(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】スイッチ付き多方向入力装置、及び、スイッチ付き多方向入力システム
(51)【国際特許分類】
H01H 25/06 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
H01H25/06 A
(21)【出願番号】P 2020119462
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 貞幸
(72)【発明者】
【氏名】細野 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】村中 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】萩原 康嗣
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-236548(JP,A)
【文献】特表平05-509435(JP,A)
【文献】特開2006-048478(JP,A)
【文献】特開2004-014158(JP,A)
【文献】特開2003-092045(JP,A)
【文献】特開平04-022024(JP,A)
【文献】特開2009-170125(JP,A)
【文献】実開昭57-075430(JP,U)
【文献】特開2010-205691(JP,A)
【文献】米国特許第05712660(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/033 - 3/039
H01H 13/00 - 13/88
H01H 25/00 - 25/06
H01H 89/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも筒状部と、前記筒状部の下に設けられた第1平板部とを有する起歪体と、
前記第1平板部に設けられる複数の歪センサと、
前記起歪体の前記筒状部の上に載置される配線基板と、
前記配線基板に載置され前記配線基板上の電極と共にスイッチを構成する接点ラバーと、
前記接点ラバーに載置されるボタンと
を含み、
前記接点ラバーは、周縁に位置する基部と、中央に位置する可動部と、前記基部と前記可動部とを繋ぐ変形可能部とを有し、前記可動部は、前記変形可能部が変形していない状態における前記基部に対する第1位置と、前記変形可能部が変形した状態における前記基部に対する第2位置とに移動可能であり、
前記ボタンの下面中央は、前記可動部が前記第1位置及び前記第2位置のいずれにあっても前記接点ラバーの前記可動部の上面に接触し、
前記可動部が前記第1位置から前記第2位置に移動して前記可動部の下面が前記配線基板上の電極に接触すると、前記ボタンの下面周縁に設けられた凸部が、前記配線基板を押す、スイッチ付き多方向入力装置。
【請求項2】
前記ボタンの下面周縁の前記凸部は、前記接点ラバーの前記基部を介して、前記配線基板を押す、請求項1に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項3】
前記接点ラバーの前記可動部は前記基部よりも厚い、請求項2に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項4】
前記ボタンの下面周縁の前記凸部は、平面視で前記接点ラバーの前記基部よりも外側に位置しており、前記配線基板を直接押す、請求項1に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項5】
前記起歪体は、前記筒状部の上に設けられる第2平板部をさらに有し、
前記配線基板は、前記第2平板部の上に載置されており、
前記ボタンの下面周縁の前記凸部は、前記第2平板部と平面視で重なる位置に設けられる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項6】
前記電極は、平面視でS字状に分割された第1電極部及び第2電極部を有し、前記接点ラバーの前記可動部の下面が接触すると導通する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項7】
前記接点ラバーは2色成形されており、前記可動部の下端にカーボンを含有する導電ゴム部を有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項8】
前記ボタンは、前記接点ラバーの前記可動部の少なくとも上部を収容する凹部を有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項9】
