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特許7449046液体ハンドリングシステムおよびチップの状態を分析するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】液体ハンドリングシステムおよびチップの状態を分析するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240306BHJP
   G01N 1/14 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01N35/10 D
G01N1/14 A
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019084224
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2019203885
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】18171269.6
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512265652
【氏名又は名称】サートリウス・ビオヒット・リキッド・ハンドリング・オイ
【氏名又は名称原語表記】SARTORIUS BIOHIT LIQUID HANDLING OY
【住所又は居所原語表記】LAIPPATIE 1, FI‐00880 HELSINKI, FINLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ミッコ・ハマライネン
(72)【発明者】
【氏名】パシ・ヴィヒネン
(72)【発明者】
【氏名】スタッファン・フォルスマン
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-509997(JP,A)
【文献】特開平05-340790(JP,A)
【文献】米国特許第05844686(US,A)
【文献】国際公開第2009/080874(WO,A1)
【文献】特開2012-229983(JP,A)
【文献】国際公開第2000/043751(WO,A1)
【文献】特開2001-183382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0171673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00- 37/00
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップから液体サンプルを分注するための液体ハンドリングシステムであって、以下、
前記チップまたはその内容物に対して反射、吸収、屈折、散乱または干渉作用する第1光路を介して第1光線を投射するように構成されると共に、前記チップおよびその内容物に対して反射、吸収、屈折、散乱または干渉作用しない第2光路を介して第2光線を向けるように構成された光源、
前記第1光線を検出するように構成された第1検出器、
前記第2光線を検出するように構成された第2検出器、
前記第1および第2検出器から得られた信号に基づいて前記チップの状態を分析するように構成された分析ユニット、を含み、
ここで、前記第2検出器は前記光源の強度を測定するように構成された正規化検出器であり、
前記光源と前記第1検出器とを含み、前記チップの液体表面までの距離を計算するように構成してある飛行時間コンポーネントを有することを特徴とする液体ハンドリングシステム。
【請求項2】
前記第1および第2の検出器および前記光源は、前記液体ハンドリングシステムのシリンダの内側に配置されており、前記液体ハンドリングシステムはハンドヘルド式ピペットである請求項1に記載の液体ハンドリングシステム。
【請求項3】
前記飛行時間コンポーネントは、前記液体ハンドリングシステムのシリンダの内側に配置され、前記液体ハンドリングシステムはハンドヘルド式ピペットである請求項1に記載の液体ハンドリングシステム。
【請求項4】
前記飛行時間コンポーネント内の前記光源は、前記液体ハンドリングシステムのシリンダの外側に配置され、前記飛行時間コンポーネント内の前記第1検出器は、前記液体ハンドリングシステムの前記シリンダの内側に配置されている請求項1に記載の液体ハンドリングシステム。
【請求項5】
更に、前記光源から前記チップの内部まで、好ましくは前記チップの内部の液体表面に向かって延び、前記光源から前記液体表面まで前記第1光線を案内するように構成された光ファイバを有する請求項1~のいずれか1項に記載の液体ハンドリングシステム。
【請求項6】
更に、前記第1検出器の前に配置され、前記チップの内部から、好ましくは前記チップの内部の液体表面からの前記第1光線を前記第1検出器に集束させるように構成されたレンズまたは円錐体の形態の光学コンポーネントを有する請求項1~のいずれか1項に記載の液体ハンドリングシステム。
【請求項7】
液体を吸引および分注するための液体ハンドリングシステムで使用されるチップの状態を分析するための方法であって、以下の工程、
チップまたはその内容物に対して反射、吸収、屈折、散乱または干渉作用する第1光路を介して、光源からの第1光線を第1検出器に向け、量を測定する工程、
前記チップおよびその内容物に対して反射、吸収、屈折、散乱または干渉作用しない第2光路を介して前記光源からの第2光線を第2検出器に向け、前記光源の強度を測定する工程、及び
前記測定された量及び測定された光源の強度に基づいて使い捨てチップの状態を分析する工程、を包含し、
前記第2検出器は正規化検出器であり、
