(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】マイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/42 20060101AFI20240306BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240306BHJP
C07C 13/18 20060101ALN20240306BHJP
C07C 5/10 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
B01J23/42 Z
B01J37/02 301A
C07C13/18
C07C5/10
(21)【出願番号】P 2020038922
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2019188958
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】稲木 千津
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 俊二
(72)【発明者】
【氏名】中島 昭
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064407(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182138(WO,A1)
【文献】特開2017-045625(JP,A)
【文献】特開2017-168385(JP,A)
【文献】国際公開第2019/014969(WO,A1)
【文献】WANG, Xiaofang et al.,Fabrication and Catalytic Peformance of Highly Stable Multifunctional Core-Shell Zeolite Composites,Inorg. Chem. ,米国,American Chemical Society,2013年09月16日,Vol. 52, No. 19,pp. 10708-10710, Supporting Info. 1-19,DOI: 10.1021/ic401357s
【文献】ZHANG, Jian et al.,Preparation of core (Ni base)-shell (Silicalite-1) catalysts and their application for alkali resistance in direct internal reforming molten carbonate fuel cell,J. Power Sources,NL,Elsevier B.V.,2011年09月29日,Vol. 198,pp. 14-22,DOI: 10.1016/j.jpowsour.2011.09.070
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01B 33/00-39/54
C07B 31/00-63/04
C07C 1/00-409/44
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[1]~[4]の工程を含む、マイクロ孔を有する物質
(但し、ゼオライトの結晶構造に由来するX線回折ピークを含む物質を除く。)で被覆された遷移金属担持体の製造方法。
[1]担体粒子(但し、ゼオライト又はゼオライト類似物質を除く。)の表面に遷移金属粒子が担持された遷移金属担持体を準備する工程。
[2]Si原料と構造規定剤とを混合してマイクロ孔を有する物質を準備する工程
[3]前記遷移金属担持体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理して、表面処理体を調製する工程。
[4]
前記表面処理体と前記マイクロ孔を有する物質とを酸溶液を添加した水溶液中で混合することによって、前記表面処理体の表面を前記マイクロ孔を有する物質で被覆する工程。
【請求項2】
前記[2]の工程において、前記Si原料と前記構造規
定剤とを混合した後、50℃≦温度≦90℃の範囲で熟成する、請求項1に記載されたマイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体の製造方法。
【請求項3】
前記[3]の工程において、前記遷移金属担持体と前記アミノ基を有するシランカップリング剤とを10℃≦温度≦40℃の温度範囲で混合し、0.1hr≦時間<2hrの時間範囲で保持する、請求項2に記載されたマイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体の製造方法。
【請求項4】
前記[4]の工程において得られたマイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体をドライゲルコンバージョン処理する工程を含む、請求項
3に記載されたマイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体の製造方法。
【請求項5】
下記[A]~[D]の構成を備えた、マイクロ孔を有する物質
(但し、ゼオライトの結晶構造に由来するX線回折ピークを含む物質を除く。)で被覆された遷移金属担持体。
[A]担体粒子(但し、ゼオライト又はゼオライト類似物質を除く。)の表面に遷移金属粒子が担持された遷移金属担持体を含む。
[B]前記遷移金属担持体の表面が
前記マイクロ孔を有する物質で完全に被覆されている。
[C]前記マイクロ孔を有する物質が、Siを含む化合物である。
[D]前記マイクロ孔を有する物質で形成された被覆層の厚さが、1nm≦厚さ≦100nmの範囲にある。
【請求項6】
前記遷移金属担持体の表面に前記マイクロ孔を有する物質が直接、接している請求項5に記載されたマイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体。
【請求項7】
前記マイクロ孔を有する物質で形成された被覆層の厚さが、1nm≦厚さ≦20nmの範囲にある、請求項6に記載されたマイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体。
【請求項8】
直径が0.8nm以下のマイクロ細孔容積(V
micro)が、0mL/g<V
micro<0.1mL/gの範囲にある、請求項
7に記載されたマイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遷移金属、その中でも特に貴金属は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム及びオスミウムの総称であって、装身具、電子材料、触媒といった様々な分野で使用されている。
【0003】
貴金属を触媒に用いる場合、貴金属は微粒子の状態で使用されることが多い。これは、貴金属を微粒子にして貴金属の表面を増やすことで、触媒活性を高めるためである。また、このような貴金属の微粒子は、その広い表面を最大限生かすため、表面積の大きい担体に分散担持されるのが一般的である。このような貴金属の微粒子が担体に担持された触媒は、種々の触媒反応に高い触媒活性を示す。しかし、これを高温で使用すると、貴金属の微粒子が熱によって移動・接触することで成長する(シンタリング)。このように、従来の担体に貴金属が担持された触媒は、高温で使用したときに貴金属の表面が少なくなるという問題がある。
