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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】超音波システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021202658
(22)【出願日】2021-12-14
(62)【分割の表示】P 2018533859の分割
【原出願日】2016-12-19
(65)【公開番号】P2022037101
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】16159416.3
(32)【優先日】2016-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2015/099880
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シュー ジンピン
(72)【発明者】
【氏名】ラジュ バラサンダー イヤヴ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ショウガン
(72)【発明者】
【氏名】ポーランド マッキー ドゥーン
(72)【発明者】
【氏名】ガデス アンソニー エム.
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-050603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0197370(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0150503(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0053465(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0184584(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブと、
前記超音波プローブの動きを検出し、前記超音波プローブの前記動きを示す動き信号を生成する、前記超音波プローブに結合された動きセンサであって、前記動き信号が前記超音波プローブは静止していることを示す場合に、前記超音波プローブは、関心領域に向けて第1の超音波信号を送信し、前記関心領域からエコー信号を受信する、前記動きセンサと、
前記動き信号が前記超音波プローブは静止していることを示す場合に、前記関心領域から受信する前記エコー信号に基づいて、関心領域に対する所定手順を行うプロセッサと
を含む、超音波システムであって、
前記所定手順は、
前記関心領域から受信する前記エコー信号から前記関心領域の特徴を抽出することと、
抽出された前記特徴に基づいて、胸膜滑走、肺の拍動又はBラインのうちの少なくとも一つが前記関心領域に存在するかを判定し、
胸膜滑走、肺の拍動又はBラインのうちの少なくとも一つが前記関心領域に存在すると判定された場合、気胸が存在しないことを示す結果を提供することと、
を含み、
前記超音波プローブは、前記第1の超音波信号を送信する前に、第2の超音波信号を送信し、
前記プロセッサは更に、前記所定手順の完了を示す指標を生成する、超音波システム。
【請求項2】
前記指標を提示するユーザインターフェースを更に含む、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項3】
報告モジュールを更に含み、前記プロセッサは、関心領域に対する前記所定手順の結果を提供し、前記報告モジュールは、前記関心領域の所定順序に従って、前記関心領域のうちの現在の関心領域を特定し、前記プロセッサによって提供された結果を、前記現在の関心領域の結果として記録し、前記関心領域は、複数の関心領域を含む、請求項に記載の超音波システム。
【請求項4】
前記報告モジュールによって記録される前記結果を視覚化する前記ユーザインターフェースを更に含む、請求項3に記載の超音波システム。
【請求項5】
戻るためのユーザ入力を受信する前記ユーザインターフェースと、
記録された前記結果及び前記ユーザ入力に基づいて、前記現在の関心領域を特定する戻りモジュールと、
を更に含む、請求項3に記載の超音波システム。
【請求項6】
前記関心領域から受信する前記エコー信号から、超音波音響陰影のサイズと関心領域の総面積との比を計算し、前記比を所定閾値と比較することによって位置インジケータを生成する位置検証モジュールを更に含む、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項7】
前記動きセンサは加速度計である、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項8】
超音波プローブと、
