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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ダイヤフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 45/04 20060101AFI20240306BHJP
   F04B 43/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F04B45/04 C
F04B43/02 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020008928
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116708
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000121833
【氏名又は名称】マブチモーターオーケン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 晃
(72)【発明者】
【氏名】板原 一毅
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-056465(JP,A)
【文献】特開2013-036396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/00-47/14、
39/00-39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状に形成されたポンプ部を有しかつ前記ポンプ部が開口するように前記ポンプ部の周囲に設けられた板状の挟持部を有するダイヤフラムと、
前記ポンプ部の開口部分を覆うように前記ダイヤフラムに重ねられ、前記ポンプ部と協働してポンプ室を形成する第1の壁部材と、
前記ポンプ部が挿入される穴を有し、前記第1の壁部材と協働して前記ダイヤフラムの前記挟持部を挟持する第2の壁部材と、
前記ポンプ部の底に接続され、前記底を前記第1の壁部材に対して接離させることにより前記ポンプ室の容積を増減させる駆動体と、
前記第1の壁部材を貫通して形成され、前記ポンプ室の容積が増えることにより流体が前記ポンプ室に向けて流れる吸入通路と、
前記第1の壁部材を貫通して形成され、前記ポンプ室の容積が減少することにより前記ポンプ室から吐出された流体が流れる吐出通路と、
前記吸入通路を開閉する吸入弁と、
前記吐出通路を開閉する吐出弁とを備え、
前記第1の壁部材は、前記ポンプ部の内部に向けて突出して前記ポンプ部の開口部分に嵌合する突壁を有し
前記突壁は円板状に形成され、
前記突壁の外周部には、前記ポンプ室に開口する状態で前記突壁の径方向に延びて前記ポンプ室の内外を連通する溝が形成されていることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
請求項1記載のダイヤフラムポンプにおいて、
前記吸入通路は前記溝を用いて形成され、前記吐出通路は、前記突壁を貫通して形成されていることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
カップ状に形成されたポンプ部を有しかつ前記ポンプ部が開口するように前記ポンプ部の周囲に設けられた板状の挟持部を有するダイヤフラムと、
前記ポンプ部の開口部分を覆うように前記ダイヤフラムに重ねられ、前記ポンプ部と協働してポンプ室を形成する第1の壁部材と、
前記ポンプ部が挿入される穴を有し、前記第1の壁部材と協働して前記ダイヤフラムの前記挟持部を挟持する第2の壁部材と、
前記ポンプ部の底に接続され、前記底を前記第1の壁部材に対して接離させることにより前記ポンプ室の容積を増減させる駆動体と、
前記第1の壁部材を貫通して形成され、前記ポンプ室の容積が増えることにより流体が前記ポンプ室に向けて流れる吸入通路と、
前記第1の壁部材を貫通して形成され、前記ポンプ室の容積が減少することにより前記ポンプ室から吐出された流体が流れる吐出通路と、
前記吸入通路を開閉する吸入弁と、
前記吐出通路を開閉する吐出弁とを備え、
前記第1の壁部材は、前記ポンプ部の内部に向けて突出して前記ポンプ部の開口部分に嵌合する突壁を有し、
前記突壁は、前記第1の壁部材における、前記ポンプ室の壁を構成する板状部に円筒状に形成され、
