(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】造形物製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/16 20060101AFI20240306BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240306BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240306BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240306BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240306BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240306BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240306BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20240306BHJP
B22F 3/10 20060101ALI20240306BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
B22F3/16
B33Y10/00
B29C64/153
B29C64/268
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y80/00
B22F3/105
B22F3/10 101
C22C38/00 304
(21)【出願番号】P 2020092568
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】大西 春樹
(72)【発明者】
【氏名】日野 武久
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-121364(JP,A)
【文献】特開2017-020422(JP,A)
【文献】特開2017-096281(JP,A)
【文献】特表2013-542867(JP,A)
【文献】特開2004-003018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-8/00
B29C 64/00-64/00
B33Y 10/00
B33Y 50/02
B33Y 80/00
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物を製造する造形物製造方法であって、
粉末を供給して粉末層を形成する粉末層形成工程と、
前記粉末層にエネルギービームを照射して前記粉末層が溶解した溶解層を形成する溶解層形成工程と、を備え、
前記粉末層形成工程と前記溶解層形成工程とが繰り返し実行されることにより、積層された前記溶解層で構成される前記造形物が積層造形され、
前記造形物は、製品部と、積層方向で見たときに前記製品部とは離間した造形品質確認部と、前記造形品質確認部と前記製品部とを接続する接続部と、を有
し、
前記造形品質確認部は、前記積層方向に棒状に延び、
前記接続部は、前記造形品質確認部から前記積層方向に対して斜め上方に延びて前記製品部に接続される、造形物製造方法。
【請求項2】
前記造形物は、前記造形品質確認部の周辺に設けられた複数の前記製品部と、対応する前記製品部に接続される複数の前記接続部と、を有する、請求項
1に記載の造形物製造方法。
【請求項3】
造形物を製造する造形物製造方法であって、
粉末を供給して粉末層を形成する粉末層形成工程と、
前記粉末層にエネルギービームを照射して前記粉末層が溶解した溶解層を形成する溶解層形成工程と、を備え、
前記粉末層形成工程と前記溶解層形成工程とが繰り返し実行されることにより、積層された前記溶解層で構成される前記造形物が積層造形され、
前記造形物は、製品部と、積層方向で見たときに前記製品部とは離間した造形品質確認部と、前記造形品質確認部と前記製品部とを接続する接続部と、を有し、
前記造形物は、前記造形品質確認部の周辺に設けられた複数の前記製品部と、対応する前記製品部に接続される複数の前記接続部と、を有する、造形物製造方法。
【請求項4】
複数の前記製品部のうちの一対の前記製品部が、前記造形品質確認部に対して対称に配置されている、請求項
2または3に記載の造形物製造方法。
【請求項5】
前記製品部は、タービン部品を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の造形物製造方法。
【請求項6】
前記タービン部品は、タービンの動翼を含む、請求項5に記載の造形物製造方法。
【請求項7】
前記動翼は、動翼本体と、植込み部と、前記動翼本体と前記植込み部との間に設けられたプラットホームと、を含み、
前記接続部は、前記プラットホームに接続される、請求項6に記載の造形物製造方法。
【請求項8】
前記接続部は、前記プラットホームの外周端部における下面に接続される、請求項7に記載の造形物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、造形物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粉末の供給とレーザビームや電子ビーム等のエネルギービームの照射とを繰り返し行うことにより造形物を積層造形する三次元積層造形技術の研究開発が進んでいる。この三次元積層造形技術を用いることによって、例えば蒸気タービンの動翼等のタービン部品のような複雑な三次元形状を有する製品を低コストかつ高品質に製造することを目指している。三次元積層造形技術は、パウダーベッド方式とデポジション方式とに大別される。