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特許7449042光電変換素子、光サブアセンブリ及び光電変換素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】光電変換素子、光サブアセンブリ及び光電変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20240306BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20240306BHJP
   H01S 5/026 20060101ALI20240306BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20240306BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01S5/022
H01S5/026 650
H01L31/02 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019036123
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020141065
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 博
(72)【発明者】
【氏名】豊中 隆司
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-048403(JP,A)
【文献】米国特許第04935939(US,A)
【文献】特開2016-143707(JP,A)
【文献】特開2010-239096(JP,A)
【文献】特開2017-005122(JP,A)
【文献】特開2007-017653(JP,A)
【文献】特開2005-150463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0188267(US,A1)
【文献】特開2014-228585(JP,A)
【文献】特開2012-198452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/20
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面に、レンズ状の凸部と、前記凸部を囲う円環状の凹部と、を有する基板と、
前記基板の第2の主面側において、前記凸部を通過する光の光路上に位置する光電変換層と、
前記第1の主面における前記凹部の外周側に配置され、且つ第1の方向、及び前記第1の方向に交差する第2の方向から前記凸部を挟むよう配置された複数のパターンと、を含み、
前記複数のパターンのうち、前記凸部を前記第1の方向から挟み込むように配置された2つのパターンは、互いに異なる形状であり、
前記異なる形状は、前記凸部が形成される第1の領域を中心として位置及び形状が対称となるように形成された前記2つのパターンの一部が、前記凸部を形成するウェットエッチングにより消失した結果として形成され、
前記2つのパターンの前記異なる形状を観することで、前記凸部の歪み方向を検知することができる、
光電変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記複数のパターンは、第1のパターンを含み、
前記第1のパターンは、
前記凹部に対して前記第1の方向に離間して配置された第1の部分と、
前記凹部と前記第1の部分との間において、前記第1の部分と離間して配置された第2の部分と、を含み、
前記第2の部分と前記凹部との距離が、前記第1の部分と前記第2の部分との距離よりも小さい、
光電変換素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光電変換素子であって、
前記複数のパターンは、前記第1の主面に設けられた溝を含み、
前記溝の深さが、前記凹部の深さよりも浅い、
光電変換素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光電変換素子であって、
前記複数のパターンは、前記凸部の一部を中心とする同心円状に配置された、
光電変換素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光電変換素子であって、
前記基板が、前記第1の主面に、レンズ状の第2の凸部と、前記第2の凸部を囲う円環状の第2の凹部と、を更に有する、
光電変換素子。
【請求項6】
請求項5に記載の光電変換素子であって、
