(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】基板処理液、基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20240306BHJP
C23F 1/26 20060101ALI20240306BHJP
C23F 1/38 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01L21/308 F
C23F1/26
C23F1/38
(21)【出願番号】P 2020041546
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】上田 大
(72)【発明者】
【氏名】塙 洋祐
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0250339(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0148645(US,A1)
【文献】特開2019-061978(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181896(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
C23F 1/26
C23F 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10nm以下の狭小幅を有する開口部と前記開口部の対向する底壁と前記底壁から前記開口部に向けて延設される1または複数の側壁とで狭所空間が形成されるとともに前記底壁および前記側壁のうちの少なくとも一方が
チタンおよびタンタルのうちの少なくとも1種を含む金属または前記金属の化合物の被エッチング層で形成された、トレンチ構造を有する基板に供給されることで前記被エッチング層を除去する基板処理液であって、
前記金属をエッチングするエッチャントとして機能するH
2O
2分子またはHO
2
-を含む薬液と、
前記金属のイオンと錯体を形成するNH
4
+を含む錯体形成剤とを備え、
pH5以上に調整されたことを特徴とする基板処理液。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理液であって、
前記基板には、FinFETのゲートを形成するために前記基板の表面から互いに離間して立設された隣接する2つのフィンを跨いで覆う高k金属ゲート層が形成され、
前記高k金属ゲート層の表層を前記被エッチング層としてエッチング除去する基板処理液。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の基板処理液であって、
前記薬液は過酸化水素水溶液である基板処理液。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか一項に記載の基板処理液であって、
前記錯体形成剤は、アルキルアンモニウム塩、または下記一般式(1)
(NH
4
+)
nX
n- … (1)
ここで、X
n-はn価のアニオンで、nは1または2である、
で表されるアンモニウム塩である基板処理液。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の基板処理液であって、
pH9以下に調整された基板処理液。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれか一項に記載の基板処理液であって、
pHを調整するpH調整剤をさらに備え、
前記pH調整剤は塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸のうちの少なくとも1種を含む基板処理液。
【請求項7】
請求項1ないし
5のいずれか一項に記載の基板処理液であって、
pHを調整するpH調整剤をさらに備え、
前記pH調整剤は水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1種を含む基板処理液。
【請求項8】
請求項1ないし
7のいずれか一項に記載の基板処理液であって、
前記錯体形成剤のイオン濃度が1m mol/L以上10m mol/L以下である基板処理液。
【請求項9】
請求項1ないし
8のいずれか一項に記載の基板処理液であって、
pH8以上に調整されており、
前記錯体形成剤のイオン濃度が1m mol/L以上2m mol/L以下である基板処理液。
【請求項10】
10nm以下の狭小幅を有する開口部と前記開口部の対向する底壁と前記底壁から前記開口部に向けて延設される1または複数の側壁とで狭所空間が形成されるとともに前記底壁および前記側壁のうちの少なくとも一方が、金属または前記金属の化合物で構成される被エッチング層により形成されたトレンチ構造を有する基板に対し、基板処理液を供給して前記被エッチング層の除去を開始する工程と、
前記基板から前記基板処理液を除去して前記被エッチング層の除去を停止させる工程とを備え、
前記金属は、チタンおよびタンタルのうちの少なくとも1種を含み、
前記基板処理液は、
前記金属をエッチングするエッチャントとして機能するH
2O
2分子またはHO
2
-を含む薬液と、
前記金属のイオンと錯体を形成するNH
4
+を含む錯体形成剤とを備え、
pH5以上に調整されている
ことを特徴とする基板処理方法。
【請求項11】
請求項
10に記載の基板処理方法であって、
前記基板処理液の前記錯体形成剤のイオン濃度が1m mol/L以上10m mol/L以下である基板処理方法。
【請求項12】
請求項
10または
11に記載の基板処理方法であって、
前記基板処理液はpH8以上に調整されており、
前記基板処理液の前記錯体形成剤のイオン濃度が1m mol/L以上2m mol/L以下である基板処理方法。
【請求項13】
10nm以下の狭小幅を有する開口部と前記開口部の対向する底壁と前記底壁から前記開口部に向けて延設される1または複数の側壁とで狭所空間が形成されるとともに前記底壁および前記側壁のうちの少なくとも一方が、金属または前記金属の化合物で構成される被エッチング層により形成されたトレンチ構造を有する基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板に基板処理液を供給する処理液供給部とを備え、
前記金属は、チタンおよびタンタルのうちの少なくとも1種を含み、
前記基板処理液は、
前記金属をエッチングするエッチャントとして機能するH
2O
2分子またはHO
2
-を含む薬液と、
前記金属のイオンと錯体を形成するNH
4
+を含む錯体形成剤とを備え、
pH5以上に調整されている
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項14】
請求項
13に記載の基板処理装置であって、
前記基板処理液の前記錯体形成剤のイオン濃度が1m mol/L以上10m mol/L以下である基板処理装置。
【請求項15】
請求項
13または
14に記載の基板処理装置であって、
前記基板処理液はpH8以上に調整されており、
