(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20240306BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/04
(21)【出願番号】P 2020033651
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 智
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2016/121794(JP,A1)
【文献】特開2007-320983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/04
C09J 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性(メタ)アクリル系ポリマーと、金属酸化物粒子と、重量平均分子量が5万以下の非芳香族系ポリマーとを含み、
前記粘着性(メタ)アクリル系ポリマーが、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下となる低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)と極性基含有モノマー(C)との共重合体であり、
前記粘着性(メタ)アクリル系ポリマー100質量%中、極性基がカルボキシル基である極性基含有モノマーから構成される単位の割合が、1質量%以下であり、
前記非芳香族系ポリマーが、カルボキシル基を有するモノマー(A)とホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下となる低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)との共重合体であり、
前記非芳香族系ポリマー100質量%中、カルボキシル基を有するモノマー(A)に由来する単位の割合が、1
~30質量%である粘着剤組成物。
【請求項2】
非芳香族系ポリマー中の低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)単位の質量割合(PB)が、粘着性(メタ)アクリル系ポリマー中の低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)単位の質量割合(PD)に対して、0.3~3倍である請求項
1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前
記低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)が、アルキル基が枝分かれしているアクリル酸C
3-20アルキルエステル(a)と、アルキル基が直鎖状であるアクリル酸C
3-20アルキルエステル(b)とを含み、
前記アクリル酸C
3-20アルキルエステル(a)とアクリル酸C
3-20アルキルエステル(b)との質量比((a)/(b))が1.0超である、請求項
1又は
2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)が、アルキル基が枝分かれしているアクリル酸C
3-20アルキルエステル(a)と、アルキル基が直鎖状であるアクリル酸C
3-20アルキルエステル(b)とを含み、
前記アクリル酸C
3-20アルキルエステル(a)とアクリル酸C
3-20アルキルエステル(b)との質量比((a)/(b))が1.0超である、請求項1~
3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記粘着性(メタ)アクリル系ポリマー100質量%中、前記極性基含有モノマー(C)に由来する単位の割合が、1~50質量%である、請求項1~
4のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記金属酸化物粒子の屈折率が2.02以上である請求項1~
5のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物粒子を、粘着剤組成物100質量%中、20質量%以上含有する請求項1~
6のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に金属酸化物粒子を分散させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物粒子を分散させた粘着剤組成物が知られている(例えば、特許文献1~2など)。これら特許文献1~2では、液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)などの画像表示装置や光ディスクにおいて、画像表示部、光源部、記録部、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、保護フィルムなどを適宜貼り合わせる際の高屈折率透明粘着剤として金属酸化物粒子を分散させた粘着剤を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-172960号公報
【文献】特開2014-159557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、粘着性(メタ)アクリル系ポリマーに金属酸化物粒子を分散させると、粘着性(メタ)アクリル系ポリマーが金属酸化物によってイオン架橋された様な構造を形成するためか、凝集が発生しやすく、金属酸化物粒子を安定に分散させることが難しかった。
従って本発明が解決しようとする課題は、粘着性(メタ)アクリル系ポリマーに金属酸化物粒子を安定に分散させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決し得た本発明の構成は以下の通りである。