前記超音波プローブの動きを検出し、前記超音波プローブの前記動きを示す動き信号を生成する、前記超音波プローブに結合された動きセンサと、
プロセッサと
を含む、超音波システムの作動方法であって、前記方法は、
前記動き信号が前記超音波プローブは静止していることを示す場合に、前記超音波プローブが、関心領域に向けて第1の超音波信号を送信し、前記関心領域からエコー信号を受信するステップと、
前記動き信号が前記超音波プローブは静止していることを示す場合に、前記プロセッサが、前記関心領域から受信する前記エコー信号に基づいて、関心領域に対する所定手順を行うステップと
を含み、
前記プロセッサによる前記所定手順は、
前記関心領域から受信する前記エコー信号から前記関心領域の特徴を抽出するステップと、
抽出された前記特徴に基づいて、胸膜滑走、肺の拍動又はBラインのうちの少なくとも一つが前記関心領域に存在するかを判定するステップと、
胸膜滑走、肺の拍動又はBラインのうちの少なくとも一つが前記関心領域に存在すると判定された場合、気胸が存在しないことを示す結果を提供することを示す結果を提供するステップと、
を含み、前記方法は、
前記超音波プローブが、前記第1の超音波信号を送信する前に、第2の超音波信号を送信するステップと、
前記プロセッサが、前記所定手順の完了を示す指標を生成するステップと、
を更に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の分野に関し、具体的には、少なくとも1つの関心領域のそれぞれに対して所定手順を連続的に行うシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気胸(PTX)は、例えば緊急看護、呼吸管理、画像診断的介入治療、救命救急診療及び麻酔等の様々な状況に共通する問題である。PTXは、鈍的胸部外傷の分野において肋骨骨折の次に多い損傷である。広範PTXは呼吸困難を引き起こす可能性があり、緊張性PTXは心肺不全を引き起こす可能性がある。これらの疾患が生命に関わる性質を持つことから、PTXの迅速検出が重要である。
【0003】
現在のところ、気胸(PTX)の検出には超音波が広く使用されている。超音波プローブが、臨床プロトコルによって規定される特定手順に従って、胸部の様々な部分に連続的に置かれ、胸部の各部分におけるPTXの存在が検出される。超音波システムは、各部分の得られた超音波データに基づいて、超音波データを解析して各部分の特徴を抽出し、自動的にPTXがない又はあると判定する。図6に示されるように、PTXを判定するために確認される箇所は胸部全体で10か所以上あり、超音波システムがPTXを判定するために取得した超音波データをタイムリーに解析し始めることができなければ非常に時間がかかることになる。しかし、超音波システムが、超音波データを早く解析し始める、例えば超音波プローブがまだ次の部分に移動していないと、取得される超音波データは、胸部の2つの部分から取得したデータを含むので、解析結果は完全に不正確となる。したがって、胸部の複数部分の各部分でのPTX確認をいつ開始するかを決定する超音波システムを提供するには、効率と精度とのバランスが重要である。
【0004】
上記問題を部分的に解決する解決策がある。図9の上部に示されるように、例えば各部分でのPTX判定に最大で時間Tかかると仮定すると、図9の下部に示されるように、超音波システムが各部分でPTX判定を行うためには、妥当に十分に長い時間2Tが定期的に取っておかれる。もう1つの例では、解決策は、被験者上に多数のマーカを配置することによって超音波プローブの正確な位置情報を入手し、位置情報に基づき、プローブが特定の部分上で検出されると、超音波システムがPTX判定を行うことである。しかし、上記2つの解決策は、実施するのに時間がかかり過ぎるか、複雑過ぎる。
【0005】
米国特許出願公開第2007/0078340A1号は、撮像システムのワークステーションに動作コマンドを提供する方法及びシステムについて開示している。ワークステーションは、位置決め可能なトランスデューサから撮像データが提供される。上記方法及びシステムは、システムのオペレータによってトランスデューサに入力された所定の複数の動作パターンのうちの少なくとも1つを、動作コマンド信号に変換する。しかし、米国特許出願公開第2007/0078340A1号は、制御変更を開始することを意図する動作と、走査中に通常生じる動作とを区別するために幾つかの動作パターンを使用する解決策を提供するが、人体上での複数の連続的な判定を伴うPTX判定の上記問題を解決する適切な解決策は提供しない。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0128739A1号は、プローブを用いてジェスチャを行い、加速度計、ジャイロセンサ及び磁気センサの群から選択される少なくとも1つのセンサを含む動作検知システムからのデータに基づいて、ジェスチャを検出することを含む超音波撮像システム及び方法について開示している。しかし、米国特許出願公開第2014/0128739A1号は、超音波システムの電力消費に関する問題を解決する解決策は提供するが、PTX判定の上記問題については触れていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、被験者の様々な部分での自動検出を連続的に行う改良された超音波システム及び方法を提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つの関心領域のそれぞれに対して所定手順を連続的に行う超音波システムが提案される。当該システムは、
