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特許7449048内燃機関の少なくとも1つの燃焼室に水を供給するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】内燃機関の少なくとも1つの燃焼室に水を供給するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/025 20060101AFI20240306BHJP
   F02B 47/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F02M25/025 K
F02B47/02
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019130335
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2020016234
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】102018000007136
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505279927
【氏名又は名称】マグネティ マレッリ ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ ボナンドリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ スタンツァーニ
(72)【発明者】
【氏名】フェデリーコ モンティ
(72)【発明者】
【氏名】アントーニオ バルブート
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-155958(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209166(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/050394(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/050893(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/050895(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/091670(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03324031(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 47/02
F02M 25/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(2)の少なくとも1つの燃焼室に水を供給するための供給システム(1)であって、前記供給システム(1)は、
多量の水を含むように設計されていて且つ開口部(14)を備えた底壁(10)を有するタンク(3)と、
前記開口部(14)を密閉して封止するプラグ(15)と、
抗菌剤を含んでいて且つ前記水と接触する前記タンク(3)の内に設置される本体(13)と、
供給ダクト(5)と、
前記タンク(3)から水を吸い込み且つ加圧された水を前記供給ダクト(5)内に圧送するように設計されるポンプ(4)とを具備する、供給システム(1)において、
前記抗菌剤を含む前記本体(13)が、前記プラグ(15)に着脱可能な状態で設置される、ことを特徴とする供給システム(1)。
【請求項2】
前記プラグ(15)は、前記プラグ(15)から前記タンク(3)の内側に向かって突出するピン(16)を有しており、
前記抗菌剤を含む前記本体(13)は、その中心において、銀含有本体(13)を前記プラグ(15)に固定するように前記ピン(16)の周りに嵌合する、孔を有することを特徴とする請求項1に記載の供給システム(1)。
【請求項3】
前記ピン(16)は、前記プラグ(15)に近づくにつれて大きくなる、円錐台形状を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の供給システム(1)。
