IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

特許7449220飛散防止システムおよび既存建物の解体方法
<>
  • 特許-飛散防止システムおよび既存建物の解体方法 図1
  • 特許-飛散防止システムおよび既存建物の解体方法 図2
  • 特許-飛散防止システムおよび既存建物の解体方法 図3
  • 特許-飛散防止システムおよび既存建物の解体方法 図4
  • 特許-飛散防止システムおよび既存建物の解体方法 図5
  • 特許-飛散防止システムおよび既存建物の解体方法 図6
  • 特許-飛散防止システムおよび既存建物の解体方法 図7
  • 特許-飛散防止システムおよび既存建物の解体方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】飛散防止システムおよび既存建物の解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20240306BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
E04G21/32 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020202336
(22)【出願日】2020-12-05
(65)【公開番号】P2022089713
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】牟田 英児
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227651(JP,A)
【文献】特開2019-183608(JP,A)
【文献】特開2015-74956(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0056152(KR,A)
【文献】市原 英樹,外7名,超高層建物における閉鎖型解体工法「テコレップシステム」の開発および実施適用,大成建設技術センター報,日本,2012年,第45号,pp.27-1~27-8,https://www.taisei.co.jp/giken/report/2012_45/paper/A045_027.pdf
【文献】三輪 明広,外1名,超高層建物解体工法の開発 その2:自昇降式外部足場システムの開発,技術研究報告,日本,戸田建設株式会社,2013年10月,第39号,pp.11-1~11-5,https://www.toda.co.jp/lucubration/pdf/v622.pdf
【文献】西岡 博之,外3名,移動架構技術を利用した新しい高層建物解体技術-旧ホテルプラザでの実施記録-,コンクリート工学,日本,日本コンクリート工学会,2013年,Vol.51, No.3,pp.265-271,https://www.jstage.jst.go.jp/article/coj/51/3/51_265/_pdf
【文献】内海 伸樹,外4名,高層建築物解体における昇降式養生システムを用いた解体工事,西松建設技報,日本,2001年,pp.79-84,https://www.nishimatsu.co.jp/solution/report/pdf/vol24/g024_14.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00
E04G 21/24
E04G 21/32
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存建物の解体時の破砕物の飛散を防止する飛散防止システムであって、
前記既存建物の解体対象階の床スラブおよび前記解体対象階の下階の床スラブには、貫通孔が形成され、
前記貫通孔に挿通されて頂部が前記解体対象階の上方に突出する複数の支柱と、
地盤面上に前記既存建物の外壁面に沿って昇降可能に設置された仮設壁と、
前記複数の支柱の頂部同士の間および前記支柱の頂部と前記仮設壁の頂部との間に展張された養生シートと、を備え、
前記養生シートは、前記複数の支柱の頂部同士の間および前記支柱の頂部と前記仮設壁の頂部との間に張られた複数のワイヤと、前記複数のワイヤ同士の間に展張されたネットと、を備え、
前記支柱は、前記解体対象階の下階の床スラブに取り付けられた昇降装置により、吊り下げ支持されつつ昇降することを特徴とする飛散防止システム。
