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特許7449266アルカリホスファターゼの下流プロセシング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】アルカリホスファターゼの下流プロセシング
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20240306BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240306BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
A61K38/46
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/22
C12N9/16 B ZNA
C12N5/10
C12N15/55
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021159692
(22)【出願日】2021-09-29
(62)【分割の表示】P 2020084763の分割
【原出願日】2015-01-26
(65)【公開番号】P2022001061
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】14152542.8
(32)【優先日】2014-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509296052
【氏名又は名称】アーエム-ファルマ ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】AM-Pharma B.V.
【住所又は居所原語表記】Stadsplateau 6 Utrecht The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヨンク,ライヒ ヨハネス コルネリウス
(72)【発明者】
【氏名】コナー,スティーブン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ベルヒ,エリック ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ファン エルサス,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】シュクラ,アブヒナブ アロク
(72)【発明者】
【氏名】ホーン,ヘザー ベセア
(72)【発明者】
【氏名】クック,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,ティモシー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ドーリング,ヴィクトリア アン
(72)【発明者】
【氏名】ラマロソン,マイアリー ファンヤマラーラ
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/169892(WO,A2)
【文献】特表2010-516808(JP,A)
【文献】国際公開第2009/106368(WO,A1)
【文献】特開平09-070288(JP,A)
【文献】特開2002-360259(JP,A)
【文献】日健診誌,1983年,vol.10, no.1,p.31-39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞系発現システムから得られた単離されたアルカリホスファターゼと医薬的に容認可能な添加剤とを含む組成物であって、
前記アルカリホスファターゼは、配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の配列同一性を有するタンパク質であり、
前記組成物は、100ppm未満の宿主細胞(HCP)タンパク質を含み、2月にわたる2~8℃における安定性試験の間に前記組成物が1mL中に直径50μm以上の粒子を20個未満の粒子を形成することを特徴とする組成物。
【請求項2】
6.5~7.5のpHを有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
7のpHを有することを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
200~300mM ソルビトールおよび540mMのヒスチジンを含むか、または200~300mM ソルビトールおよび1040mMのクエン酸を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
0.1mM以上100mM以下のマグネシウムをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
10μM以上1000μM以下の亜鉛をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記細胞系発現システムは、哺乳類宿主細胞を含むことを特徴とする請求項1~6いずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞系発現システムは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞を含むことを特徴とする請求項1~7いずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記HCPは、カテプシン様タンパク質であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
薬剤としての使用のための請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~9いずれか1項の組成物を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリホスファターゼ(AP)の下流プロセシング(DSP)の分野に関する。より具体的には、APを含む組成物における宿主細胞タンパク質含有量を低減する方法に関する。本発明は、APを含む組成物、および低減した宿主細胞タンパク質含有量にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
AP;IUBMB酵素命名法に従ったEC3.1.3.1、一般的な名称は、アルカリホスファターゼ(AP)であり、ホスファターゼモノエステルおよびHOをアルコールおよびリン酸塩にする反応を触媒する酵素である。APの他の名称は、アルカリホスホモノエステラーゼ、ホスホモノエステラーゼ、グリセロホスファターゼ、アルカリホスホヒドロラーゼ、アルカリフェニルホスファターゼ、オルトリン酸モノエステルホスホヒドロラーゼである(アルカリ至適)APの系統名は、リン酸塩モノエステルホスホヒドロラーゼである(アルカリ至適)。
【0003】
APは、幅広い特異性の酵素であり、トランスリン酸化も触媒する。ヒト、および他の哺乳類において、少なくとも4つの個別であるが、関連したアルカリホスファターゼが知られている。これらは、腸型(ALPI)、胎盤型(ALPP;ヒトおよび霊長類のみ)、胎盤様型(GCAP)、および肝臓/骨/腎臓(または組織非特異的型)アルカリホスファターゼ(TNAP)である。最初の3つは、2番染色体上に共に位置するが、組織非特異的型は、1番染色体上に位置する。
【0004】
アルカリホスファターゼのアミノ酸配列、ならびに触媒およびクラウンドメインの相対的な位置は、当業者に公知である。一例として、特に、4つのヒトアルカリホスファターゼのアミノ酸配列を示す、Millによる哺乳類アルカリホスファターゼのテキスト(哺乳類アルカリホスファターゼ, Wiley-VCH (2006), ISBN-13: 978-3-527-31079-1)が参照される。
【0005】
医薬用途のためのAP
以前に、APは、広範囲の疾患(急性腎障害(AKI)、敗血症、炎症性腸疾患(IBD)など)において医薬として有用であること示した。これらの研究は、単離されたウシAP、ならびに単離、および組換えヒトAPなどの天然に生じたAPを使用した。いくつかの動物モデルにおいて、ヒト腸型APの触媒ドメインと、ヒト胎盤型APのクラウンドメインとを含む組換えキメラアルカリホスファターゼが使用された(WO2008133511に記載された)。現時点において、新規の改良された組換えキメラアルカリホスファターゼであって、図18に示されたような配列を有するアルカリホスファターゼを含む医薬組成物が、医薬としての使用のために開発されている。
【0006】
医薬組成物の開発の間に、使用は、特に、アフィニティ(Mimetic Blue AP(登録商標))、陰イオン交換(Poros 50 HQ(登録商標))、および混合モード(Capto-Adhere(登録商標))クロマトグラフィーなどのタンパク質の標準(DSP)処理でなされた。DSPの後、工程は、最適化され、医薬組成物が、監督官庁によって以前に設定され、要求された規格を満たし、調合が臨床的バッチ製造のためになされた。しかし、最終段階の安定性試験の間に、粒子形成が観察された。
【0007】
これは、予期できない問題であった。なぜなら、粒子形成は、医薬組成物における望ましくない態様であり、解決策を見出さなければならないからである。
【0008】
粒子同一性とはどのようなものであるかは不明であったが、遠心分離および分析によって粒子を回収すると、銀染色された非還元SDS-PAGEゲルの非APバンドが濃縮された。このバンドの酵素消化の質量分析は、宿主細胞タンパク質の存在を明らかにしたが、APは存在しなかった。このことは、特に予期されなかった。なぜなら、宿主細胞タンパク質についての以前の試験によれば、比較的多量の粒子の理由を説明するには、組成物中のHCP量は非常に少ないものであったからである(<100ppm)。
【0009】
宿主細胞タンパク質(HCP)
HCPは、細胞または器官によって産生またはコードされたタンパク質であり、産生処理において使用され、意図される生成物とは無関係である。いくつかは、増殖、生存、および通常の細胞プロセシングに必須であるが、他のものは必須でなくてもよい。企図された生成物のように、HCPは、多くの翻訳後修飾を用いて宿主細胞によって修飾されてもよい。有用性の有無にかかわらず、HCPは一般的に、最終的な薬剤内容物において望ましくない。一般的に少量で存在する(目的タンパク質のミリグラムあたりナノグラムとして表わされる百万分率)が、それらを取り除くために、非常に多くの労力および費用が産業によって費やされる(Wang et al; Biotechnology and Bioengineering, Vol. 103, No. 3, June 15, 2009)。
【0010】
治療用途についての生物由来生成物の承認前に、生成物に残存するHCPのレベルは、米国食品医薬局によって出版された「Points to Consider」、および欧州委員会の「Notes for Guidance」に従って、定量的に測定されなければならない。したがって、HCPは通常、除去されなければならず、除去は、DSPの間に明示されなければならない。組換え生物由来生成物における混入HCPの存在を分析するための現在の分析法は、SDS-PAGE、免疫ブロット法、およびELISAを含む。HCP混入の除去と、たとえば、疎水性相互作用クロマトグラフィー(Shukla et al, Biotechnol. Prog. 2002, 18, 556-564)、プロテインAクロマトグラフィー(Shukla et al, Biotechnol. Prog. 2008, 24, 11151121)、または塩耐性陰イオン交換リガンド(Riordan et al, Biotechnol. Prog.2009, Vol. 25, No. 6)を用いる除去とについて多くの刊行物が存在する。
【0011】
したがって、低減されたHCP含有量と、向上した物理的安定性とを有するアルカリホスファターゼを含む医薬組成物を提供するために、最適化された、DSPおよび製剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、a)HCP含有量を低減し、b)観察される粒子形成を低減するために、DSPおよび最終的製剤の双方を採用した。DSP採用の主な目的は、HCP含有量を減少させることであるが、製剤採用の主な目的は、任意の残存HCPが原因の、(可視)粒子の形成を減少させることである。DSP採用、ならびに製剤採用の双方は、安定性試験の間に粒子形成を減少させる点で協働する。少なくとも組み合わせたとき、改良されたDSP、および新規の製剤は、医薬組成物をもたらし、当該組成物は、HCP含有量を減少させ、安定性試験の間に可視粒子の形成は、生じない。
【0013】
第1の実施形態において、本発明は、単離されたアルカリホスファターゼを含み、低減した含有量の宿主細胞タンパク質(HCP)、好ましくは100ppm HCP未満を含む組成物を製造するための方法であって、
以下の化学式を有するリガンドを含む固相であって、Rが当該リガンドを当該固相に結合するスペーサを示す固相を提供する工程と、
【化1】
前記リガンドを、配列番号1に少なくとも90%の配列同一性を有する単離されたAPとHCPとを含む組成物に接触させる工程と、
いくつかの洗浄工程であって、少なくとも1つの洗浄工程が、HCPの少なくとも一部をリガンドから分離するが、リガンドに結合したAPの少なくとも一部を保持することができる洗浄緩衝液を用いて実施される、いくつかの洗浄工程を実施する工程と、
前記APの少なくとも一部をリガンドから分離することができる溶出緩衝液を用いてAPを得る工程とを含む方法を提供する。好ましくは、HCPの少なくとも一部が、この最後の工程を実施する間に、リガンド、または固相に結合したままである。
【0014】
アミノ酸もしくは核酸配列の同一性パーセンテージ、または「%配列同一性」との用語は、本明細書において、必要であれば最大の同一性パーセントをもたらすために2つの配列を整列させ、間隙を導入した後、参照配列における残基と同一である、候補アミノ酸、または核酸配列における残基のパーセンテージとして定義される。好ましい実施形態において、前記少なくとも配列同一性パーセンテージの計算は、間隙の導入なしに行われる。整列のための方法およびコンピュータプログラムは、当該技術分野で周知であり、たとえば、「Align 2」、または国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBLASTサービスである。
【0015】
DSPは、以下の式を有する、アルカリホスファターゼに対する公知のリガンドであって、Rが固相に結合する反応基またはスペーサであるリガンドを用いるアフィニティ精製に関する精製工程を含み、
【化2】
洗浄工程は、高い純度および収率をもたらすとともに、得られるAP含有組成物の物理的安定性を最適化するために最適化された。化学式(I)のリガンドは、カラムの形態で、商標Mimetic Blue AP(商標)(MMBAP; Prometic社, UK)から市販されており、Rは、カラムの固相マトリックスとリガンドとの間の距離を生み出すために機能するスペーサ分子である。この距離は、大きなAP分子がリガンドに効率よく結合することを可能にする。
【0016】
化学式Iのリガンドは、当該技術分野において公知であり、たとえば、仔ウシ腸型アルカリホスファターゼ(CIAP)の精製について、Lindner(J Chromatography, 473 (1989) 227 - 240; Figure 1, compound IV)に記載されている。Lindnerは、リガンドが腸型アルカリホスファターゼ(ALPI)のDSPにおいて有用であることを示した。しかし、Linderは、HCPの低減を記載しておらず、特に、Linderは、HCP混入の問題に向き合っていなかった。なぜなら、彼らは、APを治療用途のために精製していないからである。精製のために標準的な洗浄、および溶出緩衝液を用いて、Linderは、CIAPの330倍の精製を達成した。本発明者らが見出したように、Linderにおいて記載された条件は、しかし、医薬品製造の間のDSPの間に観察された、粒子形成、およびHCP混入の問題を解決しなかった。
【0017】
本願において、「宿主細胞」は、活性(任意に修飾された)AP遺伝子を含む、動物またはヒト細胞を意味し、このAP遺伝子は、in vivo(たとえば、非ヒト動物において)、またはin vitro(細胞培養)において、細胞内で転写および翻訳される。AP遺伝子は、好ましくは調節エレメントを用いて、この宿主細胞に外来遺伝子として導入することができ、既に宿主細胞において活性内在遺伝子として存在することができ、または内在性の非活性遺伝子として活性化することができる。そのような内在性遺伝子の活性化は、たとえば、ゲノムに、たとえば相同組換えによって、調節エレメントを特異的に導入することによって達成することが可能である。
