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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】車載システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20240306BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240306BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G10K11/178
B60R11/02 M
B60R11/02 S
H04R3/00 310
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020122091
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018759
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】田地 良輔
(72)【発明者】
【氏名】篠原 修
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-043146(JP,A)
【文献】特開2010-249962(JP,A)
【文献】特開2011-143775(JP,A)
【文献】特開2006-023588(JP,A)
【文献】特開2001-005463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
B60R 11/02
H04R 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載された、警告音を出力する車載システムであって、
マイクと、
スピーカと、
騒音を表す信号である参照信号に伝達関数を施して、ユーザの音の聴取位置で前記騒音をキャンセルするキャンセル音を生成し、前記スピーカから出力する適応フィルタであるキャンセル音生成用適応フィルタと、
前記スピーカから前記警告音を出力する警告音出力部と、
前記マイクで収音した音をユーザの音の聴取位置の音に補正する補正部とを有し、
前記キャンセル音生成用適応フィルタは、前記補正部が補正した音をエラーとする適応動作を行って前記伝達関数を更新し、
前記警告音出力部は、前記警告音を出力しているときに、前記補正部が補正した音のレベルが所定のレベルとなるように、出力する前記警告音のゲインを調整することを特徴とする車載システム。
【請求項2】
請求項1記載の車載システムであって、
前記警告音出力部は、前記警告音の音域を複数に分割した周波数帯域毎に、前記補正部が補正した音の当該周波数帯域の成分のレベルが所定のレベルとなるように、出力する前記警告音のゲインを調整することを特徴とする車載システム。
【請求項3】
自動車に搭載された、警告音を出力する車載システムであって、
マイクと、
スピーカと、
騒音を表す信号である参照信号に伝達関数を施して、ユーザの音の聴取位置で前記騒音をキャンセルするキャンセル音を生成し、前記スピーカから出力する適応フィルタであるキャンセル音生成用適応フィルタと、
前記スピーカから前記警告音を出力する警告音出力部と、
前記スピーカからオーディオコンテンツの音であるコンテンツ音を出力するオーディオ出力部と、
前記マイクで収音した音をユーザの音の聴取位置の音に補正する補正部と、
前記補正部が補正した音から前記警告音の成分を除去する警告音成分除去部とを有し、
前記キャンセル音生成用適応フィルタは、前記補正部が補正した音をエラーとする適応動作を行って前記伝達関数を更新し、
前記警告音出力部は、前記警告音を出力しているときに、前記警告音成分除去部が除去した音のレベルが大きいほど、レベルが大きくなるように出力する前記警告音のゲインを調整することを特徴とする車載システム。
【請求項4】
請求項3記載の車載システムであって、
前記警告音出力部は、前記警告音の音域を複数に分割した周波数帯域毎に、前記警告音成分除去部が除去した音の当該周波数帯域の成分のレベルが大きいほど、レベルが大きくなるように出力する前記警告音のゲインを調整することを特徴とする車載システム。
【請求項5】
請求項3または4記載の車載システムであって、
前記オーディオ出力部は、前記警告音出力部が前記警告音を出力しているときに、警告音成分除去部が除去した音のレベルが所定のレベルを超えないように出力するコンテンツ音のゲインを調整することを特徴とする車載システム。
【請求項6】
請求項5記載の車載システムであって、
前記オーディオ出力部は、前記警告音の音域を複数に分割した周波数帯域毎に、警告音成分除去部が除去した音の当該周波数帯域の成分のレベルが所定のレベルを超えないように出力するコンテンツ音のゲインを調整することを特徴とする車載システム。
