(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】差動湿潤を用いた液滴の動きの方向付け
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20240306BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240306BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20240306BHJP
B81B 7/02 20060101ALI20240306BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B01J19/00 321
G01N37/00 101
G01N37/00 103
B81B1/00
B81B7/02
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2020545686
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 US2019019954
(87)【国際公開番号】W WO2019169076
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-22
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520329058
【氏名又は名称】ヴォルタ ラブズ,インク.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ウマパティ,ウダヤン
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-116248(JP,A)
【文献】特表2017-504002(JP,A)
【文献】国際公開第2009/021233(WO,A2)
【文献】特開2015-092101(JP,A)
【文献】特表2014-509959(JP,A)
【文献】特開2017-140405(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0112979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00-19/32
G01N 37/00
B81B 1/00
B81B 7/02
B81B 3/00
A61L 33/06
A61L 29/14
B32B 7/04
F15C 1/04
H01M 10/653
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを処理するためのシステムであって、該システムは、
(a)アレイであって、
(i)複数の電極、
(ii)前記複数の電極のうち隣接する電極間のギャップを満たす
ギャップ充填材、
(iii)前記複数の電極および前記隣接する電極間のギャップを満たす前記
ギャップ充填材の上に配置された誘電体
であって、前記ギャップ充填材は液状ポリマーを含む、誘電体、ならびに
(iv)前記誘電体の上に配置された液体層を含み、
前記液体層は、前記液体層の表面上に液滴を支持するように構成され、前記液滴は、前記サンプルを含み、前記液体層は、前記誘電体に対する湿潤親和性特性を有している液体を含み、前記液体は、前記液滴と混ざらず、前記複数の電極は、前記液体層の
前記表面に沿って前記液滴を動かすために、電場を供給するように構成される、アレイと、
(b)制御装置であって、前記複数の電極と作動可能に結合され
、前記制御装置は、前記複数の電極のうち少なくとも一部に対して、前記液体層の前記表面の湿潤特性を改質するために前記電場を供給するように指示するように構成され、それによって、前記液体層の前記表面に沿って前記液滴を動かす、制御装置と、
を備えているシステム。
【請求項2】
前記電場は、前記複数の電極のうち一部の電極間に存在している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記液体層は、疎水性であり、前記液体層の上側面は、前記液滴に対して滑りやすい液体-液体面を形成する、請求項1または2のいずれかに記載のシステム。
【請求項4】
前記液体層を形成するため
に液体を保持するようにテクスチャ加工されている、固体面をさらに備えている、請求項1から3のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項5】
前記液体層の前記液体は、油である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数の電極は、10μm未満の厚さを有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記液体層の前記表面は、1つ以上の経路を含み、前記1つ以上の経路のうち1つの経路は、前記液滴の動きのための1つ以上の軌道を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記液体層は疎水性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは、電極やプレートが重ならない、または対面していない、開いた状態である、請求項1または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数の電極は、プリント基板技術を用いて基板に印刷される、請求項1または8に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数の電極は、薄膜トランジスター(TFT)技術を用いて製造される、請求項1または8に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の電極は、アクティブマトリクスまたはパッシブマトリクスバックプレーン技術を用いて基板に製造される、請求項1または8に記載のシステム。
【請求項13】
前記液体層の前記表面は、追加のサンプルまたは化学サンプルを含む、追加の液滴を支持するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記液体層は、前記液滴の量が5
μlである場合に3度以下の摺動角を有している、請求項1から13のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項15】
前記システムは、前記制御装置と作動可能に結合された光源をさらに備え、前記制御装置は、前記光源に対して、前記アレイに光を適用するように指示することによって、前記液体層の前記表面の前記湿潤特性を改質するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記液滴を前記表面に分配する、または前記表面から取り除くように構成された、1つ以上のディスペンサーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記
誘電体は、
2μm
以下の
滑らかさを有している、請求項1から1
6のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の電極は、同一平面上にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の電極は、同一平面上にない、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記アレイは、1つ以上のステーションをさらに含み、前記1つ以上のステーションは、混合ステーション、インキュベーター、磁気ビーズステーション、音響ステーション、核酸送達ステーション、光学検査ステーション、および液滴注入器から成る群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記誘電体は、少なくとも
500ナノメートル、または最大
15μmの厚さを有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
分配、混合、加熱、冷却、磁場の印加、電場の印加、試薬の添加、光学検査またはアッセイ、およびタンパク質、ペプチド、または生体高分子の単離や精製から成る群のうち1つ以上を実行する1つ以上のステーションをさらに備えている、請求項1から2
1のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項23】
分配、混合、加熱、冷却、磁場の印加、電場の印加、試薬の添加、光学検査またはアッセイ、およびタンパク質、ペプチド、または生体高分子の単離や精製から成る群のうち2つ以上を目的とする1つ以上のステーションを備えている、請求項1から2
2のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項24】
液滴を前記システムへ導入するように構成された音響トランスデューサーをさらに備えている、請求項1から2
3のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項25】
液滴を前記システムへ導入するように構成されたマイクロダイヤフラムポンプをさらに備えている、請求項1から2
4のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項26】
液滴を前記液体層の前記表面に導入するように構成された1つ以上のインクジェットノズルをさらに備えている、請求項1から2
5のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項27】
液滴を前記液体層の前記表面に導入するように構成された1つ以上のシリンジポンプをさらに備えている、請求項1から2
6のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項28】
液滴を前記液体層の前記表面に導入するように構成された1つ以上のキャピラリーチューブをさらに備えている、請求項1から2
7のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項29】
液滴を前記液体層の前記表面に導入するように構成された1つ以上のピペットデバイスをさらに備えている、請求項1から2
8のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項30】
前記表面は、液滴または反応物を導入するように設計された1つ以上の穴を有している、請求項1から
29のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項31】
サンプルを処理するための方法であって、該方法は、
(a)(i)複数の電極、
(ii)前記複数の電極のうち隣接する電極間のギャップを満たす
ギャップ充填材、
(iii)前記複数の電極および前記隣接する電極間のギャップを満たす前記
ギャップ充填材の上に配置された誘電体
であって、前記ギャップ充填材は液状ポリマーを含む、誘電体、ならびに
(iv)前記誘電体の上に配置された液体層を含む、アレイを提供する工程であって、前記液体層は、前記液体層の表面上に液滴を支持するように構成され、前記液滴は、前記サンプルを含み、前記液体層は、前記誘電体に対する湿潤親和性特性を有している液体を含み、前記液体は、前記液滴と混ざらない、工程と、
(b)前記誘電体の上に配置された前記液体層の前記表面上に、前記サンプルを含む前記液滴を導入する工程と、
(c)前記複数の電極のうち少なくとも一部に対して、前記液体層の前記表面の湿潤特性を改質するため
に電場を供給するように指示する工程であって、それによって、前記液体層の前記表面に沿って前記液滴を動かす、工程と、
を含む、方法。
【請求項32】
前記湿潤特性を改質することは、前記複数の電極のうち1つ以上の電極の充放電を順に制御することを含む、請求項3
1に記載の方法。
【請求項33】
前記液体層は疎水性であり、
前記液体層は、固体のテクスチャ表面上に形成され
、液体を保持するように設計され、前記液体層の上側面は、前記液滴に対して滑りやすい液体-液体面を形成する、請求項3
1または3
2に記載の方法。
【請求項34】
前記湿潤特性を改質することは、前記アレイに光を適用することを含む、請求項3
1に記載の方法。
【請求項35】
工程(b)中に、またはそれに続いて、前記サンプルを操作するために、前記液滴に加熱、冷却、磁場、光、音響エネルギー、または混合を施す工程をさらに含む、請求項3
1に記載の方法。
【請求項36】
前記サンプルは核酸またはタンパク質を含み、工程(c)に続いて、前記核酸またはタンパク質は、前記液滴内で処理される、請求項3
1に記載の方法。
