(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】燃料中の水を検出する方法
(51)【国際特許分類】
F02D 19/12 20060101AFI20240306BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20240306BHJP
F02B 47/02 20060101ALI20240306BHJP
F02M 25/022 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F02D19/12 A
F02D43/00 301B
F02D43/00 301Z
F02B47/02
F02M25/022 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019189317
(22)【出願日】2019-10-16
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】10 2018 217 759.7
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・シェンク ツー シュバインスベルク
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ヨース
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・アムラー
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル・バウアー
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0119392(US,A1)
【文献】特開2000-27713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 19/12
F02B 47/02
F02M 25/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料中の水を検出する方法
であって、
内燃機関(1)の燃焼室(4)および/または吸気領域に燃料を噴射するように少なくとも1つの燃料噴射装置(2,3)を構成し、
燃料噴射装置(2,3)の切換動作に基づいて燃料に含まれる水を検出する方法
において、
前記燃料噴射装置(2,3)の切換動作に基づいて、噴射しようとする燃料の粘度(V)を検出し、燃料の粘度(V)に基づいて、水が燃料に含まれているかどうかを検出する、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において
、燃料の前記粘度(V)に基づいて、燃料中の水の割合(W)の値を検出する方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において
、前記
燃料噴射装置(2,3)の切換動作
として、前記燃料噴射装置(2,3)
のフルストローク時
の、燃料噴射装置(2,3)の開放所要時間および/または閉鎖所要時間(T2)を検出する方法。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか一項に記載の方法において
、前記
燃料噴射装置(2,3)の切換動作
として、前記燃料噴射装置(2,3)の開放遅延時間(T1V)および/または閉鎖遅延時間を検出する方法。
【請求項5】
内燃機関(1)の少なくとも1つの燃焼室(4)および/または少なくとも1つの吸気領域に燃料-水混合物を噴射する方法において、
燃料-水混合物を形成するために、燃料に水を添加し、
請求項1
~4のいずれか一項に記載の方法によって燃料-水混合物中に存在する水を検出する
、
方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の方法において
、燃料-水混合物中に存在する水の検出を、内燃機関(1)のそれぞれの燃料噴射装置(2,3)のために別々に行う方法。
【請求項7】
請求項
5または6に記載の方法において
、燃料中に水が存在することに基づいて、エンジン制御を適合する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、内燃機関(1)の点火角、および/または吸気弁および/または排気弁の制御を適合する、方法。
【請求項9】
