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特許7449154画像形成システム、画像形成装置、情報処理装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】画像形成システム、画像形成装置、情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240306BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240306BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20240306BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240306BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G15/00 303
G03G21/00 396
G03G15/01 Y
B41J29/393 105
G06T1/00 310A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020077590
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021173865
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西沢 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】春日 邦章
(72)【発明者】
【氏名】山崎 博之
(72)【発明者】
【氏名】財津 義貴
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-125633(JP,A)
【文献】特開2003-058353(JP,A)
【文献】特開2004-109018(JP,A)
【文献】特開平03-101582(JP,A)
【文献】特開2015-119269(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0201066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
G03G 15/01
B41J 29/393
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色それぞれに対応して設けられ、対応する色の画像を形成する複数の画像形成手段と、
前記複数の画像形成手段が記録材に形成した検査用画像であって、前記複数の色を重ねることで形成された判定画像と、複数の基準色それぞれで形成された複数の基準画像と、を有する、前記検査用画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段による前記複数の基準画像の読取結果に基づき、前記複数の基準色それぞれの所定の色空間における第1色値を判定し、前記読取手段による前記判定画像の読取結果に基づき、前記判定画像に含まれる複数の画素の前記所定の色空間における第2色値を判定し、前記複数の基準色それぞれの前記所定の色空間における前記第1色値に対応する第1ベクトルに対する、前記複数の画素の前記第2色値に対応する第2ベクトルの角度に基づき、画像不良が生じているか否かを判定する判定手段と、
を備えていることを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記複数の基準色それぞれについて、前記第1ベクトルに対する前記第2ベクトルの角度の変化量を判定し、判定した前記変化量に基づき、画像不良が生じているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記判定手段は、前記読取手段による前記判定画像の読取結果に基づき、前記判定画像に含まれる画素の内の最も濃度の高い第1画素と、最も濃度の低い第2画素を判定し、前記複数の基準色それぞれについて、前記第1ベクトルと前記第1画素の前記第2ベクトルとの第1角度を判定し、前記第1ベクトルと前記第2画素の前記第2ベクトルとの第2角度を判定し、前記第1角度と前記第2角度との差を、前記角度の変化量とすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記判定手段は、前記複数の基準色の内の少なくとも1つの基準色について、前記角度の変化量が閾値より大きいと、画像不良が生じていると判定することを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記判定手段は、前記複数の基準色の内の第1基準色について、前記角度の変化量が前記閾値より大きいと、前記複数の画像形成手段の内の、画像不良を生じさせている画像形成手段を特定することを特徴とする請求項4に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記複数の基準色は、前記複数の色であり、
前記判定手段は、前記複数の基準色の内の前記第1基準色について、前記角度の変化量が前記閾値より大きいと、前記第1基準色に対応する画像形成手段が画像不良を生じさせていると判定することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記複数の色及び前記複数の基準色は、それぞれ、3つの有彩色を含み、
