(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】モータシステム
(51)【国際特許分類】
H02P 27/06 20060101AFI20240306BHJP
H02P 6/08 20160101ALI20240306BHJP
【FI】
H02P27/06
H02P6/08
(21)【出願番号】P 2020089326
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 裕子
(72)【発明者】
【氏名】浦田 信也
(72)【発明者】
【氏名】中井 英雄
(72)【発明者】
【氏名】平本 健二
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-193352(JP,A)
【文献】特開2006-248389(JP,A)
【文献】特開2019-170119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02P 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N相(Nは3以上の自然数)巻線を有するステータと、永久磁石を有するロータと、を有する永久磁石モータと、
回転磁界を形成するため
にN相の
交流の駆動電流をステータに供給するインバータと、
ステータの巻線に零相電流を供給する零相電流供給手段と、を含み、
N相の交流の駆動電流をステータに供給してモータを駆動しているときであって、モータの端子間電圧が端子間電圧所定値に達する場合に、零相電流を通電する、
モータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のモータシステムであって、
零相電流の周波数は、駆動電流の基本波成分以外の周波数とする、
モータシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータシステムであって、
ステータのN相巻線は、Y結線を有し、
零相電流は、Y結線の中性点から供給する、
モータシステム。
【請求項4】
請求項1または2に記載のモータシステムであって、
ステータは、独立したN相の巻線を有し、
インバータは、独立した2つのインバータを有し、一方のインバータの出力をN相の巻線の一端に接続し、他方のインバータの出力をN相の巻線の他端に接続し、
2つのインバータのスイッチング制御することで、零相電流を流す、
モータシステム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のモータシステムであって、
零相電流の通電によってステータコアの磁気飽和を促進する、
モータシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載のモータシステムであって、
前記インバータは、さらに基本波の電流を増強または進角を調整する、
モータシステム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載のモータシステムであって、
前記零相電流は、基本波に対するN次高調波である、
モータシステム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載のモータシステムであって、
前記インバータには、直流電源からの直流電圧を調整可能な電力変換器を介し供給する、
モータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの巻線に零相電流を通電するモータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド自動車においては、永久磁石モータのステータ巻線にインバータから要求トルクに応じた所望の交流電流を供給して、永久磁石モータを駆動している。
【0003】
このようなモータシステムにおいて、モータ回転数が大きくなると、得られる出力トルクが小さくなる。通常の場合、弱め界磁制御を行い、永久磁石による界磁を弱めて、モータの出力トルクを確保している。
【0004】
