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特許7449241靴用加工システム、および靴用加工システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】靴用加工システム、および靴用加工システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A43D 25/06 20060101AFI20240306BHJP
   A43D 1/08 20060101ALI20240306BHJP
   A43D 25/18 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
A43D25/06
A43D1/08
A43D25/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020564286
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2019046086
(87)【国際公開番号】W WO2021106059
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2020-11-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩下 直人
(72)【発明者】
【氏名】山出 貴士
(72)【発明者】
【氏名】若杉 晋作
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】柿崎 拓
【審判官】関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/037932(WO,A1)
【文献】特開平1-314502(JP,A)
【文献】特開平5-108131(JP,A)
【文献】特開2000-190264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0081441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43D25/06
A43D25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の靴構成部品に第2の靴構成部品を貼り合わせる前に前記第1の靴構成部品の貼り合わせ面を加工する靴用加工システムであって、
前記第1の靴構成部品を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記第1の靴構成部品の三次元形状データを取得する撮像部と、
前記貼り合わせ面の加工を行う加工部と、
前記加工部を移動する移動機構と、
前記撮像部で取得した三次元形状データに基づいて前記移動機構を制御し、前記貼り合わせ面の加工を行う前記加工部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数の前記第1の靴構成部品のうちマスターモデルとなる前記第1の靴構成部品を前記撮像部で撮像して、取得した前記マスターモデルの三次元形状データから、作業者により前記マスターモデルにあらかじめ描かれた罫書き線を境界線として特定する、または前記第1の靴構成部品に前記第2の靴構成部品を貼り合わせた前記マスターモデルを前記撮像部で撮像して、取得した前記マスターモデルの三次元形状データから、前記第1の靴構成部品と前記第2の靴構成部品との境目を前記境界線として特定し、特定した前記境界線で囲まれる前記貼り合わせ面の範囲内に前記加工部の移動経路を設定し、
前記マスターモデル以外の各々の前記第1の靴構成部品に対して、前記撮像部で撮像し各々の前記第1の靴構成部品の三次元形状データを取得して、前記境界線で囲まれる前記貼り合わせ面の範囲内にある前記マスターモデルの三次元形状と、前記撮像部で取得した前記マスターモデル以外の各々の前記第1の靴構成部品の三次元形状とのズレ量に基づき、各々の前記第1の靴構成部品の前記境界線を特定することなく、前記マスターモデルで設定した前記加工部の前記移動経路に従って移動する前記加工部の位置を補正するように前記移動機構を制御する、靴用加工システム。
【請求項2】
第1の靴構成部品に第2の靴構成部品を貼り合わせる前に前記第1の靴構成部品の貼り合わせ面を加工する靴用加工システムであって、
前記第1の靴構成部品を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記第1の靴構成部品の三次元形状データを取得する撮像部と、
前記貼り合わせ面の加工を行う加工部と、
前記加工部を移動する移動機構と、
前記撮像部で取得した三次元形状データに基づいて前記移動機構を制御し、前記貼り合わせ面の加工を行う前記加工部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数の前記第1の靴構成部品のうちマスターモデルとなる前記第1の靴構成部品に対して、前記撮像部で取得した前記マスターモデルの三次元形状データから前記貼り合わせ面の加工の範囲を設定するための前記貼り合わせ面の境界線を特定し、
前記マスターモデル以外の各々の前記第1の靴構成部品に対して、前記撮像部で撮像し各々の前記第1の靴構成部品の三次元形状データを取得して、前記境界線で囲まれる前記貼り合わせ面の範囲内にある前記マスターモデルの三次元形状と、前記撮像部で取得した前記マスターモデル以外の各々の前記第1の靴構成部品の三次元形状とのズレ量に基づき、各々の前記第1の靴構成部品の前記境界線を特定することなく、前記マスターモデルで設定した前記貼り合わせ面の加工の範囲を前記加工部で加工できるように前記移動機構で移動する前記加工部の位置を補正し
前記靴用加工システムは、特定した前記境界線の情報を前記マスターモデルの製品モデルごとに記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記マスターモデル以外の各々の前記第1の靴構成部品が前記記憶部に記憶されている前記製品モデルの場合、記憶されている前記境界線で囲まれる前記貼り合わせ面内に前記加工部の移動経路を設定し、当該移動経路に従って前記加工部を移動するように前記移動機構を制御し、
前記マスターモデル以外の各々の前記第1の靴構成部品が前記記憶部に記憶されていない前記製品モデルの場合、前記加工部で加工を行う前に、前記撮像部で当該製品モデルの前記マスターモデルの三次元形状データを取得し、当該三次元形状データから前記貼り合わせ面の加工の範囲を設定するための前記貼り合わせ面の前記境界線を特定する、靴用加工システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記マスターモデルと同じモデルでサイズ違いの前記マスターモデル以外の各々の前記第1の靴構成部品に対して、特定した前記境界線を相似変換し、相似変換した前記境界線で囲まれる前記貼り合わせ面の範囲を前記加工部で加工できるように前記移動機構を制御する、請求項1または請求項2に記載の靴用加工システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1の靴構成部品に前記第2の靴構成部品を貼り合わせた後の検査情報に基づいて、前記貼り合わせ面の加工の条件を修正する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の靴用加工システム。
【請求項5】
第1の靴構成部品に第2の靴構成部品を貼り合わせる前に前記第1の靴構成部品の貼り合わせ面を加工する靴用加工システムであって、
前記第1の靴構成部品を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記第1の靴構成部品の三次元形状データを取得する撮像部と、
靴構成部品の次元CADデータを収容するCAD装置と、
前記貼り合わせ面の加工を行う加工部と、
前記加工部を移動する移動機構と、
