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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】荷揚げ装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 67/60 20060101AFI20240306BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B65G67/60 G
G01C3/06 120Q
B65G67/60 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020083076
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021178691
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂野 肇
(72)【発明者】
【氏名】久保 諒太郎
(72)【発明者】
【氏名】香月 良夫
(72)【発明者】
【氏名】阿久根 圭
(72)【発明者】
【氏名】水崎 紀彦
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131393(JP,A)
【文献】特開2019-105654(JP,A)
【文献】特開2019-139304(JP,A)
【文献】特開2015-022541(JP,A)
【文献】国際公開第2015/195046(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110182622(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 67/60 - 67/62
G01C 3/00 - 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の計測点までの計測距離を計測する測距センサと、
複数の前記計測点のいずれかを対象計測点とし、前記対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する同数の計測点を比較計測点とし、前記対象計測点と前記比較計測点との近接度に基づいて、前記対象計測点がノイズであるかを判定するノイズ判定部と、
を備え、
前記ノイズ判定部は、
前記対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する少なくとも2点ずつの計測点を比較計測点とし、前記対象計測点までの計測距離と、前記比較計測点までの計測距離との差分を前記近接度とし、前記近接度が差分閾値未満である前記比較計測点が2つ未満である場合、前記対象計測点をノイズと判定する荷揚げ装置。
【請求項2】
複数の計測点までの計測距離を計測する測距センサと、
複数の前記計測点のいずれかを対象計測点とし、前記対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する同数の計測点を比較計測点とし、前記対象計測点と前記比較計測点との近接度に基づいて、前記対象計測点がノイズであるかを判定するノイズ判定部と、
を備え、
前記ノイズ判定部は、
前記対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する少なくとも2点ずつの計測点を比較計測点とし、前記対象計測点から前記比較計測点までの距離を前記近接度とし、前記近接度が差分閾値未満である前記比較計測点が2つ未満である場合、前記対象計測点をノイズと判定する荷揚げ装置。
【請求項3】
前記ノイズ判定部は、
前記近接度が差分閾値未満である前記比較計測点が2つ未満であり、かつ、前記対象計測点までの計測距離が距離閾値未満である場合、前記対象計測点をノイズと判定する請求項1または2に記載の荷揚げ装置。
【請求項4】
前記ノイズ判定部は、
前記近接度が差分閾値未満である前記比較計測点が2つ未満であっても、前記対象計測点までの計測距離が距離閾値以上である場合、前記対象計測点を非ノイズと判定する請求項に記載の荷揚げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷揚げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷揚げ装置は、船倉内に積載された積荷を、船倉外に搬出する。荷揚げ装置の一例としてアンローダ装置がある。アンローダ装置では、積荷の状態や、船倉の壁面までの距離等を作業者が直接目視することが困難または不可能なことが多い。
【0003】
