(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】マット材
(51)【国際特許分類】
B32B 5/02 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B32B5/02 B
(21)【出願番号】P 2020015421
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内村 玲夫
(72)【発明者】
【氏名】向後 雄太
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-233433(JP,A)
【文献】特開平07-004234(JP,A)
【文献】特表2013-505390(JP,A)
【文献】特開2019-105210(JP,A)
【文献】特開2015-028326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
F01N 3/00,3/02,3/04-3/38,9/00-11/00
B01J 21/00-38/74
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維を含む平面視矩形のマットが複数枚積層された積層マットと、
前記積層マットに巻き付けられた帯状体とからなるマット材であって、
前記帯状体の前記マット材の長さ方向における寸法が、
200mm
以上であり、
前記積層マットの長さ方向における前記帯状体の端部のうち、前記積層マットの幅方向に沿った第1の短側面に最も近い端部と、前記積層マットの前記幅方向に沿った第2の短側面に最も近い端部とで挟まれる領域で定義される、帯状体が配置された領域が、前記積層マットの前記長さ方向の中央に重なるように配置されていることを特徴とするマット材。
【請求項2】
無機繊維を含む平面視矩形のマットが複数枚積層された積層マットと、
前記積層マットに巻き付けられた帯状体とからなるマット材であって、
前記帯状体の前記マット材の長さ方向における寸法が、前記マット材の長さ方向における寸法の
50%
以上であり、
前記積層マットの長さ方向における前記帯状体の端部のうち、前記積層マットの幅方向に沿った第1の短側面に最も近い端部と、前記積層マットの前記幅方向に沿った第2の短側面に最も近い端部とで挟まれる領域で定義される、帯状体が配置された領域が、前記積層マットの前記長さ方向の中央に重なるように配置されていることを特徴とするマット材。
【請求項3】
前記帯状体は、有機材料、セラミック材料及び金属材料からなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む請求項1に記載のマット材。
【請求項4】
前記帯状体が有機繊維からなる不織布である請求項3に記載のマット材。
【請求項5】
前記帯状体が樹脂フィルムからなる請求項3に記載のマット材。
【請求項6】
前記帯状体は前記積層マットと接着されていない請求項1~5のいずれか1項に記載のマット材。
【請求項7】
前記帯状体の目付量は5~500g/m
2である請求項1~6のいずれか1項に記載のマット材。
【請求項8】
前記マット材の長さ方向における寸法が333mm以上である請求項1~7のいずれか1項に記載のマット材。
【請求項9】
前記マットの1枚あたりの目付量が500~4000g/m
2である請求項1~8のいずれか1項に記載のマット材。
【請求項10】
前記マットの1枚あたりの厚さが2~30mmである請求項1~9のいずれか1項に記載のマット材。
【請求項11】
前記帯状体を巻き付けていない前記積層マットの垂れ試験による垂れ量が10mm以上である請求項1~10のいずれか1項に記載のマット材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット材に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容するケーシングと、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される保持シール材とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆うケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体とケーシングとの間から排気ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。
【0004】
このような用途で用いられる保持シール材としては、無機繊維からなるマット材が用いられる。無機繊維からなるマット材は、自動車等の配管に巻き付けて使用する断熱用途、防音用途にも用いられる。
【0005】
特許文献1には、無機繊維からなるマットが複数枚積層されており、複数枚のマットが固着力を有していない帯状体により結束されている保持シール材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された保持シール材では、帯状体は、積層された複数枚のマットの長さ方向中央近傍のみに巻かれており、保持シール材の両端付近では帯状体は巻かれていない。