【0004】
このような問題を解決する方法の一つとして、例えば、特許文献1には、MFI構造のゼオライトの結晶内に金属粒子が内包されており、前記ゼオライトが有する細孔の平均径よりも前記金属粒子の平均粒子径の方が大きく、前記ゼオライトのサイズが50~1000nmである、金属粒子を内包したゼオライトが開示されている。これは、ゼオライト中に触媒活性を示す金属粒子が固定化されており、触媒反応はゼオライトの細孔を介して行われる。このように、ゼオライトに内包された金属粒子は、熱によって移動・接触しにくいので、高温であってもシンタリングが起きにくい。
【0005】
また、特許文献2には、フィッシャートロプシュ合成触媒の外表面がゼオライトで被覆されたカプセル触媒が開示されている。これらのカプセル触媒は、合成ガスから液体燃料を製造するフィッシャートロプシュ合成において有用な生成物であるオレフィンやイソパラフィンの選択率を向上させる。
【0006】
また、特許文献3には、担体に金属粒子が担持された担持金属触媒の表面が金属粒子の粒径より小さな径の細孔を有する多孔質材で被覆された、アンモニア分解触媒が開示されている。この多孔質材の細孔内にはアンモニアが安定して吸着する。その結果、アンモニアの分解速度が向上する。
【0007】
このように、金属粒子の表面をゼオライト等の多孔質材で被覆した粒子は種々報告されており、担体の表面に金属粒子が担持された担持金属触媒の表面を多孔質材で被覆した粒子も報告されている。しかし、金属粒子や担体粒子の表面をこれらとは異なる物質で構成されるナノメートルオーダーの被覆層で完全に被覆することは難しい。特に、金属粒子の表面を完全に被覆することは難しかった。特許文献2には、表面がゼオライトで完全に被覆されたフィッシャートロプシュ合成触媒が開示されているが、その膜厚はマイクロメートルオーダーである。特許文献3には、Al
2O
3(担体)の表面にNi(金属粒子)が担持された担持金属触媒であって、その表面がZSM5(多孔質材)で被覆された粒子が開示されている(
図7:電子顕微鏡写真)。この粒子は、ナノメートルオーダーの被覆層を有するが、その厚みは不均一である。更に、いくつかのNiがその表面に露出しており、この粒子の表面はZSM5で完全には被覆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-128480号公報
【文献】特開2017-144426号公報
【文献】特開2016-64407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明では、担体粒子(但し、ゼオライト又はゼオライト類似物質を除く。)の表面に遷移金属粒子が担持された遷移金属担持体の表面を、マイクロ孔を有する物質で形成されたナノメートルオーダーの被覆層で完全に被覆すること、を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
遷移金属担持体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理しておくことで、マイクロ孔を有する物質で形成されたナノメートルオーダーの被覆層で前記担持体の表面を完全に被覆することができる。
【発明の効果】
【0011】
担体粒子(但し、ゼオライト又はゼオライト類似物質を除く。)の表面に遷移金属粒子が担持された遷移金属担持体であって、その表面がマイクロ孔を有する物質で完全に被覆されており、その物質で形成された被覆層の厚さがナノメートルオーダーである、遷移金属担持体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】実施例1の電子顕微鏡写真。(a)がSEM画像であり、(b)がTEM画像である。
【
図5】比較例1の電子顕微鏡写真。(a)がSEM画像であり、(b)がTEM画像である。
【
図6】比較例3の電子顕微鏡写真。(a)がSEM画像であり、(b)がTEM画像である。
【
図7】実施例1、2、比較例1、2、3、参考例の窒素吸着等温線。
【
図8】実施例1、2、比較例1、2、3、参考例のX線回折パターン。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の製造方法の概要]
本発明は、
[1]担体粒子(但し、ゼオライト又はゼオライト類似物質を除く。)の表面に遷移金属粒子が担持された遷移金属担持体を準備する工程、
[2]Si原料と構造規定剤とを混合してマイクロ孔を有する物質を準備する工程、
[3]前記遷移金属担持体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理して、表面処理体を調製する工程、
[4]前記表面処理体の表面を前記マイクロ孔を有する物質で被覆する工程、
を備えた、マイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)を含む。本発明の製造方法を用いることで、マイクロ孔を有する物質で形成されたナノメートルオーダーの被覆層で表面が完全に被覆された遷移金属担持体を得ることができる。その理由は、以下のように推測される。
本発明の製造方法では、担体粒子の表面に遷移金属粒子が担持された遷移金属担持体の表面を被覆する物質として、Siを含みマイクロ孔を有する物質を用いる。更に、遷移金属担持体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理する。このように、被覆する物質(Siを含みマイクロ孔を有する物質)と被覆される物質(遷移金属担持体)の表面を同じ元素を含む化合物で統一することで、遷移金属担持体の表面が前記物質で被覆されやすくなったものと考えられる。更に、表面の被覆が難しい遷移金属粒子についても、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いて表面処理すると、前記物質で被覆されやすくなる。これは、シランカップリング剤に含まれるアミノ基が遷移金属粒子に配位することで、遷移金属粒子の表面にシランカップリング剤が安定して存在できるようになったためと考えられる。このような理由から、前記物質で構成されたナノメートルオーダーの被覆層で遷移金属担持体の表面を完全に被覆することができると考えられる。参考までに、発明者が考えた本発明の製造方法のイメージの一例を
図1に記す。なお、本発明の製造方法は、このイメージに限定されるものではない。
【0014】
[先行技術との対比]
本発明の製造方法は、前述の特許文献1に記載された製造方法と比較して、「前記遷移金属担持体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理して表面処理体を調製する工程」を含むという点で少なくとも相違する。特許文献1に記載された製造方法では、金属粒子をSiO
