(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】合成化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20240306BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240306BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
A61K38/10
A61P3/00
A61P25/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/06
(21)【出願番号】P 2019514855
(86)(22)【出願日】2017-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2017062576
(87)【国際公開番号】W WO2017202933
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-31
(32)【優先日】2016-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518416458
【氏名又は名称】シンタプ セラピューティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ブレース マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ファービアルツ カリーネ
(72)【発明者】
【氏名】シュタインブッシュ ウテ
(72)【発明者】
【氏名】ペトゲンス アンドレ ヨットゲー
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ ヤーネット
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】中根 知大
【審判官】天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-541398(JP,A)
【文献】J Biol Chem., 2014, Vol. 289, No.4, p.2295-2306
【文献】J Immunol., 2008, Vol. 181, No.2, p.1429-1437
【文献】Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 1987, Vol. 84, p.7967-7971
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K7/00-7/66
A61K38/00-38/58
A61K48/00
REGISTRY/CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエフェクター部分と、
少なくとも1つのバインダー部分と、を含み、
前記エフェクター部分は、直接、及び/又は、リンカーを介して、前記バインダー部分に接続され、
前記少なくとも1つのエフェクター部分は、
fMIFL(配列番号3)、fMLFII(配列番号4)、fMIVTLF(配列番号5)、fMLFIIK(配列番号6)及びfMIFTLF(配列番号7)から選択される少なくとも1つのペプチド配列を含み、
前記少なくとも1つのバインダー部分は、ペプチド又はペプチド模倣物からなり、
前記ペプチド又はペプチド摸倣物は、dCys-dAsp-Gly-NitroTyr-Gly-4HydroxiPro-Asn-dCys
(配列番号1)又は
RGDLATLRQL(配列番号2
)を含む、合成化合物。
【請求項2】
請求項
1に記載の合成化合物であって、
前記バインダー部分は、α3インテグリン若しくはαvβ6インテグリ
ンを標的とする、合成化合物。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の合成化合物であって、
前記リンカーは、ポリエチレングリコールを含む、合成化合物。
【請求項4】
請求項
3に記載の合成化合物であって、
前記リンカーは、長さが≦40及び≧15モノマーの間の1つ以上のポリエチレングリコール分子を含む、合成化合物。
【請求項5】
請求項
3又は4に記載の合成化合物であって、
前記ポリエチレングリコールリンカーは、1つ以上アミノ酸側鎖群により、前記エフェクター部分に結合している、合成化合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の合成化合物であって、
エフェクター部分、バインダー部分、
及び、リンカーから選択される少なくとも2つの部分は、クリックケミストリーにより互いに結合している、合成化合物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかの合成化合物と、生理学的に許容される賦形剤と、を含む医薬製剤。
【請求項8】
腫瘍性疾患、自己免疫疾患、神経病理学的疾患、代謝性疾患、及び/又は、感染性疾患、からなる群から選択される少なくとも1つの疾患の治療に使用される請求項
7に記載の製剤、又は、請求項1~
6のいずれかに記載の合成化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に疾患の治療に有益な新規な合成化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開WO200800517は、互いに結合した1つ以上のエフェクター部分及び1つ以上のバインダー部分を含む合成化合物を開示している。エフェクター部分は、少なくとも1つの病原体パターン認識受容体(pathogen pattern recognition receptor:PRR)に対するリガンドである。バインダー部分は、腫瘍細胞のマーカーに結合する。エフェクター部分は、ホルミルペプチド受容体、好ましくは、N-ホルミルメチオニンペプチド、例えば、fMLF(N-ホルミルMet-Leu-Phe)又はfMMYALF(N-ホルミル-Met-Met-Tyr-Ala-Leu-Phe)に対するリガンドであることが好ましい。
【0003】
国際公開WO201089019は、この概念で利用可能な別のN-ホルミルメチオニンペプチドを開示している。これは、即ち、fML(N-ホルミル-Met-Leu);fMLP(N-ホルミル-Met-Leu-Pro);fMLKK(N-ホルミル-Met-Leu-Lys-Lys);fMLPKK(N-ホルミル-Met-Leu-Pro-Lys-Lys);fMLFKK(N-ホルミル-Met-Leu-Phe-Lys-Lys)である。
【0004】
これらのペプチドは、生体内で、ホルミルペプチド受容体(formyl peptide receptor:FPR)に結合し、細菌感染部位に対する強力な免疫学的ホーミングシグナルとしての役割を果たす。ペプチドは、化学誘引、免疫シグナル分子(例えば、インターロイキン、サイトカイン)の生産及び放出のシミュレーション、脱顆粒、及び、細胞プロセスを含むことのできる好中球反応及び活性化のいくつかの段階にシグナルを送る。細胞プロセスは、化学剤(例えば、過酸化水素及び他の反応性酸素ラジカル種)及び酸素剤(例えば、エラスターゼ及び他の消化酵素)の生産及び放出を含む。化学剤及び酸素剤は、異物又は病原体の破壊を仲介することができる。
【0005】