前記撮像部で取得した三次元形状データに基づいて前記移動機構を制御し、前記貼り合わせ面への加工を行う前記加工部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記CAD装置に収容された前記第2の靴構成部品を貼り合わせ済みの前記第1の靴構成部品の三次元CADデータに基づき前記貼り合わせ面の加工の範囲を設定するための前記貼り合わせ面の境界線を特定し、
前記撮像部で撮像された各々の前記第1の靴構成部品に対して、特定した前記境界線で囲まれる前記貼り合わせ面の範囲内に前記加工部の移動経路を設定し、当該移動経路に従って前記加工部を移動するように前記移動機構を制御する、靴用加工システム。
【請求項6】
第1の靴構成部品を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記第1の靴構成部品の三次元形状データを取得する撮像部と、第2の靴構成部品を貼り合わせる前記第1の靴構成部品の貼り合わせ面の加工を行う加工部と、前記加工部を移動する移動機構と、前記撮像部で取得した三次元形状データに基づいて前記移動機構を制御し、前記貼り合わせ面への加工を行う前記加工部を制御する制御部と、を備え、前記第1の靴構成部品に前記第2の靴構成部品を貼り合わせる前に前記第1の靴構成部品の前記貼り合わせ面を加工する靴用加工システムを制御する制御方法であって、
複数の前記第1の靴構成部品のうちマスターモデルとなる前記第1の靴構成部品を前記撮像部で撮像して、取得した前記マスターモデルの三次元形状データから、作業者により前記マスターモデルにあらかじめ描かれた罫書き線を境界線として特定する、または前記第1の靴構成部品に前記第2の靴構成部品を貼り合わせた前記マスターモデルを前記撮像部で撮像して、取得した前記マスターモデルの三次元形状データから、前記第1の靴構成部品と前記第2の靴構成部品との境目を前記境界線として特定するステップと、
特定した前記境界線で囲まれる前記貼り合わせ面の範囲内に前記加工部の移動経路を設定するステップと、
前記マスターモデル以外の前記第1の靴構成部品に対して、前記撮像部で撮像し各々の前記第1の靴構成部品の三次元形状データを取得して、前記境界線で囲まれる前記貼り合わせ面の範囲内にある前記マスターモデルの三次元形状と、前記撮像部で取得した前記マスターモデル以外の各々の前記第1の靴構成部品の三次元形状とのズレ量に基づき、各々の前記第1の靴構成部品の前記境界線を特定することなく、前記マスターモデルで設定した前記加工部の前記移動経路に従って移動する前記加工部の位置を補正するように前記移動機構を制御するステップとを含む、靴用加工システムの制御方法。
【請求項7】
第1の靴構成部品を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記第1の靴構成部品の三次元形状データを取得する撮像部と、靴構成部品の次元CADデータを収容するCAD装置と、第2の靴構成部品を貼り合わせる前記第1の靴構成部品の貼り合わせ面の加工を行う加工部と、前記加工部を移動する移動機構と、前記撮像部で取得した三次元形状データに基づいて前記移動機構を制御し、前記貼り合わせ面への加工を行う前記加工部を制御する制御部と、を備え、前記第1の靴構成部品に前記第2の靴構成部品を貼り合わせる前に前記第1の靴構成部品の前記貼り合わせ面を加工する靴用加工システムを制御する制御方法であって、
前記CAD装置に収容された前記第2の靴構成部品を貼り合わせ済みの前記第1の靴構成部品の三次元CADデータに基づき前記貼り合わせ面の加工の範囲を設定するための前記貼り合わせ面の境界線を特定するステップと、
前記撮像部で撮像された各々の前記第1の靴構成部品に対して、特定した前記境界線で囲まれる前記貼り合わせ面の範囲内に前記加工部の移動経路を設定し、当該移動経路に従って前記加工部を移動するように前記移動機構を制御するステップとを含む、靴用加工システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、靴用加工システム、および靴用加工システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
靴を製造する場合、第1の靴構成部品と第2の靴構成部品とを貼り合わせる製造工程が存在する。具体的に、第1の靴構成部品がアッパーで、第2の靴構成部品がソールである場合、アッパーの貼り合わせ面に接着剤を塗布して、当該アッパーとソールとを貼り合わせを行う製造工程がある。
【0003】
当該製造工程を自動化するシステムとして、例えば特許文献1に開示がある。特許文献1では、アッパーに描かれた罫書き線をカメラで読み取り、読み取った罫書き線で囲まれる範囲にツールの移動経路を生成することが開示されている。さらに、特許文献1では、生成した移動経路に沿ってツールの一つであるスプレーノズルを移動させて、接着剤をアッパーの貼り合わせ面にスプレーする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2014/0081441号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているシステムでは、接着剤を塗布するスプレーノズルを移動させる移動経路を生成するために、製品ごとアッパーに罫書き線を描き、当該罫書き線をカメラで読み取る必要があった。そのため、特許文献1に開示されているシステムでは、接着剤を塗布する作業をロボットなどで自動化することができても、製品ごとアッパーに罫書き線を描く作業を自動化することはできず製造工程の省力化には限界があった。
【0006】
そこで、本開示の目的は、第1の靴構成部品に第2の靴構成部品を貼り合わせる前に第1の靴構成部品の貼り合わせ面を加工する製造工程において省力化することができる靴用加工システム、および靴用加工システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態に係る靴用加工システムは、第1の靴構成部品に第2の靴構成部品を貼り合わせる前に第1の靴構成部品の貼り合わせ面を加工する靴用加工システムであって、第1の靴構成部品を保持する保持部と、保持部に保持された第1の靴構成部品の三次元形状データを取得する撮像部と、貼り合わせ面の加工を行う加工部と、加工部を移動する移動機構と、撮像部で取得した三次元形状データに基づいて移動機構を制御し、貼り合わせ面の加工を行う加工部を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の第1の靴構成部品のうちマスターモデルとなる第1の靴構成部品を撮像部で撮像して、取得したマスターモデルの三次元形状データから、作業者によりマスターモデルにあらかじめ描かれた罫書き線を境界線として特定する、または第1の靴構成部品に第2の靴構成部品を貼り合わせたマスターモデルを撮像部で撮像して、取得したマスターモデルの三次元形状データから、第1の靴構成部品と第2の靴構成部品との境目を境界線として特定し、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面の範囲内に加工部の移動経路を設定し、マスターモデル以外の各々の第1の靴構成部品に対して、撮像部で撮像し各々の第1の靴構成部品の三次元形状データを取得して、境界線で囲まれる貼り合わせ面の範囲内にあるマスターモデルの三次元形状と、撮像部で取得したマスターモデル以外の各々の第1の靴構成部品の三次元形状とのズレ量に基づき、各々の第1の靴構成部品の境界線を特定することなく、マスターモデルで設定した加工部の移動経路に従って移動する加工部の位置を補正するように移動機構を制御する。
【0008】
