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特許7449290光ビーム走査型顕微分光法のための装置と方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】光ビーム走査型顕微分光法のための装置と方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20240306BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20240306BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G02B21/00
G01N21/01 D
G01N21/27 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021532376
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 FR2019053162
(87)【国際公開番号】W WO2020128333
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】1873992
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520356906
【氏名又は名称】オリバ フランス エス.アー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】フロワニュー アンマニュエル
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-019908(JP,A)
【文献】特開2018-151598(JP,A)
【文献】特表2018-531424(JP,A)
【文献】特開2013-156408(JP,A)
【文献】特開2007-163448(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179946(WO,A1)
【文献】特開2017-215546(JP,A)
【文献】特開2015-219502(JP,A)
【文献】特開2010-091809(JP,A)
【文献】国際公開第2018/089865(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
G01N 21/01
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビーム走査型顕微分光装置において、励起光ビーム(10)を発出するようになされた少なくとも1つの光源(1)と、前記顕微分光装置の主光軸(11)に沿って配置された顕微鏡対物レンズ(5)であって、物体焦点面(51)と像焦点面(52)とを有する顕微鏡対物レンズ(5)と、前記励起光ビームを前記ビームの前記光軸と直交する2つの空間方向(X、Y)に沿って移動させるシステム(100)と、を含み、前記顕微鏡対物レンズ(5)と前記励起光ビームを移動させるシステム(100)は、前記励起光ビーム(10)を試料上で移動させるようになされ、及び、前記試料上での前記励起光ビーム(10)の反射、散乱、及び/又は透過により形成される光ビーム(30、70、72)を収集するようになされた光学系(5、15)と、反射、散乱、及び/又は透過により形成される前記光ビーム(30、70、72)を受けるようになされた分光検出系と、を含み、前記励起光ビームを移動させるシステム(100)は、前記励起光ビーム(10)を受け取って、中間焦点面(20)内の集光点(21)に集光させるようになされた第一の集光光学コンポーネント(M1、L1)と、前記中間焦点面(20)と前記顕微鏡対物レンズ(5)との間の前記ビームの光路上に配置された他の集光光学コンポーネント(M3、L3)であって、前記中間焦点面(20)の像を前記物体焦点面(51)内か、又はそれぞれ、前記顕微鏡対物レンズ(5)の前記像焦点面(52)内に形成するようになされた他の集光光学コンポーネント(M3、L3)と、前記第一の集光光学コンポーネント(M1、L1)と前記中間焦点面(20)との間の前記励起光ビームの前記光路上に配置された単独の走査ミラー(M2)と、を含み、前記走査ミラー(M2)は平坦であり、直交する2つの回転軸の周囲で回転可能なステージ上に取り付けられ、前記2つの回転軸は前記走査ミラー(M2)の平面内にあり、前記走査ミラー(M2)は、前記集光点(21)を前記中間焦点面(20)内で直交する2つの方向に沿って移動させて、前記集光点の像を前記物体焦点面(51)内か、又はそれぞれ、前記顕微鏡対物レンズ(5)の前記像焦点面(52)内で直交する2つの方向に沿って移動させるようになされることを特徴とする、光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項2】
前記第一の集光光学コンポーネント(M1、L1)はトーリックミラーである、請求項1に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項3】
前記トーリックミラー(M1)は、前記中間焦点面(20)内の幾何光学収差を低減させるようになされる、請求項2に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項4】
前記第一の集光光学コンポーネント(M1、L1)は少なくとも1つのレンズを含む、請求項1に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項5】
