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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】支援装置、支援方法及び支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G05B23/02 301V
G05B23/02 301Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020569512
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2020001593
(87)【国際公開番号】W WO2020158466
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019016314
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】西 剛史
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112504(JP,A)
【文献】特開2013-156969(JP,A)
【文献】特開2019-125230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを取得するための支援装置であって、
第1センサの計測値の経時的変化を示す第1学習用データと、第2センサの計測値の経時的変化を示すものであって前記第1学習用データに対して時間応答に関する相関性がある第2学習用データとを取得するデータ取得部と、
パラメータを入力する入力部と、
前記入力部で入力されたパラメータに対応する前記第1学習用データの変化点位置及び前記第2学習用データの変化点位置に基づいて、所定値のパラメータを取得するパラメータ取得部と
を備え、
前記第2学習用データは、前記第1学習用データに対して入力又は出力の応答関係にある、支援装置。
【請求項2】
前記第1学習用データと、前記第2学習用データと、パラメータの入力欄と、を表示するデータ表示部をさらに備える、請求項1記載の支援装置。
【請求項3】
前記データ表示部は、前記入力部でパラメータが入力された後、前記入力部で入力されたパラメータに対応する前記第1学習用データの変化点位置及び前記第2学習用データの変化点位置と、各変化点位置の一致率の判定結果と、をさらに表示する、請求項記載の支援装置。
【請求項4】
前記データ取得部は、2以上の前記第1学習用データを取得することを含み、
前記パラメータ取得部は、前記入力部で入力されたパラメータに対応する前記2以上の第1学習用データに基づいて得られた前記2以上の第1学習用データの変化点位置と、前記第2学習用データの変化点位置に基づいて、前記所定値のパラメータを取得する、請求項1からのいずれか一項に記載の支援装置。
【請求項5】
前記パラメータ取得部によって取得された所定値のパラメータに基づいて、前記第1センサの計測値の経時的変化を示す評価用データの変化点位置を取得する変化点位置取得部をさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の支援装置。
【請求項6】
センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを取得するための支援方法であって、
第1センサの計測値の経時的変化を示す第1学習用データと、第2センサの計測値の経時的変化を示すものであって前記第1学習用データに対して時間応答に関する相関性がある第2学習用データとをデータ取得部によって取得すること、
入力部によってパラメータを入力すること、及び、
前記入力部で入力されたパラメータに対応する前記第1学習用データの変化点位置と前記第2学習用データの変化点位置に基づいて、パラメータ取得部によって所定値のパラメータを取得すること
を含み、
前記第2学習用データは、前記第1学習用データに対して入力又は出力の応答関係にある、支援方法。
【請求項7】
前記第1学習用データと、前記第2学習用データと、パラメータの入力欄と、をデータ表示部に表示すること、及び、
前記入力部でパラメータが入力された後、前記データ表示部によって、前記入力部で入力されたパラメータに対応する前記第1学習用データの変化点位置及び前記第2学習用データの変化点位置と、各変化点位置の一致率の判定結果と、を表示すること
をさらに含む、請求項に記載の支援方法。
【請求項8】
前記一致率の判定結果が不一致を示す場合、前記パラメータを入力すること、及び、前記所定値のパラメータを取得することを再度行う、請求項に記載の支援方法。
【請求項9】
前記一致率の判定結果が一致を示す場合、前記所定値のパラメータを最適パラメータとして取得する、請求項に記載の支援方法。
【請求項10】
センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを取得するためにコンピュータで実行される支援プログラムであって、
前記コンピュータに、
第1センサの計測値の経時的変化を示す第1学習用データと、第2センサの計測値の経時的変化を示すものであって前記第1学習用データに対して時間応答に関する相関性がある第2学習用データとを取得すること、及び、
