IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特許7449156太陽電池モジュール用裏面保護材及び太陽電池モジュール裏面保護材
<>
  • 特許-太陽電池モジュール用裏面保護材及び太陽電池モジュール裏面保護材 図1
  • 特許-太陽電池モジュール用裏面保護材及び太陽電池モジュール裏面保護材 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール用裏面保護材及び太陽電池モジュール裏面保護材
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/049 20140101AFI20240306BHJP
【FI】
H01L31/04 562
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020079120
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021174921
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦裕
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138892(JP,A)
【文献】特開2003-031824(JP,A)
【文献】特開2003-282921(JP,A)
【文献】特開2004-079823(JP,A)
【文献】特開2020-064954(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0345674(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102487093(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層及び前記絶縁層の裏面に積層され、1μm以上100μm以下の厚みを有する金属層を備え、
前記金属層は、中央部と、前記中央部を間隔を空けて取り囲む外周部と、を有する、太陽電池モジュール用裏面保護材。
【請求項2】
前記金属層の前記外周部の外寸は前記絶縁層の外寸と等しい、請求項1に記載の裏面保護材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の裏面保護材と、
前記裏面保護材の表側に、平面視で前記外周部と重複しないよう配置される複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セルの表側を覆うよう配置される表面保護材と、
前記裏面保護材と前記表面保護材との間に充填される封止材と、
を備える、太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記裏面保護材の外周を取り囲む枠体をさらに備え、
前記枠体は、平面視で、前記外周部と少なくとも部分的に重複し、前記中央部と重複しない、請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用裏面保護材及び太陽電池モジュール裏面保護材に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の太陽電池セルと、太陽電池セルの表面側を覆う透明な表面保護材と、太陽電池セルの裏面側を覆う裏面保護材(バックシート)と、表面保護材と裏面保護材との間に充填される封止材と、を備える太陽電池モジュールが広く利用されている。太陽電池モジュール用裏面保護材の中には、防水性を向上するために金属層を有するものがある。金属層を有する裏面保護材を用いる場合、太陽電池セルの電極構造又は太陽電池セル間を接続するインターコネクタ等の導電性部材が裏面保護材に接触すると、裏面保護材を介して短絡又は地絡が発生する可能性がある。
【0003】
このような問題を防止する技術として、特許文献1には、外周部を囲む枠体を備える太陽電池モジュールにおいて、裏面保護材の平面サイズを小さくすることで、枠体に裏面保護材の端面が当接しないようにする構成が開示されている。この構成によって、万一太陽電池セルの電極構造等が裏面保護材の金属層に接触したとしても、枠体との間が絶縁されていことで、短絡及び地絡が生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-138892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、枠体が裏面保護材の裏面側に延出するフランジ状の部分を有するため、このフランジ部が裏面保護材に強く当接すると、裏面保護材の金属箔と枠体とが電気的に接触しまうおそれがある。裏面保護材を枠体のフランジ部よりもさらに内側に後退させれば、電気的な接触は防止できるが、太陽電池モジュールの封止性や、機械的強度が不十分となるおそれが生じる。そこで、本発明は、裏面保護材を介した短絡及び地絡を防止できる太陽電池モジュール用裏面保護材及び太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る裏面保護材は、絶縁層及び前記絶縁層の裏面に積層される金属層を備え、前記金属層は、中央部と、前記中央部を間隔を空けて取り囲む外周部と、を有する。
