(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】改善された流体流れ設計を伴うPEM燃料セル
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20240306BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20240306BHJP
H01M 8/0232 20160101ALI20240306BHJP
H01M 8/026 20160101ALI20240306BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20240306BHJP
H01M 8/248 20160101ALI20240306BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20240306BHJP
H01M 8/021 20160101ALN20240306BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/02
H01M8/0232
H01M8/026
H01M8/10 101
H01M8/248
H01M8/2483
H01M8/021
(21)【出願番号】P 2020539281
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019013986
(87)【国際公開番号】W WO2019143799
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-11
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505163578
【氏名又は名称】ヌヴェラ・フュエル・セルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ガンビーニ,フィリッポ
(72)【発明者】
【氏名】ブランシェット,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ポールバヤ,オルガ
(72)【発明者】
【氏名】ドミット,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】バーガー,アンドリュー
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-123949(JP,A)
【文献】特開2010-186590(JP,A)
【文献】特開2015-035312(JP,A)
【文献】国際公開第2010/055607(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/045889(WO,A1)
【文献】特開2011-076814(JP,A)
【文献】特開2007-165257(JP,A)
【文献】特開2007-265824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸に沿って積層される複数の電気化学セルを備えた電気化学セルスタックであって、各々の電気化学セルは、
カソード触媒層、アノード触媒層、および、前記カソード触媒層と前記アノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備えた膜電極接合体と、
アノードプレートおよびカソードプレートであって、前記膜電極接合体は、前記アノードプレートと前記カソードプレートとの間に介在させられ、前記アノードプレートは、前記アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定する、アノードプレートおよびカソードプレートと、
前記カソードプレートと前記カソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、多孔質構造を含むカソード流れ場と、
アノードフィードマニホールドを含む、前記アノードプレート上の第1のマニホールドセクション、および、アノード排出マニホールドを含む、前記アノードプレート上の第2のマニホールドセクションと、
前記アノードフィードマニホールドから供給される燃料を前記アノード流れ場に分配するように構成された、前記第1のマニホールドセクションと前記アノード流れ場との間に配置される第1のアノード分配チャネルと、
前記アノード流れ場からの燃料を収集し、前記燃料を前記アノード排出マニホールドに導くように構成された、前記第2のマニホールドセクションと前記アノード流れ場との間に配置される第2のアノード分配チャネルと
を備え、
前記第1のアノード分配チャネルおよび前記第2のアノード分配チャネルは、中に配置される複数の支持特徴部を有
し、
前記支持特徴部は、前記長手方向軸に沿って、反対の両方向において前記アノードプレートから延びる、
電気化学セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学セルスタックであって、前記第1のアノード分配チャネルおよび前記第2のアノード分配チャネルは、前記長手方向軸に沿って、前記膜電極接合体と前記アノードプレートとの間に形成され、前記膜電極接合体および前記アノードプレートにより規定される、電気化学セルスタック。
【請求項3】
請求項1に記載の電気化学セルスタックであって、前記第1のアノード分配チャネルおよび前記第2のアノード分配チャネルは、前記アノード流れ場の幅を拡張する、電気化学セルスタック。
【請求項4】
請求項1に記載の電気化学セルスタックであって、前記支持特徴部は、前記第1のアノード分配チャネルおよび前記第2のアノード分配チャネルの全体を通して均一に隔置される、電気化学セルスタック。
【請求項5】
請求項1に記載の電気化学セルスタックであって、前記支持特徴部は、ディンプル形状のものである、電気化学セルスタック。
【請求項6】
請求項1に記載の電気化学セルスタックであって、前記支持特徴部の間の距離D
Cを、前記カソードプレートの厚さt
pで割った値は、約3から約50の間の範囲に及ぶ、電気化学セルスタック。
【請求項7】
請求項1に記載の電気化学セルスタックであって、前記支持特徴部の間の距離D
Cは約1.5mmであり、前記カソードプレートの厚さt
pは約0.1mmである、電気化学セルスタック。
【請求項8】
請求項1に記載の電気化学セルスタックであって、第1のアノード分配チャネルを前記アノード流れ場と流体接続する複数のオリフィス開口部をさらに備えた電気化学セルスタック。
【請求項9】
請求項
8に記載の電気化学セルスタックであって、オリフィス開口部の数は、前記アノード流れ場内のチャネルの数に対応する、電気化学セルスタック。
【請求項10】
請求項
8に記載の電気化学セルスタックであって、前記オリフィス開口部は、前記第1のアノード分配チャネル内で前記燃料への背圧を付与することを行うように構成され、前記付与することは、前記燃料が、前記電気化学セルスタックの動作の間、前記第1のアノード分配チャネルに充塞することを引き起こす、電気化学セルスタック。
【請求項11】
カソード触媒層、アノード触媒層、および、前記カソード触媒層と前記アノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備える膜電極接合体と、
アノードプレートおよびカソードプレートであって、前記膜電極接合体は、前記アノードプレートと前記カソードプレートとの間に介在させられ、前記アノードプレートは、前記アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定する、アノードプレートおよびカソードプレートと、
前記カソードプレートと前記カソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、多孔質構造を含むカソード流れ場と、
アノードフィードマニホールドを含む、前記アノードプレート上の第1のマニホールドセクション、および、アノード排出マニホールドを含む、前記アノードプレート上の第2のマニホールドセクションと、
前記アノードフィードマニホールドから供給される燃料を前記アノード流れ場に分配するように構成された、前記第1のマニホールドセクションと前記アノード流れ場との間に配置される第1のアノード分配チャネルと、
前記アノード流れ場からの燃料を収集し、前記燃料を前記アノード排出マニホールドに導くように構成された、前記第2のマニホールドセクションと前記アノード流れ場との間に配置される第2のアノード分配チャネルと
を備えた電気化学セルであって、
前記第1のアノード分配チャネルおよび前記第2のアノード分配チャネルは、中に配置される複数の支持特徴部を有し、
前記カソード流れ場は、前記カソード流れ場上の第1のカソード分配チャネルおよび第2のカソード分配チャネルの全体を通じて形成される複数の支持特徴部を含
み、
前記支持特徴部は、長手方向軸であって該長手方向軸に沿って前記電気化学セルを含む複数の電気化学セルが積層される前記長手方向軸に沿って、反対の両方向において前記アノードプレートから延びる、
電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本出願は、2018年1月17日に出願された、米国仮出願第62/618,228号の利益を主張するものであり、その米国仮出願は、その全体が参照により組み込まれている。
【0002】
[002]本開示は、電気化学セル、より詳細には、改善された流体流れ設計を伴う電気化学セルを対象とする。
【背景技術】
【0003】
[003]普通は燃料セルまたは電解セルと分類される電気化学セルは、化学反応から電流を発生させる、または、電流の流れを使用して化学反応を誘導するために使用されるデバイスである。例えば、燃料セルは、燃料(例えば、水素、天然ガス、メタノール、ガソリン、その他)および酸化剤(空気または酸素)の化学エネルギーを、電気、ならびに、熱および水の廃棄生成物へと変換する。基本的な燃料セルは、負帯電アノードと、正帯電カソードと、電解質と呼ばれるイオン伝導材料とを備える。
【0004】
[004]異なる燃料セル技術は、異なる電解質材料を利用する。プロトン交換膜(PEM)燃料セルは、例えば、電解質として高分子イオン伝導膜を利用する。水素PEM燃料セルにおいて、水素原子が、アノードにおいて電子およびプロトン(水素イオン)へと電気化学的に分けられる。電子は、次いで、回路を通ってカソードに流れ、電気を発生させ、一方で、プロトンは、電解質膜を通ってカソードに拡散する。カソードにおいて、水素プロトンは、電子および酸素(カソードに供給される)と組み合わさって、水および熱を生成する。
【0005】
[005]電解セルは、逆に動作させられる燃料セルを表す。基本的な電解セルは、外部電位が付与されるときに、水を水素および酸素ガスへと分解することにより、水素発生器として機能する。水素燃料セルまたは電解セルの基本的な技術は、電気化学的水素圧縮、精製、または膨張などの電気化学的水素操作に応用され得る。電気化学的水素操作は、水素管理に対して従前から使用される機械的システムに対する存立可能な代替案として出現した。エネルギー担体としての水素の成功裏の商業化、および、「水素経済」の長期の持続可能性は、主として、燃料セル、電解セル、および他の水素操作/管理システムの、効率およびコスト有効度に依存する。
【0006】
[006]動作において、単一の燃料セルは、一般的には、約1ボルトを発生させることができる。所望される量の電力を得るために、個々の燃料セルは、燃料セルスタックを形成するために組み合わされ、燃料セルは、順次的に一体に積層される。各々の燃料セルは、カソードと、電解質膜と、アノードとを含み得る。カソード/膜/アノード接合体は、典型的にはバイポーラプレートにより両方の側で支持される、「膜電極接合体」すなわち「MEA」の構成物である。反応物ガス、すなわち、燃料(例えば、水素)および酸化剤(例えば、空気または酸素)が、流れ場を通してMEAの電極に供給される。機械的支持を提供することに加えて、バイポーラプレート(さらには流れ場プレートまたはセパレータプレートとして知られている)は、スタック内の個々のセルを物理的に分離し、一方で、それらのセルを電気的に接続する。典型的には、燃料セルスタックは、燃料および酸化剤を、アノードおよびカソード流れ場それぞれに導くための、マニホールドおよび入口ポートを含む。燃料セルスタックは、さらには、過剰燃料および酸化剤を駆逐するための、排気マニホールドおよび出口ポートを含む。燃料セルスタックは、さらには、燃料セルスタックにより発生させられる熱を駆逐する助けとなる冷却剤流体を循環させるためのマニホールドを含み得る。
