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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20240306BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20240306BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08G18/67
C08G18/62 004
C08F290/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019191320
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2020122133
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2019003630
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019020657
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川村 隆二
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘文
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-080757(JP,A)
【文献】特開2018-090683(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043550(WO,A1)
【文献】特開平04-033973(JP,A)
【文献】特開昭63-220240(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137006(WO,A1)
【文献】特開平04-248847(JP,A)
【文献】特開2000-256641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F283/00-299/08
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐鎖状のポリオレフィン構造と(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基とを分子中に有する硬化性化合物と、
シクロアルキル構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する脂環式(メタ)アクリレートモノマーと、を含み、
前記硬化性化合物が下記一般式(1)で表される、硬化性組成物。
【化1】
[一般式(1)において、Xは、分岐鎖状のポリオレフィン構造を表し、Y’、Y”は、それぞれ、下記一般式(A)~(D)のいずれかを表す。
各一般式(A)~(D)において、Z 、Z は、それぞれ独立して、下記一般式(α)で示される分子構造又は-NCOを表し、Y’とY”とにおける2つのZ 及び2つのZ のうち少なくとも1つが下記一般式(α)で示される分子構造であり且つ少なくとも1つが-NCOである。]
【化2】
[一般式(A)において、R a1 、R a2 、R a3 は、それぞれ独立して、有機基を表し、Z 、Z は、上記の通り。]
【化3】
[一般式(B)において、R b1 、R b2 、R b3 、R は、それぞれ独立して、有機基を表し、Z 、Z は、上記の通り。]
【化4】
[一般式(C)において、R d1 、R d2 、R d3 は、それぞれ独立して、有機基を表し、Z 、Z は、上記の通り。]
【化5】
[一般式(D)において、R e1 、R e2 、R e3 は、それぞれ独立して、有機基を表し、Z 、Z は、上記の通り。]
【化6】
[一般式(α)において、Qは、炭素数2~4の飽和炭化水素基を表し、Mは、H又はCH を表す。]
【請求項2】
前記硬化性化合物は、分子中にベンゼン環構造及びシクロアルキル構造のいずれも有しない、請求項1に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光照射などの硬化処理によって硬化する硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、紫外線の照射によって重合する(メタ)アクリロイル基を分子中に含有する(メタ)アクリレートモノマーと、分子中に2つ以上のイソシアネート基を含有する低分子イソシアネート化合物と、を含む硬化性組成物が知られている。この種の硬化性組成物は、例えば、電子回路上に塗布されたうえで、紫外線などの光の照射によって硬化され、電子回路被覆用途において使用される(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の硬化性組成物は、紫外線などの光の照射に伴い上記の(メタ)アクリレートモノマー同士が反応して高分子化することによって、硬化膜を形成する。また、特許文献1に記載の硬化性組成物は、空気中の湿気によって上記の低分子イソシアネート化合物のイソシアネート基同士が反応して高分子化が進む。これにより、光が照射されなかった部分における硬化膜の硬化反応をさらに進行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-201593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の硬化性組成物においては、湿気による上記の硬化反応が、低分子イソシアネート化合物同士の間でのみ進行することから、低分子イソシアネート化合物と上記(メタ)アクリレートモノマーとの間において硬化反応が進行しない。斯かる硬化反応が進行しない分、光が照射されなかった部分において、湿気による硬化反応が進行せず、硬化膜の硬化が不十分となるおそれがある。また、硬化後の硬化膜の電気絶縁性が、湿気によって低下するおそれ、即ち、耐湿性が不十分となるおそれがある。
