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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240306BHJP
   G03H 1/02 20060101ALI20240306BHJP
   G03H 1/22 20060101ALI20240306BHJP
   G02F 1/01 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
G02B27/01
G03H1/02
G03H1/22
G02F1/01 B
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022021810
(22)【出願日】2022-02-16
(65)【公開番号】P2022135957
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】2103148.9
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519027213
【氏名又は名称】エンヴィシクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミーソン クリスマス
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ミルズ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル スパー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル モリナ
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-084466(JP,A)
【文献】特開2011-123126(JP,A)
【文献】特開2006-015941(JP,A)
【文献】国際公開第2019/096492(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03783442(EP,A1)
【文献】特開平03-048809(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0231719(US,A1)
【文献】特開2013-047705(JP,A)
【文献】特開2020-013118(JP,A)
【文献】国際公開第2021/040990(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23-35/235
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイボックスエリアから視認可能な虚像を形成するように構成されたヘッドアップディスプレイであって、前記ヘッドアップディスプレイが、
実質的に四辺形の表示エリアを形成するように構成されたピクセル配列を含むピクチャ生成ユニットであって、前記表示エリアは、前記ピクチャ生成ユニットによってピクチャコンテンツが表示されるように配置されたサブ領域を有するものと、
前記表示エリアの前記サブ領域から前記ヘッドアップディスプレイのアイボックスに光を中継し、前記サブ領域内の前記ピクチャコンテンツの虚像が、そこから見えるように構成された光学中継システムであって、少なくとも1つの前記サブ領域の形状と同じ形状を有する光学部品を備えるものと、を備え、
前記アイボックスエリアの形状が非矩形である、
ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記アイボックスエリアが、少なくとも1つの角が切り取られた実質的に四辺形のコア形状を有する
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記光学部品の形状が、前記サブ領域の形状および前記アイボックスの形状に対応したものである、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記四辺形のコア形状が矩形であり、前記矩形の長辺(long dimension)が、通常の使用中に実質的に水平であってもよい、
請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記アイボックスエリアが、八角形状または菱形形状を有する、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項6】
前記アイボックスが、少なくとも5つの直線辺を含む形状を有する、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項7】
前記アイボックスエリアが、2つまたは4つの角が切り取られた実質的に四辺形のコア形状を有する請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項8】
前記2つまたは4つの角が、少なくともある次元(dimension)においてサイズが等しい、
請求項7に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項9】
前記2つまたは4つの角が、前記アイボックスエリアの第1の次元(dimension)の最大サイズの15%~45%の前記第1の次元におけるサイズを有する、
請求項7に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項10】
前記アイボックスエリアが、実質的に楕円の形状を有する、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項11】
前記表示エリアの前記サブ領域が、少なくとも1つの角が切り取られた四辺形のコア形状を有する
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項12】
前記表示エリアの前記サブ領域が、少なくとも5つの直線辺を含む形状を有する、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項13】
前記表示エリアが、規則的なピクセル配列であるか、または前記規則的なピクセル配列に対応する、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項14】
前記表示エリアが、前記ピクセル配列を含むディスプレイデバイスから空間的に分離されたホログラフィック再生フィールドである、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項15】
前記ディスプレイデバイスが、前記ピクチャコンテンツのホログラムを表示するように構成される、
請求項14に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項16】
アイボックスエリアから視認可能な虚像を形成するように構成されたヘッドアップディスプレイであって、前記ヘッドアップディスプレイが、実質的に四辺形の表示エリアが有する、ピクチャ生成ユニットによってピクチャコンテンツが表示されるように配置されたサブ領域内にピクチャコンテンツを受信するように構成されており、
前記ヘッドアップディスプレイが、
前記ヘッドアップディスプレイのアイボックスに受信した前記ピクチャコンテンツを中継し、前記ピクチャコンテンツの虚像がそこから見えるように構成された光学中継システムであって、前記光学中継システムが、少なくとも1つの前記サブ領域の形状と同じ形状を有する光学部品を備えるものをさらに備え、
前記アイボックスエリアの形状が非矩形である、
ヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロジェクタおよびヘッドアップディスプレイに関する。より詳細には、本開示は、自動車などの車両用のホログラフィックプロジェクタおよびヘッドアップディスプレイに関する。本開示はまた、ホログラフィック投影の方法、ヘッドアップディスプレイに虚像を投影する方法、ヘッドアップディスプレイを使用してウインドスクリーンなどのウィンドウに虚像を表示する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体から散乱した光は、振幅および位相の両方の情報を含む。この振幅および位相の情報は、たとえば、周知の干渉技法によって感光板上で捕捉されて、干渉縞を含むホログラフィック記録、すなわち「ホログラム」を形成することができる。ホログラムは、元の物体を表す2次元または3次元のホログラフィック復元、すなわち再生画像を形成するために、適切な光による照射によって復元されてもよい。
【0003】
コンピュータ生成ホログラフィは、干渉プロセスを数値的にシミュレートすることができる。コンピュータ生成ホログラム「CGH」は、フレネル変換またはフーリエ変換などの数学的変換に基づく技法によって計算されてもよい。これらのタイプのホログラムは、フレネルホログラムまたはフーリエホログラムと呼ばれる場合がある。フーリエホログラムは、物体のフーリエ領域表現または物体の周波数領域表現と見なされてもよい。CGHはまた、たとえば、コヒーレント光線追跡または点群技法によって計算されてもよい。
【0004】
CGHは、入射光の振幅および/または位相を変調するように構成された空間光変調器「SLM」上で符号化されてもよい。光変調は、たとえば、電気的にアドレス可能な液晶、光学的にアドレス可能な液晶、またはマイクロミラーを使用して実現されてもよい。
SLMは、セルまたは素子と呼ばれる場合もある複数の個別にアドレス可能なピクセルを含んでもよい。光変調方式は、バイナリ、マルチレベル、または連続であってもよい。あるいは、デバイスは、連続(すなわち、ピクセルから構成されていない)であってよく、したがって、光変調はデバイスにわたって連続であってもよい。SLMは、変調された光が反射してSLMから出力されることを意味する反射型であってもよい。SLMは、同様に、変調された光が透過してSLMから出力されることを意味する透過型であってもよい。
【0005】
撮像用のホログラフィックプロジェクタは、記載された技術を使用して提供されてもよい。そのようなプロジェクタは、たとえば、ニアアイデバイスを含む、ヘッドアップディスプレイ「HUD」およびヘッドマウントディスプレイ「HMD」に応用されている。慣例的に、運転者の視野内に(本明細書では虚像エリアと呼ばれる)矩形エリアが画定され、ヘッドアップディスプレイはこの矩形エリアに画像コンテンツを表示することができる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の態様は、添付の独立請求項において定義される。
【0007】