前記基板処理液の前記錯体形成剤のイオン濃度が1m mol/L以上2m mol/L以下である基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トレンチ構造を有する基板に対してエッチング処理を施すための基板処理液、当該基板処理液により基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品の製造工程には、基板を部分的にエッチング除去して所望のパターンを形成するエッチング工程が含まれる。例えば特許文献1には、フィンを有する電界効果トランジス(以下「FinFET」という)の製造工程が記載されている。このFinFETでは、複数のフィンに跨ってゲートが形成される。具体的には、複数のフィン上にHKMG層が形成されるのに続いてゲート材料層が形成される。これらのうちHKMG層は、HfO2、Al2O3、La2O3などの高k誘電体で構成された高k金属ゲート層(HK)と、TiN、TaN、TaAlN、TiCで構成される金属層(MG)とを積層させたものである。特許文献1では、HKMG層をパターニングするためにRIE(反応性イオンエッチング)を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-536581号公報(段落0016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上記したFinFETや三次元NAND型不揮発性半導体装置(以下「3D-NANDメモリ」という)などの電子部品の製造にあたって、ウェットエッチングを用いることが検討されている。しかしながら、これらの電子部品では、パターンの微細化や三次元構造の複雑化などの進行に伴って狭所な領域に対してエッチング処理を施す必要が生じている。例えばFinFETの金属層を形成するためには、後で説明する
図1に示すようにフィン上に金属層を構成する材料、例えばTiNでTiN層を形成し、さらに当該TiN層をエッチング液によって部分的に除去して所望形状に仕上げる必要がある。複数のフィンに跨って形成されたTiN層はトレンチ構造を有している。したがって、所望形状に仕上げるためには、トレンチ構造の内部にTiN層をエッチングするためのエッチャントを侵入させる必要がある。しかしながら、FinFETのフィンピッチが狭くなるにしたがって、トレンチ構造の開口部は狭くなり、トレンチ構造の内部は狭所空間となっている。そのため、上記エッチャントを効率的に侵入させることが難しく、上記狭所空間内でのエッチングレートが低下する。その結果、金属層を所望形状に仕上げることができないという問題があった。このような問題は、FinFETのようにトレンチ構造を構成する底壁ならびに当該底壁から開口部に向けて延設される1または複数の側壁の全部がエッチング対象となる場合に限定されるものではなく、底壁のみ、あるいは側面の全部または一部のみがエッチング対象となる場合にも生じる。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、トレンチ構造を形作る底壁および側壁の少なくとも一方が金属または当該金属の化合物で構成される被エッチング層となっている、基板に対して優れたエッチングレートでエッチング処理を施すことができる基板処理液、基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1態様は、10nm以下の狭小幅を有する開口部と開口部の対向する底壁と底壁から開口部に向けて延設される1または複数の側壁とで狭所空間が形成されるとともに底壁および側壁のうちの少なくとも一方が金属は、チタンおよびタンタルのうちの少なくとも1種を含む金属または金属の化合物の被エッチング層で形成された、トレンチ構造を有する基板に供給されることで被エッチング層を除去する基板処理液であって、前記金属をエッチングするエッチャントとして機能するH2O2分子またはHO2
-を含む薬液と、金属のイオンと錯体を形成するNH4
+を含む錯体形成剤とを備え、pH5以上に調整されたことを特徴としている。
【0007】
この発明の第2態様は、基板処理方法であって、10nm以下の狭小幅を有する開口部と開口部の対向する底壁と底壁から開口部に向けて延設される1または複数の側壁とで狭所空間が形成されるとともに底壁および側壁のうちの少なくとも一方が、金属または金属の化合物で構成される被エッチング層により形成されたトレンチ構造を有する基板に対し、基板処理液を供給して被エッチング層の除去を開始する工程と、基板から基板処理液を除去して被エッチング層の除去を停止させる工程とを備え、金属は、チタンおよびタンタルのうちの少なくとも1種を含み、基板処理液は、金属をエッチングするエッチャントとして機能するH2O2分子またはHO2
-を含む薬液と、金属のイオンと錯体を形成するNH4
+を含む錯体形成剤とを備え、pH5以上に調整されていることを特徴としている。
【0008】
この発明の第3態様は、基板処理装置であって、10nm以下の狭小幅を有する開口部と開口部の対向する底壁と底壁から開口部に向けて延設される1または複数の側壁とで狭所空間が形成されるとともに底壁および側壁のうちの少なくとも一方が、金属または金属の化合物で構成される被エッチング層により形成されたトレンチ構造を有する基板を保持する基板保持部と、基板保持部に保持された基板に基板処理液を供給する処理液供給部とを備え、記金属は、チタンおよびタンタルのうちの少なくとも1種を含み、基板処理液は、金属をエッチングするエッチャントとして機能するH2O2分子またはHO2
-を含む薬液と、金属のイオンと錯体を形成するNH4
+を含む錯体形成剤とを備え、pH5以上に調整されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された発明によれば、金属をエッチングするエッチャントとして機能するH2O2分子またはHO2
-を含む薬液と、金属のイオンと錯体を形成するNH4
+を含む錯体形成剤とを備え、pH5以上に調整された基板処理液を用いて被エッチング層がエッチングされる。したがって、トレンチ構造を形作る底壁および側壁の少なくとも一方が金属または当該金属の化合物で構成される被エッチング層である、基板に対して優れたエッチングレートでエッチング処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る基板処理方法の一実施形態を模式的に示す図である。
【
図2】
図1に示す基板処理方法を実行可能な基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【
図4】処理ユニットの構成を示す部分断面図である。
【
図5】処理ユニットを制御する制御部の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】
図2の基板処理装置で実行される基板処理の内容を示す図である。
【
図8】エッチングレートの評価用サンプルの構成および実験内容を模式的に示す図である。
【
図9】実施例1のエッチング特性を示すグラフである。
【
図10】実施例2のエッチング特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<発明の概要>
本発明は、基板に形成されたトレンチ構造の底壁や側壁の少なくとも1つを被エッチング層とし、基板に基板処理液を供給することで被エッチング層をウェットエッチングして所望形状に仕上げる基板処理方法および基板処理装置、ならびに上記エッチングを効果的に行う基板処理液に関するものである。特に、本発明に係る基板処理方法では、被エッチング層が金属または金属の化合物で構成され、当該金属をエッチングするエッチャントとして機能するH
2O
2分子またはHO
2
-を含む薬液によりエッチング処理が行われる。当該薬液として、例えば過酸化水素水溶液を用いることができる。また、基板処理方法は、例えば
図1に示すようにFinFETのゲートを製造する一工程に適用可能である。
【0012】
図1は本発明に係る基板処理方法の一実施形態を模式的に示す図である。FinFETのゲートを製造するにあたっては、特許文献1に記載されているように、シリコンなどの基板Wから上方に立設された複数のフィンFを跨いで形成された高k誘電体層11に対してTiN、TaN、TaAlN,TiCなどの金属層12が所望厚さで積層される(
図1の下段図面(b)参照)。これら高k誘電体層11および金属層12によりHKMG層13が構成される。そして、HKMG層13上にポリシリコンなどのゲート材料層(図示省略)が形成される。これによりFinFETのゲート製造が完了する。
