IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特許7449278高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング
<>
  • 特許-高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング 図1a
  • 特許-高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング 図1b
  • 特許-高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング 図1c
  • 特許-高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング 図2
  • 特許-高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング 図3a
  • 特許-高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング 図3b
  • 特許-高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング 図4
  • 特許-高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング 図5
  • 特許-高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング 図6
  • 特許-高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング 図7
  • 特許-高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】高い表示フレームレートで幅広集束送信ビームを用いる3D超音波イメージング
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021512777
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019073511
(87)【国際公開番号】W WO2020049012
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】62/728,291
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】グエン マン
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ジャン‐ルック フランソワ‐マリエ
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-342197(JP,A)
【文献】PROVOST, Jean, et al.,3D Ultrafast Ultrasound Imaging In Vivo,Phys.Med.Biol.,IOP Publishing,2014年09月10日,Vol.59,No.19,L1-13
【文献】SANTOS, Pedro, et al.,Diverging Wave Volulmetric Imaging Using Subaperture Beamforming,IEEE TRANSACTIONS ON ULTRASONICS, FERROELECTRICS, AND FREQUENCY CONTROL,米国,IEEE,2016年12月01日,VOL.63, NO.12,pp.2114-2124
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットボリュームの3次元画像を生成する超音波イメージングシステムであって、前記超音波イメージングシステムは、
前記ターゲットボリュームに平面波又は発散波を送信し、前記ターゲットボリュームから戻って来た超音波エコー信号を取得するトランスデューサ素子が方位角方向に等間隔及び仰角方向に等間隔で配置されているトランスデューサ素子の2次元アレイを含む超音波プローブと、
各送信からの前記超音波エコー信号を受信し、前記ターゲットボリュームから戻って来た前記超音波エコー信号を空間ベースで処理する受信器と、
前記受信器に結合され、各送信に応答して生成された画像データを空間ベースで合成する画像データ合成器と、
合成された前記画像データを受信し、ボリューム画像を生成する画像プロセッサと、
前記ボリューム画像を表示するディスプレイと、
を含む、超音波イメージングシステムにおいて、
前記2次元アレイはさらに、送信ビーム位置のグリッドの対角方向における複数のグリッド交点が、前記平面波又は前記発散波の仮想頂点を画定するように、前記2次元アレイの開口部の表面に対して、複数の前記平面波又は前記発散波を複数の異なる角度で送信することを特徴とする、超音波イメージングシステム。