そこで、アンローダ装置では、複数の測距センサでの計測結果を用いて船倉のモデルを生成し、生成した船倉のモデルと掻取部のモデルとの位置関係に基づいて、船倉の壁面までの距離を導出する技術(例えば、特許文献1)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-131393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、船倉の一部は開放されていることがあり、船倉内には、積荷の粉塵、雨、雪などの浮遊物が存在する。そのため、測距センサによって浮遊物までの距離が計測されてしまうことがある。このような場合、例えば、船倉の壁面などの計測対象物までの距離を計測するはずが、浮遊物までの距離を計測してしまうことになり、計測対象物の計測精度が低下してしまうおそれがあった。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑み、計測対象物の計測精度を向上することが可能な荷揚げ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る荷揚げ装置は、複数の計測点までの計測距離を計測する測距センサと、複数の計測点のいずれかを対象計測点とし、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する同数の計測点を比較計測点とし、対象計測点と比較計測点との近接度に基づいて、対象計測点がノイズであるかを判定するノイズ判定部と、を備え、ノイズ判定部は、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する少なくとも2点ずつの計測点を比較計測点とし、対象計測点までの計測距離と、比較計測点までの計測距離との差分を近接度とし、近接度が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満である場合、対象計測点をノイズと判定する
【0009】
本開示の他の態様に係る荷揚げ装置は、複数の計測点までの計測距離を計測する測距センサと、複数の計測点のいずれかを対象計測点とし、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する同数の計測点を比較計測点とし、対象計測点と比較計測点との近接度に基づいて、対象計測点がノイズであるかを判定するノイズ判定部と、を備え、ノイズ判定部は、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する少なくとも2点ずつの計測点を比較計測点とし、対象計測点から比較計測点までの距離を近接度とし、近接度が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満である場合、対象計測点をノイズと判定する
【0010】
ノイズ判定部は、近接度が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満であり、かつ、対象計測点までの計測距離が距離閾値未満である場合、対象計測点をノイズと判定してもよい。
【0011】
ノイズ判定部は、近接度が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満であっても、対象計測点までの計測距離が距離閾値以上である場合、対象計測点を非ノイズと判定してもよい。
【発明の効果】
【0012】
荷揚げ装置は、計測対象物の計測精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】アンローダ装置の概要を説明する図である。
図2】アンローダ装置の構成を説明する図である。
図3】測距センサの計測範囲を説明する図である。
図4】測距センサの計測範囲を説明する図である。
図5】測距センサの計測範囲を説明する図である。
図6】測距センサの計測範囲を説明する図である。
図7】アンローダ装置の電気的な構成を説明する図である。
図8】船倉のモデルを作成して接近判定を行う処理の流れを示すフローチャートである。
図9】測距センサで距離が計測された1つの走査ライン上の計測点の概要を示す図である。
図10】測距センサで距離が計測された1つの走査ライン上の計測点の一例を示す図である。
図11】ノイズ判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、アンローダ装置100の概要を説明する図である。図1に示すように、荷揚げ装置の一例としてのアンローダ装置100は、岸壁2に沿って敷設された一対のレール3上を、レール3の延在方向に走行可能である。アンローダ装置100は、岸壁2に停泊された船舶4の船倉5内に積載された積荷6を外部に搬出する。積荷6は、ばら荷が想定されており、一例として石炭が挙げられる。