ホルミルペプチド受容体により仲介された細胞反応は、細胞分極及び遊出、呼吸バーストオキダーセによるスーパーオキシドO2ラジカルの生成、様々な分解性酸素の脱顆粒及び放出、並びに、食作用を含むことができる。
【0006】
従って、これらの分子は、合成化合物概念において、エフェクターとして機能することが提案されており、所定の標的構造に特異的なバインダー部分に結合する。このようにして得られた構造は、標的構造、例えば、腫瘍細胞の腫瘍マーカーを検出し、標的に応じた方法により標的を攻撃するために免疫系を活性化し、又は、標的構造若しくはそれらを担持する細胞を不活性化する。
【0007】
「エフェクター」又は「エフェクター部分」という用語は、任意の分子構造を示すことが好ましい。分子構造は、後天性/適応性若しくは先天性免疫系の免疫応答を誘導、制御する、又は、免疫応答の一部である。エフェクター分子は、天然リガンドの結合部分である必要はないが受容体に結合することができる。エフェクターは、単独で用いた場合、シグナル変換を調整することができ、即ち、代用リガンドとすることができる、又は、天然リガンドの存在によりシグナル変換を変えることができる。
【0008】
従って、WO200800517及びWO201089019に開示された合成化合物は、周知のIgG抗体と同様の原理に従って作用することが可能である。IgG抗体は、バインダー部分(様々な領域又はそこに含まれるCDR)と、エフェクター部分(Fc領域)とを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、患者の免疫系の目標の特定の活性化を向上させることのできる新規な合成化合物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、疾患の治療に新たな可能性をもたらす新規な合成化合物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、腫瘍性疾患、自己免疫疾患、神経病理学的疾患、代謝性疾患、及び/又は、感染性疾患の治療を向上させることのできる新規な合成化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これら及び他の目的は本発明の主題により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を詳細に説明する前に、化合物及び方法は変わることがあることから、記載した化合物の特定成分、又は、記載した方法のプロセスステップに本願発明が限定されないことを理解されたい。また、ここでの用語は、特定の実施例を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。明細書及び添付の請求項における単数形は、明確な記載がない限り、単数形及び/又は複数形を含むことに留意されたい。また、数値によりパラメータ範囲が定められている場合、これらの範囲には当該限界値が含まれると理解されたい。更に、パラメータ範囲の上限及び下限が定められている場合、このような限定を個別又は組み合わせて使用することもできると理解されたい。
【0014】
本発明の1つの面によると、合成化合物が提供される。合成化合物は、少なくとも1つのエフェクター部分と、少なくとも1つのバインダー部分とを含む。エフェクター部分は、バインダー部分に接続され、イソロイシン残基を含むN-ホルミルメチオニンペプチドを含む。
【0015】
前記N-ホルミルメチオニンペプチドは、前記ペプチドにおいてN末端に位置することが好ましいN-ホルミルメチオニン残基を含む。
【0016】
発明者達は、他のエフェクター部分を有するものよりも特定のエフェクター部分を有する合成化合物が特別な効果をもたらすことを発見した。特定のエフェクター部分とは、例えば、fMLF(N-ホルミルMet-Leu-Phe)、fMMYALF(N-ホルミル-Met-Met-Tyr-Ala- Leu-Phe)、又は、fML(N-ホルミル-Met-Leu)である。
【0017】
これらの効果は、イソロイシン残基を欠く従来技術の分子と比べ、エフェクター部分の効能及びこのようなエフェクター部分を含む合成化合物の効能を高めることである。
【0018】
エフェクター部分は、バインダー部分に、
・直接、及び/又は
・リンカーを介して、接続されていることが好ましい。
【0019】
このような直接接続を、直接共役、例えば、共有結合により達成することができる。従って、適切な架橋剤、EDC又はDCCのようなカルボジイミドを使用することができる。
【0020】
例えば、Obrist他(1988)は、カルボジイミドによりN-ホルミルメチオニンペプチドとモノクローナル抗体とを共役にするプロセスを開示している。
【0021】
一方、リンカーは、分子、又は、オリゴマー若しくはポリマーからなる。エフェクター部分とバインダー部分とは、この両末端で結合する。本明細書において、以下に、好ましい実施例を説明する。
【0022】
N-ホルミルメチオニンペプチドは、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、及び/又は、スレオニンから成る群から選択される少なくとも1つの残基を更に含むことが好ましい。
【0023】
本発明による化合物は、
(i)Y形状構造の基部に位置するエフェクター部分と、
(ii)任意で、エフェクター部分に付着した1つ又は2つのリンカーと、
(iii)1つ又は2つのリンカーの末端に付着し、Y形状構造を形成する2つのバインダー分子と、を含む。
【0024】
同様に、1つのみのリンカーがエフェクター部分に付着し、化合物は、1つのみのエフェクター部分と、1つのみのバインダー部分とによりL形状を有することが好ましい。
【0025】
同様に、3つ以上のリンカーがエフェクター部分に付着し、化合物は、1つのエフェクター部分と、3つ以上のバインダー部分とにより花束のような形状を有することが好ましい。
【0026】
同様に、2つ以上のリンカーが2つ以上のエフェクター部分に付着し、各リンカーは末端にバインダーを有し、更に、リンカーは、途中で互いに結合又は付着しており、化合物は、X形状(2つのリンカーが途中で結合する場合)、又は、星形状(3つ以上のリンカーが途中で結合する)に類似の形状を有することが好ましい。
【0027】
同様に、1つ以上のリンカーが1つ以上のエフェクター部分に付着し、リンカーは、途中で2つ以上のアームに分岐しており、各リンカーは、末端に2つ以上のバインダーを有し、化合物は、例えば、Y形状(リンカーが途中で2つのアームに分岐している場合)に類似の形状を有することが好ましい。
【0028】
エフェクター及びバインダー部分の選択に応じて、化合物を、二官能性(1つのエフェクター部分機能及び同じ特性を有する1つ以上のバインダー部分)、又は、三官能性若しくは多官能性(1つのエフェクター部分機能及び異なる特性を有する2つ以上のバインダー部分)とすることができる。
【0029】
合成化合物の好ましい実施例によると、エフェクター部分は、ペプチド又はペプチド模倣物である。
【0030】
ここでの「ペプチド」という用語は、ペプチド(アミド)結合により結合したアミノ酸モノマーの合成又は自然発生短鎖を示す。最短ペプチドは、ジペプチドであり、単一ペプチド結合により結合した2アミノ酸からなり、トリペプチド、テトラペプチド等が続く。ポリペプチドは長い連続非分岐ペプチド鎖である。ペプチドは、サイズに基づきタンパク質と区別され、任意の基準として、約70以下のアミノ酸を含んでいると理解することができる。
【0031】