【0006】
上記の問題点等に鑑み、本発明は、光によって硬化するだけでなく湿気によっても十分に硬化でき、しかも、硬化後に十分な耐湿性を有する硬化性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る硬化性組成物は、
分岐鎖状のポリオレフィン構造と(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基とを分子中に有する硬化性化合物と、
シクロアルキル構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する脂環式(メタ)アクリレートモノマーと、
を含むことを特徴とする。
【0008】
上記の硬化性組成物は、分子中に(メタ)アクリレート基を有する硬化性化合物を含むことから、光照射によって硬化性化合物同士が重合して高分子化され得るため、光によって硬化できる。しかも、上記の硬化性化合物が分子中にイソシアネート基をも有することから、湿気(水分)によって硬化性化合物同士が結合して高分子化され得るため、湿気によっても十分に硬化できる。このように、上記の硬化性組成物は、光によって硬化するだけでなく、湿気によっても十分に硬化できる。しかも、上記の硬化性組成物は、シクロアルキル構造を分子中に有する脂環式(メタ)アクリレートモノマーを含むことから、硬化後に十分な耐湿性を有する。
【0009】
本発明に係る硬化性組成物において、前記硬化性化合物は、分子中にベンゼン環構造及びシクロアルキル構造のいずれも有しないことが好ましい。これにより、硬化後の耐湿性がより十分なものとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る硬化性組成物は、光によって硬化するだけでなく湿気によっても十分に硬化でき、しかも、硬化後に十分な耐湿性を有するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る硬化性組成物の一実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態の硬化性組成物は、分岐鎖状のポリオレフィン構造と(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基とを分子中に有する硬化性化合物と、
シクロアルキル構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する脂環式(メタ)アクリレートモノマーと、を含む。
【0013】
本実施形態において、上記の硬化性化合物は、分子中に、分岐鎖状のポリオレフィン構造と、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基と、少なくとも1つのイソシアネート基とを有する硬化性化合物であれば特に限定されない。上記の硬化性化合物は、分子中に、ベンゼン環構造(6つの環状炭素原子で構成された芳香族炭化水素)、及び、飽和シクロアルキル構造(飽和環状炭化水素構造)のいずれも有しないことが好ましい。
【0014】
上記の硬化性化合物としては、例えば下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
[一般式(1)において、Xは、分岐鎖状のポリオレフィン構造を表し、Y’、Y”は、それぞれ、下記一般式(A)~(D)のいずれかを表す。
各一般式(A)~(D)において、Z、Zは、それぞれ独立して、下記一般式(α)で示される分子構造又は-NCOを表し、Y’とY”とにおける2つのZ及び2つのZのうち少なくとも1つが下記一般式(α)で示される分子構造であり且つ少なくとも1つが-NCOである。]
【化2】
[一般式(A)において、Ra1、Ra2、Ra3は、それぞれ独立して、有機基を表し、Z、Zは、上記の通り。]
【化3】
[一般式(B)において、Rb1、Rb2、Rb3、Rは、それぞれ独立して、有機基を表し、Z、Zは、上記の通り。]
【化4】
[一般式(C)において、Rd1、Rd2、Rd3は、それぞれ独立して、有機基を表し、Z、Zは、上記の通り。]
【化5】
[一般式(D)において、Re1、Re2、Re3は、それぞれ独立して、有機基を表し、Z、Zは、上記の通り。]
【化6】
[一般式(α)において、Qは、炭素数2~4の飽和炭化水素基を表し、Mは、H又はCHを表す。]
【0015】
本実施形態の硬化性組成物において、上記の硬化性化合物が(メタ)アクリレート基を分子中に有するため、紫外線などの光の照射によって、これら化合物同士で重合反応を起こす。これら化合物同士が重合することによって、高分子化(硬化反応)が進行し、硬化することとなる。しかも、上記の硬化性化合物が-NCO(イソシアネート基)を分子中に有するため、空気中の湿気によっても、これら化合物の-NCO同士で反応を起こし、これら化合物同士が結合する。この結合によっても高分子化(硬化反応)が進行するため、十分に硬化させることができる。
従って、本実施形態の硬化性組成物は、光によって硬化するだけでなく、湿気によっても十分に硬化できる。
しかも、本実施形態の硬化性組成物は、シクロアルキル構造を分子中に有する脂環式(メタ)アクリレートモノマーを含むことから、硬化後に十分な耐湿性を有する。