前記吸入通路および前記吐出通路は、前記板状部における、前記突壁によって囲まれた部分を貫通して形成され
前記ポンプ部の開口部分は、開口径が前記ポンプ部の底側と較べて大きくなるように形成された環状の凹部を有し、
前記突壁は、前記凹部に嵌合していることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ状のポンプ部を有するダイヤフラムを備えたダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイヤフラムポンプとしては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示されたダイヤフラムポンプは、モータの回転が往復運動に変換されて駆動力として伝達されるダイヤフラムを備えている。このダイヤフラムは、駆動力が伝達されるカップ状のポンプ部と、ポンプ部が開口するようにポンプ部の周囲に設けられた板状の挟持部とを有している。挟持部は、ポンプ部と協働してポンプ室を形成する第1の壁部材と、ポンプ部が挿入される穴が形成された第2の壁部材とによって挟まれて保持されている。
【0003】
ところで、この種のダイヤフラムポンプにおいては、図6に示すように、ダイヤフラム1の挟持部2と第2の壁部材3との接触部分に互いに係合する凹部4と凸部5とからなる係合構造6が設けられることが多い。図6において、符号7は、ダイヤフラム1のポンプ部を示し、符号8は第1の壁部材を示す。図6に示すダイヤフラム1の挟持部2には凹部4が形成され、第2の壁部材3には凸部5が形成されている。このように係合構造6が設けられる理由は、ポンプ部7が拡張する行程で挟持部2の端部2aがポンプ部7によって矢印で示す方向に引かれて図6中に二点鎖線で示すように弾性変形により伸び、正規の位置からポンプ室9内に引き込まれることを防ぐためである。
【0004】
挟持部2の端部2aがポンプ室9内に引き込まれると、次の二つの問題が生じる。第1の問題は、ポンプ部7が収縮する行程で挟持部2の端部2aとポンプ部7の底を構成するピストン7aとが接触する可能性があることである。第2の問題は、ポンプ部7が収縮する行程でポンプ部7を形成する相対的に厚みが薄いゴム材料が過度に屈曲し、このゴム材料どうしが接触して摩耗し易くなることである。
【0005】
近年においては、上述したように構成されたダイヤフラムポンプの更なる小型化が要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-112127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように構成された従来のダイヤフラムポンプでは、更なる小型化を図ることはできなかった。この理由は、ダイヤフラム1の挟持部2の厚みを更に薄く形成すると、係合構造6の凹部4を形成する部分の厚みが極端に薄くなって破けるおそれがあるからである。このような不具合を避けるために凹部4を浅く形成して凸部5を低く形成すると、係合構造6が機能しなくなり、挟持部2がポンプ室9内に引き込まれる現象を防ぐことができなくなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、ダイヤフラムの挟持部がポンプ室内に引き込まれる現象を防ぎながら、更なる小型化を図ることが可能なダイヤフラムポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るダイヤフラムポンプは、カップ状に形成されたポンプ部を有しかつ前記ポンプ部が開口するように前記ポンプ部の周囲に設けられた板状の挟持部を有するダイヤフラムと、前記ポンプ部の開口部分を覆うように前記ダイヤフラムに重ねられ、前記ポンプ部と協働してポンプ室を形成する第1の壁部材と、前記ポンプ部が挿入される穴を有し、前記第1の壁部材と協働して前記ダイヤフラムの前記挟持部を挟持する第2の壁部材と、前記ポンプ部の底に接続され、前記底を前記第1の壁部材に対して接離させることにより前記ポンプ室の容積を増減させる駆動体と、前記第1の壁部材を貫通して形成され、前記ポンプ室の容積が増えることにより流体が前記ポンプ室に向けて流れる吸入通路と、前記第1の壁部材を貫通して形成され、前記ポンプ室の容積が減少することにより前記ポンプ室から吐出された流体が流れる吐出通路と、前記吸入通路を開閉する吸入弁と、前記吐出通路を開閉する吐出弁とを備え、前記第1の壁部材は、前記ポンプ部の内部に向けて突出して前記ポンプ部の開口部分に嵌合する突壁を有しているものである。