【請求項37】
前記液体層は、前記液滴上に電極やプレートが重ならない、または対面していな
い、請求項3
1に記載の方法。
【請求項38】
前記複数の電極は、プリント基板技術を用いて基板に印刷される、請求項3
1に記載の方法。
【請求項39】
前記
誘電体は、
2μm
以下の
滑らかさを有している、請求項3
1、3
3または3
7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
工程(b)中に、またはそれに続いて、前記表面の上に、1つ以上の追加のサンプルを含む追加の液滴を導入すること、および
前記液滴と前記追加の液滴を統合すること
をさらに含む、請求項3
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動湿潤を用いた液滴の動きの方向付けに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願は、「Directing Motion of Droplets Using Differential Wetting」と題された2019年2月27日出願の米国仮出願62/811,018、および「Manufacturing Methods for Electrowetting Microfluidic Chip」と題された2018年2月28日出願の米国仮出願62/636,268に基づく優先権を主張するものである。これら仮出願は参照により引用されるものとする。
【0003】
本出願は、小型の、典型的にはミリリットルからサブマイクロリットル規模のデバイス中の液体または気体の制御と操作に関するものである。
【発明の概要】
【0004】
全体として、第1の態様において本発明は、液滴の動きを制御するための装置を特徴とする。該装置には、一続きの前記電極上を液滴が動く1つ以上の軌道を画定するアレイまたはパスに構成される一組の電極パッドが備わっている。前記装置には、前記電極パッド上に設けられ、誘電性であり、2μm以内まで滑らかであり、5μlの液滴に対して5度以下の摺動角を有しており、かつ前記電極パッドに電圧を印加することで改質可能な液体に対する湿潤親和性を有している、表面が備わっている。前記装置にはさらに、各電極パッド上の前記表面の一部の湿潤特性を改質することにより前記軌道上で液滴を動かすように設計された制御装置が備わっており、前記湿潤特性は、所望の並びにある前記電極パッドの充放電を制御することにより改質される。
【0005】
全体として、第2の態様において本発明は、液滴の動きを制御するための装置を特徴とする。該装置には、制御可能に変動される液体に対する湿潤親和性を持つ部分を有している滑らかな疎水性表面が備わっている。この変動する湿潤性部分は、一続きの前記変動する湿潤性部分の上を前記液滴が動くことが可能な1つ以上の軌道を画定するアレイまたはパスに構成されている。前記装置にはさらに、前記表面の変動する湿潤性部分の湿潤特性を変動させることにより軌道上で液滴を動かすように設計された制御装置が備わっている。前記装置は、前記滑らかな疎水性表面を開いた状態で備え、前記液滴上に電極またはプレートが重ならない、または対面しないように設計されている。
【0006】
全体として、第3の態様において、本発明は、液滴の動きを制御するための装置を特徴とする。該装置には、前記液滴と混ざらない第2の液体の薄層と、前記液滴に対して滑りやすい液体-液体面を形成する第2の液体の上側面とを保持するようにテクスチャ加工されており、5μlの液滴に対して5度以下の摺動角を有しており、かつ制御により変動可能な液滴に対する湿潤親和性を有している固体面が備わっている。変動する湿潤性部分は、一続きの前記変動する湿潤性部分の上を前記液滴が動くことが可能な1つ以上の軌道を画定するアレイまたはパスに構成されている。前記装置にはさらに、前記液体-液体面の変動する湿潤性部分の湿潤親和性を変動させることにより軌道上で液滴を動かすように設計された制御装置が備わっている。
【0007】
全体として、第4の態様において、本発明は、液滴の動きを制御するための装置を特徴とする。該装置には、一続きの前記電極上を液滴が動く1つ以上の軌道を画定するアレイまたはパスに構成される一組の電極パッドが備わっている。前記装置には、前記電極パッド上に設けられ、誘電性であり、1μm以内まで滑らかである表面が備わっており、前記滑らかな表面が、前記液滴と混ざらない第2の液体の薄層として、および前記液滴に対して滑りやすい液体-液体面を形成する第2の液体の上側面として形成されており、5μlの液滴に対して5度以下の摺動角を有しており、かつ各電極パッドに電圧を印加して制御することで個々に変動可能な液体に対する湿潤親和性を持つ部分を有しており、変動する湿潤性部分が、一続きの前記変動する湿潤性部分の上を前記液滴が動くことが可能な1つ以上の軌道を画定するアレイまたはパスに構成されている。前記第2の液体は、前記第2の液体を重力に逆らって保持するようにテクスチャ加工された下地固体基板の表面上にある。前記装置にはさらに、各電極パッド上の前記表面の湿潤性部分の湿潤特性を改質することにより前記軌道上で液滴を動かすように設計された制御装置が備わっており、前記湿潤特性は、所望の並びにある前記電極パッドの充放電を制御することにより改質される。前記装置は、前記滑らかな疎水性表面を開いた状態で備え、前記液滴上に電極またはプレートが重ならない、または対面しないように設計されている。
【0008】
全体として、第5の態様において、本発明は方法を特徴とする。該方法において、液滴が、一続きの前記電極上を液滴が動く1つ以上の軌道を画定するアレイまたはパスに構成された一組の電極パッド上の表面に導入される。前記表面は誘電性であり、2μm以内まで滑らかであり、5μlの液滴に対して5度以下の摺動角を有しており、かつ前記電極パッドに電圧を印加することで改質可能な液体に対する湿潤親和性を有している。変動する湿潤性部分は、一続きの前記変動する湿潤性部分の上を前記液滴が動くことが可能な1つ以上の軌道を画定するアレイまたはパスに構成されている。各電極パッド上の前記表面の一部の湿潤特性は、前記軌道上で液滴を動かすために制御され、前記湿潤特性は所望の並びにある前記電極パッドの充放電を制御することにより改質される。前記表面は、前記滑らかな疎水性表面を開いた状態で備え、前記液滴上に電極またはプレートが重ならない、または対面しないように設計されている。
【0009】
本発明の実施形態は、次の特徴のうち1つ以上を含んでもよい。起電圧は、100V未満、80V未満、50V未満、40V未満、30V未満、または20V未満でもよい。電極は、プリント基板技術を用いて基板に印刷され、または薄膜トランジスター(TFT)、アクティブマトリクスまたはパッシブマトリクスバックプレーン技術を用いて製造されてもよい。様々な平滑化レベルは、5μm、2μm、1μm、500nm、200nm、または100nmからが好ましい。表面は研磨により1μm以内にまで滑らにすることができる。この表面はコーティングを施すことにより1μm以内にまで滑らかにすることができ、コーティングは、スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、または蒸気蒸着のうち少なくとも1つにより施される。表面コーティングは誘電性かつ疎水性の材料でできていてもよい。前記表面は、シート状ポリマーを伸ばしてしわを取り除くことにより1μm以内にまで滑らかにすることができる。前記摺動角は、パターニングまたはテクスチャ加工により疎水性を生じさせることによって表面に付与することができる。液滴5μlの摺動角は、5度、3度、2度、または1度以下でもよい。一組の電極パッドは、一続きの電極パッドの上を液滴が移動可能な1つ以上の軌道を画定するアレイまたはパスに構成することができ、変動する湿潤性部分は、前記電極パッド上の誘電性表面である。前記表面の変動する湿潤性部分の湿潤性は、光を当てることで変動することができる。前記表面の変動する湿潤性部分は、オプトエレクトロウェッティングにより作動することができる。前記表面の変動する湿潤性部分は、フォトエレクトロウェッティングによって作動することができる。前記滑らかな表面は、例えば液滴または反応物を導入し、または光の通過を可能とする1つ以上の穴を有する場合がある。前記装置は、分配、混合、加熱、冷却、磁場の印加、電場の印加、試薬の添加、光学検査またはアッセイ、およびタンパク質、ペプチド、または他の生体高分子の単離や精製から成る群のうち1つ以上、2つ以上、3つ以上、または4つ以上を目的とするステーションを備えていてもよい。前記装置には、液滴を前記装置へ導入するように構成された音響トランスデューサーが備わっていてもよい。前記装置には、液滴を前記装置へ導入するように構成されたマイクロダイヤフラムポンプが備わっていてもよい。液滴を導入または注入する他の方法として、インクジェットプリンターのインクジェットノズル、シリンジポンプ、キャピラリーチューブ、またはピペットが挙げられる。前記第2の液体は、固体に対する湿潤親和性を有し、かつ固体のテクスチャ表面に保持される油であってもよい。
【0010】
上記利点と特徴は、代表的な実施形態のみを表すものであり、本発明の理解を助けるためにのみ提示される。これらは、特許請求の範囲に定められるように本発明を限定的なものとして解釈されるものではないことを理解されたい。本発明の実施形態のさらなる特徴と利点は、以下の記述、図面、および特許請求の範囲を参照することにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す平面図である。
【
図1B】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図2A】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図2B】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図3A】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図3B】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図3C】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図4A】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図4B】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図4C】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図5A】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図5B】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図6A】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図6B】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図6C】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図10A】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図10B】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図10C】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図10D】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図10E】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図10F】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図10G】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図10H】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図10I】エレクトロウェッティング表面上の液滴を示す側面断面図である。
【
図11B】エレクトロウェッティングデバイスの処理ステーションの平面図である。
【
図11C】エレクトロウェッティングデバイスの処理ステーションの平面図である。
【
図11D】エレクトロウェッティングデバイスの処理ステーションの平面図である。
【
図11E】エレクトロウェッティングデバイスの処理ステーションの平面図である。