ここでの「ペプチド模倣物」という用語は、ペプチドの化学構造(例えば、自然発生アミノ酸残基)が、置換構造のコンフォメーションを模倣する他の化学構造と置換した化合物を示す。ペプチド模倣物の例として、ペプチド化合物が挙げられる。ペプチド化合物は、ペプチド骨格が1つ以上のベンゾジアゼビン分子(例えば、James他(1993)参照)及び「レトロインベルソ」ペプチド(Sisto、米国特許4,522,752号参照)により置換したものである。また、「ペプチド模倣物」という用語は、非自然発生アミノ酸(例えば、Dアミノ酸又は修飾されたアミノ酸)を含む分子を示す。非自然発生アミノ酸は、例えば、FPRL-1アゴニスト(N-ホルミルメチオニンペプチド受容体様1アゴニスト)のようなペプチドの機能にかなりの程度の悪影響を及ぼすことなく、コンフォメーション的及び機能的にペプチド含有化合物における特定のアミノ酸の代替物の役割を果たす。
【0032】
好ましい実施例では、N-ホルミルメチオニンペプチドは、長さが≦12アミノ酸であり、長さが≦10アミノ酸であることがより好ましく、長さが≦8のアミノ酸であることが更に好ましい。
【0033】
別の好ましい実施例では、N-ホルミルメチオニンペプチドは、長さが≧2アミノ酸であり、長さが≧3アミノ酸であることがより好ましく、長さが≧4アミノ酸であることが更に好ましい。別の好ましい実施例では、エフェクター部分は、長さが≦12及び≧2アミノ酸であり、長さが≦10及び≧3アミノ酸を含むことが好ましく、長さが≦8及び≧4アミノ酸のペプチドを含むことが更に好ましい。
【0034】
別の好ましい実施例では、N-ホルミルメチオニンペプチドは、少なくとも1つのイソロイシン残基に加え、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、及び/又は、スレオニンからなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む。
【0035】
N-ホルミルメチオニンペプチドは、少なくとも1つのイソロイシン残基に加え、
・少なくとも1つのフェニルアラニン残基と、少なくとも1つのロイシン残基と、又は
・少なくとも1つのフェニルアラニン残基と、少なくとも1つのロイシン残基と、スレオニン残基及び/又はバリン残基から選択される少なくとも1つと、を
含むことが好ましい。
【0036】
特に好ましい実施例では、N-ホルミルメチオニン残基は、N->C方向において、
・1つ又は2つのイソロイシン残基を含む第1ブロックと、
・互いに任意の順番でフェニルアラニン残基及びロイシンを含む第2ブロックと、が続く。
ここで、2つのブロックを、互いに任意の順番で位置決めすることができ、2つのブロックは、直接、又は、最大2つのアミノ酸残基を含むペプチド配列により結合する。
【0037】
ここでの「方向N->C」という用語は、第1及び第2ブロックがN-ホルミルメチオニン残基に対してC末端に位置することを意図する。
【0038】
特に好ましい実施例では、エフェクター部分は、N-ホルミルメチオニン残基に加え、
以下から成る群から選択される少なくとも1つの配列モチーフを含む。
・IFL
・LFII
・IVTLF
・LFIIK、及び/又は、
・IFTLF
【0039】
好ましい実施例では、N-ホルミルメチオニンペプチドは、fMIFL(配列番号3)、fMLFII(配列番号4)、fMIVTLF(配列番号5)、fMLFIIK(配列番号6)、及び/又は、fMIFTLF(配列番号7)から成る群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を含む。ここで、fM=N-ホルミルメチオニンであり、残りの大文字は、1文字コードの下にL-アミノ酸を象徴する。
【0040】
ここで説明するアミノ酸配列又はペプチド配列は、常にN->C方向に示されることが重要である。
【0041】
N-ホルミルメチオニンペプチドは、N-ホルミルメチオニンペプチド受容体(N-formyl methionine peptide receptors:FPR)に結合可能である。FPRは、走化性に関係するGタンパク質共役型受容体のクラスに属する。これらの受容体は、N-ホルミルメチオニンペプチド、例えば、N-ホルミルメチオニンを結合する能力により本来同定されていた。N-ホルミルメチオニンペプチドは、細菌又は宿主細胞の分解により生成される。従って、N-ホルミルメチオニンペプチド受容体は、感染に対する細胞免疫反応の仲介に関係している。これらの受容体は、特定の条件で免疫系を抑えるように作用することもできる。
【0042】
N-ホルミルメチオニンペプチド受容体は、パターン認識受容体(Pattern recognition receptors:PRRs)のスーパーファミリーに属する。これらの受容体は免疫系の原始的部分である。これらは、自然免疫系の細胞により発現したタンパク質であり、病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular patterns:PAMPs)と、損傷関連分子パターン(damage-associated molecular patterns:DAMPs)とを同定する。PAMPは、病原性微生物又は細胞ストレスに関連し、DAMPは、細胞損傷中に解放した細胞成分に関連する。これらは、免疫系の他の部分、特に、適応免疫よりも前に進化したことから、病原体認識受容体又は原始パターン認識受容体とも呼ばれる。
【0043】
ここでは、これらのエフェクターペプチドは、(i)合成ペプチドであり、(ii)自然及び/又は非自然発生アミノ酸、例えば、Dアミノ酸、又は、修飾されたアミノ酸を含むことが可能であることを明らかにしておくことが重要である。
【0044】
合成ペプチドを製造する方法は当業者に周知である。このようなオリゴペプチドを提供するオリジナルプロトコルは、当業者に公開されており、周知である(例えば、O'Donnell他(1996))。
【0045】
この方法に高度な柔軟性を与えるために、プロトコルに対し様々な改善及び拡張がなされている。この改善は、非自然アミノ酸の組み込み(Ishida & Inoue (1999); O'Donnell他(1997); Scott他(1997))と、環状ペプチドの生成(Zhang & Tam (1997); Koppitz他(1997); Gobbo他(1997); Tam & Lu (1998))と、である。
【0046】
別の好ましい実施例によると、バインダー部分は、以下のものから成る群から選択される少なくとも1つである。
・ペプチド又はペプチド模倣物
・抗体、又は、そのフラグメント若しくは誘導体
・受容体分子、又は、そのフラグメント若しくは誘導体
・抗体模倣物、又は、そのフラグメント若しくは誘導体
・アプタマー
【0047】
「ペプチド」及び「ペプチド模倣物」という用語は、上記したように、同じ意味を有する。しかしながら、ここでは、これらは、高い特異性及び/又は感度で所定の部分を結合する(bind)能力も有する。
【0048】
ここでの「抗体」という用語は、モノクローナル若しくはポリクローナル抗体、又は、そのフラグメント若しくは誘導体を示す。特に好ましくは、このような「抗体」は、IgG、IgD、IgE、IgA及び/又はIgMから成る群から選択される、又は、そのフラグメント若しくは誘導体である。
【0049】
ここでの「フラグメント」という用語は、場合によって標的結合能力を保持する抗体のフラグメントを示す。フラグメントは、例えば、以下の通りである。
・CDR (complementarity determining region:相補性決定領域)
・超可変領域
・可変ドメイン(Fv)
・1本鎖可変フラグメント(a single chain variable fragment:scFv)