【0010】
本発明は、前記ダイヤフラムポンプにおいて、前記突壁は円板状に形成され、前記吸入通路および前記吐出通路は、前記突壁を貫通して形成されていてもよい。
【0011】
本発明は、前記ダイヤフラムポンプにおいて、前記突壁は、前記第1の壁部材における、前記ポンプ室の壁を構成する板状部に円筒状に形成され、前記吸入通路および前記吐出通路は、前記板状部における、前記突壁によって囲まれた部分を貫通して形成されていてもよい。
【0012】
本発明は、前記ダイヤフラムポンプにおいて、前記ポンプ部の開口部分は、開口径が前記ポンプ部の底側と較べて大きくなるように形成された環状の凹部を有し、前記突壁は、前記凹部に嵌合していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、第1の壁部材の突壁がダイヤフラムの挟持部の移動を規制するから、係合構造を用いることなくダイヤフラムの挟持部がポンプ室内に引き込まれることを防ぐことができる。したがって、本発明によれば、ダイヤフラムの挟持部がポンプ室内に引き込まれる現象を防ぎながら、更なる小型化を図ることが可能なダイヤフラムポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1の実施の形態によるダイヤフラムポンプの断面図である。
図2図2は、ダイヤフラムポンプの一部を拡大して示す断面図である。
図3図3は、要部を拡大して示す断面図である。
図4図4は、第2の実施の形態によるダイヤフラムポンプの断面図である。
図5図5は、要部を拡大して示す断面図である。
図6図6は、従来のダイヤフラムポンプの一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にダイヤフラムポンプの一実施の形態を図1図3を参照して詳細に説明する。
図1に示すダイヤフラムポンプ11は、図1において最も下に位置するモータ12に取付けられ、このモータ12によって駆動されて動作し、空気を吸込んで吐出する。
このダイヤフラムポンプ11は、モータ12に固定された駆動部13と、この駆動部13に取付けられた弁部14とを備えている。
【0016】
<駆動部の構成>
駆動部13は、モータ12に固定された駆動部用ハウジング15と、このハウジング15の中に収容された駆動機構16とによって構成されている。
ハウジング15は、有底円筒状に形成されてモータ12に図示していない固定用ボルトによって固定されている。
駆動機構16は、モータ12の回転軸17に取付けられたクランク体18と、このクランク体18に駆動軸19を介して連結された駆動体20などを備えている。
【0017】
駆動軸19は、回転軸17に対して所定の方向に傾斜している。
駆動体20は、駆動軸19に回転自在に支持された円柱状の軸部21と、この軸部21から径方向の外側に突出する複数の腕部22とによって構成されている。
腕部22は、後述するダイヤフラム23のポンプ部24毎に設けられており、軸部21から放射状に径方向の外側へ延びている。
【0018】
腕部22には貫通穴22aが穿設されている。この貫通穴22aには、ダイヤフラム23の連結片25が係入されている。連結片25は、腕部22を貫通した状態で腕部22に固定されている。
この駆動機構16によれば、モータ12の回転軸17とともにクランク体18と駆動軸19とが回転することにより、駆動体20が揺動し、ダイヤフラム23のポンプ部24が収縮と拡張とを繰り返す。
【0019】
<弁部の構成>
弁部14は、図2に示すように、駆動体20に接続されたダイヤフラム23と、駆動部用ハウジング15の開口部分に取付けられたダイヤフラムホルダー31と、このダイヤフラムホルダー31との間にダイヤフラム23が挟まれる状態でダイヤフラムホルダー31に取付けられたダイヤフラムハウジング32と、このダイヤフラムハウジング32に隔壁33を介して取付けられたカバー34などを備えている。ダイヤフラムホルダー31と、ダイヤフラムハウジング32と、カバー34は、モータ12の軸線方向から見て円形に形成されている。
【0020】
<ダイヤフラムホルダーの説明>