本明細書では、自動車用の改善されたHUDが開示される。HUDはピクチャ生成ユニットを含む。ピクチャ生成ユニットは、速度またはナビゲーション情報などの情報コンテンツを含むピクチャを生成するように構成されてもよい。情報コンテンツの虚像を形成するように構成された光学中継システムまたは光学投影システムも提供される。情報コンテンツの虚像は、自動車の運転中に運転者の通常の視野内などの、運転者にとって適切な視野位置に形成されてもよい。たとえば、情報コンテンツの虚像は、運転者から車両のボンネット(またはフード)までの距離に現れてもよい。情報コンテンツの虚像は、運転者の通常の光景に悪影響を及ぼさないように配置される。情報コンテンツの虚像は、運転者の現実世界のビューに重ね合わされてもよい。情報コンテンツはコンピュータ生成され、運転者にリアルタイム情報を提供するためにリアルタイムで制御または更新されてもよい。
【0008】
実施形態は、単なる例として、ホログラフィックプロジェクタを備えるピクチャ生成ユニットに関する。本開示は、任意のディスプレイ技術と互換性がある。ホログラフィックプロジェクタに関する実施形態では、ピクチャは、コンピュータ生成されたホログラムのホログラフィック復元である。ピクチャは、表示面として機能する受光面上に形成または投影されてもよい。以下に十分に記載されるホログラフィックプロジェクタに基づくHUDは、ホログラフィックプロセスの効率およびレーザ光源での使用に対するその固有の適合性のために、現在利用可能な競合技術よりもはるかに高いコントラスト比をもたらすことができる。
【0009】
ヘッドアップディスプレイは、ホログラフィックプロセッサを備えてもよい。ピクチャはホログラフィック復元であってもよい。ホログラフィックプロセッサは、コンピュータ生成ホログラムを空間光変調器に出力するように構成されてもよい。コンピュータ生成ホログラムは、車両のウインドスクリーンの形状を少なくとも部分的に補償するように構成されてもよい。
【0010】
システムは、空間的に変調された光をウインドスクリーンに反射することによって、ウインドスクリーンを使用してピクチャの虚像を形成するように構成されてもよい。光源はレーザであってもよく、かつ/またはピクチャの光はレーザ光であってもよい。空間光変調器は、シリコン空間光変調器上の液晶であってもよい。ピクチャは、受光面における空間的に変調された光の干渉プロセスによって形成されてもよい。各コンピュータ生成ホログラムは、ピクチャの数学的変換、任意選択で、フーリエ変換またはフレネル変換であってもよい。コンピュータ生成ホログラムは、フーリエホログラムまたはフレネルホログラムであってもよい。コンピュータ生成ホログラムは、点群法によってコンピュータ生成されたホログラムであってもよい。空間光変調器は、光源からの光の位相を空間的に変調するように構成されてもよい。空間光変調器は、光源からの光の振幅を空間的に変調するように構成されてもよい。
【0011】
しかしながら、いくつかの実施形態は、単なる例として、ホログラフィック投影に基づくピクチャ生成ユニットを記載している。繰り返すが、本開示は、同様に、バックライト付き液晶ディスプレイ、レーザ走査ディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス「DMD」、蛍光ディスプレイ、およびプラズマディスプレイを含む任意のタイプのピクチャ生成ユニットに適用可能である。
【0012】
ウィンドウを有する車両用のヘッドアップディスプレイが提供される。ヘッドアップディスプレイは、ピクチャ生成ユニットおよび投影エンジンを備える。ピクチャ生成ユニットは、ピクチャを出力するように構成される。投影エンジン(または光学システム)は、ピクチャ生成ユニットによって出力された画像を受け取り、各ピクチャの虚像を(共通の)虚像エリア内に形成するために、車両のウィンドウ上にピクチャを投影するように構成される。ピクチャ生成ユニットは、虚像エリアが対応する切り取られた形状を有するように、切り取られたピクチャエリア内のピクチャを出力するように構成される。
【0013】
虚像エリア(または虚像領域または虚像空間)は、視野であると言える。システムのピクチャ生成ユニット、投影光学系、およびアイボックスは、光学設計に従って虚像エリアのサイズ、形状、および位置を一括して定義する。虚像エリアは道路上に投影され、道路上に光跡を形成すると言える。ピクチャエリアが完全に照明された場合、虚像エリアは完全に照明される。すなわち、ピクチャエリアの全エリアが照明された場合、虚像エリアの全エリアが照明される。しかしながら、画像コンテンツ(たとえば、ナビゲーション矢印)は、ピクチャエリアのサブ領域に表示されてもよく、その場合、投影された虚像は、虚像エリアの対応するサブ領域にのみ現れる。
【0014】
ウィンドウを有する車両用のヘッドアップディスプレイが提供される。ヘッドアップディスプレイは、ピクチャ生成ユニットおよび投影エンジンを備える。ピクチャ生成ユニットは、ピクチャを出力するように構成される。投影エンジンは、ピクチャ生成ユニットによって出力されたピクチャを受け取り、ピクチャの虚像を虚像エリア内に形成するために、車両のウィンドウ上にピクチャを投影するように構成される。ピクチャ生成ユニットは、虚像エリアが対応する切り取られた形状を有するように、切り取られた形状を有するピクチャエリア内にピクチャを出力するように構成される。
【0015】
ウィンドウを有する車両用のヘッドアップディスプレイが提供され、ヘッドアップディスプレイは、ピクチャ生成ユニットおよび投影エンジンを備える。ピクチャ生成ユニットは、ピクチャを生成するように構成される。投影エンジンは、ウィンドウ内に各ピクチャの虚像を形成するために、ピクチャをウィンドウ上に投影するように構成され、虚像は、切り取られた形状を有する共通の虚像エリア内に形成される。
【0016】
慣例的に、虚像エリアは矩形である。本発明者は、虚像エリアが矩形であるべきという仮定に疑問をもち、この仮定がヘッドアップディスプレイシステム全体に課す制限は正当化されず、実際には、車両における次世代の拡張現実ヘッドアップディスプレイの開発を妨げることを認識している。特に、本発明者は、本開示に提示されたように虚像エリアを切り取ることの価値を認識している。切り取られた虚像エリアの面積は、車両のヘッドアップディスプレイに画像コンテンツを表示するのに特に役に立たない。詳細には、虚像エリアの下部領域の1つまたは2つの三角形部分は、車両が走行すると予想され得る典型的な速度を考慮すると、運転者に近すぎるので大いに冗長である。これら2つの三角形部分を除去することの利点は、ピクチャ生成ユニットおよび投影エンジンの光学的および空間的要求の観点から、これらのエリアに画像コンテンツを表示することができないことに関する不利を上回る。本発明者は、ヘッドアップディスプレイ設計の基本的な仮定に挑戦し、当分野における先入観を諒解することによって理解され得るように、従来からの著しいブレイクを表すヘッドアップディスプレイを提供した。
【0017】
ピクチャ生成ユニットは、ピクチャエリアの切り取られた形状内のピクチャのみを生成するように構成されてもよい。ピクチャエリア(たとえば、ホログラフィック再生フィールド)が制限されていると言える。より具体的には、ピクチャエリア(たとえば、ホログラフィック再生フィールド)の空間的な広がりが制限される。追加または代替として、ピクチャ生成ユニットは、ピクチャの切り取られた形状の外側のピクチャの光を遮断するように構成された物理マスクをさらに備える。
【0018】
投影エンジンの主な目的は、ピクチャを拡大し、虚像エリアにそれを中継することである。したがって、投影エンジンは、拡大エンジンまたは拡大光学系であってもよい。ピクチャと虚像との間には、実質的に1対1の相関関係がある。目的は虚像エリアを成形することであり、これは、ピクチャ生成ユニットを駆動して切り取られた形状内の画像コンテンツのみを提供することにより、好都合よく実現されてもよい。したがって、使用されたピクチャエリアの形状を変更するだけで、従来のシステムを使用して本開示によるヘッドアップディスプレイを提供することが可能である。すなわち、ソフトウェアの修正のみが必要である。
【0019】
本開示によるヘッドアップディスプレイの利点は、ピクチャエリアの切り取られた形状内のピクチャの光のみを投影するように投影エンジンを構成することによって感じられてもよい。たとえば、投影エンジンは、ピクチャエリアおよび/または虚像エリアの切り取られた形状に従って切り取られた形状を有する少なくとも1つの光学素子(または光学部品)を備える。
【0020】
ヘッドアップディスプレイの体積を低減する方法が提供される。ヘッドアップディスプレイは、ピクチャ生成ユニット、光学システム、および光結合器を備える。ピクチャ生成ユニットは、スクリーン上の表示エリア内にピクチャコンテンツを表示するように構成され、表示エリアは四辺形の形状を有する。光学システムは、表示エリアから光結合器に光を誘導するように構成される。光結合器は、表示エリアからの光をアイボックスに反射し、それによってピクチャコンテンツの虚像を形成するように構成される。方法は、表示エリアのサブエリアにピクチャコンテンツを制限することを含む。方法は、部品のアクティブエリアを識別するために、光学システムの光学部品にサブエリアをマッピングすることをさらに含む。方法は、部品の非アクティブエリアを低減するために、アクティブエリアに対応して部品を成形することをまたさらに含む。
【0021】
ヘッドアップディスプレイの体積を低減する方法が提供される。ヘッドアップディスプレイは、ピクチャ生成ユニット、光学システム、および光結合器を備える。ピクチャ生成ユニットは、スクリーン上の四辺形エリア内にピクチャコンテンツを表示するように構成される。光学システムは、四辺形エリアから光結合器に光を誘導するように構成される。光結合器は、四辺形エリアからの光をアイボックスに反射し、それによってピクチャコンテンツの虚像を形成するように構成される。方法は、四辺形エリアのサブエリアにピクチャコンテンツを制限することを含む。方法は、部品のアクティブエリアを識別するために、光学システムの光学部品にサブエリアをマッピングすることをさらに含む。方法は、部品の非アクティブエリアを低減するために、アクティブエリアに対応して部品を成形することをまたさらに含む。
【0022】
ヘッドアップディスプレイの体積を低減する方法は、アイボックス(または「アイボックスエリア」)を画定することをさらに含んでもよく、前記アイボックスは、そこからピクチャコンテンツの虚像が観察者によって明瞭かつ完全に見える目の位置(好ましくは、複数の目の位置)を含む。アイボックスを画定するステップは、従来のアイボックスの形状と比較してアイボックスの形状を変更することを含んでもよい。たとえば、それは非矩形アイボックスを画定することを含んでもよい。非矩形アイボックスは、変更された(かつ改善された)アイボックスの形状を画定するために、1つまたは複数の角または他の部分がそれらから除去された「コア」または中央の矩形形状を有してもよい。
【0023】
方法は、部品の非アクティブエリアをさらに低減するために、アイボックスの形状に対応して光学システムの光学部品をさらに成形することを含んでもよい。
【0024】
ピクチャ生成ユニット、光学システム、および光結合器を備えるヘッドアップディスプレイシステムも提供される。ピクチャ生成ユニットは、スクリーン上のサブエリア内にピクチャコンテンツを表示するように構成され、サブエリアは少なくとも5つの辺を含む形状を有する。光学システムは、サブエリアからの光を中継するように構成される。光結合器は、光学システムから中継された光を受け取り、アイボックスに光を反射し、それによってピクチャコンテンツの虚像を形成するように構成される。光学システムの少なくとも1つの光学部品は、サブエリアの形状に対応する形状を有する。
