(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】再構成植物材料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A24B 15/24 20060101AFI20240306BHJP
A24B 3/14 20060101ALI20240306BHJP
A24B 15/12 20060101ALI20240306BHJP
A24B 15/16 20200101ALI20240306BHJP
【FI】
A24B15/24
A24B3/14
A24B15/12
A24B15/16
(21)【出願番号】P 2020573105
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2019067304
(87)【国際公開番号】W WO2020002583
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-20
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515298925
【氏名又は名称】インペリアル タバコ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Imperial Tobacco Limited
【住所又は居所原語表記】121 Winterstoke Road,Bristol BS3 2LL United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】フェリー, ケイト
(72)【発明者】
【氏名】シェントン, エドワード ロス
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-292935(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105455190(CN,A)
【文献】特開2013-82660(JP,A)
【文献】特表平8-507928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 1/00~15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再構成植物材料を製造する方法であって、
繊維状植物材料を溶媒で抽出して、抽出物及び繊維状部分を得る工程と、
上記繊維状部分から上記抽出物を分離する工程と、
上記繊維状部分から基材シートを形成する工程と、
ニコチン塩を上記抽出物と混合する工程と、
上記抽出物を上記基材シートに塗布する工程と
を有する方法。
【請求項2】
上記溶媒は水性溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記抽出物を上記基材シートに塗布する前に、上記抽出物を濃縮して濃縮抽出物を得る工程を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記ニコチン塩を上記濃縮抽出物と混合する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記繊維状植物材料はタバコである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記タバコは、タバコ葉、タバコ茎、タバコ粉末、及び/又はタバコくずの形態である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記ニコチン塩は、ニコチン塩酸塩、ニコチン二塩酸塩、酒石酸ニコチン、重酒石酸ニコチン、重酒石酸ニコチン二水和物、硫酸ニコチン、ニコチン塩化亜鉛一水和物、及びサリチル酸ニコチン、並びにこれらの組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記ニコチン塩は水溶液として供給される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記ニコチン塩の水溶液は共溶媒を含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙プロセスによって植物材料を再構成する方法、及び再構成タバコ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコ等のタバコ製品の製造プロセスではタバコ廃棄物が生成される。タバコ廃棄物は、典型的にはタバコくず、葉、又は茎の形態である。タバコ廃棄物を回収、加工することで、再構成タバコ又は「recon」として知られるものが得られる。
【0003】