前記第1の主面における前記第2の凹部の外周側に配置され、且つ第3の方向、及び前記第3の方向に交差する第4の方向から前記第2の凸部を挟むよう配置された第2のパターンを更に含む、
光電変換素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の光電変換素子と、
前記光電変換素子を内部に収容するパッケージと、
前記パッケージ内に収容され、前記光電変換素子に光を入射させる光学素子と、を含む、
光サブアセンブリ。
【請求項8】
基板の第1の主面における第1の領域にレンズ状の凸部を形成する光電変換素子の製造方法であって、
前記基板の第2の主面側において、前記凸部を通過する光の光路上に位置する光電変換層を形成し、
前記第1の主面において、第1の方向、及び前記第1の方向に交差する第2の方向から前記第1の領域を挟むように複数のパターンを形成し、
前記複数のパターンのそれぞれの少なくとも一部と、前記第1の領域と、を保護するマスクを形成し、
前記マスクを形成した後に、前記第1の領域と前記複数のパターンとの間に、前記第1の領域を囲う円環状の凹部を形成し、
前記凹部を形成した後に、前記第1の領域を保護するように設けたマスクを除去し、
前記マスクを除去した後に、ウェットエッチングにより前記第1の領域をレンズ状の凸部に加工し、
前記ウェットエッチングにより前記第1の領域を前記凸部に加工する際に、前記凹部がサイドエッチングにより外周側に広げられ、
記複数のパターンのうち、前記凸部を前記第1の方向から挟み込むように、かつ、前記第1の領域を中心として位置及び形状が対称となるように配置された2つのパターンは、前記サイドエッチングにより互いに異なる形状にされ、
前記2つのパターンの前記異なる形状を観することで、前記凸部の歪み方向を検知する、
光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数のパターンを形成する際に、第1の部分と、前記第1の部分と離間して配置された第2の部分と、を形成し、
前記凹部が形成された後に、前記第2の部分は、前記凹部と前記第1の部分との間に位置し、
前記サイドエッチングにより、前記第2の部分と前記凹部との距離が、前記第1の部分と前記第2の部分との距離よりも小さくなる、
光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数のパターンを、前記第1の主面をドライエッチングすることにより形成し、
前記凹部を形成する際に、前記複数のパターンの深さよりも、前記凹部の深さを深くする、
光電変換素子の製造方法。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数のパターンを、前記第1の領域の一部を中心とする同心円状に形成する、
光電変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、光サブアセンブリ及び光電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子が搭載される光サブアセンブリは更なる小型化が求められており、高密度な実装技術が必要とされてきている。そして、光学系部品のアレイ化を行うことで実装面積の縮小化を図ることが望まれている。アレイ化された光学部品を用いると高密度実装が可能となるが、その一方で、各チャネルの光軸調整を個別に行うことが困難となる。そのため、広いトレランス幅を備えるべく、基板の裏面にレンズ状の凸部が設けられた光電変換素子が求められている。
【0003】
下記特許文献1、2においては、半導体基板の表面側に、光吸収層又は活性層といった光電変換層が設けられ、裏面側にレンズ状の凸部が設けられた構成が開示されている。また、特許文献1においては、半導体基板の裏面側のレンズ状の凸部を形成する領域に窒化ケイ素マスクを形成し、レンズ状とする部分の周囲をドーナツ状にエッチングした後、窒化ケイ素マスクを除去してウェットエッチングすることにより、半導体基板の裏面にレンズ状の凸部を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-277445号公報
【文献】特開2017-199716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、レンズ状の凸部を形成するべくウェットエッチングを行う場合、当該ウェットエッチング工程におけるサイドエッチングにより、レンズ状の凸部に歪が発生し、レンズ状の凸部の位置が、所望の位置からずれてしまう可能性がある。上記従来の構成では、レンズ状の凸部の歪方向を検知することが困難であった。