【0018】
哺乳類細胞は通常、宿主細胞として用いられる。内在性AP遺伝子が導入された場合、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、またはヒト胎児腎臓(HEK)細胞は、たとえば、宿主細胞として使用することが可能である。HCPは、内在性APを発現する(非修飾)動物細胞から得られた沈殿に存在してもよく、この場合、得られたAPタンパク質は通常、「精製された」または「単離された」と称される。これに対して、「組換え」タンパク質は一般的に、上述されたような、外来性の、任意に修飾されたAP遺伝子を含む細胞によって、または相同組換えによってAPを発現している細胞によって、発現されたタンパク質と考えられる。組換えタンパク質は、たとえば精製されたとき、「単離された」と称されてもよい。本発明に係る方法は、内在的に発現された、ならびに組換えで発現されたAPの双方に使用することが可能であると理解されるべきである。「単離された」および「精製された」との用語は、混入物を除去するための、細胞からの単離、およびタンパク質の精製などの異なる精製工程を示すために、組換えタンパク質のDSPの過程において使用されてもよい。本願において使用されるように、単離された、および精製されたとの用語は、これらの用語の使用される文脈に応じて後者の意味を有してもよい。
【0019】
新規の改良された組換えアルカリホスファターゼを含む組成物について、しかし、標準的な精製方法は、十分なHCP除去をもたらさない。また、HCP測定について使用された市販の試験は、HCP含有量を過小評価していた。なぜなら、APは、HCPと共に精製されるからであり、特に双方が同様の等電点を有するからであり、おそらくHCPは、精製の間にAPに結合したからである。組成物におけるHCPの存在は、医薬組成物における不必要な出来事である粒子形成をさらにもたらす。なぜなら、特に、粒子は、可溶性タンパク質よりもさらに免疫原性である不溶性タンパク質凝集体を含み得るからである。
【0020】
本発明者らは、医薬用途のための組成物が比較的高濃度のHCPを含み、保存後に粒子を形成するとの問題に向き合い、解決策を探した。
【0021】
解決されるべき問題の1つは、したがって、特定の組換えアルカリホスファターゼを含む組成物の提供であり、当該組成物は、低含有量のHCPを含み、好ましくは、2~8℃において2月間にわたる安定性試験の間に可視粒子形成を示さない。可視粒子形成は、粒子が、任意に拡大鏡などの拡大手段を用いる当業者によって裸眼で観察され得ることを意味する。規制の世界では、可視粒状物質と不可視粒状物質とは区別されている。可視粒状物質は、裸眼で検出することができる任意の微粒子として大まかに定義される。通常、可視物体は、0.05mm以上の物体として定義される。本明細書において使用されるような「可視粒子」との用語は、0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.5mm以上、最も好ましくは1mm以上である粒子を意味する。
【0022】
そのような可視粒子を検出するために設計された装置を用いて可視粒子形成を検出することも可能である。透明溶液における微粒子の検査を自動化するための最も一般的なアプローチは、本発明に係る(方法によって得られた)組成物とともに、溶液を撹拌し、経時的に溶液を画像化することである。画像化システムは一般的に、機械ビジョンカメラ、照明(本件の場合、バックライト)、および画像を分析するためのビジョンプロセッサからなる。画像が取得されるとすぐに、それらは、続いて画像対画像の相違を連続して分析される。相違は、気泡および微粒子などの溶液内部で動いている物体として解釈することができる。より大きく高密度の微粒子において、検出は、分析から気泡を濾過することによってなされる。なぜなら、それらは、微粒子が沈み込む間に上昇するからである。
【0023】
約1mmの直径よりも小さな微粒子を見出すことが目的である場合、攪拌するためのより注意深いアプローチが、気泡を視野から除去するために使用されなければならない。このことは、加速および減速速度に慎重な注意を払って、回転によって溶液を撹拌することによって実施することができる。
【0024】
本発明の目的について、しかし、検出方法は、上述されたような直径を有する粒子である限り、「可視粒子」を定義するために重要ではない。
【0025】
上述のように、組換えアルカリホスファターゼのための、標準DSP、および製剤は、組成物自体をもたらさない。なぜなら、HCP含有量は、一般的に使用される標準値の100ppmをはるかに超え、安定性試験の間、粒子形成が観察されたからである。
【0026】
制御標準値を満たすために、本発明に係る方法は、アルカリホスファターゼ含有量に関して、好ましくは、100ppm HCP未満を含む組成物をもたらす。
【0027】
好ましい実施形態において、洗浄緩衝液は、MgCl,ZnCl,およびTrisをさらに含む。これらの成分は、新規で進歩的な洗浄工程においてHCPを除去するためには必要ではないが、一般的に、アルカリホスファターゼの安定特性にとって、pH感受性の金属結合酵素であるAPにとって有用である。好ましくは、Mgは、0.1mMを超える濃度で存在する。好ましくは、Mg濃度は、100mMを超えない。Mg濃度は、好ましくは、0.1~100mM、より好ましくは0.5~20mM、より好ましくは1~5mM、最も好ましくは約2mMである。Znは、好ましくは10μmを超える濃度で存在する。好ましくは、Zn濃度は、1mMを超えない。Zn濃度は、好ましくは10~1000μM、より好ましくは20~100μM、より好ましくは40~60μM、最も好ましくは約50μMである。
【0028】
固相は、たとえば、樹脂であってもよく、通常、カラムの形態であり、それ自体で市販されている。本発明に係る方法において、カラムの使用が好ましい。なぜなら、DSP設定において容易に規模を拡大することができるからである。本発明の方法において好適なカラムは、たとえば、Mimetic Blue AP(登録商標)である。しかし、たとえば、前記リガンドを含むビーズを使用し、遠心分離、デカント、および溶解による接触、および洗浄工程を実施することが可能である。洗浄工程の間に、磁気ビーズ、および磁気分離を使用することも可能である。当業者は、アフィニティ精製についての様々な処理に精通しており、本発明に係る方法における使用のためのそのような処置に容易に適用することが可能である。
【0029】
通常、リガンドは、式(I)におけるRによって表わされるスペーサを用いて固相に付着される。そのようなスペーサは、当該技術分野において公知であり、任意の好適なスペーサは、たとえば、ヘキサメチルジアミン(1,6-ジアミノヘキサン)(Dye-Ligand Affinity Absorbents for Enzyme Purification N.E. Labrou Molecular Biotechnology Vol 20, 2002 p77-84)、または3’,3’-ジアミノジプロピルアミンである。
【0030】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明に係る方法であって、洗浄緩衝液が、20~100mM Arg、好ましくは30~50mM Arg、最も好ましくは約40mM Argを含む方法を提供する。
【0031】
発明者らは、驚くべきことに、APのための標準的なDSP処理に上述の洗浄工程を組み込むことによって、HCP含有量を、最終組成物において100ppm未満の値に減少させることが可能であることを示した。上述の洗浄工程は、したがって、この点において医薬組成物に定められている規則を満たし、それ自体が100ppmHCP未満の含有量を有する組成物の提供を可能にする。そのような組成物は、本発明以前には得られなかった。なぜなら、標準(最適化された)DSP工程であって、本発明の新規かつ進歩的なDSP工程の使用がなされなかったDSP工程は、100ppm HCP未満を含む組成物をもたらなさかったからである。さらに、そのような組成物は、2~8℃で2カ月にわたって保存されたとき、可視粒子形成を示さなかったが、標準の最適化されたDSP工程によって作製された組成物は、示した。
【0032】
発明者らは、同様に、低減したHCP含有量をもたらす本発明に係る方法において使用されたとき、0.5~2M 尿素、好ましくは1~2M 尿素、より好ましくは約1M 尿素を含む洗浄緩衝液をさらに示した。尿素およびArgの双方を含む洗浄緩衝液も、非常に良好な結果をもたらした。したがって、本発明に係る方法であって、洗浄緩衝液が、0.5~2M 尿素、好ましくは1~2M 尿素、より好ましくは約1M 尿素を含む方法がさらに提供される。好ましくは、洗浄緩衝液は、上述されたような濃度で、Argおよび尿素の双方を含む。
【0033】
5~15%、好ましくは約10%エチレングリコールを洗浄緩衝液に添加することは、同様に良好な結果をもたらした。したがって、本発明は、本発明に係る方法であって、洗浄緩衝液が、5~15%エチレングリコール、好ましくは約10%エチレングリコールを含む方法を提供する。
【0034】
本発明は、HCP低減を増加させるため、および/またはAPの収率を向上するために、洗浄緩衝液が、好ましくはNaClを含まないことをさらに示す。好ましい実施形態において、したがって、本発明に係る方法であって、好ましくは、上述されたような濃度で、Arg、尿素、エチレングリコール、またはそれらの任意の組み合わせを含む洗浄緩衝液が、実質的にNaClを含まない方法が提供される。実質的にNaClを含まないとは、洗浄緩衝液が、好ましくは、1mM未満、より好ましくは100μM未満、より好ましくは10μM未満、より好ましくは1μM未満、より好ましくは100nm未満、より好ましくは10nM未満、最も好ましくは1nM未満のNaClを含むことを意味する。
【0035】
低減した含有量とは、本発明に係る方法を採用した後、Arg、尿素、またはエチレングリコールが洗浄の間に使用されない同様の方法であって、NaClが洗浄緩衝液中に実質的な量(たとえば、1mMを超える)で存在する方法に比較したとき、HCP:APの比率が、低下することを意味する。好ましくは、本発明に係る方法は、DSP工程一式に組み込まれたとき、AP含有量に比べて、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、より好ましくは2ppm未満、より好ましくは1ppm未満のHCP含有量をもたらす。
【0036】
同様に、向上した収率とは、APOUT対APinパーセンテージで測定されたAPの収率が、本発明に係る洗浄工程を使用しない方法であって、APOUTが処理工程後に得られたAP量であり、APinが、洗浄前にリガンドに接触するAP量である方法に比べて高いことを意味する。
【0037】
本発明に係る方法における洗浄工程の次に、溶出工程も、本発明に先行して当該技術分野で公知の方法に比べて改良された。本発明によれば、本発明に係る方法において使用される溶出緩衝液は、APの少なくとも一部を、構造式(I)を有するリガンドから効率的に脱離させるために、好ましくは、100mM未満のNaClを含む。最も良好な結果は、約40mM Argを含み、約8のpHを有し、実質的にNaClを含まない洗浄緩衝液と、好ましくは実質的にNaClを含まない溶出緩衝液との組み合わせを用いることによって得られた。好ましい実施形態において、したがって、本発明に係る方法であって、洗浄緩衝液が、約40mMのArgを含み、約8のpHを有し、当該洗浄緩衝液および溶出緩衝液の双方が実質的にNaClを含まない方法が提供される。NaClを実質的に含まないとは、洗浄緩衝液、および/または溶出緩衝液が、好ましくは、1mM未満、より好ましくは100μM、より好ましくは10μM未満、より好ましくは1μM未満、より好ましくは100nM未満、より好ましくは10nM未満、最も好ましくは1nM未満のNaClを含むことを意味する。
【0038】
上述されたアフィニティDSP工程の次に、アルカリホスファターゼのための完全DSPは通常、精製のための工程をさらに含む。そのような工程の1つは、以下の構造式(II)によって記載されたようなリガンドを用いる混合型精製工程と称される。リガンドは、「Capto Adhere」として当該分野において公知であり、疎水性相互作用、およびイオン交換の双方を組み合わせられる。本発明者らは、最適な収率でHCP含有量をさらに低下させるために、混合型精製工程を実施する間に、洗浄条件を採用した。
【0039】
好ましい実施形態において、本発明は、したがって、本発明に係る方法であって、第2精製工程をさらに含み、当該工程が、
以下の式を有する第2リガンドを含む第2固相を提供することと、
【化3】
前記第2リガンドを、単離されたAPおよびHCPを含む組成物に接触させることと、
いくつかの洗浄工程であって、少なくとも1つの洗浄工程が、7.5~8.5のpHを有し、0.05~0.2M NaClと、0.1~0.5M L-Argとを含む第2洗浄緩衝液を用いて行われる、いくつかの洗浄工程を行うこととを含む方法を提供する。好ましい実施形態において、前記第2洗浄緩衝液は、1~20%、好ましくは2~10%、より好ましくは4~6%、最も好ましくは約5%グリセロールをさらに含む。
【0040】
固相は、たとえば樹脂であってもよく、通常、カラムの形態であり、それ自体で市販されている。本発明に係る方法において、カラムの使用が好ましい。なぜなら、DSP設定で容易に規模を拡大することができるからである。本発明の方法において好適な樹脂は、たとえば、Capto-Adhere(登録商標)であり、カラムの形態で使用することができる。しかし、たとえば、前記リガンドを含むビーズを使用し、遠心分離による洗浄および接触工程、デカント工程、ならびに溶解工程を実施することも可能である。洗浄工程の間に、磁気ビーズおよび磁気分離を使用することも可能である。当業者は、アフィニティ精製のための様々な処理に精通しており、本発明に係る方法における使用のためのそのような処理を容易に採用することが可能である。
【0041】
DSP工程の順序は、組成物を効率的に処理するために変更されてもよいが、好ましい実施形態において、前記第2精製工程は、前記第1精製工程に先行して、すなわち、前に行われる。アルカリホスファターゼのための完全なDSPは、陰イオン交換クロマトグラフィー、限外濾過/透析濾過、ウイルス濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィー、ならびにそれらの任意の組み合わせなどの他の精製工程を含んでもよいか、または好ましくは含む。
【0042】
好ましい実施形態において、本発明に係る方法は、以下の工程の、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは全てを、好ましくは列挙された順番で含む。
混合型クロマトグラフィー(たとえば、Capto Adhere(式II))
界面活性剤に基づくウイルスの不活性化(たとえば、Triton X-100)
陰イオン交換クロマトグラフィー(たとえば、Poros 50 HQ)
アフィニティクロマトグラフィー(たとえば、Mimetic Blue AP(式I))
疎水性相互作用クロマトグラフィー(たとえば、Butyl 650 M)
限外濾過/透析濾過
ウイルス濾過
バルク充填
【0043】
一実施形態において、本発明は、製剤工程であって、安定性試験中に、粒子形成が低減し、好ましくは可視粒子形成が生じないように、単離されたAP組成物の物理安定性が改善されている、好ましくはHCP含有量が低減されている結果をもたらす製剤工程をさらに提供する。好ましくは、本発明に係る方法であって、単離されたアルカリホスファターゼを含み、HCPの低減した含有量を含む組成物を製造するための本発明に係る方法は、本発明に係る製剤工程の前に行われる。
【0044】
好ましい実施形態において、前記製剤工程は、得られる組成物が、6.5~7.5のpH、好ましくは6.8~7.2、より好ましくは約7.0のpHを有し、好ましくは、200~300mM ソルビトール、より好ましくは225~275mM ソルビトール、最も好ましくは約250mM ソルビトールを含み、および/または10~40%グリセロール、より好ましくは20~30%グリセロール、最も好ましくは約25%グリセロールを含むように、緩衝液中に溶出したAPの、溶解または希釈を含む。好ましい実施形態において、組成物は、10~40mM クエン酸塩、より好ましくは15~30mM クエン酸塩、最も好ましくは約20mM クエン酸塩を含む。別の好ましい実施形態において、組成物は、5~40mM ヒスチジン、好ましくは10~30mM ヒスチジン、より好ましくは15~25mM ヒスチジン、最も好ましくは約20mM ヒスチジンを含む。
