(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/38 20060101AFI20240306BHJP
H03K 3/03 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B41J2/38
H03K3/03
(21)【出願番号】P 2020073664
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】和地 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】西 宏治
(72)【発明者】
【氏名】西村 知宏
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-030579(JP,A)
【文献】特開2015-063104(JP,A)
【文献】特開2001-158122(JP,A)
【文献】特開昭63-021156(JP,A)
【文献】特開2003-154697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/38
H03K 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字を行う発熱体への通電を制御する半導体装置であって、
印字データ信号を受け付けて内容を保持するデータ保持部と、
前記データ保持部に保持されている前記印字データ信号の内容を、1ライン分の印字に対応する第1データと、前記第1データによる印字の次の印字に対応する第2データと、に分けて一時的に記憶するデータ記憶部と、
前記発熱体に印字用の発熱を行わせる印字ストローブ信号を受け付けるストローブ信号入力部と、
前記印字ストローブ信号の波形を時間軸方向に圧縮することにより、前記発熱体に予熱を行わせる予熱ストローブ信号を生成する予熱ストローブ生成回路と、
前記データ記憶部に記憶されている前記印字データ信号の内容に基づいて、前記印字ストローブ信号または前記予熱ストローブ信号のいずれかを選択し、前記発熱体への通電を制御する制御信号を出力する制御信号出力回路を含む出力制御部と、
を有
し、
前記制御信号出力回路は、
前記第1データと前記印字ストローブ信号との論理積演算を行う第1論理積ゲートと、
前記第2データと前記予熱ストローブ信号との論理積演算を行う第2論理積ゲートと、
前記第1論理積ゲートの演算結果と、前記第2論理積ゲートの演算結果と、の論理和演算を行う論理和ゲートと、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記予熱ストローブ生成回路は、
前記印字ストローブ信号に基づいて、チョッパー波形の信号を生成するチョッパー波形生成部と、
前記チョッパー波形の信号に基づいて、前記予熱ストローブ信号を生成する信号生成部と、
を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記チョッパー波形生成部は、発振回路を有する請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記発振回路は、リングオシレーターを有する請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記出力制御部は、前記発熱体への通電を制御するCMOSインバーターを有し、
前記チョッパー波形の周期は、前記CMOSインバーターの応答時間より長い請求項2ないし4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記印字ストローブ信号の任意の信号を第1の印字ストローブ信号とし、
前記第1の印字ストローブ信号から生成される前記予熱ストローブ信号を第1の予熱ストローブ信号としたとき、
前記第1の印字ストローブ信号が出力される時間帯と、前記第1の予熱ストローブ信号が出力される時間帯と、が異なっている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記印字ストローブ信号の任意の信号を第1の印字ストローブ信号とし、
前記第1の印字ストローブ信号から生成される前記予熱ストローブ信号を第1の予熱ストローブ信号としたとき、
前記第1の印字ストローブ信号の出力時間の幅と、前記第1の予熱ストローブ信号の出力時間の幅と、が異なっている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記出力制御部は、複数の前記発熱体に接続される、複数の前記制御信号出力回路を含む請求項
1ないし7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
印字を行う発熱体への通電を制御する半導体装置であって、
前記発熱体に印字用の発熱を行わせる印字ストローブ信号を受け付けるストローブ信号入力部と、
前記印字ストローブ信号の波形を時間軸方向に圧縮することにより、前記発熱体に予熱を行わせる予熱ストローブ信号を生成する予熱ストローブ生成回路と、
前記印字ストローブ信号および前記予熱ストローブ信号に基づいて、前記発熱体への通電を制御する制御信号を出力する出力制御部と、
を有
し、
前記予熱ストローブ生成回路は、前記印字ストローブ信号が含む1つの波から複数の波を生成し、前記予熱ストローブ信号を得ることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の発熱体を有し、用紙等に印字を行うサーマルヘッドと、発熱体に対する加熱制御を行う制御手段と、を有するプリンターが開示されている。このうち、制御手段は、サーマルヘッドの温度を検出する温度検出手段と、検出温度に基づいて、発熱体の印字には至らない温度にまで加熱するために必要な加熱時間を取得する加熱時間取得手段と、印字後に、印字のための発熱を行わなかった発熱体に、取得した加熱時間に基づいた予熱用の加熱を行わせる印字手段と、を有する。
【0003】
このようなプリンターによれば、印字のための加熱と予熱とを交互に行うことにより、サーマルヘッドの温度を印字に満たない所定温度に維持することができる。これにより、高速の印字を、印字速度を落とすことなく行うことができる。
【0004】
また、加熱制御を行う制御手段は、マイクロプロセッサーを有しており、このマイクロプロセッサーが、印字手段を介して、印字や予熱のための加熱を制御する。マイクロプロセッサーにより制御された印字手段は、印字用のストローブ信号と、予熱用のストローブ信号を、サーマルヘッドに対して交互に転送する。これにより、サーマルヘッドでは、印字用の加熱と予熱とを交互に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、印字と予熱の双方を制御するためには、マイクロプロセッサーに高い性能が求められる。このため、プリンターの低コスト化が困難になるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の適用例に係る半導体装置は、
