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  • 特許-水処理方法および水処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】水処理方法および水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20240306BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C02F1/44 E
B01D61/02 500
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020016743
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021122767
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄大
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-210335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0056413(US,A1)
【文献】国際公開第2016/013562(WO,A1)
【文献】特開2019-181388(JP,A)
【文献】特開平11-138165(JP,A)
【文献】特開平7-39871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00 - 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水を逆浸透膜で処理して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理工程を含む水処理方法であって、
前記濃縮水中のフッ化物イオンとカルシウムイオンのイオン積は、1.6×10 -8 mol/L 以上であり
前記濃縮水中のカルシウムイオン濃度は、1.0mg/L以下であり、
前記濃縮水中のフッ化物イオン濃度は、1500mg/L以上であり、
前記透過水の流量に対する前記濃縮水の流量の比を透過水流量:濃縮水流量=1:4以上として運転することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水を逆浸透膜で処理して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理手段を備える水処理装置であって、
前記濃縮水中のフッ化物イオンとカルシウムイオンのイオン積は、1.6×10 -8 mol/L 以上であり
前記濃縮水中のカルシウムイオン濃度は、1.0mg/L以下であり、
前記濃縮水中のフッ化物イオン濃度は、1500mg/L以上であり、
前記透過水の流量に対する前記濃縮水の流量の比を透過水流量:濃縮水流量=1:4以上として運転することを特徴とする水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水の逆浸透膜処理を行う水処理方法および水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水不足や環境意識の高まりから水回収の必要性が増大している。逆浸透膜を用いる水処理技術は、排水回収においては必須の技術となっており、逆浸透膜を安定して運転する技術が求められている。
【0003】
逆浸透膜の安定運転を妨げるトラブルとしては、バイオファウリング、スケーリング等が挙げられる。バイオファウリングは殺菌剤を添加することで対策することができる。スケーリングに関しては事前の水質調査が重要であり、スケールの生成要因となるイオンのイオン積が溶解度積を超過しないよう、システム設計を行う。さらに、水の回収率を上げたい場合は、通常、スケール分散剤を使用することにより対処する。
【0004】
例えば、特許文献1には、フッ化物イオンを含む半導体製造工程回収水に、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムおよびホスホン酸系化合物よりなる群から選ばれる1種または2種以上の薬剤(スケール分散剤)を添加した後、逆浸透膜分離処理する、フッ化物イオンを含む半導体製造工程回収水の処理方法が記載されている。
【0005】
スケーリング物質の中でも、フッ化カルシウムは溶解度積が3.9×10-11mol/Lと非常に小さく、頻繁にスケール生成の要因となる。このようなスケールの生成しやすいフッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水の逆浸透膜処理において、スケール分散剤を使用しなくてもスケールの生成を抑制する手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-202445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水の逆浸透膜処理において、スケール分散剤を使用しなくてもスケールの生成を抑制することができる水処理方法および水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水を逆浸透膜で処理して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理工程を含む水処理方法であって、前記濃縮水中のフッ化物イオンとカルシウムイオンのイオン積は、1.6×10 -8 mol/L 以上であり、前記濃縮水中のカルシウムイオン濃度は、1.0mg/L以下であり、前記濃縮水中のフッ化物イオン濃度は、1500mg/L以上であり、前記透過水の流量に対する前記濃縮水の流量の比を透過水流量:濃縮水流量=1:4以上として運転する、水処理方法である。