【0006】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、レンズ状の凸部の歪方向を検知することが可能な光電変換素子を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る光電変換素子は、第1の主面に、レンズ状の凸部と、前記凸部を囲う円環状の凹部と、を有する基板と、前記基板の第2の主面側において、前記凸部を通過する光の光路上に位置する光電変換層と、前記第1の主面における前記凹部の外周側に配置され、且つ第1の方向、及び前記第1の方向に交差する第2の方向から前記凸部を挟むよう配置されたパターンと、を含む。
【0008】
また、本開示に係る光サブアセンブリは、上記光電変換素子と、前記光電変換素子を内部に収容するパッケージと、前記パッケージ内に収容され、前記光電変換素子に光を入射させる光学素子と、を含む。
【0009】
また、本開示に係る光電変換素子の製造方法は、基板の第1の主面おける第1の領域にレンズ状の凸部を形成する光電変換素子の製造方法であって、前記基板の第2の主面側において、前記凸部を通過する光の光路上に位置する光電変換層を形成し、前記第1の主面において、第1の方向、及び前記第1の方向に交差する第2の方向から前記第1の領域を挟むようにパターンを形成し、前記パターンの少なくとも一部と、前記第1の領域と、を保護するマスクを形成し、前記マスクを形成した後に、前記第1の領域と前記パターンとの間に、前記第1の領域を囲う円環状の凹部を形成し、前記凹部を形成した後に、前記第1の領域を保護するように設けたマスクを除去し、前記マスクを除去した後に、ウェットエッチングにより前記第1の領域をレンズ状の凸部に加工する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、レンズ状の凸部の歪方向を検知することが可能な光電変換素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は第1の実施形態に係る光電変換素子が搭載された光サブアセンブリの模式的な断面図である。
図2図2は第1の実施形態に係る光電変換素子の表面を示す模式的な平面図である。
図3図3は第1の実施形態に係る光電変換素子の裏面を示す模式的な平面図である。
図4図4図2のA-A’断面を示す模式的な断面図である。
図5図5図2のB-B’断面を示す模式的な断面図である。
図6図6は第1の実施形態に係る光電変換素子のレンズ状の凸部に歪みが発生した状態の光電変換素子と入射光との関係を示す模式的な断面図である。
図7図7は第1の実施形態に係る光電変換素子のレンズ状の凸部に歪みが発生した状態における光の入射角度の調整方法を示す模式的な断面図である。
図8図8図2のB-B’断面における製造プロセスを示す模式的な断面図である。
図9図9は第1の実施形態に係る光電変換素子の裏面における製造プロセスを示す模式的な平面図である。
図10図10は第1の実施形態の他の実施例に係る光電変換素子の裏面における製造プロセスを示す模式的な平面図である。
図11図11は第1の実施形態の他の実施例に係る光電変換素子の裏面における製造プロセスを示す模式的な平面図である。
図12図12は第1の実施形態の他の実施例に係る光電変換素子の裏面における製造プロセスを示す模式的な平面図である。
図13図13図2のB-B’断面における製造プロセスを示す模式的な断面図である。
図14図14図2のB-B’断面における製造プロセスを示す模式的な断面図である。
図15図15図2のB-B’断面における製造プロセスを示す模式的な断面図である。
図16図16図2のB-B’断面における製造プロセスを示す模式的な断面図である。
図17図17は第1の実施形態に係る光電変換素子の裏面における製造プロセスを示す模式的な平面図である。
図18図18図2のB-B’断面における製造プロセスを示す模式的な断面図である。
図19図19は第1の実施形態に係る光電変換素子における基板の第1の主面にアレイ状にレンズ状の凸部が形成された例を示す模式的な平面図である。
図20図20は第1の実施形態に係る光電変換素子における基板の第1の主面にアレイ状にレンズ状の凸部が形成された例を示す模式的な平面図である。
図21図21は第1の実施形態に係る光電変換素子における基板の第1の主面にアレイ状にレンズ状の凸部が形成された例を示す模式的な平面図である。
図22図22は第1の実施形態の他の実施例に係る光電変換素子の模式的な断面図である。