前記第一の集光光学コンポーネント(M1、L1)は、前記第一の集光光学コンポーネント(M1、L1)と前記顕微鏡対物レンズ(5)との間の距離を調整するようになされるガイドレール(31)上に取り付けられる、請求項1~4の何れか1項に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項6】
前記他方の集光光学コンポーネント(M3、L3)は球面ミラー、トーリックミラー、又はレンズである、請求項1~5の何れか1項に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項7】
前記他方の集光光学コンポーネント(M3、L3)は、前記他方の集光光学コンポーネント(M3、L3)と前記顕微鏡対物レンズ(5)との間の距離を調整するようになされた他のガイドレール(33)上に取り付けられる、請求項1~6の何れか1項に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項8】
前記走査ミラー(M2)は、15度以下の入射角の前記励起光ビーム(10)を受け取るように配置される、請求項1~7の何れか1項に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項9】
第一の平坦偏向ミラー(M0)及び/又は他の平坦偏向ミラー(M4)をさらに含み、前記第一の平坦偏向ミラー(M0)は前記第一の集光光学コンポーネント(M1、L1)の上流に配置され、及び/又はそれぞれ、前記他方の平坦偏向ミラー(M4)は前記他方の集光光学コンポーネント(M3、L3)と前記顕微鏡対物レンズ(5)との間に配置される、請求項1~8の何れか1項に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項10】
前記回転可能ステージは、圧電又はボイスコイル型の2回転軸アクチュエータ(25)を含む、請求項1~9の何れか1項に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの光源(1)は、レーザ源及び/又は発光ダイオード型の1つ又は複数の光源を含む、請求項1~10の何れか1項に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項12】
前記第一の集光光学コンポーネント(M1、L1)の上流に配置された共焦点開口(43)を含み、前記第一の集光光学コンポーネント(M1、L1)に入射する前記励起光ビーム(10)はコリメートされる、請求項1~11の何れか1項に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項13】
前記分光検出系は、ラマン分光計、コヒーレントアンチストークスラマン分光計、蛍光分光計、フォトルミネッセンス分光計、カソードルミネッセンス分光計、ハイパスペクトルカメラ、スペクトルフィルタ、又はチューナブルバンドパスフィルタを含む、請求項1~12の何れか1項に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項14】
前記顕微鏡対物レンズは全反射対物レンズであり、前記他方の集光光学コンポーネント(M3、L3)は、前記全反射対物レンズの前記物体焦点面内に前記中間焦点面(20)の像を形成し、コリメートされた前記励起光ビームを前記像焦点面(52)内で角度移動させて、前記試料上の全反射光ビームを収集するようになされる、請求項12の何れか1項に記載の光ビーム走査型顕微分光装置。
【請求項15】
光ビーム走査型顕微分光測定方法において、光源によって励起光ビーム(10)を発出するステップと、前記励起光ビームを第一の集光光学コンポーネント(M1、L1)に向かって案内し、前記励起光ビームを単独の平坦走査ミラー(M2)上で反射させて、前記走査ミラー(M2)上の前記励起光ビームの反射後、前記励起光ビーム(10)を中間焦点面(20)内の集光点(21)に集光するようにするステップと、前記励起光ビームを他の集光光学コンポーネント(M3、L3)に、その後、顕微鏡対物レンズ(5)に向かって案内して、前記中間焦点面(20)の像を物体焦点面(51)内か、又はそれぞれ、前記顕微鏡対物レンズ(5)の像焦点面(52)内に形成するようにするステップと、前記走査ミラー(M2)を直交する2つの回転軸の周囲で傾け、前記集光点(21)を前記中間焦点面(20)内で2つの直交方向に沿って移動させて、前記集光点の像を前記物体焦点面(51)内か、又はそれぞれ、前記顕微鏡対物レンズ(5)の前記像焦点面(52)内で2つの直交方向に沿って移動させるステップと、前記励起光ビームの反射、散乱、及び/又は透過により形成される光ビーム(30、70、72)を収集するステップと、反射、散乱、及び/又は透過により形成された前記光ビーム(30、70、72)を分光検出系の上で受け取るステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、励起光ビームが顕微鏡対物レンズを通じて試料上に位置付けられ、又は移動され、試料上の散乱及び/又は反射によって形成される光ビームが収集されて、分光解析される顕微分光装置及び方法の分野に関する。
【0002】
本発明はより詳しくは、レーザビーム走査型ラマン顕微分光解析装置及び方法に関する。それはまた、全反射照明蛍光顕微鏡検査装置及び方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