再構成タバコの製造には異なる2つの方法が最も一般的に採用されており、これらは(i)製紙プロセス及び(ii)スラリーキャスト法である。これらの異なるプロセスで得られた製品は、顕著に異なる性質及び特性を有する。特に、製紙プロセスで形成されたreconは、スラリーキャスト法で形成されたものと比べ、典型的にはアロマ/フレーバーやニコチン含量が低減されている。
【0004】
スラリーキャスト法では、タバコ廃棄物を粉砕して微粉末とし、水性溶媒、典型的には水と混合する。得られたスラリーを更に粉砕して、タバコ材料の粒径を更に低下させてもよい。その後、スラリーを表面にキャストして乾燥させてシートを形成する。乾燥したシートを裁刻して、各種タバコ製品内で、例えば紙巻たばこのフィラーとして使用できる。
【0005】
製紙プロセスでは、水性溶媒の存在下、タバコ廃棄物を機械的に叩解することでタバコを分解、加工して、紙又はウェブにできる繊維とする。続いて、タバコに含まれる水溶性化合物を水性溶媒中に抽出する。水性抽出物と不溶性繊維状部分とを分離する。分離した繊維状部分(「パルプ」ともいわれる)を典型的な製紙手順で更に加工して基材シートを形成する。水性抽出物を濃縮した後、基材シートに再塗布する。次いで、基材シートを乾燥させて紙を形成する。
【0006】
上記プロセスで形成した紙は、裁刻し、紙巻きタバコ等の典型的な喫煙物品内のフィラーとして使用できる。あるいは、タバコロッドを包むラッパーとして使用できる。このような従来の再構成タバコ紙は、一般に「非燃焼加熱式」(「HNB」)デバイスには適さない。recon紙をHNBデバイス内の使用に適したものとするには、保湿剤も配合しなければならない。典型的な保湿剤としては、プロピレングリコール(「PG」)又は植物性グリセリン(「VG」)が挙げられる。
【0007】
HNBデバイスでは、タバコを燃やすことなく加熱する。すなわち、タバコは燃焼しない。HNBデバイスの目的は、タール等の有害な燃焼生成物の生成及びその後の吸入を避けることである。保湿剤が染み込んだrecon紙を加熱することで、保湿剤が気化して、「ベイパー」とも呼ばれるエアロゾルが形成される。このエアロゾルには、recon紙由来のアロマ/フレーバー化合物及び/又はニコチンが含まれ得る。このエアロゾルによって、使用者は喫煙行為を模倣することができる。特許文献1には、HNBデバイスに適した製紙プロセスで作製された再構成タバコが記載されている。ここでは、保湿剤を濃縮タバコ抽出物に添加してから基材シートに塗布することで、保湿剤が染み込んだrecon紙が得られる。
【0008】
recon製紙プロセスに伴って、加工中にタバコからニコチン及びフレーバー化合物等の揮発性化合物が消失する。これは、タバコを分解、加工するのに使用した大量の水や、水を蒸発させるのに使用した高温と関連している。
【0009】
製紙プロセスで作製されたreconタバコのニコチン及び/又はフレーバー含量を安全且つ効率的に増加させる方法の提供が望まれている。特に、複数の消耗品にわたって一貫して向上した知覚経験を消費者に与える製品の提供が望まれている。
【0010】
製紙プロセスで作製されたreconタバコのニコチン含量を改善させるよう様々な検討が行われてきた。特許文献2では、紙の製造後にニコチン塩の溶液を再構成タバコシートに塗布することで、紙巻たばこラッパーのニコチン含量を増加させた。あるいは、特許文献2では、「紙を形成するストックにニコチン塩の溶液を添加してもよい」ことが認識されている。「ストック」という語は、パルプ、フィラー等の製紙材料及び水の混合物を意味する(非特許文献1を参照)。従って、ストックは抽出後の繊維状混合物であって、製紙機に投入されて基材シートへと成形されるものである。
【0011】
特許文献3には、スラリーキャスト法で形成されたreconタバコのニコチン含量を増加させる方法が記載されている。これは、特定のポリウロン酸ニコチン塩誘導体をタバコ/水スラリーに添加することで達成される。スラリーキャスト法で製造された製品及びその方法自体は、recon製紙プロセスのものとは異なる。
【0012】
特許文献4には、reconタバコ紙中のニコチン含量を増加させる別の方法が記載されている。ここでは、特定の培地でタバコ属植物の根を成長させる。成長した根をタバコ固形物と混合して、再構成タバコ基材シートを形成する。根から滲出したニコチンを含む使用済み培地を、再構成タバコの製造で得られるタバコ可溶物に添加する。タバコ可溶物を濃縮し、基材シートに付加する。
【0013】
特許文献5及び特許文献6には、2つの別個の抽出プロセスをタバコ原料に対して直接実施することで、タバコアロマ化合物を抽出する方法が記載されている。ここでは、タバコ原料に対して水抽出及び超臨界二酸化炭素(scCO2)抽出を別々に行う。次いで、2つの抽出物を混合し、再構成タバコに塗布する。
【0014】
あるいは、特許文献7には、タバコ葉断片にscCO2抽出を行ってフレーバー化合物を抽出することが記載されている。次いで、フレーバー化合物を分離、精製し、スプレー又はコーティングにより再構成タバコ製品に再塗布する。