【
図11F】エレクトロウェッティングデバイスの処理ステーションの斜視図である。
【
図11G】エレクトロウェッティングデバイスの処理ステーションの側面断面図である。
【
図11H】エレクトロウェッティングデバイスの処理ステーションの斜視図である。
【
図11I】エレクトロウェッティングデバイスの処理ステーションの側面断面図である。
【
図11J】エレクトロウェッティングデバイスの処理ステーションの側面断面図である。
【
図12A】エレクトロウェッティングデバイスの2つの構成部品の展開図である。
【
図12B】マイクロ流体デバイスの側面断面図である。
【
図12C】マイクロ流体デバイスの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る記述は、以下のように体系化される。
I.導入
I.A.エレクトロウェッティングのための液体上への液体のエレクトロウェッティング(LLEW)
I.B.液滴操作を行うための誘電体上へのエレクトロウェッティング(EWOD)
II.エレクトロウェッティングアレイの製造方法
II.A.エレクトロウェッティング用の基板
II.B.電極アレイ上への滑らかな誘電体表面の作成
II.B.1.フォトレジスト/エポキシ/埋め込み用化合物による平滑化
(a)滑らかなフォトレジスト/エポキシ樹脂/埋め込み用化合物上への誘電体の作成
(i)誘電体として薄膜コーティングを堆積
(ii)ポリマーフィルムを結合して最上部に誘電体を形成
II.B.2.過剰量のフォトレジストを用いた研磨による滑らかな誘電体表面の形成
II.B.3.滑らかな誘電体表面としてのポリマー膜
II.C.最終生成物として滑りやすい表面を作成
II.C.1.固体誘電体を修飾して疎水性を達成
(a)表面化学修飾(機能化)
(b)表面トポグラフィー修飾
(i)マイクロピラーの作成
(ii)ミクロスフェア
II.D.滑りやすい液体コーティング、および液体上への液体のエレクトロウェッティング(LLEW)
II.D.1.LLEWの薄膜液体層上の液滴
II.D.2.LLEWに対してテクスチャ加工を施した固体を作成
II.D.3.テクスチャ加工を施した固体に潤滑油を塗布
III.液体上への液体のエレクトロウェッティング(LLEW)の固有特性
III.A.低作動電圧
III.B.LLEWデバイス表面の洗浄による清掃
IV.エレクトロウェッティングの適用
IV.A.任意の大型オープンフェース
IV.B.液滴の動き、統合、分割
IV.C.ラブ・イン・ボックス(Lab in a box)(デスクトップ型デジタルウェットラブ)
IV.D.処理ステーション
IV.D.1.混合ステーション
IV.D.2.インキュベーションステーション
IV.D.3.磁気ビーズステーション
IV.D.4.核酸送達ステーション
IV.D.5.光学検査ステーション
IV.D.6.音響液体ハンドラー、またはマイクロダイアフラムベースのポンプディスペンサーを介したロード/アンロード
V.代替的な実施形態
V.A.開放表面上にあり(単一プレート構成)、2つのプレート間に挟まれた(二重プレート構成)液滴
V.B.オプトエレクトロウェッティングとフォトエレクトロウェッティング
V.C.オプトエレクトロウェッティング
V.D.フォトエレクトロウェッティング
V.E.ソフトウェアとハードウェア
V.F.他の代替案
【0013】
I.導入
図1を参照すると、エレクトロウェッティングデバイスが、個々の水滴(または他の水溶液、極性溶液、導電性溶液)を所々に動かすために使用されている。水が持つ表面張力と湿潤特性は、エレクトロウェッティング効果を用いて電界強度により改質することができる。エレクトロウェッティング効果は、固体と電解質との間の印加電圧差による、固体と電解質との接触角の変化から生じる。液滴の幅にわたって変動する湿潤表面張力の差異、および対応する接触角変化により、可動部分や物理的接触を必要とすることなく、液滴を動かす推進力を生じさせることができる。エレクトロウェッティングデバイス(100)は、電極(120)の格子を備えており、そこでは適切な電気的かつ表面優先度を持つ誘電体層(130)が電極(120)に重なっており、すべて固定絶縁基板(140)上に存在している。
【0014】
水との接着力が少なくなるように電極格子の表面(130)を整えることが望ましい場合もある。こうすることで、液滴(110)は、電場の中で勾配により作り出される小さな力と、液滴の幅全体にわたる表面張力とによって表面に沿って動くことができる。表面の接着力が少ないことで、液滴が動いた後に残る軌道を減らすことができる。軌道が少なくなれば、液滴の相互汚染を減らし、かつ液滴が動く間のサンプル損失を減らすことができる。また表面の接着力が少ないことで、低作動電圧による液滴移動や、反復可能な液滴移動の挙動も可能となる。表面と液滴との少ない接着力を測定するために、様々な方法が存在する。
【0015】
・摺動角:表面が水平な状態から跳ね上がると、所与の液滴寸法が重力下で動き始める角度は何度になるのか。例えば、液滴5μlを4度で保持するが、液滴が5度で摺動可能な表面は、5μl摺動角が5度と言われている場合がある。様々な用途では、10度、5度、3度、2度、および1度の5μl摺動角が望ましい場合もある。摺動角が小さくなると、表面は滑りやすくなると言われており、全体として表面全体にわたる液滴の移動に必要な電圧が少なくなる。
【0016】
・接触角ヒステリシス:表面接着力が少ない表面において、液滴が表面全体にわたって動くと、先端と表面との接触角が後端と表面との接触角とほぼ同じとなり、その大部分は液体の表面張力により決定される。液滴が高い接着力で表面全体にわたって動くと、先端および後端の接触角は分離することになる。液体表面疎水性が高く、かつ表面エネルギーが低いと、角度の差異は少なくなってしまう。15度、10度、7度、5度、3度、および2度の接触角ヒステリシス(つまり、先端接触角と後端接触角との差異)の方が、漸増的に望ましい場合もある。
【0017】
低表面付着力を達成するには様々な方法が存在する。例えば、滑らかさが数ナノメートル以内になるまで機械研磨する、コーティングを施して表面の不規則な部分を埋める、表面を化学修飾して望ましい表面特性(疎水性、親水性、電界強度による変動など)をもたらすといった方法が挙げられる。
【0018】
I.A.エレクトロウェッティングのための液体上への液体のエレクトロウェッティング(LLEW)
図2Aと2Bを参照すると、「液体上への液体のエレクトロウェッティング」(LLEW)と呼ばれるエレクトロウェッティング機構が、液体-液体-気体界面(200)に生じるエレクトロウェッティング現象を利用している。水滴(110)が低表面エネルギー液体(210)(油などの)の層の表面上に載り、かつ空気(蒸気などの気体)に実質的に囲まれると、接触線(200)に液体-液体-気体界面が作り出される。油(210)は固形基板のテクスチャ加工面(220)によって固形基板の適所に安定させられ、金属電極(120)の導電層をこの固体の本体に埋め込むことができる。
図2Bを参照すると、電位が液滴(110)の全長にわたって印加されたとき、液体-液体-気体界面(200)により液滴(110)は、油(210)を湿らせて、表面全体に広がりながらも、依然として油(210)の上に存在している。
【0019】
図3A、3B、3Cを参照すると、液体上への液体のエレクトロウェッティング技法は、生物サンプルおよび化学サンプルを含有する液滴(110)を操作するために使用することができる。
図3Aにおいて、液滴(110)は左から右へ動き、3つの電極のうち左端の電極(120a)に正電圧を印加し、続いて液体-液体界面に電場を付加し、湿潤性を高めることで左端の電極へ引き付けられる。
図3Bにおいて、電圧は、左端の電極(120a)から回収され、中心電極(120b)印加される。中心電極(120b)上の湿潤性が高まるため、
図3Bにおいて液滴は中心へ引き付けられる。
図3Cにおいて、電圧は左端電極(120a)と中心電極(120b)から回収され、右端の電極(120c)に印加される。右端の電極(120c)上の湿潤性が高まると、液滴は右へ引き付けられる。
【0020】
図4A、4B、4Cを参照すると、差動湿潤が、電極アレイ(120d)、(120e)、(120f)の上でLLEW表面(200)上にある2つの液滴(110a)、(110b)を統合するために使用されている。
図4Aにおいて、2つの液滴は、左端の電極(120d)および右端の電極(120f)に引き付けられている。
図4Bにおいて、電圧は左端の電極(120d)および右端の電極(120f)から取り除かれて、中心電極(120e)に印加される。2つの液滴が左および右から中心(120e)へ引き付けられると、統合が始まる。
図4Cにおいて、2つの液滴は完全に統合した状態である。
【0021】
図3A、3B、3C、4A、4B、4Cを参照すると、このようなマイクロ流体選択的な湿潤デバイスは、液滴の搬送、液滴の統合、液滴の混合、液滴の分割、液滴の分配、液滴の形状変化などのマイクロ流体液滴操作を実行することができる。このLLEW液滴操作は、マイクロ流体デバイスに対して使用されることで、医療診断用デバイスや多くのラブ・オン・チップ用途において液体アッセイなどの生物学的実験を自動で実行することができる。
【0022】
I.B.液滴操作を行うための誘電体上へのエレクトロウェッティング(EWOD)
図5Aと5Bを参照すると、誘電体へのエレクトロウェッティング(EWOD)は、液滴と導電性電極(120)との間の誘電体フィルム(530)上の電場を介して、水溶液、極性溶液、または導電性溶液の湿潤性が調節される場合がある現象である。電極(120)から電荷を付加、または控除すると、絶縁誘電体層(530)の湿潤性が変化し、この湿潤性の変化により、液滴(110)の接触角(540)に対する変化が反映される。接触角が変化すると、液滴(110)は形状を変化させ、移動し、より小さな液滴へと分割するか、または別の液滴と統合する場合がある。方程式2により表されるように、接触角(540)は印加電圧に応じて変動する。
【0023】
固体面上の液体の湿潤挙動(湿れまたは湿潤性)は、液体がどれほど十分に固体面上で広がるのかを示している。空気に囲まれた固体面上の液滴の湿潤性は、固体媒体と液体媒体と期待媒体との間の界面張力によって調節される。固定された液滴では、固体面との接触角(540)の観点から湿潤性が測定される。湿潤性はヤングの方程式により調節される:
γSL=γSG+γLG cos(θe)(方程式1)
式中、γSLは固形-液体表面張力であり、γLGは液体-空気表面張力であり、γSGは固体-気体表面張力であり、θeは平衡条件下の接触角である。
【0024】
ガブリエル・リップマンは、電圧が印加されつと電解質中の水銀の毛管レベルが変化することを観察した。その後、この現象(電気毛管現象)はリップマン・ヤングの方程式により記述される:
cos(θu)=cos(θ0)+1/γLG
*1/2*C*U2(方程式2)
式中、θ0は電場がゼロ(すなわち電圧が印加されない)のときの接触角であり、θuは電圧Uが印加されたときの接触角であり、cは電極と液滴との間の1つの単位面積当たりの静電容量である。
【0025】
II.エレクトロウェッティングアレイの製造方法
生物学的液体の移動および混合のために使用される、エレクトロウェッティングデバイスは、絶縁基板上の電極のアレイ(120)、誘電体の薄層(130)、および、必要ならば、最終的な滑りやすいコーティング、から成る場合がある。時に、誘電体層はそれ自身、付加的化学薬品または表面トポグラフィーの修飾によって、または、それらによらずに、十分に疎水性で且つ滑りやすい挙動を提供する場合がある。
【0026】
絶縁基板上の電極グリッド(120)は、以下の方法-プリント回路基板の製造、CMOSまたはHV CMOSの、または他の半導体の組立て方法-の1つ以上の、何らかの組合せを使用して製造される場合があり、薄膜フィルムトランジスター(TFT)、アクティブマトリクス、またはパッシブマトリクス・バックプレーン・テクノロジー、または、絶縁基板上に導電性回路を敷くことができる他のあらゆる方法を使用して、製造される。生物学的液体を動かす、および混合する間に分離しておくために、電極アレイの表面は、以下に述べられる多くの方法のうちの1つによって、誘電体で被覆されている場合がある。
【0027】
PCBと表面電極は、薄膜フィルムトランジスター(TFT)、アクティブマトリクスまたはパッシブマトリクスバックプレーン技術を使用して製造される場合がある、
【0028】
