(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】液圧機器
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
F16K27/00 Z
(21)【出願番号】P 2020142734
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 俊介
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-12624(JP,A)
【文献】特開2013-29184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
F16K 5/00- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの第1端面に形成される座繰り穴と、
前記座繰り穴の底面に開口し内部を作動液が通過する液圧通路と、
前記座繰り穴に収容され前記液圧通路の前記開口を封止するプラグと、を備え、
前記ハウジングには、前記座繰り穴に連通し前記ハウジングにおいて前記第1端面とは異なる第2端面に開口する連通溝が形成されることを特徴とする液圧機器。
【請求項2】
前記液圧機器は、一方向に沿って隣接して設けられる複数のバルブを備えるバルブブロックを構成する前記バルブであって、
前記ハウジングは、平坦に形成されて隣接する前記バルブの前記ハウジングに取り付けられる取付面をさらに有し、
前記第2端面は、前記取付面とは異なる面であることを特徴とする請求項1に記載の液圧機器。
【請求項3】
前記ハウジングは、
前記取付面に対して垂直に接続されるベース面と、
基端が前記ベース面に接続され前記基端から前記ベース面の垂直方向に突出する突出部と、をさらに有し、
前記第1端面は、前記突出部の先端に形成され、
前記第2端面は、前記第1端面と前記ベース面とを接続するように形成されることを特徴とする請求項2に記載の液圧機器。
【請求項4】
前記第2端面は、前記ベース面と垂直かつ前記取付面に対して傾斜する傾斜面であり、
前記連通溝は、前記傾斜面に開口することを特徴とする請求項3に記載の液圧機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液圧機器として、バルブ本体にスプールが摺動自在に組み込まれる切換弁が開示されている。この切換弁では、バルブ本体の端面に座繰り穴が形成され、油通路が座繰り穴に開口する。油通路の開口は、座繰り穴に収容されるプラグによって封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の切換弁では、プラグは、バルブ本体の端面から突出するように設けられている。バルブ本体の端面から突出するプラグは、バルブの取り付けの際に他の機器等との干渉を生じる可能性がある。よって、座繰り穴の座繰り深さを深く形成して、バルブ本体からのプラグの突出量を低減させることがある。
【0005】
一方、液圧機器では、油浸した状態で内部にエアを供給して、エアの漏れが生じないかを確認する耐圧検査が実施される。この際、座繰り穴の座繰り深さが深く形成されていると、液圧機器を油から取り出した際に油が座繰り穴内に残存することがある。従来では、座繰り穴内に残存する油の除去に工数を要しており、耐圧検査の効率の低下を招くことがあった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、液圧機器における耐圧検査の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液圧機器であって、ハウジングと、ハウジングの第1端面に形成される座繰り穴と、座繰り穴の底面に開口し内部を作動液が通過する液圧通路と、座繰り穴に収容され液圧通路の開口を封止するプラグと、を備え、ハウジングには、座繰り穴に連通しハウジングにおいて第1端面とは異なる第2端面に開口する連通溝が形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明では、座繰り穴に連通溝が連通しているため、耐圧検査時に使用される油が座繰り穴内に残存しても、連通溝を通じて座繰り穴から排出することができる。これにより、座繰り穴内に残存する油の除去作業を低減することができる。
【0009】