2層で被覆した後、この層をゼオライトに転換している。特許文献1の製造方法は、本発明の製造方法のように担体粒子を含んでいないので、本発明の製造方法のようにアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理する工程を含まなくとも、金属粒子の表面を完全にゼオライトで被覆することができる。したがって、本発明の製造方法のような、遷移金属担持体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理することでSiを含みマイクロ孔を有する物質を被覆しやすくするという技術思想は、特許文献1に開示されていない。
また、本発明の製造方法は、前述の特許文献2に記載された製造方法と比較して、「前記遷移金属担持体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理して表面処理体を調製する工程」を含むという点で少なくとも相違する。特許文献2に記載された製造方法には、アルミナ担体および当該アルミナ担体に担持されたコバルトを有するフィッシャートロプシュ合成触媒と、前記フィッシャートロプシュ合成触媒の外表面に形成されたベータゼオライト膜とを有する触媒の製造方法が開示されている。そして、これらの製造方法で得られた触媒の表面は、ベータゼオライト膜で完全に被覆されている。しかし、このゼオライト膜が、4~20μmと厚くなってしまう。一方、本発明の製造方法は、遷移金属担持体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理する工程を含むので、この担持体の表面がマイクロ孔を有する物質で完全に被覆される。
また、本発明の製造方法は、前述の特許文献3に記載された製造方法と比較して、「前記遷移金属担持体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理して表面処理体を調製する工程」を含むという点で少なくとも相違する。特許文献3に記載された製造方法には、担体粒子の表面に金属粒子が担持された担持体を多孔質体(ゼオライト)で被覆する製造方法が開示されている。しかし、特許文献3の製造方法で得られる担持体の表面に形成された多孔質層は、不均一であり(例えば、
図7に記載された実施例1のZSM5/Ni/Al
2O
3の電子顕微鏡写真)、必ずしも担持体の表面が多孔質体で完全に被覆されているとはいえない。一方、本発明の製造方法では、遷移金属担持体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理する工程を含むので、この担持体の表面がマイクロ孔を有する物質で完全に被覆される。
【0015】
以下、本発明の製造方法の実施形態について、詳述する。
【0016】
[遷移金属担持体を準備する工程]
この工程では、担体粒子(但し、ゼオライト又はゼオライト類似物質を除く。)の表面に遷移金属粒子が担持された遷移金属担持体を準備する。このような遷移金属担持体を準備する方法として、例えば、遷移金属粒子が分散した分散液中に担体粒子を添加する方法で準備することができる。このとき、粉末状の担体粒子をこの分散液に添加してもよいし、担体粒子が分散した分散液を添加してもよい。また、遷移金属化合物の水溶液中に担体粒子を添加し、乾燥、焼成することによっても遷移金属担持体を準備することができる。この場合、必要によって焼成の後に還元処理を施してもよい。
【0017】
この工程で用いる担体粒子は、Si、Al、Ti、Mg、P、Ca、Znから選ばれる少なくとも1種類の元素を含む化合物であることが好ましい。但し、本発明における担体粒子は、ゼオライト又はゼオライト類似物質を含まない。ここで、ゼオライトとは、多孔質結晶性アルミノケイ酸塩及びメタロケイ酸塩を指すものとする。また、ゼオライト類似物質とは、前述のゼオライト以外で同様な構造を持つリン酸塩系多孔質結晶などをゼオライト類似物質とする(小野嘉夫・八嶋建明編「ゼオライトの科学と工学」、講談社、2000年7月10日発行)。これらの元素を含む化合物は、シランカップリング剤との相性が良いので、その表面にシランカップリング剤を安定して存在させることができる。更に、前述の化合物の中でも比表面積が大きい化合物がより好ましい。化合物の具体例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、リン酸化物、酸化カルシウム、酸化亜鉛またはこれらの複合酸化物であってもよい。シリカ、アルミナ、チタニア又はこれらの複合酸化物は、シランカップリング剤との相性が良いので、特に好ましい。担体粒子のサイズは、10nm≦サイズ≦100,000nmの範囲にあることが好ましく、10nm≦サイズ≦10,000nmの範囲にあることがより好ましく、10nm≦サイズ≦100nm以下であることが特に好ましい。担体のサイズが前述の範囲にあることで、遷移金属粒子が担体粒子の表面に分散した状態で担持されやすくなる。なお、担体粒子のサイズの測定方法は、実施例に記す。
【0018】
この工程で担体粒子の表面に担持される遷移金属粒子は、周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する元素の1種類以上を含む粒子を指すものである。遷移金属粒子の中でも、特に、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osから選ばれる少なくとも1種の元素を含む貴金属粒子であることが好ましい。この貴金属粒子の中でも、Pt、Pd、Rh、Ruから選ばれる少なくとも1種の元素を含む粒子であることが特に好ましい。これらの元素は、例えば、炭化水素の水素化反応に用いる触媒の活性成分として好適である。なお、前述の遷移金属粒子は、金属単体であってもよく、化合物であってもよい。化合物としては、例えば、酸化物でもよく、また配位子を含む錯体であってもよい。また、前述の遷移金属粒子のサイズは、0.3nm≦サイズ≦20nmの範囲にあることが好ましく、0.5nm≦サイズ≦10nmの範囲にあることがより好ましく、1nm≦サイズ≦5nmの範囲にあることが特に好ましい。このサイズが小さいほど、遷移金属粒子の表面積が増加するので、これを触媒の活性成分として用いると高い活性が期待できる。
なお、遷移金属粒子のサイズの測定方法は、実施例に記す。
【0019】
[マイクロ孔を有する物質を合成する工程]
この工程では、Si原料と構造規定剤とを混合してマイクロ孔を有する物質を合成する。この工程では、Si原料またはこれらから調製されたポリケイ酸イオンが構造規定剤の周囲に配位することで、マイクロ孔を有する物質が合成される。この物質はゼオライトの前駆体またはごく微小なゼオライトのような物質であって、これを特定の条件下で結晶化するとゼオライトになる。本発明の製造方法では、このような物質で遷移金属担持体の表面が被覆される。
【0020】
この工程では、Si原料として、例えば、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸テトラエチル、シリカゾル等の従来公知の原料を使用することができる。ケイ酸ナトリウムやオルトケイ酸テトラエチル等のアルコキシドを原料として用いる場合は、これらの化合物からポリケイ酸イオンを調製することが好ましい。例えば、ケイ酸ナトリウムを水溶液に溶解した後、イオン交換樹脂等を使用してアルカリを除去する方法でポリケイ酸イオンを調製することができる。また、オルトケイ酸テトラエチル等のアルコキシドを加水分解してポリケイ酸イオンを調製することもできる。