【請求項2】
前記2次元アレイはさらに、前記方位角方向及び前記仰角方向の両方を含む角度において、複数の前記平面波又は前記発散波を送信する、請求項1に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項3】
前記受信器はさらに、ビーム形成によって、受信した前記超音波エコー信号を処理するビームフォーマを含む、請求項1に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項4】
前記超音波プローブはさらに、前記2次元アレイの前記トランスデューサ素子に結合され、前記2次元アレイの前記トランスデューサ素子のパッチによって受信されたエコー信号の部分的なビーム形成を行うマイクロビームフォーマを含む、請求項3に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項5】
前記ビームフォーマはさらに、前記マイクロビームフォーマによって生成された部分的にビーム形成されたエコー信号をビーム形成する、請求項4に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項6】
前記画像データ合成器はさらに、エコー信号を空間ベースで記憶する画像データメモリを含む、請求項3に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項7】
前記受信器はさらに、合成焦点プロセッサを含む、請求項1に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項8】
前記2次元アレイによって取得されたエコー信号を空間ベースで記憶するメモリをさらに含む、請求項7に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項9】
前記合成焦点プロセッサはさらに、前記画像データ合成器を含み、複数の送信からの前記ターゲットボリュームから受信されたエコー信号を空間ベースで結合する、請求項7に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項10】
前記画像プロセッサはさらに、Bモードプロセッサを含む、請求項1に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項11】
前記画像プロセッサはさらに、ドップラープロセッサを含む、請求項1に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項12】
前記画像プロセッサはさらに、3Dデータセットから画像平面の画像データを抽出するマルチプラナーリフォーマッタを含む、請求項1に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項13】
前記画像プロセッサはさらに、3D画像データセットから投影画像を生成するボリュームレンダラを含む、請求項1に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項14】
ターゲットボリュームの3次元画像を生成するための方法であって、前記方法は、
トランスデューサ素子が方位角方向に等間隔及び仰角方向に等間隔で配置されているトランスデューサ素子の2次元アレイを含む超音波プローブを用いて、前記ターゲットボリュームに平面波又は発散波を送信し、前記ターゲットボリュームから戻って来た超音波エコー信号を取得するステップと、
各送信からの前記超音波エコー信号を受信するステップと、
前記ターゲットボリュームから戻って来た前記超音波エコー信号を空間ベースで処理するステップと、
各送信に応答して生成された画像データを空間ベースで合成するステップと、
合成された前記画像データからボリューム画像を生成するステップと、
前記ボリューム画像を表示するステップと、
を含む、方法において、
前記方法は、前記2次元アレイを用いて、送信ビーム位置のグリッドの対角方向における複数のグリッド交点が、前記平面波又は前記発散波の仮想頂点を画定するように、前記2次元アレイの開口部の表面に対して、複数の前記平面波又は前記発散波を複数の異なる角度で送信することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年9月7日に出願された米国仮特許出願第62/728,291号の利益及び優先権を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、超音波イメージングシステムに関し、特に、高い表示フレームレートで幅広集束又は非集束送信ビームを用いる3次元(3D)超音波イメージングに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、2次元(2D)超音波イメージングは、1次元(1D)アレイトランスデューサを用いて平面画像フィールドを走査することによって行われている。ビームが画像フィールドにわたって送信され、各送信に応答してエコーが取得される。受信されたエコーは、遅延和ビームフォーマによってビーム形成されて、画像フィールドにわたるコヒーレントエコー信号の走査線が形成される。1つの画像に対する走査線の典型的な数は、128~196本の走査線である。走査線は、Bモード又はドップラー処理によって処理されて、組織の平面画像及び/又は平面画像フィールド内のフローが形成される。