【0016】
一般式(1)において、Xは、分岐鎖状のポリオレフィン構造である。斯かる部分のポリオレフィンは、飽和ポリオレフィンであることが好ましい。即ち、Xにおけるポリオレフィンは、分岐鎖状の飽和ポリオレフィンであることが好ましい。分岐鎖状の飽和ポリオレフィンとしては、例えば、水素添加ポリブタジエンが挙げられる。
【0017】
一般式(1)におけるポリオレフィン構造における分子量は、1000以上6000以下であることが好ましい。斯かる分子量が1000以上であることによって、硬化物の力学的特性の低下をより抑制できる。また、斯かる分子量が6000以下であることによって、硬化物が相分離して不均一になることをより抑制できる。
なお、ポリオレフィン構造における分子量は、一般式(1)の硬化性化合物を合成する前において、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定した、標準ポリスチレン換算値によって求めることができる。
【0018】
一般式(1)において、Y’、Y”は、それぞれ、総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト体、又はビウレット体構造を含む。例えば、換言すると、一般式(A)で表される構造からZ及びZを除いた部分が上記のイソシアヌレート体構造であり、一般式(B)で表される構造からZ及びZを除いた部分が上記のアダクト体構造であり、一般式(C)又は(D)で表される構造からZ及びZを除いた部分がビウレット体構造である。
【0019】
上記のイソシアヌレート体、アダクト体、又はビウレット体構造を形成する前の、総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネートは、直鎖状の炭素数4~8のアルキレン基の両末端にそれぞれイソシアネート基を有するものである。Y’、Y”は、例えば、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト体、又はビウレット体構造で構成されているため、ベンゼン環構造、及び、飽和シクロアルキル構造(環が炭素原子のみで構成された飽和構造)のいずれも含まない。
Y’、Y”が脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト体、又はビウレット体構造で構成されていることにより、Y’、Y”は、ベンゼン環構造及びシクロアルキル構造のいずれも有さず、上記の硬化性化合物は、分子中にベンゼン環構造及びシクロアルキル構造のいずれも有しないこととなる。Y’、Y”がベンゼン環構造及びシクロアルキル構造のいずれも有しない分、硬化後の硬化物の耐湿性又は耐候性が良好になる。
【0020】
総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などが挙げられる。
【0021】
上記のイソシアヌレート体は、上記の脂肪族ジイソシアネートの三量体である。例えば、斯かる三量体の末端-NCOを除いた構造が、一般式(A)からZ及びZを除いた構造に相当する。
【0022】
上記のアダクト体は、上記の脂肪族ジイソシアネートと、炭素数3~6のトリオールとの反応物である。例えば、斯かる反応物の末端-NCOを除いた構造が、一般式(B)からZ及びZを除いた構造に相当する。
炭素数3~6のトリオールは、元素として炭素(C)と酸素(O)と水素(H)のみを含む。炭素数3~6のトリオールとしては、例えばトリメチロールプロパン(CH-CH-C(CH-OH))、グリセリンなどが挙げられる。
【0023】
上記のビウレット体は、上記の脂肪族ジイソシアネートと、水又は三級アルコールとの反応物である。例えば、斯かる反応物の末端-NCOよりも内側部分の構造が、一般式(C)又は一般式(D)からZ及びZを除いた構造に相当する。
【0024】
なお、一般式(1)において、Y’、Y”は、互いに同じ分子構造であってもよく、互いに異なる分子構造であってもよい。
また、一般式(A)~(D)において、Ra1~Ra3、Rb1~Rb3、R、Rd1~Rd3、Re1~Re3は、少なくとも炭素原子を含む有機基である。Ra1~Ra3、Rb1~Rb3、R、Rd1~Rd3、Re1~Re3は、尿素結合、ビュレット結合、又はアロファネート結合を含んでもよい。Ra1~Ra3、Rb1~Rb3、Rd1~Rd3、Re1~Re3は、炭素数4~8の飽和炭化水素であることが好ましく、炭素数6の直鎖状飽和炭化水素であることがより好ましいが、ヘテロ原子(N,O,S,P等)を含んでもよく、分岐鎖構造であってもよい。Rは、炭素数4~8の飽和炭化水素であることが好ましく、炭素数6の分岐鎖状飽和炭化水素であることが好ましいが、ヘテロ原子(N,O,S,P等)を含んでもよく、直鎖構造であってもよい。
【0025】
一般式(A)~(D)において、Z、Zは、それぞれ独立して、上記の一般式(α)で示される分子構造又は-NCOを表す。2つのZ及び2つのZのうち少なくとも1つが上記の一般式(α)で示される分子構造であり且つ少なくとも1つが-NCOである。換言すると、一般式(1)で表される硬化性化合物は、分子中に、一般式(α)で示される分子構造と、-NCOとを、それぞれ少なくとも1つ有する。
【0026】
なお、一般式(1)において、Z、Zは、互いに同じであってもよく、互いに異なってもよい。また、一般式(1)において、Y’及びY”のそれぞれがZ及びZを含むため、一般式(1)において2つのZがあり、且つ、2つのZがあることとなる。2つのZが互いに同じであってもよく、互いに異なってもよい。2つのZも同様である。換言すると、2つのZ及び2つのZは、それぞれ個別に独立して規定される。