関心領域に向けて第1の超音波信号を送信し、関心領域からエコー信号を受信する超音波プローブと、
超音波プローブの動きを検出し、超音波プローブの動きを示す動き信号を生成する動きセンサと、
動き信号が超音波プローブは静止していることを示す場合に、関心領域から受信するエコー信号に基づいて、関心領域に対する所定手順を行うプロセッサとを含む。
【0009】
臨床プロトコルによるPTX判定処理全体は、胸部の複数の部分での複数回の判定処理によって非常に複雑に思われる。しかし、本発明の発明者は、すべてのオペレータが従う臨床プロトコルによる所定順序があるため、オペレータは、様々な部分間で移動するために繰り返されるストップ・アンド・ゴーモード(即ち、オペレータは超音波プローブを被験者の1つの部分に移動させ、当該部分上である時間の間停止した後、次の部分に行く)で作業することを認識した。超音波システムがPTX確認といった所定手順を行うための超音波データを超音波プローブが収集する準備が整ったとオペレータが考えると、超音波プローブは、任意の動きなく、オペレータによって被験者上に置かれる。つまり、超音波プローブは、オペレータによって胸部の一部といった関心領域上に置かれ、確認のための超音波データを得る準備が整うと動かない。
【0010】
動きセンサは、超音波プローブの動きをモニタリングし、プローブの動きを示す動き信号を提供する。動き信号が、超音波プローブは静止していることを示すと、プロセッサは、関心領域に対してPTX確認といった所定手順をすぐに行うようにトリガされる。超音波システムは、所定手順を開始するようにシステムを制御する任意の追加の作業をオペレータに要求しないので、追加の時間遅延はない。関心領域に追加のデバイスを置く必要もないので、システム全体を簡単に実現でき、費用効果的である。更に、オペレータが、少なくとも1つの関心領域のそれぞれに対して所定手順を連続的に行うために臨床プロトコルに従うように訓練されてさえいれば、解決策の精度は良い。
【0011】
本発明による超音波システムの一実施形態では、超音波プローブは、動き信号が超音波プローブは静止していることを示す場合に、第1の超音波信号を送信し始める。この超音波システムでは、超音波プローブは、超音波プローブが静止していると検出されると、第1の超音波信号を送信し始めるように作動する。超音波プローブは、超音波プローブが静止していないと検出されると、作動せず、これは、エネルギーを節約し、超音波照射を低減する。
【0012】
本発明による超音波システムの別の実施形態では、超音波プローブは、第1の超音波信号を送信する前に、第2の超音波信号を送信する。この特徴によって、超音波プローブが静止していないことが示される場合に、超音波システムが第2の超音波信号を送信することができる。この特徴によって、ユーザは常に超音波信号にアクセスすることができる。したがって、超音波信号は、常にユーザによって視覚化されることが可能である。
【0013】
本発明による超音波システムの一実施形態では、プロセッサは更に、所定手順の完了を示す指標を生成する。プロセッサは、所定手順が完了した後、タイムリーに指標を生成することを可能にする。状態を示すインジケータは、ユーザにタイムリーに情報を提供することを可能にする。ユーザは、インジケータの指標に反応して、超音波プローブを次の関心領域に移動させ、これにより、各関心領域において費やされる必要のある時間が短縮される。
【0014】
本発明による超音波システムの一実施形態では、超音波システムは更に、指標を提示するユーザインターフェースを含む。この特徴によって、指標をオペレータに提示することができ、したがって、ユーザは、関心領域における所定手順の完了を認識する。特定の応用では、所定手順を行うために必要な時間は、様々な関心領域において異なる。この特徴によって、ユーザに、関心領域における所定手順の完了に関する情報をタイムリーに提示することができる。ユーザは、指標に反応して、超音波プローブを次の関心領域に移動させ、これにより、各関心領域において費やされる必要のある時間が短縮される。
【0015】
本発明による超音波システムの一実施形態では、関心領域に対する所定手順は、関心領域から受信するエコー信号から関心領域の特徴を抽出する手順を含む。この特徴によって、超音波システムは、関心領域の特徴を自動的に抽出することができる。
【0016】