【0016】
図2は、アンローダ装置100の構成を説明する図である。なお、図2では、岸壁2および船舶4を断面で示している。図2に示すように、アンローダ装置100は、走行体102、旋回体104、ブーム106、トップフレーム108、エレベータ110、掻取部112、ブームコンベア114を含んで構成される。なお、トップフレーム108、エレベータ110および掻取部112は、積荷6を船倉5から搬出する垂直運搬機構部として機能する。
【0017】
走行体102は、不図示のアクチュエータが駆動することで、レール3上を走行可能である。走行体102には、位置センサ116が設けられる。位置センサ116は、例えばロータリーエンコーダである。位置センサ116は、走行体102の車輪の回転数に基づき、所定の原点位置に対する走行体102の水平面上の位置を計測する。
【0018】
旋回体104は、走行体102の上部に、垂直軸を中心に旋回自在に設けられる。旋回体104は、不図示のアクチュエータが駆動することで、走行体102に対して旋回可能である。
【0019】
ブーム106は、旋回体104の上部に、傾斜角度を変更可能に設けられる。ブーム106は、不図示のアクチュエータが駆動することで、旋回体104を基準とした傾斜角度を変更可能である。
【0020】
旋回体104には、旋回角度センサ118および傾斜角度センサ120が設けられる。旋回角度センサ118および傾斜角度センサ120は、例えばロータリーエンコーダである。旋回角度センサ118は、走行体102に対する旋回体104の旋回角度を計測する。傾斜角度センサ120は、旋回体104に対するブーム106の傾斜角度を計測する。
【0021】
トップフレーム108は、ブーム106の先端に設けられる。トップフレーム108には、エレベータ110を旋回させるアクチュエータが設けられる。
【0022】
エレベータ110は、略円柱形状に形成される。エレベータ110は、中心軸を中心として旋回自在にトップフレーム108に支持される。トップフレーム108には、旋回角度センサ122が設けられる。旋回角度センサ122は、例えばロータリーエンコーダである。旋回角度センサ122は、トップフレーム108に対するエレベータ110の旋回角度を計測する。
【0023】
掻取部112は、エレベータ110の下端に設けられる。掻取部112は、エレベータ110の旋回に伴って、エレベータ110と一体的に旋回する。
【0024】
掻取部112は、複数のバケツ112aおよびチェーン112bが設けられる。複数のバケツ112aは、チェーン112bに連続的に配置される。チェーン112bは、掻取部112、および、エレベータ110の内部に架け渡される。
【0025】
掻取部112は、不図示のリンク機構が設けられる。リンク機構は、可動することにより、掻取部112の底部の長さを可変させる。これにより、掻取部112は、船倉5内の積荷6と接するバケツ112aの数を可変させる。掻取部112は、チェーン112bを回動させることにより、底部のバケツ112aによって船倉5内の積荷6を掻き取る。そして、積荷6を掻き取ったバケツ112aは、チェーン112bの回動に伴ってエレベータ110の上部に移動する。
【0026】
ブームコンベア114は、ブーム106の下方に設けられる。ブームコンベア114は、バケツ112aによってエレベータ110の上部に移動された積荷6を外部に搬出させる。
【0027】
このような構成でなるアンローダ装置100は、走行体102によってレール3の延在方向に移動し、船舶4との長手方向の相対位置関係を調整する。また、アンローダ装置100は、旋回体104によって、ブーム106、トップフレーム108、エレベータ110および掻取部112を旋回させ、船舶4との短手方向の相対位置関係を調整する。また、アンローダ装置100は、ブーム106によって、トップフレーム108、エレベータ110および掻取部112を鉛直方向に移動させ、船舶4との鉛直方向の相対位置関係を調整する。また、アンローダ装置100は、トップフレーム108によってエレベータ110および掻取部112を旋回させる。これにより、アンローダ装置100は、掻取部112を任意の位置および角度に移動させることができる。
【0028】
ここで、船舶4は、複数の船倉5が設けられる。船倉5は、上部にハッチコーミング7が設けられる。ハッチコーミング7は、鉛直方向に所定高さの壁面を有している。また、ハッチコーミング7は、船倉5における中央付近の水平断面に比べて、開口面積が小さい。つまり、船倉5は、ハッチコーミング7により開口が窄まった形状をしている。なお、ハッチコーミング7の上方には、ハッチコーミング7を開閉するハッチカバー8が設けられる。
【0029】