図23図23は第1の実施形態の他の実施例に係る光電変換素子における基板の第1の主面を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の第1の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態に係る光電変換素子10が搭載された光サブアセンブリ100の模式的な断面図である。なお、図1に示す例においては、光電変換素子10が、光吸収層を有する受光素子である例を示すが、本開示は、それに限定されず、光電変換素子10が、活性層を有する発光素子や吸収層を有する変調器(例えば電界吸収型変調器)であってもよい。
【0013】
図1に示す例においては、光サブアセンブリ100は、ROSA(Receiver Optical Subassembly)である。光サブアセンブリ100は、光電変換素子10と、光学素子である集光レンズ11及びコリメートレンズ12と、光ファイバ13と、パッケージ20と、を含む。パッケージ20は、光電変換素子10と、集光レンズ11、及びコリメートレンズ12を内部に収容する。光ファイバ13は、パッケージ20の外部から内部へ貫通して設けられ、信号光をパッケージ20の内部に導く。コリメートレンズ12は、光ファイバ13から出射された信号光を平行光に変換する。集光レンズ11は、平行光を光電変換素子10に集光する。なお、以下で説明する本開示の効果を得るための光サブアセンブリ100の構造は、本実施形態に示す構造に限定されない。光サブアセンブリ100のパッケージ20は円筒形のCAN型であっても構わないし、光ファイバ13を備えていない構造であっても構わない。
【0014】
図2は、本開示の第1の実施形態に係る光電変換素子10の表面を示す模式的な平面図である。図3は、本開示の第1の実施形態に係る光電変換素子10の裏面を示す模式的な平面図である。図4は、図2のA-A’断面を示す模式的な断面図である。図5は、図2のB-B’断面を示す模式的な断面図である。
【0015】
図3、4、5に示すように、本実施形態に係る光電変換素子10は、基板107を有している。基板107の裏面(第1の主面)は、レンズ状の凸部105を有しており、このレンズ状の凸部105に、図1に示した集光レンズ11からの光が入射する。更に、図3、5に示すように、基板107の裏面(第1の主面)は、レンズ状の凸部105を囲う円環状の凹部115を有する。
【0016】
図4に示すように、基板107の表面(第2の主面)側には、基板107の表面(第2の主面)側に直交する方向から見て、レンズ状の凸部105と重畳するよう配置された光電変換機能を有する半導体多層110が配置されている。本実施形態においては、光電変換素子10が受光素子である例を示すため、半導体多層110には光電変換層としての光吸収層117が含まれている。このように、光電変換層としての光吸収層117は、凸部105を通過する光の光路上に位置している。
【0017】
図3に示すように、基板107は、裏面(第1の主面)側において、円環状の凹部115の外周側に配置されたパターン106を含む。パターン106は、第1の方向、及び第1の方向に交差する第2の方向から、レンズ状の凸部105を挟むよう配置されている。なお、第1の方向と第2の方向とは交差していればよく、必ずしも直交している必要は無い。
【0018】
このような構成とすることにより、レンズ状の凸部の歪方向を検知することが可能となる。即ち、レンズ状の凸部105を形成するための、薬液を用いたウェットエッチング工程では、ビーカー内において薬液の流れが発生することにより、レンズ状の凸部105の中央に対して非対称な歪みが発生し、レンズ状の凸部105の位置が、所望の位置からずれてしまう可能性がある。このようなレンズ状の凸部105の歪みは、目視では判断することが困難であった。しかし、上述したように、基板107の裏面(第1の主面)側において、レンズ状の凸部105を2方向から挟むよう配置されたパターン106を設ける構成とすることにより、ウェットエッチング工程後のパターン106の形状や、パターン106と円環状の凹部115との距離などを観測することにより、レンズ状の凸部105に発生した歪み方向を検知することができる。
【0019】
その結果として、レンズ状の凸部105に発生した歪方向に応じて、光サブアセンブリ100内での光入射条件を調整することが可能となる。例えば、図6に示す例においては、第1の方向に歪が発生しており、レンズ状の凸部105の中心位置が第1の方向にずれて形成されている。このような場合、レンズ状の凸部105に対して垂直に入射した光は、半導体多層110の中心からずれた位置に入射されることとなる。これに対して、上述したように、ウェットエッチング工程後のパターン106の形状や、パターン106と円環状の凹部115との距離などを観測することにより、レンズ状の凸部105に発生した歪方向を検知しておくことにより、図7に示すように、レンズ状の凸部105に対する光の入射角度を調整することが可能となり、例えば、半導体多層110の中心位置(特に光吸収層117の中心位置)に入射させることが可能となる。なお、上述した例においては、半導体多層110の中心位置に光が入射するよう入射角度を調整する例を示したが、本願発明はこれに限定されず、レンズ状の凸部105に発生した歪方向を検知することにより、光を所望の位置に入射させるべく、入射角度を調整する全ての例において有効である。例えば、半導体多層110の上面側に設けられた、金属膜からなる反射部104の中心位置に光が入射するよう入射角度を調整してもよい。