本開示の一形態に係る別の靴用加工システムは、第1の靴構成部品に第2の靴構成部品を貼り合わせる前に第1の靴構成部品の貼り合わせ面を加工する靴用加工システムであって、第1の靴構成部品を保持する保持部と、保持部に保持された第1の靴構成部品の三次元形状データを取得する撮像部と、靴構成部品の次元CADデータを収容するCAD装置と、貼り合わせ面の加工を行う加工部と、加工部を移動する移動機構と、撮像部で取得した三次元形状データに基づいて移動機構を制御し、貼り合わせ面への加工を行う加工部を制御する制御部と、を備え、制御部は、CAD装置に収容された第2の靴構成部品を貼り合わせ済みの第1の靴構成部品の三次元CADデータに基づき貼り合わせ面の加工の範囲を設定するための貼り合わせ面の境界線を特定し、撮像部で撮像された各々の第1の靴構成部品に対して、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面の範囲内に加工部の移動経路を設定し、当該移動経路に従って加工部を移動するように移動機構を制御する。
【0009】
本開示の一形態に係る靴用加工システムの制御方法は、第1の靴構成部品を保持する保持部と、保持部に保持された第1の靴構成部品の三次元形状データを取得する撮像部と、第2の靴構成部品を貼り合わせる第1の靴構成部品の貼り合わせ面の加工を行う加工部と、加工部を移動する移動機構と、撮像部で取得した三次元形状データに基づいて移動機構を制御し、貼り合わせ面への加工を行う加工部を制御する制御部と、を備え、第1の靴構成部品に第2の靴構成部品を貼り合わせる前に第1の靴構成部品の貼り合わせ面を加工する靴用加工システムを制御する制御方法であって、複数の第1の靴構成部品のうちマスターモデルとなる第1の靴構成部品を撮像部で撮像して、取得したマスターモデルの三次元形状データから、作業者によりマスターモデルにあらかじめ描かれた罫書き線を境界線として特定する、または第1の靴構成部品に第2の靴構成部品を貼り合わせたマスターモデルを撮像部で撮像して、取得したマスターモデルの三次元形状データから、第1の靴構成部品と第2の靴構成部品との境目を境界線として特定するステップと、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面の範囲内に加工部の移動経路を設定するステップと、マスターモデル以外の第1の靴構成部品に対して、撮像部で撮像し各々の第1の靴構成部品の三次元形状データを取得して、境界線で囲まれる貼り合わせ面の範囲内にあるマスターモデルの三次元形状と、撮像部で取得したマスターモデル以外の各々の第1の靴構成部品の三次元形状とのズレ量に基づき、各々の第1の靴構成部品の境界線を特定することなく、マスターモデルで設定した加工部の移動経路に従って移動する加工部の位置を補正するように移動機構を制御するステップとを含む。
【0010】
本開示の一形態に係る別の靴用加工システムの制御方法は、第1の靴構成部品を保持する保持部と、保持部に保持された第1の靴構成部品の三次元形状データを取得する撮像部と、靴構成部品の次元CADデータを収容するCAD装置と、第2の靴構成部品を貼り合わせる第1の靴構成部品の貼り合わせ面の加工を行う加工部と、加工部を移動する移動機構と、撮像部で取得した三次元形状データに基づいて移動機構を制御し、貼り合わせ面への加工を行う加工部を制御する制御部と、を備え、第1の靴構成部品に第2の靴構成部品を貼り合わせる前に第1の靴構成部品の貼り合わせ面を加工する靴用加工システムを制御する制御方法であって、あらかじめ用意された第2の靴構成部品を貼り合わせ済みの第1の靴構成部品の三次元CADデータに基づき貼り合わせ面の加工の範囲を設定するための貼り合わせ面の境界線を特定するステップと、撮像部で撮像された各々の第1の靴構成部品に対して、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面の範囲内に加工部の移動経路を設定し、当該移動経路に従って加工部を移動するように移動機構を制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一形態によれば、マスターモデルの三次元形状データから貼り合わせ面の加工の範囲を設定するための貼り合わせ面の境界線を特定し、各々の第1の靴構成部品を加工するので、各々の第1の靴構成部品に対しての境界線を特定する作業を省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態1に係る靴用加工システムの構成例を示す概略図である。
図2】本実施の形態1に係る靴用加工システムの制御装置のハードウェア構成例を示す模式図である。
図3】本実施の形態1に係る靴用加工システムのPLCのハードウェア構成例を示す模式図である。
図4】アッパーに描かれた罫書き線および移動経路を説明するための図である。
図5】境界線データベースに記憶された情報の内容を説明するための図である。
図6】本実施の形態1に係る靴用加工システムの処理を説明するためのフローチャートである。
図7】マスターモデルの三次元形状データから境界線を特定する方法の変形について説明するための図である。
図8】本実施の形態1に係る靴用加工システムの処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
図9】本実施の形態1に係る靴用加工システムの加工の条件を修正するフィードバック制御の処理を説明するためのフローチャートである。
図10】本実施の形態2に係る靴用加工システムの構成例を示す概略図である。
図11】本実施の形態2に係る靴用加工システムの処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<実施の形態1>
本実施の形態1では、本発明が適用される場面の一例について説明する。まず、本実施の形態1に従う靴用加工システムでは、第1の靴構成部品に第2の靴構成部品を貼り合わせる前に第1の靴構成部品の貼り合わせ面を加工するシステムの構成について説明する。なお、以下の実施の形態では、第1の靴構成部品をアッパー、第2の靴構成部品をソールとして説明するが、靴を構成する部品で互いに貼り合わせ部品であればアッパー、ソールに限定されない。例えば、逆の構成として第1の靴構成部品をソール、第2の靴構成部品をアッパーとしても、また、第1の靴構成部品をミッドソール、第2の靴構成部品をアウトソール、第1の構成部品をソール、第2の構成部品をトラスとしてもよい。
【0014】
図1は、本実施の形態1に係る靴用加工システム100の構成例を示す概略図である。図1を参照して、靴用加工システム100は、保持台10、カメラ20a,20b、塗布装置30、ロボットアーム40、制御装置60とを含む。さらに、靴用加工システム100には、PLC(programmable logic controller)50、ベルトコンベア70を含む。
【0015】
保持台10は、アッパー11の貼り合わせ面11aを上方に向けた状態で保持する。保持台10は、ラストと呼ばれる樹脂または金属等の足型と、当該足型を支える支持部とを含んでいる。足型は、アッパー11と接する側の反対側に支持部と接続するための穴が設けられており、この穴に支持部の棒を接続することでアッパー11の貼り合わせ面11aを上方に向けて支持部に支持される。
【0016】
アッパー11の内部に足型を挿入するようにして、アッパー11を保持台10に保持させる。これによって、アッパー11の貼り合わせ面11aを上方に向けた状態で、かつアッパー11の貼り合わせ面11aが略水平な状態で、アッパー11を保持台10に保持できる。その結果、接着剤をアッパー11の貼り合わせ面11aに塗布するなどの加工がしやすくなっている。特に、接着剤をアッパー11の貼り合わせ面11aに塗布する場合、アッパー11を保持台10に保持することで、接着剤を貼り合わせ面11aに一様に塗布しやすくなり、接着剤のむらの発生を抑制することが可能になる。
【0017】
カメラ20a,20bは、保持台10に保持されたアッパー11の三次元形状データを取得することができる。カメラ20aは、マスターモデルMのアッパー11の三次元形状データを取得するカメラであり、カメラ20bは、マスターモデルM以外の製品P1,P2,P3などのアッパー11の三次元形状データを取得するカメラである。靴用加工システム100では、マスターモデルMのアッパー11から三次元形状データを取得するカメラ20aと、製品P1,P2,P3などのアッパー11から三次元形状データを取得するカメラ20bとが別のカメラであると説明しているが、同じカメラでもよい。
【0018】