【0021】
この工程では、構造規定剤として、ゼオライト合成の分野で使用されている従来公知の構造規定剤を使用することができる。例えば、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を使用することができる。また、Na、K、Liといったアルカリ金属や、Ca、Baといったアルカリ土類金属も使用することができる。この工程で用いる構造規定剤は、Si原料に含まれるSiの物質量(SiO2換算)と構造規定剤に含まれる水酸化物イオンの物質量の比で、0.05<OH/SiO2<1.0の範囲となるように添加されることが好ましく、0.15<OH/SiO2<0.5の範囲となるように添加されることがより好ましい。構造規定剤の添加量が多すぎても少なすぎても、マイクロ孔を有する物質が合成されにくくなるため、前述の範囲内にあることが好ましい。
【0022】
この工程では、Si原料としてアルコキシドを使用する場合、Si原料と構造規定剤とを水溶液中で混合することが好ましい。また、これらを混合する際の温度は、10℃≦温度≦40℃の範囲にあることが好ましく、15℃≦温度≦35℃の範囲にあることがより好ましい。また、この温度範囲において、10hr≦時間≦100hrの範囲で保持することが好ましい。これらを混合すると、アルコキシドの加水分解によって形成されたポリケイ酸イオンが構造規定剤の周囲に配位する。このとき、温度が低すぎるとアルコキシドの加水分解が進行せず、温度が高すぎるとポリケイ酸イオンの縮合が進行して粒子サイズが大きくなってしまうため、前述の範囲内にあることが好ましい。このとき、時間が短すぎるとアルコキシドの加水分解およびポリケイ酸イオンの構造規定剤の周囲への配位が十分でない。時間が長くても問題はないが、混合中の溶媒の蒸発により溶液組成が変化したり、工業的に取り扱いにくいといった問題点があるため、前述の範囲内にあることが好ましい。また、混合が終了した後、更に、熟成することが好ましい。熟成する際の温度は、50℃≦温度≦90℃の範囲にあることが好ましく、50hr≦時間≦300hrの範囲で保持することが好ましい。熟成中に構造規定剤の周囲に配位したポリケイ酸イオンがゼオライトに近い構造へと変化し、マイクロ孔を有する物質が形成される。このとき、熟成温度が低すぎたり時間が短すぎると構造変化が十分でなく、熟成温度が高すぎたり時間が長すぎるとマイクロ孔を有する物質同士が結合し、粗大なゼオライト粒子が生成することがあるので、前述の範囲内にあることが好ましい。特に、粗大なゼオライト粒子が生成すると、ナノメートルオーダーの被覆層を形成することが難しくなる。
【0023】
この工程では、Si原料と併せてAl原料やTi原料を添加することができる。Al原料は、例えば、硫酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、アルミナゾル等の従来公知の原料を使用することができる。Ti原料は、四塩化チタン、硫酸チタニル、オルトチタン酸テトライソプロピル、チタニアゾル等の従来公知の原料を使用することができる。Si原料と併せてこれらの原料を添加することで、マイクロ孔を有する物質の特性を変化させることができる。例えば、この物質に固体酸性を付与したり、マイクロ孔のサイズをある程度コントロールすることもできる。
【0024】
[表面処理体を調製する工程]
この工程では、遷移金属担持体の表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理して、表面処理担体が調製される。例えば、遷移金属担持体の分散液中にアミノ基を有するシランカップリング剤を適量添加して、そのまま撹拌混合することで、遷移金属担持体を表面処理することができる。
【0025】
この工程では、アミノ基を有するシランカップリング剤として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピルシラン]等を使用することができる。遷移金属担持体の表面をこれらのシランカップリング剤であらかじめ表面処理しておくことで、その表面がマイクロ孔を有する物質で被覆されやすくなる。
【0026】
この工程で用いるアミノ基を有するシランカップリング剤の添加量は、遷移金属担持体の質量に対するシランカップリング剤の質量として、0.1質量%≦添加量≦100質量%の範囲にあることが好ましく、0.1質量%≦添加量≦10質量%の範囲にあることがより好ましい。シランカップリング剤が少なすぎると表面処理効果が十分でなく、多すぎると遷移金属担持体の表面に吸着しなかったシランカップリング剤が溶媒中に存在し、溶媒中でマイクロ孔を有する物質と反応してしまうため好ましくない。
【0027】
この工程では、遷移金属担持体とアミノ基を有するシランカップリング剤とを混合する際の温度は、10℃≦温度≦40℃の範囲にあることが好ましく、15℃≦温度≦35℃の範囲にあることがより好ましい。また、この温度範囲において、0.1hr≦時間<2hrの範囲で保持することが好ましい。温度が低すぎると遷移金属担持体表面とシランカップリング剤との反応が十分でなく、温度が高すぎると溶媒中でシランカップリング剤同士が反応してしまう可能性がある。保持時間が短すぎると遷移金属担持体表面とシランカップリング剤との反応が十分でなく、保持時間が長すぎると遷移金属担持体表面に吸着したシランカップリング剤が不活性化してしまう可能性がある。そのため、前述の範囲にあることが好ましい。
【0028】
[マイクロ孔を有する物質で被覆する工程]
この工程では、マイクロ孔を有する物質で表面処理体の表面が被覆される。例えば、表面処理体の分散液中にマイクロ孔を有する物質を添加する方法で、表面処理体の表面を被覆することができる。
【0029】
この工程では、前述の工程で得られたマイクロ孔を有する物質と、表面処理体とが混合される。このとき、これらの物質は水溶液中で混合されることが好ましい。このときの混合物の温度は、20℃≦温度≦100℃の範囲にあることが好ましい。更に、この温度範囲で混合物の温度を維持しつつ、酸溶液を添加することが好ましい。ここで、酸溶液を添加する理由は、マイクロ孔を有する物質を遷移金属担持体の表面に固定化させるためである。前述の工程で得られたマイクロ孔を有する物質は、構造規定剤周囲に配位したポリケイ酸イオンがゼオライトに近い構造へと変化し、表面にある程度の水酸基を有する状態となっている。この工程で酸溶液が添加されると、表面水酸基の脱水縮合が促進される。この際に、シランカップリング剤で表面を処理した遷移金属担持体が存在すると、その表面にマイクロ孔を有する物質が固定化される。このような方法を用いることで、表面処理体の表面をマイクロ孔を有する物質で隙間なく覆うことができる。更に、この被覆された表面処理体をろ過や遠心分離等で取り出したものをドライゲルコンバージョン処理することで、被覆層の表面を平滑化することもできる。これは、被覆層においてマイクロ孔を有する物質が溶解・再析出を繰り返すことで、その表面が平滑化されていくためと考えられる。なお、ドライゲルコンバージョンは、一般的に、水蒸気、例えば加圧水蒸気を用いて気相でゼオライトの結晶化を促す方法であって、
