IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用サイドドア 図1
  • 特許-車両用サイドドア 図2
  • 特許-車両用サイドドア 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】車両用サイドドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B60J5/04 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019215006
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021084532
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】松浦 征浩
(72)【発明者】
【氏名】田口 幸良
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-024739(JP,A)
【文献】特開2017-071267(JP,A)
【文献】特開2007-238027(JP,A)
【文献】特開2006-298303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00 - 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外側面を構成するアウタパネルと、
前記アウタパネルの車内側に空間を構成するインナパネルと、
前記空間内に設けられ、前記インナパネルに固定されるドアロック装置と、
前記インナパネルと前記ドアロック装置との間に設けられる補強部材とを備える車両用サイドドアであって、
前記インナパネルは、車両前後方向に延設される第一面部を備え、
前記補強部材は、前記第一面部に沿って設けられる第一補強部を備え、
前記第一面部は、
車両前後方向からの荷重によって、前記第一面部を前記空間側に凸となるように座屈させる第一変形誘起部と、
記荷重によって、前記第一面部における前記第一変形誘起部から前記ドアロック装置と離れる側の領域を前記空間と反対側に倒れるように変形させる第二変形誘起部とを備え、
前記第二変形誘起部は、
車両前後方向において前記第一変形誘起部に対して前記ドアロック装置と反対側に位置し、
前記第一変形誘起部と車両上下方向に重複する部分を有するように前記第一変形誘起部と車両前後方向に隣接しており
前記第一補強部における車両前後方向の一端部は、前記ドアロック装置と前記第一変形誘起部との間に位置する、
車両用サイドドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドドアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドアインナパネルと、ドアインナパネルに取り付けられる係合部材と、ドアインナパネルと係合部材との間に設けられる補強部材とを備える車両用ドアを開示する。係合部材は、車体に設けられた被係合部材と係合することで車両用ドアを車体に係止する部材である、以下、ドアインナパネルを単にインナパネルと呼び、係合部材をドアロック装置と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-171259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の前面衝突等によって、インナパネルに車両前後方向の荷重がかかると、インナパネルがドアロック装置側に突入するように変形し、インナパネルがドアロック装置に接触するおそれがある。この接触によりドアロック装置が損傷すると、サイドドアのアンロックができなくなる。
【0005】
インナパネルがドアロック装置側に突入するように変形することを抑制するために、インナパネルの板厚を厚くしたり、補強部材を追加したりすることが考えられる。しかし、この場合、コストや重量が増加したり、生産性が悪化したりする。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、インナパネルに車両前後方向の荷重がかかった際、簡易な構成で、ドアロック装置の破損を防止できる車両用サイドドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車両用サイドドアは、
車両の外側面を構成するアウタパネルと、
前記アウタパネルの車内側に空間を構成するインナパネルと、
前記空間内に設けられ、前記インナパネルに固定されるドアロック装置と、
前記インナパネルと前記ドアロック装置との間に設けられる補強部材とを備える車両用サイドドアであって、