【0007】
[007]燃料セルにおいて、利用されるMEAの活性区域を最大化するために、流れ場の全体を通して、燃料および酸化剤の、十二分および均一な分配を有することが望ましく、そのことは、総体的な性能を改善する。しかし、従来技術燃料セル設計は、均一および十二分な分配を達成するために辛労してきた。加えて、燃料および酸化剤の流れ経路に沿った過剰な圧力降下を生み出さないことが望ましく、その圧力降下は、さもなければ、燃料セルスタックにより発生させられる電気エネルギーのうちの一部を消費し、燃料セルスタックの総体的な効率を減少することがある。しかるがゆえに、燃料セルの流れ設計を改善しようとする継続的な挑戦が存する。
【0008】
[008]燃料セルスタックの総体的な性能およびパワー密度を改善するための別の手立ては、燃料セルスタックの隣接するセルの間のピッチ(すなわち、間隔)、および/または、セルの厚さを低減することであり得る。セル厚さは、例えば、各々の個々の燃料セルの流れ場の厚さを低減することにより低減され得る。しかしながら、このことは、燃料セルスタックへの荷重を増大し得る、燃料セルスタックの圧縮により引き起こされる流れ経路の低減に起因する、燃料および酸化剤流れ経路に沿った過剰な圧力降下を生み出すことなしに達成するのは困難であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[009]前に述べられた事情を考慮して、本開示は、改善された流れ設計、ならびに、改善された性能およびパワー密度を有する、燃料セルおよび燃料セルスタック設計を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[010]1つの態様において、本開示は、長手方向軸に沿って積層される複数の電気化学セルを有する電気化学セルスタックを対象とする。電気化学セルは、各々、カソード触媒層、アノード触媒層、およびカソード触媒層とアノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備える膜電極接合体を含み得る。電気化学セルは、各々、アノードプレートおよびカソードプレートであって、膜電極接合体が、それらのアノードプレートとカソードプレートとの間に介在させられ、アノードプレートが、アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定する、アノードプレートおよびカソードプレートをさらに含み得る。電気化学セルは、各々さらには、カソードプレートとカソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、多孔質構造を含む、カソード流れ場を含み得る。一部の実施形態において、電気化学セルは、各々、アノードフィードマニホールドを含む第1のマニホールドセクション、および、アノード排出マニホールドを含む第2のマニホールドセクションと、アノードフィードマニホールドから供給される燃料をアノード流れ場に分配するように構成される、第1のマニホールドセクションとアノード流れ場との間に配置される第1のアノード分配チャネルと、アノード流れ場からの燃料を収集し、燃料をアノード排出マニホールドに導くように構成される、第2のマニホールドセクションとアノード流れ場との間に配置される第2のアノード分配チャネルとを含み得る。一部の実施形態において、第1のアノード分配チャネルおよび第2のアノード分配チャネルは、長手方向軸に沿って、膜電極接合体とアノードプレートとの間に形成され、膜電極接合体およびアノードプレートにより規定され得る。一部の実施形態において、第1のアノード分配チャネルおよび第2のアノード分配チャネルは、アノード流れ場の幅を拡張し得る。一部の実施形態において、第1のアノード分配チャネルおよび第2のアノード分配チャネルは、中に配置される複数の支持特徴部を有し得る。一部の実施形態において、支持特徴部は、第1のアノード分配チャネルおよび第2のアノード分配チャネルの全体を通して均一に隔置され得る。一部の実施形態において、支持特徴部は、ディンプル形状のものであり得る。一部の実施形態において、支持特徴部は、長手方向軸に沿って、反対の両方向においてアノードプレートから延び得る。一部の実施形態において、支持特徴部の間の距離DCを、カソードプレートの厚さtpで割った値は、約3から約50の間の範囲に及び得る。一部の実施形態において、支持特徴部の間の距離DCは、約1.5mmであり、カソードプレートの厚さtpは、約0.1mmである。一部の実施形態において、電気化学セルは、各々、第1のアノード分配チャネルをアノード流れ場と流体接続する複数のオリフィス開口部を含み得る。一部の実施形態において、オリフィス開口部の数は、アノード流れ場内のチャネルの数に対応し得る。一部の実施形態において、オリフィス開口部は、第1のアノード分配チャネル内で燃料への背圧を付与することを行うように構成され得るものであり、その付与することは、燃料が、電気化学セルスタックの動作の間、第1のアノード分配チャネルに充塞することを引き起こす。
【0011】
[011]別の態様において、本開示は、長手方向軸に沿って積層される複数の電気化学セルを有する電気化学セルスタックを対象とする。電気化学セルは、各々、カソード触媒層、アノード触媒層、およびカソード触媒層とアノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備える膜電極接合体と、アノードプレートおよびカソードプレートであって、膜電極接合体が、それらのアノードプレートとカソードプレートとの間に介在させられ、アノードプレートが、アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定する、アノードプレートおよびカソードプレートと、カソードプレートとカソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、多孔質構造を含む、カソード流れ場とを含み得るものであり、多孔質構造は、多孔質金属製発泡体構造であり、その多孔質金属製発泡体構造は、カソードプレートに面する多孔質金属製発泡体構造の表面内の凹所に据えられる、第1のカソード分配チャネルと、第2のカソード分配チャネルとを有し、多孔質金属製発泡体構造は、第1のカソード分配チャネルおよび第2のカソード分配チャネルの全体を通して形成される支持特徴部を含む。一部の実施形態において、支持特徴部は、ディンプル、半球形、円錐、または円柱形の形状のものであり得る。一部の実施形態において、第1のカソード分配チャネル、第2のカソード分配チャネル、および支持特徴部は、多孔質金属製発泡体構造のスタンピングにより形成され得る。一部の実施形態において、第1のカソード分配チャネルおよび第2のカソード分配チャネルは、カソード流れ場の幅に沿った酸化剤の一様な流れ分配を助長するように構成され得る。一部の実施形態において、多孔質構造は、カソードプレートに面する多孔質金属製発泡体構造の表面内へとスタンピングされた、複数の相互嵌合させられたフィードチャネルおよび排出チャネルを有し得るものであり、フィードチャネルは、第1のカソード分配チャネルにおいて開始し、第1のカソード分配チャネルと流体連通し、第2のカソード分配チャネルの方に延び、排出チャネルは、第2のカソード分配チャネルにおいて終了し、第2のカソード分配チャネルと流体連通し、第1のカソード分配チャネルの方に延びる。一部の実施形態において、フィードチャネルおよび排出チャネルの、幅および/または深さは、多孔質金属製発泡体構造の長さに沿って変動し得る。一部の実施形態において、フィードチャネルの幅は、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると狭くなり得るものであり、一方で、排出チャネルの幅は、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると広くなる。一部の実施形態において、フィードチャネルの深さは、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると減少し得るものであり、一方で、排出チャネルの深さは、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると増大する。一部の実施形態において、フィードチャネルの断面積は、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると減少し得るものであり、一方で、排出チャネルの断面積は、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると増大する。一部の実施形態において、フィードチャネルの断面積は、酸化剤が、フィードチャネルの外に流れ、多孔質金属製発泡体構造内へと拡散するレートにほぼ等しいレートで減少し得るものであり、排出チャネルの断面積は、酸化剤が、排出チャネル内へと、多孔質金属製発泡体構造の外に流れるレートにほぼ等しいレートで増大し得るものであり、以て、フィードチャネルおよび排出チャネルを通る、ほぼ一定の酸化剤の速度を維持する。一部の実施形態において、多孔質金属製発泡体構造は、フィードチャネルと排出チャネルとの間に形成されるランドセクションを含み得るものであり、ランドセクションの厚さは、多孔質金属製発泡体構造の長さに沿って変動する。
【0012】
[012]別の態様において、本開示は、カソード触媒層、アノード触媒層、およびカソード触媒層とアノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備える膜電極接合体を有する電気化学セルを対象とする。電気化学セルは、さらには、アノードプレートおよびカソードプレートであって、膜電極接合体が、それらのアノードプレートとカソードプレートとの間に介在させられ、アノードプレートが、アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定する、アノードプレートおよびカソードプレートを有し得る。電気化学セルは、カソードプレートとカソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、多孔質構造を含む、カソード流れ場をさらに含み得る。
【0013】
[013]別の態様において、本開示は、長手方向軸に沿って積層される複数の電気化学セルを有する電気化学セルスタックを対象とする。電気化学セルは、各々、カソード触媒層、アノード触媒層、およびカソード触媒層とアノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備える膜電極接合体を含み得る。電気化学セルは、各々、アノードプレートおよびカソードプレートであって、膜電極接合体が、それらのアノードプレートとカソードプレートとの間に介在させられ、アノードプレートが、アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定する、アノードプレートおよびカソードプレートをさらに含み得る。電気化学セルは、各々さらには、カソードプレートとカソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、多孔質構造を含む、カソード流れ場を含み得る。アノード流れ場を形成する複数のチャネルは、概して正方形の形状の、波形にされたチャネルであり得るものであり、複数のチャネルは、アノード触媒層を横断する燃料の流れを導くように構成される、アノード側に対し開放のアノードチャネルを含み、複数のチャネルは、さらには、冷却剤流れを導くように構成される、逆の側に対し開放の冷却剤チャネルを含む。一部の実施形態において、冷却剤チャネルは、各々、Aの冷却剤チャネル幅を有し得るものであり、アノードチャネルは、各々、Bのアノードチャネル幅を有し得るものであり、冷却剤チャネル幅Aをアノードチャネル幅Bで割った値の比率は、約1より大であり、約6未満であり得る。一部の実施形態において、冷却剤チャネル幅Aをアノードチャネル幅Bで割った値の比率は、約2より大であり、約4未満であり得る。一部の実施形態において、冷却剤チャネルおよびアノードチャネルの深さはほぼ等しく、チャネル深さはSであり、冷却剤チャネル幅Aプラスアノードチャネル幅Bが深さSで除算された値の比率は、約2より大であり、約10未満である。一部の実施形態において、動作の間に燃料セルに付与される圧縮荷重は、約10kg/cm2から約75kg/cm2の範囲に及び得る。一部の実施形態において、多孔質構造は、少なくともニッケルおよびクロムを含み得る。一部の実施形態において、多孔質構造は、60質量%から80質量%のニッケル濃度、および、20質量%から40質量%のクロム濃度を含み得るものであり、多孔質構造の少なくとも1つの表面は、約3質量%から約50質量%のクロム濃度を含み得る。一部の実施形態において、多孔質構造は、約3%から約6%のクロム濃度、約10%から約20%のスズ濃度、および、約74%から約87%のニッケル濃度を含み得る。一部の実施形態において、多孔質構造の第1の表面は、反対の第2の表面より高いクロム濃度を有し得る。一部の実施形態において、第1の表面は、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶクロム濃度を有し得るものであり、第2の表面は、約3質量%未満のクロム濃度を有する。一部の実施形態において、多孔質構造の第1の表面は、膜電極接合体に面し得る。一部の実施形態において、各々のセルのカソードプレートは、コーティングされないステンレス鋼から形成され得る。