【0045】
本発明は、したがって、単離されたアルカリホスファターゼ(AP)を含む物理的に安定な組成物を製造するための方法であって、緩衝液中にAPを溶解または希釈することを含み、6.5~7.5のpHを有し、好ましくは、200~300mM ソルビトールおよび/または10~40%グリセロールを含む組成物をもたらすことを含む方法を提供する。好ましくは、前記組成物は、5~40mM ヒスチジン、および/または10~40mM クエン酸塩を含む。
【0046】
好ましい実施形態において、APを含む組成物は、100ppm未満のHCPを含む。好ましくは、前記組成物は、組成物であって、単離されたアルカリホスファターゼを含み、低減されたHCP含有量を含む組成物を製造するための本発明に係る方法によって得られた溶出されたAPを含む。
【0047】
好ましい実施形態において、したがって、本発明は、単離または組換えアルカリホスファターゼを含む組成物を製造するための本発明に係る方法であって、得られたAPを緩衝液中に溶解または希釈する工程をさらに含み、6.5~7.5のpH、好ましくは6.8~7.2、より好ましくは約7.0を有し、好ましくは、200~300mM ソルビトール、より好ましくは225~275mM ソルビトール、最も好ましくは約250mM ソルビトール、および/または10~40%グリセロール、より好ましくは20~30%グリセロール、最も好ましくは約25%グリセロールを含む組成物をもたらす方法を提供する。好ましい実施形態において、組成物は、10~40mM クエン酸塩、より好ましくは15~30mM クエン酸塩、より好ましくは約20mM クエン酸塩、および/または5~40mM ヒスチジン、より好ましくは10~30mM ヒスチジン、より好ましくは15~25mM ヒスチジン、最も好ましくは約20mM ヒスチジンを含む。
【0048】
好ましくは、組成物を得るためにAPが溶解または希釈される緩衝液は、MgClなどのマグネシウム(Mg)塩、および/またはZnClなどの亜鉛(Zn)塩を含む。好ましくは、Mgは、0.1mMを超える濃度で組成物中に存在する。好ましくは、Mg濃度は、100mMを超えない。Mg濃度は、好ましくは0.1~100mM、より好ましくは0.5~20mM、より好ましくは1~5mM、最も好ましくは約2mMである。Znは、10μmを超える濃度で存在する。好ましくは、Zn濃度は、1mMを超えない。Zn濃度は、好ましくは、10~1000μM、より好ましくは20~100μM、より好ましくは40~60μM、最も好ましくは約50μMである。以前に述べたように、MgおよびZn塩は、可視粒子形成の点で組成物の物理的安定性に必ず影響を与えるわけではないが、金属配位酵素であるAPは、ZnおよびMgイオンが存在するとき、一般的により安定である。組成物は、NaCl、好ましくは生理的濃度、すなわち約0.9%w/v NaClでNaClをさらに含んでもよい。このことは、組成物が医薬として使用されるとき、特に静脈内投与に使用されるとき、特に有用である。
【0049】
本発明に係る方法は、同様に他の組換えタンパク質に適用されてもよいが、本発明に係る方法は、好ましくは、アミノ酸配列であって、配列番号1のアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性を有する、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアルカリホスファターゼを含む組成物を用いて実施される。好ましい実施形態において、宿主細胞タンパク質は、哺乳類細胞タンパク質であり、好ましくはカテプシン様タンパク質(catA)、より好ましくはカテプシンAのハムスターホモログであり、および/または組換えアルカリホスファターゼは、好ましくは哺乳類宿主細胞、より好ましくはCHO宿主細胞を含む細胞系発現システムにおいて発現される。
【0050】
本発明は、単離されたアルカリホスファターゼを含み、低減した含有量の宿主細胞タンパク質を含む組成物を製造する方法を提供する。本発明は、本発明に係る方法によって得ることが可能なそのような組成物をさらに提供する。
【0051】
一実施形態において、したがって、本発明は、単離されたアルカリホスファターゼと、薬理学的に受容可能な賦形剤とを含む組成物であって、前記組成物は、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、より好ましくは2ppm未満、最も好ましくは1ppm未満、またはより少ない宿主細胞タンパク質を含む組成物が提供される。好ましくは、組成物は、2~8℃、好ましくは約5℃で2カ月、より好ましくは3ヶ月にわたる安定性試験の間において、実質的に可視粒子形成を示さない。実質的に可視粒子形成がないとは、1mLの組成物中に20個未満の可視粒子が形成されることを意味する。好ましくは、15個未満の粒子、より好ましくは10個未満、より好ましくは5個未満、最も好ましくは1mL組成物あたり1粒子未満が、組成物の保存に特化された条件における安定性試験の間に形成される。
【0052】
好ましくは、本発明に係る組成物は、本発明に係る方法によって得られるか、または得ることが可能である。好ましくは、組成物は、6.5~7.5のpH、好ましくは約7のpHを有し、好ましくは10~40mM、好ましくは15~30mM、より好ましくは約20mM クエン酸塩、および/または10~40%、好ましくは20~30%、より好ましくは約25% グリセロール、および/または200~300mM、好ましくは225~275mM、より好ましくは約250mM ソルビトール、および/または5~40mM ヒスチジン、好ましくは10~30、最も好ましくは約20mM ヒスチジンを含む。好ましい実施形態において、組成物は、6.5~7.5のpH、好ましくは約7のpHを有し、10~40mM、好ましくは約20mM クエン酸塩、または5~40mM、好ましくは約20mM ヒスチジンを含む。本発明者らは、そのような製剤組成物を用いる、2~8℃で2カ月にわたる安定性試験の間に、優れた物理的安定性、すなわち、実質的に可視粒子が形成されないことを観察した。上述されたように、本明細書において使用されるような「可視粒子」との用語は、50μm以上の直径、好ましくは100μm以上、より好ましくは500μm以上、最も好ましくは1mm以上の直径の粒子を示している。粒子は、任意に拡大手段を用いて裸眼によって、またはたとえば、上述されたような、フィルムカメラ、およびフィルム材料を分析するための好適な手段などの自動化処理によって観察することができる。
【0053】
好ましい実施形態において、本発明に係る組成物は、好ましくは哺乳類細胞、より好ましくはCHO宿主細胞を含む細胞系発現システムにおいて発現された単離アルカリホスファターゼを含む。好ましい実施形態において、HCPは、カテプシン様タンパク質、より好ましくはカテプシンAのハムスターホモログである。
【0054】
好ましくは、アルカリホスファターゼは、配列であって、配列番号1のアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性、最も好ましくは100%の配列同一性を有する配列を有する。本発明は、HCPを低減する方法と、組成物であって、単離されたアルカリホスファターゼを含み、100ppm未満のHCPを含む組成物とを提供し、本発明は、本発明に係る組成物の医薬としての使用をさらに提供する。
【0055】
本発明に係る組成物の医薬としての使用は、好ましくは、疾患に関連するアルカリホスファターゼ処置における使用である。アルカリホスファターゼ関連疾患とは、アルカリホスファターゼの欠損に関する疾患もしくは症状、またはアルカリホスファターゼの外来性投与によって改善することができる疾患または症状を意味する。特に、アルカリホスファターゼ関連疾患は、以下の疾患:敗血症、または敗血症ショック、炎症性腸疾患または消化管の他の炎症疾患、(急性)腎損傷または他の腎臓病、虚血性再灌流障害、(外科的)外傷、および低ホスファターゼ症の任意の1つであってもよい。
【0056】
本発明は、以下の、非限定的な実施例においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】アルカリホスファターゼ組成物における粒子形成は、0~7日目において示された緩衝液中で形成された。y軸は、定性的粒子形成を示し、1=~10粒子/mL;2=10~15粒子/mL、および/またはより大きな粒子;3=~15粒子/mL、および/または大部分大きな粒子;4=15~20粒子/mL、および/または非常に大きな粒子;5=~20粒子/mL、および/または非常に大きな粒子;6=~30粒子/mL、および/または非常に大きな粒子;7=30~40粒子/mL、および/または非常に大きな粒子;8=40~50粒子/mL、および/または非常に大きな粒子。各組のバー内において(各組のA内,B内,C内など)、凡例、すなわち、第1バー=0日目、第2バー=1日目などに示された順番(左から右へ)A,B,Cなどは、表2に説明されているように、異なる添加剤を示している。
図2】アルカリホスファターゼ組成物における粒子形成は、7日目において、示された緩衝液中で製剤化された。y軸は、定量的粒子形成を示し、1=~10粒子/mL;2=10~15粒子/mL、および/またはより大きな粒子;3=~15粒子/mL、および/または大部分大きな粒子;4=15~20粒子/mL、および/または非常に大きな粒子;5=~20粒子/mL、および/または非常に大きな粒子;6=~30粒子/mL、および/または非常に大きな粒子;7=30~40粒子/mL、および/または非常に大きな粒子;8=40~50粒子/mL、および/または非常に大きな粒子である。
図3】アルカリホスファターゼ組成物における粒子形成は、示された緩衝液中で製剤化された。y軸は、定量的な粒子形成を示し、1=可視粒子なし;2=1~5個の小粒子/mL;3=6~15個の小さな粒子/mL;4=16~25個の小さな粒子/mLを示す。
図4】異なる製剤におけるrecAPの高分子量(HMW)種の形成における物理的ストレス条件の効果。サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された、メインピークパーセンテージと、パーセンテージHMWとのグラフ表示。
図5】HCPクリアランスにおけるCapto Adhere中間洗浄の効果、および第1選別の生成物収率。(A)標準化HCP(基準溶出液について標準化)のグラフ表示に対する各溶出液についての生成物収率。各ランにおいて試験された中間洗浄は、グラフに示されたものに対応する着色円によって標識される。(B)残留HCPレベル、および完了した各実験についての収率の表。試験された各中間洗浄の製剤、および未加工の残留HCPデータの結果、標準化HCP、ならびに生成物収率は、各ランについて列挙される。表に示された着色円は、(A)における標識に対応する。全ての緩衝液製剤は、2mM MgClおよび50μM ZnClを包含した。
図6】処理中の試料内のcatAの検出のためのウエスタンブロット分析。(A)ウエスタンブロットは、約10μgの各処理中の試料についてcatA抗体検出を用いて非還元条件下で行われた。分析された各試料についての残留HCPおよび収率などの同定は、(B)に列挙される。基準コントロール実験溶出液(レーン5)は、中間洗浄が含まれた溶出液(レーン2および4)よりも多くのcatAを包含した。レーン3は、0.5M AmSO、pH8.0を含む中間洗浄工程の間に除去されたcatAを示す。全ての緩衝液製剤は、20mM Tris、2mM MgCl、および50μM ZnClを含んでいた。
図7】HCPクリアランスおよび生成物収率における第2選別からのCapto Adhere中間洗浄の効果。(A)標準化HCPに対する各溶出液の生成物収率のグラフ表示。HCP値は、同一の導入材料を用いて基準溶出液に標準化された。各ランにおいて試験された中間洗浄は、グラフに示されたものに対応する着色円によって標識される。(B)グラフに示されたデータを概略する表。中間試験洗浄条件と、各実験ランについて導入材料とが列挙される。各溶出液についての、未加工HCPデータ、標準化されたHCP値、および生成物収率も列挙される。表に示された着色円は、(A)における標識に対応する。全ての中間緩衝液製剤も、20mM Tris、2mM MgCl、および50μM ZnClを含んでいた。
図8】第1、および第2スクリーニング試験に由来する有望な候補を含む抗catAウエスタンブロット分析。(A)catA HCPに対する抗体を用いるウエスタンブロット。(B)処理中の試料の銀染色。(C)ウエスタンブロットにおける各レーンについての試料同定。レーン毎に導入された生成物の量が示される。溶出液についての残留HCP値も列挙される。基準コントロール実験溶出液(レーン3)は、5%グリセロールを含む(レーン7)、または含まない(レーン5)、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0の中間洗浄を含む溶出液よりもcatAを多く含んでいた。レーン4および6は、5%グリセロールの存在下(レーン6)、または非存在下(レーン4)における0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0を含む様々な中間洗浄工程の間に除去されたcatAを示す。全ての緩衝液製剤も、20mM Tris、2mM MgCl、およびZnClを含んでいた。
図9】第1の選別について、HCPクリアランス、および生成物収率におけるMBAP中間洗浄の効果。(A)各溶出液について、HCP濃度に対する生成物収率のグラフ表示。(B)完了した各実験についての、HCPレベルおよび収率の表。各中間洗浄緩衝液の製剤、未加工HCPデータ、標準化HCP、および生成物収率が、各ランについて列挙される。表中に示される着色円は、(A)における標識に対応する。1M 尿素洗浄のみが、HCPを減少させるが高い収率を維持した。
図10】SDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析;第1の選別に由来する、MBAPラン1(基準)、およびラン4(1M 尿素洗浄)。(A)Gelcode Blue stainを用いるSDS-PAGE分析。ラン1およびラン4溶出液は、同等の結合パターンを示した。(B)catA抗体検出を用いるウエスタンブロット。基準コントロール溶出液(レーン4)は、ラン4溶出液(レーン6)よりも多くcatAを含んでいた。レーン5は、1M 尿素、pH8.0を含む中間洗浄の間に除去されたcatAを示す。
図11】第1の選別について、HCPクリアランス、および生成物収率におけるMBAP中間洗浄の効果。(A)各溶出液について、HCP濃度に対する生成物収率のグラフ表示。(B)完了した各実験について、残留HCPレベルおよび収率の表。試験された各中間洗浄の製剤、溶出緩衝液のNaCl濃度、HCP結果物、標準化HCP、および生成物収率が、各ランについて列挙される。表に示される着色円は、(A)における標識に対応する。作製された全ての中間緩衝液製剤は、20mM Tris、2mM MgCl、および50μM ZnClを含んでいた。
図12】複数のHCP除去洗浄スクリーニングランのSDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析。(A)試料濃度、およびHCP ELISAデータを有するゲル導入表。(B)catA抗体検出を用いるウエスタンブロット。(C)銀染色を用いるSDS-PAGE分析。
図13】最終洗浄工程改善ランについて、HCPクリアランスおよび生成物収率におけるMBAP中間洗浄の効果。(A)各溶出液について、HCP濃度に対する生成物収率のグラフ表示。赤い円は、ラン28の結果を強調する。(B)完了した各実験についてのHCPレベルおよび収率の表。各中間洗浄緩衝液の製剤が、列挙され、同様に、各ランについての、未加工HCPデータの結果、標準化HCP、および生成物収率が列挙される。表に示された着色円は、(A)における標識に対応する。40mM アルギニン洗浄緩衝液は、3g recAP/L 樹脂の導入(ラン28、黄色で強調された)において最も高いHCPクリアランスと高いrecAP回収率とを示した。
図14】確認ラン処理中間物の抗catAウエスタンブロット分析。(A)catA HCPに対する抗体を用いるウエスタンブロット。(B)処理中の試料の銀染色。(C)ウエスタンブロットにおける各レーンについての試料同定。ウエスタンブロットおよび銀染色についての試料ローディングが含まれる。
図15】HCP低減確認ラン処理中間物およびBDSの分析結果。
図16】デモランについての各下流処理中間物についての分析試験の要約。デモランに由来する処理中間物についての分析結果。
図17】ヒスチジン緩衝液、およびクエン酸塩緩衝液において製剤化された実施例3で得られた製剤の3ヶ月にわたる安定性試験。