印字を行う発熱体への通電を制御する半導体装置であって、
印字データ信号を受け付けて内容を保持するデータ保持部と、
前記データ保持部に保持されている前記印字データ信号の内容を、1ライン分の印字に対応する第1データと、前記第1データによる印字の次の印字に対応する第2データと、に分けて一時的に記憶するデータ記憶部と、
前記発熱体に印字用の発熱を行わせる印字ストローブ信号を受け付けるストローブ信号入力部と、
前記印字ストローブ信号の波形を時間軸方向に圧縮することにより、前記発熱体に予熱を行わせる予熱ストローブ信号を生成する予熱ストローブ生成回路と、
前記データ記憶部に記憶されている前記印字データ信号の内容に基づいて、前記印字ストローブ信号または前記予熱ストローブ信号のいずれかを選択し、前記発熱体への通電を制御する制御信号を出力する制御信号出力回路を含む出力制御部と、
を有し、
前記制御信号出力回路は、
前記第1データと前記印字ストローブ信号との論理積演算を行う第1論理積ゲートと、
前記第2データと前記予熱ストローブ信号との論理積演算を行う第2論理積ゲートと、
前記第1論理積ゲートの演算結果と、前記第2論理積ゲートの演算結果と、の論理和演算を行う論理和ゲートと、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】サーマルプリンターのブロック構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】
図1に示す印字部のブロック構成を模式的に示す図である。
【
図3】サーマルプリンターの印字動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】
図2に示す予熱ストローブ生成回路の構成を示す回路図である。
【
図5】
図4に示す予熱ストローブ生成回路へ入力される信号の波形、予熱ストローブ生成回路の内部で生成される信号の波形、および、予熱ストローブ生成回路から出力される信号の波形の例を示す図である。
【
図6】
図2に示す複数の制御信号出力回路のうち、1つの制御信号出力回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の半導体装置の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
1.サーマルプリンター
まず、半導体装置の説明に先立ち、サーマルプリンターについて説明する。
図1は、サーマルプリンターのブロック構成の一例を模式的に示す図である。
図1に示すサーマルプリンター1は、プリンター制御部100と、印字部130と、用紙搬送部140と、システムバス150と、を備える。
【0010】
2.プリンター制御部
プリンター制御部100は、印字部130および用紙搬送部140の作動を制御し、記録紙に印字を行う。
図1には、プリンター制御部100のハードウェア構成の一例として、CPU101(Central Processing Unit)、ROM102(Read Only Memory)、およびRAM103(Random Access Memory)を挙げている。これらは、システムバス150に接続され、互いに通信可能になっている。
【0011】
ROM102は、サーマルプリンター1の制御に用いる制御プログラムや各種データ等を記憶する。ROM102としては、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリー等の不揮発性メモリーが挙げられる。
【0012】
RAM103は、制御プログラムや各種データを一時的に記憶するワークメモリーとして用いられる。RAM103としては、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリーが挙げられる。
【0013】
CPU101は、ROM102から制御プログラムを読み出し、RAM103に一時的に記憶させた後、RAM103に記憶させた制御プログラムにしたがって各種処理を実行するプロセッサーである。具体的には、CPU101は、外部機器9から入力された印字データを、2値形式のイメージデータに変換する。イメージデータとは、記録紙上のドットの配置を表す2値データである。CPU101は、変換したイメージデータをRAM103に構築されたイメージバッファーに展開する。
【0014】
CPU101は、イメージバッファーに展開したイメージデータを1ラインごとに読み出す。CPU101は、読み出したイメージデータに基づいて、印字データ信号Dを生成し、印字部130に出力する。なお、イメージバッファーは、RAM103の外部に独立して設けられた記憶装置に構築されていてもよい。
【0015】
また、サーマルプリンター1は、入力部181と、表示部182と、入出力インターフェース183と、を備える。これらは、システムバス150に接続されている。
入出力インターフェース183は、外部機器9とシステムバス150との間を仲介する。入出力インターフェース183は、外部機器9から送られるデータをプリンター制御部100に出力する。
【0016】
入力部181は、ユーザーからの入力操作を受け付ける。入力部181のハードウェア構成としては、例えば、キーボード、タッチパネル等が挙げられる。
表示部182は、画面表示や発光インジケーターの発光等により、サーマルプリンター1の稼働状態を表示または報知する。表示部182のハードウェア構成としては、例えば、液晶表示装置、発光ダイオード装置等が挙げられる。
【0017】
3.印字部
図2は、
図1に示す印字部130のブロック構成を模式的に示す図である。
図2に示す印字部130は、ヘッド駆動部131と、サーマルヘッド132と、電源供給部133と、を備える。
【0018】
3.1.ヘッド駆動部
ヘッド駆動部131は、システムバス150を介してプリンター制御部100と接続されている。ヘッド駆動部131は、プリンター制御部100からの制御に基づいて、ドライバーIC10に各種信号を出力する。この信号としては、後述するが、印字データ信号D、クロック信号CLK、ラッチ信号LAT、印字ストローブ信号STR1等が挙げられる。
【0019】
3.2.サーマルヘッド