【0020】
なお、上述の実施例のように、光電変換素子10が裏面受光型フォトダイオードである場合は、半導体多層110とレンズ状の凸部105とが、互いに基板107における逆側の主面に形成される。このような構成においては、半導体多層110の位置とレンズ状の凸部105の位置とを直接比較することが困難であるが、上述したパターン106を設けることにより、レンズ状の凸部105の位置と半導体多層110の位置とのずれを検知することができる。その結果として、光電変換素子10が搭載されたROSAとしての受光効率を向上させることができる。
【0021】
なお、光電変換素子10の受光感度を光の入射位置毎にマッピングしたデータを取得することにより、光電変換素子10の実装条件を調整する方法もあるが、本開示の構成によれば、レンズ状の凸部105の形状測定や寸法測定等を実施する必要が無いため、より短時間にレンズ状の凸部105に発生した歪方向を検知することができる。
【0022】
以下、本実施形態に係る光電変換素子10につき、より具体的な構成と、その製造方法について説明する。
【0023】
図4に示すように、本実施形態に係る光電変換素子10は、例えばFeがドープされた半絶縁性のInPからなる基板107の表面(第2の主面)側に、n型コンタクト層108、n型バッファ層109、光吸収層117、p型バッファ層111、p型コンタクト層112が順に形成されている。n型コンタクト層108、n型バッファ層109、光吸収層117、p型バッファ層111、p型コンタクト層112が、半導体多層110を構成している。n型コンタクト層108、n型バッファ層109、光吸収層117、p型バッファ層111、p型コンタクト層112は、例えば、分子線エピタキシー法を用いて形成することが可能である。半導体多層110は、基板107の表面(第2の主面)に直交する方向から見て、レンズ状の凸部105を形成する第1の領域と重畳する位置に形成する。即ち、光電変換層である光吸収層117は、凸部105を通過する光の光路上に位置するよう形成される。なお、図4に示す例においては、光吸収層117は、アンドープ吸収層である。
【0024】
p型コンタクト層112を形成した後、基板107、n型コンタクト層108、n型バッファ層109、光吸収層117、p型バッファ層111、p型コンタクト層112の露出する表面に、絶縁性のパッシベーション膜114を製膜する。その後、p型コンタクト層112上のパッシベーション膜114を部分的にドライエッチングで除去することにより、スルーホール114Aを形成する。また、n型コンタクト層108上のパッシベーション膜114を部分的にドライエッチングで除去することにより、スルーホール114Bを形成する。
【0025】
その後、図2、4に示すように、n型コンタクト電極102及びp型コンタクト電極103を形成する。n型コンタクト電極102は、スルーホール114Bを介して、n型コンタクト層108に電気的に接続されており、p型コンタクト電極103は、スルーホール114Aを介して、p型コンタクト層112に電気的に接続されている。n型コンタクト電極102及びp型コンタクト電極103は、例えば、金等の金属を蒸着することにより製膜することができる。
【0026】
なお、p型コンタクト層112上に形成されたp型コンタクト電極103は、反射部104としての機能を有する。反射部104は、基板107の裏面(第1の主面)側から入射した光の内、半導体多層110に透過された光を反射し、再度、光吸収層117に入射させる役割を果たす。
【0027】
図8は、図2のB-B’断面における製造プロセスを示す模式的な断面図である。図8においては、基板107の裏面(第1の主面)を上に、基板107の表面(第2の主面)を下に表示している。図8に示すように、基板107の裏面(第1の主面)側において、パターン106を形成する。
【0028】