特に文献、欧州特許第1983332A号明細書から、ビーム走査により試料を検査するための分光イメージング方法が知られている。より正確には、文献、欧州特許第1983332A号明細書には、共焦点顕微鏡の鏡筒内に、顕微鏡対物レンズとラマン分光計のインジェクション-リジェクションフィルタとの間に挿入されるような方法で設置される走査装置が記載されている。この走査装置は、レーザビームの経路上に直列に配置された2つのガルバノミラーを含む。2つのガルバノミラーは、相互に横切る回転軸を有し、試料の表面上でレーザビームを直交方向に角度移動させる。2ミラー光学系により、励起レーザビームを試料表面の異なる地点にそれを位置付けるような方法で角度移動させることが可能となる。光が逆に戻ることにより、この2ミラー光学系では、ラマン後方散乱ビームを収集して、それをラマン分光計を含む検出系に向けて透過させることができる。この2ガルバノミラー系の利点は、レーザ源と検出系が固定されたままであることである。この装置により、試料表面の一部の画像を、約10分以内に約50×50ポイントの分解能で、ラマン分光法によって取得することが可能となる。
【0004】
他の特許文献にはビーム走査型顕微鏡検査装置が記載されている(例えば、国際出願第2010/069987号パンフレット、米国特許出願第2005/128476号明細書、又は特開第2001 091848号公報を参照されたい)。
【0005】
文献、国際公開第2015/159035 A1号パンフレットには、光のビームの光路上の光源と顕微鏡対物レンズとの間に直列に配置された少なくとも1つの第一のミラーと1つの第二のミラーを含む、他の光ビーム走査型又は光ビーム角度移動顕微鏡装置及び方法が記載されており、第一のミラーは第一の所定の回転角度に応じて傾けられ、第二のミラーは第二の回転角度に応じて傾けられて、光ビームの軸を顕微鏡対物レンズ瞳の中心の周囲で旋回させる。このシステムにより、ビネッティング効果を生じさせずに、試料上のビーム走査面積を増大させることができる。光が逆に戻ることにより、このシステムではかなりのラマン散乱光の流れを収集することが可能である。しかしながら、このシステムでは、直列に配置される第一のミラー及び第二のミラーの傾きを同期させる必要があり、比較的高額である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つは、走査系が単純且つ安価でありながら、試料上の空間的及び/又は角度的に広い面積の走査を可能にするような、励起レーザビーム移動又は走査型顕微分光装置及び方法を提案することである。
【0007】
本発明の他の目的は、測定値の空間分解能又は測定値の品質を変更せずに、測定領域を増大させることである。
【0008】
本発明の他の目的は、ラマン又は蛍光顕微分光測定の質を向上させることである。
【0009】
本発明の他の目的は、試料の特定の点において、又は試料のある面積を走査することによって取得されるラマン又は蛍光顕微分光測定値の、取得持続時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
先行技術の前述の欠点を解消するために、本発明は光ビーム走査型顕微分光装置を提案し、これは、励起光ビームを発出するようになされた少なくとも1つの光源と、顕微分光装置の主光軸に沿って配置された顕微鏡対物レンズであって、物体焦点面と像焦点面とを有する顕微鏡対物レンズと、励起光ビームをビームの光軸と直交する2つの空間方向(X、Y)に沿って移動させるシステムと、を含み、顕微鏡対物レンズと移動システムは、励起光ビームを試料上で移動させるようになされ、及び、試料上での励起光ビームの反射、散乱、及び/又は透過により形成される光ビームを収集するようになされた光学系と、反射、散乱、及び/又は透過により形成される光ビームを受けるようになされた分光検出系と、を含む。
【0011】
より詳しくは、本発明によれば、励起光ビームを受け取って、中間焦点面内の集光点に集光するようになされた第一の集光光学コンポーネントと、中間焦点面と顕微鏡対物レンズとの間のビームの光路上に配置された他の集光光学コンポーネントであって、中間焦点面の像を物体焦点面内か、又はそれぞれ、顕微鏡対物レンズの像焦点面内に形成するようになされた他の集光光学コンポーネントと、第一の集光光学コンポーネントと中間焦点面との間の励起光ビームの光路上に配置された単独の走査ミラーと、を含む励起光ビーム移動システムが提案され、走査ミラーは平坦であり、直交する2つの回転軸の周囲で回転可能なステージ上に取り付けられ、2つの回転軸は走査ミラーの平面内にあり、走査ミラーは、集光点を中間焦点面内で直交する2つの方向に沿って移動させて、集光点の像を物体焦点面内か、又はそれぞれ、顕微鏡対物レンズの像焦点面内で直交する2つの方向に沿って移動させるようになされる。
【0012】
本発明による光ビーム走査型顕微分光装置のその他の非限定的で有利な特徴は以下のとおりであり、個別にも、又は技術的に可能なあらゆる組合せとしても享受される:
【0013】
- 第一の集光光学コンポーネントはトーリックミラーである。
【0014】
- 第一のトーリックミラー集光光学コンポーネントは、中間焦点面内の幾何光学収差を低減させるようになされる。
【0015】
- 第一の集光光学コンポーネントは少なくとも1つのレンズを含む。
【0016】
- 第一の集光光学コンポーネントは、第一の集光光学コンポーネントと顕微鏡対物レンズとの間の距離を調整するようになされるガイドレール上に取り付けられる。
【0017】
- 他方の集光光学コンポーネントは球面ミラー、トーリックミラー、又はレンズである。
【0018】
- 他方の集光光学コンポーネントは、他方の集光光学コンポーネントと顕微鏡対物レンズとの間の距離を調整するようになされた他のガイドレール上に取り付けられる。
【0019】
- 走査ミラーは、15度以下の入射角の励起光ビームを受け取るように配置される。
【0020】
- 装置は、第一の平坦偏向ミラー及び/又は他の平坦反射ミラーをさらに含み、第一の平坦反射ミラーは第一の集光光学コンポーネントの上流に配置され、及び/又はそれぞれ、他方の平坦反射ミラーは他方の集光光学コンポーネントと顕微鏡対物レンズとの間に配置される。
【0021】
- 回転可能ステージは、圧電又はボイスコイル型の2回転軸アクチュエータを含む。