【0007】
本発明の前記態様に係る裏面保護材において、前記金属層の前記外周部の外寸は前記絶縁層の外寸と等しくてもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る太陽電池モジュールは、上述の裏面保護材と、前記裏面保護材の表側に、平面視で前記外周部と重複しないよう配置される複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルの表側を覆うよう配置される表面保護材と、前記裏面保護材と前記表面保護材との間に充填される封止材と、を備える。
【0009】
本発明の前記態様に係る太陽電池モジュールは、前記裏面保護材の外周を取り囲む枠体をさらに備え、前記枠体は、平面視で、前記外周部と少なくとも部分的に重複し、前記中央部と重複しなくてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る裏面保護材及び太陽電池モジュールは、裏面保護材を介しが短絡及び地絡を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの模式断面図である。
図2図1の太陽電池モジュールの模式裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、簡略化のために、部材の図示、符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール1の模式断面図である。図2は、太陽電池モジュール1の模式裏面図である。
【0014】
太陽電池モジュール1は、裏面保護材10と、裏面保護材10の表側に配置される複数の太陽電池セル20と、複数の太陽電池セル20の表側を覆うよう配置される表面保護材30と、裏面保護材10と表面保護材30との間に充填される封止材40と、裏面保護材10の外周を取り囲む枠体50と、を備える。
【0015】
裏面保護材10は、それ自体が本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護材の一実施形態である。裏面保護材10は、絶縁層11と、絶縁層11の表面に積層される金属層12と、金属層12の表面に積層される保護層13と、を備える構成とすることができる。
【0016】
絶縁層11、金属層12の外周部122及び保護層13の外寸は互いに等しいことが好ましい。つまり、絶縁層11、金属層12及び保護層13の端面が連続することが好ましい。特に、裏面保護材10の外縁部に金属層12の外周部122が存在することにより、枠体50が裏面保護材10に圧接される場合に裏面保護材10の破断を防止できる。
【0017】
絶縁層11は、主に金属層12と太陽電池セル20との絶縁性を担保する層である。絶縁層11は、板状又はシート状の材料から形成することができる。具体的には、絶縁層11は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂から形成することができる。絶縁層11の厚みとしては、例えば20μm以上1000μm以下、好ましくは50μm以上200μm以下とすることができる。
【0018】
金属層12は、主に防水性を担保する層である。これにより、太陽電池セル20の水分による劣化を防止できる。また、金属層12は、太陽電池セル20を透過又は太陽電池セル20の間を通過した光を反射して太陽電池セル20に戻すことで、光電変換効率を向上する機能を果たし得る。
【0019】
金属層12は、中央部121と、中央部121を間隔を空けて取り囲む外周部122と、を有する。金属層12の材質としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等を挙げることができ、特にアルミニウムが好適である。金属層12の厚みとしては、例えば1μm以上200μm以下、好ましくは20μm以上100μm以下とすることができる。
【0020】
中央部121と外周部122との間隔としては、例えば0.1mm以上10mm以下、好ましくは1mm以上5mm以下とすることができる。中央部121と外周部122との間隔を前記下限以上とすることによって、中央部121と外周部122との絶縁を確実にすることができる。中央部121と外周部122との間隔を前記上限以下とすることによって、裏面保護材10のバリア性の低下を抑制することができる。
【0021】
外周部122は、裏面保護材10の枠体50が取り付けられる部分の強度を向上する。外周部122の幅としては、例えば5mm以上50mm以下とすることができる。外周部122の幅を必要最小限度とすることによって、短絡及び地絡を防止する効果を極大化することができる。
【0022】
保護層13は、主に金属層12を保護する層である。保護層13は、板状又はシート状の材料から形成することができる。具体的には、保護層13は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂から形成することができる。保護層13の厚みとしては、例えば10μm以上500μm以下、好ましくは20μm以上100μm以下とすることができる。
【0023】
保護層13と絶縁層11とは、金属層12の中央部121と外周部122との隙間において一体に接続されていることが好ましい。これにより、金属層12が中央部121と外周部122とに分断されていることによる裏面保護材10の機械的強度及び防水性の低下を抑制できる。
