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特許7449277放電による損傷から保護される転がり軸受組立体についての方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】放電による損傷から保護される転がり軸受組立体についての方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20240306BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240306BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20240306BHJP
   F16J 15/3288 20160101ALI20240306BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C19/06
F16J15/3204 201
F16J15/3288
F16J15/18 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021512543
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 US2019049521
(87)【国際公開番号】W WO2020060760
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】62/726,897
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/558,923
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ローマン
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-106971(JP,A)
【文献】特開2009-079643(JP,A)
【文献】特開2009-156298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0334758(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0108047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/78
F16C 19/06
F16J 15/3204
F16J 15/3288
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受組立体において、
内輪軌道を有する内輪と、
外輪軌道を有する外輪と、
前記内輪軌道と前記外輪軌道との間で転動又は回転する転動体と、
第1の端部と第2の端部とを有する少なくとも1つの導電部と、
前記少なくとも1つの導電部と前記転動体との間に設けられたシールとを具備し、
前記第1の端部は、電気的に前記内輪と接触する第1の導電ブラシフィラメントを具備し、
前記第2の端部は、電気的に前記外輪と接触する第2の導電ブラシフィラメントを具備し、
前記軸受組立体は、前記少なくとも1つの導電部に固定される少なくとも1つの留め具を具備し、
前記少なくとも1つの留め具は前記内輪又は前記外輪のいずれとも直接的に接触せず、
前記軸受組立体は、前記転動体と、前記少なくとも1つの留め具及び前記導電ブラシフィラメントのうちの一方又は両方との間に設けられるシールを備える、軸受組立体。
【請求項2】
前記第1の導電ブラシフィラメントは前記第1の端部に取り外し可能に連結され、
前記第2の導電ブラシフィラメントは前記第2の端部に取り外し可能に連結される請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項3】
前記シールは、前記内輪と前記外輪の一方と接触するシーリングリップを備える請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項4】
前記シーリングリップは柔軟なシーリングリップである請求項3に記載の軸受組立体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの導電部は、環状ではない少なくとも1つの離散的部品を備える請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項6】
軸受組立体において、
内輪軌道を有する内輪と、
外輪軌道を有する外輪と、
前記内輪軌道と前記外輪軌道との間で転動又は回転する転動体と、
少なくとも1つの留め具と、
前記少なくとも1つの留め具に固定され、第1の端部と第2の端部とを有する、導電ブラシフィラメントとを具備し、
前記少なくとも1つの留め具は前記内輪又は前記外輪のいずれとも直接的に接触せず、