【0015】
HNBデバイス内の使用に適した再構成タバコの文脈では、必要に応じて、保湿剤が染み込んだrecon紙にフレーバー添加物を付加してもよいことがいくつかの文献に記載されている。例えば、特許文献1、特許文献8、特許文献9、及び特許文献10を参照されたい。しかしながら、これらの文献では、どのようにフレーバー添加物を付加するのかも、製紙プロセスのどの段階でフレーバー添加物を付加するのかも特定されていない。実際に、recon製紙プロセス中にフレーバー化合物が消失することは認識されていない。従って、フレーバー添加物は、加工中に消失したフレーバーと置き換えることを意図したものではなく、タバコに別の味覚体験を付与することを意図したものであるのは明らかである。
【0016】
本発明は、以上のことを念頭に置いて考案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開第2017/051034号
【文献】米国特許第3422819号明細書
【文献】米国特許第3861400号明細書
【文献】英国特許出願公告第1466912号明細書
【文献】中国特許第103468403号明細書
【文献】中国特許第103462204号明細書
【文献】中国特許第103783660号明細書
【文献】米国特許第5325877号明細書
【文献】米国特許第5715844号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0021626号明細書
【非特許文献】
【0018】
【文献】C.Biermann,Handbook of Pulping and Papermaking,2nd Edition
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様によれば、再構成植物材料を製造する方法であって、
繊維状植物材料を溶媒で抽出して、抽出物及び繊維状部分を得る工程と、
上記繊維状部分から上記抽出物を分離する工程と、
上記繊維状部分から基材シートを形成する工程と、
ニコチン塩を上記抽出物と混合する工程と、
上記抽出物を上記基材シートに塗布する工程と
を有する方法が提供される。
【0020】
ニコチンは高揮発性化合物であり規制物質である。その結果、厳密な暴露限界値の対象であるため、加工中、取り扱いにはいくつかの問題が存在する。同様に、多くのフレーバー化合物は揮発性であり、暴露限界値の対象でもある。
【0021】
ニコチン塩はニコチンよりも揮発性が低く且つ安定性が高いため、加工中、より安全且つ簡便な取り扱い手段が得られる点で有利である。加えて、製紙プロセスに対してin-situでニコチン塩添加工程を行うことで、加工中のニコチン消失(蒸発及び高希釈による消失等)がなくなる。更に、ニコチン塩を抽出物と混合することで、確実にニコチン塩を最終製品全体に良好に含浸させ且つ均一に分布させることができる。これにより、より一貫して向上した知覚体験を使用者に提供できる。
【0022】
また、ニコチン塩を抽出物(植物材料由来のフレーバー化合物等の他の可溶性化合物も含む)に供給することで、ニコチン塩とフレーバー化合物の均質な混合物が得られる。結果として、recon紙においてニコチン塩とフレーバー化合物との混合度がより大きくなるため、使用者に向上した知覚体験を提供できる。
【0023】
抽出中、繊維状植物材料と溶媒の混合物を機械的に叩解してパルプを形成する。パルプは、植物繊維等のリグノセルロース材料が、個々の繊維が遊離して、溶媒中で分散し再編成されてウェブを形成可能となるように物理的且つ/又は化学的に分解されたものからなる。必要に応じて、他の化学物質を混合物に添加して、タバコ材料の分解及びパルプ形成を促進してもよい。好適な化学物質は当業者に公知である。
【0024】
好適な溶媒は当業者に公知である。非水性溶媒及び水性溶媒が挙げられる。非水性溶媒としては、これらに限定されないが、エタノール及びプロパノール等のアルコール類、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、ジクロロメタン、酢酸エチル、ヘキサン、及びトルエン等が挙げられる。
【0025】
上記溶媒は水性溶媒であることが好ましい。上記溶媒は水であることがより好ましい。必要に応じて、上記水性溶媒は共溶媒を含んでいてもよい。上記共溶媒は水混和性であることが好ましい。共溶媒としては、アルコール類、アセトン、及びアセトニトリル等が挙げられる。
【0026】
水は非毒性且つ不燃性の溶媒であるため、加工中の取り扱いがより容易である点で有利である。更に、最終製品に毒性溶媒残渣が残留する危険性が排除される。
【0027】
抽出中のタバコ/水混合物の温度は、通常は10~100℃の範囲である。該温度は、30~90℃の範囲であることが好ましい。特に30~70℃の範囲が好ましい。
【0028】