図18】改良された組換えアルカリホスファターゼのアミノ酸配列。
【実施例
【0058】
実施例において使用された定義
AmSO:アンモニウム硫酸塩;AP:アルカリホスファターゼ;AU:吸光度ユニット;BDS:原薬;BH:ベッド高;BPC:バイオプロセス容器;catA:カテプシン様タンパク質;細胞培養回収物;CHO:チャイニーズハムスター卵巣;CV:カラム体積;ELISA:酵素免疫測定法;EQ:平衡;HCP:宿主細胞タンパク質;HIC:疎水性相互作用クロマトグラフィー;HMW:高分子量化学種;ID:内径;L-Arg:L-アルギニン;LOD:検出限界;LOQ:定量限界;MBAP:Mimetic Blueアルカリホスファターゼ樹脂;NaSCN:ナトリウムチオシアネート;PD:工程開発;PES:ポリエチレンスルホン;ppm:パーツパーミリオン;PSI:重量ポンド毎平方インチ;qPCR:定量的ポリメラーゼ連鎖反応;recAP:組換えアルカリホスファターゼ;RP-HPLC:逆相高速液体クロマトグラフィー;SEC-HPLC:サイズ排除クロマトグラフィー;SDS-PAGE:ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動;TMP:膜圧;UFDF:限外濾過/透析濾過;v/v:体積 対 体積;WFI:注入のための水
【0059】
実施例において使用される機器
AKTA Avant;AKTA Bioprocess skid(GE Healthcare社);AKTA Process;AKTA Purifier;BioPhotometer Plus UV-Vis 分光光度計(Eppendorf社);BPG 10 cm and 14 cm 径 クロマトグラフィーカラム(GE Healthcare社);Eppendorf Plus UV-Vis 分光光度計;Fisher Scientific Mini 遠心機;フロアスケール (Ohaus社);Invitrogen Novex Mini Cell;Mettler Toledo Seven Multi pHおよび伝導率メータ;Millipore Vantage-L カラム;ペリスタポンプ(Millipore社);スイングバケット遠心機
【0060】
実施例において使用される材料
10L BPC(Hyclone);20L BPC(Hyclone);100L BPC(Hyclone)Invitrogen 4~12%Bis-Tris SDSゲル;15N Planova 中空繊維フィルタ(Asahi Kasei社)5L BPC(Hyclone);酢酸;Butyl 650M樹脂(Tosoh Bioscience社);Capto Adhere 樹脂(GE Healthcare社);D-ソルビトール;エタノール;L-アルギニン;L-アルギニン塩酸塩;L-ヒスチジン;塩化マグネシウム六水和物;Mimetic Blue AP 樹脂(ProMetic Biosciences社);Pellicon 2 Ultrafiltration Biomax 10 kDa 0.1 m2 (Millipore社);Pellicon Biomax 10 kDa 50 cm2 UF/DF カセット(Millipore社);Planova 15N ウイスルフィルタ(Asahi Kasei社);Poros 50 HQ 樹脂(Applied Biosystems社);塩化ナトリウム;水酸化ナトリウム,50%;リン酸ナトリウム;Tris塩酸塩;トロメタミン;Tris塩基;Tris塩酸塩;WFI(Hyclone);塩化亜鉛
【0061】
実施例1
製剤安定性試験
recAPのための多くの製剤試験は、米国のKBI BioPharma社によって行われた。CMOは、処理の開発および製造のためにAM-Pharma社によって契約された。初期の製剤は、AM-Pharma社によって以前に開発されたAPの形態BIAPに使用されたものに基づいた。BIAPは、高レベルのグリセロール(25~40%)を含むTris緩衝液において非常に安定であることが示された。初期の緩衝液の組成物は、以下の通りである。
5mM Tris-HCl、2mM MgCl、50μm ZnCl、25%(w/v)グリセロール pH8 recAPは、10mg/mLにおいてこの緩衝液中で製剤される。この緩衝液中におけるrecAPの最大の溶解度は、確立されなかった。しかし、35mg/mLまでのrecAPの濃度は、5mM Tris-HCl、2mM MgCl、50μm ZnCl、pH8.2においてもたらされた。
【0062】
ロバスト性試験
第1の製剤安定性は、以下に注目して行われた。
・ pHロバスト性(7.5~8.5)、およびTris緩衝液濃度 5 対 50mM
・ 添加剤の種類、および濃度(グリセロール25%、2% 対 250mM ソルビトール)
・ 注射器性能
試料は、pH、DSC、DLS、浸透圧、粘度によって分析された。
recAPの物理的安定性の軽微な減少は、25%グリセロール製剤において、pHの低下を用いるDLSによって観察された。Z平均径は、10nmから12nmまで増加する。試料均一性は、pHとともに減少し(0.12~0.33 PdI)、および粒子寸法分布のピーク幅の増加。
2%グリセロール、または250mM ソルビトール製剤において傾向は、観察されなかった。
【0063】
5mM 製剤のpHロバスト性は、不適切と考えられたが、有意な問題点は、その他に観察されなかった。
【0064】
これらの試験において、recAPのための製剤緩衝液は、50mM Tris-HCl、2mM MgCl、50μm ZnCl、25%(w/v)グリセロール pH8に変更された。
強制分解試験
・ 熱ストレス:50℃で1週間にわたるインキュベーション
・ 凍結/融解ストレス
o 2.5mL mL -75℃のフリーザにおいて24時間直接凍結し、続いて室温で融解させた。
o 2.5mLを-65℃まで凍結乾燥器中において0.05℃/分で凍結させ、0.05℃/分で25℃に融解させた。
o 1、3、または5回の凍結/融解サイクルへの曝露
・ 攪拌ストレス:室温で5日間にわたる、回転式ラック、および軌道振とうによる。
・ 脱アミド化/塩基加水分解:1MTris塩基を用いて試料をpH≧10とし、37℃で5日間にわたるインキュベーション
・ 脱アミド化/酸加水分解:試料を1N HClを用いてpH≦4とし、37℃で5日間にわたるインキュベーション
・ 酸化:37℃で4時間にわたって、0.04%(v/v)過酸化水素に曝露
・ 光安定性:クールライト 8.00kluxに150時間にわたって曝露し、20時間にわたるUV光の10.0ワット 時間/平方メートル
全ての試料は、以下によって分析された。
・ SEC
・ RP-HPLC
・ 活性(動態)
・ cIEF
・ A280
・ SDS-CGE
・ PepMap w/LC/MS。
【0065】
加速度的な安定性試験
加速度的な安定性試験が、10L/5~10グラムスケールの製造工程に由来する原薬を用いて進行中である(表1を参照)。recAP試料は、-75℃、2~8℃、および25℃で保存され、試料は、1月間にわたって試験された。
【0066】
t=2月において、pHおよび活性における効果は、見ることができなかった。25℃におけるいくらかの蒸発は、タンパク質含有量における増加から明らかであり、付随物は、容積測定活性において増加した。T=2月の試料の試験に由来するデータセットは、未だ完全ではない。しかし、粒子形成は、これらの試料において存続することが明らかとなった。
【表1】
【0067】
粒子形成および性質決定の検討
最近、粒子形成は、10グラムスケールで製造されたrecAPのバッチにおいて観察された。粒子は、0.22μm濾過後、数日以内で再出現した。視覚的に、粒子は、タンパク性の性質のようである。
【0068】
寸法分布分析は、広い寸法分布を示す。濾過は、大きな粒子において100倍の減少をもたらすが、小さな粒子においては10倍の減少しかもたらさない。
【0069】
第1の再形成試験が行われ、pH(7.0~8.5)、緩衝液の種類(クエン酸塩 対
Tris)、緩衝液の強度(5 対 50mM Tris)、および添加剤(ソルビトール、スクロース、グリセロール、NaCl、およびアルギニン)が試験された(表2を参照)。26の製剤のいずれも、濾過後に粒子の形成を抑制しない。しかし、より迅速な粒子形成およびより高いpHに向かう傾向があるようである。
【表2】
【0070】
製剤スクリーニング試料の外観は、粒子含有量(表3)に基づいて7日間の期間にわたって1~8のランキングに割り当てられ、結果は、図1および図2に示された。
【表3】
【0071】
実施例2
recAP製剤開発
3つの製剤は、凍結-融解、および熱ストレスの間における、recAPの粒子形成、および安定性/凝集体を評価するために評価された。製剤は、評価され、以下に列挙される。
20mM ヒスチジン、250mM ソルビトール、50μM ZnCl、2mM MgCl、pH7.0 20mM クエン酸塩、250mM ソルビトール、50μM
ZnCl、2mM MgCl、pH7.0
50mM Tris、25% グリセロール、50μM ZnCl、2mM MgCl、pH8.0
【0072】
試験のための標的タンパク質濃度は、10mg/mLであった。試験は、未濾過の、および(0.2μm PES膜を通して)濾過されたDemo4 DSを用いて、試料の2つの個別のセットとして行われた。タンパク質試料は、Amicon Ultra 15, 10k MWCO再生セルロースフィルタを用いて製剤緩衝液に緩衝液置換された。フィルタは、タンパク質の添加前に好適な緩衝液で洗浄された。2mLのrecAPの全てが、各UF/DF装置に添加された。10mLの体積の特定緩衝液は、試料に添加され、総量は、~2mLまで減少した。工程は、全部で4サイクル繰り返された。製剤化試料は、3つのアリコートに分けられた。1mLのアリコートは、2~8℃で静置され、ゼロ時間、3日目、および1週間における粒子形成を観察された。2つの0.5mLアリコートは、ストレスを受け、1つは、50℃で1週間にわたって静置され、1つは、5回の凍結融解サイクルに曝露された。試験の結論において、2~8℃、ストレスを受けた試料は、SEC、RP-HPLC、および活性によって共に分析された。
【0073】
外観の結果
全ての時点において、全ての試料は、透明で無色のようであった。緩衝液置換の前に、未濾過のDemo4 DSは、ゼロ時間において、および試験の最後において~50個の小さな粒子を有し、透明で無色のようであった。
【0074】
緩衝液置換の前に、濾過されたDemo4 DSは、透明で無色のようであり、ゼロ時間において可視粒子なく、試験の最後に1mLあたり4個の小さな粒子を有した。
【0075】
製剤化試料において、濾過されたおよび未濾過の出発材料の両方から、1~5個の小さな可視粒子から20個未満の可視粒子までの粒子の存在が観察され、かなり多くの粒子がTris/グリセロール製剤において観察された(図3)。
【表4】
【0076】
複数回の凍結融解は、HMW形成を誘導しない。心臓ストレスは、クエン酸塩/ソルビトール、およびヒスチジン/ソルビトール系製剤において限定されたHMW形成を生じる。有意なHMW形成は、Tris/グリセロール系製剤における心臓ストレスによって誘導される(表4および図4)。
【0077】
実施例3
中間洗浄のスクリーニング計画
2つのカラム工程は、宿主細胞タンパク質クリアランスを提供するために、特定の中間洗浄の開発のために選択された。洗浄は、生成物の収率を保つことに焦点を合わされたが、カラム溶出液におけるHCPレベルを有意に減少させた。中間洗浄は、混合型Capto Adhere樹脂、またはアフィニティMimetic Blue樹脂に基づいて最初に選択された。
【0078】
第1の選別における有望な条件の特定によって、特異的な移動相修飾因子を含む一連の洗浄は、カテプシン様HCPと樹脂リガンドとの間の潜在的相互作用、HCPと生成物との間の相互作用、または双方を阻害することができる洗浄製剤を特定するために試験された。表5に示された移動相修飾因子は、単独で、連続して、組み合わせて試験された。
【表5】
【0079】
各カラム工程のためのトップ3の洗浄条件は、さらに改善がなされ、続いて、追加効果を実証するために連続したカラム工程の試験がなされた。全精製工程のベンチスケールランは、続いて、改善された処理工程が、原薬であって、recAP比活性を減少させる、または全処理収率に重度の影響を与えることなく、HCP規格を満たす原薬をもたらすことを確認するために実施された。研究を通じて、catA検出を用いる、HCP ELISAおよびウエスタンブロットは、ベースラインランに対する比較のための様々な中間洗浄を組み込んで、HCPクリアランスのレベルを観察するために常に利用された。
【0080】
Capto Adhereクロマトグラフィー改善
第1中間洗浄の選別
本試験の目的は、生成物と公知のHCP不純物との間の潜在的相互作用、HCP不純物と樹脂リガンドとの間の相互作用、または双方を、生成物:リガンド相互作用に干渉することなく阻害することができるCapto Adhereカラム工程のための中間洗浄を特定することであった。HCP不純物との相互作用を阻害することは、究極的には、向上した生成物の精製度をもたらすことであろう。したがって、最初の選別は、Capto Adhere 回収工程のための様々な中間洗浄を試験することと、それらのHCPクリアランスを高める能力を調べるために採用された。第1の選別において利用される中間洗浄は、静電相互作用、疎水性相互作用、または2つの組み合わせを阻害するための組み合わせを含む混合型クロマトグラフィーのための現存する溶出機序に基づいて選択された。修飾因子(すなわち、カオトロピック剤、疎水性修飾因子、塩、またはアルキルグリコール)を含む中間洗浄工程の包含は、HCP不純物を用いる任意の現存する相互作用を減少させることができるが、生成物:リガンド相互作用は無傷のままであった。修飾因子の効果のスクリーニングに加えて、pH7.0および8.0が評価された。
【0081】
第1の選別のための導入材料は、細胞培養回収物B02-14OCT2012(すなわち、1×15L CCH 導入)であった。この細胞培養回収物は、2012年10月に採用された、改訂された供給計画/捕足に組み込まれた(1)。基準コントロール実験は、以下の確立された処理を行われ、カラムは、7.5CVの高塩緩衝液(20mM Tris、0.25M NaCl、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH8.0)を用いて洗浄され、続いて平衡緩衝液(20mM Tris、0.1M NaCl、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH8.0)を用いて3.0CV洗浄された(2)。コントロールランに由来する残留HCPレベルは、7.5CVの高塩の後導入洗浄の直後であって、平衡緩衝液を用いる3.0CV洗浄前の、合計5.0CVについての図3に挙げた、中間洗浄緩衝液を組み込む一連の実験と比較された。各スクリーニング実験についての生成物は、上流に溶出されるとすぐに、UV280吸光度が≧1.75AU/cmの開始条件に達した後、2.0CVについて回収された。
【0082】
図5は、試験された中間洗浄の製剤と、HCPレベルおよび生成物収率とを概説した。グラフに示される残留HCP値は、基準溶出液に標準化された。生成物の収率(RP力価を用いて測定された)、およびHCPクリアランスのレベル(HCP ELISAを用いて測定された)は、これらのスクリーニング試験の間に分析された主要な応答であった。基準値よりも高いHCPクリアランスを有する溶出液を生じる中間洗浄は、有望な洗浄候補として選択された。この計画に基づいて、第1選別の結果は、3つの中間洗浄候補を明らかにした。(1)0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0、(2)1M 尿素、pH8.0、および(3)0.5M AmSO、pH8.0他の全ての試験された中間洗浄製剤は、基準コントロールに比べて、20%を超えて残留HCPレベルを低減することができなかった。中間洗浄工程の組み込みは、最も高いHCPクリアランスを有する実験を含む、いくつかの実例において得られる生成物に悪影響を与えた(図5)。しかし、生成物収率のわずかな低下は、HCPクリアランスにおける有意な影響によって正当化することができる。さらなる緩衝液製剤の第2選別は、このカラム工程の間の生成物収率およびHCPクリアランスのバランスを保つことを可能にする中間洗浄を特定するために計画された。
【0083】