【請求項7】
請求項3、4、5または6記載の車載システムであって、
警告音成分除去部は、
警告音除去用適応フィルタと、
前記補正部が補正した音から、前記警告音除去用適応フィルタの出力を減算することにより前記補正部が補正した音から前記警告音の成分を除去する減算部とを有し、
前記警告音除去用適応フィルタは、前記警告音出力部が出力する警告音を入力とし、前記減算部の出力をエラーとして適応動作を行う適応フィルタであることを特徴とする車載システム。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載の車載システムであって、
前記補正部は、
前記キャンセル音生成用適応フィルタが出力するキャンセル音に予め設定した前記マイクまでの伝達関数を施す第1フィルタと、
前記マイクで収音した音から第1フィルタの出力を減算する第1合成器と、
第1合成器の出力に、予め設定した前記マイクから前記聴取位置までの伝達関数を施す第2フィルタと、
前記キャンセル音生成用適応フィルタが出力するキャンセル音に、予め設定した前記聴取位置までの伝達関数を施す第3フィルタと、
前記第2フィルタの出力と前記第3フィルタの出力を加算し、前記補正した音として出力する第2合成器とを備えていることを特徴とする車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における警告音出力と騒音制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車における警告音出力の技術としては、警告音が確実にユーザに認知されるように、車中の騒音の大きさ等に応じて警告音の音量を変更したり(たとえば、特許文献1)、オーディオ装置の音量を低下させた上で警告音を出力する技術(たとえば、特許文献2)が知られている。
【0003】
また、騒音制御の技術としては、騒音キャンセル位置の近傍に配置したマイクと、騒音キャンセル位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を出力するスピーカと、騒音源の出力信号もしくは当該出力信号を疑似した信号に適応的に設定した伝達関数を施してスピーカから出力するキャンセル音を生成する適応フィルタとを設け、適応フィルタにおいて、補助フィルタを用いてマイクの出力を補正した信号をエラー信号として伝達関数を適応的に設定する能動型騒音制御(ANC; Active Noise Control)の技術が知られている(たとえば、特許文献3、4)。
【0004】
ここで、この技術では、補助フィルタには、予め騒音キャンセル位置に配置した学習用のマイクを用いて学習した、騒音キャンセル位置にマイクが配置されていた場合にマイクから出力される信号に、マイクが実際に出力する信号を補正する伝達関数が設定されており、このような補助フィルタを用いることにより、マイクの位置と異なる騒音キャンセル位置において、騒音をキャンセルしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9- 277886号公報
【文献】特開平9- 73588号公報
【文献】特開2020-12917号公報
【文献】特開2018-72770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した警告音出力の技術では、ユーザに実際に聞こえる警告音の音量や、ユーザに実際に聞こえている騒音やオーディオ装置の出力音の大きさは分からないため、必ずしも充分にユーザに警告音が認知されることを担保できない。
【0007】
そこで、本発明は、より確実にユーザに警告音が認知されるように警告音を出力することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載された、警告音を出力する車載システムに、マイクと、スピーカと、騒音を表す信号である参照信号に伝達関数を施して、ユーザの音の聴取位置で前記騒音をキャンセルするキャンセル音を生成し、前記スピーカから出力する適応フィルタであるキャンセル音生成用適応フィルタと、前記スピーカから前記警告音を出力する警告音出力部と、前記マイクで収音した音をユーザの音の聴取位置の音に補正する補正部とを備えたものである。ここで、前記キャンセル音生成用適応フィルタは、前記補正部が補正した音をエラーとする適応動作を行って前記伝達関数を更新し、前記警告音出力部は、前記警告音を出力しているときに、前記補正部が補正した音のレベルが所定のレベルとなるように、出力する前記警告音のゲインを調整する。
【0009】
ここで、この車載システムは、前記警告音出力部を、前記警告音の音域を複数に分割した周波数帯域毎に、前記補正部が補正した音の当該周波数帯域の成分のレベルが所定のレベルとなるように、出力する前記警告音のゲインを調整するものとしてよい。