このような形態で帯状体が巻かれている場合、特に保持シール材の両端付近では各マットが拘束されていないので、マット材を持ち上げた際には下側のマットが下方向に垂れることがあった。
このように「垂れる」マット材は、ハンドリング性に劣っており、排ガス処理体への巻き付けやケーシングへの圧入の際の作業性に劣ることがあった。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、複数枚のマットが積層された積層マットに帯状体を巻き付けてなるマット材であって、ハンドリング性に優れたマット材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係るマット材は、無機繊維を含む平面視矩形のマットが複数枚積層された積層マットと、上記積層マットに巻き付けられた帯状体とからなるマット材であって、上記帯状体の上記マット材の長さ方向における寸法が、100mmを超えることを特徴とする。
【0010】
上記マット材では、帯状体のマット材の長さ方向における寸法が100mmを超えて長くなっているため、帯状体が積層マットを拘束している領域が広い。
そのため、マット材に垂れが生じにくく、ハンドリング性に優れたマット材とすることができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係るマット材は、無機繊維を含む平面視矩形のマットが複数枚積層された積層マットと、上記積層マットに巻き付けられた帯状体とからなるマット材であって、上記帯状体の上記マット材の長さ方向における寸法が、上記マット材の長さ方向における寸法の30%を超えることを特徴とする。
【0012】
上記マット材では、帯状体のマット材の長さ方向における寸法がマット材の長さ方向における寸法の30%を超えて長くなっているため、帯状体が積層マットを拘束している領域が広い。
そのため、マット材に垂れが生じにくく、ハンドリング性に優れたマット材とすることができる。
【0013】
本発明のマット材では、上記帯状体は、有機材料、セラミック材料及び金属材料からなる群から選択される少なくとも1種の材料を含むことが好ましい。
また、上記帯状体が有機繊維からなる不織布であることが好ましい。
また、上記帯状体が樹脂フィルムからなることが好ましい。
これらの材料からなる帯状体は、本発明のマット材を構成する帯状体として適当である。
【0014】
本発明のマット材では、上記帯状体は上記積層マットと接着されていないことが好ましい。
帯状体が積層マットと接着されていないと、積層マットを構成するマットの位置を調整することができる。
【0015】
本発明のマット材では、上記帯状体の目付量は5~500g/m2であることが好ましい。
帯状体の目付量が上記範囲内であると、積層マットを拘束するのに充分な機械的強度を備える。
【0016】
本発明のマット材では、上記マット材の長さ方向における寸法が333mm以上であることが好ましい。
また、上記マットの1枚あたりの目付量が500~4000g/m2であることが好ましい。
また、上記マットの1枚あたりの厚さが2~30mmであることが好ましい。
マット材又はマットが上記のような規定を満たす場合、マット材に垂れが生じやすくなる。本発明のマット材では帯状体を適切な態様で積層マットに巻き付けているので、垂れが生じやすいマット材に対して、垂れを防止することができる。
【0017】
本発明のマット材では、上記帯状体を巻き付けていない上記積層マットの垂れ試験による垂れ量が10mm以上であることが好ましい。
垂れ試験による垂れ量が上記規定を満たすような積層マットを用いて作製したマット材は垂れが生じやすいマット材である。
本発明のマット材では帯状体を適切な態様で積層マットに巻き付けているので、垂れが生じやすいマット材に対して、垂れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、マット材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、垂れ試験の様子を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、積層マットに巻き付けられた帯状体の数が2つであるマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
【0019】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明のマット材について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0020】
本発明の第1の態様に係るマット材は、無機繊維を含む平面視矩形のマットが複数枚積層された積層マットと、上記積層マットに巻き付けられた帯状体とからなるマット材であって、上記帯状体の上記マット材の長さ方向における寸法が、100mmを超えることを特徴とする。
【0021】
