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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/01 20060101AFI20240306BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20240306BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G03G15/01 114
G03G15/16
G03G21/00 500
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020039212
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140086
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 亮
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 敬造
(72)【発明者】
【氏名】美濃部 太郎
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173592(JP,A)
【文献】特開2007-017508(JP,A)
【文献】特開2001-125338(JP,A)
【文献】特開2015-011261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0008970(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/01-13/02
13/14-13/16
13/34
15/00-15/02
15/14-15/16
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一色のトナー画像を担持する第一像担持体と、
第二色のトナー画像を担持する第二像担持体と、
前記第一像担持体と前記第二像担持体の少なくとも一方に担持されたトナー画像が転写される中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトの内周面に当接して前記中間転写ベルトの外周面を前記第一像担持体に当接させる当接状態において、前記第一像担持体から前記中間転写ベルトに向けて前記第一色のトナー画像を転写する第一転写部材と、
前記中間転写ベルトの内周面に当接して前記中間転写ベルトの外周面を前記第二像担持体に当接させる当接状態において、前記第二像担持体から前記中間転写ベルトに向けて前記第二色のトナー画像を転写する第二転写部材と、
前記第二転写部材を移動させることで前記中間転写ベルトの外周面を前記第二像担持体から離間させる離間状態と、前記第二転写部材を移動させることで前記中間転写ベルトの外周面を前記第二像担持体に当接させる前記当接状態とを切り替える当接離間機構と、
前記第一転写部材および前記第二転写部材に転写電圧を出力する転写電源と、
前記第一転写部材および前記第二転写部材に転写電圧が印加されているときに、前記第一転写部材および前記第二転写部材に流れる電流を検知することが可能な検知手段と、
前記検知手段により検知された前記電流が所定の電流値となるように前記転写電源から出力される電圧を調整する電圧調整処理を実行する調整手段であって、前記第一像担持体および前記第二像担持体の少なくとも一方から前記中間転写ベルトに向けてトナー画像を転写する前に前記電圧調整処理を実行する調整手段と、
前記調整手段が前記電圧調整処理を実行している期間における前記検知手段によって検知される電流の挙動に基づいて、前記第二転写部材が当接状態にあるか、または離間状態にあるかを判定する判定手段と、を有し、
前記検知手段は、前記第一転写部材に流れる電流と、前記第二転写部材に流れる電流とを合計した合計電流を検知するよう構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記判定手段は、所定のタイミングで前記検知手段により検知された電流が前記所定の電流値に到達しているかどうかに基づき、前記第二転写部材が前記当接状態にあるか、または前記離間状態にあるかを判定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記所定のタイミングは、前記第二転写部材が実際に前記当接状態にある場合に前記検知手段により検知される電流が前記所定の電流値に到達するタイミングと、前記第二転写部材が実際に前記離間状態にある場合に前記検知手段により検知される電流が前記所定の電流値に到達するタイミングとの間に設定されていることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第一転写部材と前記第二転写部材とがともに前記当接状態にあるときに、前記第一像担持体と前記第二像担持体とから前記中間転写ベルトにトナー画像を転写する第一モードと、
前記第一転写部材が前記当接状態にあり、かつ、前記第二転写部材が前記離間状態にあるときに、前記第一像担持体から前記中間転写ベルトにトナー画像を転写する第二モードと、をさらに有し、
前記調整手段は、前記第一モードにおいて前記所定の電流値として第一電流値を採用し、前記第二モードにおいて前記所定の電流値として第二電流値を採用し、
前記第一電流値は前記第二電流値よりも多く、
前記判定手段は、
前記第一モードにおける前記電圧調整処理において、
前記所定のタイミングに前記検知手段により検知された電流が前記第一電流値に到達している場合、前記第一転写部材および前記第二転写部材のすべてが前記当接状態にあると判定し、前記所定のタイミングに前記検知手段により検知された電流が前記第一電流値に到達していない場合、前記第二転写部材が前記離間状態にあると判定し、
前記第二モードにおける前記電圧調整処理において、
前記所定のタイミングに前記検知手段により検知された電流が前記第二電流値に到達している場合、前記第二転写部材が前記離間状態にあると判定し、前記所定のタイミングに前記検知手段により検知された電流が前記第二電流値に到達していない場合、前記第一転写部材および前記第二転写部材のすべてが前記当接状態にあると判定することを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記判定手段は、
前記第一モードにおける前記電圧調整処理において、
前記所定のタイミングに前記検知手段により検知された電流が前記第一電流値に到達していない場合、前記当接離間機構が故障していると判定し、
前記第二モードにおける前記電圧調整処理において、
前記所定のタイミングに前記検知手段により検知された電流が前記第二電流値に到達していない場合、前記当接離間機構が故障していると判定することを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記調整手段により前記転写電圧が初期電圧に設定されているときに前記検知手段により検知された電流が所定の電流閾値を超えているかどうかに基づき、前記第二転写部材が当接状態にあるか、または離間状態にあるかを判定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記所定の電流閾値は、前記第二転写部材が実際に前記当接状態にあり、かつ、前記初期電圧が設定されている場合に前記検知手段により検知される電流と、前記第二転写部材が実際に前記離間状態にあり、かつ、前記初期電圧が設定されている場合に前記検知手段により検知される電流との間に設定されることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第一転写部材と前記第二転写部材とがともに前記当接状態にあるときに、前記第一像担持体と前記第二像担持体とから前記中間転写ベルトにトナー画像を転写する第一モードと、
前記第一転写部材が前記当接状態にあり、かつ、前記第二転写部材が前記離間状態にあるときに、前記第一像担持体から前記中間転写ベルトにトナー画像を転写する第二モードと、をさらに有し、
前記調整手段は、前記第一モードにおいて前記所定の電流値として第一電流値を採用し、前記第二モードにおいて前記所定の電流値として第二電流値を採用し、
前記第一電流値は前記第二電流値よりも多く、
前記判定手段は、
前記第一モードにおける前記電圧調整処理において、
前記調整手段により前記転写電圧が前記初期電圧に設定されているときに前記検知手段により検知された電流が第一電流閾値を超えている場合、前記第一転写部材および前記第二転写部材のすべてが前記当接状態にあると判定し、