【0004】
同様の方法を使用して、ボリュメトリック領域の3次元(3D)画像を生成するために、ボリュメトリック画像フィールドを走査することができる。この場合もビームが送信され、エコーが受信されるが、今回は平面だけではなく、全ボリュームにわたって送受信される。したがって、3Dイメージングのためにボリュームを走査するのにはるかに長い時間がかかる。例えば、ボリュームが、上述の平面画像の方位角ディメンジョンと同じ仰角及び方位角ディメンジョンを有する場合、同等の品質の画像は128×128本の走査線、合計で16,000本を超える走査線を必要とする。エコー収集時間は、被験者内の固定の音速によって左右されるので、ボリュメトリック画像全体を取得するのに必要な時間は長く、従って、表示のフレームレートは遅くなる。
【0005】
低速フレームレートの問題に対する解決策は、各々がボリュームのより大きな領域に超音波照射し、そこからエコーを戻すビームを送信することにより、ボリューム全体を走査し、3D画像を生成するための送信ビームが少なくて済むようにすることである。この概念の究極の拡張は、ボリュメトリック領域の大部分又はすべてに超音波照射するビームを送信することである。しかしながら、トレードオフは、送信ビームが、ほとんど集束されないので、画像解像度が悪い点である。この問題を克服するために取ることができる手段は、ボリュメトリック領域を複数回走査し、次いで結果を結合することであり、結合された走査は、画像全体の解像度を向上させる。
【0006】
しかしながら、この手段は、大部分が非集束の送信ビームパターンのサイドローブレベルが一般に非常に高くなるので、顕著な画像クラッタを伴う3D画像を依然としてもたらす可能性がある。高いサイドローブレベルは、最終画像において画像クラッタとして出現する軸外エネルギーを捕捉する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有利には、表示フレームレートを向上させ、また、結果として得られる3D画像における過剰なクラッタの発生を伴わない、ほんのいくつかの幅広ビームでボリュメトリック領域を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の原理によれば、高い表示フレームレートで3D画像を生成する超音波イメージングシステムが説明される。ボリュメトリック領域が、平面波又は発散送信ビームで走査されて、各送信イベントで、ボリュメトリック領域の大部分又は全体が超音波照射される。方位角及び仰角ディメンジョンにおけるクラッタ信号を取得しないように、平面波又は発散ビームは、仰角方向と方位角方向との中間の角度で送信される。それぞれ仰角ディメンジョンと方位角ディメンジョンとの両方の組み合わせである複数の異なる角度で平面波又は発散ビームを送信することにより、結果として得られる合成画像におけるサイドローブクラッタが低減される。
【0009】
別の態様によれば、本発明は、3次元画像を生成するための方法を提供する。一実施形態において、方法は、ターゲットボリュームに平面波又は発散波を送信するステップと、ターゲットボリュームから戻って来た超音波エコー信号を取得するステップとを含む。複数のそのような波が、ターゲットボリュームに異なる角度で送信される。エコー信号は、送信から受信され、次いで、エコー信号は空間ベースで処理される。各送信に応答して生成された画像データは、空間ベースで合成されてもよい。合成画像データからボリューム画像が生成される。ボリューム画像が表示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a図1aは、2次元トランスデューサアレイ開口部のサイドローブパターンを示す。
図1b図1bは、2次元トランスデューサアレイ開口部のサイドローブパターンを示す。
図1c図1cは、2次元トランスデューサアレイ開口部のサイドローブパターンを示す。
図2図2は、方位角方向と仰角方向との中間の角度の発散ビームを用いてボリュメトリック領域を走査することによって得られるサイドローブの改善を示す。
図3a図3aは、方位角方向及び仰角方向の両方を含む角度における異なる発散ビーム走査パターンを示す。
図3b図3bは、方位角方向及び仰角方向の両方を含む角度における異なる発散ビーム走査パターンを示す。
図4図4は、図3aの頂点のうちの2つについての発散走査ボリュームを示す。