前記液体ハンドリングシステムは、前記光源と前記第1検出器とを含み、前記チップの液体表面までの距離を計算するように構成してある飛行時間コンポーネントを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記第1光線は、前記チップの素材もしくは前記チップの内部の液体またはその両方に対して反射、吸収、屈折、散乱または干渉作用する請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記分析は以下の、前記チップの内部の液体レベルの決定、前記チップの内部の液体体積の決定、前記チップと液体表面との間の接触の決定、前記チップと外部容器との接触の決定、および前記チップの移動の決定のうちの単数又は複数を含む請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記分析する工程は、前記チップの内部の液体レベルまたは液体体積の決定を含み、そして前記量は反射率または吸光度である請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記飛行時間コンポーネントは、前記液体ハンドリングシステムのシリンダの内側に配置されている請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体ハンドリングシステム、より詳細にはそのようなシステムで使用されるチップの状態を監視および分析するための光学的および測光的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドヘルド式(手持ち式)ピペットおよび自動液体ハンドリング装置(液体ハンドリングロボット)において、正確なピペッティングは、液体が吸引されるべきチップの状態を検出および監視するための信頼できる方法を必要とする。先ず、チップを吸引される液体に一定の深さにまで浸漬する必要がある。次に、正確な量の液体が吸引され、それと同時に、チップの先を液体表面の下に保つべくチップを降ろす。最後に、チップを受け取り容器の上に移し、液体の一部または全部を容器に分注する。
【0003】
例えば、ピペットチップ内の液体レベルを検出するために圧力測定または容量法を使用することが知られている。これらの方法は多くの欠点を抱えている。高粘度の流体では、液面の変化は圧力の変化よりも遅く、それによって圧力に基づく液面のモニタリングの精度が低下する。それでもまだ空気が目詰まりを超えて流れ得る場合は、圧力測定ではチップ先端の部分的な目詰まりを確実に検出することはできない。さらに、周囲圧力と高度が測定される圧力値に影響を与える。
【0004】
欧州特許第1756587号明細書は、内部に延びる流体通路を有するアスピレータ本体部材と、それを通って光を受信および/または伝送するように構成された第1および第2の導光体とを含むアスピレータシステムを開示している。コントローラが、前記第1および第2の導光体のうちの少なくとも1つを介してアスピレータチップから受け取った光のレベルに基づいてアスピレータチップの流体との接触を検出し、アスピレータチップと流体との接触が検出される時のアスピレータ本体部材の位置に基づいて流体のレベルを判定する。
【0005】
測光法は、これまである程度まで自動分析器において使用されてきた。
【0006】
米国特許第8203721号明細書は、自動液体ハンドリング装置内のマイクロタイタープレートのウェル内の液体-気体界面を検出するための測光方法を開示している。光は、検出されるべき液体界面の実際の形状に対応して、平らな、凸状のまたは凹状の平面にある複数の照明点に同時に向けられる。
【0007】
欧州特許第1756587号明細書は、自動アスピレータシステムのための光学的液体検出方法を開示している。この方法では、外径変化不連続性を有するアスピレータチップが使用される。光はチップ素材を通過する。チップと流体との接触は、不連続部と流体との接触時にチップの外面から反射される光の変化を検出することによって光学的に検出される。
【0008】
以下の刊行物は、ハンドヘルドピペット内の液位の光度検出を実施するための特別なチップの使用を開示している。
【0009】
フィンランド特許第120336号明細書は、ピペットチップ内の液体を分析するための光学的方法を記載している。前記チップは光学格子構造を有し、光はチップ素材および格子を介して液体に伝達される。光源と検出器がピペット本体内に配置されている。
【0010】
米国特許第5844686号明細書は、測光測定を行う目的のためのピペットチップへのミラーおよび窓の組み込みを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許第1756587号明細書
【文献】米国特許第8203721号明細書
【文献】欧州特許第1756587号明細書
【文献】フィンランド特許第120336号明細書
【文献】米国特許第5844686号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
正確で、周囲の環境条件および液体の特性から独立し、かつ、ハンドヘルドピペットおよび自動化ピペッティングシステムの両方において、それらの分注容量の全範囲に亘って、従来の使い捨てチップと一緒に、うまく使用することが可能な、改良されたチップモニタリングおよび液面レベル検出方法を開発する必要がある。
【0013】
本発明の少なくとも一部の実施例は、液体ハンドリング装置内のチップとその内容物を分析および監視するための、前記公知方法の上述した欠点および制約のうちの少なくともいくつかを克服することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要約
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの具体的実施例は、従属請求項に定義されている。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、チップから液体サンプルを分注するための液体ハンドリングシステムが提供され、当該システムは以下を有する。即ち、前記チップ又はその内容物と相互作用する第1光路を介して第1光線を投射するように構成されるとともに、更に、前記チップ又はその内容物と相互作用しない第2光路を介して第2光線を向けるように構成された光源、前記第1光線を検出するように構成された第1検出器、前記第2光線を検出するように構成された第2検出器、前記第1および第2検出器から得た信号に基づいて前記チップの状態を分析するように構成された分析ユニット、ここで、前記第2検出器は前記光源の強度を測定するように構成された正規化検出器である。