請求項
5~8のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成され
た調整装置(11)。
【請求項10】
請求項
9に記載
の調整装置(11)において
、燃料-水混合物中に水が存在することに基づいて、エンジン制
御を適合するように構成されてい
る調整装置(11)。
【請求項11】
請求項10に記載の調整装置(11)において、内燃機関(1)の点火角、および/または吸気弁および/または排気弁の制御、および/または燃料に添加される水量を適合するように構成されている調整装置(11)。
【請求項12】
請求項
9~11のいずれか一項に記載
の調整装置(11)を含む内燃機関(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料中の水を検出する方法、および燃料-水混合物を内燃機関に噴射する方法に関する。さらに本発明は、この方法を実施するための制御装置および/または調整装置、ならびに制御装置および/または調整装置を備える内燃機関、特にオットーサイクル内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素排出の低減に対する要求が高まっていることにより、内燃機関は、燃料消費に関してますます最適化されている。しかしながら、公知の内燃機関は、ノッキング傾向および高い排ガス温度によって運転が制限されているので、負荷の高い作用点での消費に関して最適に運転することができない。ノッキング傾向を減少させ、排ガス温度を低下させるための可能な手段は、水の噴射である。通常、水噴射を可能にするためには別個の水噴射システムが設けられている。例えば、混合気冷却のために吸気管への水噴射を行う内燃機関用の水噴射システムが知られている。あるいは、高圧ポンプの手前で燃料に水を添加して、直接に水噴射を行うことも可能である。この場合、燃料-水エマルジョンが燃焼室内に直接に噴射される。
【発明の概要】
【0003】
請求項1の特徴を有する、燃料中の水を検出するための本発明の方法は、燃料中に水が存在することが直接に燃料の噴射部で簡単に検出されることによって優れている。これは、本発明によれば、内燃機関の燃焼室または吸気領域に燃料を噴射するように構成された少なくとも1つの燃料噴射装置が設けられていることによって達成される。燃料に含まれる水は、燃料噴射装置の切換動作に基づいて検出される。以下では、燃料とは、水を含まない純粋な燃料と、純粋な燃料および水をそれぞれ液体の状態で含む燃料-水混合物との両方とみなされる。燃料の組成は燃料噴射装置の切換動作に決定的な影響を及ぼすので、燃料噴射装置の切換動作を検出することによって、組成を特に有利に推論することができる。燃料噴射装置の切換動作を検出するために、好ましくは燃料噴射装置の電気量が分析される。例えば、燃料噴射装置における電圧および/または電流を用いて切換動作を検出することができる。燃料に含まれる水が、燃料噴射装置の切換動作の変化に基づいて検出される場合には、特に有利である。このような変化は、例えば、開放および/または閉鎖時における燃料噴射装置の電気量の変化を分析することによって、特に容易に確認することができる。この場合、内燃機関の既に設けられている構成要素を用いて検出を行うことができ、センサなどの他の構成要素は必要不可欠ではない。
【0004】
本発明による方法により、燃料に含まれる水を特に簡単な方法で検出することができる。この場合、燃焼室内における低汚染の最適な燃焼に決定的な影響をおよぼす燃料の組成を噴射箇所で極めて正確に決定することができる。
【0005】
引用形式請求項は、本発明の好ましい実施形態を内容とする。
【0006】
好ましくは、切換動作を検出するために、燃料噴射装置の開放所要時間および/または閉鎖所要時間が特定のストローク時に検出される。開放所要時間および/または閉鎖所要時間は、燃料噴射装置のフルストローク時に検出されることが特に好ましい。燃料噴射装置の部分ストローク、例えば50%のストローク時に開放所要時間および/または閉鎖所要時間を検出することも可能である。燃料中の水の割合が増加するにつれて、水は、燃料噴射装置、例えば、ニードル、または燃料噴射装置の下側および上側の当接面に対する接着効果を高めるので、これにより、開放所要時間および/または閉鎖所要時間が増す。したがって、開放所要時間および/または閉鎖所要時間を検出する場合には、逆の方法で、燃料に含まれる水が特に簡単に検出される。
【0007】