前記インナパネルは、車両前後方向に延設される第一面部を備え、
前記補強部材は、前記第一面部に沿って設けられる第一補強部を備え、
前記第一面部は、車両前後方向からの荷重によって、前記空間側に凸となるように座屈させる変形誘起部を備え、
前記第一補強部における車両前後方向の一端部は、前記ドアロック装置と前記変形誘起部との間に位置する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用サイドドアは、前面衝突等によって、インナパネルに車両前後方向の荷重がかかった際、変形誘起部によってインナパネルにおける第一面部を座屈させることで、上記荷重を効率的に吸収することができる。第一面部は、空間側に凸となるように座屈される。また、変形誘起部とドアロック装置との間には、第一補強部の一端部が位置する。そのため、第一面部における座屈した部分は、第一補強部の一端部に突き当たるように接触する。この接触により、第一面部における座屈した部分がドアロック装置に突入することを抑制できると共に、上記荷重を更に吸収し、インナパネルの変形を収束することができる。以上より、本発明の車両用サイドドアは、前面衝突等の衝突前期から中期にかけて生じる第一面部の座屈、及び衝突後期に生じる第一面部の座屈した部分と第一補強部の一端部との接触により、インナパネルの変形をコントロールできる。インナパネルの変形をコントロールできることで、インナパネルがドアロック装置に突入するように変形することを抑制でき、インナパネルがドアロック装置に接触し、ドアロック装置が破損することを防止できる。
【0009】
本発明の車両用サイドドアは、インナパネルにおける第一面部に変形誘起部を設け、かつ第一補強部の一端部の位置を特定の位置とすることで、インナパネルの変形をコントロールし、ドアロック装置が破損することを防止している。よって、本発明の車両用サイドドアは、既存の車両用サイドドアの構成部材に簡易な改変を施して利用でき、コストが上昇したり、重量が大きく増加したり、生産性が低下したりすることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態の車両用サイドドアを車内側から見た模式図である。
図2図2は、図1の(II)-(II)線で切断した断面図であり、前面衝突前の状態を示す。
図3図3は、図1の(II)-(II)線で切断した断面図であり、前面衝突後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の車両用サイドドアの実施形態を以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」とは、車両の正面を「前」とし、これを基準とする方向を意味し、図中、矢印FRは車両前後方向の前側、矢印RRは後側、矢印UPは車両上下方向の上側、矢印LWRは下側を示す。また、車両幅方向の中央側を「車内」、外側を「車外」とし、図中、矢印INは車両幅方向の車内側、矢印OUTは車外側を示す。
【0012】
〔全体構成〕
実施形態の車両用サイドドア1は、車体のドア開口を塞ぐように設けられる。図1に示す車両用サイドドア1は、前端部がフロントピラーに対して回転自在に支持され、後端部がセンターピラーに対して閉じられる右側のフロントサイドドアである。図1は、車両用サイドドア1を車内側から見た模式図であり、補強部材5及びドアロック装置6を破線で示す。
【0013】
車両用サイドドア1は、図2に示すように、アウタパネル2と、インナパネル3と、補強部材5と、ドアロック装置6とを備える。
【0014】
アウタパネル2は、車両の外側面を構成する。インナパネル3は、アウタパネル2の車内側に空間4を構成するように、アウタパネル2の車内側に取り付けられる。アウタパネル2及びインナパネル3は、金属板をプレス成形して構成される。インナパネル3は、第一面部31と、第二面部32と、第三面部33とを備える。第一面部31及び第三面部33は、車両前後方向に延設されており、車両幅方向に間隔を有し、かつ車両前後方向にずれて配置されている。第一面部31は、車内側かつ前方側に位置し、主としてアウタパネル2との間に空間4を構成する。第三面部33は、車外側かつ後方側に位置し、主としてアウタパネル2との結合部分を構成する。第二面部32は、第一面部31と第三面部33とを繋ぐように、車両幅方向に延設される。第二面部32は、ピラー、本例ではセンターピラーの前方に対向している。なお、本発明において、第一面部31及び第三面部33が「車両前後方向に延設されている」とは、第一面部31及び第三面部33が幾何学的に前後方向に平行であることに限定されない。例えば、「車両前後方向に延設されている」とは、車両前方から後方に向かって5°以内の範囲で車内側又は車外側に傾くように延びていることも含む。
【0015】