ダイヤフラムホルダー31は、駆動部用ハウジング15に接続可能な円板状に形成され、複数の貫通孔を有している。これらの貫通孔とは、後述するダイヤフラム23のポンプ部24が挿入されるポンプ部24毎のシリンダ孔35と、傘状の吸入弁36によって開閉される吸入孔37である。これらのシリンダ孔35と吸入孔37の一端は、それぞれ駆動部用ハウジング15とダイヤフラムホルダー31とによって囲まれたハウジング内空間Sに開口している。ハウジング内空間Sは、図示していない通気用の穴を通して大気中に連通されている。
吸入孔37の他端は、吸入弁36を収容する円形凹部38に開口している。吸入弁36は、ゴム材料によって形成され、吸入孔37の開口部分を開閉する弁体36aを有している。
【0021】
<ダイヤフラムの説明>
ダイヤフラム23は、ダイヤフラムハウジング32に向けて開口する複数のカップ状のポンプ部24と、ポンプ部24が開口するようにポンプ部24の周囲に設けられた板状の挟持部41とを有している。
ポンプ部24は、円筒状を呈するダイヤフラムホルダー31の周方向において、ダイヤフラム23を複数に分割する位置にそれぞれ設けられている。これらのポンプ部24は、ダイヤフラムホルダー31に形成されたシリンダ孔35の中に挿入されている。
【0022】
ポンプ部24の開口部分24aは、ダイヤフラムハウジング32によって閉塞されている。このポンプ部24とダイヤフラムハウジング32との間にポンプ室42が形成されている。
カップ状を呈するポンプ部24の底にはピストン43が設けられているとともに、ポンプ室42とは反対方向に向けて突出する連結片25が設けられている。この連結片25は、上述したように駆動機構16の駆動体20に連結されている。このため、駆動体20が揺動することにより、ポンプ部24の底(ピストン43)がダイヤフラムハウジング32に対して接離し、ポンプ室42の容積が増減する。
【0023】
ダイヤフラム23の挟持部41は、ダイヤフラムホルダー31とダイヤフラムハウジング32とに挟まれて保持されている。言い換えれば、ダイヤフラムホルダー31は、ダイヤフラムハウジング32と協働してダイヤフラム23の挟持部41を挟持している。この実施の形態においては、ダイヤフラムハウジング32が本発明でいう「第1の壁部材」に相当し、ダイヤフラムホルダー31が本発明でいう「第2の壁部材」に相当する。ダイヤフラムホルダー31とダイヤフラム23との間には、図3に示すように、ダイヤフラムホルダー31側の凸部44とダイヤフラム23側の凹部45とからなる第1の係合構造46が設けられている。また、ダイヤフラムハウジング32とダイヤフラム23との間には、ダイヤフラム23側の凸部47とダイヤフラムハウジング32側の凹部48とからなる第2の係合構造49が設けられている。
【0024】
図2に示すように、ダイヤフラム23の挟持部41であって、円形凹部38と対向する部分には、第1の貫通孔51が形成されている。第1の貫通孔51は、ダイヤフラム23のポンプ部24毎に設けられている。
【0025】
<ダイヤフラムハウジングの説明>
ダイヤフラムハウジング32は、板状に形成され、ポンプ部24の開口部分24aを覆うようにダイヤフラム23に重ねられ、ポンプ部24と協働してポンプ室42を形成している。
ダイヤフラムハウジング32は、ポンプ部24の内部に向けて突出してポンプ部24の開口部分24aに嵌合する突壁52を有している。この実施の形態による突壁52は、円板状に形成されている。突壁52の外径は、ポンプ部24の開口部分24aの内径と同一か、ポンプ部24内に圧入されるような外径である。突壁52の厚み(モータ12の軸線方向の長さ)は、ダイヤフラム23の挟持部41の厚みより薄く、ポンプ部24が最も収縮した状態でポンプ部24の底(ピストン43)と突壁52との間に所定の隙間が形成されるような厚みである。
【0026】
突壁52には、図2および図3に示すように、吸入通路53の一部となる溝54と、吐出通路55の一部となる第2の貫通孔56の一端部とが開口している。吸入通路53および吐出通路55は、突壁52を貫通して形成されている。溝54は、ダイヤフラム23のポンプ部24毎に設けられており、ポンプ室42内と、ポンプ部24毎の第1の貫通孔51内とを連通している。吸入通路53は、ハウジング内空間Sと、吸入孔37と、円形凹部38と、第1の貫通孔51と、溝54とによって構成されている。
第2の貫通孔56の他端部は、図1に示すように、ダイヤフラムハウジング32と後述する隔壁33との間に形成された入力側空間71に接続されている。
【0027】
<隔壁の説明>
