IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ホルダ 図1
  • 特許-ホルダ 図2
  • 特許-ホルダ 図3
  • 特許-ホルダ 図4
  • 特許-ホルダ 図5
  • 特許-ホルダ 図6
  • 特許-ホルダ 図7
  • 特許-ホルダ 図8
  • 特許-ホルダ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ホルダ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/68 20060101AFI20240306BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20240306BHJP
   A61F 13/74 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61F13/68
A61F13/56 200
A61F13/74
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021210573
(22)【出願日】2021-12-24
(65)【公開番号】P2023094951
(43)【公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-12-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 研
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 華
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】植田 章之
(72)【発明者】
【氏名】幸田 拓也
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-99721(JP,A)
【文献】特開2000-51273(JP,A)
【文献】特表2015-519950(JP,A)
【文献】特開2015-112402(JP,A)
【文献】特開2021-159509(JP,A)
【文献】実開平3-5413(JP,U)
【文献】米国特許第6336922(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腰周りに装着されるとともに、吸収性パッドを着用者に装着した状態に保持可能な環状のホルダであって、
着用者の身長方向に沿う高さ方向及び胴周り方向に沿う周方向を有し、
腹側に配される腹側部及び背中側に配される背側部が一対の接合部で接合されており、
前記腹側部及び前記背側部の少なくとも一方は、前記一対の接合部間にシート材が連続して存在する本体部と、前記一対の接合部間に前記シート材が存在しない欠落部を有し、該本体部から前記高さ方向の下側に延出する延出部とを有し、
前記腹側部又は前記背側部を前記周方向に沿う幅方向に3等分して中央領域及びその両側に位置する側部領域に区分したときに、前記欠落部は、該中央領域に頂部を有するとともに該中央領域から該側部領域にかけて形成されており、且つ前記頂部の両側それぞれに前記接合部に近づくに連れて前記本体部からの延出長さが漸増する傾斜縁部を有しており、
前記延出部は、前記欠落部の両側それぞれに、前記腹側部又は前記背側部の前記周方向に伸縮する伸縮部を有しており、
前記本体部は前記周方向の伸縮性を有し、前記本体部における前記延出部に隣接する領域の伸縮応力より、該延出部における前記欠落部を除いた部分の伸縮応力の方が小さく、 前記伸縮応力は、以下の方法によって測定される、ホルダ。
<伸縮応力の測定方法>
ホルダの延出部、および本体部における延出部に隣接する領域のそれぞれについて、周方向の長さ50mm×高さ方向の長さ10mmのサンプル片を切り出す。延出部からサンプル片を切り出すときは、延出部における欠落部以外の部分から切り出す。
次いで、切り出したサンプル片を、テンシロン引張試験機(ORIENTEC社製「RTC-1210A」)における一対のチャックに、サンプル片を非伸長且つ弛みのない状態で挟む。このときのチャック間距離は25mmとする。次いで、300mm/minの速度でチャック間の距離が50mmとなるまでサンプル片を伸長させた後、該チャック間の距離を37.5mm(1.5倍伸長に相当する長さ)まで戻したときの引張り荷重(cN/10mm)を測定する。斯かる測定を5枚のサンプル片について行い、これらの平均値(チャック間の距離を37.5mmまで戻したときの引張り荷重の平均値)を伸縮応力(cN/10mm)とする。
【請求項2】
前記腹側部又は前記背側部の前記幅方向の全長に対して、前記欠落部の該幅方向の長さが70%以上である、請求項1に記載のホルダ。
【請求項3】
前記欠落部が、前記中央領域に位置し且つ前記幅方向に平行である前記頂部と、該頂部の両側に位置し該幅方向に対して傾斜している一対の前記傾斜縁部とを有する、請求項1又は2に記載のホルダ。
【請求項4】
前記ホルダの下端縁が、前記中央領域に位置し且つ前記幅方向に平行である前記頂部と、該頂部の両側に位置し該幅方向に対して傾斜している一対の前記傾斜縁部と、前記延出部の下端部に位置し前記本体部からの延出長さが一定の直線状のフラット縁部とから構成されている、請求項1~3の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項5】
前記欠落部の前記頂部の前記幅方向の長さが、前記腹側部又は前記背側部の該幅方向の全長に対して30%以下である、請求項3又は4に記載のホルダ。
【請求項6】
前記傾斜縁部の前記幅方向の長さが、前記腹側部又は前記背側部の該幅方向の全長に対して、15%以上である、請求項3~5の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項7】