【0025】
アイボックスエリアから視認可能な虚像を形成するように構成されたヘッドアップディスプレイが存在する。ヘッドアップディスプレイは、実質的に四辺形の表示エリアを形成するように構成されたピクセルの規則的な配列を備えるピクチャ生成ユニットを備える。ヘッドアップディスプレイは、ピクチャ生成ユニットのピクチャコンテンツを表示エリアのサブエリアに表示するように構成された表示コントローラをさらに備える。いくつかの実施形態では、表示コントローラは、ピクチャ生成ユニットのピクチャコンテンツを表示エリアのサブエリアに制限するように構成される。表示コントローラは、ピクチャ生成ユニットの一部であってもよい。ヘッドアップディスプレイは、サブエリア内のピクチャコンテンツの虚像がそこから見えるように、表示エリアのサブエリアからヘッドアップディスプレイのアイボックスに光を中継するように構成された光学中継システムをさらに備える。光学中継システムは、サブエリアの形状に対応して成形された少なくとも1つの光学部品を備える。アイボックスエリアの形状は非矩形である。光学部品は、サブ領域の形状およびアイボックスエリアの形状に対応して成形されてもよい。
【0026】
アイボックスエリアから視認可能な虚像を形成するように構成されたヘッドアップディスプレイも本明細書に開示される。ヘッドアップディスプレイは、実質的に四辺形の表示エリアのサブエリアに制限されたピクチャコンテンツを受信するように構成される。ヘッドアップディスプレイは、ピクチャコンテンツの虚像がそこから見えるように、ヘッドアップディスプレイのアイボックスに受信されたピクチャコンテンツを中継するように構成された光学中継システムをさらに備える。光学中継システムは、サブエリアの形状に対応して成形された少なくとも1つの光学部品を備える。アイボックスエリアの形状は非矩形である。光学部品は、サブ領域の形状およびアイボックスの形状に対応して成形されてもよい。
【0027】
本開示の第1の態様によれば、アイボックスエリアから視認可能な虚像を形成するように構成されたヘッドアップディスプレイが存在する。ヘッドアップディスプレイは、実質的に四辺形の表示エリアを形成するように構成されたピクセルの規則的な配列を備えるピクチャ生成ユニットを備える。ヘッドアップディスプレイは、ピクチャ生成ユニットのピクチャコンテンツを表示エリアのサブ領域に表示するように構成された表示コントローラをさらに備える。「サブ領域」および「サブエリア」という用語は、本明細書では同じ意味で使用される。いくつかの実施形態では、表示コントローラは、ピクチャ生成ユニットのピクチャコンテンツを表示エリアのサブ領域に制限するように構成される。表示コントローラは、ピクチャ生成ユニットの一部であってもよい。ヘッドアップディスプレイは、サブ領域内のピクチャコンテンツの虚像がそこから見えるように、表示エリアのサブ領域からヘッドアップディスプレイのアイボックスに光を中継するように構成された光学中継システムをさらに備える。光学中継システムは、サブ領域の形状に対応して成形された少なくとも1つの光学部品を備える。アイボックスエリアの形状は非矩形である。光学部品は、サブ領域の形状およびアイボックスの形状に対応して成形されてもよい。
【0028】
より一般的には、アイボックスエリアから視認可能な虚像を形成するように構成されたヘッドアップディスプレイが本明細書に開示される。ヘッドアップディスプレイは、実質的に四辺形の表示エリアのサブ領域内の(たとえば、サブ領域に制限された)ピクチャコンテンツを受信するように構成される。ヘッドアップディスプレイは、ピクチャコンテンツの虚像がそこから見えるように、ヘッドアップディスプレイのアイボックスに受信されたピクチャコンテンツを中継するように構成された光学中継システムをさらに備える。光学中継システムは、サブ領域の形状に対応して成形された少なくとも1つの光学部品を備える。アイボックスエリアの形状は非矩形である。光学部品は、サブ領域の形状およびアイボックスの形状に対応して成形されてもよい。
【0029】
2つの重要な利点が実現される。第1に、ヘッドアップディスプレイの物理サイズが縮小される。ヘッドアップディスプレイは、慣例的に、車両のダッシュボード内に収容されている。ヘッドアップディスプレイは、必要な倍率を実現するために大きいミラーおよび大きい光学スローが必要とされるので、車両内の他の高度なシステムと比較して比較的大きい。キャビン空間内、特にダッシュボードボリューム内の不動産は、多くの複雑な電子システムを含む最新の車両において非常に価値があり、ヘッドアップディスプレイは不動産の観点から非常に高価である。虚像エリアの少なくとも1つまたは2つの角を切り詰めるかまたは切り取ることは、投影エンジンの少なくとも1つの光学素子が対応して切り取られ得るので、著しい間隔の節約が果たされることが分かる。第2に、任意の光学部品と同様に、光学部品の性能は、光軸からの距離とともに低下する。詳細には、収差は光軸からの距離とともに増加する。したがって、投影エンジンの少なくとも1つの光学素子の最も外側の部分は、画質に最も有害な影響を及ぼす。したがって、全体的な画質は、本明細書に記載されたように投影エンジンの少なくとも1つの光学素子上の光跡のサイズを縮小することによって改善される。
【0030】
本開示による切り取られた虚像は、遠視野虚像であってもよい。遠視野虚像はナビゲーション情報を伝達することができる。ヘッドアップディスプレイはまた、近視野虚像を形成するように構成されてもよい。近視野虚像は、たとえば、速度情報を伝達することができる。
【0031】
サブエリアは、少なくとも5つの辺を含む形状を有してもよい。形状は、6つまたは8つの辺を有してもよい。形状は不規則であってもよい。形状の辺のうちの少なくとも1つは湾曲していてもよい。
【0032】
光学システムの光学部品にサブエリアをマッピングすることは、アクティブエリアに対応する光学部品上の光跡を識別するために、スクリーンのサブエリアから光学部品への画像を形成する光線を追跡することを含んでもよい。部品を成形することは、部品の物理サイズを縮小することを含んでもよい。
【0033】
ヘッドアップディスプレイは車両に収容されてもよい。光結合器は、ヘッドアップディスプレイを収容する車両のウインドスクリーンであってもよい。虚像は、車両の前方の地面のエリアと重なってもよい。
【0034】
ピクチャコンテンツを制限するステップは、そうでなければ、車両および/または四辺形の表示エリアの片側に最も近いエリアに重なる虚像を形成するはずの四辺形の表示エリアの領域を除外することを含んでもよい。方法は、サブエリアに対応してスクリーンの物理サイズを縮小することをさらに含んでもよい。ピクチャ生成ユニットは、ホログラフィックプロジェクタを備えてもよい。サブエリアは、ホログラフィック再生フィールドのサブエリアであってもよい。光学システムは光パワーを有していてもよい。
【0035】
少なくとも1つの光学素子(または光学部品)は、反射型であってもよい。この手法は、光路を折り曲げるために反射光学素子を使用することができるので、コンパクトなシステムを提供する。少なくとも1つの光学素子はミラーであってもよい。少なくとも1つの光学素子は、各虚像が対応するピクチャの拡大画像であり、かつ/または虚像エリアがピクチャエリアの拡大画像であるような光パワーを有してもよい。(アイボックスエリアからの)虚像エリアによって定められた角度は、最も広い点で、10+/-2度などの5~15度、最も高い点で、3.5+/-0.5度などの2~5度であってもよい。ピクチャエリアは、最も広い点で、55+/-15mmなどの20~120mm、最も高い点で、25+/-10mmなどの10~50mmであってもよい。少なくとも1つの光学素子は、虚像がウィンドウによって歪められないようにウィンドウの形状を光学的に補償するように構成された自由形状光学面を有してもよい。したがって、少なくとも1つの光学素子は、素子のカウントダウンを保持し、光損失を低減するのに有効な多目的であってもよい。
【0036】
虚像エリアの切り取られた形状は、切り取られた形状が少なくとも5つの辺を有するように、1つまたは2つの角を切り詰めることによって矩形から形成されてもよい。切り取られた虚像エリアの下部領域の値は保証されない。実際には、虚像エリアの切り取られた形状は、切り取られた形状が少なくとも5つの辺を有するように、少なくとも1つの切り詰められた角を有する多面形状(たとえば、多角形)を含んでもよい。虚像エリアの切り取られた形状は、切り取られた形状が少なくとも8つまたは10個の辺を有するように、矩形の2つまたは4つの角を切り詰めることによって形成されてもよい。拡張現実向けの改善されたヘッドアップディスプレイが提供される。
【0037】
虚像は、運転者の現実感を増大させるために使用されてもよい。虚像は道路のエリアに重なる。重なったエリアが対称であることが好ましい場合がある。しかしながら、運転者は車両の片側(すなわち、右側)に位置するので、本発明者は、虚像エリアの形状が非対称である場合に有利であり得ることを認識している。より具体的には、虚像エリアの非対称性は、車両内の運転者の空間的にオフセットされた位置を視覚的に補償するように構成されてもよい。虚像エリアの非対称性は、空間の対称領域に重なるように構成されてもよい。非対称性は、虚像エリアの辺の長さを変更することによって実現されてもよい。たとえば、形状の両側は異なる長さを有してもよい。任意選択で、形状のすべての両側は異なる長さを有する。
【0038】
特に、本発明者は、アイボックスが矩形であるべきであるという仮定にも疑問をもっている。慣例的に、アイボックスは矩形である。これは、矩形のディスプレイデバイスと相乗的である。バックライトを使用する従来のディスプレイ(すなわち、非ホログラフィックディスプレイ)では、未使用またはオフのピクセルが無駄な光を表し、光学効率に悪影響を及ぼす。画像のコントラストおよび明るさはヘッドアップディスプレイにおいて非常に大きな課題であり、したがって、本明細書に開示されたようにピクチャコンテンツエリアを制限することによって光を浪費することは許容できないので、当業者は、ピクチャコンテンツを表示エリアのサブエリアに制限するという考えを即座に却下するであろう。しかしながら、場合によっては、本明細書に開示されたように、他のエリアにおける利得がこれらの損失を上回る場合がある。
【0039】
アイボックスエリアは、その中で虚像が見える空間のエリアである。より具体的には、アイボックスエリアは、虚像全体が完全に見える、すなわち、虚像のすべてのエリアが見えるエリアである。アイボックスの位置、サイズ、および形状は、設計プロセス中に最適化される。システムの光学性能は、必要なアイボックス向けに最適化される。アイボックスは、複数の最適化された観察位置を含むエリアと見なされてもよい。アイボックスが小さすぎる場合、観察者のほとんどの動きは許容されない場合がある。アイボックスが大きすぎる場合、物理的および光学的な要件が実用的でなくなる。慣例は、アイボックスが矩形の形状であり、虚像の両眼視野が維持される可動域を可能にする瞳孔間距離の2倍であることである。いくつかの実施形態では、アイボックスは、サブ領域内のピクチャコンテンツの全体/完全/全部の虚像が両眼に見える、すべての最適化された目の位置を含む観察ウィンドウである。