【0011】
本発明は、フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水を逆浸透膜で処理して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理手段を備える水処理装置であって、前記濃縮水中のフッ化物イオンとカルシウムイオンのイオン積は、1.6×10 -8 mol/L 以上であり、前記濃縮水中のカルシウムイオン濃度は、1.0mg/L以下であり、前記濃縮水中のフッ化物イオン濃度は、1500mg/L以上であり、前記透過水の流量に対する前記濃縮水の流量の比を透過水流量:濃縮水流量=1:4以上として運転する、水処理装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水の逆浸透膜処理において、スケール分散剤を使用しなくてもスケールの生成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
図2】実施例、比較例における、運転時間(hr)に対する補正Flux保持率(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明の実施形態に係る水処理装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0018】
図1に示す水処理装置1は、フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水を逆浸透膜で処理して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理手段として、逆浸透膜処理装置10を備える。
【0019】
図1の水処理装置1において、逆浸透膜処理装置10の入口には、被処理水配管12が被処理水流量調整手段であるポンプ18を介して接続されている。逆浸透膜処理装置10の透過水出口には、透過水配管14が接続され、濃縮水出口には、濃縮水流量調整手段であるバルブ24を介して濃縮水配管16が接続されている。透過水配管14、濃縮水配管16には、透過水流量測定手段である流量計20、濃縮水流量測定手段である流量計22がそれぞれ設置されている。水処理装置1は、制御手段として制御装置26を備えていてもよい。制御装置26と、ポンプ18、バルブ24、流量計20、流量計22とはそれぞれ電気的接続等により接続されていてもよい。
【0020】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1の動作について説明する。
【0021】
フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水は、ポンプ18により被処理水配管12を通して、逆浸透膜処理装置10へ送液される。逆浸透膜処理装置10において被処理水は逆浸透膜で処理されて濃縮水と透過水とが得られる(逆浸透膜処理工程)。透過水は、透過水配管14を通して処理水として排出され、濃縮水は、バルブ24が開状態で濃縮水配管16を通して排出される。
【0022】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1では、濃縮水中のフッ化物イオンとカルシウムイオンのイオン積は、3.9×10-11mol/Lを超え、濃縮水中のカルシウムイオン濃度は、1.0mg/L以下であり、透過水の流量に対する濃縮水の流量の比(濃縮水流量比=透過水流量:濃縮水流量)を1:4以上として運転する。
【0023】
上記の通り、スケーリング物質の中でも、フッ化カルシウムは溶解度積が3.9×10-11mol/Lと非常に小さく、頻繁にスケール生成の要因となる。従来は、スケール分散剤を使用せずに、濃縮水中のフッ化物イオンとカルシウムイオンのイオン積が3.9×10-11mol/Lを超える条件での運転は行わなかった。本発明者らは、フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水の逆浸透膜処理において、濃縮水中のフッ化物イオン濃度とカルシウムイオン濃度とのイオン積がこの溶解度積を超過していても、スケール分散剤を使用しなくてもスケールの生成を抑制することができる運転条件を見出した。濃縮水中のカルシウムイオン濃度に比べて、フッ化物イオン濃度が極端に高い場合、透過水の流量に対する濃縮水の流量の比を1:4以上とすることによって、透過水流量の低下しない運転を継続することができる。これは、そのような濃度域ではフッ化カルシウムは析出するものの、析出量自体はカルシウムイオンの量に影響されるため微量であり、逆浸透膜面にスケールを形成する前に逆浸透膜面に対する濃縮水のせん断流束で系外へ排出されるためであると考えられる。従来、スケール生成のリスクはイオン積によって管理することが一般的であり、せん断流束の確保は逆浸透膜面の汚染物質の付着や膜面濃縮層の増大による透過水質悪化を抑制することが目的であった。本発明者らは、カルシウムイオン濃度が非常に低く、析出するスケールの量自体が非常に微量となる領域では、イオン積よりも、微量な析出結晶を系外へ洗い出すための濃縮水のせん断流束が支配的になることを発見した。この方法により、スケール分散剤を使用しなくても、透過水の流量に対する濃縮水の流量の比を1:4まで減少させても安定運転は可能となった。ただし、1:4未満、例えば1:2以下とすると、安定運転は困難となった。最小濃縮水流量比を、1:5から1:4へ減少させることによって、逆浸透膜エレメント1本あたりの濃縮倍率は1.2倍から1.25倍に向上し、逆浸透膜エレメント1本あたりの回収率も20%から25%に向上させることが可能となる。
