(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】サーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/32 20060101AFI20240306BHJP
B41J 29/13 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B41J2/32 C
B41J2/32 Z
B41J29/13
(21)【出願番号】P 2020138415
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 晋也
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165028(JP,A)
【文献】特開2000-203122(JP,A)
【文献】特開2004-322429(JP,A)
【文献】特開平01-145176(JP,A)
【文献】特開2001-018940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0314624(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/32
B41J 29/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙収容部を有する本体と、
前記本体に回動可能に設けられ、前記用紙収容部を開閉可能な開閉蓋と、
前記本体または前記開閉蓋の何れか一方に設けられたプラテン、および他方に設けられ前記開閉蓋の開閉に伴い前記プラテンに接離するサーマルヘッドを有する印刷部と、
前記本体に設けられ、前記開閉蓋が前記用紙収容部を閉塞した状態で前記開閉蓋を係止する係止部と、
前記本体または前記開閉蓋の何れか一方に設けられたセンサが他方に設けられた被検出部を検出することで、前記サーマルヘッドと前記プラテンとの所定の圧接状態を検出する検出部と、
前記検出部が前記所定の圧接状態を検出しない場合、前記印刷部の印刷を禁止する印刷制御部と、
前記開閉蓋が前記係止部に係止されていない状態で、前記センサが前記被検出部を検出しないように前記本体と前記開閉蓋を互いに離反する方向に付勢する付勢部材と、
を備え
、
前記センサは、前記プラテンの延びる方向において、前記プラテンの両側にそれぞれ設けられ、
前記検出部は、前記センサのいずれもが前記被検出部を検出した場合に前記サーマルヘッドと前記プラテンとの所定の圧接状態を検出し、
前記付勢部材は、前記プラテンの延びる方向において、前記プラテンの片側に設けられるサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記本体に設けられる、
請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記本体は、その一端側で前記開閉蓋を回動可能に支持し、
前記付勢部材は、前記開閉蓋が前記用紙収容部を閉塞した状態で、前記本体の他端側に位置する
請求項1または2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記開閉蓋が前記用紙収容部を閉塞した状態で、前記センサに近接する、
請求項1ないし3のいずれか1つに記載のサーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、サーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上面が開口した用紙収容部を形成した本体と、この本体に回動可能に設けられ用紙収容室を開閉する開閉蓋と、を備えたサーマルプリンタが知られている。この種のサーマルプリンタでは、本体にプラテンを設けるとともに開閉蓋にサーマルヘッドを設け、開閉蓋を閉じた状態でサーマルヘッドをプラテンに圧接させて、サーマルヘッドとプラテンとの間に搬送される用紙に印刷を行うものが広く用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記構成のサーマルプリンタにおいては、開閉蓋に設けたサーマルヘッドが本体に設けたプラテンに適切な圧接力で圧接されないと、正常な印刷を行うことができず印刷不良が発生する。このような印刷不良は、例えば、開閉蓋が用紙収容部を閉塞して本体に係止された状態(以下、ロック状態ともいう)でない状態でサーマルプリンタが使用された場合などに生じる。
【0004】
上記印刷不良を防止するために、サーマルヘッドとプラテンが所定の圧接力であることを検出する手段を設けて、上記所定の圧接力であることが検出されないと印刷を禁止する構成が採用されている。サーマルヘッドとプラテンが所定の圧接力であることを検出する手段としては、例えば、開閉蓋にリブを設け、開閉蓋のロック状態で上記リブを検出するセンサを本体に設けた構成が用いられている。