前記凹部の幅は、前記可動部の前記凹部内に収容される部分の幅よりも広い、請求項8に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項10】
前記起歪体の前記第1平板部の下に設けられ、前記複数の歪センサが配置されるフレキシブル配線基板をさらに含み、
前記複数の歪センサは、前記フレキシブル配線基板を介して前記第1平板部に接着される、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項11】
前記複数の歪センサは、前記フレキシブル配線基板に印刷された複数の抵抗体である、請求項10に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項12】
前記起歪体を保持する保持部をさらに含む、請求項10又は11に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項13】
前記ボタンの上端側を露出させるとともに前記ボタンの下端側を覆うカバーをさらに含む、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のスイッチ付き多方向入力装置。
【請求項14】
第1スイッチ付き多方向入力装置と、
第2スイッチ付き多方向入力装置と
を含むスイッチ付き多方向入力システムであって、
前記第1スイッチ付き多方向入力装置及び前記第2スイッチ付き多方向入力装置の各々は、
少なくとも筒状部と、前記筒状部の下に設けられた第1平板部とを有する起歪体と、
前記第1平板部に設けられる複数の歪センサと、
前記起歪体の前記筒状部の上に載置される配線基板と、
前記配線基板に載置され前記配線基板上の電極と共にスイッチを構成する接点ラバーと、
前記接点ラバーに載置されるボタンと、
前記第1スイッチ付き多方向入力装置の前記起歪体と、前記第2スイッチ付き多方向入力装置の前記起歪体とを保持する共通基板と
を含み、
前記接点ラバーは、周縁に位置する基部と、中央に位置する可動部と、前記基部と前記可動部とを繋ぐ変形可能部とを有し、前記可動部は、前記変形可能部が変形していない状態における前記基部に対する第1位置と、前記変形可能部が変形した状態における前記基部に対する第2位置とに移動可能であり、
前記ボタンの下面中央は、前記可動部が前記第1位置及び前記第2位置のいずれにあっても前記接点ラバーの前記可動部の上面に接触し、
前記可動部が前記第1位置から前記第2位置に移動して前記可動部の下面が前記配線基板上の電極に接触すると、前記ボタンの下面周縁に設けられた凸部が、前記配線基板を押し、
複数の前記起歪体と、複数の前記歪センサと、複数の前記配線基板と、前記共通基板とが互いに固定された、スイッチ付き多方向入力システム。
【請求項15】
前記第1スイッチ付き多方向入力装置の前記起歪体の前記第1平板部と、前記第2スイッチ付き多方向入力装置の前記起歪体の前記第1平板部との下に設けられ、前記第1スイッチ付き多方向入力装置の前記複数の歪センサと、前記第2スイッチ付き多方向入力装置の前記複数の歪センサとが配置されるフレキシブル配線基板をさらに含み、
前記第1スイッチ付き多方向入力装置の前記複数の歪センサと、前記第2スイッチ付き多方向入力装置の前記複数の歪センサとは、前記フレキシブル配線基板を介して前記第1スイッチ付き多方向入力装置の前記第1平板部と、前記第2スイッチ付き多方向入力装置の前記第1平板部とに設けられる、請求項14に記載のスイッチ付き多方向入力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ付き多方向入力装置、及び、スイッチ付き多方向入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歪抵抗素子を備えたレバー部材と、可動接点及び固定接点よりなるスイッチと、前記レバー部材を操作する第1操作部と、前記スイッチを操作する第2操作部と、当該第2操作部を一方向に付勢する戻しばねを有し、未操作時には、前記第2操作部が前記戻しばねの弾性力によって前記第1操作部の一部より外向きに突出しており、操作時には、操作者の手指により前記第2操作部が前記第1操作部内に押し込まれて操作者の手指による前記第1操作部の操作が可能になるスイッチ付き入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のスイッチ付き入力装置は、第2操作部と第1操作部とを操作する際に触れる部分が異なるため、小形化は困難である。
【0005】