入力部で入力されたパラメータに対応する前記第1学習用データの変化点位置と前記第2学習用データの変化点位置に基づいて、パラメータ取得部によって所定値のパラメータを取得すること
を実行させ
前記第2学習用データは、前記第1学習用データに対して入力又は出力の応答関係にある、支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを取得するための支援装置、支援方法及び支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のプロセス系の状態変化を検出可能な監視装置として、例えば、特許文献1及び2のような監視装置が知られている。このような監視装置においては、プロセスの状態変化が生じたか否かを、センサの計測値の経時的変化を特定することによって行うため、その経時的変化を特定するためのパラメータを取得することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-141712号公報
【文献】特開平11-7317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータは、過去の経験値や簡易解析値を用いることによって得られていた。そのため、過去の経験値がないような計測データにおいては試行錯誤でパラメータを探索する必要があり、パラメータの取得が困難又は非効率であった。また、簡易解析値を用いることによってパラメータを取得することも考えられるが、あくまで簡易計算によるパラメータ取得であるため、センサの計測値の正確な経時的変化を特定することは困難であった。
【0005】
この点、特許文献1及び2のいずれの監視装置においても、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを算出することについては何ら対処されてはいない。
【0006】
本発明のある態様の例示的な目的の一つは、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを容易に取得するための支援装置、支援方法及び支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のある態様の支援装置は、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを取得するための支援装置であって、第1センサの計測値の経時的変化を示す第1学習用データと、第2センサの計測値の経時的変化を示すものであって第1学習用データに対して相関性がある第2学習用データとを取得するデータ取得部と、パラメータを入力する入力部と、入力部で入力されたパラメータに対応する第1学習用データの変化点位置及び第2学習用データの変化点位置に基づいて、所定値のパラメータを取得するパラメータ取得部とを備える。
【0008】
上記態様によれば、第1学習用データと、当該第1学習用データと相関性がある第2学習用データとを取得し、入力部で入力されたパラメータに対応する第1学習用データの変化点位置及び第2学習用データの変化点位置に基づいて、所定値のパラメータを取得する。これによれば、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを容易に取得することができる。
【0009】
本発明の別の態様は、支援方法である。この方法は、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを取得するための支援方法であって、第1センサの計測値の経時的変化を示す第1学習用データと、第2センサの計測値の経時的変化を示すものであって第1学習用データに対して相関性がある第2学習用データとをデータ取得部によって取得すること、入力部によってパラメータを入力すること、及び、入力部で入力されたパラメータに対応する第1学習用データの変化点位置と第2学習用データの変化点位置に基づいて、パラメータ取得部によって所定値のパラメータを取得することを含む。
【0010】
本発明のさらなる別の態様は、支援プログラムである。このプログラムは、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを取得するためにコンピュータで実行される支援プログラムであって、コンピュータに、第1センサの計測値の経時的変化を示す第1学習用データと、第2センサの計測値の経時的変化を示すものであって第1学習用データに対して相関性がある第2学習用データとを取得すること、及び、入力部で入力されたパラメータに対応する第1学習用データの変化点位置と第2学習用データの変化点位置に基づいて、パラメータ取得部によって所定値のパラメータを取得することを実行させる。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る支援装置10の構成を示す図である。
図2】支援装置10による支援方法の一例を示すフローチャートである。
図3】支援装置10による支援方法の一例を示すフローチャートである。
図4】計測データの変化点位置の算出方法の一例であるk近傍法を説明するための図である。
図5】計測データの変化点位置の算出方法の一例である特異スペクトル変換を説明するための図である。
図6】支援装置10による支援方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0015】