図3のような方法で実施される。ドライゲルコンバージョンは、80℃≦温度≦180℃の温度範囲かつ1hr≦時間≦48hrの範囲で実施されることが好ましい。温度が低すぎたり時間が短すぎるとマイクロ孔を有する物質の溶解・再析出が十分でなく、平滑化が進まないことがある。温度が高すぎたり時間が長すぎるとマイクロ孔を有する物質の溶解・再析出が進みすぎて、遷移金属粒子の表面が露出してしまう可能性がある。したがって、その反応条件は、前述の範囲内にあることが好ましい。このように遷移金属担持体の被覆層が平滑化されることで、被覆層の割れかけが起こりにくくなる。また、被覆層から遷移金属担持体までの距離が均一化されるので、触媒として用いたときの触媒反応が均一に起こりやすい。
【0030】
前述の工程を経て得られた担持体は、マイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体であって、マイクロ孔中に構造規定剤が残留している。この構造規定剤が有機化合物である場合は、この担持体を空気中で焼成することで、残留している構造規定剤を除去することができる。例えば、400℃≦温度≦700℃の温度領域で、1hr≦時間≦24hrの範囲で焼成するとよい。この構造規定剤が無機化合物である場合は、イオン交換樹脂に通過させる等の方法で除去することができる。
【0031】
[本発明の担持体の概要]
本発明は、
[A]担体粒子(但し、ゼオライト又はゼオライト類似物質を除く。)の表面に遷移金属粒子が担持された遷移金属担持体を含み、
[B]前記遷移金属担持体の表面がマイクロ孔を有する物質で完全に被覆されており、
[C]前記マイクロ孔を有する物質が、Siを含む化合物であり、
[D]前記マイクロ孔を有する物質で形成された被覆層の厚さが、1nm≦厚さ≦100nmの範囲にある、
マイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体(以下、「本発明の担持体」ともいう。)、を含む。本発明の担持体は、その表面がマイクロ孔を有する物質で完全に被覆されているので、マイクロ孔より大きいサイズの分子は通さず、これより小さいサイズの分子を通過させることができる。例えば、この特徴を利用して、被毒物質などから触媒反応の活性種となる遷移金属粒子を保護しつつ、触媒反応に関係する物質のみ反応させることができる。また、例えば、本発明の担持体に含まれる遷移金属粒子は、担体粒子の表面に担持されているので、遷移金属粒子と担体粒子との相互作用の効果を享受することができる。この特徴を利用して、遷移金属粒子が活性種となる触媒反応において、高い触媒性能が期待できる。更に、本発明の担持体は、前記マイクロ孔を有する物質で形成された被覆層の厚さが1nm≦厚さ≦100nmと極めて薄いので、触媒反応に関係する物質が被覆層の表面から遷移金属担持体まで到達する距離も短くなる。したがって、本発明の担持体は、その触媒反応速度が低下しにくいという特徴も有している。参考までに、発明者が考えた本発明の担持体のイメージの一例を
図2に記す。なお、本発明の担持体は、このイメージに限定されるものではない。
【0032】
[先行技術との対比]
本発明の担持体は、前述の特許文献1に記載された金属粒子を内包したゼオライトと比較して、「担体粒子(但し、ゼオライト又はゼオライト類似物質を除く。)の表面に遷移金属粒子が担持された遷移金属担持体を含む。」という点で少なくとも相違する。特許文献1に記載されたゼオライトに内包された金属粒子は、担体粒子の表面に担持されていないので、金属粒子と担体との相互作用の効果を享受することができていない。これに対して、本発明の担持体は、担体粒子(但し、ゼオライト又はゼオライト類似物質を除く)の表面に遷移金属粒子が担持された状態で、更にマイクロ孔を有する物質で完全に被覆されているので、遷移金属粒子と担体粒子との相互作用の効果を十分に享受することができる。
また、本発明の担持体は、前述の特許文献2に記載されたカプセル触媒と比較して、「前記マイクロ孔を有する物質で形成された被覆層の厚さが、1nm≦厚さ≦100nmの範囲にある。」という点で少なくとも相違する。特許文献2に記載された触媒は、フィッシャートロプシュ合成触媒とその外表面に被覆されたゼオライトとを有しているが、ゼオライトの膜厚は4~20μmと厚い。そのため、被毒物質などから触媒反応の活性種となる遷移金属粒子を保護しつつ、触媒反応に関係する物質のみ反応させるといった用途を想定した場合に、ゼオライト膜が厚すぎて触媒反応に関係する物質が活性種となる遷移金属粒子に拡散するまでに時間がかかり、反応速度が低下しやすい。これに対して、本発明の担持体は、前記マイクロ孔を有する物質で形成された被覆層の厚さが1nm≦厚さ≦100nmと薄いため、反応速度の低下を最小限に抑えつつ、被覆の効果を最大限に享受することができる。
また、本発明の担持体は、前述の特許文献3に記載されたアンモニア分解触媒と比較して、「前記遷移金属担持体の表面がマイクロ孔を有する物質で完全に被覆されている。」という点で少なくとも相違する。特許文献3に記載されたアンモニア分解触媒は、アンモニア分解能を有する金属粒子と、前記金属粒子の粒径よりも小さな径の細孔を有しかつ前記金属粒子と接触する多孔質材料とを有している。しかし、前述の通り、特許文献3の製造方法で得られる担持体の表面に形成された多孔質層は、不均一であり、必ずしも担持体の表面が完全に被覆されているとは言えない。これに対して、本発明の担持体は、その表面がマイクロ孔を有する物質で完全に被覆されているので、被覆の効果を最大限に享受することができる。
【0033】
本発明の担持体は、担体粒子(但し、ゼオライト又はゼオライト類似物質を除く。)を含む。この担体粒子は、Si、Al、Ti、Mg、P、Ca、Znから選ばれる少なくとも1種類の元素を含む化合物であることが好ましい。但し、本発明における担体粒子は、ゼオライト又はゼオライト類似物質を含まない。ここで、ゼオライトとは、多孔質結晶性アルミノケイ酸塩及びメタロケイ酸塩を指すものとする。また、ゼオライト類似物質とは、前述のゼオライト以外で同様な構造を持つリン酸塩系多孔質結晶などをゼオライト類似物質とする(小野嘉夫・八嶋建明編「ゼオライトの科学と工学」、講談社、2000年7月10日発行)。更に、前述の化合物の中でも比表面積が特に大きい化合物が好ましい。更に、前述の化合物の中でも比表面積が大きい化合物がより好ましい。化合物の具体例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、リン酸化物、酸化カルシウム、酸化亜鉛またはこれらの複合酸化物であってもよい。シリカ、アルミナ、チタニア又はこれらの複合酸化物は、シランカップリング剤との相性が良いので、特に好ましい。担体粒子のサイズは、10nm≦サイズ≦100,000nmの範囲にあることが好ましく、10nm≦サイズ≦10,000nmの範囲にあることがより好ましく、10nm≦サイズ≦100nm以下であることが特に好ましい。担体のサイズが前述の範囲にあることで、遷移金属粒子が担体粒子の表面に分散した状態で担持されやすくなる。なお、担体粒子のサイズの測定方法は、実施例に記す。
【0034】