そこで、小型化を図ったスイッチ付き多方向入力装置、及び、スイッチ付き多方向入力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態のスイッチ付き多方向入力装置は、少なくとも筒状部と、前記筒状部の下に設けられた第1平板部とを有する起歪体と、前記第1平板部に設けられる複数の歪センサと、前記起歪体の前記筒状部の上に載置される配線基板と、前記配線基板に載置され前記配線基板上の電極と共にスイッチを構成する接点ラバーと、前記接点ラバーに載置されるボタンとを含み、前記接点ラバーは、周縁に位置する基部と、中央に位置する可動部と、前記基部と前記可動部とを繋ぐ変形可能部とを有し、前記可動部は、前記変形可能部が変形していない状態における前記基部に対する第1位置と、前記変形可能部が変形した状態における前記基部に対する第2位置とに移動可能であり、前記ボタンの下面中央は、前記可動部が前記第1位置及び前記第2位置のいずれにあっても前記接点ラバーの前記可動部の上面に接触し、前記可動部が前記第1位置から前記第2位置に移動して前記可動部の下面が前記配線基板上の電極に接触すると、前記ボタンの下面周縁に設けられた凸部が、前記配線基板を押す。
【発明の効果】
【0007】
小型化を図ったスイッチ付き多方向入力装置、及び、スイッチ付き多方向入力システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態のスイッチ付き多方向入力装置100を示す図である。
【
図2】スイッチ付き多方向入力装置100の操作状態を示す図である。
【
図3】スイッチ付き多方向入力装置100を示す分解図である。
【
図7】スイッチ付き多方向入力システム200を示す図である。
【
図8】スイッチ付き多方向入力システム200を示す図である。
【
図9】実施形態の変形例のスイッチ付き多方向入力装置100Mを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のスイッチ付き多方向入力装置、及び、スイッチ付き多方向入力システムを適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態のスイッチ付き多方向入力装置100を示す図である。
図2は、スイッチ付き多方向入力装置100の操作状態を示す図である。
図3は、スイッチ付き多方向入力装置100を示す分解図である。
図4は、
図1のA-A矢視断面を示す図である。
図5及び
図6は、
図2のB-B矢視断面を示す図である。
【0011】
以下では、XYZ座標系を定義して説明する。また、以下では、平面視とはXY面視のことであり、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。
【0012】
スイッチ付き多方向入力装置100は、保持部110、FPC(Flexible Printed Circuit board)120、歪検出素子125、レバー130、PCB(Printed Circuit Board)140、接点ラバー150、ボタン160、及びカバー170を含む。
【0013】
スイッチ付き多方向入力装置100は、ゲーム機やビデオカメラ等のあらゆる種類の電子機器に取り付けることができる。保持部110とカバー170は、電子機器の筐体の一部分である。FPC120、歪検出素子125、レバー130、PCB140、接点ラバー150、及びボタン160は、電子機器の筐体に固定された状態で位置ずれが生じないように構成されている。ここでは電子機器を省略して、電子機器に取り付けられている状態でのスイッチ付き多方向入力装置100について説明する。
【0014】
図2に示すように、スイッチ付き多方向入力装置100は、まず黒い矢印で示すようにボタン160を下方に押し下げ、ボタン160を完全に押し下げた状態でボタン160を白い矢印で示すように平面方向に押圧する押圧操作が可能であるとともに、ボタン160を完全に押し下げた状態でボタン160を下方向にさらに押圧する押圧操作が可能な装置である。なお、
図2には平面方向の押圧操作を示すために±X方向と±Y方向を示す4つの白い矢印を示すが、平面視でボタン160を360度のうちの任意方向に押圧する押圧操作が可能である。以下、各部の構成について説明する。
【0015】
保持部110は、台座111、円筒部112、補強板113、及び天板114を有する。台座111及び天板114は、円環状の板状の部分であり、間には円筒部112と補強板113が設けられている。一例として、4枚の補強板113が平面視において等間隔で円筒部112の外周部分に設けられ、台座111と天板114の間を補強している。
【0016】
FPC120は、フレキシブル配線基板の一例であり、基部121と配線部122を有する。FPC120は、一例としてポリイミド製のフィルム基板である。基部121は、円環状であり、保持部110の天板114の上面に設けられる。基部121は、レバー130の下面に接着されている。配線部122は、基部121から-Y方向に延在しており、基部121に近い部分は保持部110の天板114の上面に設けられる。