図2に示すサーマルヘッド132は、実施形態に係る半導体装置としてのドライバーIC10と、ヘッド部20と、を備える。ドライバーIC10は、前述した各種信号に基づいて、ヘッド部20への通電を制御する。ヘッド部20は、1ラインの画素数に対応する複数の発熱体21、22、23、・・・、2nを備える。nは、1以上の整数であり、1ラインの画素数に応じて設定される。したがって、発熱体2nは、例えば、n=10の場合、発熱体210となり、n=100の場合、発熱体2100となる。
【0020】
発熱体21、22、23、・・・、2nは、ドライバーIC10で設定される通電条件に基づく通電により発熱する。発熱体21、22、23、・・・、2nの発熱により、記録紙にインクを転写したり、感熱紙で構成される記録紙の色を変化させたりして、印字が行われる。なお、記録紙の種類は、特に限定されない。また、印字は、文字や記号等の印刷だけでなく、模様、図形、画像等の印刷も含む。
【0021】
複数の発熱体21、22、23、・・・、2nは、ライン方向に配列している。サーマルヘッド132では、複数の発熱体21、22、23、・・・、2nの発熱の有無を個別に選択することにより、記録紙上に1ライン分のドットを同時に印字する。また、記録紙をライン方向に直交する方向に移動させつつ、1ライン分のドットの印字を繰り返すことにより、複数のラインにわたってドットが印字される。これにより、2次元的にドットが印字され、目的とする印字パターンが得られる。なお、発熱体21、22、23、・・・、2nの配置は、特に限定されず、複数のライン状に配置されていてもよい。
【0022】
3.3.ドライバーIC
ドライバーIC10は、ヘッド部20の駆動を制御する機能を有し、シフトレジスター11と、データラッチ12と、ドライバー出力制御部13と、予熱ストローブ生成回路14と、ドライバー出力部15と、を備える。これらの各機能部については、後述する。
また、ドライバーIC10は、印字データ入力端子161、クロック信号入力端子162、ラッチ信号入力端子163、印字ストローブ信号入力端子164、および、出力端子DO1、DO2、DO3、・・・、DOnを備える。なお、nは、1以上の整数であり、1ラインの画素数に応じて設定される。したがって、出力端子DOnは、例えば、n=10の場合、出力端子DO10となり、n=100の場合、出力端子DO100となる。
【0023】
印字データ入力端子161は、シフトレジスター11に接続されている端子であって、ヘッド駆動部131から出力された印字データ信号Dが入力される端子である。印字データ信号Dは、印字される画素に対応する信号を含む。
【0024】
クロック信号入力端子162は、シフトレジスター11に接続されている端子であって、ヘッド駆動部131から出力されたクロック信号CLKが入力される端子である。クロック信号CLKは、例えば、シフトレジスター11が印字データ信号Dを取り込むタイミングを規定する。
【0025】
ラッチ信号入力端子163は、データラッチ12に接続されている端子であって、ヘッド駆動部131から出力されたラッチ信号LATが入力される端子である。ラッチ信号LATは、例えば、シフトレジスター11からデータラッチ12へ印字データ信号Dを転送するタイミングを規定する。
【0026】
印字ストローブ信号入力端子164は、ドライバー出力制御部13に接続されている端子であって、ヘッド駆動部131から出力された印字ストローブ信号STR1が入力される端子である。印字ストローブ信号STR1は、印字を行うため、発熱体21、22、23、・・・、2nへの通電時間および通電タイミングを規定する。
【0027】
出力端子DO1、DO2、DO3、・・・、DOnは、複数の発熱体21、22、23、・・・、2nを接続するための端子であって、ドライバー出力部15によって切り替えられる通電経路の端子である。
【0028】
次に、ドライバーIC10の各機能部について説明する。
シフトレジスター11は、発熱体21、22、23、・・・、2nと同数の図示しないセルを備えている。シフトレジスター11は、ヘッド駆動部131から入力されるクロック信号CLKに同期して、ヘッド駆動部131から順次入力される印字データ信号Dをシフトさせながら、1ライン分の印字データを保持する。
【0029】
データラッチ12は、ヘッド駆動部131から入力されるラッチ信号LATをトリガーとして、シフトレジスター11の各セルからそれぞれ出力される1ライン分の印字データを一時的に記憶する。
【0030】
図2に示すデータラッチ12は、印字ライン用ラッチ部121(第1ラッチ部)と、次ライン用ラッチ部122(第2ラッチ部)と、を有している。印字ライン用ラッチ部121および次ライン用ラッチ部122は、それぞれ、シフトレジスター11が備える複数のセルに対応した、図示しない複数のラッチ回路を備えている。これにより、印字ライン用ラッチ部121および次ライン用ラッチ部122は、それぞれ1ライン分の印字データを一時的に記憶する。なお、
図2に示すデータラッチ12は、3段以上のラッチ部を有してもよい。
【0031】
また、印字ライン用ラッチ部121が記憶する印字データは、ヘッド駆動部131から入力されるラッチ信号LATをトリガーとして、ドライバー出力制御部13に出力される。印字ライン用ラッチ部121から出力されるデータを、「出力データQ1」とする。
さらに、次ライン用ラッチ部122が記憶する印字データは、ヘッド駆動部131から入力されるラッチ信号LATをトリガーとして、印字ライン用ラッチ部121およびドライバー出力制御部13に出力される。次ライン用ラッチ部122から出力されるデータを、「出力データQ0」とする。
【0032】
ドライバー出力制御部13は、データラッチ12から出力された出力データQ1、Q0、ヘッド駆動部131から出力された印字ストローブ信号STR1、および、予熱ストローブ生成回路14から出力された予熱ストローブ信号STR0に基づき、発熱体21、22、23、・・・、2nへの通電を切り替えるための制御信号CS1、CS2、CS3、・・・、CSnをドライバー出力部15に出力する。なお、nは、1以上の整数であり、1ラインの画素数に応じて設定される。したがって、制御信号CSnは、例えば、n=10の場合、制御信号CS10となり、n=100の場合、制御信号CS100となる。
【0033】
また、
図2に示すドライバー出力制御部13は、発熱体21、22、23、・・・、2nと同数の制御信号出力回路171、172、173、・・・、17nを備えている。出力データQ1、Q0、印字ストローブ信号STR1および予熱ストローブ信号STR0は、それぞれ制御信号出力回路171、172、173、・・・、17nに入力される。そして、制御信号出力回路171、172、173、・・・、17nは、それぞれ、対応する発熱体21、22、23、・・・、2nへの通電を切り替えるための制御信号CS1、CS2、CS3、・・・、CSnを出力する。なお、ドライバー出力制御部13の構成については、後に詳述する。