前記調整手段により前記転写電圧が前記初期電圧に設定されているときに前記検知手段により検知された電流が前記第一電流閾値を超えていない場合、前記第二転写部材が前記離間状態にあると判定し、
前記第二モードにおける前記電圧調整処理において、
前記調整手段により前記転写電圧が前記初期電圧に設定されているときに前記検知手段により検知された電流が第二電流閾値を超えている場合、前記第一転写部材および前記第二転写部材のすべてが前記当接状態にあると判定し、
前記調整手段により前記転写電圧が前記初期電圧に設定されているときに前記検知手段により検知された電流が前記第二電流閾値を超えていない場合、前記第二転写部材が前記離間状態にあると判定することを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記判定手段は、
前記第一モードにおける前記電圧調整処理において、
前記調整手段により前記転写電圧が前記初期電圧に設定されているときに前記検知手段により検知された電流が前記第一電流閾値を超えていない場合、前記当接離間機構が故障していると判定し、
前記第二モードにおける前記電圧調整処理において、
前記調整手段により前記転写電圧が前記初期電圧に設定されているときに前記検知手段により検知された電流が第二電流閾値を超えている場合、前記当接離間機構が故障していると判定することを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記判定手段は、前記検知手段により検知された電流の単位時間当たりの変化量が所定の閾値を超えているかどうかに基づき、前記第二転写部材が前記当接状態にあるか、または前記離間状態にあるかを判定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記所定の閾値は、前記第二転写部材が実際に前記当接状態にあるときに前記検知手段により検知される電流の変化量と、前記第二転写部材が実際に前記離間状態にあるときに前記検知手段により検知される電流の変化量との間に設定されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第一転写部材と前記第二転写部材とがともに前記当接状態にあるときに、前記第一像担持体と前記第二像担持体とから前記中間転写ベルトにトナー画像を転写する第一モードと、
前記第一転写部材が前記当接状態にあり、かつ、前記第二転写部材が前記離間状態にあるときに、前記第一像担持体から前記中間転写ベルトにトナー画像を転写する第二モードと、をさらに有し、
前記調整手段は、前記第一モードにおいて前記所定の電流値として第一電流値を採用し、前記第二モードにおいて前記所定の電流値として第二電流値を採用し、
前記第一電流値は前記第二電流値よりも多く、
前記判定手段は、
前記第一モードにおける前記電圧調整処理において、
前記変化量が第一閾値を超えている場合、前記第一転写部材および前記第二転写部材のすべてが前記当接状態にあると判定し、
前記変化量が前記第一閾値を超えていない場合、前記第二転写部材が前記離間状態にあると判定し、
前記第二モードにおける前記電圧調整処理において、
前記変化量が第二の閾値を超えていない場合、前記第一転写部材および前記第二転写部材のすべてが前記当接状態にあると判定し、
前記変化量が前記第二の閾値を超えている場合、前記第二転写部材が前記離間状態にあると判定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記判定手段は、
前記第一モードにおける前記電圧調整処理において、
前記変化量が前記第一閾値を超えていない場合、前記当接離間機構が故障していると判定し、
前記第二モードにおける前記電圧調整処理において、
前記変化量が前記第二の閾値を超えていない場合、前記当接離間機構が故障していると判定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記判定手段が、前記第一モードにおける前記電圧調整処理において、前記第二転写部材が前記離間状態にあると判定すると、前記画像形成装置は画像形成動作を中断することを特徴とする請求項、1または1のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記判定手段が、前記第二モードにおける前記電圧調整処理において、前記第二転写部材が前記当接状態にあると判定すると、前記画像形成装置は画像形成動作を中断することを特徴とする請求項、1または1のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記判定手段が、前記第二モードにおける前記電圧調整処理において、前記第二転写部材が前記当接状態にあると判定すると、前記画像形成装置は画像形成動作を継続しつつ、前記当接離間機構が故障していることを報知することを特徴とする請求項、1または1のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記第一転写部材は黒のトナー画像を担当しており、
前記第二転写部材はイエローのトナー画像を担当する転写部材と、シアンのトナー画像を担当する転写部材と、マゼンタのトナー画像を担当する転写部材とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置における一次転写部材の当接離間を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、感光ドラムにトナー画像を形成し、一次転写部材によりトナー画像を中間転写体に転写し、さらにトナー画像をシートに転写する。前者は一次転写と呼ばれ、後者は二次転写と呼ばれる。フルカラー画像を形成する画像形成装置では、イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒のトナー画像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成する。フルカラー画像を形成する画像形成装置がモノクロ画像を形成する場合、黒画像を担当する感光ドラムと一次転写部材とが中間転写体を挟んで当接するが、他の三色については感光ドラムから一次転写部材が離間することがある。これは、他の三色については感光ドラム、中間転写体および一次転写部材の消耗を低減するためである。特許文献1によれば、感光ドラムと一次転写部材とが当接状態にあるのかそれとも離間状態にあるのかを判定するために、当接指示がなされたときの電流値と離間指示がなされたときの電流値とを比較することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-083758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術は、当接離間判定が開始されると、画像形成装置を当接状態に移行して電流を計測し、さらに、画像形成装置を離間状態に移行して電流を計測していた。そのため、長い判定時間が必要になっていた。とりわけ、印刷開始時に当接離間判定が実行されると、ユーザの待ち時間が長くなり、ユーザビリティが損なわれてしまう。そこで、本発明は、感光ドラムと一次転写部材について当接状態と離間状態との両方の状態を形成することなく、当接離間判定を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
第一色のトナー画像を担持する第一像担持体と、
第二色のトナー画像を担持する第二像担持体と、
前記第一像担持体と前記第二像担持体の少なくとも一方に担持されたトナー画像が転写される中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトの内周面に当接して前記中間転写ベルトの外周面を前記第一像担持体に当接させる当接状態において、前記第一像担持体から前記中間転写ベルトに向けて前記第一色のトナー画像を転写する第一転写部材と、
前記中間転写ベルトの内周面に当接して前記中間転写ベルトの外周面を前記第二像担持体に当接させる当接状態において、前記第二像担持体から前記中間転写ベルトに向けて前記第二色のトナー画像を転写する第二転写部材と、
前記第二転写部材を移動させることで前記中間転写ベルトの外周面を前記第二像担持体から離間させる離間状態と、前記第二転写部材を移動させることで前記中間転写ベルトの外周面を前記第二像担持体に当接させる前記当接状態とを切り替える当接離間機構と、
前記第一転写部材および前記第二転写部材に転写電圧を出力する転写電源と、
前記第一転写部材および前記第二転写部材に転写電圧が印加されているときに、前記第一転写部材および前記第二転写部材に流れる電流を検知することが可能な検知手段と、