【0014】
[014]上述の全体的な説明、および、後に続く詳細な説明の両方は、請求される際、本開示について、単に例示的および解説的であり、限定的ではないということが理解されるべきである。
【0015】
[015]本明細書に組み込まれ、本明細書の部分の構成物である、添付図面は、本開示の実施形態を例解し、説明とともに、本開示の原理を解説するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】[016]例示的な実施形態による、一体に積層される複数の電気化学セル(例えば、燃料セル)の側面概略図である。
【
図2】[017]例示的な実施形態による、
図1の隣接する燃料セルの一部分の部分的に分解された側面斜視図である。
【
図3】[018]例示的な実施形態による、燃料セルを通る燃料の流れ経路を例解する、
図2の側面斜視図である。
【
図4】[019]例示的な実施形態による、燃料セルを通る酸化剤の流れ経路を例解する、
図2の側面斜視図である。
【
図5】[020]例示的な実施形態による、隣接する燃料セルを通る冷却剤流体の流れ経路を例解する、
図2の側面斜視図である。
【
図6】[021]例示的な実施形態による、
図2のアノードプレートの正面図である。
【
図7B】[023]
図7Bは、例示的な実施形態による、燃料セルの一部分の断面概略の図である。
【
図9】[026]例示的な実施形態による、燃料セルの断面概略の図である。
【
図10】[027]例示的な実施形態による、
図2のカソードプレートの正面図である。
【
図11A】[028]例示的な実施形態による、
図2のカソード流れ場の正面図である。
【
図11B】[029]例示的な実施形態による、カソード流れ場の別の実施形態の正面図である。
【
図11C】[030]例示的な実施形態による、カソード流れ場の別の実施形態の正面図である。
【
図11D】[031]例示的な実施形態による、
図11Cの断面A-Aに沿った断面図である。
【
図11E】[032]例示的な実施形態による、
図11Cの断面B-Bに沿った断面図である。
【
図11F】[033]例示的な実施形態による、カソード流れ場の別の実施形態の正面図である。
【
図12】[034]例示的な実施形態による、隣接する燃料セルの一部分の側面斜視図である。
【
図13】[035]例示的な実施形態による、
図12のアノードプレートの正面図である。
【
図14】[036]例示的な実施形態による、
図12のカソードプレートの正面図である。
【
図15】[037]例示的な実施形態による、
図12のカソード流れ場の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[038]本開示の本例示的な実施形態に対する言及が、今から詳細に為されることになり、それらの実施形態の例が、添付図面において例解される。可能である場合はいつでも、同じ参照番号が、同じまたは類する部分を指すために、図面の全体を通して使用されることになる。電気化学セル、特に、水素、酸素、および水を用いる燃料セルとの関係において説明されるが、本開示のデバイスおよび方法は、電解セル、水素精製器、水素エキスパンダ、および水素圧縮器を含むが、それらに制限されない、様々なタイプの燃料セルおよび電気化学セルによって用いられ得るということが理解される。
【0018】
[039]本明細書の全体を通して、用語「概して平行な」および「概して垂直な」は、軸、平面、または、他の構成要素との関係において、1つまたは複数の構成要素の配置構成を説明するために使用され得る。「概して平行な」または「概して垂直な」と配置構成を説明するときに許容され得る、平行および垂直からのずれの度は変動し得る。許されるずれは、例えば、約10度未満のずれ、約5度未満のずれ、および、約3度未満のずれ、約2度未満のずれ、および、約1度未満のずれなど、約20度未満の外れであり得る。
【0019】
[040]
図1は、例示的な実施形態による、燃料セルスタック11の少なくとも一部分を形成するために、長手方向軸5に沿って一体に積層される複数の電気化学セル、例えば、燃料セル10の側面概略側面図である。燃料セル10は、一括して膜電極接合体(MEA)18と呼称され得る、さらには本明細書においてカソードと呼称され得るカソード触媒層12と、さらには本明細書においてアノードと呼称され得るアノード触媒層14と、カソード触媒層12とアノード触媒層14との間に介在させられるプロトン交換膜(PEM)16とを備えることができる。PEM16は、純粋な高分子膜、または、他の材料を伴う複合膜を含むことができ、例えば、シリカ、ヘテロポリ酸、層状金属リン酸塩、リン酸塩、およびリン酸ジルコニウムが、高分子マトリクス内に埋め込まれ得る。PEM16は、プロトンに対して透過性であり得るものであり、一方で、電子を伝導しない。カソード触媒層12およびアノード触媒層14は、触媒を内包する多孔質炭素電極を含むことができる。触媒材料、例えば白金、白金-コバルト合金、非PGMが、酸素および燃料の反応を増大することができる。一部の実施形態において、カソード触媒層12およびアノード触媒層14は、約1μmの平均孔サイズを有し得る。
【0020】
[041]燃料セル10は、2つのバイポーラプレート、例えば、カソードプレート20およびアノードプレート22を備えることができる。カソードプレート20は、カソード触媒層12に隣接して配置され得るものであり、アノードプレート22は、アノード触媒層14に隣接して配置され得る。MEA18は、カソードプレート20とアノードプレート22との間に介在させられ、それらのプレートの間で囲繞され得る。カソード区画19が、MEA18とカソードプレート20との間に形成され得るものであり、アノード区画21が、MEA18とアノードプレート22との間に形成され得る。カソードプレート20およびアノードプレート22は、電流コレクタの役割を果たし、それぞれの電極表面(例えば、アノード触媒層14およびカソード触媒層12)への燃料および酸化剤に対するアクセス流れ通路を提供し、燃料セル10の動作の間に形成される水の除去のための流れ通路を提供することができる。カソードプレート20およびアノードプレート22は、さらには、冷却剤流体(例えば、水、グリコール、または、水グリコール混合物)に対する流れ通路を規定することができる。例えば、隣接する燃料セル10のカソードプレート20とアノードプレート22との間に、冷却剤区画23が形成され得るものであり、その冷却剤区画23は、隣接する燃料セル10の間で冷却剤流体を循環させるように構成される。燃料セル10により発生させられる熱は、冷却剤流体に伝達され、冷却剤流体の循環により別のところに搬送され得る。カソードプレート20およびアノードプレート22は、例えば、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、Ni-Cr合金、グラファイト、または、任意の他の適した電気伝導性材料から作製され得る。
【0021】
[042]一部の実施形態において、例えば、
図1において例解されるように、燃料セル10は、さらには、MEA18の各々の側で、燃料セル10の中に、電気伝導性ガス拡散層(例えば、カソードガス拡散層24およびアノードガス拡散層26)を含み得る。ガス拡散層24、26は、セルの中でのガスおよび液体の輸送を可能にする拡散媒体として働き、電気的にカソードプレート20、アノードプレート22と、MEA18との間の伝導を提供し、燃料セル10からの熱およびプロセス水の除去において助力となり、一部の事例において、PEM16に対する機械的支持を提供し得る。ガス拡散層24、26は、PEM16に面する側にコーティングされるカソード触媒層12およびアノード触媒層14を伴う、織布または不織布の炭素布を含むことができる。一部の実施形態において、カソード触媒層12およびアノード触媒層14は、隣接するGDL24、26またはPEM16のいずれか上へとコーティングされ得る。一部の実施形態において、ガス拡散層24、26は、約10μmの平均孔サイズを有し得る。燃料セル10は、MEA18の各々の側に配置される流れ場をさらに含み得る。例えば、燃料セル10は、本明細書においてさらに説明されるように、カソードプレート20とGDL24との間に配置される多孔質構造を含み得るカソード流れ場28と、アノードプレート22により形成され得るアノード流れ場30とを含み得る。流れ場は、MEA18の各々の側の燃料および酸化剤が、MEA18を通って流れる、および、MEA18に達することを可能にするように構成され得る。これらの流れ場は、燃料セル10の高い性能を達成するように、カソードおよびアノード触媒層12、14への、燃料および酸化剤の均一な分配を手助けするということが望ましい。GDL24は、カソード流れ場28からのカソード触媒層12の機械的保護を提供し得る。
【0022】
[043]
図1においての1つの燃料セル10のみが、カソード触媒層12、アノード触媒層14、プロトン交換膜16、膜電極接合体(MEA)18、カソード区画19、カソードプレート20、アノード区画21、アノードプレート22、冷却剤区画23、ガス拡散層24、ガス拡散層26、カソード流れ場28、およびアノード流れ場30に対する参照番号を含むが、スタック11の他の燃料セル10は、同じ要素を含み得るということが理解されるべきである。
【0023】
[044]燃料セルスタック11は、さらには、燃料セル10の積層されるカソードプレート20およびアノードプレート22の系列により規定される長手方向軸5に沿って延びる複数の流体マニホールド31A、31Bを含み得る。流体マニホールド31A、31Bは、燃料(例えば、水素)および酸化剤(例えば、酸素)を各々の燃料セル10のMEA18にフィードし、反応物生成物(例えば、未反応の燃料、未反応の酸化剤、および水)を各々の燃料セルのMEA18から排出するために構成され得る。流体マニホールド31A、31Bは、さらには、冷却剤流体を、冷却剤区画23を通してフィードおよび排出するために構成され得る。流体マニホールド31A、31B、カソード区画19、アノード区画21、および冷却剤区画23を通る流れの方向は変動し得る。例えば、一部の実施形態において、マニホールドおよび区画を通る流れは並流であり得るものであり、一方で、他の実施形態において、流れ経路のうちの1つまたは複数は向流であり得る。例えば、一部の実施形態において、アノード区画21を通る燃料の流れは、カソード区画19を通る酸化剤の流れに対して向流であり得る。流体マニホールド31A、31Bは、通路およびポートを介してMEA18に流体接続し得る。特定のマニホールド、通路、およびポートが、本明細書において「フィード」または「排出」、および、「入口」または「出口」により識別されることがあるが、これらの名称は、流れの方向に基づいて決定され得るものであり、流れの方向は、切り替えられ得るということが理解されるべきである。流れの方向を変化させることは、これらの名称を変化させ得る。