隔壁33は、ダイヤフラムハウジング32とカバー34とに挟まれて保持されている。また、隔壁33は、合成ゴムを含むゴム材料などの弾性材によって板状に形成され、ダイヤフラムハウジング32とカバー34との間を仕切っている。隔壁33とダイヤフラムハウジング32との間には入力側空間71が形成され、隔壁33とカバー34との間には出力側空間72が形成されている。
【0028】
出力側空間72は、入力側空間71とは隔壁33によって仕切られている。この出力側空間72は、カバー34の一側部(図1においては左側部)に設けられている出口通路73と、カバー34の他側部に設けられている主排気通路74と、カバー34の中心部に設けられている副排気通路75とに図示していない連通路を介して接続されている。出口通路73は、カバー34の凹部34aの内部とカバー34の外とを連通している。
【0029】
隔壁33の一側部(図1においては左側部)には、カバー34の凹部34a内に向けて突出する筒状弁体76が設けられている。この筒状弁体64は、ダイヤフラムハウジング32の円筒77と協働して逆止弁78を構成している。
逆止弁78は、入力側空間71の空気をカバー34の凹部34aの中(出力側空間72)に流す。円筒77は、逆止弁78の弁座を構成している。筒状弁体76は、円筒77の外周面を覆う円筒状に形成されている。
【0030】
筒状弁体76の突出端は、円筒77の外周面に周方向の全域にわたって密着している。筒状弁体76の基端部は、円筒77より径が大きくなるように形成されている。この筒状弁体76の基端部と円筒77との間の空間は、入力側空間71の一部である。この実施の形態においては、入力側空間71と、カバー34の凹部34a内の空間と、出口通路73と、ダイヤフラムホルダー31の第2の貫通孔56とによって吐出通路55が構成されている。
【0031】
隔壁33には、後述する差圧弁81の弁体82と、ダイヤフラムハウジング32の柱状突起83が通される第3の貫通孔84とが設けられている。第3の貫通孔84は、副排気通路75に接続されている。
差圧弁81は、弁体82と、主排気通路74が開口する弁座85とによって構成されており、弁体82が入力側空間71と出力側空間72との圧力差で移動することにより、主排気通路74を開閉する。この実施の形態においては、この差圧弁81と、上述した逆止弁78とによって、本発明でいう「吐出弁」が構成されている。
第3の貫通孔84に挿入された柱状突起83は、第3の貫通孔84の孔壁面とは微小な隙間を隔てて離間するように形成されている。このため、入力側空間71は、柱状突起83と第3の貫通孔84との間の微小な隙間と、カバー34の副排気通路75とを介して大気中に開放されている。
【0032】
<動作の説明>
このように構成されたダイヤフラムポンプ11において、ダイヤフラム23のポンプ部24が拡張してポンプ室42の容積が増える場合は、吸入弁36が開いてハウジング内空間Sの空気が吸入通路53を通ってポンプ室42に吸い込まれる。このようにポンプ部24が拡張する行程においては、ポンプ部24がダイヤフラム23の挟持部41をポンプ室42内に向けて引っ張るようになる。しかし、この実施の形態においては、ポンプ部24の開口部分24aにダイヤフラムハウジング32の突壁52が嵌合しており、この突壁52が挟持部41の移動を規制する。
一方、ダイヤフラム23のポンプ部24が収縮してポンプ室42の容積が減少する場合は、ポンプ室42内の空気が入力側空間71に送られる。入力側空間71の圧力が上昇することにより差圧弁81が閉じ、入力側空間71の空気が逆止弁78および凹部34aの中を通って出口通路73に供給される。
モータ12が停止すると、入力側空間71の空気が副排気通路75を通ってポンプ外に排出されるために、入力側空間71内の圧力が低下し、これに伴って差圧弁81が開く。このように差圧弁81が開くことにより、出力側空間72内の空気、すなわち出口通路73内の空気が凹部34a内と、図示していない連通路と、主排気通路74とを通ってポンプ外に排出される。
【0033】
このダイヤフラムポンプ11においては、ダイヤフラム23のポンプ部24が拡張する行程で突壁52が挟持部41の移動を規制するから、挟持部41がポンプ室42内に引き込まれることを防ぐことができる。したがって、この実施の形態によれば、ダイヤフラム23の挟持部41がポンプ室42内に引き込まれる現象を防ぎながら、ダイヤフラム23の挟持部41を薄く形成することができるから、更なる小型化を図ることが可能なダイヤフラムポンプを提供することができる。
【0034】