図1図6は、本発明の実施形態に係る支援装置及び支援方法を説明するための図である。具体的には、図1は本発明の一実施形態に係る支援装置10の構成を示す図であり、図2及び図3は支援装置10による支援方法の一例を示すフローチャートであり、図4及び図5は計測データの変化点位置の算出方法の一例を説明するための図であり、図6は支援装置10による支援方法を説明するための図である。
【0016】
支援装置10は、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータの取得を支援するものであり、これにより例えば発電プラントや化学プラントなどのプロセス系システムにおける計測データの波形の特徴変化検出を支援するものである。計測データの波形の特徴変化検出のためには、アルゴリズムにパラメータを設定する必要がある。このようなパラメータは、センサの計測値の経時的変化を示す計測データの変化点位置を特定するものである。最適なパラメータが設定されることにより、計測データにおける正確な変化点位置を特定することが可能となり、計測データの正確な波形特徴変化を検出することができる。これにより例えばプロセス系システムの運転状況を正確に評価することが可能になる。
【0017】
支援装置10は、パラメータ最適化機構20と、データ評価機構30と、データ記憶部40とを備える。パラメータ最適化機構20は、センサの計測値の経時的変化を特定する所定値のパラメータの一例である最適パラメータを取得する。データ評価機構30は、パラメータ最適化機構20によって取得された最適パラメータを用いて、センサの計測値の経時的変化を示す計測データの変化点位置を特定し、これにより、計測データの波形の特徴変化検出を行い、ひいてはプロセス系システムの運転状況を評価することができる。データ記憶部40は、各種の計測データを記憶するとともに、パラメータ最適化機構20によって取得された最適パラメータや、パラメータ最適化機構20及びデータ評価機構30によって算出又は取得された計測データの変化点位置データを記憶する。
【0018】
支援装置10は、例えばプロセス系システムに設けられた複数のセンサ(図示しない)と接続されており、当該センサの計測値の経時的変化を示す計測データを取得可能に構成されている。また、支援装置10は、情報を入力するための操作部(図示しない)及び情報を出力するための表示部(図示しない)に接続されている。これにより操作部によって入力された情報に基づいて演算を行うとともにその演算結果を表示部に表示して、作業者が表示部によって画面を認識しながら操作部によって支援装置10に対して必要な情報を入力できるようになっている。支援装置10は、CPU及びメモリ等を備えるコンピュータ装置である。メモリには、本実施形態に係る支援装置10による支援方法の各動作を実行するための支援プログラムが格納されている。なお、後述の本実施形態に係る支援方法を規定したプログラムがコンピュータに働きかけてCPUに行わせる処理は、それぞれ本実施形態の支援装置10及び支援方法における対応する要素の機能及び動作と同一である。
【0019】
以下、支援装置10の各種機能ブロックについて説明する。
【0020】
パラメータ最適化機構20は、学習用データ取得部21と、ノイズ除去部22と、パラメータ入力部23と、データ表示部24と、最適パラメータ取得部25とを備える。学習用データ取得部21は、センサの計測値の経時的変化を示す計測データを、最適パラメータ最適パラメータを取得するために学習用データとして取得する。ここで、センサは例えば圧力センサ、温度センサ又は流量センサである。ノイズ除去部22は、学習用データ取得部21によって取得された計測データのノイズを除去し、ノイズ除去済みの計測データを取得する。パラメータ入力部23は、センサの計測値の経時的変化を特定するためのパラメータの入力を受け付ける。このパラメータの入力は、例えば作業者が操作部を介して入力されることによって行われる。
【0021】
データ表示部24は、ノイズ除去部22によって取得されたノイズ除去済みの計測データを表示する。また、データ表示部24は、作業者にパラメータの入力を促すためのパラメータ入力欄、最適パラメータ取得のために必要な実行ボタン(例えば変化点算出実行ボタン及び変化点抽出実行ボタン)、及び、学習用データの変化点位置の一致率の判定結果など、パラメータ最適化機構20が最適パラメータを取得するために必要な情報を表示部に表示する(図6参照)。
【0022】
最適パラメータ取得部25は、計測データの変化点位置を算出する変化点位置算出部26と、変化点位置算出部26によって算出された変化点位置を抽出する変化点位置抽出部27とを備える。変化点位置の算出方法は限定されるものではないが、例えば、k近傍法(図4参照)や特異スペクトル変換(図5参照)などの公知の波形特徴変化検出方法を用いることができる。
【0023】
データ評価機構30は、評価用データ取得部31と、ノイズ除去部32と、最適パラメータ入力部33と、データ表示部34と、変化点位置取得部35とを備える。評価用データ取得部31は、センサの計測値の経時的変化を示す計測データを、計測データの波形の特徴変化検出のために評価用データとして取得する。評価用データは、パラメータ最適化機構20の学習用データ取得部21によって取得される学習用データと同一のセンサの計測値に基づく同種の計測データである。このように同種の計測データから得られた最適パラメータを用いて計測データの波形の特徴変化検出を行うため、計測データにおける正確な変化点位置を特定することができる。