【0016】
前記第1態様の様々な実施例は、下記の箇条書きリストからの少なくとも一つの特徴を含みうる。
【0017】
前記第1および第2検出器と前記光源とは、前記液体ハンドリングシステムのシリンダ内に配置され、そして、前記液体ハンドリングシステムは、ハンドヘルド式ピペットである。
【0018】
前記第1および第2検出器は、前記液体ハンドリングシステムのシリンダ内に配置され、そして、前記光源は前記シリンダの外側に配置されている。
【0019】
前記第1および第2検出器および前記光源は、前記液体ハンドリングシステムのシリンダーの外側に位置する。
【0020】
前記光源は前記チップの上端の上にあり、当該チップの素材内に光を投射するように構成されている。
【0021】
前記光源は前記チップの片側にあり、当該チップに向かって光を投射するように構成され、前記液体ハンドリングシステムは自動液体ハンドリングステーションである。
【0022】
前記液体ハンドリングシステムのシリンダは、前記光源からシリンダの素材を通して前記チップの内部、好ましくは液体表面、に光を導くように構成されている。
【0023】
前記システムは、前記光源と前記第1検出器を含む飛行時間(TOF: time-of-flight)コンポーネントを含む。
【0024】
前記システムは、前記液体ハンドリングシステムのシリンダの内側に配置された飛行時間TOF(time-of-flight)コンポーネントを含む。
【0025】
前記システムは、飛行時間TOF(time-of-flight)コンポーネントを含み、そして、前記飛行時間コンポーネント内の前記光源は、前記液体ハンドリングシステムのシリンダの外側に位置し、そして、前記飛行時間コンポーネント内の前記第1検出器は、前記液体ハンドリングシステムの前記シリンダの内側に位置する。
【0026】
前記システムは、前記光源から前記チップの内部、好ましくは、前記チップ内部の液面に向けて延出し、前記光源からの光の前記第1光線を前記液面に案内するように構成された光ファイバを有する。
【0027】
前記システムは、前記第1検出器の前に配置され、前記チップの内部から、好ましくは前記チップの内側の液体表面から、前記第1検出器へ前記第1光線を集束するように構成されたレンズまたは円錐(cone)などの光学コンポーネントを備える。
【0028】
前記液体ハンドリングシステムのシリンダの下端はレンズ形状であり、前記シリンダは前記光源から当該シリンダの素材および前記レンズ形状の下端を通って前記チップの内部、好ましくは液体表面に光を導くように構成され、そして前記シリンダは、更に、前記チップまたはその内容物、特に前記液体表面と相互作用した光を前記第1検出器に集めるように構成されている。
【0029】
前記システムは光学コンポーネントを含み、前記光学コンポーネントは、前記液体ハンドリングシステムのシリンダをチップに接続し、前記シリンダの外面と前記チップの内面に取り付けられている取り外し可能なレンズシステムであり、前記レンズシステムは、前記光源から前記チップの内部、特に液体表面に光を導くように構成され、そして、前記レンズシステムはさらに、前記チップまたはその内容物、特に前記液体表面と相互作用した光を前記第1検出器に集めるように構成されている。
【0030】
前記システムは、前記チップの周りで当該チップに沿って移動可能な支持アームを含み、そして前記第1検出器、好ましくは前記第2検出器も、前記支持アームに取り付けられている。
【0031】
前記第1検出器、好ましくは前記第2検出器も、ラインセンサとして形成されている。
【0032】
前記システムは、前記チップの周りで当該チップに沿って移動可能な支持アームを含み、前記光源は前記支持アームに取り付けられている。
【0033】
前記光源は前記液体ハンドリングシステムのシリンダー内に位置している。
【0034】
前記システムは、前記チップの両側に二つの支持アームを有し、前記光源は前記支持アームの一方に取り付けられ、前記第1検出器は前記支持アームの他方に取り付けられ、これらの支持アームは前記チップの周りを移動可能である。
【0035】
本発明の第2の態様によれば、液体を吸引し分注するための液体ハンドリングシステムにおいて使用される使い捨てチップの状態を分析するための方法が提供され、この方法は以下のステップを含む。即ち、光源からの第1光線を前記チップまたはその内容物と相互作用する第1光路を介して第1検出器に向け、そして、量を測定する、光源からの第2光線を前記チップ及びその内容物と相互作用しない第2光路を介して第2検出器に向け、そして前記光源の強度を測定する、そして、前記測定量と前記光源の測定強度とに基づき前記使い捨てチップの状態を分析する、ここで、前記第2検出器は正規化検出器である。
【0036】
前記第2態様の様々な実施例は、以下の箇条書きリストからの少なくとも1つの特徴を含むことができる。
【0037】
前記第1光線は、前記チップの材質、又は前記チップ内部の液体、又はその両方と相互作用する。
【0038】
前記分析は、以下の内の一つ又は複数を含む、即ち、前記チップ内の液体レベルの判定、前記チップ内の液体体積の判定、前記チップと液体表面との間の接触の判定、チップと外部容器との間の接触の判定、そしてチップの移動の判定。
【0039】
前記分析工程は、前記チップ内の液体レベルまたは液量の測定を含み、その量は反射率である。
【0040】
前記分析工程は、前記チップ内の液体レベルまたは液量の測定を含み、その量は吸光度である。
【0041】
前記液体ハンドリングシステムは、本発明の第1態様によるシステムである。
【0042】