【0027】
一般式(α)において、Qの炭素数2~4の飽和炭化水素基は、直鎖状であることが好ましい。換言すると、Qは、炭素数2~4の直鎖状飽和炭化水素基であることが好ましい。Qにおける飽和炭化水素基の炭素数は、2であることが好ましい。
【0028】
一般式(1)で表される硬化性化合物としては、下記一般式(1a)~(1f)で表される化合物が例示される。
【0029】
【化7】
[ただし、Ra1、Ra2、Ra3は、それぞれ独立して、有機基を表し、炭素数4~8の直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、H又はCHである。]
【0030】
【化8】
[ただし、Ra1、Ra2、Ra3は、それぞれ独立して、有機基を表し、炭素数4~8の直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、H又はCHである。]
【0031】
【化9】
[ただし、Ra1、Ra2、Ra3は、それぞれ独立して、有機基を表し、炭素数4~8の直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、H又はCHである。]
【0032】
【化10】
[ただし、Rb1、Rb2、Rb3は、それぞれ独立して、有機基を表し、炭素数4~8の直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、H又はCHである。]
【0033】
【化11】
[ただし、Rb1、Rb2、Rb3は、それぞれ独立して、有機基を表し、炭素数4~8の直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、H又はCHである。]
【0034】
【化12】
[ただし、Rb1、Rb2、Rb3は、それぞれ独立して、有機基を表し、炭素数4~8の直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、H又はCHである。]
【0035】
一般式(α)で表される分子構造としては、下記式(α-1)で表されるものが好ましい。下記式(α-1)で表される分子構造であることによって、立体障害が少ないエチレン基を有することとなり、紫外線等の照射による重合速度が向上するという利点がある。なお、一般式(α)におけるQの炭素数が1(即ち、メチレン基)であると、硬化時に分解しやすくなる。
【化13】
【0036】
本実施形態の硬化性組成物は、例えば、分岐鎖状のポリオレフィンジオール(以下、単に<A成分>とも称する)と、総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト体、及びビウレット体から選択された少なくとも1種(以下、単に<B成分>とも称する)と、ヒドロキシ飽和C~Cアルキル(メタ)アクリレート(以下、単に<C成分>とも称する)と、のウレタン化反応生成物を含む。換言すると、本実施形態の硬化性組成物は、例えば、少なくとも<A成分>と<B成分>と<C成分>とをウレタン化反応させた硬化性化合物と、上記の脂環式(メタ)アクリレートモノマーとを含む。
【0037】
上記の硬化性化合物は、少なくとも<A成分>と<B成分>と<C成分>とのウレタン化反応生成物の一部である。換言すると、上記の硬化性化合物は、少なくとも<A成分>と<B成分>と<C成分>とをウレタン化反応させることによって得ることができる。
【0038】
例えば、本実施形態の硬化性組成物は、上述したウレタン化反応生成物として、上記の一般式(1)で表される硬化性化合物を少なくとも含む。また、本実施形態の硬化性組成物は、上記の一般式(1)で表される硬化性化合物以外に、ウレタン化反応によって生成した副生成物も含む。
また、本実施形態の硬化性組成物は、ウレタン化反応のために配合された微量のウレタン化反応触媒も含む。なお、ウレタン化反応生成物については、後に詳しく説明する。
【0039】
本実施形態の硬化性組成物は、上記の一般式(1)で表される硬化性化合物を少なくとも含むため、上述したように、光によって硬化するだけでなく、湿気によっても十分に硬化できる。
また、本実施形態の硬化性組成物は、上記のウレタン化反応によって生成した副生成物も含み、この副生成物も、光照射や湿気によって硬化反応を起こし得ることから、光によって硬化するだけでなく、湿気によっても十分に硬化できる。
【0040】
<A成分>
A成分は、分岐鎖状のポリオレフィンジオールである。ポリオレフィンジオールは、分子末端にヒドロキシ基をそれぞれ有する。オレフィン部分は、エーテル基やエステル基などの極性基を含まず、飽和炭化水素のみで構成される。
【0041】
A成分としては、ポリプロピレンジオール、ポリブテンジオール(水素添加1,2-ポリブタジエンジオール)、水素添加ポリイソプレンジオールなどが挙げられる。A成分としては、硬化後の硬化物(被膜)に十分な力学的柔軟性を付与できるという点で、ポリブテンジオール(水素添加1,2-ポリブタジエンジオール)が好ましい。
【0042】
A成分の分子量は、1000以上6000以下であることが好ましい。
【0043】
<B成分>
B成分は、ポリイソシアネートであり、総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネートの、イソシアヌレート体、アダクト体、及びビウレット体から選択された少なくとも1種である。B成分は、分子中にイソシアネート基を3つ又は4つ有する。B成分は、分子中に、ベンゼン環構造(芳香族環構造)及び飽和シクロアルキル構造(環が炭素原子のみで構成された飽和構造)のいずれも有さないことが好ましい。