ここで、永久磁石モータには通常の各相電流の他に零相電流があり、この零相電流の制御についての提案もある。特許文献1では、零相電流を制御することで、1台のインバータで回転子に対して半径方向力を制御し、半径方向の振動を抑制可能であるシステムが提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、モータに供給する電流を制御して、回転子表面の磁束密度分布波形に含まれる周波数成分が、1磁極対分の波形を基本波形として、少なくとも3次の高調波成分を所定量含有することで、振動・騒音を増加させることなく、出力及び効率を向上させることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-042768号公報
【文献】特開2011-061998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の弱め界磁制御は、磁束制御を精密に行うことが難しく、モータ制御が不安定になる可能性がある。
【0008】
特許文献1では、中性点を流れる零相電流を利用することで、径方向の力を制御しているが、零相電流による磁束は径方向外向きの力を利用するのみで、トルク向上は図れない。
【0009】
特許文献2では、磁石やコアの構造で高調波を作るために、駆動時に狙い通りの高調波と基本波の割合に調整することが困難である。
【0010】
本発明では、比較的簡単な手段で、モータの出力トルクを向上する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、N相(Nは3以上の自然数)巻線を有するステータと、永久磁石を有するロータと、を有する永久磁石モータと、回転磁界を形成するためにN相の交流の駆動電流をステータに供給するインバータと、ステータの巻線に零相電流を供給する零相電流供給手段と、を含み、N相の交流の駆動電流をステータに供給してモータを駆動しているときであって、モータの端子間電圧が端子間電圧所定値に達する場合に、零相電流を通電する。
【0012】
零相電流の周波数は、駆動電流の基本波成分以外の周波数とするとよい。
【0013】
ステータのN相巻線は、Y結線を有し、零相電流は、Y結線の中性点から供給するとよい。
【0014】
ステータは、独立したN相の巻線を有し、インバータは、独立した2つのインバータを有し、一方のインバータの出力をN相の巻線の一端に接続し、他方のインバータの出力をN相の巻線の他端に接続し、2つのインバータのスイッチング制御することで、零相電流を流すとよい。
【0015】
零相電流の通電によってステータコアの磁気飽和を促進するとよい。
【0016】
前記インバータは、さらに基本波の電流を増強または進角を調整するとよい。
【0017】
前記零相電流は、基本波に対するN次高調波であるとよい。
【0018】
前記インバータには、直流電源からの直流電圧を調整可能な電力変換器を介し供給するとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、モータに零相電流として駆動電流の基本波成分以外の電流を加えることで、ステータの磁気飽和を促して端子電圧を抑制することで、端子電圧上限までに余裕をもたせることができるため、出力トルクを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係るモータシステムの一例の構成を示す図である。
【
図2】零相電流により3次高調波成分を重畳した場合の(a)電流波形、(b)磁束鎖交数波形を示す図である。
【
図3】零相電流により3次高調波成分を重畳した場合の(a)磁束鎖交数基本波成分振幅、(b)トルクを示す図である。
【
図4】モータの回転数とトルクの関係(NT特性)を示す図である。
【
図5】零相電流として、直流電流を供給する場合のシステム構成を示す図である。
【
図6】零相電流により直流電流を重畳した場合の(a)電流波形、(b)磁束鎖交数波形を示す図である。
【
図7】零相電流により直流電流を重畳した場合の(a)磁束鎖交数基本波成分振幅、(b)トルクを示す図である。
【
図8】磁束鎖交数ピーク時の磁束密度分布を示す図であり、(a)が基本波のみ、(b)が直流重畳、(c)が3次高調波重畳の場合を示す。
【
図9】零相電流制御の処理を示すフローチャートである。
【
図10】電池とインバータとの間にDC/DCコンバータを配置したシステム構成を示す図である。
【
図11】オープン巻線形式のモータにおける零相電流を重畳するシステム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0022】
「システム構成」
図1は、実施形態に係るモータシステムの一例の構成を示す図である。直流電源である電池10には、インバータ16が接続されている。すなわち、電池10の正負極には、インバータ16の正母線12と、負母線14がそれぞれ接続されている。