本発明の少なくとも一部の実施例は、液体ハンドリング装置における液体レベル検出およびチップ監視のための公知方法を超える大きな利点を提供する。本方法は、高粘度流体に対しても正確に液体レベルを測定することができ、この方法は周囲圧力条件から独立しており、そしてこの方法はチップのあらゆる目詰まりを確実に検出することができる。
【0043】
本発明の少なくとも一部の実施例は、ハンドヘルド式および自動型の液体ハンドリング装置の両方においてチップを監視するために容易に実施することができる多用途の光学的方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、本発明の少なくとも一部の実施例による、2つの検出器を使用することによる相対測定の原理を示す図である。
図2図2は、チップにおける光と液体との間の主な相互作用が反射率である実施例を示す図である。
図3図3は、チップにおける光と液体との間の主な相互作用が吸収である実施例を示す。
図4図4は、チップにおける光と液体との間の主な相互作用が吸収である実施例を示す。
図5図5は、チップにおける光と液体との間の主な相互作用が吸収であるさらなる実施例を示す。
図6図6は、チップにおける光と液体との間の主な相互作用が吸収であるさらなる実施例を示す。
図7図7は、チップにおける光と液体との間の主な相互作用が反射率であるさらなる実施例を示す。
図8図8は、チップにおける光と液体との間の主な相互作用が反射率であるさらなる実施例を示す。
図9図9は、チップにおける光と液体との間の主な相互作用が反射率であるさらなる実施例を示す。
図10図10は、チップにおける光と液体との間の主な相互作用が反射率であるさらなる実施例を示す。
図11図11は、本発明の少なくとも一部の実施例による測光測定のための取り外し可能モジュールを示す図である。
図12図12は、本発明の少なくとも一部の実施例による測光測定のための取り外し可能モジュールを示す図である。
図13図13は、前記光源および検出器がチップの周りを移動可能である実施例を示す図である。
図14図14は、前記検出器がチップの周りを移動可能である実施例を示す図である。
図15図15は、前記光源および検出器がチップの周りを移動可能である実施例を示す図である。
図16図16は、前記シリンダの内側に配置された飛行時間(TOF)コンポーネントが利用される実施例を示す。
図17図17は、部分的にシリンダの内側に配置された飛行時間(TOF)コンポーネントが利用されている実施例を示している。
図18図18は、部分的にシリンダの内側に配置された飛行時間(TOF)コンポーネントが利用されている実施例を示している。
図19図19は、本発明の一実施例による測光測定のための実験的設定を示す図である。
図20図20は、本発明の一実施例による、吸引された液体の量の関数としての測定信号を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施形態
定義
本文脈において、「液体ハンドリングシステム」という用語は、ハンドヘルドピペットと自動液体ハンドリングステーションまたはロボットの両方を含む。これらのシステムは手動式、電子式または電気機械式であり得る。
【0046】
本文脈において、「チップ」という用語は、取り外し可能であり、ハンドヘルド式(手持ち式)ピペットまたは自動液体ハンドリングステーションもしくはロボットにおいて、容器、マイクロプレートなどに分注される液体サンプルを受け取るために使用される使い捨ておよび非使い捨てチップの両方を含む。そのようなチップは、オーダーメイドまたは大量生産可能であり、そして任意の適切な素材、好ましくはプラスチック素材から作製され得る。好ましい実施例では、前記チップは使い捨てチップである。
【0047】
ピペットなどの液体ハンドリングシステムでは、シリンダ内でプランジャを縦方向に駆動してピペットチップの中へおよびそこから流体を吸引及び分注するためのリニア・アクチュエータが設けられる。
【0048】
本発明者らは、液体のハンドリングまたは分注作業の過程において、チップの様々な状態の検出および監視のために光学的測定がうまく適用可能であることを観察した。本文脈において、「チップの状態」とは、例えば、ピペットチップ内の液体レベルまたは液体体積、チップの安定性、チップと外部液体容器との間の接触、或いは、容器内でのチップと液面との間の接触を指す。本方法は、2つの検出器を用いて相対測定を実行することに基づいている。この原理を使用することで、驚くほど多くの実用的な測定ジオメトリの設計が可能になる。
【0049】
前記光学的方法は、飛行時間(TOF:time of flight)原理または測光法に基づくものとすることができる。測光法では、光の強度が測定量である。
【0050】
本発明のいくつかの実施例では、光が様々な方法で前記チップおよび/またはその内容物と相互作用するようにするために、前記チップを通るまたはその内部の特定の光路を介して光を通過させる。前記相互作用の後、前記チップの状態およびその中のあらゆる変化を分析するために光は検出器で集められ特徴付けられる。
【0051】
本方法は、光学的測定を使用することによって、チップ内の液体レベル、チップの安定性、チップ内の液体体積、およびチップと容器内の液体表面との間の接触を検出することを可能にする。
【0052】
前記測定の幾何学的配置によって、光とチップまたはチップ内の液体との間で起こる相互作用の種類が決まる。前記相互作用は、例えば、反射、吸収、屈折、散乱または干渉とすることができる。好ましくは、前記相互作用は反射または吸収のいずれかである。測定のダイナミクスに影響を与える要因には、光の入射方向と入射角度、検出器の位置、チップの形状、および光の波長がある。
【0053】
好ましい実施例では、前記光源からの光は2つの異なる光路を通過する2つのビームに分割される。「異なる光路」とは、これらの路が、前記チップ、前記液体ハンドリングシステムのシリンダ、または前記チップ内の液体/空隙の、異なる部分或いは、それらの素材の異なる界面、を少なくとも部分的に通過するということ、および/又は、前記路の長さが少なくとも部分的に異なること、および/又は、入射角度が異なること、を意味する。前記光路の一方又は両方が、前記チップの空隙の内側を通過してもよい。前記光路の一方又は両方が、前記チップ素材内または前記シリンダ素材内を通過してもよい。