【0010】
このような車載システムによれば、ユーザに実際に聞こえる警告音の音量に基づいて、出力する警告音のレベルを調整できるので、より、確実にユーザに警告音が認知されるように警告音を出力することができる。
【0011】
また、前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載された、警告音を出力する車載システムに、マイクと、スピーカと、騒音を表す信号である参照信号に伝達関数を施して、ユーザの音の聴取位置で前記騒音をキャンセルするキャンセル音を生成し、前記スピーカから出力する適応フィルタであるキャンセル音生成用適応フィルタと、前記スピーカから前記警告音を出力する警告音出力部と、前記スピーカからオーディオコンテンツの音であるコンテンツ音を出力するオーディオ出力部と、前記マイクで収音した音をユーザの音の聴取位置の音に補正する補正部と、前記補正部が補正した音から前記警告音の成分を除去する警告音成分除去部とを備えたものである。ここで、前記キャンセル音生成用適応フィルタは、前記補正部が補正した音をエラーとする適応動作を行って前記伝達関数を更新し、前記警告音出力部は、前記警告音を出力しているときに、前記警告音成分除去部が除去した音のレベルが大きいほど、レベルが大きくなるように出力する前記警告音のゲインを調整する。
【0012】
ここで、この車載システムは、前記警告音出力部を、前記警告音の音域を複数に分割した周波数帯域毎に、前記警告音成分除去部が除去した音の当該周波数帯域の成分のレベルが大きいほど、レベルが大きくなるように出力する前記警告音のゲインを調整するものとしてよい。
【0013】
また、これらの車載システムは、前記オーディオ出力部を、前記警告音出力部が前記警告音を出力しているときに、警告音成分除去部が除去した音のレベルが所定のレベルを超えないように出力するコンテンツ音のゲインを調整するものしてよい。
【0014】
また、この場合、前記オーディオ出力部を、前記警告音の音域を複数に分割した周波数帯域毎に、警告音成分除去部が除去した音の当該周波数帯域の成分のレベルが所定のレベルを超えないように出力するコンテンツ音のゲインを調整するものとしてよい。
【0015】
ここで、この車載システムは、前記警告音出力部を、前記警告音の音域を複数に分割した周波数帯域毎に、前記補正部が補正した音の当該周波数帯域の成分のレベルが所定のレベルとなるように、出力する前記警告音のゲインを調整するものとしてよい。
【0016】
このような車載システムによれば、ユーザに実際に聞こえるコンテンツ音の音量に基づいて、出力する警告音やコンテンツ音のレベルをコンテンツ音によって警告音の認知が妨げられないように調整できるので、より、確実にユーザに警告音が認知されるように警告音を出力することができる。
【0017】
ここで、上記した警告音成分除去部は、警告音除去用適応フィルタと、前記補正部が補正した音から、前記警告音除去用適応フィルタの出力を減算することにより前記補正部が補正した音から前記警告音の成分を除去する減算部とを備えたものとしてよい。ただし、前記警告音除去用適応フィルタは、前記警告音出力部が出力する警告音を入力とし、前記減算部の出力をエラーとして適応動作を行う適応フィルタである。
【0018】
また、以上の車載システムは、前記補正部を、前記キャンセル音生成用適応フィルタが出力するキャンセル音に予め設定した前記マイクまでの伝達関数を施す第1フィルタと、前記マイクで収音した音から第1フィルタの出力を減算する第1合成器と、前記第1合成器の出力に、予め設定した前記マイクから前記聴取位置までの伝達関数を施す第2フィルタと、前記キャンセル音生成用適応フィルタが出力するキャンセル音に、予め設定した前記聴取位置までの伝達関数を施す第3フィルタと、前記第2フィルタの出力と前記第3フィルタの出力を加算し、前記補正した音として出力する第2合成器とを備えたものとしてよい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、より確実にユーザに警告音が認知されるように警告音を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る車載システムのスピーカとマイクと学習用マイクの配置を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る補助フィルタの伝達関数の学習の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る警告音発生装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る車載システムの他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本第1実施形態に係る車載システムの構成を示す。