前記ホルダの前記高さ方向の全長に対する前記延出部の前記高さ方向の延出長さの比が、0.03以上0.50以下である、請求項1~6の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項8】
前記欠落部を有する前記延出部を、前記腹側部及び前記背側部の両方に有している、請求項1~7の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項9】
前記延出部に隣接する領域の伸縮応力に対する前記延出部の前記伸縮部の伸縮応力の比率が、0.05以上0.95以下である、請求項1~8の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項10】
前記延出部は、前記一対の接合部それぞれの近傍に、前記本体部からの延出長さが一定の直線状のフラット縁部を有し、前記頂部の両側それぞれにおいて、前記ホルダの最大伸長時における前記傾斜縁部と該フラット縁部とのなす角度が120度以上である、請求項1~の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項11】
前記ホルダの下端縁が、凹凸が繰り返された形状である、請求項1~10の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項12】
前記本体部は、前記周方向に収縮可能に配置された弾性部材を備える、請求項1~11の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項13】
前記ホルダは、該ホルダの非肌対向面を形成する外層シートと、該ホルダの肌対向面を形成する内層シートとを含んでおり、
前記外層シート及び前記内層シートの一方又は両方が、前記周方向に伸縮する伸縮性不織布から構成されている、請求項1~12の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項14】
前記伸縮性不織布が、弾性フィラメントを含む不織布である、請求項13に記載のホルダ。
【請求項15】
請求項1~14の何れか1項に記載のホルダと、
前記ホルダに装着可能な吸収性パッドと、
を備える、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性パッドを着用者に装着した状態に保持するホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品の一種として、尿等の体液を吸収保持する吸収性パッドと、着用者の腰周りに環状に装着されるとともに、着用者の股間部に配置された吸収性パッドを保持するホルダとを備え、吸収性パッドがホルダに対して着脱自在に構成されたセパレートタイプのものが知られている。従来のセパレートタイプの吸収性物品においては、特許文献1~3に記載されているように、ホルダに、吸収性パッドが有する止着構造を止着可能なホルダ側止着構造が設けられている。
【0003】
特許文献1に記載のホルダは、周方向に、高さ方向の長さが短い中央部分と、該中央部分の両側に位置し、高さ方向の長さが該中央部分よりも長い中間部分とを有している。同文献には、中央部分におけるホルダの高さ方向下側の端縁が中間部分における同端縁よりも着用者の排泄部から離れて位置するので、中央部分は中間部分に比して着用者の排泄物で汚れにくいことが記載されている。
特許文献2及び3には、ホルダの腹側部及び背側部それぞれの中央領域における高さ方向下側に、切り欠き又はスリットを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-515199号公報
【文献】特開2010-82139号公報
【文献】特開2011-212289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のホルダにおいては、前記中間部分の前記高さ方向の下側の部分、特に中央部分よりの角部に位置する部分が非肌対向面側又は肌対向面側にめくれて、フィット性が損なわれてしまう恐れがある。特にホルダが周方向に伸縮性を有する場合、前記中間部分の前記下側の部分が一層めくれやすくなる。
特許文献2及び3のホルダにおいても、ホルダの周方向における切り欠き又はスリットの両側に位置する部分の下端部がめくれ、フィット性が損なわれてしまう恐れがある。
【0006】
したがって本発明の課題は、フィット性に優れるとともに、汚れにくいホルダを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、着用者の腰周りに装着されるとともに、吸収性パッドを着用者に装着した状態に保持可能な環状のホルダに関する。
前記ホルダは、着用者の身長方向に沿う高さ方向及び胴周り方向に沿う周方向を有することが好ましい。
前記ホルダは、腹側に配される腹側部及び背中側に配される背側部が一対の接合部で接合されていることが好ましい。
前記腹側部及び前記背側部の少なくとも一方は、前記一対の接合部間にシート材が連続して存在する本体部と、前記一対の接合部間に前記シート材が存在しない欠落部を有し、該本体部から前記高さ方向の下側に延出する延出部とを有することが好ましい。
前記腹側部又は前記背側部を前記周方向に沿う幅方向に3等分して中央領域及びその両側に位置する側部領域に区分したときに、前記欠落部は、該中央領域に頂部を有するとともに該中央領域から該側部領域にかけて形成されており、且つ前記頂部の両側それぞれに前記接合部に近づくに連れて前記本体部からの延出長さが漸増する傾斜縁部を有していることが好ましい。
本発明の他の特徴、効果及び実施形態は、以下に説明される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィット性に優れるとともに、汚れにくいホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明のホルダの一実施形態の斜視図である。