本発明による超音波システムの一実施形態では、関心領域に対する所定手順は、関心領域から受信するエコー信号に基づいて、気胸を検出する手順を含む。この特徴により、超音波システムは、関心領域における気胸を自動的に検出することができる。
【0017】
本発明による超音波システムの一実施形態では、超音波システムは更に、報告モジュールを含み、プロセッサは、関心領域に対する所定手順の結果を提供し、報告モジュールは、少なくとも1つの関心領域の所定順序に従って、少なくとも1つの関心領域のうちの現在の関心領域を特定し、プロセッサによって提供された結果を、現在の関心領域の結果として記録し、少なくとも1つの関心領域は、複数の関心領域を含む。この特徴は、複数の関心領域に当てはまる。このようにすると、各関心領域の結果が自動的にシーケンスで記録され、オペレータによる追加の動作が不要である。PTX確認といった特定の作業について確認しなければならない領域の数が多い場合、各領域の確認結果を記録する時間が大幅に短縮される。ワークフロー全体が、オペレータが作業するのに簡単であり、確認結果は、オペレータが臨床プロトコルによる正しい順序で確認を行いさえすれば、任意のエラーなく良好に記録される。
【0018】
本発明による超音波システムの一実施形態では、超音波システムは更に、報告モジュールによって記録される結果を視覚化するユーザインターフェースを含む。この特徴により、記録された結果をユーザに対して視覚化することができる。
【0019】
本発明による超音波システムの一実施形態では、超音波システムは更に、戻るためのユーザ入力を受信するユーザインターフェースと、記録された結果及びユーザ入力に基づいて、現在の関心領域を特定する戻りモジュールとを含む。このようにすると、オペレータは、何かが十分ではない又は正しくないことを見つけた場合に、確認処理を制御することができる。
【0020】
本発明による超音波システムの一実施形態では、超音波システムは更に、関心領域から受信するエコー信号から、超音波音響陰影のサイズと関心領域の総面積との比を計算し、比を所定閾値と比較することによって位置インジケータを生成する位置検証モジュールを含む。任意選択的に、位置インジケータは、超音波プローブがこの関心領域に適切に置かれているか、又は、別の関心領域に置かれる必要があるかに関する情報を提供する。
【0021】
本発明による超音波システムの一実施形態では、動きセンサは加速度計である。加速度計を動きセンサとして使用すると、高精度の測定値が得られる。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、超音波方法が提供される。当該方法は、
関心領域に向けて第1の超音波信号を送信し、関心領域からエコー信号を受信するステップと、
超音波プローブの動きを検出し、超音波プローブの動きを示す動き信号を生成するステップと、
動き信号が超音波プローブは静止していることを示す場合に、関心領域から受信する受信エコー信号に基づいて、関心領域に対する所定手順を行うステップとを含む。
【0023】
本発明による超音波方法の一実施形態では、超音波方法は更に、動き信号が超音波プローブは静止していることを示す場合に、第1の超音波信号を送信し始めるステップを含む。
【0024】
本発明による超音波方法の一実施形態では、超音波システムは更に、第1の超音波信号を送信する前に、第2の超音波信号を送信するステップを含む。
【0025】
本発明の詳細な説明及び他の態様は、以下に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
次に、本発明の特定の態様を、以下に説明される実施形態を参照して説明され、添付図面に関連して検討される。添付図面中、同一の部分又はサブステップは同様に指定される。
【0027】
図1図1は、本発明の一実施形態によるシステムの図を概略的に示す。
図2図2は、本発明の一実施形態による超音波プローブの一例を示す。
図3図3は、本発明の一実施形態による超音波信号の一例を示す。
図4図4は、本発明の一実施形態による超音波信号の別の例を示す。
図5図5は、本発明の一実施形態によるPTX検出方法のフローチャートを示す。
図6図6は、本発明の一実施形態による複数の関心領域の一例を示す。
図7図7は、本発明の一実施形態に従って記録された連続結果の一例を示す。
図8図8は、本発明の一実施形態による方法のフローチャートを概略的に示す。
図9図9は、本発明の一実施形態に従って所定手順を行う一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、特定の実施形態に関して、且つ、図面を参照して説明されるが、本発明はこれらに限定されず、請求項によってのみ限定される。図面は概要に過ぎず、非限定である。図面中、幾つかの要素のサイズは拡大され、例示のため縮尺通りではない。
【0029】
図1は、本発明による少なくとも1つの関心領域のそれぞれに対して所定手順を連続的に行うシステム100の概略図を示す。
【0030】