前記検知手段により検知された前記電流が所定の電流値となるように前記転写電源から出力される電圧を調整する電圧調整処理を実行する調整手段であって、前記第一像担持体および前記第二像担持体の少なくとも一方から前記中間転写ベルトに向けてトナー画像を転写する前に前記電圧調整処理を実行する調整手段と、
前記調整手段が前記電圧調整処理を実行している期間における前記検知手段によって検知される電流の挙動に基づいて、前記第二転写部材が当接状態にあるか、または離間状態にあるかを判定する判定手段と、を有し、
前記検知手段は、前記第一転写部材に流れる電流と、前記第二転写部材に流れる電流とを合計した合計電流を検知するよう構成されていることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、感光ドラムと一次転写部材について当接状態と離間状態との両方の状態を形成することなく、当接離間判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】画像形成装置を示す図
図2】コントローラを説明するブロック図
図3】中間転写ユニットを説明する図
図4】当接状態と離間状態を説明する図
図5】カラー印刷における一次転写電流の経路を示す図
図6】黒印刷における一次転写電流の経路を示す図
図7】カラー印刷における当接離間検知を示すフローチャート
図8】黒印刷における当接離間検知を示すフローチャート
図9】検知電流と電圧設定値を説明する図
図10】カラー印刷における一次転写電流の経路を示す図
図11】黒印刷における一次転写電流の経路を示す図
図12】検知電流と電圧設定値を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態が詳しく説明される。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一または同様の構成に同一の参照番号が付され、重複した説明は省略される。
【0009】
<実施例1>
[画像形成装置]
図1が示すように、画像形成装置1は電子写真方式を利用したプリンタである。画像形成装置1は、複写機またはファクシミリ装置であってもよい。画像形成ステーション64a~64dはY(イエロー)、M(マゼンタ)、シアン(C)および黒(Bk)のトナーを用いてトナー画像を形成する。なお、参照符号の末尾に付与されているa,b,c,dはそれぞれY,M,C,Kに対応している。なお、四色に共通する事項が説明される場合、参照符号からa,b,c,dの文字が省略されることがある。
【0010】
画像形成ステーション64は、感光ドラム56、帯電ローラ57、現像器58、ドラムクリーナ61を備える。感光ドラム56は矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転する。帯電ローラ57は感光ドラム56の表面を一様に帯電させる。露光装置60は画像信号に応じて光を感光ドラム56に照射して静電潜像を形成する。現像器58は、現像剤としてトナーを用いて静電潜像を現像し、これによって感光ドラム56にトナー画像を形成する。一次転写部材59は、転写電圧を使用してトナー画像を転写搬送ベルト54に転写する(一次転写)。なお、感光ドラム56、転写搬送ベルト54および一次転写部材59が形成するニップ部は一次転写部と呼ばれる。一次転写電源200は転写電圧を生成して一次転写部材59に供給する。ドラムクリーナ61は感光ドラム56に残存したトナーを回収する。
【0011】
転写搬送ベルト54は無端状のベルトである。転写搬送ベルト54は、張架ローラ55a、55b、55cに張架されている。転写搬送ベルト54は、イエローのトナー画像、マゼンタのトナー画像、シアンのトナー画像および黒のトナー画像を順番に重畳的に転写される。これによりフルカラー画像が形成される。転写搬送ベルト54は中間転写ベルトまたは中間転写体と呼ばれることもある。転写搬送ベルト54は、矢印の方向に回転することで、トナー画像を二次転写ローラ63へ搬送する。二次転写ローラ63と転写搬送ベルト54とが形成するニップ部は二次転写部と呼ばれることもある。
【0012】
給紙ローラ51は、トナー画像が二次転写部に到着するタイミングとシートが二次転写部に到着するタイミングとが一致するようにシートPを二次転写部に搬送する。二次転写電源300は、転写電圧を二次転写ローラ63に印加する。二次転写ローラ63は、転写電圧を使用して、トナー画像を転写搬送ベルト54からシートPに転写する(二次転写)。ベルトクリーナ65は、転写搬送ベルト54に残存したトナーを清掃する。定着器62は、二次転写部を通過してきたシートPおよびトナー画像に熱と圧力を加えることで、トナー画像をシートP上に定着させる。
【0013】
[画像形成装置の制御]
図2は画像形成装置1を制御するエンジンコントローラ10を示している。エンジンコントローラ10はCPU150を有する。CPU150は、ROM151およびRAM152を接続しているか、または、内蔵する。CPU150は、ROM151に格納されている制御プログラムに応じて、露光制御部101、帯電制御部102、現像制御部103、一次転写制御部104、二次転写制御部105を制御する。ROM151は、環境テーブルおよび制御テーブルなども記憶している。環境センサ106は設置環境における温度および湿度を検知する。CPU150は検知結果に基づき環境テーブルを参照して制御データを取得する。RAM152は、制御データを一時的に保持したり、制御に伴う演算処理の作業領域として用いられたりする。帯電制御部102は、帯電電源400から帯電ローラ57に出力される帯電電圧を制御する。現像制御部103は、現像電源500から現像器58に出力される現像電圧を制御する。一次転写制御部104は、一次転写電源200を制御し、電流検知回路201が検知する電流値に基づいて一次転写電源200から一次転写部材59に出力される一次転写電圧を制御する。二次転写制御部105は、二次転写電源300を制御し、二次転写電源300から二次転写ローラ63に出力される二次転写電圧を制御する。
【0014】
ビデオコントローラ98は、外部機器97から受信された画像情報と印刷命令を変換して画像信号を生成し、エンジンコントローラ10に出力する。エンジンコントローラ10は画像信号を露光制御部101に出力する。
【0015】
タイマ153は様々な時間を計時する。カウンタ154は印刷枚数をカウントする。操作部160は、ユーザからの指示を受け付ける入力装置と、ユーザに対するメッセージを表示する表示装置とを有している。当接離間機構77は、モータまたはソレノイドなどのアクチュエータと、アクチュエータから供給される力を用いて一次転写部材59を上下動させるギヤやカムなどを有する。さらに、当接離間機構77は、一次転写部材59を感光ドラム56に向けて付勢するバネなどを有していてもよい。
【0016】
[中間転写ユニット]
図3は中間転写ユニット70を示している。画像形成装置1に関して、図1の右側は「正面(前)」と定義される。図1の左側は「背面(後)」と定義される。図1の紙面手前側は「左」と定義される。図1の紙面奥側は「右」と定義される。画像形成装置1に関して、図1の上側は「上」と定義される。図1の下側は「下」と定義される。
【0017】
中間転写ユニット70は、転写搬送ベルト54、張架ローラ55a、55b、55c、フレーム74、左側板75、右側板76、および当接離間機構77を有する。図3では転写搬送ベルト54の図示が省略されている。
【0018】
張架ローラ55a、55b、55cは、左側板75および右側板76に回転可能に支持されている。左側板75および右側板76は、フレーム74に取り付けられている。張架ローラ55aは、画像形成装置1に設けられた駆動源(例:モータ)によって駆動されて回転し、転写搬送ベルト54を回転させる。張架ローラ55cは、テンションバネにより、転写搬送ベルト54の内周面側から外周面側に向けて付勢されている。これにより、転写搬送ベルト54にテンション(ベルト張力)が付与される。張架ローラ55cはテンションローラと呼ばれてもよい。一次転写部材59a、59b、59c、59dは、転写搬送ベルト54の内周面側において、感光ドラム56a、56b、56c、56dに対応して配置されている。一次転写部材59a、59b、59c、59dは、当接離間機構77を介して、フレーム74により支持されている。当接離間機構77が一次転写部材59a、59b、59c、59dを上側に押し付けると、一次転写部材59a、59b、59c、59dが転写搬送ベルト54を介して感光ドラム56a、56b、56c、56dに向けて押圧する。これにより一次転写ニップが形成される。
【0019】