本発明の担持体は、遷移金属粒子を含む。この遷移金属粒子は、担体粒子の表面に担持されているので、担体粒子との相互作用の効果を享受できる。この遷移金属粒子は、周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する元素の1種類以上を含む粒子を指すものである。遷移金属粒子の中でも、特に、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osから選ばれる少なくとも1種の元素を含む貴金属粒子であることが好ましい。この貴金属粒子の中でも、Pt、Pd、Rh、Ruから選ばれる少なくとも1種の元素を含む粒子であることが特に好ましい。これらの元素は、例えば、炭化水素の水素化反応に用いる触媒の活性成分として好適である。なお、前述の遷移金属粒子は、金属単体であってもよく、化合物であってもよい。化合物としては、例えば、酸化物でもよく、また配位子を含む錯体であってもよい。また、前述の遷移金属粒子のサイズは、0.3nm≦サイズ≦20nmの範囲にあることが好ましく、0.5nm≦サイズ≦10nmの範囲にあることがより好ましく、1nm≦サイズ≦5nmの範囲にあることが特に好ましい。このサイズが小さいほど、遷移金属粒子の表面積が増加するので、これを触媒の活性成分として用いると高い活性が期待できる。
なお、遷移金属粒子のサイズの測定方法は、実施例に記す。
【0035】
本発明の担持体に含まれる遷移金属粒子の含有量は、0.01質量%≦含有量≦20質量%の範囲にあることが好ましく、0.1質量%≦含有量≦10質量%の範囲にあることがより好ましい。担体粒子のサイズにもよるが、遷移金属粒子の含有量が前述の範囲にあることで、担体粒子の表面を十分に活用することができる。遷移金属粒子の含有量が少なすぎると、例えば、触媒用として用いた場合の触媒活性が低くなりやすい。遷移金属粒子の含有量が多すぎても、担体粒子と遷移金属粒子との接点がそれほど増えず、遷移金属粒子同士が凝集することもあるので好ましくない。
【0036】
本発明の担持体の表面は、マイクロ孔を有する物質で完全に被覆されている。この物質は、Siを含む化合物であって、ゼオライトの結晶構造に由来すると思われるマイクロ孔を多く有している。本発明の担持体のX線回折パターンからはゼオライトの結晶構造に由来するピークが確認できないので、本発明の担持体に含まれるマイクロ孔を有する物質がゼオライトだとは断言できない。しかし、本発明の担持体の窒素吸着等温線からはゼオライトの結晶構造に由来すると思われるマイクロ孔が多く確認されるので、本発明の担持体に含まれるマイクロ孔を有する物質はゼオライトの前駆体のような物質ではないかと推察される。つまり、本発明の担持体は、X線回折パターンで検出されない程度の微小なゼオライト粒子で被覆されているともいえる。このマイクロ孔は、窒素吸着法を用いた細孔分布測定によってその有無を観察することができる。また、電子顕微鏡観察によっても、その有無を確認することができる。なお、本発明におけるマイクロ孔とは、直径が2nm以下の細孔を表すものである。
【0037】
本発明の担持体は、窒素吸着法を用いた細孔分布測定によって得られる細孔分布において、直径が0.8nm以下のマイクロ細孔容積(Vmicro)が、0mL/g<Vmicro<0.1mL/gの範囲にあることが好ましい。本発明の担持体は、マイクロ孔を有する物質で完全に被覆されているので、この細孔容積も多くなる。なお、この細孔容積には担体粒子に由来するマイクロ孔も含まれるが、本発明の担持体に含まれる担体粒子はこのようなマイクロ孔を多く有するゼオライト又はゼオライト類似物質を含まないので、担体粒子のマイクロ孔に由来する細孔容積は極めて少ない。この細孔容積は、0.01mL/g≦Vmicro≦0.05mL/gの範囲にあることがより好ましい。この細孔容積が多すぎると、本発明の担持体に含まれるマイクロ孔を有する物質も多くなりやすく、その被覆層も厚くなりやすい。マイクロ孔を有する物質の被覆層が厚くなりすぎると、例えば触媒用として用いた場合に被覆層の表面から遷移金属担持体の表面に物質が到達する距離が長くなり、その活性が低下する恐れがある。また、この細孔容積が少なすぎても、遷移金属担持体の表面がマイクロ孔を有する物質で完全に被覆されないことがある。
なお、窒素吸着法の詳細は、実施例に記す。
【0038】
本発明の担持体に含まれるマイクロ孔を有する物質の被覆層の厚さは、遷移金属粒子の表面から、1nm≦厚さ≦100nmの範囲にあり、1nm≦厚さ≦20nmの範囲にあることがより好ましい。本発明の担持体は、遷移金属担持体の表面が完全に被覆されており、かつその被覆層が薄いという特徴を有している。この被覆層が薄くなると、例えば触媒用として用いた場合に被覆層の表面から遷移金属担持体の表面に物質が到達する距離が短くなり、その活性が低下しにくくなる。
なお、被覆層の厚さの測定方法は実施例に記す。
【0039】
本発明の担持体は、マイクロ孔(直径が2nm以下の細孔)の中でも、直径が0.8nm以下の細孔が均一に存在していることが好ましい。本発明の担持体に含まれるマイクロ孔を有する物質の細孔径がより均一であれば、これを触媒反応等に用いたとき、特定の物質のみを優先して反応させやすくなる。この細孔径が均一であるかどうかは、細孔径より大きい分子サイズの物質と小さい分子サイズの物質を用いた触媒反応を使って判断することができる。本発明では、細孔径より小さい分子サイズの物資を用いたときの触媒反応から得られた転化率と、細孔径より大きい分子サイズの物質を用いたときの触媒反応の比を用いて、細孔径が均一であるかを判断した。具体的には、同一の触媒反応が起こる物質であって、分子サイズが異なる2種類の物質を準備し、分子サイズが小さいほうの物質を反応させた際の転化率(A)が25~65mol%となる反応条件において、分子サイズが大きいほうの物質を反応させた際の転化率(B)を測定し、これらの比(転化率(B)/転化率(A))を均一性の指標とした。本発明では、この比が0.1以下である場合、細孔径が均一であると判断した。例えば、実施例1では、分子サイズが0.59nmであるトルエンを水素化したときの転化率が29mol%となる反応条件で、分子サイズが0.85nmである1,3,5-トリイソプロピルベンゼンを水素化したとき、その転化率が2.8mol%であり、これらの比は0.097であったため、直径が0.8nm以下の細孔が均一に存在していると判断した。
【実施例】
【0040】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施範囲に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1:マイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体1]
<遷移金属担持体を準備する工程>
純水7240gに塩化白金酸6水和物2.39g(Ptとして0.9g)を溶解した水溶液に、錯化安定剤として濃度1.0質量%のクエン酸三ナトリウム水溶液746gと還元剤として濃度0.1質量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液62.8gとを加え、窒素雰囲気下において20℃で1時間攪拌して、白金の分散液を得た。この分散液を限外濾過膜法洗浄により精製した後濃縮し、金属換算で濃度0.09質量%の白金の分散液を得た。後述の透過型電子顕微鏡を用いた平均粒子径測定によって算出した分散液に含まれる白金のサイズは3.1nmであった。
【0042】
