(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】バスバーデバイスとパワーコンバータハウジングとを備えたシステム、その生産方法、車両用パワーコンバータ、および車両
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240306BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2019139555
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】10 2018 118 525.1
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518334554
【氏名又は名称】ヴァレオ ジーメンス エーアオトモーティヴェ ゲルマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Valeo Siemens eAutomotive Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】マティアス シュミット
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドロス クールギアリス
(72)【発明者】
【氏名】アンナ カイザー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ アレキサンドゥル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ホイラー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ノーベル
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-216802(JP,A)
【文献】特開2014-042377(JP,A)
【文献】特許第6351878(JP,B1)
【文献】国際公開第2014/208450(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/187598(WO,A1)
【文献】実公昭43-007102(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーデバイス(7)とパワーコンバータハウジング(6)と
、を備えたシステム(5)であって、
前記バスバーデバイス(7)は、
少なくとも2つのバスバー(7a
、7
b)により形成されたスタックと前記バスバーデバイス(7)の2つの絶縁領域(10a
、10
b)で前記バスバー(7a
、7
b)を取り囲む電気的絶縁ボデー(9)と
、
前記バスバー(7a
、7
b)
の夫々は、電流の流れる方向に延在し対向する2つの基面(14a、14b)と、前記基面(14a、14b)を連結し電流の流れる方向に延在する側面(13a、13b)と
、を有し、
前記絶縁ボデー(9)に開口(12)
が形成され
、前記バスバー(7a
、7
b)の一つの前記側面(13a)
と前記基面(14a、14b)の一
部を露出させる
前記絶縁領域(10a、10b)に形成された前記温度制御領域(11a
、11
b)
と、を備え、
前記バスバー(7a
、7
b)は、前記温度制御領域(11a
、11
b)において
、ギャップフィラーである熱伝達手段(19)によって前記パワーコンバータハウジング(6)と熱的に接続されて
おり、
前記バスバー(7a、7b)は、前記前記温度制御領域(11a、11b)内の前記ギャップフィラーに埋没され、前記ギャップフィラーは、前記パワーコンバータハウジング(6)に対して電気的絶縁の形成と共に熱的接続が形成される、ことを特徴とす
るシステム(5)。
【請求項2】
前記絶縁ボデー(9)は、前記温度制御領域(11a
、11
b)で隣接する2つの前記バスバー(7a
、7
b)の間に形成され、前記露出された側面(13a)を超えて前記基面(14a、14b)に沿って延在する凸部(16)を含
む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記絶縁ボデー(9)は、パワーコンバータハウジング(6)上に配置されるとともに、前記温度制御領域(11a
、11
b)において前記パワーコンバータハウジング(6)から前記バスバー(7a
、7
b)を離すスペーサ(17)を前記絶縁領域(10a
、10
b)に備えている、
請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記パワーコンバータハウジング(6)は、前記熱伝達手段(19)を受け入れる凹部(20)を有している、
請求項1から3のいずれか
の項に記載のシステム。
【請求項5】
前記バスバーデバイス(7)
には、
前記絶縁領域(10a
、10b)から分離されたさらなる温度制御領域(11c)
が形成され、
前記バスバー(7a
、7