【0024】
ノイズ除去部32は、評価用データ取得部31によって取得された計測データのノイズを除去し、ノイズ除去済みの計測データを取得する。最適パラメータ入力部33は、センサの計測値の経時的変化を特定するための最適パラメータの入力を受け付ける。最適パラメータの入力は、例えば、最適パラメータ取得部25によって取得された最適パラメータをパラメータ最適化機構20又はデータ記憶部40から受け取ることによって行われる。あるいは、パラメータ最適化機構20によって取得された最適パラメータを、作業者が操作部を介して入力することによって最適パラメータの入力を行うこともできる。
【0025】
データ表示部34は、ノイズ除去部32によって取得されたノイズ除去済みの計測データを表示する。また、データ表示部34は、パラメータ最適化機構20のデータ表示部24と同様に、作業者に最適パラメータの入力を促すためのパラメータ入力欄、データ評価のために必要な実行ボタン(例えば変化点算出実行ボタン及び変化点抽出実行ボタン)など、データ評価機構30がデータ評価のために必要な情報を表示部に表示する。
【0026】
変化点位置取得部35は、計測データの変化点位置を算出する変化点位置算出部36と、変化点位置算出部36によって算出された変化点位置を抽出する変化点位置抽出部37とを備える。変化点位置の算出方法は限定されるものではないが、最適パラメータ取得部25による算出方法と同様であり、例えば、k近傍法(図4参照)や特異スペクトル変換(図5参照)などの公知の波形特徴変化検出方法を用いることができる。
【0027】
データ記憶部40は、計測データ記憶部41と、最適パラメータ記憶部42と、変化点位置データ記憶部43とを備える。計測データ記憶部41は、プロセス系システムに設けられた各センサからの計測データを記憶する。記憶された計測データは、パラメータ最適化機構20の処理のための学習用データと、データ評価機構30の処理のため評価用データとを含む。最適パラメータ記憶部42は、最適パラメータ取得部25によって取得された最適パラメータを記憶する。変化点位置データ記憶部43は、変化点位置抽出部27,37のそれぞれにおいて抽出された計測データの変化点位置データを記憶する。データ記憶部40に記憶されるこれらの記憶データは、例えばプロセス系システムの運転時期や運転状況等に対応付けられている。
【0028】
なお、上述したパラメータ最適化機構20、データ評価機構30及びデータ記憶部40の各種の構成の具体的な動作については後述の支援方法において詳述する。
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係る支援方法として、支援装置10を用いた動作の一例について説明する。まず、図2を参照しつつ支援装置10のパラメータ最適化機構20を用いた動作の一例を説明する。
【0030】
図2において、まず、学習用データ取得部21によって、第1センサの計測値の経時的変化を示す第1学習用データと、第2センサの計測値の経時的変化を示す第2学習用データとを取得する(S10)。第1学習用データは、データ評価機構30において評価対象となる計測データと同種の計測データであり、このような計測データは、評価用データ取得部31によって取得される計測データのセンサと同一のセンサから取得することができる。第2学習用データは、第1学習用データに対して相関性がある計測データである。第2学習用データは、第1学習用データに対するベンチマークデータである。典型的には、第2学習用データは、第1学習用データに対して入力又は出力(言い換えれば原因又は結果)の応答関係にある計測データである。この場合、第1学習用データと第2学習用データとは一方が他方に対して一のシステムの入出力にあるような直接的な入出力にある態様に限らず、複数のシステムの入出力にあるような間接的な入出力にある態様(例えば、第1学習用データが第1システムに入力され、当該第1システムの出力が第2システムの入力となり、当該第2システムの出力が第2学習用データである態様)も含むものとする。このような入力又は出力の応答関係にある計測データは相互に同じ位置の変化点位置を有している。例えば、第1学習用データがプロセス系システムの所定位置の温度を検出する温度センサからの計測データである場合、第2学習用データは、当該所定位置の温度変化の原因となる蒸気の圧力又は流量を検出するセンサからの計測データであってもよい。あるいは、第2学習用データは、第1学習用データに対して相関係数が一定値以上の関係を有する計測データであってもよい。
【0031】
次に、第1学習用データ及び第2学習用データのノイズをノイズ除去部22によって除去し(S11)、ノイズを除去した第1学習用データ及び第2学習用データをデータ表示部24によって表示部に表示する(S12)。そして、作業者は、表示部に表示された第1学習用データ及び第2学習用データの各波形を視認しつつ、操作部を介してパラメータ入力部23により、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを入力する(S13)。ここでのパラメータは、作業者が適宜決定した仮パラメータである。
【0032】