液滴と相互作用する誘電体の上面の化学的性質および質感は、優れた、および繰り返される液滴の動きのために必要とされる電圧を決定する。化学的構成および物理的なテクスチャによって、エレクトロウェッティングデバイス上の液滴は、動いている時、2つの現象:液滴固定、および接触角ヒステリシス、を受ける場合がある。液滴固定現象は、液滴が動かされている最中に、いずれかの局所的な表面欠陥にいつ行き詰まるときである。接触角ヒステリシスは、動いている液滴を前進させる接触角と後退させる接触角における差である。液滴固定および高い接触角ヒステリシスによって、エレクトロウェッティング表面上の液滴は著しく高い電圧を必要とする場合がある。表面の化学的構成、表面のテクスチャと滑りやすさ、および表面の滑らかさはまた、液滴が動かされているときにトレールを後に残すことを生じる場合がある。このトレールはわずか1分子と同じくらい単純な場合がある。
【0029】
固定、接触角ヒステリシス、および液滴によって後に残されるトレールを減らすために、典型的には、電極アレイを覆う誘電体は滑らかにされ、次に、低表面エネルギーの表面を作成するために化学修飾される。表面エネルギーは、2つの媒体間の界面における分子間力に関連するエネルギーである。低表面エネルギーの表面と相互作用する液滴は、表面によってはね返され、および疎水性と見なされる。時に、誘電体層それ自身は、液滴の動きための十分に滑りやすい表面を提供する。
【0030】
以下のセクションは、エレクトロウェッティングデバイスを製造するのに使用される様々な材料を記載する:導電材料を敷くための基板、電極と相互接続のための導電材料、誘電体材料、誘電体材料を堆積するための方法、液滴の動きために滑らかな表面を実現し、および滑りやすい表面を提供する、誘電性および疎水性のコーティング材料。
【0031】
II.A.エレクトロウェッティング用の基板
エレクトロウェッティング微小流体デバイスは、電極アレイ(120)上に直接、滑りやすい表面(低表面エネルギーという意味で)を作成することにより、形成される場合がある。電極アレイは、液滴を作動させるために電気的に帯電する導電性プレート(120)から成る。アレイにおける電極は、任意のレイアウト、例えば長方形のグリッド、または離散的な経路の集合、に配置される場合がある。電極自体は、導電性金属(例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、プラチナ、チタン)、導電性酸化物(酸化インジウムスズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛)、および半導体(例えば二酸化ケイ素)のあらゆる組合せで作られ得る。電極アレイをレイアウトするための基板はいかなる厚みおよび剛性のいかなる絶縁材料であってもよい。
【0032】
電極アレイは標準的な固い基板およびフレキシブルプリント基板用の基板上に製造される場合がある。PCBのための基板は、FR4(ガラスエポキシ)、FR2(ガラスエポキシ)または、絶縁された金属基材(IMS)、ポリイミドフィルム(商業的ブランドの例はKapton、Pyraluxを含む)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セラミック、または、他の、1μmから3000μmの厚みの市販の基板、であり得る。500μmから2000μmの厚みは、ある使用において好まれ得る。
【0033】
電極アレイはまた、薄膜フィルムトランジスター(TFT)テクノロジーなどのアクティブマトリクス・テクノロジーおよびパッシブマトリクス・テクノロジーで製造された伝導体および半導の要素で製造されている場合がある。電極アレイはまた、従来のCMOSまたはHV-CMOS製造技術で製造されたピクセルのアレイでも作られ得る。
【0034】
電極アレイはまた、ガラスのシート上に堆積された酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)などの透光性導電性材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および、いかなる他の絶縁基板でも製造され得る。
【0035】
電極アレイはまた、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および他の絶縁基板上に堆積される金属でも製造され得る。
【0036】
図6Aを参照すると、場合によっては、エレクトロウェッティング微小流体デバイス(100)は第2のプレートを伴わずに共面電極(同層上の電極)からできており、および、液滴(110)は電極の平面の上の開放表面上に乗ってもよい。この構成において、基準電極(120g)(通常、接地信号)および駆動電極(120h)は、電極の上の薄い絶縁体と共にプリント基板用の基板の上に置かれて、同じ平面上にある。液滴はこの絶縁体層の上に乗り、2つのプレートの間にはさまれない。これらの場合において、時に、基準電極(120g)は駆動電極と比較して、異なる幾何学的配置である。ほとんどの場合、液滴(110)が異なる極性の電極(120)に当接しないように、誘電体要素または層は配置され、その結果、液滴は電流に対してではなく電界に対してのみ露出される。
【0037】
図6Bを参照すると、場合によっては、エレクトロウェッティング微小流体デバイスは、電極の二つの層(基準電極(120g)のために1つ、および駆動電極(120h)のために1つ)からなる場合があり、(プレート間に液滴がある電極のサンドイッチとは対照的に)基板(140)内において一方が他方の上にある。ここで、液滴(110)は開放表面上に乗る場合があり、電極の両方の層の上に位置する。電極の2つの層、(120g)、(120h)は、典型的に、絶縁体の極薄層(602)(10nmから30μm)によって間隔をあけられる。通常、基準電極(120g)を備えた層は液滴に接近している。時に、最上層の基準電極(120g)は、直接液滴に接している。基準電極層は厚さ500nm未満である場合があり、疎水性材料でコーティングされる場合がある。基準電極を備えた第2の層は、いかなる任意形状の単一の連続トレースであってもよい。
【0038】
図6Cを参照すると、他の構成において、層は上から下に、疎水性/絶縁層(130)、電極(典型的に基準または接地)を備えた層(120g)、誘電体層(602)、駆動電極の層(120h)、および絶縁基板(140)、のように配置される場合がある。液滴(110)は最上部開放表面上の疎水性/絶縁層(130)に乗る。電極(120)が通常金属であるので、液滴(110)と電極との間の化学反応を防ぐために、それらすべてが絶縁体または誘電体(130)で被覆されていることが望ましい場合がある。
【0039】
エレクトロウェッティング微小流体デバイス(100)の構築において、ラミネーションの多くの層(1-50層)が電気的な相互接続ルーティングの複数の層(2-50層)を分離するために使用されてもよい。ラミネーションの最外層の1つは液滴を作動させるために電極パッド(120)を含んでいる場合があり、および、基準電極を含んでいる場合がある。相互接続は、駆動および静電容量センシングのための高電圧に電気パッドを接続する場合がある。作動電圧は5Vと350Vとの間であってよい。この作動電圧は交流信号またはDC信号である場合がある。
【0040】
II.B.電極アレイ上への滑らかな誘電体表面の作成
電極アレイから液滴を電気的に分離するために、誘電体の層(130)が電極アレイ(120)の上面に施される場合がある。好ましくは、この誘電体層(130)の上面は、液滴の動きに対してほとんど或いはまったく抵抗を持たない上面を備えて形成される場合があり、結果として、液滴が弱い作動電圧(滑らかさ、滑りやすさ、および疎水性の程度に応じて、DC100V未満、80V未満、50V未満、40V未満、30V未満、20V未満、15V未満、10V未満、または8V未満)により動かされる場合がある。滑りやすい低抵抗の表面を得るために、誘電体表面は滑らかな表面トポグラフィーを有し、および疎水性であり、または、他の方法で、液滴の接着を少なくする場合がある。
【0041】
滑らかなトポグラフィーの表面は、典型的にその粗さ値によって特徴づけられる。実験によって、表面がより滑らかになるとき、液滴の動きをもたらすのに必要とされる電圧が変化することが発見された。2μm、1μm、および500nmの滑らかさは、望ましい場合がある。
【0042】
電極アレイの上の滑らかな誘電体表面は、例えば以下の技術の何らかの組合せによって形成される場合がある:
1.比較的滑らかな表面を得るために、表面欠陥にパッチが当てられ、および次に誘電体材料でそれを覆う2工程の処理。欠陥にパッチを当てる工程は、典型的に、フォトレジスト、エポキシ、または埋め込み用化合物でなされる。誘電体の第2の層は同じ材料、またはポリマー膜であり得る。
2.第2の方法は、電極アレイの上に余分なフォトレジストまたはエポキシを堆積する工程と、次に、必要な厚みおよび表面の粗さまで余分な材料を磨く工程である。
3.第3の方法は、薄いポリマー膜を表面に伸し、および結合する工程である。
【0043】
液滴が滑らかにされた誘電体表面(130)に接着するのを防ぐために、表面は、以下の方法の1つ以上によって、滑りやすくするために、さらに修飾される場合がある:
1.界面化学を修飾する工程
2.表面トポグラフィーを修飾する工程
3.滑りやすい液体コーティングを施す工程
ここで、我々は、また液体上への液体の(liquid-on-liquid)エレクトロウェッティング(LLEW)と呼ぶ新しいエレクトロウェッティング機構を導入する。
【0044】
以下のセクションは、粗くて滑りやすくない電極アレイ表面を滑らかな滑りやすい表面へと修飾する様々な方法について詳細に記載する。
【0045】
II.B.1.フォトレジスト/エポキシ/埋め込み用化合物による平滑化
図7Aおよび7Bを参照すると、典型的なプロセスによって製造されたプリント基板(PCB)には:電極間の谷部(canyons)(ギャップ)、多層間の接続を確立するための孔(ビアとしても知られる)、貫通孔構成要素を接合するための孔、および他の製作誤差による欠陥があるため、表面が粗い。表面欠陥の典型的な寸法は、30μmから300μmの範囲にあり、1μm程度の小ささであり、および、製造プロセスに応じて異なる場合がある。
【0046】
様々な方法が、これらの表面欠陥を減らすために、および多かれ少なかれ1μm未満の粗さ値の平面を得るために、単独に、または合わせて使用されてもよく、それらは、低電圧で望ましい湿潤特性および挙動をもたらす場合がある。
【0047】
滑らかな表面は、谷部の間にフォトレジスト、エポキシ、埋め込み用化合物または液状ポリマーを流すことにより得られる場合がある。念頭におかれたあるフォトレジストは、あらゆる次元においてサイズが10μm未満の谷部の間を流れる場合があり、8500センチポアズ未満の動粘度がある。市販で入手可能なSU-8フォトレジストはこのよい例である。この用途にとってふさわしい液状ポリマーは液体のポリイミドである。
【0048】
図8Aを参照すると、電極(120)間の谷部を満たすために、電極アレイのほぼ平坦化された表面(802)は、フォトレジスト、エポキシ、埋め込み用化合物、液状ポリマー、または他の誘電体のコーティング(804)を施すことにより得られ得る。材料には、それが小さな隙間(例えば、100μm(幅)×35μm(高さ)の)に流れ込み、且つより大きなギャップを満たすことを可能とする、ギャップ充填特性があるべきである。その後、コーティングは、1μm前後の、望ましい範囲の粗さ値の表面を得るために硬化させられてもよい。金属電極表面は露出されるか、またはコーティングで被覆されている場合がある。
【0049】
(a)滑らかなフォトレジスト/エポキシ樹脂/埋め込み用化合物上への誘電体の作成
一旦、表面欠陥がフォトレジストまたは埋め込み用化合物またはエポキシ(804)を流すことによりパッチを当てられれば、電極アレイの最上面は多かれ少なかれ平坦化される。ほぼ平面の表面は、液滴が依然として電界によって影響を受け得る場所に広がることが電界によって可能となっている間に帯電した電極から液滴を分離するために、追加の誘電体コーティング(810)を必要とする金属電極(120)を有する場合がある。このコーティング(810)の厚みは、10nmから30μmの間のいずれの値であってもよい。誘電体層(810)は、次に記載されるような、様々なコーティング法を介した薄膜フィルムの様々な堆積によって、ポリマー膜を結合することによって、または他のいずれかの薄膜フィルムの堆積技術によって、薄膜フィルムとして形成される。
【0050】
(i)誘電体として薄膜コーティングを堆積
図8Bを参照すると、最上部の平坦化された表面(802)(露出した金属電極(120)および
図8Aの最初の適用からのフォトレジスト(804))は、同じフォトレジスト(またはエポキシ、または埋込用化合物)材料の付加的な層、または、異なる誘電性の、結合の、および平滑化の特性を備えた異なる材料でコーティングされることで、液滴を電極から電気的に分離する誘電体層(810)を形成する場合がある。フォトレジストはスピンコーティング、スプレーコーティング、または浸漬コーティングによって施される場合がある。