【請求項2】
前記解体対象階の直下階の床スラブには、第1貫通孔が形成され、
前記解体対象階の2層下の階の床スラブには、第2貫通孔が形成され、
前記支柱は、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔に挿通されており、
前記第1貫通孔に設けられて前記支柱を仮支持する第1仮支持装置と、
前記第2貫通孔に設けられて前記支柱を仮支持する第2仮支持装置と、をさらに備え
前記仮設壁は、枠組足場であり、前記解体対象階の直下階の床スラブ面から4層以上の高さを有していることを特徴とする請求項1に記載の飛散防止システム。
【請求項3】
請求項2に記載の飛散防止システムを用いて、既存建物を解体する方法であって、
地盤面上に前記既存建物の外壁面に沿って仮設壁を設置するとともに、前記既存建物に前記複数の支柱を前記第1仮支持装置および前記第2仮支持装置で仮支持して、この状態で、前記複数の支柱の頂部同士の間および前記複数の支柱の頂部と前記仮設壁の頂部との間に前記複数のワイヤを張って、前記複数のワイヤ同士の間に前記ネットを展張することで、前記養生シートを完成させる第1工程と、
前記解体対象階を解体する第2工程と、
前記仮設壁を下降させるとともに、前記第1仮支持装置および前記第2仮支持装置による仮支持を解除し、この状態で、前記昇降装置により前記支柱を下降させ、その後、前記第1仮支持装置および前記第2仮支持装置により再度前記支柱を前記既存建物に仮支持する第3工程と、
前記第2工程および前記第3工程を、前記既存建物の上層階から下層階に向かって交互に繰り返す第4工程と、を備えることを特徴とする既存建物の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存建物解体時の破砕物の飛散を防止する飛散防止システム、および、この飛散防止システムを用いた既存建物の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、既存建物の解体工事中に発生する破砕物の飛散を防止するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1には、建物の側面に沿って建物の上端よりも上方に突出するように配置される4体のネット保持部と、4体のネット保持部に保持されて建物の上面を覆う防護ネットと、を備える飛散防止装置が示されている。4体のネット保持部は、互いに独立して建物に対して鉛直方向に移動可能となっている。
【0003】
特許文献2には、建物の最上階の床材および階下の床材に固定された支柱と、支柱の上方に設けられて建物を覆う飛散防止用ネットと、を備える建物の瓦礫飛散防止構造が示されている。
特許文献3には、解体フロアおよびその下層階フロアに亘って配設された養生シート支持柱挿入孔と、養生シート支持柱挿入孔に挿入されて解体フロアから上方に凸設された養生シート支持柱と、養生シート支持柱の頭頂部に支持された飛散防止養生シートと、を備える上方飛散防止養生システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-017230号公報
【文献】特開2019-127809号公報
【文献】特開2019-183608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、既存建物の解体時に破砕物の飛散を容易に防止でき、かつ、解体工事の進捗に伴って適宜昇降可能な、飛散防止システムおよび既存建物の解体方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、既存建物解体時の破砕物の飛散を防止する飛散防止システムとして、既存建物の解体対象階の床スラブおよび解体対象階の下階の複数の床スラブに貫通孔を設け、その貫通孔に支柱を挿入して、この支柱を昇降装置で吊り下げ支持しつつ昇降させることで、解体工事の進捗に伴って飛散防止システムを適宜昇降させることが可能な点に着眼して、本発明に至った。