また、本発明は、液圧機器が、一方向に沿って隣接して設けられる複数のバルブを備えるバルブブロックを構成するバルブであって、ハウジングは、平坦に形成されて隣接するバルブのハウジングに取り付けられる取付面をさらに有し、第2端面は、取付面とは異なる面であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、ハウジングが、取付面に対して垂直に接続されるベース面と、基端がベース面に接続され基端からベース面の垂直方向に突出する突出部と、をさらに有し、第1端面が、突出部の先端に形成され、第2端面が、第1端面とベース面とを接続するように形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、第2端面が、ベース面と垂直かつ取付面に対して傾斜する傾斜面であり、連通溝が、傾斜面に開口することを特徴とする。
【0012】
これらの発明では、連通溝は、取付面とは異なる第2端面に開口するため、座繰り穴内の油の連通溝を通じた排出が、隣接するバルブによって阻害されることを抑制できる。したがって、座繰り穴内の油を効率的に排出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液圧機器における耐圧検査の効率が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るバルブブロックの平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るバルブを
図1中矢印B方向からみた側面図である。
【
図4】本発明の実施形態の変形例に係るバルブブロックの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る液圧機器としてのバルブ(以下、「第1バルブ100」と称する。)及びこれを備えるバルブブロック101について説明する。
【0016】
図1に示すように、バルブブロック101は、第1バルブ100を含む複数のバルブ(以下、バルブブロック101を構成する第1バルブ100以外のバルブをそれぞれ「第2バルブ102」と称する。)が一方向(
図1中左右方向)に沿って隣接して設けられて構成される。つまり、バルブブロック101は、複数のバルブが一方向に沿って積層した構造である。バルブブロック101は、例えば、建設機械の流体圧制御装置に適用される。バルブブロック101を構成する第1バルブ100及び第2バルブ102は、それぞれ独立したハウジングを備え、ハウジングがボルト(図示省略)等の手段によって連結されることで、一体的なバルブブロックとして構成される。
【0017】
第1バルブ100は、隣接する第2バルブ102と連結されるハウジング10を備える。ハウジング10には、
図2に示すように、内部を作動液としての作動油が通過する油圧通路20(液圧通路)が形成される。ハウジング10の内部には、スプール等の弁体(図示省略)が設けられ、弁体が移動することによって油圧通路20の作動油の流れが制御される。
【0018】
ハウジング10は、略直方体に形成される本体部11と、本体部11の一端面であるベース面13から突出する突出部15と、を有する。
【0019】
本体部11は、
図1及び
図3に示すように、平坦に形成されて隣接する第2バルブ102に取り付けられる一対の取付面12a,12bと、一対の取付面12a,12bを接続するベース面13と、一対の取付面12a,12bとベース面13とにそれぞれ垂直に接続される一対のハウジング側面14a,14bと、を有する。なお、
図3は、第1バルブ100を
図1における矢印B方向からみた側面図である。
【0020】
一対の取付面12a,12bは、バルブブロック101におけるバルブの積層方向に垂直な平面であり、互いに平行に設けられる。一対の取付面12a,12bには、隣接する第2バルブ102との間で作動油を導くためのポート(図示省略)が開口する。ベース面13は、一対の取付面12a,12bに対して略垂直に設けられる。ベース面13は、一対の取付面12a,12bに直接接続される面である。
【0021】
突出部15は、
図2に示すように、ベース面13から垂直に突出して形成される。突出部15は、基端がベース面13に接続され、ベース面13から突出した端部(先端)には、ベース面13に対して平行な先端面16が形成される。突出部15の先端面16は、突出部15の側面によってベース面13に接続される。突出部15の側面は、本体部11のベース面13と突出部15の先端面16とに垂直である。本実施形態では、突出部15の側面の一部は、バルブブロック101の積層方向に対して傾斜したテーパ状に形成される。以下、この側面を「テーパ面17」とも称する(
図1参照)。テーパ面17が傾斜面に相当する。
【0022】