前記第1の端部は直接的かつ電気的に前記内輪と接触し、前記第2の端部は直接的かつ電気的に前記外輪に接触するように構成され
前記軸受組立体は、前記転動体と、前記少なくとも1つの留め具及び前記導電ブラシフィラメントのうちの一方又は両方との間に設けられるシールを備える、軸受組立体。
【請求項7】
前記シールは、前記内輪又は前記外輪のうちの一方と接触するシーリングリップを備える請求項に記載の軸受組立体。
【請求項8】
前記シール、前記少なくとも1つの留め具、及び前記導電ブラシフィラメントは1つに結合される請求項に記載の軸受組立体。
【請求項9】
前記シール、前記少なくとも1つの留め具、及び前記導電ブラシフィラメントのうちの隣接する2つ以上は取り外し可能に1つに結合される請求項に記載の軸受組立体。
【請求項10】
前記導電ブラシフィラメントは前記転動体のうちの1つの一方側のみに設けられる請求項6に記載の軸受組立体。
【請求項11】
前記導電ブラシフィラメントは導電リングである請求項6に記載の軸受組立体。
【請求項12】
前記導電ブラシフィラメントは環状ではない少なくとも1つの離散的部品を備える請求項6に記載の軸受組立体。
【請求項13】
放電による損傷から保護される転がり軸受組立体であって、
内輪及び外輪であって、前記内輪が内輪軌道を有し、前記外輪が外輪軌道を有する、内輪及び外輪と、
複数の転動体であって、前記複数の転動体は前記内輪軌道及び前記内輪軌道上で転動するように支持される、複数の転動体と、
前記内輪又は前記外輪のいずれとも直接的に接触しない少なくとも1つの留め具と、
前記外輪と前記内輪との間で径方向に延在しかつ前記転動体と前記少なくとも1つの留め具との間に設けられるシールであって、前記シールは、前記内輪又は前記外輪のうちの一方に固定される固定シール端部と、前記内輪又は前記外輪のうちの他方と接触する柔軟なシーリングリップとを有する、シールと、を具備する転がり軸受組立体。
【請求項14】
少なくとも1つの導電リングを備える請求項1に記載の転がり軸受組立体。
【請求項15】
前記シールは前記少なくとも1つの導電リングに一体に接続される請求項1に記載の転がり軸受組立体。
【請求項16】
前記少なくとも1つの導電リングは、少なくとも一端において固定される導電ブラシフィラメントを有する請求項1に記載の転がり軸受組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本特許出願は、2018年9月4日に出願された米国仮特許出願第62/726,897号及び2019年9月3日に出願された米国特許出願第16/558,923号を参照し、その優先権を主張し、その利益を主張する。これらの出願の全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本開示は、電気放電損傷の改善に関し、より詳細には、放電による損傷から保護される転がり軸受組立体用の方法及び装置に関する。
【0003】
従来の手法の制限及び不利点が、そのような手法を、図面を参照して本開示の残りの部分において記載されている本方法及びシステムのいくつかの態様と比較すると、当業者には自明となるであろう。
【発明の概要】
【0004】
実質的に、図のうちの少なくとも1つの図によって示されるとともにこれに関連して説明されるように、また、特許請求の範囲においてより完全に述べられるように、放電による損傷から保護される転がり軸受組立体用の方法及び装置が提供される。
【0005】
これらの態様及び/又は他の態様は、添付図面に関して行う、例示的な実施形態の以下の説明から明らかになり、より容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の態様による放電による損傷から保護される転がり軸受組立体の例を示す断面図である。
図2A】本開示の態様による放電による損傷から保護される転がり軸受組立体の別の例を示す断面図である。
図2B】本開示の態様による放電による損傷から保護される転がり軸受組立体の更に別の例を示す断面図である。
図3A】本開示の態様による導電ブラシフィラメントを別の部分上に連結するための例示的なキャップを示す図である。
図3B】本開示の態様による導電ブラシフィラメントを別の部分上に連結するための例示的なキャップを示す図である。
図3C】本開示の態様による導電ブラシフィラメントを別の部分上に連結するための例示的なキャップを示す図である。
図4A】本開示の態様によるシーリングリップの例を示す図である。
図4B】本開示の態様によるシーリングリップの例を示す図である。
図4C】本開示の態様によるシーリングリップの例を示す図である。
図5】本開示の態様による放電による損傷から保護される転がり軸受組立体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