本実施形態においては、パターン106をドライエッチングにより形成する。またパターン106の深さが、後述する円環状の凹部115の深さよりも浅くなるよう形成する。なお、パターン106として、例えば金属膜を基板107の裏面(第1の主面)側に蒸着して形成する構成としてもよい。ただし、パターン106を、円環状の凹部115の深さよりも浅い深さを有する溝として、ドライエッチングにより形成することにより、高い位置精度でパターン106を所望の領域に形成することができ望ましい。即ち、蒸着による金属膜の形成と比較して、ドライエッチングによる溝の形成の方が、高い位置精度を得ることができる。更に、パターン106の深さを、凹部115の深さよりも浅くすることにより、エッチング時における位置ずれの発生を抑制することができる。また、パターン106に細かい形状を持たせることが可能となる。
【0029】
パターン106は、例えば図9に示すように、第1の方向、及び前記第1の方向に交差する第2の方向から、レンズ状の凸部105が形成される第1の領域105Aを挟むよう形成される。図9に示す例においては、パターン106が、第1の方向に配列された複数の部分と、第2の方向に配列された複数の部分と、を含む。第1の方向に配列された複数の部分が、第1の方向において、第1の領域105Aを挟み、第2の方向に配列された複数の部分が、第2の方向において、第1の領域105Aを挟むよう配置されている。
【0030】
なお、パターン106は、図9に示した例に限定されず、第1の方向、及び前記第1の方向に交差する第2の方向から、第1の領域105Aを挟むよう配置される構成であれば構わない。例えば、図10に示すように、円環状のパターン106は、互いに交差する第1の方向、第2の方向を含む、全ての方向から、第1の領域105Aを挟むよう配置されている。また、図11に示すように円弧状のパターン106が、第1の方向、及び第2の方向から、第1の領域105Aを挟むよう配置される構成としてもよい。また、図12に示すように、三角形等の多角形のパターン106が、第1の方向、及び第2の方向から、第1の領域105Aを挟むよう配置される構成としてもよい。
【0031】
また、図9、10、11、12に示す例においては、パターン106が、第1の領域105Aの一部を中心とする同心円状に形成される構成としている。即ち、第1の領域105Aがレンズ状の凸部105に加工された後においては、パターン106が、レンズ状の凸部の一部を中心とする同心円状に形成されていることになる。
【0032】
次に、図13に示すように、パターン106の少なくとも一部と、第1の領域105Aと、を保護するマスク121を形成した後に、例えばドライエッチングにより、図14に示すように、円環状の凹部115を形成する。円環状の凹部115は、第1の領域105Aとパターン106との間において、第1の領域105Aを囲うよう形成される。
【0033】
その後、図15に示すように、第1の領域105A上に設けたマスク121を除去し、ウェットエッチングにより第1の領域105Aをレンズ状の凸部105に加工する。この時、パターン106上に形成されたマスク121は除去せずに残しておくため、パターン106は、その上方からウェットエッチングされることは無い。しかし、薬液の流れに従って、円環状の凹部115の外周側がサイドエッチされ、パターン106の一部が消失する可能性がある。図15に示す例においては、ウェットエッチング工程において、レンズ状の凸部105の中央に対して非対称な歪みが発生しており、レンズ状の凸部105の位置が第1の領域105Aから第1の方向にずれている。
【0034】
そのため、図16、17に示すように、パターン106を保護するよう設けていたマスク121を除去すると、レンズ状の凸部105に対して第1の方向に配置されたパターン106の一部が消失していることがわかる。即ち、第1の方向における一方側においては、4つの溝があるのに対し、第1の方向における他方側においては、3つしか溝が残っておらず、1つの溝が消失してしまっている。そのため、このパターン106の形状を観測することにより、レンズ状の凸部105に発生した歪み方向を検知することができる。
【0035】
その結果として、光サブアセンブリ100に光電変換素子10を組み込む際に、レンズ状の凸部105に発生した歪み方向に応じて、光電変換素子10に入射させる光軸を調整することができる。
【0036】
更に、本実施形態においては、パターン106が、第1の方向、及び第2の方向に複数の部分が配列される形状を有しているため、歪方向のみならず、歪量をも検知することが可能となる。例えば、図16、17に示す例においては、消失した溝の数を目視で数えることにより、歪量を検知することが可能となる。
【0037】
その結果として、光サブアセンブリ100に光電変換素子10を組み込む前に、複数の光電変換素子10の中から良品の選別することができ、光サブアセンブリ100の歩留まりを向上させることができる。また、光サブアセンブリ100に光電変換素子10を組み込む際に、レンズ状の凸部105に発生した歪み量に応じて、光電変換素子10に入射させる光軸の調整角度を増減させることができる。