【0022】
- 前記少なくとも1つの光源は、レーザ源及び/又は発光ダイオード型の1つ又は複数の光源を含む。
【0023】
- 顕微分光装置は、第一の集光光学コンポーネントの上流に配置された共焦点開口を含み、第一の集光光学コンポーネントに入射する励起光ビームはコリメートされる。
【0024】
- 分光検出系は、ラマン分光計、コヒーレントアンチストークスラマン分光計、蛍光分光計、フォトルミネッセンス分光計、カソードルミネッセンス分光計、ハイパスペクトルカメラ、スペクトルフィルタ、又はチューナブルバンドパスフィルタを含む。
【0025】
- 分光検出系は、試料上の励起光ビームの移動に応じて、反射、散乱、及び/又は透過により形成された光ビームを測定し、分析するようになされる。
【0026】
- 顕微鏡対物レンズは全反射対物レンズであり、他方の集光光学コンポーネントは、全反射対物レンズの物体焦点面内に中間焦点面の像を形成し、コリメート励起光ビームを画像焦点面内で角度移動させて、試料上の全反射光ビームを収集するようになされる。
【0027】
本発明はまた、光ビーム顕微分光測定方法も提案し、これは、光源によって励起光ビームを発出するステップと、励起光ビームを第一の集光光学コンポーネントに向かって案内し、励起光ビームを単独の平坦走査ミラー上で反射させて、走査ミラー上の励起光ビームの反射後、励起光ビームを中間焦点面内の集光点に集光するようにするステップと、励起光ビームを他の集光光学コンポーネントに、その後、顕微鏡対物レンズに向かって案内して、中間焦点面の像を物体焦点面内か、又はそれぞれ、顕微鏡対物レンズの像焦点面内に形成するようにするステップと、走査ミラーを直交する2つの回転軸の周囲で傾け、集光点を中間焦点面内で2つの直交方向に沿って移動させて、集光点の像を物体焦点面内か、又はそれぞれ、顕微鏡対物レンズの像焦点面内で2つの直交方向に沿って移動させ、顕微鏡対物レンズの像面内で、励起光ビームを特定の点に、又はそれぞれ、特定の入射角で形成するステップと、励起光ビームの反射、散乱、及び/又は透過により形成される光ビームを収集するステップと、反射、散乱、及び/又は透過により形成された光ビームを分光検出系の上で受け取るステップと、を含む。
【0028】
本発明による励起光ビーム移動システムと方法によって、励起光ビームを顕微鏡対物レンズの前焦点面内に位置付け、及び/又は前焦点面内の励起光ビームの位置若しくは傾きを走査することが可能となる。移動システムは、1つの同じ走査ミラーに基づく。このシステムは、直列に配置された少なくとも2つの走査ミラーに基づく先行技術のシステムより単純で、高速で、安価である。さらに、この移動システムは、ビーム走査中のビームビネッティングの問題を解決するための代替的な解決策を提供する。
【0029】
本発明のシステムと方法は、反射、透過、後方又は前方散乱による分光測定と両立する。
【0030】
勿論、本発明の各種の特徴、代替案、及び実施形態は、これらが相互に矛盾せず、又は相互に排他的でないかぎり、様々な組合せによって相互に関連付けることができる。
【0031】
非限定的な例として示される添付の図面に関する以下の説明によって、本発明が何からなるか、及びそれをどのように実施できるかをよく理解できるであろう。さらに、本発明の他の各種の特徴は、本発明の非限定的な実施形態を示す下記のような図面に関する付属の説明文から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第一の実施形態によるビーム走査システムを概略的に示す。
図2】直交する2つの回転軸の周囲で回転可能なステージ上に取り付けられた平坦ミラーを概略的に示す。
図3】顕微鏡対物レンズの像焦点面を走査するビームの例を示す。
図4】顕微鏡対物レンズの物体焦点面を走査するビームの他の例を示す。
図5】ビーム走査システムが透過光測定に使用される第一の実施形態の代替案を示す。
図6】ビーム走査システムを透過光分光測定のための分光計と組み合わせた第一の実施形態の他の代替案を示す。
図7】ビーム走査システムを透過光測定のための2次元センサと組み合わせた第一の実施形態のまた別の代替案を示す。
図8】ビーム走査システムが入射ビームと透過ビームの両方で使用される第一の実施形態のまた別の代替案を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
これらの図中、各種の代替案に共通する構造的及び/又は機能的要素は、同じ参照番号で示すことができる。
【0034】
図1において、ビーム走査系100が示されており、これは光源1と顕微鏡対物レンズ5との間に挿入されることになる。
【0035】
(XYZ)正規直交参照系が示されている。図2の平面は(YZ)平面内にある。
【0036】
非限定的な例として、顕微鏡は共焦点型であり、共焦点開口43を含む。共焦点開口43は、顕微鏡対物レンズ5の焦点面との共役面上に配置される。例えば、共焦点開口43は、レンズ42の集光点における平面内に配置される。
【0037】
走査系は、ここでは、第一の偏向ミラーM0、第一の集光ミラーM1、走査ミラーM2、第二の集光ミラーM3、及び第二の偏向ミラーM4を含む。
【0038】
偏向ミラーM0及びM4は平坦ミラーである。偏向ミラーM0及びM4は単に励起光ビームを折り曲げる役割のみを果たし、顕微鏡の主光軸11に沿った励起光ビーム10と顕微鏡対物レンズ5との間の光学的アラインメントは保持される。
【0039】
有利な点として、図1のビーム走査系100は、顕微鏡の、ダイアフラム2と顕微鏡対物レンズ5との間の共焦点部に挿入し、及び/又はそこから取り外すことのできる任意選択的モジュールを形成する。励起光ビーム10はコリメートされ、Z軸に平行な方向に沿って伝播する。特に有利な点として、顕微鏡の共焦点部の中に、又はそこからこの任意選択的モジュールを挿入し、又は除去しても、共焦点顕微鏡の光学的調整は変化しない。任意選択的モジュールは必要に応じて挿入又は除去することができ、その際、光源1、共焦点開口43、及び対物レンズ5の光学的アラインメントは変化しない。
