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特許7449225熱可塑性樹脂組成物およびそれにより形成された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびそれにより形成された成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240306BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240306BHJP
   C08K 13/06 20060101ALI20240306BHJP
   C08K 9/06 20060101ALN20240306BHJP
   C08K 5/49 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L23/00
C08K13/06
C08K9/06
C08K5/49
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020529706
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 KR2018016864
(87)【国際公開番号】W WO2019132591
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】10-2017-0184894
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0133258
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520087103
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ウン テク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ホ クン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ソン シク
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第97/031980(WO,A1)
【文献】米国特許第06174943(US,B1)
【文献】特開2004-002737(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0079614(US,A1)
【文献】特開2000-313799(JP,A)
【文献】特開平11-181268(JP,A)
【文献】特開平08-259796(JP,A)
【文献】特開平04-085360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08L 23/00
C08K 13/06
C08K 9/06
C08K 5/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネート樹脂 100重量部;
シラン化合物で表面処理されたマイカ 20重量部~60重量部;
下記化学式1で表される繰り返し単位および下記式2で表される繰り返し単位を含む変性ポリオレフィン 0.1重量部~20重量部;ならびに
リン系難燃剤 3重量部~20重量部;を含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物であって、
前記マイカは、粒度分析装置で測定した平均粒径(D50、分布率が50%になる時点の粒径)が60μm~300μmであり、断面の長辺と短辺の比であるアスペクト比(aspect ratio)が50~150であり、
ここで、前記マイカのアスペクト比は、前記マイカの長径と前記マイカの厚さが短径となるように断面をとったときの値であり、
前記シラン化合物は、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル-トリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル-メチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピル-メチルジエトキシシラン、3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン、およびγ-クロロプロピル-トリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種である、熱可塑性樹脂組成物:
【化1】

前記化学式2において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Yは-COOR(Rは炭素数1~12のアルキル基)である。
【請求項2】
前記変性ポリオレフィンは、前記化学式1で表される繰り返し単位50重量%~95重量%および前記化学式2で表される繰り返し単位5重量%~50重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記リン系難燃剤は、ホスフェート化合物、ホスホネート化合物、ホスフィナート化合物、ホスフィンオキシド化合物およびホスファゼン化合物中の1種以上を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記マイカおよび前記変性ポリオレフィンの重量比は、3:1~40:1であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256-10e1に基づいて測定した1/8”厚の試験片のノッチアイゾット衝撃強度が3kgf・cm/cm~30kgf・cm/cmであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D790に基づいて、6.4mm厚の試験片を使用して2.8mm/minの速度で測定した曲げ弾性率が60,000kgf/cm~90,000kgf/cmであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94 vertical test方法で測定した1.5mm厚の試験片の難燃性がV-0以上であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物は、成形温度260℃、金型温度60℃、射出圧1,500kgf/cmおよび射出速度120mm/sの条件で、厚さ2mmのスパイラル(spiral)形態の金型で射出成形した後、測定した試験片のスパイラルフロー(spiral flow)の長さが250mm~300mmであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成されることを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびそれにより形成された成形品に関するものである。