b)は
、さらなる絶縁領域(10c)において
鉛直方向に屈折し
て延在している、
請求項1から
4のいずれか
の項に記載のシステム。
【請求項6】
さらなる絶縁領域
(10c、10d)により前
記絶縁領域(10a)から分離されたさらなる温度制御領域
(11c)を備え、
前記温度制御領域(11b、11c)において、前
記温度制御領域(11a)の前記絶縁ボデー(9)により取り囲まれていて
、前記パワーコンバータハウジング(6)
とは熱的に接続されていないさらなるバスバー(7c)を備えている、
請求項1から
5のいずれか
の項に記載のシステム。
【請求項7】
バスバーデバイス(7)とパワーコンバータハウジング(6)とを備えたシステム(5)を生産するための方法であって、
パワーコンバータハウジング(6)を提供するステップと、
前記パワーコンバータハウジング(6)に熱伝達手段(19)を供給するステップと、
前記バスバー(7a
、7
b)
の夫々が電流の流れる方向に延在し対向する2つの基面(14a、14b)と前記基面(14a、14b)を連結し電流の流れる方向に延在する側面(13a、13b)とを備えている、少なくとも2つのバスバー(7a
、7
b)により形成されたスタックと、
前記バスバーデバイス(7)の2つの絶縁領域(10a
、10
b)で前記バスバー(7a
、7
b)を取り囲む電気的絶縁ボデー(9)とを備え、前記絶縁領域(10a
、10
b)の間に形成され、前記バスバー(7a
、7
b)
の夫々の1つの前記側面(13a)と少なくとも1つの前記基面(14a、14b)の一部とを露出させる開口(12)が
、前記絶縁ボデー(9)に形成されている温度制御領域(11a
、11
b)を備えた、バスバーデバイス(7)を提供するステップと、
前記温度制御領域(11a
、11
b)に露出された前記バスバー(7a
、7
b)を前記熱伝達手段(19)に導入するステップと、を含
み、
前記バスバー(7a、7b)は、前記温度制御領域(11a、11b)において、ギャップフィラーの熱伝達手段(19)によって前記パワーコンバータハウジング(6)と熱的に接続されており、
前記バスバー(7a、7b)は、前記前記温度制御領域(11a、11b)内の前記ギャップフィラーに埋没され、前記ギャップフィラーは、前記パワーコンバータハウジング(6)に対して電気的絶縁の形成と共に熱的接続が形成される、前記システム(5)の生産方法。
【請求項8】
前記絶縁ボデー(9)は、前記温度制御領域(11a、11b)で隣接する2つの前記バスバー(7a、7b)の間に形成され、前記露出された側面(13a)を超えて前記基面(14a、14b)に沿って延在する凸部(16)を含む、請求項7に記載の生産方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか
の項に記載のシステム(5)
、または請求項8の
生産方法によって得
られるシステム(5)と、
前記パワーコンバータハウジング(6)に収容されたパワーユニット(8a)と、
を備えた、車両(1)用のパワーコンバータ(3)。
【請求項10】
前記車両(1)を駆動するように構成された電気装置(2)と、
前記電気装置(2)に交流電流を供給するように構成された請求項9に記載のパワーコンバータ(3)と
、を備えた、車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーデバイスとパワーコンバータハウジングとを備えたシステムに関する。ここで、バスバーデバイスは、少なくとも2つのバスバーにより形成されたスタックとこれらのバスバーをバスバーデバイスの2つの絶縁領域で取り囲む電気的絶縁ボデーとを備えており、各バスバーは、電流の流れる方向に延在し対向する2つの基面と、これらの基面を連結し電流の流れる方向に延在する側面とを備えている。
【0002】
さらに、本発明は、このようなシステムの生産方法、車両用パワーコンバータ、および車両に関する。
【背景技術】
【0003】
パワーコンバータ用のバスバーデバイスは、大電流を流すために使用され、スタックを形成するバスバーをインサート成形して得られる電気的絶縁ボデーをしばしば含んでいる。典型的には、バスバーデバイスはパワーコンバータハウジングに取り付けられている。動作中、バスバーは自身を流れる電流により加熱される。しかし、絶縁ボデーの熱伝達抵抗が大きいため、このようなバスバーデバイスからの熱の消散は不十分である。バスバーには大きな断面が要求されるにも拘わらず、エレクトロモビリティの分野における設置スペースと重量の削減に関連する要求のため、好ましくない状態となっている。
【0004】
粉体塗装されたバスバーを使用して、パワーコンバータハウジングの熱伝達しやすい金属部に直接取り付けることが、すでに提案されている。しかし、このような粉体塗装されたバスバーは製造に費用がかかり、また、たとえばバスバーデバイスに追加の部品を配置するために、射出成形プロセスで絶縁ボデーに接続要素を設けることができるなどのような、その製造過程において接続要素を形成することができない。
【発明の概要】
【0005】