前記複数の基準色の3つの有彩色は、前記複数の色の内の2つの有彩色の減法混合色であり、
前記判定手段は、前記複数の基準色の内の有彩色である前記第1基準色について、前記角度の変化量が前記閾値より大きいと、前記複数の色の内の前記第1基準色に使用されていない有彩色に対応する画像形成手段が画像不良を生じさせていると判定することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記複数の画像形成手段のそれぞれは、周長が異なる複数の回転体を含み、
前記判定手段は、前記複数の基準色の内の前記第1基準色について、前記角度の変化量が前記閾値より大きいと、前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとの角度の変化の周期性に基づき、画像不良を生じさせていると特定した前記画像形成手段に含まれる前記複数の回転体の内の、画像不良を生じさせている回転体を特定することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記複数の画像形成手段は、搬送方向に搬送される前記記録材に前記検査用画像を形成し、
前記判定画像の前記搬送方向の長さは、前記複数の回転体の周長の最大値より大きいことを特徴とする請求項8に記載の画像形成システム。
【請求項10】
前記複数の画像形成手段のそれぞれは、
感光体と、
前記感光体を帯電させる帯電ローラと、
前記感光体に形成された潜像を現像するための現像ローラと、
を含み、
前記複数の回転体は、前記感光体と、前記帯電ローラと、前記現像ローラと、を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の画像形成システム。
【請求項11】
前記読取手段は、前記記録材において前記複数の基準画像及び前記判定画像が形成されていない前記記録材の下地領域をさらに読み取り、
前記判定手段は、前記下地領域の色値が前記所定の色空間における原点となる様に、前記第1色値及び前記第2色値を判定することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項12】
前記複数の画像形成手段と、前記読取手段と、前記判定手段は、1つの装置内に設けられることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項13】
前記複数の画像形成手段と前記判定手段は第1装置に設けられ、前記読取手段は、前記第1装置と通信可能な第2装置に設けられることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項14】
前記複数の画像形成手段は、第1装置に設けられ、前記読取手段は、第2装置に設けられ、前記判定手段は、前記第2装置と通信可能な第3装置に設けられることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項15】
複数の色それぞれに対応して設けられ、対応する色の画像を形成する複数の画像形成手段と、
前記複数の画像形成手段が記録材に形成した検査用画像であって、前記複数の色を重ねることで形成された判定画像と、複数の基準色それぞれで形成された複数の基準画像と、を有する、前記検査用画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段による前記複数の基準画像の読取結果に基づき、前記複数の基準色それぞれの所定の色空間における第1色値を判定し、前記読取手段による前記判定画像の読取結果に基づき、前記判定画像に含まれる複数の画素の前記所定の色空間における第2色値を判定し、前記複数の基準色それぞれの前記所定の色空間における前記第1色値に対応する第1ベクトルに対する、前記複数の画素の前記第2色値に対応する第2ベクトルの角度に基づき、画像不良が生じているか否かを判定する判定手段と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
前記読取手段は、前記検査用画像が形成された前記記録材が前記画像形成装置の外部に排出される前に、前記検査用画像を読み取ることを特徴とする請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
複数の色それぞれに対応する複数の画像形成手段を有する画像形成装置が前記複数の色を使用して記録材に形成した検査用画像の画像データが入力される情報処理装置であって、
前記検査用画像は、前記複数の色を重ねることで形成された判定画像と、複数の基準色それぞれで形成された複数の基準画像と、を有し、
前記情報処理装置は、
前記画像データに基づき前記複数の基準色それぞれの所定の色空間における第1色値を判定し、前記画像データに基づき、前記判定画像に含まれる複数の画素の前記所定の色空間における第2色値を判定し、前記複数の基準色それぞれの前記所定の色空間における前記第1色値に対応する第1ベクトルに対する、前記複数の画素の前記第2色値に対応する第2ベクトルの角度に基づき、前記画像形成装置が形成する画像に画像不良が生じているか否かを判定する判定手段を備えていることを特徴とする情報処理装置。
【請求項18】