【0040】
第一の偏向ミラーM0は、コリメートされた励起光ビーム10を受け取り、それを第一の集光ミラーM1に向かって反射させる。例えば、第一の偏向ミラーM0は、少なくとも15mm×15mmの大きさと6mmの厚さを有する。
【0041】
有利な点として、第一の偏向ミラーM0は、ミラーM0の前面の調整ねじへのアクセスを有する従来の点線面支持手段上に取り付けられる。微調整のために、2つの回転軸、例えばX軸に平行な回転軸とX軸と直交するもう一方について+/-1度の調整範囲が十分である。有利な点として、第一の偏向ミラーM0は偏向ミラーM0に対する法線に沿って+/-1mmの奥行きにわたり位置調整可能である。ミラーM0に対する法線に関する励起光ビーム10の入射角は好ましくは、51度~57度の範囲で、例えば約54度の値まで調整可能である。偏向ミラーM0で反射した後、励起光ビーム10は光軸110に沿って伝搬する。
【0042】
第一の集光ミラーM1は好ましくは、トーリック又はトロイダルミラーである。第一の集光ミラーM1は、Z軸の周囲の第一の曲率半径r1とX軸の周囲の第二の曲率半径r2を有する。第一の集光ミラーM1は例えば長方形であり、少なくとも15mm×10mmの大きさと6mmの厚さを有する。第一の集光ミラーM1に対する法線に関する励起光ビーム10の入射角は約11度である。第一の集光ミラーM1は、励起光ビーム10を光軸と直交するように配置された中間焦点面20内の集光点に集光させる効果を有する。さらに、第一の集光ミラーM1のトーリック形状は、ミラーM1及びM3により焦点面6内に誘導される球面収差を補正するように計算され、製作される。
【0043】
有利な点として、第一の集光ミラーM1は、ミラーM1の後方の調整ねじへのアクセスを有する従来の点線面支持手段上に取り付けられる。微調整のために、2つの回転軸、例えばX軸に平行な回転軸とX軸と直交するもう一方について+/-1度の調整範囲が十分である。有利な点として、ミラーに対する法線に沿った+/-1.5mmの奥行きの微調整も可能である。さらに、ミラーM1の回転は、ミラーM1への励起光ビームの入射角を光軸110に関して約8度~14度の範囲に含まれる値に粗調整及び/又は微調整するために利用可能であることが望ましい。
【0044】
代替案によれば、第一の集光ミラーM1は、光軸11に垂直な軸(YZ-平面内)にしたがって、換言すればY軸に沿って向き付けられた並進ガイドレール31に取り付けられる。このガイドレール31上の第一の集光ミラーM1の移動により、第一の集光ミラーM1と顕微鏡の主光軸11との間の距離を調整することが可能となる。非限定的な例として、ミラーM1の奥行きの粗調整により、第一の集光ミラーM1の位置を顕微鏡の光軸11から約50mmの距離に(-17mm/+33mm)調整することが可能となる。
【0045】
1つの走査ミラーM2は、励起光ビーム10の光路上の第一の集光ミラーM1と中間焦点面20との間に配置される。
【0046】
したがって、第一の集光ミラーM1はコリメートされた励起光ビーム10を受け取り、励起光ビーム10を中間焦点面20内の集光点21に集光させながら、それを走査ミラーM2に向かって反射させる。
【0047】
図2は、直交する2つの回転軸325、326を有するステージ32上に取り付けられた走査ミラーM2の例を示す。走査ミラーM2は平坦ミラーである。2つの回転軸325、326は、走査ミラーM2の平面内にある。例えば、一方の回転軸325はX軸に平行であり、他方の回転軸326はZ軸にほぼ水平である。アクチュエータ321、322、323、324により、回転軸325及び/又は326の周囲でミラーM2を回転させることが可能である。好ましい実施形態によれば、アクチュエータ321、322、323、324は圧電又はボイスコイル型である。
【0048】
励起光ビーム10の走査ミラーM2への入射角は、好ましくは15度以下、例えば約8度である。
【0049】
X軸に平行な回転軸325の周囲でのミラーM2の回転は、中間焦点面20内の集光点21をX軸と直交する他の集光点22、23、24、又は25に向かって移動させる効果を有する。第一近似で、集光点21、22、23、24、及び25が中間焦点面20内に位置付けられる。同様に、Z軸に平行な回転軸326の周囲でのミラーM2の回転は、中間焦点面20内の集光点21をZ軸と直交するように移動させる効果を有する。このようにして、走査ミラーM2により、中間焦点面20内の集光点21を中間焦点面と直交する2つの方向に沿って移動させることが可能となる。第一の集光ミラーM1は、ミラーM1及びM3により誘導される球面収差を補正するようになされる。
【0050】
図1に示される例において、ミラーM2が光ビームを集光点21に集光すると、入射光ビームは光軸111に沿って伝播する。同様に、ミラーM2が光ビームをそれぞれ集光点22、23、24、又は25に集光すると、入射光ビームは、それぞれ光軸112、113、114、及び115に沿って伝播する。
【0051】
ミラーM2の走査中の回転振幅は、各回転軸の周囲で約6度である。
【0052】
第二の集光ミラーM3は好ましくは球面ミラーである。図1に示される例において、第二の集光ミラーM3は300mmの曲率半径を有する。第二の集光ミラーM3の位置と大きさは、顕微鏡対物レンズ5の開口及びミラーM2の走査範囲に応じて、ミラーM3の縁部の光ビームのビネッティング効果を限定するような方法で特定される。第二の集光ミラーM3に対する法線に関する励起光ビーム10の入射角は、約6度である。第二の集光ミラーM3により、走査ミラーM2の走査中、中間焦点面内の集光点の位置に関係なく、走査ミラーM2により反射された入射光ビームを収集することが可能となる。第二の集光ミラーM3は、入射光ビームを第二の偏向ミラーM4及び/又は顕微鏡対物レンズ5に向かって反射させる。代替案として、第二の集光ミラーM3はトーリックミラーである。この場合、ミラーM1は光学収差の一部を補正し、第二の集光ミラーM3は、光学収差の残りの部分を補正するようになされる。