【請求項4】
前記抗菌剤は銀である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項5】
前記タンク(3)の前記底壁は、銀被覆層により少なくとも部分的に内側を覆われる、ことを特徴とする請求項4に記載の供給システム(1)。
【請求項6】
前記タンク(3)の前記底壁は、銀繊維で充填されたプラスチック材料により作られる、ことを特徴とする請求項4に記載の供給システム(1)。
【請求項7】
前記タンク(3)の内側に配置されていて且つ該タンク(3)に含まれる前記水を加熱するように設計される加熱装置(8)と、
前記タンク(3)に含まれる前記水内に存在する微生物の濃度を減らすことを目的とした熱処理を実施するために、前記タンク(3)に含まれた前記水を、20秒を超える時間にわたって60℃を超える温度に加熱するように前記加熱装置(8)を制御するように設計される、制御ユニット(12)と、を具備することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項8】
前記加熱装置(8)が電気熱抵抗要素及び/又は前記内燃機関(2)の冷却液の熱の一部を前記タンク(3)に含まれる前記水に伝達する液-液熱交換器を具備する、ことを特徴とする請求項7に記載の供給システム(1)。
【請求項9】
前記制御ユニット(12)は、前記タンク(3)の内部に新しい水が追加される時を決定するように設計され、更に前記タンク(3)内に新しい水を追加した後に、前記タンク(3)に含まれる前記水を加熱するように前記加熱装置(8)を制御するように設計される、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の供給システム(1)。
【請求項10】
前記タンク(3)には、前記タンク(3)に含まれる前記水の水位を測定するように設計されたセンサ(11)が取り付けられており、
前記制御ユニット(12)は、前記タンク(3)内に含まれる前記水の水位の上昇が発生した時に、前記タンク(3)内に新しい水が追加されたことを確定する、ことを特徴とする請求項9に記載の供給システム(1)。
【請求項11】
前記制御ユニット(12)は、前記タンク(3)への新しい水の追加に関係なく、所定の時間において、前記タンク(3)内に含まれた前記水を加熱するように前記加熱装置(8)を制御するように設計される、ことを特徴とする請求項7~10のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項12】
前記内燃機関(2)が作動された時にのみ前記加熱装置(8)を制御し、前記微生物の濃度を減少させることを目的として、前記タンク(3)に含まれた前記水を加熱するように、熱処理を行うように制御するものであって、その際には、20秒を超える時間にわたって60℃を超える温度に加熱することが終了するまで、前記制御ユニット(12)は、前記内燃機関(2)点火するのを待つようになっている、ことを特徴とする請求項7~11のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項13】
前記タンク(3)は、前記タンク(3)の内部を常に暗所に保つように、光に対して不透明な材料により作られる、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項14】
前記タンク(3)の内面は、滑らかであり、5μm未満の表面粗さを有する、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項15】
燃焼室が画定される少なくとも1つのシリンダと、
請求項1~14のいずれか一項に記載の供給システム(1)と、を具備することを特徴とする内燃機関(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2018年7月12日に出願された伊国特許出願第102018000007136号から優先権を主張しており、その全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、内燃機関の少なくとも1つの燃焼室に水を供給するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