より詳しくは、本発明は、耐衝撃性、剛性、難燃性、流動性等に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれにより形成された成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂組成物は、ガラスおよび金属に比べて比重が低く、成形性、耐衝撃性等の物性に優れるため、電気/電子製品のハウジング、自動車の内/外装材、建築用外装材等に有用である。特に、近年の電気/電子製品の大型化、軽量化の傾向により、熱可塑性樹脂を用いたプラスチック製品が既存のガラスおよび金属の領域で急速に置き換えられている。
【0003】
近年、熱可塑性樹脂組成物を使用して製造される携帯用電子製品等が、薄膜化、軽量化されながら、外部からの衝撃等による製品破損を防ぐための高衝撃性および高剛性が同時に要求されている。しかし、剛性と耐衝撃性とは相反する特性であり、既存の熱可塑性樹脂組成物には、高剛性と高衝撃性とを同時に具現することに限界がある。
【0004】
また、熱可塑性樹脂組成物の難燃性を向上させるために、多様な無機および有機難燃剤が使用されているが、難燃剤を過量使用する場合は、耐衝撃性等が低下するおそれがある。
【0005】
よって、耐衝撃性、剛性、難燃性、流動性、これらの物性のバランス等に優れた熱可塑性樹脂組成物の開発が必要な実情にある。
【0006】
本発明の背景技術は、特開2015-059138号公報等に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐衝撃性、剛性、難燃性、流動性等に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品を提供することである。
【0009】
本発明の前記およびその他の目的は、下記で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.本発明の一つの観点は、熱可塑性樹脂組成物に関するものである。上記熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂約100重量部;シラン化合物で表面処理されたマイカ約20重量部~約60重量部;下記化学式1で表される繰り返し単位および下記化学式2で表される繰り返し単位を含む変性ポリオレフィン約0.1重量部~約20重量部;ならびにリン系難燃剤約3重量部~約20重量部;を含む:
【0011】
【化1】
【0012】
前記化学式2において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Yは-COOR(Rは炭素数1~12のアルキル基)、グリシジル変性エステル基、アリレート基、またはニトリル基(-CN)である。
【0013】
2.上記1の具体例において、上記マイカは、平均粒径が約60μm~約300μmであることができ、断面のアスペクト比(aspect ratio)が約50~約150であることができる。
【0014】
3.上記1または2の具体例において、上記変性オレフィンは、前記化学式1で表される繰り返し単位約50重量%~約95重量%、および前記化学式2で表される繰り返し単位約5重量%~約50重量%を含んでもよい。
【0015】
4.上記1~3の具体例において、上記リン系難燃剤は、ホスフェート化合物、ホスホネート化合物、ホスフィナート化合物、ホスフィンオキシド化合物、およびホスファゼン化合物の1種以上を含んでもよい。
【0016】
5.上記1~4の具体例において、上記マイカおよび上記変性ポリオレフィンの重量比は、約3:約1~約40:約1でもよい。
【0017】
6.上記1~5の具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256-10e1に基づいて測定した1/8”厚の試験片のノッチアイゾット衝撃強度が約3kgf・cm/cm~約30kgf・cm/cmであることができる。
【0018】
7.上記1~6の具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D790に基づいて、6.4mm厚の試験片を使用して2.8mm/minの速度で測定した曲げ弾性率が約60,000kgf/cm~約90,000kgf/cmであることができる。
【0019】
8.上記1~7の具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94 vertical test方法で測定した1.5mm厚の試験片の難燃性がV-0以上であることができる。
【0020】
9.上記1~8の具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、成形温度260℃、金型温度60℃、射出圧1,500kgf/cmおよび射出速度120mm/sの条件で、厚さ2mmのスパイラル(spiral)形態の金型で射出成形した後、測定した試験片のスパイラルフロー(spiral flow)の長さが約250mm~約300mmになり得る。
【0021】
10.本発明の別の観点は、成形品に関するものである。上記成形品は、上記1~9のいずれかによる熱可塑性樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、耐衝撃性、剛性、難燃性、流動性等に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれにより形成された成形品を提供する発明の効果を有する。
【0023】
発明を実施するための最善の形態
以下、本発明を詳しく説明する。
【0024】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂;(B)マイカ;(C)変性ポリオレフィン;および(D)リン系難燃剤を含む。
【0025】
本明細書において、数値範囲を表す「a~b」は「≧aで≦b」と定義する。