一般的にはパウダーベッド方式の方が精度の点で良好であることから、精密形状が要求される製品には、パウダーベッド方式を採用することが好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元積層造形技術を用いた製造方法では、造形時に、エネルギービームからの熱を受けた造形物が、熱応力により変形してしまうおそれがある。このため、造形物に、ステージ上から積層方向に延びて製品部に接続される支持部(サポート)を含ませて、支持部により製品部を支持することで、造形物の変形を抑制することが行われている。しかしながら、このような支持部は、造形物の変形を抑制するために高い剛性を有し、大きな質量を有している場合がある。この場合、支持部の造形に多くの粉末材料を要してしまい、支持部の造形に用いた粉末材料は再利用することができないことから、製造コストが増大してしまうおそれがある。このため、造形物の変形抑制と製造コストは、トレードオフの関係になっている。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、製造コストの増大を抑制しつつ、造形物の変形を抑制することができる造形物製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態による造形物製造方法は、造形物を製造する造形物製造方法であって、粉末を供給して粉末層を形成する粉末層形成工程と、粉末層にエネルギービームを照射して粉末層が溶解した溶解層を形成する溶解層形成工程と、を備える。粉末層形成工程と溶解層形成工程とが繰り返し実行されることにより、積層された溶解層で構成される造形物が積層造形される。造形物は、製品部と、積層方向で見たときに製品部とは離間した造形品質確認部と、造形品質確認部と製品部とを接続する接続部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造コストの増大を抑制しつつ、造形物の変形を抑制することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態における蒸気タービンを示す断面構造図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態における造形物であって、
図2の動翼を含む造形物を示す側面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態における造形物製造装置であって、
図3の造形物を製造する造形物製造装置の概略構成図である。
【
図6】
図6は、第1の実施の形態における造形物製造方法を説明するための模式図であって、
図5の造形物製造装置を用いて
図3の造形物を製造する方法の一部を示す模式図である。
【
図7】
図7は、一般的な造形物製造方法において発生する造形物の変形を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、他の一般的な造形物製造方法において製造される造形物を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態における造形物を示す模式上面図である。
【
図12】
図12は、実施例において製造される構造物を示す上面図および正面図である。
【
図13】
図13は、第1実施例における造形物を示す上面図および正面図である。
【
図14】
図14は、第2実施例における造形物を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態による造形物製造方法について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0010】
(第1の実施の形態)
まず、
図1を用いて、第1の実施の形態におけるタービンの一例としての蒸気タービンについて説明する。
図1は、蒸気の圧力が比較的低い低圧蒸気タービンの例を示す。
【0011】
図1に示すように、蒸気タービン1は、ケーシング2と、ケーシング2内に回転自在に設けられたタービンロータ3と、タービンロータ3に取り付けられた複数の動翼翼列4と、を備えている。動翼翼列4は、周方向に所定の間隔で配置された複数のタービン動翼10(
図2参照、以下、単に動翼10と記す)により構成されている。一方、ケーシング2には、動翼翼列4と交互に配置された複数の静翼翼列5が取り付けられている。静翼翼列5は、周方向に所定の間隔で配置された複数の静翼(ノズル)により構成されている。各動翼翼列4は、対応する静翼翼列5と共にタービン段落を構成している。複数のタービン段落のうち最も高圧側(上流側)のタービン段落6は第1段落といい、最も低圧側(下流側)のタービン段落7は、最終段落という。
【0012】
ケーシング2には、図示しないボイラ等において生成された蒸気を作動流体としてタービン段落に供給する蒸気管8が連結されている。この蒸気管8により供給された蒸気は、第1段落6に入り、各タービン段落を通って下流側に流れて、最終段落7から抜けていくようになっている。この間、蒸気の膨張仕事を動翼10が受けてタービンロータ3が回転する。このことにより、タービンロータ3に連結された発電機(図示せず)において発電が行われる。また、最終段落7から抜けた蒸気は、ケーシング2の外側に設けられた復水器(図示せず)に送られて復水が生成され、生成された復水は、上述したボイラに供給される。
【0013】
次に、
図2を用いて、本実施の形態におけるタービン部品の一例としての動翼10についてより詳細に説明する。
【0014】
図2に示すように、動翼10は、動翼本体11と、植込み部12と、動翼本体11と植込み部12との間に設けられたプラットホーム13と、を備えている。
【0015】
動翼本体11は、蒸気流路内に配置されて蒸気から圧力を受ける羽根形状を有する部分である。動翼本体11は、鉛直方向における一側(
図2における上側)の端部に設けられた、水平方向に延びるシュラウド14を有している。
【0016】
植込み部12は、動翼本体11の鉛直方向における他側(
図2における下側)に設けられている。植込み部12は、タービンロータ3のロータディスク3a(