【0040】
本開示によれば、アイボックスの位置およびサイズは、人間工学およびモデル化によって決定され、アイボックスの形状は、移動する車両内の頭および目の動きの分析によって通知される。本開示によれば、最適化されたアイボックスの形状は、光学部品のサイズおよびヘッドアップディスプレイパッケージ全体のサイズに対して確かに有益である。
【0041】
アイボックスエリアは、実質的に四辺形のコア形状と、少なくとも1つの切り取られた角とを含んでもよい。「切り取られた」という用語は、形状を記述するための便利な方法として使用されるにすぎない。具体的には、それは、結果として得られる形状が、四辺形の1つの角が切り取られた(cropped off)、または切り取られた(cut-out)、または切り取られた(cut-away)場合に形成される形状と同じであることを反映する。したがって、「切り取られた」という用語は、四辺形のコアまたは中央の形状の一部分が存在しないように見えることを示すにすぎない。「切り取られた」という用語は、結果として得られる形状が実現される方法を反映しない。結果として得られる形状は、四辺形コアの形状よりも小さい。四辺形コアの形状は矩形であってもよく、任意選択で、矩形の長さ寸法は、通常の使用中に実質的に水平である。本明細書に開示された切り取りは直線状であってもよい。いくつかの実施形態では、切り取られた各角は三角形の形状を有する。「コア」という用語は、形状の中心、主要、または支配的な構成要素/特徴を指すために使用される。
【0042】
アイボックスエリアは、八角形状または菱形形状を有してもよい。アイボックスは、少なくとも5つの直線の辺、任意選択で、8つの直線の辺などの少なくとも6つの直線の辺を含む形状を有してもよい。
【0043】
少なくとも1つの切り取られた角は、2つまたは4つの切り取られた角を含む。2つまたは4つの切り取られた角は、少なくとも1つの寸法においてサイズが等しく、任意選択で、2つの垂直寸法においてサイズが等しい。切り取られた各角は、第1の寸法におけるアイボックスエリアの最大サイズの15%~45%の第1の寸法におけるサイズを有してもよい。アイボックスエリアは、代替として、実質的に楕円の形状を有してもよい。
【0044】
ピクチャ生成ユニットは、任意のタイプのものであってもよい。ピクチャ生成ユニットは、ホログラフィックプロジェクタであってもよい。ピクチャ生成ユニットは、光源および空間光変調器を備えてもよい。光源は、光を放射するように構成されてもよい。空間光変調器は、光源から光を受け取り、空間光変調器に表示されたコンピュータ生成ホログラムに従って光を空間的に変調して、各画像に適合するホログラフィック復元を形成するように構成されてもよい。ホログラフィック復元はピクチャである。ホログラフィック復元は、自由空間内に形成されてもよく、スクリーンまたはディフューザなどの表面上に形成されてもよい。したがって、ピクチャ生成ユニットは、ピクチャに適合する各ホログラフィック復元がその上に形成されるように、空間的に変調された光を受け取るように構成された受光面をさらに備えてもよい。
【0045】
ウィンドウはウインドスクリーンであってもよい。したがって、ヘッドアップディスプレイは、現実感を増大させることによって運転中に有用な情報を運転者に提供することができる。
【0046】
「対応する」および「対応して」という用語は、本明細書では、第1の要素の変化が第2の要素の同様または同等または対応する変化を引き起こすように、第1の要素(たとえば、エリア、形状、または画像)の物理的特性と第2の要素の物理的特性との間の広範な相関関係を反映するために、1対の要素または構成要素に関して使用される。「対応する」要素は、形状が同一または実質的に同一であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。たとえば、「対応する」要素は、同じまたは実質的に同じ一般的な形状を有するが、サイズが異なっていてもよい。たとえば、第2の要素は、第1の要素の完全または不完全な拡大であってもよい。したがって、「対応する」という単語は、第1の要素の一般的な形態(たとえば、形状)が第2の要素のそれと密接に関連している、かつ/またはそれに基づいていることを反映するためにさらに使用される。第1の要素と第2の要素との間の違いは、光学的な収差または歪みなどの、システムの構成要素の中の(ウインドスクリーン光結合器などの)複雑な湾曲を有する構成要素の欠陥、または矯正要因などの欠陥に対する対策によって発生する場合がある。
【0047】
「ピクチャの光」という用語は、本明細書では、ピクチャを形成する光を指すために使用される。「ピクチャの光」は単色または多色であってもよい。「ピクチャの光」は合成色であってもよい。たとえば、「ピクチャの光」は、赤色、緑色、および青色の光を含んでもよい。「ピクチャの光」は偏光してもよい。
【0048】
「ホログラム」という用語は、物体に関する振幅情報もしくは位相情報、またはそれらの何らかの組合せを含む記録を指すために使用される。「ホログラフィック復元」という用語は、ホログラムを照射することによって形成される物体の光学的復元を指すために使用される。「再生平面」という用語は、本明細書では、ホログラフィック復元が完全に形成される空間内の平面を指すために使用される。「再生フィールド」という用語は、本明細書では、空間光変調器から空間的に変調された光を受け取ることができる再生平面のサブエリアを指すために使用される。「画像」、「再生画像」、および「画像領域」という用語は、ホログラフィック復元を形成する光によって照射される再生フィールドのエリアを指す。実施形態では、「画像」は、「画像ピクセル」と呼ばれる場合がある個別のスポットを含んでもよい。
【0049】
「符号化」、「書込み」、または「アドレス指定」という用語は、SLMの複数のピクセルに、各ピクセルの変調レベルをそれぞれ決定するそれぞれの複数の制御値を提供するプロセスを記載するために使用される。SLMのピクセルは、複数の制御値の受信に応答して光変調分布を「表示」するように構成されると言える。したがって、SLMはホログラムを「表示」すると言える。
【0050】
許容可能な品質のホログラフィック復元は、元の物体に関連する位相情報のみを含む「ホログラム」から形成され得ることが分かった。そのようなホログラフィック記録は、位相のみのホログラムと呼ばれる場合がある。実施形態は位相のみのホログラムに関するが、本開示は、振幅のみのホログラフィにも同様に適用可能である。
【0051】
本開示は、元の物体に関連する振幅情報および位相情報を使用してホログラフィック復元を形成することにも同様に適用可能である。いくつかの実施形態では、これは、元の物体に関連する振幅情報と位相情報の両方を含む、いわゆる完全複素ホログラムを使用する複素変調によって実現される。そのようなホログラムは、ホログラムの各ピクセルに割り当てられた値(グレーレベル)が振幅成分および位相成分を有するので、完全複素ホログラムと呼ばれる場合がある。各ピクセルに割り当てられた値(グレーレベル)は、振幅成分と位相成分の両方を有する複素数として表されてもよい。いくつかの実施形態では、完全複素コンピュータ生成ホログラムが計算される。
【0052】
「位相遅延」の略記として、コンピュータ生成ホログラムまたは空間光変調器のピクセルの位相値、位相成分、位相情報、または単に位相に対して参照が行われてもよい。すなわち、記載された任意の位相値は、実際には、そのピクセルによって提供される位相遅延の量を表す(たとえば、0~2πの範囲の)数である。たとえば、π/2の位相値を有すると記載された空間光変調器のピクセルは、π/2ラジアンだけ受信光の位相を変化させる。いくつかの実施形態では、空間光変調器の各ピクセルは、複数の可能な変調値(たとえば、位相遅延値)のうちの1つで動作可能である。「グレーレベル」という用語は、複数の利用可能な変調レベルを指すために使用されてもよい。たとえば、「グレーレベル」という用語は、異なる位相レベルが異なるグレーの濃淡を提供しない場合でも、位相のみの変調器における複数の利用可能な位相レベルを指すために、便宜上使用されてもよい。「グレーレベル」という用語はまた、複素変調器において複数の利用可能な複素変調レベルを指すために、便宜上使用されてもよい。
【0053】
様々な実施形態および実施形態のグループは、以下の詳細な説明において別々に開示されてもよいが、任意の実施形態または実施形態のグループの任意の特徴は、任意の実施形態または実施形態のグループの任意の他の特徴または特徴の組合せと組み合わされてもよい。すなわち、本開示に開示された特徴のすべての可能な組合せおよび順列が想定される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
特定の実施形態は、以下の図を参照して、ほんの一例として記載される。
【0055】
図1】スクリーン上にホログラフィック復元を生成する反射型SLMを示す概略図である。
図2A】例示的なGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムの最初の反復を示す図である。
図2B】例示的なGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムの2回目以降の反復を示す図である。
図2C】例示的なGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムの代替の2回目以降の反復を示す図である。
図3】反射型LCOS SLMの概略図である。
図4A】第1の従来の構成を有するヘッドアップディスプレイの視野およびアイボックスエリアを示す図である。
図4B】切り取られた視野を含む第2の構成を有するヘッドアップディスプレイの視野およびアイボックスエリアを示す図である。
図4C】実施形態による、第3の構成を有するヘッドアップディスプレイの視野およびアイボックスエリアを示す図である。
図4D図4Bおよび図4Cのように切り取られた視野にピクチャコンテンツが表示されるヘッドアップディスプレイの視野を示す図である。
図5】ヘッドアップディスプレイのアイボックス内の目の位置の研究結果を示す図である。
図6A】第1の構成を有するヘッドアップディスプレイの光学中継システムの光学部品上のピクチャの光の例示的な光線束足跡を示す図である。
図6B】第2の構成を有するヘッドアップディスプレイの光学中継システムの光学部品上の、図6Aと同等のピクチャの光の例示的な光線束足跡を示す図である。
図6C】実施形態による、第3の構成を有するヘッドアップディスプレイの光学中継システムの光学部品上の、図6Aおよび図6Bと同等のピクチャの光の例示的な光線束足跡を示す図である。
図7】第1、第2、および第3の構成を有するヘッドアップディスプレイの光学部品を切り取ることによって形成された形状および相対面積の比較を示す図である。
図8A】第1の構成を有するヘッドアップディスプレイのアイボックス内の例示的な目の位置における歪みの測定結果を示す図である。
図8B】第2の構成を有するヘッドアップディスプレイのアイボックス内の例示的な目の位置における歪みの測定結果を示す図である。
図8C】第3の構成を有するヘッドアップディスプレイのアイボックス内の例示的な目の位置における歪みの測定結果を示す図である。