第1の発明の飛散防止システム(例えば、後述の飛散防止システム1)は、既存建物(例えば、後述の既存建物2)の解体時の破砕物の飛散を防止する飛散防止システムであって、前記既存建物の解体対象階(例えば、後述のn階)の床スラブ(例えば、後述の床スラブ3)および前記解体対象階の下階(例えば、後述の(n-1)階、(n-2)階)の床スラブ(例えば、後述の床スラブ3A、3B)には、貫通孔(例えば、後述の貫通孔4、4A、4B)が形成され、前記貫通孔に挿通されて頂部が前記解体対象階の上方に突出する複数の支柱(例えば、後述の支柱20)と、前記複数の支柱の頂部同士の間に展張された養生シート(例えば、後述の養生シート30)と、を備え、前記支柱は、前記解体対象階の下階の床スラブに取り付けられた昇降装置(例えば、後述の電動チェーンブロック40)により、吊り下げ支持されつつ昇降することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、複数の支柱の頂部を解体対象階の上方に突出させ、これら複数の支柱の頂部同士の間に養生シートを展張することで、養生シートが既存建物を上から覆うので、既存建物の解体時に破砕物の飛散が防止される。
また、支柱を吊り下げ支持して昇降させる昇降装置を設けたので、昇降装置を駆動することで、解体工事の進捗に伴って、養生シートを円滑に昇降できる。このとき、上下に位置する貫通孔に支柱を挿通したので、支柱が貫通孔に案内されて移動し、支柱の倒れを抑制できる。
【0008】
第2の発明の飛散防止システムは、前記解体対象階の直下階(例えば、後述の(n-1)階)の床スラブ(例えば、後述の床スラブ3A)には、第1貫通孔(例えば、後述の貫通孔4A)が形成され、前記解体対象階の2層下の階(例えば、後述の(n-2)階)の床スラブ(例えば、後述の床スラブ3B)には、第2貫通孔(例えば、後述の貫通孔4B)が形成され、前記支柱は、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔に挿通されており、前記第1貫通孔に設けられて前記支柱を仮支持する第1仮支持装置(例えば、後述の仮支持装置50A)と、前記第2貫通孔に設けられて前記支柱を仮支持する第2仮支持装置(例えば、後述の仮支持装置50B)と、をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、解体対象階の直下階の床スラブに設けた第1貫通孔に、第1仮支持装置で支柱を仮支持するとともに、解体対象階の2層下の階の床スラブに設けた第2貫通孔に、第2仮支持装置で支柱を仮支持した。よって、支柱が高さ方向の2箇所で既存建物に仮支持されるため、支柱の倒れを抑制しつつ、支柱を所定の高さ位置に保持できる。
【0010】
第3の発明の既存建物の解体方法は、上述の飛散防止システムを用いて、既存建物を解体する方法であって、前記既存建物の外壁面に沿って仮設壁(例えば、後述の枠組足場10)を設置するとともに、前記既存建物に前記複数の支柱を前記複数の仮支持装置で仮支持して、この状態で、前記複数の支柱の頂部同士の間および前記複数の支柱の頂部と前記仮設壁の頂部との間に前記養生シートを展張する第1工程(例えば、後述のステップS1~S3)と、前記解体対象階を解体する第2工程(例えば、後述のステップS4)と、前記仮設壁を下降させるとともに、前記複数の仮支持装置による仮支持を解除し、この状態で、前記昇降装置により前記支柱を下降させ、その後、前記複数の仮支持装置により再度前記支柱を前記既存建物に仮支持する第3工程(例えば、後述のステップS5、S6)と、前記第2工程および前記第3工程を、前記既存建物の上層階から下層階に向かって交互に繰り返す第4工程(例えば、後述のステップS7)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、複数の支柱の頂部同士の間に養生シートを展張することで、養生シートが既存建物を上から覆って、既存建物の解体時に破砕物の飛散が防止される。また、解体工事の進捗に伴って、養生シートを適宜昇降させて、既存建物を円滑に解体できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、既存建物の解体時に破砕物の飛散を容易に防止でき、かつ、解体工事の進捗に伴って適宜昇降可能な、飛散防止システムおよび既存建物の解体方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る飛散防止システムが設けられた既存建物の側面図である。
図2図1の飛散防止システムのA-A断面図である。
図3】実施形態に係る飛散防止システムを用いた既存建物の解体方法のフローチャートである。
図4】既存建物の解体方法の説明図(その1:支柱の組み立て途中の状況)である。
図5】既存建物の解体方法の説明図(その2:支柱の組み立てが完了した状況)である。