概して、転がり軸受組立体は、例えば、電気モーター内におけるローターの回転をより円滑にするために使用することができる。しかしながら、電圧がモーターシャフト上に生じる場合があり、蓄積された電圧が軸受を通して放電する可能性がある。電圧の放電は、転がり軸受を損傷する可能性があり、それにより、時間が経過すると、転がり軸受組立体は、モーターの継続的な運転のために交換する必要が生じることになる。
【0008】
本開示の様々な例では、放電による損傷から保護される転がり軸受組立体について説明する。
【0009】
図1では、略円形(又はリング状)である転がり軸受組立体100の断面が示される。断面図は、円形の転がり軸受組立体100の上部のものである。したがって、ページを横切って水平に延在するシャフト(図示せず)は、図示する断面の下にあるものとすることができる。円形の転がり軸受組立体100の下部の同様の断面(図示せず)は、シャフトの下にあることになる。したがって、シャフト及び下部断面が図面に含まれる場合、シャフトの上部は、上部分の図示する断面の内輪2と接触しており、シャフトの下部は、下部分の断面の内輪2と接触している。下部分の内輪が下部分の外輪の上になることに留意されたい。したがって、シャフトは内輪2によって取り囲まれることになる。
【0010】
放電による損傷から保護される転がり軸受組立体100は、内輪2と外輪1とを備え、内輪2は内輪軌道4を有し、外輪1は外輪軌道3を有する。転がり軸受組立体100は、複数の転動体5を含み、複数の転動体5は、内輪軌道4及び/又は内輪軌道3上で転動するように支持される。時には、転動体5は内輪軌道4及び外輪軌道3の両方に接触する場合がある。また或る時には、転動体5は内輪軌道4又は外輪軌道3のうちの一方のみに接触する場合がある。これは、例えば、転がり軸受組立体100上の荷重及び荷重の場所に依存し得る。転動体5は、異なる例示的な転がり軸受組立体100について異なる適切な形状とすることができる。例えば、転がり軸受要素5は、球形、円柱形、又は他の適切な形状とすることができる。
【0011】
転がり軸受組立体100は、内輪2又は外輪1のいずれにも直接的に接触しない少なくとも1つのリング7を更に備えることができる。少なくとも1つのリング7は、導電性又は非導電性とすることができる。少なくとも1つのリング7は、例えば、第1のリング7aと第2のリング7bとを含むことができる。導電部8は、第1のリング7a及び/又は第2のリング7bのうちの少なくとも一方に固定することができる。導電部8は、内輪2及び外輪1と接触する。導電部8は、例えば、フィラメントを含むことができる。「フィラメント(filaments)」の用語は、適用を容易にするために使用されているが、「フィラメント」は、単一のフィラメント又は複数のフィラメントを指し得ることを理解すべきである。
【0012】
図2Aに示されるように、本開示の例では、フィラメントである端部部品8a及び/又は端部部品8bを導電部8に設けることができる。導電部8は、図3A、3Bに示されるようにブラケット(又はキャップ)9を介してリング7に連結することができる。端部部品8a及び8bは、図3Cに示されるようにキャップ10を介して導電部8に取り付ける、ネジ止めする、又は端部部品8a及び8bを導電部8に取り付けるのに適した任意の他の方法によって取り付けることができる。
【0013】
転がり軸受組立体100は、内輪2及び/又は外輪1と接触することができる少なくとも1つのリング7に一体に接続されるシール6を備えることもできる。図1、2は、リング7bの一方側のみに連結されたシール6を示す。しかし、本開示の様々な例では、複数のシール6を設けることが可能であり、リング7の一方側又は両側に連結された1つ以上のシール6とすることができる。シール6は、導電部8と転動体5との間に設けられるものとして図示される。図1、2において、シール6は、転動体5とリング7の第2のリング7bとの間に設けられるものとして図示される。
【0014】
図1、2に示されるように、内輪2と外輪1との間には電気経路があり、それにより、転動体5を損傷することなくモーターシャフトの電圧を消散させることができる。
【0015】
導電部8は、そのような目的に適する1つ又は多くの方法によってリング7に留める(又は、連結する、取り付ける等)ことができる。例えば、導電部8は、接着剤を使用することによって、第1のリング7a及び第2のリング7bのうちの一方又は両方に留めることができる。
【0016】
図1、2は、転動体5の両側のリング7を示す。しかしながら、本開示の他の例では、転動体5の一方側のみにリング7を有することができる。本開示のいくつかの例では、リング7は環状ではない場合がある。
【0017】