図1に示された二次転写ローラ63は、転写搬送ベルト54を介して張架ローラ55aと対向する位置に配置されている。二次転写ローラ63は、転写搬送ベルト54を張架ローラ55aに向けて押圧する。これにより、転写搬送ベルト54と二次転写ローラ63との間に二次転写ニップが形成される。
【0020】
当接離間機構77は、感光ドラム56a、56b、56cから転写搬送ベルト54を離間させるために下方に移動する。当接離間機構77は、一次転写部材59a、59b、59cを感光ドラム56a、56b、56cに当接させるために、上方に移動する。
【0021】
[一次転写ユニットの離間]
当接離間機構77が一次転写部材59を駆動することで、感光ドラム56a、56b、56c、56dと転写搬送ベルト54との関係が当接状態または離間状態に切り替えられる。図4(A)はカラー印刷における当接状態/離間状態を示す。図4(B)は黒印刷における当接状態/離間状態を示す。図4(A)が示すように、カラー印刷では、一次転写部材59a、59b、59c、59dは押圧力を転写搬送ベルト54の内周面に付与することで、ベルト張力に抗して転写搬送ベルト54を持ち上げる。一次転写部材59a、59b、59c、59dはそれぞれに対応する感光ドラム56a、56b、56c、56dの下面に近づくように移動する。これより、一次転写部材59a、59b、59c、59dは所定の押圧力で感光ドラム56a、56b、56c、56dの下面に押し当たる。これにより、一次転写部材59a、59b、59c、59dは、それぞれ感光ドラム56a、56b、56c、56dと転写搬送ベルト54との間に一次転写ニップを形成する。一次転写部材59a、59b、59c、59dと感光ドラム56a、56b、56c、56dとで転写搬送ベルト54が挟持され、感光ドラム56a、56b、56c、56dと転写搬送ベルト54とが接触する。つまり、一次転写部材59a、59b、59c、59dは、間接的に、感光ドラム56a、56b、56c、56dに当接する。
【0022】
図4(B)が示すように黒印刷では、一次転写部材59a、59b、59cが転写搬送ベルト54から離れる方向へ数mm程度移動する。これにより、一次転写部材59a、59b、59cは転写搬送ベルト54の内周面から離間する。
【0023】
[電流経路]
実施例1で、CPU150は、一次転写部材59に流れる転写電流に基づき、一次転写部(ニップ部)が当接状態にあるのか、または、離間状態にあるのかを判定する。
【0024】
(カラー印刷)
図5は、カラー印刷における感光ドラム56a、56b、56c、56dと、転写搬送ベルト54の配置、及び転写電流が流れる経路について説明する模式図である。このとき、当接離間機構77はカラー当接ポジションに位置している。画像形成に必要となる一次転写電圧は、一次転写電源200から一次転写部材59a、59b、59c、59dに対して、共通的に印加される。電流検知回路201は、四つの一次転写部に流れる一次転写電流を検知する。
【0025】
電流検知回路201は、一次転写電源200に接続されたオペアンプ204、抵抗202、203、205を有している。オペアンプ204の出力(一次転写電流の検知結果)はエンジンコントローラ10へフィードバックされる。抵抗202、203は電源電圧Vccを分圧して電圧Vtを生成する分圧回路を形成している。電圧Vtはオペアンプ204の正極入力に入力される。電圧Vtの電圧値は、オペアンプ204の定格を考慮し、数V程度に設定される。オペアンプ204は、抵抗205による負帰還回路を構成している。そのため、オペアンプ204の正極入力と負極入力の電位差は0Vである。すなわち、オペアンプ204の正極入力と負極入力は電圧Vtと同電位となる。
【0026】
一次転写電源200が一次転写電圧の出力を開始すると、一次転写電圧が一次転写部材59a、59b、59c、59dに印加されると共に、一次転写部には電流が流れる。一次転写電流Itr1aは、一次転写部材59aおよび感光ドラム56aを介してGNDに流れる。一次転写電流Itr1bは、一次転写部材59bおよび感光ドラム56ab介してGNDに流れる。一次転写電流Itr1cは、一次転写部材59cおよび感光ドラム56cを介してGNDに流れる。一次転写電流Itr1dは、一次転写部材59dおよび感光ドラム56dを介してGNDに流れる。各電流が流れる経路は矢印により示されている。合算電流Itr1は、一次転写電流Itr1a、Itr1b、Itr1c、Itr1dを合算して得られる電流である。合算電流Itr1はGNDからオペアンプ204へ流れる。さらに、合算電流Itr1は、オペアンプ204の出力端子から抵抗205を介して一次転写電源200に戻る。このような電流経路により、抵抗205の両端には、合算電流Itr1に相関した検知電圧Vtisnsが発生し、オペアンプ204の出力となる。
【0027】
Itr1 = (Vtisns- Vt) / R205× ・・・(1)
ここで、R205は抵抗205の抵抗値である。(1)式は、電圧Vtisnsの電圧値と、一次転写部材59a、59b、59c、59dに流れる電流Itr1とを対応付ける式である。(1)式はROM151に予め記憶されている。電圧Vtの電圧値と抵抗205の抵抗値は既知であり、係数である。CPU150は、ROM151から(1)式を読み出し、(1)式に電流検知回路201から出力された電圧Vtisnsを代入することで、合算電流Itr1を取得できる。合算電流Itr1は電流検知回路201の検知結果であり、トータルの一次転写電流と呼ばれてもよい。
【0028】
(黒印刷)
図6は黒印刷における感光ドラム56a、56b、56c、56dと転写搬送ベルト54の配置、及び転写電流が流れる経路について説明する模式図である。このとき当接離間機構77はカラー離間ポジションに位置している。一次転写部材59a、59b、59cは、転写搬送ベルト54から離れる方向へ移動しており、転写搬送ベルト54の内周面から離間している。黒を担当する一次転写部材59dは、感光ドラム56dと転写搬送ベルト54との間に一次転写ニップを形成する。
【0029】
一次転写電源200がオンすると、一次転写部材59a、59b、59c、59dに電圧が印加される。図6が示すように、転写搬送ベルト54と一次転写部材59dは当接しているため、一次転写部材59dにのみ電流Itr1dが流れる。一方、一次転写部材59a、59b、59cには電流が流れない。これは、転写搬送ベルト54と一次転写部材59a、59b、59cは、当接離間機構77によって離間しているからである。よって、合算電流Itr1は電流Itr1dに等しい。なお、電流Itr1dは、一次転写部材59dおよび感光ドラム56dを介してGNDに流れ込む。さらに、電流Itr1dは、GNDからオペアンプ204へ流れる。合算電流Itr1(電流Itr1d)は、オペアンプ204の出力端子から抵抗205を介して一次転写電源200に戻る。CPU150は、電流検知回路201から検知結果(検知電圧Vtisns)を取得する。CPU150は、(1)式に検知電圧Vtisnsを代入することで、一次転写部材59dに流れる電流Itr1dを取得する。
【0030】
[ATVC]
CPU150は、画像形成時に適切な一次転写電圧Vtr1を一次転写部材59に印加する。そのため、一次転写電圧Vtr1を調整する処理はATVCと呼ばれる。ATVCは自動転写電圧制御の略称である。
【0031】
(カラー印刷)
転写搬送ベルト54の材料として、たとえば、イオン導電性を有する熱可塑性樹脂が用いられることがある。イオン導電性の材料の抵抗値は、温度や湿度に依存して、大きく変動しやすい。実施例1では、一次転写部材59として、転写搬送ベルト54の内周面に接触してこれを摺擦する一次転写ブラシが採用されてもよい。転写搬送ベルト54の内周面に接触する一次転写ブラシの先端部には、一次転写ブラシと転写搬送ベルト54の内周面との間の摺擦により発生する付着物(転写搬送ベルト54の摩耗粉など)が付着する。そのため、印刷されたシートの枚数(印刷が実行された回数)の増加に伴って、一次転写ブラシの抵抗値も増加する。
【0032】
画像形成装置1は、ATVCを実行することで、一次転写部材59に環境変動や耐久変動が生じた場合でも適切な一次転写電圧を決定する。ATVCは画像形成を行う前に実行される。CPU150は、転写搬送ベルト54の抵抗値や一次転写部材59a、59b、59c、59dの抵抗値に関する情報を取得する。具体的には、CPU150は、一次転写電源200を制御して一次転写部材59a、59b、59c、59dに試験電圧を印加することで、これらの抵抗値を取得する。CPU150は、抵抗値の検知結果に基づいて、画像形成において使用されるべき適切な一次転写電流(目標電流)を決定する。
【0033】