図1参照)に設けられた植込み溝(図示せず)に係合可能に形成されており、植込み部12が植込み溝に係合して、動翼10がタービンロータ3に取り付けられるように構成されている。動翼本体11と植込み部12とは、プラットホーム13を介して互いに接合されて一体化されている。
【0017】
プラットホーム13は、水平方向に延びており、動翼本体11および植込み部12よりも水平方向に延び出ている。プラットホーム13は、鉛直方向における一側(
図2における上側)に設けられた面(上面)13aと、鉛直方向における他側(
図2における下側)に設けられた面(下面)13bと、を有している。プラットホーム13の中央部13cにおける上面13aに、動翼本体11が接合され、プラットホーム13の中央部13cにおける下面13bに、植込み部12が接合されている。
【0018】
次に、
図3および
図4を用いて、本実施の形態による造形物製造方法によって製造される造形物100について説明する。本実施の形態における造形物100は、後述する造形物製造装置20を用いて後述する造形物製造方法により製造される。本実施の形態における造形物100は、上述した動翼10を含んでいる。
【0019】
図3および
図4に示すように、造形物100は、上述した動翼10(製品部の一例)と、鉛直方向(後述する積層方向)で見たときに動翼10とは離間した造形品質確認部90と、造形品質確認部90と動翼10とを接続する接続部91と、を有している。なお、
図4においては、動翼10の詳細な形状の図示は省略されている。
【0020】
造形品質確認部90は、鉛直方向に棒状に延びている。造形品質確認部90は、四角柱状であってもよい。
図3および
図4に示すように、造形品質確認部90は、動翼10の周辺に複数配置されていてもよい。図示された例においては、造形品質確認部90は、動翼10の水平方向(図における左右方向)における両側にそれぞれ配置されている。造形品質確認部90は、造形物100が造形された後に、造形物100の造形品質の確認を行うための部分である。より具体的には、造形物100が造形された後、造形品質確認部90が造形物100から切り離され、例えば引張試験が実施されることにより、造形物100の造形品質の確認が行われる。引張試験は、JIS Z 2241で規定される金属材料引張試験方法に準じていても良い。
【0021】
接続部91は、造形品質確認部90から延び出て動翼10に接続されている。
図3に示すように、接続部91は、造形品質確認部90から鉛直方向に対して斜め上方に延びて動翼10に接続されていてもよい。図示された例においては、接続部91は、動翼10のプラットホーム13に接続されている。より具体的には、接続部91は、プラットホーム13の外周端部13e(プラットホーム13の外周縁の側に位置する部分)における下面13bに接続されている。また、
図3に示すように、各造形品質確認部90から接続部91が延び出て、各接続部91が、動翼10にそれぞれ接続されていてもよい。
【0022】
次に、
図5を用いて、本実施の形態における造形物製造装置について説明する。本実施の形態における造形物製造装置は、後述する造形物製造方法により、上述した造形物100を製造可能に構成されている。
【0023】
図5に示すように、造形物製造装置20は、粉末80(例えばアトマイズ粉末)を貯留する粉末タンク21と、粉末80で構成される粉末層81(
図6参照)を形成する粉末層形成機構40と、を備えている。
【0024】
粉末層形成機構40は、
図5に示すように、粉末層81(
図6参照)が形成されるステージ41と、ステージ41を下降させるステージ駆動部42と、を有している。このうちステージ41は、造形物100を積層造形する積層造形部43内に収容され、積層造形部43内をステージ駆動部42によって昇降可能に構成されている。このステージ駆動部42は、後述する溶解層82(
図6参照)を形成した後、新たな溶解層82を形成するために、ステージ41を下降させるように構成されている。
【0025】
粉末層形成機構40は、粉末80をステージ41上に供給するディスペンサ44をさらに有している。このディスペンサ44には、粉末タンク21から粉末80が供給されるようになっている。ディスペンサ44は、ステージ41上に粉末80を供給して粉末層81を形成する。ディスペンサ44は、ディスペンサ駆動部(図示せず)によってステージ41の上方を水平方向に移動可能になっており、移動しながら粉末80をステージ41上に供給することができる。ディスペンサ44は、ステージ41上への粉末80の供給および供給停止を切り替えることができるようになっている。ステージ41上に形成された粉末層81は、水平方向に移動可能な均し部材45によって所望の厚さで平らに均らされ、ステージ41上に所望の厚さの粉末層81が形成され得る。なお、ステージ41上との記載は、ステージ41上に直接的に粉末が供給されたり、直接的に層が形成されたりする場合に限られることを意味するのではなく、ステージ41上に予め他の層が形成されている場合に当該層上に新たに粉末が供給されたり、新たに層が形成されたりする場合をも含む概念として用いている。
【0026】
造形物製造装置20は、レーザビーム(エネルギービームの一例)を照射するビーム照射機構50をさらに備えている。このビーム照射機構50は、ステージ41上に粉末層81が形成された場合に粉末層81にレーザビームを照射して溶解層82を形成する。ビーム照射機構50は、レーザビームを発生するビーム発生装置51と、ビーム発生装置51により発生したレーザビームを照射する照射ヘッド52と、を有している。このうち照射ヘッド52は、ヘッド駆動部(図示せず)によってステージ41の上方を水平方向に移動可能に構成されている。照射ヘッド52は、造形物100の3次元CADデータに基づいて、粉末層81に対応する高さ位置における造形物100の断面形状に対応する領域にレーザビームを照射する。
【0027】
粉末層形成機構40や照射ヘッド52等は、所定の雰囲気、例えば不活性ガス若しくは真空雰囲気に調整可能なチャンバ60内に収容されている。
【0028】
上述した粉末層形成機構40およびビーム照射機構50は、制御部70によって制御されるようになっている。