特定の残留HCP、カテプシン様タンパク質の量は、非還元条件下においてウエスタンブロットによって観察された。図6は、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0、または0.5M AmSO、pH8.0を含む有望な中間洗浄の2つを組み込む効果を示す。コントロール実験に由来する溶出液(レーン5)と、中間洗浄を含む実験の溶出液(レーン2および4)との比較、catA不純物の低減を確認した。レーン3は、0.5M AmSO、pH8.0を用いる中間洗浄の間にカラムから溶出したカテプシン様タンパク質不純物を表した。0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0中間洗浄もcatA除去を示したが、洗浄試料は、この特定のウエスタンブロットに含まれなかった。基準溶出液に対する比較によれば、溶出液について0.5M AmSO、pH8.0洗浄を組み込んだ溶出液についてのカテプシン様タンパク質の約30%低減があり、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0中間洗浄(レーン2)を有する溶出液について約50%の低減があった。ウエスタンブロットの結果は、図5に示されたHCP ELISAデータと一致し、スクリーニング試験を導くために両方の分析の信頼性を確認した。
【0084】
生成物の収率とHCPクリアランスとの収集された結果に基づいて(ウエスタンブロット、およびHCP ELISAによって測定されたように)、第1選別から特定された中間洗浄候補のトップは、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0であった。
【0085】
第2中間洗浄の選別
第1の選別は、残留HCPにおける少なくとも50%の減少を提供することができる1つの中間洗浄(0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0)を明らかにした。生成物収率は、この特定の洗浄によって悪影響を受けたので、修飾因子であって、タンパク質:リガンドの相互作用を潜在的に強化することができる修飾因子を処理する中間洗浄緩衝液が、第2の選別に組み込まれた。第1の選別からの最も効果的な中間洗浄緩衝液は、それらの追加効果、およびpH値の変化を評価するために、連続して、および組み合わせて試験された(図7)。
【0086】
上述の処理条件を用いて、基準コントロール実験が行われ、HCPレベルは、図7に示された中間洗浄緩衝液を組み込んだ一連の実験と比較された。4つの洗浄ブロックを含む中間洗浄の有効性を評価する全ての実験:(1)高塩緩衝液(20mM Tris、0.25M NaCl、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH8.0)を用いる7.5CV洗浄、(2)平衡緩衝液(20mM Tris、0.1M NaCl、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH8.0)を用いる1.5CV洗浄、(3)図7に列挙された緩衝液製剤の1つを用いる5.0CV中間洗浄、および(4)生成物溶出前に平衡緩衝液(20mM Tris、0.1M NaCl、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH8.0)を用いる3.0CV洗浄。一連の中間洗浄工程を有する実験について、カラム洗浄ブロックは、中間洗浄緩衝液の混合を抑制するために、平衡緩衝液を用いる1.5CV洗浄によって分離された2つの5.0CV中間洗浄段階を含めるために変更された。増加した生成物:リガンド結合の可能性を特定するために、回収された導入材料に低濃度の修飾因子を含んだ実験が終了した。各スクリーニング実験からの生成物は、UV280吸光度が≧1.75AU/cmの開始条件に到達するとすぐに上流で溶出され、2.0CVの回収に続いた(2)。
【0087】
試験された中間洗浄の製剤と、標準化HCPレベルおよび収率値とは、図7に示される。標準化されたHCPレベルは、グラフ(図7A)に含まれた。なぜなら、回収導入材料の2つの異なるロットは、第2選別の間にわたって利用されたからである。残留HCPレベルは、同一の回収導入材料を用いる基準コントロールラン(すなわち、1×15L、または200L PD CCH 導入)に標準化された(1)。中間洗浄条件のいくつかは、残留HCPレベルを減少させ、生成物回収率を維持するが、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、5%グリセロール、pH8.0を含む中間洗浄から最も良い結果が得られた。この中間洗浄の組み込みは、基準コントロール実験に比べて、残留HCP濃度を2.9倍減少させた。0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0に続いて0.5M AmSO、pH8.0を用いる一連の洗浄を組み込んだ溶出液も、基準溶出液に比べて2.5倍まで有意なHCPクリアランスを示した。
【0088】
第1選別と同様に、カテプシン様タンパク質残留HCPの量は、非還元条件下においてウエスタンブロットによって観察された。図8は、5%グリセロールの有無で、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0中間洗浄を組み込む効果を示す。0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0中間洗浄は、第1選別の間に同定された。コントロール実験(レーン3)に由来する溶出液と、中間洗浄を含む実験からの溶出液(レーン5および7)との比較は、catA不純物の減少を確認した。レーン4および6は、それぞれ5%グリセロールの有無で、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0を用いる中間洗浄の間にカラムから溶出されたcatA不純物を表した。基準溶出液に対する比較後、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0中間洗浄におけるグリセロールの包含は、グリセロール無しの中間洗浄を組み込んだ溶出液の約50%に比べて、約65%のわずかに高いcatA除去を示した。これらの結果は、様々な修飾因子(すなわち、グリセロール、塩、およびアルギニン)を単一の中間洗浄に組み込んだ追加効果を示した。
【0089】
Capto Adhere中間洗浄の選択
Capto Adhere中間洗浄スクリーニング試験の終了後、収集された分析データ、特にHCP ELISAおよびウエスタンブロットの結果は、Capto Adhere回収工程について中間洗浄の選択に利用された(図5図7、および図8)。スクリーニング試験を通じて、2つの中間洗浄は、基準コントロールランに比べて、有意なHCP減少を明確に示した。2つの中間洗浄は、(1)0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0、および(2)0.1M NaCl、0.2M L-Arg、5%グリセロール、pH8.0であった。図8におけるウエスタンブロットは、これらの中間洗浄を組み込んだランに由来する溶出液の直接比較をもたらした。両方の中間洗浄は、基準ランに比べて、特定のHCP、カテプシン様タンパク質における有意に多い減少をもたらした。しかし、減少のレベルは、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、5%グリセロール、pH8.0中間洗浄を受けた溶出液においてわずかに高かった。HCP ELISAデータに基づいて、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、5%グリセロール、pH8.0中間洗浄を受けた溶出液は、基準溶出液に比べて、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0にて約46%に対して、約65%減少した。より高いHCPクリアランスに加えて、生成物収率は、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、5%グリセロール、pH8.0中間洗浄を受けた溶出液で高かった。より高いHCPクリアランスおよび生成物収率を考えると、Capto Adhereカラム工程のために選択された中間洗浄は、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、5%グリセロール、pH8.0であった。
【0090】
Capto Adhereカラム工程のためのスクリーニング試験は、基準処理を超える明らかなHCP減少レベルを可能にする中間洗浄を特定することに成功した。回収工程の間にカテプシン様タンパク質不純物の除去のために選択された洗浄は、20mM Tris、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、5%グリセロール、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH8.0であり、カラム洗浄総体積で17.0CVを含む改善された処理に組み込まれる。改善されたCapto Adhere条件は、最適化された条件が、処理シークエンスにおいて有意に減少したHCPレベルをもたらすことを確認するために小規模処理ランに統合される。
【0091】
Mimetic BlueAPクロマトグラフィー改善
第1中間洗浄の選別
本試験の目的は、生成物:リガンド干渉を妨げることなく、生成物と公知のHCP不純物との間の潜在的な相互作用、HCP不純物と樹脂リガンドとの間の相互作用、または双方を阻害することができるMimetic Blue APカラム工程のための中間洗浄を特定することであった。Mimetic Blue AP(MBAP)は、特に、アルカリホスファターゼ精製のために開発された合成アフィニティ吸着剤である。リガンドは、機能的なホスホン酸基に結合した青い発色団からなる。recAPとリガンドとの間の結合は、リン酸塩の非存在下で生じる。リン酸塩が移動相に導入されるとき、溶出がなされる。この結合機序の特異性は、洗浄緩衝液が、recAP-HCP相互作用、および/または樹脂-HCP相互作用を阻害するために製剤化することができ、リン酸塩を用いる溶出まで樹脂におけるrecAP固着を維持するが、移動相においてHCPを除去することができることを示唆した。
【0092】
第1洗浄スクリーニング実験は、8つのクロマトグラフィーランからなり、それぞれは、異なる中間洗浄工程を含むものであった。本発明の制限の1つは、開発の間に発見された。すなわち、供給流および洗浄緩衝液における高いNaCl濃度(130mM)の存在は、樹脂の性能を減少させた。この観察は、静電引力もMBAP結合機序に必要であり、これが疑似アフィニティ樹脂であることを示唆した。高い収率を維持するために、中間洗浄緩衝液のイオン強度は、このクロマトグラフィーモードにおいて生じる静電相互作用によって制限されるであろう。
【0093】
Mimetic Blue APカラム導入材料は、洗浄された細胞培養回収物B02-14OCT2012から作製された。この細胞培養回収物は、2012年10月に採用された、改訂された供給計画/補足に組み込まれた(1)。回収物は、確立された精製方法に従って、Capto Adhere回収、およびPoros HQクロマトグラフィー工程によって精製された(2)。Capto Adhere、およびPoros HQ溶出液は、力価、活性、および残留HCPについて分析された。Poros HQ 溶出の結果物は、処理の代表として評価され、この調査の第1の12種のMimetic Blue APランのための導入材料として使用された。
【0094】
基準コントロール実験は、確立されたMBAP精製方法に従って行われた。Mimetic Blue AP樹脂ロットFA0345は、2.2cm径カラムに16.2cmのベッド高まで充填され、61.6mLのカラムを得た。基準時において、MBAPランが行われ、導入の力価(2×希釈のPoros HQ溶出液)は、未測定であった。したがって、UV280分析は、導入の濃度を近似するために使用された。この近似値を用いて、108mLの導入が、2~3g recAP/L 樹脂のrecAPローディング密度をもたらすことが計算された。
【0095】
カラムは、0.5M NaOHで消毒され、平衡化された。108mLの2×希釈されたPoros HQ溶出液が、カラムに導入された。第1のスクリーニング試験ランについて、導入後のEQ洗浄工程の後に、各ランについて図9に列挙された試験緩衝液を用いる≧3CV中間洗浄工程が続いた。ランは、洗浄工程の間、タンパク質溶出について観察された。中間洗浄後、カラムは、試験洗浄緩衝液成分を除去するためにEQ緩衝液を用いて再度洗浄された。生成物は、20mM Tris、25mM リン酸塩、130mM NaCl、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH8.0を用いて溶出された。溶出回収物は、UVゲートによるものであった。なぜなら、ピークは、それが50mAUに下降するまで25mAUに上昇するからである。カラムは、ランの間に取り除かれ、消毒された。溶出液は、力価(RP-HPLC)、活性、および残留HCP(HCP ELISAおよびウエスタンブロット)について分析された。溶出液における残留HCP濃度を、収率に有意な影響を与えることなく減少させる任意の洗浄条件は、本試験の第2スクリーニング段階の前に実施されるであろう。
【0096】
第1のスクリーニングランの結果は、図9および図10に示される。基準ラン条件は、recAPの収率100%をもたらし、残留HCP濃度は、2047ppmであった。4つの中間洗浄条件(100mM NaCl、200mM NaCl、0.2M NaSCN、および200mM アルギニン)は、洗浄工程の間に多くの生成物の損失をもたらした。5%グリセロール、および10%エチレングリコール洗浄は、収率に不都合に影響を与えなかったが、基準ランに比べて、有意なHCPクリアランスを示さなかった。高い収率(90%)と、有意なHCP減少(1066ppm)との判断基準を満たす条件は、1M 尿素洗浄工程(ラン4)のみであった。カテプシン様タンパク質検出を用いるウエスタンブロット(図10B)は、ラン4に由来する溶出液が、基準ランに比べて、減少したcatAバンドを示すことを実証した。ブロットは、1Mの尿素洗浄においてcatAを検出し、洗浄が、recAPおよびこのHCP種の間、ならびに/または樹脂およびHCPの間の結合を効果的に阻害することを示した。この結果は、HCP ELISA分析の知見を裏付けた。
【0097】
第2中間洗浄の選別
第2スクリーニング試験は、第1スクリーニングランにおいて観察されたHCPクリアランスを向上することを試みて新規の洗浄条件を導入した。塩化ナトリウムおよびL-アルギニンは、第1スクリーニングランよりも低濃度で再度試験された。アルギニンは、Capto Adhere第1スクリーニングランにおける選択的HCP除去を示したので、我々は、この種類のクロマトグラフィーにおけるアルギニンの使用をさらに検討する必要があった。カオトロープ尿素は、MBAP第1スクリーニングランにおける中程度のHCPクリアランスを示したので、尿素は、塩化ナトリウムと組み合わせて、連続で試験された。10%のエチレングリコールも、HCPにおいて低い減少を示したので、HCPとrecAPとの間、またはHCPとカラムマトリックスとの間の分離を増加させることを試みるために、NaClと組み合わせて試験された。最後に、洗浄緩衝液は、pH依存性相互作用を検出するために、pH7.0および8.0の双方で試験された。
【0098】
HCPクリアランスにおける中間洗浄工程の効果の試験に加えて、我々は、溶出緩衝液中のNaClを除去する効果を試験した。第1のスクリーニング実験において、我々は、リン酸塩の存在なしで、100mM NaClが中間洗浄中に約60%の生成物ブレークスルーをもたらし、200mM NaClが完全な生成物ブレークスルーをもたらすことを観察した。高いイオン強度において、静電機序は、結合動態を支配し、リガンドにタンパク質を移動相に解放させると理論付けられた。樹脂の選択性は、溶出液であって、低いリン酸塩濃度を有し、NaClを含まず、recAPの分離とリガンドのホスホン酸塩基とのみを好み、1M NaCl + 0.5Mリン酸塩が除去されるまで、HCPが樹脂に静電気的に結合したままにする溶出液によって向上させることができた。
【0099】
導入材料の新規ロットは、12回のMBAP試験ランの後に作製された。Capto Adhere精製方法の同時検討は、0.1M NaCl、0.2M L-アルギニン、pH8.0中間洗浄工程が、Capto溶出液中のHCPを50%減少させることを示した。したがって、MBAP第2スクリーニングランのための新規ロットの導入材料は、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、pH8.0中間洗浄工程をCapto Adhere精製工程に包含することによって作製された。Poros HQ 50精製方法は、変更されないままであった。
【0100】