【0038】
なお、上述したウェットエッチングにより、第1の領域105Aをレンズ状の凸部105に加工する際に、円環状の凹部115がサイドエッチングにより外周側に広げられる。図17に示す例においては、パターン106が、円環状の凹部115に対して第1の方向に離間して配置された第1の部分116Aと、凹部115と第1の部分116Aとの間において、第1の部分116Aと離間して配置された第2の部分116Bとを有する。そして、円環状の凹部115がサイドエッチングにより外周側に広げられたことによって、第1の部分116Aと第2の部分116Bとの距離d2よりも、第2の部分116Bと凹部115との距離d1が、小さい構成となっている。
【0039】
その後、図18に示すように、低反射膜113をスパッタにより、基板107の裏面(第1の主面)側に形成して、ウエハプロセスを完了する。
【0040】
ウエハをダイシングにより個片化した後に、レンズ状の凸部105が形成された基板107の裏面(第1の主面)の外観検査を実施する。この時、パターン106の形状を観測することにより、レンズ状の凸部105に発生した歪み方向を検知する。また、消失した溝の数を目視で数えることにより、歪量を検知する。歪量の大きいものについては、不良品として排除し、歪量の小さいものは、良品として選別する。そして、検知された歪み方向と歪み量に応じて、光サブアセンブリ100内における光電変換素子10への光入射条件を調整する。外観検査は人による顕微鏡などを用いた目視でも構わないが、量産時においては機械にて検査することがコスト面で望ましい。外観検査は一般的にカメラで行われるが、レンズ上の凸部105の位置や形状を正確に認識するためには単なるカメラではなく、レーザ照射(の反射光)による高精度なカメラが必要となり、検査時間の増大を招く恐れがある。しかし本実施形態に寄ればパターン106と凹部115の縁の位置を見れば十分に歪方向を認識することが可能であり、単なるカメラを用いて短時間で検査が可能となる。
【0041】
なお、光サブアセンブリ100は更なる小型化が求められており、高密度な実装技術が必要とされてきている。そして、光学系部品のアレイ化を行うことで実装面積の縮小化を図ることが望まれている。図19、20、21は、基板107の裏面(第1の主面)に、アレイ状にレンズ状の凸部105が形成された構成を示す模式的な平面図である。即ち、基板107の裏面(第1の主面)において複数のレンズ状の凸部105が配置される構成としている。
【0042】
図19、20、21に示す例においては、基板107の裏面(第1の主面)において、上述したレンズ状の凸部105と第2の方向に隣り合う位置に、レンズ状の第2の凸部105Bが配置され、この第2の凸部105Bを囲う円環状の第2の凹部115Bが配置される構成としている。
【0043】
更に、図19に示す例においては、基板107の裏面(第1の主面)側における第2の凹部115Bの外周側に配置され、且つ第3の方向、及び第3の方向に交差する第4の方向から第2の凸部105Bを挟むよう配置された第2のパターン106Bを更に含む構成としている。なお、図19に示す例においては、第1の方向と第3の方向が同じであり、第2の方向と第4の方向とが同じ構成を示したが、図20に示すように、第1の方向と第3の方向とが異なり、第2の方向と第4の方向とが異なる構成であってもよい。
【0044】
なお、図21に示す例においては、基板107の裏面(第1の主面)側における第2の凹部115Bの外周側において、上述した第2のパターン106Bを設けない構成を示している。上述したとおり、レンズ状の凸部105に発生する歪みは、ウェットエッチング工程におけるビーカー内の薬液の流れによって発生する。この薬液の流れは、限られた範囲内では略同じ方向となるため、例えば隣接して配置された凸部105と第2の凸部105Bとは、略同じ方向の歪みを有する。そのため、第2のパターン106Bを設けずとも、凸部105を2方向から挟むよう配置されたパターン106のみを観測することで、凸部105と第2の凸部105Bとに発生している歪み方向を検知することができる。そのため、例えば、番地毎やバー毎のような単位で、その中に含まれる一つのレンズ状の凸部105を2方向から挟むよう配置されたパターン106を形成する構成としてもよい。
【0045】
なお、上述した例においては、光電変換素子10が、光吸収層117を有する受光素子である例を示したが、本開示は、それに限定されず、光電変換素子10が、活性層を有する発光素子であってもよい。例えば、光電変換素子10が、図22に示すような、水平共振器面発光レーザであってもよい。