【0017】
歪検出素子125は、歪センサの一例である。4つの歪検出素子125は、FPC120の基部121の下面に設けられている。4つの歪検出素子125は長手方向を有し、平面視で円環状の基部121の下面に延在方向が90度ずつ異なるように配置されている。一例として、2つの歪検出素子125の延在方向はX方向であり、残りの2つの歪検出素子125の延在方向はY方向である。
【0018】
歪検出素子125は、一例として、ナノカーボンで実現される伸縮性導電層の積層体で構成される抵抗式の歪センサであり、基部121の下面に印刷されている。歪検出素子125は、ボタン160の押圧操作に伴ってレバー130が歪むことによって長手方向に引き延ばされると抵抗値が増大する。これとは逆に長手方向に縮められると抵抗値が低下する。
【0019】
4つの歪検出素子125は、FPC120の下面においてブリッジ回路形式で接続する配線によって接続されており、配線は配線部122の端部まで延在している。電子機器には、図示しない主基板が設けられている。FPC120の配線は、電子機器の主基板に接続される。配線は、一例として銀ペーストをFPC120の下面に印刷することによって作成される。配線自体にも柔軟性を持たせるためである。なお、歪検出素子125は、このような構成のものに限定されるものではなく、他の構成のものを用いてもよい。また、配線は銀ペーストをFPC120に印刷したものに限られるものではない。
【0020】
レバー130は、起歪体の一例であり、第1平板部131、筒状部132、及び第2平板部133を有し、一例として樹脂製である。
【0021】
第1平板部131は、平面視で矩形状の板状の部材であり、上面に円盤状の凸部を有する。第1平板部131の上面の中央には筒状部132が接続されている。第1平板部131は、保持部110の天板114の上面と、FPC120の上面との上に配置されている。第1平板部131の下面には、天板114の上面とFPC120の上面との段差に対応した凹部が設けられており、第1平板部131と天板114の間にFPC120を安定的に配置可能になっている。第1平板部131の下面にFPC120が接着される。第1平板部131が変形すると、歪検出素子125も変形し、抵抗値が変化する。なお、平板部131は、上面の円盤状の凸部を有しなくてもよい。
【0022】
筒状部132は、第1平板部131及び第2平板部133よりも平面視で細い部分であり、一例として円筒状である。筒状部132が円筒状であることにより、第1平板部131に対して第2平板部133を平面視で360度のいずれの方向にも均等な操作力で倒しやすくなる。
【0023】
第2平板部133は、筒状部の上に接続されている円盤状の部分であり、上面の中央に下方に凹む凹部133Aを有する。第2平板部133の平面視でのサイズは、第1平板部131の上面の円盤状の凸部と略等しい。第2平板部133の上面はPCB140の下面に当接している。第2平板部133の上面はPCB140の下面に接着されていてもよい。
【0024】
第2平板部133の下面の中央は、筒状部132に接続されている。第2平板部133は、ボタン160が完全に押し下げられた状態で平面方向に押圧されると、第1平板部131に対して傾く。第2平板部133は、凹部133Aを有するため、第1平板部131に対して傾きやすい構造になっている。第2平板部133が第1平板部131に対して傾くと、第1平板部131が変形し、歪検出素子125の抵抗値が変化する。
【0025】
ボタン160を完全に押し下げた状態でボタン160に対して平面方向の押圧操作が行われると、4つの歪検出素子125の抵抗値が変化し、4つの歪検出素子125を含むブリッジ回路の出力が変化する。ブリッジ回路の出力の変化をマイクロコンピュータ等で検出することにより、平面方向の360度のうちのどの方向に押圧操作が行われたかを検出することができる。
【0026】
また、ボタン160を完全に押し下げた状態でボタン160を下方向にさらに押圧する押圧操作が行われると、筒状部132を介して第1平板部131の中央部を下方向に押圧する。この結果、第1平板部131の中央部に下方向に押圧する力が加わり、第1平板部131が変形する。FPC120の基部121は中心側が下方に引き延ばされるように歪むため、FPC120の下面に設けられた4つの歪検出素子125の長さが伸びる。4つの歪検出素子125の長さが延びると、4つの歪検出素子125の抵抗値がすべて増大する。このため、4つの歪検出素子125の抵抗値がすべて増大した場合には、マイクロコンピュータ等で下方向への押圧操作が行われたことを検出することができる。
【0027】
なお、ここではレバー130が第2平板部133を有する形態について説明するが、レバー130は第2平板部133を有していなくてもよい。この場合には、筒状部132の上端がPCB140の下面に当接すればよい。