ROM151は環境条件(温度および湿度)と印刷枚数との組み合わせに対応した合計電流Itr1の目標値を保持する制御テーブルを記憶している。印刷枚数は、中間転写ユニット70の新品時をゼロ枚とした印刷枚数である。CPU150は、カウンタ154を用いて印刷枚数を計数してもよい。合計電流Itr1は、一次転写部材59a、59b、59c、59dに流れる総電流である。CPU150は、ATVCにおいて、環境センサ106の検知結果およびカウンタ154のカウント値に応じた総電流の目標値を制御テーブルから決定する。CPU150は、ATVCにおいて、電流検知回路201によって検知される電流が目標値に近づくように一次転写電源200の出力電圧値を調整(定電流制御)する。CPU150は、一次転写電源200の電圧設定値を設定することで、一次転写電源200の出力電圧を制御する。電圧設定値と出力電圧は相関している。よって、CPU150は、電圧設定値から、一次転写電源200の出力電圧値(一定期間の出力値の平均値などであってよい)を求めることができる。あるいは、CPU150はADコンバータを有している。そのため、CPU150は、一次転写電源200の出力電圧の分圧値をADコンバータによりA/D変換して取得してもよい。CPU150は、取得された出力電圧値を、画像形成時の一次転写電圧の電圧値(目標値)として決定し、RAM152に保持する。CPU150は、画像形成時に、一次転写電圧として目標値を設定して、定電圧制御を実行する。
【0034】
実施例1で、CPU150は、非画像形成時(画像形成の準備工程(前回転工程))でATVCを実行する。画像形成装置1に画像形成の開始指示が入力されると、前回転工程が実行される。前回転工程では、感光ドラム56a~56dや転写搬送ベルト54などの駆動が開始される。ATVCは、前回転工程において、つまり、転写搬送ベルト54へのトナー画像の一次転写が行われるまでの期間において、実行される。ただし、ATVCは、前回転工程とは異なる非画像形成時であれば、実行可能である。このように、実施例1では、CPU150が、電流検知回路201の検知結果に基づき、画像形成時に一次転写電源200により一次転写部材59a~59dに供給される電圧値を決定する。
【0035】
(黒印刷)
黒印刷でもカラー印刷と同様にATVCが実行される。黒印刷の場合、転写搬送ベルト54と一次転写部材59a、59b、59cは離間しているため、電流Itr1a、Itr1b、Itr1cが流れず、電流Itr1dのみが流れる。CPU150は、定電流制御を行う際の総電流の目標値として、カラー印刷の目標値の4分の1を設定する。あるいは、黒印刷における定電流制御を行う際に使用される総電流の目標値は、黒の印刷履歴に含まれる過去の目標値に基づいて決定されてもよい。
【0036】
[転写搬送ベルトの当接離間検知方法]
(カラー印刷)
図7はカラー印刷においてCPU150が実行する当接状態/離間状態の検知方法を示す。CPU150は、カラー印刷の実行要求を受信すると、ROM151に記憶されている制御プログラムを起動することでATVCを開始する。S10で、CPU150は、タイマ153をスタートさせる。タイマ153は、ATVCを開始したタイミングを起点とした経過時間を計時する。
【0037】
S11で、CPU150は、目標電流Itcを一次転写制御部104に設定する。たとえば、CPU150は、環境センサ106の検知結果およびカウンタ154のカウント値の組み合わせに対応した目標電流Itcを制御テーブルから取得する。
【0038】
S12で、CPU150は、一次転写電圧についての初期の電圧設定値を一次転写制御部104に設定する。これにより、一次転写制御部104は一次転写電源200を制御して、電圧設定値に対応した一次転写電圧の出力を開始する。初期の電圧設定値とは画像形成装置1へ電源が投入された時または前回の印刷時に実行されたATVCにおいて決定された電圧設定値である。初期の電圧設定値は初期値と呼ばれてもよい。CPU150は、環境センサ106の検知結果およびカウンタ154のカウント値の組み合わせに対応する電圧設定値を初期値として決定してもよい。ROM151は、環境条件およびカウント値に対応した電圧設定値を保持する制御テーブルを記憶していてもよい。制御テーブルに代えて、環境条件とカウント値を入力とし、電圧設定値を出力とする関数(数式)が採用されてもよい。
【0039】
S13で、CPU150は、初期値で立ち上げられた一次転写電圧が安定するのを待つ。S14で、CPU150は、一次転写電流の検知結果であるItr1が目標電流Itcに到達しているかどうかを判定する。Itr1は合計電流であるが、以下では、検知電流と呼ばれる。判定方法の詳細は後述される。検知電流Itr1が目標電流Itcに到達していない場合、CPU150は、処理をS15に進める。
【0040】
S15で、CPU150はタイマ153のタイマ値が判定時間αを超えているかどうかを判定する。判定時間αの詳細は後述される。タイマ値が判定時間αを超えていない場合、CPU150は処理をS16に進める。S16でCPU150は、検知電流Itr1が目標電流Itcに近付くように、一次転写電圧の電圧設定値を更新する。CPU150は処理を再びS14に進める。実施例1では、検知電流Itr1が目標電流Itcに到達していない場合、所定の固定値を上限として、電圧設定値が増加される。あるいは、電圧設定値の更新にPID制御などが採用されてもよい。S14で検知電流Itr1が目標電流Itcに到達している場合、CPU150は、処理をS17に進める。S17でCPU150は一次転写部材59a、59b、59c、5dが転写搬送ベルト54に当接していると判定する。
【0041】
S15でタイマ値が判定時間αを超えた場合、CPU150は、処理をS18に進める。S18で、CPU150は、一次転写部材59a、59b、59cが転写搬送ベルト54から離間している、または当接離間機構77が故障していると判定する。
【0042】
以上で説明されように、CPU150は、カラー印刷のためのATVCを用いて転写搬送ベルト54の当接状態/離間状態を検知できる。S18で一次転写部材59a、59b、59cが転写搬送ベルト54から離間している、または当接離間機構77が故障していると判定される場合がある。この場合、画像形成を継続するとカラー印刷がユーザにより指示されたにもかかわらず、黒のみがシートに印刷されてしまう。そのため、CPU150は、画像形成動作を中断し、ユーザに故障を報知するためのメッセージを操作部160に表示してもよい。
【0043】
図9(A)は一次転写電流の検知結果であるItr1および一次転写電圧の電圧設定値を説明するグラフである。縦軸は、検知電流と電圧設定値を示す。横軸は時間を示す。実線は、一次転写部材59a、59b、59c、59dのすべてが当接状態にあるときの値を示している。破線は、一次転写部材59a、59b、59cが離間状態にあるときの値を示している。
【0044】
当接状態では、前回のATVCで決定された初期の電圧設定値にしたがった一次転写電圧が一次転写部材59に印加される。そのため、検知電流Itr1は、すぐに目標電流Itcに到達する。ここで、CPU150は、検知電流Itr1が所定範囲に入っている場合に、検知電流Itr1が目標電流Itcに到達したと判定する。所定範囲は、たとえば、定電流制御が実行されているときの検知電流Itr1の振れ幅から決定される。たとえば、当接状態における目標電流が40μAであったと仮定される。この場合、検知電流Itr1の検知精度は40μA±8μAである。そこで、定電流制御が実行されたとき、検知電流Itr1は40μA±2μAの振れ幅に収まるように、制御ゲインやループ応答が決定される。振れ幅にマージンが付与された場合、所定範囲は40μA±4μAと決定される。よって、図9(A)が示すように、所定範囲の上限値Itcaは40μA+4μA、であり、下限値Itcbは40μA-4μAである。
【0045】
一方、離間状態では一次転写電圧が初期の電圧設定値で立ち上げられた時点での一次転写電流は、当接状態の一次転写電流の4分の1に過ぎない。一次転写電源200から見た負荷抵抗に着目すると、これは、当接状態の負荷抵抗に対して離間状態の負荷抵抗が4倍になるからである。このように、離間状態では目標電流Itcと検知電流に大きな乖離があるため、検知電流が目標電流Itcに到達するまでに長い時間が必要となる。図9(A)では時刻Tc2で検知電流が目標電流Itcに到達する。判定時間αは時刻Tc1と時刻Tc2との間になるように設定される。時刻Tc1は、当接状態において検知電流が目標電流Itcに到達した時刻である。なお、判定時間αはROM151に格納されている。判定時間αは、環境変動や耐久変動に依存した一次転写部の抵抗値の変動が考慮されて動的に決定されてもよい。通常、カラー印刷は、検知電流が目標電流に到達し、かつ、検知電流が十分に安定してから、実行される。そこで、判定時間αは時刻Tc1と画像形成が開始される時刻Tcpとの間に設定されてもよい。あるいは、判定時間αは時刻Tcpに一致してもよい。これらの場合、印刷開始までに必要となる時間を増大させることなく、転写搬送ベルト54の当接状態/離間状態が判定可能となる。