図5図5は、図3aの発散ビーム走査パターンの使用からもたらされるサイドローブの改善を示す。
図6図6は、図3bの発散ビーム走査パターンの使用からもたらされるサイドローブの改善を示す。
図7図7は、本発明の原理に従って構成された超音波イメージングシステムをブロック図形式で示す。
図8図8は、本発明の原理に従って構成された第2の超音波イメージングシステムをブロック図形式で示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1aは、方位角(Az)及び仰角(El)ディメンジョンに延在する素子の行及び列を有するトランスデューサ素子の2次元アレイ12の開口部の斜視図である。このようなアレイのビームパターンは、図1bに斜視図で示す、その開口部のフーリエ補数である。ビームパターンが示すように、ビームの主要ローブは、素子の列の仰角方向と、素子の行の方位角方向に整列されている。図1cに、これらの主要方向の1つの断面を示す。このプロットは、サイドローブ52の下降パターンが両側にある中央のメインローブ50を示す。所望のメインローブのエネルギーは、かなりの振幅の多くのサイドローブ52によって捕捉されたかなりの量の軸外エネルギーを伴うことが分かる。超音波画像におけるクラッタを低減するためには、これらのサイドローブのレベルを低減することが望ましい。
【0012】
サイドローブレベルは、平面波又は発散ビーム送信の送信角度が方位角又は仰角のいずれでもなく、それらの2つの中間、例えば2つの基準ディメンジョンに対して斜めであるときに低減できる。これにより、結果として得られるビームパターンは、図1bの送信ビームパターンを横切って斜めになる。図2に、この効果を、中心水平面62内に9つの点ターゲット反射体を含む超音波ファントム60を参照して示す。このファントムが、81個の別々の均等に離間された送信ボリューム頂点から9×9シーケンスの発散ビーム、つまり、全体での81個の送信によって走査されると、画像パネル70の左側の超音波画像70aによって示されるように、ファントムの中心方位角面64の画像が形成される。画像中の明るい点は、ファントム内の3つの反射体の中心列であり、サイドローブレベルが高いために、ターゲット間にかなりの量のクラッタを有することが見て取れる。この方位角面のビームプロットは、ビームプロットパネル80の左図80aに示す。図80aは、-30dB付近の中間サイドローブレベルを有するターゲット反射体の3つのピークを示す。超音波画像70b及びビームプロット80bは、ファントムの中心仰角面66における3つのターゲット反射体の画像について同様の結果を示す。
【0013】
しかしながら、アレイ開口部に斜めに整列される画像がファントムの対角面68から形成されると、結果として生じるサイドローブは著しく低くなり、右のビームプロット80cでは-50dB未満のレベルである。その結果、対角面68内の3つの点ターゲットのクラッタレベルは、画像パネル70内の右端の超音波画像70cに示すように、はるかにより低い。
【0014】
図3a及び3bに、図2の実験結果を生成するために使用された送信ビーム位置のグリッド90を示す。図2の結果は、81個の発散ビームのシーケンスを2Dアレイ開口部12から送信することによって得られたものであり、各発散ビームの頂点は、結果として生じる発散ビームが角錐台の形であるように、アレイの表面の後ろにある仮想頂点である。81個の発散ビームは、グリッド90の各水平線と垂直線との交点にそれらの頂点があった。図4に、大きなドットAV1及びAV2によって画定される2つのビームボリュームの形状を示す。1つの発散ビームボリュームの頂点AV1は、図示するように、2Dアレイ開口部12の後ろのグリッド90上にある。この点は、図3aの点AV1が示すように、開口部に対して中心にあり、これにより、発散ビームエネルギーの角錐台が、図4に示すように、開口部に対して対称に位置決めされる。実線92は、角錐ビームボリュームのエッジを示す。中心線が角錐頂点AV1から下方に引かれた場合、それは、2Dアレイ12の中心から、かつ、アレイの表面に垂直に延在することになる。AV2発散ビームの発散ビームエネルギーの角錐は、図4に示すように、グリッドの左後ろの隅に向かって対角線上にあり、結果として、AV2角錐ビームボリュームのエッジを示す破線94から見て取れるように、AV1ビームに対して角度が付けられたビームがもたらされる。したがって、AV2発散ビーム全体は、AV1発散ビームに対して異なる方向及び角度にステアリングされる。AV2角錐の中心線は、ボリュメトリック画像フィールドの中心に向けられるが、それでも、AV1のそれとは異なるアレイ表面の点から、かつ、異なる(非直交)角度で延在する。発散送信ビームのこれらの角度差によって、発散ビーム送信から受け取られるエコーが合成されるときに、結果として得られる画像のサイドローブレベルがより低くなる。
【0015】