【0054】
好ましくは、前記光学測定は、赤外線、紫外線もしくは可視光線、またはそれらの組み合わせを使用することによって行われる。
【0055】
測光法において、前記光源はLEDまたはレーザーであることが好ましい。
【0056】
図1は、2つの光検出器11,12を使用することによる相対測定の原理を示す。この実施例では、LED 10からの光は2つの光路に分割される。第1光路(測定経路)はチップ13と相互作用するように構成され、第2光路は光源10の強度を直接測定するように構成されている。光源の不安定性は、2つの検出器間の相対値を測定することによって補償される。
【0057】
前記第1光路において、光と測定される液体との間の前記相互作用は主に液体表面からの光の反射である。相対反射率測定が実施される。以下の方程式1は、相対反射率Rを検出器のブランクおよび時間依存電圧信号の関数として定義するものである。
【数1】
【0058】
方程式1において、VMBはチップが空のときのブランク測定における測定検出器11の電圧であり、VNBはチップが空のときのブランク測定における正規化検出器12の電圧である。VMKはチップが液体を含む時点tにおける測定検出器の電圧であり、VNKはチップが液体を含む時点tにおける正規化検出器の電圧である。
【0059】
図2~18において、明瞭さのために、第2光路および正規化検出器は示されていない。好ましくは、図2~18に示す実施例では、第2光路は光源の強度を直接測定するように構成されている。
【0060】
図2では、前記光源20および前記測定検出器23は両方とも前記ピペットのシリンダ22の内側に配置されている。測定経路を通過する光と測定される液体との間の主な相互作用は、液体表面21からの反射である。相対反射率が測定される。
【0061】
図3及び図4において、光はチップ素材内を通過し、光はチップ33,43の下縁31,41から反射される。前記チップは、光が当該チップから液体へ通過するように光学測定に適合した形状を有する。前記測定経路を通過する光と測定される液体32,42との間の主な相互作用は、光がチップ内の液体を通過するときの吸収である。前記光源は参照符号30,40で示され、前記測定検出器は参照符号34,44で示されている。
【0062】
本発明者らは、図2および図4に示されるジオメトリ(幾何学的形状)が、特に信頼性が高く機能性が高いものであることを観察した。
【0063】
図3の実施例は、自動液体ハンドリングステーション用に特に適している。なぜならば、照明および検出ジオメトリが、前記光源30と検出器34とが前記チップ33の上方に位置しているという意味においてほぼ垂直であるからである。
【0064】
前記チップが外部容器内の液体表面に接触すると、当該チップの下端から反射される光の、前記下端を通過する光の量に対する割合が減少することによって、測定信号の減少を観察することができる。このことは、前記チップ素材と液体の屈折率が類似しており、かつ、それらは空気の屈折率とは異なっているという事実に基づく。
【0065】
図5および図6において、前記チップは、外部から光源50,60によって照射され、その光は、これらチップの表面から前記検出器51,61へと反射される。測定される液体の応答は光が前記液体を通過するときの吸収と、その他の光学的現象とに基づく。
【0066】
図3図4図5および図6に図示の実施例において、前記チップと外部容器との間の接触を検出することが可能である。
【0067】
図7および図8において、前記チップは外部から光源70,80によって照射され、その光は前記チップおよび液体表面から前記検出器71,81へと反射される。測定される液体の応答は、前記液体表面72,82からの反射とその他の光学的現象とに基づく。
【0068】
図5図7の実施例は、多彩な測定の可能性を提供する。入射角を変えることによって、さまざまな光の反射、即ち、液体表面からの直接の反射、液体とプラスチックチップ素材との間の光学的不連続性からの反射、またはプラスチックチップ素材の光伝導率の変化の観察、を測定することが可能である。
【0069】
図5図8の実施例は、自動液体ハンドリングステーションでの使用に特に適している。そのようなステーションでは、光源の位置および方向を非常に自由に選択することが可能であり、例えば側方からのチップの照明が可能である。
【0070】
図9および図10において、光は、前記シリンダ91の素材に入り、そこから当該シリンダの下端92から前記液体表面93に向かって屈折する。前記下端92は、傾斜面またはレンズ形状を有する。測定されるべき液体の応答は、液体表面からの反射および他の光学的現象に基づく。前記光源は参照符号90で示され、前記測定検出器は参照符号94で示されている。
【0071】
図9の実施例は、ハンドヘルド式ピペットと自動液体ハンドリングステーションの両方に適用することができる。その測定ジオメトリによってコンパクトな構造が可能である。
【0072】
図10において、前記液体表面101から反射された光は、大きな直径を有するレンズとして形作られた前記シリンダの前記下端102を使用することによって最大面積にわたって集められる。前記シリンダの本体103は、全反射によって光が内部に留まる導光体として機能する。全反射は、シリンダの前記素材がそれを取り囲む空気よりもはるかに大きい屈折率を有するために生じる。前記光源は参照符号100で示され、前記測定検出器は参照符号104で示されている。図10の実施例は、自動液体ハンドリングステーションとハンドヘルド式ピペットの両方に適用可能である。
【0073】
図11および図12において、前記シリンダの内面または外面のいずれかに固定されたレンズシステムの形態の取り外し可能な測定モジュールが使用されている。
【0074】