【0028】
PCB140は、配線基板の一例であり、一例としてFR4(Flame Retardant type 4)規格の配線基板である。PCB140は、上面の中央に電極141を有する。電極141は、電極部141A、141Bを有する。電極部141A、141Bは、それぞれ、第1電極部、第2電極部の一例である。電極部141A、141Bの間は、S字状に分断されている。換言すれば、電極部141A、141Bは櫛歯状であり、互いの歯を入れ子状に配置した形状を有する。電極部141A、141Bは、PCB140の図示しない配線に接続されている。また、PCB140は、配線部142を有する。配線部142は、+X方向に延在し、-Y方向に屈曲している。配線部142の先端には端子142Aが設けられている。PCB140の配線部142の端子142Aは、図示しない主基板の配線に接続されている。
【0029】
接点ラバー150は、ラバー(ゴム)製の部材であり、周縁に位置する円環状の基部151、中央に位置する可動部152、及び変形可能部153を有する。基部151は、PCB140の上面の電極141の周りの周縁部の上面に当接している。
【0030】
可動部152は、基部151及び変形可能部153よりも厚く、下端に導電ゴム部152Aを有する。導電ゴム部152Aは、可動部152の下端に位置し、カーボンの粒子を含有する導電ゴム製である。導電ゴム部152Aは、可動部152と2色成形によって一体的に作製可能である。
【0031】
また、可動部152は、変形可能部153によって基部151に対して保持されており、基部151に対して上下方向に移動可能である。
図4に示すようにボタン160を押し下げる操作が行われておらず、変形可能部153が変形していない状態における可動部152の位置は第1位置の一例である。可動部152が第1位置にある状態では、導電ゴム部152Aは電極141に接触していない。また、可動部152が第1位置にある状態では、ボタン160の下端の凸部161は基部151の上面に接触しておらず、凹部162の底面162Aは可動部152の上面に接触している。
【0032】
また、可動部152が第1位置にある状態からボタン160が完全に押し下げられて、
図5及び
図6に示すように変形可能部153が完全に変形している状態における可動部152の位置は第2位置の一例である。可動部152が第2位置にある状態では、導電ゴム部152Aが電極141に接触し、ボタン160の下端の凸部161は基部151の上面に接触している。また、可動部152が第2位置にある状態では、可動部152が上下方向に少し押し潰されることによって、凸部161が基部151の上面に当接している。このように、可動部152は第2位置において上下方向に少し押し潰される。このため、可動部152の厚さを基部151よりも厚くし、かつ、可動部152がある程度の厚さを有することで、ボタン160を押し下げてからさらに下方に押圧したときに凸部161が基部151の上面に当接する構成を実現することができる。また、接点ラバー150の製造時の寸法公差を考慮すると、寸法公差以上に可動部152が上下方向(縦方向)に縮むことが求められるため、このような観点からも、可動部152の厚さを基部151よりも厚くし、かつ、可動部152がある程度の厚さを有する構成を採用することが好ましい。
【0033】
また、可動部152が第2位置にある状態では、ボタン160は凸部161が基部151を介してPCB140の上面に当接している状態であり、ボタン160は上下方向に移動可能なストロークの下端に位置している。また、可動部152が第2位置にある状態においてもボタン160の凹部162の底面162Aは可動部152の上面に接触している。
【0034】
また、可動部152が第2位置にある状態からボタン160がさらに押圧されると、可動部152が弾性的に変形するため、ボタン160をストロークの下端まで押し下げてさらに押圧すると、基部151が弾性変形することによって柔らかい感触が操作者に伝達される。
【0035】
変形可能部153は、基部151と可動部152を繋いでいる部分であり、円環状で基部151及び可動部152よりも薄いため、
図4に示すように変形していない状態から、
図5に示すように完全に変形した状態まで変形可能である。
図5に示す状態では、変形可能部153は、基部151に接続される外周部に対して可動部152に接続される内周部が下方に陥没するように反転している。変形可能部153は、復元性(ばね性)を有しており、
図5に示すように完全に変形した状態からボタン160の押圧操作が解除されると、
図4に示す状態に復元可能である。なお、変形可能部153が変形していない状態とは、接点ラバー150が成形されたときの状態における変形可能部153の形状を保持している状態である。