抽出時間は通常は30分~6時間の範囲である。抽出時間は4時間未満、例えば3時間未満、又は例えば2時間未満であることが好ましい。特に、1時間未満の抽出時間が好ましい。
【0029】
上記方法は、上記抽出物を上記基材シートに塗布する前に、上記抽出物を濃縮して濃縮抽出物を得る工程を更に有することが好ましい。
【0030】
これにより、基材シートの乾燥時間を最小化でき、抽出物を紙に塗布する際のプロセス効率を向上できる点で有利である。
【0031】
上記ニコチン塩を上記濃縮抽出物と混合することが好ましい。
【0032】
ニコチン塩と濃縮抽出物とを混合することで、抽出物の濃縮中の分解及び/又は蒸発によるニコチン塩の消失を最小化できる点で有利である。
【0033】
上記繊維状植物材料はタバコであることが好ましい。
【0034】
本発明は喫煙消耗品の提供を主に意図しているため、タバコを使用することで、タバコに固有の性質、例えば質感、アロマ、及びニコチン含量を有する再構成植物材料製品を提供できる点で有利である。
【0035】
上記タバコは、タバコ葉、タバコ茎、タバコ粉末、及び/又はタバコくずの形態であることが好ましい。
【0036】
これらのタバコ形態は典型的にはタバコ加工の廃棄物として得られるため、この「廃棄物」を利用して本発明の製品を形成することで、未使用タバコ材料の量を最小化できる点で有利である。
【0037】
上記ニコチン塩は、ニコチン塩酸塩、ニコチン二塩酸塩、酒石酸ニコチン、重酒石酸ニコチン、重酒石酸ニコチン二水和物、硫酸ニコチン、ニコチン塩化亜鉛一水和物、及びサリチル酸ニコチン、並びにこれらの組み合わせから選択されることが好ましい。
【0038】
これらの塩は、使用者に十分なニコチン「ヒット」を提供できるのに加え、使用者に向上した知覚体験を提供できる点で有利である。
【0039】
上記ニコチン塩は水溶液として供給されることが好ましい。
【0040】
水の非毒性及び不燃性によって、加工中の取り扱いリスクを最小化できる点で有利である。更に、抽出物との混合に先立ってニコチン塩を溶媒と「予備混合」することで、ニコチン塩と抽出物の混合物の均質性が向上する。
【0041】
上記ニコチン塩の水溶液は、アルコール類、アセトン、又はアセトニトリル等の共溶媒を含むことが好ましい。
【0042】
共溶媒を含むことで、ニコチン塩の溶液への溶解性の向上が可能である点で有利である。これにより、ニコチン塩溶液と抽出物の混合物の均質性を向上させやすくなる。
【0043】
本発明の第1の態様に係る方法は、HNB消耗品を作製する工程を更に有していてもよい。
【0044】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に係る方法で製造されるHNBデバイス用再構成タバコ製品であって、
ニコチン塩酸塩、ニコチン二塩酸塩、酒石酸ニコチン、重酒石酸ニコチン、重酒石酸ニコチン二水和物、硫酸ニコチン、ニコチン塩化亜鉛一水和物、及びサリチル酸ニコチン、並びにこれらの組み合わせから選択されるニコチン塩を含み、
ニコチン含量が上記再構成タバコ製品の2~25重量%である、
再構成タバコ製品が提供される。
【0045】
上記再構成タバコ製品に含まれるニコチンの最小量を増大させることで、使用者がより強いニコチン「ヒット」を体験できる点で有利である。加えて、使用者に送達される消耗品あたりのニコチン総量を低減させることなく、公知のrecon紙製品と比べて製品自体のサイズを小さくできる。
【0046】
上記再構成タバコ製品のニコチン含量は、下限が上記再構成タバコ製品の重量の少なくとも2重量%、例えば少なくとも3重量%、例えば少なくとも4重量%、例えば少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、例えば少なくとも15重量%、例えば少なくとも20重量%であってもよい。
【0047】
上記再構成タバコ製品のニコチン含量は、上限が最大で25重量%、例えば最大で20重量%、例えば最大で15重量%、又は例えば最大で10重量%であってもよい。
【0048】
上記ニコチン含量は、上記再構成タバコ製品の5~25重量%、例えば10~25重量%、例えば15~25重量%であることが好ましい。
【0049】
典型的なプロセスを用いた場合よりもニコチン含量が高い再構成タバコ製品が得られる点で有利である。これにより、ニコチン量を使用者の要求に合うように調整できる。
【0050】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様に係る再構成タバコ製品のHNBデバイスでの使用が提供される。
【0051】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第2の態様に係る再構成タバコ製品を含むHNB消耗品が提供される。
【0052】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第4の態様に係るHNB消耗品とHNBデバイスとを含むHNBシステムが提供される。