【0024】
[045]
図2は、隣接する燃料セル10の一部分の部分的に分解された側面斜視図を示す。例えば、
図2は、1つの燃料セル10のMEA18、GDL24、およびアノードプレート22、ならびにさらには、隣接する燃料セル10のカソードプレート20、カソード流れ場28、MEA18、およびGDL24を示す。アノード区画21は、隣接するMEA18とアノードプレート22との間に形成され得る。冷却剤区画23は、隣接するアノードプレート22とカソードプレート20との間に形成され得る。カソード区画19は、隣接するカソードプレート20とMEA18との間に形成され得るものであり、カソード流れ場28を内包し得る。
図2において示されるように、燃料セル10は、さらには上部および下部流体マニホールドと呼称され得る、流体マニホールド31A、31Bを含み得る。流体マニホールド31A、31Bは、長手方向軸に沿って延び得る。
【0025】
[046]
図3~5は、1つの例解的な実施形態による、燃料セル10を通る燃料、酸化剤、および冷却流体の流れ経路を例解する。しかし、他の実施形態に対して、流れ経路のうちの1つまたは複数の方向は、例えば、流れの方向を逆にすることにより切り替えられ得るということが理解されるべきである。
図3は、燃料セル10のMEA18のアノード側を通して循環させられる燃料に対する流れ経路を例解し、
図4は、燃料セル10のMEA18のカソード側を通して循環させられる酸化剤に対する流れ経路を例解し、
図5は、隣接する燃料セル10の間で循環させられる冷却剤流体に対する流れ経路を例解する。
【0026】
[047]今から
図3を参照すると、第1の流体マニホールド31Aは、少なくとも1つのアノードフィードマニホールド32を含み得るものであり、そのアノードフィードマニホールド32は、流体接続し、燃料を、少なくとも1つのアノード入口通路34を通し、少なくとも1つのアノード入口ポート36を通し、アノード区画21内へと導き得る。アノード区画21からの燃料(例えば、未反応の燃料)は、アノード区画21から、少なくとも1つのアノード出口ポート38を通り、少なくとも1つのアノード出口通路40を通り、少なくとも1つのアノード排出マニホールド42内へと導かれ得る。アノード入口通路34およびアノード出口通路40は、隣接する燃料セル10のアノードプレート22とカソードプレート20との間に位置し得る。アノード入口通路34およびアノード出口通路40、ならびに、アノードフィードマニホールド32およびアノード排出マニホールド42の周辺部は、
図3において例解されるように、表面ガスケット43により封止され得る。表面ガスケット43は、シリコーン、Viton、Buna、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子もしくはエラストマ材料、または、任意の他の適した封止材料から作製され得る。表面ガスケット43の断面形状は、矩形、三角形、半円形、多歯(三角形)、または放物線状であり得る。形状は、容認可能なリークレート、動作圧力、許容誤差編成、または、他の有意な封止設計パラメータにより決定され得る。表面ガスケット43は、射出成形、圧縮成形、ピックアンドプレース、ロボットディスペンシングなどの任意の知られている方法によって付与され得るものであり、成形プロセスを通して、または、感圧もしくは感温接着剤の助力によって、直接的に接着され得る。表面ガスケット43の硬化は、熱硬化、紫外光硬化、または湿度硬化などの知られているプロセスにより成し遂げられ得る。
【0027】
[048]
図4において示されるように、第2の流体マニホールド31Bは、少なくとも1つのカソードフィードマニホールド44を含み得るものであり、そのカソードフィードマニホールド44は、流体接続し、酸化剤を、少なくとも1つのカソード入口通路46を通し、少なくとも1つのカソード入口ポート48を通し、カソード区画19内へと導き得る。カソード区画19からの酸化剤は、カソード区画19から、少なくとも1つのカソード出口ポート50を通り、少なくとも1つのカソード出口通路52を通り、少なくとも1つのカソード排出マニホールド54内へと導かれ得る。カソード入口通路46およびカソード出口通路52は、隣接する燃料セル10のアノードプレート22とカソードプレート20との間に位置し得る。カソード入口通路46およびカソード出口通路52、ならびに、カソードフィードマニホールド44およびカソード排出マニホールド54の周辺部は、
図4において例解されるように、表面ガスケット43により封止され得る。
【0028】
[049]
図5において示されるように、第2の流体マニホールド31Bは、少なくとも1つの冷却剤フィードマニホールド56を含み得るものであり、その冷却剤フィードマニホールド56は、流体接続し、冷却剤流体を、少なくとも1つの冷却剤入口通路58を通し、冷却剤区画23の中の冷却剤流れ場86に導き得る。冷却剤区画23の中で、冷却剤流体は、本明細書においてさらに説明されることになるように、アノードプレート22により規定される複数の冷却剤チャネルから成り立つ冷却剤流れ場86を通って、アノードプレート22とカソードプレート20との間で流れ得る。隣接する燃料セル10により発生させられる熱は、冷却剤流体に伝達され、冷却剤流体の循環により燃料セル10から除去され得る。冷却剤区画23からの冷却剤流体は、少なくとも1つの冷却剤出口通路60を通り、少なくとも1つの冷却剤排出マニホールド62内へと導かれ得る。冷却剤入口通路58および冷却剤出口通路60は、隣接する燃料セル10のアノードプレート22とカソードプレート20との間に位置し得る。冷却剤入口通路58および冷却剤出口通路60、ならびに、冷却剤フィードマニホールド56および冷却剤排出マニホールド62の周辺部は、
図5において例解されるように、表面ガスケット43により封止され得る。
【0029】
[050]
図6は、例示的な実施形態による、アノードプレート22の正面図である。
図6において可視の側は、MEA18のアノード側(すなわち、アノード触媒層14およびガス拡散層26)に面し、アノード区画21の1つの側を規定するように構成される側である(例えば、
図1および2を確認されたい)。アノードプレート22は、いろいろなセクションを含み得る。これらのセクションは、例えば、第1のマニホールドセクション31Aおよび第2のマニホールドセクション31B、分配チャネルセクション、例えば、第1のアノード分配チャネル68および第2のアノード分配チャネル70、ならびに、アノード流れ場30を含み得る。
図6において示されるように、アノードプレート22は、第1のマニホールドセクション31A内に、アノードフィードマニホールド32と、カソード排出マニホールド54と、冷却剤排出マニホールド62とを含み得るものであり、一方で、第2のマニホールドセクション31Bは、アノード排出マニホールド42と、カソードフィードマニホールド44と、冷却剤フィードマニホールド56とを含み得る。各々のマニホールドに対する入口および出口の名称は、例えば、燃料セル10を通る燃料、酸化剤、または冷却剤流体流れの、それぞれの流れ方向を切り替えることにより切り替えられ得るということが理解されるべきである。
【0030】
[051]各々のマニホールドの断面積は変動し得る。例えば、
図6において示されるように、カソードフィードおよび排出マニホールド44、54は、冷却剤フィードおよび排出マニホールド56、62より大きい断面積を有し得るものであり、一方で、冷却剤フィードおよび排出マニホールド56、62は、アノードフィードおよび排出マニホールド32、42より大きい断面積を有し得る。各々の通路の断面積は、例えば、セルの数、ピークパワー動作状況においての電流密度、反応物の設計化学量論、入口冷却剤温度と出口冷却剤温度との間の差、個々のセルの流れ抵抗、活性区域のサイズ、流体圧力、および、流体流れレートを含む、種々の変数に基づいて決定され得る。1つまたは複数の通路の断面積は、高い流体流れレートの間などの、電気化学セルスタックの長さに沿った流体圧力変動を最小化するようにサイズ設定され得る。
【0031】
[052]第1のマニホールドセクション31Aおよび第2のマニホールドセクション31Bの中のマニホールドの配置構成が、さらには変動し得る。
図6において示されるように、マニホールドの配置構成は、第1のマニホールドセクション31Aと、第2のマニホールドセクション31Bとの間で異なり得る。1つの例解的な例において、
図6において示されるように、冷却剤排出マニホールド62は、アノードフィードマニホールド32と、カソード排出マニホールド54との間に配置され得るものであり、冷却剤フィードマニホールド56は、アノード排出マニホールド42と、カソードフィードマニホールド44との間に配置され得る。一部の実施形態において、カソード排出マニホールド54は、冷却剤排出マニホールド62の左であり得るものであり、アノードフィードマニホールド32は、冷却剤排出マニホールド62の右であり得るものであり、一方で、カソードフィードマニホールド44は、冷却剤フィードマニホールド56の右であり得るものであり、アノード排出マニホールド42は、冷却剤フィードマニホールド56の左であり得る。第1のマニホールドセクション31Aと、第2のマニホールドセクション31Bとの間で、冷却剤マニホールドに相対的なアノードおよびカソードマニホールドの配置を取り替えることは有利であり得るものであり、なぜならば、そのことは、直線的横断流れよりむしろ、対角線交差向流の流れ、すなわち「z流れ」を助長するからである。対角線交差向流の流れは、アノード区画21およびカソード区画19内の、燃料および酸化剤の改善された一様な分配を提供し得るものであり、そのことは、燃料セル性能を改善し得る。性能は、対角線交差向流の流れが、利用される活性区域を最適化し得るので、改善され得る。z流れパターンによって、1つまたは複数の反応物に対する入口から出口までのストリーム経路距離は、流れ経路に関係なく、実質的に一様であり得る。この対称性は、流体が、流れ場の全体を通して一様に分布し流れることを結果的に生じさせ得る。流れ場30の全体を通しての一様な流れは、反応物組成物および冷却剤温度の、より一様な、および/または線形の勾配を結果的に生じさせ得るものであり、そのことは、セル温度の一様な、および/または線形の勾配を結果的に生じさせ得る。このことは、より高い性能、および/または、セルの間の性能においてのより低い相違を結果的に生じさせ得る。
【0032】
[053]第1の流体マニホールド31Aおよび第2の流体マニホールド31Bの中央においての冷却剤マニホールド56、62の配置は有利であり得るものであり、なぜならば、冷却剤区画の中央領域は、最も多い冷却剤流体流れを受ける公算が最も大きく、この区域は、増大される熱発生、およびまたは、より高い動作温度に対する傾向が存し得る、燃料セル10の活性区域の中央領域に対応するからである。換言すれば、より高い温度で動作する傾向があることになる燃料セル10の領域は、最も多い冷却剤流体流れを受ける領域と対応することになる。加えて、燃料セル10の側部は、周囲冷却により助力され得るものであり、そのため、各々の燃料セルの冷却剤区画23の中央領域を通る冷却剤流体流れを助長することは有利である。
【0033】
[054]
図6において示されるように、第1および第2のマニホールドセクション31A、31Bとアノード流れ場30との間に配置されるのが、第1および第2のアノード分配チャネル68、70である。第1のアノード分配チャネル68は、アノードフィードマニホールド32から供給される燃料を、アノード入口通路34を経て、アノード入口ポート36を通し、アノード流れ場30に分配するように構成され得る。第2のアノード分配チャネル70は、アノード流れ場30からの燃料(例えば、未反応の燃料)を収集し、燃料を、アノード出口ポート38を通し、アノード排出マニホールド42に、アノード出口通路40を経て導くように構成され得る。第1のアノード分配チャネル68および第2のアノード分配チャネル70は、MEA18とアノードプレート22との間のサンドイッチであり、MEA18およびアノードプレート22により規定され得る。第1のアノード分配チャネル68および第2のアノード分配チャネル70の周辺部は、
図6において例解されるように、表面ガスケット43により封止され得る。一部の実施形態において、第1のアノード分配チャネル68の幅、および、第2のアノード分配チャネル70の幅は、アノード流れ場30の幅に概して等しくあり得る。