【0013】
ここで、金属層12の形成は2段階で行われる。つまり、
図1の上段図面(a)に示すように金属蒸着などにより高k誘電体層11上に上記所望厚さよりも厚肉の金属層、例えばTiN層12aが形成される。このTiN層12aの形成後において、基板Wの表面に基板処理液を供給することで、同図の下段図面(b)に示すようにTiN層12aをウェットエッチングして上記所望厚さの金属層12を形成する。
【0014】
ここで注目すべき点は、TiN層12aはフィンFの形状に沿って形成され、互いに隣接するフィンFの間で狭所なトレンチ構造が形成されることである。TiN層12aは比較的厚肉であるためにトレンチ構造の開口部12cはフィンピッチPfよりも大幅に狭くなる。つまり、開口部12cの開口寸法OWは狭小幅となっている。また、トレンチ構造を形作る底壁12dおよび側壁12eも次のような特徴を有している。開口部12cと対向する底壁12dは狭く、当該底壁12dから開口部12cに向かう側壁12eの間隔も開口寸法OW以下となっている。したがって、トレンチ構造の内部空間は互いに隣接するフィンFにより形成される空間よりも大幅に狭く、いわゆる狭所空間12fとなっている。そのため、単に過酸化水素水溶液を主たる成分とする基板処理液を用いてもエッチャントを狭所空間12fに効率的に侵入させることが難しい。その結果、トレンチ構造の底壁12dおよび側壁12eを構成するTiN層12aのエッチングレートの低下は不可避であった。
【0015】
そこで、本願発明者は鋭意研究し、2つの知見を得た。一つ目の知見は狭所空間12fでの錯体の形成促進、換言すると被エッチング層の溶解促進のためには、錯体形成イオンを含む錯体形成剤を基板処理液に添加することが有効であるという点である。例えばTiの錯体形成はNH
4
+によって生じる。また、トレンチ構造を形作る壁面の一部が例えば後で説明する
図8に示すようにSiやSiO
2などであると、当該壁面は負電位に帯電しやすい。この場合、トレンチ構造内での電気的中性を保つために、カチオンであるNH
4
+はトレンチ構造の内部、つまり狭所空間に侵入して濃縮しやすいと考察される。したがって、TiN層12aと錯体を形成する錯体形成剤を基板処理液に添加すれば、狭所空間12fでの錯体形成が促進、つまり被エッチング層の溶解が促進される。
【0016】
FinFETのゲートを製造する際に好適な錯体形成剤としては、アンモニウムイオンNH4
+を含む、一般式
(NH4
+)nXn-
ここで、Xn-はn価のアニオンで、nは1または2である、
で表されるアンモニウム塩を用いることができる。アンモニウム塩としては、
・フッ化アンモニウム NH4F (Ammonium Fluoride)
・塩化アンモニウム NH4Cl (Ammonium Chloride)
・臭化アンモニウム NH4Br (Ammonium Bromide)
・ヨウ化アンモニウム NH4I (Ammonium Iodide)
・硫化アンモニウム (NH4)2SO4 (Ammonium Sulfide)
・酢酸アンモニウム NH4CH3CO2 (Ammonium Acetate)
・リン酸アンモニウム (NH4)2PO4 (Ammonium Phosphate)
が含まれる。
【0017】
また、錯体形成剤としてアルキルアンモニウム塩を用いることができる。アルキルアンモニウム塩には、一般式(NR4+)nXn-で表される第四級アンモニウム塩、R3Nで表される第三級アミン、R2NHで表される第二級アミン、RNH2で表される第一級アミンで表される、(Rはアルキル基かアリール基)が含まれ、例えば、
・フッ化テトラメチルアンモニウム [(CH3)4N]F (TetraMethylAmmonium Fluoride; TMAF)
・フッ化テトラエチルアンモニウム [(CH3CH2CH2)4N]F (TetraEthylAmmonium Fluoride; TEAF)
・フッ化テトラブチルアンモニウム [(CH3CH2CH2CH2CH2)4N]F (TetraButhylAmmonium Fluoride; TBAF)
・塩化テトラメチルアンモニウム [(CH3)4N]Cl (TetraMethylAmmonium Chloride; TMAC)
・塩化テトラエチルアンモニウム [(CH3CH2CH2)4N]Cl (TetraEthylAmmonium Chloride; TEAC)
・塩化テトラブチルアンモニウム [(CH3CH2CH2CH2CH2)4N]Cl (TetraButhylAmmonium Chloride; TBAC)
・ヨウ化テトラメチルアンモニウム [(CH3)4N]I (TetraMethylAmmonium Iodide; TMAI)
・ヨウ化テトラエチルアンモニウム [(CH3CH2CH2)4N]I (TetraEthylAmmonium Iodide; TEAI)
・ヨウ化テトラブチルアンモニウム [(CH3CH2CH2CH2CH2)4N]I (TetraButhylAmmonium Iodide; TBAI)
などのハロゲン化物、硫酸水素テトラブチルアンモニウムなどの硫酸水素化物、酢酸テトラメチルアンモニウムなどの酢酸化物、水酸化テトラエチルアンモニウムなどの水酸化物、過塩素酸テトラブチルアンモニウムなどの過塩素酸、などが含まれる。
【0018】
また、錯体形成剤として一般的なキレート剤も使用することが出来る。
キレート剤として、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エデト酸カルシウムナトリウム水和物、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ノトリロトリスメチルホスホン酸三ナトリウム塩(NTPO)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)を用いることができる。
【0019】
また、二つ目の知見は、エッチャントの濃度(以下「エッチャント濃度」という)が基板処理液中のpHの影響を受けやすいという点である。例えば金属層12の主要構成であるチタン(Ti)のエッチングモデルは、従来より知られているように、以下に示すとおりである
【0020】
【0021】
このモデルから明らかなように、金属層12のエッチングには、H2O2分子自身またはH2O2から解離したHO2
-などのエッチャントが寄与する。しかしながら、狭所空間12fにおいては被エッチング層の表面近傍に発生する電気二重層の影響によってエッチャントの濃度低下が発生し、これがエッチングレートを低下させる主要因のひとつであると考えられている。ここで、HO2
-イオンの解離定数は次式である
【0022】
【0023】
これに基づいて基板処理液のpHコントロールを検討したところ、酸性~中性領域ではエッチャント濃度は極端に低く、pHが上がるにしたがって基板処理液中でのエッチャント濃度は上昇することがわかる。したがって、狭所空間12fでのエッチングレートを高めるためには、基板処理液のpHを5以上に調整し、エッチャント濃度を高めておくことが重要である。ただし、pHが高すぎると金属層12以外の物質(SiやSiO2など)をエッチングしてしまい選択性が得られないことがある。この点を考慮すると、基板処理液のpHを9以下に抑えるのが望ましい。つまり、エッチングレートを高めるために基板処理液のpHを少なくとも5以上に調整することで基板処理液中のエッチャント濃度を高めることができ、さらにpHを9以下に抑えることで選択性も同時に確保することができる。
【0024】
過酸化水素水溶液とDIW(脱イオン水:deionized water)を1:5で混合した混合液のpHは約5である。これに錯体形成剤としてアンモニウム塩やアルキルアンモニウム塩を添加すると、pHは高くなる。ここで、基板処理液のpHをさらに高くするために、アルカリ性のpH調整剤をさらに添加してもよい。アルカリ性のpH調整剤としては、