知られるように、内燃機関において、燃料に加えて水を、シリンダの内部に画定された燃焼室に供給することが提案されてきた。
【0004】
内燃機関において、水噴射システムは、爆発現象に対する抵抗力を高めることにより空気/燃料混合物を冷却するために、噴霧の形態で、又は燃料と混合して、又は燃焼室内へと直接的に、吸気ダクト(導管)を介してエンジン内に水を導入することを具備する。水は、高い蒸発潜熱を有する、言い換えれば、水は液体から気体状態に変換するために多量のエネルギーを必要とする。室温の水が吸気ダクトに噴射されると、水は、入口空気及び金属製の壁から熱を吸収し、蒸発し、従って入力負荷を冷却する。従って、エンジンは、より冷たい空気、即ちより濃い空気を吸い込み、体積効率を改善し、爆発の可能性を減少させ、そしてより多くの燃料を噴射することもまた可能である。圧縮中に、小さな液滴中に存在する水は、蒸発して、圧縮された空気から熱を吸収し、空気を冷却してその圧力を低下させる。圧縮後、燃焼が発生し、そしてここで更なる有益な効果が存在しており、即ち、燃焼中に多くの熱が発生し、熱は水により吸収され、サイクル(循環行程)のピーク(最高点)温度を低下させ、そして結果としてNOxの生成とエンジン壁が吸収しなければならない熱とを減少させる。この蒸発はまた、エンジンの熱の一部(熱はそうでなければ無駄にされるであろう)を、生成された蒸気により正確に与えられる、圧力に変換し、ピストンへの推力を増大させ、そして更に可能な排気タービン内へのエネルギーの流れも増大させる(タービンは、更に、追加の水による熱の吸収のおかげで排気ガスの温度の低下から利益を得る)。
【0005】
給水システムは、(付着物の形成を回避するために)脱鉱物水で満たされたタンクを具備しており、タンクは、車両の外部から供給可能であるか、あるいはタンクはまた、空調機の凝縮水、排気の凝縮水を使用することにより、あるいは雨水を輸送することによってさえも供給可能である。
【0006】
特許文献1(国際公開第2018/050895号)は、内燃機関の燃焼室への脱鉱物水の噴射システムを開示する。噴射システムは、タンクの内側に形成された、任意の氷を溶かすように作動する、電気加熱器を備えた脱鉱物水貯蔵タンクを具備する。好適な実施の形態によれば、少なくとも1つのタンク壁は、抗菌剤を具備する。
【0007】
特許文献2(国際公開第2018/050394号)は、自動車の内燃機関のための水噴射システムを開示しており、噴射システムは、少なくとも1つの水噴射器と、水タンクと、水タンクを水噴射器に接続する供給ラインと、を具備する。好適な実施の形態によれば、水タンクの壁は、有害生物(例えば、藻類、菌類、細菌又は別の微生物)を制御するための、言い換えれば有害生物による生物汚染を防止し更に戦うための、殺生物剤により被覆される。殺生物剤は、単なる物理的又は機械的作用以外の方法で有害生物と戦うことができる、物質又は物質の混合物として定義される、即ち、殺生物剤は、有害生物の影響を阻止、中和、防止するためか、又はさもなければ有害生物と戦うために、有害生物を破壊することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2018/050895号
【文献】国際公開第2018/050394号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、内燃機関内の少なくとも1つの燃焼室に水を供給するためのシステムであって、長期間、即ち内燃機関の試運転後の数年後においても有効で且つ効率的な給水を確保する、システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、内燃機関の少なくとも1つの燃焼室に水を供給するためのシステムは、添付の特許請求の範囲に記載のように提供される。
【0011】
本発明はここで、非限定的な実施の形態を例示する添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、内燃機関の少なくとも1つの燃焼室に水を供給するためのシステムの概略図である。
図2図2は、図1の給水タンクを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において、参照番号1は、全体として、内燃機関2に水を供給するためのシステムを指定しており、水は、内燃機関2のシリンダ内に形成された燃焼室が燃焼効率を高めるために及び/又は発生される動力を増大するように意図される。