突出部15の先端面16には、座繰り穴23が形成される。座繰り穴23の底部(底面23a)には、油圧通路20が開口する。座繰り穴23の径(座繰り径)は、油圧通路20の内径よりも大きく形成される。
【0023】
第1バルブ100は、座繰り穴23に収容され座繰り穴23に対する油圧通路20の開口21を封止するプラグ30を備える。
【0024】
プラグ30は、油圧通路20に挿入されてハウジング10に取り付けられる取付部31と、座繰り穴23に収容され座繰り穴23の底面23a(座繰り面)に着座するヘッド部32と、を有する。
【0025】
取付部31は、外周に雄ねじが形成されるねじ部である。取付部31の雄ねじが油圧通路20の内周に形成される雌ねじ(図示省略)に螺合し、所定の締め付け力によって締め付けられることで取付部31(プラグ30)がハウジング10に取り付けられる。また、取付部31の外周と油圧通路20の内周との間には、取付部31と油圧通路20との間を封止するシール部材(Oリング)40が設けられる。
【0026】
ヘッド部32は、取付部31の外径よりも大きな外径を有し、プラグ30のねじ締結における座面30aを取付部31との間で形成する。ヘッド部32は、座繰り穴23よりもわずかに小さな外径で形成されて座繰り穴23に収容される。よって、座繰り穴23とヘッド部32との間には隙間が形成される。また、ヘッド部32は、全体が座繰り穴23に収容される。つまり、座繰り穴23の深さは、プラグ30の軸方向におけるヘッド部32の寸法(厚さ)以上の大きさに形成される。
【0027】
図1及び
図2に示すように、突出部15の先端面16上には、座繰り穴23に連通し、先端面16とは異なるハウジング10の外形面の一部である突出部15のテーパ面17に開口する連通溝25が形成される。連通溝25は、一方向に延びる直線状の溝であり、幅(延在方向に垂直な方向の寸法)は、座繰り穴23の内径よりも小さく形成される。先端面16からの連通溝25の深さは、
図2に示すように、座繰り穴23の深さと略同一に形成される。
【0028】
ここで、バルブブロック101の製造過程では、バルブブロック101を油浸した状態で内部(油圧通路20)に加圧したエアを供給して、油圧通路20の開口からエアの漏れが生じないかを検査する耐圧検査が実施される。耐圧検査後に油からバルブブロック101を取り出すと、座繰り穴23とプラグ30のヘッド部32との隙間に油が残存することがある。特に、プラグ30のヘッド部32の全体が座繰り穴23に収容されるまで座繰り穴23が比較的深く形成されている場合には、座繰り穴23から油が抜けにくいため座繰り穴23内での油の残存量が多く、その除去にも手間がかかる。
【0029】
これに対し、本実施形態に係るバルブブロック101は、耐圧検査後にバルブブロック101を油から取り出すと、座繰り穴23内の油が連通溝25を通じて外部に排出される。よって、本実施形態に係る第1バルブ100を備えるバルブブロック101では、座繰り穴23内での油の残存を抑制することができる。
【0030】
また、連通溝25は、ハウジング10の取付面12a,12bとは異なるハウジング10の外形面であるテーパ面17に開口する。このため、第1バルブ100に隣接する第2バルブ102によって連通溝25からの油の排出が阻害されないため、効率的に座繰り穴23の油を排出することができる。
【0031】
次に、各実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の各実施形態で説明した構成を組み合わせたり、各実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0032】
上記実施形態では、ハウジング10が突出部15を有し、突出部15の先端面16に座繰り穴23が形成される。連通溝25は、突出部15の先端面16上に形成され、突出部15の側面であるテーパ面17に開口する。このように、上記実施形態では、突出部15の先端面16が第1端面に相当し、突出部15の側面であるテーパ面17が第2端面(傾斜面)に相当する。これに対し、ハウジング10が突出部15を備える構成は必須のものではなく、第1端面及び第2端面がそれぞれ先端面16及びテーパ面17である構成も必須のものではない。連通溝25は、ハウジング10を構成する外形面のうち、ハウジング10の取付面12a,12bとは異なる(取付面12a,12bとは独立した)面であることが望ましいが、取付面12a,12bに開口するものでもよい。
【0033】
例えば、
図4に示す変形例のように、ハウジング10には、突出部15が設けられなくてもよい。この場合、座繰り穴23は、ベース面13に設けられる。また、連通溝25は、取付面12a,12bとは異なるハウジング10の外形面である一方のハウジング側面14aに開口するように形成される。つまり、