超音波システム100は、関心領域に向けて第1の超音波信号SG1を送信し、関心領域からエコー信号を受信する超音波プローブ101を含む。超音波システム100は更に、超音波プローブ101の動きを検出し、超音波プローブ101の動きを示す動き信号MSを生成する動きセンサ102を含む。超音波システム100は更に、動き信号MSが超音波プローブ101は静止していることを示す場合に、関心領域から受信するエコー信号に基づいて関心領域に対し所定手順を行うプロセッサ103を含む。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態による超音波プローブ101の一例を示す。超音波プローブ101は、関心領域ROIに向けて第1の超音波信号SG1を送信する。関心領域ROIは、第1の超音波信号SG1に晒される。関心領域ROIが第1の超音波信号SG1の一部を反射して返すと、関心領域ROIから受信する第1の超音波信号SG1のエコー信号ECが形成される。超音波プローブ101は、関心領域ROIから、第1の超音波信号SG1に関連するエコー信号ECを受信する。したがって、エコー信号ECは、関心領域ROIの情報を含む。
【0032】
動きセンサ102は、超音波プローブ101の動きをモニタリングし、超音波プローブ101の動きを示す動き信号MSを生成する。例えば加速度計が、動きセンサ102として使用される既知のデバイスである。加速度計が、超音波プローブ101に置かれ、超音波プローブ101の加速度データを測定する。したがって、測定されたデータに基づいて、加速度計の正確なリアルタイム速度が導出可能である。したがって、超音波プローブ101の動静状態がそれに応じて導出される。
【0033】
ジャイロスコープも既知のデバイスである。ジャイロスコープは、向きの測定又は維持に有用であり、加速度計と共に使用されて、6次元における動きを測定する。バロメータ、カメラ及びGPSセンサ等といった動きを検出する既知のデバイスが他にもある。動きセンサ102の実施形態は、これらの上記されたものに限定されない。
【0034】
超音波プローブ101が静止しているかどうかは、多くのやり方で決定することができる。
【0035】
一実施形態では、動きセンサ102によって導出される超音波プローブ101の速度が、動きセンサ102によって測定可能である最小値未満であるならば、超音波プローブ101は静止していると決定される。測定データの最小値は、動きセンサ102の精度に依存する。例えば特定のタイプの動きセンサは、0.0005cm/s以上の速度しか測定できない。
【0036】
別の実施形態では、所定手順を完了するために超音波プローブ101の最大速度閾値がある。最大速度閾値は、検出の様々な種類によって異なる。超音波検出の当業者であれば、最大速度閾値が、超音波プローブ101は静止しているかどうかを決定するのに十分に小さいと考えるであろう。動きセンサ102によって導出される超音波プローブ101の速度が、最大速度閾値未満であるならば、超音波プローブ101は静止していると決定される。最大速度閾値は、動きセンサ102によって測定可能である最小値以上である。例えば動きセンサ102が0.0005cm/s以上の速度しか測定できない場合、最大速度閾値は0.0009cm/sである。
【0037】
超音波プローブ101の動きは、動きセンサ102によってモニタリングされる。上記されたように、動きセンサ102が超音波プローブ101の動きは静止していることを検出すると、動きセンサ102は、超音波プローブ101の静止状態を示す動き信号MSを生成する。次に、プロセッサ103は、動き信号に応えて、関心領域から受信するエコー信号に基づいて関心領域に対する所定手順をすぐに行い始める。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態による超音波信号の一例を示す。本発明の一実施形態では、超音波プローブ101は、動き信号MSが超音波プローブ101は静止していることを示す場合に、第1の超音波信号SG1を送信し始める。
【0039】
一実施形態では、加速度計が使用されて、超音波プローブ101の動きが検出され、図3に示されるように、動き信号MSが生成される。動き信号MS内には、低振幅を有する静止期間SPがある。静止期間SPの振幅から導出される速度値が、動きセンサ102によって測定可能である最小値(例えば0.0005cm/s)未満である場合、静止期間SPは、超音波プローブ101の静止状態を示す。
【0040】
図3に示されるように、動きセンサ102から生成される動き信号MSが、超音波プローブ101の静止状態を示す場合、超音波プローブ101は、第1の超音波信号SG1を送信し始める。第1の超音波信号SG1は、一連の超音波データフレームであってよい。例えば超音波プローブ101は、動き信号MSが超音波プローブ101は静止していることを示す期間と同時に作動させられる。超音波プローブ101は、超音波プローブ101が作動させられると、即ち、超音波プローブ101が静止していると、第1の超音波信号SG1を送信し始める。
【0041】