例えば、図5は、転がり軸受組立体100の側面図を示す。図5は、外輪1と内輪2とを有する転がり軸受組立体100を示し、リング7は、内輪2と外輪1と間に少なくとも1つの離散的部品を備え、少なくとも1つの離散的部品は環状ではない。図5は、外輪1又は内輪2のいずれかには接触しない、外輪1と内輪2との間の4つの離散的導電部7を示す。これらの離散的導電部7は、対応するシール6及び導電部8等の同様の付帯部品を有することができる。これらの離散的導電部7は、第1のリング7a及び第2のリング7bを備えることもできる。図5のリング7は、前述のように、導電部8及びシール6に連結することもできる。なお、導電部8は、離散的部品又はリング7の離散的部品に連結された環状としてもよいことに留意されたい。
【0018】
リング7の4つの離散的導電部が示されるが、本開示の様々な例では、1つ以上の導電部7を有することができる。さらに、離散的導電部の7の形状は、図5に示す長方形の例とは異なるものとすることができる。
【0019】
図2Bは、間にリング7を設けずにシール6が導電部8に隣接していること以外は、図1と同様である。本開示の別の例では、導電部8の他方側に他のリング7を設けずにシール6と導電部8との間にリング7を設けることができることも分かる。加えて、転動体5の両側にリング7を設けるのではなく、転動体5の一方側に単一のリング7を設けるのみとすることができる。
【0020】
図3A、3Bは、導電部8の一部とすることができるキャップ又はブラケット9を示す。キャップ9は、例えば、リング7の端部に外嵌することができる。したがって、キャップ9は、第1のリング7a又は第2のリング7bのいずれかの端部又は両端部に取り付けることができるように構成することができる。キャップ9は、第1のリング7a及び第2のリング7bに連結するように使用することもできる。「キャップ」と称しているが、キャップ9は、例えばリング7の端部に設けられる穴に内嵌するピン又はねじとすることもできる。
【0021】
図3Cは、フィラメント8a及び8bを中央部8cの端部に嵌合させるキャップ(又はブラケット)10を示す。導電部8と称しているが、フィラメント8a及び8bと嵌合する時、中央部8cは導電性である必要はない。むしろ、フィラメント8a及び8bは、内輪2から、フィラメント8a又は8bのうちの一方、リング7、フィラメント8b又は8aのうちの他方、外輪1への導電を可能にする。同様に、フィラメント8a及び8bを設けていない導電部8が導電材料で作られる場合、及び/又は導電フィラメント8a及び8bを設けて中央部8cが導電性である場合、リング7は非導電材料とすることができる。リング7が導電性であるか否かに関わらず、リング7(1つ以上であるかに関わらない)は、導電部8及び/又はシール6用の留め具として作用することができる。
【0022】
様々なアイテムは、互いに「留められる(fastened)」、「取り付けられる(attached)」、「固定される(fixed)」、又は「連結される(coupled)」ものとして論じることができる。この固定する/連結することは、永久的に固定する又は取り外し可能に固定するものとすることができる。例えば、2つのオブジェクトを永久的に固定する/連結するのは、2つのオブジェクトを分離することが難しい場合、又は、オブジェクトの一方又は両方を損傷することにつながる場合とすることができる。永久的な固定の例としては、溶解する又は緩むことを意図しない接着剤、又はリベット打ち、圧着、圧力ばめ(force fitting)、溶接等のような機械式固定とすることができる。取り外し可能な固定/連結は、2つのオブジェクト又は交換部品を再び固定/連結することができるように、2つのオブジェクトを引き離すことを意図されることを示すことができる。例えば、取り外し可能な固定/連結は、溶解する又は緩めることができる接着剤を使用する、又は、ねじ、ボルト、ラッチ、フック及びループファスナー等のような機械式固定機構を使用するものとすることができる。取り外し及び連結に必要とされる労力の量に応じて、固定プロセスを永久的とするか取り外し可能とするかを考えることができることが留意され得る。
【0023】
固定方法が取り外し可能であるか、永久的であるかによらず、又は、本開示の例にいずれの方法が適用されるか否かによらず、機械式固定のいくつかの例は、圧着、ステーキング(staking)、リベット打ち、圧締(又は締まりばめ)、ねじ/ボルトを使用すること、フック及びループファスナー、ラッチを使用すること、張力又は圧縮等によって力を加えること、又は、本明細書で述べる軸受組立体等のデバイスにおいて使用することができる他の技術を含むとすることができる。
【0024】
図4A図4B、及び図4Cは、シール6の一端又は両端のリップを示す。図4Aにおいて、シール6の下部端にリップ6aが示される。図4Bにおいて、シール6の上部端にリップ6bが示される。図4Cにおいて、シール6の下部端及びシール6の上部端にリップ6a及びリップ6bがそれぞれ示される。リップ6a及び/又はリップ6bは可撓性リップとすることができる。シール6は可撓性シールとすることもできる。本開示の様々な態様において、シール6は、リップ6a、6bと同様の材料又は異なる材料で作ることができる。
【0025】
