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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】インプリント装置及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240306BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020096336
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2021190627
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 弘稔
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-254938(JP,A)
【文献】特開2013-191777(JP,A)
【文献】特開2018-137360(JP,A)
【文献】特開2012-099790(JP,A)
【文献】特開2016-192543(JP,A)
【文献】特開2012-160635(JP,A)
【文献】特開2017-157636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記型と前記基板との間の距離が調整されるように、前記型及び前記基板の少なくとも一方を駆動する駆動部と、
前記型のパターン領域を含み、前記基板上のインプリント材と前記パターン領域とを接触させる際に前記基板側に凸形状に変形させる前記型の部分における前記パターン領域側の第1面とは反対側の第2面の変位又は位置を計測する第1計測部と、
前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させた状態で前記インプリント材を硬化させる際に前記パターン領域の形状が一定に維持されるように、前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させる前における前記第1計測部の計測値に基づいて、前記駆動部の駆動量を制御する制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させる前における前記第1計測部の計測値と、前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させた後における前記第1計測部の計測値との差が許容範囲に収まるように、前記駆動部の駆動量を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させた後における前記第1計測部の計測値が前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させる前における前記第1計測部の計測値と一致するように、前記駆動部の駆動量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記パターン領域は、矩形形状を有し、
前記第1計測部は、前記第2面に前記パターン領域を投影することで得られる矩形領域の外側の前記第2面の領域であって、前記矩形領域の2つの対角線のうちの1つの対角線上の少なくとも2箇所の変位又は位置を計測することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記パターン領域は、矩形形状を有し、
前記第1計測部は、前記第2面に前記パターン領域を投影することで得られる矩形領域の外側の前記第2面の領域であって、前記矩形領域の中心を通り、且つ、前記矩形領域の辺に平行な2つの直線のうちの1つの直線上の少なくとも2箇所の変位又は位置を計測することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記少なくとも2箇所は、前記矩形領域を挟んだ2箇所を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記部分を前記基板側に凸形状に変形させるために前記第2面に加える圧力を調整する調整部と、
前記型の前記第1面の変位又は位置を計測する第2計測部と、を更に有し、
前記調整部は、前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させる前における前記第2計測部の計測値に基づいて、前記圧力を調整し、
前記制御部は、前記調整部が前記圧力を調整した状態における前記第1計測部の計測値に基づいて、前記駆動部の駆動量を制御することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記調整部が基準圧力を前記第2面に加えたときの前記第1計測部の計測値と、前記調整部が前記基準圧力を前記第2面に加えたときに前記第1計測部で計測されるべき理想値との差分に基づいて、前記調整部を較正する較正部を更に有することを特徴とする請求項7に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記型の側面に力を加えて前記パターン領域を変形させる変形部を更に有し、
前記制御部は、前記変形部が前記パターン領域を変形させたことによる前記第2面の変位又は位置にも基づいて、前記駆動部の駆動量を制御することを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記駆動部は、前記型を保持して鉛直方向に駆動する型保持部と、前記基板を保持して鉛直方向に駆動する基板保持部と、を含み、