第2のスクリーニングランの結果の要約は、図11に示される。ラン10において、基準方法からのずれは、溶出緩衝液中のNaClの排除のみであり、導入材料およびEQ緩衝液を用いる導入後洗浄は、同等であった。溶出緩衝液製剤におけるこの変更のみで、基準ランに比べて、MBAP溶出液のHCP濃度を約40%減少させた。したがって、残りのランは、NaClなしの溶出緩衝液を用いた。ラン14~20は、0.1M NaCl、0.2M L-アルギニン、pH8.0を含む中間HCP除去洗浄を組み込んだCapto Adhere溶出液から製造されたMBAP導入の新規ロットを用いて行われた。ラン14は、MBAP溶出緩衝液中のNaClの除去を組み合わせたCapto工程においてもたらされたHCP減少が、MBAP精製方法における修飾因子を含む洗浄緩衝液の包含なしで、MBAP溶出液のHCPレベルを667ppmに減少させたことを示した。多くのランは、HCP濃度を500ppm未満まで減少させたが、容認可能な生成物収率をもたらさなかった。10%エチレングリコールと、pH8のNaClとの組み合わせ洗浄は、収率に重度の影響を与えることなく(77%)、HCPクリアランスを向上させた唯一の中間洗浄製剤であった。この洗浄は、HCPクリアランスに有効ではなかったが、中間洗浄緩衝液におけるNaClの包含は、容認できないリスクと考えられた。なぜなら、洗浄緩衝液中のNaClを用いる多くのランは、大量のrecAP生成物の損失を示したからである。
【0101】
ラン10画分のウエスタンブロット分析であって、NaClなしのMBAP溶出緩衝液製剤を用いる分析は、溶出液HCP濃度の減少が、リン酸塩を用いる溶出工程(NaClなし)の間にHCPが樹脂に結合したままであることが原因である可能性があるとの結論を導いた。HCP ELISAの結果は、ラン10小片における残留HCP濃度が、溶出液に比べて上昇したことを示した(図12A)。ELISAの結果は、ウエスタンブロットによって確認された(図12B)。約50kDaにおけるcatAバンドは、導入(レーン2)、ラン1溶出液(レーン3)、およびラン10小片(レーン6)において観察された。catAバンドは、ラン10溶出液(レーン5)において存在せず、このことは、catA HCPが、この試料のアッセイの検出限界(<1000ppmと推定された)以下に減少したことを示す。同一のバンドは、ラン10小片のピーク試料においてより明白であった。
【0102】
20、40、60、および80mM L-アルギニン洗浄工程を組み込んだラン12は、HCPの最大の減少を示した。溶出液HCP濃度は、<40ppmであったが、収率は、37%で不十分であった。このランにおいて、アルギニン工程は、recAPが樹脂から解離したアルギニン濃度を測定するために個別に集められた。ウエスタンブロットによる洗浄画分の分析(図12B)は、catA HCP不純物が、アルギニン洗浄の全てに存在するが、生成物の有意な損失は、60および80mMのアルギニン工程まで生じないことを示した。この発見は、40mM アルギニン洗浄工程が、recAP:リガンド結合相互作用を妨げることなく、有意な量のHCPをrecAPおよび/または樹脂から選択的に除去することができることを示した。40mM アルギニン洗浄は、MBAP中間洗浄スクリーニング実験の第3回においてさらに検討するために選択された。
【0103】
MBAP中間洗浄工程改善
3つの中間洗浄修飾因子は、さらなる改善のために以前の実験から選択された。第1の洗浄スクリーニング試験において、1M 尿素は、生成物の回収率に影響を与えることなく、溶出液におけるHCP減少を示した。第2の洗浄スクリーニング試験において、エチレングリコール + NaClは、重度の生成物損失をもたらすことなく、HCPを減少させた。アルギニンは、選択的なHCP除去を示したが、40mMを超える濃度は、収率に悪影響を与えた。実験の次段階は、これらの修飾因子の検討に発展した。NaClなしの溶出緩衝液の使用は、同様に進められた。最終のランは、修飾因子洗浄によるカラム性能の減少を試験するために、上位3つの候補を3g recAP/L 樹脂カラムローディングにおいて試験した。
【0104】
特定の試験洗浄緩衝液製剤と、改善ランの結果の要約とは、図13に示される。1M 尿素洗浄は、リン酸塩のみの溶出緩衝液と組み合わせて前もって試験していた。ラン21および22は、それぞれ1Mおよび2M 尿素を用いる洗浄緩衝液を利用し、新規のリン酸塩のみの緩衝液を用いて溶出された。ラン27は、1M 尿素洗浄を用いて行われたが、カラムに導入されたrecAPの量は、3g recAP/L 樹脂の標的導入密度を増加させた。ラン21は、1M 尿素洗浄緩衝液に組み合わされた、1.8g recAP/L 樹脂におけるカラムローディングが、59ppm HCPの溶出液と、83%のrecAP回収率とをもたらしたことを示した。洗浄緩衝液における尿素濃度、またはrecAP導入密度の増加は、生成物溶出液におけるより高い残留HCP濃度をもたらした(それぞれ、299、および371ppm HCP)。
【0105】
1M 尿素と10%エチレングリコール、または40mM アルギニンとを組み合わせた中間洗浄緩衝液は、HCPクリアランス、および生成物収率について評価された。10%エチレングリコール/1M 尿素の組合せ洗浄は、高い残留HCP濃度を有する生成物をもたらした(777ppm)。40mM アルギニン/1M 尿素の組み合わせは、2.3g、および3.0g recAP/L 樹脂のカラムローディングで行われた。より低下した生成物導入において、アルギニン/尿素洗浄は、低い残留HCP濃度、46ppmを有する溶出液をもたらした。得られた71%のrecAP生成物収率は、有望な回収率以下であった。同一の精製が、より高いrecAP導入密度において行われたとき、HCPクリアランスは、依然として容認可能である(68ppm)が、回収率は、66%までさらに減少した。
【0106】
ラン23および29は、洗浄工程において、40mM アルギニン pH8.0を用いて行われた。カラムは、ラン23および29について、それぞれ1.8gおよび3g recAP/L 樹脂の双方で充填された。双方のランは、低い残留HCP濃度(54および59ppm)の溶出液をもたらし、容認可能な収率(83および88%)をもたらした。この中間洗浄は、最大のカラム導入容量において、HCPクリアランス能力、および高い生成物収率を維持した候補のみであった。
【0107】
Mimetic Blue APカラム工程のためのスクリーニング試験は、生成物の保存における残留HCP濃度を約60ppmに減少させる、2つの処理の変更を特定した。第1の処理改良は、中間洗浄工程をHCPの選択的クリアランスのためのクロマトグラフィー法に追加することであった。カテプシン様タンパク質不純物の除去のために選択される洗浄は、20mM Tris、40mM L-Arg、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH8.0であった。この選択された中間洗浄緩衝液の3.0CVの包含は、MBAP処理時間に20~30分間追加するであろう。第2の処理改良は、溶出緩衝液からNaClを除去することであった。これらの処理改良の組み合わせは、HCP ELISAによって測定されたように、残留HCPにおいて30倍を超える減少をもたらした。MBAP条件は、これらの知見を確認するために、小規模処理ランに統合された。
【0108】
処理確認ラン
HCP減少実験を終えた後、小規模の確認ランが、改良された処理条件を組み込んで遂行された。細胞培養回収物(200L PD 16OCT2012)は、ウイルス濾過を除いて、全ての単位操作によって処理された。最終生成物分析は、濾過されたUF/DF残留物に実施された。各クロマトグラフィー工程の1つのサイクルが行われた。処理中間物は、RP-HPLC(力価、および%イソダイマーA)、ELISA(活性、およびHCP)、ならびにSDS-PAGEおよびウエスタンブロットによって分析された。分析結果の要約は、図15に見ることができる。新規処理は、34%の全処理収率で53mgの精製recAPを回収した。
【0109】
Capto Adhere回収クロマトグラフィー
HCP減少実験のCapto AdhereランNo.32は、0.1M NaCl、0.2M L-Arg、5%グリセロール、pH8.0中間洗浄を用いて行われた(セクションVI.Cを参照)。この洗浄製剤は、最も高いHCPクリアランスをもたらすことを示し、Capto Adhere法における包含のために選択された。したがって、ランNo.32に由来する溶出液を、精製処理の残留物を通して精製した。
【0110】
200L PD 16OCT2012細胞培養回収物の297mLの全ては、Capto AdhereランNo.32において処理された。回収物の力価は、RP-HPLCにより、0.63g/L recAPであった。実際のローディングファクタは、7.8g recAP/L 樹脂であった。溶出の間に、187mgの生成物が回収された。クロマトグラムは、新規の洗浄工程が開始する前に見られたものとは異なる溶出ピーク特性を示した。このランにおいて、UV280溶出ピークは、分割されたが、以前のランにおいて、溶出は、単一ピークであるように見えた(2)。ピーク形状におけるこの変化の理由は、未確定であるが、追加のアルギニン洗浄工程が最大の原因であるようである。クロマトグラムは異なるように見えたが、全recAP収率(93%)および活性収率(86%)は、以前のデモランと同等であった。溶出液は、0.2μm PESフィルタを通して濾過され、2~8℃で保存された。
【0111】
ウイルス不活性化、およびPoros 50 HQ 精製
Capto Adhere溶出液は、室温に平衡化された。1.0%トライトン X-100の濃度(WFIにおいて)をもたらすために、4.65mLの10%トライトン X-100が41.9mlのCapto Adhere溶出液に添加された。溶出液は、完全に混合され、続いてウイルス不活性化を遂行するために60分間にわたって静的にインキュベートされた。インキュベーション後、材料は、514mLのWFIを用いて12×希釈された。伝導率の標的は、≦4.5mS/cmであった。溶液の最終伝導率は、4.13mS/cmであり、pHは、7.74であった。
【0112】
Poros HQ 50樹脂は、1.1cmカラムに、18.6mLの最終カラム体積について19.6cmのベッド高まで充填された、カラムの非対称性は、1.16であり、プレート高は、0.025cmであった。このランの実際のローディングファクタは、9.1g recAP/L 樹脂であった。クロマトグラフィー法は、デモラン5の操作パラメータから変更されなかった(2)。56mLの溶出液が回収された。分析は、61%のrecAP質量収率と、活性において66%の回収率とを示した。溶出液は、0.2μmPESフィルタを通して濾過され、2~8℃で保存された。Poros HQ 50クロマトグラフィーは
、予期されたように行われた。
【0113】
Mimetic Blue AP精製
Mimetic Blue APクロマトグラフィー工程は、2つの方法の改良を組み込んだ。40mM アルギニンを含む3.0CV中間洗浄緩衝液が添加された。また、溶出緩衝液は、緩衝液中のNaClを除去することによって変更された。双方の改良は、処理中間物において、HCPを減少させるために実施された。
【0114】
Mimetic Blue AP(MBAP)樹脂は、2.2cmカラムに、60.8mLの最終カラム体積について16.0cmのベッド高まで充填された。カラムは、HETPおよび非対称性について試験されなかった。充填カラムは、0.5M NaOH中で浄化され、20mM Tris、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH8.0を用いて平衡化された。このランの実際のローディングファクタは、1.6g recAP/L 樹脂であった。Poros溶出液は、結合の伝導率を減少させるために、WFIを用いて1:1希釈された。溶出液の体積は、41mLであった。分析は、84%のrecAP質量収率と、活性において80%の回収率とを示し、デモラン5に見られる回収率をわずかに下回った(2)。MBAP溶出液のHCP濃度は、34ppmであり、導入材料から2500倍低下した。溶出液は、0.2μm PESフィルタを通して濾過され、2~8℃で保存された。
【0115】
Butyl 650M精製
処理における次の工程は、疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いる最終精製工程を包含した。Butyl 650M樹脂は、1.1cmカラムに、8.3mLの最終カラム体積について8.7cmのベッド高まで充填された。ブチル精製工程のための標的のベッド高は、19.5cmであるが、高さは、容量近くまで樹脂を導入するために、このランにおいて低下された。カラム非対称性は、1.17であり、プレート高は、0.034cmであった。試料採取後のMBAP溶出液は、37.8mLであった。MBAP溶出液は、31.9gの2.1M AmSOの添加によって、1.0M AmSOに調整された。導入の伝導率は、135mS/cmであり、pHは、7.67であった。このランにおける実際の導入係数は、9.2g recAP/L 樹脂であった。クロマトグラフィー法は、デモラン5操作パラメータから変更されなかった(2)。48mLの溶出体積が集められた。沈殿形成の抑制のために、溶出液は、AmSO濃度を低下させるために、96mL WFIを用いて144.5mLの最終希釈体積まで直ちに希釈された。分析は、86%recAP質量の収率と、活性において81%の回収率とを示した。溶出液は、0.2μm PES フィルタを通して濾過され、2~8℃で保存された。Butyl 650Mクロマトグラフィーは、予期されたように行われた。
【0116】
限外濾過/透析濾過
50cm2 Pellicon(Millipore社)Biomax 10kDa PES限外濾過カセットは、UF/DF工程について使用され、13g/m2の面積に対する質量の比がもたらされた。カセットは、WFIを用いて洗浄され、続いて製剤緩衝液を用いて平衡化された(20mM ヒスチジン、250mM D-ソルビトール、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH7.0)。145mLの希釈されたブチル溶出液は、40mLまで約3倍に濃縮された。生成物の少ない体積が原因で、残留分は、さらに濃縮されなかった。濃縮の間に、膜を横断するTMPは、≦15psiで維持された。濃縮後、生成物は、製剤緩衝液を用いて、10×透析濾過された。材料は、集められ、0.2μM PESボトルトップフィルタを通して濾過された。生成物の回収後、30mLの製剤緩衝液は、膜表面から生成物を回収するために、カセットを通して再循環された。緩衝液フラッシュは、残留分に添加されなかったが、別個に保存された。このことは、UF/DF残留分の希釈を防ぐために行われた。UF/DF工程収率は、残留分におけるrecAP質量収率67%、緩衝液フラッシュにおいて15%であり、全recAP回収率82%に同等であった。HCP濃度は、2ppmのLOQ未満であった。生成物は、2~8℃において保存された。
【0117】
HCP減少確認ランの要約
この精製ランの目的は、Capto AdhereおよびMimetic Blue APクロマトグラフィー工程に対してなされる処理の変更が組み込まれる、回収工程からUF/DFおよび最終製剤までの全精製処理を行うことであった。我々は、これらの変更が、recAP分子の活性、または全処理の収率に悪影響を与えることなく、BDSにおけるHCP濃度を、≦100ppmの標的規格以下に大きく減少させることができると考えた。処理中間物のウエスタンブロット分析は、catAが、Mimetic Blue中間洗浄工程後に検出不可能であることを示した。HCP ELISAによって測定されるように、このランにおいてもらされるBDSにおける残留HCP濃度は、<2ppmであった(LOQ未満)。543U/mgの比活性は、規格内であり、全収率は、34%であった。UF/DF工程における生成物回収率は、デモラン4および5におけるよりも低かったが、UF/DFにおける少ない残留体積は、不十分な生成物回収率をもたらした。UF/DF工程の他、工程の収率は、デモラン4および5と同等であり、Capto AdhereおよびMBAP処理が、処理の全収率を有意に減少しないことを示した。
【0118】
実施例4
精製処理
recAPについての精製処理は、6つの単位操作を含む。Capto Adhereクロマトグラフィー回収工程は、1%トライトンX-100を用いる溶出液のウイルス不活性化に続く。Poros HQ 50を用いる陰イオン交換クロマトグラフィーは、界面活性剤を除去し、供給流を部分的に精製する。2つの追加のクロマトグラフィー工程(Mimetic Blue AP およびButyl 650M)は、不純物(すなわち、宿主細胞タンパク質、DNA)を規格まで減少させるために行われる。材料は、濃縮され、緩衝液は、10kDa MWCO PES膜を用いて製剤緩衝液に交換された。最後に、精製されたrecAPは、15N Planova中空繊維フィルタを用いてウイルス濾過された。