図9A】第1の構成を有するヘッドアップディスプレイのアイボックス内の例示的な目の位置における垂直視差の測定結果を示す図である。
図9B】第2の構成を有するヘッドアップディスプレイのアイボックス内の例示的な目の位置における垂直視差の測定結果を示す図である。
図9C】第3の構成を有するヘッドアップディスプレイのアイボックス内の例示的な目の位置における垂直視差の測定結果を示す図である。
図10A】第1の構成を有するヘッドアップディスプレイのアイボックス内の例示的な目の位置における水平視差の測定結果を示す図である。
図10B】第2の構成を有するヘッドアップディスプレイのアイボックス内の例示的な目の位置における水平視差の測定結果を示す図である。
図10C】第3の構成を有するヘッドアップディスプレイのアイボックス内の例示的な目の位置における水平視差の測定結果を示す図である。
図11図8A図8C図9A図9C、および図10A図10Cに示された結果の表を示す図である。
図12】本明細書に開示された概念のおかげで可能ないくつかのHUD体積最適化作業の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
同じまたは同様の部分を指すために、図面全体を通して同じ参照番号が使用される。
【0057】
本発明は、以下に記載される実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の全範囲に及ぶ。すなわち、本発明は、様々な形態で具現化されてよく、説明の目的で提示された、記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0058】
別の構造の上部/下部、または他の構造の上/下に形成されているように記載された構造は、構造が互いに接触する場合、その上、それらの間に第3の構造が配置される場合を含むと解釈されるべきである。
【0059】
時間関係を記載する際に、たとえば、イベントの時間的順序が「後」、「後続」、「次」、「前」などと記載されるとき、本開示は、別段の指定がない限り、連続イベントおよび非連続イベントを含むと解釈されるべきである。たとえば、「ちょうど」、「即時」、または「直ちに」などの文言が使用されない限り、説明は連続的でない場合も含むと解釈されるべきである。
【0060】
「第1の」、「第2の」などの用語は、本明細書では様々な要素を記載するために使用される場合があるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されない。これらの用語は、ある要素を別の要素から区別するためにのみ使用される。たとえば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素は第1の要素と呼ぶことができる。
【0061】
様々な実施形態の特徴は、部分的または全体的に互いに結合または組み合わされてよく、互いに様々に相互運用されてもよい。いくつかの実施形態は、互いに独立して実行されてもよく、相互依存関係で一緒に実行されてもよい。
【0062】
ホログラフィックピクチャ生成ユニットの光学的構成
図1は、コンピュータ生成ホログラムが単一の空間光変調器上で符号化される実施形態を示す。コンピュータ生成ホログラムは、復元用の物体のフーリエ変換である。したがって、ホログラムは物体のフーリエ領域表現または周波数領域表現またはスペクトル領域表現であると言える。この実施形態では、空間光変調器は、反射型液晶オンシリコン「LCOS」デバイスである。ホログラムは空間光変調器上で符号化され、ホログラフィック復元は、再生フィールド、たとえば、スクリーンまたはディフューザなどの受光面に形成される。
【0063】
光源110、たとえば、レーザまたはレーザダイオードは、コリメーティングレンズ111を介してSLM140を照射するように配置される。コリメーティングレンズは、光の全体的に平坦な波面をSLMに入射させる。図1では、波面の方向は垂線から外れている(たとえば、透明層の平面に対して真の直角から2度または3度離れている)。しかしながら、他の実施形態では、全体的に平坦な波面が垂直入射に提供され、入力光路と出力光路を分離するためにビームスプリッタ配置が使用される。図1に示された実施形態では、配置は、光源からの光がSLMの鏡面仕上げの背面から反射され、光変調層と相互作用して出口波面112を形成するような配置である。出口波面112は、フーリエ変換レンズ120を含む光学系に印加され、スクリーン125にその焦点を合わせる。より具体的には、フーリエ変換レンズ120は、SLM140から変調光のビームを受け取り、周波数空間変換を実行して、スクリーン125にホログラフィック復元を生成する。
【0064】
特に、このタイプのホログラフィでは、ホログラムの各ピクセルが復元全体に寄与する。再生フィールド上の特定のポイント(または画像ピクセル)と特定の光変調素子(またはホログラムピクセル)との間に1対1の相関関係は存在しない。言い換えれば、光変調層を出る変調光は、再生フィールドにわたって分散する。
【0065】
これらの実施形態では、空間内のホログラフィック復元の位置は、フーリエ変換レンズの屈折(集束)力によって決定される。図1に示された実施形態では、フーリエ変換レンズは物理レンズである。すなわち、フーリエ変換レンズは光学フーリエ変換レンズであり、フーリエ変換は光学的に実行される。いずれのレンズもフーリエ変換レンズとして機能することができるが、レンズの性能により、それが実行するフーリエ変換の精度が制限される。当業者は、光学フーリエ変換を実行するためにレンズをどのように使用するかを理解している。
【0066】
ホログラム計算
いくつかの実施形態では、コンピュータ生成ホログラムは、フーリエ変換ホログラム、または単にフーリエホログラムもしくはフーリエベースのホログラムであり、その中で、画像は正レンズのフーリエ変換特性を利用することによって遠視野で復元される。フーリエホログラムは、再生平面内の所望の光フィールドをフーリエ変換してレンズ平面に戻すことによって計算される。コンピュータ生成フーリエホログラムは、フーリエ変換を使用して計算されてもよい。
【0067】
フーリエ変換ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムなどのアルゴリズムを使用して計算されてもよい。さらに、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、(写真などの)空間領域内の振幅のみの情報から、フーリエ領域内のホログラム(すなわち、フーリエ変換ホログラム)を計算するために使用されてもよい。物体に関連する位相情報は、空間領域内の振幅のみの情報から効果的に「検索」される。いくつかの実施形態では、コンピュータ生成ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムまたはその変形形態を使用して、振幅のみの情報から計算される。
【0068】
Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、それぞれ、平面AおよびBにおいて、光ビームI(x,y)およびI(x,y)の強度断面が既知であり、I(x,y)およびI(x,y)が単一のフーリエ変換によって関連付けられるときの状況を考察する。所与の強度断面では、平面AおよびBにおける位相分布の近似値、それぞれ、Ψ(x,y)およびΨ(x,y)が見出される。Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、反復プロセスに従うことによってこの問題に対する解決策を見出す。より具体的には、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、空間領域とフーリエ(スペクトルまたは周波数)領域との間で、I(x,y)およびI(x,y)を表すデータセット(振幅および位相)を繰り返し転送しながら、空間およびスペクトルの制約を繰り返し適用する。スペクトル領域内のコンピュータ生成ホログラムは、アルゴリズムの少なくとも1回の反復によって取得される。アルゴリズムは収束し、入力画像を表すホログラムを生成するように構成される。ホログラムは、振幅のみのホログラム、位相のみのホログラム、または完全複素ホログラムであってもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、位相のみのホログラムは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、英国特許第2,498,170号または第2,501,112号に記載されているようなGerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムを使用して計算される。しかしながら、本明細書に開示された実施形態は、ほんの一例として、位相のみのホログラムを計算することを記載する。これらの実施形態では、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、既知の振幅情報T[x,y]を創出するデータセットのフーリエ変換の位相情報Ψ[u,v]を検索し、ここで、振幅情報T[x,y]はターゲット画像(たとえば、写真)を表す。強度および位相はフーリエ変換において本質的に組み合わされるので、変換された強度および位相は、計算されたデータセットの精度に関する有用な情報を含む。したがって、アルゴリズムは、振幅情報と位相情報の両方に対するフィードバックとともに繰り返し使用されてもよい。しかしながら、これらの実施形態では、画像平面にターゲット画像のホログラフィック表現を形成するために、位相情報Ψ[u、v]のみがホログラムとして使用される。ホログラムは、位相値のデータセット(たとえば、2D配列)である。
【0070】
他の実施形態では、完全複素ホログラムを計算するために、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムが使用される。完全複素ホログラムは、強度成分および位相成分を有するホログラムである。ホログラムは、複素データ値の配列を含むデータセット(たとえば、2D配列)であり、各複素データ値は強度成分および位相成分を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、アルゴリズムは複素データを処理し、フーリエ変換は複素フーリエ変換である。複素データは、(i)実数成分および虚数成分、または(ii)強度成分および位相成分を含むと見なされてもよい。いくつかの実施形態では、複素データの2つの成分は、アルゴリズムの様々な段階で異なって処理される。
【0072】
図2Aは、位相のみのホログラムを計算するためのいくつかの実施形態によるアルゴリズムの最初の反復を示す。アルゴリズムへの入力は、ピクセルまたはデータ値の2D配列を含む入力画像210であり、各ピクセルまたはデータ値は、強度または振幅の値である。すなわち、入力画像210の各ピクセルまたはデータ値は位相成分をもたない。したがって、入力画像210は、強度のみまたは振幅のみまたは明度のみの分布と見なされてもよい。そのような入力画像210の例は、写真、または時系列のフレームを含むビデオの1つのフレームである。アルゴリズムの最初の反復は、開始複素データセットを形成するために、ランダムな位相分布(またはランダムな位相シード)230を使用して、入力画像の各ピクセルにランダムな位相値を割り当てることを含むデータ形成ステップ202Aで始まり、セットの各データ要素は強度および位相を含む。開始複素データセットは、空間領域内の入力画像を表すと言える。