・IgG重鎖(VH、CH1、ヒンジ、CH2、及び、CH3領域からなる)
・IgG軽鎖(VL及びCL領域からなる)、及び/又は、
・Fab及び/又はF(ab)2
【0050】
ここでの「受容体分子」という用語は、最も広い意味で使用される。受容体分子を、所定の標的に結合することのできる任意の化学成分とすることもできる。受容体分子は、酸素、レクチン、所定のリガンドに対する可溶性若しくは膜結合タンパク質、又は、糖タンパク質を含む。
【0051】
このような膜結合タンパク質は、例えば、TNFa受容体又はVEGF受容体である。それらのフラグメントは、いわゆるFc融合生産物、例えば、エタネルセプト(ヒトIgG1 Fcに融合したTNF受容体IIの75kDa細胞外ドメイン)、又は、アフリベルセプト(ヒトIgG1 Fcに融合したVEGF受容体I及びIIの細胞外ドメイン)に使用される。
【0052】
ここでの「抗体模倣物」という用語は、免疫グロブリンに関連しない標的結合タンパク質に関係する。位相表示のように、上記技術の多くをこれらの分子に適用することもできる。このような抗体模倣物は、例えば、アンキリンリピートタンパク質、C型レクチン、スタフィロコッカスアウレウスのAドメインタンパク質、トランスフェリン、リポカリン、ファイブロネクチン、クニッツドメインプロテアーゼ阻害剤、ユビキチン、システインノット又はノットチン、チオレドキシンAなどから由来したものであり、それぞれの文献から当業者に周知である。
【0053】
ここでの「アプタマー」という用語は、核酸種に関係する。核酸種は、小分子、タンパク質、核酸、細胞、組織、及び、生物等の分子標的に結合することができる。アプタマーは、一般的に使用されている生体分子の分子認識特性に匹敵する分子認識特性を提供することからバイオテクノロジー及び治療用途に利用可能である。これらの識別的認識に加え、アプタマーは、試験管内で完全に操作され、化学合成により容易に生成され、所望の保存特性を保有し、治療用途において免疫原性をほとんど又は全く引き起こさないことから、抗体又は他の標的バインダーに対して効果的である。例えば、インビトロ選択の反復範囲、又は、同等に、SELEX法(systematic evolution of ligands by exponential enrichment:指数関数濃縮によるリガンドの系統的進化)により、アプタマーを生成することもできる。
【0054】
以下に記載する実施可能な例は、合成化合物に関する。合成化合物では、エフェクター部分は、ペプチド又はペプチド模倣物バインダー部分に接続している。本発明の概念は、上記したような他の種類のバインダー部分にも実施可能である。Obrist他(1983)は、例えば、バインダー部分がフルサイズIgGモノクローナル抗体であり、エフェクター部分がfMLP、即ち、イソロイシン残留部を欠くN-ホルミルメチオニンペプチドである概念を開示している。得られた構造は、マクロファージンの局所的な増強を引き起こすことが可能である。従って、本発明の概念は、ペプチドバインダーだけでなく、上記したような他のバインダー種にも実施可能であることは明らかである。
【0055】
このようなフルサイズのIgG抗体は、約150Kdの分子量と、約1330アミノ酸残基の蓄積鎖長(2x重鎖+2x軽鎖)とを有する。これに対し、開示された実施可能な例のペプチド又はペプチド模倣物バインダーは、10未満のアミノ酸残基を有し、非自然発生アミノ酸を含む。従って、これらはIgGのサイズの1%未満を有する。
【0056】
このため、イソロイシン残基を含むホルミルメチオニンペプチドをバインダー部分に結合する概念は、バインダー部分が(非常に小さい)ペプチド又はペプチド模倣物である場合だけでなく、バインダー部分が(非常に大きい)IgGである場合にも機能的である。
【0057】
他の種類のバインダー部分(受容体分子、又は、そのフラグメント若しくは誘導体、又は、抗体模倣物、又は、そのフラグメント若しくは受容体、又は、アプタマー)のサイズは、10AAペプチドと完全なIgGとの間のサイズ範囲にあることから、イソロイシン残基を含むホルミルメチオニンペプチドを結合する概念もこれらの実施例では機能的である。
【0058】
合成化合物の別の好ましい実施例によると、バインダー部分は、α3インテグリン若しくはαvβ6インテグリン、又は、そのサブドメイン若しくはエピトープを標的とする。α3インテグリン及び/又はαvβ6インテグリンの発現は、異なる種類の悪性腫瘍に関係する。従って、それぞれの非抗体化合物は、これらの疾患を治療する有望なアプローチを提供する。
【0059】
好ましくは、バインダー部分は、cdGY(3-NO2)GHypNc(配列番号1、表1参照)又はRGDLATLRQL(配列番号2、表1参照)から成る群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を含む。ここで、c = D-システイン; d = D-アスパラギン酸; 3-NO2 =ニトロチロシンであり;Hyp = 4-ヒドロキシブロリンであり、残りの大文字は、確立された「1文字コード」の下にL-アミノ酸を象徴する。配列番号1はα3インテグリンに結合し、配列番号2はαvβ6インテグリンに結合する。
【0060】
好ましくは、「リンカー」は、少なくとも1つのエフェクター部分を少なくとも1つのバインダーに作動可能に結合する任意の構造である。リンカーが共有結合的にエフェクター及びバインダーを結合すると、その最短長は、1つの共有結合、例えば、1つのペプチド結合である。他のリンカーは、様々な化学的結合架橋剤を含む。これらは、例えば、ホモ又はヘテロ多官能性、オリゴ又はヘテロ官能性架橋剤を含む。周知の様々な化学的性質により、結合又は架橋を達成することができる。これらの化学的性質は、例えば、活性化ポリエチレングリコール、アルデヒド、イソシアネート、マレイミド等を含む。
【0061】
ここでの「作動可能に結合」とは、pH、イオン強度、及び、浸透ポテンシャルの生理学的条件下で、エフェクター及びバインダーの実体の大部分が互いに関係し、両方の実体が意図した機能を発揮することを意味する。
【0062】
本発明のリンカーの例は、小型リンカー、ホモオリゴ官能性リンカーによる統計的カップリング、オリゴ-アルコール、-アミン、-カルボン酸、チオール、ヘテロオリゴ官能性カップリング要素により定義された化学量論、ポリマー(親水性及び親油性ポリマー)、ホモ多官能性リンカーによる統計的カップリング、HPMA、ポリリジン、ヒドロキシンエチルセルロース、ヒドロキシンエチルスターチ、アミノデキストラン、コポリマー、分岐ポリマー付着物、分岐PEG、デンドリマー、特に、ポリリシンデンドリマー、ヘテロオリゴ官能性カップリングによる規定化学量論、ポリペプチド、官能性活性ポリマー、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)、及び/又は、ポリウレタンを含む。
【0063】
ポリマー担体ユニット、例えば、PEGへのユニットのカップリングは、当業者に周知な反応を用いて行われる。例えば、当業者に利用可能な多くのPEG及びHES付着方法がある(例えば、WO2004/100997; Roberts他(2002); U.S. Pat. No. 4,064,118; EP 1 398 322; EP 1 398 327; EP 1 398 328; WO2004/024761参照)。PEG化、ジスルフィド架橋、又は、リジン側鎖による分子の二量化については、WO96/40772; WO96/40749; WO01/38342; WO01/091780; WO2004/101611; WO2004/100997; WO2004/101600; WO2004/101606;Wrighton他(1997); Johnson他(1997)に記載されている。上記方法は、リンカー構造により単量体ペプチドを組み合わせ、所望の二量体分子又は多重体分子を得る。