特に有利には、切換動作を検出するために、燃料噴射装置の開放遅延時間および/または閉鎖遅延時間が検出される。開放遅延時間および閉鎖遅延時間は、燃料噴射装置の開閉信号が入力されてから、実際に機械的な開閉動作が開始されるまで、例えば燃料噴射装置のニードルの移動が開始されるまでに経過する時間とみなされる。上述のように、燃料に含まれる水は、主に、燃料噴射装置への粘着効果により、燃料噴射装置の開放遅延時間および閉鎖遅延時間に影響を及ぼす。したがって、開放遅延時間および/または閉鎖遅延時間を検出することにより、燃料に含まれる水を同様に極めて容易に推論することもできる。
【0008】
特に有利には、燃料噴射装置の切換動作に基づいて燃料の粘度が検出される。次いで、検出された燃料の粘度に基づいて、水が燃料に含まれているかどうかを検出することができる。燃料中の水の存在は燃料の粘度に特に重大な影響を及ぼし、さらに燃料の粘度は燃料噴射装置の切換動作に重大な影響を及ぼすので、粘度の検出は、燃料中の水を検出するための特に簡単で有利な方法を提供する。
【0009】
特に好ましくは、燃料の粘度に基づいて燃料中の水の割合の値が検出される。すなわち、燃料の粘度を検出した後、燃料中の百分率で示す水の割合が決定される。このようにして、燃料噴射装置における燃料組成を特に正確に決定することができる。
【0010】
さらに、本発明は、内燃機関の少なくとも1つの燃焼室または少なくとも1つの吸気領域に燃料-水混合物を噴射するための方法を提供する。この場合、特に、燃料-水混合物を形成するために、燃焼室または吸気領域への燃料-水混合物の噴射が行われる前に、水が燃料に添加される。したがって、望ましい水噴射時点で燃料噴射装置によって直ちに水を噴射することもできる。燃料-水混合物中に存在する水は、本発明による方法によって検出される。
【0011】
燃料-水混合物中に存在する水の検出は、好ましくは、噴射装置特有に、特に燃焼室特有に、すなわち、それぞれの燃料噴射装置のために、もしくは内燃機関のそれぞれの燃焼室のために別々に行われる。すなわち、この方法は、複数回、それぞれの燃料噴射装置もしくはそれぞれの燃焼室のために個別に実施される。この方法は、例えば中央レールを介した複数の燃料噴射装置へ燃料の少なくとも部分的に非対称な供給が行われる場合、および水の主要な添加が一箇所で行われる場合には特に有利である。この場合、添加部から燃料噴射装置まで異なる長さの経路が設けられている。したがって、水の添加を開始した後、燃料-水混合物は異なる時点で異なる燃料噴射装置に到達する。燃料-水混合物中に存在する水の検出は、それぞれの燃料噴射装置もしくはそれぞれの燃焼室のために独立して行われるので、それぞれ個々の燃焼室について燃料組成を特に正確に決定することが可能である。
【0012】
添加時点およびスイッチオン継続時間が検出されると特に有利である。添加時点は、燃料への水の添加が開始される時点である。スイッチオン継続時間は、添加時点から、燃料-水混合物が燃料噴射装置に供給されている水利用可能時点までに経過する時間である。付加的または代替的に、スイッチオフ時点およびスイッチオフ継続時間が同様に検出される。スイッチオフ時点では、燃料への水の添加はスイッチオフされる。この場合、スイッチオフ継続時間は、スイッチオフ時点と、スイッチオフ後に水を含まない燃料が燃料噴射装置に供給されている水なし時点との間の継続時間に対応する。さらに、付加的または代替的に、燃料噴射装置において燃料中に水が含まれるまでの添加所要時間が検出される。すなわち、水添加の開始および終了、ならびに水添加の有効所要時間を決定することができる。さらに、添加された水が燃料噴射装置に到達する実際の時点、または水がもはや燃料噴射装置に到達しなくなった実際の時点を決定することができる。これにより、それぞれ個々の燃料噴射装置における燃料組成を特に詳細にすることが可能になり、したがって、正確な水噴射が可能になる。
【0013】
さらに、燃料中に水が存在することに基づいて、内燃機関のエンジン制御を適合させると有利である。好ましくは、燃料中の水が燃焼室特有に検出される場合には、エンジン制御の燃焼室特有の適合も行われる。特に有利には、内燃機関の点火角、および/または吸気弁および/または排気弁の制御が適合される。エンジン制御を対応して適合することによって、内燃機関の特に高い効率を可能にすることができる。
【0014】
さらに、本発明は、本発明による方法を実施するように構成された制御装置および/または調整装置に関する。
【0015】