[1]粘着性(メタ)アクリル系ポリマーと、金属酸化物粒子と、重量平均分子量が5万以下の非芳香族系ポリマーとを含む粘着剤組成物。
[2]前記非芳香族系ポリマーが、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、加水分解性アルコキシシリル基、イソシアネート基、水酸基、チオール基、エポキシ基、及びオキサゾリン基から選ばれる1つ以上の官能基を有するモノマー(A)の重合体である前記[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]前記非芳香族系ポリマーが、共重合単位として、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下となる低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)単位を含む前記[2]に記載の粘着剤組成物。
[4]前記粘着性(メタ)アクリル系ポリマーが低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)単位を含有しており、
非芳香族系ポリマー中の低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)単位の質量割合(PB)が、粘着性(メタ)アクリル系ポリマー中の低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)単位の質量割合(PD)に対して、0.3~3倍である前記[1]~[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[5]前記粘着性(メタ)アクリル系ポリマーが、前記低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)と極性基含有モノマー(C)との共重合体であり、極性基がカルボキシル基である極性基含有モノマーから構成される単位の割合が、粘着性(メタ)アクリル系ポリマー100質量%中、1質量%以下である前記[1]~[4]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[6]前記金属酸化物粒子の屈折率が2.02以上である前記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[7]前記金属酸化物粒子を20質量%以上含有する前記[1]~[6]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば粘着性(メタ)アクリル系ポリマーに金属酸化物粒子を安定に分散させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の粘着剤組成物は、粘着性(メタ)アクリル系ポリマーと、金属酸化物粒子と、重量平均分子量が5万以下の非芳香族系ポリマー(以下、単に「非芳香族系ポリマー」と称する場合がある)とを含む。非芳香族系ポリマーがポリマー分散剤として機能することで、金属酸化物粒子を粘着性(メタ)アクリル系ポリマーに安定に分散させることができる。
【0008】
(1)非芳香族系ポリマー(ポリマー分散剤)
非芳香族系ポリマーとは、芳香族環を有さないモノマー(非芳香族系モノマーともいう)を必須ポリマー構成単位として含むポリマーのことをいう。該非芳香族系ポリマーは、ポリマー分散剤であって金属酸化物粒子に作用してその分散性を高める作用を有する。そしてその分子量が5万以下であるため、相互作用によって金属酸化物粒子に引きつけられてもポリマー自体の凝集を防ぐことができ、金属酸化物粒子を高度に分散できる。また非芳香族系ポリマーであるため、粘着性(メタ)アクリル系ポリマーとの親和性が高く、金属酸化物粒子を粘着性(メタ)アクリル系ポリマーに安定に分散させることができる。さらに非芳香族系ポリマーであるため、光学特性にも優れている。
【0009】
非芳香族系ポリマーの重量平均分子量は、例えば、1万以下、好ましくは8000以下、より好ましくは6000以下である。重量平均分子量が小さくなるほど、分散安定性が良好になりやすい。重量平均分子量の下限は、例えば、1000以上、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上である。
【0010】
前記非芳香族系ポリマーを構成する非芳香族系モノマーとしては、金属酸化物の吸着サイトを有するモノマー(A)、低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)などが含まれ、非芳香族系ポリマーは、これら金属酸化物の吸着サイトを有するモノマー(A)と低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)との共重合体であることが好ましい。金属酸化物の吸着サイトと低Tg(メタ)アクリル酸エステル単位とを有することにより、金属酸化物粒子の分散性をさらに良好にできる。
【0011】
金属酸化物の吸着サイトを有するモノマー(A)としては、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、加水分解性アルコキシシリル基、イソシアネート基、水酸基、チオール基、エポキシ基、及びオキサゾリン基から選ばれる1つ以上の官能基(以下、吸着基と称する場合がある)を有するモノマー(A)が挙げられる。加水分解性アルコキシシリル基は、好ましくはメトキシ基又はエトキシ基が合計で1~3個ケイ素原子に結合したシリル基である。
【0012】