図11において、前記モジュール111は、前記シリンダの外面112に対してシールされている。当該モジュールの本体は、導光体として機能し、前記モジュールの下面113はレンズとして機能する。前記チップは、前記モジュールの本体の外面114に対してシールされている。前記光源は参照符号110によって示され、前記測定検出器は参照符号116によって示されている。
【0075】
図11の実施例は、自動液体ハンドリングステーションでの使用に特に適している。
【0076】
図12において、前記モジュール121は、前記シリンダの内面122に対してシールされている。前記光源120と検出器126とは前記モジュールの内部に配置されている。一実施例において、それらはケースに入れられている。別実施例において、それらは前記モジュールを形成する導光体の内側に鋳造(cast)されている。前記モジュールの下面124は、光が液体表面に向かって反射されるように光を反射する表面を形成する。あるいは、小型のコンポーネントをモジュール内部の液体表面に向けることができる。
【0077】
光伝導体(photoconductors)を使用することによって、図1図11のジオメトリック配置は、前記光源と前記検出器とを所望の位置、例えば、前記ピペット本体の近傍、移動させることによって実現可能である。
【0078】
図13において、前記光源130および検出器133は前記チップの両側に配置され、かつ可動支持フレーム131に固定されている。前記フレームは2本の支持アームとして形成することができる。前記チップは前記フレームを回転させ、かつそれを垂直方向に動かすことでスキャンされる。前記チップとその内容物を非常に正確にスキャンすることができる。測定データに基づき、前記チップの真直度、液体の体積、異なる液体の混合、および、希釈モードでのピペットの2つの液体間の空隙、を観察することが可能である。
【0079】
図14において、高解像度ラインセンサ142が検出器として使用されている。当該センサは、可動支持アーム141に固定されている。前記支持アームを動かし回転させることによって、前記センサはチップを中心に回転する。このようにすることで、チップとその内容物を迅速かつ正確にスキャンすることができる。相対的測定を得るために別の基準検出器がそれ以上必要とされないように、前記測定において前記センサの最上部ピクセルを基準として利用することができる。ラインセンサの代わりに、二次元画像センサを使用することもできる。
【0080】
図15において、光源150は、ラインセンサ151の下方で、支持アーム152の下端に配置されている。前記チップの外面を直角に通過した光の一部は、当該チップの反対側の外面から前記ラインセンサに向かって上方へ反射される。
【0081】
図13~15に示す実施例は、液面検出のための自動液体ハンドリングステーションでの使用に特に適している。
【0082】
測光測定において、光源が時分割原理に従って頻繁に交替する異なる波長を作り出すようにすることができる。このようにして得られた並列測定データは、異なる色を有する液体についての測定の精度を向上させるために利用することができる。チップ内の異なる液体の混合を分析することが可能になる。同じ光源コンポーネントを使用して、例えばRGB LEDを使用することによって、異なる波長を生成することは容易である。
【0083】
測光測定において、信号処理は、位相敏感検出の原理、またはロックイン増幅器を利用することによって実行可能である。測定されるべき入力信号は、前記光源を細断することによって形成された搬送波信号を変調する。これによって、入力信号は低周波ノイズの影響を受けない適切な高周波にシフトされる。前記信号は、AD変換器によって実行されるサンプリングの前に、アナログアンチエイリアシングローパスフィルタによってフィルタリングされる。復調後、前記信号は急峻で狭帯域のデジタルローパスフィルタでフィルタリングされ、それによって前記入力信号をノイズから分離することができる。
【0084】
伝統的な測光測定に加えて、ピペットチップの動きを監視し、チップに含まれる液体体積を決定するための最新の一体型飛行時間コンポーネントを使用することが可能である。飛行時間コンポーネントは、光信号の飛行時間を測定する。前記コンポーネントによって透過された光は、液体表面から前記コンポーネントの反対側の端部に配置された検出器まで反射され、それによってコンポーネントは、光の飛行時間に基づいて液体表面までの距離を計算する。飛行時間測定の利点は、強度が特定の最小レベルを超えるという条件で、反射光強度とは無関係であることである。
【0085】
図16において、飛行時間コンポーネント160は、ピペットシリンダ161の内側に完全に配置されている。
【0086】
図17において、飛行時間型コンポーネント170は、ピペットシリンダ171の内側に部分的にのみ配置されている。当該コンポーネントの送信機側は、前記シリンダの外側に配置されている。送信機によって生成された光は、マルチモード光ファイバ172を介してシリンダの内側に案内される。ファイバの一端は、光を液体表面173に向かって案内するレンズとして形成されている。集光された光を前記測定コンポーネントの検出器上に集束させるレンズ174を使用することにより、前記液体表面から反射された光は最大面積にわたって集められる。光ファイバーを使用することによって、入射光は、レンズから検出器への入射光の直接反射を回避するために、反射光を集めるレンズを通り過ぎるかまたはそれを通って導かれる。このようにすることで、測定結果を可能な限り正確なものにすることができる。前記レンズはフレネルレンズとすることができ、それによってそれを軽量で薄くすることができる。
【0087】
図18において、図17と同様の飛行時間コンポーネント180が使用されている。反射光を集めるレンズは、前記液体表面から反射された光を集める円錐体(cone)182によって置き換えられている。前記円錐体の内面は反射性であり、それによって当該円錐体は収集された光を測定飛行時間コンポーネントの検出器上に効率的に集束させる。円錐体の代わりに、集光器を放物面として形成することも可能である。
【0088】