【0014】
供給システム1は、多量の脱鉱物水を含むタンク3と、タンク3内から水を吸い込んで加圧された水を供給ダクト5に送るように設計されたポンプ4と、を具備する。複数の噴射器6は、供給ダクト5の端部分に接続しており、低圧水は、そこを通り新鮮な空気がシリンダに運ばれる、対応する吸気ダクト内に噴射される。別の実施の形態によれば、噴射器6は、高圧水をシリンダ内に直接噴射することができる(この場合、追加の高圧ポンプが一般的に設けられる)。別の実施の形態によれば、供給システム1により供給される水は、シリンダ内に噴射される燃料と混合される。
【0015】
最大圧力弁7は、ポンプ4のすぐ下流の供給ダクト5に沿って配置されており、即ち、供給ダクト5内の圧力が所定の閾値を超えた時に過剰の水をタンク3に再導入する、開放した弁であり、実質的に、最大圧力弁7は、供給ダクト5内の圧力が所定の閾値を超えることを防止するための圧力調整器として作用する。
【0016】
代替で且つ完全に等価な実施の形態によれば、圧力センサが、ポンプ4の下流に配置されており(例えば、噴射器6が接続される共通の導管内に)、そしてポンプ6の流量は、所望の値(それはエンジン点に応じて可変であってもよい)の付近で、ポンプ4の下流側の圧力を維持するようにフィードバックで調整される。
【0017】
図2に示されるように、供給システム1は、タンク3に結合されていて且つ該タンク3に含まれる水を加熱するように設計された、加熱装置8を具備する。好適な実施の形態によれば、加熱装置8は、タンク3内に含まれた水と直接接触するはずのタンク3内に配置される、即ち、加熱装置8は、タンク3の上壁9と底壁10との間に配置される。好適な実施の形態によれば、加熱装置8は、電気熱抵抗(即ち、ジュール効果により電気エネルギーを熱に変換する要素)と、更に内燃機関2の冷却液が有する熱の一部をタンク3内に含まれた水に伝達する液-液熱交換器と、を具備しており、明らかに、加熱装置8は、電気熱抵抗のみ、又は液-液熱交換器のみを具備可能である。
【0018】
図2に示されるように、供給システム1は、タンク3の底壁10を貫通して配置されることが好ましく且つタンク3内に含まれる水の温度と水位と水質とを測定するように適合される、センサ11を具備する。言い換えれば、センサ11は、タンク3内に含まれる水の温度と水位と水質とをそれぞれ決定するように設計される、3つの異なる感知要素をそれぞれ、単一の本体内に統合する。一例として、センサ11は、超音波によりタンク3内に含まれる水の水位(即ち、タンク3の充填度)を決定可能である。
【0019】
例として、密度及び導電率は、タンク3に含まれる水の品質の指標であるので、センサ11は、タンク3に含まれる水の密度及び導電率を決定可能である。もしタンク3に含まれる水の密度が第1の所定の閾値(純水の密度に対応する約997kg/m3)よりかなりより低い場合には、そのことは、水より密度の低い汚染液体(一般的にはエンジンオイル、ガソリン又はディーゼル)が水中に存在することの指標である。他方で、もしタンク3に含まれる導電率が第2の閾値よりも著しくより高い場合には、そのことは、鉱物性の塩イオンが水中に存在する(即ち、水が十分に脱鉱物化されていない、従って長期の運転において付着物を生じさせてもよい)ことの指標である。
【0020】
供給システム1は、該供給システム1の動作を監視していて且つ、とりわけ、センサ11により実施された読み取り値を受信して加熱装置8を制御する、制御ユニット(装置)12を具備する。
【0021】
センサ11がタンク3内に含まれる水の品質が不十分であることを検出した場合に、制御ユニット12は、内燃機関2が搭載される、車両の運転者への信号を生成しており、そしてもしタンク3内に含まれる水の品質が非常に不満足なものである場合には、内燃機関2への給水を中断し(従って、内燃機関2を低性能モードで運転することは、水の噴射により与えられる利益を享受できない)、そしてタンク3を空にすること及び洗浄を必要とする。
【0022】