【0024】
透過水の流量に対する濃縮水の流量の比を1:4以上として運転すればよいが、1:4以上1:5未満であることが好ましい。透過水の流量に対する濃縮水の流量の比を1:4未満とすると、スケールが生成する。透過水の流量に対する濃縮水の流量の比が1:5を超えると、回収率が低下する場合がある。
【0025】
例えば、流量計20により計測された濃縮水の流量、および、流量計22により計測された透過水の流量に基づいて、制御装置26によって、ポンプ18の流量、バルブ24の開閉度等を調整して、透過水の流量に対する濃縮水の流量の比が1:4以上となるように制御して運転すればよい。なお、2段以上の逆浸透膜処理装置が直列に接続された水処理装置の場合には、最終段の逆浸透膜処理装置において、透過水の流量に対する濃縮水の流量の比が1:4以上となるようにして運転すればよい。
【0026】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置によって、運転150時間経過後のFlux保持率(実施例参照)を90%以上、好ましくは95%以上とすることができる。
【0027】
濃縮水中のフッ化物イオンとカルシウムイオンのイオン積は、3.9×10-11mol/Lを超えるが、1.6×10-8mol/L以上であることが好ましい。本実施形態に係る水処理方法および水処理装置によれば、このイオン積が3.9×10-11mol/Lを超えても安定運転が可能である。
【0028】
濃縮水中のカルシウムイオン濃度は、1.0mg/L以下であり、0.1mg/L以下であることが好ましい。濃縮水中のカルシウムイオン濃度が1.0mg/Lを超えると、スケールの析出量が増し、安定運転が困難となる。
【0029】
濃縮水中のフッ化物イオン濃度は、1500mg/L以上であることが好ましい。濃縮水中のフッ化物イオン濃度が1500mg/L未満であると、スケールの析出量が増し、安定運転が困難となる場合がある。
【0030】
制御装置26は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等から構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、ポンプ18の流量、バルブ24の開閉度等を制御する機能を有するものである。
【0031】
被処理水は、フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する水であり、例えば、半導体製造工程等から排出される排水、製鉄工場排水、熱交換器洗浄排水等が挙げられる。被処理水中のフッ化物イオン濃度は、例えば、1~100mg/Lの範囲であり、カルシウムイオン濃度は、例えば、0.05~10mg/Lの範囲である。被処理水中のフッ化物イオン、カルシウムイオン以外の異種イオン濃度は、例えば、0.05~500mg/Lの範囲である。
【0032】
逆浸透膜処理装置10が備える逆浸透膜には、中性膜、アニオン荷電膜、およびカチオン荷電膜があり、いずれの膜であってもよい。
【0033】
逆浸透膜処理装置10におけるろ過方式は、被処理水を逆浸透膜の表面に対して略平行方向に流通させるクロスフロー方式である。上記透過水の流量に対する濃縮水の流量の比(濃縮水流量比)とは、逆浸透膜をクロスフロー方式で運転した際の、透過水流量:濃縮水流量のことを指す。
【0034】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置において、スケールの生成より抑制するために、スケール分散剤を使用してもよい。スケール分散剤は、例えば、被処理水配管12において被処理水に添加されればよい。スケール分散剤は、逆浸透膜処理装置10の前段に被処理水槽を設け、被処理水槽において添加されてもよい。
【0035】
スケール分散剤は、フッ化カルシウム等のスケーリング物質の分散が可能な物質であれば、特定のものに限定されるものではない。その種類としては、例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ニトリロトリメチルホスホン酸等のホスホン酸とその塩類等のホスホン酸系化合物;正リン酸塩、重合リン酸塩等のリン酸系化合物;ポリマレイン酸、マレイン酸共重合物等のマレイン酸系化合物;アクリル酸系ポリマー等が挙げられる。アクリル酸系ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸、マレイン酸/(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸/スルホン酸、(メタ)アクリル酸/ノニオン基含有モノマー等のコポリマーや、(メタ)アクリル酸/スルホン酸/ノニオン基含有モノマー、(メタ)アクリル酸/アクリルアミド-アルキルスルホン酸/置換(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸/アクリルアミド-アリールスルホン酸/置換(メタ)アクリルアミドのターポリマー等が挙げられる。