図2図2は、図1に示すホルダの最大伸長状態における腹側部側の非肌対向面(外面)を模式的に示す平面図である。
図3図3(a)は、図2のI-I線断面(図2に示すホルダの高さ方向且つ厚み方向に沿う断面)を模式的に示す断面図であり、図3(b)は、図2のII-II線断面(図2に示すホルダの高さ方向且つ厚み方向に沿う断面)を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図1に示すホルダの使用例を示す図であり、該ホルダ及びこれに止着された吸収性パッドを含む使い捨ておむつ(吸収性物品)の斜視図である。
図5図5は、図4に示すおむつの展開且つ最大伸長状態における肌対向面(内面)側を一部破断して模式的に示す展開平面図である。
図6図6は、本発明のホルダの下端の形状の変形例を模式的に示す要部拡大図である。
図7図7は、本発明のホルダの下端の形状の別の変形例を模式的に示す要部拡大図である。
図8図8は、本発明のホルダの下端の形状の更に別の変形例を模式的に示す要部拡大図である。
図9図9は、本発明のホルダの下端の形状の更に別の変形例を模式的に示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0011】
図1~3には、本発明のホルダの一実施形態であるホルダ1が示されている。また図4及び図5には、本発明のホルダの使用例として、ホルダ1とこれに止着された吸収性パッド11とを含む、使い捨ておむつ10(以下、「おむつ10」ともいう。)が示されている。おむつ10は、本発明の吸収性物品、即ち本発明のホルダと該ホルダに装着可能な吸収性パッドとを備える吸収性物品の一実施形態である。おむつ10は、図4に示すように、ホルダ1と吸収性パッド11とがホルダ側止着構造6及びパッド側止着構造16を介して結合されたものであり、ホルダ1が有するウエスト開口部WHと、ホルダ1の高さ方向HDの下端部と吸収性パッド11の長手方向(後述する縦方向X)に沿う両側縁部とで画成される一対のレッグ開口部LH,LHとを有する。なお、吸収性パッド11は、ホルダ1の構成部材ではない。
【0012】
セパレートタイプの吸収性物品であるおむつ10は、ホルダ1と吸収性パッド11とが止着構造6,16を介して結合・分離自在であるため、従来の非セパレートタイプの吸収性物品に比べて環境に対する負荷が低減されている。すなわち、着用者の腰周りに対応する部分(ホルダ相当部分)と着用者の股間部に対応する部分(吸収性パッド相当部分)とが一体不可分である従来の非セパレートタイプの吸収性物品を使用後に廃棄する場合、ホルダ相当部分は汚れていなくても、排泄物で汚れた状態の吸収性パッド相当部分とともに廃棄せざるを得なかったが、おむつ10であれば、ホルダ1はそのままで吸収性パッド11のみを新品と交換すればよいため、非セパレートタイプの吸収性物品に比べてゴミ廃棄量、二酸化炭素排出量が低減され、環境に対する負荷の低減に貢献することができる。
また、おむつ10の着用中、吸収性パッド11はホルダ1に着脱可能に固定されているので、該吸収性パッド11を新品に交換する作業は簡単であり、おむつ10は、従来の非セパレートタイプの吸収性物品に比べて交換作業の負荷が大幅に軽減されている。
【0013】
ホルダ1は、着用者の腰周りに環状に装着されるとともに、吸収性パッド11を着用者に装着した状態、すなわち着用状態に保持可能なものであり、着用者の身長方向に沿う高さ方向HD及び胴周り方向に沿う周方向CDを有している。ホルダ1には、吸収性パッド11が有するパッド側止着構造16を脱着可能に止着可能なホルダ側止着構造6が設けられている。
【0014】
ここで、吸収性パッド11について図4及び図5を参照しながら簡単に説明すると、吸収性パッド11は、着用者の肌から相対的に近い位置に配置された液透過性の表面シート12、着用者の肌から相対的に遠い位置に配置された液不透過性、液難透過性又は撥水性の裏面シート13、及び両シート12,13間に介在配置された吸収体14を含む。吸収性パッド11を構成するこれらの部材どうしは、接着剤等の公知の接合手段により一体とされている。吸収性パッド11は、平面視において一方向に長い形状をなし、吸収性パッド11を使用する際にはその長手方向を、予め着用者に装着された状態のホルダ1の高さ方向HDに一致させる。吸収性パッド11の長手方向は、おむつ10の着用者の前後方向に対応する縦方向Xに対応し、縦方向Xに直交する吸収性パッド11の横方向Yは、ホルダ1の周方向CDに対応する。吸収性パッド11の縦方向Xに沿う両側部には、おむつ10の着用時に着用者の肌側に起立する一対の防漏カフ15,15が配置されている。各防漏カフ15は、防漏カフ15の主体をなす防漏カフ形成用シート150と、縦方向Xに伸長状態で該シート150に固定された弾性部材151とを含む。吸収性パッド11の縦方向Xの両端部それぞれの肌対向面にはパッド側止着構造16が配置されており、このパッド側止着構造16をホルダ1のホルダ側止着構造6に止着させることで、吸収性パッド11をホルダ1に脱着可能に止着させることができる。
なお、吸収性パッド11は、本発明のホルダが適用可能な吸収性パッドの一実施形態に過ぎず、本発明のホルダが適用可能な吸収性パッドは、該ホルダのホルダ側止着構造に止着可能なパッド側止着構造を有していればよく、吸収性パッド11に限定されない。
【0015】
本明細書において「肌対向面」とは、吸収性物品、ホルダ、吸収性パッド等の着用物品又はその構成部材(例えばホルダのホルダ側止着構造)における、該着用物品の着用状態において着用者の肌側に向けられる面を指し、「非肌対向面」は、該着用物品又はその構成部材における、該着用物品の着用状態において肌側とは反対側に向けられる面を指す。
【0016】
以下、ホルダ1について詳細に説明する。