図3aでは、グリッド90の対角方向における17個のグリッド交点が、対応する2Dアレイ開口部12から送信される17個の発散平面波の仮想頂点を画定する。図4に示すように、17個の平面波は、開口部の表面に対して17個の異なる角度で送信される。17個のこのような発散平面波ビームが送信され、その結果としてのエコーがアレイによって取得され、ボリュメトリック空間ベースでコヒーレントに結合されると、ファントム60の対応する方位角平面64、仰角平面66、及び対角面68の画像が、図5の画像パネル170に示すように生成される。3つの画像の対応するビームプロットをパネル182に示す。対角面のビームプロット180cは、図に182において丸で囲まれている、-40dB付近まで下がったサイドローブレベルを示す。
【0016】
図3bのグリッド90は、41個の異なる送信角度を有する平面波発散ビームをもたらす、グリッドにわたって均等に分布し、互いに斜め関係にある41個の送信イベントの中間シーケンスを示す。ファントム60がこの走査シーケンスで走査され、同じ3つの基準面64、66、及び68がイメージングされると、画像は、図6の画像パネル270に示すように現れる。41個の異なる送信ボリューム角度を用いると、対角面のサイドローブレベルは、パネル280c内に282に丸で囲まれているように、-50dB付近まで下がり、図2に示す81個の送信イベントシーケンスの結果に近くなっている。
【0017】
次に図7を参照すると、本発明の原理に従って構成された超音波診断イメージングシステムがブロック図形式で示されている。超音波を送信し、エコー情報を受け取るためのトランスデューサ素子の2次元アレイ12が超音波プローブ10内に設けられている。トランスデューサアレイ12は、ビームを仰角及び方位角の両方でステアリングして、3次元で走査可能である。トランスデューサアレイ12は、アレイ素子による信号の送受信を制御するプローブ内のマイクロビームフォーマ14に結合される。マイクロビームフォーマは、米国特許第5,997,479号(Savordら)、第6,013,032号(Savord)、第6,623,432号(Powersら)及び第8,177,718号(Savord)に説明されているように、送信ビームステアリング及びトランスデューサ素子のグループ又は「パッチ」によって受信された信号の少なくとも部分的なビーム形成が可能であるプローブ集積回路である。マイクロビームフォーマは、プローブケーブルによって、送信/受信(T/R)スイッチ16に結合され、このスイッチは、送信と受信とを切り替え、メインビームフォーマ20を高エネルギー送信信号から保護する。マイクロビームフォーマ14の制御の下でのトランスデューサアレイ12からの平面波又は発散超音波ビームの送信は、ユーザインターフェース又は制御パネル38のユーザの操作から入力を受け取る、T/Rスイッチ及びメインビームフォーマ20に結合されたビームフォーマコントローラ18によって導かれる。送信コントローラによって制御される送信特性の中には、送信波形の焦点、数、間隔、形状、振幅、位相、周波数、極性、及びダイバーシティがある。パルス送信の方向に形成されたビームは、トランスデューサアレイから真っ直ぐ前方にステアリングされても、又はより広い扇形視野のためにステアリングされていないビームの両側で異なる角度でステアリングされてもよい。上述の3Dイメージング技術の場合、非集束平面波又は発散ビームが送信に使用される。
【0018】
トランスデューサ素子の連続したグループ(「パッチ」)によって受け取られたエコーは、それらを適切に遅延させた後に、マイクロビームフォーマ14においてそれらを結合することによってビーム形成される。各パッチからマイクロビームフォーマ14によって生成された部分的にビーム形成された信号は、メインビームフォーマ20の形の受信器に結合され、ここで、トランスデューサ素子の個々のパッチからの部分的にビーム形成された信号は、走査されたターゲットボリューム全体からの完全にビーム形成されたコヒーレントエコー信号の受信走査線となるように結合される。好ましくは、ビームフォーマ20は、送信イベント後に受信されるエコーから複数の受信走査線を生成するマルチラインビームフォーマである。例えば、メインビームフォーマ20は、超音波照射されたターゲットボリュームから数百又は数千もの適切にステアリングされ、離間された受信走査線を生成することができる。
【0019】
各平面波又は発散ビーム走査から受信される走査線のコヒーレントエコー信号は、走査合成メモリ22に記憶され、そこで、それらは、ターゲットボリュームの以前の走査から受信されたエコー信号と空間ベースで結合される。各送信ボリュームの受信走査線が、ビームフォーマプログラミングに好都合である、その超音波照射された角錐ボリュームのディメンジョンに対して共通の空間分布にあるとき、異なる走査からの走査線は、事実上、すべて互いに異なる空間角度にあり、交点からのエコーは、空間ベースで結合される。各エコーの飛行時間がボリューム内のその空間位置を決定するので、ターゲットボリューム内の同じx、y、z座標を有するエコーは足し合わされて、走査合成メモリ22の対応するx、y、z記憶位置に記憶される。各異なる走査ボリュームからのエコーが受け取られると、それらは、ターゲットボリュームの同じx、y、z位置から以前に受け取られたエコーデータに追加され、メモリに記憶される。このようにして、以前の例の81個(又は17個、又は41個)のボリューム走査のすべてから受け取られたエコーが、メモリ22内でコヒーレントに合成される。