図4に示す変形例では、ベース面13が第1端面に相当し、ハウジング側面14aが第2端面に相当する。よって、
図4に示す変形例であっても、第2バルブ102によって連通溝25からの油の排出が阻害されず、効率的に座繰り穴23の油を排出することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、液圧機器は、バルブブロック101を構成するバルブである。これに対し、液圧機器は、バルブに限定されず、液圧シリンダ、液圧ポンプ、液圧モータ、緩衝器などであってもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、プラグ30のヘッド部32の全体が座繰り穴23に収容される。これに対し、プラグ30のヘッド部32の一部が座繰り穴23に収容されずに露出する構成であってもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、連通溝25の深さは、座繰り穴23の深さと略同一であったが、これに限定されず、座繰り穴23内の油を排出できる限り、座繰り穴23の深さよりも浅く形成されてもよいし、深く形成されてもよい。
【0037】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0038】
第1バルブ100は、ハウジング10と、ハウジング10の第1端面(先端面16)に形成される座繰り穴23と、座繰り穴23の底面23aに開口し内部を作動油が通過する油圧通路20と、座繰り穴23に収容され油圧通路20の開口21を封止するプラグ30と、を備え、ハウジング10には、座繰り穴23に連通しハウジング10において第1端面とは異なる第2端面(テーパ面17)に開口する連通溝25が形成される。
【0039】
また、第1バルブ100では、プラグ30は、油圧通路20に挿入されてハウジング10に取り付けられる取付部31と、座繰り穴23に収容され座繰り穴23の底面23aに着座するヘッド部32と、を有し、座繰り穴23の座繰り深さは、プラグ30のヘッド部32の全体を収容する大きさに形成される。
【0040】
これらの構成では、座繰り穴23に連通溝25が連通しているため、耐圧検査時に使用される油が座繰り穴23内に残存しても、連通溝25を通じて座繰り穴23から排出することができる。これにより、座繰り穴23内に残存する油の除去作業を低減することができる。したがって、この構成によれば、第1バルブ100における耐圧検査の効率が向上される。
【0041】
また、第1バルブ100では、ハウジング10は、平坦に形成されて隣接する第2バルブ102のハウジングに取り付けられる取付面12a,12bをさらに有し、第2端面(テーパ面17)は、取付面12a,12bとは異なる端面である。
【0042】
また、第1バルブ100では、ハウジング10が、取付面12a,12bに対して垂直に接続されるベース面13と、基端がベース面13に接続され基端からベース面13の垂直方向に突出する突出部15と、をさらに有し、第1端面(先端面16)は、突出部15の先端に形成され、第2端面(テーパ面17)は、第1端面とベース面13とを接続するように形成される。
【0043】
また、第1バルブ100では、第2端面は、ベース面13と垂直かつ取付面12a,12bに対して傾斜する傾斜面(テーパ面17)であり、連通溝25は、傾斜面に開口する。
【0044】
これらの構成では、連通溝25は、取付面12a,12bとは異なる第2端面に開口するため、座繰り穴23内の油の連通溝25を通じた排出が、隣接する第2バルブ102によって阻害されることを抑制できる。したがって、座繰り穴23内の油を効率的に排出することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。本明細書において、「平行」、「垂直」等の語は、厳密な意味ではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲においてずれが許容される。
【符号の説明】
【0046】
10…ハウジング、11…本体部、12a,12b…取付面、13…ベース面(第1端面)、14a…ハウジング側面(第2端面)、15…突出部、16…先端面(第1端面)、17…テーパ面(傾斜面、第2端面)、20…油圧通路(液圧通路)、21…開口、23…座繰り穴、23a…底面、25…連通溝、30…プラグ、100…第1バルブ(液圧機器)、101…バルブブロック、102…第2バルブ(隣接するバルブ)