そこで、本発明の目的は、バスバーデバイスからの熱の消散のための改善された選択肢を提供することである。
【0006】
この目的を達成するために、本発明によれば、上述のようなタイプのシステムにおいて、バスバーデバイスは、絶縁領域の間に形成され、開口が絶縁ボデーに形成されて各バスバーの1つの側面と少なくとも1つの基面の一部とを露出させる温度制御領域を備え、バスバーは、温度制御領域において熱伝達手段によってパワーコンバータハウジングと熱的に接続されている。
【0007】
本発明は、温度制御領域においてバスバーが絶縁ボデーで完全にはカバーされないようにバスバーデバイスの絶縁ボデーに開口を形成するという考えに基づいている。バスバーの露出した、またはカバーされていない部分を、有利には電気絶縁性の、熱伝達手段を介してパワーコンバータハウジングに接続することができる。比較的熱伝達抵抗の高い絶縁ボデーを介した熱伝達を避け、代わりに熱伝達抵抗が充分に低い熱伝達手段が採用される。
【0008】
このように、本発明のシステムにおいてバスバーデバイスを使用して、有利には同様の電流容量を確保しつつ従来のバスバーデバイスよりも小さな断面とすることができ、したがって、軽量化や高い費用効果を達成することができる。同時に、本発明のシステムのバスバーデバイスによれば、従来のバスバーデバイスよりも設置スペースを削減することができる。有利には、本発明のシステムにおける冷却能力向上を達成するために、入手容易な熱伝達手段以外には追加部品は不要である。
【0009】
典型的には、バスバーは銅製のコアを有し、そのコアは追加的に金属層でコーティングされていることもある。パワーコンバータハウジングは、好ましくは、少なくとも熱伝達手段に接続されている領域はアルミニウム製である。パワーコンバータハウジングは、ダイカストハウジングでもよい。パワーコンバータハウジングは、バスバーから熱を効率的に消散するように、好ましくは能動的冷却、具体的には液体冷却を備えている。また、スタックは3つ以上のバスバーを備えていてもよい。典型的には、バスバーは、その基面が互いに重なって配置されている。典型的には、基面は側面よりも大きな表面積を有している。温度制御領域では、典型的には、絶縁ボデーは、熱伝達手段に接していない側面と2つの基面の一部とを覆っている。温度制御領域において、一方の基面が部分的に露出していれば他方の基面は絶縁ボデーで完全に覆われていてもよい。
【0010】
本発明のシステムにおいて、特に有利には、温度制御領域で絶縁ボデーが、隣接するバスバーの間に形成され、露出された側面を超えて基面に沿って延在する凸部を備えている。言い換えると、凸部はバスバーよりも熱伝達手段内により突出している。この凸部により、バスバー間の沿面距離が長くなり、システムの電気的安全性が向上する。
【0011】
本発明のシステムにおいて、特に有利には、絶縁ボデーは、パワーコンバータハウジング上に配置されるとともに、温度制御領域においてパワーコンバータハウジングからパスバーを離すスペーサを絶縁領域に備えている。このようにスペーサがバスバーとパワーコンバータハウジングとの距離を大きくするため、バスバーとパワーコンバータハウジングとの間のより大きなスペースが熱伝達手段で満たされる。これにより、バスバーとパワーコンバータハウジングとの間の絶縁破壊電圧が有利に向上する。
【0012】
代替または追加として、バスバーとパワーコンバータハウジングとの距離を大きくするために、パワーコンバータハウジングに熱伝達手段を受け入れる凹部を形成してもよい。
【0013】
有利には、熱伝達手段はギャップフィラーである。ギャップフィラーは、熱伝達抵抗が低く、処理が容易である。バスバーは温度制御領域においてギャップフィラーに埋没され、ギャップフィラーによりパワーコンバータハウジングに対して熱的接続と電気的絶縁が形成される。これにより、システムを特に簡潔かつ自動的に生産することが可能となる。
【0014】
一般に、システムが複数の温度制御領域を有する場合には、それぞれ絶縁領域で分離されていることが好ましい。バスバーデバイスは、さらなる絶縁領域により第1絶縁領域から分離されたさらなる温度制御領域を含み、バスバーは、さらなる絶縁領域において屈折して特に90°曲がって延在していてもよい。このようなバスバーデバイスの屈折部は、パワーコンバータハウジングのハウジングコーナーの形状に合わせるように形成されてもよい。
【0015】
さらに、本発明のシステムによれば、さらなる絶縁領域により第1絶縁領域から分離されたさらなる温度制御領域を備えてもよく、スタックは、第1温度制御領域において第1温度制御領域の絶縁ボデーにより取り囲まれ、かつ/または、熱伝達手段によってパワーコンバータハウジングには熱的に接続されていないさらなるバスバーを、さらなる温度制御領域に備えていてもよい。上述のようにスタックがいくつかの部分で異なる数のバスバーを有する領域は、特に個々のバスバーがたとえばパワー半導体と接触する領域である。絶縁ボデーの適切な設計により、これらの領域でも効率的な熱消散も達成できる。
【0016】