アミノ基を有するモノマー(A)としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アミド基を有するモノマー(A)としては、例えば、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなどが挙げられる。カルボキシル基を有するモノマー(A)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などが挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。リン酸基を有するモノマー(A)としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどが挙げられる。ホスホン酸基を有するモノマー(A)としては、例えば、[3-(アクリロイルオキシ)プロピル]ホスホン酸などが挙げられる。加水分解性アルコキシシリル基を有するモノマー(A)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルアルコキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシC1-4アルキルアルコキシシランなどが挙げられる。イソシアネート基を有するモノマー(A)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。水酸基を有するモノマー(A)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-10アルキルエステルなどが挙げられる。チオール基を有するモノマー(A)としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。エポキシ基を有するモノマー(A)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。オキサゾリン基を有するモノマー(A)としては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンなどが挙げられる。
上記金属酸化物の吸着サイトを有するモノマー(A)は、単独でもよく、組み合わせてもよい。
【0013】
金属酸化物の吸着サイトを有するモノマー(A)としては、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、加水分解性アルコキシシリル基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、水酸基、チオール基、エポキシ基、及びオキサゾリン基から選ばれる1つ以上の吸着基を有するモノマー(A)が好ましく、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、加水分解性アルコキシシリル基、アミノ基から選ばれる1つ以上の吸着基を有するモノマー(A)がより好ましい。
【0014】
非芳香族系ポリマー100質量%中の金属酸化物の吸着サイトを有するモノマー(A)に由来する単位の割合は、例えば、1~30質量%、好ましくは2~20質量%、より好ましくは3~15質量%である。
【0015】
低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)とは、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル)のことを意味する。該低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)としては、以下のものが例示できる。なお括弧内はホモポリマーのガラス転移温度を示す。
n-ブチルメタクリレート(-20℃)などのメタアクリル酸C8-20アルキルエステル;
エチルアクリレート(-24℃)、n-ブチルアクリレート(-54℃)、2-メトキシエチルアクリレート(-50℃)、n-オクチルアクリレート(-80℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(-70℃)、イソオクチルアクリレート(-58℃)などのアクリル酸C2-20アルキルエステル。
【0016】
上記低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)は、単独でもよく、組み合わせてもよい。低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)としては、アクリル酸C2-20アルキルエステルが好ましく、2種以上のアクリル酸C2-20アルキルエステルを組み合わせることが好ましい。2種以上のアクリル酸C2-20アルキルエステルを組み合わせる場合、アルキル基が枝分かれしているアクリル酸C3-20アルキルエステル(A)と、アルキル基が直鎖状であるアクリル酸C3-20アルキルエステル(B)とを組み合わせることが好ましく、アルキル基が枝分かれしているアクリル酸C3-20アルキルエステル(A)とアルキル基が直鎖状であるアクリル酸C3-20アルキルエステル(B)との質量比(A/B)を1.0超にすることがより好ましい。
【0017】
低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)のガラス転移温度は、-150~-10℃が好ましく、-120~-30℃がより好ましく、-90~-40℃がよりさらに好ましい。また低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)と後述する低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)とが同じであることも好ましい。
【0018】
非芳香族系ポリマー100質量%中の低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)に由来する単位の割合(PB)は、例えば、70~99質量%、好ましくは80~98質量%、より好ましくは85~97質量%である。
【0019】