【0046】
(黒印刷)
図8は黒印刷における当接状態/離間状態の検知方法を示している。黒印刷が指示されると、CPU150は、当接離間機構77を制御して、一次転写部材59a、59b、59を離間状態に設定する。黒印刷が完了すると、CPU150は、当接離間機構77を制御して、一次転写部材59a、59b、59を当接状態に設定する。このように、一次転写部材59a、59b、59はデフォルトで当接状態に維持される。
【0047】
S20でCPU150は、当接離間機構77を制御して、一次転写部を当接状態から離間状態に変更する。S21でCPU150はタイマ153をスタートさせる。S22でCPU150は目標電流Itmを一次転写制御部104に設定する。目標電流Itmは目標電流Itcの4分の1である。S23でCPU150は一次転写制御部104に、一次転写電圧の設定値として初期の電圧設定値を設定する。初期の電圧設定値は、電源投入時または前回の印刷時に実行されたATVCにより決定された設定値である。一次転写制御部104は一次転写電源200を制御して初期の電圧設定値に対応する一次転写電圧の出力を開始する。S24でCPU150は一次転写電圧が安定するまで待つ。
【0048】
S25でCPU150は一次転写電流の検知結果である検知電流Itr1が目標電流Itmに到達しているかどうかを判定する。検知電流Itr1が目標電流Itmに到達したかどうかを判定する方法は図9(B)を用いて後述される。検知電流Itr1が目標電流Itmに到達していない場合、CPU150は処理をS26に進める。S26でCPU150はタイマ153のタイマ値が判定時間βを超えているかどうかを判定する。判定時間βの詳細については図9(B)を用いて後述される。タイマ値が判定時間βを超えていない場合、CPU150は処理をS27に進める。S27でCPU150は、検知電流Itr1が目標電流Itに近付くように、一次転写電圧の設定値を更新する。その後、CPU150は処理を再びS25に進める。検知電流Itr1が目標電流Itmに到達していない場合、所定の固定値を上限として、電圧設定値が更新される。
【0049】
S25で検知電流Itr1が目標電流Itmに到達している場合、CPU150は処理をS28に進める。S28でCPU150は一次転写部材59a、59b、59cが転写搬送ベルト54から離間していると判定する。S26でタイマ値が判定時間βを超えている場合、CPU150は処理をS29に進める。S29でCPU150は一次転写部材59a、59b、59c、59dが転写搬送ベルト54に当接している、または当接離間機構77が故障していると判定する。
【0050】
以上で説明されたように、黒印刷におけるATVCを用いることで転写搬送ベルト54の当接状態/離間状態を検知可能となる。S29で一次転写部材59a、59b、59cが転写搬送ベルト54に当接している、または当接離間機構77が故障していると判定されることがある。この場合、CPU150は、画像形成動作を中断し、ユーザに故障を報知してもよい。あるいは、CPU150が、画像形成動作を中断せず、当接状態を維持したまま黒印刷を実行してもよい。黒印刷が継続されるが、CPU150はユーザに故障を報知してもよい。
【0051】
図9(B)は一次転写電流の検知結果であるItr1および一次転写電圧の電圧設定値を説明するグラフである。縦軸は、検知電流と電圧設定値を示す。横軸は時間を示す。実線は、一次転写部材59a、59b、59c、59dのすべてが当接状態にあるときの値を示している。破線は、一次転写部材59a、59b、59cが離間状態にあるときの値を示している。
【0052】
黒印刷では、当接状態から離間状態へのポジション変更が実行される。さらに、目標電流Itmは目標電流Itcの4分の1に設定される。一次転写部材59a、59b、59cが離間状態にある場合の負荷抵抗値は、当接状態にある場合の負荷抵抗値の4倍である。そのため、離間状態では、検知電流Itr1は、時刻Tm1ですぐに目標電流Itmに到達する。ここで、検知電流Itr1が目標電流Itmに到達したと判定される所定範囲(閾値範囲)は、定電流制御が実行されているときの検知電流Itr1の振れ幅から決定される。たとえば、目標電流Itmが10μAであったとき、検知電流Itr1の精度は10μA±2μAである。定電流制御では、検知電流Itr1が10μA±0.5μAの振れ幅に収まるように、制御ゲインやループ応答が決定される。振れ幅にマージンを付与することで、所定範囲は10μA±1μAとなる。図9(B)が示すように所定範囲の上限値Itmaは10μA+1μAであり、下限値Itmbは10μA-1μAである。
【0053】
一方、当接状態では、一次転写電圧が初期の電圧設定値で立ち上げられた時点で、離間状態と比べて4倍程度の過大な電流が流れてしまう。これは、一次転写電源200から見た負荷抵抗値が、離間状態の負荷抵抗値の4分の1になるからである。
【0054】
このように、当接状態では目標電流Itmと検知電流Itr1との間に大きな乖離が存在する。そのため、検知電流Itr1が目標電流Itmに到達するまでに長い時間が必要となる。最終的に時刻Tm2で検知電流Itr1が目標電流Itmに到達する。判定時間βは時刻Tm1と時刻Tm2との間になるように設定される必要がある。判定時間βはROM151に格納されている。CPU150は、環境変動や耐久変動による一次転写部の抵抗値の変動を考慮して判定時間βを決定してもよい。黒印刷は、離間状態で検知電流Itr1が目標電流Itmに到達し、検知電流Itr1が十分に安定した後に、実行される。判定時間βが時刻Tm1と時刻Tmpとの間、または判定時間βがTmpに設定されてもよい。この場合、印刷開始までに必要となる待ち時間を増大することなく、当接状態/離間状態が判定可能となる。
【0055】
実施例1では、ATVCと並行して当接状態/離間状態が判定される。とりわけ、一次転写電流が目標電流に到達するのに要する時間に基づき、当接状態/離間状態が精度よく判定される。ATVCと並行して当接状態/離間状態が判定されるため、印刷開始までに必要となる待ち時間が増大しにくくなる。
【0056】
実施例1では、カラー印刷(フルカラーモード)と黒印刷(モノクロモード)における当接状態/離間状態の判定方法が例示された。しかし、本発明は、イエローとマゼンタが使用される2色モードや、マゼンタとシアンが使用される2色モード、イエローとマゼンタとシアンが使用される3色モードなどに適用される。なぜなら、当接離間機構77は、一次転写部材59a、59b、59c、59dを独立して移動させることができるからである。このような三つ以上の印刷モードを有する画像形成装置でも本発明は適用可能である。すなわち、判定時間が経過したときタイミングで検知電流が目標電流に到達しているか否かを判定することで、当接状態/離間状態が判定可能となる。
【0057】
実施例1では、単一の一次転写電源200が四つの一次転写部59に共通した一次転写電圧Vtr1を供給している。しかし、四つの一次転写部59のそれぞれに、独立した四つの一次転写電源200が設けられてもよい。
【0058】
実施例1では、判定時間が経過したタイミングで検知電流が目標電流に到達しているか否かが着目されている。しかし、CPU150は、一次転写電流の単位時間当たりの変化量(傾き)と閾値とを比較してもよい。カラー印刷では、CPU150はATVCの開始から時刻Tc1までの期間における一次転写電流の傾きを取得する。黒印刷では、CPU150はATVCの開始から時刻Tm1までの期間における一次転写電流の傾きを取得する。CPU150は傾きθの絶対値と傾き閾値γを比較する。傾き閾値γは当接状態におおける傾きと、離間状態における傾きの間の値(例:平均値)となるように設定される。CPU150は環境変動や耐久変動に依存した一次転写部の抵抗値の変動を考慮して閾値γを決定してもよい。
【0059】
<実施例2>
実施例1では検知電流が目標電流に到達するのに必要となる時間に基づき当接状態/離間状態が判定されている。実施例2では、あるタイミングにおける検知電流が閾値を超えているかどうかに基づき当接状態/離間状態が判定される。
【0060】
[当接状態/離間状態の検知方法]
(カラー印刷)
図10はカラー印刷における当接状態/離間状態の検知方法を示している。なお、実施例2において実施例1と共通する事項には同一の参照符号が付与されており、その説明は省略される。