【0119】
Capto Adhere回収クロマトグラフィー
回収工程の目的は、細胞培養培地から標的分子を分離し、生成物を濃縮し、部分的にrecAPを精製することである。混合モード樹脂Capto Adhereは、精製処理における回収工程として選択された。Capto Adhereカラムの容量は、8g recAP/L 樹脂として以前に測定された(3)。
【0120】
浄化された細胞培養回収物14OCT2012 B01およびB03は、下流精製のための約20Lの回収物をもたらすために組み合わされた。Capto Adhere樹脂は、消毒されたBPG100カラム(GE Healthcare社)に、1.9Lの最終カラム体積について23.7cmのベッド高まで充填された。カラムの非対称性は、1.44であり、プレート高は、0.049cmであった。充填カラムは、0.5M NaOH中で消毒され、平衡化された。組み合わされた回収物の力価は、RP-HPLCにて0.7g/Lであるので、20Lの回収物の全てが処理された。実際のローディングファクタは、7.3g/L 樹脂であった。回収物をカラムに充填した後、NaCl塩洗浄工程が行われ、続いてNaCl濃度を減少させるためにEQ緩衝液洗浄が行われた。溶出は、0.55M L-アルギニン + 0.1M NaClを用いてなされた。方法の溶出段階の間に、流れ方向は、溶出体積を最小化するために反転された。溶出ピーク回収は、UV280が1.75AU/cmに上昇したとき、開始した。溶出の2つのCVは、0.2μM PESフィルタを通して、無菌の50L BPCに集められた。溶出体積は、3.9Lであった。伝導率は、38.2mS/cmであり、pHは、7.79であった。大量のBPCは、次のクロマトグラフィー工程において行われる13×水希釈を可能にするために選択された。ランは、以前のデモランと同等に行われた。
【0121】
ウイルス不活性化、およびPoros 50 HQ精製
Capto Adhere溶出液は、室温に平衡化された。533mLの10%トライトンX-100(WFI中)は、溶出液に添加され、1.2%の最終濃度をもたらした。(1.0%濃度の標的は、重量測定誤差が原因で超過した。)溶出液は、完全に混合され、続いて静的に60分間インキュベートされた。インキュベーションの後、材料は、63.9LのWFIを用いて13×希釈された。伝導率の標的は、≦4.5mS/cmであった。溶液の最終伝導率は、3.21mS/cmであり、pHは、7.72であった。
【0122】
Poros HQ 50樹脂は、消毒されたBPG100カラム(GE Healthcare社)に、1.6Lのカラム体積について20.0cmのベッド高まで充填された。カラムの非対称性は、1.63であり、プレート高は、0.020cmであった。Poros HQ 50工程の精製パラメータは、以下の10に列挙されている。充填カラムは、0.5M NaOH中で消毒され、平衡化された。Poros HQ 50カラムの容量は、以前に測定されたように、10g recAP/L 樹脂であった(3)。このランの実際のローディングファクタは、8.0g recAP/L 樹脂であった。カラムのローディング後、50mM NaCl塩洗浄工程は、不純物を除去するために行われた。溶出は、130mM NaClを用いて下流で行われた。溶出ピーク回収は、UV280が0.5AU/cmまで上昇したときに開始した。溶出液の3つのCVは、0.2μM PESフィルタを通して、無菌の10L BPCに集められた。体積は、4.7Lであった。溶出液の伝導率は、14.6mS/cmであり、pHは、8.22であった。
【0123】
ランは、recAP収率(61%)がデモラン4(85%)におけるよりも低下したことを除けば、以前のデモランと同等に行われた。収率の低下の理由は、不明である。溶出緩衝液の伝導率は、間違った緩衝液製剤が低い収率の原因であるか否か決定するために調べられた。緩衝液は、当該緩衝液の標的伝導率である14mS/cmであったので、低いNaCl濃度は、原因として除かれた。洗浄緩衝液の伝導率は、規格内で良好であり、低い収率が、洗浄緩衝液における生成物損失が原因でないことを示唆する。Poros HQ 50溶出液は、RP-HPLC(力価、および%イソダイマーA)、SEC-HPLC(純度)、ならびにELISA(活性およびHCP)によって分析された。分析は、61%のrecAP質量収率、および活性において60%回収率を示した。Poros溶出液を導入材料に比較すると、イソダイマーAの割合は、82%から93%まで増加し、SECによる純度は、36%から87%まで増加した。HCPは、3倍減少した。溶出液は、2~8℃で保存された。
【0124】
Mimetic Blue APの精製
Mimetic Blue AP(MBAP)樹脂は、消毒されたQuickscale14cm径カラム(Millipore社)に、2.6Lの最終カラム体積について17.0cmのベッド高まで充填された。カラム非対称性は、1.37であり、プレート高は、0.039cmであった。充填カラムは、0.5M NaOHで消毒され、平衡化された。MBAPカラムの容量は、以前に測定されたように3g recAP/L 樹脂であった(3)。このランの実際のローディングファクタは、2.9g recAP/L 樹脂であった。Poros溶出液は、伝導率を減少させるために、WFIを用いて1:1に希釈された。希釈されたPoros溶出液をカラムに充填した後、未結合材料は、EQ緩衝液洗浄を用いて除去された。溶出は、25mM NaPO4、130mM NaClを用いて下流で行われた。溶出は、UV280が0.125AU/cmを超えて上昇し、それがピーク末端にて0.25AU/cmに低下するまで集められた。溶出液は、0.2μM PESフィルタを通して無菌の10L BPCに集められた。体積は、2.4L、または0.9CVであった。
【0125】
ランは、以前のデモランと同様に行われた。溶出液は、UV280(力価)、RP-HPLC(%イソダイマーA)、SEC-HPLC(純度)、およびELISA(活性およびHCP)によって分析された。分析は、92%のrecAP質量収率と、活性における96%回収率とを示した。SECによる生成物純度は、87%から99.6%まで増加した。HCPは、約50倍減少した。溶出液は、2~8℃で保存された。
【0126】
Butyl 650M精製
Butyl 650M樹脂は、消毒されたBPG100カラム(GE Healthcare社)に、1.5Lの最終カラム体積について19.0cmのベッド高まで充填された。カラム非対称性は、1.37であり、プレート高は、0.039cmであった。充填カラムは、0.5M NaOHで消毒され、1.0M AmSOを用いて平衡化された。2.4L MBAP溶出液は、2.2Lの2.1M AmSOの添加によって1.0M AmSOに調整された。導入の伝導率は、125.7mS/cmであり、pHは、7.77であった。Butyl 650Mカラムの容量は、10g recAP/L 樹脂として以前に設定された(4)が、現在の処理条件下におけるカラムの真の容量は、厳密に試験されなかった。このランにおける実際の導入は、4.6g recAP/L 樹脂であり、標的ローディングファクタの約半分であった。カラムのローディング後、未結合材料は、EQ緩衝液洗浄によって除去された。溶出は、0.6M AmSOを用いてもたらされた。溶出ピークは、UVが、ピーク末端において0.25AU/cmまで低下するまで0.25AU/cmの間で集められた。溶出液は、0.2μM PESフィルタを通して、20L BPCに集められた。体積は、4.4Lであった。沈殿形成を防ぐために、溶出液は、AmSO濃度を低下させるために、8.8L WFIを用いて直ちに希釈された。ランは、以前のデモランと同等に行われた。
【0127】
限外濾過/透析濾過
デモラン5において、新規の製剤緩衝液は、粒状化する傾向がある物質の溶解性を向上させるために使用された。新規の製剤は、20mM ヒスチジン、250mM D-ソルビトール、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH7.0であった。25%グリセロールのVF後添加は、処理から除かれたので、UF/DF最終濃度標的は、≧13.5g/Lから≧11.5g/Lまで変化した。
【0128】
デモラン5について、0.1m2 Pellicon XL(Millipore社)Biomax 10kDa PES限外濾過カセットが使用され、57g/m2の面積に対する質量比にもたらした。カセットは、WFIを用いて洗浄され、続いて製剤緩衝液を用いて平衡化された。希釈されたHIC溶出液は、15g/Lまで濃縮された。濃縮の間に、膜を横断するTMPは、8~15psiで維持された。濃縮後、生成物は、製剤緩衝液を用いて10×透析濾過された。材料は、1L PETGボトルに集められた。生成物の回収後、100mLの製剤緩衝液は、膜表面から生成物を回収するためにカセットを通して再循環された。緩衝液フラッシュは、残留分に添加され、溶液は、0.2μM PESボトルトップフィルタを通して濾過された。最終体積は、460mLであった。生成物は、UV280(力価)、RP-HPLC(%イソダイマーA)、SEC-HPLC(純度)、およびELISA(活性およびHCP)によって分析された。分析結果は、表6:デモラン5 UF/DFの分析結果に示される。UF/DF工程の収率は、105%のrecAP質量収率と、活性において85%の回収率とであった。HCP濃度は、120ppmであり、標的の100ppmよりも高かった。溶出液は、2~8℃で保存された。
【表6】
【0129】
ウイルス濾過、およびバルク充填
0.01m2 Planova 15N 中空繊維ウイスルフィルタ(Asahi社)は、ウイルス濾過工程に使用された。カートリッジは、保存緩衝液を抜き取られ、ペリスタポンプを用いて製剤緩衝液によって平衡化された。流速は、膜を横切って15psi圧力をもたらすために5mL/分に調節された。UF/DF残留分は、室温に平衡化するために冷却保存液から除去された。5~10個の小さな白色粒子が、一晩残留分において形成された。残留分は、5mL/分でフィルタを通って押し出され、無菌のPETGボトルに集められた。濾過は、180分で終了し、圧力は、処理を通じて15psiで維持された。10mLの製剤緩衝液は、カートリッジを通って押し出され、集められ、回収率を最大化するために生成物に添加された。濃度は、96mLの製剤緩衝液の添加によって、9.9g/Lに調整された。ウイルス濾過の最終体積は、490mLであり、4.8gの生成物を得た。試料は、UV280(力価)、RP-HPLC(%イソダイマーA)、SEC-HPLC(純度)、およびELISA(活性およびHCP)によって分析された。VFについて工程収率は、UF/DF残留分に比べて、95%のrecAP質量収率と、活性において94%の回収率とであった。
【0130】
処理における最終工程は、0.2μM PESボトルトップフィルタによるVF生成物の濾過であった。最終BDSは、濾過直後、透明であり、粒子を含まなかった。BDSの分析(表7)は、ウイルス濾過に比べて、97%のrec質量収率と、活性において98%の回収率とを示した。HCP濃度は、123ppmで変化せず、標的の100ppmよりも高かった。BDSは、2~8℃で保存された。
【表7】
【0131】
デモラン5の要約
デモラン5中間処理工程と、最終BDSとの分析の要約は、表8に示される。
【表8】
【0132】
デモラン5のスケールアップ全累積処理質量収率は、40%であり、活性収率は、43%であった(表9)。この収率は、45~50%の予期される収率よりもわずかに低いものである。濃度、活性、純度、および残留DNAの規格は、満たされた。BDSにおけるHCP濃度は、123ppmであり、標的の100ppmよりも高かった。
【表9】
【0133】
実施例5
デモラン結果、および考察
処理の記述
全体処理のためのパラメータは、様々な上流の細胞培養回収物を用いる一連の小規模精製の間に初めて開発された。Capto Adhere および Mimetic Blueクロマトグラフィー工程の処理パラメータは、宿主細胞タンパク質クリアランスのレベルを増加させるためにさらに改良され、以前のデモランに由来するBDSのロットにおいて、粒子の発見、カテプシン様宿主細胞タンパク質(より具体的には、カテプシンAのハムスターホモログとして質量分析を用いて確認された)として同定された。下流精製処理が改良されるとすぐに、小規模の確認ランを行い、最終処理条件を確認した(1)。デモランの結果は、最終的な上流処理の代表である、浄化された細胞培養回収物(200L PD産生)を利用したこの報告において示された(5)。このデモランについて、上流処理開発チームは、約0.6g/L recAPの逆相(RP)-力価を有する約70リットルの浄化された細胞培養回収物をもたらした。回収材料の一部、約24リットルは、デモラン6に利用された。
【0134】
約14グラムの生成物は、列挙された、カラム寸法、カラムローディング、流速、滞留時間、および溶出方法を用いる4つのクロマトグラフィー工程によって精製された(表10)。生成物が4つのクロマトグラフィー工程によって精製されるとすぐに、限外濾過/透析濾過(UF/DF)を行い、生成物を濃縮し、Butyl 650M処理中間物内に存在する硫酸アンモニウムを除去した。UF/DF残留物は、続いてPlanova 15Nウイルスフィルタを通して濾過された。最終的に、生成物は、バルク原薬をもたらすために好適な容器に濾過された0.2ミクロンPESであった。このデモランは、UV280に依拠する全ての濃度計算について1.01mL/mg*cmの測定されたrecAP減衰係数の使用を組み込まれたことに留意すべきである。
【表10】
【0135】
Capto Adhere回収工程
Capto Adhereカラム工程は、浄化された回収物内のrecAP生成物を回収し、供給流を濃縮するために使用された。回収導入材料の条件は、Capto Adhere樹脂に必須ではなかった。なぜなら、この樹脂は、高い伝導率を有する供給流に耐えることができるからである。導入材料は、環境温度まで平衡化され、1.86Lの充填されたCapto Adhereカラムに導入され、表11に列挙された条件を用いて精製された。導入される生成物の最大量は14.0gであったので、充填されたCapto Adhereカラムのために8g recAP/L 樹脂を導入するたった1回のサイクルが必要であっただけである。生成物溶出は、最初のwatch UVコマンドで起こり、続いて2.0カラム体積(CV)で回収された。溶出に続いて、中間物は、ウイルス不活性化に順応させるために100L BPC(Hyclone)に0.2ミクロン濾過され、12倍希釈された。回収されるとすぐに、Capto Adhere中間物は、ウイルス不活性化および希釈工程に直ちに移された。
【表11】
【0136】
Capto Adhereカラムへの実際のローディングは、7.5g recAP/L 樹脂であった。高塩洗浄(250mM NaCl)は、混合モード樹脂にイオン性に結合した不純物(すなわち、DNA、HCP)を除去するために採用された。高塩洗浄に続いて、平衡化緩衝液を用いる1.5CV洗浄は、高塩洗浄緩衝液と、塩、L-アルギニン、およびグリセロールを用いる中間洗浄との潜在的混合が原因である、生成物の損失を防ぐために遂行された。中間洗浄(0.1M NaCl、0.2M L-arg、5%グリセロール)は、宿主細胞タンパク質、具体的にはカテプシン様タンパク質(catA)の除去を増加させるために、改良された下流処理に組み込まれ、基準下流処理を通じて行われた。中間洗浄と、溶出緩衝液との混合を抑制するために、3.0CV平衡化洗浄が処理に含まれた。生成物の溶出は、予備的開発の間に確立されたように、L-アルギニンおよび塩化ナトリウムの組み合わせを用いて上流でなされた。watch UV 条件が生じると、最大溶出体積は、2.0CVであった。供給流は、Capto Adhereカラム工程後、23.7リットルから約3.7リットルまで減少した。
【0137】
修飾因子の組み合わせを有する中間洗浄(洗浄No.3)の組み込みは、下流処理内の回収工程についてのHCPクリアランスのレベルを向上するために有益であった。全体的に、Capto Adhere処理中間物の分析結果は、以前のデモランに高度に比較することができるが、HCPクリアランスは有意に増加した。
【0138】
ウイルス不活性化、およびPoros 50 HQ精製