三次元形状データを取得するカメラ20a,20bでは、例えば、合焦法の技術を用いてアッパー11の三次元形状データを取得する。カメラ20a,20bが三次元形状データを取得する方法は、合焦法に限定されず、共焦点法、三角測量法、白色干渉法、ステレオ法、フォトグラメトリ法、SLAM法(Simultaneous Localization and Mapping)、光干渉断層法(Optical Coherence Tomography: OCT)などの技術を用いて三次元形状データを取得してもよい。カメラ20a,20bは、光学的な手法を用いて三次元形状データを取得する構成であればいずれの原理を用いた構成であっても適用することが可能である。
【0019】
塗布装置30は、接着剤の塗布を行う。塗布装置30は、先端に接着剤の吐出口が設けられてあり、PLC50からの制御によりは接着剤を吐出口から吐出可能に構成される。なお、本実施の形態では、アッパー11の貼り合わせ面11aに接着剤を塗布する加工について説明するため塗布装置30を設ける構成である。しかし、これに限定されずアッパー11の貼り合わせ面11aの加工であれば、何れの加工であってもよく、例えば前処理の加工、研磨加工であってもよい。靴用加工システム100は、アッパー11の貼り合わせ面11aに前処理の加工を行う場合、塗布装置30に代えて前処理材の塗布装置を含み、アッパー11の貼り合わせ面11aに研磨加工を行う場合、塗布装置30に代えて研磨装置を含む。
【0020】
塗布装置30は、ロボットアーム40のアームの先端部と連結される。ロボットアーム40は、塗布装置30を移動させたり回転させたりするためのサーボモータを含んでおり、PLC50により制御される。図1に示すロボットアーム40の構成の一例であり、いわゆる多関節型(多軸)のロボットアームである。
【0021】
制御装置60は、カメラ20a,20bで取得した三次元形状データに基づいてロボットアーム40を制御し、貼り合わせ面11aの加工を行う塗布装置30を制御する。図2は、本実施の形態1に係る靴用加工システムの制御装置60のハードウェア構成例を示す模式図である。図2を参照して、制御装置60は、プロセッサ602と、メインメモリ604と、入力部606と、出力部608と、ストレージ610と、光学ドライブ612と、USBコントローラ620とを含む。これらのコンポーネントは、プロセッサバス618を介して接続されている。
【0022】
プロセッサ602は、CPUやGPUなどで構成され、ストレージ610に記憶されたプログラム(一例として、OS6102および処理プログラム6104)を読出して、メインメモリ604に展開して実行することで、靴用加工システム100で行う貼り合わせなどの処理を実現する。
【0023】
メインメモリ604は、DRAMやSRAMなどの揮発性記憶装置などで構成される。ストレージ610は、例えば、HDDやSSDなどの不揮発性記憶装置などで構成される。
【0024】
ストレージ610には、基本的な機能を実現するためのOS6102に加えて、制御装置60としての機能を提供するための処理プログラム6104が記憶される。すなわち、処理プログラム6104は、制御装置60のプロセッサ602で実行されることで、靴用加工システム100での処理を実現する。さらに、ストレージ610には、後述する境界線に関するデータを含む境界線データベース6106が記憶されている。
【0025】
入力部606は、キーボードやマウスなどで構成され、ユーザ操作を受け付ける。出力部608は、ディスプレイ、各種インジケータ、プリンタなどで構成され、プロセッサ602からの処理結果などを出力する。
【0026】
USBコントローラ620は、USB接続を介して、他の制御装置などとの間のデータを遣り取りする。
【0027】
制御装置60は、光学ドライブ612を有しており、コンピュータ読取可能なプログラムを非一過的に記憶する記録媒体614(例えば、DVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体)から、その中に記憶されたプログラムが読取られてストレージ610などにインストールされる。
【0028】
制御装置60で実行される処理プログラム6104などは、コンピュータ読取可能な記録媒体614を介してインストールされてもよいが、ネットワーク上のサーバ装置などからダウンロードする形でインストールするようにしてもよい。また、本実施の形態に係るサポート装置600が提供する機能は、OSが提供するモジュールの一部を利用する形で実現される場合もある。
【0029】
図2には、プロセッサ602がプログラムを実行することで、制御装置60として必要な機能が提供される構成例を示したが、これらの提供される機能の一部または全部を、専用のハードウェア回路(例えば、ASICまたはFPGAなど)を用いて実装してもよい。また、図2に示した制御装置60の構成は例示であって、この構成に限定されず例えばUSBコントローラ620等を含めなくてもよい。
【0030】
PLC50は、制御装置60からの制御信号に基づき、塗布装置30、ロボットアーム40、ベルトコンベア70の動作を制御している。本実施の形態では、制御装置60とは別にPLC50を設け、PLC50で塗布装置30、ロボットアーム40、ベルトコンベア70の動作を制御しているが、制御装置60が直接、ロボットアーム40、ベルトコンベア70の動作を制御してもよい。PLC50は、制御装置60と合わせて靴用加工システム100の制御部として機能を実現している。
【0031】
図3は、本実施の形態1に係る靴用加工システムのPLC50のハードウェア構成例を示す模式図である。図3を参照して、PLC50は、主たるコンポーネントとして、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphical Processing Unit)などのプロセッサ502と、チップセット504と、主記憶装置506と、二次記憶装置508と、通信コントローラ510と、USB(Universal Serial Bus)コントローラ512と、メモリカードインターフェイス514と、ネットワークコントローラ516,518,520と、内部バスコントローラ522と、インジケータ524とを含む。
【0032】
プロセッサ502は、二次記憶装置508に記憶された各種プログラムを読み出して、主記憶装置506に展開して実行することで、標準制御に係る制御演算、および各種処理を実現する。チップセット504は、プロセッサ502と各コンポーネントとの間のデータの遣り取りを仲介することで、PLC50全体としての処理を実現する。
【0033】
二次記憶装置508には、システムプログラムに加えて、システムプログラムが提供する実行環境上で動作する制御プログラムが記憶される。通信コントローラ510は、制御装置60との間の絵制御信号、データなどの遣り取りを行う。USBコントローラ512は、USB接続を介して任意の情報処理装置との間のデータの遣り取りを担当する。
【0034】
メモリカードインターフェイス514は、メモリカード115を着脱可能に構成されており、メモリカード115に対して制御プログラムや各種設定などのデータを書込み、あるいは、メモリカード115から制御プログラムや各種設定などのデータを読出すことが可能になっている。
【0035】
ネットワークコントローラ516,518,520の各々は、ネットワークを介した任意のデバイスとの間のデータの遣り取りを担当する。ネットワークコントローラ516,518,520は、産業用ネットワークプロトコルを採用してもよい。具体的に、ネットワークコントローラ516は、塗布装置30が接続されており、塗布装置30を駆動するための信号を出力する。ネットワークコントローラ518は、ロボットアーム40が接続されており、ロボットアーム40を駆動するための信号を出力する。ネットワークコントローラ520は、ベルトコンベア70が接続されており、ベルトコンベア70を駆動するための信号を出力する。
【0036】
内部バスコントローラ522は、他のユニットとの間のデータの遣り取りを担当する。内部バスには、メーカ固有の通信プロトコルを用いてもよいし、いずれかの産業用ネットワークプロトコルと同一あるいは準拠した通信プロトコルを用いてもよい。