前記第1計測部は、前記型保持部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項11】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記型と前記基板との間の距離が調整されるように、前記型及び前記基板の少なくとも一方を駆動する駆動部と、
前記型のパターン領域を含み、前記基板上のインプリント材と前記パターン領域とを接触させる際に前記基板側に凸形状に変形させる前記型の部分における前記パターン領域側の第1面とは反対側の第2面に設けられたマークの幅を計測する計測部と、
前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させた状態で前記インプリント材を硬化させる際に前記パターン領域が一定の形状を維持するように、前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させる前における前記計測部の計測値に基づいて、前記駆動部の駆動量を制御する制御部と、を有し、
前記マークは、前記第2面に前記パターン領域を投影することで得られる投影領域の境界部に設けられていることを特徴とするインプリント装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させる前における前記計測部の計測値と、前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させた後における前記計測部の計測値との差が許容範囲に収まるように、前記駆動部の駆動量を制御することを特徴とする請求項11に記載のインプリント装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させた後における前記計測部の計測値が前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させる前における前記計測部の計測値と一致するように、前記駆動部の駆動量を制御することを特徴とする請求項11又は12に記載のインプリント装置。
【請求項14】
前記マークは、前記型と前記基板とのアライメントに用いられるアライメントマークとは異なるマークであることを特徴とする請求項11乃至13のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項15】
前記第1面には、前記第1面に前記境界部を投影することで得られる領域に溝が設けられていることを特徴とする請求項11乃至14のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項16】
前記部分は、3mm以下の厚さを有することを特徴とする請求項1乃至15のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項17】
前記部分の前記第2面には、前記部分を前記基板側に凸形状に変形させるための凹形状のキャビティが設けられていることを特徴とする請求項1乃至16のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項18】
請求項1乃至17のうちいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMS(Micro Electro Mechanical System)などの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィ技術に加えて、インプリント技術が注目されている。インプリント技術は、基板上のインプリント材を型で成形し、インプリント材のパターンを基板上に形成する微細加工技術である。インプリント技術によれば、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。
【0003】
インプリント技術では、インプリント材の硬化法の1つとして光硬化法がある。光硬化法は、基板上に供給(配置)されたインプリント材と型とを接触させた状態で紫外線などの光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を引き離すことでインプリント材のパターンを基板上に形成する方法である。
【0004】
このようなインプリント技術を利用するインプリント装置では、微細化に加えて、基板上に段階的に形成されるパターンの重ね合わせ精度に対する要求も高くなっている。例えば、インプリント装置は、32nm程度のハーフピッチを有する半導体デバイスの製造に適用することが考えられている。この場合、ITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors)によれば、6.4nmの重ね合わせ精度が必要とされている。このような高い重ね合わせ精度を実現するためには、基板と型との相対位置(水平方向の位置及び鉛直方向の位置)を厳密に管理する必要がある。
【0005】
インプリント装置では、基板上のインプリント材と型とを接触させる(インプリント材に型を押し付ける)際に、基板と型との相対位置を合わせるアライメント(位置合わせ)が行われる。具体的には、水平方向のアライメントに関しては、基板及び型の両者に設けられたアライメントマークが重なり合うように、基板ステージを介して、型に対して基板を水平方向に移動させることで実現する。また、鉛直方向のアライメントに関しては、型を鉛直方向に駆動するアクチュエータを介して、基板上のインプリント材に対する型の押し付け力を調整することで実現する。水平方向のアライメント誤差は、シフトや回転成分のずれとなり、鉛直方向のアライメント誤差は、基板又は型の歪み(ディストーション)を発生させる。従って、インプリント装置においては、基板と型との相対位置を、水平方向及び鉛直方向のいずれに関しても、nmオーダーで合わせ込む必要がある。なお、ディストーションに関しては、基板や型を保持する保持面(保持部材)の平面度も重要な要素となり、平面度が低い場合には、基板と型とで変形量に差が生じてしまうため、重ね合わせ精度が低下する。