【0061】
図10が示すように、CPU150は、S10ないしS13を実行し、S30に進む。S30でCPU150は一次転写電流の検知結果(検知電流Itr1)が電流閾値γよりも大きいかどうかを判定する。電流閾値γの詳細については図12(A)を用いて後述される。検知電流Itr1が電流閾値γよりも大きい場合、CPU150は処理をS17に進める。つまり、CPU150は一次転写部材59a、59b、59c、59dが転写搬送ベルト54に当接していると判定する。一方、S30で検知電流Itr1が電流閾値γよりも大きくない場合、CPU150は処理をS18に進める。つまり、CPU150は、一次転写部材59a、59b、59cが転写搬送ベルト54から離間している、あるいは当接離間機構77が故障していると判定する。このように実施例2では検知電流Itr1と電流閾値γとを比較することで、当接状態と離間状態とが検知可能となる。
【0062】
図12(A)は検知電流と電圧設定値を示している。縦軸は検知電流または電圧設定値を示す。横軸は時間示す。実線は当接状態における検知電流と電圧設定値の変化を示す。破線は離間状態における検知電流と電圧設定値の変化を示す。図12(A)が示す検知電流と電圧設定値の変化は、図9(A)が示す検知電流と電圧設定値の変化と同じである。
【0063】
実施例2ではATVCにおける電圧設定値の初期値にしたがった一次転写電圧が開始された後に取得された検知電流と電流閾値とが比較される。この例では、時刻Tc0で検知電流Itr1が取得されている。つまり、時刻Tc0において、電圧設定値の初期値にしたがった一次転写電圧が安定する。初期値に対応した一次転写電圧が印加された後に取得された検知電流に基づき当接状態/離間状態を精度よく判定するためには、目標電流Itcに対して精度良く初期値が決定されている必要がある。負荷抵抗値は環境条件や耐久条件に依存して大きく変動する。そのため、同一の初期値が設定されたとしても、検知電流が一定にならないことがある。実施例2は、一度、ATVCが実行された条件で、再度、ATVCが実行される場合に、検知電流に基づき精度よく当接状態と離間状態とを判定可能となろう。つまり、同一の温度および湿度で、同一の感光ドラムが継続的に使用される場合、実施例2は有効であろう。
【0064】
一方、離間状態での負荷抵抗値は当接状態での負荷抵抗値の4倍になる。つまり、離間状態での検知電流は当接状態での検知電流の4分の1になる。電流閾値γは、当接状態において初期値に対応した一次転写電圧が印加された後の一次転写電流と、離間状態において初期値に対応した一次転写電圧が印加された後の一次転写電流との間の値に設定される。電流閾値γはROM151に格納される。電流閾値γは、環境変動や耐久変動に起因した一次転写部の抵抗値の変動が考慮されて決定されてもよい。CPU150は、検知電流が電流閾値γよりも大きい場合、一次転写部が当接状態にあると判定する。CPU150は、検知電流が電流閾値γよりも大きくない場合、一次転写部が離間状態にあるか、または、当接離間機構77が故障していると判定する。
【0065】
実施例2では、CPU150は、実施例1の判定時間αを待たずに、当接状態/離間状態を判定できる。CPU150は、ATVCと並行して定着器62のヒータの立上げや、モータの起動を行う場合がある。CPU150は、一次転写部が離間状態にあるか、または当接離間機構77が故障している判定した場合、画像形成動作をより早く停止させることができる。これにより、消費電力が削減されよう。
【0066】
(黒印刷)
図11は黒印刷における当接状態/離間状態の検知方法を示している。なお、実施例2において実施例1と共通する事項には同一の参照符号が付与されており、その説明は省略される。
【0067】
図11が示すように、CPU150は、S20ないしS24を実行し、S40に進む。S40でCPU150は、初期の電圧設定値に対応した検知電流Itr1が電流閾値δよりも大きいかどうかを判定する。電流閾値δの詳細は図12(B)を用いて後述される。検知電流が電流閾値δよりも小さい場合、CPU150は、処理をS28に進める。S28でCPU150は、一次転写部材59a、59b、59cが転写搬送ベルト54から離間していると判定する。S40で検知電流Itr1が電流閾値δよりも小さくない場合、CPU150は、処理をS29に進める。S29でCPU150は一次転写部材59a、59b、59c、59dが転写搬送ベルト54に当接している、または当接離間機構77が故障していると判定する。このように、黒印刷におけるATVCが用いられて当接状態/離間状態が検知可能となる。
【0068】
図12(B)は検知電流と電圧設定値を示している。縦軸は検知電流または電圧設定値を示す。横軸は時間示す。実線は当接状態における検知電流と電圧設定値の変化を示す。線は離間状態における検知電流と電圧設定値の変化を示す。図12(B)が示す検知電流と電圧設定値の変化は、図9(B)が示す検知電流と電圧設定値の変化と同じである。
【0069】
実施例2では、ATVCにおける初期の電圧設定値に対応した一次転写電圧が印加されているときに取得された検知電流と電流閾値とが比較される。そして、比較結果に基づき一次転写部の当接状態/離間状態が判定される。なお、図12(B)では時刻Tm0で検知電流Itr1が取得されている。つまり、時刻Tm0において、電圧設定値の初期値にしたがった一次転写電圧が安定する。
【0070】
実施例2のカラー印刷で説明されたように、前回のATVCにおいて決定された初期の電圧設定値が採用されている。一度、ATVCを実行した条件で、再度、ATVCを実行される場合、実施例2は精度よく当接状態/離間状態を区別できる。当接状態の負荷抵抗値は離間状態の負荷抵抗値の4分の1になる。当接状態の一次転写電流は離間状態の一次転写電流の4倍になる。電流閾値δは当接状態の一次転写電流と、離間状態の一次転写電流との間の値となるように設定される。電流閾値δはROM151に格納されている。電流閾値δは、環境変動や耐久変動に起因した一次転写部の負荷抵抗値の変動を考慮して、決定されてもよい。
【0071】
実施例2は、実施例1で説明された判定時間βを待たずに、当接状態/離間状態を判定できる。そのため、CPU150は、一次転写部が当接状態にあるか、または当接離間機構77が故障していると判定した場合、画像形成動作をより早く停止できる。これにより消費電力が削減されよう。
【0072】
<実施例から導き出される技術思想>
[観点1]
感光ドラム56dは、第一色(例:黒)のトナー画像を担持する第一像担持体の一例である。感光ドラム56a、56b、56cは、第二色(例:イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー画像を担持する第二像担持体の一例である。転写搬送ベルト54は中間転写ベルトの一例である。一次転写部材59dは、中間転写ベルトの内周面に当接して中間転写ベルトの外周面を第一像担持体に当接させる当接状態で、第一像担持体から中間転写ベルトに向けて第一色のトナー画像を転写する第一転写部材として機能する。一次転写部材59a、59b、59cは中間転写ベルトの内周面に当接して中間転写ベルトの外周面を第二像担持体に当接させる当接状態で、第二像担持体から中間転写ベルトに向けて第二色のトナー画像を転写する第二転写部材として機能する。当接離間機構77は、第二転写部材を移動させることで中間転写ベルトの外周面を第二像担持体から離間させる離間状態と、第二転写部材を移動させることで中間転写ベルトの外周面を第二像担持体に当接させる当接状態とを切り替える。一次転写電源200は、第一転写部材および第二転写部材に転写電圧を出力する転写電源の一例である。電流検知回路201は、第一転写部材および第二転写部材に転写電圧が印加されているときに、第一転写部材および第二転写部材に流れる電流を検知することが可能な検知手段として機能する。CPU150および一次転写制御部104は、検知手段により検知された電流が所定の電流値(例:目標電流)となるように転写電圧を調整する電圧調整処理(例:ATVC)を実行する調整手段の一例である。第一像担持体および第二像担持体の少なくとも一方から中間転写ベルトに向けてトナー画像が転写される前に、CPU150および一次転写制御部104は電圧調整処理を実行する。CPU150は、調整手段が電圧調整処理を実行している期間において検知される電流の挙動に基づき、第二転写部材が当接状態にあるか、または離間状態にあるかを判定する判定手段として機能する。ここでは、第二転写部材が当接状態にあるときに特有の挙動であるか、または、第二転写部材が離間状態にあるときに特有の挙動であるかが判定される。これにより、感光ドラムと一次転写部材について当接状態と離間状態との両方の状態を形成することなく、当接離間判定が可能となる。