【0064】
合成化合物の特に好ましい別の実施例によると、リンカーはポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)を含む。
【0065】
上記したように、リンカーを真っすぐ又は分岐させることができる。分岐ポリエチレングリコールリンカー(「マルチアームPEG」)を、グラフト化コポリマーとして、又は、オリゴ価(oligovalent)開始剤により開始した直接重合により調整することができる。マルチアームPEGは、連鎖停止剤として遊離ヒドロキシル部分により通常調整される、又は、その後、修飾され、官能性活性マルチアームPEGを産出する。
【0066】
合成化合物の別の好ましい実施例によると、リンカーは、1つ以上のポリエチレングリコール分子を含む。ポリエチレングリコール分子は、長さが≦40モノマー若しくは長さが≧15モノマー、又は、長さが≦40モノマー及び≧15モノマーの間であることが好ましい。
【0067】
1つ又は2つのポリエチレングリコール分子は、長さが≦35モノマー及び≧20モノマーの間であることが好ましく、長さが≦24モノマー及び≧21モノマーの間であることがより好ましい。
【0068】
ポリエチレングリコールが結合する適切な官能基の選択は、PEGに結合するアミノ酸残基に利用可能な反応基の種類に基づいている。タンパク質の場合、典型的な反応性アミノ酸は、リシン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、チロシンを含む。
【0069】
ポリエチレングリコールリンカーは、1つ以上のアミノ酸側鎖基によりエフェクター部分に結合することが好ましい。アミノ酸側鎖基はアミノ基であることが好ましい。側鎖を有するアミノ酸残基は、リジン残基であることが好ましい。側鎖を有するアミノ酸残基は、エフェクター部分においてC末端に位置している。2つ以上のリンカーが使用されている場合、側鎖を有する2つ以上のアミノ酸残基は、互いに隣接して、例えば、C末端に位置している。
【0070】
エフェクター部分は、アミド結合により、例えば、リジン残基のエプシロンアミノ基を介して、ポリエチレングリコールリンカーの末端カルボキシ基に共有結合していることが好ましい。
【0071】
合成化合物の別の好ましい実施例によると、エフェクター部分、バインダー部分、及び、リンカーから選択した少なくとも2つの部分は、クリックケミストリーにより互いに結合している。
【0072】
「クリックケミストリー」という用語は、小さなユニットを互いに結合することにより迅速且つ確実に物質を生成するように調整された化学的性質を示す。クリックケミストリーとは、単一の特別な反応ではなく、小さなモジュールユニットを結合することにより物質を生成する模倣的性質を意図する。
【0073】
分子の多様性に関しては、多くの自然発生分子が反復ユニットから作られる(タンパク質は反復アミノ酸ユニットから作られ、多糖は反復単糖ユニットから作られる)。接続は、カーボン‐カーボン結合よりもカーボン‐ヘテロ原子結合C-X-Cである。また、酸素は、それぞれが小さなエネルギーステップのみを必要とする一連の反応により、化学プロセスが大きなエンタルピー障害を克服することができることを保証する。有機合成における模倣的性質は、多くの可能な構造を前提として新しい医薬品の発見に不可欠である。
【0074】
候補が30未満の非水素原子からなり、500ダルトン未満の重さであり、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、塩素、及び、臭素の原子で構成され、室温で安定し、酸素及び水と反応しないという推測に基づき、薬剤候補のプールサイズは1063で計算されている。クリックケミストリーは、多段階合成における各反応を迅速、効果的、且つ、予測可能にすることにより、新薬の発見をスピードアップすることできる。
【0075】
クリックケミストリー概念に上手く適合するいくつかの反応種類が同定されている。
・[3 + 2]環化付加、例えば、ヒュスゲン(Huisgen) 1,3-双極性環化付加(アジド‐アルキン・ヒュスゲン環化付加(Azide-Alkyne Huisgen Cycloaddition)とも呼ばれる)
・チオール‐エンクリック反応
・ディールス‐アルダー反応及び逆電子要求ディールス‐アルダー反応
・イソニトリル(イソシアニド)とテトラジンとの間の[4 + 1]環化付加
・求核置換、特に、エポキシ及びアジリジン化合物のような小さなひずみ連鎖への置換
・ウレアーゼのカルボニル化学反応形成、低熱力学的駆動力のためアルドール型の反応ではない
・チオール‐イン反応におけるジヒドロキシル化又はアルキンのようなカーボン‐カーボン二重結合に対する付加反応
【0076】
これらの全ての種類の反応は、好ましい実施形態として適しているが、好ましい反応種類は、[3 + 2]環化付加、好ましくは、アジド‐アルキン・ヒュスゲン環化付加である。この反応種類は、アジトと、末端又は内部アルキンとの間の1,3-双極性環化付加であり、1,2,3‐トリアゾールを生じる。
【0077】
本発明の別の面によると、合成化合物を含む医薬製剤を提供する。製剤は、更に、生理学的に許容可能な賦形剤を含む。これらの賦形剤を、例えば、緩衝剤、安定剤、界面活性剤、凍結防止剤、防腐剤とすることができる。当業者は、例えば、Frokjaer & Hovgaard(2000)において適切な教示を見出す。
【0078】
本発明の更に別の面によると、ヒト又は動物の治療のために合成化合物又は製剤の使用を提供する。
【0079】
上記使用は、以下から成る群から選択される少なくとも1つの疾患の治療に関係する。
・腫瘍性疾患
・自己免疫疾患
・神経病理学的疾患
・代謝性疾患、及び/又は、
・感染性疾患
【0080】
ここでの「腫瘍性疾患」という用語は、急速に増殖する細胞成長又は新生物を特徴とする細胞又は組織の異常な状態又は状況を示す。
【0081】
「自己免疫疾患」という用語は、自己組織又は組織成分に対する免疫反応から生じる疾患を意味する。免疫反応は自己抗体反応及び細胞仲介反応を含む。
【0082】
「神経病理学的疾患」という用語は、特に、神経変性疾患、神経炎症性疾患、又は、発作性疾患を包含する。
【0083】
「代謝性疾患」という用語は、特に、代謝の異常、代謝の不均衡、又は、最適下限代謝が生じる病気を包含する。疾患自体が特定の代謝閉塞により引き起こされる、又は、引き起こされないこともあるが、ここでの代謝性疾患は、代謝性疾患の調整により治療することのできる疾患を考慮する。
【0084】
「感染性疾患」という用語は、特に、寄生虫(原生動物及び後生動物)、細菌、ウィルス、菌類、及び、マイコプラズマのような病原体により引き起こされる疾患を包含する。
【0085】
実施例及び図面の説明
本発明の更なる詳細、特徴、性質、及び、効果は、従属項に開示されている。各図及び実施例に関する以下の説明は、本発明の好ましい実施形態を示す。しかしながら、これらの図は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0086】
実験例
1.抱合反応/クリックケミストリー