したがって、本開示が、軸受組立体であって、例えば、内輪軌道を有する内輪と、外輪軌道を有する外輪と、内輪軌道と外輪軌道との間で転動又は回転する転動体とを備える、軸受組立体を提供することが分かる。転動体は、特定の時間において軸受組立体にかかる荷重に応じて、異なる時間において内輪軌道と外輪軌道のうちの一方又は両方に接触することができる。軸受組立体は、第1の端部と第2の端部とを有する少なくとも1つの導電部を備えることもでき、第1の端部は内輪に電気接触し、第2の端部は外輪に電気接触するように構成される。
【0026】
軸受組立体は、第1の端部に連結される第1の導電ブラシフィラメントと、第2の端部に連結される第2の導電ブラシフィラメントとを備えることができ、第1の端部は、第1の導電ブラシフィラメントを介して電気的に内輪と接触し、第2の端部は、第2の導電ブラシフィラメントを介して電気的に外輪と接触するように構成される。「フィラメント」は説明の容易さのために使用されるが、本開示の「フィラメント」が単一のフィラメント又は複数のフィラメントを指すことができることが理解されるべきである。
【0027】
第1の導電ブラシフィラメントは、第1の端部に取り外し可能に連結され、第2の導電ブラシフィラメントは、第2の端部に取り外し可能に連結することができる。例えば、第1の端部又は第2の端部に外嵌するキャップによってブラシフィラメントを保持することができる。または、保持体が第1の端部又は第2の端部の穴に内嵌するように保持体によってブラシフィラメントを保持することができる。または、保持体を設けずにブラシフィラメントを穴に内嵌することができる。したがって、ブラシフィラメントを導電部に取り外し可能に連結させることができることが分かる。しかし、本開示の様々な態様では、ブラシフィラメントを導電部に恒久的に連結することもできる。
【0028】
少なくとも1つの導電部は、導電ブラシフィラメントを備え、導電ブラシフィラメントの第1の端部は導電部の第1の端部であり、導電ブラシフィラメントの第2の端部は導電部の第2の端部である。少なくとも1つの導電部は、内輪及び外輪と直接的に接触することができる。
【0029】
少なくとも1つの導電部はシールとすることができる。シールは、転動体に面する表面と、転動体から見て外方に面する表面とを有する。転動体から見て外方に面する導電部の第1の表面の近傍の部分は、導電ブラシフィラメントを備える。シールは、内輪又は外輪のうちの一方と接触するシーリングリップを備えることができ、シーリングリップは、柔軟なシーリングリップとすることができる。
【0030】
軸受組立体は、一般的に、内輪又は外輪のうちの一方が静止し、内輪又は外輪のうちの他方が運動することから、シーリングリップは、動くリングと接触することができ、シールの他端部は、対応するリングに固定することができる。しかし、本開示のいくつかの態様では、シールの両端部を非固定とすることができる。
【0031】
導電部は転動体の両側に第1の導電部と第2の導電部とを有することができる、又は導電部は転動体のうちの1つの一方側のみに設けることができる。本開示のいくつかの態様では、導電部は内輪と外輪との間に設けられる導電リングとすることができ、導電リングは連続的なものとすることができる。本開示の他の態様では、導電部は、内輪を外輪に接続する離散的部品とすることができる。離散的部品としては、説明の便宜上、支柱等が考えられるが、本開示の様々な態様では、円弧を含む異なる形状を有することができる。なお、内輪及び外輪が互いに対して動くことから、導電部は、一端が内輪又は外輪のうちの一方に固定され、他端が内輪又は外輪の他方に固定されないようにすることができることにも留意されたい。
【0032】
本開示の様々な態様は、内輪軌道を有する内輪と、外輪軌道を有する外輪と、内輪軌道と外輪軌道との間で転動又は回転する転動体とを備える軸受組立体を含むこともできる。軸受組立体は、少なくとも1つの留め具と、少なくとも1つの留め具に固定され、第1の端部及び第2の端部を有する導電ブラシフィラメントとを備えることもできる。少なくとも1つの留め具は、内輪又は外輪のいずれとも直接的に接触せず、導電ブラシフィラメントの第1の端部は直接的かつ電気的に内輪と接触し、導電ブラシフィラメントの第2の端部は直接的かつ電気的に外輪と接触するように構成される。
【0033】
導電ブラシフィラメントは少なくとも1つの留め具に接着剤により固定することができる、或いは導電ブラシフィラメントは少なくとも1つの留め具に機械的に固定することができる。軸受組立体は、転動体と、少なくとも1つの留め具及び導電ブラシフィラメントのうちの一方又は両方との間にシールを備えることもできる。少なくとも1つの留め具は、導電ブラシフィラメントとシールとの間に設けられる第1の留め具とすることができ、シールは、転動体のうちの少なくとも1つに面する第1の留め具の側部に連結される。シールは、内輪又は外輪のうちの一方と接触するシーリングリップを有することができ、ここでシーリングリップは柔軟なものとすることができる。シールは、内輪及び外輪の両方に直接的に触れることができる。