【0034】
[055]第1のアノード分配チャネル68は、アノード入口ポート36を通して供給される燃料が、第1のアノード分配チャネル68の幅にわたって分配され、複数の開口部74を通してアノード流れ場30に導かれ得るように構成され得る。一部の実施形態において、各々の開口部74は、第1のアノード分配チャネル68の中で燃料へのいくらかの背圧を生成するためのオリフィスとして構成され得る。背圧は、第1のアノード分配チャネル68の中での燃料の分配を助長し得るものであり、以て、第1のアノード分配チャネル68が燃料によって十二分に充満させられるということを確実にする。一部の実施形態において、第1のアノード分配チャネル68を十二分に充満させることは、燃料が、開口部74のすべてを通ってアノード流れ場30の実質的にすべてのチャネルに送達されることを可能にする。第1のアノード分配チャネル68を十二分に充満させることは、アノード流れ場30を通る最も少ない抵抗の経路に沿って燃料の流れを短絡させることを防止し、または、その短絡させることのリスクを低減し得るものであり、その短絡させることは、利用されている活性区域の低減に起因して、燃料セル10の性能を低減することがある。一部の実施形態において、オリフィス開口部74は、第1のアノード分配チャネル68の十二分に充満させることを確実にするために必要とされる最小量の背圧を可能にするようにサイズ設定され得る。
図6において例解されるように、第2のアノード分配チャネル70は、第1のアノード分配チャネル68と同じに構成され得るものであり、複数のオリフィス形状の開口部74が、アノード流れ場30のチャネル、および、第2のアノード分配チャネル70を流体接続する。開口部74は、アノード流れ場30内の対応するチャネルより小さい断面積を有し得る。アノード流れ場30内のチャネルは、直線的経路として示されるが、波状またはジグザグ経路であってもよい。アノード流れ場30内のチャネルは、概して正方形、半円形、放物線状、または、任意の他の適した形状である断面積を有する。
【0035】
[056]接合の間の燃料セル10の圧縮、および、動作の間維持される圧縮された状態が、分配チャネルの中の流れ経路完全性を損なうことがある。例えば、燃料セル10の圧縮は、分配チャネルの体積が減少することを引き起こし得るものであり、そのことは、燃料、酸化剤、および冷却剤の流れを限定し、燃料セル10を通しての圧力降下を増大することがある。燃料セル10が圧縮されるときに、第1のアノード分配チャネル68および第2のアノード分配チャネル70の縮小または崩壊を、防止または最小化するために、第1のアノード分配チャネル68および/または第2のアノード分配チャネル70は、一部の実施形態において、分配チャネルの全体を通して広げられる複数の支持特徴部76を含み得る。支持特徴部76は、アノードプレート22の統合された特徴部として形成され得る。支持特徴部76は、第1のアノード分配チャネル68および第2のアノード分配チャネル70の全体を通して均一に隔置され得る。
【0036】
[057]1つの例解的な実施形態において、
図7Aは、第1のアノード分配チャネル68および/または第2のアノード分配チャネル70内に形成され得る、複数のディンプル形状の支持特徴部76の一部分の拡大図を示す。これらのディンプル形状の支持特徴部76は、長手方向軸5に沿って、両方の方向においてアノードプレート22から延びることができる。例えば、
図7Bは、アノードプレート22により形成される、ディンプル形状の支持特徴部76の断面概略を示す。ディンプル形状の支持特徴部76は、一方の側でカソードプレート20に接触し、他方の側でMEA18(例えば、MEA18のサブガスケット)に接触するように、両方の方向においてアノードプレート22から延びることができる。
図7Bにおいて示されるように、アノードプレート22とMEA18との間にあり得るのが、第1のアノード分配チャネル68または第2のアノード分配チャネル70を形成し、燃料の流れを可能にする空間である。他の実施形態において、他の支持特徴部が、例えば、円錐形状の、半球形の形状の、立方体形状の、および円柱形状のものを含む、ディンプル以外の他の形状で形成され得る。
【0037】
[058]
図7Bにおいて示されるように、アノードプレート22の反対の側で、アノードプレート22とカソードプレート20との間にあり得るのが、冷却剤フィードマニホールド56、冷却剤排出マニホールド62を、冷却剤区画23によって内包される冷却剤流れ場86と流体接続する、第1および第2の冷却剤分配チャネル78、80を形成する空間である。冷却剤区画23の第1および第2の冷却剤分配チャネル78、80は、第1および第2のアノード分配チャネル68、70と同様に構成され得る。例えば、第1および第2の冷却剤分配チャネル78、80は、全体を通して均一に隔置される複数のディンプル形状の支持特徴部76を含み得る。第1および第2の冷却剤分配チャネル78、80は、冷却剤流れ場86への十二分および一様な分配を提供するように構成され得る(例えば、
図5を確認されたい)。加えて、一部の実施形態において、複数のオリフィス形状の開口部が、第1および第2の冷却剤分配チャネル78、80を、冷却剤流れ場86と流体接続し得る(
図5を確認されたい)。これらのオリフィス形状の開口部は、例えば、一様な分配を確実にし、最も少ない抵抗の経路に沿った短絡を防止する、または、その短絡の公算を低減するために、流れの方向に依存して、第1および/または第2の冷却剤分配チャネル78、80内で、冷却剤流体へのいくらかの背圧を付与し得る。
【0038】
[059]支持特徴部76の数、分布、およびサイズは、種々の設計考慮事項を斟酌することにより決定され得る。例えば、多すぎる、または大きすぎる支持特徴部76は、分配チャネル68、70、78、80の中の過剰な圧力降下を招くことがあり、一方で、少なすぎる、または小さすぎる支持特徴部76は、不充分な構造的支持、および、圧縮下のときの分配チャネル68、70、78、80の縮小を結果的に生じさせることがあり、そのことがさらには、過剰な圧力降下を招くことがある。例示的な実施形態によれば、構造的特徴部の配置構成は、支持特徴部76の間の距離(DC)、および、カソードプレート20の厚さ(tp)の関数として表現され得る。例えば、DC/tpの比率は、約3より大であるが、約50未満であり得る。例示的な実施形態によれば、DCは、約1.5mmであり得るものであり、tpは、約0.1mmであり得るものであり、それゆえに、DC/tpの比率は、約15であり得る。
【0039】
[060]動作の間の燃料セルの圧縮に起因して、入口および出口ポート流れ面積の完全性を維持する(例えば、縮小を防止する)ことは、ガスケットが、流れ面積を生み出す、または維持するために、増して頼られる場合には難題であり得る。入口および出口ポートの縮小は、反応物および反応物生成物の流れを限定し、燃料セルを通しての圧力降下を増大することがある。本明細書において説明されるような、燃料セル10の、1つまたは複数のアノード入口および出口ポート36、38は、圧縮に起因する縮小を防止または回避するように構成され得る。
【0040】
[061]アノード入口および出口ポート36、38は、1つまたは複数の支持特徴部82へと統合され得る。例えば、
図8Aおよび8Bにおいて示されるように、アノード入口ポート36は、支持特徴部82の側壁84内に形成され得る。支持特徴部82は、アノードプレート22からMEA18の方に延び得る。結果として、燃料の流れ方向は、アノード入口および出口ポート36、38を通る流れ方向が、アノードプレート22に概して平行であるように、支持特徴部82の中で再度導かれ得る。換言すれば、この構成は、アノード入口ポート36を通る燃料が、アノードプレート22に、垂直よりむしろ概して平行な方向において、第1のアノード分配チャネル68内へと導かれることを可能にし得る。同様に、この構成は、アノード出口ポート38を通る燃料が、アノードプレート22に、垂直よりむしろ概して平行な方向において、第2のアノード分配チャネル70から導かれることを可能にし得る。
【0041】
[062]そのような構成は、アノード入口および出口ポート36、38を通る流れ経路の縮小を防止または回避することができ、なぜならば、支持特徴部82は、動作の間の圧縮に耐えるように設計され得るものであり、以て、流れに対する断面積を概して維持するからである。比較すると、しばしば従来技術燃料セルは、流れに対する間隔を維持するためにガスケットに頼り、圧縮下でこれらのガスケットは圧縮され、以て、流体流れに対して利用可能な、利用可能な面積を低減し、そのことは、以て流れを限定することにより、圧力降下の増大を引き起こす。
【0042】
[063]支持特徴部82は、任意の適した形状であり得る。例えば、
図8Aにおいて示されるような1つの例解的な実施形態において、支持特徴部82は、概して丸みを付けられた矩形の形状であり得る。他の実施形態において、支持特徴部82は、円形、卵形の形状の、正方形の形状の、その他のものであり得る。支持特徴部82は、各々、1つまたは複数のアノードポート(例えば、アノード入口ポート36およびアノード出口ポート38)を含み得る。例えば、
図8Aにおいて示されるような1つの例解的な実施形態において、支持特徴部82は、支持特徴部82の長さに沿って均一に隔置される5つのアノード入口ポート36を含み得る。
【0043】
[064]アノード流れ場30は、MEA18のアノード側のアノード触媒層14の活性区域に面し、その活性区域と位置合わせするチャネル流れ場として構成され得る。アノード流れ場30は、
図6において示されるように、第1のアノード分配チャネル68と、第2のアノード分配チャネル70との間に延びる複数の平行チャネルを含み得る。
図9は、燃料セル10の一部分の断面概略上面図である。
図9において示されるように、アノードプレート22は、概して正方形、半円柱形、または放物線状の形状の、波形にされたチャネルであり得る、複数のチャネル78A、78Cを形成するように形状設定され得る。アノード流れ場30を形成し得るアノードチャネル78Aは、アノード区画21に対し開放であり、GDL26を横断する燃料の流れを導くように構成され得るものであり、そのため、燃料は、GDL26を通って流れ、アノード触媒層14に達することができる。冷却剤流れ場86を形成し得る冷却剤チャネル78Cは、冷却剤区画23に対し開放であり、冷却剤区画23の部分であり、冷却剤区画23を通る冷却剤流体流れを導くように構成され得るものであり、そのため、燃料セル10により発生させられる熱は、冷却剤流体に伝達され、冷却剤流体の循環により燃料セル10から搬送され得る。
【0044】
[065]チャネル78A、78Cの寸法は、例えば、活性区域、パワー、燃料セル10への圧縮荷重、所望または設計される流れ抵抗、アノードおよび/またはカソードプレートの厚さおよび材料特質(例えば、弾性)、開放流れ場特質および/または厚さ、ガス拡散層特質および/または厚さ、アノード、カソード、および/または冷却剤流体に対する設計流れ抵抗を含む、数多くの変数に基づいて決定され得る。一部の実施形態において、冷却剤チャネル78Cの幅(A)は、アノード側チャネル78の幅(B)に等しくあり得る。他の実施形態において、アノードチャネル78Aの幅(B)は、冷却剤チャネル78Cの幅(A)より大であり、または、その幅(A)未満であり得る。アノードチャネル78Aおよび冷却剤チャネル78Cの組み合わされた幅は、(C)と呼称され得る。アノードチャネルおよび冷却剤チャネルは、深さ(S)を有し得る。例示的な実施形態によれば、C/Sの比率は、約1より大であり、約10未満であり得る。例示的な実施形態によれば、A/Bの比率は、約1より大から、約6未満、または、約2より大、または、約4未満の範囲に及び得る。これらの比率は、約10kg/cm2から約75kg/cm2の範囲に及ぶ圧縮に起因する機械的荷重に基づいて決定され得る。
【0045】
[066]本明細書において説明されるような、正方形の波形のチャネル設計は、改善された流体流れを提供し、一方でさらには、アノード流れ場30および冷却剤流れ場86を、アノードプレート22の反対の両側での交互のチャネルへと統合することにより、燃料セル10厚さを最小化する。この統合は、燃料セル10の総体的な厚さ(例えば、ピッチ)が低減されることを可能にする。加えて、正方形の、波形にされた幾何構造は、動作の間の圧縮下のときの変形を防止するのに充分な表面積接触部を、アノードプレート22と、GDL26およびカソードプレート20との間に提供する。例えば、チャネルが狭すぎるならば、小さい表面積は、応力集中部分の役を負うことがあり、隣接する構成要素(例えば、GDL26)を変形または損傷させることがある。同様に、三角形の形状の畝の場合のチャネルならば、三角形点が、隣接する構成要素を変形させることがある応力集中点を生み出すことがある。