・水酸化アンモニウム(NH4OH Ammonium Hydroxide)
・水酸化ナトリウム(NaOH Sodium Hydroxide)
・水酸化カリウム(KOH Potassium Hydroxide)
などがあり、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。一方、錯体形成剤の添加により基板処理液のpHが所望値よりも高くなり過ぎる際には、pHを5以上に保つことを前提に酸性のpH調整剤をさらに添加してもよい。酸性のpH調整剤としては、
・塩酸(HCl Hydrochloric Acid)
・硫酸(H2SO4 Sulfuric Acid)
・硝酸(HNO3 Nitric Acid)
・リン酸(H3PO4 Phosphoric Acid)
などがあり、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0025】
以上のように、FinFETのHKMG層13を製造するにあたってトレンチ構造の底壁12dおよび側壁12eを構成するTiN層12aをエッチングするための基板処理液には、H2O2分子やHO2
-などのエッチャントを含む薬液を用いることができるが、錯体形成剤の添加とpH調整を行うのが好適である。つまり、錯体形成剤を添加するとともに基板処理液のpHを5以上に調整することで、エッチャントの量を高めるとともに当該エッチャントをトレンチ構造の内部、つまり狭所空間12fに効率的に侵入させることができる。したがって、底壁12dおよび側壁12eを構成するTiN層12a(被エッチング層)を優れたエッチングレートでエッチング処理を施すことができる。その結果、高性能のFinFETを製造することができる。
【0026】
また、基板処理液にpH調整剤をさらに添加することで基板処理液のpHを所望値に調整することができ、上記エッチング処理を安定的に行うことができる。
【0027】
<基板処理装置>
次に、上記基板処理液を用いて
図1に示す基板処理方法を実行する基板処理装置の構成および動作を
図2ないし
図7を参照しつつ説明する。
【0028】
図2は
図1に示す基板処理方法を実行可能な基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、
図3は
図2に示す基板処理装置の側面図である。この基板処理装置100は、
図1の上段に図示された基板Wに対して上記基板処理液によりエッチング処理を実行する装置である。これらの図面は装置の外観を示すものではなく、基板処理装置100の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理装置100は、例えばクリーンルーム内に設置され、FinFETを製造するための基板Wに対してエッチング処理を施してHKMG層の金属層(
図1中の符号12)を形成する枚葉式の装置である。
【0029】
本実施形態では、
図1の上段図面中のTiN層12aをエッチングして金属層12を形成するために、エッチャントを含む過酸化水素水溶液(薬液)とDIWとpH調整剤としての水酸化アンモニウム水溶液を1:5:0.01で混合した混合液に対して1mM(ただし、M=1mol/L)の塩化アンモニウムを錯体形成剤として添加した基板処理液をエッチング液として用いている。こうして調製された基板処理液のpHはほぼ9である。なお、当該基板処理液は後で説明する「実施例2」に相当しているが、それ以外、例えば「実施例1」や「実施例3」で示す基板処理液を用いてもよい。
【0030】
図2に示すように、基板処理装置100は、基板Wに対して処理を施す基板処理部110と、この基板処理部110に結合されたインデクサ部120とを備えている。インデクサ部120は、基板Wを収容するための容器C(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(FrontOpeningUnifiedPod)、SMIF(StandardMechanicalInterface)ポッド、OC(OpenCassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121と、この容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Wを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Wを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Wがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0031】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Wを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0032】
基板処理部110は、平面視においてほぼ中央に配置された基板搬送ロボット111と、この基板搬送ロボット111を取り囲むように配置された複数の処理ユニット1とを備えている。具体的には、基板搬送ロボット111が配置された空間に面して複数の(この例では8つの)処理ユニット1が配置されている。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット111はランダムにアクセスして基板Wを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Wに対して所定の処理を実行する。本実施形態では、これらの処理ユニット1は同一の機能を有している。このため、複数基板Wの並列処理が可能となっている。
【0033】
図4は処理ユニットの構成を示す部分断面図である。また、
図5は処理ユニットを制御する制御部の電気的構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、各処理ユニット1に対して制御部4を設けているが、1台の制御部により複数の処理ユニット1を制御するように構成してもよい。また、基板処理装置100全体を制御する制御ユニット(図示省略)により処理ユニット1を制御するように構成してもよい。
【0034】
処理ユニット1は、内部空間21を有するチャンバ2と、チャンバ2の内部空間21に収容されて基板Wを保持する基板保持部として機能するスピンチャック3とを備えている。
図2および
図3に示すように、チャンバ2の側面にシャッター23が設けられている。シャッター23にはシャッター開閉機構22(
図5)が接続されており、制御部4からの開閉指令に応じてシャッター23を開閉させる。より具体的には、処理ユニット1では、未処理の基板Wをチャンバ2に搬入する際にシャッター開閉機構22はシャッター23を開き、基板搬送ロボット111のハンドによって未処理の基板Wがフェースアップ姿勢でスピンチャック3に搬入される。つまり、基板WはTiN層12a(
図1)を上方に向けた状態でスピンチャック3上に載置される。そして、当該基板搬入後に基板搬送ロボット111のハンドがチャンバ2から退避すると、シャッター開閉機構22はシャッター23を閉じる。そして、チャンバ2の内部空間21内で後述のように基板処理液、DIWおよび窒素ガスが基板Wの表面Wfに供給されて所望の基板処理が常温環境下で実行される。また、基板処理の終了後においては、シャッター開閉機構22がシャッター23を再び開き、基板搬送ロボット111のハンドが処理済の基板Wをスピンチャック3から搬出する。このように、本実施形態では、チャンバ2の内部空間21が常温環境に保ちつつ基板処理を行う処理空間として機能する。なお、本明細書において「常温」とは、5℃~35℃の温度範囲にあることを意味する。
【0035】