非芳香族系ポリマーでは、金属酸化物の吸着サイトを有するモノマー(A)及び低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)以外のモノマー(P)が共重合していてもよい。非芳香族系ポリマー100質量%中の金属酸化物の吸着サイトを有するモノマー(A)及び低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)に由来する単位の割合は、例えば、71~100質量%、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%である。
【0020】
前記モノマー(P)は、非芳香族系モノマー、芳香族系モノマーのいずれであってもよく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタアクリレート、イソブチルメタアクリレート、t-ブチルメタアクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのホモポリマーのガラス転移温度が0℃よりも高い高Tg(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有モノマー;などが挙げられる。
【0021】
非芳香族系ポリマー100質量%中の非芳香族系モノマーに由来する単位の割合は、例えば、71~100質量%、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%である。
【0022】
前記非芳香族系ポリマーは、金属酸化物粒子100質量部に対して、例えば、10~300質量部、好ましくは20~200質量部、より好ましくは30~100質量部である。
また非芳香族系ポリマーは、粘着剤組成物100質量部中、例えば、15~50質量部、好ましくは18~40質量部、より好ましくは20~30質量部である。
【0023】
(2)粘着性(メタ)アクリル系ポリマー
粘着性(メタ)アクリル系ポリマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下となる低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)の単独または共重合体である。低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)の具体例及び好ましい範囲は、上述の低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)と同じである。
【0024】
粘着性(メタ)アクリル系ポリマー100質量%中の低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)に由来する単位の割合(PD)は、例えば、50~100質量%、好ましくは60~95質量%、より好ましくは70~90質量%である。
【0025】
また粘着性(メタ)アクリル系ポリマー中の低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)単位の質量割合(PD)と、非芳香族系ポリマー中の低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)単位の質量割合(PB)とは、近いことが好ましい。これら質量割合が近いと、粘着性(メタ)アクリル系ポリマーと非芳香族系ポリマーとの親和性が良好になる。非芳香族系ポリマー中の低Tg(メタ)アクリル酸エステル(B)単位の質量割合(PB)は、粘着性(メタ)アクリル系ポリマー中の低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)単位の質量割合(PD)に対して、例えば、0.3~3倍、好ましくは0.5~2倍、より好ましくは0.7~1.5倍である。
【0026】
粘着性(メタ)アクリル系ポリマーは、前記低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)と極性基含有モノマー(C)との共重合体であることが好ましい。極性基含有モノマー(C)を共重合させることで、粘着性(メタ)アクリル系ポリマーの強度を高めることができる。
【0027】
前記極性基含有モノマー(C)としては、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、加水分解性アルコキシシリル基、イソシアネート基、水酸基、チオール基、エポキシ基、及びオキサゾリン基から選ばれる1つ以上の極性基を有するモノマー(C)が挙げられる。極性基含有モノマー(C)の具体例は、上述の金属酸化物の吸着サイトを有するモノマー(A)と同じであり、単独でもよく、組み合わせてもよい。
【0028】
極性基含有モノマー(C)としては、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、水酸基、及びチオール基から選ばれる1つ以上の極性基を有するモノマー(C)が好ましく、アミノ基、アミド基、水酸基、及びチオール基から選ばれる1つ以上の極性基を有するモノマー(C)がさらに好ましい。
【0029】
粘着性(メタ)アクリル系ポリマー100質量%中の極性基含有モノマー(C)に由来する単位の割合(特に極性基がカルボキシル基以外である極性基含有モノマー(C)に由来する単位の割合)は、例えば、1~50質量%、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~30質量%である。極性基がカルボキシル基である極性基含有モノマーに由来する単位の割合は、1質量%以下でもよく、0.5質量%以下でもよく、0質量%でもよい。極性基がカルボキシル基以外である極性基含有モノマーを用いることで、粘着剤組成物の非ゲル化特性をさらに良好にできる。
【0030】
粘着性(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば、20万以上、好ましくは25万以上、より好ましくは30万以上であり、例えば、100万以下、好ましくは80万以下、より好ましくは60万以下である。