請求項17に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置が形成する画像の不良を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、画像形成装置において検査用画像を形成し、形成した検査用画像を読み取ることで、形成する画像品質の劣化、つまり、画像不良の発生を検出し、かつ、その原因を特定する構成を開示している。これにより、部品交換等により原因を取り除くまでの時間、つまり、ダウンタイムを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4517651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、複数色のトナーにより画像を形成するカラー画像形成装置においては、様々な原因により様々な種別の画像不良が生じ得る。したがって、原因箇所の特定精度が低いと原因とは異なる部品を交換してダウンタイムを増大させ得る。原因箇所の特定精度を高くするために多くの検査用画像を形成すると、多くの記録材を消費し、かつ、ユーザに負の心証を与える。
【0005】
本発明は、少ない検査用画像で精度良く画像不良の発生を判定する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、画像形成システムは、複数の色それぞれに対応して設けられ、対応する色の画像を形成する複数の画像形成手段と、前記複数の画像形成手段が記録材に形成した検査用画像であって、前記複数の色を重ねることで形成された判定画像と、複数の基準色それぞれで形成された複数の基準画像と、を有する、前記検査用画像を読み取る読取手段と、前記読取手段による前記複数の基準画像の読取結果に基づき、前記複数の基準色それぞれの所定の色空間における第1色値を判定し、前記読取手段による前記判定画像の読取結果に基づき、前記判定画像に含まれる複数の画素の前記所定の色空間における第2色値を判定し、前記複数の基準色それぞれの前記所定の色空間における前記第1色値に対応する第1ベクトルに対する、前記複数の画素の前記第2色値に対応する第2ベクトルの角度に基づき、画像不良が生じているか否かを判定する判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、少ない検査用画像で精度良く画像不良の発生を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による画像形成装置のブロック図。
図2】一実施形態による画像形成装置の構成図。
図3】周期的な画像不良の例を示す図。
図4】一実施形態による画像不良の判定処理のフローチャート。
図5】一実施形態による検査用画像を示す図。
図6】一実施形態による画像不良の判定処理の説明図。
図7】一実施形態による画像不良の判定処理の説明図。
図8】画像不良が発生している際に形成される検査用画像の例を示す図。
図9】画像不良が発生している際に形成される検査用画像の例を示す図。
図10】一実施形態による画像不良の判定処理のフローチャート。
図11】一実施形態による画像不良の判定処理の説明図。
図12】一実施形態による画像不良の判定処理の説明図。
図13】一実施形態による画像形成ユニットの構成図。
図14】一実施形態による画像形成システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による画像形成装置のブロック図である。CPU3は、ホストコンピュータ2から形成する画像の画像データを受信すると、当該画像データを、一旦、ページメモリ4に格納する。そして、CPU3は、ページメモリ4に格納した画像データに基づき画像形成ユニット200を制御して記録材に画像を形成する。また、CPU3は、原稿読取ユニット100が読み取った画像データによっても、同様に、記録材Pに画像を形成することができる。オペレーションパネル5は、ユーザインタフェースを提供する。
【0011】
図2は、原稿読取ユニット100及び画像形成ユニット200の構成図である。原稿読み取りユニット100のトレイ101には、原稿Gが載置される。給送ローラ102は、トレイ101上の原稿Gを搬送路104に給送する。この際、分離ローラ103は、原稿Gの重送を防止する。読取部105は、コンタクトイメージセンサを有し、搬送路を搬送される原稿Gの表面の画像を光学的に読み取り、読取結果である画像データをCPU3に出力する。画像データは、例えば、各画素それぞれについて、赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれを8ビット(0~255)で示す情報である。その後、原稿Gは、排出ローラ106によってトレイ107に排出される。
【0012】
画像形成ユニット200は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナーを使用してフルカラーの画像を形成する。図2において、参照符号の末尾のY、M、C及びKは、それぞれ、参照符号により示される部材が形成に関わるトナー像の色が、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックであることを示している。しかしながら、以下の説明において色を区別する必要が無い場合には、末尾の文字を省略した参照符号を使用する。感光体201は、画像形成時、図の時計回り方向に回転駆動される。帯電ローラ202は、対応する感光体201の表面を一様な電位に帯電ささせる。露光部203は、CPU3から送信される画像情報に応じて変調した光Lにより感光体201を走査・露光し、感光体201に静電潜像を形成する。現像部204の現像ローラ205は、感光体201の静電潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する。