1つのアジド部分を有するバインダーペプチドと、2つのアルキン基を有するエフェクターペプチドとの銅触媒アジド‐アルキン環化付加のプロトコル。
【0087】
反応パラメータ
1当量のアルキン
2,5当量のアジド
1-6当量のCuSO4(ddH2O中の100-200mM溶剤)
8-50当量のアスコルビン酸ナトリウム(ddH2O中の500-1500mM溶剤)
1,2-6,5当量のTBTA(無水DMF中の100mM溶剤)
【0088】
反応は、撹拌棒で撹拌した2mlエッペンドルフ管 (Eppendorf tube)中で、室温、アルゴン雰囲気、15~18%ddH2Oを含有するDMFにおいて起こる。アルキンの濃度は2~3mMである。
【0089】
反応が始まる前に全ての溶剤を新たに調整する。CuSO4及びアスコルビン酸ナトリウム溶液を調整する前に、ddH2Oを脱気し、その後、アルゴンで洗い流す。
【0090】
反応を10~60分撹拌する。
【0091】
RP-HPLC及びESI-MSにより、反応の進行をモニターする。
【0092】
逆位相精製は、C18カラム及び5~45%Bの直線グラジエントを30分使用し、時間又は質量により、対応する生成物を収集する。使用した緩衝剤は、A (ddH
2
O+ 0.05 % TFA)と、B (ACN + 0.05 % TFA)とである。精製生成物を凍結乾燥し、-20℃で保存する。
【0093】
2.DHR123酸化アッセイ
好中球の酸化的バーストは、細胞宿主防御の一部を形成し、例えば、N-ホルミルペプチドfMLPにより誘発され得る(Kim他 (2003))。従って、酸化アッセイは、ホルミルペプチドの効能を決定するための有用なツールである。エフェクターペプチド又はペプチド模倣物との培養により引き起こされた好中球の酸化バースト活量は、フローサイトメトリーにより測定され、ローダミンへのジヒドロローダミン123(DHR)の細胞内変換を定量化する。要約すると、ヒト又はマウスの白血球(1,25 * 106細胞/ml)を、10mM Hepesを含むハンクス緩衝食塩水(Hanks' Buffered Saline Solution:HBSS、Ca2+、Mg2+を含まない)中のカタラーゼ、サイトカラシンB(シグマ)及びDHRと共に、pH7,4、5mM EDTA及び0.3%BSA中で37℃で10分間培養した。その後、異なるエフェクターペプチド又はペプチド模倣物と共に、異なる濃度で37℃で15分間培養した。PMAは陽性対照として使用された。
【0094】
全てのサンプルをホルムアルデヒド中で凝固し、FASC Canto(1サンプル当たり少なくとも20000細胞が数えられた)を用いた分析まで氷上で維持した。前方及び側方散乱特性に基づき好中球を同定した。側方散乱/FL2ドットプロットにより、DHR蛍光の分析を行った。陰性(非刺激)対照サンプルをゲーティングすることにより、DHR陽性細胞の割合を同定した。
【0095】
【0096】
3.細胞結合アッセイのFACS分析
フローサイトメトリーを用いて、特定の標的を示す異なる細胞株に対する本発明の合成化合物のペプチド又はペプチド模倣物の結合能力を調査した。分離細胞は、氷の上で少なくとも30分間、ブロッキング緩衝剤においてビオチン化ペプチド/ペプチド模倣物、又は、ビオチン化合成化合物と共に培養した。細胞を洗浄緩衝剤で2回洗浄した。その後、氷の上で15分間、ペリジニン-クロロフィルタンパク質PerCP-Cy5.5(BD Biosciences)で標識したストレプトアビジンと共に培養した。1回の追加の洗浄ステップ後、FASC Canto(1サンプル当たり少なくとも10000細胞が数えられた)を用いて、サンプルを、ビオチン化試薬とストレプトアビジン- PerCP-Cy5.5とを結合した細胞について分析した。ペプチド又は対照ペプチドと培養した細胞のオーバーレイヒストグラムを作成し、各サンプルの幾何学平均蛍光をFloJoで決定した。グラフプリズム(Graph Prism)ソフトウェアを用いて、EC50測定を計算した。
【0097】
以下の細胞株を使用した。表面抗原α3インテグリン及びαvβ6インテグリンの存在又は不在は、対応する抗体テストにより検証されている。
【0098】
4.走化性アッセイ
エフェクターペプチド又はペプチド模倣物の走化性効果をテストするために、10*10
6
細胞/mlで10mMのHepes pH7.4及び0.3%BSAによるハンクス緩衝食塩水(Hanks' Buffered Saline Solution:HBSS、Ca2+、Mg2+を含まない)中に、ヒト白血球を再懸濁した。20分間37℃で細胞を予備加熱した。24ウェルプレートのウェル(800 μl/ウェル)に、上記緩衝剤のエフェクター希釈液を添加した後、孔径5μmのミリセル(Millicell)カルチャープレートインサートを各ウェルに配置した。その後、直ぐに、200 μl(200万)の白血球を添加した。45分間37℃でプレートを培養した。下部チャンバーに遊走した白血球の総数を、ノイバウア(Neubauer)チャンバーを用いて決定した、又は、遊出した単球、好中球、及び、リンパ球の数を、フローサイトメトリーにより決定した(FCS/SSCプロットにおける細部集団を区別する)。
【0099】
【0100】
5.エフェクターペプチドを含むイソロイシンの効力を決定するアッセイ
別のアッセイでは、白血球の呼吸バーストを刺激するために、N-ホルミルメチオニンペプチドを含む異なるイソロイシンの効力をテストした。
【0101】
異なるホルミルメチオニンペプチド(そのうちのいくつかはイソロイシン)への暴露後に、NADPHオキシダーゼ活性を決定することにより、呼吸又は酸化バーストの活性化を測定した。
【0102】
ヒト白血球の単離
健康なボランティアのヘパリン添加血液から白血球を単離した。デキストラン500000を1%まで添加し、37℃で30分間培養することにより、赤血球は沈殿した。白血球を含有する上層を2回の低張溶解し、残留赤血球を排除した。室温で遠心分離後、PBSに細胞ペレットを再懸濁し、10倍量の滅菌蒸留水を添加し、室温で20秒間培養後、元容量の10 x PBSを添加した。細胞を再ペレット化し、白色ペレットが観察されるまで、この溶解工程を繰り返した。
【0103】
マウス白血球の単離
C57BL/6(ブラック6)マウスから大腿骨を解剖した。PBS及び26ゲージの針を用いて骨髄を洗い流した。BD Pharm lyse(Becton Dickinson)緩衝剤を用いて製造者の指示に従い赤血球を溶解した。
【0104】
酸化バーストアッセイ/DHR酸化アッセイ
細胞ベースのジヒドロローダミン(DHR123、分子プローブ(Molecular Probes))酸化アッセイを用いて、酸化バースト(NADPHオキシダーゼ活性)の活性化を測定した。新たに単離したヒト又はマウスの白血球のサンプル(サンプル当たり2,5×10
5細胞/ml、ハンクス平衡塩溶液(Hank’s balanced salt solution:HBSS)+ 10mMのHepes、pH7.3、0.3%BSA及び5mM EDTA)に、DHR123(0,1 mM)、カタラーセ(1 U/ml、Sigma-Aldrich)及びサイトカラシンB(21μM、Sigma-Aldrich)を添加し、エッペンドルフ管(Eppendorf tube)に分注した。37℃で10分間細胞をプレインキュベートした後、同じ緩衝剤で調製した0.25容量のエフェクターペプチド希釈物(意図濃度の5倍)を添加した。以下のN-ホルミルメチオニンエフェクターペプチドをテストした。
【0105】