ホルダ1は、着用者の腹側(前側)に配置される腹側部Fと、着用者の背側(後側)に配置される背側部Rとを有する。腹側部F及び背側部Rは、周方向CDに沿う幅方向の両端部において、一対の接合部S,Sで接合されている。腹側部F及び背側部Rを接合する手段としては、接着剤、融着等の公知の接合手段を用いることができる。ホルダ1は、図1に示すように環状をなしており、着用状態で着用者の胴部が挿入されるウエスト開口部WHを有している。接合部Sは、一般的な非セパレートタイプのパンツ型使い捨ておむつにおけるサイドシール部に相当するものである。
【0017】
本実施形態では、ホルダ1の腹側部F及び背側部Rは、それぞれ、図2及び図5に示す如き最大伸長状態の平面視において、長方形の一方の長辺の一部が他方の長辺に向かって凹んだ形状を有する。詳細には、ホルダ1の腹側部F及び背側部Rは、それぞれ、着用時に、着用者の身長方向の上側に配される上端縁1a及び下側に配される下端縁1bを有し、下端縁1bが上端縁1aに向かって凹んだ形状となっている。
また本実施形態では、腹側部Fと背側部Rとは、平面視において互いに同形状・同寸法であり、且つ接合部Sを破壊せずに維持した状態で腹側部Fと背側部Rとを重ね合わせたときにそれらの輪郭が一致する。
また、腹側部F及び背側部Rは、図2に示すように、周方向CDに沿う幅方向に3等分することによって、中央領域C及びその両側に位置する側部領域E,Eに区分することができる。3等分は、最大伸長状態において、腹側部F及び背側部Rそれぞれの幅方向の全長Lを3等分して行う。腹側部Fの幅方向の全長Lとは、幅方向における、一対の接合部S,Sの内端どうしの間の距離を意味する。背側部Rの幅方向の全長についても、同様である。
【0018】
本明細書において「最大伸長状態」とは、吸収性物品、ホルダ、吸収性パッド等の着用物品の各部の弾性部材を最大伸長させて、設計寸法、すなわち弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じとなるまで拡げた状態をいう。
また、「展開且つ最大伸長状態」とは、着用物品を平面状に拡げて展開状態とした上で、前記最大伸長状態とした状態を指し、前述したホルダ1の接合部Sの如き、サイドシール部を有する吸収性物品の場合は、該吸収性物品をサイドシール部で切り離して平面状に拡げて前記展開状態とする。
【0019】
本実施形態では、ホルダ1は、ホルダ1の非肌対向面(外面)を形成する外層シート3と、ホルダ1の肌対向面(内面)を形成する内層シート4とを含む。内層シート4は、ホルダ1の着用時に着用者の肌と接触し得る。
【0020】
本実施形態では、外層シート3は、図3(a)及び(b)に示すように、高さ方向HDの上端部が肌対向面側に折り返されており、その外層シート3の折り返しの折り目にホルダ1の上端1aが位置し、ホルダ1の上端1aの近傍(上端部)は、外層シート3とその折り返し部30との積層構造を含む。折り返し部30とこれに対向する外層シート3との間は、接着剤、融着等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0021】
本実施形態では、ホルダ1は、高さ方向HDと直交する方向(周方向CD)に伸縮可能に配置された弾性部材5を備える。より具体的には、図3(a)及び(b)に示すように、外層シート3と内層シート4との間、及び外層シート3とその折り返し部30との間に、複数の弾性部材5が高さ方向HDと直交する方向(周方向CD)に伸縮可能に配置されている。複数の弾性部材5は、図1に示すように、腹側部F及び背側部Rそれぞれの高さ方向HDと直交する方向(周方向CD)の全長にわたって延在し、高さ方向HDに間欠配置されている。各弾性部材5は、周辺の他の部材と接着剤によって固定されている。弾性部材5の配置数、配置位置は特に制限されず、ホルダ1の着用者の身体に対するフィット性などを考慮して適宜設定し得る。
【0022】
両シート3,4としては、それぞれ、各種製法による不織布、織布、樹脂製フィルムなどを用いることができる。各シート3,4として使用可能な不織布の具体例として、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布が挙げられ、単層構造でもよく、1種又は2種以上の不織布を積層した積層構造でもよい。
両シート3,4は、互いに同種でもよく、異種でもよい。ここでいう「同種」とは、対比するシートどうしで、製造プロセス、構成繊維の種類、構成繊維の繊維径及び長さ、繊維シートの厚み及び坪量がすべて同じである場合を意味する。これらのうちの1つでも異なる場合、その対比するシートどうしは互いに「異種」である。
【0023】
ホルダ1は、水分を吸収保持する吸収体を含んでいないため、両シート3,4をはじめとする構成部材として洗濯可能なものを用いれば、洗濯して繰り返し使用することが可能なものとなり得る。ホルダ1が洗濯可能なものであることは、ゴミ廃棄量、二酸化炭素排出量の低減につながり、環境に対する負荷の低減に貢献することができる。ホルダ1を洗濯可能なものとする観点からは、両シート3,4等のシート状の構成部材としては、織布が好ましい。
【0024】
両シート3,4の一方又は両方は、高さ方向HDと直交する方向(周方向CD)に伸縮性を有していてもよい。本発明のホルダには、前述の弾性部材5を備えていない形態が包含されるところ、斯かる形態においては、両シート3,4の一方又は両方が、高さ方向HDと直交する方向に伸縮性する伸縮性不織布から構成されることが好ましい。本発明には例えば、外層シート3は高さ方向HDと直交する方向に伸縮性を有し、内層シート4は伸縮性を有しない形態が包含される。
【0025】
両シート3,4として使用可能な伸縮性不織布として、弾性フィラメントを含む不織布(以下、「特定伸縮性不織布」とも言う。)が挙げられる。ここで言う「弾性」とは、伸ばすことができ、且つ元の長さに対して100%伸ばした状態(元の長さの200%の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの125%以下の長さまで戻る性質をいう。前記特定伸縮性不織布では、弾性フィラメントが、実質的に非伸長状態で、不織布に接合されていることが好ましい。前記不織布は非弾性繊維を含むものが好ましい。