【0013】
一方、給送ローラ206は、記録材Pを搬送路に給送する。レジストレーションローラ207は、給送された記録材Pを下流側に搬送する。転写ローラ208は、転写バイアス電圧を出力することで、対応する感光体201のトナー像を記録材Pに転写する。記録材Pが転写ローラ208Y、208M、208C、208Kの対向位置を順に通過する過程において、記録材Pには、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が順に転写される。なお、感光体201から記録材Pに転写されず感光体201に残留したトナーはクリーニング部211により除去・回収される。トナー像の転写後、記録材Pは、定着部209に搬送される。定着部209は、記録材Pを加圧・加熱することでトナー像を記録材Pに定着させる。トナー像の定着後、記録材Pは、トレイ210に排出される。対応する感光体201、現像部204、帯電ローラ202及びクリーニング部211は、画像形成装置の本体から着脱可能なプロセスカートリッジ(画像形成部)に収容される。
【0014】
続いて、画像形成装置の回転体の故障により発生する画像不良の例について説明する。
【0015】
[帯電ローラポチ]
帯電ローラ202に異物が付着・堆積すると、異物が付着した領域は感光体201を適切に帯電できなくなる。その結果、黒点状の画像不良が発生する。帯電ローラポチは、帯電ローラ202の周長毎に繰り返し生じる。図3(A)は、帯電ローラ202の周長が31.4mmの場合において帯電ローラポチが生じた状態を示している。
【0016】
[感光体ポチ]
感光体201の感光体層が剥がれ落ちて基層のアルミが露出すると、正常な部分との間の電位差からトナーが付着して黒点状の画像不良が発生する。感光体ポチは、感光体201の周長毎に繰り返し生じる。図3(B)は、感光体201の周長が75.4mmの場合において感光体ポチが生じた状態を示している。
【0017】
[現像ローラポチ]
現像ローラ205に異物が付着・堆積すると、その部分だけトナーをコートすることができず、白点状の画像不良が発生する。現像ローラポチは、現像ローラ205の周長毎に繰り返し生じる。図3(C)は、現像ローラ205の周長が44.0mmの場合において現像ローラポチが生じた状態を示している。
【0018】
図4は、本実施形態による画像不良の判定処理を示すフローチャートである。図4の処理は、例えば、ユーザがオペレーションパネル5を操作して、画像形成装置に画像不良の検査を指示したことに応答して開始される。CPU3は、S10で、検査用画像を記録材Pに形成する。検査用画像の画像データは、例えば、ページメモリ4に格納されている。図5は、本実施形態による検査用画像を示している。なお、本明細書においてY方向とは、記録材Pの搬送方向であり副走査方向とも呼ばれる。また、本明細書においてX方向とは、記録材Pの面内においてY方向とは直交する方向であり主走査方向とも呼ばれる。
【0019】
検査用画像は、その領域Aに複数の基準色それぞれで形成された複数の基準画像を有する。本実施形態では、複数の基準色をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックとし、よって、基準画像Y、M、C及びKを領域Aに形成している。また、検査用画像は、その領域Bに、それぞれが10%濃度のイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックを重ね合わせた判定画像Pbを有する。なお、各色の濃度は10%に限定されない。判定画像Pbは、可能な限り大きく形成する。特にY方向の長さは、画像形成装置内の各回転体の周長の最大値より大きくする。例えば、図3に示す様に、帯電ローラ202、感光体201及び現像ローラ205の周長が、それぞれ、31.4mm、75.4mm及び44.0mmである場合、判定画像PbのY方向の長さは、少なくとも75.4mmより大きくする。より好ましくは、判定画像PbのY方向の長さは、画像形成装置内の各回転体の周長の最大値の3倍より大きくする。
【0020】
検査用画像の形成後、ユーザは、S11で、検査用画像が形成された記録材Pを原稿読取ユニット100のトレイ101にセットし、原稿読取ユニット100に検査用画像が形成された記録材Pを読み取らせる。原稿読取ユニット100は、読み取った読取画像データをCPU3に出力する。CPU3は、図6(A)に示す様に、基準画像Y、M、C及びKと、基準画像及び判定画像が形成されていない下地領域のRGB色空間における色値を判定して図示しないメモリに格納する。なお、基準画像Y、M、C及びKの色値は、基準画像内の特定の画素、或いは、全画素の色値の平均値とすることができる。また、下地領域の色値は、下地領域の所定の画素、或いは、全画素の色値の平均値とすることができる。
【0021】