一般的に、制御ユニット12は、タンク3内に含まれる(及びセンサ11により検出される)水の温度がゼロより低いか又は近い時に、タンク3内において氷の形成を防ぐように、又は以前に形成された氷(比較的長い停止後の内燃機関2の冷間始動の場合において)を溶かすように加熱装置8を使用する。この場合において、加熱の単一の目的は、氷の形成を防止すること、又は存在する任意の氷を溶かすことであるので、制御ユニット12は、加熱装置8を制御して、タンク3内に含まれる水を、ゼロをわずかに上回る温度(例えば5℃から10℃)に加熱する。
【0023】
タンク3に含まれる水は、微生物(例えば、細菌、胞子等)、または肉眼では見ることができないような寸法(0.1mm未満)の生存生物を含んでもよい。その様な微生物は、時間の経過とともにタンク3の内において増殖可能であり、コロニー(群生)を生成可能であり、そのコロニーは、例えば、ポンプ4の吸水を妨げる(部分的に又は完全に)ことができるか、又はポンプ4により吸い込まれ、その後、ポンプ4、ポンプ4の下流に設置された任意のフィルタ、噴射器6を目詰まりさせる危険を伴って、あるいはもしコロニーが内燃機関2のシリンダ内に形成された燃焼室に達すると、性能を低下させる可能性及び/又は汚染物質の発生が増加する可能性と共に燃焼を妨害する危険性を伴って、噴射器6に送られ得る。言い換えれば、タンク3内に含まれる水の中に存在する微生物は、時間とともに増殖し、数が増加してもよく、例えば、タンク3の壁において藻類又はバイオフィルム(生物膜)を形成することをもたらしてもよく、その様な藻類又はバイオフィルムが壁から剥離すると、ポンプ4の吸引を妨げるか、又はポンプ4により吸入され、更に従って噴射器6及び/又はシリンダ内に形成された燃焼室にさえ到達してもよい。
【0024】
制御ユニット12は、(時折)タンク3内に含まれる水の熱処理(即ち一種の殺菌/低温殺菌)を行うために(即ち、熱の影響により、タンク3内に含まれる水の中に存在する微生物の濃度を減少させるために)、タンク3内に含まれる水を、20秒を超える(好適には40から60秒を超える)時間に関して60℃(好適には70℃)を超える温度までやはり加熱するように加熱装置8を制御する。タンク3又は該タンク3に収容された構成要素を損傷しないために、非常に高い温度(100℃以上)に達することができないので、加熱装置8を使用して行われる熱処理は、一種の殺菌(即ち、部分的に不完全な殺菌)であることを強調することは重要であり、熱処理の終わりにおいて、タンク3に含まれる水は、医学的に「無菌」ではないが、しかしいずれにせよ熱処理は、微生物の存在を著しく減少させる。
【0025】
換言すれば、制御ユニット12は、栄養型の微生物と、細菌と、更に長期の作用により、幾つかの細菌の胞子と、を(可能な限り)減少させることを目的とする熱処理を、タンク3内に含まれる水が受けるように、加熱装置8(氷結防止機能のためだけに当初設けられた)を(場合によっては)使用する。実験的試験は、タンク3内に含まれる水を少なくとも2から5分間において70℃から75℃に加熱することにより、総細菌濃度の90から98%の減少を達成し得ることを示した。
【0026】
一般的に、制御ユニット12は、新しい水がタンク3内に追加される時を決定し、次にタンク3内に新しい水を加えた直後にタンク3に含まれる水を加熱するように加熱装置8を制御する(微生物の濃度を減少させることを目的とする加熱処理を実行するために)。
【0027】
即ち、新たな潜在的に無菌ではない水が追加されると直ぐに、制御ユニット12は、タンク3に含まれる全ての水の微生物濃度を減少させることを目的とした熱処理を(少なくとも)実行する。タンク3への新しい水の追加は、センサ11により提供される水位信号に基づいて決定される、即ち、制御ユニット12は、タンク3内に含まれる水の水位の上昇が生じた時に、新しい水がタンク3内に追加されたと判定する。
【0028】
可能な実施の形態によれば、制御ユニット12は、タンクへの新しい水の追加に関係なく、時間間隔(例えば、毎月、隔月、毎四半期…又は最後の熱処理からの毎月)において、タンク3に含まれる全ての水の微生物濃度を減少させることを目的とした(少なくとも)1回の熱処理を実施する。
【0029】
一般的に、加熱装置8は、内燃機関2の作動時にのみ、即ち内燃機関2の冷却液が適切に熱い時及び/又は内燃機関2が(その交流機を介して)加熱装置8の熱抵抗のための十分な量の電気エネルギーを発生可能である時にのみ、微生物濃度の減少を目的とした熱処理を実施するように使用可能である。結果的に、タンク3に含まれる水を加熱して微生物の濃度の減少を目的とした熱処理を実施する必要がある場合に、制御ユニット12は、いずれにせよ、最初の有用な機会、所謂内燃機関2の最初の点火(十分に長い)、を待たなければならない。