【0006】
また、インプリント装置では、装置内の駆動部からの外力による変形、振動、装置外からの床振動の伝搬などに起因して、型を保持する保持部材と基板を保持する保持部材との間に相対位置ずれが生じる可能性がある。従って、インプリント装置の構造体としては、剛性を高く保つ必要がある。
【0007】
更に、インプリント装置としては、高い重ね合わせ精度を長期間保証する必要があるため、アライメント精度が時間的に変化しないことも要求される。
【0008】
そこで、基板上のインプリント材に対する型の押し付け力を制御(管理)する技術として、例えば、アクチュエータの駆動出力(電流値)から押し付け力を計測して制御する技術がある。アクチュエータの駆動出力は、実装剛性や予圧ばねなどによる抵抗力と、基板上のインプリント材に対する型の押し付け力とを含む。但し、アクチュエータの熱や経年劣化によって、推力定数に変化が生じた場合には、アクチュエータの駆動出力と、基板上のインプリント材に対する型の押し付け力との関係が変化する。また、型を保持する保持部材(駆動側)及びその周辺部材(固定側)には、チューブ、ケーブル類、予圧用のばねなどが接続されているため、これらが駆動抵抗となる。かかる駆動抵抗が時間的に変化する場合には、アクチュエータの駆動出力から予測される押し付け力に影響を与えてしまうため、重ね合わせ精度の低下を引き起こす要因となる。なお、基板上のインプリント材に対する型の押し付け力を制御する技術に関しては、他の技術も提案されている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6019685号公報
【文献】特許第5454160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1には、型の凸部(段差構造(メサ))に形成されたパターン領域の外側の領域の少なくとも2箇所において、型の局所的な傾き、又は、型と基板との間隔を計測して、インプリント材に対する型の押し付け力を制御する技術が開示されている。型のパターン領域の外側の領域の少なくとも2箇所の計測には、オートコリメータやレーザ顕微鏡が用いられる。
【0011】
しかしながら、基板に対する型の傾き(角度)や型と基板との間隔を計測する場合、多数のパターン(凹凸)や異なる表面反射状態を有する実デバイスの基板においては、計測の正確性を保つことが困難である。また、型の厚さや平面度、パターン領域に対する平行度などの製造誤差、自重変形、パターン領域の裏側に設けられたキャビティ(凹部)に印加する圧力によって、型の状態は変化する。従って、型の傾きや型と基板との間隔の計測結果から、型と基板とが平行となるように、インプリント材に対する型の押し付け力を正確に制御することは困難である。
【0012】
特許文献2には、基板ステージの型に対向する面に設けられた圧力センサを用いて、インプリント材に対する型の押し付け力を直接計測する技術が開示されている。しかしながら、かかる技術では、基板ステージに圧力センサを組み込む必要があるため、基板を保持する保持面の平面度を確保することが困難となる。また、基板ステージに圧力センサを設けることで、基板の支持に関する剛性が低下する場合があるため、上述したように、重ね合わせ精度の低下の要因となる。
【0013】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、重ね合わせ精度の改善に有利なインプリント装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、前記型と前記基板との間の距離が調整されるように、前記型及び前記基板の少なくとも一方を駆動する駆動部と、前記型のパターン領域を含み、前記基板上のインプリント材と前記パターン領域とを接触させる際に前記基板側に凸形状に変形させる前記型の部分における前記パターン領域側の第1面とは反対側の第2面の変位又は位置を計測する第1計測部と、前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させた状態で前記インプリント材を硬化させる際に前記パターン領域の形状が一定に維持されるように、前記インプリント材と前記パターン領域とを接触させる前における前記第1計測部の計測値に基づいて、前記駆動部の駆動量を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば、重ね合わせ精度の改善に有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す概略図である。
図2】型保持部材の近傍の構成を詳細に示す図である。
図3】インプリント装置の動作を説明するための図である。
図4】第1計測部の計測点を説明するための図である。
図5】型の裏面に設けられたマークの一例を示す図である。
図6】型の構成の一例を示す断面図である。
図7】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置1の構成を示す概略図である。インプリント装置1は、物品としての半導体素子、液晶表示素子、磁気記憶媒体などのデバイスの製造工程であるリソグラフィ工程に採用され、基板にパターンを形成するリソグラフィ装置である。インプリント装置1は、基板上に供給(配置)されたインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。