スピンチャック3は、基板Wを把持する複数のチャックピン31と、複数のチャックピン31を支持して水平方向に沿う円盤形状に形成されたスピンベース32と、スピンベース32に連結された状態で基板Wの表面中心から延びる面法線と平行な回転軸線C1まわりに回転自在に設けられた中心軸33と、モータによって中心軸33を回転軸線C1まわりに回転させる基板回転駆動機構34とを備えている。複数のチャックピン31は、スピンベース32の上面の周縁部に設けられている。この実施形態では、チャックピン31は周方向に等間隔を空けて配置されている。そして、スピンチャック3に載置された基板Wをチャックピン31により把持した状態で制御部4からの回転指令に応じて基板回転駆動機構34のモータが作動すると、基板Wは回転軸線C1まわりに回転する。また、このように基板Wを回転させた状態で、制御部4からの供給指令に応じて雰囲気遮断機構5に設けられたノズルから基板処理液、DIWおよび窒素ガスが順次基板Wの表面Wfに供給される。
【0036】
雰囲気遮断機構5は、遮断板51と、遮断板51に一体回転可能に設けられた上スピン軸52と、遮断板51の中央部を上下方向に貫通するノズル53とを有している。遮断板51は基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板形状に仕上げられている。遮断板51はスピンチャック3に保持された基板Wの上面に間隔を空けて対向配置されている。このため、遮断板51の下面が基板Wの表面Wf全域に対向する円形の基板対向面51aとして機能する。また、基板対向面51aの中央部には、遮断板51を上下に貫通する円筒状の貫通孔51bが形成されている。
【0037】
上スピン軸52は遮断板51の中心を通り鉛直に延びる回転軸線(基板Wの回転軸線C1と一致する軸線)まわりに回転可能に設けられている。上スピン軸52は円筒形状を有している。上スピン軸52の内周面は、上記回転軸線を中心とする円筒面に形成されている。上スピン軸52の内部空間は、遮断板51の貫通孔51bに連通している。上スピン軸52は、遮断板51の上方で水平に延びる支持アーム54に相対回転可能に支持されている。
【0038】
ノズル53はスピンチャック3の上方に配置されている。ノズル53は支持アーム54に対して回転不能な状態で支持アーム54によって支持されている。また、ノズル53は、遮断板51、上スピン軸52、および支持アーム54と一体的に昇降可能となっている。ノズル53の下端部には吐出口53aが設けられ、スピンチャック3に保持されている基板Wの表面Wfの中央部に対向する。
【0039】
遮断板51には、電動モータ等を含む構成の遮断板回転駆動機構55(
図5)が結合されている。遮断板回転駆動機構55は制御部4からの回転指令に応じて遮断板51および上スピン軸52を支持アーム54に対して回転軸線C1まわりに回転させる。また、支持アーム54には遮断板昇降駆動機構56が結合されている。遮断板昇降駆動機構56は制御部4からの昇降指令に応じて遮断板51、上スピン軸52およびノズル53を支持アーム54と一体的に鉛直方向Zに昇降する。より具体的には、遮断板昇降駆動機構56は、基板対向面51aがスピンチャック3に保持されている基板Wの表面Wfに近接して表面Wfの上方空間を周辺雰囲気から実質的に遮断する遮断位置(
図2に示す位置)と、遮断位置よりも大きく上方に退避した退避位置(図示省略)の間で昇降させる。
【0040】
ノズル53の上端部は、処理液供給制御部61、DIW供給制御部62および気体供給制御部63が接続されている。
【0041】
処理液供給制御部61は、ノズル53に接続された処理液配管611と、処理液配管611に介挿されたバルブ612とを有している。処理液配管611は基板処理液の供給源として機能する処理液供給部400と接続されている。
【0042】
図6は基板処理液供給部の構成を示す図である。処理液供給部400は、エッチャントを含む過酸化水素水溶液(薬液)を供給する薬液供給系410と、DIWを供給するDIW供給系420と、pH調整剤を供給する調整剤供給系430とを有している。薬液供給系410は、過酸化水素水溶液の供給源から補給される過酸化水素水溶液をタンク411に一時的に貯留し、適当なタイミングでミキシングバルブ450に供給する機能を有している。薬液供給系410はタンク411と窒素ガス供給源とを接続する配管412を有している。この配管412には、流量調整弁413および開閉制御弁414が介装されている。このため、制御部4(
図5)からの指令に応じて作動することで適量の流量で窒素ガスが流量調整弁413および開閉制御弁414を介してタンク411に圧送され、タンク411に貯留されている過酸化水素水溶液が配管415を介してミキシングバルブ450に供給可能となっている。また、配管415には、流量調整弁416および開閉制御弁417が介装されている。このため、制御部4からの指令に応じて流量調整弁416および開閉制御弁417が作動することで適量の流量で過酸化水素水溶液が適当なタイミングでミキシングバルブ450に供給される。一方、タンク411内での過酸化水素水溶液の貯留量を一定以上に保つために、タンク411内での過酸化水素水溶液の液面高さを検知するセンサ418が設けられている。そして、センサ418が上記液面高さを検知するとともに、その検知結果に基づいて上記供給源からタンク411に過酸化水素水溶液が補給される。
【0043】
DIW供給系420は、DIW供給源とミキシングバルブ450とを接続する配管421を有するとともに配管421に流量調整弁422および開閉制御弁423が介装されている。このため、制御部4からの指令に応じて流量調整弁422および開閉制御弁423が作動し、適量の流量でDIWが適当なタイミングでミキシングバルブ450に供給される。
【0044】
調整剤供給系430は、pH調整剤供給源から補給されるpH調整剤をpH調整用のタンク431に一時的に貯留し、適当なタイミングでミキシングバルブ450に供給する機能を有している。調整剤供給系430はタンク431とpH調整剤供給源とを接続する配管432を有している。この配管432には、流量調整弁433および開閉制御弁434が介装されている。また、タンク431内でのpH調整剤の貯留量を一定以上に保つために、タンク431内でのpH調整剤の液面高さを検知するセンサ435が設けられている。そして、センサ435が上記液面高さを検知するとともに、その検知結果に基づいて流量調整弁433および開閉制御弁434が作動してpH調整剤供給源からpH調整剤がタンク431に補給される。
【0045】
タンク431と窒素ガス供給源とは配管436により接続されている。この配管436には、流量調整弁437および開閉制御弁438が介装されている。このため、制御部4からの指令に応じて作動することで適量の流量で窒素ガスが流量調整弁437および開閉制御弁438を介してタンク431に圧送され、タンク431に貯留されているpH調整剤が配管439を介してミキシングバルブ450に供給可能となっている。この配管439には、流量調整弁440および開閉制御弁441が介装されている。このため、制御部4からの指令に応じて流量調整弁440および開閉制御弁441が作動することで適量の流量でpH調整剤が適当なタイミングでミキシングバルブ450に供給される。
【0046】
ミキシングバルブ450に対して適量の過酸化水素水溶液、DIWおよびpH調整剤が供給され、ミキシングバルブ450で混合される。この後で混合液は配管451を介して別のタンク461に送液される。このタンク461は配管462を介して錯体形成剤供給源と接続されて錯体形成剤の供給を受け、所望組成の基板処理液がタンク461内で生成される。ここで、錯体形成剤の一例である塩化アンモニウムは常温で粉末固体である。そこで、
図6に示すように、タンク461内に攪拌ユニット463が設けられ、撹拌による塩化アンモニウムの溶解と混合を促進している。
【0047】