【0029】
より具体的には、制御部70が粉末層形成機構40のステージ駆動部42を制御することにより、ステージ41の昇降が制御される。また、制御部70が粉末層形成機構40のディスペンサ44を制御することにより、ディスペンサ44からステージ41への粉末の供給が制御され、ディスペンサ駆動部を制御することにより、ディスペンサ44の移動が制御される。さらに、制御部70がビーム発生装置51を制御することによりレーザビームの発生が制御され、ヘッド駆動部を制御することにより照射ヘッド52の移動が制御される。
【0030】
このようにして、ステージ41上に粉末80が供給されて粉末層81が形成され、粉末層81にレーザビームが照射されて溶解層82が形成される。そして、形成された溶解層82上に、上述と同様にして粉末80が供給されて粉末層81が形成され、粉末層81にレーザビームが照射されて溶解層82が形成される。このように溶解層82が繰り返し形成されて、ステージ41上に、積層された溶解層82で構成される造形物100(
図6参照)が積層造形される。この造形物100は、上述した動翼10を含むことができる。
【0031】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、
図6を参照して、本実施の形態による造形物製造方法により、上述した造形物製造装置20を用いて上述した造形物100を製造する方法について説明する。以下に説明する造形物製造装置20の各部の動作は、制御部70が各部を制御することにより行われる。
【0032】
まず、造形物製造装置20の粉末タンク21に粉末80が貯留される。
【0033】
続いて、
図6(a)に示すように、粉末層形成機構40のステージ駆動部42(
図5参照)が駆動されて下降し、ステージ41が積層造形部43の上端縁より所定量だけ低い位置に位置付けられる。この場合のステージ41の位置は、積層造形部43の上端縁から、後述する粉末層81の厚さに相当する量だけ低い位置であってもよい。
【0034】
次に、粉末80が、粉末タンク21からディスペンサ44に供給される。このとき、ディスペンサ44は、粉末タンク21の下方に位置付けられており(
図5参照)、ディスペンサ44は、粉末タンク21から排出された粉末80を受け取り、粉末80がディスペンサ44に貯留される。ディスペンサ44が受け取る粉末80の量は、1つの粉末層81を形成する量であってもよく、粉末層81を連続的に積層する場合には、連続して積層される複数の粉末層81を形成する合計量であってもよい。
【0035】
続いて、
図6(b)に示すように、ディスペンサ駆動部が駆動されてディスペンサ44が水平方向に移動しながら、粉末80がステージ41上に供給される。ステージ41上に粉末80が供給された後、水平方向に移動する均し部材45によってステージ41上の粉末80が均されて、所望の厚さの粉末層81がステージ41上に形成される。
【0036】
次に、
図6(c)に示すように、粉末層81に、照射ヘッド52からレーザビームが照射される。この場合、ビーム発生装置51においてレーザビームを発生させるとともに、ヘッド駆動部が駆動されて照射ヘッド52が水平方向に移動する。このことにより、照射ヘッド52が水平方向に移動しながら、ビーム発生装置51において発生したレーザビームは照射ヘッド52に伝達されて粉末層81に照射される。レーザビームは、造形物100の3次元CADデータに基づいて照射される。すなわち、当該粉末層81に対応する高さ位置における造形物100の断面形状が3次元CADデータから得られ、この断面形状をレーザビームで塗り潰すようにレーザビームをスキャン(走査)させる。このようにして、粉末層81のうち当該断面形状に相当する部分の粉末80が溶解し、ステージ41上に溶解層82が形成される。
【0037】
溶解層82が形成された後、
図6(d)に示すように、ステージ駆動部42が駆動されてステージ41が所定の下降量だけ下降する。この場合の下降量は、この後に形成される新たな第1粉末層83の厚さに相当する量であるが、
図6(a)に示す工程におけるステージ41の下降量と同一であってもよい。
【0038】
ステージ41が下降した後、ステージ41上に上述のようにして粉末80が再び供給されて、
図6(e)に示すように、ステージ41上に既に形成された溶解層82上に、新たな粉末層81が形成される。その後、上述と同様にしてレーザビームが照射されて、当該新たな粉末層81に対応する高さ位置における造形物100の断面形状に相当する部分の粉末80が溶解して新たな溶解層82が形成される。この際、当該新たな粉末層81に照射されたレーザビームにより、先に形成された溶解層82も少なくとも部分的に溶解する。このことにより、新たな溶解層82は、先に形成された溶解層82と接合し、一体化される。
【0039】
上述のようにして溶解層82を複数回繰り返して形成して積層方向に積層していくことにより、
図6(f)に示すような中間造形物100’が積層造形される。この中間造形物100’は、動翼10の植込み部12およびプラットホーム13と、造形品質確認部90’と、接続部91とを含んでいる。
【0040】
ここで、一般的な造形物製造方法により製造される造形物100(中間造形物100’)は、
図7に示すように、造形品質確認部90’と動翼10のプラットホーム13とを接続する接続部91を有していない。このため、レーザビームからの熱を受けた造形物100が、造形時に熱応力により変形してしまうおそれがある。とりわけ、動翼10のプラットホーム13は水平方向に延びており、また、プラットホーム13の中央部13cにおける下面13bに植込み部12が接合されている。このため、
図7に示すように、プラットホーム13の外周端部13eが、積層方向における上側(
図7における上側)に曲がるように変形するおそれがある。この場合、動翼10の造形品質を維持することができないおそれがある。さらには、変形量が大きい場合、次に新たな粉末層81を形成する際に、移動するディスペンサ44が、プラットホーム13の変形した部分に衝突してしまうおそれがある。