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、開閉蓋に設けられるリブの寸法精度や本体に設けられるセンサの取り付け精度によっては、開閉蓋がロック状態でなくサーマルヘッドとプラテンが所定の圧接力で圧接しない状態にもかかわらず、センサがリブを検出してしまうことがあった。その結果、サーマルヘッドがプラテンに適正な圧接力で圧接されずに印刷が行われて印刷不良が発生していた。このような事態は、例えば、ユーザが用紙収容部に新たな用紙を収容した後、開閉蓋を閉じる際にロック状態を確認しない場合などに生じる。このため、サーマルヘッドのプラテンに対する不適正な圧接力に起因する印刷不良を抑制することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、サーマルヘッドのプラテンに対する不適正な圧接力に起因する印刷不良を抑制することが可能なサーマルプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のサーマルプリンタは、用紙収容部を有する本体と、前記本体に回動可能に設けられ、前記用紙収容部を開閉可能な開閉蓋と、前記本体または前記開閉蓋の何れか一方に設けられたプラテン、および他方に設けられ前記開閉蓋の開閉に伴い前記プラテンに接離するサーマルヘッドを有する印刷部と、前記本体に設けられ、前記開閉蓋が前記用紙収容部を閉塞した状態で前記開閉蓋を係止する係止部と、前記本体または前記開閉蓋の何れか一方に設けられたセンサが他方に設けられた被検出部を検出することで、前記サーマルヘッドと前記プラテンとの所定の圧接状態を検出する検出部と、前記検出部が前記所定の圧接状態を検出しない場合、前記印刷部の印刷を禁止する印刷制御部と、前記開閉蓋が前記係止部に係止されていない状態で、前記センサが前記被検出部を検出しないように前記本体と前記開閉蓋を互いに離反する方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記センサは、前記プラテンの延びる方向において、前記プラテンの両側にそれぞれ設けられ、前記検出部は、前記センサのいずれもが前記被検出部を検出した場合に前記サーマルヘッドと前記プラテンとの所定の圧接状態を検出し、前記付勢部材は、前記プラテンの延びる方向において、前記プラテンの片側に設けられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のサーマルプリンタの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態のサーマルプリンタの側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態のサーマルプリンタの本体の内部構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のサーマルプリンタの開閉蓋の内部構成を示す平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態のサーマルプリンタのロック機構の概略を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態のサーマルプリンタの付勢部材およびセンサを示し、センサが被検出部を検出しない状態を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態のサーマルプリンタの付勢部材およびセンサを示し、センサが被検出部を検出する状態を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態のサーマルプリンタのハードウェア構成を示すブロックである。
【
図9】
図9は、実施形態におけるサーマルプリンタの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態のサーマルプリンタについて説明する。
図1は、サーマルプリンタ1の外観を示す斜視図、
図2はサーマルプリンタ1の側方(X方向)の面(以下、側面ともいう)を示す側面図である。サーマルプリンタ1は、図示しない上位装置(本実施形態ではPC(Personal Computer))と有線または無線で接続され、当該PCから印刷データを受信して、ラベルに印刷を行うラベルプリンタとして機能する。しかし、これはサーマルプリンタ1の利用方法の一例であり、他の分野で利用されるものでもよい。
【0010】
サーマルプリンタ1は、本体2と開閉蓋3とを備える。本体2は、上方(Z方向)が開口した用紙収容部21(
図3参照)を内部に形成している。本体2は、後方(Y方向)の一端に位置する一対の回動支持部4を備える。開閉蓋3は、回動支持部4に支持されて、用紙収容部21の開口を開閉するよう本体2に回動自在に設けられている。