また、タンク461は配管464を介して窒素ガス供給源と接続されている。また、この配管464には、流量調整弁465および開閉制御弁466が介装されている。このため、制御部4からの指令に応じて作動することで適量の流量で窒素ガスが流量調整弁465および開閉制御弁466を介してタンク461に圧送され、タンク461内で混合された基板処理液が配管467を介して送液される。なお、配管467にも流量調整弁468および開閉制御弁469が介装され、適量の流量で基板処理液を適当なタイミングでノズル53に向けて供給可能となっている。
【0048】
図4に戻って説明を続ける。DIW供給制御部62はノズル53に接続されたDIW供給配管621と、DIW供給配管651を開閉するバルブ652とを有している。DIW供給配管651はDIWの供給源と接続されている。制御部4からの開閉指令に応じてバルブ622が開かれると、DIWがリンス液としてノズル53に供給され、吐出口53aから基板Wの表面中央部に向けて吐出される。
【0049】
気体供給制御部63は、ノズル53に接続された気体供給配管651と、気体供給配管651を開閉するバルブ652とを有している。気体供給配管651は気体の供給源と接続されている。本実施形態では、気体として除湿された窒素ガスが用いられており、制御部4からの開閉指令に応じてバルブ652が開かれると、窒素ガスがノズル53に供給され、吐出口53aから基板Wの表面中央部に向けて吹き付けられる。なお、気体としては、窒素ガス以外に、除湿されたアルゴンガスなどの不活性ガス用いてもよい。
【0050】
処理ユニット1では、スピンチャック3を取り囲むように、排気桶80が設けられている。また、スピンチャック3と排気桶80との間に配置された複数のカップ81,82(第1カップ81および第2カップ82)と、基板Wの周囲に飛散した処理液を受け止める複数のガード84~86(第1ガード84~第3ガード86)とが設けられている。また、ガード84~86に対してガード昇降駆動機構87~89(第1~第3ガード昇降駆動機構87~89)がそれぞれ連結されている。ガード昇降駆動機構87~89はそれぞれ制御部4からの昇降指令に応じてガード84~86を独立して昇降する。なお、第1ガード昇降駆動機構87の
図4への図示は省略されている。
【0051】
制御部4は、CPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットには、演算ユニットが実行するプログラムが記憶されている。そして、制御部4は上記プログラムにしたがって装置各部を制御することで、エッチャントのみならず移動促進剤を含む基板処理液を用いて
図8に示す基板処理を実行する。
【0052】
図7は
図2の基板処理装置で実行される基板処理の内容を示す図である。基板処理装置100における処理対象は、例えば
図1の上段図面に示すようにFinFETを製造するための基板Wであり、当該基板WではHKMG層用のTiN層12aが複数のフィンFに跨って形成されている。
【0053】
未処理の基板Wが処理ユニット1に搬入される前においては、制御部4が装置各部に指令を与えて処理ユニット1は初期状態にセットされる。すなわち、シャッター開閉機構22によりシャッター23(
図3、
図4)は閉じられている。基板回転駆動機構34によりスピンチャック3は基板Wのローディングに適した位置に位置決め停止されるとともに、図示しないチャック開閉機構によりチャックピン31は開状態となっている。遮断板51は遮断板昇降駆動機構56により退避位置に位置決めされるとともに、遮断板回転駆動機構55による遮断板51の回転は停止されている。ガード84~86はいずれも下方に移動して位置決めされている。さらに、バルブ612、622、632はいずれも閉じられている。
【0054】
未処理の基板Wが基板搬送ロボット111により搬送されてくると、シャッター23が開く。シャッター23の開成に合わせて基板Wは基板搬送ロボット111によりチャンバ2の内部空間21に搬入され、表面Wfを上方に向けた状態でスピンチャック3に受け渡される。そして、チャックピン31が閉状態となり、基板Wはスピンチャック3に保持される(ステップS1:基板の搬入)。
【0055】
基板Wの搬入に続いて、基板搬送ロボット111がチャンバ2の外に退避し、さらにシャッター23が再び閉じた後、制御部4は基板回転駆動機構34のモータを制御してスピンチャック3の回転速度(回転数)を、所定の処理速度(約10~3000rpmの範囲内で、例えば800~1200rpm)まで上昇させ、その処理速度に維持させる。また、制御部4は、遮断板昇降駆動機構56を制御して、遮断板51を退避位置から下降させて遮断位置に配置する(ステップS2)。また、制御部4は、ガード昇降駆動機構87~89を制御して第1ガード84~第3ガード86を上位置に上昇させることにより、第1ガード84を基板Wの周端面に対向させる。
【0056】
基板Wの回転が処理速度に達すると、次いで、制御部4はバルブ622を開く。これにより、ノズル53の吐出口53aからDIWが吐出され、基板Wの表面Wfに供給される。基板Wの表面Wf上では、DIWが基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部に移動する。これにより、基板Wの表面Wfの全体がDIWで覆われる、いわゆるカバーリンス処理が行われる(ステップS3)。なお、カバーリンスは必須工程ではなく、カバーリンスを行わず、次に説明するエッチング処理(ステップS4)を直ちに行う場合もある。
【0057】
ステップS4で、制御部4はバルブ612を閉じるとともに、バルブ622を開く。これにより、ノズル53の吐出口53aから吐出される液体がDIWから基板処理液に変わり、基板Wの表面Wfに基板処理液が供給される。基板Wの表面Wf上では、基板処理液が基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部に移動する。これにより、基板Wの表面Wfの全体が基板処理液によるエッチング処理を受ける。このとき、基板処理液には、TiN層12aのエッチャントとともに錯体形成剤として塩化アンモニウムが含まれている。しかも、pH調整剤として水酸化アンモニウムが添加されることで基板処理液のpHがほぼ9に調整されている。
【0058】
この基板処理液によるエッチング処理は予め定められたエッチング時間だけ継続され、その間に基板Wの周縁部から排出される基板処理液は第1ガード84の内壁に受け止められ、図示を省略する排液経路に沿って機外の廃液処理設備に送られる。エッチング時間を経過すると、制御部4はバルブ612を閉じて、ノズル53からの基板処理液の吐出を停止する。
【0059】
エッチング処理に続いて、リンス液(DIW)によるリンス処理が実行される(ステップS5)。このDIWリンスでは、制御部4は第1ガード84~第3ガード86の位置を維持しながら、バルブ622を開く。これにより、エッチング処理を受けた基板Wの表面Wfの中央部に対してノズル53の吐出口53aからDIWがリンス液として供給される。すると、DIWが基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部に移動する。これにより、基板W上に付着している基板処理液がDIWによって洗い流されて基板処理液によるエッチングが停止される。このとき、基板Wの周縁部から排出されたDIWは、基板Wの周縁部から基板Wの側方に排出され、基板処理液と同様にして機外の廃液処理設備に送られる。このDIWリンスは予め定められたリンス時間だけ継続され、それを経過すると、制御部4はバルブ622を閉じて、ノズル53からのDIWの吐出を停止する。
【0060】
DIWリンスの完了後、制御部4は基板Wの回転数を高めてスピン乾燥を行う(ステップS6)。本実施形態では、スピン乾燥と並行して制御部4はバルブ632を開いてノズル53から乾燥した窒素ガスをスピン乾燥中の基板Wの表面Wfに吹き付ける。これにより基板Wの乾燥が促進される。