【0023】
インバータ16は、3相のインバータであり、正負母線12,14間に接続される3つのスイッチングアーム16u,16v,16wを有する。各スイッチングアーム16u,16v,16wは、正負母線12,14間に接続される2つのスイッチング素子SWの直列接続からなり、各スイッチング素子SWはIGBTなどのトランジスタと、逆流ダイオードの並列接続からなる。
【0024】
そして、各アーム16u,16v,16wの中点がインバータ16の出力端であり、Y結線のモータ18のu,v,w相の巻線端子18u,18v,18wにそれぞれ接続されている。これによって、モータ18のステータの3相の巻線に120度ずつ位相の異なった駆動電流が供給される。
【0025】
なお、モータ18は、巻線端子18u,18v,18wに接続される3相のステータ巻線を有するステータと、所定の極数の永久磁石を有するロータと、を有する永久磁石モータである。インバータ16からステータに供給される3相の駆動電流が供給される。なお、この例では、3相であるが、N相(Nは3以上の自然数)とすることができる。
【0026】
さらに、正負母線12,14間には、零相電流供給手段として、別のスイッチングアーム20が接続されている。このスイッチングアーム20は2つのスイッチング素子SWの直列接続からなっており、スイッチングアーム20の中点がモータ18の中性点18nに接続されている。
【0027】
このようなモータシステムにおいて、制御部30がインバータ16のスイッチングを制御して、ステータの各相に位相が互いに120度異なる交流電流を供給することで、回転磁界を生起してモータを回転駆動することができる。
【0028】
例えば、モータ18が電動車両の駆動モータであった場合には、車両のアクセル開度などからモータ18の出力要求である要求トルクが決定され、制御部30に供給される。一方、モータ18の回転数、回転位相が検出されて制御部30に供給される。制御部30では、ベクトル制御など公知の手法によって、インバータ16のスイッチング信号を作成し、これによってインバータ16のスイッチングを制御する。
【0029】
ここで、本実施形態においては、スイッチングアーム20のスイッチング素子SWによって、モータ18の中性点18nに、モータ駆動の基本波とは異なる周波数の零相電流を供給することができる。
【0030】
この場合の零相電流としては、モータ駆動の基本波とは異なる高調波、直流電流などが採用できる。なお、直流電圧とする場合には、スイッチングアーム20に代えて中性点18nに所定電圧のコンデンサや電池を接続することできる。
【0031】
また、制御部30では、モータ18の各相端子電圧を監視しておき、端子間電圧が端子間電圧所定値(予め定められた上限電圧)に達したときに、零相電流を供給する。このように構成することで、必要なときに零相電流を供給することができる。ここで、零相電流の開始タイミングは、従来のモータにおいて、弱め界磁制御(電流進角を大きくしてd軸電流磁束で磁石磁束を抑制する制御)を開始するタイミングと同様にするとよい。
【0032】
「3次高調波重畳」
上述したように、零相電流としては、基本波に対しN次の高調波(Nは3以上の自然数)を使用することができる。
図2は、零相電流により3次高調波成分を重畳した場合の(a)電流波形、(b)磁束鎖交数波形を示す図である。このように、3次高調波が重畳されることで、電流波形のピークが複数に分散され、磁束鎖交数波形は広がりが狭められ変動が抑制される。なお、電流波形は、進角調整のありなしでほぼ同一である。
【0033】
図3は、零相電流により3次高調波成分を重畳した場合の(a)磁束鎖交数基本波成分振幅、(b)トルクを示す図である。このように、3次高調波の重畳によって、磁束鎖交数のばらつきが小さくなり、進角調整なしでは基本波成分振幅が小さくなり、電圧上限に対し余裕が生まれる。そこで、基本波のみの場合に比べ、出力トルクを大きくできる。さらに、進角調整を行い、磁束鎖交数基本波成分振幅を基本波成分と同等にすることができ、出力トルクはさらに大きくなる。このように、零相電流への高調波の重畳により端子間電圧に余裕が生じるのは、高調波の重畳によって、磁束鎖交数ピーク時におけるステータコアの磁気飽和が促進されてコアの磁気抵抗が高くなり、コアに基本波磁束が流し難くなるためと考えられる。
【0034】