【0026】
(A)ポリカーボネート樹脂
本発明の一具体例によるポリカーボネート樹脂としては、通常の熱可塑性樹脂組成物に使用されるポリカーボネート樹脂を使用することができる。例えば、ジフェノール類(芳香族ジオール化合物)をホスゲン、ハロゲンホルマート、炭酸ジエステル等の前駆体と反応させることにより製造される芳香族ポリカーボネート樹脂を使用できる。
【0027】
具体例において、上記ジフェノール類としては、4,4’-ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン等を例示できるが、これに制限されるのではない。例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、または1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを使用することができ、具体的には、ビスフェノール-Aと呼ばれる2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを使用することができる。
【0028】
具体例において、上記ポリカーボネート樹脂は、分枝鎖があるものを使用することができ、例えば、重合に使用されるジフェノール類全体に対して、約0.05モル%~約2モル%の3価またはそれ以上の多官能化合物、具体的には、3価またはそれ以上のフェノール基を有する化合物を添加して製造した分枝型ポリカーボネート樹脂を使用することもできる。
【0029】
具体例において、前記ポリカーボネート樹脂は、ホモポリカーボネート樹脂、コポリカーボネート樹脂、またはこれらのブレンド形態で使用できる。また、前記ポリカーボネート樹脂は、エステル前駆体(precursor)、例えば、2官能カルボン酸の存在下で重合反応させて得られた芳香族ポリエステル-ポリカーボネート樹脂で一部または全量代替することも可能である。
【0030】
具体例において、上記ポリカーボネート樹脂は、GPC(gel permeation chromatography)で測定した重量平均分子量(Mw)が約10,000g/mol~約50,000g/mol、例えば、約15,000g/mol~約40,000g/molであることができる。上記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の流動性(加工性)等に優れ得る。
【0031】
具体例において、上記ポリカーボネート樹脂は、ISO 1133に基づいて、300℃、1.2kgの荷重条件で測定したメルトフローインデックス(Melt-flow Index:MI)が約5g/10分~約80g/10分になり得る。また、前記ポリカーボネート樹脂は、メルトフローインデックスが異なる2種以上のポリカーボネート樹脂の混合物であることができる。
【0032】
(B)マイカ
本発明のマイカ(mica)は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を損なうことなくい剛性等を向上させることができるものであり、シラン化合物で表面処理されたマイカを使用することができる。
【0033】
具体例において、上記マイカは、板状または無定形等の形態になり得、粒度分析装置(製造社:sympatec,装置名:Helos)で測定した平均粒径(D50、分布率が50%になる時点の粒径)が約60μm~約300μm、例えば、約60μm~約200μmであり得る。上記範囲から外れると、剛性(曲げ強度)等の向上効果が低下したり、外観特性等が低下したりするおそれがある。
【0034】
また、前記マイカは断面のアスペクト比(aspect ratio)が約50~約150であり得る。ここで、前記アスペクト比はマイカ断面の長辺と短辺の比である。
【0035】
具体例において、上記シラン化合物で表面処理されたマイカは、表面処理剤としてシラン化合物が適用されたものであり、シラン化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル-トリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル-メチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピル-メチルジエトキシシラン、3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン、γ-クロロプロピル-トリメトキシシラン、例えばγ-グリシドキシプロピル-トリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル-メチルジエトキシシラン等が使用できる。また、マイカにシラン化合物を表面処理する方法は、通常の方法を用いることができ、例えば、スクリーン印刷法、プリンティング法、スピンコーティング法、ディッピング法(dipping)またはインク噴射法等を用いることができる。
【0036】
具体例において、上記シラン化合物で表面処理されたマイカは、マイカ約100重量部およびシラン化合物約0.1重量部~約2重量部を含むことができる。上記範囲で熱可塑性樹脂組成物の剛性、耐衝撃性、耐熱性等に優れ得る。
【0037】
具体例において、上記マイカ(B)は、上記ポリカーボネート樹脂(A)約100重量部に対して、約20重量部~約60重量部、例えば約20重量部~約55重量部で含まれ得る。上記マイカの含有量が約20重量部未満の場合、熱可塑性樹脂組成物の剛性等が低下するおそれがあり、約60重量部を超える場合は、耐衝撃性、流動性等が低下するおそれがある。
【0038】
(C)変性ポリオレフィン
本発明の変性ポリオレフィンは、上記マイカと共に熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性等を向上させることができるものであり、ポリオレフィンを主鎖とし、グラフト形態で官能基(アルキルカルボキシレート基、グリシジル変性エステル基、アリレート基、ニトリル基等)を含む構造を有することができる。例えば、下記化学式1で表される繰り返し単位、および下記化学式2で表される繰り返し単位を含む変性ポリオレフィンを使用することができる。
【0039】
【化2】
【0040】
前記化学式2において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Yは-COOR(Rは炭素数1~12のアルキル基)、グリシジル変性エステル基、アリレート基、またはニトリル基(-CN)である。