ドアロック装置6は、アウタパネル2とインナパネル3との間の空間4内に設けられる。ドアロック装置6は、ピラー、本例ではセンターピラーに備わる係止部と係止又は離脱される。係止部の具体例は、ストライカである。ドアロック装置6の基本的な構成は、公知の構成を参照できる。ドアロック装置6は、補強部材5を介してインナパネル3に固定される。本例のドアロック装置6は、インナパネル3の第一面部31及び第二面部32に固定されている。
【0016】
補強部材5は、インナパネル3とドアロック装置6との間に設けられる。補強部材5は、インナパネル3における第一面部31、第二面部32、及び第三面部33にわたって設けられている。補強部材5は、第一補強部51と、第二補強部52と、第三補強部53とを備える。第一補強部51は、インナパネル3の第一面部31に沿って設けられる。第二補強部52は、インナパネル3の第二面部32に沿って設けられる。第三補強部53は、インナパネル3の第三面部33に沿って設けられる。第一面部31に対する第一補強部51の設置面積は、第一面部31に対するドアロック装置6の設置面積よりも、車両前後方向及び車両上下方向に沿った面積が大きい(図1)。また、第二面部32に対する第二補強部52の設置面積は、第二面部32に対するドアロック装置6の設置面積よりも、車両上下方向及び車両幅方向に沿った面積が大きい(図1及び図2)。補強部材5は、インナパネル3よりも剛性が高い材料からなる板材をプレス成形して構成される。
【0017】
実施形態の車両用サイドドア1は、インナパネル3の第一面部31に第一変形誘起部311を備える点を特徴の一つとする。第一変形誘起部311は、インナパネル3が車両前後方向からの荷重を受けた際、その荷重によって、空間4側に凸となるように座屈させる。本例の車両用サイドドア1は、更に、インナパネル3の第一面部31に第二変形誘起部312を備える。第二変形誘起部312は、第一変形誘起部311に対して車両前後方向におけるドアロック装置6と反対側に位置する。第二変形誘起部312は、インナパネル3が車両前後方向からの荷重を受けた際、その荷重によって、第一面部31における第一変形誘起部311からドアロック装置6と離れる側の領域を空間4と反対側に倒れるように変形させる。実施形態の車両用サイドドア1において、第一変形誘起部311は必須の構成であり、第二変形誘起部312は任意の構成である。
【0018】
また、実施形態の車両用サイドドア1は、第一補強部51における車両前後方向の一端部510が、ドアロック装置6と第一変形誘起部311との間に位置する点を特徴の一つとする。
【0019】
本例では、ドアロック装置6が空間4内の後方側に位置し、車両が前面衝突した際に、インナパネル3が車両前方からの荷重を受ける場合を例に説明する。
【0020】
〔第一変形誘起部〕
第一変形誘起部311は、ドアロック装置6及び補強部材5と重複しない領域に位置する。本例の第一変形誘起部311は、ドアロック装置6及び補強部材5よりも車両前方に位置する。第一変形誘起部311は、車両前方からの荷重によって、インナパネル3における第一面部31が空間4側に凸となるように座屈するような変形を生じさせる起点となる。第一変形誘起部311は、上記変形の起点となる構成を採用できる。第一変形誘起部311は、インナパネル3を水平面で切断した断面において、屈曲部を備えることが挙げられる。この屈曲部は、第一面部31における第一変形誘起部311の車両前方に位置する領域よりも空間4側に位置する。第一面部31における第一変形誘起部311よりも車両前方に位置する領域とは、本例では、第二変形誘起部312のことである。第二変形誘起部312を備えない場合、第一面部31における第一変形誘起部311よりも車両前方に位置する領域とは、第一変形誘起部311よりも車両前方側で、車両前後方向に沿う領域のことである。第一変形誘起部311が複数の屈曲部を備える場合、ドアロック装置6の最も近くに位置する屈曲部が、最も空間4側に位置することが好ましい。本例の第一変形誘起部311は、空間4側に突出するビードで構成される。ビードは、車両上下方向に延設される。
【0021】
第一変形誘起部311を構成するビードは、第一変形誘起部311で座屈した第一面部31が第一補強部51の一端部510に接触し、かつドアロック装置6側に突入しない領域に設けられる。インナパネル3には、図1に示すように、複数の作業孔31a,31bが設けられている。作業孔31a,31bは、ドアロック装置6よりも車両前方に位置する。作業孔31a,31bは、空間4内に配置したドアロック装置6や、図示しないウインドガラスを昇降させるレギュレータ等を取り付けたりメンテナンスしたりする等の細かい作業を行うために設けられている。一般的に、車両上方に位置する作業孔31aは、ドアロック装置6用の作業孔であり、車両下方に位置する作業孔31bは、レギュレータ用の作業孔である。作業孔31a,31bは、車両前後方向に重複する領域を有する。本例では、第一変形誘起部311を構成するビードは、作業孔31bの車両上方側の縁部から作業孔31b,31a間の中央部分までの領域に延設されている。図1では、第一変形誘起部311を構成するビードが設けられる領域をクロスハッチングで示す。ビードは、作業孔31b、31aを橋渡すように延設されていてもよい。また、ビードは、第一補強部51の一端部510と第二変形誘起部312との間であって、作業孔31a,31b間の領域の任意の位置に設けられていてもよい。