好ましくは、制御装置および/または調整装置は、燃料-水混合物中に水が存在することに基づいて、エンジン制御、特に内燃機関の点火角、および/または吸気弁および/または排気弁の制御および/または燃料に添加される水量を適合するように構成されている。このように、内燃機関のエンジン制御は、必要に応じて、および燃料組成に応じて、内燃機関の最も効率的な運転を保証するために最適に適合させることができる。
【0016】
さらに、本発明は、制御装置および/または調整装置を含む内燃機関に関する。内燃機関は、オットーサイクル式内燃機関であることが好ましい。
【0017】
次に図面に関連した実施形態に基づいて本発明を説明する。図において、機能的に同じ構成要素にはそれぞれ同じ符号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による方法を実施するための調整装置を有する内燃機関の簡略化された概略図である。
【
図2】燃料噴射装置の閉鎖所要時間と燃料の粘度との関係を示す図である。
【
図3】燃料噴射装置の開放遅延時間と燃料の粘度との関係を示す図である。
【
図4】燃料の水の割合と燃料の粘度との関係を示す図である。
【
図5】
図1に示す内燃機関の2つの燃料噴射装置の閉鎖所要時間の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の好ましい実施形態による、燃料に含まれる水を検出する方法を実施するように構成された調整装置11を有する内燃機関1を示す。
【0020】
内燃機関1は、内燃機関1のそれぞれの燃焼室4に燃料を噴射するように構成された第1の燃料噴射装置2と第2の燃料噴射装置3とを備える。
【0021】
燃焼室4内には、水を含まない燃料または燃料-水混合物の形態の燃料をそれぞれ噴射することができる。燃料は、レール5を介して2つの燃料噴射装置2,3に供給される。レール5への燃料の供給は高圧ポンプ6によって行われる。高圧ポンプ6は、供給管路7を介して、水を含まない燃料を収容する燃料タンク8に接続されている。
【0022】
供給管路7は添加部15を有し、添加部15では、燃料-水混合物を形成するために水を含まない燃料に水を添加することが可能である。このために、水ポンプ9によって水タンク10から水を取り出し、添加部15で、水を含まない燃料にこの水を添加することができる。添加部15には、水と水を含まない燃料の両方が液体の状態で提供されている。
【0023】
水の添加の調整、したがって燃料中の水の割合の調整は、調整装置11によって行われる。調整装置11は内燃機関1の制御器である。調整装置11は、高圧ポンプ6、ウォーターポンプ9、第1の燃料噴射装置2および第2の燃料噴射装置3を調整するように構成されている。さらに、調整装置11によってエンジン制御部の調整が行われる。調整は、内燃機関1の噴射領域における燃料の水の割合の検出値に基づいて、すなわち、第1の燃料噴射装置2および第2の燃料噴射装置3における燃料の水の割合に基づいて行われる。
【0024】
燃料の水含有量を検出するために、調整装置11は、第1の燃料噴射装置2と第2の燃料噴射装置3との切換動作を検出するように構成されている。これは、第1の燃料噴射装置2および第2の燃料噴射装置3にそれぞれ印加されている電流および電圧の分析によって行われる。電流および電圧から、調整装置11は、それぞれ、2つの燃料噴射装置2,3の開放所要時間、閉鎖所要時間T2、開放遅延時間T1Vおよび閉鎖遅延時間を検出する。検出されたこれらの大きさから、すなわち、燃料噴射装置2,3の切換動作に基づいて、調整装置11は続いて燃料の粘度を検出する。検出決定された粘度に基づいて、燃料の水の割合の値がさらに決定される。
【0025】
燃料噴射装置2,3の切換動作と噴射すべき燃料の水含有量との間のより正確な関係を、
図2~
図4を参照してより詳細に説明する。説明を簡単にするために、例として第1の燃料噴射装置2に関してのみ説明する。
【0026】
図2は、第1の燃料噴射装置2の閉鎖所要時間T2を燃料の粘度Vの関数として示している。
図2から分かるように、閉鎖所要時間T2は、粘度Vの増大に伴って増大する。閉鎖所要時間T2は、第1の燃料噴射装置2のフルストローク時に完全に閉鎖するまでに必要な時間として定義されている。
【0027】
図3は、第1の燃料噴射装置2の開放遅延時間T1Vを燃料の粘度Vの関数として示している。