図4は、本発明の一実施形態による超音波信号の別の例を示す。別の実施形態では、超音波プローブ101は、第1の超音波信号SG1を送信する前に、第2の超音波信号SG2を送信する。この実施形態では、図4に示されるように、超音波プローブ101は、超音波信号を連続的に送信する。動きセンサ102が、超音波プローブ101は静止していないことを検出すると、超音波プローブ101は、第2の超音波信号SG2を送信し始める。第2の超音波信号SG2は、図4に示されるように、一連の超音波データフレームであってよい。動き信号が超音波プローブ101は静止していることを示すと、超音波プローブ101は、関心領域に第1の超音波信号SG1を送信し始める。
【0042】
第1の超音波信号SG1及び第2の超音波信号SG2は、同じ時間基準システムを使用することによって、動き信号MSと同期させられる。第1の超音波信号SG1及び第2の超音波信号SG2は、Bモード、ドップラーモードといった多くのモード下で生成される超音波データフレームを含む。
【0043】
別の実施形態では、プロセッサ103は更に、所定手順の完了を示す指標IDAを生成する。
【0044】
図3及び図4に示されるように、所定手順の完了はE0と示される。関心領域に対する所定手順が完了すると、プロセッサ103は指標をすぐに生成する。
【0045】
図1に示されるように、別の実施形態では、超音波画像システム100は更に、指標IDAを提示するユーザインターフェース107を含む。
【0046】
ユーザインターフェース107は、オペレータを次のステップに導くために、指標IDAをオペレータに提示する。例えばオペレータは、超音波プローブ101を次の関心領域に移動させるように導かれる。ユーザインターフェース107によって提示される指標IDAは、オペレータに可視又は可聴である。一例は、様々な種類のフィードバック信号を示すために様々な色の光を使用する光インジケータである。別の例は、様々な種類のフィードバック信号を表すように状態を視覚化するディスプレイ上のアイコンである。代替例は、様々な種類のフィードバック信号に基づいてオペレータを導くために音声命令を提供するボイスリマインダである。ユーザインターフェース107の実施形態は、上記例に限定されない。
【0047】
システム100の別の実施形態では、関心領域に対する所定手順は、関心領域から受信するエコー信号から関心領域の特徴を抽出する手順を含む。
【0048】
システム100の別の実施形態では、関心領域に対する所定手順は、関心領域から受信するエコー信号に基づいて、気胸の存在を検出する手順を含む。
【0049】
超音波撮像は、気胸(PTX)検出に広く使用されている。PTX検出について4つの特徴、即ち、胸膜滑走(lung sliding)、Bライン(B-line)、肺の拍動(lung pulse)及び肺点(lung point)が説明される。
【0050】
図5は、本発明の一実施形態によるPTX検出方法のフローチャートを示す。図5に示されるように、胸膜滑走の存在の検出ステップS1、肺の拍動の存在の検出ステップS2、又は、Bラインの存在の検出ステップS3が行われる。胸膜滑走、肺の拍動又はBラインの何れか1つの存在が検出されると、これは、胸部の該当位置においてPTXがないことを意味する。PTX検出の完了を示す指標IDAが生成される。インジケータ107はこれに応じてオペレータに示す。このシナリオでは、オペレータへの指示は、胸膜滑走、肺の拍動又はBラインの何れか1つの存在が検出された後すぐに、胸部の次の部分に超音波プローブ101を移動させることである。
【0051】
胸膜滑走、肺の拍動又はBラインの何れの存在も検出されない場合、図5に示されるように、アルゴリズムによって、肺点の存在の検出ステップS4が更に行われる。次に、PTX検出の完了を示す指標IDAが生成される。ユーザインターフェース107は、これに応じて指標IDAをオペレータに提示する。このシナリオでは、オペレータへの指示は、肺点が検出された後すぐに胸部の次の部分に超音波プローブ101を移動させることである。
【0052】
胸部の様々な部分において、PTX検出に必要な時間は異なる。PTXが検出された胸部の部分は、通常、胸部のPTXのない部分よりも時間がかかる。PTXがないとの決定は、図5に示されるように、上記特徴(例えば胸膜滑走、肺の拍動又はBライン)のうちの1つの検出がない限り迅速になされる。PTXがないとの決定をするまでに、少なくとも1回のフルの呼吸サイクルについて、胸部の各部分において超音波データを取得する必要がなく、これは、胸部の当該一部における時間を節約する。したがって、オペレータは、ユーザインターフェース107によって提示される標識IDAに反応して、ユーザインターフェース107によって超音波プローブ101を胸部の次の部分に移動させることができ、これにより、胸部の各部分において費やす時間が少なくて済む。
【0053】