【0026】
前記特定伸縮性不織布において、弾性フィラメントは、典型的には、該特定伸縮性不織布における該弾性フィラメントの延在方向の全長にわたって実質的に連続している。また、弾性フィラメントは弾性樹脂を含んでいる。
前記特定伸縮性不織布において、不織布は、弾性フィラメントの延びる方向と同方向に伸長可能になっている。ここで言う「伸長可能」とは、(イ)不織布の構成繊維自体が伸長する場合と、(ロ)不織布の構成繊維自体は伸長しなくても、交点において結合していた繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたり、繊維のたるみが引き伸ばされたりして、不織布全体として伸長する場合とを包含する。前記特定伸縮性不織布において、不織布は、弾性フィラメントと接合される前の原反の状態で既に伸長可能になっていてもよい。あるいは、弾性フィラメントと接合される前の原反の状態では伸長可能ではないが、弾性フィラメントと接合された後に伸長可能となるように加工が施されて、伸長可能になるものであってもよい。不織布を伸長可能にするための具体的な方法としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによるかみ込み延伸、テンターによる引張延伸などが挙げられる。
【0027】
前記特定伸縮性不織布の好ましい一実施形態として、対向配置された2枚の不織布の間に複数の弾性フィラメントが配置された構成を有するものが挙げられる。斯かる好ましい実施形態において、複数の弾性フィラメントは、互いに交差せずに一方向(例えば、高さ方向HDと直交する方向)に延びるように配置されるとともに、該一方向と直交する方向に間欠配置されてもよく、その場合、該一方向が特定伸縮性不織布の伸縮方向となり得る。前記2枚の不織布は、互いに同種でも異種でもよい。ここで言う「同種」とは、対比する2枚の不織布どうしで、製造プロセス、構成繊維の種類、構成繊維の繊維径及び繊維長、当該不織布の厚み及び坪量がすべて同じであることを指す。対比する2枚の不織布どうしでこれらの要素の少なくとも一つが異なる場合、2枚の不織布は互いに異種である。
【0028】
両シート3,4として使用可能な伸縮性不織布としては、各種公知のものを用いることができ、例えば、特開2008-179128号公報に記載の伸縮シート、特開2007-22066号公報に記載の伸縮シート、同公報に記載の伸縮性不織布の製造方法により製造される伸縮性不織布、特開平10-29259号公報に記載の積層シート等を用いることもできる。
【0029】
ホルダ1の特徴部分の1つであるホルダ側止着構造6について説明すると、本実施形態では、ホルダ側止着構造6は図1等に示すように、ホルダ1の非肌対向面(外面)に設けられており、より具体的には、外層シート3の非肌対向面に固定されている。
【0030】
ホルダ側止着構造6としては、吸収性パッド11が有するパッド側止着構造16(図5参照)を脱着可能に止着可能なものであればよく、公知の着脱自在な止着構造を特に制限なく用いることができる。例えば、ホルダ側止着構造6及びパッド側止着構造16の一方又は両方が、粘着剤を塗布して形成された粘着部を備え、該粘着部を介してパッド側止着構造16がホルダ側止着構造6に脱着可能に止着するようになされていてもよい。
【0031】
本実施形態では、ホルダ側止着構造6及びパッド側止着構造16を含む止着構造として、機械的面ファスナーを採用している。ここでいう「機械的面ファスナー」とは、鉤状の突起からなるフック材(係合部材)が一面に配置された面部材(オス部材)と、パイル状の突起からなるループ材が一面に配置された面部材(メス部材)とが、一組みとなった留め具を指す。機械的面ファスナーの具体例として、マジックテープ(登録商標)が挙げられる。
具体的には本実施形態では、ホルダ側止着構造6は、機械的面ファスナーのメス部材であり、基材と、該基材の非肌対向面(外面)に設けられ、パッド側止着構造16が止着可能な被止着領域とを備える。ホルダ側止着構造6が備える前記基材は、接着剤、融着等の公知の接合手段60(図3(a)及び(b)参照)を介して本体部2に直接固定されている。またパッド側止着構造16は、機械的面ファスナーのオス部材であり、典型的には、樹脂製フィルム、織布、不織布などからなる基材の表面に多数の前記フック材が配置された構成を有している。
【0032】
本発明のホルダにおいて、腹側部F及び背側部Rの少なくとも一方は、一対の接合部S,S間にシート材3,4が連続して存在する本体部2と、該本体部2から前記高さ方向HDの下側に延出する延出部21とを有する。本実施形態では、腹側部F及び背側部Rのいずれも、本体部2と延出部21とを有する。ホルダ側止着構造6は、本体部2の非肌対向面に設けられている。
【0033】
延出部21は、一対の接合部S,S間にシート材3,4が存在しない欠落部23を有する。欠落部23は、中央領域Cに頂部23aを有するとともに該中央領域Cから側部領域Eにかけて形成されている。また欠落部23は、欠落部23の頂部23aの両側それぞれに接合部Sに近づくに連れて本体部2からの延出長さが漸増する傾斜縁部23bを有している。傾斜縁部23bは、周方向CDに沿う幅方向に対して傾斜している。欠落部23の頂部23aは、周方向CDに沿う幅方向と平行であってもよいし、該幅方向に対して傾斜していてもよい。
【0034】