【0011】
サーマルプリンタ1の前側には、本体2と開閉蓋3とによって排出口5が形成される。排出口5は、印刷された用紙6を排出する。本実施形態においては、用紙6は、ロール状の台紙61と台紙61に所定間隔で貼着されたラベル62とで構成される。サーマルプリンタ1は、ラベル62に例えばバーコード等を印刷する。
【0012】
開閉蓋3の側面には、前後方向にスライド可能な操作子7が設けられている。操作子7は、開閉蓋3が用紙収容部21を閉塞して本体2に係止された状態(以下、ロック状態ともいう)を解除する操作を行うものである。操作子7は、
図1、2に示すように、開閉蓋3のロック状態では後方に位置し、前方にスライドさせることでロック状態を解除する。
【0013】
図3は、本体2を上方から見た平面図である。本体2は、用紙収容部21、一対の側壁22、下部後壁23、一対の下部ガイド壁24、搬送経路25、プラテン26、一対のフック27、一対のセンサ28、およびリフター29を備える。
【0014】
用紙収容部21は、ロール状の用紙6を収容する。用紙収容部21は、本体2の底面から突出する一対の側壁22および下部後壁23によって下方に凹む凹状に形成される。一対の下部ガイド壁24は、一対の側壁22とそれぞれ連続的に設けられ、搬送される用紙6を排出口5に向けてガイドする。搬送経路25は、一対の下部ガイド壁24等によって形成されるもので、用紙収容部21から排出口5に至る用紙6の搬送路である。
【0015】
プラテン26は、本体2の前端に回転可能に設けられている。プラテン26は、両側方向に延びるローラで構成され、後述する搬送モータを駆動源として回転する。プラテン26は、開閉蓋3に設けられたサーマルヘッド35(
図4参照)との間で用紙6を挟持し、その状態で回転することで用紙6を搬送する。
【0016】
一対のフック27は、搬送経路25の両側にそれぞれ設けられている。フック27の詳細は後述するが、フック27は、開閉蓋3に設けられたロックレバーを着脱可能に係止するものである。フック27は、開閉蓋3を係止する係止部の一例である。
【0017】
一対のセンサ28は、搬送経路25と各フック27との間にそれぞれ設けられる。各センサ28は、開閉蓋3のロック状態において、開閉蓋3に設けられたリブ36(
図4参照)を検出する。各センサ28は、開閉蓋3に設けてもよく、その場合、本体2にリブなどの被検出部材を設ける。また、センサ28は必ずしも複数設ける必要はなく、1つでもよい。しかし、本実施形態のようにプラテン26の両端近傍にそれぞれセンサ28設けることで、プラテン26全幅に渡ってサーマルヘッド35が適切に圧接していることを検出できる。なお、センサ28の詳細については後述する。
【0018】
リフター29は、本体2の前端部(前後方向において回動支持部4と反対側の端部)であって、かつ、プラテン26が延びる方向の直線上に位置して、プラテン26の一方側のみに設けられている。リフター29は、コイルばね291(
図6参照)を備える。コイルばね291は、上下方向に伸縮可能で、開閉蓋3がロック状態でない場合、開閉蓋3の自重に抗して開閉蓋3を上方へ押し上げる。また、コイルばね291は、開閉蓋3がロック状態である場合、開閉蓋3により押圧されて圧縮する。コイルばね291は、本体2と開閉蓋3を互いに離反する方向に付勢する付勢部材の一例であり、開閉蓋3に設けてもよい。なお、コイルばね291は、プラテン26の両側などに複数設けてもよい。しかし、本実施形態のように一方のみに設けることで、ユーザが開閉蓋3を閉める際の操作性の低下を抑制することができる。ユーザが開閉蓋3を閉める際には、コイルばね291の付勢力に抗して開閉蓋3を押し下げる必要があるため、一方のみに設けることで開閉蓋3をロック状態にするための操作力を小さくできるからである。なお、リフター29の詳細については後述する。
【0019】
図4は、開閉蓋3を下方から見た平面図である。開閉蓋3は、回動軸31、一対の上部ガイド壁32、上部後壁33、一対のロックレバー34、サーマルヘッド35、および一対のリブ36を備える。
【0020】
回動軸31は、その両端が、本体2が備える回動支持部4に回動自在に支持される。これによって、開閉蓋3は本体2に回動自在に取り付けられる。一対の上部ガイド壁32は、開閉蓋3のロック状態において、本体2に形成された一対の側壁22および一対の下部ガイド壁24に当接あるいは近接する。上部後壁33は、開閉蓋3のロック状態において、下部後壁23に当接あるいは近接する。
【0021】
すなわち、開閉蓋3のロック状態においては、本体2にそれぞれ形成された一対の側壁22および下部後壁23と、開閉蓋3にそれぞれ形成された一対の上部ガイド壁32および上部後壁33と、によってサーマルプリンタ1内に用紙6を収納する用紙収納空間が形成される。また、開閉蓋3のロック状態においては、本体2に設けられた一対の下部ガイド壁24および開閉蓋3に設けられた一対の上部ガイド壁32によって、サーマルプリンタ1内に用紙収納空間に連通する用紙搬送空間が形成される。