【0022】
〔第二変形誘起部〕
第二変形誘起部312は、車両前後方向において、第一変形誘起部311に対してドアロック装置6と反対側に位置する。本例の第二変形誘起部312は、第一変形誘起部311よりも車両前方に位置する。第二変形誘起部312は、車両前方からの荷重によって、第一面部31における第一変形誘起部311よりも車両前方側の領域が空間4と反対側に倒れるような変形を生じさせる起点となる。空間4と反対側とは、車内側のことである。第二変形誘起部312は、上記変形の起点となる構成を採用できる。第二変形誘起部312は、インナパネル3を水平面で切断した断面において、屈曲部を備えることが挙げられる。この屈曲部は、第一面部31における第二変形誘起部312の車両前方側に位置する領域よりも車内側に位置する。第一面部31における第二変形誘起部312よりも車両前方に位置する領域とは、第二変形誘起部312よりも車両前方側で、車両前後方向に沿う領域のことである。第二変形誘起部312が複数の屈曲部を備える場合、第一変形誘起部311の最も近くに位置する屈曲部が、最も車内側に位置することが好ましい。本例の第二変形誘起部312は、空間4と反対側、つまり車内側に突出するビードで構成される。ビードは、車両上下方向に延設される。本例では、第二変形誘起部312を構成するビードは、作業孔31b、31aを橋渡すように延設されている。図1では、第二変形誘起部312を構成するビードが設けられる領域をクロスハッチングで示す。ビードは、第一変形誘起部311と同様に、作業孔31a,31b間の領域の任意の位置に設けられていてもよい。第一変形誘起部311と第二変形誘起部312とは、車両上下方向に重複していることが好ましい。また、第二変形誘起部312における車両上下方向の長さは、第一変形誘起部311における車両上下方向の長さよりも長いことが好ましい。そうすることで、第二変形誘起部312による第一面部31の変形の影響が、第一変形誘起部311による第一面部31の変形に及ぼされ易く、第一変形誘起部311を起点に空間4側に凸となるような座屈が行われ易い。
【0023】
第一変形誘起部311及び第二変形誘起部312がビードで構成される場合、第一変形誘起部311を構成するビードと、第二変形誘起部312を構成するビードとは、車両前後方向に延びる平面を介さずに設けられることが好ましい。そうすることで、第二変形誘起部312による第一面部31の変形の影響が、第一変形誘起部311による第一面部31の変形に及ぼされ易い。
【0024】
〔ドアロック装置と補強部材と変形誘起部との位置関係〕
補強部材5における第一補強部51は、車両前後方向に沿ってドアロック装置6と重複しない一端部510を備える。本例の補強部材5における第一補強部51は、ドアロック装置6よりも車両前方側に位置する一端部510を備える。つまり、第一補強部51における車両前方側の一端部510は、ドアロック装置6よりも車両前方側に突出している。一端部510におけるドアロック装置6からの突出量は、第一面部31における第一変形誘起部311で座屈した部分が一端部510を越えたとしてもドアロック装置6に接触しない程度に適宜選択できる。
【0025】
第一変形誘起部311は、第一補強部51の一端部510よりも車両前方側に位置する。つまり、第一補強部51の一端部510は、ドアロック装置6と第一変形誘起部311との間に位置する。第二変形誘起部312は、第一変形誘起部311よりも車両前方側に位置する。
【0026】
以上より、ドアロック装置6と補強部材5と変形誘起部311,312との位置関係は、車両前方側から順に、第二変形誘起部312、第一変形誘起部311、補強部材5における第一補強部51の一端部510、ドアロック装置6となっている。
【0027】
〔車両前方からの荷重を受けたときのインナパネルの挙動〕
車両が前面衝突した際に、インナパネル3が車両前方から荷重を受けると、図3に示すように、インナパネル3における第一面部31が、第一変形誘起部311及び第二変形誘起部312を起点に変形する。具体的には、第一面部31は、第二変形誘起部312を起点に車両前方側の領域が空間4と反対側に倒れると共に、第一変形誘起部311を起点に空間4側に凸となるように座屈する。第一変形誘起部311とドアロック装置6との間には、第一補強部51の一端部510が位置するため、第一面部31における第一変形誘起部311を起点に座屈した部分は、第一補強部51の一端部510に突き当たるように接触する。このようなインナパネル3の挙動は、前面衝突のうち、オフセット衝突の際に、効果的に生じ得る。