【0053】
第6の態様によれば、再構成タバコ製品であって、
ニコチン塩酸塩、ニコチン二塩酸塩、酒石酸ニコチン、重酒石酸ニコチン、重酒石酸ニコチン二水和物、硫酸ニコチン、ニコチン塩化亜鉛一水和物、及びサリチル酸ニコチン、並びにこれらの組み合わせから選択されるニコチン塩を含み、
ニコチン含量が上記再構成タバコ製品の2~25重量%である、
再構成タバコ製品が提供される。
【0054】
単なる例示として示される添付の図面を参照し、以下の詳細な説明と併せて検討することで、本発明の好ましい実施形態への完全な理解が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明に係る使用のための再構成タバコを製造する方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明を更に詳細に説明する前に、本発明は記載した具体的な実施形態に限定されず、それ自体を当然ながら変化させてもよいことを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって限定されるものであるから、本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明することを目的としているにすぎず、限定することを意図していないことを理解されたい。
【0057】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味、又はそのような用語が使用される文脈で決定されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと類似した又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験でも使用できるが、本明細書には例として限られた数の方法及び材料しか記載していない。
【0058】
本明細書で言及した文献はいずれも、該文献の引用に関係した方法及び材料を開示及び記載する目的で参照により本明細書に援用される。本明細書で考察した文献は、本特許出願の出願日以前の開示として示されているにすぎない。
【0059】
本発明は、再構成植物材料を製造する方法であって、
繊維状植物材料を溶媒で抽出して、抽出物及び繊維状部分を得る工程と、
上記繊維状部分から上記抽出物を分離する工程と、
上記繊維状部分から基材シートを形成する工程と、
ニコチン塩を上記抽出物と混合する工程と、
上記抽出物を上記基材シートに塗布する工程と
を有する方法を提供する。
【0060】
図1は本発明の好ましい実施形態を示している。ここでは、繊維状植物材料はタバコであり、ニコチン塩は濃縮水性抽出物と混合される。
図1を参照し、本実施形態を以下で詳細に説明する。
【0061】
本発明では、紙として再構成する必要があり、加工中の揮発性化合物(アルカロイド誘導体又はフレーバー化合物等)の消失が最終製品にとって不利益となるような任意の好適な植物材料を使用できる。
【0062】
上記植物材料はタバコであることが好ましい。本発明では任意の種類のタバコを使用できる。黄色種(フルーキュアード(flue-cured))タバコ、バーレー(burley)タバコ、メリーランド(Maryland)タバコ、暗色気干(ダークエアキュアード(dark-air cured))タバコ、オリエンタル(oriental)タバコ、暗色火干(ダークファイアード(dark-fired))タバコ、ペリック(perique)タバコ、及びルスティカ(rustica)タバコ等が挙げられるが、これらに限定されない。また、上記したタバコのブレンドも挙げられる。
【0063】
タバコ植物の任意の好適な部位を使用できる。葉、茎、根、皮、種、及び花等が挙げられる。特に、タバコ廃棄物が使用され、タバコ廃棄物は、典型的にはタバコ葉、茎、粉末、又はくずの形態である。
【0064】
まず、タバコ材料を水性溶媒に添加して、水溶性タバコ成分を抽出する(1)。これに先立ち、必要に応じてタバコ材料を粉砕、叩解(threshed)、又は切断してもよい。
【0065】
典型的には、タバコ材料に対する水性溶媒の量は、タバコ/水性溶媒混合物の総重量の75~99重量%の範囲である。
【0066】
抽出(1)中、タバコ/水性溶媒混合物を機械的に叩解してパルプを作製する。
【0067】
抽出(1)後、繊維状部分と水性抽出物とを分離する(工程2)。これは、遠心分離、濾過、機械的プレス、又は製紙産業で知られている他の方法で実施できる。
【0068】
分離した繊維状部分(6)を更に精製して、製紙機へ投入するのに適した精製パルプを形成する(7)。典型的なパルプ精製機としては、ディスクリファイナー及びコニカルリファイナーが挙げられる。次いで、精製パルプを適切にスラリー化及び処理して、汚染物質及び混入した空気を除去する。
【0069】