【0037】
インジケータ524は、PLC50の動作状態などを通知するものであり、ユニット表面に配置された1または複数のLEDなどで構成される。
【0038】
ベルトコンベア70は、製品P1~P3などのアッパー11を搬送するための搬送装置である。ベルトコンベア70では、カメラ20bでアッパー11を撮像することができる位置から、アッパー11の貼り合わせ面に接着剤を塗布することができる位置まで製品P1を搬送する。また、ベルトコンベア70には、複数の製品P1~P3が並べて載置されており、カメラ20bでアッパー11を撮像することができる位置、製品P1~P3が順次搬送される。なお、本実施の形態では、製品P1~P3の搬送をベルトコンベア70で行う例を説明しているが、カメラ20bでアッパー11を撮像することができる位置、およびアッパー11の貼り合わせ面に接着剤を塗布することができる位置に製品P1~P3を搬送することができれば他の搬送手段であってもよい。
【0039】
次に、本実施に形態1に係る靴用加工システム100の動作について説明する。靴用加工システム100では、図1に示した各構成を用いて、マスターモデルとなるアッパー11に描かれた罫書き線から貼り合わせ面11aの加工の範囲を設定するための貼り合わせ面11aの境界線を特定する。図4は、アッパー11に描かれた罫書き線および移動経路を説明するための図である。図4(a)は、マスターモデルMとなるアッパー11に描かれた罫書き線1を示している。マスターモデルとなるアッパー11には、作業者によりあらかじめ貼り合わせ面11aの境界線を示す罫書き線1が描かれている。罫書き線1は、カメラ20aで特定することが可能な塗料を用いて描かれており、作業者が可視できるか否かは問わない。
【0040】
制御装置60は、カメラ20aで取得したマスターモデルMのアッパー11の三次元形状データから貼り合わせ面11aの境界線を特定する場合、図4(a)に示すようにアッパー11の特徴点(例えば、先端2、後端3)を合わせて特定することで、罫書き線1から貼り合わせ面11aの境界線を特定しやすくなる。もちろん、制御装置60は、マスターモデルMのアッパー11の三次元形状データから先端2、後端3の特徴点を特定することなく、罫書き線1から貼り合わせ面11aの境界線を特定してもよい。
【0041】
さらに、制御装置60は、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲内に、塗布装置30が接着剤を塗布するために移動する移動経路を設定する。図4(b)は、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲内に設定された移動経路5,6が図示されている。移動経路5は、境界線に沿って塗布装置30を移動させる経路で、移動経路6は、貼り合わせ面11aの範囲に接着剤を均一に塗布するためジグザグに塗布装置30を移動させる経路である。
【0042】
制御装置60は、カメラ20aで取得した三次元形状データからマスターモデルMのアッパー11の境界線を特定した場合、特定した境界線の情報を境界線データベース6106に記憶する。図5は、境界線データベース6106に記憶された情報の内容を説明するための図である。図5に示す例では、靴品種(モデル)、部品種、靴サイズ、靴幅、及び左右に関する情報に対応付けて、境界線の情報、移動経路の情報が境界線データベース6106に記憶されている。例えば、制御装置60は、カメラ20aで取得した三次元形状データが靴品種”SH1”のマスターモデルMである場合、靴品種”SH1”の情報とともに部品種”アッパー”、靴サイズ”25.0cm”、靴幅”EE”、及び左右”右”の情報を記憶し、特定した境界線の情報を”AAA”のデータ、設定した移動経路の情報を”aaa”のデータを関連付けて記憶する。
【0043】
このように、境界線データベース6106に、境界線の情報、移動経路の情報を記憶しておくことで、同じ靴品種についてはマスターモデルMからアッパー11の境界線を特定する処理が不要となる。また、靴品種の情報以外に、靴サイズ、靴幅、及び左右に関する情報も境界線データベース6106に記憶しておくことで、異なる靴サイズ、靴幅のアッパー11の境界線を特定する場合に、境界線データベース6106に記憶されている情報利用することができる。具体的に、制御装置60は、異なる靴サイズ、靴幅のアッパー11の境界線を特定する場合、同じ靴品種の境界線の情報を相似変換する。また、制御装置60は、左右が異なるアッパー11の境界線を特定する場合、同じ靴品種の境界線の情報を対称変換する。制御装置60は、靴幅が異なるアッパー11の境界線を特定する場合、幅方向には補正係数をかける、所定の補正値を加える等の処理を行う。なお、境界線データベース6106には、同じ靴品種の境界線の情報、移動経路の情報を記憶する必要はないが、同じ靴品種で異なる靴サイズ、靴幅の境界線の情報、移動経路の情報を記憶してもよい。
【0044】
靴用加工システム100では、マスターモデルMで特定した境界線を利用して、マスターモデルM以外の製品となるアッパー11には罫書き線を描くことなく貼り合わせ面11aを加工(接着剤の塗布)する。以下に、靴用加工システム100の具体的な処理についてフローチャートを用いて説明する。図6は、本実施の形態1に係る靴用加工システム100の処理を説明するためのフローチャートである。まず、制御装置60は、カメラ20aでマスターモデルMのアッパー11の三次元形状データを取得する(ステップS11)。制御装置60は、図4(a)で説明したようにマスターモデルMのアッパー11に描かれた罫書き線1から貼り合わせ面の境界線を特定する(ステップS12)。制御装置60は、特定した境界線の情報を境界線データベース6106に靴品種ごと記憶する(ステップS13)。なお、制御装置60は、特定した境界線から図4(b)に示す移動経路を設定した場合、設定した移動経路の情報も境界線データベース6106に靴品種ごと記憶する。
【0045】
次に、制御装置60は、カメラ20bでマスターモデルM以外の製品P1,P2,P3などのアッパー11の三次元形状データを取得する(ステップS14)。制御装置60は、製品の靴サイズが、マスターモデルMの靴サイズと一致するか否かを判断する(ステップS15)。製品の靴サイズが、マスターモデルMの靴サイズと一致しない場合(ステップS15でNO)、制御装置60は、境界線データベース6106に記憶されている境界線の情報を相似変換する(ステップS16)。具体的に、制御装置60は、製品P1の靴サイズが”27.0cm”の場合、境界線データベース6106に記憶されている同じ靴品種”SH1”の靴サイズが”25.0cm”であるため、記憶されている境界線の情報を相似変換して靴サイズ”27.0cm”の境界線に拡大する。制御装置60は、境界線データベース6106に移動経路の情報も記憶されている場合、併せて移動経路の情報も相似変換して靴サイズ”27.0cm”の移動経路に拡大する。なお、制御装置60は、左右が異なるアッパー11の境界線を特定する場合、同じ靴品種の境界線の情報を対称変換し、靴幅が異なるアッパー11の境界線を特定する場合、幅方向には補正係数をかける等の処理を行う。
【0046】
ステップS16の後、またはマスターモデルMの靴サイズと一致する場合(ステップS15でYES)、制御装置60は、マスターモデルMのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とが一致するか否かを判断する(ステップS17)。マスターモデルMのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とが一致しない場合(ステップS17でNO)、制御装置60は、マスターモデルMのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とのズレ量に基づき、塗布装置30で接着剤を塗布する位置(加工する位置)を補正する(ステップS18)。具体的に、制御装置60は、マスターモデルMのアッパー11に対して塗布装置30で接着剤を塗布する位置として移動経路を設定してあるため、例えば製品P1のアッパー11の位置がマスターモデルMのアッパー11の位置に対してずれていた場合、正しい位置に塗布装置30で接着剤を塗布することができない。そこで、制御装置60は、マスターモデルMのアッパー11の三次元形状と、製品P1のアッパー11の三次元形状とが一致するか否かを判断し、一致しない場合、マスターモデルMの位置に対する製品P1の位置のズレ量を求め、当該ズレ量だけ移動経路を補正する。これにより、制御装置60は、マスターモデルMの位置に対して位置がずれている製品P1に対しても正しい位置に塗布装置30で接着剤を塗布することができる。