この白金の分散液168gに担体粒子(γ-アルミナ)30.2gを加えて、撹拌しながら80℃で溶媒がなくなるまで保持した。ここで得られた粉末を110℃で乾燥した。次に、この粉末を1.6℃/minで300℃まで昇温して5hr保持した。続けて、1.6℃/minで400℃まで昇温して5hr保持して、遷移金属担持体を得た。
【0043】
<マイクロ孔を有する物質を合成する工程>
テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液(濃度:40質量%)120.9gおよびオルトケイ酸テトラエチル139.5gをイオン交換水139.5gに加え、室温で72hr撹拌した。その後、撹拌しながら60℃で168hr熟成し、マイクロ孔を有する物質を含む水溶液を得た。
【0044】
<表面処理体を調製する工程>
前述の工程で得られた遷移金属担持体14.7gをイオン交換水600gに加えて、撹拌した。これに3-アミノプロピルトリメトキシシラン1.03gを加え、70℃に昇温し、表面処理体を含む水溶液を得た。
【0045】
<表面処理体の表面をマイクロ孔を有する物質で被覆する工程>
前述の工程で得られた表面処理体を含む水溶液に前述の工程で得られたマイクロ孔を有する物質を含む水溶液9.4gを加えて、70℃で0.5hr保持した。これに前述の工程で得られたマイクロ孔を有する物質を含む水溶液179.4gおよび塩酸水溶液(0.2規定)385.0gを一定の速度で16hrかけて加えた。添加終了後、これを70℃で2hr保持した。これをろ過して固形分を回収した。この固形分をイオン交換水で洗浄した後、70℃で乾燥し、粉末を得た。オートクレーブ(内容積100mL)に、イオン交換水12mLを加え、更にこの粉末6.0gをイオン交換水と接触しないように設置した。このオートクレーブを密閉し、100℃で12hr保持した。この後、オートクレーブ中の粉末を取り出し、洗浄、乾燥した。この粉末を1℃/minで550℃まで昇温し、2hr焼成して、マイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体を得た。
【0046】
[実施例2:マイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体2]
実施例1と同様の方法で遷移金属担持体、マイクロ孔を有する物質を含む水溶液および表面処理体を含む水溶液を調製した。
【0047】
<表面処理体の表面をマイクロ孔を有する物質で被覆する工程>
前述の工程で得られた表面処理体を含む水溶液にケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2換算濃度:24.3質量%、Na2O換算濃度:8.0質量%)0.75gを加えて、70℃で0.5hr保持した。これに前述の工程で得られたマイクロ孔を有する物質を含む水溶液104.6gおよび酸性ケイ酸液646.4gを一定の速度で16hrかけて加えた。添加終了後、これを70℃で2hr保持した。これをろ過して固形分を回収した。その後は、実施例1と同様の方法でマイクロ孔を有する物質で被覆された遷移金属担持体を得た。
なお、この工程で用いた酸性ケイ酸液は、次の方法で調製した。ケイ酸ナトリウム溶液(SiO2換算濃度24.0質量%、SiO2/Na2Oモル比:3.0)をイオン交換水で希釈し、水素型陽イオン交換樹脂が充填されたカラムに通過させ、酸性ケイ酸液(SiO2換算濃度:4.6質量%、pH:2.65)を得た。
【0048】
[比較例1:マイクロ孔を有する物質で被覆されていない遷移金属担持体]
実施例1と同様の方法で遷移金属担持体を得た。
【0049】
[比較例2:シリカで被覆された遷移金属担持体]
実施例1と同様の方法で、遷移金属担持体を調製した。この遷移金属担持体2.45gをイオン交換水100.0gに加えて撹拌し、更に3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.042gを加えた。これを撹拌しながら70℃まで昇温し、表面処理体を含む水溶液を得た。
【0050】
<表面処理体の表面をシリカで被覆する工程>
前述の工程で得られた表面処理体を含む水溶液にケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2換算濃度:24.3質量%、Na2O換算濃度:8.0質量%)1.68gを加えて、70℃で0.5hr保持した。これに実施例2と同様の方法で調製した酸性ケイ酸液45.2gを一定の速度で16hrかけて加えた。添加終了後、これを70℃で2hr保持した。これをろ過して固形分を回収した。この固形分をイオン交換水で洗浄した後、70℃で乾燥し、粉末を得た。この粉末を0.5℃/minで500℃まで昇温し、2hr焼成して、シリカで被覆された遷移金属担持体を得た。
【0051】
[比較例3:マイクロ孔を有する物質を含む遷移金属担持体]
オルトケイ酸テトラエチル4.2g、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液(濃度:40質量%)5.2g、エタノール9.2ml、イオン交換水36.4gをオートクレーブ(内容積100mL)に充填し、55℃で30min撹拌した。その後、実施例1と同様の方法で調製した遷移金属担持体2.0 gを加えて密封し、180℃で24hr保持した。これをろ過して固形分を回収した。この固形分をイオン交換水で洗浄した後、120℃で乾燥し、粉末を得た。この粉末を0.5℃/minで500℃まで昇温し、5hr焼成して、マイクロ孔を有する物質を含む遷移金属担持体を得た。
【0052】
[参考例:ゼオライト]
市販のNH4型MFIゼオライトを準備した。
【0053】
前述の実施例、比較例および参考例について、以下の方法で測定した。その結果を、表1に示した。
【0054】
[透過型電子顕微鏡測定:担体粒子のサイズ、遷移金属粒子のサイズ、被覆状態、被覆層厚さ]
透過型電子顕微鏡(HF-2200、日立ハイテクノロジーズ製、および、JEM-2100、日本電子製 )を用いて前述の実施例1、2、比較例1、2、3で用いた白金の分散液および得られたサンプル中の遷移金属粒子を観察した。複数の画像から、100個の遷移金属粒子について、その粒子径dをそれぞれ測り、これを平均したものを遷移金属粒子のサイズDとしたなお、粒子径dは,次の式(1)によって算出した。
d=(Ll + Ls)/2 ・・・・・・(1)
d:遷移金属粒子の粒子径(nm)
Ll:遷移金属粒子の長径(nm)
Ls:遷移金属粒子の短径(nm)
ここで、遷移金属粒子の長径とは、遷移金属粒子の外縁と外縁を結ぶ最も長い直線の長さとし、遷移金属粒子の短径とは、前述の直線の中点を通り遷移金属粒子の外縁と外縁を結ぶ最も短い直線の長さとした。
担体粒子についても、走査型電子顕微鏡を用いて観察した担体粒子を同様にして測り、式(1)から粒子径を算出した。
更に、前述の実施例1、2、比較例1、2、3のサンプルについて、その被覆状態を観察した。なお、本発明では、10個の遷移金属担持体について被覆状態を観察し、その表面に遷移金属粒子が露出していない遷移金属担持体が9個以上あれば、その表面が完全に被覆されているものとみなした。これと併せて、10個の遷移金属担持体に含まれる遷移金属粒子の表面から被覆層の表面までで最も短い距離を測定し、その平均値を被覆層の厚さとした。