図1に示されるように、別の実施形態では、超音波システム100は更に、報告モジュール108を含み、プロセッサ103は、関心領域に対する所定手順の結果を提供し、報告モジュール108は、少なくとも1つの関心領域の所定順序に従って、少なくとも1つの関心領域のうちの現在の関心領域を特定し、プロセッサ103によって提供された結果を、現在の関心領域の結果として記録する。少なくとも1つの関心領域は、複数の関心領域を含む。
【0054】
図6は、本発明の一実施形態による複数の関心領域の一例を示す。超音波プローブ101は、臨床プロトコルの所定順序に従って複数の関心領域上に置かれる必要がある。所定順序は、ユーザインターフェース107によって示され、すべてのオペレータが従う。図6を参照するに、複数の関心領域は、水平方向及び垂直方向に沿った線によって分けられる複数の領域である。図6に示される番号は、超音波プローブ101が複数の関心領域上に置かれるべき順序を示し、この順序は上記所定順序である。各関心領域について、複数の関心領域のシーケンスにおける対応する順序がある。
【0055】
オペレータは、超音波プローブ101を、複数の関心領域上に連続的に置き、プロセッサ103は、複数の関心領域に対して所定手順を連続的に行う。報告モジュール108は、超音波システム100が特定の被験者を確認し始め、動きセンサ102によって生成される動き信号MSが超音波プローブ101は静止していることを示す1回目であると、現在の関心領域を、複数の関心領域のうちの第1の領域と特定する。同様に、報告モジュール108は、動きセンサ102によって生成される動き信号MSが超音波プローブ101は静止していることを示す2回目であるとき、現在の関心領域を、複数の関心領域のうちの第2の領域として特定する。同様に報告モジュール108は、動きセンサ102によって生成される動き信号MSが超音波プローブ101は静止していることを示すn回目であるとき、現在の関心領域を、複数の関心領域のうちの第nの領域として特定する。このようにすると、複数の関心領域のうちの各関心領域のシーケンスが特定され、各関心領域の対応する結果は、各関心領域に関連付けられて記録される。図7は、本発明の一実施形態によって記録される連続結果の一例を示す。図7の上部に示されるように、複数の関心領域のうちの1つの関心領域ROIiについて、対応する結果Riが提供される。更に、図7の下部に示されるように、所定順序から導出される関心領域ROIiに関連付けられる特定の順序番号があり、この例では1である。報告モジュール108は、複数の関心領域からの現在の関心領域ROIiを第1の関心領域として特定する。したがって、結果Riは、特定された現在の関心領域ROIiに関連付けられる。
【0056】
図1に示されるように、別の実施形態では、超音波システム100は更に、報告モジュール108によって記録された結果を視覚化するユーザインターフェース107を含む。
【0057】
報告モジュール108によって記録される結果は、ユーザインターフェース107上に直接視覚化される。或いは、結果は、事前に取得された情報上にマッピングされ、当該事前に取得された情報と共に視覚化されてもよい。事前に取得された情報は、CT画像、MR画像といった複数の関心領域の解剖学情報、又は、複数の関心領域の解剖学モデルである。
【0058】
図1に示されるように、別の実施形態では、超音波システム100は更に、戻るためのユーザ入力を受信するユーザインターフェース107と、記録されている結果及びユーザ入力に基づいて、現在の関心領域を特定する戻り(go back)モジュール105とを含む。
【0059】
ユーザインターフェース107は、例えばユーザが作業は適切に行われていない又は作業は関心領域について満足のいくものではないと感じる場合に、戻るための入力をユーザが与えることを可能にする。ユーザは、戻る、即ち、関心領域の結果を記録しないための入力を与える。戻るためのユーザ入力に基づいて、戻りモジュール105は、現在の関心領域を特定し、結果を記録する。
【0060】
例えば図7では、複数の関心領域に対する所定手順の結果が連続的に記録される。関心領域ROIpの所定手順が完了し、その対応する順序は、所定順序に基づいてk-1である。次に、超音波プローブ101は、所定順序に従って、その順序はkである次の関心領域に移動させられる。図7を参照するに、関心領域ROIqが現在の関心領域である。戻りモジュール105が、この瞬間に、戻るためのユーザ入力を受信すると、関心領域ROIpが現在の関心領域となる。したがって、所定手順が、現在のROI(本実施形態ではROIp)に対して最初からやり直される。
【0061】
別の実施形態では、超音波システム100は更に、関心領域から受信するエコー信号から、超音波音響陰影のサイズと関心領域の総面積との比を計算し、当該比を所定閾値と比較することによって、位置インジケータを生成する位置検証モジュール110を含む。
【0062】