さらに、本発明は、バスバーデバイスとパワーコンバータハウジングとを備えたシステムを生産するための方法であって、パワーコンバータハウジングを提供するステップと、パワーコンバータハウジングに熱伝達手段を供給するステップと、それぞれのバスバーが電流の流れる方向に延在し対向する2つの基面と基面を連結し電流の流れる方向に延在する側面とを備えている、少なくとも2つのバスバーにより形成されたスタックと、バスバーデバイスの2つの絶縁領域でバスバーを取り囲む電気的絶縁ボデーとを備え、絶縁領域の間に形成され、それぞれのバスバーの1つの側面と少なくとも1つの基面の一部とを露出させる開口が絶縁ボデーに形成されている温度制御領域を備えた、バスバーデバイスを提供するステップと、温度制御領域に露出されたバスバーを熱伝達手段に導入するステップとを含む、方法に関する。
【0017】
熱伝達手段は好ましくは液体熱伝達手段である。ここで、「液体」とは、粘体を含み、特に懸濁液を含む。バスバーのダイスは、好ましくは熱伝達手段が供給される前または後にパワーコンバータハウジングに取り付けられている。絶縁ボデーに形成された取付手段、特に貫通孔を有したタブが、この目的のために使用されていてもよい。
【0018】
特に好ましくは、熱伝達手段を供給するステップ、バスバーを熱伝達手段に導入するステップ、および/またはバスバーデバイスをパワーコンバータハウジングに取り付けるステップは、たとえばロボットにより、自動的に実行される。さらに、バスバーデバイスを提供するステップは、絶縁ボデーが絶縁領域と温度制御領域を有するように、バスバーを可塑樹脂材、特に熱可塑樹脂材でインサート成形してもよい。
【0019】
さらに、本発明は、本発明のシステムまたは本発明の方法によって得ることのできるシステムと、パワーコンバータハウジングに収容されたパワーユニットとを備えた車両用パワーコンバータに関する。好ましくは、パワーコンバータはインバータとして設計されている。
【0020】
さらに、本発明は、車両を駆動するように構成された電気装置と、電気装置に交流電流を供給するように構成された本発明のパワーコンバータとを備えた車両に関する。
【0021】
本発明のシステムについてのすべての実施形態は、上記効果が得られるように、本発明のパワーコンバータ、本発明の車両、および本発明の方法に同様に適用できる。特に、本発明のシステムのすべての実施形態は、本発明の方法の範囲に適用可能である。
【0022】
本発明のさらなる効果や詳細については、以下に図面に基づいて説明する例示的実施形態により明らかになるであろう。なお、図面は概要図である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のパワーコンバータの例示的実施形態を備えた本発明の車両の例示的実施形態の概要図である。
【
図2】本発明のシステムの例示的実施形態のバスバーデバイスの側面図である。
【
図3】
図2に示されたバスバーデバイスの上面図である。
【
図4】
図2の示されたバスバーデバイスの
図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】
図3のV-V線に沿ったシステムの断面部分図である。
【
図6】本発明のシステムのさらなる例示的実施形態のバスバーデバイスの上面図である。
【
図7】
図6に示されたバスバーデバイスの斜視部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、車両1の例示的実施形態の概要図であり、車両1は、車両1を駆動するように構成された電気装置2と、電気装置2に交流電流を供給するように構成されたパワーコンバータ3の例示的実施形態を備えている。
【0025】
パワーコンバータ3は、インバータとして構成され、高電圧バッテリ4から供給された直流電流を三相または多相の交流電流に変換する。パワーコンバータ3は、パワーコンバータハウジング6と、複数のバスバー7a、7b、7cを有するバスバーデバイス7とを含むシステム5を備えている。さらに、複数のパワー半導体エレメントを含むパワーユニット8aがパワーコンバータハウジング6に収容されている。パワーコンバータハウジング6は、車両1の冷却ユニット8bが液冷のために接続されており、付加的に電気装置2も冷却するように構成されている。
【0026】
システム5は、以下に説明する例示的実施形態の1つに相当する。
【0027】
図2から
図4は、システム5の第1の例示的実施形態(
図5参照)によるバスバーデバイス7を示している。
図2は側面図、
図3は上面図、
図4は
図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【0028】
バスバーデバイス7はバスバー7a~7cを有し、
図2にはそのうちバスバー7aのみ表れている。
図3から明らかなように、バスバー7a~7cはそれらの基面14a、14b(
図4参照)がそれぞれ互いに対向し平行に配置されたスタックを形成している。
【0029】