その後、ステップS13で入力されたパラメータに基づいて、変化点位置算出部26によって第1学習用データ及び第2学習用データのそれぞれの変化点位置を算出する(S14)。
【0033】
変化点位置の算出方法の一例としては、図4に示されるk近傍法が挙げられる。図4において横軸は時間、縦軸はセンサの計測値である。k近傍法は公知の波形特徴変化検出の手法であり簡単に説明するが、k近傍法は算出時刻tを境に未来側には長さwのベクトルdを作成する。過去側には同じ長さwのベクトルをスライドさせていくことでベクトルqiをn本用意し、過去行列(1列に1ベクトル)を作成する。過去行列を作成する際、未来側ベクトルと過去行列の時間的距離が短い場合、類似度が高くなるため変化度が小さくなる。これを避けるために図4に示すように分離距離gが設けられる。過去側の各ベクトルと未来側のベクトルをコサイン距離を使用した下記式に代入することで仮の変化度ztmpを算出する。
【数1】
そして、下記式のとおり最も小さい値を変化度zとする。
z=minztmp
【0034】
k近傍法においては、ステップS13で入力されたパラメータは、図4の横軸の時間の幅に相当するパラメータである。具体的には、このパラメータは、図4の分離距離g、時間幅M及びウィンドウサイズwに対応する。
【0035】
変化点位置の算出方法の他の一例としては、図5に示される特異スペクトル変換が挙げられる。図5において横軸は時間、縦軸はセンサの計測値である。特異スペクトル変換(Singular Spectrum Transform)は変化度算出時刻tよりも過去側において、時系列データを任意の長さ(ウィンドウサイズ)wで切り出してベクトルを作成し、そのベクトルを点数τでスライドすることでn個のベクトルを作成する。これらn個のベクトルを用いて過去側(n×w)行列とする。この行列を特異値分解することで過去の代表ベクトルを任意個取り出す。一方、未来側でも同様の行列を作成し、特異値分解することで未来の代表ベクトルを1個取り出す。過去の代表ベクトル複数個から構成される行列Uと未来の代表ベクトルβ(t)1個を用いての下記式よりその時刻の変化度z(t)を算出する。
【数2】
【数3】
【0036】
特異スペクトル変換においては、ステップS13で入力されたパラメータは、図5の横軸の時間の幅に相当するパラメータである。具体的には、このパラメータは、図5の分離距離g、時間幅M及びウィンドウサイズwに対応する。
【0037】
作業者は、これらの複数のパラメータをパラメータ入力部23で入力し、k近傍法又は特異スペクトル変換などの波形の特徴変化検出手法によって第1学習用データ及び第2学習用データの各変化点位置を算出する。その後、変化点位置抽出部27によってステップS14で算出された変化点位置が抽出され(S15)、これらの変化点位置が、第1学習用データ及び第2学習用データについて各変化点位置の一致率の判定結果とともに表示部に表示される(S16)。
【0038】
ここで、図6は、ステップS16後の表示部による表示態様の一例である。この例では、表示領域50は、第1学習用データ表示欄60と、第2学習用データ表示欄70と、パラメータ入力欄80と、変化点算出実行ボタン90と、変化点抽出実行ボタン92と、一致率判定結果94とを含む。第1学習用データ表示欄60には、第1センサの計測値を縦軸及び時間を横軸とする座標軸において、第1学習用データの波形62と、その変化点位置64が示されている。変化点位置64は、周期的に略類似のパターンを繰り返す波形の各周期において縦線で表示されている。同様に、第2学習用データ表示欄70には、第2センサの計測値を縦軸及び時間を横軸とする座標軸において、第2学習用データの波形72と、その変化点位置74が示されている。変化点位置74は、周期的に略類似のパターンを繰り返す波形の各周期において縦線で表示されている。このように表示欄60,70が時間を示す横軸が一致して配置されることにより、各学習用データの変化点位置64,74の一致率が視認可能となっている。
【0039】
また、パラメータ入力欄80には、各学習用データの変化点位置64,74を算出するためにステップS13で入力された各パラメータ82,84,86が表示される。これにより、各パラメータと各学習用データの変化点位置との対応が視認可能となっている。変化点算出実行ボタン90及び変化点抽出実行ボタン92は、作業者が操作部を介して選択することによって各学習用データの変化点位置を算出又は抽出できるようになっている。一致率判定結果94は、一致率の判定結果が一致を示す場合の項目(YES)96と、一致率の判定結果が不一致を示す項目(NO)98を含み、一致率の判定結果に応じていずれかの項目のランプが点灯するようになっている。これにより作業者が、ステップS13で入力されたパラメータに対応する第1学習用データの変化点位置と第2学習用データの変化点位置が一致するか否かを容易に視認することができる。
【0040】
図2のフローチャートに戻り、ステップS17において第1学習用データの変化点位置と第2学習用データの変化点位置とが一致しているかを最適パラメータ取得部25によって判定し、一致していないと判定された場合(S17 NO)、データ表示部24は作業者に対してパラメータの再入力を促し、ステップS13からS16の一連のステップを判定結果が一致していると判定されるまで繰り返し行う。
【0041】