【0061】
スピン乾燥を所定時間だけ継続させた後で、制御部4は基板回転駆動機構34のモータを制御してスピンチャック3の回転を停止させるとともにバルブ632を閉じて窒素ガスの吹き付けを停止する(ステップS7)。また、制御部4は、遮断板回転駆動機構55を制御して遮断板51の回転を停止させるとともに、遮断板昇降駆動機構56を制御して遮断板51を遮断位置から上昇させて退避位置に位置決めする。さらに、制御部4は、第3ガード昇降駆動機構89を制御して、第3ガード86に下降させて、全てのガード86~88を基板Wの周端面から下方に退避させる。
【0062】
その後、制御部4がシャッター開閉機構22を制御してシャッター23(
図2、
図4)を開いた後で、基板搬送ロボット111がチャンバ2の内部空間に進入して、チャックピン31による保持が解除された処理済みの基板Wをチャンバ2外へと搬出する(ステップS8)。なお、基板Wの搬出が完了して基板搬送ロボット111が処理ユニット1から離れると、制御部4はシャッター開閉機構22を制御してシャッター23を閉じる。
【0063】
以上のように、本実施形態では、基板処理液を用いてTiN層12aに対するエッチング処理(ステップS4)を行っている。このため、エッチャントがトレンチ構造の内部、つまり狭所空間12fに効率的に侵入する。このため、底壁12dおよび側壁12eを構成するTiN層12a(被エッチング層)が優れたエッチングレートでエッチングされる。また、TiN層12aの露出領域も基板処理液により良好にエッチングされる。その結果、
図1の下段に示すように、所望の形状および厚みを有する金属層12を形成することができる。
【0064】
上記したように本実施形態においては、TiおよびTiNがそれぞれ本発明の「金属」および「金属の化合物」の一例に相当している。また、HKMG層13およびTiN層12aがそれぞれ本発明の「高k金属ゲート層」および「高k金属ゲート層の表層」の一例に相当している。また、TiN層12aの開口寸法OWが本発明の「狭小幅」に相当している。
【0065】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば錯体形成剤として使用している塩化アンモニウムは常温で粉末固体であるため、上記実施形態ではタンク461内に撹拌ユニット463を配置している、予め少量のDIWで塩化アンモニウムを溶解して塩化アンモニウム水溶液を準備しておき、これをタンク461に送り込んで混合させてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、基板Wへの供給直前に基板処理液を生成し、ノズル53から基板Wに供給してエッチング処理しているが、供給前に基板処理液が加熱部を通過してエッチング処理に適合する温度に調整するように構成してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、スピンチャック3に保持された基板Wに基板処理液を供給してエッチング処理を行う、いわゆる枚葉式の基板処理装置100に本発明を適用しているが、いわゆるバッチ方式の基板処理装置に対して本発明適用してもよい。つまり、処理槽に貯留された上記基板処理液に対し、基板保持部に保持された複数の基板Wを保持した基板保持部を浸漬させることでエッチング処理を行ってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、pH調整剤により基板処理液のpHを調整しているが、後で説明するようにpH調整剤を添加しない混合液(ただし、pHは5以上)に錯体形成剤を混合させた基板処理液を用いてもよい。このような基板処理液には、例えば後で説明する「実施例1」が含まれる。
【0069】
また、基板処理液を基板Wに供給する代わりに、混合液(=薬液+DIW(+pH調整剤))と錯体形成剤とをそれぞれ基板Wに直接供給してエッチング処理を実行してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、本発明の「被エッチング層」の一例としてTiN層をエッチングしているが、FinFETのゲートに用いられる他の金属層(MG)をエッチングする基板処理技術や基板処理液にも本発明を適用することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、
図1に示すようにトレンチ構造を構成する底壁12dおよび2つの側壁12eが被エッチング層となっている基板Wを基板処理対象としているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。例えば2つの側壁12eのうちの一方と底壁12dが被エッチング層となっている基板に対して本発明を適用可能である。また、側壁12eが筒形状を有する被エッチング層となっている基板に対して本発明を適用可能である。さらに、底壁12dのみが被エッチング層となっている基板に対して本発明を適用可能である。例えば次に説明する実施例で説明するように薄い金属層または金属の化合物層が異なる組成の層(シリコン層や酸化シリコン層など)で挟み込まれた積層構造を有する基板をエッチングする基板処理技術も本発明の適用対象に含まれる。このような積層構造を有し、薄い金属層または金属の化合物層のエッチングが必要となる基板としては、例えば3D-NANDメモリを製造するための基板が含まれる。
【0072】
また、基板処理液の組成は上記したものに限定されるものではなく、上記「発明の概要」の項で説明した錯体形成剤やpH調整剤を用いることができる。なお、それらの具体例および効果については、次の実施例において詳述する。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の好ましい態様について、実施例を参照しつつより具体的に説明する。ただし、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではない。したがって、前後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0074】
ここでは、狭所部および非狭所部でのエッチングレートを評価するために、
図8に示すサンプルを準備し、以下の実験を行った。
【0075】
図8はエッチングレートの評価用サンプルの構成および実験内容を模式的に示す図である。同図中の(a)欄に示す基板Waでは、シリコン基材W1の上面にTiN層W2が形成されている。さらに、TiN層W2上にポリシリコン層W3が積層形成されている。このポリシリコン層W3には、例えば内径60nmの貫通孔W4が複数個設けられている。このように構成された基板Waの表面に上記エッチャントを含む基板処理液を供給すると、基板処理液が貫通孔W4を介してTiN層W2に供給され、基板処理液中に含まれるエッチャントによりTiN層W2のうち貫通孔W4に面している露出領域W5がエッチングされ、さらに時間経過とともに開口W6(つまり、シリコン基材W1とポリシリコン層W3と間の隙間部分)を介してエッチャントがシリコン基材W1とポリシリコン層W3とに挟まれた狭所空間W7に侵入する。これによって、当該狭所空間W7のエッチングが進行する。
【0076】
開口W6のサイズ(TiN層W2の厚みTHaに相当)が比較的大きい場合には、同図の(b)欄に示すようにシリコン基材W1の上面にTiN層W2がブランケット状、例えば厚みTHb=500nm程度の厚みで形成された基板Wbに基板処理液を供給してエッチングを進行させた場合とほぼ同程度のエッチングレートが得られる。例えば基板Wa、Wbに薬液を供給してから一定時間が経過するまでにエッチングされた量をそれぞれエッチング量EMa、EMbとすると、
EMa≒EMb
となる。そして、(EMa/EMb)を基板Waのブランケット比と定義すると、基板WaにおけるTiN層W5の厚みTHaが薄くなると、