【0041】
一方、他の一般的な製造方法により製造される造形物100(中間造形物100’)は、
図8に示すように、動翼10のプラットホーム13を支持する支持部92(サポート)を有している。支持部92は、造形品質確認部90’には接続されておらず、ステージ41上から積層方向に延びて、プラットホーム13の下面13bに接続されている。このような支持部92に支持されることにより、プラットホーム13の変形を抑制している。しかしながら、このような支持部92は、プラットホーム13の変形を抑制することができるように高い剛性を有し、大きな質量を有している場合がある。この場合、支持部92の造形に多くの粉末80を要してしまい、支持部92の造形に用いた粉末80は再利用することができないことから、製造コストが増大してしまうおそれがある。
【0042】
これに対して本実施の形態による造形物製造方法により製造される造形物100(中間造形物100’)は、
図6(f)に示すように、造形品質確認部90’と動翼10とを接続する接続部91を有している。本実施の形態においては、接続部91が、プラットホーム13の外周端部13eにおける下面13bに接続されている。このため、動翼10のプラットホーム13の外周端部13eが積層方向における上側に曲がるように変形することを効果的に抑制することができる。このため、動翼10の造形品質を維持することができるとともに、次に新たな粉末層81を形成する際に、移動するディスペンサ44が、プラットホーム13の変形した部分に衝突することを防止することができる。また、接続部91は、造形品質確認部90’に接続されているため、それ自体が高い剛性および大きな質量を有することを不要にすることができる。このため、接続部91の造形に用いる粉末80の量を低減することができ、製造コストの増大を抑制することができる。このように造形物100の造形品質の確認のために設けられた造形品質確認部90を利用することで、製造コストの増大を抑制しつつ、造形物100の変形を抑制することができる。
【0043】
その後、さらに、上述のようにして溶解層82を複数回繰り返して形成して積層方向に積層していくことにより、
図6(g)に示すように、造形物100が積層造形される。この造形物100は、動翼10と、造形品質確認部90と、接続部91とを含んでいる。このようにして、
図3および
図4に示すような造形物100を得ることができる。
【0044】
次に、金属カッタ等により、造形品質確認部90および接続部91が切断される。すなわち、
図3および
図4に示す造形物100から造形品質確認部90および接続部91が切り離される。このようにして、
図2に示すような動翼10を得ることができる。
【0045】
ここで、切り離された造形品質確認部90は、造形物100の造形品質の確認に用いられる。例えば、造形品質確認部90に上述した引張試験が実施されることにより、造形物100の造形品質の確認が行われる。この引張試験により、造形品質確認部90における欠陥の有無を把握することができる。これにより、造形物100の積層造形の過程で不具合が生じた場合には、その不具合の発生を確認することができる。
【0046】
その後、グラインダー加工などの研削、研磨加工により動翼10の形状を整えた後、溶体化熱処理、必要に応じた表面コーティング処理、及び時効熱処理を行うことにより、動翼10の製造が完了する。
【0047】
このように本実施の形態によれば、造形物100が、造形品質確認部90と動翼10とを接続する接続部91を有している。このことにより、造形品質確認部90に接続された接続部91により、動翼10を支持することができる。このため、動翼10の変形を抑制することができる。また、接続部91は、造形品質確認部90に接続されているため、それ自体が高い剛性および大きな質量を有することを不要にすることができる。このため、接続部91の造形に用いる粉末80の量を低減することができ、製造コストの増大を抑制することができる。このように造形物100の造形品質の確認のために設けられた造形品質確認部90を利用することで、製造コストの増大を抑制しつつ、造形物100の変形を抑制することができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、造形品質確認部90は、積層方向に棒状に延び、接続部91は、造形品質確認部90から積層方向に対して斜め上方に延びて動翼10に接続される。このことにより、動翼10が積層方向における上側に曲がるように変形することを効果的に抑制することができる。このため、造形時において、次に新たな粉末層81を形成する際に、移動するディスペンサ44が、動翼10の変形した部分に衝突することを防止することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、接続部91は、動翼10のプラットホーム13に接続される。プラットホーム13は水平方向に延びているため、他の部分に比べて大きな面積を有している。このことにより、プラットホーム13は、動翼10の他の部分に比べて変形し易くなっている。このため、接続部91がプラットホーム13に接続されることにより、このプラットホーム13の変形を効果的に抑制することができる。
【0050】
とりわけ、本実施の形態によれば、接続部91は、プラットホーム13の外周端部13eにおける下面13bに接続される。プラットホーム13は水平方向に延びているとともに、プラットホーム13の中央部13cにおける下面13bに植込み部12が接合されている。このことにより、プラットホーム13の外周端部13eは、積層方向における上側に曲がるように変形し易くなっている。このため、接続部91がプラットホーム13の外周端部13eにおける下面13bに接続されることにより、このプラットホーム13の変形を効果的に抑制することができる。
【0051】
(第2の実施の形態)
次に、
図9~
図11を参照して、第2の実施の形態による造形物製造方法について説明する。
【0052】
図9~
図11に示す第2の実施の形態においては、造形物が、造形品質確認部の周辺に設けられた複数の製品部と、対応する製品部に接続される複数の接続部と、を有している点が主に異なり、他の構成は、