【0046】
図22は、光の進行方向に平行な面での断面図である。基板107は、例えばn型InP基板である。基板107の表面(第2の主面)側には、半導体多層110に含まれる、光電変換層としての活性層118が設けられている。活性層118は、例えば、n型InGaAlAs光閉じ込め層、InGaAlAs歪多重量子井戸層、p型InGaAlAs光閉じ込め層の積層構造からなっている。活性層118の上方には、例えばInGaAsP系材料からなる回折格子123を配置している。なお、量子井戸層を挟んで設けられた光閉じ込め層は、量子井戸層の光閉じ込めを強化するための層である。光導波機能はコア領域を、これより屈折率の低いp型、n型クラッド層で挟み込むことによって生じるものであり、クラッド層、量子井戸層、クラッド層の積層構造により光導波機能が実現される。
【0047】
回折格子123の上方には、例えばp型InPからなるp型クラッド層124を配置しており、その更に上方には、p型電極125を配置している。なお、基板107とn型InGaAlAs光閉じ込め層との間にn型クラッド層を配置しても良い。以上のように、水平共振器面発光レーザは、例えばn型InPからなる基板107の第2の主面側に、図示しないn型クラッド、活性層118、回折格子層123、そしてp型クラッド層124を含む半導体多層110が形成されている。
【0048】
そして、基板107の裏面(第1の主面)には、レンズ状の凸部105、及びレンズ状の凸部105を囲う円環状の凹部115を形成している。レンズ状の凸部105の形成方法は、上述したとおりである。
【0049】
光は、基板107の裏面(第1の主面)に設けられたn型電極122と、基板107の表面(第2の主面)のp型電極125から、活性層118に電流が注入されて発生する。発生した光は、Z方向については、p型クラッド層124、活性層118、基板107からなる光閉じ込め構造により閉じ込められる。また、Y方向については、活性層118をY方向から挟むよう二つの半絶縁InP層を配置することにより、発生した光が閉じ込められる。こうしてY方向およびZ方向に閉じ込められた光は、X方向に伝播する。この光の伝播するX方向には屈折率が周期的に変化する回折格子123が形成されている。光がこの回折格子123で帰還されて単一波長のレーザ発振が起こる。こうして発生したレーザ光は、導波路の一端を45°の角度にエッチング加工することにより形成された反射鏡126で全反射され、基板107の裏面(第1の主面)方向に導かれる。基板107の裏面(第1の主面)における、反射鏡126に対向する部分には上述したレンズ状の凸部105が形成されており、レーザ光は当該凸部105から出射される。即ち、光電変換層である活性層118は、凸部105を通過する光の光路上に位置している。また、反射鏡126は第1の主面に直交する方向(図22のZ方向)から見てレンズ状凸部と重畳している。
【0050】
ここで、基板107の裏面(第1の主面)には、図23に示すように、円環状の凹部115の外周側に配置され、第1の方向、及び前記第1の方向に交差する第2の方向から、凸部105を挟むようパターン106を配置する構成としている。このように、基板107の裏面(第1の主面)側において、レンズ状の凸部105を、互いに交差する2方向から挟むよう配置されたパターン106を設ける構成とすることにより、ウェットエッチング工程後のパターン106の形状や、パターン106と円環状の凹部115との距離などを観測することにより、レンズ状の凸部105に発生した歪み方向を検知することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 光電変換素子、11 集光レンズ、12 コリメートレンズ、13 光ファイバ、20 パッケージ、100 光サブアセンブリ、102 n型コンタクト電極、103 p型コンタクト電極、104 反射部、105 凸部、105A 第1の領域、105B 第2の凸部、106B 第2のパターン、115B 第2の凹部、106 パターン、107 基板、108 n型コンタクト層、109 n型バッファ層、110 半導体多層、111 p型バッファ層、112 p型コンタクト層、113 低反射膜、114 パッシベーション膜、114A スルーホール、114B スルーホール、115 凹部、116A 第1の部分、116B 第2の部分、117 光吸収層、118 活性層、121 マスク、122 n型電極、123 回折格子、124 p型クラッド層、125 p型電極、126 反射鏡。

図1
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