図2に示した閉鎖所要時間T2と同様に、開放遅延時間T1Vは、粘度Vの増大に伴って増大する。この場合、開放遅延時間は、第1の燃料噴射装置を開放するための信号が入力されてから、第1の燃料噴射装置2の機械的な開放プロセスが実際に開始されるまでの時間である。
【0028】
図4は、燃料の粘度Vと燃料の百分率で示す水の割合Wとの関係を示している。
図4から分かるように、粘度Vは、水の割合Wが増加するにつれて増す。すなわち、燃料に含まれる水の量が多いほど燃料の粘度が高くなる。
図2および
図3を参照すると、燃料中の水の割合Wが増加すると、閉鎖所要時間T2が増大し、開放遅延時間T1Vも増すことになる。
【0029】
さらに、
図1から分かるように、第1の燃料噴射装置2と第2の燃料噴射装置3とは、レール5内の燃料の流入方向20に対して並んで配置されている。したがって、添加部15と2つの燃料噴射装置2,3との間には異なる長さの経路が設けられている。添加部15から第1の燃料噴射装置2までの第1の経路長L2は、第2の燃料噴射装置3までの第2の経路長L3よりも短い。したがって、例えば、燃料に水の添加を開始した後、水は、異なる時点で2つの燃料噴射装置2、3に到達する。
図5を参照してこの状況をより詳細に説明する。
【0030】
図5は、
図1の内燃機関1の第1の燃料噴射装置2および第2の燃料噴射装置3の閉鎖所要時間T22,T23の比較を示す。この場合、第1の燃料噴射装置2の第1の閉鎖所要時間T22が上方に示されており、第2の燃料噴射装置3の第2の閉鎖所要時間T23が下方に、それぞれ時間Tに関して示されている。
【0031】
添加時点Aから、燃料への水の添加が添加部15で行われる(
図1参照)。第1のスイッチオン継続時間TE2の経過後、水は、第1の水利用可能時点B2で第1の燃料噴射装置2に到達している。このことは上述のように第1の燃料噴射装置2の切換動作に基づいて検出される。
図2および
図4に関連して説明した燃料組成に対する閉鎖所要時間T2の依存性に基づいて、閉鎖所要時間T22、T23は、水が燃料噴射装置2,3に到達するとすぐに増加する。第1の経路長L2に比べて第2の経路長L3が長いことにより、第2のスイッチオン継続時間TE3の後に、水は、第2の水利用可能時点B3で第2の燃料噴射装置3に到達し、第2のスイッチオン継続時間TE3は第1のスイッチオン時間TE2よりも長くなる。
【0032】
図5にも示されているように、スイッチオフ時点Cにおいて、添加部15における燃料への水の添加がスイッチオフされる。水の添加が開始された場合のスイッチオン継続時間TE2,TE3と同様に、スイッチオフ時点Cから、水を含まない燃料が燃料噴射装置2,3に供給されている水なし時点D2,D3までの第1のスイッチオフ継続時間TA2および第2のスイッチオフ継続時間TA3が定義されている。この場合、第2のスイッチオフ継続時間TA3は、第2の経路長L3がより長いことにより、第1のスイッチオフ継続時間TA2よりも長い。
【0033】
水なし時点D2、D3と水利用可能時点B2,B3との差から、水を燃料噴射装置2,3に供給する添加所要時間TZ2,TZ3がそれぞれ生じる。
【0034】
燃料中の水の割合Wと、燃料に水が含まれる正確な時点とを知ることによって、内燃機関の最も効率的な運転を達成するために、噴射装置に特有もしくは燃焼室特有にエンジン制御の最適な適合が行われる。さらに、検出された時点に基づいて、水によって引き起こされる開放遅延時間T1Vおよび/または閉鎖遅延時間の増加を補償するために、調整装置11によって対応する調整を行うことができる。同様に、この調整によって、スイッチオン継続時間TE2,TE3および/またはスイッチオフ継続時間TA2,TA3を補正することができる。特に、添加所要時間TZ2およびTZ3は、内燃機関1のそれぞれの燃料噴射装置2,3についてできるだけ長くなるように、最大限に調整することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 内燃機関
2 第1の燃料噴射装置
3 第2の燃料噴射装置
4 燃焼室
5 レール
6 高圧ポンプ
7 供給管路
8 燃料タンク
9 水ポンプ
10 水タンク
11 調整装置
15 添加部
20 流入方向
A 添加時点
B2,B3 水利用可能時点
C スイッチオフ時点
D2,D3 水なし時点
L2 第1の経路長
L3 第2の経路長
T1V 開放遅延時間
T2 閉鎖所要時間
T22,T23 閉鎖所要時間
TA2,TA3 スイッチオフ継続時間
TE2,TE3 スイッチオン継続時間
TZ2,TZ3 添加所要時間
V 粘度
W 割合