【0073】
第1の処理ブロック250は、開始複素データセットを受け取り、複素フーリエ変換を実行して、フーリエ変換された複素データセットを形成する。第2の処理ブロック253は、フーリエ変換された複素データセットを受け取り、ホログラム280Aを出力する。いくつかの実施形態では、ホログラム280Aは位相のみのホログラムである。これらの実施形態では、第2の処理ブロック253は、ホログラム280Aを形成するために、各位相値を量子化し、各振幅値を単位元に設定する。各位相値は、位相のみのホログラムを「表示する」ために使用される空間光変調器のピクセル上で表され得る位相レベルに従って量子化される。たとえば、空間光変調器の各ピクセルが256個の異なる位相レベルを提供する場合、ホログラムの各位相値は256個の可能な位相レベルのうちの1つの位相レベルに量子化される。ホログラム280Aは、入力画像を表す位相のみのフーリエホログラムである。他の実施形態では、ホログラム280Aは、受け取ったフーリエ変換された複素データセットから導出された(各々が振幅成分および位相成分を含む)複素データ値の配列を含む完全複素ホログラムである。いくつかの実施形態では、第2の処理ブロック253は、ホログラム280Aを形成するために複数の許容可能な複素変調レベルのうちの1つに各複素データ値を制約する。制約するステップは、複素平面内で最も近い許容可能な複素変調レベルに各複素データ値を設定することを含んでもよい。ホログラム280Aは、スペクトル領域またはフーリエ領域または周波数領域内の入力画像を表すと言える。いくつかの実施形態では、アルゴリズムはこの時点で停止する。
【0074】
しかしながら、他の実施形態では、アルゴリズムは、図2Aの点線矢印によって表されるように続く。言い換えれば、図2Aの点線矢印に続くステップはオプションである(すなわち、すべての実施形態に必須ではない)。
【0075】
第3の処理ブロック256は、第2の処理ブロック253から修正された複素データセットを受け取り、逆フーリエ変換を実行して、逆フーリエ変換された複素データセットを形成する。逆フーリエ変換された複素データセットは、空間領域内の入力画像を表すと言える。
【0076】
第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットを受け取り、強度値の分布211Aおよび位相値の分布213Aを抽出する。場合によっては、第4の処理ブロック259は強度値の分布211Aを評価する。具体的には、第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットの強度値の分布211Aを、それ自体がもちろん強度値の分布である入力画像210と比較することができる。強度値の分布211Aと入力画像210との間の差が十分小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aが許容可能であると判断することができる。すなわち、強度値の分布211Aと入力画像210との間の差が十分に小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aが入力画像210を十分正確に表すと判断することができる。いくつかの実施形態では、逆フーリエ変換された複素データセットの位相値の分布213Aは、比較の目的では無視される。強度値の分布211Aと入力画像210を比較するための任意の数の異なる方法が利用されてもよく、本開示はいかなる特定の方法にも限定されないことが諒解されよう。いくつかの実施形態では、平均二乗差が計算され、平均二乗差がしきい値未満である場合、ホログラム280Aは許容可能であると見なされる。ホログラム280Aが許容可能ではないと第4の処理ブロック259が判断した場合、アルゴリズムのさらなる反復が実行されてもよい。しかしながら、この比較ステップは必須ではなく、他の実施形態では、実行されるアルゴリズムの反復回数は、事前に決定されるか、事前に設定されるか、またはユーザ定義される。
【0077】
図2Bは、アルゴリズムの2回目の反復、およびアルゴリズムのそれ以上の反復を表す。前の反復の位相値の分布213Aは、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。強度値の分布211Aは、入力画像210の強度値の分布を選択して拒絶される。最初の反復では、データ形成ステップ202Aは、入力画像210の強度値の分布をランダムな位相分布230と組み合わせることによって最初の複素データセットを形成した。しかしながら、2回目以降の反復では、データ形成ステップ202Bは、(i)アルゴリズムの前の反復からの位相値の分布213Aを(ii)入力画像210の強度値の分布と組み合わせることによって複素データセットを形成することを含む。
【0078】
図2Bのデータ形成ステップ202Bによって形成された複素データセットは、次いで、第2の反復ホログラム280Bを形成するために、図2Aを参照して記載された同じ方法で処理される。したがって、ここではプロセスの説明は繰り返さない。アルゴリズムは、第2の反復ホログラム280Bが計算されたときに停止してもよい。しかしながら、アルゴリズムの任意の数のさらなる反復が実行されてもよい。第3の処理ブロック256は、第4の処理ブロック259が必要とされるか、またはさらなる反復が必要とされる場合にのみ必要とされることが理解されよう。出力ホログラム280Bは、全体的に各反復とともに良くなる。しかしながら、実際には、通常、測定可能な改善が見られないか、またはさらなる反復を実行することのプラスの利点がさらなる処理時間の悪影響によって上回られるポイントに到達する。したがって、アルゴリズムは反復的かつ収束的であると記載される。
【0079】
図2Cは、2回目以降の反復の代替実施形態を表す。前の反復の位相値の分布213Aは、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。強度値の分布211Aは、強度値の代替の分布を選択して拒絶される。この代替実施形態では、強度値の代替分布は、前の反復の強度値の分布211Aから導出される。具体的には、処理ブロック258は、前の反復の強度値の分布211Aから入力画像210の強度値の分布を引き、その差をゲイン係数αによってスケーリングし、スケーリングされた差を入力画像210から引く。これは以下の式によって数学的に表され、下付きのテキストおよび数字は反復番号を示す。
【数1】
ここで、
F’は逆フーリエ変換であり、
Fは順フーリエ変換であり、
R[x,y]は第3の処理ブロック256によって出力された複素データセットであり、
T[x,y]は入力画像またはターゲット画像であり、
∠は位相成分であり、
Ψは位相のみのホログラム280Bであり、
ηは強度値の新しい分布211Bであり、
αはゲイン係数である。
【0080】
ゲイン係数αは、固定または可変であってもよい。いくつかの実施形態では、ゲイン係数αは、入ってくるターゲット画像データのサイズおよびレートに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、ゲイン係数αは反復番号に依存する。いくつかの実施形態では、ゲイン係数αは反復番号の単なる関数である。
【0081】
図2Cの実施形態は、他のすべての点で図2Aおよび図2Bの実施形態と同じである。位相のみのホログラムΨ(u,v)は、周波数領域またはフーリエ領域内の位相分布を含むと言える。
【0082】
いくつかの実施形態では、フーリエ変換は、レンズ化データをホログラフィックデータに含めることにより、コンピュータによって実行される。すなわち、ホログラムは、レンズを表すデータ、ならびに物体を表すデータを含む。これらの実施形態では、図1の物理的なフーリエ変換レンズ120は除外される。コンピュータ生成ホログラムの分野では、レンズを表すホログラフィックデータを計算する方法が知られている。レンズを表すホログラフィックデータは、ソフトウェアレンズと呼ばれる場合がある。たとえば、位相のみのホログラフィックレンズは、その屈折率および空間的に異なる光路長に起因して、レンズの各点によって引き起こされる位相遅延を計算することによって形成されてもよい。たとえば、凸レンズの中心での光路長は、レンズの縁部での光路長よりも長い。振幅のみのホログラフィックレンズは、フレネルゾーンプレートによって形成されてもよい。コンピュータ生成ホログラムの技術分野では、物理的なフーリエレンズを必要とせずにフーリエ変換を実行することができるように、レンズを表すホログラフィックデータを、物体を表すホログラフィックデータと組み合わせる方法も知られている。いくつかの実施形態では、レンズ化データは、単純なベクトル加算などの単純な加算によってホログラフィックデータと組み合わされる。いくつかの実施形態では、フーリエ変換を実行するために、物理レンズがソフトウェアレンズとともに使用される。あるいは、他の実施形態では、ホログラフィック復元が遠視野で行われるように、フーリエ変換レンズは完全に除外される。さらなる実施形態では、ホログラムは、格子データ、すなわち、ビームステアリングなどの格子の機能を実行するように構成されたデータを含んでもよい。同様に、コンピュータ生成ホログラフィの分野では、そのようなホログラフィックデータを計算し、それを、物体を表すホログラフィックデータと組み合わせる方法が知られている。たとえば、位相のみのホログラフィック格子は、ブレーズド格子の表面上の各点によって引き起こされる位相遅延をモデル化することによって形成されてもよい。振幅のみのホログラフィック格子は、振幅のみのホログラムの角度ステアリングを実現するために、物体を表す振幅のみのホログラムに単純に重ね合わされてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、フーリエ変換は、物理的なフーリエ変換レンズおよびソフトウェアレンズによって一緒に実行される。すなわち、フーリエ変換に寄与する一部の光パワーはソフトウェアレンズによって提供され、フーリエ変換に寄与する残りの光パワーは、1つまたは複数の物理光学系によって提供される。
【0084】
いくつかの実施形態では、画像データを受信し、アルゴリズムを使用してリアルタイムでホログラムを計算するように構成されたリアルタイムエンジンが提供される。いくつかの実施形態では、画像データは一連の画像フレームを含むビデオである。他の実施形態では、ホログラムは、事前に計算され、コンピュータメモリに記憶され、SLMに表示するために必要に応じて呼び出される。すなわち、いくつかの実施形態では、所定のホログラムのリポジトリが提供される。
【0085】
実施形態は、ほんの一例として、フーリエホログラフィおよびGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムに関する。本開示は、点群法に基づく技法などの他の技法によって計算されたフレネルホログラフィおよびホログラムに同様に適用可能である。