【0020】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する材料(硬化性組成物)が使用される。硬化用のエネルギーとしては、電磁波や熱などが用いられる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、具体的には、赤外線、可視光線、紫外線などを含む。
【0021】
硬化性組成物は、光の照射、或いは、加熱により硬化する組成物である。光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0022】
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されてもよい。また、インプリント材は、液体噴射ヘッドによって、液滴状、或いは、複数の液滴が繋がって形成された島状又は膜状で基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0023】
基板には、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂などが用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。具体的には、基板は、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどを含む。
【0024】
インプリント装置1は、本実施形態では、インプリント材の硬化法として光硬化法を採用し、図1に示すように、照射部2と、インプリントヘッド4と、基板ステージ6と、供給部7と、型搬送部8と、制御部9とを有する。
【0025】
本明細書及び添付図面では、基板5の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系で方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX方向、Y方向及びZ方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転及びZ軸周りの回転のそれぞれを、θX、θY及びθZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御又は駆動(移動)は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御又は駆動(移動)を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御又は駆動は、それぞれ、X軸に平行な軸周りの回転、Y軸に平行な軸周りの回転、Z軸に平行な軸周りの回転に関する制御又は駆動を意味する。
【0026】
照射部2は、光源20と、光源20から射出される光(例えば、紫外線)10を適切に調整する複数の光学素子とを含む。照射部2は、インプリント処理の際に、型3を介して、基板上のインプリント材14に光10を照射する。光10は、インプリント材14を硬化させる機能を有する。
【0027】
型3は、モールド、テンプレート、或いは、原版とも称され、基板上のインプリント材14の成形に用いられる。型3は、光10を透過させることが可能な材料(例えば、石英)で構成されている。型3は、矩形形状の外形を有し、基板5(の上のインプリント材14)に転写すべきパターン(例えば、回路パターンなどの凹凸パターン)が形成される表面(パターン領域側の第1面)31と、表面31とは反対側の裏面(第2面)32と、を有する。
【0028】
型3は、基板5に対向する表面31に、基板側に数十μm程度突出した突出部3bを含み、突出部3b(の表面)は、基板5に転写すべきパターンが3次元状に形成されたパターン領域PRを含む。突出部3bの表面(パターン領域PR)は、基板5の表面との密着性を保つために、高い平面度に加工されている。
【0029】
また、型3の裏面32には、基板上のインプリント材14と型3のパターン領域PRとを接触させる基板側に凸形状に変形させる部分33を形成するために、凹形状のキャビティ(彫り込み部)3aが設けられている。部分33は、例えば、3mm以下の有限の(0mmよりも大きい)厚さを有する。
【0030】
インプリントヘッド4は、型3を保持してZ軸方向(鉛直方向)に駆動する型駆動部として機能する。インプリントヘッド4は、型3を型保持部材12と、型保持部材12(型3)を鉛直方向に駆動するためのアクチュエータ13と、型保持部材12に保持されている型3のパターン領域PRを変形させる変形部11と、を含む。また、インプリントヘッド4においては、型保持部材12から装置固定側に実装27や自重保証ばね19が接続されている。実装27は、型3を真空吸着するためのチューブや変形部11を電気的に接続する電気ケーブルなどを含む。
【0031】
型保持部材12は、真空吸着力又は静電力によって型3を引き付けて保持するチャックを含む。アクチュエータ13は、基板上のインプリント材14に型3(のパターン領域PR)を接触させる(押し付ける)ために、型保持部材12をZ軸方向に駆動する。アクチュエータ13としては、例えば、リニアモータが採用可能であるが、特に限定するものではない。変形部11は、型3の側面に力(圧縮力)を加えることで、パターン領域PRを変形させて所望の形状に補正する倍率補正機構として機能する。
【0032】
基板5は、型3のパターンが転写される被処理基板である。基板5の表面には、インプリント材14が塗布(配置)される。