図16図18に示す実施例は、ハンドヘルド式ピペットと自動液体ハンドリングステーションの両方に適用することができる。
【0089】
本発明のいくつかの実施例において、光ファイバーまたは光伝導体を使用することによって、光が伝導されて前記液体表面に向かってまたはチップに向かって導かれる。
【0090】
本発明のいくつかの実施例において、光ファイバーまたは光伝導体を使用することによって、光が伝導されて前記検出器に向かって導かれる。
【0091】
光ファイバの使用は、特にハンドヘルド式ピペットにおいて、液体ハンドリングシステム内に光源および/または検出器を位置決めする際の柔軟性をもたらす。ハンドヘルド式ピペットでは、追加のコンポーネントを追加するために利用可能なスペースは限られている。
【0092】
前記チップが外側から照射される場合、ピペットとは別の、例えば液体の供給源として又は分注される液体の受入れ容器として使用される、容器内のチップと液体表面との接触を検出することが可能である。
【0093】
いくつかの実施例において、前記光源および検出器は、光伝導体を利用することによってピペットの本体の近くに配置することができる。
【0094】
一実施例において、赤外光が測定に使用される。IR光源および/またはIR検出器を、例えば液体ハンドリングシステムのチップ排出スリーブの下部に一体化してもよい。
【0095】
いくつかの実施例において、光は2つの代替経路、即ち、:1)チップ素材を通る経路、または2)チップ内部の空隙を通る経路、を介して測定検出器に投射(反射)される。本発明は、分析されるべき液体体積に関して信号強度および精度の最適化を可能にする:大きな液体体積(例えば、0.5mlより大きい、好ましくは1mlより大きい)に対しては、経路2)が使用される。小容量(例えば1ml未満、好ましくは0.5ml未満)に対しては、経路1)が使用される。重み付けを異ならせて両方の経路を使用することも可能である。
【0096】
好ましくは、本方法は、1μ1から約10ml、より好ましくは10μ1から5ml、例えば10μ1から200μ1の液体体積の分析に適用可能である。
【0097】
前記チップの円錐形の下端が液体を含むかどうかを分析するためにヒステリシス現象を適用することができる。
【0098】
その利点の1つは、従来の使い捨てチップを使用できることである。前記チップは、格子、レンズまたはカスタム形状のような、光を伝導または方向付けるための何ら特殊な手段を含む必要がない。
【0099】
いくつかの実施例では、前記チップはその両側に垂直に突出するチャンネルを含む。これらのチャンネルは、前記チップの他の部分と同じ素材でできていることが好ましく、それらは光源から検出器へ光を伝導するように構成されている。光は、光源から一方のチャネルを介して下方へ、そして他方のチャネルを介して上方の測定検出器へと伝導される。
【0100】
本方法は、ハンドヘルド式ピペットまたは自動液体ハンドリングステーションに適用することができる。液体ハンドリングステーションでは、チップ内の液体レベルを分析するための2つの独立した方法、例えば本発明の光学的方法および圧力測定に基づく方法を使用することができる。
【0101】
本方法は、液体体積をμl範囲で正確に測定することができる。
【0102】
本発明は、圧力に基づく液体レベル検出方法のいくつかの不利な点を克服する。本発明は、周囲圧力または海抜の高さによって影響されることがない。本発明は、チップの目詰まりを検出することができる。さらに、本方法は高粘度の液体を検出するのに適している。そのような液体の動きは、チップ内部の圧力変化に関して遅延する。本発明による光学測定は、チップ内に含まれる液体体積を即時にリアルタイムで検出することができる。
【0103】
以下、いくつかの実施例による電子機器および信号処理をより詳細に説明する。
【0104】
相対測定
例えばLEDまたはレーザの光源およびその電源の不安定性は、2つの検出器間で相対測定を実行することによって補償される。前記光源から出る光は2つの光路に分割される。一方の光路はピペットチップと相互作用し、他方の光路は前記ピペットチップとの何の相互作用も無く光源の強度を直接または一定の減衰で測定するように構成される。2つの検出器はそれらがそれらの線形範囲内で使用されている限り同一である必要はない。測定の精度は検出器のリニアな応答に基づく。
【0105】
ノイズ源
「ノイズ」という用語は、測定結果に影響を与えるものではあるが測定されるべきパラメータの関数ではないすべてのものを意味する。ピペットチップおよびその中の液体体積の光学的測定において、最も重大なノイズは光信号中のノイズである。周囲からの散乱光と検出器の暗電流は、測定された信号中のDC成分として観察され、室内の照明は100-Hzの成分を引き起こす可能性がある。光学的および電子測定セットアップには、1/fノイズ、ホワイトノイズ、および電源周波数の50Hzおよび150Hz成分も含まれる。ホワイトノイズを例外として、最も重要なノイズ源のほとんどは175Hz未満の周波数を有する。
【0106】
変調およびサンプリング
変調において、入力信号は、それがもはや低周波ノイズによって影響されることのない適切なより高い周波数にシフトされる。検出器によって生成された信号は、LEDのチョッピングに対応する周波数に変調される。AD変換器によって実行されるサンプリングでは、LEDの各オン/オフ状態ごとに1つのデジタル値が形成される。したがって、サンプリング周波数(FS)は変調周波数に関して2倍になる。入力信号は、いわゆるナイキスト周波数(FS/2)におけるサンプリング周波数に関して振幅変調信号として送信される。
【0107】
アナログアンチエイリアシングフィルタリング
AD変換器によって実行されるサンプリングの前に、信号はアナログローパスフィルタによってフィルタリングされる。いわゆるアンチエイリアシングローパスフィルタは、サンプリング中にサンプリング周波数の半分(FS/2)を超える周波数のサンプリング信号への折り返しを制限する。前記AD変換器のサンプリングは前記変調と同時に行われるが、このことは、周波数FS/2の信号がアナログローパスフィルタを通過しなければならず、そのカットオフ周波数(-3dB)がFS/2プラス合理的な限界(marginal)に設定される、ことを意味する。