CPU3は、S12で、S11で求めた基準画像Y、M、C及びKと、下地領域のRGB色空間における色値を公知の方法で、L色空間の色値に変換する。図6(B)は、図6(A)に示す色値をL色空間の色値に変換したものである。以下、特に他の色空間であることを明記しない限り、"色空間"とは、L色空間を意味し、"色値"とはL色空間の色値を意味するものとする。S13において、CPU3は、図6(B)に示す基準画像Y、M、C及びKの色値から下地領域の色値を減ずる。この処理は、下地領域の色値を色空間における原点とすることに対応する。図6(C)は、図6(B)に示す、基準画像Y、M、C及びKの色値から下地領域の色値を減じた値を示している。そして、CPU3は、S13において、図6(C)に示す色値を色空間における長さ1のベクトルに正規化する。図6(D)は、図6(C)の色値を正規化した結果を示している。なお、この処理は、図6(D)の各ベクトルの単位ベクトルを求めることに対応する。以後、図6(D)に示す基準画像Y、M、C及びKの色値を、Y、M、C及びKそれぞれの基準ベクトルと表記する。また、CPU3は、原稿読取ユニット100が読み取った判定画像Pbの各画素のRGB空間における色値についても、同様に、L色空間の色値に変換し、下地領域の色値を減じた後、単位ベクトルに変換する。以下、判定画像Pbの画素のこの単位ベクトルを判定ベクトルと呼ぶものとする。
【0022】
続いて、CPU3は、S14で、判定画像Pbを読み取った画像データから判定される、判定画像Pb内の最も濃度の高い画素と、最も濃度の低い画素を、各画素の色値に基づき判定する。そして、最も濃度の高い画素の判定ベクトルと、Y、M、C及びKそれぞれの基準ベクトルとの内積と、最も濃度の低い画素の判定ベクトルと、Y、M、C及びKそれぞれの基準ベクトルとの内積と、を求める。例えば、図7(A)は、図8に示す様に検査用画像が形成された場合の判定画像Pb内の最も濃度の高い画素の判定ベクトルと、最も濃度の低い画素の判定ベクトルを示している。図8では、副走査方向においてマゼンタに濃度ムラが発生し、これにより、判定画像Pbにも、高濃度領域(或いは、通常濃度領域)F2と、低濃度領域F3が生じている。
【0023】
図7(B)は、図7(A)に示す判定ベクトルと、Y、M、C及びKそれぞれの基準ベクトルとの内積を示している。CPU3は、S14で、図7(B)に示す様に、各基準色について、最大濃度の画素との内積と、最小濃度の画素との内積との差(絶対値)を変化量として求める。基準ベクトル及び判定ベクトルは共に単位ベクトルであるため、基準ベクトルと判定ベクトルとの内積は、基準ベクトルと判定ベクトルとの角度に応じた値となる。したがって、図7(B)に示す変化量とは、基準ベクトルに対する、判定画像Pb内の複数の画素それぞれの判定ベクトルの角度の変化量の最大値に対応する。CPU3は、S15において、変化量が総て第1閾値以下であるかを判定する。なお、第1閾値は、色に関係なく同じとすることも、色毎に異なるものとすることもできる。CPU3は、総ての色の変化量が第1閾値以下であると、画像不良が無いと判定して図4の処理を終了する。一方、変化量が第1閾値より大きい色が存在すると、CPU3は、S16で、画像不良が発生していると判定する。これは、ある基準色の基準ベクトルに対する判定ベクトルの角度の変化量は、判定画像Pbにおける当該基準色の変化が大きい程、大きくなるからである。また、この場合、画像不良を生じさせているプロセスカートリッジは、変化量が第1閾値より大きい色に対応するものである。CPU3は、画像不良の発生と、画像不良を生じさせているプロセスカートリッジをユーザに通知して、図4の処理を終了する。
【0024】
以上、本実施形態では、検査用画像に基準色の基準画像と、各色を重ね合わせた一定濃度の判定画像と、を含める。本実施形態において基準色は、画像形成に使用する各色と同じY、M、C及びKである。そして、記録材Pの下地の色値を考慮して、基準画像それぞれの色値を判定する(基準ベクトル)。また、判定画像Pbの最大濃度及び最小濃度の画素の色値についても記録材Pの下地の色値を考慮して色値を判定する(判定ベクトル)。判定画像Pbは一定濃度であるため、ある色の基準ベクトルと2つの判定ベクトルそれぞれの内積(角度)の差は、当該色の判定画像内における色値の変化を示すものとなる。したがって、内積の差に基づき、1つの記録材に形成した検査用画像により、画像不良の発生と、画像不良を発生させている色とを精度良く判定することができる。特に、下地の色を考慮することで、記録材の下地色に拘わらず精度良く判定を行うことができる。また、検査用画像に基準画像を含めることで、トナーの色材が変色してしまった場合においても、画像不良の発生と、画像不良を発生させている色とを精度良く判定することができる。
【0025】
なお、本実施形態においては、基準色を画像形成に使用する個々の色であるY、M、C及びKとしていたが、基準色を他の色とすることもできる。例えば、有彩色の基準色を、ブルー、グリーン、レッドとすることができる。ここで、ブルーは、マゼンタとシアンの減法混合色である。また、グリーンは、イエローとシアンの減法混合色である。さらに、レッドは、イエローとマゼンタの減法混合色である。なお、ブルーは、イエローの反対色であり、グリーンは、マゼンタの反対色であり、レッドは、シアンの反対色である。この場合、例えば、マゼンタに濃度ムラが生じると、マゼンタの反対色であるグリーンとの内積が大きく変化するため、マゼンタの画像不良が生じていると判定することができる。
【0026】
また、本実施形態では、基準ベクトル及び判定ベクトルを単位ベクトルとしたが、基準ベクトルと各判定ベクトルとの角度の変化が評価できれば良く、本発明は単位ベクトルに変換することに限定されない。
【0027】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態においては、画像不良を生じさせている色に加えて、画像不良を生じさせている部品も判定する。図9は、マゼンタに現像ローラポチが生じている際に形成された検査用画像を示している。判定画像Pbには、周期的な色の変化領域Wが生じている。
【0028】