【0044】
B成分としてのイソシアヌレート体は、例えば、上述したヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の三量体であり、分子中にイソシアネート基を3つ有する。
【0045】
B成分としてのアダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンと、総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネート(上述したHMDIなど)との反応物である。斯かるアダクト体は、分子中にイソシアネート基を3つ有する。
【0046】
B成分としては、ベンゼン環を含まないことから硬化後の耐候性が良好であるという点、また、ウレタン化反応において希釈剤を共存させた場合に該希釈剤への溶解性が良好であるという点で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)とトリメチロールプロパンとが反応したアダクト体、又は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のイソシアヌレート体(三量体)が好ましい。
【0047】
<C成分>
C成分は、(メタ)アクリル酸のC~C飽和アルキルエステルであり、アルキル部分のいずれかの炭素に結合した1つのヒドロキシ基を有する。C成分は、ヒドロキシ飽和C~Cアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0048】
C成分としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。光照射による重合性がより良好であるという点で、C成分は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであることが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレートであることがより好ましい。
【0049】
ウレタン化反応におけるA成分に対するB成分のモル比は、2.0以上2.5以下であることが好ましく、2.0以上2.2以下であることがより好ましい。
【0050】
ウレタン化反応におけるB成分に対するC成分のモル比は、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることがより好ましい。
【0051】
ウレタン化反応におけるA成分に対するC成分のモル比は、1.0以上4.0以下であることが好ましく、1.0以上3.0以下であることがより好ましい。
【0052】
<ウレタン化反応触媒>
ウレタン化反応触媒としては、ジブチルスズジラウレート又はスタナスオクトエートなどの有機スズ触媒、アセチルアセトナート錯体触媒、といった金属系触媒を使用できる。また、ウレタン化反応触媒としては、3級アミン触媒を使用できる。
【0053】
本実施形態の硬化性組成物(硬化用組成物)は、A成分、B成分、及びC成分の存在下におけるウレタン化反応によって生成したウレタン化反応生成物を含む。
【0054】
上記のウレタン化反応生成物としては、例えば、上記の一般式(1a)~(1f)といった上記の一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
さらに、上記のウレタン化反応生成物としては、例えば、反応性基としてイソシアネート基のみ有する化合物、反応性基としてヒドロキシ基のみ有する化合物などが挙げられる。
別の観点では、上記のウレタン化反応生成物としては、例えば、A成分とB成分とのウレタン化反応生成物であってC成分が分子中に導入されなかった化合物、B成分とC成分とのウレタン化反応生成物であってA成分が分子中に導入されなかった化合物などが挙げられる。
【0056】
本実施形態の硬化性組成物は、ウレタン化反応しない光重合性モノマーをさらに含む。このような光重合性モノマーは、ウレタン化反応系における粘度を低下させるべくウレタン化反応前に希釈剤として配合されてもよく、ウレタン化反応後に配合されてもよい。
具体的には、本実施形態の硬化性組成物は、シクロアルキル構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する脂環式(メタ)アクリレートモノマーを、ウレタン化反応しない光重合性モノマーとして含む。脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、光照射による重合反応生成物を生じさせる化合物である。
【0057】
脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に8以上15以下の炭素原子を有する飽和脂環式モノマーであることが好ましい。脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、ベンゼン環、並びに、エーテル結合(-CH-O-CH-)、-OH基、及び-COOH基などの極性基のいずれも分子中に含まないことが好ましい。脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有する単官能モノマーであることが好ましい。脂環式(メタ)アクリレートモノマーにおいて、シクロアルキル構造は、ヘテロ原子を含まず、4~8の炭素原子で構成された飽和炭化水素構造であってもよい。脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、単環式、二環式、多環式であってもよい。二環式又は多環式の飽和シクロアルキル構造が、2以上の炭素原子を共有していてもよい。
