぶつかり合って、気泡が分裂して細分化する(
図4中bゾーン)。
【0049】
第3階段流路246では、さらに取り込まれた空気と水流に含まれる気泡とがぶつかり合って気泡化が促進されるとともに、階段の段差後ろ側の乱水流箇所でも気泡がぶつかり合って、気泡が分裂して細分化する。また、第3階段流路246においては、気液混合部24が拡径することによって、水流が低速に移行していき水圧が高まるので、気泡の内破が発生し、気泡の微細化を促進し、多量のファインバブルを水中に存在させることができる(
図4中cゾーン)。
【0050】
本発明を実施するための形態では、階段流路の段数を2段としたが、これに限定するものではなく、さらに多くの段数を備えてもよい。また、段数に応じて気体導入口248を増加させてもよい。
【0051】
本発明に係る微細気泡発生装置1では、第3階段流路246の後段にメッシュ34を備え、第3階段流路246の水圧を高めるとともに、残存した大きな気泡を粉砕してファインバブル化する構造としている。用途によって、有用な気泡の大きさが異なるため、メッシュ34は、用途に応じて交換することが好ましい。本発明を実施するための形態では、特に微細なマイクロバブルを生成するために、メッシュ34は、水流の上流から100番(目開き0.1mm)を1枚、400番(目開き0.03mm)を2枚重ね、300番(目開き0.04mm)を2枚重ねにして、合計5枚を配設した。
【0052】
試験機関において、本発明に係る微細気泡発生装置1を用いて水中に発生させた空気の気泡の直径及び数量を計測したところ、10μm~20μmの気泡が80%、30μm近傍の気泡が20%の割合で含まれている結果となり、ISO20480-1で定義される「マイクロバブル」(100μm未満1μm以上)の中でも、微細な気泡が得られていることが判明した。また、気泡発生状況を撮影した画像を処理することによって、10cc当たり約10,000個の気泡が発生しているとの結果を得られた。水道の水栓に換算すると、約300,000個/毎秒の気泡を含む水が放出されていることになる。
【0053】
さらに、メッシュ34の目開きが細かい600番(目開き0.01mm)に交換することにより直径5μmの気泡を生成することが可能となる。1μm未満のウルトラファインバブルを生成させるためには、「背景技術」において説明したように、マイクロバブルを発生させる場合と比較して大掛かりな装置が必要となるが、本発明に係る微細気泡発生装置1では、非常に簡便な装置構成によって、ウルトラファインバブルに近い大きさの気泡を生成することができる。
【0054】
図5Aは、気体を気液分配部に導入する気体分配部50の拡大図である。気体分配部50では、前述したように、気体一時貯蔵部52を設けた。気液混合部24に複数設けた気体導入口248に間断なく空気を供給するためには、気体導入路54を分岐しただけでは一番手前に配置された気体導入路54から大半の空気が吸引されてしまい、その後段の気体導入路54は真空に近い状態となり、水流が流れ込むか、空気が存在しない状態となる。そのため、本発明に係る微細気泡発生装置1では、気液混合部24の外周を囲むように気体一時貯蔵部52を配置して、各々の気体導入路54に供給できるだけの十分な空気を貯蔵できる構造とした(
図5B参照)。
【0055】
従来の特許文献1又は特許文献2の気泡発生装置では、空気の供給は1箇所から行われるため、本発明に係る微細気泡発生装置1のように多くの気泡を水中に含むことはできない課題があった。本発明に係る微細気泡発生装置1において、空気の供給箇所が3箇所の場合と、1箇所の場合において、気泡発生量の違いについて実験を行った。
図6Aは、本発明に係る微細気泡発生装置1を用いて発生させたファインバブルの状態写真である。
図6Bは、本発明に係る微細気泡発生装置1と同じ気液混合部24を構成して、気体導入口248を第1階段流路242の1箇所に限定して発生させたファインバブルの状態写真である。容器底の裏側から光を照射して両者を比較すると、本発明に係る微細気泡発生装置1を用いて発生させたファインバブルを含む水を溜めた容器(
図6A)の底部では白く光っている部分の範囲が拡がって明るいことが視認できる。一方で、本発明に係る微細気泡発生装置1と同じ気液混合部24を構成して、気体導入口248を第1階段流路242の1箇所に限定して発生させた気泡を含む水を溜めた容器(
図6B)の底部では、白く光っている部分の範囲は
図6Aと比較すると狭く、暗くなっている。これは、本発明に係る微細気泡発生装置1(
図6A)を通過させた水では、マイクロバブルを多く含むため、光の乱反射量が増大することによるものであり、気体導入口248を複数備えることによりマイクロバブルの発生量が増大する結果が示された。
【実施例1】
【0056】
図7Aは、本発明に係る微細気泡発生装置1において、気体導入口248を周方向に複数配置した実施例を示す側面断面図である。
図7Bは、本発明に係る微細気泡発生装置1において、気体導入口248を周方向に複数配置した実施例を示す
図7AにおけるB-B断面図である。各階段流路に対して、側壁面の1箇所から空気を供給する場合には、発生する気泡は、気体導入口248側に偏ることになり、対面側の壁面近くは気泡が少なくなる。そのため、気体導入口248を周方向に複数備えることにより、階段流路内で気泡の密度を均一に近づけることができる。気体導入口248は、対面の2箇所備えることが好ましい。さらに、気体導入口248は、90度ごとの4箇所備える方がなお好ましい。気体導入口248を複数備える場合には、気体導入口248を1箇所備える場合と比較して、口径を小さくすることが好ましい。単位体積当たりの水中に含むことができる空気量は限界があるため、多量に空気を供給することは必要がなく、口径を小さくして気泡を効率よく発生させることが優先されるためである。