図1は、マット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すマット材10は、マットが複数枚積層されてなる積層マット20と、積層マット20に巻き付けられた帯状体30とからなる。
【0022】
積層マット20は第1のマット21と第2のマット22の2枚が積層されてなる。
第1のマット21及び第2のマット22はその長手方向(
図1中、両矢印L
1及びL
2で示す方向)の長さが長いマットである。第1のマット21はその長手方向の長さが長いマットであり、その長手方向における長さを両矢印L
1で示している。第2のマット22はその長手方向の長さが短いマットであり、その長手方向における長さを両矢印L
2で示している。
【0023】
積層マット20は2つの主面を有しており、マットの長手方向の長さが最も長い主面が第1の主面23であり、マットの長手方向の長さが最も短い主面が第2の主面24である。
第1の主面23は第1のマット21の下側の主面であり、第2の主面24は第2のマット22の上側の主面である。
【0024】
積層マット20は4つの側面を有しており、マットの長手方向に沿った側面が第1の長側面25及び第2の長側面26である。また、マットの幅方向(
図1中、両矢印Wで示す方向)に沿った側面が第1の短側面27及び第2の短側面28である。
第1の短側面27には凹部、第2の短側面28には凸部がそれぞれ形成されている。凹部と凸部は、外周が円柱状の排ガス浄化装置、排ガス処理体や排気管にマット材を巻きつける際に、ちょうど互いに嵌合するような形状となっている。
なお、本実施形態のマット材では、嵌合する部分の形状を凹部と凸部としているが、嵌合する部分の形状をL字型の組合せとしてもよい。
なお、
図1中、両矢印Tで示す方向がマット材の厚さ方向である。
【0025】
帯状体30は、積層マット20に連続的に巻き付けられている。
帯状体30には巻き付け開始部31と巻き付け終了部32が存在しており、巻き付け開始部31と巻き付け終了部32は積層マット20の第2の主面24に存在している。
すなわち、帯状体30は積層マット20の第2の主面24の巻き付け開始部31から、第2の長側面26、第1の主面23、第1の長側面25を経て第2の主面24の巻き付け終了部32まで連続的に巻き付けられている。
なお、巻き付け開始部31と巻き付け終了部32は積層マット20のどこに存在してもよい。
図1に示すマット材10では、帯状体30の一部が積層マット20の第2の主面24上で重なっているが、帯状体が積層マットに巻き付けられる周方向において重なっていなくてもよい。帯状体が積層マットに巻き付けられる周方向において重なっていない場合、巻き付け開始部と巻き付け終了部の間に帯状体が存在せずに積層マットの主面が露出する露出部が形成される。
露出部は積層マット20の第1の主面23と第2の主面24のいずれか一方に存在していればよい。
露出部の幅は特に限定されないが、積層マット20の幅方向の長さの0%を超えて80%以下であることが好ましい。
【0026】
帯状体30のマット材の長さ方向における寸法は、
図1に両矢印Xで示す長さであり、この長さが100mmを超える。
帯状体のマット材の長さ方向における寸法が100mmを超えると、帯状体が積層マットを拘束している領域が広い。
そのため、マット材に垂れが生じにくく、ハンドリング性に優れたマット材とすることができる。
また、帯状体のマット材の長さ方向における寸法は200mm以上であることが好ましく、300mm以上であることがより好ましい。
また、帯状体のマット材の長さ方向における寸法は(積層マットの長さ-50mm以下)であってもよく、マット材が嵌合する部分以外の部分の長さと略同じであってもよい。
【0027】
帯状体は、有機材料、セラミック材料及び金属材料からなる群から選択される少なくとも1種の材料を含むことが好ましい。
【0028】
帯状体が有機材料からなる場合、有機材料は、特に限定されない。例えば、紙、樹脂フィルム、有機繊維からなる不織布等が挙げられる。
帯状体は、ポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択された少なくとも1種の樹脂からなることが好ましい。
これらの材料は柔軟性及び弾性に優れており、ヒートシールにより積層マットに接着することができるため好ましい。
【0029】
有機繊維からなる不織布としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維にPE(ポリエチレン)パウダーが融着したものが挙げられる。
他に使用できる有機繊維としては、PP(ポリプロピレン)、レーヨン等が挙げられる。
また、帯状体が樹脂フィルムである場合、樹脂フィルムを構成する有機材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等が挙げられる。
【0030】
帯状体がセラミック材料からなる場合、セラミック材料は、特に限定されない。例えば、アルミナ、シリカ、チタニア等のシートが挙げられる。また、セラミック繊維からなる布でもよく、アルミナクロス、シリカクロス、チタニアクロス等が挙げられる。