【0034】
予熱ストローブ生成回路14は、印字ストローブ信号STR1の波形を時間軸方向に圧縮することにより、予熱ストローブ信号STR0を生成する回路である。予熱ストローブ信号STR0は、印字に先立って発熱体21、22、23、・・・、2nに予熱を与えるため、発熱体21、22、23、・・・、2nへの通電条件、すなわち、通電時間および通電タイミングを規定する。なお、予熱ストローブ生成回路14の構成については、後に詳述する。
【0035】
ドライバー出力部15は、発熱体21、22、23、・・・、2nに接続される図示しないスイッチング素子を有している。スイッチング素子は、発熱体21、22、23、・・・、2nに対応して複数設けられており、
図2に示す電源供給部133から発熱体21、22、23、・・・、2nへ通電するための回路を断続する。ドライバー出力制御部13から出力された制御信号CS1、CS2、CS3、・・・、CSnがアクティブであるとき、スイッチング素子がオン状態になる。これにより、発熱体21、22、23、・・・、2nに通電させ、発熱体21、22、23、・・・、2nを個別に発熱させる。
【0036】
なお、ドライバー出力制御部13の印字ストローブ信号STR1の入力側または予熱ストローブ信号STR0の入力側のいずれかに、図示しない遅延回路を設けるようにしてもよいし、印字ストローブ信号STR1の入力側および予熱ストローブ信号STR0の入力側の双方に、互いに定数が異なる遅延回路を設けるようにしてもよい。こうすることで、予熱ストローブ信号STR0および印字ストローブ信号STR1は、一部の出力時間帯が重なっていて、他部の出力時間帯は重なっていない信号として、または、互いの出力時間帯が一部でも重ならない信号として、ドライバー出力制御部13に入力される。
【0037】
3.4.ヘッド部
ヘッド部20は、1ライン分のイメージデータを印字するための複数の発熱体21、22、23、・・・、2nを備えている。発熱体21、22、23、・・・、2nは、直線状に配置され、列をなしている。発熱体21、22、23、・・・、2nが配列した方向を「ライン方向」という。ライン方向は、記録媒体としての記録紙の幅方向とほぼ平行になるように、記録紙に対して設定される。
【0038】
4.用紙搬送部
用紙搬送部140は、記録紙を搬送する機能を有する。用紙搬送部140のハードウェア構成は、例えば、図示しないステッピングモーターと、モータードライバーと、を有する。モータードライバーは、プリンター制御部100による制御に基づいて、ステッピングモーターを駆動する。ステッピングモーターは、図示しない給紙ローラーを回転駆動する。これにより、1ライン分の印字を繰り返す際の紙送りを実行する。
【0039】
5.ドライバーICの動作例
図3は、サーマルプリンター1の印字動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0040】
記録紙に印字を行う場合、まず、プリンター制御部100は、印刷すべき画像であるイメージデータに基づいて、印字データ信号Dや制御データをヘッド駆動部131に出力する。制御データは、例えば、データラッチ12に印字データを記憶させるタイミング、印字ストローブ信号STR1をアクティブにするタイミング等を規定するデータである。
【0041】
印字動作を行うときには、ヘッド駆動部131からドライバーIC10に各種信号が出力される。
まず、ヘッド駆動部131は、印字データ入力端子161に向けて印字データ信号Dを出力する。また、ヘッド駆動部131は、クロック信号入力端子162に向けてクロック信号CLKを出力する。
【0042】
出力された印字データ信号Dは、クロック信号CLKに同期してシフトレジスター11にシリアル入力され、シフトレジスター11において1ライン分の印字データが保持される。なお、
図3は、ラインL1に印字を行うための1ライン分の印字データD1、ラインL1の次のラインL2に印字を行うための1ライン分の印字データD2、ラインL2の次のラインL3に印字を行うための1ライン分の印字データD3、ラインL3の次のラインL4に印字を行うための1ライン分の印字データD4、および、ラインL4の次のラインL5に印字を行うための1ライン分の印字データD5を、順次、シフトレジスター11に出力し、保持させた例を示している。印字データD1~D5は、それぞれ、ラインL1~L5の各画素に対応する信号を含む。なお、
図3に示す印字データD1~D5は、一例として、信号レベルがハイレベルになった場合にアクティブとなる信号であり、
図3では、一例として、ラインL1~L5の全画素に印字を行う場合の信号が出力されている状態を図示している。
【0043】
次に、ヘッド駆動部131は、
図3に示す期間t1中において、シフトレジスター11に1ライン分の印字データD1が保持させた状態で、ラッチ信号入力端子163に向けてラッチ信号LATを出力する。なお、
図3に示すラッチ信号LATは、一例として、信号レベルがローレベルになった場合に、データラッチ12が印字データを取り込む信号である。
【0044】
また、期間t1の前の期間t0は、データラッチ12の初期状態設定期間である。
図3に示す期間t0では、印字ライン用ラッチ部121に、任意のデータが記憶されていてもよいし、何も記憶されていなくてもよい。また、
図3に示す次ライン用ラッチ部122には、全画素がローレベルの印字データD0、つまり、1ライン全体でドットを印字しないという非アクティブの印字データD0を記憶させている。
【0045】
データラッチ12では、
図3に示す期間t1のうち、ラッチ信号LATの立下りエッジのタイミングにおいて、シフトレジスター11から次ライン用ラッチ部122に印字データD1を取り込む。また、
図3の例では、期間t1において、印字ライン用ラッチ部121の全てのラッチ回路にローレベルの印字データD0を取り込む。
【0046】
次に、ヘッド駆動部131は、
図3に示す期間t2、すなわち、シフトレジスター11に1ライン分の印字データD2が記憶され、かつ、次ライン用ラッチ部122に1ライン分の印字データD1が記憶されたタイミングで、再び、ラッチ信号LATを出力する。
【0047】
データラッチ12では、ラッチ信号LATの立下りエッジのタイミングにおいて、次ライン用ラッチ部122に記憶されている印字データD1を、印字ライン用ラッチ部121に取り込む。これにより、期間t2では、1ライン分の印字データD1が印字ライン用ラッチ部121に転送される。また、それとともに、期間t2では、シフトレジスター11から次ライン用ラッチ部122に印字データD2が転送される。これにより、期間t2では、1ライン分の印字データD2が次ライン用ラッチ部122に記憶される。
【0048】