【0033】
基板ステージ6は、基板5を保持してXY平面内で自由に駆動可能である。但し、基板ステージ6は、基板5を保持してZ軸方向(鉛直方向)に駆動する基板駆動部としての機能を有していてもよい。基板ステージ6を駆動するためのアクチュエータとしては、例えば、リニアモータが採用可能であるが、特に限定するものではない。基板ステージ6には、例えば、真空吸着によって基板5を保持する基板保持部材15が設けられている。
【0034】
型保持部材12を駆動するアクチュエータ13及び基板ステージ6を駆動するアクチュエータは、型3と基板5との間の距離が調整されるように、型3及び基板5の少なくとも一方を駆動する駆動部を構成する。型3と基板5との間の距離の調整は、本実施形態のように、型3(型保持部材12)をZ軸方向に駆動することで実現してもよいが、基板5(基板ステージ6)をZ軸方向に駆動することで実現してもよい。また、また、型3と基板5の双方を相対的にZ軸方向に駆動することで、型3と基板5との間の距離の調整を実現してもよい。
【0035】
供給部7は、基板上に未硬化のインプリント材14を供給する機能を有する。供給部7は、例えば、基板5に対して、インプリント材14の液滴を吐出するディスペンサを含む。インプリント材14は、照射部2から照射された光10を受けて硬化する性質を有し、製造するデバイスの種類に応じて適宜選択される。
【0036】
型搬送部8は、型3を収容する型収容部と型保持部材12(インプリントヘッド4)との間で型3を搬送する。
【0037】
制御部9は、インプリント装置1の内部に設けられていてもよいし、インプリント装置1とは別の場所に設けられていてもよい。制御部9は、CPUやメモリなどを含む情報処理装置(コンピュータ)で構成され、記憶部に記憶されたプログラムに従って、インプリント装置1の全体を制御する。制御部9は、インプリント装置1の各部を制御して、基板上の複数のショット領域のそれぞれにインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を行う。
【0038】
インプリント処理では、供給部7から基板上にインプリント材14を供給し、型3と基板5との間隔を狭めて、型3(パターン領域PR)をインプリント材14に接触させる(押し付ける)。次いで、基板上のインプリント材14と型3とを接触させた状態で、照射部2からインプリント材14に光10を照射してインプリント材14を硬化させる。そして、型3と基板5との間隔を広げて、基板上の硬化したインプリント材14から型3を引き離すことで、基板上のインプリント材14に型3のパターンを転写する。このような一連の処理を、基板上の複数のショット領域のそれぞれに対して行うことで、各ショット領域にインプリント材14のパターンが形成される。
【0039】
また、インプリント処理では、基板上のインプリント材14と型3とを接触させる際に、制御部9の制御下において、基板5と型3の相対位置を合わせるアライメント(位置合わせ)が行われる。X軸方向及びY軸方向(水平方向)のアライメントは、基板5及び型3の両者に設けられたアライメントマークをアライメントスコープ18で計測し、それらのアライメントマークが重なり合うように、基板ステージ6を駆動して位置を合わせ込む。
【0040】
また、インプリント装置1は、図1に示すように、第1計測部21を有する。第1計測部21は、本実施形態では、型保持部材12に設けられ、型3のキャビティ3aのZ軸方向(鉛直方向)やZ軸方向と直交するX軸方向及びY軸方向(水平方向)の位置を計測する。具体的には、第1計測部21は、型3の部分33における裏面32の変位又は位置を計測する。
【0041】
第1計測部21としては、nmレベルで計測可能なレーザ干渉計が好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、レーザ変位計、静電容量変位計、エンコーダなどを第1計測部21としてもよい。なお、エンコーダを第1計測部21とする場合には、キャビティ3aにスケール(又は格子)を設ける必要がある。
【0042】
更に、インプリント装置1は、図1に示すように、第2計測部16を有する。第2計測部16は、基板ステージ6に設けられ、型保持部材12に保持された型のZ軸方向の位置、具体的には、型3の表面31の変位又は位置を計測する。基板ステージ6を駆動させることで、第2計測部16は、型3の任意の位置を計測することができる。
【0043】
図2は、型保持部材12の近傍の構成を詳細に示す図である。第1計測部21は、図2に示すように、支持部22を介して、型保持部材12(の内部)に支持されている。第1計測部21は、配置空間の制約上、その計測軸が水平方向に向くように配置されているため、計測軸をZ軸方向に変更するための折り曲げミラー23を設けて、型3の部分33における裏面32の変位又は位置をZ軸方向から計測可能にしている。支持部22は、後述する空間SPを封止する構造を有している。
【0044】
また、図2に示すように、型3に設けられたキャビティ3a、及び、型保持部材12の開口部(中空部)に設けられた光学部材OMによって規定される空間SPには、圧力調整部24が接続されている。圧力調整部24は、空間SPの圧力を調整することで、型3の裏面32を加圧又は減圧して(即ち、型3の裏面32に加える圧力を調整して)、型3の部分33を変形させることが可能である。例えば、圧力調整部24は、空間SPの圧力を高くして、型3の部分33を基板側に凸形状に変形させた状態で、基板上のインプリント材14と型3のパターン領域PRとを接触させる。これにより、基板上のインプリント材14が型3のパターン(凹部)に充填するまでに要する時間(充填時間)を短縮することができる。なお、空間SPの圧力は、圧力センサ(不図示)で計測される。