図1~
図6に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図9~
図11において、
図1~
図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
本実施の形態による造形物製造方法により製造される造形物100は、
図9に示すように、造形品質確認部90の周辺に設けられた複数の動翼10a、10bと、対応する動翼10a、10bに接続される複数の接続部91a、91bと、を有している。なお、
図9においては、各動翼10a、10bの詳細な形状の図示は省略されている。
【0054】
図9に示す例においては、1つの造形品質確認部90の周辺に2つの動翼10a、10bが配置されている。より具体的には、1つの造形品質確認部90の図の左右方向における両側に動翼10a、10bがそれぞれ配置されている。そして、造形品質確認部90から延び出て対応する動翼10a、10bに接続される複数の接続部91a、91bが設けられている。すなわち、造形品質確認部90から延び出て一の動翼10a(
図9における右側)に接続される一の接続部91aと、造形品質確認部90から延び出て他の一の動翼10b(
図9における左側)に接続される他の一の接続部91bと、が設けられている。各接続部91a、91bは、上述した第1の実施の形態と同様、動翼10のプラットホーム13の外周端部13eにおける下面13bにそれぞれ接続されていてもよい。
【0055】
また、
図9に示すように、各動翼10a、10bが、造形品質確認部90に対して対称に配置されていてもよい。例えば、積層方向で見たとき、一の動翼10aと他の一の動翼10bとが、造形品質確認部90の中心点に対して点対称、あるいは当該中心点を通る直線(図の上下方向に延びる直線)に対して線対称(すなわち左右対称)に配置されていてもよい。
【0056】
このように本実施の形態によれば、造形物100が、造形品質確認部90の周辺に設けられた複数の動翼10a、10bと、対応する動翼10a、10bに接続される複数の接続部91a、91bと、を有している。このことにより、1つの造形品質確認部90により複数の動翼10a、10bを支持することができる。すなわち、複数の動翼10a、10bを支持するための造形品質確認部90の数を削減することができる。このため、造形品質確認部90の造形に用いる粉末80の量を低減することができ、製造コストの増大をより一層抑制することができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、各動翼10a、10bが、造形品質確認部90に対して対称に配置されている。造形品質確認部90は、接続部91a、91bを介して動翼10a、10bと接続されているため、各動翼10a、10bの変形を抑制する際、各動翼10a、10bから引っ張り力を受ける。本実施の形態によれば、各動翼10a、10bが、造形品質確認部90に対して対称に配置されていることにより、造形品質確認部90において各動翼10a、10bからの引っ張り力を相殺あるいは軽減することができる。このことにより、造形品質確認部90が、各動翼10a、10bからの引っ張り力により、変形あるいは傾倒することを抑制することができる。このため、造形品質確認部90の剛性を低減することができ、造形品質確認部90の質量を低減することができる。この結果、造形品質確認部90の造形に用いる粉末80の量を低減することができ、製造コストの増大をより一層抑制することができる。
【0058】
なお、上述した本実施の形態においては、1つの造形品質確認部90の周辺に2つの動翼10a、10bが配置されている例を示した(
図9参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、
図10に示すように、1つの造形品質確認部90の周辺に3つの動翼10a、10b、10cが配置されていてもよい。なお、
図10においては、各動翼10a、10b、10cの詳細な形状の図示は省略されている。
【0059】
図10に示す例においては、一の動翼10aが造形品質確認部90の図における右上側に配置され、他の一の動翼10bが造形品質確認部90の図における左上側に配置され、別の他の一の動翼10cが造形品質確認部90の図における下側に配置されている。そして、造形品質確認部90から延び出て対応する動翼10a、10b、10cに接続される複数の接続部91a、91b、91cが設けられている。すなわち、造形品質確認部90から延び出て一の動翼10aに接続される一の接続部91aと、造形品質確認部90から延び出て他の一の動翼10bに接続される他の一の接続部91bと、造形品質確認部90から延び出て別の他の一の動翼10cに接続される別の他の一の接続部91cと、が設けられている。
【0060】
この場合も、
図10に示すように、各動翼10a、10b、10cのうちの一対の動翼が、造形品質確認部90に対して対称に配置されていてもよい。例えば、積層方向で見たとき、3つの動翼10a、10b、10cのうちの一対の動翼10a、10bが、造形品質確認部90の中心点を通る直線(図の上下方向に延びる直線)に対して線対称に配置されていてもよい。また、3つの動翼10a、10b、10cのうちの一対の動翼10a、10cが、造形品質確認部90の中心点を通る直線(図の上下方向から反時計回りに傾いた直線)に対して線対称に配置されていてもよい。また、3つの動翼10a、10b、10cのうちの一対の動翼10b、10cが、造形品質確認部90の中心点を通る直線(図の上下方向から時計回りに傾いた直線)に対して線対称に配置されていてもよい。
【0061】
また、
図11に示すように、1つの造形品質確認部90の周辺に4つの動翼10a、10b、10c、10dが配置されていてもよい。なお、
図11においては、各動翼10a、10b、10c、10dの詳細な形状の図示は省略されている。
【0062】