【0053】
有利な点として、第二の集光ミラーM3は、ミラーM3の後方の調整ねじへのアクセスを有する従来の点線面支持手段上に取り付けられる。微調整のために、2つの回転軸、例えばX軸に平行な回転軸とX軸と直交するもう一方について+/-1度の調整範囲が十分である。有利な点として、+/-1.5mmの奥行きの微調整も可能である。さらに、ミラーM3の回転は、ミラーM3への励起光ビームの入射角を光軸110に関して約5.75度~7.5度の範囲に含まれる値に粗調整及び/又は微調整するために利用可能であることが望ましい。
【0054】
代替案によれば、第二の集光ミラーM3は並進ガイドレール33上に取り付けられる。このガイドレール33上の第二の集光ミラーM3の移動によって、第二の集光ミラーM3と顕微鏡の主光軸11との間の距離を調整することが可能となる。非限定的な例として、ミラーM3の奥行きの粗調整により、第二の集光ミラーM3の位置を顕微鏡の主光軸11から約50mmの距離に調整することが可能となる。
【0055】
第二の集光ミラーM3は、中間焦点面の集光点21、22、23、24、又は25に集光された入射ビームを受け取り、この光ビームを第二の偏向ミラーM4に向かって、又は偏向ミラーM4が使用されていない場合は直接顕微鏡対物レンズ5に向かって反射させる。
【0056】
第二の集光ミラーM3によって、走査ミラーM2の像を顕微鏡対物レンズ5の瞳に戻すことができる。第二の集光ミラーM3はしたがって、走査ミラーM2の向きが変化したときの顕微鏡対物レンズ5によるビネッティング効果を限定する。
【0057】
図1に示される例において、第二の偏向ミラーM4は励起光ビームを受け取り、これを顕微鏡対物レンズ5に向かって反射させる。例えば、第二の偏向ミラーM4は、30mm×45mmの長方形の形状と6mmの厚さを有する。
【0058】
有利な点として、第二の偏向ミラーM4は、ミラーM4の前面の調整ねじへのアクセスを有する従来の点線面支持手段上に取り付けられる。微調整のために、2つの回転軸、例えばX軸に平行な回転軸とX軸と直交するもう一方について+/-1度の調整範囲が十分である。有利な点として、第二の偏向ミラーM4は、偏向ミラーM4に対する法線に沿って+/-1mmの奥行きにわたる位置調整が可能である。ミラーM4に対する法線に関する励起光ビームの入射角は、偏向ミラーM4と顕微鏡対物レンズ5との間の距離にしたがって数度の範囲内でミラーM2の走査に応じて変化する。第二の偏向ミラーM4で反射した後、励起光ビームは、走査ミラーM2の傾斜角度に応じて、顕微鏡対物レンズ5の主光軸11に関して変化する角度で伝播する。
【0059】
図1及び3に示される第一の実施形態において、第二の集光ミラーM3は中間焦点面20から所定の距離に、中間焦点面の点21、22、23、24、又は25に集光された入射ビームを受け取って、コリメート光ビームを形成するように配置される。したがって、顕微鏡対物レンズ5は顕微鏡対物レンズの光軸11と直交する1つ又は2つの回転軸の周囲でのミラーM2の走査に応じた可変的な傾斜を有するコリメート光ビームを受け取る。第二の集光ミラーM3は、中間焦点面20のある点からの光ビームをコリメートする。第二の偏向ミラーは、コリメートビームを顕微鏡対物レンズ5に向かって反射させる。したがって、顕微鏡対物レンズ5の物体焦点面51において、入射ビームはコリメートされたままである(図3参照)。物体焦点面51はまた、後焦点面とも呼ばれる。顕微鏡対物レンズ5は、入射光ビーム10を顕微鏡対物レンズ5の像焦点面52のある点62に集光する。像焦点面52は前焦点面とも呼ばれる。したがって、走査ミラーM2の角度傾斜によって、顕微鏡対物レンズ5の像焦点面52内の点62をX及び/又はY方向に沿って移動させることが可能となる。したがって、顕微鏡の像焦点面52の領域は、他のミラーM0、M1、M2、及びM3を固定したまま、1つの走査ミラーM2の傾斜を変化させることによって走査できる。
【0060】
第一の実施形態において、第一の集光ミラーM1と第二の集光ミラーM3はアフォーカル光学系を形成する。
【0061】
要約すれば、第一の実施形態において、励起光ビーム移動システム100により、前焦点面52内の集光点62を顕微鏡対物レンズの光軸11と直交する2つの空間方向(X、Y)に沿って移動させることが可能となる。
【0062】
入射光ビーム10は、後方散乱、透過、又は反射により光ビームを生成するための励起ビームとして使用できる。
【0063】
特に興味深い応用は、蛍光又はラマン散乱に関する。この場合、光源1は有利な態様として、レーザ源である。
【0064】
ラマン後方散乱測定の構成では、顕微鏡対物レンズ5は試料6の点62における励起光ビーム10の後方散乱又は反射により形成される後方散乱又は反射光ビーム30を収集する。収集された光ビーム30は、ミラーM4、M3、M2、M1、及びM0での連続する反射によって励起光ビームの逆の経路を辿る。半反射板又はダイクロイック板のタイプの光学コンポーネント41によって、励起光ビーム10を後方散乱又は反射光ビーム30から分離することが可能となる。共焦点顕微鏡の場合、収集された光ビーム30は共焦点開口43を通過する。
【0065】
光学コンポーネント、例えばレンズ42は、後方散乱又は反射光ビーム30を分光計44の入射スロット上に集光する。
【0066】
したがって、ビーム走査系100によって共焦点顕微鏡をビーム走査型蛍光又はラマン顕微鏡に変更することができ、その際、共焦点顕微鏡の光学的調整は変化しない。