【0051】
平坦化された表面(802)はまた、何らかの形態の化学蒸着によっても、誘電体の薄膜フィルム(810)でコーティングされる場合がある。しばしば、この種の堆積は、コーティングされた面のトポグラフィーに続いて、フィルムをもたらす。市販で入手可能な蒸着のための材料のクラスは、コンフォーマルコーティング材料と呼ばれ、量産化に非常に適している。コンフォーマルコーティング材料は、パリレン(Parylene)コンフォーマルコーティング、エポキシのコンフォーマルコーティング、ポリウレタンのコンフォーマルコーティング、アクリルのコンフォーマルコーティング、フルオロカーボンのコンフォーマルコーティングを含む。蒸着と共に使用される場合がある他のコーティング材料は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ハフニウム、五酸化タンタル、および二酸化チタンを含む。
【0052】
(ii)ポリマー膜を結合して最上部に誘電体を形成
図8Cを参照すると、電極から液滴を分離するために、最上部の平坦化された表面(802)(金属電極(120)およびフォトレジスト(804))は、ポリマー膜の付加的な層(816)で被覆されている場合がある。フィルム(816)は、しわを取り除き、さらに滑らかなものにするために、伸ばされる場合がある。ポリマー膜は、熱ボンディングによって、真空吸引によって、または静電気的にそれを吸いおろすことによって、または、単に機械保持によって、電極アレイ上に保持され得る。
【0053】
II.B.2.過剰量のフォトレジストを用いた研磨による滑らかな誘電体表面の形成
図8Dを参照すると、滑らかな誘電体表面は、電極アレイをフォトレジストまたは他の硬化可能な誘電体材料(820)でコートし、および、次に、滑らかな表面(824)を得るように最上部表面を磨く(822)ことで、得られる場合がある。フォトレジスト/誘電体材料は、スピンコーティング、スプレーコーティング、蒸着または浸漬コーティングなどの技術を使用してコーティングされる場合がある。
【0054】
このプロセスにおける第1の工程は、電極アレイ(120)を硬化可能な誘電体で電極の高さより著しく高い厚み(820)になるまでコートすることであり得る。例えば、電極が35μmの高さを有する場合、電極上面の上の誘電体コーティングの厚みは、少なくとも70μmであり得る。その後、誘電体は、典型的には電極グリッドアレイより大きな研摩パッドを使用して、細かい研磨材および化学スラリーで研磨(822)され得る。電極の上の誘電体が電極より上に望ましい厚み(15μmから500nm)になるまで、バフ研磨処理は継続され得る。典型的に、研磨工程はまた、表面の表面粗さ値が1μm未満の粗さまで表面を滑らかにし、および、より好ましくは、500nm、200nm、または100nmより滑らかにする。研磨の後、疎水性コーティングを追加することが望ましい場合がある。疎水性コーティングを伴う、または疎水性コーティングを伴わない薄い滑らかな表面は、より低い電圧で液滴を動かすのに十分なエレクトロウェッティングの力を提供する場合がある。
【0055】
II.B.3.滑らかな誘電体表面としてのポリマー膜
図8Eを参照すると、場合によっては、薄いポリマー膜(830)(1μmから20μm)は、滑らかな誘電体表面を電極アレイの上に直接形成するために使用されてもよい。この場合、前処理は、谷部のうちのいくつかにフォトレジスト、エポキシ、または埋め込み用化合物でパッチを当てることは要求されず、これらの窪み(832)は空気で満たされたままである場合がある。代わりに、フィルムは、修飾前の電極表面に直接施される場合がある。これらの場合において、フィルムは、第1に、いかなるしわも取り除くために伸ばされ(834)、次に、電極の表面に接着される。表面自由エネルギーが低いポリマー膜がそのような用途のために使用されてもよい。PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)、などの多くのフッ素化ポリマーは、エレクトロウェッティングに適している場合がある、他の、低表面エネルギーのフルオロポリマーである。ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、エレクトロウェッティングのための誘電体として使用される場合がある、別の、低表面エネルギーの材料である。弱い接着力および優れたエレクトロウェッティング液滴の動きを目的として表面エネルギーをさらに低下させるために、これらの低表面エネルギーのポリマー膜は、時に疎水性材料の付加的な層を必要とする場合がある。ポリプロピレン、ポリイミド、マイラー(Mylar)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)などの、わずかに高い表面自由エネルギーのポリマーで作られたフィルムもまた、エレクトロウェッティングに適しているが、しかしながら、それらは、液滴の動きを促進するために、追加の疎水性材料コーティングまたは表面修飾を必要とする場合がある。
【0056】
II.C.最終作成物として滑りやすい表面を作成
エレクトロウェッティング微小流体デバイスの表面は、液滴の上面への接着を減らし、または除去するために、さらに処置される場合がある。この付加的な処理は、低い作動電圧によって液滴がある場所から別の場所に繰り返し動かされることを可能にする場合がある。滑らかな誘電体表面を、液滴にとって滑りやすい、接着が少ない表面に変えるために、誘電体材料の表面は化学修飾または表面トポグラフィー修飾を介して疎水性表面に変えられる場合がある。あるいは、この滑りやすい表面は、潤滑液の薄層を滑らかな誘電体の上に、または電極アレイ上に直接作成することにより、作成される場合がある。疎水性コーティング材料は、3度またはそれ以上の角度で傾けられた表面上の1μlの液滴が、滑り去るようなものであり得る。以下のセクションで、これらの方法を詳細に記載する。
【0057】
II.C.1.固体誘電体を修飾して疎水性を達成
場合によっては、滑らかな誘電体表面は、エレクトロウェッティングによって生じさせられた液滴の動きを可能にするように十分に低い表面エネルギーを持たないこともあり得る。表面エネルギーをさらに低下させるために、誘電体表面は、化学的またはトポログラフィ的に修飾される場合がある。
【0058】
(a)表面化学修飾(機能化)
図8Fを参照すると、表面エネルギーは、化学修飾によって、例えば、電極(120)および/または誘電体(130)を、フルオロカーボンがベースのポリマー(フルオロポリマー)などの疎水性または低表面エネルギーの材料(840)または他の疎水性の表面コーティングによってコーティングすることによって、下げられる場合がある。疎水性コーティングは、スピンコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、または化学蒸着、または他の方法によって、施される場合がある。
【0059】
場合によっては、フルオロカーボン・コンフォーマルコーティングを選ぶことが望ましく、それは、誘電体(電気パッドの帯電から液滴を絶縁させ、一方で電界が伝播することが可能となる)、および疎水性(接着力を低下させ、および滑らかな液滴の動きを可能にする)コーティングの両方として作用する場合がある。
【0060】
(b)表面トポグラフィー修飾
誘電体の表面における疎水性を引き起こすために、そのトポグラフィーは微視的なレベルで修飾される場合がある。そのような修飾は、マイクロピラー(micropillars)、またはミクロスフェアの堆積を作成するために、表面をパターン化することを含む場合がある。
【0061】
(i)マイクロピラーの作成
図9Aを参照すると、マイクロピラー構造(910)は誘電体の層(130)のフィルム上に作成される場合がある。電極アレイの上の、この一番上の層は、疎水性表面として作用する。
【0062】
図9B、9C、および9Dを参照すると、マイクロピラー構造は、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、マイラー、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、他のフルオロカーボンベースのポリマー、または他の低表面エネルギーのポリマーでできた第1の熱接着ポリマー膜(920)によって、電極上の誘電体として、作成される場合がある。ポリマー表面は、寸法1μmから5μmの孔を有しているポリカーボネート膜(またはテンプレートとしての他の多孔膜)などのマイクロピラー・テンプレート(922)に対して、プレスされる場合がある。
図9Cを参照すると、ポリカーボネートのマイクロピラー・テンプレートは、熱と圧力によって(924)、誘電体膜にそれ自体を押印する場合がある。
図9Dを参照すると、ポリカーボネート膜がはぎとられるとき、それは微視的なピラーのような構造(910)を残す。
【0063】
別の選択肢において、マイクロピラー構造(910)は、(電極アレイが平坦化された後で)平坦化された電極アレイ上に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーで作成される場合がある。この方法の中で、PDMSエラストマーはスピンコーティング法によって薄膜フィルムとしてキャストされる場合がある。その後、ポリカーボネート膜はPDMS表面に対してプレスされる場合がある。PDMS細胞膜は強固にするために硬化させられる場合がある。その後、ポリカーボネート膜は溶かされる場合がある。
【0064】
他の選択肢において、ポリマー(ETFE、PTFE、FEP、PFA、PP、マイラー、PVDC)またはエラストマー(PDMS、シリコーン)は、電極アレイに接着され、次に、マイクロピラーを作成するためにレーザーでエッチングされる場合がある。
【0065】
別の選択肢において、フォトレジスト材料は電極アレイに堆積され、次に、マイクロピラーを作成するためにレーザーでエッチングされる場合がある。フォトレジストはまた、フォトリソグラフィ技術を使用して、パターンを付けられ、およびエッチングされてもよい。
【0066】
(ii)ミクロスフェア
図9Eを参照すると、滑りやすい、または接着が少ない表面を得るためのトポグラフィー修飾の代替的な方法は、粒径200nmから2μmのミクロスフェア(930)を堆積することによる。ミクロスフェアは表面を疎水性にするために密に詰められる場合がある。そのようなミクロスフェア粒子の好適な候補はシリカビーズである。表面を滑りやすくするために、これらのミクロスフェアは有機官能性アルコキシシラン分子によって被覆される場合がある。あるいは、フルオロカーボンベースのミクロスフェア(PTFE、ETFE)が堆積される、付加的なコーティングを必要としない場合がある。
【0067】
II.D.滑りやすい液体コーティング、および液体上への液体のエレクトロウェッティング(LLEW)
II.D.1.LLEWの薄膜液体層上の液滴
LLEWにおいて、液滴は、潤滑性を与える、低表面エネルギーの油の薄膜フィルム上に乗る場合がある。油の薄膜フィルムは低表面エネルギーのテクスチャ加工された固体表面上に形成される場合がある。テクスチャ加工された固体と潤滑油は、潤滑油が固体を完全に湿らせるのに適し、および、優先的に液滴と相互作用しないままでいるように、選択され得る。一旦、テクスチャ加工された固体の本体が油で満たされれば、油の薄層は油で満たされた物体の真上に形成される。上部の油層のセルフレベリング性は、下地表面のトポグラフィーにおけるいかなる非均一性も隠し得る。従って、顕著な粗さ(何十マイクロメーターもの)を備えた電極アレイの表面は、潤滑油の薄膜フィルムによって、ほとんど分子レベルの滑らかな表面に変換され得る。
【0068】
この分子レベルの滑らかな表面は、液滴の動きにごくわずかな摩擦しかもたらさず、および、液滴は液滴固定をほとんど或いはまったく受けない場合がある。そのような滑らかな表面上の液滴は、ごく小さな接触角ヒステリシス(2度程度に低い)を有する場合がある。結果として接触角ヒステリシスが低く、および液滴固定が生じなければ、激しい液滴操作についても非常に低い作動電圧(1Vから100V)がもたらされる場合がある。
【0069】
固体の本体における油は、固体のテクスチャを成す不規則性または穴の中に捕捉されている場合がある。テクスチャがない滑らかな表面上の油の層とは反対に、テクスチャ加工された固体における油は、固体の表面に対する十分な親和性、および分子の相互作用を持つことで、重力の影響を減らす場合がある。テクスチャによる油の捕捉は、表面が、傾けられたか上下逆さまである時に、その油層とその特性を保持することを可能にする場合がある。油が固体の表面を去らないため、動かされている液滴は潤滑油上に乗り、および、それは、下層にあるテクスチャ加工された固体とではなく、潤滑油の表面のみと相互作用する。その結果、液滴は下層にある固体上にトレールをほとんど或いはまったく残さない場合がある。油が液滴と混ざらない場合、液滴は、経路を通過する2つの連続する液滴間の混濁を伴わずに、液体フィルム層の上を動く場合がある。