図10は、本実施形態による故障部品の特定処理のフローチャートである。なお、図10の処理は、図4のS16において実行される。つまり、画像不良を生じさせている色を判定すると実行される。例えば、図8に示す画像不良が生じている場合、マゼンタの変化量が第1閾値より大きくなる。この場合、CPU3は、S20で、判定画像Pbの各画素の判定ベクトルと、画像不良を生じさせているMの基準ベクトルとの内積をそれぞれ求める。例えば、判定画像Pbが、X方向において700画素を含み、Y方向において1050画素を含むものとする。この場合、CPU3は、700×1050個の画素それぞれについて内積を求める。
【0029】
CPU3は、S21で、S20で求めた各画素の内積値を第2閾値により二値化する。なお、第2閾値は所定値とすることも、各画素の内積値の平均値とすることもできる。図11は二値化した内積値のイメージ図である。なお、図11では、内積値が第2閾値を超えている部分を黒色で示している。黒色の部分は、色が変化している変化領域Wに対応する。
【0030】
CPU3は、S22で、閾値より大きい領域、つまり、変化領域Wの大きさと、その位置を判定する。変化領域Wの大きさは、変化領域Wを構成する画素の画素数である。また、位置は、X方向とY方向の位置である。図12は、判定結果の一例を示している。図12においては、Y方向において44mmの間隔で、略同じ大きさの色の変化が生じていることが分かる。44mmの周期の色の変化を生じさせるのは、本例においては現像ローラ205である。したがって、CPU3は、S23で、マゼンタの現像ローラ205Mが故障と判定することができる。
【0031】
以上、本実施形態では、画像不良が発生している色について、基準ベクトルと、判定ベクトルとの角度の変化の周期性を判定する。回転体の不良の場合、回転体の周長に応じた周期で画像不良が生じるため、角度変化の周期性により、画像不良を生じさせている回転体を精度良く判定することできる。
【0032】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について、第一実施形態及び第二実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態及び第二実施形態においては、検査用画像の形成後、ユーザは、検査用画像が形成された記録材を原稿読取ユニット100のトレイ101にセットし、検査用画像の読み取りのための操作を行わなければならなかった。本実施形態では、画像形成ユニット200に読取部400を設けて検査用画像を読み取る。
【0033】
図13は、本実施形態による画像形成装置の画像形成ユニット200を示している。本実施形態において画像形成装置は、原稿読取ユニット100を有するものであっても、有さないものであっても良い。なお、既に説明したのと同様の構成要素については、同じ参照符号を付与してその説明については省略する。検査用画像が転写され、定着部209で検査用画像の定着が行われた記録材Pは、フラッパ212の設定及び排出ローラ213の排出方向とは逆方向への回転により記録材Pを両面搬送路に向けて搬送する。記録材Pの検査用画像は、両面搬送路を搬送されている間、読取部400によって読み取られる。
【0034】
以上、本実施形態では、画像形成ユニット200内に読取部400を設け、検査用画像を記録材に形成後、当該記録材を画像形成装置の外部に排出する前に読取部400で読み取る。この構成により、検査用画像を読み取るためのユーザ作業を不要とすることができる。
【0035】
<第四実施形態>
続いて、第四実施形態について、第一実施形態から第三実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態の画像形成装置は、図14に示す様に、原稿読取ユニット100を有さない。代わりに、本実施形態では、スキャナといった原稿読取装置500をホストコンピュータ2に接続する。つまり、本実施形態では、画像形成装置と、原稿読取装置500と、ホストコンピュータ2と、を有する画像形成システムが提供される。なお、原稿読取装置500は、ホストコンピュータ2と通信可能に構成され、ホストコンピュータ2は、画像形成装置と通信可能に構成される。ユーザは、検査用画像が形成された記録材Pを原稿読取装置500に読み取らせる。原稿読取装置500は、読み取った画像データをホストコンピュータ2に出力し、ホストコンピュータ2は、読み取った画像データを画像形成装置に出力する。画像形成装置は、ホストコンピュータ2からの画像データに対して上述した処理を行って画像不良を生じさせている色や部品を判定する。
【0036】
なお、ホストコンピュータ2が、原稿読取装置500からの画像データに基づき、上述した処理を行って画像不良を生じさせている色や部品を判定する構成であっても良い。この場合、ホストコンピュータ2は、原稿読取装置500から入力される画像データを処理して、画像形成装置が形成する画像に画像不良が発生しているか否かと、画像不良が生じている場合には故障部品を判定する情報処理装置となる。さらに、原稿読取装置500が、上述した処理を行って画像不良を生じさせている色や部品を判定する構成であっても良い。
【0037】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0038】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0039】
105、400:読取部、500:原稿読取装置、3:CPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14