【0045】
図3(a)乃至図3(f)を参照して、本実施形態におけるインプリント装置1の動作(インプリント処理)について説明する。インプリント装置1は、上述したように、制御部9がインプリント装置1の各部を統括的に制御することで動作する。
【0046】
まず、図3(a)に示すように、型保持部材12に保持された型3の表面31を、基板ステージ6に設けられた第2計測部16で計測する。例えば、基板ステージ6を駆動しながら、第2計測部16によって、型3のキャビティ3aが存在する領域と、型3のキャビティ3aが存在しない領域との差、即ち、型3の部分33の変位(撓み量)を計測する。
【0047】
次いで、図3(b)に示すように、第2計測部16の計測値に基づいて、型3のキャビティ3a及び光学部材OMによって規定される空間SPの圧力を圧力調整部24で調整(制御)する。換言すれば、基板上のインプリント材14と型3パターン領域PRとを接触させる前における第2計測部16の計測値に基づいて、型3の部分33を基板側に凸形状に変形させるために圧力調整部24が型3の裏面32に加える圧力を調整する。具体的には、型3のキャビティ3aが存在する領域と存在しない領域との差が最小になるように、即ち、型3の部分33の歪み(変位)がゼロとなるようにする。圧力調整部24で空間SPの圧力を調整したら、型3の部分33の変位を第2計測部16で再度計測し、型3の部分33の変位が許容範囲に収まっているかどうかを確認してもよい。
【0048】
次に、図3(c)に示すように、基板上のインプリント材14と型3のパターン領域3bとを接触させる前に、型3のキャビティ3aの位置、即ち、型3の部分33における裏面32の変位を第1計測部21で計測する。ここで、第1計測部21で得られる計測値とは、インプリント材14とパターン領域PRとを接触させる前における第1計測部21の計測値であって、圧力調整部24が空間SPの圧力を調整した状態における第1計測部21の計測値である。図3(a)及び図3(b)に示す処理は、型3の初期状態、例えば、型3の自重や保持による変形、圧力調整部24の圧力調整誤差などによる型3の撓みをキャンセルすることを目的としている。従って、型3の撓みをキャンセルする必要がなければ、図3(a)及び図3(b)に示す処理の代わりに、単に、空間SPの圧力を大気開放、即ち、ゲージ圧力を0にした状態で図3(c)に示す処理から実施してもよい。
【0049】
次いで、図3(d)に示すように、型3の部分33を基板側に凸形状に変形させるように、圧力調整部24によって、キャビティ3a及び光学部材OMによって規定される空間SPの圧力を高くする。
【0050】
次に、図3(e)に示すように、基板上のインプリント材14と型3のパターン領域3bとを接触させる。この際、基板上のインプリント材14に対して型3のパターン領域PRを予め定められた力(例えば、数十N)で押し付けるようにする。基板上のインプリント材14に対する型3の押し付け力は、第1計測部21の計測値から換算して目標値になるように制御してもよいし、アクチュエータ13の電流値が目標値になるように制御してもよい。これにより、基板上のインプリント材14が型3のパターン(凹部)に充填される。
【0051】
次いで、図3(f)に示すように、キャビティ3a及び光学部材OMによって規定される空間SPの圧力を戻し(即ち、図3(b)に示す状態にし)、型3のキャビティ3aの位置、即ち、型3の部分33における裏面32の変位を第1計測部21で計測する。そして、図3(f)に示す状態において第1計測部21で得られる計測値が図3(c)に示す状態において第1計測部21で得られた計測値となるように、基板上のインプリント材14に対する型3の押し付け力を調整(制御)する。かかる押し付け力は、型3と基板5との間の距離、本実施形態では、アクチュエータ13(インプリントヘッド4)の駆動量で調整する。図3(f)に示す状態において第1計測部21で得られる計測値を図3(c)に示す状態において第1計測部21で得られた計測値に一致させることで、型3の形状(状態)を図3(c)に示す状態にすることができる。これは、基板上のインプリント材14に対する型3の押し付け力がゼロに近く、型3の部分33(パターン領域PR)の歪みがない状態を再現できていることに等しい。
【0052】
そして、図3(f)に示す状態において第1計測部21で得られる計測値を図3(c)に示す状態において第1計測部21で得られた計測値と一致させたら、型3を介して、照射部2からの光10を基板上のインプリント材14に照射する。これにより、基板上のインプリント材14が硬化し、硬化したインプリント材14から型3を引き離すことで、基板上にインプリント材14のパターンが形成される。
【0053】
このように、本実施形態では、基板上のインプリント材14と型3のパターン領域PRとを接触させた状態でインプリント材14を硬化させる際に、パターン領域PRの形状が一定に維持されるように、アクチュエータ13の駆動量を制御する。この際、基板上のインプリント材14とパターン領域PRとを接触させる前における第1計測部21の計測値に基づいて、アクチュエータ13の駆動量を制御する。例えば、インプリント材14とパターン領域PRとを接触させる前における第1計測部21の計測値(図3(c))と、インプリント材14とパターン領域PRとを接触させた後における第1計測部21の計測値(図3(f))との差が許容範囲に収まるようにする。具体的には、インプリント材14とパターン領域PRとを接触させた後における第1計測部21の計測値(図3(f))がインプリント材14とパターン領域PRとを接触させる前における第1計測部21の計測値(図3(c))と一致するようにする。