具体的には、脂環式(メタ)アクリレートモノマーとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルフォリン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記の硬化性組成物が脂環式(メタ)アクリレートモノマーを含むことによって、硬化後の硬化物の耐湿性を向上させることができる。
【0058】
なお、本実施形態の硬化性組成物は、ウレタン化反応しなかった未反応のA成分、B成分、及びC成分を含み得る。また、本実施形態の硬化性組成物は、ウレタン化反応の促進のために配合されたウレタン化反応触媒を含み得る。
このように、本実施形態の硬化性組成物は、様々な反応生成物及び未反応を含む。従って、含有される化合物すべてについて、分子構造を特定することは、およそ実際的ではないといえる。換言すると、本実施形態の硬化性組成物に含まれるすべての化合物について、その構造又は特性を直接特定することは、およそ非実際的であるといえる。ただし、ウレタン化反応させる前の化合物の分子構造が特定されており、ウレタン化反応による生成物が十分に予想できることから、反応生成物(主反応物、副反応物)の分子構造を予想することは、十分に可能である。
【0059】
本実施形態の硬化性組成物は、ウレタン化反応後にさらに加えられた、光重合性モノマー、イソシアネートモノマー、光重合開始剤などを含んでもよい。光重合性モノマーとしては、上述した脂環式(メタ)アクリレートモノマー、及び、脂環式(メタ)アクリレートモノマー以外のウレタン化反応しない光重合性モノマーが挙げられる。
【0060】
ウレタン化反応しない光重合性モノマーとしては、例えば、下記のごとき単官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらモノマーは、1種が単独で、又は、2種以上が組み合わされて使用され得る。
光重合性モノマーとしては、硬化後の硬化物の耐候性がより良好になるという点で、ベンゼン環、並びに、エーテル結合(-CH-O-CH-)、-OH基及び-COOH基などの極性基のいずれも含まないモノマーが好ましい。
【0061】
ウレタン化反応後に加えられたイソシアネートモノマーとしては、芳香族ジイソシアネートモノマー、脂環族ジイソシアネートモノマー、脂肪族ジイソシアネートモノマーなどが挙げられる。これらモノマーは、分子中に2~4個のイソシアネート基を有してもよい。
芳香族ジイソシアネートモノマーとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート及びトリジンジイソシアネート等の各モノマーが挙げられる。
脂環族ジイソシアネートモノマーとしては、例えば、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシリレンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、3-イソシアネートエチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3-イソシアネートエチル-3,5,5-トリエチルシクロヘキシルイソシアネート等の各モノマーが挙げられる
脂肪族ジイソシアネートモノマーとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートモノマー等が挙げられる。
なお、イソシアネートモノマーは、上記の少なくともいずれかのモノマーのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体、ポリメリック体であってもよい。
これらモノマーは、1種が単独で、又は、2種以上が組み合わされて使用され得る。
イソシアネートモノマーとしては、硬化後の硬化物の耐候性がより良好になるという点で、ベンゼン環を含まず且つ不飽和結合を含まないモノマーが好ましい。
【0062】
なお、本実施形態の硬化性組成物は、ベンゼン環(6つの環状炭素原子で構成された芳香族炭化水素)を分子中に有する化合物を、ウレタン化反応生成物(硬化性化合物)、光重合性モノマー、イソシアネートモノマーとしては含まないことが好ましい。
【0063】
光重合開始剤は、照射された光(紫外線等)によってラジカルを発生する化合物であれば、特に制限されない。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、市販品を使用することができる。
【0064】
なお、本実施形態の硬化性組成物は、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、酸化防止剤、染料、顔料、蛍光体などを含み得る。
【0065】
本実施形態の硬化性組成物は、一般式(1)で表される化合物を10質量%以上含むことが好ましい。これにより、光及び湿気の両方によって、より十分に硬化できる。
なお、本実施形態の硬化性組成物は、一般式(1)で表される硬化性化合物を90質量%以下含んでもよい。
本実施形態の硬化性組成物は、脂環式(メタ)アクリレートモノマーを含有する(ウレタン化反応しない)光重合性モノマーを10質量%以上含んでもよく、85質量%以下含んでもよい。
本実施形態の硬化性組成物は、上記の硬化性化合物以外のイソシアネートモノマーを2質量%以上含んでもよく、20質量%以下含んでもよい。
【0066】
続いて、本発明に係る硬化性組成物の製造方法の一実施形態について説明する。
【0067】