【0041】
具体例において、上記変性ポリオレフィンは、オレフィンとアルキル(メタ)アクリレート、エチレン性不飽和基含有変性エステル、エチレン性不飽和基含有アリレートおよびアクリロニトリルの1種以上の化合物を重合して製造することができる。
【0042】
具体例において、上記変性オレフィンは、前記化学式1で表される繰り返し単位約50重量%~約95重量%、例えば約70重量%~約93重量%、および前記化学式2で表される繰り返し単位約5重量%~約50重量%、例えば約7重量%~約30重量%を含むことができる。上記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、相溶性等に優れ得る。
【0043】
具体例において、上記変性ポリオレフィンは、ランダム、ブロック、マルチブロックの共重合体形態でもよく、これらの組み合わせ形態でも使用することができる。
【0044】
具体例において、上記変性ポリオレフィンは、ASTM D1238に基づいて、190℃、2.16kgf条件で測定したメルトフローインデックスが約0.01g/10分~約40g/10分、例えば、約0.1g/10分~約10g/10分であることができる。
【0045】
具体例において、上記変性ポリオレフィン(C)は、前記ポリカーボネート樹脂(A)約100重量部に対して、約0.1重量部~約20重量部、例えば約1重量部~約10重量部で含むことができる。上記変性ポリオレフィンの含有量が約0.1重量部未満の場合、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等が低下するおそれがあり、約20重量部を超える場合は、剛性等が低下するおそれがある。
【0046】
具体例において、前記マイカ(B)および前記変性ポリオレフィン(C)の重量比(B:C)は、約3:約1~約40:約1、例えば約4:約1~約30:約1になり得る。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、剛性、これらの物性バランス等がより優れたものとなり得る。
【0047】
(D)リン系難燃剤
本発明の一具体例にかかるリン系難燃剤は、通常の熱可塑性樹脂組成物に使用されるリン系難燃剤でもよい。例えば、ホスフェート(phosphate)化合物、ホスホネート(phosphonate)化合物、ホスフィナート(phosphinate)化合物、ホスフィンオキシド(phosphine oxide)化合物、ホスファゼン(phosphazene)化合物、これらの金属塩等のリン系難燃剤が使用できる。これらは、単独で使用したり、2種以上混合したりして使用することができる。
【0048】
具体例において、上記リン系難燃剤は、下記化学式3で表される芳香族リン酸エステル系化合物(ホスフェート化合物)を含むことができる。
【0049】
【化3】
【0050】
前記化学式3において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、C6-C20(炭素数6~20)のアリール基、またはC1-C10のアルキル基が置換されたC6-C20のアリール基であり、RはC6-C20のアリーレン基またはC1-C10のアルキル基が置換されたC6-C20のアリーレン基、例えば、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノール-A、ビスフェノール-S等のジアルコールから誘導されたものであり、nは0~10、例えば0~4の整数である。
【0051】
前記化学式1で表される芳香族リン酸エステル系化合物としては、nが0の場合、ジフェニルホスフェート等のジアリールホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレノールホスフェート、トリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、トリ(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフェート、トリ(2,4-ジターシャリーブチルフェニル)ホスフェート、トリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート等を例示することができ、nが1の場合、ビスフェノール-Aビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス[ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート]、レゾルシノールビス[ビス(2,4-ジターシャリーブチルフェニル)ホスフェート]、ヒドロキノンビス[ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート]、ヒドロキノンビス[ビス(2,4-ジターシャリーブチルフェニル)ホスフェート]等を例示することができ、nが2以上のオリゴマー型リン酸エステル系化合物等でもよいが、これに制限されるのではない。これらは、単独または2種以上の混合物の形態で適用されてもよい。
【0052】
具体例において、前記リン系難燃剤(D)は、前記ポリカーボネート樹脂(A)約100重量部に対して、約3重量部~約20重量部、例えば約5重量部~約15重量部で含むことができる。前記変性ポリオレフィンの含量が約3重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性等が低下するおそれがあり、約20重量部を超える場合は、耐熱性等が低下するおそれがある。
【0053】
本発明の一具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂組成物に含まれる添加剤をさらに含むことができる。上記添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、充填剤、離型剤、核剤、安定剤、顔料、染料、これらの混合物等が例示できるが、これらに制限されるのではない。上記添加剤の使用時には、その含有量は、ポリカーボネート樹脂約100重量部に対して、約0.001重量部~約40重量部、例えば約0.1重量部~約10重量部であり得る。
【0054】
本発明の一具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、上記の構成成分を混合し、通常の二軸押出機を使用して、約200℃~約280℃、例えば約220℃~約250℃で溶融押出したペレットの形態になり得る。