これにより、インプリント装置1では、型3の部分33(パターン領域PR)に歪みが最小となる状態で基板上のインプリント材14を硬化させることが可能となり、基板上に型3のパターンを高精度に転写することができる。この際、本実施形態では、基板上のインプリント材14に対する型3の押し付け力を計測するためのロードセルを必要としないため、装置の剛性や保持面の平面度が低下することもない。また、型3の変位から基板上のインプリント材14に対する型3の押し付け力(アクチュエータ13の駆動量)を制御しているため、実装27の抵抗やアクチュエータ13の電流変化などによる外乱の影響も受けない。また、型3と基板5との相対位置や平行度を直接計測することなく、型3の部分33の歪みが低減するように、基板上のインプリント材14に対する型3の押し付け力を制御することができる。従って、本実施形態のインプリント装置1では、基板上に段階的に形成されるパターンの重ね合わせ精度を向上させることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、図3(a)乃至図3(f)に示すインプリント処理において、第1計測部21及び第2計測部16が型3に関する変位を計測するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1計測部21及び第2計測部16が型3に関する位置を計測し、その計測値を用いて、図3(a)乃至図3(f)に示すインプリント処理を行ってもよい。
【0055】
第1計測部21は、制御部9の制御下において、圧力調整部24の圧力調整精度を定期的に監視する(即ち、圧力調整部24を較正する)ためにも利用することができる。制御部9は、第1計測部21を利用して、圧力調整部24を較正する較正部としても機能する。例えば、圧力調整部24が基準圧力を型3の裏面32に加えたときの第1計測部21の計測値と、圧力調整部24が基準圧力を型3の裏面32に加えたときに第1計測部21で計測されるべき理想値との差分に基づいて、圧力調整部24を較正する。これにより、圧力調整部24が型3の裏面32に圧力を加えたときの型3(の部分33)の変形をより厳密に制御することができる。
【0056】
なお、圧力調整部24の較正には、第2計測部16を利用することも可能である。例えば、圧力調整部24が基準圧力を型3の裏面32に加えたときの第2計測部16の計測値と、圧力調整部24が基準圧力を型3の裏面32に加えたときに第2計測部16で計測されるべき理想値との差分に基づいて、圧力調整部24を較正すればよい。
【0057】
また、変形部11によって型3のパターン領域PR(部分33)を変形させる場合には、変形部11から型3の側面に加える力に応じて、パターン領域PRが基板側にも凸形状に変形するため、パターン領域PRがZ軸方向にも変位する。従って、変形部11から型3の側面に加える力の大きさによって、図3(f)において型3の部分33の歪みを最小とするために必要となるアクチュエータ13の駆動量(インプリント材14に対する型3の押し付け力)が異なる。このため、図3(f)に示す状態で得られる第1計測部21の計測値を図3(c)に示す状態で得られた第1計測部21の計測値に一致させたとしても、必ずしも、型3の部分33(パターン領域PR)に歪みがない状態になるとは限らない。このような場合には、変形部11による型3のパターン領域PRの変形量からパターン領域PRのZ軸方向の変位を算出し、かかる変位を加味して、型3の部分33に歪みがない状態となるように、アクチュエータ13の駆動量を制御するとよい。例えば、変形部11によって型3のパターン領域PRを1ppmだけ縮小させる場合には、第1計測部21の計測値が数十nmだけ大きくなる(型3が第1計測部21から数十nm離れる)ように、アクチュエータ13の駆動量を制御する。
【0058】
ここで、図4(a)及び図4(b)を参照して、第1計測部21が計測する型3の裏面32の箇所(計測点)について具体的に説明する。本実施形態では、図4(a)及び図4(b)に示すように、型3のパターン領域PRは、矩形形状を有するものとする。この場合、図4(a)に示すように、型3の裏面32にパターン領域PRを投影することで得られる矩形領域RCの外側の裏面32の領域であって、矩形領域RCの2つの対角線のうちの1つの対角線上の少なくとも2箇所を第1計測部21の計測点Mとする。また、図4(b)に示すように、矩形領域RCの外側の裏面32の領域であって、矩形領域RCの中心を通り、且つ、矩形領域RCの辺に平行な2つの直線のうちの1つの直線上の少なくとも2箇所を第1計測部21の計測点Mとしてもよい。このように、型3の裏面32の矩形領域RCの外側の領域の少なくとも2箇所を第1計測部21で計測して計測値を得ることで、型3の部分33(パターン領域PR)の歪みを求めることができ、かかる歪みを補正することが可能となる。
【0059】
また、第1計測部21は、図5(a)乃至図5(d)に示すように、型3の部分33(キャビティ3a)における裏面32に設けられたマークMの幅を計測してもよい。マークMは、型3と基板5とのアライメントに用いられるアライメントマークとは異なるマークであって、型3の裏面32にパターン領域PRを投影することで得られる矩形領域(投影領域)RCの境界部(境界の外側)に設けられている。また、マークMは、矩形領域RCの外側の裏面32の領域であって、矩形領域RCの対角線上、或いは、矩形領域RCの中心を通り、且つ、矩形領域RCの辺に平行な直線上に設けられている。マークMは、溝や突起で構成されていてもよいし、コーティングを含む表面処理によって形成されていてもよい。
【0060】