【0034】
シール、少なくとも1つの留め具、及び導電ブラシフィラメントは、合わせて連結することができる。本開示の様々な態様では、シール、少なくとも1つの留め具、及び導電ブラシフィラメントのうちの隣接する2つ以上を取り外し可能に連結するようにすることができる。
【0035】
少なくとも1つの留め具は、転動体のうちの少なくとも1つに面する導電ブラシフィラメントの第1の側部に連結される第1の留め具と、転動体のうちの少なくとも1つから見て外方に面する導電ブラシフィラメントの第2の側部に連結される第2の留め具とを含むことができる。第1の留め具及び第2の留め具のうちの一方又は両方は、導電ブラシフィラメントに取り外し可能に連結することができる。
【0036】
導電ブラシフィラメントは、転動体の両側に第1の導電ブラシフィラメントと第2の導電ブラシフィラメントとを備えることができる。または、導電ブラシフィラメントは、転動体のうちの1つの一方側のみに設けることができる。
【0037】
導電ブラシフィラメントは、導電リングである。導電ブラシフィラメントは、環状ではない少なくとも1つの離散的部品を備える。前述のものと同様に、導電ブラシフィラメントは転動体の両側に第1の導電ブラシフィラメントと第2の導電ブラシフィラメントとを有することができる、又は導電ブラシフィラメントは転動体の一方側のみに設けることができる。本開示のいくつかの態様では、導電ブラシフィラメントは、内輪と外輪との間に設けられる導電リングとすることができ、導電リングは連続的なものとすることができる。本開示の他の態様では、導電ブラシフィラメントは、内輪を外輪に接続する離散的部品とすることができる。離散的部品としては、説明の便宜上、支柱等が考えられるが、本開示の様々な態様では、円弧を含む異なる形状を有することができる。なお、内輪及び外輪は互いに動くことから、導電ブラシフィラメントは、一端が内輪又は外輪のうちの一方に固定され、他端が固定されないようにすることができることにも留意されたい。
【0038】
本開示は、内輪と外輪とを備える、放電による損傷から保護される転がり軸受組立体を提供することもできる。内輪は内輪軌道を有し、外輪は外輪軌道を有する。複数の転動体を内輪軌道及び外輪軌道上で転動するように支持することができる。シールは、外輪と内輪との間で径方向に延在することができ、シールは、内輪又は外輪のうちの一方に固定される固定シール端部と、内輪又は外輪のうちの他方と接触する他端部とを有し、他端部は柔軟なシーリングリップとすることができる。
【0039】
転がり軸受組立体は、少なくとも1つの導電リングを備えることができ、シールは、少なくとも1つの導電リングに一体に接続することができる。少なくとも1つの導電リングは、導電ブラシフィラメントを少なくとも1つの端部に固定することができる。導電ブラシフィラメントは、内輪及び外輪を導電リングに電気的に接続することができる。
【0040】
本明細書で使用する「及び/又は」は、「及び/又は」によって連結されるリストにおける項目のうちの任意の1つ以上の項目を意味する。一例として、「x及び/又はy」は、3つの要素の組{(x),(y),(x,y)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x及び/又はy」は、「x及びyのうちの一方又は両方」を意味する。別の例として、「x、y及び/又はz」は、7つの要素の組{(x),(y),(z),(x,y),(x,z),(y,z),(x,y,z)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x、y及び/又はz」は、「x、y及びzのうちの1つ以上」を意味する。本明細書で使用する「例示的な」という用語は、非限定的な例、事例又は例証としての役割を果たすことを意味する。本明細書で使用する「例えば」という用語は、1つ以上の非限定的な例、事例又は例証のリストを開始する。
【0041】
本方法及び/又はシステムを、或る特定の実施態様を参照して記載してきたが、当業者であれば、本方法及び/又はシステムの範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができること及び均等物に置き換えることができることを理解するであろう。加えて、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の教示に対して特定の状況又は材料を適合させるように多くの改変を行うことができる。したがって、本方法及び/又はシステムは、開示されている特定の実施態様に限定されない。代わりに、本方法及び/又はシステムは、字義通りにでも均等論のもとにおいても、添付の特許請求の範囲内に入る全ての実施態様を含む。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、
軸受組立体において、
内輪軌道を有する内輪と、
外輪軌道を有する外輪と、