図6】既存建物の解体方法の説明図(その3:支柱に養生シートを展張している状況)である。
図7】既存建物の解体方法の説明図(その4:解体重機で既存建物を解体している状況)である。
図8】既存建物の解体方法の説明図(その5:解体重機を下階に移動した状況)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、建物解体時の破砕物の飛散を防止する飛散防止システム、および飛散防止システムを使用した既存建物の解体方法である。飛散防止システムは、既存建物の解体対象階の床スラブおよび解体対象階の下階の複数の床スラブに設けた貫通孔に支柱を挿入し、この支柱の頂部に養生シートを展張させることで構築される。飛散防止システムによれば、既存建物を解体する際、解体工事の進捗とともに、養生シートを支持する支柱を昇降装置により下降させることで、養生シートを下階に移動させることができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る飛散防止システム1が設けられた既存建物2の側面図である。
飛散防止システム1は、既存建物2の解体時の破砕物の飛散を防止するものである。
既存建物2の外側には、この既存建物2の外壁面に沿って、仮設壁としての昇降可能な枠組足場10が設置されている。
また、既存建物2の解体対象階であるn階の床スラブ3には、貫通孔4が形成され、解体対象階の直下階である(n-1)階の床スラブ3Aには、第1貫通孔としての貫通孔4Aが形成され、解体対象階の2層下の階である(n-2)階の床スラブ3Bには、第2貫通孔としての貫通孔4Bが形成されている。また、(n-3)階の床スラブ3Cには、貫通孔4Cが形成され、(n-4)階の床スラブ3Dには、貫通孔4Dが形成されている。
【0015】
飛散防止システム1は、少なくとも貫通孔4、4A、4Bに挿通されて頂部が解体対象階であるn階の上方に突出する複数の支柱20と、複数の支柱20の頂部同士の間および支柱20の頂部と枠組足場10の頂部との間に展張された養生シート30と、支柱20を(n-1)階の床スラブ3Aから吊り下げ支持しつつ昇降させる昇降装置としての電動チェーンブロック40と、(n-1)階の貫通孔4Aに設けられて支柱20を仮支持する第1仮支持装置としての仮支持装置50Aと、(n-2)階の貫通孔4Bに設けられて支柱20を仮支持する第2仮支持装置としての仮支持装置50Bと、を備える。なお、貫通孔4C、4Dには、仮支持装置50C、50Dが設けられている。
支柱20は、所定長さの四角支柱21を上下に複数連結したものである。
養生シート30は、複数のワイヤ31と、これらワイヤ31間に展張された水平ネット32と、を備える。
【0016】
図2は、図1の飛散防止システム1のA-A断面図である。
仮支持装置50Aは、床スラブ3A上に貫通孔4Aを跨いで井桁に組まれた4本の鋼材51と、これら鋼材51に設けられたクランプ52と、を備える。井桁に組まれた4本の鋼材51で囲まれた空間は、矩形状の開口53となっており、この開口53に支柱20が挿通されている。これにより、仮支持装置50Aは、支柱20の昇降を案内するガイド機能を有する。また、クランプ52を支柱20に仮固定することにより、支柱20は、仮支持装置50Aを介して、(n-1)階の床スラブ3Aに支持される。
なお、仮支持装置50B、50C、50Dも、仮支持装置50Aと同様の構造である。
【0017】
以下、上述の飛散防止システム1を用いて、既存建物2を解体する方法について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
初期状態では、図4に示すように、既存建物2の外側に枠組足場10が設置されている。また、n階の床スラブ3に開口5が設けられて、この開口5から(n-1)階床に解体重機11が移動している。なお、枠組足場10の外側側面には、図示しない垂直ネットや防音パネルを設置されている。
【0018】
ステップS1では、図4に示すように、既存建物2の(n-2)階で支柱20を組み立てる。具体的には、まず、n階~(n-4)階までの床スラブ3、3A~3Dに、貫通孔4、4A~4Dを形成するとともに、貫通孔4A~4Dに仮支持装置50A~50Dを配置する。また、(n-1)階の床スラブ3Aの貫通孔4Aに電動チェーンブロック40を取り付ける。次に、最下段の四角支柱21を仮支持装置50Bの開口53に挿通し、この最下段の四角支柱21を電動チェーンブロック40で吊り下げ支持する。次に、電動チェーンブロック40を駆動して最下段の四角支柱21を下降させて、仮支持装置50C、50Dの開口53に挿通しながら、この最下段の四角支柱21の上に別の四角支柱21を連結して、支柱20とする。すると、図5に示す状態となる。