【0108】
復調およびフィルタリング
ナイキスト周波数の振幅変調された入力信号は、[1,-1,1,-1,….]の形式を有するナイキスト周波数のコサイン信号と乗算される時に復調される、すなわちゼロ周波数にシフトされる。振幅変調されると、変調信号のスペクトルは搬送波信号の周りにシフトされる。ピペットチップおよびチップ内の液体の量を検出するためには、ゼロ周波数における信号の強度が着目される。復調後、入力信号はDC成分に含まれ、残りのAC成分は測定に関してノイズと見なされる。復調の結果、ゼロ周波数付近に位置する最大の雑音電力はナイキスト周波数付近にシフトされる。復調後、入力信号がノイズや干渉によって損なわれるのを防ぐために、信号は最大限急峻で狭帯域のローパスフィルタによってフィルタリングされる。このようにすることで、位相敏感検出またはロックイン増幅器の原理が実現される。
【実施例
【0109】
図19は、ハンドヘルド式メカニカルピペット(SartoriusのTactaモデル)に組み込まれた前記測定システムを示す。このシステムは測光測定に基づいている。この試験システムでは、正規化検出器は使用されなかった。その他のすべての点で、当該システムは図2に示す測定形状を採用している。測定中は、1000μlのチップを使用し、分注容量を1000μlに設定した。液体吸引中に検出器信号を記録した。測定システムからのポーリングによって得られた瞬時AD変換器結果を平均することによって、デジタルローパスフィルタリングが実行された。その結果は、チップ内の液体体積に対する測定された信号強度のグラフとして図20に示されている。これらの結果は、システムがチップ内の液体の存在を確実に検出し、チップをうまくピックアップすることができることを示している。
【0110】
開示された本発明の実施例は、本明細書に開示された特定の構造、プロセスステップ、または素材に限定されるものではなく、関連分野の当業者によって認識されるようにそれらの均等物に拡張されるものであると理解される。本明細書で使用される用語は特定の実施例を説明する目的でのみ使用されており、限定することを意図していないことも理解されるべきである。
【0111】
一実施例またはある実施例への本明細書を通しての言及は、その実施例に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも一つの実施例に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所での「一実施例では」または「ある実施例では」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施例を指すとは限らない。例えば、約または実質的になどの用語を使用して数値が参照される場合、その正確な数値もまた開示される。
【0112】
本明細書では、便宜上、複数の項目、構造要素、構成要素、および/または素材を共通のリストに提示することがある。ただし、これらのリストは、リストの各メンバーが個別の一意のメンバーとして個々に識別されるように解釈されるべきものである。したがって、そのようなリストのいかなる個々のメンバーも、特にそうでないと銘記されない限り、単に共通グループにおけるその提示に基づいて同じリストの他のメンバーの事実上の等価物として解釈されるべきではない。さらに、本発明の様々な実施形態および実施例は、その様々なコンポーネントの代替物とともに本明細書で参照され得る。そのような実施形態、実施例、および代替物は、互いに事実上等価なものとして解釈されるべきではなく、本発明の別々の自律的表現として見なされるべきであると理解される。
【0113】
さらに、記載された特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施例において任意の適切な方法で組み合わせることができる。この説明では、本発明の実施例の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状などの実施例など、多数の具体的な詳細が提供されている。しかしながら、関連分野の当業者は、本発明が1つ以上の具体的な詳細抜きで、または他の方法、コンポーネント、素材などを用いて、実施され得ることを認識するであろう。他の場合では、周知の構造、素材または操作は、本発明の態様を曖昧にすることを避けるために、詳細な図示または説明は省略される。
【0114】
前述の実施例は1つまたは複数の特定の用途における本発明の原理の例示であるが、発明能力を行使することなく、かつ、本発明の原理および概念から逸脱することなく、実施の形態、使用法および詳細において多数の改造を行うことが可能であることが当業者には明らかであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲による以外は、限定されることを意図するものではない。
【0115】
「有する(comprise)」および「含む(include)」という動詞は、本書では、列挙されていない特徴の存在も排除も要求もしないオープンな限定として使用されている。従属請求項に記載されている特徴は、特に明記しない限り互いに自由に組み合わせることができる。さらに、本明細書全体を通して”a”または”an”の使用、すなわち単数形は、複数を排除するものではないことを理解されたい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の少なくとも一部の実施例は、ハンドヘルド式ピペットおよび自動液体ハンドリングステーションにおいて産業上の用途を見出す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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