前記内輪軌道と前記外輪軌道との間で転動又は回転する転動体と、
第1の端部と第2の端部とを有する少なくとも1つの導電部とを具備し、
前記第1の端部は電気的に前記内輪と接触し、前記第2の端部は、電気的に前記外輪と接触するように構成される軸受組立体である。
第2の態様は、
前記第1の端部に連結される第1の導電ブラシフィラメントと、
前記第2の端部に連結される第2の導電ブラシフィラメントとを具備し、
前記第1の端部は、前記第1の導電ブラシフィラメントを介して電気的に前記内輪と接触し、前記第2の端部は、前記第2の導電ブラシフィラメントを介して電気的に前記外輪と接触するように構成される第1の態様における軸受組立体である。
第3の態様は、
前記第1の導電ブラシフィラメントは前記第1の端部に取り外し可能に連結され、前記第2の導電ブラシフィラメントは前記第2の端部に取り外し可能に連結される第2の態様における軸受組立体である。
第4の態様は、
前記少なくとも1つの導電部は導電ブラシフィラメントを備え、
前記導電ブラシフィラメントの第1の端部は前記導電部の前記第1の端部であり、
前記導電ブラシフィラメントの第2の端部は前記導電部の前記第2の端部である第1の態様における軸受組立体である。
第5の態様は、
前記少なくとも1つの導電部はシールである第1の態様における軸受組立体である。
第6の態様は、
前記シールは、前記内輪と前記外輪の一方と接触するシーリングリップを備える第5の態様における軸受組立体である。
第7の態様は、
前記シーリングリップは柔軟なシーリングリップである第6の態様における軸受組立体である。
第8の態様は、
前記少なくとも1つの導電部は、環状ではない少なくとも1つの離散的部品を備える第1の態様における軸受組立体である。
第9の態様は、
軸受組立体において、
内輪軌道を有する内輪と、
外輪軌道を有する外輪と、
前記内輪軌道と前記外輪軌道との間で転動又は回転する転動体と、
少なくとも1つの留め具と、
前記少なくとも1つの留め具に固定され、第1の端部と第2の端部とを有する、導電ブラシフィラメントとを具備し、
前記少なくとも1つの留め具は前記内輪又は前記外輪のいずれとも直接的に接触せず、
前記第1の端部は直接的かつ電気的に前記内輪と接触し、前記第2の端部は直接的かつ電気的に前記外輪に接触するように構成される軸受組立体である。
第10の態様は、
前記転動体と、前記少なくとも1つの留め具及び前記導電ブラシフィラメントのうちの一方又は両方との間に設けられるシールを備える第9の態様における軸受組立体である。
第11の態様は、
前記シールは、前記内輪又は前記外輪のうちの一方と接触するシーリングリップを備える第10の態様における軸受組立体である。
第12の態様は、
前記シール、前記少なくとも1つの留め具、及び前記導電ブラシフィラメントは1つに結合される第10の態様における軸受組立体である。
第13の態様は、
前記シール、前記少なくとも1つの留め具、及び前記導電ブラシフィラメントのうちの隣接する2つ以上は取り外し可能に1つに結合される第10の態様における軸受組立体である。
第14の態様は、
前記導電ブラシフィラメントは前記転動体のうちの1つの一方側のみに設けられる第9の態様における軸受組立体である。
第15の態様は、
前記導電ブラシフィラメントは導電リングである第9の態様における軸受組立体である。
第16の態様は、
前記導電ブラシフィラメントは環状ではない少なくとも1つの離散的部品を備える第9の態様における軸受組立体である。
第17の態様は、
放電による損傷から保護される転がり軸受組立体であって、
内輪及び外輪であって、前記内輪が内輪軌道を有し、前記外輪が外輪軌道を有する、内輪及び外輪と、
複数の転動体であって、前記複数の転動体は前記内輪軌道及び前記内輪軌道上で転動するように支持される、複数の転動体と、
前記外輪と前記内輪との間で径方向に延在するシールであって、前記シールは、前記内輪又は前記外輪のうちの一方に固定される固定シール端部と、前記内輪又は前記外輪のうちの他方と接触する柔軟なシーリングリップとを有する、シールと、
を備える、転がり軸受組立体である。
第18の態様は、
少なくとも1つの導電リングを備える第17の態様における転がり軸受組立体である。
第19の態様は、
前記シールは前記少なくとも1つの導電リングに一体に接続される第18の態様における転がり軸受組立体である。
第20の態様は、
前記少なくとも1つの導電リングは導電ブラシフィラメントが少なくとも1つの端部に固定される第18の態様における転がり軸受組立体である。
【符号の説明】
【0042】
1 外輪
2 内輪
3 外輪軌道
4 内輪軌道
5 転動体
6 シール
6a リップ
6b リップ
7 導電部
7a 第1のリング
7b 第2のリング
8 導電部
8a 導電フィラメント
8b 導電フィラメント
8c 中央部
9 ブラケット
10 キャップ
100 軸受組立体
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5