【0019】
ステップS2では、図6に示すように、n階にて支柱20に養生シート30を展張する。具体的には、電動チェーンブロック40を駆動して支柱20を上昇させ、支柱20がn階の床面から1m程度突出するようにする。この状態で、n階の床面上で、作業員が支柱20の頂部同士の間および支柱20の頂部と枠組足場10の頂部との間にワイヤ31を張って、このワイヤ31同士の間に水平ネット32を展張する。
ステップS3では、図1に示すように、養生シート30を所定位置にセットする。すなわち、電動チェーンブロック40を駆動して支柱20を上昇させ、養生シート30が(n-1)階の床面から10m程度突出するようにする。この状態で、仮支持装置50A、50Bで支柱20を仮支持させる。
【0020】
ステップS4では、図7に示すように、解体重機11でn階床レベルおよび(n-1)階立ち上がり躯体を解体する。
ステップS5では、図8に示すように、枠組足場10を迫り下げるとともに、解体重機11で(n-1)階の床スラブ3Aに開口5Aを設けて、この開口5Aから解体重機11を(n-2)階床に移動させる。
ステップS6では、養生シート30を下降させる。すなわち、仮支持装置50A、50Bによる支柱20の仮支持を解除し、次に、電動チェーンブロック40を駆動して支柱20を下降させ、養生シート30が(n-2)階の床面から10m程度突出するようにする。この状態で、仮支持装置50B、50Cで支柱20を仮支持させる。その後、(n-1)階の貫通孔4Aに取り付けた電動チェーンブロック40を、(n-2)階の貫通孔4Bに盛り替えるとともに、貫通孔4Aに配置した仮支持装置50Aを下層階に盛り替える。
ステップS7では、既存建物2の上層階から下層階に向かって、上述のステップS4~S6を繰り返す。
【0021】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)複数の支柱20の頂部を解体対象階であるn階の上方に突出させ、これら複数の支柱20の頂部同士の間に養生シート30を展張することで、養生シート30が既存建物2を上から覆うので、既存建物2の解体時に破砕物の飛散が防止される。
また、支柱20を吊り下げ支持して昇降させる電動チェーンブロック40を設けたので、電動チェーンブロック40を駆動することで、解体工事の進捗に伴って、養生シート30を円滑に昇降できる。このとき、上下に位置する貫通孔4、4A、4Bに支柱20を挿通したので、支柱が貫通孔4、4A、4Bに案内されて移動し、支柱20の倒れを抑制できる。
【0022】
(2)解体対象階の直下階である(n-1)階の床スラブ3Aに設けた貫通孔4Aに、仮支持装置50Aで支柱20を仮支持するとともに、解体対象階の2層下の階である(n-2)階の床スラブ3Bに設けた貫通孔4Bに、仮支持装置50Bで支柱20を仮支持した。よって、支柱20が高さ方向の2箇所で既存建物2に仮支持されるため、支柱20の倒れを抑制しつつ、支柱20を所定の高さ位置に保持できる。
【0023】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上述の実施形態では、仮支持装置50A~50Cを、床スラブ3A~3C上に貫通孔4A~4Cを跨いで井桁に組まれた4本の鋼材51と、これら鋼材51に設けられたクランプ52と、を含んで構成したが、これに限らない。すなわち、貫通孔の周囲の床スラブ上に挟持装置を設け、この挟持装置の腕材によって支柱を仮固定しても良い。
【符号の説明】
【0024】
1…飛散防止システム 2…既存建物
3、3A、3B、3C、3D…床スラブ 4、4A、4D…貫通孔
4B…貫通孔(第1貫通孔) 4C…貫通孔(第2貫通孔) 5、5A…開口
10…枠組足場(仮設壁) 11…解体重機 20…支柱 21…四角支柱
30…養生シート 31…ワイヤ 32…水平ネット
40…電動チェーンブロック(昇降装置)
50A…仮支持装置(第1仮支持装置) 50B…仮支持装置(第2仮支持装置
50C、50D…仮支持装置
51…鋼材 52…クランプ 53…開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8