【0086】
光変調
空間光変調器は、コンピュータ生成ホログラムを表示するために使用されてもよい。ホログラムが位相のみのホログラムである場合、位相を変調する空間光変調器が必要とされる。ホログラムが完全複素ホログラムである場合、位相および振幅を変調する空間光変調器が使用されてもよく、位相を変調する第1の空間光変調器および振幅を変調する第2の空間光変調器が使用されてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、空間光変調器の光変調素子(すなわち、ピクセル)は、液晶を含むセルである。すなわち、いくつかの実施形態では、空間光変調器は、光学活性部品が液晶である液晶デバイスである。各液晶セルは、複数の光変調レベルを選択的に提供するように構成される。すなわち、各液晶セルは、いつでも複数の可能な光変調レベルから選択された1つの光変調レベルで動作するように構成される。各液晶セルは、複数の光変調レベルからの異なる光変調レベルに動的に再構成可能である。いくつかの実施形態では、空間光変調器は、反射型液晶オンシリコン(LCOS)空間光変調器であるが、本開示はこのタイプの空間光変調器に限定されない。
【0088】
LCOSデバイスは、(たとえば、幅が数センチメートルの)小さい開口部内に、光変調素子またはピクセルの高密度配列を提供する。ピクセルは、通常、約10ミクロン以下であり、数度の回折角になるので、光学システムをコンパクトにすることができる。LCOS SLMの小さい開口部を適切に照射することは、他の液晶デバイスの大きい開口部よりも容易である。LCOSデバイスは、通常、反射型であり、それは、LCOS SLMのピクセルを駆動する回路を反射面の下に埋め込むことができることを意味する。その結果、開口率が高くなる。言い換えれば、ピクセルは密集しているので、ピクセル間にデッドスペースはほとんどない。これは、再生フィールド内の光学ノイズを低減するので有利である。LCOS SLMは、ピクセルが光学的に平坦であるという利点をもつシリコンバックプレーンを使用する。これは、位相変調デバイスにとって特に重要である。
【0089】
図3を参照して、ほんの一例として、適切なLCOS SLMが以下に記載される。LCOSデバイスは、単結晶シリコン基板302を使用して形成される。それは、基板の上面に配置された、ギャップ301aによって離間された正方形の平面アルミニウム電極301の2D配列を有する。電極301の各々は、基板302に埋め込まれた回路302aを介してアドレス指定することができる。電極の各々はそれぞれの平面鏡を形成する。配向層303は電極の配列上に配置され、液晶層304は配向層303上に配置される。第2の配向層305は、たとえば、ガラスの平面透明層306上に配置される。たとえば、ITOの単一の透明電極307は、透明層306と第2の配向層305との間に配置される。
【0090】
正方形電極301の各々は、透明電極307の上にある領域および介在する液晶材料とともに、しばしばピクセルと呼ばれる、制御可能な位相変調素子308を画定する。有効なピクセル面積または曲線因子は、ピクセル間の空間301aを考慮に入れて、光学活性な全ピクセルの割合である。透明電極307に対して各電極301に印加される電圧を制御することにより、それぞれの位相変調素子の液晶材料の特性が変更されてもよく、それにより、そこに入射する光に可変遅延がもたらされる。効果は波面に位相のみの変調をもたらすことであり、すなわち、振幅効果は発生しない。
【0091】
記載されたLCOS SLMは、空間的に変調された光を反射して出力する。反射型LCOS SLMは、信号線、ゲート線、およびトランジスタが鏡面の下にあるという利点を有し、それにより、曲線因子が高くなり(通常は90%を超える)、解像度が高くなる。反射型LCOS空間光変調器を使用する別の利点は、透過型デバイスが使用された場合に必要な厚さよりも液晶層の厚さを半分にできることである。これにより、液晶のスイッチング速度が大幅に向上する(動画像を投影するための重要な利点)。しかしながら、本開示の教示は、透過型LCOS SLMを使用して同様に実装されてもよい。
上述されたように、本開示の原理は、上述されたホログラフィックピクチャ生成ユニットだけでなく、非ホログラフィックピクチャ生成ユニットにも適用可能である。
【0092】
アイボックス最適化
ヘッドアップディスプレイの光学中継システムは、ピクチャ生成ユニットの表示エリアからアイボックスに、ピクチャの虚像がそこから見えるように、ピクチャの光を中継するように構成される。本明細書に記載されたように、アイボックスは、観察者がそこから虚像を完全に知覚することができるエリア、任意選択でボリュームを含む。当業者が諒解するように、アイボックスからさらに離れた観察位置から虚像が徐々に完全に見えにくくなる。
【0093】
虚像が鮮明な観察位置を客観的に識別するために、歪みおよび水平/垂直視差などのパラメータを測定するために光線追跡技法が使用されてもよい。そのような測定に基づいて、本発明者は、パッキング要件などの設計要件を満たすようにアイボックスエリアを画定するために、光学中継システムが構成され得ることを認識した。詳細には、本発明者は、慣習に反して、非矩形のアイボックスエリアが画定され得ることを認識した。たとえば、アイボックスは、縮小された非矩形アイボックスエリアを画定するために、1つまたは複数の角または部分がそれらから「切り取られる」か、または除去された「コア」または中央の矩形形状を有してもよい。以下でさらに詳述されるように、このようにアイボックスエリアを縮小することは、光学中継システム内の1つまたは複数の光学部品のサイズが縮小されることを可能にし、観察者がアイボックス内の中心にない目の位置で遭遇する画像の歪みおよび/または視差の程度を低減するという二重の有益な効果を有する。その上、本発明者は、非矩形アイボックスを画定することにより、車両の移動中に運転者が通常使用する目の位置の範囲などの、すべての所望の目の位置から虚像を完全に知覚する観察者の能力を損なうことなく、これらの利点をもたらすことができることを認識した。
【0094】
参照により本明細書に組み込まれる英国特許第2,575,651B号明細書は、本明細書に開示された概念を実施するために利用される一般的な手法のさらなる詳細を含む。誤解を避けるために、英国特許第2,575,561B号明細書は、角が切り取られたアイボックスを開示していない。実際、英国特許第2,575,561B号明細書は、アイボックスが矩形でなければならないという当分野の先入観を忠実に反映している。本発明者は、この先入観に異議を唱え、なされ得る驚くべき有意な利益を実証した。
【0095】
図4Aは、従来の構成(本明細書では「第1の構成」)を有するヘッドアップディスプレイの視野およびアイボックスエリアを示す。図4Aに示されたように、従来の構成では、視野410Aは、比較的高いアスペクト比を有する四辺形エリアを含む。詳細には、幅は視野410Aの高さよりも大きい。図示された構成では、幅は水平にx度に及び、高さは垂直にy度に及ぶ。比x:yは、たとえば、2:1または16:9であってもよい。上述されたように、視野410Aは、ヘッドアップディスプレイによって虚像がその中に形成されるエリアに相当する。比較的高いアスペクト比を有する視野は、自動車用途およびワイドスクリーン画像を表示する用途を含む多くの用途に適している。従来の構成では、アイボックス420Aも、比較的高いアスペクト比を有する四辺形エリアを含む。詳細には、幅はアイボックス420Aの高さよりも大きい。図示された例では、幅はammであり、高さはbmmである。しかしながら、通常、比a:bは比x:yよりも低い。上述されたように、アイボックス420Aは、観察者が虚像をその中に完全に知覚することができるエリアに相当する。
【0096】
図4Bは、切り取られた視野を含む構成(本明細書では「第2の構成」)を有するヘッドアップディスプレイの視野およびアイボックスエリアを示す。図4Bに示されたように、第2の構成では、視野410Bは、図4Aの視野410Aの四辺形エリアのサブエリアを含む。詳細には、視野410Bは、四辺形のコアまたは基本形状を含み、その中の4つの角の各々は「切り取られている(cut off)」かまたは「切り取られている(cropped)」。図示された例は、自動車用途向けに最適化された視野420Bに従って非対称サブエリアを形成するために、4つの角の各々が異なる量だけ切り取られていることを示す。当業者が諒解するように、他の用途では、視野410Bのコアの四辺形形状のより少ない角が切り取られてもよく、かつ/または角が切り取られてその対称サブエリアを形成してもよい。しかしながら、アイボックス420Bは、従来の構成と一致する四辺形エリアを含む。したがって、アイボックス420Bは、図4Aのアイボックス420Aと同等である。
【0097】
図4Cは、実施形態による構成(本明細書では「第3の構成」)を有するヘッドアップディスプレイの視野およびアイボックスエリアを示す。図4Cに示されたように、第3の構成では、視野410Cは、図4Aの四辺形の視野410Aのサブエリアを含む。詳細には、視野410Cは、四辺形のコアまたは基本形状を含み、その中の4つの角の各々は「切り取られている(cut off)」かまたは「切り取られている(cropped)」。図示された構成では、視野410Cは、図4Bの視野410Bと同等であり、したがって自動車用途向けに最適化されている。
【0098】
本開示によれば、アイボックス420Cは、非矩形エリアを形成するように構成される。したがって、ヘッドアップディスプレイのアイボックスの従来の構成とは対照的に、本開示によるアイボックス420Cは非四辺形エリアを含む。詳細には、図示された例では、アイボックス420Cは、実質的に四辺形のコアまたは基本形状を有するエリアを含み、その中の角の各々は「切り取られている(cut off)」かまたは「切り取られている(cropped)」。図示された例は、4つの角の各々が同様の量だけ切り取られて、実質的に対称的な観察エリアを形成することを示す。当業者が諒解するように、他の用途では、アイボックス420Cのコアの四辺形形状のより少ない角が切り取られてもよく、かつ/または角が切り取られて、全体的に対称の観察エリアを形成してもよい。
【0099】
図4Dは、図4Bおよび図4Cと同様の非矩形の虚像エリアまたは視野を示す。詳細には、図4Dは、自動車用途向けの六角形の形状を有する虚像エリア内の遠距離場に表示されるピクチャコンテンツを示す。虚像エリア450は、車道または道路の第1の車線441、第2の車線442、および第3の車線443に重なる。図4Dに示されたように、虚像エリアの六角形の形状は、車道の外側の領域を除外する。画定された六角形は、規則的または不規則的であってもよい。他の実施形態では、図4Aの矩形の虚像エリアの2つの角(たとえば、2つの下部の角)のみが切り詰められる。図4Dに示されたように、ナビゲーション用の山形紋460などのピクチャコンテンツは、虚像エリアに表示されてもよい。画像コンテンツは、第2の車線442などの1つの車線に限定されてもよく、または第1の車線441および/もしくは第3の車線443を含む2つ以上の車線にわたって延在してもよい。虚像のピクチャコンテンツは、アイボックスにおいて観察者からある距離、または距離の範囲で景色に重なると言える。