【0067】
図5~8に示される、第一の実施形態のその他の応用では、前述のものと同じ励起光ビーム移動システム100と組み合わせて透過光測定が実行される。励起光ビーム10の光路上に配置されたビーム走査系100は、図5~8では示されていない。
【0068】
図5に示される第一の代替案によれば、もう1つの対物レンズ15を使って透過光ビーム70を収集する。移動システム100により、顕微鏡対物レンズの前焦点面52内の集光点62を顕微鏡対物レンズの光軸11と直交する2つの方向に移動させることが可能となる。この代替案では、他方の対物レンズ15は対物レンズ15の視野中心における光軸11上の点60からの信号のみを収集し、これは励起点の位置に関係がなく、換言すれば、集光点62の(X,Y)位置に関係がない。対物レンズ15は透過ビーム70を分光計44上に、又は直接検出器上に集光する。
【0069】
この第一の代替案の応用によって、例えば平坦導波路内の光ビームの伝播を測定することが可能となる。その目的のために、導波路は試料6の平面内に設置され、導波路の端は光軸から離れて位置付けられた励起点62において励起され、光軸11上に位置付けられた導波路の他の端における透過によって収集される。
【0070】
この第一の代替案の他の応用は、試料の表面を高速で走査することと、透過ビーム70の全体を収集して試料の全体積又は全表面にわたり情報を統合することによって、対物レンズ5の視野内の透過ビーム70の全体を測定することにある。
【0071】
図6に示される第二の代替案によれば、他方の対物レンズ15を使って、あらゆる集光点62からの透過光ビーム72を収集する。この第二の代替案の応用の特定の例において、励起点62は試料の平面内で1つの方向(例えば、X又はY)に沿って移動され、透過ビーム72は走査方向に沿った励起点62の位置に応じた分光計44の入射スロットの長さに沿って収集される。
【0072】
図7に示される第三の代替案によれば、他方の対物レンズ15を使って、励起点62からの透過光ビーム72を収集して、透過ビーム72の像を2次元マトリクスセンサ45上に形成する。したがって、試料上の励起点62をXY平面内で移動させることによって、試料の像は励起点62に応じた透過により形成される。この代替案は、特に、例えば各点における試料上の透過光測定による共焦点顕微鏡強度測定又は、ハイパスペクトルカメラを使用するハイパスペクトル顕微鏡測定に適用される。スペクトル情報を取得するために、フィルタを追加して、特定のスペクトルバンドを選択することが賢明である。このフィルタは、固定されたスペクトルバンドを有し、スペクトル範囲を変化させるために他のフィルタに置き換えることができる。代替案として、フィルタはチューナブルバンドパスフィルタである。
【0073】
図8に示される第四の代替案によれば、第二のビーム走査系102が使用され、これは、ここでは他方の対物レンズ15によってコリメートされる透過ビーム72の光路上に配置される。第二のビーム走査系102は、励起光ビーム10の光路上に配置されたビーム走査系100のそれらと同様の光学コンポーネントM4、M3、M2、M1、及びM0を含む。さらに、2つのビーム走査系100及び102の2つの走査ミラーM2は同期される。第二のビーム走査系102の出力で、透過ビーム80は、試料のXY平面内の励起点62の位置に関係なく、固定された方向を有する。その後、透過ビーム80は分光計又は検出器に送られる。
【0074】
図4に示される第二の実施形態では、第二の集光ミラーM3は中間焦点面20から所定の距離に配置されて、中間焦点面20の1つの点21、22、23、24、又は25に集光される励起光ビーム10を受け取り、顕微鏡対物レンズ5の物体焦点面51内の1つの点61に集光された光ビームを形成する。走査ミラーM2の2つの回転軸の周囲の可変傾斜によって、物体焦点面51内の点61のXY位置を変更することが可能となる。したがって、顕微鏡対物レンズ5は集光された光ビームを受け取り、像焦点面52内でコリメート光ビームを形成し、これは顕微鏡対物レンズの光軸11と直交する2つの回転軸の周囲のミラーM2の走査に応じた可変傾斜を有する。換言すれば、第二の集光ミラーM3は、中間焦点面20の像を顕微鏡対物レンズ5の物体焦点面51内に形成する。第二の偏向ミラーM4は、コリメートビームを顕微鏡対物レンズ5に向かって反射させる。したがって、顕微鏡対物レンズ5の物体焦点面51において、入射光ビームが集光される(図4参照)。顕微鏡対物レンズ5は、顕微鏡対物レンズ5の像焦点面52内の入射光ビーム10をコリメートする。したがって、走査ミラーM2の角度傾斜によって、主光軸11と直交する2つの回転軸に関する顕微鏡対物レンズ5の像焦点面52内の励起光ビーム10の傾斜角度ALPHAを調整及び/又は変更することが可能となる。
【0075】
顕微鏡の像焦点面52内の励起光ビームの傾斜角度ALPHAはしたがって、残りのミラーM0、M1、M2、及びM3は固定したまま、1つの走査ミラーM2の傾斜を調整することによって調整できる。顕微鏡対物レンズ5は、試料6で反射された、又は後方散乱した光ビーム30を収集する。
【0076】
第二の実施形態では、第一の集光ミラーM1、第二の集光ミラーM3、及び顕微鏡対物レンズ5はアフォーカル光学系を形成する。
【0077】
第二の実施形態では、励起光ビーム移動システム100によって、顕微鏡対物レンズの光軸11と直交する2つの回転軸の周囲での前焦点面52内のコリメート励起光ビームの傾斜角度ALPHAを調整又は走査することが可能となる。
【0078】
この第二の実施形態において、対物レンズ5の射出点でのビーム径は、主としてビーム走査系100の入射点におけるビーム径(例えば、4mm)、ミラーM3と中間焦点面20との間の距離(例えば、約200mm)、及び対物レンズの倍率(例えば、100×)に依存する。この例では、対物レンズ5の射出点におけるビーム径は約20μmであり、これはXY横方向空間分解能を決定する。他方で、これによってTIRF又はTIRRモードのためのZ軸に沿った極大軸方向分解能を得ることができる。