アンローダ装置100には、計測器としての測距センサ130~136が設けられる。測距センサ130~136は、例えば、測距可能なレーザセンサであり、Velodyne社製のVLP-16、VLP-32、Quanergy社製のM8等が適用される。測距センサ130~136は、例えば円柱形状の回転体の側面に、軸方向に沿って離隔した16のレーザー照射部が設けられる。レーザー照射部は、360度回転可能に回転体に設けられる。レーザー照射部は、互いに隣接して配置されたレーザー照射部との軸方向のレーザーの発射角度の差が1~2.5度間隔となるようにそれぞれ配置される。つまり、測距センサ130~136は、回転体の周方向に360度の範囲でレーザーを照射可能である。また、測距センサ130~136は、回転体の軸方向に直交する平面を基準として、例えば±15度の範囲でレーザーを発射可能である。また、測距センサ130~136は、レーザーを受信する受信部が回転体に設けられる。
【0030】
測距センサ130~136は、レーザー照射部を回転させながら所定角度毎にレーザーを照射する。測距センサ130~136は、複数のレーザー照射部から照射(投影)されて物体(計測点)で反射したレーザーを受信部でそれぞれ受信する。そして、測距センサ130~136は、レーザーが照射されてから受信するまでの時間に基づいて、物体までの距離(計測距離)を導出する。つまり、測距センサ130~136は、1つのレーザー照射部によって、1つの走査ライン上で複数の計測点までの距離をそれぞれ計測する。また、測距センサ130~136は、複数のレーザー照射部によって、複数の走査ライン上での複数の計測点までの距離をそれぞれ計測する。
【0031】
図3および図4は、測距センサ130~132の計測範囲を説明する図である。図3は、アンローダ装置100を上方から見た際の測距センサ130~132の計測範囲を説明する図である。図4は、アンローダ装置100を側方から見た際の測距センサ130~132の計測範囲を説明する図である。図3および図4において、測距センサ130~132の計測範囲を一点鎖線で示す。
【0032】
測距センサ130~132は、主に、ハッチコーミング7を検出する際に用いられる。測距センサ130~132は、図3および図4に示すように、トップフレーム108の側面に取り付けられる。具体的には、測距センサ130~132は、エレベータ110の中心軸を基準として、周方向に互いに120度離して配置される。また、測距センサ130~132は、回転体の中心軸が、エレベータ110の径方向に沿うように配置される。なお、測距センサ130~132は、鉛直方向の上半分が不図示のカバーで覆われる。
【0033】
したがって、測距センサ130~132は、図3および図4に示すように、計測方向として、水平面よりも下方であって、トップフレーム108の側面に接する接線を基準として例えば±15度の範囲に存在する物体までの距離を計測することができる。
【0034】
図5および図6は、測距センサ133~136の計測範囲を説明する図である。図5は、掻取部112を上方から見た際の測距センサ133~136の計測範囲を説明する図である。なお、図5では、アンローダ装置100のうち、掻取部112のみを図示している。また、図5では、船舶4について、掻取部112と鉛直方向の同位置での水平断面を示している。図6は、アンローダ装置100を側方から見た際の測距センサ133~136の計測範囲を説明する図である。図5および図6において、測距センサ133、134の計測範囲を一点鎖線で示す。また、図5および図6において、測距センサ135、136の計測範囲を二点鎖線で示す。
【0035】
測距センサ133~136は、主に、船倉5内の積荷6、および、船倉5の壁面(側壁および底面)を検出する際に用いられる。測距センサ133は、図5および図6に示すように、掻取部112の側面112cに取り付けられる。測距センサ133は、回転体の中心軸が、掻取部112の側面112cに直交するように配置される。測距センサ134は、掻取部112の側面112dに取り付けられる。測距センサ134は、回転体の中心軸が、掻取部112の側面112dに直交するように配置される。測距センサ133、134は、鉛直方向の一部が不図示のカバーで覆われる。
【0036】
したがって、測距センサ133、134は、計測方向として、掻取部112の側面112cおよび側面112dの上方側の一部および下方側であって、掻取部112の側面112cおよび側面112dと平行な位置を基準として例えば±15度の範囲に存在する物体までの距離を計測することができる。なお、本実施形態の測距センサ133、134は、掻取部112の底部が位置する平面上において、少なくとも掻取部112の底部の最大長さ以上の範囲を計測できるように配置される。
【0037】
測距センサ135は、掻取部112の側面112cに取り付けられる。測距センサ135は、回転体の中心軸が、掻取部112の底面と直交するように配置される。測距センサ136は、掻取部112の側面112dに取り付けられる。測距センサ136は、回転体の中心軸が、掻取部112の底面と直交するように配置される。