【0028】
〔効果〕
実施形態の車両用サイドドア1は、インナパネル3が車両前方からの荷重を受けた際、第一変形誘起部311によってインナパネル3における第一面部31を座屈させることで、上記荷重を効率的に吸収することができる。特に、上記車両用サイドドア1は、第二変形誘起部312を備えており、第二変形誘起部312を起点に第一面部31における第二変形誘起部312よりも車両前方側の領域が空間4と反対側に倒れるため、第一変形誘起部311を起点に第一面部31の途中を座屈させ易い。第一変形誘起部311を起点に空間側に凸となるように座屈した第一面部31の途中は、第一補強部51の一端部510に突き当たるように接触する。そのため、第一面部31における座屈した部分がドアロック装置6に突入することを抑制できると共に、上記荷重を更に吸収し、インナパネル3の変形を収束することができる。上記車両用サイドドア1は、上述したように、インナパネル3の変形をコントロールでき、インナパネル3がドアロック装置6に突入するように変形することを抑制できる。よって、上記車両用サイドドア1は、インナパネル3がドアロック装置6に接触し、ドアロック装置6が破損することを防止できる。
【0029】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、上述した実施形態において、以下の変更が可能である。
【0030】
(1)上述した実施形態では、第一変形誘起部が屈曲部、具体的にはビードで構成される形態を説明した。第一変形誘起部は、車両前後方向からの荷重によって、インナパネルにおける第一面部が空間側に凸となるように座屈するような変形を生じさせることができれば、屈曲部の代わりに、脆弱部で構成することもできる。脆弱部は、他の領域に比べて相対的に剛性が低い箇所である。脆弱部は、例えば、薄肉部で構成することができる。薄肉部は、例えば、空間と反対側に開口する溝や切込みを設けることで構成される。また、脆弱部は、第一面部の表裏面を貫通する貫通孔で構成されていてもよい。貫通孔は、車両上下方向に間隔を空けて複数並んでいることが挙げられる。また、貫通孔は、空間と反対側の面から空間側の面に向かうに従って先細るような内周面で構成されていることが挙げられる。
【0031】
(2)上述した実施形態では、第二変形誘起部が屈曲部、具体的にはビードで構成される形態を説明した。第二変形誘起部は、車両前後方向からの荷重によって、インナパネルにおける第一面部のうち、第一変形誘起部からドアロック装置と離れる側の領域が空間と反対側に倒れるような変形を生じさせることができれば、屈曲部の代わりに脆弱部で構成することもできる。脆弱部は、他の領域に比べて相対的に剛性が低い箇所である。脆弱部は、例えば、薄肉部で構成することができる。薄肉部は、例えば、空間側に開口する溝や切込みを設けることで構成される。また脆弱部は、第一面部の表裏面を貫通する貫通孔で構成されていてもよい。貫通孔は、車両上下方向に間隔を空けて複数並んでいることが挙げられる。また、貫通孔は、空間側から空間と反対側の面に向かうに従って先細るような内周面で構成されていることが挙げられる。
【0032】
(3)上述した実施形態では、フロントサイドドアが実施形態の車両用サイドドアである形態を説明した。実施形態の車両用サイドドアは、前端部がセンターピラーに回転自在に支持され、後端部がリアピラーに閉じられるリアサイドドアであってもよい。また、実施形態の車両用サイドドアは、リアサイドドアであって、リアサイドドアの後端部がリアピラーに回転自在に支持され、前端部がセンターピラーに対して閉じられる観音開きのタイプであってもよい。なお、車両用サイドドアの前端部がセンターピラーに対して閉じられる場合、第一変形誘起部は、ドアロック装置よりも車両後方に位置する。更に、第二変形誘起部を備える場合、第二変形誘起部は、第一変形誘起部よりも車両後方に位置する。よって、車両用サイドドアの前端部がセンターピラーに対して閉じられる場合、上述した実施形態におけるインナパネルの挙動は、後面衝突によって車両後方から荷重を受けた際に生じる。
【符号の説明】
【0033】
1 車両用サイドドア
2 アウタパネル
3 インナパネル
31 第一面部、31a,31b 作業孔
311 第一変形誘起部、312 第二変形誘起部
32 第二面部、33 第三面部
4 空間
5 補強部材
51 第一補強部、510 一端部
52 第二補強部、53 第三補強部
6 ドアロック装置
図1
図2
図3