この実施の形態による突壁52は円板状に形成されている。吸入通路53および吐出通路55は、突壁52を貫通して形成されている。この実施の形態によれば、突壁52の体積の分だけポンプ室42の実質的な容積が減少するから、突壁52を利用して圧縮比を高くすることができる。
【0035】
(第2の実施の形態)
本発明に係る突壁は図4および図5に示すように構成することができる。図4および図5において、図1図3によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。図5は、図4におけるA部を拡大して示す断面図である。
図4に示すダイヤフラムポンプ101は、第1の実施の形態によるダイヤフラムポンプ11とは、弁部14の構成が異なっている。第2の実施の形態によるダイヤフラムポンプ101の弁部14は、ダイヤフラムハウジング32にカバー34が重ねられており、ダイヤフラムハウジング32とカバー34との間に形成された吐出用流体室102に一つの吐出弁103が設けられている。
【0036】
吐出用流体室102は、ダイヤフラムハウジング32の第4の貫通孔104を介してポンプ室42に接続されているとともに、カバー34に突設された吐出パイプ105の中空部に接続されている。この実施の形態においては、第4の貫通孔104と、吐出用流体室102と、吐出パイプ105の中空部とによって吐出通路55が構成されている。
吐出弁103は、ゴム材料によって形成され、ダイヤフラムハウジング32における吐出用流体室102側の壁面に密着する弁体103aを有している。この弁体103aは、第4の貫通孔104の開口部分を開閉可能に閉塞している。
【0037】
第4の貫通孔104は、ダイヤフラムハウジング32における、ポンプ室42の壁を構成する板状部111に設けられている。板状部111には、吸入弁112が設けられているとともに、吸入弁112の弁体112aによって開閉される第5の貫通孔113が形成されている。第4および第5の貫通孔104,113と、吸入弁112は、ポンプ室42毎に設けられている。第5の貫通孔113は、ポンプ室42と、カバー34内に環状に形成された吸入用流体室114とを連通している。吸入用流体室114は、カバー34の吸入パイプ115の中空部に接続されている。この実施の形態においては、第5の貫通孔113と、吸入用流体室114と、吸入パイプ115の中空部とによって吸入通路53が構成されている。
【0038】
この実施の形態によるダイヤフラムハウジング32の板状部111は、円筒状の突壁121を有している。一方、ダイヤフラム23のポンプ部24の開口部分24aは、図5に示すように、開口径がポンプ部24の底側と較べて大きくなるように形成された環状の凹部122を有している。円筒状の突壁121は、環状の凹部122に嵌合している。突壁121の外径は、凹部122の内径と同一か、凹部122内に圧入されるような外径である。突壁121の高さ(モータ12の軸線方向の長さ)は、ダイヤフラム23の挟持部41の厚みより薄く、吸入弁112の弁体112aが突壁121の内側に収容されるような高さである。
【0039】
この実施の形態によれば、ポンプ室42に吸入弁112が設けられる場合であっても、挟持部41がポンプ室42内に引き込まれることを突壁121によって防ぐことができる。したがって、この実施の形態を採ることにより、ポンプ室42に吸入弁112が設けられるダイヤフラムポンプ101において、ダイヤフラム23の挟持部41を薄く形成して更なる小型化を図ることが可能になる。
【0040】
この実施の形態による突壁121は、ポンプ部24の開口部分24aに開口径がポンプ部24の底側と較べて大きくなるように形成された環状の凹部122に嵌合している。このため、突壁121がダイヤフラム23の挟持部41に収容されるようになるから、環状の凹部122が形成されていない場合と較べてポンプ部24の内径を小さくすることができる。この結果、ポンプ部24の小径化が可能になり、より一層小型化されたダイヤフラムポンプを実現できる。
【符号の説明】
【0041】
11,101…ダイヤフラムポンプ、20…駆動体、23…ダイヤフラム、24…ポンプ部、24a…開口部分、32…ダイヤフラムハウジング(第1の壁部材)、31…ダイヤフラムホルダー(第2の壁部材)、35…シリンダ孔(穴)、36,112…吸入弁、41…挟持部、42…ポンプ室、52,121…突壁、53…吸入通路、55…吐出通路、78…逆止弁、81…差圧弁、103…吐出弁、111…板状部、122…凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6