【0047】
ステップS18の後、またはマスターモデルMのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とが一致する場合(ステップS17でYES)、制御装置60は、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面の範囲に塗布装置30で接着剤を塗布する(ステップS19)。
【0048】
以上のように、本実施の形態1に係る靴用加工システム100は、アッパー11(第1の靴構成部品)にソール(第2の靴構成部品)を貼り合わせる前にアッパー11の貼り合わせ面11aを加工する。靴用加工システム100は、アッパー11を保持する保持台10(保持部)と、保持台10に保持されたアッパー11の三次元形状データを取得するカメラ20a,20b(撮像部)と、貼り合わせ面11aに接着剤を塗布する塗布装置30(加工部)と、塗布装置30を移動するロボットアーム40(移動機構)と、カメラ20a,20bで取得した三次元形状データに基づいてロボットアーム40を制御し、貼り合わせ面11aに接着剤を塗布する塗布装置30を制御する制御装置60(制御部)と、を備える。制御装置60は、複数のアッパー11のうちマスターモデルMとなるアッパー11に対して、カメラ20aで取得したマスターモデルMの三次元形状データから貼り合わせ面11aの加工の範囲を設定するための貼り合わせ面11aの境界線を特定する。制御装置60は、マスターモデルM以外(製品P1~P3など)の各々のアッパー11に対して、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲を塗布装置30で接着剤を塗布するようにロボットアーム40を制御する。
【0049】
これにより、本実施の形態1に係る靴用加工システム100は、マスターモデルMの三次元形状データから貼り合わせ面11aの加工の範囲を設定するための貼り合わせ面11aの境界線を特定し、各々のアッパー11を加工するので、各々のアッパー11に対しての境界線を特定する作業を省力化することができる。
【0050】
本実施の形態1に係る靴用加工システム100の制御方法は、複数のアッパー11のうちマスターモデルMとなるアッパー11に対して、カメラ20aで取得したマスターモデルMの三次元形状データから貼り合わせ面11aの加工の範囲を設定するための貼り合わせ面11aの境界線を特定するステップ(ステップS12)と、マスターモデルM以外のアッパー11に対して、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲を塗布装置30で接着剤を塗布するようにロボットアーム40を制御するステップとを含む(ステップS19)。
【0051】
制御装置60は、マスターモデルMと同じモデルでサイズ違いのアッパー11に対して、特定した境界線を相似変換し、当該特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲を塗布装置30で接着剤を塗布するようにロボットアーム40を制御してもよい。これにより、靴用加工システム100は、同じ靴品種の様々なサイズに対して境界線を特定する作業を省力化することができる。
【0052】
カメラ20bは、マスターモデルM以外(製品P1~P3など)のアッパー11の各々に対して三次元形状データを取得してもよい。制御装置60は、マスターモデルMの三次元形状データと、各々のアッパー11の三次元形状データとの比較に基づいて貼り合わせ面11aに接着剤を塗布する位置の補正を行ってもよい。具体的に、制御装置60は、境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲内にあるマスターモデルの三次元形状と、カメラ20bで取得したアッパー11の三次元形状とのズレ量に基づいて、ロボットアーム40で移動する塗布装置30の位置(移動経路)を補正してもよい(ステップS18)。これにより、靴用加工システム100は、ベルトコンベア70で搬送されてくる製品P1~P3などのアッパー11の位置がマスターモデルMの位置と一致していなくても、適切に貼り合わせ面11aに接着剤を塗布することができる。なお、制御装置60は、ズレ量に基づいて、ロボットアーム40で移動する塗布装置30の位置(移動経路)を補正するのではなく、ベルトコンベア70に載置されている製品P1~P3などのアッパー11の位置自体を補正してもよい。
【0053】
制御装置60は、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲内での塗布装置30の移動経路を設定し、当該移動経路に従って塗布装置30を移動するようにロボットアーム40を制御してもよい。これにより、靴用加工システム100は、貼り合わせ面11aの範囲を精度良く加工することができる。
【0054】
制御装置60は、カメラ20aで取得したマスターモデルMの三次元形状データから、マスターモデルMに描かれた罫書き線1を境界線として特定してもよい。制御装置60は、図4(a)で示したように、マスターモデルMに描かれた罫書き線1から境界線を特定する。これにより、靴用加工システム100は、マスターモデルMから境界線を確実に特定することができる。
【0055】
靴用加工システム100は、特定した境界線の情報をマスターモデルMのモデルごとに記憶する境界線データベース6106をさらに備えてもよい。これにより、同じ靴品種の境界線の情報を再利用することができる。
(変形例1)
前述の実施の形態では、作業員があらかじめマスターモデルMに罫書き線1を描いておく必要があると説明した。しかし、靴用加工システム100は、作業員があらかじめマスターモデルMに罫書き線1を必ずしも描かなくてもよい。以下に、マスターモデルMに罫書き線1を描かないで貼り合わせ面11aの境界線として特定する変形例について説明する。図7は、マスターモデルMの三次元形状データから境界線を特定する方法の変形について説明するための図である。図7(a)では、アッパー11とソール12とを貼り合わせたマスターモデルMの三次元形状データをカメラ20aで取得している。そして、制御装置60は、カメラ20aで取得したマスターモデルMの三次元形状データから、アッパー11とソール12との貼り合わせの境目を貼り合わせ面11aの境界線として特定する。これにより、作業員があらかじめマスターモデルMに罫書き線1を描く作業が不要となる。
【0056】
図7(b)では、アッパー11とソール12とを貼り合わせたマスターモデルMではなく、マスターモデルMのアッパー11の三次元形状データとマスターモデルMのソール12の三次元形状データとを別々にカメラ20aで取得している。そして、制御装置60は、アッパー11の三次元形状データとソール12の三次元形状データとから、両者を貼り合わせた場合の境目を予測して、当該境目を貼り合わせ面11aの境界線として特定する。これにより、作業員があらかじめマスターモデルMに罫書き線1を描く作業が不要となり、アッパー11とソール12とを貼り合わせたマスターモデルMを用意する必要もない。
【0057】
さらに、マスターモデルMのアッパー11の三次元形状データをカメラ20aで取得し、アッパー11の三次元形状データに対して特徴点として2点(例えば、先端2、後端3)および罫書き線1をソフトウェア上で仮想的に描いて、貼り合わせ面11aの境界線を特定してもよい。
(変形例2)