本実施形態の硬化性組成物の製造方法では、例えば、分岐鎖状のポリオレフィンジオール(上記A成分)と、総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト体、及びビウレット体から選択された少なくとも1種(上記B成分)と、ヒドロキシ飽和C~Cアルキル(メタ)アクリレート(上記C成分)と、の存在下におけるウレタン化反応によって、前記ウレタン化反応の反応生成物を含む硬化性組成物を製造する。
【0068】
詳しくは、本実施形態の硬化性組成物の製造方法は、上記のA成分とB成分とC成分とウレタン化反応触媒との存在下におけるウレタン化反応によって、上記の硬化性化合物を含むウレタン化反応生成物を合成する反応工程を備える。
本実施形態の硬化性組成物の製造方法は、反応工程の後に、光重合性モノマーとイソシアネートモノマーと光重合開始剤とをさらに添加する添加工程をさらに備える。
【0069】
反応工程において使用する、A成分、B成分、C成分、及び、ウレタン化反応触媒については、上述した通りである。
【0070】
上記の製造方法においては、湿気との反応を防ぐため、通常、反応容器内の空気を窒素で置換したあとに、反応工程を実施する。
【0071】
反応工程では、ウレタン化反応のために適した一般的な反応条件を採用することができる。好ましくは、反応工程では、50~70℃の温度を0.5~3時間維持することによって、ウレタン化反応を行う。
【0072】
反応工程において、好ましいA成分、B成分、及び、C成分の配合量の比(モル比)は、上記の通りである。
【0073】
反応工程では、ウレタン化反応に関与しない化合物であって、光照射によって重合反応生成物を生じさせる化合物をさらに共存させてもよい。斯かる化合物としては、上述したように、例えば脂環式(メタ)アクリレートモノマーなどの光重合性モノマーが挙げられる。
【0074】
添加工程では、ウレタン化反応のあと、上述した光重合性モノマー、イソシアネートモノマー、光重合開始剤をさらに添加してもよい。さらに添加する光重合性モノマー、イソシアネートモノマーは、低粘度であることから、上記の硬化性化合物を希釈する溶媒のような役割を担う一方で、それ自身が光や湿気によって硬化するため、硬化物をより十分に硬化させる役割も担う。光重合性モノマーやイソシアネートモノマーをさらに配合する分、硬化させるための硬化性組成物の粘性が低くなり、硬化性組成物を塗工する工程を簡便にすることができる。
【0075】
添加工程では、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、酸化防止剤、染料、顔料、蛍光体などをさらに配合してもよい。
【0076】
本実施形態の硬化性組成物は、紫外線などの光の照射によって硬化された硬化物となって使用される。例えば、被覆されることとなる電子回路に、上記の硬化性組成物を塗工した後、紫外線などの光を照射して組成物を硬化させ、硬化物の被覆膜を形成する。さらに、数時間~数日間、空気中で放置することによって、空気中の湿気による硬化反応を進める。
【0077】
硬化反応を進めるために照射する光としては、紫外線を使用できる。光源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、LEDランプなどを使用できる。照射強度としては、例えば、10~10,000mW/cmを採用できる。
【0078】
湿気による硬化反応をさらに進めるために、放置する空気の温度は、20~40℃であり、空気の湿度は、40~90RH%であることが好ましい。
【0079】
上記の硬化性組成物が塗工されて被覆される対象物としては、例えば、精密機器に使用される実装基板上の電子回路や端子、自動車や自転車や鉄道や航空機や船舶などに搭載する実装基板上の電子回路や端子、モバイル機器(携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等)に使われる実装基板上の電子回路や端子、屋外機器(給湯器、エアコン室外機等)に利用される基板の電子回路や端子、洗濯機や温水洗浄便座、食器洗い乾燥器等の水周り機器に使用される実装基板上の電子回路や端子等が挙げられる。
【0080】
本実施形態の硬化性組成物、該組成物の製造方法は上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の硬化性組成物、該組成物の製造方法に限定されるものではない。
即ち、一般的な硬化性組成物、該組成物の製造方法において用いられる種々の形態が、本発明の効果を損ねない範囲において、採用され得る。
【実施例
【0081】
次に実験例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
以下のようにして、(A)~(C)を混合してウレタン化反応を行い、一般式(1)で表される硬化性化合物を含む硬化性組成物を製造した。
【0083】
<反応工程における原料>
(A)分岐鎖状のポリオレフィンジオール
・(A-1)水素添加ポリブタジエンジオール(平均分子量1,500)
製品名「NISSO-PB GI-1000」
:水酸基価(KOHmg/g=67mg) 日本曹達社製
・(A-2)水素添加ポリブタジエンジオール(平均分子量2,000)
製品名「NISSO-PB GI-2000」
:水酸基価(KOHmg/g=50mg) 日本曹達社製
・(A-3)水素添加ポリブタジエンジオール(平均分子量3,100)
製品名「NISSO-PB GI-3000」
:水酸基価(KOHmg/g=30mg) 日本曹達社製
(B)総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネートの誘導体
・ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のイソシアヌレート誘導体
製品名「DURANATE TSR-100:イソシアネート基含有率20.4%」旭化成社製
(C)ヒドロキシ飽和C~Cアルキル(メタ)アクリレート
・2-ヒドロキシエチルアクリレート(市販品)
(その他)
・光重合性モノマー(反応溶媒/希釈剤)(イソボルニルアクリレート 市販品)
・ウレタン化反応触媒(ジラウリン酸ジブチルスズ 市販品)
【0084】
<添加工程における原料>
・光重合性モノマー(イソボルニルアクリレート 市販品)
・多官能イソシアネート
ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のイソシアヌレート誘導体
製品名「DURANATE TSR-100」旭化成社製
・蛍光染料 製品名「Tinopal OB」 BASFジャパン社製
・光重合開始剤 製品名「IRGACURE 907」 IGMResins社製
・光増感剤(2,4-ジエチルチオキサントン)
製品名「KAYACURE DETX-S」日本化薬社製
【0085】
(実施例1)
表1に示す配合量で、上記の(A)、(B)、(C)、並びに、反応溶媒及び触媒の存在下において60℃で1時間、ウレタン化反応を行い、反応工程を実施した。
次に、表1に示す配合量で、反応工程後の組成物に上記の原料を添加して混合し、添加工程を実施した。
このようにして、硬化性組成物を製造した。
【0086】
(実施例2~4)
添加工程において、表1に示す配合組成に変更した点以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を製造した。
【0087】
なお、上記の実施例1及び実施例2の反応工程によって生成された生成反応物をFT-IRで分析したところ、一般式(1)に示す化合物が合成されたことを確認できた。
【0088】
(比較例)
イソボルニルアクリレートに代えてノニルアクリレートを光重合性モノマーとして用いた点以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0089】
実施例1及び2、比較例の硬化性組成物を製造するための配合組成を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
以下に示すようにして、実施例及び比較例で製造した各硬化性組成物を評価した。詳しくは、製造した各硬化性組成物の体積抵抗率、及び、絶縁破壊電圧(BDV)を調べた。
なお、一般的には、体積抵抗率及び絶縁破壊電圧(BDV)が高いほど、硬化がより十分に進行したことを示す。
【0092】
<硬化>
硬化後の硬化物の厚さが100μmとなるように、0.3×130×180mmのブリキ板に各組成物を塗工した。光によって硬化させる試料については、500WのUVランプによって積算光量が3000mJ/cmの光強度となるように紫外線を照射した。その後、照射及び未照射の試料のいずれも、40℃/90%RHに設定した恒温恒湿機において72時間静置して、湿気による硬化処理を加えた(以下、常態という)。さらに、一部については、24時間、水に浸した(以下、浸水後という)。
【0093】
<体積抵抗率>
上記のようにして硬化させた各硬化物上に、ペースト状の銀の導電性塗料を円状(直径30mm)に塗布した。60℃で30分間乾燥して上側電極を形成した。一方、各硬化物の反対側に配置したブリキ板を、下側電極とした。DC100Vの電圧を印加して60秒後の抵抗値を求めた。そして、電極面積に抵抗値を乗じ、硬化物(硬化膜)の厚さで除して、体積抵抗率を求めた。
【0094】
<絶縁破壊電圧(BDV)>
JIS C2110-1に記載の球-平板電極の球を硬化物上に載せて、上部電極とした。一方、ブリキ板を下部電極とした。60Hzの交流電圧をかけ、10~20秒で絶縁破壊が起こるように昇圧して、絶縁破壊電圧値を測定した。測定は、油中で実施した。さらに、得られた値を硬化物(硬化膜)の厚さで割って、0.1mm当たりの絶縁破壊値(kV/0.1mm)を求めた。
【0095】
硬化後の硬化物の体積抵抗率及び絶縁破壊電圧(BDV)の評価結果を表2に示す。なお、表2におけるポリマー比率は、硬化性組成物における硬化性化合物の比率であり、上記反応工程におけるウレタン化反応の収率が100%であることを確認したうえで、配合比率から算出した値である。
【0096】
【表2】
【0097】
表2に示された評価結果から把握されるように、各実施例の硬化性組成物は、光によって硬化するだけでなく、湿気によっても十分に硬化できるものであった。
詳しくは、各実施例における体積抵抗率及び絶縁破壊電圧を参照すると、湿気による硬化処理によって、測定値が十分に高くなった。従って、実施例の硬化性組成物は、光によって硬化できるだけでなく、湿気によっても十分に硬化できるといえる。
しかも、各実施例では、比較例と比較して、硬化後の硬化膜の電気絶絶縁性が水分によって低下することがより抑制され、十分な耐湿性を有していた。
なお、光を照射した試料において、浸水後に絶縁破壊電圧(BDV)がさがっている原因は、体積抵抗率が直流電流を使用した測定である一方で、絶縁破壊電圧(BDV)は交流電流を使用した測定であるため、測定試料が吸湿したことによる誘電率上昇の影響によるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の硬化性組成物は、例えば、電子回路を硬化物で被覆するために、電子回路に塗布された後、光照射されて硬化され、硬化物となって好適に使用される。本発明の硬化性組成物は、例えば、絶縁被膜用硬化性組成物として好適に使用される。