【実施例2】
【0057】
図8は、本発明に係る微細気泡発生装置1の気体流入路40に逆止弁44を備えた実施例を示した側面断面図である。水路の液体送出口32側で水流を停止させる場合には、気液混合部24の内圧が上昇し、水は、気体分配部50から気体流入路40を通り、気体流入口42へと逆流することになる。その際、気体流入口42から水が垂れ落ちることを防止するために、気体流入路40に逆止弁44を備えることが好ましい。逆止弁44は、気体流入口42から入った空気のみを通過させ、気液混合部24から気体流入路40へと逆流する水を停止する方向に設置される。
【実施例3】
【0058】
本発明に係る微細気泡発生装置1は、シャワーヘッドのホース側、すなわち、水の供給側に取り付けられて、マイクロバブルを含む水は、シャワーヘッドから送出される。シャワーヘッドに使用される微細気泡発生装置1では、第1階段流路242を3.8mm、第2階段流路244を4.5mm、第3階段流路246を5.5mmに構成した。当該流路径に設定することにより、従来のシャワーヘッドを使用する場合と比較して50%の節水効果があることを、同じ水圧で一定時間容器に水を溜める比較実験を行って確認した。また、シャワーでの使用に関して100名による官能試験を行い、水圧についての試験項目では、全員から「シャワーとして十分な水圧であると感じる。」との評価を得た。
【0059】
多量のマイクロバブルは、界面活性作用を有するため、皮膚の汚れを吸着して取り除くことができるので、石鹸を使用しなくとも高い洗浄力を有する。洗浄力についての試験項目では、女性全員から「化粧落としに使用するための十分な洗浄力を有していると実感した。」との評価を得た。石鹸を使用することによっては、一層洗浄力が向上する。さらに、ファインバブルを含む水を皮膚に強く当てることによって保温効果を有する。
【実施例4】
【0060】
本発明に係る微細気泡発生装置1は、洗濯機に水を供給する流路に取り付けて、洗濯槽に多量のマイクロバブルを含む水を溜めることができる。マイクロバブルは、大きな気泡と比較すると長時間水中に留まることができるため、マイクロバブルを多量に含む水を洗濯槽に溜めて洗濯を行うことで、界面活性作用により洗濯物の汚れをマイクロバブルが吸着して取り除くことができるので、洗濯能力が向上する。洗浄力の向上に伴い、洗剤の使用量を減少させることができるので環境保全に資することになる。
【実施例5】
【0061】
本発明に係る微細気泡発生装置1は、流し台の水栓に取り付けて、洗い桶にマイクロバブルを含む水を溜めて食器を洗うことができる。界面活性作用により食器の汚れをファインバブルが吸着して取り除くことができるので、洗浄力が向上する。それに伴い、洗剤の使用量を減少させることができ、環境保全に資することになる。また、野菜や果物を洗うことによって、ファインバブルによって残留農薬を吸着して除去することができる。さらには、洗い桶やシンク内面、シンクの排水流路に付着した汚れも洗い流すことができ、流し台の衛生を保つことができる。
【0062】
以上、液体は水を例示して、気体は空気を例示して説明を進めてきたが、これに限定されるものではない。特に、気体は、酸素、窒素、又はオゾンなど用途によって様々な気体が選択して使用される。使用する気体又は液体によってバブルの発生装置の材質及び流路の断面積の設計を変更することによって対応が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る微細気泡発生装置によって生成することができる「ファインバブル」は、界面活性作用をはじめとして、多くの有用な性質を有しているので、一般生活分野におけるシャワーなどの美容や洗濯、食器などの洗浄に活用することも加えて、ガス溶解促進作用、衝撃作用、又は反応促進作用を利用して、工業用の洗浄に活用することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 微細気泡発生装置
10 液体送入路
12 液体送入口
20 微細気泡発生部
22 液体流路縮小部
24 気液混合部
242 第1階段流路
244 第2階段流路
246 第3階段流路
248 気体導入口
30 液体送出路
32 液体送出口
34 メッシュ
40 気体流入路
42 気体流入口
43 バルブクッション
432 中心空間部
434 外周空間部
436 貫通穴
44 逆止弁
50 気体分配部
52 気体一時貯蔵部
54 気体導入路
AF 気流
WF 水流
【要約】
【課題】「ファインバブル」は、共通の性質である界面活性作用をはじめとして、「マイクロバブル」、「ウルトラファインバブル」の各々が、多くの有用な性質を有している。本発明は、簡単な構造で多量の「マイクロバブル」を含有する「ファインバブル」を得ることができる微細気泡発生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明の微細気泡発生装置は、液体送入路と、微細気泡発生部と、液体送出路と、気体流入路と、気体分配部と、を備え、微細気泡発生部が、複数の気体導入口を備えたこと、を特徴とする。
【選択図】
図2