【0055】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256-10e1に基づいて測定した1/8”厚の試験片のノッチアイゾット衝撃強度が約3kgf・cm/cm~約30kgf・cm/cm、例えば約3.2kgf・cm/cm~約20kgf・cm/cmであり得る。
【0056】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D790に基づいて、6.4mm厚の試験片を使用して2.8mm/minの速度で測定した曲げ弾性率が約60,000kgf/cm~約90,000kgf/cm、例えば約60,000kgf/cm~約85,000kgf/cmであり得る。
【0057】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94 vertical test方法で測定した1.5mm厚の試験片の難燃性がV-0以上であり得る。
【0058】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、成形温度260℃、金型温度60℃、射出圧1,500kgf/cmおよび射出速度120mm/sの条件で厚さ2mmのスパイラル(spiral)形態の金型で射出成形した後、測定した試験片のスパイラルフロー(spiral flow)の長さが約250mm~約300mm、例えば約265mm~約290mmであり得る。
【0059】
本発明にかかる成形品は、上記熱可塑性樹脂組成物から形成される。例えば、上記熱可塑性樹脂組成物から射出成形、押出成形、真空成形、キャステイング成形等の多様な成形方法を通じて製造することができる。このような成形方法は、本発明が属する分野の通常の知識を有する者によってよく知られている。上記成形品は、耐衝撃性、剛性、難燃性、流動性、これらの物性バランス等に優れるため、電気電子製品の内/外装材等に有用である。特に、携帯電話、ノートパソコン等の内/外装材の用途として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明するが、このような実施例は単に説明の目的のためのものであり、本発明を制限するものと解釈してはならない。
【0061】
実施例
以下、実施例および比較例で使用した各成分の仕様は次の通りである。
【0062】
(A)ポリカーボネート樹脂
重量平均分子量(Mw)が25,000g/molのビスフェノール-A型ポリカーボネート樹脂(製造社:ロッテ先端素材、製品名:SC-1190)を使用した。
【0063】
(B)無機充填剤
(B1)シラン化合物(γ-グリシドキシプロピル-トリメトキシシラン)で表面処理されたマイカ(製造社:imerys、製品名:SUZORITE(登録商標)150PO)を使用した。
【0064】
(B2)タルク(製造社:Imerys minerals、製品名:Luzenac ST30)を使用した。
【0065】
(B3)表面処理されていないマイカ(製造社:imerys,製品名:SUZORITE(登録商標)150S)を使用した。
【0066】
(C)衝撃補強剤
(C1)変性ポリオレフィン(エチレン/アルキル(メタ)アクリレート共重合体,製造社:DuPont、製品名:Elvaloy(登録商標)AC1330)を使用した。
【0067】
(C2)45重量%の平均粒径(Z-平均)が310nmのポリブタジエンゴム(PBR)に、55重量%のスチレンおよびアクリロニトリル(重量比:75/25)がグラフト共重合されたg-ABSを使用した。
【0068】
(D)難燃剤
ビスフェノール-Aジホスフェート(製造社:Yoke Chemical、製品名:BDP)を使用した。
【0069】
実施例1~5および比較例1~7
上記各構成成分を下記表1および2に記載した通りの含有量で添加した後、240℃で押出してペレットを製造した。押出はL/D=36、直径45mmの二軸押出機を使用し、製造されたペレットは80℃で3時間以上乾燥した後、6Oz射出機(成形温度230℃,金型温度:60℃)で射出して試験片を製造した。製造された試験片に対して、下記の方法で物性を評価し、その結果を下記表1および2に示した。
【0070】
物性の測定方法
(1)耐衝撃性の評価:ASTM D256-10e1に基づいて、1/8”厚の試験片のノッチアイゾット衝撃強度(単位:kgf・cm/cm)を測定した。
【0071】
(2)剛性の評価:ASTM D790に基づいて、2.8mm/minの速度で6.4mm厚の試験片の曲げ弾性率(単位:kgf/cm)を測定した。
【0072】
(3)難燃性の評価:UL-94 vertical test方法に基づいて、1.5mm厚の試験片の難燃性を測定した。
【0073】
(4)流動性の評価:成形温度260℃、金型温度60℃、射出圧1,500kgf/cmおよび射出速度120mm/sの条件で厚さ2mmのスパイラル(spiral)形態の金型で射出成形した後、試験片のスパイラルフロー(spiral flow)長さ(単位:mm)を測定した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
上記の結果から、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性、難燃性、流動性等が全て優れることが分かった。
【0077】
一方、本発明の表面処理されたマイカ(B1)の代わりにタルク(B2)を使用した比較例1の場合は、耐衝撃性、剛性等が低下することが分かり、本発明の表面処理されたマイカ(B1)の代わりに表面処理されていないマイカ(B3)を使用した比較例2の場合は、剛性等が低下することが分かった。本発明の変性ポリオレフィン(C1)の代わりにg-ABS(C2)を使用した比較例3の場合は、耐衝撃性等が低下することが分かった。本発明のマイカ(B1)を下限未満で使用した比較例4の場合は、剛性等が低下することが分かり、上限を超えて使用した比較例5の場合は、耐衝撃性、流動性等が低下することが分かった。本発明の変性ポリオレフィン(C1)を下限未満で使用した比較例6の場合は、耐衝撃性等が低下することが分かり、上限を超えて使用した比較例7の場合は、剛性、難燃性等が低下することが分かった。
【0078】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は全て本発明の領域に含まれると見なすことができる。