【0038】
したがって、測距センサ135、136は、計測方向として、掻取部112の外方であって、掻取部112の側面112cおよび側面112dに直交する水平面(あるいは、回転体の中心軸と直交する平面)を基準として例えば±15度の範囲に存在する物体までの距離を計測することができる。
【0039】
測距センサ130~136は、物体までの距離を計測すると、物体までの距離を示す計測データを、回転体が1周回転する毎に、アンローダ制御部140(図7参照)に送信する。
【0040】
図7は、アンローダ装置100の電気的な構成を説明する図である。図7に示すように、アンローダ装置100には、アンローダ制御部140、記憶部142および表示部144が設けられる。
【0041】
アンローダ制御部140は、位置センサ116、旋回角度センサ118、傾斜角度センサ120、旋回角度センサ122、測距センサ130~136、記憶部142および表示部144と接続される。アンローダ制御部140は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。アンローダ制御部140は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。そして、アンローダ制御部140は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、アンローダ装置100全体を管理および制御する。
【0042】
また、アンローダ制御部140は、駆動制御部150、計測データ取得部152、ノイズ判定部154、接近制御部156として機能する。駆動制御部150は、アンローダ装置100の駆動を制御する。なお、アンローダ制御部140の他の機能部の詳細については後述する。
【0043】
記憶部142は、ハードディスク、不揮発性メモリ等の記憶媒体である。記憶部142は、詳しくは後述する船倉5のモデル等を記憶する。
【0044】
表示部144は、LEDディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。表示部144には、種々の画像が表示される。
【0045】
図8は、アンローダ制御部140が行う処理の流れを示すフローチャートである。図8に示すように、処理を開始すると、まず、計測データ取得部152は、測距センサ130~136で計測された計測点の計測データを随時取得する(S100)。なお、計測データ取得部152は、掻取部112が船倉5内の積荷6の掻き取り作業を開始してから、全ての積荷6を掻き取り終えるまでの間(例えば10時間)、各測距センサ130~136から計測データを1秒に1~5回の頻度で定期的に取得する。
【0046】
続いて、ノイズ判定部154は、測距センサ130~136で距離が計測された計測点が、ノイズであるかを判定するノイズ判定処理を実行する(S200)。なお、ノイズ判定処理について、詳しくは後述する。
【0047】
次に、接近制御部156は、測距センサ130~136で距離が計測された計測点のうち、ノイズ判定処理S200でノイズと判定された計測点を除いた計測点を用いて、アンローダ装置100と、船舶4との接近判定を行う(S300)。具体的には、接近制御部156は、アンローダ装置100のエレベータ110および掻取部112と、船舶4の船倉5およびハッチコーミング7との接近判定を行う。接近判定では、接近制御部156は、エレベータ110および掻取部112と、船倉5およびハッチコーミング7との距離を導出する。なお、エレベータ110および掻取部112と、船倉5およびハッチコーミング7との距離を導出する方法として、例えば、特開2019-131393号公報に記載されている方法を用いるようにしてもよく、また、他の方法であってもよい。
【0048】
そして、接近制御部156は、導出した距離が、予め決められた警戒閾値以下である場合、例えば、表示部144に接近している旨を表示し、操縦者に警告する。また、接近制御部156は、導出した距離が、警告閾値よりも小さい停止閾値以下である場合、駆動制御部150を介してアンローダ装置100を停止させる。
【0049】
以下では、上記のノイズ判定処理について説明する。ここでは、測距センサ133で距離が計測された計測点について説明するが、他の測距センサ130~132、134~136で距離が計測された計測点についても同様である。
【0050】
図9は、測距センサ133で距離が計測された1つの走査ライン上の計測点の概要を示す図である。なお、図9において、計測点を黒丸で示す。
【0051】