【0020】
コヒーレントエコー信号は、デジタルフィルタによるフィルタリングや、周波数合成による雑音又はスペックル低減を含む信号プロセッサ26による信号処理を受ける。フィルタリングされたエコー信号はまた、信号プロセッサ26において直交帯域通過フィルタリングを受ける。この動作は、RFエコー信号データの帯域制限、エコー信号データの同相及び直交ペア(I及びQ)の生成、及びデジタルサンプルレートのデシメーションの3つの機能を実行する。信号プロセッサはまた、周波数帯域をより低い又はベースバンド周波数範囲にシフトすることができる。信号プロセッサ26のデジタルフィルタは、例えば、米国特許第5,833,613号(Averkiouら)に開示されているタイプのフィルタとすることができる。
【0021】
合成され処理されたコヒーレントエコー信号は、組織画像など、被験者の中の構造のBモード画像のための信号を生成するBモードプロセッサ30に結合される。Bモードプロセッサは、(I+Q1/2の形でエコー信号振幅を計算することにより、直交復調I及びQ信号成分の振幅(包絡線)検出を行う。直交エコー信号成分はまた、ドップラープロセッサ34に結合される。ドップラープロセッサ34は、画像フィールド内の離散点からのエコー信号のアンサンブルを記憶し、これらは次に、高速フーリエ変換(FFT)プロセッサを用いて画像内の点におけるドップラーシフトを推定するために使用される。アンサンブルが取得される速度が、システムが画像内で正確に測定し、描写することができる動きの速度範囲を決定する。ドップラーシフトは、画像フィールド内の点における動き、例えば、血流及び組織の動きに比例する。カラードップラー画像の場合、血管内の各点における推定ドップラーフロー値がウォールフィルタリングされ、ルックアップテーブルを使用してカラー値に変換される。ウォールフィルタは、調整可能なカットオフ周波数を有し、それよりも上又は下では、流れる血液をイメージングするときの血管壁の低周波数動きといった動きが拒絶される。Bモード画像信号及びドップラーフロー値は、走査ボリュームの平面画像が所望されるときに、3D画像データセットの所望の平面の画像信号を抽出するマルチプラナーリフォーマッタ32に結合される。抽出は、組織及びフロー信号の3Dデータセットのx、y、z座標に基づいて行われ、抽出された信号は、所望の表示形式、例えば、直線表示形式又は扇形表示形式での表示のために形式が整えられる。Bモード画像又はドップラー画像のいずれかが単独で表示されても、又は、2つが解剖学的に位置合わせされて一緒に示されてもよく、その場合、カラードップラーオーバーレイがBモード組織画像の血管内の組織及び血管内の血流を示す。別の表示可能性は、異なるように処理された同じ解剖学的構造の並列画像を表示することである。この表示形式は、画像を比較する場合に便利である。
【0022】
画像データは画像メモリ36に結合され、ここで、画像データは、画像値が取得された空間位置に従ってアドレス指定可能なメモリ位置に記憶される。3D走査からの画像データは、米国特許第6,530,885号(Entrekinら)に説明されているように、3Dデータセットのエコー信号を、所与の基準点から見た投影3D画像に変換するボリュームレンダラ42によってアクセス可能である。ボリュームレンダラ42によって生成された3D画像と、走査ボリュームの平面からマルチプラナーリフォーマッタ32によって生成された2D画像とは、画像ディスプレイ40上に表示するためのさらなる強調、バッファリング、及び一時記憶のために、表示プロセッサ48に結合される。
【0023】
図8に、本発明の超音波イメージングシステムの第2の実装形態をブロック図形式で示す。図8の実装形態において、同じ参照番号を有する構成要素は、図7と同じように機能する。しかしながら、ビームフォーマコントローラ118は、メインシステムビームフォーマを制御する代わりに、今度は、マイクロチャネルメモリ120の形の受信器のアドレス指定を、マイクロビームフォーマの制御に加えて制御する。マイクロチャネルメモリは、2Dアレイトランスデューサの素子のパッチによって生成された信号を受け取り、記憶する3Dデータメモリであり、これらを、走査されたターゲットボリューム内のそれらの位置に対応して記憶する。平面波又は発散ビームの送信から、すべてのエコー信号がターゲットボリュームから受け取られた後、データの3Dボリュームは、合成焦点プロセッサ122によって、以前の送信イベントから受け取られた3Dデータと空間ベースで結合される。すべての平面波又は発散送信イベントから受け取られたエコーのすべてを空間ベースで足し合わせることは、合成集束をもたらし、これによって、ボリューム全体にわたる点における画像データが完全に集束される。合成集束の説明については、例えば、米国特許第4,604,697号(Luthraら)を参照されたい。上記実装形態と同様に、合成焦点プロセッサによるデータの結合は、ターゲットボリュームの複数の平面波又は発散走査からの3Dデータセットの合成を提供する。