【0031】
前記粘着性(メタ)アクリル系ポリマーは、金属酸化物粒子100質量部に対して、例えば、10~500質量部、好ましくは20~300質量部、より好ましくは30~200質量部である。
また粘着性(メタ)アクリル系ポリマーは、非芳香族系ポリマー100質量部に対して、例えば、10~500質量部、好ましくは30~300質量部、より好ましくは50~200質量部である。
【0032】
粘着性(メタ)アクリル系ポリマーは、極性基含有モノマー(C)及び低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)以外のモノマー(Q)が共重合していてもよい。粘着性(メタ)アクリル系ポリマー100質量%中の極性基含有モノマー(C)及び低Tg(メタ)アクリル酸エステル(D)に由来する単位の割合は、例えば、71~100質量%、好ましくは80~100質量%、好ましくは90~100質量%である。前記モノマー(Q)としては、上述のモノマー(P)と同じものが例示できる。
【0033】
(3)金属酸化物粒子
金属酸化物粒子を構成する金属としては、例えば、Ti、Al、Zr、In、Zn、Sn、La、Y、Ce、Mg、Ba、Ca等が挙げられ、金属酸化物粒子の屈折率を高める観点からTi、Al、Zr、Zn、Sn及びCeよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、Ti、Zn、Zrがより好ましく、Ti、Zrがより更に好ましく、Zrが特に好ましい。金属酸化物は、単一金属の酸化物であってもよいし、2種以上の酸化物の固溶体であってもよいし、複合酸化物であってもよい。単一金属酸化物には、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化ランタン(La2O3)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化マグネシウム(MgO)が含まれる。2種以上の酸化物の固溶体としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズアンチモン(ATO)等が挙げられる。複合酸化物としては、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)、灰チタン石(CaTiO3)、スピネル(MgAl2O4)等が挙げられる。
特に金属酸化物粒子(複合酸化物粒子を含む)は、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの様に屈折率が2.02以上となる粒子が好ましい。屈折率が大きい粒子は、分散性が僅かに劣った時の外観の劣化が大きく、このような高屈折率粒子を良好な外観を保ったままで高濃度に配合できればそのメリットは大きい。
【0034】
金属酸化物粒子の量は、粘着剤組成物100質量%中、例えば、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは50質量%以下である。特に本発明では、屈折率が2.02以上となる金属酸化物粒子を高濃度で配合することが可能であり、例えば、20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上にすることができる。
【0035】
粒子の個数平均粒子径は、例えば、50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下であり、例えば、1nm以上、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上である。金属酸化物粒子の個数平均粒子径が前記範囲にあると、粘着剤組成物の透明性がより高くなる。
【0036】
金属酸化物粒子の体積平均粒子径(dv)と、個数平均粒子径(dn)との比(dv/dn)は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下であり、好ましくは1以上である。
【0037】
金属酸化物粒子は、粒状、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状、薄片状、不定形状などであってもよく、分散性などの観点から、球状、粒状、柱状であることが好ましい。
【0038】
金属酸化物粒子は、カルボン酸化合物、シランカップリング剤、及び有機リン化合物の少なくとも1種で表面処理されていることが好ましく、少なくとも有機リン化合物で表面処理されていることが好ましい。金属酸化物粒子が表面処理層を有することによって粘着剤組成物中の分散性をさらに高めることができる。
カルボン酸化合物としては、(メタ)アクリル酸類(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、3-アクリロキシプロピオン酸等の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルカルボン酸など);C3-9脂肪族ジカルボン酸の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2-アクリロキシエチルコハク酸、2-メタクリロキシエチルコハク酸など)、C5-10脂環式ジカルボン酸の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2-アクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸など)、C8-14芳香族ジカルボン酸の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2-アクリロキシエチルフタル酸、2-メタクリロキシエチルフタル酸等)などのエステル基を有するカルボン酸;酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸などの炭素数が4~20の直鎖状カルボン酸;ピバリン酸、2,2-ジメチル酪酸、3,3-ジメチル酪酸、2,2-ジメチル吉草酸、2,2-ジエチル酪酸、3,3-ジエチル酪酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、3-エチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、4-メチルオクタン酸、ネオデカン酸などの炭素数が5~20の分枝鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの環状カルボン酸;などが挙げられる。