その後、期間t3では、1ライン分の印字データD2が印字ライン用ラッチ部121に取り込まれ、1ライン分の印字データD3が次ライン用ラッチ部122に取り込まれる。期間t4では、1ライン分の印字データD3が印字ライン用ラッチ部121に取り込まれ、1ライン分の印字データD4が次ライン用ラッチ部122に取り込まれる。期間t5では、1ライン分の印字データD4が印字ライン用ラッチ部121に取り込まれ、1ライン分の印字データD5が次ライン用ラッチ部122に取り込まれる。以上のように、印字データは、シフトレジスター11、次ライン用ラッチ部122、および、印字ライン用ラッチ部121に、順次転送される。
【0049】
ここで、再び、期間t1に戻って説明する。
期間t1では、ラッチ信号LATの立下りエッジのタイミングで、ヘッド駆動部131が、印字ストローブ信号入力端子164に向けて印字ストローブ信号STR1を出力する。なお、
図3に示す印字ストローブ信号STR1は、一例として、信号レベルがハイレベルになった場合にアクティブとなる信号である。
【0050】
印字ストローブ信号STR1は、ドライバー出力制御部13が備える複数の制御信号出力回路171、172、173、・・・、17nに入力されるとともに、予熱ストローブ生成回路14にも入力される。
【0051】
図4は、
図2に示す予熱ストローブ生成回路14の構成を示す回路図である。
図5は、
図4に示す予熱ストローブ生成回路14へ入力される信号の波形、予熱ストローブ生成回路14の内部で生成される信号の波形、および、予熱ストローブ生成回路14から出力される信号の波形の例を示す図である。
【0052】
図4に示す予熱ストローブ生成回路14は、印字ストローブ信号STR1の波形を時間軸方向に圧縮し、予熱ストローブ信号STR0を生成して出力する回路である。予熱ストローブ信号STR0の信号は、
図5に示すように、印字ストローブ信号STR1がアクティブである時間帯に、印字ストローブ信号STR1よりも短い時間、アクティブになる信号であればよい。このような予熱ストローブ信号STR0によれば、後述するように、印字には至らない程度の発熱量を発熱体21、22、23、・・・、2nに発熱させること、つまり、予熱を行うことができる。
【0053】
したがって、印字ストローブ信号STR1の波形と予熱ストローブ信号STR0の波形とは、アクティブとなる時間の長さが異なっていれば、1つの波の形が互いに同じであっても互いに異なっていてもよい。
図5では、印字ストローブ信号STR1および予熱ストローブ信号STR0の双方が矩形波である例を示しているが、一方が矩形波であるとき、他方がその他の波形であってもよい。
【0054】
以上のように、サーマルプリンター1は、ヘッド部20と、ドライバーIC10と、を備える。そして、ドライバーIC10は、印字を行うサーマルヘッド132の発熱体21、22、23、・・・、2nへの通電を制御する半導体装置であって、発熱体21、22、23、・・・、2nに印字用の発熱を行わせる印字ストローブ信号STR1を受け付ける印字ストローブ信号入力端子164(ストローブ信号入力部)と、印字ストローブ信号STR1の波形を時間軸方向に圧縮することにより、発熱体21、22、23、・・・、2nに予熱を行わせる予熱ストローブ信号STR0を生成する予熱ストローブ生成回路14と、ドライバー出力制御部13と、を有する。
【0055】
予熱ストローブ信号STR0は、印字ストローブ信号STR1と並列にドライバー出力制御部13に入力される。後述するドライバー出力制御部13は、印字ストローブ信号STR1および予熱ストローブ信号STR0に基づいて、発熱体21、22、23、・・・、2nへの通電を制御する制御信号CS1、CS2、CS3、・・・、CSnを出力する。
【0056】
このようなドライバーIC10は、予熱ストローブ生成回路14において、印字用の発熱を行わせる印字ストローブ信号STR1から、予熱用の発熱を行わせる予熱ストローブ信号STR0を生成する機能を有する。ドライバーIC10の内部で予熱ストローブ信号STR0を生成することにより、後に詳述するように、印字用の発熱よりも少ない発熱量を発熱体21、22、23、・・・、2nに発熱させることができる。これにより、ドライバーIC10では、プリンター制御部100の負荷を増やすことなく、発熱体21、22、23、・・・、2nに予熱動作を行わせることができる。その結果、サーマルプリンター1の高コスト化を招くことなく、印字開始までの時間を短縮することができ、サーマルプリンター1の印字速度を高めることができる。
【0057】
また、従来のように、印字用の加熱と予熱とを交互に行う場合には、予熱の時間中には印字動作を行うことができず、このため、印字速度が低下するという問題があった。これに対し、本実施形態では、例えば1ライン中で印字動作を行う発熱体と予熱動作を行う発熱体とを併存させることができる。このため、本実施形態では、印字動作と予熱動作とを同時に行うことができ、印字速度をより高めやすいという利点がある。
【0058】
ここで、
図4に示す予熱ストローブ生成回路14は、チョッパー波形生成部141と、信号生成部142と、を備えている。
チョッパー波形生成部141は、印字ストローブ信号STR1に基づいて、チョッパー波形の信号を生成する回路である。チョッパー波形とは、例えば、正弦波、方形波、三角波、パルス波のような電圧の波が繰り返される振動波形のことをいう。
【0059】
信号生成部142は、チョッパー波形生成部141で生成されたチョッパー波形の信号に基づいて、予熱ストローブ信号STR0を生成する回路である。このような予熱ストローブ生成回路14は、印字ストローブ信号STR1をベースにして、それを時間軸方向に圧縮した波形の信号を容易に生成することができる。
【0060】
また、
図4に示すチョッパー波形生成部141は、発振回路を有している。発振回路としては、例えば、リングオシレーター(リング発振回路)、CR発振回路、LC発振回路、非安定マルチバイブレーター等が挙げられる。発振回路を用いることにより、より簡単な回路でチョッパー波形の信号を生成することができる。
【0061】
さらに、
図4に示す発振回路は、特にリングオシレーターを有している。リングオシレーターは、直列に接続された複数個の否定論理ゲート1412(インバーター)を、さらにリング状に接続し、否定論理ゲート1412の伝搬遅延を利用して発振する発振回路である。リングオシレーターは、回路構成が特に簡単であるため、ドライバーIC10用の発振回路として有用である。
【0062】
図4に示すチョッパー波形生成部141が有するリングオシレーターは、否定論理積ゲート1411と、4つの否定論理ゲート1412と、を含んでいる。
【0063】