このように、本実施形態では、モータ端子電圧の電圧上限付近において、零相電流により3次高調波成分を重畳する。これにより、ステータコアの磁気飽和を促進することで、コアの磁気抵抗を高めてコアに基本波磁束を流し難くなり、コイル電圧の基本波成分が小さくなり、モータの端子間電圧(線間電圧ともいう)が小さくなる。通常、モータ線間電圧がインバータ入力直流電圧の上限に対して余裕を持つようになれば、弱め界磁を行う(電流進角を大きくしてd軸電流磁束で磁石磁束を抑制する)必要が無くなる。また、電流進角を小さくして電圧上限まで基本波磁束を増やした場合、磁石磁束を打ち消さない分、d軸インダクタンスが大きくなる可能性がでてきて、トルク増加を狙うことができる。すなわち、インバータからモータに供給する電流を増強してトルクを増加することができる。
【0035】
図4に、モータの回転数とトルクの関係(NT特性)を示す。このように、回転数が上昇することで、線間電圧が上限電圧に達し、その後出力できる最大トルクが減少する。進角調整することによって、最大トルクを大きくすることができる。この特性を「従来のNT」としている。本実施形態では、零相電流として基本波成分以外の電流を加えることで、ステータコアの磁気飽和を促し、電圧を抑制することで電圧上限までに余裕をもたせ、「実施形態によるトルク向上領域」のトルクを向上する。
【0036】
このようにして、本実施形態によれば、モータの線間電圧が、インバータDCラインの電圧上限に達する領域において、トルクを向上できる。
【0037】
「直流重畳」
図5は、零相電流として、直流電流を供給する場合のシステム構成を示す図である。この例では、零相電流供給手段として負母線14と中性点18nとの間に電池60を配置している。これによって、電池60からの零相電流がモータ18の中性点に供給される。また、スイッチ32は、電池60と中性点との接続をオンオフする。なお、
図5においては、制御部30などについて記載を省略している。
【0038】
図6は、零相電流として直流電流を重畳した場合の(a)電流波形、(b)磁束鎖交数波形を示す図である。このように、直流電流が重畳されることで、電流波形が直流成分に応じてシフトされる。
【0039】
図7は、零相電流により直流電流を重畳した場合の(a)磁束鎖交数基本波成分振幅、(b)トルクを示す図である。このように、直流電流の重畳によって、磁束鎖交数基本波成分振幅が小さくなり、電圧上限に対し余裕が生まれる。そこで、基本波について進角調整を行い、磁束鎖交数基本波成分振幅を基本波成分と同等にすることで、出力トルクはさらに大きくなる。
【0040】
このように、本実施形態では、モータ端子電圧の電圧上限付近において、零相電流により直流電流を重畳する。これにより、3次高調波を重畳した場合と同様に、ステータコアの磁気飽和を促進し、コアの磁気抵抗を高めてコアに基本波磁束を流し難くする。これによって、コイル電圧の基本波成分が小さくなり、モータの線間電圧が小さくなり、弱め界磁を行う必要がなくなる。また、電流進角を大きくして電圧上限まで基本波磁束を増やしてトルクを増加することが可能になる。すなわち、インバータからモータに供給する電流を増強してトルクを増加することができる。
【0041】
「磁気飽和の促進」
図8は、磁束鎖交数ピーク時の磁束密度分布を示す図であり、(a)が基本波のみ、(b)が直流重畳、(c)が3次高調波重畳の場合を示す。このように、基本波のみの場合に比べ、零相電流重畳を重畳することにより磁束鎖交数のピーク時におけるステータコアの磁束密度はコイル(巻線)の近傍において飽和している。ステータコアの磁気飽和を促進することで、コアの磁気抵抗を高められコアに基本波磁束が流れ難くなる。これによって、モータ線間電圧がインバータ入力直流電圧の上限に対して余裕を持つようになり、トルク増加が可能になる。
【0042】
「処理フロー」
図9は、制御部30における、零相電流制御の処理を示すフローチャートである。
【0043】
まず、トルク指令、端子間電圧所定値を読み込む(S11)。端子間電圧所定値は、モータの線間の上限電圧に対応した電圧であり、実際の上限電圧より所定値低い電圧に設定してもよい。なお、DC/DCコンバータ40を有する場合、インバータ入力電圧を変更できるため、端子間電圧所定値を変更することができる。
【0044】
次に、電流指令値id,iqを読み込む(S12)。電流指令値id,iqは、モータのベクトル制御の際の指令値(励磁電流指令値、トルク電流指令値)であり、モータ18の回転位相、回転速度などから計算で求められる。次に、電圧指令値vd,vqを読み込む(S13)。これは、電流指令値id,iqと、モータ18の各相電流より求められる。