【0022】
一対のロックレバー34は、一対の上部ガイド壁32のそれぞれ前方に位置して設けられている。各ロックレバー34は、本体2に設けられた各フック27にそれぞれ係脱可能に係止される。ロックレバー34とフック27とによって、開閉蓋3を本体2にロックするロック機構が構成される。なお、ロック機構の詳細については後述する。
【0023】
サーマルヘッド35は、開閉蓋3の前端部に位置して設けられている。サーマルヘッド35は、用紙6の搬送方向と直交する方向に沿うライン上に複数の発熱体が設けられたラインサーマルヘッドである。また、サーマルヘッド35は、開閉蓋3のロック状態において、用紙6を介してプラテン26に所定の圧接力で圧接される。サーマルヘッド35は、プラテン26との間に用紙6を挟持した状態で上記発熱体を発熱させて、用紙6のラベル62に熱エネルギーを加えることで、ラベル62にバーコードなどの印刷を行う。サーマルヘッド35とプラテン26とによって印刷部が構成される。
【0024】
一対のリブ36は、一対のロックレバー34の内側にそれぞれ位置して設けられる。各リブ36は、開閉蓋3のロック状態では、本体2に設けられたセンサ28の検出領域内に入り込む。リブ36は、センサ28によって検出されるもので、被検出部の一例である。センサ28とリブ36でサーマルヘッド35とプラテン26との所定の圧接状態を検出するための検出機構を構成する。この検出機構は、開閉蓋3のロック状態を検出する検出機構であるということもできる。なお、検出機構の詳細については後述する。
【0025】
図5は、ロック機構の概略を模式的に示す図である。開閉蓋3に設けられるロックレバー34は、支持部341、腕部342、および係止爪343を備える。
【0026】
支持部341は、開閉蓋3に支持される。支持部341は、開閉蓋3に回動自在に支持されるロックレバー34の回動軸として機能する。腕部342は、支持部341と係止爪343とを連結する。係止爪343は、L字状に形成され、本体2に設けられたフック27に係脱自在に係止される。
【0027】
ロックレバー34は、図示しないばねにより矢印A方向に常時付勢されている。開閉蓋3をロック状態とするには、本体2の回動支持部4を中心として開閉蓋3を閉める方向に回動させる。すると、係止爪343がフック27の上面に形成された斜面部271に当接する。ロックレバー34は、係止爪343が斜面部271に押されることで、ばねの付勢力に抗して矢印A方向と反対方向に回動する。開閉蓋3をさらに閉める方向に回動させると、係止爪343が斜面部271を滑り落ちて、
図5に示すように係止爪343がフック27に係止される。これにより、開閉蓋3がロック状態となる。なお、開閉蓋3の側面に設けられた操作子7は、図示しない連動機構を介してロックレバー34と連動し、開閉蓋3のロック状態では後方寄りに位置する。
【0028】
図5に示す状態から、開閉蓋3を開く際、例えば、新たな用紙6を用紙収容部21に収容する際に、ユーザは開閉蓋3の側面に設けられた操作子7を前方にスライドさせる。操作子7が前方にスライドすると、これに連動するロックレバー34は、ばねの付勢力に抗して矢印A方向と反対側に回動する。これにより、係止爪343とフック27との係止が解除されて、開閉蓋3のロック状態が解除されるため、ユーザは開閉蓋3を開くことができる。なお、本実施形態においては、1つの操作子7が2つのロックレバー34に連動する構成としたが、各ロックレバー34に連動する操作子7をそれぞれ別個に設けてもよい。
【0029】
次に、開閉蓋3のロック状態を検出する検出機構について説明する。
図6は、リフター29および検出機構を示し、開閉蓋3がロック状態でない場合を示す図である。
図7は、同様に、リフター29および検出機構を示し、開閉蓋3がロック状態である場合を示す図である。
【0030】
センサ28は、開閉蓋3に設けられた被検出部であるリブ36の有無を検出する。センサ28は、広く知られた光学センサであって、前壁部281、後壁部282、発光部283、および受光部284を備える。前壁部281および後壁部282は、本体2に取り付けられる。前壁部281と後壁部282とは、前後方向において所定距離離間して形成されており、センサ28は、前壁部281と後壁部282の間に開閉蓋3に設けられたリブ36を受け入れ可能となっている。
【0031】
発光部283は、前壁部281に設けられ、後方に向けて発光する。受光部284は、後壁部282に設けられ、発光部283からの光を受光する。センサ28は、受光部284が発光部283からの光を受光するか否かによって開閉蓋3に設けられたリブ36の有無を検出する。具体的には、リブ36が発光部283と受光部284との間の検出ラインX上に位置するか否かを検出する。