また延出部21は、一対の接合部S,Sそれぞれの近傍に、本体部2からの延出長さが一定の直線状のフラット縁部25bを有している。本実施形態では、延出部21の下端部25bが、フラット縁部25bとなっている。本体部2からの延出長さH1が一定であるとは、本実施形態のように、延出部21の下端部25bが周方向CDと平行な直線状であることが好ましいが、図7に示すように、延出部21の下端部25bが微視的に見て細かい凹凸を有するが、巨視的に見て周方向CDに延びる直線状である場合も含まれる。例えば該下端部25bに細かな凹凸を有するが、凸部の頂点と凹部の底点との高さ方向HDにおける距離が10mm以下、好ましくは5mm以下である場合、該下端部25bはフラット縁部25bに該当する。
【0035】
本実施形態では、ホルダ1の高さ方向HDの下端縁1bは、欠落部23の頂部23a、一対の傾斜縁部23b,23b、及び一対のフラット縁部25b,25bにより構成されている。延出部21は、欠落部23の両側それぞれに、傾斜縁部23b、フラット縁部25b及び接合部Sによって囲まれた部分である延出部本体25を有する。
【0036】
ホルダ1は、中央領域Cから側部領域Eにわたる欠落部23を有するので、ホルダ1の装着状態において、ホルダ1の下端縁1bが着用者の排泄部から離れた位置に配されることになる。そのため、該下端縁1bが着用者の排泄物に触れにくくなり、ホルダ1が汚れることを防ぐことができる。
しかも、欠落部23が傾斜縁部23bを有するので、欠落部23の両側に位置する部分の下端縁1b近傍が、着用者の肌にしっかりフィットするようになり、非肌対向面側又は肌対向面側にめくれてしまうことを防ぐことができる。したがって、ホルダ1は、フィット性にも優れる。
このように、本実施形態のホルダ1は、フィット性に優れるとともに、汚れにくくなっている。
これに対し、特許文献1~3のホルダが有する切り欠きやスリット等は、切り欠きやスリットの両側に、めくれやすい角部を有しており、違和感が発生しやすい。特許文献2及び3が有する切り欠き及びスリットは、周方向の幅が短く、ホルダが汚れやすい。
【0037】
腹側部F又は背側部Rの幅方向の全長Lに対して、欠落部23の幅方向の長さL1は、ホルダ1が汚れることを効果的に防ぐ観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上であり、また、延出部21の面積を十分に確保する観点から好ましくは98%以下、より好ましくは97%以下、更に好ましくは96%以下であり、これらの両立の観点から、好ましくは70%以上98%以下、より好ましくは80%以上97%以下、更に好ましくは90%以上96%以下である。欠落部23の前記長さL1は、前記全長Lからフラット縁部25bの長さを除いた直線長さである。
欠落部23の頂部23aの幅方向の長さL2は、延出部21がめくれるのを防止する観点から、前記全長Lに対して、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。
傾斜縁部23bの幅方向の長さL3は、延出部21がめくれるのを防止する観点から、前記全長Lに対して、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上である。
【0038】
ホルダ1の高さ方向HDの全長Hに対する、本体部2からの延出部21の延出長さH1の比H1/Hは、ホルダ1が汚れることを効果的に防ぐ観点から、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上であり、ホルダ1がズレ落ちることを防止するための応力を維持する観点から、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.40以下、更に好ましくは0.30以下であり、これらの両立の観点から、好ましくは0.03以上0.50以下、より好ましくは0.05以上0.40以下、更に好ましくは0.10以上0.30以下である。
【0039】
本発明のホルダにおいては、欠落部23を有する延出部21を、腹側部F及び背側部Rのいずれか一方のみに有していてもよいが、本実施形態のホルダ1のように、該延出部21を、腹側部F及び背側部Rの両方に有していることが好ましい。こうすることにより、腹側部F及び背側部Rそれぞれの下端縁1bを、着用者のペニス、肛門等の排泄部から離れた位置に配することができるので、ホルダ1が汚れることを一層効果的に防ぐことができる。
【0040】
延出部21は、欠落部23の両側それぞれに、腹側部F又は背側部Rの幅方向CDに伸縮する伸縮部を有していることが好ましい。こうすることにより、ホルダ1を装着したときに、延出部21、特に延出部本体25が着用者の胴周りにフィットするようになるので、ホルダ1のフィット性を一層向上させることができる。伸縮部は、例えば、延出部21に、幅方向CDに伸縮可能な弾性部材を配置することによって形成することができる。また、延出部21の全部又は一部を、幅方向CDに伸縮性を有する伸縮シートにより構成することによって形成することもできる。
【0041】
本実施形態のホルダ1は、上述のように、周方向CDに伸縮可能に配置された弾性部材5を備えており、本体部2は、周方向CDの伸縮性を有している。本体部2と延出部21とは、伸縮応力が同じであってもよいし、異なっていてもよい。本体部2の伸縮応力と延出部21の伸縮応力とが異なる場合、本体部2における延出部21に隣接する領域の伸縮応力S1より、延出部21の伸縮部の伸縮応力S2の方が小さいことが好ましい。仮に、本体部2における延出部21に隣接する領域の伸縮応力S1と、延出部21の伸縮部の伸縮応力S2とを上述のような関係とすることによって、ホルダ1のフィット性を向上させるとともに、延出部21がめくれることを防ぐことができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、前記伸縮応力S1に対する前記伸縮応力S2の比S2/S1は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.20以上であり、また好ましくは0.95以下、より好ましくは0.90以下、更に好ましくは0.80以下であり、また好ましくは0.05以上0.95以下、より好ましくは0.10以上0.90以下、更に好ましくは0.20以上0.80以下である。伸縮応力は、以下の方法により測定することができる。