【0045】
次に、電圧指令値に基づき、モータ18の各相電圧指令値を求め、求められた各相電圧指令値に基づいて端子間電圧を求める。そして、求められた端子間電圧が端子間電圧所定値より大きいかを判定する(S14)。この判定で、NOであれば、問題はなく各相電圧指令値に応じてインバータ16を制御して、モータ18を駆動する。
【0046】
一方、S14の判定でYESの場合には、零相電流の振幅を増加する(S15)。初回であれば、零相電流の印加を開始する。次に、別途計算して求めた電流進角の調整を行う(S16)。そして、S12に戻り、零相電流、電流進角の調整後における電流指令値、電圧指令値を読み込み(S12,S13)、調整後の端子間電圧と端子間電圧所定値を比較する(S14)。このような調整をS14においてNOとなるまで行い、端子間電圧を所定値以下に設定し、処理を終了する。なお、S16における電流進角の調整を省略しても構わない。また、S14の判定でYESとなった場合に、S15の零相電流の振幅増加を優先的に行ったり、反対にS16の電流進角の調整を優先的に行ったりなどの処理を行ってもよい。
【0047】
「DC/DCコンバータの利用」
図10は、
図1の構成において、電池10とインバータ16との間にDC/DCコンバータ40を、直流電圧を調整可能な電力変換器として配置したシステム構成を示す図である。従って、インバータ16に入力される正負母線12,14間電圧は、DC/DCコンバータ40の出力電圧になり、DC/DCコンバータ40を制御することによって調整が可能である。このような構成によれば、DC/DCコンバータ40により正負母線12,14間電圧を上昇することで、端子間電圧所定値を高く設定するができる。
【0048】
「オープン巻線の構成」
図11は、オープン巻線形式のモータにおける零相電流を重畳するシステム構成を示す図である。電池10からの正負母線間には、2つのインバータ16-1,16-2が接続されている。これらインバータ16-1,16-2は、上述のインバータ16と同様の構成であり、それぞれが3つのスイッチングアーム16-1u,16-1v,16-1w、スイッチングアーム16-2u,16-2v,16-2wを有する。そして、モータ18のu,v,w相の巻線の一端側の巻線端子18-1u,18-1v,18-1wにインバータ16-1の各相スイッチングアーム16-1u,16-1v,16-1wの中点が接続され、モータ18のu,v,w相の巻線の他端側の巻線端子18-2u,18-2v,18-2wにインバータ16-2の各相スイッチングアーム16-2u,16-2v,16-2wの中点が接続される。従って、2つのインバータ16-1,16-2の各相のスイッチングアームにおけるスイッチング素子SWのスイッチングを制御することで、モータ18の各相巻線に所望の電流を供給することができる。通常の場合、モータ18に零相電流が0となるように各相の巻線に0を境に対称の交流電流を流す(一方が吐き出し、他方が吸い込み)が、本実施形態の場合は、スイッチングアームの上側スイッチング素子と下側スイッチング素子のオンデューティーを調節することで、3相の巻線電流に流れる巻線電流の和を0からシフトさせ、モータ18に任意の零相電流を流す。この例では、2つのインバータ16-1,16-2の両方が零相電流供給として機能する。なお、
図10,11においても、制御部30などについて記載を省略している。
【0049】
「その他」
インバータ16は、3相のスイッチングアームとしたが、5相など他の相数でも構わない。実施形態に係るモータシステムは、例えば電気自動車やハイブリッド駆動車の駆動モータのシステムに好適である。
【0050】
「実施形態の効果」
本実施形態によれば、零相電流を制御できるモータ18において端子間電圧所定値(端子間電圧上限)に達する場合に、基本波成分以外の周波数の零相電流を入力することでステータの磁気飽和を促し、磁束鎖交数の変動を抑えることができる。すなわち、モータ駆動の基本波成分を減少することにより、端子間電圧上限に余裕をもたせる。また、余裕が出た分、電流進角を大きくでき、モータ18の出力トルクを向上することできる。
【符号の説明】
【0051】
10,60 電池、12 正母線、12,14 正負母線、14 負母線、16-2 インバータ、16-1 インバータ、16 インバータ、18 モータ、20 スイッチングアーム、20 零相電流供給手段、30 制御部、32 スイッチ、40 DC/DCコンバータ。