否定論理積ゲート1411の一方の入力端子には、印字ストローブ信号STR1が入力される。否定論理積ゲート1411の出力端子は、直列に接続された4つの否定論理ゲート1412の入力端子に接続されている。4つの否定論理ゲート1412における最終段の否定論理ゲート1412の出力端子は、否定論理積ゲート1411の他方の入力端子に接続され、リング状に接続されている。これにより、否定論理ゲート1412の伝搬遅延を利用して発振する出力信号OSCOを出力することができる。
【0064】
また、
図4に示す否定論理積ゲート1411の出力端子と4つの否定論理ゲート1412の入力端子との間には、信号生成部142が接続されている。信号生成部142は、直列に接続された複数個の否定論理ゲート1421(インバーター)を含んでいる。信号生成部142には、チョッパー波形生成部141からの出力信号OSCOが入力される。信号生成部142は、信号波形を整形し、予熱ストローブ信号STR0として出力する機能を有する。
【0065】
印字ストローブ信号STR1が
図5に示すような矩形波であるとき、出力信号OSCOは、例えば
図5に示すような三角波となる。
また、この出力信号OSCOの三角波は、信号生成部142により、例えば、
図5に示すような矩形波の予熱ストローブ信号STR0に変換される。このようにして、予熱ストローブ信号STR0は、
図5に示すように、印字ストローブ信号STR1よりもアクティブである時間が短い信号となる。
【0066】
なお、
図5に示す波形は、いずれも一例であり、例えば、予熱ストローブ信号STR0は、印字ストローブ信号STR1よりもアクティブである時間が短い信号、つまり、印字ストローブ信号STR1の波形を時間軸方向に圧縮した信号であればよい。また、否定論理ゲート1412(インバーター)、あるいは、否定論理ゲート1421(インバーター)の判定レベル(閾値)を最適化することにより、予熱ストローブ信号STR0のデューティーを制御するようにしてもよい。なお、予熱ストローブ信号STR0のオンデューティーは、例えば、50%以下に制御されてもよく、20%~40%に制御されてもよい。
【0067】
以上のようにして、印字ストローブ信号STR1よりもアクティブである時間が短い予熱ストローブ信号STR0を生成することにより、印字ストローブ信号STR1によって規定される発熱量よりも少ない発熱量で発熱体21、22、23、・・・、2nに予熱動作を行わせることができる。そして、上述した予熱ストローブ生成回路14によれば、そのような予熱動作を行わせるための予熱ストローブ信号STR0を容易に生成することができる。
【0068】
予熱ストローブ生成回路14で生成された予熱ストローブ信号STR0は、印字ストローブ信号STR1とともに、ドライバー出力制御部13が備える複数の制御信号出力回路171、172、173、・・・、17nに入力される。
【0069】
なお、予熱ストローブ信号STR0の波数を図示しないカウンターでカウントし、所定のカウント数に達した時点で、予熱ストローブ生成回路14の動作を停止させ、予熱ストローブ信号STR0の出力を停止させるようにしてもよい。予熱ストローブ生成回路14の動作の停止は、例えば、予熱ストローブ生成回路14の印字ストローブ信号STR1の入力側に設けた図示しないスイッチ回路により実現可能である。このスイッチ回路は、カウンターによって計数された予熱ストローブ信号STR0の波数、すなわち前述したカウント数が所定の値に達した時点で、予熱ストローブ生成回路14に対する印字ストローブ信号STR1の入力を遮断するように構成されている。このような構成により、印字ストローブ信号STR1の出力時間の幅と、予熱ストローブ信号STR0の出力時間の幅と、を異ならせることができる。この場合の出力時間の幅とは、ある一定の印字文字数に対するものであり、例えば1文字単位での出力時間の長さである。
【0070】
図6は、
図2に示す複数の制御信号出力回路171、172、173、・・・、17nのうち、1つの制御信号出力回路171の構成を示す回路図である。なお、制御信号出力回路171は、発熱体21への通電を切り替える制御信号CS1を制御する回路である。他の制御信号出力回路172、173、・・・、17nの構成も、後述する制御信号出力回路171の構成と同様であるため、ここでは、制御信号出力回路の構成、動作等について、制御信号出力回路171を用いて説明する。なお、nは、1以上の整数であり、1ラインの画素数に応じて設定される。したがって、制御信号出力回路17nは、例えば、n=10の場合、制御信号出力回路1710となり、n=100の場合、制御信号出力回路17100となる。
【0071】
図6に示す制御信号出力回路171は、2つの論理積ゲート171G1、171G2と、1つの論理和ゲート171G3と、を備えている。
【0072】
論理積ゲート171G1の一方の入力端子には、印字ライン用ラッチ部121から出力された出力データQ1が入力される。論理積ゲート171G1の他方の入力端子には、印字ストローブ信号STR1が入力される。論理積ゲート171G1では、出力データQ1と印字ストローブ信号STR1との論理積演算を行う。したがって、出力データQ1がハイレベルであるときに、印字ストローブ信号STR1がハイレベルである期間では、ハイレベルとなる演算結果が得られる。一方、出力データQ1がローレベルであるときの全期間、または、出力データQ1がハイレベルであっても、印字ストローブ信号STR1がローレベルである期間では、ローレベルとなる演算結果が得られる。演算結果は、論理和ゲート171G3の一方の入力端子に入力される。
【0073】
論理積ゲート171G2の一方の入力端子には、次ライン用ラッチ部122から出力された出力データQ0が入力される。論理積ゲート171G2の他方の入力端子には、予熱ストローブ信号STR0が入力される。論理積ゲート171G2では、出力データQ0と予熱ストローブ信号STR0との論理積演算を行う。したがって、出力データQ0がハイレベルであるときに、予熱ストローブ信号STR0がハイレベルである期間では、ハイレベルとなる演算結果が得られる。一方、出力データQ0がローレベルであるときの全期間、または、出力データQ1がハイレベルであっても、予熱ストローブ信号STR0がローレベルである期間では、ローレベルとなる演算結果が得られる。演算結果は、論理和ゲート171G3の他方の入力端子に入力される。
【0074】
論理和ゲート171G3では、論理積ゲート171G1の演算結果と論理積ゲート171G2の演算結果との論理和演算を行う。演算結果は、ドライバー出力部15に出力される。
【0075】
図3に示す期間t1では、一例として、出力データQ1としてローレベルの印字データD0が、出力データQ0として印字データD1が、それぞれ制御信号出力回路171に入力される。また、この期間t1では、印字ストローブ信号STR1および予熱ストローブ信号STR0も、制御信号出力回路171に入力される。