【0031】
帯状体が金属材料からなる場合、金属材料は、特に限定されない。例えば、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等のシートが挙げられる。また、金属繊維からなるメッシュでもよく、ステンレスメッシュ、アルミメッシュ等が挙げられる。
【0032】
帯状体は、積層マットに接着されていなくてもよい。
帯状体が積層マットと接着されていないと、積層マットを構成するマットの位置を調整することができる。
【0033】
また、帯状体は接着剤を介して積層マットに接着されていてもよい。帯状体が有機材料からなる場合、接着剤を使用せずに帯状体自体を積層マットにヒートシールすることにより帯状体を積層マットに接着してもよい。
帯状体と積層マットの接着を接着剤を介して行う場合、接着剤としてはアクリル系接着剤、アクリレート系ラテックス、ウレタン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等を使用することができる。
帯状体自体を積層マットにヒートシールする場合は、帯状体を構成する有機材料の種類に応じて適切な加熱温度によりヒートシールを行えばよい。
【0034】
帯状体はその目付量が5~500g/m2であることが好ましい。
帯状体の目付量が上記範囲内であると、積層マットを拘束するのに充分な機械的強度を備える。
また、帯状体に穴等の空隙を設けたり、ネット状とすることにより帯状体の目付量を調整する(小さくする)ことができるので、帯状体には空隙等を設けてもよい。
【0035】
積層マットを構成するマットは無機繊維からなる。無機繊維は、特に限定されず、アルミナ繊維、シリカ繊維等であってもよい。また、ガラス繊維や生体溶解性繊維であってもよい。耐熱性や耐風蝕性等、マット材に要求される特性等に応じて変更すればよく、各国の環境規制に適合できるような太径繊維や繊維長のものを使用するのが好ましい。
【0036】
この中でも、低結晶性アルミナ質の無機繊維が好ましく、ムライト組成の低結晶性アルミナ質の無機繊維がより好ましい。加えて、スピネル型化合物を含む無機繊維がさらに好ましい。
【0037】
積層マットにおいてマット材が積層される枚数は複数枚であれば特に限定されるものではない。2枚又は3枚であることが好ましく、2枚であることがより好ましい。
【0038】
積層マットの寸法の好ましい範囲は以下の通りである。
積層マットの長手方向の長さ(
図1で両矢印L
2で示す長さで、第2の主面24を有する第2のマット22の長手方向の長さ)が333mm以上であることが好ましく、1500mm以下であることが好ましい。
積層マットの幅方向の長さ(
図1で両矢印Wで示す長さ)が40~400mmであることが好ましい。
積層マットの厚さ(
図1で両矢印Tで示す長さ)が4~60mmであることが好ましい。
積層マットの厚さが4mm未満であると、その厚さが薄すぎるため、断熱性能や防音性能が低下してしまう。一方、積層マットの厚さが60mmを超えると、柔軟性が低下し、装着対象となる部材への装着性が低下する。
【0039】
積層マットは、巻き付け方向となる長手方向と、長手方向に直交する短手方向を有する。
積層マットには、積層マットの長手方向側の端部のうち、一方の端部である第1の端部には凸部が形成されており、他方の端部である第2の端部には凹部が形成されていることが好ましい。積層マットの凸部及び凹部は、外周が円柱状の排ガス浄化装置、排ガス処理体や排気管に積層マットを巻きつける際に、ちょうど互いに嵌合するような形状となっていることが好ましい。
また、積層マットは凸部及び凹部が形成されていない形状であってもよい。
また、本実施形態の積層マットでは嵌合する部分の形状を凹部と凸部としているが、嵌合する部分の形状をL字型の組合せとしてもよい。
【0040】
本発明のマット材は帯状体を適切な態様で積層マットに巻き付けているので、垂れが生じやすいマット材に対して、垂れを防止することができる。そのため、本発明のマット材は、積層マットが垂れが生じやすい場合に好適に発明の効果を発揮することができる。
具体的には、積層マットを構成するマットが、それぞれ長く、やわらかく、薄い場合に積層マットの垂れが生じやすくなる。
【0041】
積層マットを構成するマットが垂れやすいマットである場合、マットの長さ方向における寸法の好ましい範囲は以下の通りである。
各マットの長さ方向における寸法が333mm以上である。
マットの1枚あたりの目付量が500~4000g/m3である。
マットの1枚あたりの厚さが2~30mmである。
【0042】
帯状体を巻き付けていない積層マットの垂れ試験による垂れ量が10mm以上である場合、積層マットの垂れが生じやすいといえる。
図2は、垂れ試験の様子を模式的に示す側面図である。
垂れ試験では、ステージ40に積層マット20を載置する。その際、短いマットである第2のマット22をステージ40に接する側に配置する。第2のマット22がステージ40の端から300mm突出するようにする。第2のマット22がステージ40に接している部位では第2のマット22とステージ40は固定しておく。そして、第2のマット22がステージの端から突出した部位では自重により第2のマット22がステージ40の上面から垂れ下がるので、ステージ40の上面を基準として第2のマット22が垂れ下がった高さ(