【0042】
<伸縮応力の測定方法>
ホルダ1の延出部21、および本体部2における延出部21に隣接する領域のそれぞれについて、周方向CDの長さ50mm×高さ方向HDの長さ10mmのサンプル片を切り出す。延出部21からサンプル片を切り出すときは、延出部21における欠落部23以外の部分から切り出す。
次いで、切り出したサンプル片を、テンシロン引張試験機(ORIENTEC社製「RTC-1210A」)における一対のチャックに、サンプル片を非伸長且つ弛みのない状態で挟む。このときのチャック間距離は25mmとする。次いで、300mm/minの速度でチャック間の距離が50mmとなるまでサンプル片を伸長させた後、該チャック間の距離を37.5mm(1.5倍伸長に相当する長さ)まで戻したときの引張り荷重(cN/10mm)を測定する。斯かる測定を5枚のサンプル片について行い、これらの平均値(チャック間の距離を37.5mmまで戻したときの引張り荷重の平均値)を伸縮応力(cN/10mm)とする。
【0043】
欠落部23の両側に位置する部分の下端縁1b近傍が、非肌対向面側又は肌対向面側にめくれること効果的に防ぐ観点から、ホルダ1の最大伸長時における傾斜縁部23bとフラット縁部25bとのなす角度αは、好ましくは120°以上、より好ましくは135°以上、更に好ましくは150°以上である。前記角度αの上限値は、例えば175°とすることができる。
【0044】
本実施形態では、ホルダ1の下端縁1bは直線のみで構成されているが、ホルダ1の下端縁1bは、図6に示すように、直線及び曲線により構成されていてもよい。図6に示す変形例では、欠落部23の頂部23a及びフラット縁部25bが直線及び曲線により構成されており、傾斜縁部23bは曲線により構成されている。図6に示す変形例のように、傾斜縁部23b及びフラット縁部25bの交点付近、又は、傾斜縁部23b及び欠落部23の頂部23aの交点付近を多項近似式により曲線に近似できる場合、傾斜縁部23bとフラット縁部25bとのなす角αは、以下のようにして測定することができる。
【0045】
まず、傾斜縁部23b及びフラット縁部25bの交点付近を多項近似式により曲線に近似して、該曲線と同一の曲率を有し、傾斜縁部23b及びフラット縁部25bに接する仮想円R1を考える。次に、傾斜縁部23b及び欠落部23の頂部23aの交点付近を多項近似式により曲線に近似して、該曲線と同一の曲率を有し、傾斜縁部23b及び欠落部23の頂部23aに接する仮想円R2を考える。そして、仮想円R1及び仮想円R2の両方に接する仮想接線Q1を引く。仮想接線Q1とフラット縁部25bとのなす角を、傾斜縁部23bとフラット縁部25bとのなす角αとすることができる。
【0046】
またホルダ1の下端縁1bは、図7に示すように、凹凸が繰り返された形状であってもよい。図7に示す変形例では、ホルダ1の下端縁1bは、ギザギザ状となっている。図7に示す変形例のように、傾斜縁部23b及び延出部21の下端部25bの交点付近、又は、傾斜縁部23b及び欠落部23の頂部23aの交点付近を多項近似式により曲線に近似することが困難である場合、以下のようにして、傾斜縁部23bとフラット縁部25bとのなす角αを測定することができる。
【0047】
まず、延出部21の下端部25bにおける、最も傾斜縁部23bの近くに位置し且つ最も前記高さ方向HD上側に位置する点P1と、傾斜縁部23bにおける、最もフラット縁部25bの近くに位置し且つ最も前記高さ方向HD上側に位置する点P2とを通る仮想円R3を考える。次に、傾斜縁部23bにおける、最も欠落部23の頂部23aの近くに位置し且つ最も前記高さ方向HD下側に位置する点P3と、欠落部23の頂部23aにおける、最も傾斜縁部23bの近くに位置し且つ最も前記高さ方向HD下側に位置する点P4とを通る仮想円R4を考える。そして、仮想円R3及び仮想円R4の両方に接する仮想接線Q2を引く。仮想接線Q2と延出部21の下端部25bとのなす角を、傾斜縁部23bとフラット縁部25bとのなす角αとすることができる。延出部21の下端部25bが周方向CDと平行な直線でない場合、フラット縁部25bを、最小二乗法により周方向CDと平行な直線Tに近似し、該近似直線Tと仮想接線Q2とのなす角を、傾斜縁部23bとフラット縁部25bとのなす角αとすることができる。
【0048】
また、図1に示す実施形態では、傾斜縁部23bは、本体部2からの延出長さが連続的に変化していたが、傾斜縁部23bは、図8及び図9に示すように、本体部2からの延出長さが段階的に変化していてもよい。図8に示すように、傾斜縁部23bの両端を通る仮想線Q3とフラット縁部25bとのなす角を、傾斜縁部23bとフラット縁部25bとのなす角αとすることもできる。
【0049】
本発明は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本発明のホルダは、使用時に着用者の腰周りに環状に装着されるものであればよく、使用時以外は環状でなくてもよい。例えば、ホルダ1が一方向に長い帯状をなし、そのホルダ1の長手方向の一端部と他端部とが着脱自在に結合可能になされており、未使用時は帯状、使用時(装着時)に、ホルダ1の長手方向の一端部と他端部とを結合させて該ホルダ1を環状にするようになされていてもよい。あるいは、ホルダ1が周方向CDに複数の部材(例えば、腹側部Fに対応する部材と背側部Rに対応する部材)に分割され、且つそれら複数の部材どうしが一方向に着脱自在に連結可能になされており、使用時(装着時)に、それら複数の部材どうしを結合させて環状のホルダ1を形成するようになされていてもよい。
【0050】