車載システムは、自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、参照音生成部1、第1適応フィルタ2、第1推定フィルタ3、第2推定フィルタ4、補助フィルタ5、第1合成器6、第2合成器7、出力合成部8、スピーカ9、マイク10、警告音発生装置11を備えている。
【0022】
車載システムは、自動車の特定の座席に着座したユーザに聞こえるロードノイズやエンジン音などの騒音をキャンセルすると共に、当該特定の座席ユーザに対して警告音を確実に認知されるように出力するシステムである。
【0023】
以下では、この特定の座席が自動車の運転席であるものとして説明を行う。
参照音生成部1は、加速度センサで検出した加速度などより騒音を模擬した信号である参照音X(t)を出力し、警告音発生装置11は所定の契機で警告音を出力する。
スピーカ9とマイク10は、たとえば、図2aに示すように、運転席のユーザの音の聴取位置の近くに配置される。
次に、補助フィルタ5の伝達関数H(z)と第1推定フィルタ3の伝達関数Sv^(z)と第2推定フィルタ4の伝達関数S^(z)について説明する。
まず、第2推定フィルタ4の伝達関数S^(z)は、予め、スピーカ9からマイク10までの伝達関数を計測し、第2推定フィルタ4の伝達関数S^(z)とする。
次に、補助フィルタ5の伝達関数H(z)と第1推定フィルタ3の伝達関数Sv^(z)は、予め、図2bに示すように運転席のユーザの音の聴取位置をユーザ聴取位置として、当該ユーザ聴取位置に設置した学習用マイク20を用いて算出され設定される。
【0024】
すなわち、まず、図3aに示す、スピーカ9から学習用マイク20までの伝達関数を計測し、第1推定フィルタ3の伝達関数Sv^(z)とする。
また、補助フィルタ5の伝達関数H(z)の算出は、図3aに示すように、マイク10の出力を入力とする学習用適応フィルタ31と学習用合成器32を用いて行う。
すなわち、収音しておいた騒音等の適当な騒音をスピーカ9から出力しながら、学習用合成器32で生成した学習用マイク20と学習用適応フィルタ31の出力との差分をエラーとした適応動作を学習用適応フィルタ31に行わせる。
【0025】
学習用適応フィルタ31は、学習用適応フィルタ31は、学習用可変フィルタ311と、学習用適応アルゴリズム実行部312を備えており、学習用適応アルゴリズム実行部312は、NLMSやLMSなどの適応アルゴリズムを実行し、学習用合成器32で生成したエラーが最小となるように学習用可変フィルタ311の伝達関数H(z)を更新する。
【0026】
そして、収束安定した学習用可変フィルタ311の伝達関数H(z)を補助フィルタ5の伝達関数H(z)とする。この結果、この補助フィルタ5の伝達関数H(z)は、マイク10からユーザ聴取位置までの騒音の伝達関数を表すものとなる。
【0027】
ただし、補助フィルタ5の伝達関数H(z)の算出は、図3bに示すように、マイク10や学習用マイク20の入力を騒音源からの騒音として、学習用可変フィルタ311の伝達関数H(z)を収束安定させ、収束安定した学習用可変フィルタ311の伝達関数H(z)を補助フィルタ5の伝達関数H(z)とすることにより行っても良い。
【0028】
また、警告音を出力しているときには図3aの構成で収束安定した学習用可変フィルタ311の伝達関数H(z)が補助フィルタ5の伝達関数H(z)となり、警告音を出力していないときには図3bの構成で収束安定した学習用可変フィルタ311の伝達関数H(z)が補助フィルタ5の伝達関数H(z)となるように、補助フィルタ5の伝達関数H(z)を切り替えるようにしてもよい。
【0029】
図1に戻り、第1適応フィルタ2は、ユーザ聴取位置で騒音をキャンセルするキャンセル音を、参照音生成部1が出力する参照音X(t)から生成して出力するものであり、第1適応フィルタ2から出力されたキャンセル音は、出力合成部8を通ってスピーカ9から出力される。
【0030】
また、警告音発生装置11が出力した警告音は、出力合成部8でキャンセル音と加算された形態でスピーカ9から出力される。
第1適応フィルタ2から出力されたキャンセル音は、第2推定フィルタ4を通って第2合成器7に送られ、第2合成器7はマイク10の出力から第2推定フィルタ4の出力を減算する。第2推定フィルタ4の出力はマイク9の位置でのキャンセル音と表すので、第2合成器7の出力は、マイク9の位置の音からマイク9の位置のキャンセル音を除いたものとなり、警告音が出力されていないときには、マイク9の位置の騒音を表すものとなる。
【0031】
第2合成器7の出力は、補助フィルタ5を通って第1合成器6に送られる。
また、第1適応フィルタ2から出力されたキャンセル音は、第1推定フィルタ3を通って第1合成器6に送られ、第1合成器6は補助フィルタ5の出力に第1推定フィルタ3加算し、エラーEh(t)として第1適応フィルタ2に出力する。