【0030】
図2に示される実施の形態によれば、水と接触するタンク3内に収容される少なくとも1つの銀含有本体13が設けられており、銀は、抗菌剤であり、即ち、銀は、抗菌能力を有する(Ag+の銀イオンの放出がある場合及びAg+の銀イオンの放出がない場合の両方で発揮される)。言い換えれば、銀は、タンク3内に含まれる水の細菌濃度を制御下に維持することを可能にする天然の静菌特性を有しており、従って経時的に藻類及びバイオフィルムの増殖を防止する。
【0031】
添付の図面に示された実施の形態において、タンク3内に設置された単一の銀含有本体13が球形(しかし銀含有本体13は、別の形状、例えば平行六面体又は角錐形であり得る)で提供される。好適な実施の形態によれば、タンクの底壁10は、開口部14を有しており、開口部14は、(好ましくは)ねじ付きプラグ15により(水密に)閉鎖されており、銀含有本体13は、プラグ15に着脱可能に搭載される、即ち該プラグ15と一体である。好適な実施の形態によれば、プラグ15は、該プラグ15からタンク3の内側に向かって片持ち式に突出するピン16を有しており、そして銀含有本体13は、銀含有本体13をプラグ15に固定するように(締めしろ式固定を得るような幾らかの努力により)ピン16の周りに嵌合する孔を中央に有しており、例えば、ピン16は、銀含有本体13のピン16への締めしろ式固定を容易にするようにプラグ15に近づくにつれて寸法が増大する、円錐台形状を有することができる。開口部14は、該タンク3の洗浄作業中に、タンク3を完全に空にするように使用可能である。
【0032】
開口部14はまた、タンク3を実際に空にするために必要であるよりもはるかに大きいかなりの寸法、及びその上に銀含有本体13が設置されるピン16に加えて別の構成要素を収容することを可能にする、大型プラグ15を有することを目的とするかなりの寸法、を有してもよいことを強調することが重要であり、この様にして、プラグ15を分解すること(ねじを外すこと)により、プラグ15に設置された全ての構成要素は、タンクの外側に搬送することが可能であり、そのことは従って、検査及び保守点検が容易にする。例えば、加熱装置8、ポンプ4及び/又はフィルタ21は、プラグ15に設置可能である(銀含有本体13に加えて)。
【0033】
別の実施の形態(それは、単一の銀含有本体13の存在と組み合わせる可能である)によれば、タンク3の壁は、少なくとも部分的に内部が銀被覆層により被覆されており、従って銀被覆層は、タンク3に含まれる水と直接接触する。
【0034】
別の実施の形態(それはまた、単一の銀含有本体13の存在と組み合わせ可能である)によれば、タンク3の壁は、銀繊維で充填されたプラスチック材料で作られており、プラスチック材料は、従って、タンク3に含まれる水と直接接触する。
【0035】
タンクの上壁9は、ねじ付きプラグ18により封止される、充填開口部17(即ち、タンク3に水を加えるように使用される開口部)を有しており、プラグ18は、二方式通気弁19(即ち、タンク3が外部環境に対して過度に加圧されている時、及びタンク3が外部環境に対して加圧不足にある時の両方で作動する)、又はポンプ4の円滑な運転を確保するためにタンク3内部の圧力を外部環境の圧力に等しく維持するように作用する、自動空気通過弁を備えることが好ましい。
【0036】
添付の図面に示される好適な実施の形態によれば、ポンプ4は、タンク3の底壁10の付近のタンク3の内側を起点とする、吸入ダクト20によりタンク3から水を吸い込む。特には、ポンプ4の吸入ダクト20は、フィルタ21を起点としており(即ち、吸入ダクト20の入口にフィルタ21が配置される)、一例として、フィルタ21は、機械的であり、10μmより大きい寸法を有する、全ての粒子を遮断するように設計される。
【0037】
添付の図面に示される好適な実施の形態によれば、タンク3の内側に配置されてスロッシング(掻き回し)防止機能を有する迷路を画定する、一連の壁22(場合によっては穿孔された)が設けられており、一般的に、壁22は、お互いに垂直な少なくとも2つの異なる向きを有する。
【0038】