図1に実施形態が示される。超音波プローブ101がある関心領域に置かれると、位置検証モジュール110は、所定閾値との比の比較に基づいて、超音波プローブ101が適切に置かれているかどうかを示す位置インジケータを生成する。位置インジケータが、超音波プローブ101は適切に置かれていないことを示すならば、オペレータは、位置インジケータが超音波プローブ101は適切に置かれていると示すまで、超音波プローブ101の位置を変更する必要がある。その後、超音波プローブ101、動き検出器102及びプロセッサ103は動作を開始する。
【0063】
超音波音響陰影は、超音波信号が、例えば骨又は骨構造である生物の一部によって遮断されると形成される。例えば超音波プローブ101が胸部に置かれると、超音波プローブ101によって生成される超音波信号は、肋骨を通過することができない。超音波音響陰影のサイズと関心領域の総面積との比は、超音波プローブ101が正しい位置に置かれたかどうかを示す。比が大きいほど、当該位置は、超音波プローブ101を置くのに適している。
【0064】
例えば取得した超音波画像では、肋骨の下には暗い領域がある。したがって、取得した超音波画像を使用して比を計算する一実施形態が提供される。この実施形態では、超音波音響陰影のサイズと関心領域の総面積との比は、超音波音響陰影の面積と超音波画像フレームの総面積との比によって表される。超音波画像フレームの幅は、超音波プローブ101の幅であり、直接測定することができる。超音波画像フレームの奥行きは、作業前に、オペレータによって決定される。したがって、超音波画像フレームの総面積は、超音波画像フレームの幅と超音波画像フレームの奥行きとを掛け算することによって計算される。
【0065】
超音波音響陰影の面積は、例えば超音波音響陰影の範囲を特定するためにエッジを検出し、次に特定された範囲の面積を計算する既知の画像処理アルゴリズムを超音波画像フレームに適用することによって求められる。
【0066】
所定閾値は、実験結果に基づいて[1/4~1/3]の範囲において選択される。所定閾値よりも小さい比は、超音波プローブ101が適切な位置に置かれていることを示す。所定閾値よりも大きい比は、超音波プローブ101が適切な位置に置かれていないことを示す。
【0067】
システム100の別の実施形態では、動きセンサ102は加速度計である。
【0068】
加速度計は、3つの直交方向の何れか1つの方向における加速度を検出する3軸加速度計であってよい。例えば加速度計の第1の軸はx方向に配置され、第2の軸はy方向に配置され、第3の軸はz方向に配置される。加速度計は、3軸それぞれからの信号を組み合わせることによって、任意の3次元方向における加速度を検出することができる。プロセッサは、ある期間に亘って生じる加速度を積分することによって、加速度計からのデータに基づいて、加速度計の正確なリアルタイム速度を生成する。
【0069】
図8は、本発明による方法のフローチャートを概略的に示す。
【0070】
少なくとも1つの関心領域のそれぞれに対して所定手順を連続的に行う超音波方法200は、関心領域に向けて第1の超音波信号SG1を送信し、関心領域からエコー信号を受信するステップ201を含む。超音波方法200は更に、超音波プローブ101の動きを検出し、超音波プローブ101の動きを示す動き信号MSを生成するステップ202を含む。超音波方法200は更に、動き信号MSが超音波プローブ101は静止していることを示す場合に、関心領域から受信するエコー信号に基づいて、関心領域に対して所定手順を行うステップ203を含む。
【0071】
一実施形態では、超音波方法200は更に、動き信号MSが超音波プローブ101は静止していることを示す場合に、第1の超音波信号SG1を送信し始めるステップを含む。
【0072】
一実施形態では、超音波方法200は更に、第1の超音波信号SG1を送信する前に、第2の超音波信号SG2を送信するステップを含む。
【0073】
本発明は、図面及び上記説明において詳細に例示及び説明されたが、当該例示及び説明は、例示であって、限定と解釈されるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形態様は、図面、開示内容及び添付の請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解され、実施される。
【0074】
請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、また、「a」又は「an」との不定冠詞も、複数形を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載される幾つかのアイテムの機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されることだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
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図4
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