【0032】
補助フィルタ5の出力は、警告音が出力されていないときには、ユーザ聴取位置の騒音となり第1推定フィルタ3の出力は、ユーザ聴取位置のキャンセル音を表すので、警告音が出力されていないときには、第1合成器6が出力するエラーEh(t)は、ユーザ聴取位置の騒音とキャンセル音の和となる。
【0033】
第1適応フィルタ2は、スピーカ9からユーザ聴取位置までの伝達関数Sv^(z)を設定した適応用推定フィルタ21と、キャンセル音を出力する第1可変フィルタ22と、第1適応アルゴリズム実行部23とを備え、参照音生成部1が出力する参照音X(t)は、適応用推定フィルタ21と第1可変フィルタ22の入力となる。
【0034】
適応用推定フィルタ21と第1可変フィルタ22と第1適応アルゴリズム実行部23は、Filtered-X適応フィルタを構成しており、第1適応アルゴリズム実行部23は、適応用推定フィルタ21の出力を用いながら、第1合成器6から出力されるエラーEh(t)が最小となるようにNLMSやLMSなどの適応アルゴリズムを実行し、第1可変フィルタ22の伝達関数W(z)を更新する適応動作を行う。
【0035】
そして、この結果、第1適応フィルタ2は、ユーザ聴取位置で騒音をキャンセルするキャンセル音を出力するように適応される。
次に、警告音発生装置11が警告音を出力しているとき、第1合成器6から出力されるエラーEh(t)には、キャンセル音でキャンセルし残ったユーザ聴取位置の騒音である残存騒音と、マイク10で収音され補助フィルタ5を通った警告音が含まれ、このエラーEh(t)に含まれる警告音は、補助フィルタ5の働きによって、ユーザ聴取位置の警告音、すなわち、ユーザに実際に聞こえる警告音となる。
【0036】
そこで、警告音発生装置11は、エラーEh(t)からユーザに実際に聞こえている警告音の音量を検出し、ユーザに実際に聞こえる警告音の音量が所望の音量となるように、出力する警告音の音量を調整する。
【0037】
図4に、警告音発生装置11の構成を示す。
図示するように警告音発生装置11は、警告音を生成する警告音音源111、警告音音源111が生成した警告音のゲインを調整して出力合成部8に出力するゲイン調整部112、解析調整処理部113、警告音音源111の警告音生成動作や解析調整処理部113の動作を制御する警告音制御部114を備えている。
【0038】
警告音制御部114は、所定の契機で警告音出力期間を設定し、警告音出力期間中、警告音音源111に警告音の生成動作を行わせると共に、解析調整処理部113に、解析調整処理を行わせる。
【0039】
解析調整処理部113は、解析調整処理において、第1合成器6から出力されるエラーEh(t)から、警告音の音域中の各周波数帯域のレベルをFFT等により算出し、算出した各周波数帯域のレベルが予め設定されたレベルとなるように、ゲイン調整部112に、出力する警告音の各周波数帯域のゲインの調整を行わせる。
【0040】
図4に示すようにゲイン調整部112は、警告音の音域を分割した1からnまでのn個の周波数帯域に対応するn個のバンドパスフィルタ1121を備えており、各バンドパスフィルタ1121は警告音音源111が生成した警告音の対応する周波数帯域の成分を抽出する。ここで、図中のBPFiは、i番目の音域に対応するバンドパスフィルタ1121を表している。なお、警告音の帯域が狭い場合等にはnは1としてもよい。
【0041】
また、ゲイン調整部112は、n個の周波数帯域に対応するn個の可変増幅器1122を備えており、各可変増幅器1122は対応する周波数帯域が同じバンドパスフィルタ1121の出力を、解析調整処理部113から指定されたゲインで増幅する。ここで、図中のGiは、i番目の音域に対応する可変増幅器1122のゲインを表している。
【0042】
そして、各可変増幅器1122の出力は帯域合成用加算器1123で加算され警告音として出力合成部8に出力される。
以上、本発明の第1実施形態について説明した。
以上のように、本第1実施形態によれば、ユーザに実際に聞こえる警告音の音量に基づいて、出力する警告音のレベルを調整できるので、より、確実にユーザに警告音が認知されるように警告音を出力することができる。
【0043】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図5に、本第2実施形態に係る車載システムの構成を示す。
図示するように、本第2実施形態に係る車載システムが、図1に示した車載システムと異なる点は以下の2点である。
まず、第1点は、音楽などのコンテンツ音を出力するオーディオソース51と、オーディオソース51の出力するコンテンツ音のゲインを調整して出力するオーディオゲイン調整装置52を設け、スピーカ9に、オーディオゲイン調整装置52が出力するゲイン調整後のコンテンツ音を出力合成部8を介して出力する点である。
【0044】