【0073】
[観点2]
電流検知回路201は、第一転写部材に流れる電流と、第二転写部材に流れる電流とを合計した合計電流(例:Itr1)を検知するよう構成されてもよい。これにより、電流検知回路201の数を削減することが可能となる。
【0074】
[観点3]
CPU150は、所定のタイミングで検知手段により検知された電流が目標電流に到達しているかどうかに基づき、第二転写部材が第二像担持体に対して当接状態にあるか、または離間状態にあるかを判定してもよい。所定のタイミングは、たとえば、判定時間α、βであってもよい。
【0075】
[観点4]
所定のタイミングは、第二転写部材が実際に当接状態にある場合に検知される電流が目標電流に到達するタイミングと、第二転写部材が実際に離間状態にある場合に検知される電流が目標電流に到達するタイミングとの間に設定されてもよい。
【0076】
[観点5]
カラー印刷モードは、第一転写部材と第二転写部材とがともに当接状態にあるときに、第一像担持体と第二像担持体とから中間転写ベルトにトナー画像を転写する第一モードの一例である。上述された二色のトナーが使用される印刷モードおよび三色のトナーが使用される印刷モードも第一モードの一例である。黒印刷モードは、第一転写部材が当接状態にあり、かつ、第二転写部材が離間状態にあるときに、第一像担持体から中間転写ベルトにトナー画像を転写する第二モードの一例である。一次転写制御部104は、第一モードにおいて目標電流として第一目標電流(例:Itc)を採用し、第二モードにおいて目標電流として第二目標電流(例:Itm)を採用する。第一目標電流(第一電流値)は第二目標電流(第二電流値)よりも多い。第一モードにおける電圧調整処理で、所定のタイミングに検知された電流が第一目標電流に到達している場合がある。この場合、CPU150は、第一転写部材および第二転写部材のすべてが当接状態にあると判定する。一方で、所定のタイミングに検知された電流が第一目標電流に到達していない場合がある。この場合、CPU150は、第二転写部材が離間状態にあると判定する。
【0077】
第二モードにおける電圧調整処理で、所定のタイミングに検知された電流が第二目標電流に到達している場合がある。この場合、CPU150は、第二転写部材が離間状態にあると判定する。一方、所定のタイミングに検知された電流が第二目標電流に到達していない場合がある。この場合、CPU150は、第一転写部材および第二転写部材のすべてが当接状態にあると判定する。
【0078】
[観点6]
第一モードの電圧調整処理における所定のタイミングに検知された電流が第一目標電流に到達していない場合、CPU150は、当接離間機構が故障していると判定してもよい。第二モードの電圧調整処理における所定のタイミングに検知された電流が第二目標電流に到達していない場合、CPU150は、当接離間機構が故障していると判定してもよい。これにより、早期のメンテナンスおよび修理が実行されるようになろう。
【0079】
[観点7]
実施例2で説明されたように、CPU150は、一次転写制御部104により転写電圧が初期電圧に設定されているときに検知された電流が所定の電流閾値を超えているかどうかを判定してもよい。CPU150は、この判定結果に基づき、第二転写部材が第二像担持体に対して当接状態にあるか、または離間状態にあるかを判定してもよい。
【0080】
[観点8]
所定の電流閾値は二つの電流の間(例:平均値)となるように設定される。一つの電流は、たとえば、第二転写部材が実際に当接状態にあり、かつ、初期電圧が設定されている場合に検知される電流である。もう一つの電流は、たとえば、第二転写部材が実際に離間状態にあり、かつ、初期電圧が設定されている場合に検知される電流である。これらの二つの電流は、正常な当接状態と正常な離間状態で検知される電流である。そのため、これらの電流を考慮して電流閾値を決定することでで、精度のよい当接離間判定が実現されよう。
【0081】
[観点9]
第一モードの電圧調整処理において転写電圧が初期電圧に設定されている第一期間が存在する。第一期間に検知された電流が第一電流閾値を超えている場合、第一転写部材および第二転写部材のすべてが当接状態にあると判定されてもよい。この電流が第一電流閾値を超えていない場合、第二転写部材が離間状態にあると判定されてもよい。
【0082】
第二モードの電圧調整処理において転写電圧が初期電圧に設定されている第二期間が存在する。第二期間に検知された電流が第二電流閾値を超えている場合、第一転写部材および第二転写部材のすべてが当接状態にあると判定されてもよい。この電流が第二電流閾値を超えていない場合、第二転写部材が離間状態にあると判定されてもよい。
【0083】
[観点10]
第一期間に検知された電流が第一電流閾値を超えていない場合、当接離間機構が故障していると判定されてもよい。第二期間に検知された電流が第二電流閾値を超えている場合、当接離間機構が故障していると判定されてもよい。
【0084】
[観点11]
CPU150は、検知された電流の単位時間当たりの変化量が所定の閾値を超えているかどうかに基づき、当接状態と離間状態とを判定してもよい。位時間当たりの変化量は、電流の傾きと理解されてもよい。CPU150は、変化量を求めるために、電流について少なくも二つのサンプリング値を取得して、変化量を求めてもよい。
【0085】
[観点12]
所定の閾値は、第二転写部材が実際に当接状態にあるときに検知される電流の変化量と、第二転写部材が実際に離間状態にあるときに検知される電流の変化量との間に設定される。これにより、精度よく、当接状態と離間状態とが区別されるようになろう。
【0086】
[観点13]
第一モードの電圧調整処理において変化量が第一閾値を超えている場合がある。この場合、CPU150は、第一転写部材および第二転写部材のすべてが当接状態にあると判定する。変化量が第一閾値を超えていない場合、CPU150は、第二転写部材が離間状態にあると判定する。なお、図9(A)から、第一閾値は正の値に設定されうる。
【0087】
第二モードにおける電圧調整処理において変化量が第二の閾値を超えていない場合がある。この場合、CPU150は、第一転写部材および第二転写部材のすべてが当接状態にあると判定する。変化量が第二の閾値を超えている場合、CPU150は、第二転写部材が離間状態にあると判定する。なお、図9(B)から、第二閾値はゼロに設定されうる。これは、当接状態では電流の傾きが負の値となり、離間状態では電流の傾きが正の値となるからである。
【0088】
[観点14]
第一モードの電圧調整処理において変化量が第一閾値を超えていない場合、CPU150は、当接離間機構が故障していると判定してもよい。第二モードの電圧調整処理において変化量が第二の閾値を超えていない場合がある。この場合、CPU150は、当接離間機構が故障していると判定してもよい。
【0089】
[観点15]
第一モードの電圧調整処理において第二転写部材が離間状態にある場合、CPU150は画像形成動作を中断してもよい。このケースではユーザはカラー印刷物を期待しているが、実際には黒色の画像だけがシートに印刷されてしまうからである。
【0090】
[観点16]
第二モードにおける電圧調整処理において第二転写部材が当接状態にある場合、CPU150は画像形成動作を中断してもよい。これにより、第二転写部材の摩耗等が抑制される。
【0091】
[観点17]
第二モードにおける電圧調整処理において第二転写部材が当接状態にある場合、CPU150は、画像形成動作を継続しつつ、当接離間機構が故障していることを報知してもよい。このケースではユーザは黒色印刷物を取得できるため、シートが無駄になることはない。一方で、故障を報知することで、早期に、当接離間機構がメンテナンスまたは修理されるようになろう。
【0092】
[観点18]
第一転写部材は黒のトナー画像を担当していてもよい。第二転写部材はイエローのトナー画像を担当する転写部材と、シアンのトナー画像を担当する転写部材と、マゼンタのトナー画像を担当する転写部材とを含んでもよい。
【0093】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神および範囲から離脱することなく、様々な変更および変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項が添付される。
【符号の説明】
【0094】
10‥‥コントローラ
54‥‥転写搬送ベルト
56‥‥感光ドラム
59‥‥一次転写部材
200‥‥一次転写電源
201‥‥電流検知回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12