コポリマーやターポリマーを構成する(メタ)アクリル酸としては、例えば、メタアクリル酸およびアクリル酸や、それらのナトリウム塩等の(メタ)アクリル酸塩等が挙げられる。ターポリマーを構成するアクリルアミド-アルキルスルホン酸としては、例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とその塩等が挙げられる。また、ターポリマーを構成する置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、t-ブチルアクリルアミド、t-オクチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0036】
スケール分散剤の重量平均分子量は特に限定されないが、500~100,000の範囲であることが好ましく、1,000~50,000の範囲であることがより好ましい。
【0037】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体が、フッ化カルシウムの分散に優れているため、好ましい。
【0038】
なお、逆浸透膜用の市販のスケール分散剤としては、オルガノ株式会社製の「オルパージョン」シリーズ、BWA Water Additives社製の「Flocon(登録商標)」シリーズ、Nalco社製の「PermaTreat(登録商標)」シリーズ、ゼネラル・エレクトリック社製の「Hypersperse(登録商標)」シリーズ、栗田工業株式会社製の「クリバーター(登録商標)」シリーズ等が挙げられる。
【実施例
【0039】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
<実施例1>
純水にフッ化ナトリウムと塩化カルシウムとを溶解して、フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する模擬排水を作製し、RO膜通水試験を行った。RO膜の膜種はアニオン荷電膜(Filmtech社製BW30-4040)を使用し、透過水流量を50~60L/h、操作圧は0.6~1.2MPa、pHは7.0±0.5、水温は25±1℃となるよう制御し、RO濃縮水中のフッ化物イオン濃度、カルシウムイオン濃度、および濃縮水流量比を変化させた。各試験において、168時間運転後のFlux保持率が、90%以上であった場合、安定運転可能と判断した。Fluxの値としてとは、膜面積あたり、実効操作圧あたりの透過水流量を算出し、温度補正係数を乗じた補正Fluxを使用し(下記式1)、Flux保持率とは、運転開始時の補正Fluxを100%とした場合の、補正Fluxの割合である。
【0041】
補正Flux(m/d/MPa at 25℃)=透過水流量(m/d)/膜面積(m)/(操作圧(MPa)-浸透圧(MPa))×温度補正係数 ・・・(式1)
【0042】
実施例1ではフッ化物イオンとカルシウムイオンのイオン積を1.6×10-8mol/Lと決め、試験を実施した。実施例1-1,1-2、比較例1-1では、フッ化物イオン濃度を1500mg/L、カルシウムイオン濃度を0.1mg/Lとし、濃縮水流量比を変更しながら試験を実施した。ここで、濃縮水流量比とは、RO膜をクロスフロー方式で運転した際の、透過水流量:濃縮水流量のことを指す。実施例1-1にて濃縮水流量比を1:5として運転したところ、イオン積が溶解度積以上であり、本来スケールが析出する濃度域であるにも関わらず、安定運転が可能であった。実施例1-2では、濃縮水流量比を1:4に減少させたが、引き続き安定運転は可能であった。比較例1-1では、濃縮水流量比を1:2まで低下させたところ、Flux保持率が低下し、安定運転が不可能となった。比較例1-2では、イオン積は1.6×10-8mol/Lのまま、フッ化物イオン濃度を150mg/L、カルシウムイオン濃度を10mg/Lとしたところ、濃縮水流量比を1:5としてもFlux保持率が低下し、安定運転は不可能となった。
【0043】
実施例2では、カルシウムイオン濃度を1.0mg/Lとし、イオン積を実施例1の10倍である1.6×10-7mol/Lとして試験を実施したところ、実施例1と同じくFluxはほとんど低下しなかった。実施例2-1にて濃縮水流量比を1:5として運転したところ、本来スケールが析出する濃度域であるものの、安定運転が可能であった。実施例2-2では、濃縮水流量比を1:4に減少させたが、引き続き安定運転は可能であった。比較例2では、濃縮水流量比を1:2まで低下させたところ、Flux保持率が低下し、安定運転が不可能となった。
【0044】
比較例3では、カルシウムイオン濃度を4.0mg/Lとしたところ、最小濃縮水流量比を1:5としても、安定運転は不可能となった。カルシウムイオン濃度が増加することによって、フッ化カルシウムスケールの析出量が増したためと考えられる。なお、このときのイオン積は6.2×10-7である。
【0045】
【表1】
【0046】
このように、実施例の方法によって、フッ化物イオンとカルシウムイオンとを含有する被処理水の逆浸透膜処理において、スケール分散剤を使用しなくてもスケールの生成を抑制することができた。
【符号の説明】
【0047】
1 水処理装置、10 逆浸透膜処理装置、12 被処理水配管、14 透過水配管、16 濃縮水配管、18 ポンプ、20,22 流量計、24 バルブ、26 制御装置。
図1
図2