最後に、図2に示されるように、再循環ダクト23は、タンク3内に過剰の水(即ち、最大圧力弁7が該供給ダクト5の内側の圧力を低下させるように供給ダクト5から除去する水)を再導入する最大圧力弁7を起点とする。可能な実施の形態によれば、最大圧力弁7は、その端部における圧力差(即ち、供給管5とタンク3との間の圧力差)が所定の閾値よりも大きい時に開く、一方式弁を再循環ダクト23に沿って配置することにより簡単に実現可能であり、一方式弁と直列に、再循環ダクト23は、再循環ダクト23を通り流れる水の流れを制限する、較正された瓶の首部を具備可能である。
【0039】
好適な実施の形態によれば、光が微生物の増殖を促進するので、タンク3の内部を常に暗所に保つように、タンク3は、光に対して不透明な材料(一般的にプラスチック)により作られる。
【0040】
好適な実施の形態によれば、タンク3の内面は、該内面への微生物の付着をより困難にするように滑らかであり、特には、タンク3の内面の表面粗さは、5μm未満であることが好ましい。
【0041】
添付の図面に示される実施の形態において、ポンプ4は、タンク3の外部に配置されており、異なる完全に等価な実施の形態によれば、ポンプ4は、タンク3の内部に配置されており、即ちポンプ4は、タンク3内に一体化される。
【0042】
添付の図面に示される実施の形態において、水加熱と銀含有本体13の存在との両方は、タンク3に含まれる水の中の微生物の増殖を制限するように使用されており、図示されない別の実施の形態によれば、水加熱のみ、又は銀含有本体13の存在のみが、タンク3に含まれる水の中の微生物の増殖を制限するように使用可能である。
【0043】
本明細書に記載の実施の形態は、本発明の保護範囲から逸脱することなく、お互いに組み合わされてもよい。
【0044】
上述の供給システム1は、多くの利点を有する。
【0045】
第1に、上述の供給システム1は、長期間(即ち、内燃機関2の試運転後数年)でさえも、タンク3内の微生物の増殖を効果的且つ効率的に防止することを可能にしており、この様にして、上述の供給システム1は、タンク3内の微生物の増殖がポンプ4の吸入ダクト20、及び特に吸入ダクト20の入口に連結されたフィルタ21を(完全に又は部分的に)塞いでもよい、危険性を回避しつつ、更にまたタンク3内で増殖した微生物が噴射器6及び内燃機関2のシリンダに形成された燃焼室に到達することを防止しながら完全な効率において常に維持される。
【0046】
更に、上述の供給システム1は、タンク3内に含まれる水への任意の種類の添加剤の添加も提供しないので、該水の純度を保証する。実際に、水に添加されたものは全て、燃焼室に必ず入り、そしてその後内燃機関2の排気ダクトを通り外部環境に放出されるので、従って、タンク3内に含まれる水に、水に溶解する殺菌添加剤を添加することは一般的に勧められない。
【0047】
最後に、タンク3に含まれる水の中の微生物の増殖を制限するために、供給システム1は、別の目的のために既に存在する構成要素(加熱装置8)を使用するか、又は供給システム1は、過剰なコストを有さず且つ市場で容易に入手可能である、構成要素(銀含有本体13)を使用するので、上述の供給システム1は、製作するのに簡単且つ経済的である。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、
内燃機関(2)の少なくとも1つの燃焼室に水を供給するための供給システム(1)であって、前記供給システム(1)は、
多量の水を含むように設計されていて且つ開口部(14)を備えた底壁(10)を有するタンク(3)と、
前記開口部(14)を密閉して封止するプラグ(15)と、
抗菌剤を含んでいて且つ前記水と接触する前記タンク(3)の内に設置される本体(13)と、
供給ダクト(5)と、
前記タンク(3)から水を吸い込み且つ加圧された水を前記供給ダクト(5)内に圧送するように設計されるポンプ(4)とを具備する、供給システム(1)において、
前記抗菌剤を含む前記本体(13)が、前記プラグ(15)に着脱可能な状態で設置される、ことを特徴とする供給システム(1)である。
第2の態様は、
前記プラグ(15)は、前記プラグ(15)から前記タンク(3)の内側に向かって突出するピン(16)を有しており、
前記抗菌剤を含む前記本体(13)は、その中心において、銀含有本体(13)を前記プラグ(15)に固定するように前記ピン(16)の周りに嵌合する、孔を有することを特徴とする第1の態様における供給システム(1)である。