【0036】
ボタン160は、接点ラバー150の上に載置されており、一例として円筒状の部材である。ボタン160は、一例として樹脂製であり、下面の径方向における最も外側から下方に突出した凸部161と、下面から上方に向かって凹んだ凹部162を有する。
【0037】
凸部161は、上述のように、可動部152が第2位置にあるときに基部151の上面に当接する。この状態で可動部152は、上下方向に少し押し潰されている。凸部161が基部151を介してPCB140を押圧するので、可動部152が第2位置にある状態からボタン160がさらに平面方向又は下方向に押圧されたときに、柔らかい感触を提供することができる。
【0038】
凹部162は、ボタン160の下面から上方に向かって凹んでいるため、凹部162の底の面である底面162Aは下方を向いている。底面162Aはボタン160を下面の一部であり、凹部162は平面視でボタン160の中央部に位置するため、底面162Aは、ボタン160の下面中央である。
【0039】
凹部162は、ボタン160を下面側から見て(底面視で)円形である。凹部162内には可動部152が収容されるため、凹部162の径方向のサイズは、可動部152の径方向のサイズよりも大きい。可動部152は第2位置で押圧されると径方向に広がるため、可動部152の径方向のサイズに対して、凹部162の径方向サイズに余裕を持たせている。
【0040】
凹部162内には可動部152が収容され、可動部152が第1位置にあるときと、第1位置及び第2位置の間にあるときと、第2位置にあるときとのすべての状態において、底面162Aは可動部152の上面に接触している。
【0041】
カバー170は、平面視で円環状の部材であり、開口部171と脚部172を有する。開口部171は、カバー170の中央を上下方向に貫通している。開口部171内にはボタン160が挿通される。脚部172は、カバー170の下面から下方に延在している。このようなカバー170は、スイッチ付き多方向入力装置100が取り付けられる電子機器の筐体等に固定される。
【0042】
以上のように、スイッチ付き多方向入力装置100では、ボタン160を完全に押し下げて電極141の電極部141A及び141Bが導通した状態で、さらにボタン160を平面方向又は下方向に押圧することによって、平面方向における360度のうちのいずれかの方向又は下方向を選択することができる。電極部141A及び141Bを導通させる操作と、平面方向における360度のうちのいずれかの方向又は下方向を選択する操作とは、1つのボタン160の操作で実現できる。このため、2つのスイッチを設ける必要がなく、小型化が可能である。
【0043】
したがって、小型化を図ったスイッチ付き多方向入力装置100を提供することができる。また、1つのボタン160で2種類の操作が可能であり、2つのスイッチを設ける必要がないため、外観を簡素化することができる。
【0044】
このようなスイッチ付き多方向入力装置100は、例えば、ゲーム機のコントローラとして利用する場合には、ボタン160を完全に押し下げることで、ボールを投げる(野球)、蹴る(サッカー)、打つ(ゴルフ)等の操作を行うことができ、左右方向の押圧操作でボールを左右方向に曲げる、前後方向の押圧操作でボールを上下方向に曲げる操作を行うことができる。また、下方向の押圧操作でボールが減速しないようにすることができる。また、ビデオカメラのコントローラとして利用する場合には、ボタン160を完全に押し下げることで録画開始、押し下げ続けて録画を行っているときに、前後方向の押圧操作でズーム(前後)、左右方向の押圧操作でマイク感度を変更する操作を行うことができる。
【0045】
また、以上では、電子機器に1つのスイッチ付き多方向入力装置100を取り付ける形態について説明したが、複数のスイッチ付き多方向入力装置100を取り付けてもよい。ここでは、複数のスイッチ付き多方向入力装置を含むスイッチ付き多方向入力システム200について説明する。
図7及び
図8は、スイッチ付き多方向入力システム200を示す図である。
【0046】
スイッチ付き多方向入力システム200は、第1スイッチ付き多方向入力装置100A及び第2スイッチ付き多方向入力装置100Bを含む。第1スイッチ付き多方向入力装置100A及び第2スイッチ付き多方向入力装置100Bは、
図1乃至
図6に示すスイッチ付き多方向入力装置100と同様であるが、共通基板114Mにより、モジュール化している。なお、
図7及び
図8では、カバー170を省略するが、カバー170は、第1スイッチ付き多方向入力装置100A及び第2スイッチ付き多方向入力装置100Bで共通化されていてよい。また、保持部110Mは、第1スイッチ付き多方向入力装置100A及び第2スイッチ付き多方向入力装置100Bで共通化されており、天板114に相当する部分は共通基板114Mとして構成されている。