37℃で15分間混合物を培養した。サンプルを1%ホルムアルデヒド中に凝固し、氷上に置き、死細胞の排除を可能にするために、Hoechst 33258(0.5μg/ml)を添加した。FACS Canto (Beckton Dickinson)を用いて分析が行われた。FCS/Hoechst及びFSC / SSCプロットにおいて、生細胞及び顆粒球のゲーティングを行った。FL2/SSCプロットにおけるローダミン蛍光に基づいて、NADPH‐オキシダーゼ陽性顆粒球の割合を同定した。刺激されていないサンプルを参考として用い、全てのアッセイにおいて陽性対照として、ホルボールエステル(phorbol ester: PMA)刺激サンプルを用いた(図示せず)。結果を
図13、14に示す。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1a】
図1aは、銅触媒[3+2]アジド‐アルキン環状付加の反応スキームを示す。バインダーペプチド模倣物配列番号1(表1参照)を含有するアジド(i)は、エフェクター骨格fMIFL(表1参照)及びPEGリンカーを含有するアルキン(ii)ときちんと反応し、室温で30分後、1, 4‐トリアゾール(iii)が得られる。
【
図1b】
図1bは、スキーム1に示された精製化合物の分析データ:A)逆相HPLCデータ:B)同じ化合物のエレクトロスプレーイオン化学量分析データを示す。
【
図2】
図2は、本発明に係る化合物の異なる構成を示す。Aでは、本発明の化合物は、免疫グロブリンGの構造に類似している。エフェクター部分は、免疫グロブリンGのFc部分と同様に、Y形状構造の基部に位置する。2つのリンカーは、エフェクター部分に付着し、2つの同一のバインダー部分は、免疫グロブリンGのCDRs又は可変ドメインと同様に、リンカーの末端に付着している。Bでは、2つのリンカーは、例えば、異なる標的に特異性を有する2つの異なるバインダー部分を有する。従って、化合物は三官能性である。Cでは、1つのリンカーはエフェクター部分に付着し、リンカーは途中で2つのアームに分岐しており、各リンカーは、末端に2つのバインダーを有し、この例では、2つのバインダーは互いに異なっている。従って、化合物はYと同様の形を有する。
【
図3】
図3は、本発明に係る合成化合物の異なる構成を示す。Aでは、3つのリンカーはエフェクター部分に付着していることから、化合物は、1つのエフェクター部分と、3つの同一のバインダー部分とを備える花束と同様の形を有する。Bでは、2つのリンカーは、2つのエフェクター部分に付着し、各リンカーの末端にバインダーを有し、リンカーは互いに途中で結合している。従って、化合物はXと同様の形を有する。図示しないが同様に好ましくは、1つのみのリンカーがエフェクター部分に付着していることから、化合物は、1つのみのエフェクター部分と1つのみのバインダー部分とを備えるI形状を有する。別の変形例も可能である。
図2のCの実施例は、例えば、2つの同一バインダーを有することが可能である。
図3のAの実施例は、例えば、異なる標的に特異性を有する異なるバインダー部分を有することが可能である。
図3のBの実施例は、途中で結合した3つ以上のリンカーを有することから、星型に類似している。
図3のAの実施例は、それぞれがバインダー部分(異なるものと同じ)を有する4つ以上のリンカーを有することが可能である。エフェクター及びバインダー部分の選択に応じて、化合物を、二官能性(1つのエフェクター部分官能基及び同じ特異性を備える1つ以上のバインダー部分)、又は、三官能性若しくは多官能性(1つのエフェクター部分官能基及び異なる特異性を備える2つ以上のバインダー部分)とすることができ、又は、化合物は別の官能性を有することが可能である(c5受容体アゴニストが提供される場合)。バインダー部分を、ペプチド若しくはペプチド模倣物、抗体、又は、そのフラグメント若しくは誘導体、受容体分子、又は、そのフラグメント若しくは誘導体、抗体模倣物、又は、そのフラグメント若しくは誘導体、及び/又は、アプタマーとすることができる。
【
図4】
図4は、走化性アッセイ(A)と、DHR123酸化アッセイ(B)とを示し、ヒト白血球において生体外で(Ile
残基を欠く)と、fMIFL共役とを比較する。fMIFLは、著しく良好な走化性効果及び酸化バーストのより良好な活性化を実証する。
【
図5】
図5は、DHR123酸化アッセイを示し、マウス白血球において生体外でfMLF(Ile
残基を欠く)と、fMFLとを比較する。fMIFLは、酸化バーストのより良好な活性化を実証する。
【
図6】
図6は、ヒト顆粒球による走化性アッセイ(A)と、ヒト単球による走化性アッセイ(B)と、ヒト白血球によるDHR123酸化アッセイ(C)とを示し、各アッセイでは、ヒト白血球において生体外でfMIFLと、fMLFIIと、fMIVTLFとを比較する。
【
図7】
図7は、DHR123酸化アッセイを示し、マウス白血球において生体外でfMIFLと、fMLFIIと、fMIVTLFと比較する。
【
図8】
図8は、α3インテグリン(実線)を標的とする200nMビオチン化ペプチド模倣物バインダー配列番号1と、又は、前記バインダーのスクランブル変異体(点線)と共に培養したヒト腫瘍細胞株を示す。ストレプトアビジン-PerCP-Cy5.5による染色。前記スクランブル変異体では、オリジナルのペプチド配列はランダムに置換されている。バインダーは、α3インテグリン表面抗原を全て発現する細胞株A431、PC3、及び、U87-MGを結合するが、前記抗体を発現しないK562細胞株を結合しないことがわかる。以下の細胞株を使用した。表面抗原α3インテグリン及びαvβ6インテグリンの存在又は不存在は、対応する抗体テストにより確認されている。
【
図9】
図9は、αvβ6インテグリン(実線)を標的とする10nMのビオチン化ペプチドバインダー配列番号2又は、前記バインダーのスクランブル変異体(点線)と共に培養したヒト腫瘍細胞株を示す。ストレプトアビジン-PerCP-Cy5.5による染色。前記スクランブル変異体では、オリジナルのペプチド配列は、ランダムに置換されている。バインダーは、αvβ6インテグリン表面抗原を発現する細胞株A431及びHT-29に結合するが、前記抗原を発現しない細胞株PC-3及びU87-MGには結合しないことがわかる。
【
図10】
図10は、1μMの合成化合物I型(実線)と共に又は合成化合物(点線)なしで培養したヒト腫瘍細胞株を示す。ストレプトアビジン‐PerCp-Cy5.5による染色。合成化合物I型は、(i)配列番号1を有するペプチド模倣物を含み、α3インテグリンを標的とするバインダー部分と、(ii)配列番号3を有するペプチド模倣物を含むエフェクター部分及びPEGリンカー(fMIFL)と、からなる合成化合物である。α3インテグリンに対する合成化合物I型の結合能は、単なるバインダー部分のそれと同様であることは明らかである(
図8参照)。これは、エフェクターと、リンカーとの結合がバインダーの結合能力に影響しないことを意味する。
【
図11】
図11は、マウス白血球における生体外での合成化合物I型と、非共役化fMIFLとを比較するDHR123酸化アッセイを示す。合成化合物I型は、(i)配列番号1を有し、α3インテグリンを標的とするペプチド模倣物(表1参照)を含むバインダー部分と、(ii)配列番号3を有するペプチド模倣物(fMIFL、表1参照)を含むエフェクター部分及びPEGリンカーと、からなる合成化合物である。fMIFの酸化バーストの活性化は、PEG-リンカー及びそれぞれのバインダーペプチド模倣物への共役によって影響を受けないことは明らかである。
【
図12】