好ましくはC3-9脂肪族ジカルボン酸の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類、炭素数が5~20の分枝鎖状カルボン酸などである。これらカルボン酸化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
金属酸化物粒子表面のカルボン酸化合物処理層の量(被覆量)は、被覆された粒子全体100質量%中、例えば、0~40質量%、好ましくは1~35質量%、より好ましくは5~30質量%である。
【0039】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;などが挙げられる。これらシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
金属酸化物粒子表面のシランカップリング剤処理層の量(被覆量)は、被覆された粒子全体100質量%中、例えば、0~30質量%、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは1~15質量%である。
【0040】
有機リン化合物としては、炭素数1~30のアルキル基が結合した、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステル;ポリエーテル鎖を有する、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステルなどが挙げられ、ポリエーテル鎖を有する、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステルなどが好ましい。
炭素数1~30のアルキル基が結合した、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステルとしては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化1】
【0041】
ポリエーテル鎖を有する、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステルとしては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化2】
【0042】
式中、aは1又は2であり、1であることが好ましい。p11、p12、p15は、それぞれ独立して4~15であり、p11、p12及びp15の合計は、1~50、好ましくは1~30である。r1、r12は、1~20である。
【0043】
前記有機リン化合物としては、例えば、ニューコール1000-FCP(日本乳化剤社製)、アントックスEHD-400(日本乳化剤社製)、Phoslexシリーズ(SC有機化学社製)、ライトアクリレートP-1A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートP-1M(共栄社化学社製)、TEGO(登録商標) Dispers651、655、656(エボニック社製)、DISPERBYK-110、111、180(ビックケミー・ジャパン社製)、KAYAMERPM-2、KAYAMERPM-21(日本化薬社製)等を用いることができる。
上記有機リン化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
金属酸化物粒子表面の有機リン化合物の量(被覆量)は、被覆された粒子全体100質量%中、例えば、0~30質量%、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%である。
【0044】
(4)架橋剤
粘着剤組成物は、必要に応じて、架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ化合物、メラミン化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、メルカプト化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられ、好ましくは金属キレート化合物、イソシアネート系架橋剤などであり、より好ましくはイソシアネート系架橋剤である。金属キレート化合物及びイソシアネート系架橋剤、特にイソシアネート系架橋剤は、水酸基との反応性が高く、架橋剤として優れている。
【0045】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート;アダクトポリイソシアネート化合物;ビュレットポリイソシアネート化合物;イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0046】
アダクトポリイソシアネート化合物としては、例えば、「スミジュールL」(住友バイエルウレタン社製);「コロネートL」、「コロネートHL」(いずれも日本ポリウレタン社製)などが使用できる。ビュレットポリイソシアネート化合物としては、例えば、「スミジュールN」(住友バイエルウレタン社製)などが使用できる。前記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(いずれもバイエルA.G.社製);「コロネートEH」、「コロネートHX」(いずれも日本ポリウレタン工業社製);「タケネートD110N」、「タケネートD120N」(いずれも三井化学社製)などが挙げられる。