例えば、第1計測部21は、図5(a)に示すように、型3の裏面32に設けられたマークMのX軸方向及びY軸方向のそれぞれの幅、具体的には、マークMの幅X1、Y1及びX2を計測する。また、第1計測部21は、図5(c)に示すように、型3の裏面32に設けられたマークMの対角線方向の幅、具体的は、マークMの幅W1を計測してもよい。また、第1計測部21は、図5(d)に示すように、円形形状のマークMの幅(X軸方向及びY軸方向の直径)X3及びY3を計測してもよい。なお、図5(d)では、マークMは、円形形状を有しているが、これに限定されるものではなく、例えば、十字形状を有していてもよい。
【0061】
基板上のインプリント材14と型3のパターン領域PRとを接触させると、突出部3bの境界に大きな変位が生じるため、その近傍に設けられたマークMの幅が変化することになる。従って、マークMの幅の変化を第1計測部21で計測することで、基板上のインプリント材14に対する型3の押し付け力を調整することが可能となる。基板上のインプリント材14とパターン領域PRとを接触させる前に第1計測部21で計測されたマークMの幅に基づいて、インプリント材14を硬化させる際に、パターン領域PRの形状が一定に維持されるように、アクチュエータ13の駆動量を制御する。例えば、インプリント材14とパターン領域PRとを接触させる前における第1計測部21の計測値(マークMの幅)と、インプリント材14とパターン領域PRとを接触させた後における第1計測部21の計測値との差が許容範囲に収まるようにする。具体的には、インプリント材14とパターン領域PRとを接触させた後における第1計測部21の計測値がインプリント材14とパターン領域PRとを接触させる前における第1計測部21の計測値と一致するようにする。これにより、インプリント装置1では、型3の部分33(パターン領域PR)に歪みが最小となる状態で基板上のインプリント材14を硬化させることが可能となり、重ね合わせ精度を向上させることができる。
【0062】
また、図6に示すように、型3の表面31には、裏面32に設けられたマークMに対応するように、突出部3b(パターン領域PR)の周囲、即ち、表面31に矩形領域RCの境界部を投影することで得られる領域に溝25が設けられていてもよい。これにより、基板上のインプリント材14と型3のパターン領域PRとを接触させた際のマークMの幅の変化が大きくなるため、第1計測部21によるマークMの幅の変化の計測が容易となる。図6は、型3の構成の一例を示す断面図である。
【0063】
インプリント装置1を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは、各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型などである。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMなどの揮発性又は不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAなどの半導体素子などが挙げられる。型としては、インプリント用のモールドなどが挙げられる。
【0064】
硬化物のパターンは、上述の物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入などが行われた後、レジストマスクは除去される。
【0065】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図7(a)に示すように、絶縁体などの被加工材が表面に形成されたシリコンウエハなどの基板を用意し、続いて、インクジェット法などにより、被加工材の表面にインプリント材を付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材が基板上に付与された様子を示している。
【0066】
図7(b)に示すように、インプリント用の型を、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材に向け、対向させる。図7(c)に示すように、インプリント材が付与された基板と型とを接触させ、圧力を加える。インプリント材は、型と被加工材との隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型を介して照射すると、インプリント材は硬化する。
【0067】
図7(d)に示すように、インプリント材を硬化させた後、型と基板を引き離すと、基板上にインプリント材の硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材に型の凹凸のパターンが転写されたことになる。
【0068】
図7(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材の表面のうち、硬化物がない、或いは、薄く残存した部分が除去され、溝となる。図7(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材の表面に溝が形成された物品を得ることができる。ここでは、硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子などに含まれる層間絶縁用の膜、即ち、物品の構成部材として利用してもよい。
【0069】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0070】
1:インプリント装置 3:型 5:基板 9:制御部 13:アクチュエータ 21:第1計測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7