図1の上段中の開口寸法OWが狭くなった場合と同様に、狭所空間W7にエッチャントが侵入し難くなる。そのため、エッチングレートは小さくなり、基板Waのブランケット比は「1」から減少する。そこで、本実施例では、THaが2nm、5nmおよび10nmの基板Waと、基板Wbとを準備するとともに、5種類の基板処理液を調製した。
【0077】
これらの基板処理液は、表1に示すように
(1)過酸化水素水溶液と、DIWとを1:5で混合した混合液に錯体形成剤として塩化アンモニウムを1mM加え、NH
4
+イオン濃度を1m mol/Lに調整したもの(pHはほぼ5)
(2)過酸化水素水溶液と、DIWとを1:5で混合した混合液に錯体形成剤として塩化アンモニウムを10mM加え、NH
4
+イオン濃度を10m mol/Lに調整したもの(pHはほぼ5)
(3)過酸化水素水溶液と、DIWとを1:5で混合した混合液に錯体形成剤として塩化アンモニウムを100mM加え、NH
4
+イオン濃度を100m mol/Lに調整したもの(pHはほぼ5)
(4)過酸化水素水溶液と、DIWとを1:5で混合したもの(pHはほぼ5)
(5)過酸化水素水溶液と、pH調整剤としての塩酸と、DIWとを1:1:5で混合したもの(pHは1よりも小さい)、
である。そして、各基板処理液を基板Wa、Wbに供給して1分間にエッチングされた厚み、つまりエッチング量EMca、EMbを計測することで狭所空間W7でのエッチングレート(ER(nm/min))を求めた。また、(EMa/EMb)が基板Waのブランケット比(BL比)である。それらの結果をまとめたものが表1である。また、
図1に示すTiN層12aの開口寸法OWに相当する厚みTHaの値に対するブランケット比をプロットしたものが
図9である。なお、これらの点については、後で説明する表2や
図10においても同様である。
【0078】
【0079】
表1および
図9から明らかなように、pHが低い基板処理液(5)によりエッチングを行った場合、エッチャント濃度の低下に起因して狭所空間W7でのエッチングレートは低くなっている(比較例2)。また、比較例1に示すように基板処理液(5)よりもpHが高い基板処理液(4)によりエッチングを行うことでエッチングレートは改善されるものの、狭所空間W7でのエッチングレートは依然と低く、しかも狭所部でのブランケット比は大きく低下している。
【0080】
これに対し、錯体形成剤を追加した基板処理液(1)、基板処理液(2)、基板処理液(3)によりエッチングを行った場合、狭所空間W7でのエッチングレートが大きく改善されている(実施例1~実施例3)。このように基板処理液(1)~基板処理液(3)を用いることで狭所空間W7にエッチャントを効率的に侵入させて狭所空間W7に面するTiN層W2を優れたエッチングレートでエッチングすることができる。
【0081】
また、実施例1~実施例3を比較してわかるように、錯体形成剤(塩化アンモニウム)の添加により基板処理液中に含まれる錯体形成剤のイオン濃度が10m mol/Lを超えると、ブランケット比(BL比)は高くなる。しかしながら、狭所空間W7のサイズ変化に伴うブランケット比の変化量は大きくなり、狭所空間W7内でのエッチング進行の制御が難しくなる。一方、錯体形成剤のイオン濃度を10m mol/L以下に抑えることで上記変化量が抑えられ、エッチング進行を良好に制御することが可能となる。ただし、実施例1のように錯体形成剤のイオン濃度が少なくなると、ブランケット比の変化量が大きくなる傾向にある。よって、狭所空間W7のサイズにかかわらず、安定したエッチングレートを得るためには、錯体形成剤のイオン濃度を1m mol/L以上10m mol/L以下に調整するのが望ましく、さらに10m mol/Lに調整するのがさらに好適である。
【0082】
また、pH調整剤として塩化アンモニウムを添加した基板処理液を5種類準備し、上記と同様の実験を行った。これらの基板処理液は、表2に示すように
(6)過酸化水素水溶液と、pH調整剤としての水酸化アンモニウムと、DIWとを1:0.01:5で混合したものに錯体形成剤として塩化アンモニウムを1mM加えたものであり、NH
4
+イオン濃度は1.67m mol/Lとなっているもの(pHはほぼ9)
(7)過酸化水素水溶液と、pH調整剤としての水酸化アンモニウムと、DIWとを1:0.01:5で混合したものに錯体形成剤として塩化アンモニウムを10mM加えたものであり、NH
4
+イオン濃度は10.67m mol/Lとなっているもの(pHはほぼ9)
(8)過酸化水素水溶液と、pH調整剤としての水酸化アンモニウムと、DIWとを1:0.001:5で混合したものであり、NH
4
+イオン濃度は0.21m mol/Lとなっているもの(pHはほぼ8)
(9)過酸化水素水溶液と、pH調整剤としての水酸化アンモニウムと、DIWとを1:0.01:5で混合したものであり、NH
4
+イオン濃度は0.67m mol/Lとなっているもの(pHはほぼ9)
(10)過酸化水素水溶液と、pH調整剤としての水酸化アンモニウムと、DIWとを1:0.1:5で混合したものであり、NH
4
+イオン濃度は2.1m mol/Lとなっているもの(pHはほぼ10)
(11)上記基板処理液(5)と同じもの、つまり過酸化水素水溶液と、pH調整剤としての塩酸と、DIWとを1:1:5で混合したもの(pHは1よりも小さい)、
である。そして、各基板処理液を基板Wa、Wbに供給してエッチングレート(ER(nm/min))およびブランケット比(BL比)を求めた。そして、それらの結果を表2にまとめるとともに、厚みTHaの値に対するブランケット比を
図10にプロットした。
【0083】
【0084】
表2および
図10から明らかなように、比較例4や比較例5に示すようにpHを高めるとともに基板処理液中にNH
4
+イオンが存在する基板処理液(9)や基板処理液(10)によりエッチングを行うことで比較例6よりもエッチングレートは改善されるものの、狭所空間W7でのエッチングレートは依然と低い。
【0085】
これに対し、pHを8以上に高めるとともに錯体形成剤を追加した基板処理液(6)や基板処理液(7)によりエッチングを行った場合、狭所空間W7でのエッチングレートが大きく改善されている(実施例4、5)。特に、実施例4と比較例4との比較から錯体形成剤の効果が顕著である。すなわち、実施例4で使用する基板処理液(6)は比較例4で使用する基板処理液(9)に微量の錯体形成剤を混合させて基板処理液中の錯体形成剤のイオン濃度を0.67m mol/Lから1m mol/Lを超えて1.67m mol/Lまでに引き上げることによりエッチングレートが大きく改善されている。ただし、実施例4と実施例5との比較から明らかなように上記イオン濃度が増大すると、狭所空間W7のサイズ変化に伴うブランケット比の変化量は大きくなる。その結果、狭所空間W7内でのエッチング進行の制御性が若干低下する。一方、錯体形成剤のイオン濃度を2m mol/L以下に抑えることで上記変化量が抑えられ、エッチング進行を良好に制御することが可能となる。よって、pHを8以上に調整する場合、錯体形成剤のイオン濃度が1m mol/L以上2m mol/L以下となるように基板処理液を組成するのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
この発明は、トレンチ構造を有する基板に対してエッチング処理を施すための基板処理液、当該基板処理液により基板を処理する基板処理全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1…処理ユニット(基板処理装置)
3…スピンチャック(基板保持部)
11…高k誘電体層
12…金属層
12a…TiN層(高k金属ゲート層の表層)
12c…開口部
12d…底壁
12e…側壁
12f…狭所空間
13…HKMG層(高k金属ゲート層)
400…処理液供給部
F…フィン
OW…開口寸法(狭小幅)
W,Wa,Wb…基板