ここで、図9に示すように、測距センサ133は、主に、船倉5の壁面や積荷6までの距離を計測する。また、測距センサ133は、船倉5内で壁面や積荷6と独立した構造物や、船倉5内にいる人等までの距離を計測することもある。このような船倉5の壁面、船倉5内の構造物、船倉5内にいる人は、アンローダ装置100との衝突を回避する必要がある計測対象物である。つまり、測距センサ133で距離が計測された計測点の大部分は、計測対象物上の計測点であると言える。
【0052】
しかしながら、船倉5内には、積荷6の粉塵、雨、雪などの浮遊物160が存在する。船倉5内に浮遊物160が存在すると、測距センサ133から照射されたレーザーが浮遊物160で反射することもある。レーザーが浮遊物160で反射すると、測距センサ133は、浮遊物160までの距離を計測することになる。そうすると、アンローダ装置100は浮遊物160との衝突を回避しようとする。しかしながら、積荷6の粉塵、雨、雪などの浮遊物160は、アンローダ装置100との衝突を回避する必要がない非計測対象物である。このように、測距センサ133で距離が計測される計測点には、浮遊物(非計測対象物)160上の計測点が含まれている場合がある。
【0053】
そして、浮遊物160上の計測点があると、上記の接近判定処理においては、浮遊物160に対してアンローダ装置100の接近判定がなされてしまうことになる。そうすると、実際には計測対象物が存在していないにも拘わらず、操縦者に警告を発してしまったり、アンローダ装置100を停止させてしまうおそれがある。そのため、測距センサ133で距離が計測される計測点から、浮遊物160上の計測点をノイズとして除去する必要がある。
【0054】
図10は、測距センサ133で距離が計測された1つの走査ライン上の計測点の一例を示す図である。図10においては、計測点を丸で示し、対象計測点をハッチングで示す。また、図10においては、船倉5の壁面の一部が、窪んだ形状をしているものとする。
【0055】
測距センサ133から船倉5に向かってレーザーが高頻度で断続的に照射されている場合、図10に示すように、1つの走査ライン上の計測点は、一直線に並ぶことになる。そして、船倉5の壁面は相対的に大きいため、船倉5の壁面上の計測点P1に隣接する計測点も、船倉5の壁面上にある可能性が高い。そして、船倉5の壁面上の計測点P1までの距離と、計測点P1に隣接する計測点までの距離との差分は小さい。
【0056】
一方、浮遊物160は非常に小さいため、浮遊物160上の計測点P2に隣接する計測点が同一の浮遊物160上にあることは殆どない。また、浮遊物160上の計測点P2に隣接する計測点が、異なる浮遊物160上にあることも稀である。したがって、浮遊物160上の計測点P2を挟んで互いに反対方向に隣接する計測点の両方が、浮遊物160上にあることはないと言える。
【0057】
そこで、浮遊物160上の計測点P2までの距離と、計測点P2を挟んで互いに反対方向に隣接する計測点の少なくとも一方までの距離との差分が大きければ、計測点P2が浮遊物160上にあると判定することができるとも思われる。
【0058】
しかしながら、計測点P3のように、船倉5の壁面上の計測点の中には、船倉5の形状によって、計測点P3を挟んで互いに反対方向に隣接する計測点との距離の差分が大きくなるものもある。例えば、計測点P3は、船倉5の壁面の平らな部分にある。また、計測点P3の1つ上の計測点は、船倉5の壁面の窪んだ部分にある。また、計測点P3の1つ下の計測点は、船倉5の壁面の平らな部分にある。
【0059】
このような場合、計測点P3が船倉5の壁面上にあるにもかかわらず、計測点P3までの距離と、計測点P3を挟んで互いに反対方向に隣接する計測点の少なくとも一方(図10では、1つ上の計測点)までの距離との差分が大きくなってしまう。そして、計測点P3までの距離と、計測点P3を挟んで互いに反対方向に隣接する計測点の少なくとも一方までの距離との差分が大きければ、計測点P3が浮遊物160上にあると誤判定されてしまうことになる。
【0060】
このように、船倉5の壁面上に連続する計測点であっても、船倉5の壁面の形状によっては、計測点までの距離が大きく異なる場合がある。一方で、船倉5の壁面は比較的大きいため、計測点P3は、計測点P3を挟んで互いに反対方向にそれぞれ隣接する2つずつの計測点のうち、前側の2つの計測点、または、後側の2つの計測点の少なくとも一方(図10では、1つ下および2つ下の計測点)と同一面上にある。つまり、船倉5の壁面上の計測点P3までの距離と、計測点P3を挟んで互いに反対方向に隣接する2つずつの計測点までの距離との差分のうち、少なくとも2つの差分は小さくなる。
【0061】