【0055】
[窒素吸着法を用いた細孔分布測定]
前述の実施例1、2、比較例1、2、3で得られたサンプルおよび参考例のサンプルについて、以下の条件で窒素吸着法による細孔分布測定を行った。
測定方法 窒素吸着法
測定装置 BEL SORP-miniII(マイクロトラック・ベル株式会社製)
サンプル量 約0.05g
前処理 500℃、1時間(真空下)
相対圧範囲 0~1.0
V
micro t-plot法でt=0.3-0.4nmの傾きに沿って直線を引き、そのy軸切片から直径が0.8nm以下のマイクロ細孔容積を算出した
また、ここで得られた窒素吸着等温線を
図7に示す。
【0056】
[X線回折測定]
前述の実施例1、2、比較例1、2、3で得られたサンプルおよび参考例のサンプルについて、以下の条件でX線回折測定を行った。結果を
図8に示す。
装置 MiniFlex(株式会社リガク製)
操作軸 2θ/θ
線源 CuKα
測定方法 連続式
電圧 40kV
電流 15mA
開始角度 2θ=5°
終了角度 2θ=50°
サンプリング幅 0.020°
スキャン速度 10.000°/min
【0057】
[組成分析]
前述の実施例1、2、比較例1、2、3で得られたサンプルおよび参考例のサンプルについて、以下の条件で組成分析を行った。
ジルコニウムルツボにサンプル約0.2gを採取し、過酸化ナトリウム2g、水酸化ナトリウム1gを加えて熔融し、塩酸50mLと水で溶解した後、得られた溶液を500mLのメスフラスコを用いて水でメスアップして、試料溶液とした。この試料溶液を用いてICP装置(ICPS-8100、島津製)でPtの濃度を測定した。この試料溶液10mLを採取し、塩酸4mLを加えて100mLに希釈した溶液を使用して、ICP装置でAl、Si、Ptの濃度を測定した。
サンプルを1000℃で焼成した前後の重量と前述の濃度から、水分等を含まない状態のサンプルのPt、Al、Siの含有量をそれぞれPt、Al2O3、SiO2換算で算出した。
【0058】
[水素化パルス反応]
前述の実施例1、2、比較例1、2、3で得られたサンプルについて、以下の条件で水素化パルス反応を行った。
反応管に20mg~128mg(サンプル中のPtが0.1mgとなる重量)のサンプルを充填し、水素ガス(20ml/min)を流通しながら、大気圧下450℃まで昇温して1hr保持し、触媒を還元した。その後、大気圧下で水素ガス(137ml/min)を流通させて温度を200℃にし、0.5μLのトルエンまたは1,3,5-トリイソプロピルベンゼン(TIPB)を導入した。反応器出口のガスをガスクロマトグラフィー(GC-2014、島津製作所製)により分析した。
トルエンの水素化生成物としてメチルシクロヘキサンが、1,3,5-TIPBの水素化生成物として1,3,5-トリイソプロピルシクロヘキサンが得られた。各反応物の転化率を以下の式により算出した。
トルエン転化率(mol%)=100-[(未反応トルエン(mol)/(未反応トルエン(mol)+メチルシクロヘキサン(mol))]×100
1,3,5-TIPB転化率(mol%)=100-[(未反応1,3,5-TIPB(mol)/(未反応1,3,5-TIPB(mol)+1,3,5-トリイソプロピルシクロヘキサン(mol))]×100
トルエンの分子サイズは0.59nm(S. Kulprathipanja, "Zeolites in Industrial Separation and Catalysis", 1st ed. (2010) John Wiley & Sons, p33. から引用)、1,3,5-TIPBの分子サイズは0.85nm (E.E. McLeary, J.C. Jansen, F. Kapteijn , Microporous and Mesoporous Materials, Volume 90(2006), p.198-220から引用)である。
【0059】
[各種測定結果からの考察]
電子顕微鏡観察の結果から、実施例1で得られた担持体は、その表面がマイクロ孔を有する物質で完全に被覆されており、遷移金属粒子が表面に露出していないことが確認された(
図4)。また、その被覆層の厚さが3nmと極めて薄いことも確認された。
窒素吸着測定の結果から、実施例1、2で得られた担持体は、マイクロ孔を有する物質で被覆されていない比較例1と比較して、直径が0.8nm以下のマイクロ孔細孔容積が格段に多くなっていることが確認された(
図7)。これは、実施例1、2の表面に形成されたマイクロ孔を有する物質の被覆層に由来するものと考えられる。実施例1、2に含まれるマイクロ孔を有する物質が少ない(被覆層が薄い)ことを考慮すれば、実施例1、2の担持体の直径が0.8nm以下のマイクロ孔細孔容積は、市販のゼオライト(参考例)と比べても遜色がないレベルである。
X線回折測定の結果から、実施例1、2の担持体は、ゼオライトに由来するピークを有していないことが確認された(
図8)。しかし、前述の窒素吸着測定の結果から、市販のゼオライトと遜色ないレベルのマイクロ細孔容積が確認されている。したがって、本発明の担持体表面を被覆しているマイクロ孔を有する物質は、ゼオライトの前駆体またはごく微小なゼオライトのような物質ではないかと考えられる。
【0060】
比較例1で得られた担持体は、被覆層を有しない担持体である。比較例2で得られた担持体は、構造規定剤を用いない方法で調製された担持体である。この担持体は表面がシリカで完全に被覆されており、遷移金属粒子が表面に露出していないことが電子顕微鏡観察によって確認されたが、窒素吸着測定の結果から、マイクロ孔を有してなかった。
比較例3で得られた担持体は、アミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理する工程を用いない方法で調製された担持体である。この担持体は、マイクロ孔を有する物質を表面に形成する工程で遷移金属粒子が溶出し、担持体中の遷移金属量が大幅に減少した。この担持体の表面はマイクロ孔を有する物質で完全に被覆されておらず、5μm程度の大きさのゼオライト(マイクロ孔を有する物質)とサブミクロンの担持体とが分離して存在していることが電子顕微鏡観察によって確認された(
図6)。X線回折測定の結果から、比較例3の担持体は、MFIゼオライトに由来するピークを有しており(
図8)、窒素吸着測定の結果から、マイクロ孔を有していることが確認された。
【0061】
実施例1、2で得られた担持体は、分子サイズが0.59nmであるトルエンをよく水素化し、分子サイズが0.85nmである1,3,5-TIPBをほとんど水素化できなかった。これに対し、被覆層を有さない比較例1は、トルエン、1,3,5-TIPBの両方をよく水素化した。また、マイクロ孔を有さないシリカで被覆された比較例2は、トルエン、1,3,5-TIPBの両方を水素化できなかった。更に、マイクロ孔を有する物質で完全に被覆されていない比較例3の担持体は、比較例1と同様にトルエン、1,3,5-TIPBの両方をよく水素化した。この結果から、実施例1、2で得られた担持体は、分子サイズが0.8nm以下の物質を選択的に水素化できることが確認された。また、トルエンおよび1,3,5-TIPBの転化率の比がいずれも0.1以下であったことから、実施例1、2で得られた担持体は、直径が0.8nm以下の均一な細孔を有していると判断した。
【0062】