【0076】
そうすると、
図3に示す期間t1では、論理積ゲート171G1において、出力データQ1と印字ストローブ信号STR1との論理積演算を行うことになるため、ローレベルとなる演算結果が出力される。このため、期間t1では、発熱体21による印字動作は行われず、
図3に示す印字用出力はOFFとなる。一方、論理積ゲート171G2では、出力データQ0と予熱ストローブ信号STR0との論理積演算を行う。仮に、出力データQ0としての印字データD1がハイレベルとなるデータである場合、論理積ゲート171G2は、振動波形を有する予熱ストローブ信号STR0に基づいて、断続的にハイレベルになる演算結果を出力する。このため、期間t1では、発熱体21による予熱動作が行われることになり、
図3に示す予熱用出力は断続的にアクティブとなる。
【0077】
その結果、期間t1では、論理和ゲート171G3が、この予熱用出力、すなわち、断続的にハイレベルとなる演算結果を出力する。
【0078】
制御信号出力回路171は、この論理和ゲート171G3による演算結果に基づく制御信号CS1をドライバー出力部15に出力する。その結果、この期間t1において、制御信号出力回路171によって制御される発熱体21では、印字に至らない程度に発熱する予熱動作が実行される。これにより、次の期間t2で印字動作を行う際、すぐに印字が行われるように、発熱体21の温度をある程度上昇させておくことができる。また、予熱動作は、期間t2で発熱体21による印字動作に用いられる印字データD1に基づいて行われる。このため、仮に、期間t1において制御信号出力回路171に入力される印字データD1がローレベルであった場合には、期間t2で発熱体21による印字動作は行われないので、期間t1における発熱体21の予熱動作は不要になる。このようにして不必要な予熱動作を行わないことで、サーマルプリンター1の消費電力の削減を図ることができる。
【0079】
以上のように、
図6に示す制御信号出力回路171は、論理積ゲート171G1(第1論理積ゲート)と、論理積ゲート171G2(第2論理積ゲート)と、論理和ゲート171G3と、を備える回路である。このうち、論理積ゲート171G1は、出力データQ1(第1データ)と、印字ストローブ信号STR1と、の論理積演算を行う。また、論理積ゲート171G2は、出力データQ0(第2データ)と、予熱ストローブ信号STR0と、の論理積演算を行う。さらに、論理和ゲート171G3は、論理積ゲート171G1の演算結果と、論理積ゲート171G2の演算結果と、の論理和演算を行う。
【0080】
このような回路構成によれば、簡単な回路構成であるにもかかわらず、必要な印字動作または予熱動作を行わせ、かつ、次ライン用のデータを踏まえて不必要な予熱動作を行わせないように、制御信号CS1を出力し得る制御信号出力回路171を実現することができる。これにより、制御信号出力回路171の回路規模が大きくなるのを防止して、ドライバーIC10の低コスト化を図ることができる。
【0081】
以上、制御信号出力回路171の期間t1について説明したが、制御信号出力回路172、173、・・・、17nにおける各期間t1においても、上記と同様である。
また、制御信号出力回路171、172、173、・・・、17nの各回路構成は、図示したものに限定されない。
【0082】
図3に示す期間t2では、出力データQ1として印字データD1、および、出力データQ0として印字データD2が、それぞれ制御信号出力回路171に入力される。また、期間t1と同様、期間t2でも、印字ストローブ信号STR1および予熱ストローブ信号STR0が、制御信号出力回路171に入力される。
【0083】
ここでは、印字データD1および印字データD2の双方が、ハイレベルであると仮定する。そうすると、論理積ゲート171G1では、所定時間、継続的にハイレベルとなる演算結果(印字用出力)が出力される。所定時間とは、発熱体21による印字が可能な発熱時間のことをいい、印字ストローブ信号STR1によって規定される。一方、論理積ゲート171G2では、振動波形を有する予熱ストローブ信号STR0に基づいて、断続的にハイレベルになる演算結果が出力される。その結果、論理和ゲート171G3は、所定時間、継続的にアクティブとなる演算結果(予熱用出力)を出力する。このため、期間t2では、論理和ゲート171G3が、印字用出力と予熱用出力との論理和演算を行って、印字用出力、すなわち、継続的にハイレベルとなる演算結果を出力する。これにより、期間t2では、発熱体21による印字動作が行われる。
【0084】
以上のように、制御信号出力回路171は、論理和ゲート171G3を有しているため、期間t2で印字動作と予熱動作とが重複しても、発熱時間が長い印字動作を選択することになる。これにより、予熱動作が重複することになっても、印字動作に支障を及ぼすおそれがない。
【0085】
なお、印字動作が行われれば、予熱動作を行う必要はないため、その観点でも支障はない。また、
図3では、一例として、アクティブハイの演算結果を反転したアクティブローの印字用出力および予熱用出力を図示しているが、印字用出力および予熱用出力は、上述したようにアクティブハイであってもよい。
【0086】
以上のように、ドライバーIC10は、印字データ信号Dの入力を外部から受け付けて内容を保持するシフトレジスター11(データ保持部)と、シフトレジスター11に保持されている印字データ信号Dの内容を一時的に記憶するデータラッチ12(データ記憶部)と、を有し、ドライバー出力制御部13は、データラッチ12に記憶されている印字データ信号Dの内容に基づいて、印字ストローブ信号STR1または予熱ストローブ信号STR0のいずれかを選択し、制御信号CS1、CS2、CS3、・・・、CSnとして出力する制御信号出力回路171、172、173、・・・、17nを含んでいる。
【0087】
このような構成によれば、印字動作が必要な発熱体21、22、23、・・・、2nには印字動作を行わせ、印字動作は必要ないものの予熱動作が必要な発熱体21、22、23、・・・、2nには予熱動作を行わせることができる。これにより、印字動作に支障を及ぼすことなく、予熱動作を行わせることができる。
【0088】
また、データラッチ12は、記憶する印字データ信号Dの内容として、1ライン分の印字に対応する出力データQ1(第1データ)と、出力データQ1による印字の次の印字に対応する出力データQ0(第2データ)と、に分けて記憶するように構成されている。つまり、データラッチ12は、印字ライン用ラッチ部121と、次ライン用ラッチ部122と、を有している。
【0089】