前述の実施の形態では、マスターモデルMの靴品種と、製造する製品P1~P3の靴品種が同じであることを前提に靴用加工システム100の処理を説明した。しかし、靴用加工システム100は、様々な靴品種の製品を製造する場合も考えられる。以下に、様々な靴品種の製品を製造する場合の靴用加工システム100の処理の変形例について説明する。図8は、本実施の形態1に係る靴用加工システム100の処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
【0058】
まず、制御装置60は、カメラ20bで製品P1のアッパー11の三次元形状データを取得する(ステップS21)。制御装置60は、製品P1の靴品種(モデル)に対応する境界線の情報が境界線データベース6106(記憶部)に記憶済みか否かを判断する(ステップS22)。境界線の情報が境界線データベース6106に記憶済みの場合(ステップS22でYES)、制御装置60は、境界線データベース6106から対応する靴品種の境界線の情報を読み出す(ステップS23)。具体的に、制御装置60は、製品P1の靴品種が”SH1”の場合、図5に示す境界線データベース6106から”SH1”に対応する境界線の情報”AAA”および移動経路の情報”aaa”を読み出す。
【0059】
境界線の情報が境界線データベース6106に記憶されていない場合(ステップS22でNO)、制御装置60は、カメラ20aで製品P1の靴品種に対応するマスターモデルMのアッパー11の三次元形状データを取得する(ステップS24)。制御装置60は、ステップS24で取得したマスターモデルMのアッパー11に描かれた罫書き線1から貼り合わせ面の境界線を特定する(ステップS25)。制御装置60は、新たに靴品種のマスターモデルMから特定した境界線の情報を境界線データベース6106に記憶する(ステップS26)。
【0060】
次に、制御装置60は、カメラ20bでマスターモデルM以外の製品P1,P2,P3などのアッパー11の三次元形状データを取得する(ステップS27)。ここで、製品P1のアッパー11の三次元形状データについては、既にステップS21で取得しているので処理をスキップしてもよい。
【0061】
制御装置60は、製品の靴サイズが、マスターモデルMの靴サイズと一致するか否かを判断する(ステップS28)。製品の靴サイズが、マスターモデルMの靴サイズと一致しない場合(ステップS28でNO)、制御装置60は、境界線データベース6106に記憶されている境界線の情報を相似変換する(ステップS29)。
【0062】
ステップS29の後、またはマスターモデルMの靴サイズと一致する場合(ステップS28でYES)、制御装置60は、マスターモデルMのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とが一致するか否かを判断する(ステップS30)。マスターモデルMのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とが一致しない場合(ステップS30でNO)、制御装置60は、マスターモデルMのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とのズレ量に基づき、塗布装置30で接着剤を塗布する位置(加工する位置)を補正する(ステップS31)。
【0063】
ステップS31の後、またはマスターモデルMのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とが一致する場合(ステップS30でYES)、制御装置60は、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面の範囲に塗布装置30で接着剤を塗布する(ステップS32)。
【0064】
上記の変形例2では、制御装置60が、マスターモデルMと異なる靴品種(モデル)のアッパー11に対して、対応する靴品種(モデル)の境界線の情報が境界線データベース6106(記憶部)に記憶されている場合、記憶されている境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲を塗布装置30で加工できるようにロボットアーム40を制御する。また、制御装置60は、対応する靴品種(モデル)の境界線の情報が境界線データベース6106(記憶部)に記憶されていない場合、カメラ20aで新たなマスターモデルMの三次元形状データを取得し、当該三次元形状データから貼り合わせ面11aの加工の範囲を設定するための貼り合わせ面11aの境界線を特定する。これにより、変形例2に係る靴用加工システム100では、既に境界線を特定した靴品種については境界線データベース6106に記憶されている境界線の情報を利用できるため、境界線を特定する作業自体を削減することができる。
(変形例3)
靴用加工システム100は、さらに、アッパー11とソール12とを貼り合わせ後の製品を検査した結果から、接着剤を塗布する塗布装置30の移動経路などの加工の条件を修正するフィードバック制御を採用してもよい。図9は、本実施の形態1に係る靴用加工システム100の加工の条件を修正するフィードバック制御の処理を説明するためのフローチャートである。
【0065】
まず、制御装置60は、アッパー11とソール12とを貼り合わせ後の製品の検査情報を取得する(ステップS41)。具体的に、図1に図示していないが、アッパー11とソール12とを貼り合わせ後の製品を検査する検査装置が制御装置60またはPLC50に接続されている。制御装置60は、当該検査装置から製品の検査結果を検査情報として取得する。
【0066】
制御装置60は、検査装置から取得した検査情報の中に、貼り合わせに起因した検査情報が含まれているか否かを判断する(ステップS42)。具体的に、検査装置がアッパー11とソール12とを貼り合わせ後の製品をカメラで撮影し、アッパー11とソール12と境目からの接着剤のはみだし量を検査している場合、検査装置から取得した検査情報の中に貼り合わせに起因した検査情報が含まれている判断することができる。
【0067】
貼り合わせに起因した検査情報が含まれていると判断した場合(ステップS42でYES)、制御装置60は、貼り合わせに起因した検査情報に基づいて貼り合わせ面の加工の条件を修正する(ステップS43)。具体的に、制御装置60は、検査装置から取得した検査情報である接着剤のはみだし量に基づいて、接着剤を塗布する塗布装置30の移動経路を修正する。貼り合わせに起因した検査情報が含まれていないと判断した場合(ステップS42でNO)、制御装置60は、処理を終了する。
【0068】
このように、変形例3に係る制御装置60では、アッパー11にソール12を貼り合わせた後の検査情報に基づいて、貼り合わせ面11aの加工の条件を修正することができるので、加工の条件を改善することができる。
<実施の形態2>
実施の形態1に係る靴用加工システム100では、マスターモデルMの三次元形状データをカメラ20aで取得することで、アッパーの貼り合わせ面11aの境界線を特定すると説明した。本実施の形態2では、マスターモデルMを用意することなくアッパーの貼り合わせ面11aの境界線を特定することができる靴用加工システムを説明する。
【0069】
図10は、本実施の形態2に係る靴用加工システム200の構成例を示す概略図である。図10を参照して、靴用加工システム200は、保持台10、カメラ20b、塗布装置30、ロボットアーム40、制御装置60とを含む。さらに、靴用加工システム200には、PLC50、ベルトコンベア70、CAD装置80を含む。なお、図10に示す靴用加工システム200のうち、図1に示す靴用加工システム100と同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明を繰返さない。
【0070】