【0070】
テクスチャ加工された固体は規則的な、または不揃いのミクロ・テクスチャの固体であり得る。例としては以下が挙げられる:
・ミクロン・スケールの、規則的に間隔を置かれた微視的なピラー構造を有する固体。
・規則的に間隔を置かれた空隙を備えた固体;空隙はいかなる任意形状であってよい。
・ファイバーのランダム行列。
・ミクロン・スケールの、不規則に間隔を置かれた微視的なピラー構造を有する固体。
・規則的に間隔を置かれた空隙を備えた固体;空隙はいかなる任意形状であってよい。
・多孔性テフロン、多孔性ポリカーボネート、多孔性ポリプロピレン、多孔性の紙、および多孔性の織物などの多孔質材料が、不規則な、または規則的なマイクロテクスチャを加工された固体として使用され得る。
【0071】
潤滑油は、シリコーンオイル、DuPont Krytox oil、Fluorinert FC-70、または他の油などの、いかなる低エネルギーの油であってもよい。潤滑油は、液滴と混ざらないように選択される場合がある。液滴の溶媒と混ざらない潤滑剤は、液滴から油およびその逆への内容物の拡散が少ない潤滑剤または油の上に乗る液滴の性能を高める場合がある。潤滑油の粘度は、エレクトロウェッティング中の液滴の移動性に影響し;粘度が低くなるとより移動性が高くなる。適切な潤滑油は、一般に不揮発性であり、およびその上に乗る対象の液滴と混ざらない。液滴が生物学的構成物を含んでいる場合、生物学的適合の油が望ましい場合がある。インキューベーションのための、および熱サイクリング(例えば、ポリメラーゼチェーンリアクションを目的とする)ためのオンチップ加熱要素を備えたLLEWデバイスにおいて、油は加熱および高温に耐えるように選択される場合がある。十分に高い誘電率を備えた油は、液滴の動きを引き起こす作動電圧を低下させる場合がある。
【0072】
II.D.2.LLEWに対してテクスチャ加工を施した固体を作成
LLEWにおいて、油で満たされた、テクスチャ加工された固体は、電極アレイと液滴との間の電気的な障壁として作用し、およびまた、液滴の動きに対して滑りやすい表面を提供する場合がある。テクスチャ加工された誘電体表面が電極アレイ上に作成され得る、多くの異なった方法がある。
【0073】
テクスチャ加工された固体表面は、ポリマーまたは他の誘電体材料をフィルムとして結合することにより、電極アレイ上に形成される場合がある。フィルムそれ自体が、電極アレイに接着する前にテクスチャ加工されている場合がある。あるいは、テクスチャ加工されていないフィルムが電極アレイに接着され、その後、レーザーエッチング、化学エッチング、またはフォトリソグラフィ技術のいずれかによって、テクスチャ加工される場合がある。
【0074】
あるいは、フォトレジスト(SU-8)などの写真感光材料の層が電極アレイ上にコーティングされる場合がある。フォトレジストは、化学エッチング、レーザーエッチング、または他のフォトリソグラフィ技術によって、パターンを付けられる場合がある。
【0075】
あるいは、テクスチャ加工された固体は、PDMSなどのエラストマー材料の極薄層を電極アレイの上に対してコートし、および次に、選択的に穴を作成するためにソフトリソグラフィ技術を使用することによって、作成される場合がある。薄いエラストマー層の作成に続いて、PDMSの表面は、テクスチャを作成するためにレーザーエッチングもされる場合がある。
【0076】
あるいは、テクスチャ加工された固体は以下のように作成される場合がある。
・コンフォーマルコーティングまたは液体現像型(photoimageable)(LPI)ソルダマスク、またはドライフィルム現像型ソルダマスクを適合する工程
・レーザーで、または物理的なスタンピングによって、このコーティングの表面をエッチングする工程。
・直接、電極アレイ上に、ポリマー材料のメッシュを増殖させる工程。
・必要な構造を得るために一度に1つの分子を増殖させる工程。
【0077】
II.D.3.テクスチャ加工を施した固体に潤滑油を塗布
テクスチャ加工された固体層は、スピンコーティング、スプレーイング、浸漬コーティング、ブラッシングによって、またはリザーバから分配することによって潤滑油で満たされる場合がある。
【0078】
潤滑油は、デバイスの周囲において物理的または化学的な障壁を作成することにより、LLEWチップから流れ出ないようにすることができる場合がある。
【0079】
III.液体上への液体のエレクトロウェッティング(LLEW)の固有特性
LLEWアレイには生物学的サンプルの操作にとって望ましい2つの固有特性がある。LLEWアレイにそのように滑らかな面があるため、エレクトロウェッティング作動電圧は著しく低減される場合がある。さらに、LLEWの表面の構造は、液滴が後に残すトレールを低減させること、また同様に掃除機構を改善すること、によって、標本間の相互汚染を減少させる。
【0080】
III.A.低作動電圧
LLEW電極アレイ上の油の表面のほとんど分子レベルの滑らかさは、液滴固定を減少させるか、または、排除する場合がある。油の表面に乗る水溶液である液滴は、表面からの抵抗をほとんど或いはまったく受けず、従って、進行角と後退角の間の小さな差が生じる。これらの2つの現象の排除は結果として低い作動電圧をもたらす場合がある。液滴は1V程度の低い電圧で始動する場合がある。
【0081】
LLEWデバイスにおいて、油の薄層の上に乗る液滴は決して、油より下の固体誘電体基板に物理的に接しない。このことは、後に残される材料の量を、および従って、同じスポットを通過するサンプル間の相互汚染を、減らすかまたは排除し得る。
【0082】
III.B.LLEWデバイス表面の洗浄による清掃
LLEWデバイスがほこりなどの固形微粒子で汚染される時、掃除ルーチンの一部として、液体フィルム表面から汚染物質を取り除くために、液滴は汚染物質の上で操られる場合がある。この掃除ルーチンはエレクトロウェッティングデバイスの全表面を清潔にするためにさらに拡張され得る。例えば、掃除ルーチンは相互汚染を減少するために、LLEWの微小流体チップ上の2つの生物学的実験の合間に使用されてもよい。場合によっては、液滴が長時間ひとつの場所にとどまる時、少数の分子が液滴から下の油に拡散する場合がある。液滴によって、拡散を通じて後に残されたいかなる残留物も、同様の洗浄ルーチンで掃除され得る。
【0083】
液滴がLLEWデバイス上で移動されるにつれて、液滴が油のフィルムを表面から運んで枯渇させる場合がある。表面上の油は外部リザーバ、例えば、インクジェットカートリッジ、シリンジポンプ、または他の分配機構からから油を注入することによって補充され得る。
【0084】
2つの連続する実験の合間に、相互汚染を防ぐために、潤滑油表面は完全に洗い流され、新鮮な油の層と取り替えられる場合がある。
【0085】
IV.エレクトロウェッティングの適用
IV.A.任意の大型オープンフェース
液滴は、電極アレイとカバープレート(中性ガラス、または上層電極アレイ、または単純に、唯の大きな外側電極)の間にそれらをはさまずに、開放表面上で操作されてもよい。時に、液滴より上のカバープレートは、液滴と物理的に接触しないように使用されてもよい。
【0086】
開放表面および任意に広い領域の上の電極アレイおよびエレクトロウェッティングは、1ナノリットルと1ミリリットル(6桁分離れている)の間の量の液滴の駆動を可能にする。この実装は、マルチスケールの流体操作を単一デバイス上でデジタル的に示す。
【0087】
任意に大きなサイズの電極の2次元アレイ(グリッド)は、エレクトロウェッティング液滴駆動のために準備され得る。確定された一次元の軌道に比べ、2次元アレイは、液滴に複数の経路をもたらす。これらのグリッドは、2つの異なる組成物の液滴間における相互汚染を避けるために、活用され得る。例えば、二次元のグリッドは、複数の液滴が並列に始動することを可能にする場合がある。異なる溶質を伴う液滴は、汚染を減らすために個別の平行軌道上に実行される場合がある。複数の別個の生物学的実験は並列において実行される場合がある。
【0088】
IV.B.液滴の動き、統合、分割
液滴は、エレクトロウェッティングデバイスの開放表面上で、動かされ、統合され、および/または分割される場合がある。同じ原理は2つのプレート構成(間にはさまれた液滴)に当てはまる。
【0089】
図10A、10Bおよび10Cは、アレイ電極(120)上の液滴(110)の動きを示す。
図10Aにおいて、電極(120i)に電圧を印加することで上に重なる表面を親水性にし、その後、液滴は次に中にしみ込むことができる。電圧が電極(120i)から取り除かれ、別の隣接電極(120j)に印加される時、
図10Cにおいて示されるように、表面はもとの疎水性の状態に戻り、および液滴は押し出される。電極グリッドに印加された電圧を連続して制御することによって、液滴の表面上の位置は正確に制御され得る。
【0090】
図10D、10Eおよび10Fを参照すると、2つの液滴は統合され得る。2つの液滴が同じ電極(120k)に向かって引かれる時、それらは自然に表面張力により統合する。この原理は、複数の電極にわたって広がるより大きい体積の液滴を作成するために多くの液滴を統合することに応用することができる。
【0091】
図10G、10Hおよび10Iを参照すると、液滴は、複数の電極(少なくとも3)にわたって印加された電圧のシーケンスによって2つのより小さな液滴に分割される場合がある。
図10Gにおいて、単一の大きな液滴は単一の電極(120l)の上に合併される。
図10Hにおいて、等しい電圧が、3つの隣接する電極に同時に印加され、およびこのことは、単一の液滴が3つの隣接する電極にわたって広がることを引き起こす。
図10Iにおいて、中心の電極(120l)を切ることは、液滴に、2つの外側の電極(120m)、(120n)に出ていくことを強いる。2つの外側の近隣する電極の両方の上の等しい電位により、液滴は、その後、2つのより小さな液滴に分かれる。
【0092】
IV.C.ラブ・イン・ボックス(Lab in a box)(デスクトップ型デジタルウェットラブ)
ここまでに記載された製造法のいかなる組合せも、このセクションにおいて述べられる応用に使用され得る。
【0093】
図11Aはデジタル微小流体に基づく「デスクトップデジタルウェットラブ」(1100)を示す。このデバイスは、種々様々の生物学的プロトコル/アッセイ/テストを自動化し得る汎用的な機械を提供する場合がある。箱には開ける、および閉じることができる蓋があってもよい。蓋は、電極アレイ上の液滴の動きを見るための透明な窓(1102)を有している場合があり、それはデジタル微小流体チップとして形成される場合がある。箱は、液滴を動かし、統合し、分割することができるデジタル微小流体チップ(100)を収容してもよく、そこで液滴は生物学的試薬を運ぶことができる。微小流体のチップにはまた液滴を150℃程度の高温まで加熱でき、または-20℃程度の低温まで冷却できる1つ以上の加熱器または冷却器(1128)を有し得る。
【0094】
液滴は1つ以上の「液体ディスペンサー」ドロッパーを通じてチップ上へと分配される場合がある。液体ディスペンサーは各々、電気流体ポンプ、シリンジポンプ、単純なチューブ、ロボット式ピペッター、インクジェットノズル、音響吐出デバイス、または、他の圧力駆動または非圧力駆動のデバイスであり得る。液滴は「カートリッジ」と呼ばれるリザーバから液体ディスペンサーに送り込まれる場合がある。「ラブ・イン・ボックス」は、微小流体チップと直接接続する、数100個に及ぶカートリッジを持っている場合がある。
【0095】
液滴は、デジタル微小流体のチップからマイクロプレート上に動かされる場合がある。マイクロプレートはサンプルを保持することができるウェルを備えたプレートである。マイクロプレートは、単一のプレート上に1から100万までの、任意の数のウェルを持ち得る。複数のマイクロプレートは箱の中のチップと接続する場合がある。微小流体チップからマイクロプレートに液滴を分配するために、様々な幾何学的形状を備えたエレクトロウェッティングチップが使用され得る。場合によっては、分配チップは、ピペットチップに似たコーンの形態であり得る。別の形態において、分配アパーチャは単にシリンダーである場合がある。別の形態において、分配機器は間にギャップを備えた2つの平行なプレートである場合がある。別の形態において、分配機器は、開放表面上で動く液滴を備えた単一の開放表面である場合がある。分配機構は、また電気流体ポンプ、シリンジポンプ、チューブ、キャピラリー、紙、ウイック、またはチップにおける唯の単純な穴などの、多くの他の機構を使用する場合がある。
【0096】
「ラブ・イン・ボックス」は、内部の温度、湿度および酸素濃度を調整するために雰囲気制御される場合がある。箱の内部は真空状態にある場合がある。