また、バスバーデバイス7は、バスバー7a~7cを熱可塑性樹脂材でインサート成形して得られる、電気的に絶縁された絶縁ボデー9を備えている。絶縁ボデー9は、第1絶縁領域10a、第2絶縁領域10b、第3絶縁領域10c、第4絶縁領域10dを形成しており、第4絶縁領域10dは
図3にのみ表れている。
【0030】
隣接するそれぞれ2つの絶縁領域10a~10dの間において、絶縁ボデー9は温度制御領域11a~11cを有し、第3温度制御領域11cは
図3にのみ表れている。絶縁ボデー9は、それぞれの温度制御領域11a~11cに開口12を有し、それにより各バスバー7a~7cの側面13a(
図4参照)と基面14a、14bの一部(
図4参照)を露出させる。側面13aに対向する側面13bと基面14a、14bの残りの部分は温度制御領域11a~11cで絶縁ボデー9に取り囲まれている。
【0031】
バスバー7a~7cは、第3絶縁領域10cにおいて90°曲がって延在している。さらに、第3バスバー7cは、第1温度制御領域11aまで延び、その自由端においてパワーユニット8aと接触するタブ状接続部15を形成している。これは、第2絶縁領域10bにおいて、第2バスバー7bと第1バスバー7aについても同様である。特に
図2から明らかなように、スタックは、第2絶縁領域10bにおいて縦方向にオフセットしている。
【0032】
図4の断面図から分かるように、絶縁ボデー9は、温度制御領域11aに1つの凸部16、温度制御領域11b、11cのそれぞれに2つの凸部16を有し、これらの凸部16は隣接するそれぞれ2つのバスバー7a~7cの間に配置されている。凸部16は、基面14a、14bに沿って露出された側面13aを超えて延在し、いずれの場合もバスバー7a~7cのいずれかに対向して配置されている。
【0033】
図3から明らかなように、凸部16は中心からオフセットしており、その結果として凸部16が対向するバスバー7a~7cが変化する。凸部16をバスバー7a、7bの間に自在に位置付けるには非常に複雑な構成が必要であったが、このオフセットにより射出成形における凸部16の形成が容易になる。
【0034】
さらに、第1絶縁領域10a、第2絶縁領域10b、および第4絶縁領域10dのぞれぞれは、スペーサ17を備えている。スペーサ17は絶縁ボデー9の開口12が形成されている側に形成されている。
【0035】
さらに、絶縁ボデー9は、たとえばネジによってバスバーデバイス7をパワーコンバータハウジング6に取り付けるように、貫通孔を有した突出タブとして複数の取付手段18を備えている。
【0036】
図5は、
図3のV-V線に沿ったシステム5の断面部分図であり、パワーコンバータハウジング6に収容され配置されたバスバーデバイス7の詳細を示している。各温度制御領域(ここでは温度制御領域11a)において、システム5は、液状に処理されたギャップフィラーとして熱伝達手段19を備えている。温度制御領域11a~11cにおいてバスバー7a~7cの露出部が熱伝達手段19内に突出し、それによりパワーコンバータハウジング6に熱的に接続されている。
【0037】
第1側面13aを超えて突出する凸部16により、バスバー7a~7cの間の沿面距離が長くなる。スペーサ17はバスバー7a~7cとパワーコンバータハウジング6との距離を長くし、それにより絶縁耐力を増加させる。この距離をさらに長くするために、付加的に凹部20がパワーコンバータハウジング6内に形成されている。
【0038】
図6は、システム5のさらなる例示的実施形態によるバスバーデバイス7の上面図である。
図2から
図5に示したバスバーデバイス7の要素と同一または同様の機能の要素に対しては同じ符号が付されている。
【0039】
図6の例示的実施形態において、3つのバスバー7a~7cは、特に接続部15を形成するために分岐することなく、合計2つの温度制御領域11a、11bとそれらの間に配置された絶縁領域10aとを通って直線的に延在している。さらに、この例示的実施形態では、パワーコンバータハウジングに凹部は形成されていない。熱伝達手段はパワーコンバータハウジングの平面上に配置され、そこにはスペーサ17も配置されている。
【0040】
図7は、バスバーデバイス7の温度制御領域11a、11bの斜視部分図であり、基面14a、14bの開口12が絶縁ボデー9の切欠きによって形成されていることが特に明確に示されている。この切欠きはまず絶縁領域10bまたは10aから電流の流れる方向に円弧状に延び、そして電流の流れる方向に平行に伸び、最後に各温度制御領域11a、11bの端部で対向する絶縁領域10aまたは10cにおいて円弧状となっている。これは、
図2および
図3の温度制御領域11aについても同様であるが、そこに示された温度制御領域11bは絶縁領域10c内に直角に曲がっている。さらに上記オフセットについても
図7に明示されており、中心には配置されていない。
【0041】
上記例示的実施形態の各システム5は、パワーユニット8aに対する交流電流側の接触として3つのバスバー7a~7cを備えているが、典型的には2つのバスバーを備えた相当システムもパワーユニット8aに対する直流電流側の接触として設計されてもよい。