以上のことから、1つの計測点を対象計測点とし、対象計測点を挟んで互いに反対方向にそれぞれ隣接する2つずつの合計4つの計測点を比較計測点とすると、4つの比較計測点のうち、対象計測点との距離の差分が小さい比較計測点が1つ以下(2つ未満)であれば、対象計測点が浮遊物160上であると言える。一方、4つの比較計測点のうち、対象計測点との距離の差分が小さい比較計測点が2つ以上であれば、対象計測点が船倉5の壁面上であると言える。なお、比較計測点をさらに多くすることも考えられる。しかしながら、比較計測点を多くするほど、大きな面しか検出することができなくなる。したがって、平面の端の部分と、ノイズとを区別することが可能となる最小限の判定条件、つまり、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する2つずつの合計4つの計測点を比較計測点として用いることが望ましいと言える。
【0062】
図11は、ノイズ判定処理の流れを示すフローチャートである。図11に示すように、ノイズ判定部154は、ノイズ判定処理を実行すると、測距センサ133で距離が計測された複数の走査ラインのうち、1つの走査ラインを選択する(S201)。
【0063】
そして、ノイズ判定部154は、決定した走査ライン上の複数の計測点のうち、1の計測点を対象計測点として決定する(S202)。具体的には、ノイズ判定部154は、1つの走査ライン上の複数の計測点のうち、計測の時系列順に計測点を対象計測点として決定する。
【0064】
その後、ノイズ判定部154は、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する2点ずつの計測点を比較計測点として決定する(S203)。なお、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する2点は、対象計測点に対して計測方向側に隣接する2点、および、対象計測点に対して計測方向とは反対方向に隣接する2点である。隣接する2点ずつの計測点がない場合、その対象計測点は、ノイズとして以後の処理をスキップするようにしてもよい。
【0065】
次に、ノイズ判定部154は、近接度として、対象計測点までの距離と、比較計測点までの距離との差分をそれぞれ導出する(S204)。つまり、ここでは、4つの差分(近接度)が導出されることになる。
【0066】
その後、ノイズ判定部154は、導出した4つの差分と、予め設定された差分閾値とをそれぞれ比較する。そして、ノイズ判定部154は、差分が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満であるかを判定する(S205)。
【0067】
その結果、差分が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満であれば(S205におけるYES)、ノイズ判定部154は、対象計測点までの距離が、予め設定された距離閾値未満であるか判定する(S206)。なお、距離閾値は、差分閾値よりも大きな値に設定されている。ここでは、差分が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満である対象計測点が、測距センサ133(掻取部112)から大きく離れているかが判定される。対象計測点が測距センサ133から大きく離れている場合、対象計測点と比較計測点との間隔も開くことになる。このとき、計測対象物が例えば人のような比較的小さなものである場合、計測対象物上には、計測点が1つしかないこともある。そこで、差分が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満である対象計測点であっても、対象計測点までの距離が距離閾値以上であれば、その対象計測点は、計測対象物上にある可能性が高い。
【0068】
そこで、ノイズ判定部154は、対象計測点までの距離が距離閾値未満である場合(S206におけるYES)、その対象計測点をノイズと判定する(S207)。
【0069】
一方で、差分が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満でない場合(S205におけるNO)、または、対象計測点までの距離が距離閾値未満でない場合(S206におけるNO)、その対象計測点を非ノイズと判定する(S208)。
【0070】
その後、ノイズ判定部154は、1つの走査ライン上の全ての計測点について、ノイズまたは非ノイズであるかを判定していなければ(S209のNO)、S202に処理を戻し、次の計測点を対象計測点に決定し、S203~S208までの処理を行う。
【0071】
また、1つの走査ライン上の全ての計測点について、ノイズまたは非ノイズであるかを判定していれば(S209のYES)、ノイズ判定部154は、S210に処理を移す。そして、S210において、全ての走査ラインについてノイズまたは非ノイズであるかを判定していなければ(S210のNO)、ノイズ判定部154は、S201に処理を戻し、次の走査ラインを決定し、S202~S209までの処理を行う。