前記実施形態では、ホルダ1の腹側部Fと背側部Rとは、平面視において互いに同形状・同寸法であったが、本発明では、互いに形状及び/又は寸法が異なっていてもよい。具体的には例えば、背側部Rの下端縁1bが、腹側部Fの下端縁1bよりも下方に(ホルダ側止着構造6から遠くに)位置していてもよい。
【0051】
前記実施形態では、外層シート3及び内層シート4は何れも単層構造であったが、本発明では、両シート3,4の一方又は両方が積層構造であってもよい。例えば、外層シート3は、横方向Yに伸縮性を有するシートを含む2枚以上のシートの積層構造からなり、内層シート4は、非伸縮性シートからなる単層構造とすることができる。
前記実施形態では、外層シート3が折り返されて折り返し部30が形成されていたが、本発明では、外層シート3は折り返されていなくてもよい。
【0052】
前記実施形態では、ホルダ1は、該ホルダ1を構成するシート状部材として外層シート3及び内層シート4を含んでいたが、本発明では、両シート3,4以外の他のシート状部材を含んでいてもよい。具体的には例えば、ホルダ1は、両シート3,4に加えて更に、ホルダ1の肌対向面(内面)における着用者のウエスト部に対応する領域(例えば、折り返し部30の配置領域及びその近傍)に配置される機能性シートを含んでいてもよい。前記機能性シートは、例えば、吸汗性、吸湿性、抗菌性、消臭性、スキンケア性等の諸機能のうちの少なくとも1つを有する。
【0053】
前記実施形態では、ホルダ側止着構造6が機械的面ファスナーのメス部材、パッド側止着構造16が機械的面ファスナーのオス部材であったが、本発明ではこれとは逆に、ホルダ側止着構造6が機械的面ファスナーのオス部材、パッド側止着構造16が機械的面ファスナーのメス部材でもよい。
【0054】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
着用者の腰周りに装着されるとともに、吸収性パッドを着用者に装着した状態に保持可能な環状のホルダであって、
着用者の身長方向に沿う高さ方向及び胴周り方向に沿う周方向を有し、
腹側に配される腹側部及び背中側に配される背側部が一対の接合部で接合されており、
前記腹側部及び前記背側部の少なくとも一方は、前記一対の接合部間にシート材が連続して存在する本体部と、前記一対の接合部間に前記シート材が存在しない欠落部を有し、該本体部から前記高さ方向の下側に延出する延出部とを有し、
前記腹側部又は前記背側部を前記周方向に沿う幅方向に3等分して中央領域及びその両側に位置する側部領域に区分したときに、前記欠落部は、該中央領域に頂部を有するとともに該中央領域から該側部領域にかけて形成されており、且つ前記頂部の両側それぞれに前記接合部に近づくに連れて前記本体部からの延出長さが漸増する傾斜縁部を有している、ホルダ。
【0055】
<2>
前記腹側部又は前記背側部の前記幅方向の全長に対して、前記欠落部の該幅方向の長さが70%以上、好ましくは70%以上98%以下、より好ましくは80%以上97%以下、更に好ましくは90%以上96%である、前記<1>に記載のホルダ。
<3>
前記欠落部が、前記中央領域に位置し且つ前記幅方向に平行である前記頂部と、該頂部の両側に該幅方向に対して傾斜している一対の前記傾斜縁部とを有する、前記<1>又は<2>に記載のホルダ。
<4>
前記欠落部の頂部の前記幅方向の長さが、前記腹側部又は前記背側部の該幅方向の全長に対して30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である、前記<3>に記載のホルダ。
<5>
前記欠落部傾斜部の前記幅方向の長さが、前記腹側部又は前記背側部の該幅方向の全長に対して、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上である、前記<3>又は<4>に記載のホルダ。
<6>
前記ホルダの前記高さ方向の全長に対する前記延出部の前記高さ方向の延出長さが、0.03以上0.50以下、好ましくは0.05以上0.40以下、より好ましくは0.10以上0.30である、前記<1>~<5>の何れか1に記載のホルダ。
【0056】
<7>
前記欠落部を有する前記延出部を、前記腹側部及び前記背側部の両方に有している、前記<1>~<6>の何れか1に記載のホルダ。
<8>
前記延出部は、前記欠落部の両側それぞれに、前記腹側部又は前記背側部の前記周方向に伸縮する伸縮部を有している、前記<1>~<7>の何れか1に記載のホルダ。
<9>
前記本体部は前記周方向の伸縮性を有し、前記本体部における前記延出部に隣接する領域の伸縮応力より、該延出部の前記伸縮部の伸縮応力の方が小さい、前記<8>に記載のホルダ。
<10>
前記延出部に隣接する領域の伸縮応力に対する前記延出部の前記伸縮部の伸縮応力の比率が、0.05以上0.95以下、好ましくは0.10以上0.90以下、より好ましくは0.20以上0.80以下である、前記<9>に記載のホルダ。
<11>
前記延出部は、前記一対の接合部それぞれの近傍に、前記本体部からの延出長さが一定の直線状のフラット縁部を有し、前記頂部の両側それぞれにおいて、前記ホルダの最大伸長時における前記傾斜縁部と該フラット縁部とのなす角度が120度以上、より好ましくは135°以上、更に好ましくは150°以上175°以下である、前記<1>~<10>のいずれか1に記載のホルダ。
<12>
前記<1>~<11>の何れか1に記載のホルダと、
前記ホルダに装着可能な吸収性パッドと、
を備える、吸収性物品。
【符号の説明】
【0057】
1 ホルダ
F 腹側部
R 背側部
2 本体部
21 延出部
23 欠落部
23b 傾斜縁部
3 外層シート
30 折り返し部
4 内層シート
5 弾性部材
6 ホルダ側止着構造
60 接合手段
S 接合部
HD ホルダの高さ方向
CD ホルダの周方向
10 使い捨ておむつ(セパレートタイプの吸収性物品)
11 吸収性パッド
16 パッド側止着構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9