【0032】
図6に示すように、リブ36が検出ラインX上に位置していない場合、受光部284は、発光部283からの光を受光する。センサ28は、その旨の出力信号を制御部50(
図8参照)に出力する。制御部50は、センサ28からの出力信号に基づいて、開閉蓋3がロック状態にないこと、言い換えれば、サーマルヘッド35とプラテン26とが所定の圧接状態をでないことを検出する。一方、
図7に示すように、開閉蓋3がロック状態になると、リブ36が検出ラインX上に位置して発光部283からの光を遮るため、受光部284は光を受光しない。センサ28は、その旨の出力信号を制御部50に出力する。制御部50は、センサ28からの出力信号に基づいて、開閉蓋3がロック状態にあること、言い換えれば、サーマルヘッド35とプラテン26とが所定の圧接状態であることを検出する。
【0033】
リフター29は、サーマルプリンタ1の前後方向に近接して設けられている。リフター29は、本体2に設けられた台座部200に取り付けられ、コイルばね291と可動体292とを有する。
【0034】
コイルばね291は、可動体292に巻回されるとともに、下端が台座部200に当接するよう設けられている。コイルばね291は、開閉蓋3がロック状態でない場合に、センサ28がリブ36を検出しないように本体2と開閉蓋3を互いに離反する方向に付勢する。具体的には、コイルばね291は、開閉蓋3がロック状態にない場合に、開閉蓋3の自重に抗して開閉蓋3を押し上げる。コイルばね291は、付勢部材の一例である。
【0035】
可動体292は、柱状部293、下面部294、および上面部295を備える。
【0036】
柱状部293は、台座部200に形成された貫通孔201を貫通する。また、柱状部293にはコイルばね291が巻回されている。
【0037】
下面部294は、柱状部293の下端に連結して設けられ、台座部200の貫通孔201よりも径の大きな形状に形成されている。下面部294は、可動体292がコイルばね291によって押し上げられた際に、台座部200に当接して可動体292の上方への移動を規制する。
【0038】
上面部295は、柱状部293の上端に連結して設けられ、本体2の上面に露出して設けられる。また、上面部295は、コイルばね291よりも径の大きな形状に形成されており、コイルばね291の上端部が当接する。このため、上面部295は、コイルばね291によって上方への付勢力が加えられている。
【0039】
コイルばね291は、上面部295に開閉蓋3が当接して開閉蓋3の自重がリフター29に加わった際に、リブ36が検出ラインX上に位置しないように開閉蓋3を押し上げることが可能な弾性力を備えている。すなわち、開閉蓋3が閉められているがロック状態でない場合、
図6に示すように、開閉蓋3が可動体292の上面部295に当接して、開閉蓋3の自重がリフター29に加わるが、コイルばね291の付勢力により開閉蓋3は押し上げられてリブ36は検出ラインX上に位置しない。
【0040】
一方、この状態から、ユーザが開閉蓋3を押し下げると、コイルばね291は台座部200と上面部295との間で圧縮する。そして、ロックレバー34の係止爪343がフック27に係止されて開閉蓋3がロック状態になると、
図7に示すように、リブ36は検出ラインX上まで下降する。
【0041】
次に、
図8は、サーマルプリンタ1のハードウェア構成を示すブロック図である。サーマルプリンタ1は、制御部50と、メモリ60部と、入出力コントローラ70と、通信I/F(Interface)80等を備える。制御部50、メモリ部60、入出力コントローラ70、通信I/F80はバス90を介して互いに接続されている。
【0042】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53を備えたコンピュータで構成される。CPU51、ROM52、RAM53は、バス90を介して互いに接続されている。
【0043】
CPU51は、サーマルプリンタ1の全体の動作を制御する。ROM52は、CPU51の駆動に用いられるプログラムなどの各種プログラムや各種データを記憶する。RAM53は、CPU51のワークエリアとして使用され、ROM52やメモリ部60に記憶された各種プログラムや各種データを展開する。制御部50は、CPU51がROM52やメモリ部60に記憶されRAM53に展開された制御プログラムに従って動作することによって、サーマルプリンタ1の各種制御処理を実行する。
【0044】
メモリ部60は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Memory)などで構成される。メモリ部60は、サーマルプリンタ1として機能するための制御プログラムの他、各種制御プログラム等を記憶する。
【0045】