【0046】
[067]
図10は、例示的な実施形態による、カソードプレート20の正面図である。
図10において可視の側は、隣接するアノードプレート22に面するように構成される側である(例えば、
図2を確認されたい)。カソードプレート20は、アノードプレート22に類して、第1のマニホールドセクション31Aと、第2のマニホールドセクション31Bとを含み得る。
図10において示されるように、アノードプレート22は、第1のマニホールドセクション31A内に、アノードフィードマニホールド32と、カソード排出マニホールド54と、冷却剤排出マニホールド62とを含み得るものであり、一方で、第2のマニホールドセクション31Bは、アノード排出マニホールド42と、カソードフィードマニホールド44と、冷却剤フィードマニホールド56とを含み得る。各々のマニホールドに対する「入口」または「出口」の名称は、例えば、燃料セル10を通る燃料、酸化剤、または冷却剤流体の流れ方向を切り替えることにより切り替えられ得るということが理解されるべきである。
【0047】
[068]カソードプレート20は、カソード区画19およびカソード流れ場28を、カソード入口通路46を介してカソードフィードマニホールド44と流体接続するように構成される、複数のカソード入口ポート48を含み得る。カソードプレート20は、さらには、カソード区画19およびカソード流れ場28を、カソード出口通路52を介してカソード排出マニホールド54と流体接続するように構成される、複数のカソード出口ポート50を含み得る。カソード入口および出口通路46、52は、隣接する燃料セル10のアノードプレート22とカソードプレート20との間に位置し得る。カソード入口および出口通路46、52、ならびに、カソードフィードおよび排出マニホールド44、54の周辺部は、
図10において例解されるように、表面ガスケット43により封止され得る。
【0048】
[069]カソード入口および出口ポート48、50は、
図10において例解されるように、概して矩形の形状のものであり得る。カソードプレート20は、
図10において例解されるように、互いに概して垂直に配置構成される少なくとも2つのカソード入口ポート48を有するように構成され得る。カソードプレート20は、
図10において例解されるように、互いに概して垂直に配置構成される少なくとも2つのカソード出口ポート50を有するように構成され得る。カソードプレート20は、カソード入口通路46の反対の両端部において配置される少なくとも1つのカソード入口ポート48を有するように構成され得る。カソードプレート20は、カソード出口通路52の反対の両端部において配置される少なくとも1つのカソード出口ポート50を有するように構成され得る。カソードプレートは、カソード入口通路46の1つの端部において配置される2つのカソード入口ポート48と、反対の端部において配置される1つのカソード入口ポート48とを有するように構成され得る。1つの端部において配置される2つのカソード入口ポート48は、互いに概して平行であり、カソード入口通路46の反対の端部において配置されるカソード入口通路46に概して垂直であり得る。本明細書において説明されるような、カソード入口ポート48の形状および配置構成は、酸化剤の、それがカソード区画19内へと流れる際の改善された分配を助長し得る。
【0049】
[070]矩形の形状のカソード入口ポート48は、丸い形状のポートと比べて有利であり得るものであり、なぜならば、ポートを通る流れは、ポートを通過する直後に90度方向転換するからである。穴の、その面積に相対的な周長がより大であるほど、流体は、より多い「スピル長(spill length)」を有し、それゆえに、その流体の速度(および圧力降下)は、その流体が方向転換を為す際に、より低い。最終的な結果は、同じ断面積を伴う、1つは丸い、および1つは矩形の、2つの穴に対し、本出願においての圧力降下は、丸いポートに対してより、矩形のポートに対して低いということである。入来する流体流れに概して面する長い縁部を伴う、矩形の向きが、さらには、より大である「スピル長」、および、より低い圧力降下を結果的に生じさせ得る。
【0050】
[071]複数のカソード入口ポート48の総合的な入口面積は、カソード出口ポート50の総合的な出口面積より大であり得る。総合的な入口面積未満の総合的な出口面積を有するカソード出口ポート50は、カソード区画19およびカソード流れ場28を通る酸化剤流れへの背圧を生成することができる。そのような背圧は、カソード区画を横断する酸化剤の改善された配分を助長し得る。
【0051】
[072]
図10において示されるように、カソードプレート20は、表面特徴部、例えば、カソード流れ場28の側部に沿って、カソードプレート20からMEA18の方に、外に突出するカソード流れ場境界88を含み得る(例えば、
図2を確認されたい)。
図10において示されるように、カソード流れ場境界88は、カソードプレート20の反対の両側部に沿って、第1の流体マニホールド31Aと、第2の流体マニホールド31Bとの間にまたがり得る。カソード流れ場境界88は、カソード流れ場28を通ってカソード触媒層12に流れることよりむしろ、カソード流れ場28の外側に沿って流れることにより、カソード流れ場28およびカソード触媒層12を迂回する酸化剤の流れを防止する、または、その流れの量を低減するように構成され得る。例えば、カソード流れ場境界88は、カソード流れ場28の各々の側部で境界壁の役割を果たすことができ、以て、カソード流れ場28を通る酸化剤流れを強制する。カソードプレート20は、カソード流れ場境界88の間の距離がカソード流れ場28の幅にほぼ等しいように構成され得る。カソード流れ場境界88は、カソード流れ場28の深さに等しい深さで、カソードプレート20から突出するように構成され得る。カソード流れ場境界88は、
図10において示されるように、丸みを付けられた、または面取りされた外方隅部を伴う、概して矩形の形状のものであり得る。カソード流れ場境界88は、流体がカソード流れ場28の周辺部長さ「に沿って流れ出る」ためのいかなる開放流れ面積も防止または制限するために、カソード流れ場28の縁部に沿って締まりばめ(tight-fit)を提供するように配置され得る。一部の実施形態において、カソード流れ場境界88は、カソードプレート20により形成され得るものであり、または、一部の実施形態において、カソード流れ場境界88は、第2の材料をカソードプレート20に付与することにより形成され得る(例えば、カソード流れ場境界88の形状でプレートにボンディングされる、高分子、エラストマ、表面ガスケット43材料)。
【0052】
[073]一部の実施形態において、表面ガスケット43をカソードプレート20およびアノードプレート22の両方に付与するよりむしろ、本明細書において説明されるすべての表面ガスケット43は、概して平坦であり得るカソードプレート20の両側に付与され得る。すべての表面ガスケット43を、平坦であり得るカソードプレート20上だけにまとめることにより、このことは、工具コストおよび処理コストの両方を低減することができる。例えば、アノードプレート22はチャネル78A、78Cを有し、そのことは、そのアノードプレート22を概して平坦にしないので、表面ガスケットをアノードプレート22に付与することは、より複雑であり、以て、工具および処理コストを増大する。
【0053】
[074]工具および処理コストをさらに低減するために、一部の実施形態において、位置合わせ特徴部112(例えば、
図6および10を確認されたい)が、燃料セルスタック11への、各々の燃料セル10を接合すること、および、複数の燃料セル10の位置合わせを手助けするために、表面ガスケット内に組み込まれ得る。例えば、アノードプレート22の位置合わせ特徴部112(
図6を確認されたい)は、カソードプレート20の位置合わせ特徴部112(
図10を確認されたい)であり得る表面ガスケット突出部と位置合わせする穴であり得る。突出部は、アノードプレート22の穴を通る挿入によって弾性変形し、他方の側で回復し得るものであり、以て、干渉はまりを形成する。干渉はまりを利用して、セル10およびスタック11を接合することは、接合プロセスにおいてのいくらかの溶接動作に対する必要性を回避することができる。
【0054】
[075]
図11Aは、例示的な実施形態による、カソード流れ場28の正面図である。
図11Aにおいて可視の側は、隣接するカソードプレート20に面するように構成される側である(例えば、
図2を確認されたい)。カソード流れ場28は、多孔質構造、特に、多孔質3次元ネットワーク構造を有する多孔質金属製発泡体構造を含み得る。多孔質構造は、2つの反対向きの表面を伴うシート形状のものであり得る。一部の実施形態において、多孔質金属製発泡体構造は、約50から500μmの平均孔サイズを有し得る。カソード流れ場28は、カソードプレート20に面する多孔質金属製発泡体構造の表面内の凹所に据えられる、第1のカソード分配チャネル90と、第2のカソード分配チャネル92とを含み得る。カソード流れ場28は、例えば約0.2mmから約1.5mmの厚さを有し得る。第1のカソード分配チャネル90および/または第2のカソード分配チャネル92は、厚さの約10%から約75%の間の深さで、カソード流れ場内の凹所に据えられ得る。
【0055】
[076]第1のカソード分配チャネル90は、カソード流れ場28の底部縁部に沿って、カソード流れ場28の一方の側から他方の側に概して延び得る。第2のカソード分配チャネル92は、カソード流れ場28の頂部縁部に沿って、カソード流れ場28の一方の側から他方の側に概して延び得る。カソード流れ場28がカソードプレート20に隣接して配置されるとき、カソード入口ポート48は、第1のカソード分配チャネル90と位置合わせされ得るものであり、カソード出口ポート50は、第2のカソード分配チャネル92と位置合わせされ得る。
【0056】
[077]カソード流れ場28は、第1のカソード分配チャネル90および/または第2のカソード分配チャネル92の全体を通して形成される複数の支持特徴部94を含み得る。支持特徴部94は、概して円柱形、ディンプル形状のもの、または、他の適した形状であり得る。1つまたは複数の支持特徴部94の高さは、第1のカソード分配チャネル90および/または第2のカソード分配チャネル92の凹所深さにほぼ等しくあり得る。第1のカソード分配チャネル90、第2のカソード分配チャネル92、および支持特徴部94は、カソード流れ場28を形成する多孔質金属製発泡体構造を、スタンピングする、圧延加工する、または、他の形で塑性変形させることにより形成され得る。
【0057】
[078]第1のカソード分配チャネル90および第2のカソード分配チャネル92は、酸化剤が多孔質金属製発泡体構造の孔内へと流れる前に沿って流れるための開放流れ経路を提供することにより、カソード流れ場28の幅に沿った酸化剤の一様な流れ分配を助長するように構成され得る。支持特徴部94は、第1のカソード分配チャネル90および第2のカソード分配チャネル92内へのカソードプレート20の変形またはたわみを、防止または低減することにより、燃料セル10が圧縮されるときに、第1のカソード分配チャネル90および第2のカソード分配チャネル92により提供される開放流れ経路を維持するために、機械的圧縮の間の、およびさらには、動作の間の適切な支持を提供するように構成され得る。
【0058】
[079]
図11B、11C、および11Fは、カソード流れ場28’、28’’、28’’’の追加的な実施形態の正面図である。一部の実施形態において、カソード流れ場28’、28’’、28’’’は、カソード流れ場28に代えて燃料セル10内で利用され得る。カソード流れ場28’、28’’、28’’’は、本明細書において説明されるようなカソード流れ場28のすべての特徴部、および、下記で説明されることになるような追加的な特徴部を含み得る。
図11B、11C、および11Fにおいて可視の側は、隣接するカソードプレート20に面するように構成される側、または、隣接するMEA18に面するように構成される側であり得る。