【0097】
箱の中心にあるデジタル微小流体のチップ130は取り除かれ、洗われ、交換される場合がある。
【0098】
デジタル微小流体デバイスは、様々なアッセイを行なうために、例えば光学分光器や音響トランスデューサーといったセンサーを含み得る。
【0099】
デジタル微小流体デバイスは、DNAサイズ選択、DNA精製、タンパク質精製、プラスミド採収、および磁気ビーズを使用する他のあらゆる生物学的ワークフローのために、磁気ビーズベースの分離ユニットを含む場合がある。デバイスは、同時に多くの--1つのチップ上で1から10万の--磁気ビーズベースのオペレーションを実行する場合がある。
【0100】
ボックスは、最上部、側面および底部からチップを見る複数のカメラを装備している場合がある。カメラは、チップ上で、液滴を位置決めし、液滴の体積を測定し、混合度を測定し、および進行中の反応を分析するために使用されてもよい。これらのセンサーからの情報は、電極への電気的なフローを制御するコンピューターへフィードバックとして提供されてもよく、その結果、正確な液滴の位置決め、混合などにより高スループットレートを達成するように、液滴が正確に制御され得る。
【0101】
ラブ・イン・ボックスは、プレートスタンピング、連続希釈、プレート複製、およびプレート再配置のような、マイクロプレートのオペレーションを実行するために使用されてもよい。
【0102】
ラブ・イン・ボックスは、PCR増幅およびDNAアセンブリー(ギブソン・アセンブリー、ゴールデンゲート・アセンブリー)、分子クローニング、DNAライブラリ作製、RNAライブラリ作製、DNA塩基配列決定、単一細胞ソーティング、細胞インキューベーション、細胞培養、細胞アッセイ、細胞溶解、DNA抽出、タンパク質抽出、RNA抽出、RNAおよび無細胞のタンパク質発現のための機器を含む場合がある。
【0103】
IV.D.処理ステーション
エレクトロウェッティングチップ(ラブ・イン・ボックスのエンクロージャの有無に関わらず)は、各種機能のための1つ以上のステーションを含む場合がある。
【0104】
IV.D.1.混合ステーション
図11Bを参照すると、エレクトロウェッティングデバイスは1つ以上の混合ステーション(1120)を組込む場合がある。左側においては、並列で作動する場合がある、エレクトロウェッティング・ベースの混合ステーションの2×2集合がある。単一のミキサー(1120)には駆動電極の3×3グリッドがある。混合ステーション(1120)は各々生物学的サンプル、化学試薬、および液体を混合するために使用されてもよい。例えば、2つの試薬の液滴は混合ステーションに一緒に運ばれ、次に、統合された液滴を、3×3グリッドの外側の8つの電極を周るように動かすことにより、または、2つのもとの液滴を混合するように設計された他のパターンを通して動かすことにより、混合される場合がある。各ミキサー間の中心から中心の距離は、標準96ウェルプレートの間隔と同等に、9mmであってよい。
【0105】
並列混合ステーション(1120)は多くの異なる構成をもつように拡張される場合がある。単一の混合器は各々、A×Bパターン(1122)の任意数の駆動電極で構成される場合がある。さらに、混合器間の間隔は任意で、応用(他のSDSプレートなどの)に適合するために変更される場合がある。並列混合ステーションは、またM×Nパターン(1122)の中にいかなる数の個別の混合器を有してもよい。並列混合ステーションは、オープンフェースのプレート、閉じたプレート、または液体の流入口がある閉じたプレートを含む、しかし限定されない、トッププレートのいかなる構成も持ち得る。
【0106】
IV.D.2.インキュベーションステーション
図11Cを参照すると、エレクトロウェッティングチップは1つ以上のインキュベーションステーション(1128)を含む場合がある。個別のインキュベーター(1128)は各々、混合、加熱(例えば150℃に及ぶ温度に)、冷却(例えば-20℃に)などの、液体サンプルに適用される1つ以上の機能を統合する場合があり、蒸発による流動性の欠損を補うとともに、サンプルの温度を均質化する。加熱または冷却は、基板における熱電対または蒸発熱交換器によって遂行される場合がある。場合によって、個別化された発熱要素は、各要素の熱伝達出力およびステーション間の熱伝導レベルに応じて、各ステーションが個別の温度(例えば、-20℃、25℃、37℃、95℃)に制御されることを可能にする場合がある。
【0107】
並列インキュベーションステーションは、いずれかの並列混合ステーションと同じ構成に構成される場合がある。
【0108】
IV.D.3.磁気ビーズステーション
図11Dを参照すると、磁気ビーズ洗浄ステーション(1134)は、核酸、タンパク質、細胞、緩衝剤、磁気ビーズ、洗浄緩衝剤、溶離緩衝剤、および他の液体(1136)を備えたサンプルを電極グリッド上に含む場合がある。ステーションは、連続する順序で、核酸単離、細胞単離、タンパク質単離、ペプチド精製、バイオポリマーの単離または精製、免疫沈降、インヴィトロの診断、エキソソーム単離、細胞活性化、細胞伸長、および/または特定の生体分子の単離を実行するために、サンプルと試薬を混合し、加熱または他の処理を適用するように構成される場合がある。液体の混合および加熱に加えて、磁気ビーズステーションは各々、強い、および変化する磁場を局所的に発生および停止する能力を有する場合があり、これにより、例えば、磁気ビーズがエレクトロウェッティングチップの底に動く。磁気ビーズステーションは各々、エレクトロウェッティングの力、または他の力によって、過剰な上澄み液および洗液を取り除く能力も有している場合がある。
【0109】
場合によっては、サンプルが単一プレートのエレクトロウェッティングデバイスを備えた開放表面上にあってもよい。場合によっては、サンプルは2つのプレートの間にはさまれていてもよい。並列混合ステーションについて上に記載されるように、複数の磁気ビーズステーションは並列で作動するように構成される場合がある。
【0110】
IV.D.4.核酸送達ステーション
図11Eを参照すると、エレクトロウェッティングチップは1つ以上の核酸送達ステーション(1140)を含む場合がある。個別の並列核酸送達ステーションは各々、様々な挿入方法によって細胞の中へ遺伝子材料(1142)、その他の核酸および生物製剤を挿入するように設計される場合がある。この挿入は、強磁界の適用、強電界の適用、超音波の適用、レーザー光線の適用、または他の技術により実行される場合がある。1つ以上の核酸送達ステーションがエレクトロウェッティングデバイス上のシングルトンとして構成される場合があり、または、複数の核酸送達ステーションが並列で作動するために供給される場合がある。
【0111】
IV.D.5.光学検査ステーション
図11Fおよび11Gを参照すると、光学的な検知およびアッセイ方法を使用する1つ以上の光学検査ステーション(1150)が、エレクトロウェッティングデバイス(100)上に提供される場合がある。光源(1152)(広域スペクトル、単一周波数、または他の、照明)は、光を調節するために光学系(1154)(フィルタ、回折格子、鏡、など)を通して経由され、および、次に、エレクトロウェッティングデバイス上に位置するサンプル(1156)を照らす場合がある。エレクトロウェッティングデバイスの反対側の光学的検知器は、分析のためにサンプルを通り抜ける光のスペクトルを検知するように構成される。光学検査は、核酸濃度の測定、核酸の質の測定、細胞密度の測定、2つの液体間の混合度合いの測定、サンプル体積の測定、サンプルの蛍光度の測定、サンプルの吸収度の測定、タンパク質定量化、比色定量のアッセイ、および他の生物学的アッセイのために使用される場合がある。
【0112】
図11Fにおいて示されるように、サンプル(1156)は単一のプレート・エレクトロウェッティングデバイス(100)を備えた開放表面上にあってもよい。
図11Gにおいて示されるように、サンプル(1156)は2枚のプレート(100)、(1160)の間にはさまれる場合がある。場合によっては、エレクトロウェッティングチップおよび電極は透明であり得る。場合によっては、光源からの光がサンプルを通り抜けて光学的検知器に届くことを可能にするために、または、サンプル、試薬、もしくは反応物を導入するために、サンプルが設置される電極に孔があってもよい。
【0113】
図11Hを参照すると、光学的検知(1150)は、2×2サンプルフォーマット、光学的検知のための96ウェルのプレートフォーマット、または、M×Nフォーマットで配置されたサンプルに対して実行され、これにより100万のサンプルに至り得る。サンプルおよび対応する測定単位は、いかなる規則的な、および不規則なフォーマットに配置されてもよい。
【0114】
IV.D.6.音響液体ハンドラー、またはマイクロダイアフラムベースのポンプディスペンサーを介したロード/アンロード
図11Iおよび11Jを参照すると、エレクトロウェッティングデバイスは、ソースウェル、プレート、またはリザーバから、エレクトロウェッティングチップ(100)に、生物学的試料、化学試薬、および液体を乗せるために1つ以上のステーション(1160)を含む場合がある。
【0115】
図11Iにおいて、液滴は、音響液滴吐出によってエレクトロウェッティング表面に乗せられる場合がある。ソースプレートは、ウェル(1164)において液体を保持する場合があり、および音響結合流体(1166)を介して圧電トランスデューサー(1162)と結合される場合がある。圧電音響トランスデューサー(1162)からの音響エネルギーは、ウェル(1164)の中のサンプルに集中される場合がある。
図11Iにおいて、エレクトロウェッティングチップ(100)は最上部に置かれ、裏返されていることに注意されたい。付加的な湿潤力が電圧によって誘導されるため、液滴(110)がエレクトロウェッティングチップ(100)に付着し、このことは装置(1160)の液滴ソーティング機能に寄与することに注意されたい。音響エネルギーによってウェル(1164)から吐出された液滴(1168)は、上部のエレクトロウェッティングデバイス(100)に付着するか、または音響注入ステーションへ動かされた液滴に取り込まれる場合がある。
【0116】
図11Jを参照すると、エレクトロウェッティングデバイスは、マイクロダイヤフラムポンプ式(1184)のディスペンサーによって生物学的サンプル、化学試薬、および液体(1182)をエレクトロウェッティングチップ上に乗せるように設計された1つ以上のステーション(1180)を含む場合がある。
【0117】
図11Iの音響液滴吐出技術またはマイクロダイヤフラムポンプ(1184)のどちらも、ピコリットル、ナノリットル、またはマイクロリットルの体積の流動性液滴を分配するために使用され得る。ソースプレートより上に(
図11I)配置されたエレクトロウェッティングデバイス(100)は、エレクトロウェッティングの力によって、ウェルプレートから吐出された液滴(1168)を捕らえ、および液滴を保持する。この方法において、核酸、タンパク質、細胞、塩、緩衝剤、酵素、およびあらゆる他の生物学的および化学的試薬を含んでいるサンプルがエレクトロウェッティングチップ上に分配され得る。ある代替のバージョン(
図11J)において、エレクトロウェッティング・プレート(100)は最低部にあり、および音響液滴吐出トランスデューサー(
図11Iの(1162))、または、マイクロダイヤフラムポンプ(1184)は最上部にある。マイクロダイヤフラムポンプ(1184)への流量を測定するために、投入弁(1186)、および、より大きなマイクロダイヤフラムポンプ(1188)が使用されてもよい。この方法において、ディスペンサーは、エレクトロウェッティングチップのあらゆる場所にサンプルを置くために使用され得る。
【0118】
場合によっては、エレクトロウェッティングチップは開放プレート構成(第2のプレートはない)にあり、および、液滴はチップに直接に乗せられる場合がある。場合によっては、エレクトロウェッティングチップは、電極アレイと接地電極の間に、液滴をはさむ、第2のプレートを有する場合がある。場合によっては、第2のプレート(接地を伴う、または接地を伴わないカバープレート)は、液滴を通過させるために孔を有している場合がある。場合によっては、液滴は、開放プレート上に最初に乗せられ、および、次に、第2のプレートが加えられる場合がある。場合によっては、エレクトロウェッティングチップ上に乗せられた液体は、チップが音響リキッドハンドラーの内部にあるときにワークフローを実行するように準備されている。場合によっては、エレクトロウェッティングチップ上に乗せられた液体は、チップが音響リキッドハンドラー、またはマイクロダイヤフラムポンプの外部に位置決めされる時、ワークフローを実行するために準備されている。場合によっては、ワークフローが実行されている時、液体はエレクトロウェッティングチップ上に乗せられる。場合によっては、音響液滴注入器またはマイクロダイヤフラムポンプは、エレクトロウェッティングデバイス上で動きできる、位置決め可能なキャリッジ(いくぶん3Dプリンター・ノズルのような)に取り付けられ、その結果、液滴がエレクトロウェッティングデバイス上の特定箇所に注入される場合がある。