【0024】
裏面保護材10は、金属層12の中央部121が存在する領域内に、複数の太陽電池セル20の電力を出力するための配線21を引き出すスリット又は開口14を有してもよい。
【0025】
以上のような絶縁層11、金属層12及び保護層13を備える裏面保護材10は、例として、例えばトムソン刃による打ち抜き等で形成した金属層12を絶縁層11と保護層13とによって挟み込んで熱圧着することにより形成することができる。また、裏面保護材10は、絶縁層11及び保護層13の一方にパターン蒸着等によって金属層12を積層してから、絶縁層11及び保護層13の他方を熱圧着することにより形成してもよい。
【0026】
複数の太陽電池セル20は、平面視で金属層12の外周部122と重複しないよう外周部122の内側に、好ましくは中央部121に内包されるよう配置される。複数の太陽電池セル20は、それぞれ一定数の太陽電池セル20を一列に並べて電気的に接続した複数のストリングを形成した状態で配設され得る。太陽電池セル20は、表裏に電極が設けられた両面電極型太陽電池セルであってもよく、裏面に極性が異なる電極が設けられた裏面電極型太陽電池セルであってもよい。太陽電池セル20同士は、導電性を有するインターコネクタ22によって接続され得る。
【0027】
表面保護材30は、封止材40を介して太陽電池セル20の表面を覆うことにより、太陽電池セル20を保護する。表面保護材30は、板状又はシート状の材料から形成することができ、透光性及び対候性に優れることが好ましい。具体的には、表面保護材30の材質としては、例えばアクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂、ガラスなどを挙げることができる。また、表面保護材30の表面は、光の反射を抑制するために、凹凸状に加工されたり、反射防止コーティング層で被覆されてもよい。
【0028】
封止材40は、太陽電池セル20を封止して保護するもので、主に太陽電池セル20に水分が接触することを防止する。このため、封止材40は、太陽電池セル20の受光側の面と表面保護材30との間、太陽電池セル20の裏側の面と裏面保護材10との間に介在する。
【0029】
封止材40は、太陽電池セル20と裏面保護材10及び表面保護材30とを接着すると共に、太陽電池セル20の周囲の隙間をなくすことで、太陽電池セル20を保護する。このため、封止材40としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又は、シリコーン樹脂等の透光性を有する熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
【0030】
封止材40は、2枚の熱可塑性樹脂製シートから形成することができる。具体的には、裏面保護材10、封止材40の裏側部分を形成する第1のシート、複数の太陽電池セル20(複数のストリング)、封止材40の表側部分を形成する第2のシート及び表面保護材30をこの順番に積層し、この積層体を熱プレスすることによって第1のシートと第2のシートとを溶融一体化させることで、裏面保護材10、太陽電池セル20及び表面保護材30を接着する封止材40を形成することができる。
【0031】
枠体50は、太陽電池モジュール1の強度を向上する補強材であると共に、太陽電池モジュール1を例えば建築物、車両等に設置するための構造材となる。枠体50は、裏面保護材10の外側を囲む外枠部51と、外枠部51から裏面保護材10の裏面側に延びるフランジ部52と、を有する構造とすることができる。
【0032】
外枠部51は、枠体50を裏面保護材10に対して平面方向に位置決めする。フランジ部52は、枠体50を裏面保護材10に対して法線方向に位置決めする。フランジ部52は、平面視で、裏面保護材10に対して堅固に固定するために金属層12の外周部122と少なくとも部分的に重複し、且つ中央部121を介して太陽電池セル20と電気的に接続されないために中央部121とは重複しないことが好ましい。
【0033】
以上の構成を有する太陽電池モジュール1は、裏面保護材10が互いに分離された中央部121と外周部122とを有する金属層12を備えるため、何らかの原因で太陽電池セル20等が中央部121に接触したとしても、枠体50を介してグランド等に接続され得る外周部122と太陽電池セル20との絶縁が保たれる。このため、太陽電池モジュール1は、短絡及び地絡が生じにくい。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。
【0035】
例として、本発明に係る裏面保護材において、保護層は省略可能である。また、本発明に係る裏面保護材は、上述した実施形態の構成要素以外の構成要素を備えてもよい。例として、本発明に係る裏面保護材は、強度を向上するための補強材等をさらに備えてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 太陽電池モジュール
10 裏面保護材
11 絶縁層
12 金属層
13 保護層
14 スリット又は開口
20 太陽電池セル
21 配線
22 インターコネクタ
30 表面保護材
40 封止材
50 枠体
51 外枠部
52 フランジ部
121 中央部
122 外周部
図1
図2