【0047】
架橋剤は、前記粘着性(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば、0.01~5質量部、好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.5~2質量部である。
【0048】
(5)希釈剤
また粘着剤組成物は、必要に応じて、希釈剤を含有していてもよい。希釈剤としては、有機溶媒が好ましく、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン、α-ピネン、ターピノーレン、リモネンなどの脂環族炭化水素化合物;トルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン化合物などが挙げられる。
有機溶媒は、前記粘着性(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば、0~1000質量部、好ましくは50~700質量部、より好ましくは100~500質量部である。
【0049】
(6)その他の成分
粘着剤組成物は、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分には、架橋促進剤(パラトルエンスルホン酸、リン酸、塩酸、塩化アンモニウムなどの酸触媒など)、粘着付与剤((重合)ロジン系粘着付与剤、(重合)ロジンエステル系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、テルペンフェノール系粘着付与剤、クマロン系粘着付与剤、クマロンインデン系粘着付与剤、スチレン樹脂系粘着付与剤、キシレン樹脂系粘着付与剤、フェノール樹脂系粘着付与剤、石油樹脂系粘着付与剤など)、充填剤、顔料、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などが含まれる。
【0050】
本発明の粘着剤組成物は、金属酸化物粒子が高度に分散しているため、金属酸化物粒子を含まない粘着剤組成物と比べて透過率、ヘーズ、保持力、粘着力などの低下が実質的に見られない。例えば、後述する実施例の方法によって測定される透過率は、例えば、80%以上(好ましくは85~95%)である。ヘーズは、例えば、5%以下(好ましくは1~4%)である。保持力(SUS)は、0.5mm未満(好ましくは0.2mm未満)である。粘着力(SUS)は、3N/25mm以上(好ましくは5N/25mm以上である)。粘着力(ガラス)は、3N/25mm以上(好ましくは5N/25mm以上である)。
【0051】
前記粘着剤組成物は、液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)などの画像表示装置や光ディスクにおいて、画像表示部、光源部、記録部、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、保護フィルムなどを適宜貼り合わせる際の粘着剤として使用できる。
また前記粘着剤組成物は、必要に応じて、種々の製品形態に加工でき、粘着シート、粘着ラベル、粘着テープ、両面テープなどにすることもできる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0053】
なお以下「部」は特に断りがない限り、質量部を意味する。
また以下の例で得られたポリマーの分子量は、以下の様にして測定した。
(1)分子量測定
ポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比、Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。GPCは、測定装置(品番:HLC-8220GPC、東ソー(株)製)を用いた。そして、下記測定条件で測定した値を、標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を用いて換算し、得られた換算値を測定ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)とした。さらに、重量平均分子量と数平均分子量との比から、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
(測定条件)
分離カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel Super HZM-H
抽出溶媒:テトラヒドロフラン
流量:0.35mL/min
注入量:10μL/回
試料濃度:0.2重量%
【0054】
以下の例で得られた粘着剤組成物の諸特性は以下の様にして評価した。
(2)分散安定性
粘着剤組成物を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:白濁・沈降・ゲル化のいずれもが認められない
×:白濁・沈降・ゲル化のいずれかが認められる
【0055】
(3)屈折率
屈折率の測定は、下記条件にて測定した。
装置:ATAGO社製 多波長アッベ屈折計DR-M4型
干渉フィルター:波長589(D)nm
測定温度:20℃
【0056】
(4)透過率
透過率の測定は、濁度計(日本電色工業社製 NDH7000)を用いて測定した。
【0057】
(5)ヘーズ
ヘーズの測定は、濁度計(日本電色工業社製 NDH7000)を用いて測定した。
【0058】
(6)粘着シート特性