第2点は、警告音発生装置11が出力する警告音を入力する第2適応フィルタ53と、第1合成器6が出力するエラーEh(t)と第2適応フィルタ53の出力を合成する第3合成器54を設け、第3合成器54の出力に基づいて、警告音発生装置11の警告音のゲイン調整と、オーディオゲイン調整装置52のコンテンツ音のゲイン調整を行うようにした点である。
【0045】
第2適応フィルタ53は、警告音発生装置11が出力する警告音を入力とする第2可変フィルタ531と、第2適応アルゴリズム実行部532とを備え、第2適応アルゴリズム実行部532は、第3合成器54の出力をエラーとして、エラーが最小となるようにNLMSやLMSなどの適応アルゴリズムを実行し、第2可変フィルタ531の伝達関数U(z)を更新する適応動作を行う。
【0046】
そして、この結果、第1合成器6が出力するエラーEh(t)に含まれていた警告音の成分が除去されたものが第3合成器54の出力となる。
ここで、本第2実施形態においては、警告音を出力しているときには、第1合成器6が出力するエラーEh(t)に、キャンセル音でキャンセルし残ったユーザ聴取位置の騒音である残存騒音と、マイク10で収音され補助フィルタ5を通った警告音と、マイク10で収音され補助フィルタ5を通ったコンテンツ音とが含まれる。
【0047】
したがって、このエラーEh(t)から警告音の成分が除去された第3合成器54の出力は、補助フィルタ5の働きによって変換されたユーザ聴取位置のコンテンツ音、すなわち、ユーザに実際に聞こえるコンテンツ音となる。
【0048】
そして、本第2実施形態では、コンテンツ音によってユーザの警告音の聴取が妨げられないように、警告音発生装置11の警告音のゲイン調整と、オーディオゲイン調整装置52のコンテンツ音のゲイン調整を行う。
【0049】
すなわち、本第2実施形態では、警告音発生装置11の解析調整処理部113は、解析調整処理において、第3合成器54の出力から、警告音の音域中の各周波数帯域のコンテンツ音のレベルをFFT等により算出し、算出した各周波数帯域のレベルが予め設定されたレベルより大きい周波数帯域について警告音のゲインをゲイン調整部112に大きくさせる処理と、当該周波数帯域についてコンテンツ音のゲインをオーディオゲイン調整装置52に小さくさせる処理とのいずれか一方、もしくは、双方を行う。
【0050】
以上、本発明の第2実施形態について説明した。
ところで、警告音発生装置11から第1合成器6の出力までの伝達関数が大きく変化しない場合、この伝達関数を予め求めておくことにより、出力する警告音に対して、第1合成器6が出力するエラーEh(t)に含まれることとなる警告音の各周波数帯域のレベルは特定することができる。
【0051】
そこで、本第2実施形態は、図6に示すように、第2適応フィルタ53と第3合成器54を設けずに、警告音発生装置11の解析調整処理部113において、出力している警告音と、予め求めておいた警告音発生装置11から第1合成器6の出力までの伝達関数より、第1合成器6が出力するエラーEh(t)に含まれる警告音の各周波数帯域のレベルを推定し、各周波数帯域について、エラーEh(t)から推定したレベルを差し引いて各周波数帯域のコンテンツ音のレベルを算出し、算出した各周波数帯域のコンテンツ音のレベルに応じて、上述のように警告音発生装置11の警告音のゲイン調整と、オーディオゲイン調整装置52のコンテンツ音のゲイン調整の一方もしくは双方を行うようにしてもよい。
【0052】
以上、本発明の第2実施形態について説明した。
以上のように、本第2実施形態によれば、ユーザに実際に聞こえる音楽等のコンテンツ音の音量に基づいて、出力する警告音やコンテンツ音のレベルをコンテンツ音によって警告音の認知が妨げられないように調整できるので、より、確実にユーザに警告音が認知されるように警告音を出力することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…参照音生成部、2…第1適応フィルタ、3…第1推定フィルタ、4…第2推定フィルタ、5…補助フィルタ、6…第1合成器、7…第2合成器、8…出力合成部、9…スピーカ、10…マイク、11…警告音発生装置、20…学習用マイク、21…適応用推定フィルタ、22…第1可変フィルタ、23…第1適応アルゴリズム実行部、31…学習用適応フィルタ、32…学習用合成器、51…オーディオソース、52…オーディオゲイン調整装置、53…第2適応フィルタ、54…第3合成器、111…警告音音源、112…ゲイン調整部、113…解析調整処理部、114…警告音制御部、311…学習用可変フィルタ、312…学習用適応アルゴリズム実行部、531…第2可変フィルタ、532…第2適応アルゴリズム実行部、1121…バンドパスフィルタ、1122…可変増幅器、1123…帯域合成用加算器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6