判定結果が一致していると判定された場合(S17 YES)、最適パラメータ取得部25によってこのときの所定値のパラメータを最適パラメータとして取得する。取得された最適パラメータは最適パラメータ記憶部42に記憶され、後述するデータ評価機構において用いられる。
【0042】
ステップS17における一致率の判定においては、各変化点位置64,74を比較し、許容誤差内において一致するか否かで判定することができる。すなわち、変化点位置の一致率が許容誤差に収まった場合、そのパラメータを最適パラメータとする。なお、変化点位置の一致率の計算は、最適パラメータ取得部25が自動で行うようにしてもよい。
【0043】
次に、図3を参照しつつ支援装置10のデータ評価機構30を用いた動作の一例を説明する。図3において、まず、評価用データ取得部31によって、第1学習用データと同種の計測データを、計測データの波形の特徴変化検出のため評価用データとして取得する(S10)。評価用データは、第1学習用データと同じセンサの計測値であって異なる時間の計測データである。
【0044】
次に、評価用データのノイズをノイズ除去部32によって除去し(S21)、ノイズを除去した評価用データをデータ表示部34によって表示部に表示する(S22)。また、最適パラメータ入力部33が、評価用データと同種の計測データについての最適パラメータを最適パラメータ記憶部42から取得し、その最適パラメータがデータ評価機構30に入力される(S23)。なお、最適パラメータの入力は、作業者が表示部に表示された評価用データの波形を視認しつつ、操作部を介して最適パラメータを改めて入力することもできる。
【0045】
その後、ステップS23で入力された最適パラメータに基づいて、変化点位置算出部36によって評価用データの変化点位置を算出する(S24)。
【0046】
変化点位置の算出方法としては、パラメータ最適化機構20の動作の一例で説明した内容が該当する。
【0047】
こうして、作業者は、最適パラメータに基づいて、k近傍法又は特異スペクトル変換などの波形の特徴変化検出手法によって評価用データの変化点位置を算出し、その後、変化点位置抽出部37によってステップS24で算出された変化点位置が抽出される(S25)。このようにして抽出された変化点位置は、評価用データの評価結果として表示部に表示される(S26)。
【0048】
以上のとおり、本実施形態に係る支援装置は、第1学習用データと、当該第1学習用データと相関性がある第2学習用データとを取得し、入力部で入力されたパラメータに対応する第1学習用データの変化点位置及び第2学習用データの変化点位置に基づいて、所定値のパラメータを取得する。これによれば、センサの計測値の経時的変化を特定するパラメータを容易に取得することができる。したがって、例えば、過去の経験値がないような計測データにおいても効率良くパラメータを取得することができ、これにより計測データの波形の特徴変化検出を容易に行うことができる。また、計測値の閾値に基づいて波形の特徴変化検出を行う手法に比べ、例えば計測値の閾値以下で起きる故障につながる事象も容易に把握することができるため、例えばプロセス系システムの変化を漏れなく検出することができる。さらに、例えばプロセス系システムにおいては計測データの変化がシステム異常につながる一要因である可能性もあるので、本実施形態に係る支援装置、支援方法及び支援プログラムを適用することによりシステムの異常検知に役立てることもできる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。
【0050】
上記実施形態では、最適パラメータを取得する一例として、一つの第1学習用データを用いる例を説明したが、本発明はこれに限らず、複数の第1学習用データを第2学習用データと比較することによって最適パラメータを取得してもよい。すなわち、第1学習用データの計測データは多次元であってもよい。このような計測データは複数の第1センサのそれぞれの計測値の経時的変化であり得る。この場合、第1学習用データ及び第2学習用データについて各変化点位置の一致率の判定は、例えば、複数の第1学習用データのそれぞれを平均するなどして合算した変化点位置を抽出し、これを第2学習用データの変換点位置と比較することによって行ってもよい。複数の第1学習用データを用いることにより、プロセス系システムのノイズの影響を少なくしてより正確な変化点位置を抽出することが可能となる。
【0051】
また、上記実施形態では、支援装置10は、パラメータ最適化機構20及びデータ評価機構30を備える例を説明したが、本発明はこれに限らず、支援装置は、少なくともパラメータ最適化機構20を備えるものであってもよい。また、支援装置10の動作においてはすべてがコンピュータの演算処理で自動化されるものに限らず、少なくとも一部が作業者による人手作業を介在するものも含むものとする。また、上記実施形態において表示部による表示態様は一例にすぎず、例えば図6の学習用データはグラフによる波形データの表示に限らず、数値による表形式等であってもよい。
【0052】
上記発明の実施形態を通じて説明された実施の態様は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0053】
10…支援装置、21…学習用データ取得部、23…パラメータ入力部
25…最適パラメータ取得部、24…データ表示部、35…変化点位置取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6