図11に示す例においては、一の動翼10aが造形品質確認部90の図における右側に配置され、他の一の動翼10bが造形品質確認部90の図における左側に配置されている。また、別の他の一の動翼10cが造形品質確認部90の図における上側に配置され、更に別の他の一の動翼10dが造形品質確認部90の図における下側に配置されている。そして、造形品質確認部90から延び出て対応する動翼10a、10b、10c、10dに接続される複数の接続部91a、91b、91c、91dが設けられている。すなわち、造形品質確認部90から延び出て一の動翼10aに接続される一の接続部91aと、造形品質確認部90から延び出て他の一の動翼10bに接続される他の一の接続部91bと、が設けられている。また、造形品質確認部90から延び出て別の他の一の動翼10cに接続される別の他の一の接続部91cと、造形品質確認部90から延び出て更に別の他の一の動翼10dに接続される更に別の他の一の接続部91dと、が設けられている。
【0063】
この場合も、
図11に示すように、各動翼10a、10b、10c、10dのうちの一対の動翼が、造形品質確認部90に対して対称に配置されていてもよい。例えば、積層方向で見たとき、4つの動翼10a、10b、10c、10dのうちの一対の動翼10a、10bが、造形品質確認部90の中心点に対して点対称、あるいは当該中心点を通る直線(図の上下方向に延びる直線)に対して線対称に配置されていてもよい。また、4つの動翼10a、10b、10c、10dのうちの一対の動翼10c、10dが、造形品質確認部90の中心点に対して点対称、あるいは当該中心点を通る直線(図の左右方向に延びる直線)に対して線対称に配置されていてもよい。
【0064】
さらに、同様にして、1つの造形品質確認部90の周辺に5つ以上の動翼10が配置されていてもよい。この場合も、各動翼10のうちの一対の動翼が、造形品質確認部90に対して対称(点対称あるいは線対称)に配置されていてもよい。
【0065】
このような場合であっても、上述した本実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態においては、造形品質確認部90が、動翼10の周辺に1つあるいは2つ配置されている例について説明した(
図4、
図9~
図11参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、動翼10の周辺に、3つ以上の造形品質確認部90が配置されていてもよい。そして、各造形品質確認部90から接続部91が延び出て、各接続部91が動翼10にそれぞれ接続されていてもよい。
【0067】
また、上述した実施の形態においては、造形品質確認部90が、積層方向に棒状に延びている例について説明した(
図3参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、造形品質確認部90が、例えば、積層方向に対して斜め上方に延びていてもよい。また、造形品質確認部90は、棒状でなくてもよく、造形物100の造形品質の確認ができれば、他の任意の形状を有していてもよい。
【0068】
また、上述した実施の形態においては、造形品質確認部90に引張試験が実施されることにより、造形物100の造形品質の確認が行われる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、他の任意の方法により、造形物100の造形品質の確認が行われてもよい。例えば、造形品質確認部90の各溶解層82の表面がカメラにより撮影され画像解析されることによって、造形物100の造形品質の確認が行われてもよい。
【0069】
また、上述した実施の形態においては、接続部91が、造形品質確認部90から積層方向に対して斜め上方に延びて動翼10に接続される例について説明した(
図3参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、接続部91は、例えば、水平方向に延びて動翼10に接続されてもよいし、積層方向に対して斜め下方に延びて動翼10に接続されてもよい。この場合、接続部91は、動翼10のプラットホーム13の外周端部13eにおける側部に接続されてもよいし、動翼10のプラットホーム13の外周端部13eにおける上面13aに接続されてもよい。このような場合であっても、造形品質確認部90を利用して動翼10を支持することで、製造コストの増大を抑制しつつ、造形物100の変形を抑制することができる。
【0070】
また、上述した実施の形態においては、接続部91が、動翼10のプラットホーム13に接続される例について説明した(
図3参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、接続部91は、動翼10の他の部分に接続されてもよい。例えば、接続部91は、動翼10の動翼本体11に接続されてもよい。とりわけ、接続部91は、動翼本体11のシュラウド14に接続されてもよい。シュラウド14は水平方向に延びているため、プラットホーム13と同様、比較的大きな面積を有しており、変形し易くなっている。このため、接続部91がシュラウド14に接続されることにより、シュラウド14の変形を効果的に抑制することができる。
【0071】
また、上述した実施の形態においては、パウダーベッド方式で動翼10を積層造形する場合について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、デポジション方式で動翼10を積層造形するようにしてもよい。
【0072】
また、上述した実施の形態においては、エネルギービームとしてレーザビームを用いる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、レーザビームの代わりに電子ビームを用いてもよい。この場合、照射ヘッド52に代えて電子銃(図示せず)から照射される電子ビームを電磁コイルにより偏向させることで、電子ビームをスキャンさせてもよい。
【0073】
また、上述した実施の形態においては、タービン部品の一例としての動翼10を積層造形する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、動翼10以外にもタービンロータ3(