【0059】
[080]カソード流れ場28’、28’’は、複数のフィード(または第1の)チャネル101と、複数の排出(または第2の)チャネル102とを含み得る。フィードチャネル101および排出チャネル102は、カソードプレート20に面する表面上で、カソード流れ場28’内で、スタンピングされ、切り込み加工され、成形され、または、他の形で形成され得る。
図11Bおよび11Cにおいて示されるように、フィードチャネル101は、第1のカソード分配チャネル90において開始し、第1のカソード分配チャネル90と流体連通し、第2のカソード分配チャネル92の方に延び得る。排出チャネル102は、第2のカソード分配チャネル92において終了し、第2のカソード分配チャネル92と流体連通し、第1のカソード分配チャネル90の方に延び得る。フィードチャネル101および排出チャネル102は、
図11Bにおいて示されるように、相互嵌合させられ得るものであり、そのことによって、排出チャネル102は、隣接するフィードチャネル101の間に配置され得る。一部の実施形態において、フィードチャネル101および排出チャネル102は、改善された酸化剤分配を可能にするために、流体流れに対する障害物が実質的にないことがある。一部の実施形態において、フィードチャネル101および排出チャネル102は、第1および第2のカソード分配チャネル90、92において見出されるディンプル94と同様のディンプル(図示せず)を含み得る。
【0060】
[081]所定の実施形態において、複数のフィードチャネル101および排出チャネル102は、異なる配置構成、形状、および/または断面積を有し得るということが思索される。例えば、
図11Bにおいて、フィードおよび排出チャネル101、102の幅は、カソード流れ場28’の長さに沿って変動し得る。
図11Bにおいて、フィードチャネル101は、第1のカソード分配チャネル90において、または、第1のカソード分配チャネル90の付近で広く開始し、第2のカソード分配チャネル92の方に延びると狭くなって点になり、一方で、排出チャネルは、点において開始し、第2のカソード分配チャネル92の方に延びると広くなる。一部の実施形態において、フィードチャネル101の遠位端は、
図11Bにおいて示されるような点よりむしろ平坦であり得る。同様に、一部の実施形態において、排出チャネル102の近位端は、
図11Bにおいて示されるような点よりむしろ平坦であり得る。この配置構成によって、フィードチャネル101と排出チャネル102との間の直接的な流体連通は存しない。むしろ、第1のカソード分配チャネル90によりフィードチャネル101に分配される酸化剤は、複数のフィードチャネル101を通って流れ得るものであり、カソード流れ場28’の多孔質構造を通って、隣接する排出チャネル102に拡散することを強制され得る。
【0061】
[082]
図11Cは、カソード流れ場28’’に対するフィードチャネル101および排出チャネル102の別の配置構成を示し、フィードおよび排出チャネル101、102の幅は、カソード流れ場28’’の長さに沿ってほぼ同じままである。フィードおよび排出チャネル101、102の幅はほぼ同じままであるが、フィードおよび排出チャネル101、102の深さは、カソード流れ場28’’の長さに沿って変動し得る。例えば、
図11Dは、フィードチャネル101を通る断面A-Aに沿ったカソード流れ場28’’の断面を示す。
図11Dにおいて示されるように、フィードチャネル101は、第1のカソード分配チャネル90において、または、第1のカソード分配チャネル90の付近で最も深く(すなわち、最大深さfd
1)開始し得るものであり、深さは、第2のカソード分配チャネル92の方に延びると減少し得る。
図11Dにおいて示されるように、深さは、一定のレートで(例えば、線形に)減少し得るものであり、または、一部の実施形態において、深さは、可変のレートで(例えば、非線形に、指数関数的に)減少し得る。
図11Dにおいて示されるように、フィードチャネル101は、最小深さ(fd
2)を伴う遠位端において平坦に行き止まり得る。他の実施形態において、フィードチャネル101は、ゼロ最小深さfd
2を伴う遠位端において行き止まり得る。
【0062】
[083]
図11Eは、排出チャネル102を通る断面B-Bに沿ったカソード流れ場28’’の断面を示す。
図11Eにおいて示されるように、排出チャネル102は、第1のカソード分配チャネル90において、または、第1のカソード分配チャネル90の付近で最も浅く(すなわち、最小深さdd
1)開始し得るものであり、深さは、第2のカソード分配チャネル92の方に延びると増大し得る。排出チャネル102は、第2のカソード分配チャネル92において、または、第2のカソード分配チャネル92の付近で最も深くあり得る(すなわち、最大深さdd
2)。
図11Eにおいて示されるように、深さは、一定のレートで(例えば、線形に)増大し得るものであり、または、一部の実施形態において、深さは、可変のレートで(例えば、非線形に、指数関数的に)増大し得る。
図11Eにおいて示されるように、排出チャネル102は、最小深さ(dd
1)を伴う近位端において平坦に開始し得る。他の実施形態において、排出チャネル101は、ゼロ最小深さdd
1を伴う近位端において開始し得る。
【0063】
[084]フィードおよび排出チャネル101、102の、幅を変動させること(例えば、
図11Bを確認されたい)、または、深さを変動させること(例えば、
図11C~Eを確認されたい)により、カソード流れ場28’、28’’に沿った酸化剤の流れに対して利用可能な断面積は変動(例えば、排出チャネル102において増大、または、フィードチャネル101において減少)し得る。カソード流れ場28’、28’’の長さに沿ったフィードおよび排出チャネル101、102においての利用可能な流れ面積の増大または減少は、フィードチャネル101および排出チャネル102に沿った酸化剤の流れ速度がほぼ一定のままであるように、フィードチャネル101から多孔質構造内へと拡散し、多孔質構造から排出チャネル102内へと拡散した酸化剤の体積と対応するように構成され得る。換言すれば、フィードチャネル101の断面積は、酸化剤の速度がほぼ一定のままであるように、酸化剤が、フィードチャネル101の外に流れ、多孔質構造内へと拡散するレートに等しいレートで減少し得る。同様に、排出チャネル102の断面積は、酸化剤の速度がほぼ一定のままであるように、酸化剤が、排出チャネル102内へと、多孔質構造の外に流れるレートに等しいレートで増大し得る。一部の実施形態において、フィードおよび排出チャネル101、102の、幅および深さは、両方が変動し得る。例えば、一部の実施形態において、
図11DおよびEは、
図11Cに加えて、
図11Bの断面を表し得る。
【0064】
[085]
図11Bおよび11Cにおいて示されるように、ランドセクション104と呼称され得る、フィードチャネル101と排出チャネル102との間に形成される分離セクションが存し得る。フィードチャネル101と排出チャネル102との間のランドセクション104の厚さは固定され得るものであり、または、一部の実施形態において、厚さは変動し得る。例えば、厚さは、第1のカソード分配チャネル90に最も近いと(例えば、フィードチャネル101の近位端と、排出チャネルの遠位端との間で)最も大であり得るものであり、厚さは、第2のカソード分配チャネル92の方で減少し得る。他の実施形態において、厚さは、第1のカソード分配チャネル90に最も近いと最も薄くあり得るものであり、厚さは、第2のカソード分配チャネル92の方で増大し得る。他の実施形態において、ランドセクション104の厚さは、第1のカソード分配チャネル90と、第2のカソード分配チャネル92との間のほぼ中程で、最も厚く、または、最も薄くあり得る。
【0065】
[086]一部の実施形態において、複数のマイクロチャネル106が、ランドセクション104内に、カソード流れ場28’、28’’内に形成され得る。マイクロチャネル106は、ランドセクション104の全体長さ、または、一部分だけに沿って形成され得る。マイクロチャネル106は、カソード流れ場28’、28’’により提供される多孔質ネットワークと比較して、酸化剤に対する好まれる流れ経路を生み出すために、フィードチャネル101を排出チャネル102と流体接続するように構成され得る。これらの実施形態に対して、拡散することと連関して、または、拡散することよりむしろ、酸化剤は、マイクロチャネルを通ってフィードチャネル101から排出チャネル102に流れ得る。マイクロチャネル106は、他の形ではカソード流れ場28’、28’’のランドセクションにより陰にされることになる、触媒サイトの大部分に対する酸化剤利用可能性を提供するような手立てで、サイズ設定および隔置され得る。
【0066】
[087]フィードおよび排出チャネル101、102の数は、例えば、カソード流れ場28’、28’’の幅、フィードチャネル101の幅、排出チャネル102の幅、燃料セル10の用途、酸化剤に対する意図もしくは設計される動作圧力、酸化剤に対する意図もしくは設計される動作流れレート、燃料セル10に対する意図もしくは設計されるパワー出力、または、これらのパラメータの任意の組合せを含む、1つまたは複数の異なるパラメータに基づいて調整され得る。
【0067】
[088]カソード流れ場28’、28’’は、いくつかの利益を提示し得る。例えば、フィードチャネル101および排出チャネル102は、酸化剤が通って流れることができる、より大きい断面積を提供し、そのことは、他の多孔質流れ場構造と比較して、多孔質流れ場にわたる圧力降下を低減することができる。フィードチャネル101および排出チャネル102に加えて、マイクロチャネルが、さらには、酸化剤ガスがフィードチャネル101と排出チャネル102との間で通って流れることができる、増大された断面積を提供し得るものであり、そのことは、多孔質流れ場にわたる圧力降下をさらに低減することができる。圧力降下を低減することにより、酸化剤を加圧するために要されるエネルギー(例えば、ブロワパワー)の量が低減され得るものであり、そのことが今度は、燃料セル10の総体的な性能および効率を改善する(例えば、パワー密度を改善し、寄生負荷を低減する)ことができる。加えて、カソード流れ場28’、28’’の特徴部は、カソード流れ場の出口の付近で酸素濃度を増大するために、多孔質流れ場の中で新鮮な酸化剤を、より一様に分配し得る。(例えば、フィードチャネル101、排出チャネル102、およびマイクロチャネル)。このことは、酸化剤の入来する流れが、例えば、流れが多孔質体を通して分配されるまで、酸素に富んだままであることを可能にすることができ、そのことは、より良好なセル電圧、および、潜在的には、より高い電流密度を結果的に生じさせることができる。
【0068】
[089]カソード流れ場は、
図11Fにおいて示されるように、カソード流れ場28’’’の表面内へと形成される(例えば、プレス加工される、エンボス加工される、または、切り込み加工される)複数のチャネル110を含み得る。複数のチャネル110は、第1のカソード分配チャネル90において始まり、第2のカソード分配チャネル92の方にほぼ中途まで延びる、第1のセットのチャネル110Aを含み得る。第1のセットのチャネル110Aは、新鮮な酸化剤(例えば、まだ消費されない)が、より低い酸素濃度を酸化剤がしばしば有することがあるカソード流れ場28’’’の第2の半分体まで直接的に進行することを可能にするように構成される。第1のセットのチャネル110Aは、それらがランドの頂部上にあるように寸法設定され得る。他のチャネル110は、総体的な圧力降下を低減し、混合、および/または、一様な分配を手助けするように構成され得る。一部の実施形態に対して、カソード流れ場28’’’に対して使用される、ありふれた材料は、非一様な圧力降下および流れ特性を結果的に生じさせることになる非一様性を伴い得る。チャネル110は、より一様な圧力降下および流れ特性を可能にすることにより、この問題点に対処する助けとなるように設計される。第1のセットのチャネル110Aは、さらには、活性区域の前縁部においての流れレート、およびかくして流れ速度を低減する助けとなり、そのことが今度は、その領域内の水分の除去を低減して、乾燥状況においてのより良好な動作および性能を提供する。このことは、さらには、カソード流れ場28’’’の流れ経路に沿って湿度および酸素濃度分布のバランスをとる助けとなり、そのことは、電気化学反応の結果として、活性区域にわたって電流および温度分布のバランスをとる。このことは、燃料セルおよびスタックの、耐久性および信頼性を改善する。一部の実施形態において、第1のセットのチャネル110Aは、強め合って干渉し、セルが潜在的にドライアウトすることのリスクを増大する、高速度効果に対する潜在的可能性を回避するために、燃料セルのアノードまたは冷却剤側の任意の流れチャネルの反対に配置され得る。