靴用加工システム200は、マスターモデルMの三次元形状データをカメラ20aで取得する代わりに、CAD装置80から製品のCADデータ(三次元CADデータ)からアッパーの貼り合わせ面11aの境界線を特定する。CAD装置80は、制御装置60に接続されており、アッパー11とソール12とを貼り合わせた製品のCADデータを制御装置60に送ることができる。なお、CAD装置80は、制御装置60と通信可能に接続されている必要はなく、制御装置60に対してCADデータを渡すことができればよい。例えば、CAD装置80は、USBメモリにCADデータを記憶し、当該USBメモリを制御装置60のUSBコントローラ620に接続させてCADデータを渡す。
【0071】
制御装置60は、アッパー11とソール12とを貼り合わせた製品のCADデータから、アッパー11とソール12との貼り合わせの境目を貼り合わせ面11aの境界線として特定する。CADデータは、アッパー11とソール12とを貼り合わせた製品のCADデータに限定されず、アッパー11のCADデータとソール12のCADデータとのように別々のCADデータでもよい。制御装置60は、アッパー11のCADデータとソール12のCADデータとから、両者を貼り合わせた場合の境目を予測して、当該境目を貼り合わせ面11aの境界線として特定する。
【0072】
靴用加工システム200では、マスターモデルMを用意することなく製品のCADデータで特定した境界線を利用して、貼り合わせ面11aを加工(接着剤の塗布)する。以下に、靴用加工システム200の具体的な処理についてフローチャートを用いて説明する。図11は、本実施の形態2に係る靴用加工システム200の処理を説明するためのフローチャートである。まず、制御装置60は、CAD装置80から製品の三次元CADデータを取得する(ステップS51)。制御装置60は、アッパー11とソール12とを貼り合わせた製品のCADデータから貼り合わせ面の境界線を特定する(ステップS52)。制御装置60は、特定した境界線の情報を境界線データベース6106に靴品種ごと記憶する(ステップS53)。
【0073】
次に、制御装置60は、カメラ20bで製品P1,P2,P3などのアッパー11の三次元形状データを取得する(ステップS54)。制御装置60は、製品の靴サイズが、三次元CADデータの靴サイズと一致するか否かを判断する(ステップS55)。製品の靴サイズが、三次元CADデータの靴サイズと一致しない場合(ステップS55でNO)、制御装置60は、境界線データベース6106に記憶されている境界線の情報を相似変換する(ステップS56)。
【0074】
ステップS56の後、または三次元CADデータの靴サイズと一致する場合(ステップS55でYES)、制御装置60は、三次元CADデータのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とが一致するか否かを判断する(ステップS57)。三次元CADデータのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とが一致しない場合(ステップS57でNO)、制御装置60は、三次元CADデータのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とのズレ量に基づき、塗布装置30で接着剤を塗布する位置(加工する位置)を補正する(ステップS58)。
【0075】
ステップS58の後、または三次元CADデータのアッパー11の三次元形状と、製品のアッパー11の三次元形状とが一致する場合(ステップS57でYES)、制御装置60は、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面の範囲に塗布装置30で接着剤を塗布する(ステップS59)。
【0076】
以上のように、本実施の形態2に係る靴用加工システム200は、アッパー11(第1の靴構成部品)にソール12(第2の靴構成部品)を貼り合わせる前にアッパー11の貼り合わせ面11aを加工する。靴用加工システム200は、アッパー11を保持する保持台10(保持部)と、保持台10に保持されたアッパー11の三次元形状データを取得するカメラ20b(撮像部)と、貼り合わせ面11aに接着剤を塗布する塗布装置30(加工部)と、塗布装置30を移動するロボットアーム40(移動機構)と、カメラ20bで取得した三次元形状データに基づいてロボットアーム40を制御し、貼り合わせ面11aに接着剤を塗布する塗布装置30を制御する制御装置60(制御部)と、を備える。制御装置60は、あらかじめ用意されたソール12を貼り合わせ済みのアッパー11の三次元CADデータから貼り合わせ面11aの加工の範囲を設定するための貼り合わせ面11aの境界線を特定する。制御装置60は、各々のアッパー11に対して、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲を塗布装置30で接着剤を塗布するようにロボットアーム40を制御する。
【0077】
これにより、本実施の形態2に係る靴用加工システム200は、三次元CADデータから貼り合わせ面11aの加工の範囲を設定するための貼り合わせ面11aの境界線を特定し、各々のアッパー11を加工するので、各々のアッパー11に対しての境界線を特定する作業を省力化することができる。
【0078】
本実施の形態2に係る靴用加工システム200の制御方法は、あらかじめ用意されたソール12を貼り合わせ済みのアッパー11の三次元CADデータから貼り合わせ面11aの加工の範囲を設定するための貼り合わせ面11aの境界線を特定する(ステップS52)と、各々のアッパー11に対して、特定した境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲を塗布装置30で接着剤を塗布するようにロボットアーム40を制御するステップとを含む(ステップS59)。
【0079】
なお、本実施の形態2に係る靴用加工システム200においても、本実施の形態1で説明した変形例2,3の内容を組み合わせることが可能である。
<その他の変形例>
(1)前述の実施の形態では、制御装置60が、境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲に塗布装置30(加工部)を移動させる移動経路を設定すると説明した。しかし、これに限定されず、制御装置60は移動経路を設定しなくてもよい。例えば、制御装置60は、境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲をロボットアーム40に指定するだけで、ロボットアーム40が当該範囲内であらかじめ定められたパターンで塗布装置30(加工部)を移動さてもよい。また、ロボットアーム40が境界線で囲まれる貼り合わせ面11aの範囲の情報から移動経路を設定してもよい。
【0080】
(2)前述の実施の形態では、制御装置60に境界線データベース6106を設ける構成について説明した。しかし、これに限定されず、制御装置60に境界線データベース6106を設けずにクラウド上に境界線データベースを設けてもよい。また、靴用加工システムで製造する靴品種が1種類だけなら、制御装置60は境界線データベース6106を設けずに、メモリに特定した境界線の情報を単に記憶するだけでもよい。
【0081】
(3)前述の実施の形態では、製品P1~P3などのアッパー11の三次元形状データをカメラ20bで取得すると説明した。制御装置60は、製品P1~P3などのアッパー11の三次元形状データを取得することで、製品P1~P3などの位置をマスターモデルMの位置に合わせ込む制御を行っている。しかし、製品P1~P3などの位置をマスターモデルMの位置に合わせて配置してあるならば、制御装置60は、製品P1~P3などの位置をマスターモデルMの位置に合わせ込む制御が必要ないので、カメラ20bで製品P1~P3などのアッパー11の三次元形状データを取得する処理が不要である。
【0082】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
10 保持台、11 アッパー、11a 貼り合わせ面、12 ソール、20a,20b カメラ、30 塗布装置、40 ロボットアーム、60 制御装置、70 ベルトコンベア、80 CAD装置、100,200 靴用加工システム。
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