第3の態様は、
前記ピン(16)は、前記プラグ(15)に近づくにつれて大きくなる、円錐台形状を有する、ことを特徴とする第2の態様における供給システム(1)である。
第4の態様は、
前記抗菌剤は銀である、ことを特徴とする第1の態様~第3の態様のいずれか1つにおける供給システム(1)である。
第5の態様は、
前記タンク(3)の前記底壁は、銀被覆層により少なくとも部分的に内側を覆われる、ことを特徴とする第4の態様における供給システム(1)である。
第6の態様は、
前記タンク(3)の前記底壁は、銀繊維で充填されたプラスチック材料により作られる、ことを特徴とする第4の態様における供給システム(1)である。
第7の態様は、
前記タンク(3)の内側に配置されていて且つ該タンク(3)に含まれる前記水を加熱するように設計される加熱装置(8)と、
前記タンク(3)に含まれる前記水内に存在する微生物の濃度を減らすことを目的とした熱処理を実施するために、前記タンク(3)に含まれた前記水を、20秒を超える時間にわたって60℃を超える温度に加熱するように前記加熱装置(8)を制御するように設計される、制御ユニット(12)と、を具備することを特徴とする第1の態様~第6の態様のいずれか1つにおける供給システム(1)である。
第8の態様は、
前記加熱装置(8)が電気サーミスタ及び/又は前記内燃機関(2)の冷却液の熱の一部を前記タンク(3)に含まれる前記水に伝達する液-液熱交換器を具備する、ことを特徴とする第7の態様における供給システム(1)である。
第9の態様は、
前記制御ユニット(12)は、前記タンク(3)の内部に新しい水が追加される時を決定するように設計され、更に前記タンク(3)内に新しい水を追加した後に、前記タンク(3)に含まれる前記水を加熱するように前記加熱装置(8)を制御するように設計される、ことを特徴とする第7の態様又は第8の態様における供給システム(1)である。
第10の態様は、
前記タンク(3)には、前記タンク(3)に含まれる前記水の水位を測定するように設計されたセンサ(11)が取り付けられており、
前記制御ユニット(12)は、前記タンク(3)内に含まれる前記水の水位の上昇が発生した時に、前記タンク(3)内に新しい水が追加されたことを確定する、ことを特徴とする第9の態様における供給システム(1)である。
第11の態様は、
前記制御ユニット(12)は、前記タンク(3)への新しい水の追加に関係なく、所定の時間において、前記タンク(3)内に含まれた前記水を加熱するように前記加熱装置(8)を制御するように設計される、ことを特徴とする第7の態様~第10の態様のいずれか1つにおける供給システム(1)である。
第12の態様は、
前記タンク(3)内に含まれる前記水を加熱して、前記内燃機関(2)が作動された時にのみ前記微生物の濃度を減少させることを目的とした熱処理を行うように、前記タンク(3)に含まれた前記水を加熱する必要がある時に、前記制御ユニット(12)は、最初の有用な機会、即ち前記内燃機関(2)の最初の点火、を待つように、前記制御ユニット(12)は、前記加熱装置(8)を制御するように設計される、ことを特徴とする第7の態様~第11の態様のいずれか1つにおける供給システム(1)である。
第13の態様は、
前記タンク(3)は、前記タンク(3)の内部を常に暗所に保つように、光に対して不透明な材料により作られる、ことを特徴とする第1の態様~第12の態様のいずれか1つにおける供給システム(1)である。
第14の態様は、
前記タンク(3)の内面は、滑らかであり、5μm未満の表面粗さを有する、ことを特徴とする第1の態様~第13の態様のいずれか1つにおける供給システム(1)である。
第15の態様は、
燃焼室が画定される少なくとも1つのシリンダと、
第1の態様~第14の態様のいずれか1つにおける前記燃焼室に水を供給するためのシステム(1)と、を具備することを特徴とする内燃機関(2)である。
【符号の説明】
【0048】
1 供給システム
2 内燃機関
3 タンク
4 ポンプ
5 供給ダクト
6 噴射器
7 最高圧力弁
8 加熱装置
9 上壁
10 底壁
11 センサ
12 制御ユニット
13 銀含有本体
14 開口部
15 プラグ
16 ピン
17 充填開口部
18 プラグ
19 通気弁
20 吸入ダクト
21 フィルタ
22 壁
23 エンジン再循環ダクト
図1
図2