図2中、両矢印Yで示す寸法)を測定して、この測定値を「垂れ量」とする。
【0043】
積層マットを構成するマットのかさ密度は、特に限定されるものではないが、0.05~0.30g/cm3であることが望ましい。マットのかさ密度が0.05g/cm3未満であると、無機繊維のからみ合いが弱く、無機繊維が剥離しやすいため、マットの形状を所定の形状に保ちにくくなる。一方、マットのかさ密度が0.30g/cm3を超えると、マットが硬くなり、装着対象となる部材への装着性が低下し、マットが割れやすくなる。
【0044】
積層マットを構成するマットは、種々の方法により得ることができるが、例えば、抄造法又はニードリング法により製造することができる。
抄造法の場合、例えば、以下の方法により製造することができる。
無機繊維を開繊し、開繊した無機繊維を溶媒中に分散させて混合液とする。底面にろ過用のメッシュが形成された成形器に混合液を流し込み、混合液中の溶媒を脱溶媒処理することで無機繊維集合体を得る。そして、無機繊維集合体を乾燥することによりマットを得ることができる。
ニードリング法の場合、例えば、以下の方法により製造することができる。
塩基性塩化アルミニウム水溶液とシリカゾル等とを原料とする紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して3~10μmの平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製する。続いて、上記無機繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、焼成処理を施すことによりマットを得ることができる。この焼成処理の前後のいずれかにニードルパンチング処理を行い、無機繊維同士を交絡させる。
【0045】
本発明の第2の態様に係るマット材は、無機繊維を含む平面視矩形のマットが複数枚積層された積層マットと、上記積層マットに巻き付けられた帯状体とからなるマット材であって、上記帯状体の上記マット材の長さ方向における寸法が、上記マット材の長さ方向における寸法の30%を超えることを特徴とする。
【0046】
本発明の第2の態様に係るマット材は、帯状体のマット材の長さ方向における寸法の規定が異なる他は本発明の第1の態様のマット材と同じとすることができる。
そのため、帯状体のマット材の長さ方向における寸法の規定以外の特徴事項についての説明は省略する。
【0047】
図1に示すマット材10において、帯状体30のマット材の長さ方向における寸法は両矢印Xで示す長さである。マット材10の長さ方向における寸法は、長手方向の長さが短いマットである第2のマット22の長手方向における長さであり、両矢印L
2で示す長さである。
【0048】
帯状体30のマット材の長さ方向における寸法(両矢印X)が、マット材10の長さ方向における寸法(両矢印L2)の30%を超えている。
帯状体のマット材の長さ方向における寸法がマット材の長さ方向における寸法の30%を超えて長くなると、帯状体が積層マットを拘束している領域が広い。
そのため、マット材に垂れが生じにくく、ハンドリング性に優れたマット材とすることができる。
【0049】
帯状体のマット材の長さ方向における寸法は、マット材の長さ方向における寸法の50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
また、帯状体のマット材の長さ方向における寸法は、マット材の長さ方向における寸法の95%以下であってもよい。
【0050】
図1に示すマット材では、積層マットに巻き付けられた帯状体の数が1つであるが、本発明の第1の態様及び第2の態様におけるマット材において、積層マットに巻き付けられた帯状体は複数であってもよい。
図3は、積層マットに巻き付けられた帯状体の数が2つであるマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
【0051】
図3に示すマット材110は、
図1に示すマット材10が備える積層マット20と同じ積層マット20を備えており、積層マット20に帯状体130a、帯状体130bが巻き付けられている。
帯状体130aのマット材の長さ方向における寸法は両矢印X
1で示す長さであり、帯状体130bのマット材の長さ方向における寸法は両矢印X
2で示す長さである。
積層マットに巻き付けられた帯状体の数が複数である場合、帯状体のマット材の長さ方向における寸法は、各帯状体のマット材の長さ方向における寸法の合計とする。
すなわち、
図3に示すマット材110における帯状体のマット材の長さ方向における寸法は、両矢印X
1で示す長さと両矢印X
2で示す長さの合計である。
【0052】
マット材110が本発明の第1の態様のマット材である場合、帯状体130a及び帯状体130bのマット材110の長さ方向における寸法の合計(X
1+X
2)が100mmを超える。