【0072】
また、全ての走査ラインについて、ノイズまたは非ノイズであるかを判定していれば(S210のYES)、ノイズ判定部154は、ノイズ判定処理を終了する。
【0073】
以上のように、ノイズ判定部154は、複数の計測点のいずれかを対象計測点とし、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する同数(2つずつ)の計測点を比較計測点とする。そして、ノイズ判定部154は、対象計測点までの距離と、比較計測点までの距離との差分に基づいて、対象計測点がノイズであるかを判定する。つまり、ノイズ判定部154は、対象計測点と比較計測点との近接度に基づいて、対象計測点がノイズであるかを判定する。
【0074】
これにより、ノイズ判定部154は、浮遊物160上の対象計測点をノイズとして判定することができるため、計測対象物の検出精度を向上することができる。
【0075】
また、ノイズ判定部154は、比較計測点として、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する2つずつを決定するようにした。これにより、ノイズ判定部154は、浮遊物160上の計測点をノイズと判定する際の処理負荷を最小とすることができる。
【0076】
また、ノイズ判定部154は、差分が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満であり、かつ、対象計測点までの距離が距離閾値未満である場合に、対象計測点をノイズと判定するようにした。これにより、浮遊物160上の計測点を精度良くノイズと判定することができる。
【0077】
また、ノイズ判定部154は、差分が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満であっても、対象計測点までの距離が距離閾値以上である場合に、対象計測点を非ノイズと判定するようにした。これにより、対象計測点が測距センサ133から大きく離れており、計測対象物上に計測点が1つしかない場合であっても、計測対象物を精度良く検出することができる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
例えば、上記実施形態において、比較計測点として、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する2つずつを決定するようにした。しかしながら、比較計測点として、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接する複数を決定するようにすればよく、その数は問わない。なお、対象計測点を挟んで互いに反対方向に隣接するとは、計測順(時系列的)に隣接してもよく、また、位置的に隣接してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、対象計測点までの距離と、比較計測点までの距離との差分に基づいて、対象計測点がノイズであるかを判定するようにした。しかしながら、対象計測点と比較計測点との近接度に基づいて、対象計測点がノイズであるかを判定するようにすればよく、その方法はこれに限らない。
【0081】
また、上記実施形態では、対象計測点までの計測距離と、比較計測点までの計測距離との差分を近接度とし、近接度が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満である場合、対象計測点をノイズと判定するようにした。しかしながら、対象計測点から比較計測点までの距離を近接度とし、近接度が差分閾値未満である比較計測点が2つ未満である場合、対象計測点をノイズと判定するようにしてもよい。この場合も、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0082】
また、上記実施形態において、荷揚げ装置の一例としてアンローダ装置100を例に挙げて説明した。しかしながら、荷揚げ装置は、連続アンローダ(バケット式、ベルト式、垂直スクリューコンベア式など)、ニューマチックアンローダ等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示は、荷揚げ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
100 アンローダ装置(荷揚げ装置)
130 測距センサ
131 測距センサ
132 測距センサ
133 測距センサ
134 測距センサ
135 測距センサ
136 測距センサ
154 ノイズ判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11