入出力コントローラ70は、サーマルヘッド35、搬送モータ71、およびセンサ28と接続される。入出力コントローラ70は、接続されるハードウェアに対する入出力インターフェイスとしての機能とこれらハードウェアを制御するための機能とを備えている。これにより、制御部50は、入出力コントローラ70を介して、サーマルヘッド35、搬送モータ71、センサ28とそれぞれ情報(データ)の送受信が可能であるとともに、制御部50の指示に基づいてこれらハードウェアを制御可能となっている。
【0046】
通信I/F80は、外部機器と接続するためのインターフェイスであり、上位装置であるPCに接続される。これにより、制御部50は、通信I/F80を介してPCと情報(データ)の送受信が可能である。
【0047】
次に、サーマルプリンタ1の制御部50の機能構成について説明する。
図9は、制御部50の機能構成の一例を示すブロック図である。制御部50は、CPU51がROM52やメモリ部60に記憶された制御プログラムにしたがって動作することで、検出部501、印刷制御部502、および搬送制御部503として機能する。なお、これら各機能をハードウェアで構成してもよい。
【0048】
検出部501は、本体2または開閉蓋3の何れか一方に設けられたセンサ28が他方に設けられた被検出部を検出することで、サーマルヘッド35とプラテン26との所定の圧接状態を検出する。具体的には、検出部501は、本体2に設けられた各センサ28の両方から、開閉蓋3に設けられたリブ36を検出したことを示す信号を受付けることで、サーマルヘッド35とプラテン26とが所定の圧接状態にあることを検出する。開閉蓋3のロック状態のときにサーマルヘッド35とプラテン26とが所定の圧接状態となるので、検出部501は、開閉蓋3のロックレバー34が本体のフック27に係止されたロック状態を検出する、ということもできる。また、検出部501は、各センサ28の少なくとも一方から、リブ36を検出しないことを示す信号を受付けることで、サーマルヘッド35とプラテン26とが所定の圧接状態でないことを検出する。
【0049】
印刷制御部502は、通信I/F80を介してPCから受信した印刷指示および印刷データに基づいてサーマルヘッド35を制御して、例えばラベル62に印刷を行う。また、印刷制御部502は、検出部501がサーマルヘッド35とプラテン26との所定の圧接状態を検出しない場合、サーマルヘッド35による印刷を禁止する。具体的には、印刷制御部502は、検出部501によってサーマルヘッド35とプラテン26とが所定の圧接状態でないことを検出すると、印刷データの印刷前であれば印刷を開始せず、印刷中であれば印刷を停止する。
【0050】
搬送制御部503は、通信I/F80を介してPCから受信した印刷指示および印刷データに基づいて搬送モータ71を制御する。また、搬送制御部503は、検出部501が開閉蓋3のロック状態を検出しない場合、搬送モータ71を停止させる。
【0051】
上記構成に基づき、サーマルプリンタ1の動作を説明する。開閉蓋3がロックされていると、
図7に示すように、開閉蓋3がリフター29の上面部295を押圧してコイルばね291が圧縮した状態となる。このため、両センサ28がリブ36を検出して検出部501は開閉蓋3のロック状態を検出する。印刷制御部502は、検出部501の検出結果に基づいて、PCから受信した印刷データの印刷を行うようサーマルヘッド35を制御する。また、搬送制御部503も上記印刷に応じた搬送モータ71の制御を行う。このとき、開閉蓋3がロック状態であるので、サーマルヘッド35は適正な圧接力でプラテン26に圧接して印刷が行われるため、良好な印刷が実行される。
【0052】
例えば、用紙6を使い切ると、ユーザは開閉蓋3に設けられた操作子7を前側にスライドさせる。すると、操作子7のスライド動作と連動してロックレバー34が
図5の矢印A方向と反対方向に回動して、ロックレバー34の係止爪343とフック27の係止が外れて開閉蓋3のロック状態が解除される。ユーザは開閉蓋3を回動させて用紙収容部21を開放させて新たなロール状の用紙6を収容する。
【0053】
続いて、ユーザは開閉蓋3を回動させて用紙収容部21を閉塞する。このとき、ロックレバー34がフック27に係止されていないこと、すなわち開閉蓋3がロック状態でないことをユーザが気付かない場合がある。この場合、
図6に示すように、開閉蓋3の自重に抗してリフター29のコイルばね291が開閉蓋3を所定の付勢力で上方、言い換えれば、本体2と離間する方向に付勢する。このため、本体2に設けられたセンサ28が開閉蓋3に設けられたリブ36を検出せず、検出部501は、開閉蓋3がロック状態にないこと、すなわちサーマルヘッド35とプラテン26とが所定の圧接状態でないことを検出する。印刷制御部502は、検出部501の検出結果に基づいて、サーマルヘッド35を制御して印刷を禁止する。なお、サーマルプリンタ1は、開閉蓋3がロック状態でないことを、例えば表示あるいは音声等で報知する報知部を備えてもよい。