このような構成によれば、次ライン用ラッチ部122から出力される出力データQ0に基づいて発熱体21、22、23、・・・、2nに予熱動作を行わせることができる。これにより、次ラインで印字を行う画素、つまり、予熱が必要な画素の発熱体21、22、23、・・・、2nが的確に予熱されることとなる。その結果、不必要な予熱動作が行われないため、サーマルプリンター1の消費電力の削減を図ることができる。
【0090】
さらに、ドライバー出力制御部13は、複数の発熱体21、22、23、・・・、2nに接続される、複数の制御信号出力回路171、172、173、・・・、17nを含んでいる。このため、上記のように、発熱体21、22、23、・・・、2nごとの予熱動作が可能になり、印字動作を行わない発熱体21、22、23、・・・、2nでは、次の印字に備えて予熱動作を行うことができる。これにより、予熱動作のみを行う時間を確保する必要がないため、印字速度を高めることができる。
【0091】
また、予熱ストローブ信号STR0および印字ストローブ信号STR1は、互いに同じ時間帯に出力されるようになっていてもよいが、一部の出力時間帯が重なっていて、他部の出力時間帯は重なっていなくてもよいし、互いの出力時間帯が全く異なっていて、一部でも重ならなくてもよい。
【0092】
ここで、印字ストローブ信号STR1の任意の信号を「第1の印字ストローブ信号」とし、予熱ストローブ信号STR0のうち、第1の印字ストローブ信号から生成される信号を「第1の予熱ストローブ信号」とする。第1の印字ストローブ信号が出力される時間帯と、第1の予熱ストローブ信号が出力される時間帯とが、一部または全部で異なっている場合、第1の予熱ストローブ信号を出力するタイミングの設定自由度を大きくすることができる。その結果、発熱体に、より精度の高い予熱動作を行わせることができる。
【0093】
さらに、予熱ストローブ信号STR0および印字ストローブ信号STR1は、互いに出力時間の幅が異なっていてもよい。すなわち、予熱用出力によって、発熱体21から2nのいずれかが印字に至らない程度に発熱するのであれば、印字ストローブ信号STR1と予熱ストローブ信号STR0との間で、出力時間の幅に差があってもよい。
【0094】
具体的には、印字ストローブ信号STR1の任意の信号を「第1の印字ストローブ信号」とし、予熱ストローブ信号STR0のうち、第1の印字ストローブ信号から生成される信号を「第1の予熱ストローブ信号」としたとき、第1の印字ストローブ信号の出力時間の幅と、第1の予熱ストローブ信号の出力時間の幅と、が異なっていてもよい。これにより、第1の予熱ストローブ信号によって規定される予熱量の設定自由度を大きくすることができる。その結果、発熱体に、より精度の高い発熱動作を行わせることができる。なお、この場合の出力時間の幅とは、前述したように、ある一定の印字文字数に対するものであり、例えば1文字単位での出力時間の長さである。
【0095】
また、以上のような期間t2と同様、期間t3以降でも、次の期間で行われる印字動作に応じた予熱動作を発熱体21、22、23、・・・、2nに行わせることができる。
【0096】
なお、制御信号出力回路171、172、173、・・・、17nには図示しないものの、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)インバーターを用いることができる。CMOSインバーターは、pチャネルのMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)とnチャネルのMOSFETとを組み合わせた論理否定ゲートである。
【0097】
図2に示す制御信号出力回路171、172、173、・・・、17nは、発熱体21、22、23、・・・、2nへの通電を制御する、このようなCMOSインバーターを有していてもよい。CMOSインバーターは、ドライバー出力部15が備えるドライバートランジスターを駆動するスイッチとして機能する。
【0098】
なお、CMOSインバーターを十分な駆動能力を持つスイッチとして機能させるためには、前述したチョッパー波形生成部141が生成するチョッパー波形の周期を、CMOSインバーターの応答時間より長くすることが好ましい。
【0099】
これにより、チョッパー波形の信号に基づいて生成される予熱ストローブ信号STR0の振動周期も、CMOSインバーターの応答時間より長くなる。その結果、予熱ストローブ信号STR0に基づいて駆動されるCMOSインバーターが、予熱ストローブ信号STR0の振動周期に追随できなくなるのを防止することができる。これにより、発熱体21、22、23、・・・、2nに的確な予熱動作を行わせることができる。
【0100】
以上、本発明の半導体装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の半導体装置は、前記実施形態の各部の構成を、同様の機能を有する任意の構成に置換したものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1…サーマルプリンター、9…外部機器、10…ドライバーIC、11…シフトレジスター、12…データラッチ、13…ドライバー出力制御部、14…予熱ストローブ生成回路、15…ドライバー出力部、20…ヘッド部、21…発熱体、22…発熱体、23…発熱体、2n…発熱体、100…プリンター制御部、101…CPU、102…ROM、103…RAM、121…印字ライン用ラッチ部、122…次ライン用ラッチ部、130…印字部、131…ヘッド駆動部、132…サーマルヘッド、133…電源供給部、140…用紙搬送部、141…チョッパー波形生成部、142…信号生成部、150…システムバス、161…印字データ入力端子、162…クロック信号入力端子、163…ラッチ信号入力端子、164…印字ストローブ信号入力端子、171…制御信号出力回路、172…制御信号出力回路、173…制御信号出力回路、17n…制御信号出力回路、181…入力部、182…表示部、183…入出力インターフェース、1411…否定論理積ゲート、1412…否定論理ゲート、1421…否定論理ゲート、171G1…論理積ゲート、171G2…論理積ゲート、171G3…論理和ゲート、CLK…クロック信号、CS1…制御信号、CS2…制御信号、CS3…制御信号、CSn…制御信号、D…印字データ信号、D1…印字データ、D2…印字データ、D3…印字データ、D4…印字データ、D5…印字データ、DO1…出力端子、DO2…出力端子、DO3…出力端子、DOn…出力端子、LAT…ラッチ信号、OSCO…出力信号、Q0…出力データ、Q1…出力データ、STR0…予熱ストローブ信号、STR1…印字ストローブ信号、t0…期間、t1…期間、t2…期間、t3…期間、t4…期間、t5…期間