ウイルス不活性化工程は、効果的に不活性化された潜在的エンベロープウイルスに包含された。不活性化に利用されたトライトンX-100界面活性剤は、生成物充填と、ヒトおよび動物への投与との前に生成物から除去されなければならず、このことは、不活性化に続く処理工程によって達成することができた。ウイルス不活性化に続く精製工程は、Poros HQ樹脂を用いる陰イオン交換クロマトグラフィーを包含した。この処理工程は、残留トライトンX-100と、追加の不純物(すなわち、DNA、HCP)とを生成物から除去することを補助するであろう。約13.8gの生成物は、回収工程後に回収され、38.8mS/cmの伝導率を有していた。Poros HQ樹脂について最大ローディングは、10g recAP/L 樹脂を超えず、したがって、1つのサイクルのみが1.53リットルPoros HQカラムに必要であった。
【0139】
Capto Adhereクロマトグラフィーと、ウイルス不活性化とは、同日に遂行された。ウイルス不活性化のために、1:9 v/vの10%トライトンX-100保存溶液が、1%トライトンX-100最終濃度をもたらすために、Capto Adhere溶出液に添加された。生成物は、完全に混合され、続いてウイルスの不活性化を遂行するために環境温度で1時間静的に保たれた。充填されたPoros HQカラムへのローディング前に、ウイルス不活性化Capto溶出液は、伝導率を、≦4.5mS/cmの規格内である4.4mS/cmに減少させるために、WFIを用いて12×(1+11)希釈された。ウイルス不活性化、および希釈化Capto Adhere溶出液は、約9g recAP/L 樹脂のローディングで1.53L Poros HQカラムに導入された。生成物は、表12に列挙された確立された条件を用いて精製された。低塩洗浄(50mM NaCl)は、材料が導入された後に不純物を除去するために行われた。UV watch条件が起これば、生成物溶出が、3.0CVの最大溶出液回収物について高塩(130mM NaCl)を用いてもたらされた。溶出液は、2~8℃における保存前に、10L BPC(Hyclone)に0.2ミクロン濾過された。
【表12】
【0140】
Poros HQ工程のためのクロマトグラフィー特性は、以前の結果と一致し、導入材料中のトライトンX-100の存在が原因で、ローディング間のわずかなUV吸光度をもたらした。クロマトグラムは、3.2AUの最大吸光度で鋭い溶出ピークを明らかにした。2M NaCl除去の間に強いピークが存在し、これは、非生成物に関する不純物であると以前に特定された。
【0141】
Poros HQ 溶出液は、Capto Adhere中間物に比べて、RP-HPLC力価法、エンドポイント活性分析、HCP ELISA、およびSEC-HPLCによって分析された。精製工程の間の、recAP、および活性回収率は、デモラン5、およびベンチスケール確認ランと同様であり、それぞれ63%および68%であった(1,2)。導入材料に比べて、残留HCPにおいて3倍を超える減少があり、このことは、第1の2つの処理工程が、実際に有意なHCP減少を可能にするが、追加の精製工程が、≦100ppmの標的HCP規格を満たす必要があったことを示唆する。%イソダイマーAは、中間物内において増加し、SEC-HPLCにて98.6%の高いrecAP純度を維持していた。
【0142】
Mimetic Blue精製
Poros 50 HQ精製の遂行後、後続の精製工程は、Mimetic Blue AP樹脂を用いるアフィニティクロマトグラフィーを包含した。Mimetic Blueカラム工程によって精製されるべき約9gの生成物が存在した。2.6L充填カラムについて、1つのサイクルのみが、約3.3g recAP/L ローディングを必要とした。Poros HQ溶出液は、環境温度に温められ、続いてローディングの前に伝導率を減少させるために、WFIを用いて2×(1+1)希釈された。アリコートが希釈されるとすぐに、充填された2.6L Mimetic Blueカラムに導入され、表13に列挙された改良条件を用いて精製された。処理条件は、残留HCPを除去するために、L-アルギニンを用いる中間洗浄を包含する以前に確立された条件からわずかに修正され、緩衝液混合が原因の生成物損失を抑制するために、平衡緩衝液を用いる洗浄を行った。中間洗浄に加えて、溶出条件は、ナトリウムリン酸塩と塩との組み合わせに代えて、ナトリウムリン酸塩のみの使用による以前のデモランから修正された。Mimetic Blueカラム工程についての改善試験は、溶出緩衝液中における塩を除去した処理中間物について残留HCPの著しい減少を示したので、処理から排除された(1)。溶出の間、≧0.125AU/cmから≦0.25AU/cmの予め規定されたUVゲートは、生成物の回収について利用された。生成物は、2~8℃で保存される前に、無菌の5L BPC(Hyclone)0.2ミクロンPES濾過された。
【表13】
【0143】
クロマトグラフィー溶出特性は、以前のデモランに非常によく似ていた。溶出液は、RP-力価について分析基、残留DNAについてqPCR、酵素活性、残留HCP、およびSEC-HPLCによる純度によって分析された。Mimetic Blue精製工程の結果は、recAPについて92%、および活性について91%の回収率を明らかにした。SEC-HPLCによる純度は、約100%に増加し、recAPが中間物内に存在する主要な生成物であることを確認した。残留DNAのレベルは、≦35pg/mgの標的規格をはるかに下回る<0.5pg/mgまで減少した。ベンチスケール確認ランと一致して、Mimetic Blue溶出液内に存在する残留HCPは、改善されたMimetic Blue条件を用いて、約2000倍に顕著に減少し、このことは、デモラン5において示された50倍の減少を超える大きな改良であった(1,2)。残留HCPは、原薬についての≦100ppmの標的規格よりも顕著に低下した。Mimetic Blue精製に由来する結果は、Mimetic Blueカラム工程が、以前のカラム工程に比べて最も高いHCPクリアランスをもたらすことを証明した。
【0144】
Butyl 650M最終精製
処理内における最終的なクロマトグラフィー工程は、Butyl 650M樹脂を用いる疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を包含した。HICクロマトグラフィーの前に、Mimetic Blue溶出液は、硫酸アンモニウムの添加前に、環境温度に温められた。Mimetic Blue溶出液のUV280は、10g recAP/L 樹脂を超えない、Butyl 650Mサイクルの最少の数を計算するために使用された。充填された1.48LButyl 650Mカラムについて、1つのサイクルのみが、5.5g recAP/L 樹脂の最大ローディングに必要であると思われた。カラムローディングの直前に、Mimetic Blue溶出液は、2.1M AmSO pH8.0を用いて、1.0M AmSOの最終濃度まで希釈された。カラムローディングは、潜在的な沈殿形成を減少させるために、アンモニウム硫酸塩の添加の1時間以内に遂行された。生成物は、続いて、表14に列挙された確定条件を用いて精製された。生成物は、≧0.25AU/cmから≦0.25AU/cmの予め定められたUVゲートを用いて、0.6M AmSOで溶出された。カラムから溶出されるとすぐに、溶出液は、WFIを用いて直ちに3×(1+2)希釈され、2~8℃の保存前に、無菌の20L BPC(Hyclone)に0.2ミクロンPES濾過された。
【表14】
【0145】
HIC工程のためのクロマトグラムは、以前の実験と一致し、1.6AUの最大吸光度を有する溶出ピークをもたらした。Butyl 650M処理中間物は、Mimetic Blue中間物に比較して、濃度、エンドポイント活性アッセイ、RP-力価、残留DNAについてのqPCR、HCP ELISA、および純度に関するSEC-HPLCについて、UV280によって分析された。溶出液は、高い比活性と、recAPおよび活性について80%を超える回収率とを維持していた。SEC-HPLCによるrecAPの純度は、99.9%で維持された。高分子量(HMW)凝集体は、SEC-HPLCによって観察されず、このことは、アンモニウム硫酸塩が、生成物の品質を変化させず、または生成物の凝集を生じなかったことを示唆する。残留HCP濃度は、HCP ELISAアッセイについて検出限界未満であった(≦3ppm)。したがって、残留HCP濃度は、HICクロマトグラフィー工程後に少なくとも12倍減少し、このことは、HIC工程が、処理の間にHCPのさらなるクリアランスに必要であることを示唆する。
【0146】
限外濾過/透析濾過
処理のうち次工程は、緩衝液置換に対する限外濾過/透析濾過、ならびに生成物の濃縮を包含した。10kDaのカットオフ分子量を有する0.1m2 Pellicon 2 Ultrafiltration Biomax カセットは、生成物の濃縮に利用され、続いてアンモニウム硫酸塩を除去するために透析濾過された。膜は、第1に0.5M NaOHを用いて1時間消毒され、WFIで洗浄され、製剤緩衝液(20mM L-ヒスチジン、250mM D-ソルビトール、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH7.0)を用いて平衡化された。希釈されたHIC溶出液は、膜上へのローディング前に環境温度に温められた。膜上にローディングされた生成物は、70g/m2であった。TMPは、0.1m2膜について1分毎に0.5Lの横断流速を用いるランを通じて、≦15PSIに維持された。希釈されたButyl 650M溶出液は、14g/Lまで最初に濃縮され、続いて、製剤緩衝液を用いて10×透析濾過された。膜は、続いて、UV280による11.5g/Lの標的濃度に達するために、約31mLの製剤緩衝液を用いて洗浄された。標的濃度に達するとすぐに、残留分は、0.2ミクロンPESフィルタユニットを用いて濾過され、直ちにウイルス濾過によって処理された。
【0147】
導入、およびUF/DF残留分(フラッシュを有する)は、活性、UV280による濃度、qPCRによる残留DNA、SEC-HPLCによる純度、および残留HCPについて分析された。recAPの純度は、100%を維持し、このことは、凝集体形成がないことを示す。UF/DF工程の回収率は、約70%であり、回収率100%のデモラン5のものよりも低かった(2)。デモラン5処理において利用された同一の膜は、このデモランについて使用され、その再利用は、生成物の損失に起因してもよい。UF/DF残留分における残留HCP濃度は、HCP ELISAの定量化限度未満であった。
【0148】
ウイルス濾過、およびバルク充填
バルク充填前において、処理における最終工程は、ウイルス濾過であった。0.001m2 Planova 15Nフィルタは、50L/m2製剤緩衝液を用いて平衡化された(20mM L-ヒスチジン、250mM D-ソルビトール、2mM MgCl、50μM ZnCl、pH7.0)。UF/DF残留分は、430L/m2ローディングにおける平衡化ウイルスフィルタに適用され、≦15psiの差分圧力を維持した。全ての材料が適用されるとすぐに、フィルタは、フィルタハウジングにおけるタンパク質を回収するために、10L/m2の製剤緩衝液を用いて洗浄された。洗浄液は、続いて濾液に添加され、10.4g/Lの最終濃度をもたらした。バルク原薬についての標的規格は、9.0~11.0mg/mLであったので、最終濃度は、PES濾過前の規格範囲内であった。BDSの作製について、ウイルス濾液は、続いて0.2ミクロンPESフィルタシステムを通じて1L PETG容器に濾過され、2~8℃で保存された。
【0149】
導入、フラッシュを有するウイルス濾液、およびバルク原薬は、酵素活性、qPCRによる残留DNA、RP-力価、SEC-HPLCによる純度、UV280による濃度、およびELISAによる残留HCPについて分析された。生成物の約98%は、ウイルス濾過工程後に回収された。比活性、および純度は、双方とも濾過の間に維持された。残留HCPは、バルク原薬内における≦100ppmの標的規格をはるかに下回った。この結果は、改善された処理が、基準処理をはるかに超えるHCPクリアランスを可能にし、以前のデモランを通じて100ppm辺りを示した。
【0150】
デモラン結果の要約
デモランの終了後、各処理中間物についての分析結果は、図16に代表して示された。このデモランに関する最も重要な要因は、<0.5ppmまでのHCPの顕著なクリアランスであり、Capto AdhereおよびMimetic Blueカラム工程のためにさらに確立された改善された条件を用いて、標的規格の<100ppmをはるかに下回った(1)。
【0151】
安定性試験
安定性試験は、実施例3で得られた製剤を用いて行われた。示された条件下におけるヒスチジン緩衝液、およびクエン酸塩緩衝液における製剤の結果は、図17に要約される。
【0152】
本発明は、以下の実施形態が可能である。
(a)単離されたアルカリホスファターゼ(AP)を含み、100ppm未満の宿主細胞タンパク質(HCP)を含む組成物を製造するための方法であって、
以下の化学式を有するリガンドを含む固相であって、Rが当該リガンドを当該固相に結合するスペーサ分子を示す固相を提供する工程と、
【化4】
前記リガンドを、配列番号1に少なくとも90%の配列同一性を有する単離されたAPとHCPとを含む組成物に接触させる工程と、
いくつかの洗浄工程であって、少なくとも1つの洗浄工程が、20~100mM アルギニン(Arg)、0.5~2M 尿素、もしくは5~15%エチレングリコール、またはそれらの組み合わせを含む洗浄緩衝液を用いて実施される、いくつかの洗浄工程を実施する工程と、
前記APの少なくとも一部をリガンドから分離することができる溶出緩衝液を用いてAPを得る工程とを含むことを特徴とする方法。
(b)洗浄緩衝液は、1mM未満のNaClを含むことを特徴とする方法。
(c)溶出緩衝液は、1mM未満のNaClを含むことを特徴とする方法。
(d)洗浄緩衝液は、約40mM Argを含むことを特徴とする方法。
(e)第2精製工程をさらに含み、当該工程が、
以下の式を有する第2リガンドを含む第2固相を提供することと、
【化5】
前記第2リガンドを、単離されたアルカリホスファターゼとHCPとを含む組成物に接触させることと、
いくつかの洗浄工程であって、少なくとも1つの洗浄工程が、7.5~8.5のpHを有し、0.05~0.2M NaClと、0.1~0.5M L-Argとを含む第2洗浄緩衝液を用いて行われる、いくつかの洗浄工程を行うこととを含むことを特徴とする方法。
(f)第2の洗浄緩衝液は、1~20%グリセロールをさらに含むことを特徴とする方法。
(g)第2の精製工程は、第1の精製工程に先行することを特徴とする方法。
(h)陰イオン交換クロマトグラフィー、限外濾過/透析濾過、ウイルス濾過、および疎水性相互作用クロマトグラフィー、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのさらなる精製工程を含むことを特徴とする方法。
(i)単離されたアルカリホスファターゼ(AP)を含む物理的に安定な組成物を製造する方法であって、
緩衝液中のAPの溶解または希釈を含み、6.5~7.5のpHを有し、好ましくは、200~300mM ソルビトール、および/または10~40%グリセロール、および/または5~40mM ヒスチジン、および/または10~40mM クエン酸塩、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物をもたらすことを特徴とする方法。
(j)組成物は、100ppm未満の宿主細胞タンパク質(HCP)を含み、当該組成物は、好ましくは、上述の(a)~(i)のいずれか1つの方法によって得られるAPを含むことを特徴とする方法。
(k)組成物は、100ppm未満の宿主細胞タンパク質を含み、当該組成物は、2月にわたる2~8℃における安定性試験の間に可視粒子形成を示さないことを特徴とする組成物。
(l)6.5~7.5、好ましくは約7のpHを有し、10~40mM クエン酸塩、または5~40mM ヒスチジンを含むことを特徴とする組成物。
(m)200~300mM ソルビトール、および/または10~40%グリセロールを含むことを特徴とする組成物。
(n)アルカリホスファターゼは、配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性、最も好ましくは100%の配列同一性を有するタンパク質であることを特徴とする方法、または組成物。
(o)HCPは、カテプシン様タンパク質であり、および/または組換えアルカリホスファターゼは、好ましくは哺乳類宿主細胞、より好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞を含む細胞系発現システムから得られることを特徴とする、方法、または組成物。
(p)医薬としての使用のための組成物。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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