【0054】
ユーザは、開閉蓋3がロック状態でないことを認識すると、開閉蓋3を下方に押し下げる。開閉蓋3によって、リフター29の上面部295が押し下げられ、コイルばね291は台座部200と上面部295との間で圧縮する。そして、
図5に示すように、ロックレバー34の係止爪343がフック27に係止されて開閉蓋3がロック状態となる。すると、
図7に示すように、本体2に設けられたセンサ28が開閉蓋3に設けられたリブ36を検出し、検出部501は、開閉蓋3がロック状態であることを検出する。検出部501の検出結果に基づいて、印刷制御部502はサーマルヘッド35を制御してラベルへの印刷を行うとともに、搬送制御部503は搬送モータを制御して適宜用紙6を搬送する。
【0055】
以上説明したとおり、本実施形態のサーマルプリンタ1は、サーマルヘッド35とプラテン26との所定の圧接状態を検出するための構成として、本体2または開閉蓋3の何れか一方に設けられたセンサ28が他方に設けられた被検出部であるリブ36を検出する構成を採用している。このため、例えば、プラテンの回転を検出することで開閉蓋3のロック状態を検出するものに比べて、搬送モータを駆動することなく検出できるという利点がある。
【0056】
また、本実施形態のサーマルプリンタ1は、開閉蓋3がロック状態でない場合に、センサ28がリブ36を検出しないように、本体2と開閉蓋3を互いに離反する方向に付勢するコイルばね291を有するリフター29を備える。より詳細には、コイルばね291の付勢力は、リフター29に開閉蓋3の自重が加わっても、リブ36がセンサ28の検出ラインXまで達しないように設定されている。このため、開閉蓋3がロック状態でない場合にセンサ28がリブ36を検出してしまうことを防止するので、サーマルヘッド35とプラテン26とが所定の圧接状態でない場合に印刷がなされることを抑制できる。したがって、サーマルヘッド35のプラテン26に対する不適正な圧接力に起因する印刷不良を抑制することができる。
【0057】
さらに、本実施形態のサーマルプリンタ1は、コイルばね291を有するリフター29を開閉蓋3でなく本体2に設けている。このため、開閉蓋3を開閉する際に、開閉蓋3の回動による遠心力でリフター29が開閉蓋3から出没するようなことがなく、開閉蓋3の開閉操作を良好にすることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、本体2が一端側(前後方向の後端側)で開閉蓋3を回動可能に支持し、コイルばね291を有するリフター29は、本体2の他端側(前後方向の前端側)に位置して設けられている。このため、開閉蓋3がロック状態でない場合に、コイルばね291は小さな付勢力で開閉蓋3を自重に抗して押し上げることができる。
【0059】
しかも、本実施形態によれば、コイルばね291を有するリフター29は、開閉蓋3が用紙収容部21を閉塞した状態で、センサ28に近接する位置に設けられている。このため、開閉蓋3がロック状態でない場合に、確実にセンサ28とリブ36を離間させることができる。例えば、リフター29を回動支持部4に近接して設けた場合など、センサ28とリフター29との距離が大きいと、リフター29の取り付け精度のばらつき等がセンサ28によるリブ36の検出に与える影響が大きくなるが、本実施形態では、上記影響を抑えることができる。したがって、サーマルヘッド35のプラテン26に対する不適正な圧接力に起因する印刷不良をより確実に抑制することができる。
【0060】
加えて、本実施形態によれば、センサ28は、プラテン26の延びる方向において、プラテン26の両側にそれぞれ設けられ、かつ、検出部501は、センサ28のいずれもがリブ36を検出した場合にサーマルヘッド35とプラテン26との所定の圧接状態を検出する。このため、検出部501は、サーマルヘッド35がプラテン26の全幅にわたって適正に圧接されていることを検出できる。また、コイルばね291を有するリフター29は、プラテン26の延びる方向において、プラテン26の片側にのみ設けられる。このため、リフター29をセンサ28それぞれに対応して設けた場合に比べて、リフター29の付勢力を小さくすることができる。したがって、ユーザが開閉蓋3をロック状態にする際の操作力を小さくすることができ、開閉蓋3のロック操作を容易にすることができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 サーマルプリンタ
2 本体
3 開閉蓋
26 プラテン
27 フック(係止部)
28 センサ
35 サーマルヘッド
36 リブ(被検出部)
291 コイルばね(付勢部材)
501 検出部
502 印刷制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】