図12は、本発明に係る合成化合物の別の構造を示す。合成化合物は、フル機能リンカーを有していない。エフェクター部分は、免疫グロブリンGのFc部分と同様に、Y形状構造の基部に位置するが、2つの異なるバインダー部分は、免疫グロブリンGの可変ドメイン又はCDRsと同様に、エフェクター部分に直接接続する。このような直接接続を、直接共役、例えば、共有結合により達成することができる。適切な架橋剤を用いることができる。適切な架橋剤を、例えばEDC又はDCCのようなカルボジイミドとすることができる。バインダー部分をペプチド若しくはペプチド模倣物、抗体、又は、そのフラグメント若しくは誘導体、受容体分子、又は、そのフラグメント若しくは誘導体、抗体模倣体、そのフラグメント若しくは誘導体、及び/又は、アプタマーとすることができる。
図2、3に記載した通り、この概念の異なる変形例が可能である。変形例は、例えば、2つの同一バインダー部分、3つ以上のバインダー部分、2つ以上のエフェクター部分等である。
【
図13】
図13は、異なるN-ホルミルメチオニンペプチドへの暴露時のマウス白血球のDHRアッセイを示す。ローダミン陽性細胞の割合は、それぞれの分子のエフェクター効果の尺度である。イソロイシンを含む4つのN-ホルミルメチオニンエフェクターペプチドは、イソロイシンを含まない対照より2~3桁高い効力を示す。
【
図14】
図14は、異なるN-ホルミルメチオニンペプチドへの暴露時のヒト白血球のDHR酸化アッセイを示す。ローダミン陽性細胞の割合は、それぞれの分子のエフェクター効果の尺度である。イソロイシンを含む3つのN-ホルミルメチオニンエフェクターペプチドは、イソロイシンを含まない対照より2~3桁高い効力を示す。
図13及び
図14は、イソロイシン
残基を含むN-ホルミルメチオニンペプチドが、イソロイシン
残基を欠くN-ホルミルメチオニンペプチドよりもはるかに良好な免疫刺激効果を有することを印象的に示している。
【表1】
表1は、ここで説明されているバインダーペプチド/ペプチド模倣物及びエフェクター ペプチド/ペプチド模倣物の概要を示す。N末端n-ホルミル-メチオニンが以下の構造を有 することを理解することが重要である。
【化1】
【0107】
参考文献
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【0108】
略語
・TBTA トリス[(1‐ベンジル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)メチル]アミン:Tris[(1-benzyl-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl]amine
・DMF N、N-ジメチルホルムアミド:N,N-Dimethylformamide
・ACN アセトニトリル:Acetonitrile
・HPLC 高速液体クロマトグラフィー:High Performance Liquid Chromatography
・ESI-MS エレクトロスプレーイオン化質量分析:Electrospray Ionization Mass Spectrometry
・FACS 蛍光活性化セルソーティング:Fluorescence-activated cell sorting
・RP-HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー:Reverse-phase High Performance Liquid Chromatography
・PEG ポリエチレングリコール:Polyethylene glycol
【0109】
配列表
SEQUENCE LISTING
<110> Syntab GmbH
<120> Novel Synthetic Antibodies
<130> SD 43742
<160> 7
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 8
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> SYN-B9; binder to alpha 3 Integrin
<220>
<221> misc_feature
<222> (1)..(2)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (4)..(4)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (6)..(6)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (8)..(8)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<400> 1
Xaa Xaa Gly Xaa Gly Xaa Asn Xaa
1 5
<210> 2
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> SYN-B13; binder to alpha v beta 6 Integrin (beta chain)
<400> 2
Arg Gly Asp Leu Ala Thr Leu Arg Gln Leu
1 5 10
<210> 3
<211> 4
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> SYN-F2 effector peptide
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (1)..(1)
<223> Xaa is formyl methionine
<400> 3
Xaa Ile Phe Leu
1
<210> 4
<211> 5
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> SYN-F4 effector peptide
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (1)..(1)
<223> Xaa is formyl methionine
<400> 4
Xaa Leu Phe Ile Ile
1 5
<210> 5
<211> 6
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> SYN-F5 effector peptide
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (1)..(1)
<223> Xaa is formyl methionine
<400> 5
Xaa Ile Val Thr Leu Phe
1 5
<210> 6
<211> 6
<212> PRT
<213> artificial sequence
<220>
<223> SYN-F14・effector peptide
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (1)..(1)
<223> Xaa is formyl methionine
<400> 6
Xaa Leu Phe Ile Ile Lys
1 5
<210> 7
<211> 6
<212> PRT
<213> artificial sequence
<220>
<223> SYN-FX・effector peptide
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (1)..(1)
<400> 7
Xaa Ile Phe Thr Leu Phe
1 5
【配列表】