また、マット材110が本発明の第2の態様のマット材である場合、帯状体130a及び帯状体130bのマット材の長さ方向における寸法の合計(X
1+X
2)がマット材110の長さ方向における寸法(両矢印L
2)の30%を超える。
帯状体130a、帯状体130bの好ましい材質等は
図1に示すマット材10が備える帯状体30の好ましい材質等と同様であるのでその詳細な説明を省略する。
【0053】
本発明のマット材は、排ガス浄化装置、排ガス処理体や排気管にマット材を巻きつけることにより、保持シール材、断熱材、防音材等の用途に使用することができる。
排ガス浄化装置、排ガス処理体や排気管の形状は特に限定されるものではないが、円柱状、角柱状、円管状、角管状等とすることができる。
【0054】
排ガス処理体は、多孔質セラミック等のセラミック質のハニカム構造体であり、触媒担体として使用される。触媒担体においては、排ガス流入側端面及び排ガス流出側端面がともに開口した貫通孔に排ガスが流入し、貫通孔を隔てる隔壁に担持させた触媒の作用により排ガスが浄化される。
また、排ガス処理体は貫通孔のいずれかの端部が交互に封止されてなるDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)であってもよい。
排ガス処理体を構成する素材は特に限定されないが、炭化ケイ素質及び窒化ケイ素質等の非酸化物、並びに、コージェライト及びチタン酸アルミニウム等の酸化物を用いることができる。
【0055】
本発明のマット材を排ガス処理体や排気管に巻き付ける際は、積層マットの第2の主面を巻き付け対象物の側(内側)に配置し、積層マットの第1の主面を外側に配置する。
【0056】
続いて、本発明のマット材を製造する方法の一例について説明する。
まず、積層マットを構成するマットを作製し、マットを積層することで積層マットを作製する。
マットは、種々の方法により得ることができるが、例えば、抄造法又はニードリング法により得たシート状部材を所定形状に打ち抜くことにより得ることができる。
【0057】
打ち抜きの際の寸法を変更することで、長手方向の長さの異なる複数のマットを作製し、複数のマットを長さが長くなる順で、又は、短くなる順で積層することで積層マットを作製する。
積層させるマットの数は、マット材に求められる保持力や断熱性能に応じて変更すればよい。
【0058】
次に、積層マットに帯状体を巻き付ける。
積層マットに帯状体を巻き付けたあと、積層マットと帯状体の接着を行ってもよい。
積層マットと帯状体の接着を接着剤により行う場合は、積層マット及び/又は帯状体の一部に接着剤を塗布しておく。
積層マットと帯状体の接着をヒートシールにより行う場合は、積層マットと帯状体を接着させる部位にヒートシーラーを当ててヒートシールを行う。
上記工程により本発明のマット材を製造することができる。
【0059】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
ニードリング法により、目付量(単位面積当たりの繊維重量)が1050g/m
2である、無機繊維(ムライト繊維)からなるシート状部材を作製した。
このシート状部材を打ち抜き加工して、長手方向の長さ643mm、幅98mm、厚さ6.8mmの第1のマットと長手方向の長さ600mm、幅98mm、厚さ6.8mmの第2のマットを作製した。第1のマットと第2のマットは
図1に示すような凹部及び凸部を有する形状である。
第1のマットに第2のマットを積層して積層マットとした。
当該積層マットの垂れ試験による垂れ量は146mmである。
【0061】
帯状体として、目付量が18g/m2で幅が300mmの有機繊維からなる不織布を準備した。これは、PET繊維にPEパウダーが融着した不織布である。
【0062】
図1に示すように、帯状体を積層マットに巻き付けた。
帯状体が積層マットに巻き付けられている部位の長さ(
図1で両矢印Xで示す長さ)は不織布の幅の300mmである。
帯状体のマット材の長さ方向における寸法は、マット材の長さ方向における寸法(600mm)の50%である。
【0063】
(比較例1)
帯状体として、幅が30mmの有機繊維からなる不織布を準備し、帯状体を積層マットに巻き付けた。
帯状体が積層マットに巻き付けられている部位の長さ(
図1で両矢印Xで示す長さ)は不織布の幅の30mmである。
帯状体のマット材の長さ方向における寸法は、マット材の長さ方向における寸法(600mm)の5%である。
【0064】
実施例1のマット材と比較例1のマット材を比較すると、マット材を持ち上げた際の垂れ量が実施例1のマット材において小さく、実施例1のマット材はハンドリング性に優れるものであった。
【符号の説明】
【0065】
10、110 マット材
20 積層マット
21 第1のマット
22 第2のマット
23 積層マットの第1の主面
24 積層マットの第2の主面
25 積層マットの第1の長側面
26 積層マットの第2の長側面
27 積層マットの第1の短側面
28 積層マットの第2の短側面
30、130a、130b 帯状体
31 巻き付け開始部
32 巻き付け終了部
40 ステージ