図1参照)等の他のタービン部品を積層造形してもよい。また、タービンの一例として、低圧蒸気タービンを例にとって説明したが、高圧蒸気タービンやガスタービンなど任意のタービン部品を積層造形することができる。さらには、タービン部品に限られることもなく、上述した実施の形態による造形物製造方法により、タービン以外の任意の装置等を構成する部品を含む造形物を積層造形することができる。
【0074】
以上述べた実施の形態によれば、製造コストの増大を抑制しつつ、造形物の変形を抑制することができることができる。
【0075】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例】
【0076】
ここでは、上述した実施の形態による造形物製造方法により、
図12に示すような構造物110(製品部)を製造した。
【0077】
具体的には、
図12に示すように、一辺の長さL1が5cmで厚みTが1cmの天板部111と、天板部111の中央に設けられた、一辺の長さL2が1cmで高さHが9cmの脚部112と、を備えた構造物110を製造した。構造物110の材料としては、質量%でCが0.1%、Crが10%、残りが主にFeから成る合金組成の粉末をガスアトマイズ法で製造し、粒径45μm~90μmに分級した粉末80を用いた。構造物110は、電子ビームを熱源にした造形物製造装置20を用いて製造した。電子ビームのビーム電流値は15mA、ビーム走査速度は1m/secであった。ベースプレートには、150mm×150mm×10mmのSUS316製の鋼鈑を使用した。
【0078】
第1実施例としては、
図13に示すように、構造物110と、一辺の長さが1cmで高さが10cmの造形品質確認部90と、造形品質確認部90と構造物110とを接続する接続部91と、を有する造形物100を積層造形した。
図13に示すように、造形品質確認部90は、積層方向で見たときに、構造物110の1つの隅部の近傍に離間して配置させた。接続部91は、造形品質確認部90から積層方向に対して斜め上方に延びて、構造物110の天板部111の1つの隅部における下面(脚部112の側の面)に接続させた。このような造形物100を積層造形した後、構造物110と造形品質確認部90と接続部91とをそれぞれ切り離した。その後、
図13に示すように、構造物110の天板部111の隅部を測定点A、接続部91の造形品質確認部90の側の端部を測定点Sとして設定し、これらの位置における鉛直方向(積層方向)の変形量および水平方向の変形量をそれぞれ測定した。変形量の測定は、各測定点A、Sの設計点からの変位量をマイクロメーターにより測定することにより行った。
【0079】
第2実施例としては、
図14に示すように、2つの構造物110と、1つの造形品質確認部90と、対応する構造物110に接続される2つの接続部91と、を有する造形物100を積層造形した。ここで、構造物110、造形品質確認部90および接続部91の各構成は、第1実施例と同様であった。また、
図14に示すように、2つの構造物110は、造形品質確認部90に対して対称に配置させた。このような造形物100を積層造形した後、構造物110と造形品質確認部90と接続部91とをそれぞれ切り離した。その後、第1実施例と同様の位置に測定点Aおよび測定点Sを設定し、第1実施例と同様にして、これらの位置における鉛直方向の変形量および水平方向の変形量をそれぞれ測定した。
【0080】
比較例としては、接続部91を有していない、それぞれ独立した造形品質確認部90と構造物110とから成る造形物100を積層造形した。ここで、構造物110および造形品質確認部90の各構成は、第1実施例と同様であった。積層造形時において、構造物110の天板部111の変形量が大きく、ディスペンサ44が変形した天板部111に接触したが、そのまま積層造形を続行した。そして、第1実施例と同様の位置に測定点Aを設定し、第1実施例と同様にして、当該位置における鉛直方向の変形量および水平方向の変形量を測定した。
【0081】
第1実施例、第2実施例および比較例の各変形量の結果は、以下の表1のようになった。なお、ここで、鉛直方向の変形量については、鉛直方向における上側を正値(+)で、鉛直方向における下側を負値(-)で表している。また、水平方向の変形量については、水平方向において構造物110の中央(天板部111の中央)に向う側を正値(+)で、その反対側(天板部111の中央から離れる側)を負値(-)で表している。
【0082】
【0083】
上記表1に示されているように、第1実施例の測定点Aにおける鉛直方向の変形量および第2実施例の測定点Aにおける鉛直方向の変形量は、比較例の測定点Aにおける鉛直方向の変形量よりも小さくなることが確認できた。また、第1実施例の測定点Aにおける水平方向の変形量および第2実施例の測定点Aにおける水平方向の変形量も、比較例の測定点Aにおける水平方向の変形量よりも小さくなることが確認できた。このため、第1実施例および第2実施例では、構造物110の天板部111の変形を抑制できていることが確認できた。
【0084】
さらに、上記表1に示されているように、第2実施例の測定点Aにおける水平方向の変形量は、比較例の測定点Aにおける水平方向の変形量および第1実施例の測定点Aにおける水平方向の変形量よりも小さくなることが確認できた。また、第2実施例の測定点Sにおける水平方向の変形量も、第1実施例の測定点Sにおける水平方向の変形量よりも小さくなることが確認できた。とりわけ、第2実施例の測定点Sにおける水平方向の変形量は、ほぼ0に近い数値であった。このため、第2実施例では、造形品質確認部90において各構造物110からの引っ張り力を相殺あるいは軽減できていることが確認できた。
【符号の説明】
【0085】
1 蒸気タービン
10 動翼
11 動翼本体
12 植込み部
13 プラットホーム
13b 下面
13e 外周端部
80 粉末
81 粉末層
82 溶解層
90 造形品質確認部
91 接続部
100 造形物
110 構造物