【0119】
液滴を導入する、または注入するための他の選択肢は、インクジェットプリンターのインクジェットノズル、シリンジポンプ、キャピラリーチューブ、またはピペットを含み得る。
【0120】
場合によっては、ソースおよび行き先の両方がエレクトロウェッティングチップであり得る。このシナリオにおいて、チップは電極アレイが互いに対面しているように構成される場合がある。場合によっては、液滴は、音場または電場、および差動湿潤親和性を使用して、上下のエレクトロウェッティングチップ間で、または前後のエレクトロウェッティングチップ間で、移動される場合がある。ここで、チップの両側に音響トランスデューサーおよび結合流体がある。場合によっては、エレクトロウェッティングチップ上のサンプルがソースであり、およびウェルプレートが行き先であり得る。ここで、サンプルは、音響液滴吐出を使用して、エレクトロウェッティングチップからウェルプレート上へ移動される。
【0121】
ウェルプレート中のウェル間の間隔、および従って、エレクトロウェッティングチップに液体が乗せられる(およびそこから離れて動かされる)フォーマットは、標準のウェルプレート形態、または他のSDSウェルプレート・フォーマット、またはいかなる任意のフォーマットでもよい。プレート中のウェルの数は、1から100万の範囲におけるいかなる任意の数であってもよい。
【0122】
音響液滴吐出デバイスまたはマイクロダイヤフラムポンプデバイスからサンプル乗せられたエレクトロウェッティングチップは、混合ステーション、インキュベーションステーション、磁気ビーズステーション、核酸送達ステーション、光学検査ステーションなどの機能のうち1つ以上と組み合わされる場合がある。
【0123】
V.代替的な実施形態
V.A.開放表面上にあり(単一プレート構成)、2つのプレート間に挟まれた(二重プレート構成)液滴
図12Aを参照すると、エレクトロウェッティング液滴操作のために、液滴は開放表面(単一のプレート)(1200)、(100)の上に配置されるか、または、2枚のプレート(二重プレート)(100)(1202)、(1210)の間にはさまれる場合がある。二重プレート構成(1202)において、液滴は、典型的には100μm~500μmずつに区切られて、2枚のプレート(100)、(1210)の間にはさまれ得る。2枚プレート構成は、片側に作動電圧を供給するための電極(120)を有し、同時に、反対側(1210)には基準電極(典型的に共通接地信号)を供給する。2枚プレート構成における基準電極への液滴の一定の接触によって、液滴に対する電場からの力がより強くなり、および従って液滴に対するロバスト制御がもたらされる。2枚プレート構成(1210)の液滴は、より低い作動電圧で分離され得る。単一プレート構成(1200)において、駆動電極と基準電極は同じ側にある。
【0124】
2枚プレートのエレクトロウェッティング・システムは上に記載された表面処理によって改良される場合がある。2枚プレートのシステムにおいて、液滴は小さな距離で隔てられたプレートの間にはさまれる。プレート間の空間は別の流体または単なる空気で満たされる場合がある。上に記載された技術を使用して、2μm、1μmまたは500nmまで2枚のプレートの液体に面する表面を平滑化することで、2枚のプレート・システムが、低電圧で作動し、液滴固定が低減され、残置される軌道が低減され、相互汚染が低減され、およびサンプルの損失が低減され得る。
【0125】
V.B.オプトエレクトロウェッティングとフォトエレクトロウェッティング
図12Bおよび12Cを参照すると、アレイ電極に電位を直接印加することはエレクトロウェッティングを使用して、液滴を作動させる1つの方法である;しかしながら、この従来のエレクトロウェッティング機構と異なる代替のエレクトロウェッティング機構がある。両方とも液滴を作動させるために光を使用する、それら2つの注目すべき機構は、以下に記載される--オプトエレクトロウェッティングおよびフォトエレクトロウェッティング。上に記載された、エレクトロウェッティングアレイを製造し、滑らかな表面および滑りやすい表面を作成するための一般的な原理は、先に記載された従来のエレクトロウェッティングに適用可能であるだけでなく、オプトエレクトロウェッティングおよびフォトエレクトロウェッティング、およびエレクトロウェッティングの他の形態にも、適用可能である。
【0126】
液体フィルムは「液体上への液体のオプトエレクトロウェッティング」をもたらすために光伝導体のグリッドに置かれる場合がある。潤滑液体層の電極のグリッドを有する代わりに、グリッドは、光活性の光伝導体から、パッドのグリッドに、または単一の光伝導の回線として、形成される場合がある。光伝導体を照らした光は、パターンを形成し、およびエレクトロウェッティング効果をもたらす場合がある。クスチャ加工された固体および油は、下地表面が差動湿潤性を生じるために光に露出されるように、光に対して十分に透過性であるように選択される場合がある。
【0127】
V.C.オプトエレクトロウェッティング
図12Bを参照すると、オプトエレクトロウェッティング機構(1230)は、交流電源(1234)が取り付けられた従来のエレクトロウェッティング回路(左側の(100))の真下にある光伝導体(1232)を使用する場合がある。正常(暗い)条件の下では、システムのインピーダンスの大多数は光伝導性の領域(1232)(それが非伝導性であるので)にあり、および、従って、電圧降下の大多数がここで生じる。しかし、光(1236)がシステム上に照らされる時、キャリア生成と再結合は光伝導体(1232)の導電率にスパイクを生じさせ、および、光伝導体(1232)にわたる電圧降下は低減される。その結果、絶縁層(130)にわたって電圧に応じて電圧降下が生じ、(1238)に対する(540)の接触角を変化させる。
【0128】
V.D.フォトエレクトロウェッティング
通常のエレクトロウェッティングは誘電体をコーティングされた導体(液体(110)/絶縁体(130)/導体(120)のスタック)上に位置する液滴において観察されるが、フォトエレクトロウェッティングは、導体(120)を半導体(1252)に取り替える(液体/絶縁体/半導体のスタック)ことにより観察される場合がある。
【0129】
半導体(1252)のバンドギャップの上の入射光(1254)は下層にある半導体(1252)の空乏領域で電子正孔ペアの作成を介して光に引き起こされたキャリアを作成する。これは、絶縁体/半導体スタック(130)/(1252)の静電容量の修飾につながり、スタックの表面に留まる液滴の接触角の修飾をもたらす。図は、フォトエレクトロウェッティング効果の原理を例示する。ゼロバイアス(0V)では、絶縁体が疎水性の場合、伝導する液滴(1258)には大きな接触角(左画像)がある。バイアスが増加される(p型半導体にはポジティブ、n型半導体にはネガティブ)とき、液滴(1260)は広がる-すなわち接触角は縮小される(中央の画像)。光(1254)(半導体(1252)のバンドギャップを上回るエネルギーを有する)の存在下において、液滴(1262)は、絶縁体/半導体界面(130)/(1252)で空間電荷領域の厚みの断面減少率により更に広がる(右画像)。
【0130】
V.E.ソフトウェアとハードウェア
本明細書に記載された様々な処理は、適切にプログラムされた汎用コンピューター、専用のコンピューターおよびコンピューティングデバイスによって実行される場合がある。一般的に、プロセッサ(例えば1個以上のマイクロプロセッサー、1つ以上のマイクロコントローラ、1つ以上のデジタル信号プロセッサ)は、命令(例えばメモリー、または同様のデバイスからの)を受けて、それらの命令を実行し、それによって、それらの命令によって定義された1つ以上の処理を実行する。命令は1つ以上のコンピュータープログラムで、1つ以上のスクリプト、または他の形態で具体的に表現される場合がある。処理は、1個以上のマイクロプロセッサー、中央処理装置(CPU)、コンピューティングデバイス、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサー、または同様のデバイスにおいて、またはそれらの任意の組合せにおいて実行され得る。処理を実行するプログラム、および作動のデータは、様々な媒体を使用して、保存され、送信される場合がある。場合によっては、処理を実行することができるソフトウェア命令のうちの幾つかもしくは全ての代わりに、またはそれらと組み合わせて、ハードワイヤードの回路、またはカスタム・ハードウェアが使用されてもよい。記載されたもの以外のアルゴリズムが使用されてもよい。
【0131】
プログラムとデータは、目的に対して適切な各種媒体、またはコンピューター、プロセッサ、または同様のデバイスによって読み取りおよび/または書き込みが可能な異種の媒体の組合せにおいて保存されてもよい。媒体は不揮発性の媒体、揮発性の媒体、光学的または、磁気媒体、ダイナミックRAM(DRAM)、スタティックRAM、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVD、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、空孔のパターンを備えた任意の他の物理的メディア、RAM、PROM、EPROM、FLASH-EEPROM、他のメモリ・チップ、または、カートリッジ、または他のメモリー技術を含み得る。送信メディアは、プロセッサに結合されたシステムバスを包含するワイヤーを含む、同軸ケーブル、銅線、および、ファイバーオプティクスを含む。
【0132】
データベースは、データベース管理システムまたはアドホックなメモリー構成スキームを使用して実行される場合がある。記載されたものに対する代替のデータベース構造は容易に利用され得る。データベースは、ローカルに、またはそのようなデータベース内のデータにアクセスするデバイスから遠隔に、保存される場合がある。
【0133】
場合によっては、処理は、1つ以上のデバイスと通信している(例えば通信網を介する)コンピューターを含むネットワーク環境中で実行される場合がある。コンピューターは、有線式のまたは無線式の任意の媒体(例えば、インターネット、LAN、WANまたはイーサネット、トークンリング、電話線、ケーブルライン、無線通信路、光通信線、商用オンライン・サービス・プロバイダ、掲示板システム、衛星通信リンク、上記のもののうちのいずれかの組合せ)を介して、デバイスと直接的または間接的に通信することができる。デバイスの各々は、それら自体で、Intel(登録商標)、Pentium(登録商標)、またはCentrino(商標)プロセッサをベースとするコンピューターまたは他のコンピューティングデバイスを備えていてもよく、これらは、コンピューターとの通信に適している。任意の数およびタイプのデバイスがコンピューターと通信していてもよい。
【0134】
サーバーコンピューターまたは中央に集められた権威は、必要であるか、必要でないか、または望ましい場合がある。様々な場合において、ネットワークは中央権威デバイスを含んでもよく、または含まなくてもよい。様々な処理機能は、中央権威サーバー、いくつかの分散型サーバーのうちの1つ、または他の分散型デバイス上で実行される場合がある。
【0135】
V.F.他の代替案
読者の便宜のために、上の記載は、全ての可能な実施形態のうち、本発明の原理を教示し、その実施について意図される最良の形態について伝える、代表的なサンプルに焦点を当てている。この出願およびその関連するファイル履歴の全体にわたって、用語「発明」が使用される時、それは記載された思想および原理の全集合を指し;対照的に、保護された排他的な知的財産権の形式的な定義は、排他的な制御を行う特許請求の範囲に明示される。記載は、すべての可能な変形を徹底的に列挙することを試みていない。他の記載されていない変形または改良が可能である。複数の代替実施形態が記載されるとき、多くの場合において、異なる実施形態の要素を組み合わせるか、またはここで記載された実施形態の要素を明確に記載されない他の改良または変形と組み合わせることが可能である。他の方法で明らかに明記されないかぎり、項目の列記は、項目のいずれかまたは全てが相互排他的であること、および、項目のいずれかまたは全ては任意のカテゴリーについて包括的であることを示唆しない。多くの場合において、1つの特徴または特徴の群は、記載された機器または方法の全体から別れて使用されてもよい。そのような記載されていない変形および改良の多くは、以下の特許請求の正確な範囲内にあり、および他も同等である。