精製パルプスラリーを製紙機にかける(8)。製紙機は、成形部(8)、排水部、プレス部(9)、及び乾燥部(11)を有する。成形部(8)では、精製パルプ(7)のスラリーを金網(「フォーミングファブリック」としても知られている)に塗布してウェブを形成する。金網によって、余分な水を重力によりウェブから排水してシートを形成できる。あるいは、吸引装置を用いて排水することもできる。プレスを用いて余分な水を更に除去する(9)。プレスは、典型的には、水を機械的に除去し、形成されたシートを平滑化及び圧縮するよう設計された一対の圧搾又は絞りロールである。シートの乾燥(11)は、典型的にはドラム乾燥機を用いると容易になる。
【0070】
水性抽出物(3)を濃縮する(4)。これは、任意の従来の手段を用いて、例えば熱エネルギーの印加及び/又は真空蒸発によって実施できる。
【0071】
工程5では、ニコチン塩を濃縮水性抽出物と混合する。ニコチン塩はその物質だけを混合してもよい。ニコチン塩は固体であっても液体であってもよい。あるいは、ニコチン塩は水溶液であってもよい。混合するニコチン量は、最終製品で必要とされる量に合わせてもよい。
【0072】
濃縮水性抽出物(5)をシートに塗布するのは、シートを製紙機のプレス部に通した後であって、シートを乾燥部に通す前であることが好ましい(工程10)。濃縮水性抽出物(5)は、スプレーコーティング、ウェットローラー、又は当該分野で好適な他の方法を用いてシートに塗布できる。その後、シートを乾燥させる(11)。
【0073】
本発明はまた、本発明の方法に係るプロセスで製造されるHNBデバイス用再構成タバコ製品であって、
ニコチン塩酸塩、ニコチン二塩酸塩、酒石酸ニコチン、重酒石酸ニコチン、重酒石酸ニコチン二水和物、硫酸ニコチン、ニコチン塩化亜鉛一水和物、及びサリチル酸ニコチン、並びにこれらの組み合わせから選択されるニコチン塩を含み、ニコチン含量が上記再構成タバコ製品の2~25重量%である、再構成タバコ製品も提供する。
【0074】
本発明の再構成タバコ製品は、紙巻きタバコ用巻紙等のラッパーで巻かれるのに適したタバコロッドとして使用してもよい(12)。再構成タバコ製品を裁刻してタバコロッドを形成してもよい。あるいは、再構成タバコ製品を包んだり折り曲げたりしてタバコロッドを形成してもよい(12)。
【0075】
また、本発明の再構成タバコ製品は、HNBデバイス用の消耗品又は消耗品の一部として使用してもよい。この場合、HNBデバイスで使用される再構成タバコ製品となる。
【0076】
以上の説明、以下の特許請求の範囲、又は添付の図面において開示される特徴は、それらの特定の形態として、あるいは開示した機能を実施する手段、又は開示した結果を得るための方法若しくはプロセスに関して適宜表されているが、本発明をその多様な形態で実現するためにそれらの特徴を個別に又は任意に組み合わせて使用できる。
【0077】
本発明を上述した例示的実施形態と共に説明したが、本開示に触れた当業者には多くの均等な変更例及び改変例が明らかであろう。従って、上記した本発明の例示的実施形態は説明的なものであり、非限定的であると考えられる。本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、記載した実施形態に様々な変更を加えることができる。
【0078】
誤解を避けるために言うと、本明細書中の理論的説明はいずれも読者の理解を向上させる目的で示されている。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望むものではない。
【0079】
本明細書中の節の見出しはいずれも単に構成上のものであり、記載した主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0080】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書全体を通じて、文脈上他の解釈が必要とされない限り、「含む」及び「有する」という語や、「含み」、「含んでいる」、及び「有している」等の変化形は、言及した整数又は工程や整数群又は工程群を包含することを意味していると理解され、他の整数又は工程や整数群又は工程群を排除するものではない。
【0081】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、文脈上明確に他の解釈が指示されない限り、単数形(a、an、及びthe)は複数の指示対象も包含することに留意しなければならない。本明細書中、範囲は「おおよその」一特定値から及び/又は「おおよその」別の特定値までとして表されている場合がある。このような範囲が表されている場合、別の実施形態は、上記一特定値から及び/又は上記別の特定値までを包含する。同様に、先行詞「約」を用いて数値が近似値として表されている場合、その特定値は別の実施形態を構成すると理解される。数値に関する「約」という語は任意であり、例えば±10%を意味する。