【0047】
第1スイッチ付き多方向入力装置100A及び第2スイッチ付き多方向入力装置100Bは、FPC120、歪検出素子125、レバー130、PCB140、接点ラバー150、及びボタン160については、誤動作抑制等の観点から別々の構成にしてある。このようなスイッチ付き多方向入力システム200では、2つの第1スイッチ付き多方向入力装置100A及び第2スイッチ付き多方向入力装置100Bの各々において、電極部141A及び141Bを導通させる操作と、平面方向における360度のうちのいずれかの方向又は下方向を選択する操作とは、1つのボタン160の操作で実現できる。このため、2種類のスイッチを設ける必要がなく、小型化が可能である。
【0048】
したがって、小型化を図ったスイッチ付き多方向入力システム200を提供することができる。また、2つの第1スイッチ付き多方向入力装置100A及び第2スイッチ付き多方向入力装置100Bの各々において、1つのボタン160で2種類の操作が可能であり、2種類のスイッチを設ける必要がないため、外観を簡素化することができる。また、共通基板114Mに複数のレバー130を固定する。各レバー130に、FPC120、歪検出素子125、PCB140を固定する。このように複数のスイッチ付き多方向入力装置100をモジュール化したスイッチ付き多方向入力システム200にすることで、電子機器に取り付ける場合に、組み立て工程を簡素化することができる。なお、ビデオカメラのコントローラとして利用する場合には、上述した録画開始、ズーム(前後)、マイク感度の変更に加えて、サブカメラ(ワイプ用)と、撮影者側のマイク感度も制御することができる。
【0049】
また、以上では、ボタン160の凸部161が基部151を介してPCB140を押圧する構成について説明したが、
図9に示すような構成であってもよい。
図9は、実施形態の変形例のスイッチ付き多方向入力装置100Mを示す図である。
図9には
図6に相当する断面構造を示す。
【0050】
スイッチ付き多方向入力装置100Mは、
図1乃至
図6に示すボタン160の代わりにボタン160Mを含む点がスイッチ付き多方向入力装置100と異なる。ボタン160Mは、
図1乃至
図6に示す凸部161の代わりに凸部161Mと係合部163を有する点がボタン160と異なる。スイッチ付き多方向入力装置100Mのその他の構成は、スイッチ付き多方向入力装置100と同様である。
【0051】
係合部163は、ボタン160Mの外周面の下端において、径方向外側に突出した円環状の部分である。ボタン160Mは、カバー170の開口部171に挿通されるため、ボタン160Mがカバー170の開口部171から上側に抜けないようにするために係合部163が設けられている。
【0052】
凸部161Mは、平面視で接点ラバー150の基部よりも外側にあり、
図6に示すようにPCB140の上面に直接的に接触している。このため、ボタン160を完全に押し下げると、凸部161MがPCB140の上面を直接的に押圧する。このような構成であっても
図1乃至
図6のスイッチ付き多方向入力装置100と同様に、電極部141A及び141Bを導通させる操作と、平面方向における360度のうちのいずれかの方向又は下方向を選択する操作とは、1つのボタン160Mの操作で実現できる。このため、2つのスイッチを設ける必要がなく、小型化が可能である。
【0053】
したがって、小型化を図ったスイッチ付き多方向入力装置100Mを提供することができる。また、1つのボタン160Mで2種類の操作が可能であり、2つのスイッチを設ける必要がないため、外観を簡素化することができる。
【0054】
また、ボタン160を完全に押し下げると、凸部161MがPCB140の上面を直接的に押圧するため、ボタン160を完全に押し下げてから、さらにボタン160を平面方向又は下方向に押圧しようとする利用者に、硬質な感触を提供することができる。
【0055】
以上、本発明の例示的な実施形態のスイッチ付き多方向入力装置、及び、スイッチ付き多方向入力システムについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
100 スイッチ付き多方向入力装置
100A 第1スイッチ付き多方向入力装置
100B 第2スイッチ付き多方向入力装置
110、110M 基台
120 FPC
125 歪検出素子
130 レバー
131 平板部
132 筒状部
133 平板部
140 PCB
141 電極
141A、141B 電極部
150 接点ラバー
151 基部
152 可動部
153 変形可能部
160、160M ボタン
161、161M 凸部
162 凹部
170 カバー
200 スイッチ付き多方向入力システム