【0079】
第二の実施形態の応用では、顕微鏡対物レンズ5は全反射蛍光(TIRF)対物レンズである。第一の実施形態と同様に、顕微鏡はしたがって、所定の入射角ALPHAで試料6内の全反射蛍光測定を実行するようになされる。他の応用では、顕微鏡対物レンズ5は全反射ラマン(TIRR)対物レンズである。顕微鏡はしたがって、全反射を得るために試料の光学指標に応じた所定の入射角ALPHAで試料6内の全反射ラマン分光測定を実行するようになされる。
【0080】
他の代替案によれば、走査ミラーM2の傾斜は、顕微鏡の像焦点面52内の励起光ビームの傾斜角度ALPHAを調整又は走査するように制御され、残りのミラーM0、M1、M2、及びM3は固定されたままである。他の応用では、顕微鏡対物レンズ5は試料6で反射した光ビームを収集する。したがって、顕微鏡は所定の入射角ALPHAで、又は顕微鏡対物レンズ5の開口数に応じて特定される角度範囲内の入射角ALPHAに応じて偏光解析測定を実行するようになされる。例えば、角度ALPHAの角度範囲は、その開口数が約0.95の顕微鏡対物レンズ5について約0から72度に及ぶ。有利な点として、偏光解析応用において、光源1は、1つ又は幾つかの所定の波長での測定のための単色若しくは多色光源、又は分光測定のための広域スペクトル光源から選択される。
【0081】
特定の実施形態によれば、偏向ミラーM0及び/又はM4はなくてもよい。この場合、入射光ビームの光軸は一般に、第一の集光ミラーM1、走査ミラーM2、及び第二の集光ミラーM3により形成される光学系によってずらされる。
【0082】
上述の実施形態のうちの何れの1つの代替案によっても、第一の集光ミラーM1は第一のレンズ型集光光学系L1に置き換えられる。特に有利な点として、第一のレンズ型集光光学系L1は好ましくは、中間焦点面20内の球面収差から補正される。
【0083】
代替案として、又は補足的に、第二の集光ミラーM3は、走査ミラーM2と顕微鏡対物レンズ5との間に配置された第二のレンズ型集光光学系L3に置き換えられる。第二のレンズ型集光光学系L3は、ミラーM1又はレンズ型光学系L1と組み合わせて使用できる。
【0084】
第一の実施形態による顕微鏡対物レンズ5と移動システム100の組合せは、測定点62を、例えば試料6上の前焦点面の特定の点に位置付けるために使用できる。励起ビームは、1つ又は2つの回転軸の周囲での走査ミラーM2の傾斜に応じて移動されて、顕微鏡対物レンズの前焦点面内に正確に位置付けられるようになされた光スポット62を形成する。さらに、光が逆に戻ることによって、移動システム100は反射又は後方散乱信号の共焦点収集用としてなされる。
【0085】
例えば画像捕捉処理システムに基づくパーティクルファインダシステムを含む特定の実施形態によれば、試料表面上の1つ又は複数の粒子の位置が事前に特定され、測定点62が自動的に各粒子上に位置付けられて、それらを1つずつ測定する。
【0086】
いわゆるマイクロスポット応用では、試料のマッピングが、顕微鏡的空間分解能で、走査ミラーM2の(1つ又は2つの方向による)一連の可変傾斜角度に応じた測定点62の異なる位置について行われる。この応用では、各測定は2回の連続する測定間で行われる。その結果、走査ミラーの制御にスタートとストップが何度も必要となり、これは、全体的な取得持続時間が比較的長いことを示唆する。
【0087】
移動システム100はまた、試料上のスポットの連続的又はほぼ連続的移動中に一連の所定の時点での一連の測定を行って、連続する2回の測定間のダウンタイムを制限するようになされる。このオンザフライ測定方式(すなわちSWIFTモード)により、空間的に分解された測定値をマイクロスポットモードより高速に取得することが可能となる。
【0088】
他のいわゆるマクロスポット応用では、試料上のスポット62の移動中に検出された信号は、レーザスポット62より大きいサイズの表面上で空間的に平均化された測定値を得るような方法で積分される。マクロスポットの形状は事前に特定でき、例えばディスク状、リング状、正方形、長方形とし、又は検討対象の物体の形状、例えばイメージングシステムにより検出される生物学的形態に合わせることができる。
【0089】
他の代替案によれば、一連の測定値は、測定点62を試料上の線に沿って移動させることにより取得され、この線の像は分光計44の入射スロットの長さ方向に形成される。分光計には2次元カメラ型のセンサが設けられるため、試料上の線に沿った一連のスペクトルを非常に高速に取得できる。
【0090】
第二の実施形態による顕微鏡対物レンズ5と移動システム100の組合せは、前焦点面内で所定の入射角ALPHAによりコリメート励起光ビームで試料を照明するようになされる。特に有利な点として、同じ顕微鏡対物レンズ5と移動システム100を使って、試料上での励起ビームの反射により形成された光ビームが収集され、反射ビームは、顕微鏡対物レンズの光軸11に関して角度ALPHAと対称である。第二の実施形態による移動システム100は、全反射蛍光(TIRF)顕微分光測定若しくは全反射ラマン(TIRR)顕微分光測定、又は偏光解析にも応用できる。
【0091】
第二の実施形態による移動システム100はまた、可変入射角ALPHAによりコリメート励起光ビームで試料を照明することにより、TIRF、TIRR、又は偏光解析型の測定のための最も高い感度を得ることのできる入射角ALPHAを特定するようになされる。
【0092】
勿論、本発明には、付属の特許請求の範囲の枠内で他の様々な改良を加えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8