粘着剤組成物100部に対してポリイソシアネートの酢酸エチル液(固形分濃度:約55質量%、NCO含量:約9.5;商品名「コロネートL-55E」(東ソー株式会社製)を表1に示した質量比(固形分基準)で混合・均一攪拌した後、アプリケーターを用いて前記混合物を厚さ25μmのPETフィルム上に塗布し、次いで80℃の温度で3分間乾燥させた。粘着剤層の厚さは25μmであった。この粘着剤層の上面に剥離紙(東洋紡株式会社製、商品名:E-7002)を貼り合わせた。その後、温度40℃で72時間エージングを行い、片面が接着面である粘着シートを得た。
【0059】
(6.1)保持力
上記で得られた粘着シートを長さ50mm、幅25mmの長方形に裁断することにより、試験テープを作製した。得られた試験テープから剥離紙を剥離した後、表面が研磨されたステンレス鋼板上に試験テープを接着面積が25mm×25mmとなる様に温度23℃で載せ、試験テープ上から質量が2kgであるゴムローラーで1往復させることによって試験テープをステンレス鋼板に圧着させた。圧着させた試験片を温度80℃で20分間放置した後、1kgの錘を試験テープの端部に取り付けて吊り下げて当該温度下で1440分間静置し、試験テープが剥がれ落ちるのに要する時間、又は試験開始から1440分間経過時の試験テープの位置ずれ長さを測定した。
【0060】
(6.2)粘着力(SUS)
粘着シートを長さ50mm、幅25mmの長方形に裁断することにより、試験テープを作製した。得られた試験テープから剥離紙を剥離し、試験テープを表面が研磨されたステンレス鋼板に載せ、質量が2kgのロールを被着体上で1往復させた。試験片を温度23℃下で25分間静置した後、剥離角度180°、剥離速度300mm/minで剥離したときの剥離力を測定し、ステンレス鋼板に対する粘着力を測定した。
(6.3)粘着力(ガラス)
被着体をステンレス鋼板からガラスに代える以外は(6.2)粘着力(SUS)と同様にした。
【0061】
製造例1(金属酸化物)
2-エチルヘキサン酸ジルコニウムミネラルスピリット溶液(782部、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム含有率44質量%、第一希元素化学工業社製)に純水(268部)を混合した。得られた混合液を、攪拌機付きオートクレーブ内に仕込み、該オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、混合液を180℃まで加熱し、該温度で16時間保持(オートクレーブ内圧力は0.94MPa)して反応させ、酸化ジルコニウム粒子を生成した。続いて、反応後の混合液を取り出し、底部に溜まった沈殿物を濾別してアセトンで洗浄した後に、乾燥した。乾燥後の前記沈殿物(100部)をトルエン(700部)に分散させたところ、白濁溶液となった。次に、精製工程として、定量濾紙(アドバンテック東洋社製、No.5C)にて再度濾過し、沈殿物中の粗大粒子などを除去した。さらに、濾液を減圧濃縮してトルエンを除去することで白色の酸化ジルコニウムナノ粒子(金属酸化物1)を回収した。
【0062】
電子顕微鏡による個数平均粒子径の測定
酸化ジルコニウムナノ粒子の個数平均粒子径は、超高分解能電解放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S-4800)で観察することによって測定した。倍率15万倍で酸化ジルコニウムナノ粒子を観察し、任意の100個の粒子について、各粒子の長軸方向の長さを測定し、その平均値を個数平均粒子径とした。電子顕微鏡により測定して得られた酸化ジルコニウムナノ粒子の平均粒子径(個数平均粒子径)は、12nmであった。
【0063】
製造例2(非芳香族系ポリマー)
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗及び撹拌機を備えた反応容器内にトルエン155部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)62.0部、ブチルアクリレート(BA)30.0部、アクリル酸8.0部、ノルマルドデシルメルカプタン(NDM)5.0部を入れた後、アゾ重合開始剤(日本ヒドラジン工業株式会社製、商品名:ABN-E)0.5部を入れ、窒素ガス雰囲気中にて85℃で6時間反応させることで、固形分40質量%、重量平均分子量が4,000の非芳香族系ポリマー(ポリマー分散剤1)を得た。
【0064】
製造例3(粘着性(メタ)アクリル系ポリマー)
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗及び撹拌機を備えた反応容器内に酢酸エチル100部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)58.9部、ブチルアクリレート(BA)20.5部、N-ビニルピロリドン20.0部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.6部を入れた後、有機過酸化物系重合開始剤(日油株式会社製、商品名:パーブチルO)0.2部を入れ、窒素ガス雰囲気中にて80℃で8時間反応させることで、固形分質量50%、重量平均分子量が40万の粘着性(メタ)アクリル系ポリマー(粘着ポリマー1)を得た。
【0065】
実施例1
製造例1で得られた酸化ジルコニウムナノ粒子(金属酸化物1)をトルエンに溶解して70質量%トルエン溶液とした後に、固形分質量比が金属酸化物1/ポリマー分散剤1/粘着ポリマー1=50/30/50になる割合で製造例2で得られたポリマー分散剤1と製造例3で得られた粘着ポリマー1とを混合し、混合物を均一攪拌にすることにより、粘着剤組成物を調製した。
【0066】
実施例2
実施例1におけるポリマー分散剤1と粘着ポリマー1との混合割合を、金属酸化物1/ポリマー分散剤1/粘着ポリマー1=50/30/30(固形分質量比)になるようにした以外は実施例1と同様にした。
【0067】
比較例1
粘着ポリマー1を粘着剤組成物とした。
【0068】
実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物の特性を調べた。
結果を表1に示す。
【表1】