【0069】
[090]カソード流れ場28を作り上げる多孔質構造は、1つまたは複数の、金属および/または合金を含み得る。例えば、多孔質構造は、少なくとも、ニッケル(Ni)およびクロム(Cr)(例えば、NiCr)、または、ニッケル、スズ(Sn)、およびクロム(例えば、NiSnCr)の組合せを含み得る。多孔質構造のNiCr実施形態に対して、クロムの質量による濃縮物は、約20%から約40%の範囲に及ぶことができ、一方で、ニッケルは、残りの残量 - 約60%から約80%を占め得る。多孔質構造のNiSnCr実施形態に対して、クロムの濃度は、約3%から約6%の範囲に及ぶことができ、スズの濃度は、約10%から約20%の範囲に及ぶことができ、一方で、ニッケルは、残量 - 約74%から約87%を占め得る。
【0070】
[091]一部の実施形態において、多孔質構造の少なくとも1つの表面は、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶクロム濃度を含み得る。例えば、カソード流れ場28を形成する多孔質構造の、1つまたは両方の表面のクロム濃度は、約3質量%から約50質量%、約5質量%から約40質量%、または、約7質量%から約40質量%の範囲に及び得る。多孔質金属体の表面のクロム濃度を増大することは有利であり得るものであり、なぜならば、そのことは、酸性環境において多孔質構造の耐食性を増大するからである。例えば、カソード流れ場を形成する多孔質構造の表面のうちの少なくとも1つが、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶクロム濃度を有するとき、多孔質構造を含むバイポーラプレートは、有利には、カソードにおいての実質的に酸性の環境において高耐食性であり得る。本明細書において説明されるような多孔質構造により提供される、改善された耐食性は、有利には、カソードプレートが、コーティングされたステンレス鋼よりむしろ、コーティングされないステンレス鋼から形成されることを可能にし得るものであり、そのコーティングされたステンレス鋼は、その耐食性特質のために従前から使用されてきたものである。
【0071】
[092]一部の実施形態において、多孔質構造の一方の表面は、多孔質構造の他方の表面より高いクロム濃度を有し得る。そのような実例において、より高いクロム濃度を有する表面は、有利には、より高耐食性であり得る。より高いクロム濃度を有する表面は、MEA18に面するように配置構成され得る。一部の実施形態において、多孔質構造の、より高耐食性の表面は、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶクロム濃度を有し得るものであり、一方で、金属多孔質構造の、より少ない耐食性表面は、約3質量%クロム未満のクロム濃度を有し得る。
【0072】
[093]本明細書において説明される多孔質構造の様々な実施形態は、1つまたは複数の電気めっきプロセスにより形成され得る。例えば、一部の実施形態において、樹脂成形体が、初期に、3次元ネットワーク構造に対する基板として使用され得る。樹脂成形体は、ポリウレタン、メラミン、ポリプロピレン、ポリエチレン、または類するもののうちの、1つまたは複数を含み得る。樹脂成形体は、その3次元ネットワーク構造内に孔を含み得る。一部の実施形態において、樹脂成形体は、約80%から約98%の範囲に及ぶ空隙率を有し得るものであり、約50μmから約500μmの孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、樹脂成形体は、約150μmから約5,000μm、約200μmから2,000μm、または、約300μmから約1,200μmの厚さを有し得る。
【0073】
[094]多孔質構造を形成するために、金属層が、樹脂成形体上へとめっきされ得る。多孔質構造のNiCr実施形態に対して、例えば、ニッケル層およびクロム層が、樹脂成形体上へとめっきされ得る。多孔質構造のNiSnCr実施形態に対して、例えば、ニッケル層、スズ層、およびクロム層が、樹脂成形体上へとめっきされ得る。樹脂成形体は、ニッケル粒子、スズ粒子、および/または炭素粒子などの伝導性金属の、無電解めっき(自己触媒めっき)、蒸気堆積、スパッタリング、および/または塗布などの電気的伝導処置を受けさせられ得る。次いで、ニッケル層および/またはスズ層が、処置された樹脂成形体の3次元構造またはスケルトンの表面上に電気的にめっきされ得る。例えば、樹脂成形体が伝導性層によってコーティングされるとき、ニッケル層が、引き続いて、電気めっきプロセスによって、樹脂成形体のスケルトン上に形成され得る。ニッケル層が形成される後、スズ層が、引き続いて、別の電気めっきプロセスによって、樹脂成形体のスケルトン上に形成され得る。代替的には、樹脂成形体が伝導性層によってコーティングされるとき、スズ層が最初に電気めっきされ、ニッケル層の電気めっきが後に続き得る。一部の実施形態において、化学蒸気堆積が、クロムを実質的にニッケルの構造に付加するために使用され得る。
【0074】
[095]一部の実施形態において、ニッケル層および/またはスズ層などの、1つまたは複数の金属層が、樹脂成形体のスケルトン上へとめっきされる後、クロム層が、電気めっきプロセスによって付加され得る。一部の実施形態において、クロムめっき層は、多孔質構造の少なくとも1つの表面のクロム濃度が、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶように形成され得る。クロムめっき層がめっきされた後、または、ニッケルおよび/もしくはスズめっき層がめっきされる後、多孔質構造は、熱処置により初期の樹脂成形体を除去することにより形成され得る。例えば、多孔質構造は、約900℃から約1300℃の範囲内の温度で、不活性雰囲気、または、還元される雰囲気内で加熱され得る。
【0075】
[096]一部の実施形態において、本明細書において説明されるような燃料セル10は、各々の燃料セル10の活性区域を増大するために修正され得る。例えば、燃料セル10は、活性区域の幅を2倍にすることにより、活性区域が2倍にされるように修正され得る。
図12は、隣接する燃料セル10’の一部分の側面斜視図を示し、活性区域は、燃料セル10の活性区域のサイズの2倍(2x)であり得る(例えば、
図2を確認されたい)。燃料セル10’は、燃料セル10’の左半分が、燃料セル10と同じにレイアウトされ得るものであり、一方で、燃料セル10’の右半分が、2つの半分体の間の二分する線に沿った左半分の鏡映としてレイアウトされ得るようにレイアウトされ得る。一部の実施形態において、左半分および右半分は、鏡映よりむしろ、同じにレイアウトされ得る。燃料セル10’は、幅がより広く、左および右半分が鏡映としてレイアウトされるということを除いて、本明細書において説明されるような燃料セル10と同じ要素を含み得る。
【0076】
[097]
図12において示されるように、燃料セル10に類して、燃料セル10’は、一括して膜電極接合体(MEA)18’と呼称され得る、カソード触媒層12’と、アノード触媒層14’と、カソード触媒層12’とアノード触媒層14’との間に配置されるプロトン交換膜(PEM)16’とを備えることができる。燃料セル10’は、2つのバイポーラプレート、カソードプレート20’およびアノードプレート22’を備えることができる。カソードプレート20’は、カソード触媒層12’に隣接して配置され得るものであり、アノードプレート22’は、アノード触媒層14’に隣接して配置され得る。MEA18’は、カソードプレート20’とアノードプレート22’との間に介在させられ、それらのプレートの間で囲繞され得る。燃料セル10’は、さらには、MEA18の各々の側で、燃料セル10の中に、電気伝導性ガス拡散層(例えば、カソードガス拡散層24’およびアノードガス拡散層26’)を含み得る。燃料セル10’は、MEA18’の各々の側に配置される流れ場をさらに含み得る。例えば、燃料セル10’は、カソードプレート20’とGDL24’との間に配置される多孔質構造を含み得るカソード流れ場28’と、アノードプレート22’により形成され得るアノード流れ場30’とを含み得る。燃料セルは、さらには、積層されるカソードプレート20’およびアノードプレート22’の系列により規定される長手方向軸5に沿って延びる複数の流体マニホールド31A’、31B’を含み得る。本明細書において説明される、燃料セル10に関する、構成要素、特徴部、動作の、および有利な説明は、少なくとも
図2および12により例解されるような類似点に基づいて、燃料セル10’に等しく適用可能であるということが理解されるべきである。
図13、14、および15は、燃料セル10’の例示的な実施形態による、アノードプレート22’、カソードプレート20’、およびカソード流れ場28’の正面図を示す。一部の実施形態において、燃料セル10は、燃料セル10’に対して行われるような2倍よりむしろ3倍、活性区域を増大し、燃料セル10の特徴部(例えば、マニホールド、通路、およびポート、その他)のレイアウトを繰り返すことにより、活性区域が3倍にされるように修正され得る。
【0077】
[098]上述の説明は、例解の目的のために提示されたものである。その説明は、網羅的ではなく、開示される寸分違わない形式または実施形態に限定されない。実施形態の修正、適合、および他の応用が、本明細書の考察、および、開示される実施形態の実践から明白であろう。例えば、燃料セル10の説明された実施形態は、種々の電気化学セルによって使用されるために適合させられ得る。例えば、本開示は、主に、アノードチャネル流れ場およびカソード多孔質流れ場を伴う燃料セルに着目するが、これらの特徴部のうちの一部は、アノードおよびカソード流れ場を利用する燃料セル、または、アノードおよびカソード多孔質流れ場を利用する燃料セルにおいて利用され得るということが思索される。
【0078】
[099]なおまた、例解的な実施形態が本明細書において説明されたが、範囲は、本開示に基づく均等な要素、修正、省略、組合せ(例えば、様々な実施形態にわたる態様の)、適合、および/または改変を有する一切の実施形態を含む。特許請求の範囲においての要素は、特許請求の範囲において用いられる文言に基づいて広範に解釈されるべきであり、本明細書において、または、本出願の手続処理の間に説明される例に限定されるべきではなく、それらの例は、非排他的と解されるべきである。さらに、開示される方法のステップは、ステップを並べ替えること、および/または、ステップを挿入もしくは削除することを含む、任意の様式で修正され得る。
【0079】
[0100]本開示の特徴部および利点は、詳細な明細書から明白であり、かくして、添付される特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨および範囲の中に収まる、すべてのセルおよびセルスタックを包含するということが意図される。本明細書において使用される際、不定冠詞「a」および「an」は、「1つまたは複数の」を意味する。同様に、複数形用語の使用は、その用語が所与の文脈において曖昧さのないものでない限り、必ずしも複数を表象するとは限らない。「および」または「または」などの単語は、別段に具体的に指図されない限り、「および/または」を意味する。さらに、数多くの修正および変更が、本開示を考究することから、たやすく浮かぶことになるので、本開示を、例解および説明される、そのままの構築物および動作に限定することは所望されず、よって、本開示の範囲の中に収まる、すべての適した修正および均等物が、頼むところにされることがある。
【0080】
[0101]本開示の他の実施形態が、本明細書の考察、および、本明細書においての本開示の実践から、当業者には明白であろう。本明細書および例は、単に例示的と考えられ、本開示の真の範囲および趣旨は、後に続く特許請求の範囲により指示されるということが意図される。