【0024】
本発明の実装形態での使用に適した超音波システム、特に、図7及び図8の超音波システムの構成要素構造は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組合せで実装できることに留意されたい。超音波システム及びそのコントローラの様々な実施形態及び/若しくは構成要素、又はその中の構成要素及びコントローラもまた、1つ以上のコンピュータ又はマイクロプロセッサの一部として実装できる。コンピュータ又はプロセッサは、例えばインターネットにアクセスするために、コンピューティングデバイス、入力デバイス、表示ユニット及びインターフェースを含んでもよい。コンピュータ又はプロセッサは、マイクロプロセッサを含んでもよい。マイクロプロセッサは、例えば、教師画像をインポートするためにPACSシステム又はデータネットワークにアクセスするために、通信バスに接続されてもよい。コンピュータ又はプロセッサはまた、メモリを含んでもよい。走査合成メモリ22、画像メモリ36及びマイクロチャネルメモリ120などのメモリデバイスは、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び読み出し専用メモリ(ROM)を含んでもよい。コンピュータ又はプロセッサはさらに、ハードディスクドライブ、又は、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、光ディスクドライブ、ソリッドステートサムドライブなどのリムーバブル記憶ドライブであり得る記憶デバイスを含んでもよい。記憶デバイスはまた、コンピュータプログラム又は他の命令をコンピュータ又はプロセッサにロードするための他の同様の手段であってもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「コンピュータ」、「モジュール」、「プロセッサ」、又は「ワークステーション」には、マイクロコントローラ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、ASIC、論理回路、及び本明細書に説明される機能を実行可能な任意の他の回路若しくはプロセッサを使用するシステムを含む、任意のプロセッサベース又はマイクロプロセッサベースのシステムが含まれ得る。上述の例は、例示的なものにすぎず、したがって、これらの用語の定義及び/又は意味を如何様にも限定することを意図していない。
【0026】
コンピュータ又はプロセッサは、入力データを処理するために、1つ以上の記憶素子に記憶される命令のセットを実行する。記憶素子はまた、所望又は必要に応じて、データ又は他の情報を記憶してもよい。記憶素子は、情報源又は処理マシン内の物理的メモリ素子の形であってもよい。上述の超音波画像の取得、処理、及び表示を制御するものを含む超音波システムの命令のセットは、本発明の様々な実施形態の方法及びプロセスなどの特定の動作を行うように処理マシンとしてコンピュータ又はプロセッサに命令する様々なコマンドを含んでもよい。命令のセットは、ソフトウェアプログラムの形であってもよい。ソフトウェアは、システムソフトウェア又はアプリケーションソフトウェアなどの様々な形であってもよく、また、有形及び非一時的コンピュータ可読媒体として具体化されてもよい。走査合成メモリ及び合成焦点プロセッサの動作は、典型的にはソフトウェアルーチンによって又はその指示下で行われる。さらに、ソフトウェアは、より大きなプログラム内の別個のプログラム又はモジュールの集合、又はプログラムモジュールの一部の形であってもよい。ソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形でのモジュラープログラミングを含んでもよい。処理マシンによる入力データの処理は、オペレータのコマンドに応じたものであっても、前の処理の結果に応じたものであっても、別の処理マシンによる要求に応じたものであってもよい。
【0027】
さらに、以下の請求項の限定は、ミーンズプラスファンクション形式で書かれておらず、当該請求項の限定が更なる構造のない機能の記述が続く「means for」との語句を明示的に使用していない限り、米国特許法第112条第6段落に基づいて解釈されることを意図していない。
図1a
図1b
図1c
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8