【0100】
本発明者は、本明細書に記載された非矩形観察エリアとしてアイボックスを構成することにより、車両の移動中に運転者によって使用される目の位置の範囲などの、すべての所望の目の位置から虚像を完全に知覚する観察者の能力を損なうことなく、システムの光学性能が改善されることを見出した。詳細には、本発明者は、予想外に、本明細書に記載された非矩形アイボックスを形成するための構成を最適化することにより、アイボックス内の観察位置において、虚像の点(本明細書では「虚像点」または「フィールドポイント」)の歪みおよび垂直/水平視差の改善が見られることを見出した。したがって、非矩形アイボックスを有するように構成されたヘッドアップディスプレイの画質は、従来の矩形アイボックスで構成されたヘッドアップディスプレイと比較して、アイボックス内のすべての位置で改善される。本発明者は、非矩形アイボックスでヘッドアップディスプレイを構成すると、図4Bおよび図4Cの例のように虚像エリアの視野も切り取られるか否かにかかわらず、光学性能、したがって画質の改善が示されることをさらに見出した。したがって、図4Cのアイボックス420Cの非矩形エリアと組み合わせて、図4Aの従来の構成の視野410Aの矩形エリアを有するヘッドアップディスプレイを構成することが可能である。
【0101】
図5は、ヘッドアップディスプレイの従来の矩形アイボックス内の目の位置の研究結果を示す図である。詳細には、アイボックスは、垂直寸法/高さよりも長い水平寸法/幅を有する矩形500を含む。円501は、一定期間にわたる観察者の観察された目の位置を示す。図から分かるように、大部分の目の位置は、アイボックスの長さに対応する長さ、およびアイボックスの高さ未満の幅を有する楕円503内にある。詳細には、図示された例では、楕円503の幅は30mmである。楕円503の長軸はアイボックスの高さの中心と位置合わせされ、楕円503の短軸はアイボックスの幅の中心と位置合わせされる。
【0102】
本発明者は、矩形アイボックス500を形成する観察エリアの角が、ヘッドアップディスプレイの通常の使用中にほとんど使用されないままであることを認識した。したがって、通常の使用中に表示された虚像を観察者が明確に知覚する能力を過度に損なうことなく、従来の矩形形状の角を「切り取る(cutting-off)」または「切り取る(cropping)」ことによってアイボックスの形状を構成することが可能である。したがって、本発明者は、アイボックスが非矩形形状505を有するように再構成され得ることを認識した。
【0103】
光学部品サイズの最適化結果
本開示の実施形態では、光学中継システムは、ミラーなどの光学部品または光学素子を備える。通常、光学部品は、ピクチャ生成ユニットから受信された画像を拡大するための光パワーを有する。光学部品は、その上流の光結合器などの別の光学部品によって形成された虚像の歪みを補償するように構成された自由形式形状であってもよい。
【0104】
図6A図6Cは、上述されたヘッドアップディスプレイの第1、第2、および第3の構成に最適化された適切な例示的な光学部品を示す。詳細には、いずれの場合も、光学部品は、図4A図4Cに示されたそれぞれの視野410A~410Cの形状に全体的に対応して成形される。
【0105】
詳細には、図6Aに示された光学部品は、視野410Aの四辺形形状に全体的に対応する台形形状を含む。図6Bに示された光学部品は、視野410Bの形状に全体的に対応する4つの切り取られた角を有する四辺形のコア形状を含む。最後に、図6Cに示された光学部品は、視野410Cの形状に全体的に対応する4つの切り取られた角を有する四辺形のコア形状を含む。図4Bおよび図4Cの第2および第3の構成で形成された視野の形状は実質的に同じであるが、図6Cの光学部品は、非矩形アイボックスの面積が減少した結果として、図6Bの光学部品よりも多く切り取られることに留意されたい。
【0106】
図6A図6Cは、それぞれの光学部品上のピクチャの光の例示的な光線束足跡を示す。図6A図6Cに示された各「ブロック」は、「フィールドポイント」と呼ばれる1つの虚像点、およびすべての許容される目の位置に関係する。図面は、説明を容易にするために12個の異なる虚像点を示す。当業者は、実際には、より多くの虚像点が虚像を構成し、光学部品上の非常に多くの他の位置がピクチャの光を受け取ることを諒解するであろう。図示された各フィールドポイントブロックは、すべての許容される目の位置(すなわち、虚像がはっきりと見える場所)に関係するので、ブロックの形状はアイボックスの形状に大部分対応する。したがって、各ブロックは、対応するフィールドポイントに対するアイボックス内のすべての可能な目の位置に関係する。
【0107】
図6Aを参照すると、第1の構成では、すべての目の位置に虚像点を形成するために大きいエリアの光学部品が必要であることが分かる。しかしながら、図6Bに示されたように、第2の構成では、すべての目の位置に虚像点によって形成される光跡は、より小さいエリアに限定される。したがって、光学部品は、点線の輪郭によって示されたサブエリアの形状を形成するために、その角を切断することによって切り取ることができる。光学部品の形状は、四辺形の表示エリア(すなわち、視野または虚像エリア)のサブエリアの形状に対応して成形されると言える。しかしながら、図6Bに示されたように、形状は、図4Bの視野410Bの形状と同一ではないが、大部分対応する。詳細には、光学部品の切り取り量は、表示エリアの四辺形形状の切り取り量よりも少ないが、各角の切り取りは同じ形状および割合である。最後に、図6Cに示されたように、第3の構成では、すべての目の位置に虚像点によって形成される光跡は、図6Bのサブエリアよりも小さい光学部品のサブエリアに限定される。したがって、光学部品は、破線の輪郭によって示されたサブエリアの形状を形成するために、その角を切断することによって切り取ることができる。光学部品の形状は、四辺形の表示エリア(すなわち、視野または虚像エリア)のサブエリアの形状およびアイボックスの形状に対応して成形されると言える。図6Cに示された光学部品の切り取り量は、図6Bに示された切り取り量よりも多い。それにもかかわらず、光学部品の切り取り量は、表示エリアの四辺形形状の切り取り量よりもわずかに少なくてもよいが、各角の切り取りは同じ形状および割合である。当業者が理解するように、図6Bおよび図6Cの各々における光学部品の形状は、この研究で使用された限られた数のフィールドポイントによって光跡から画定される。より大きい数のフィールドポイントを使用して、光学部品のより調整された形状、したがってより調整された切り取りを識別することができる。
【0108】
当業者が諒解するように、図6Cは、光学再生システムの光学部品の形状が視野(虚像エリア)の形状およびアイボックスの形状に合わせて調整され得る方法の単なる一例を示している。詳細には、図6Cの例は、片側または車道を走行するための3車線道路レイアウトのための非対称形状の視野を提供する不規則な切り取りで、自動車用途向けに最適化されている。視野は、用途の要件に応じて、対称または非対称にかかわらず、任意の他の形状を有してもよい。図6Cのように、光学部品上の光跡を識別するために、任意の所望の形状の視野から光学部品およびアイボックスまでフィールドポイントを追跡するために、シミュレーションが実行されてもよい。したがって、光学部品上の識別された光跡に基づいて、任意の所与の用途に切り取りの最適な形状および量が提供されてもよい。
【0109】
図7は、それぞれ、第1、第2、および第3の構成について、図6A図6Cの光学部品の異なる形状およびエリアの相対サイズの比較を示す。詳細には、実線の輪郭は、第1の構成の場合の図6Aの光学部品700Aの矩形形状を示し、点線の輪郭は、その上に重ね合わされた第2の構成の場合の図6Bの光学部品700Bの切り取られた形状を示し、破線の輪郭は、その上に重ね合わされた第3の構成の場合の図6Cの光学部品700Cの切り取られた形状を示す。光学部品700Bの面積は、光学部品700Aに比べて12%減少している。光学部品700Cの面積は、光学部品700Aに比べて23%減少している。
【0110】
光学性能結果
上述されたように、本発明者は、本明細書に記載されたヘッドアップディスプレイの第1の構成、第2の構成、および第3の構成の光学性能、特に、画質の違いを考察した。本発明者は、実施形態に従って、本明細書に記載された第3の構成に著しい改善を見出した。詳細には、本発明者は、本明細書に記載された第1の構成および第2の構成と比較して、垂直方向および水平方向のアイボックス内の位置の範囲にわたる複数の目の位置における歪み、垂直視差、および水平視差の着実な減少を見出した。
【0111】
図8A図8Cは、それぞれ、第1、第2、および第3の構成を有するヘッドアップディスプレイのアイボックス内の複数の目の位置における歪みの測定結果を示す。
【0112】
当業者が諒解するように、歪みは、固定作動距離で視野にわたって画像の倍率がどのように変化するかを記述する単色光学収差である。歪みは、既知の技法を使用して測定されてもよく、パーセンテージ(すなわち、パーセンテージ収差)として表されてもよい。歪みは画質の尺度である。
【0113】
図8Aは、第1の構成の矩形アイボックスエリアと、歪みが測定されたアイボックス内の円によって表記された24個の目の位置のサンプルとを示す。各円は、歪みが測定されたアイボックス内のそれぞれの目の位置の場所を示し、各円のサイズは歪みの量を表す。したがって、より小さい円は比較的低い歪み測定値を表し、より大きい円は比較的大きい歪み測定値を表す。図8Aに見られるように、画像の歪みは、アイボックスの中心点において、すなわち、目がアイボックスの中心に位置するときに最小である。目が中心点から水平方向または垂直方向の両方に移動すると、画像の歪みが大きくなる。
【0114】
図8Bは、第2の構成の矩形アイボックスエリアと、歪みが測定されたアイボックス内の円によって表記された24個の目の位置の同じサンプルとを示す。図8Bに見られるように、図8Aと同様に、画像の歪みは、アイボックスの中心点において、すなわち、目がアイボックスの中心に位置するときに最小である。目が中心点から水平方向または垂直方向の両方に移動すると、画像の歪みが大きくなる。しかしながら、円のサイズの縮小によって表記されたように、歪みの量は、図8Aと比較して中心点から離れた目の位置で減少する。
【0115】
図8Cは、実施形態による、第3の構成の非矩形アイボックスエリアと、非矩形アイボックス内に入る20個の目の位置のサンプルとを示す。したがって、図8Aおよび図8Bの矩形アイボックスエリアの角にある24個の目の位置のサンプルからのいくつかの目の位置が測定から除外され、アイボックスの垂直中央線の上部および下部に隣接していくつかの新しい目の位置が追加される。図8Cに見られるように、目が中心点から水平方向または垂直方向の両方に移動すると、画像の歪みが再び大きくなる。しかしながら、図8Aおよび図8Bと比較して円のサイズの縮小によって表記されたように、歪みの量は、図8Aおよび図8Bと比較して中心点から離れた目の位置でさらにもっと減少する。したがって、結果は、本開示の非矩形アイボックス内のすべての目の位置において、画像歪みの減少、およびこの改善された画質を示す。
【0116】
図9A図9Cは、フィールドポイントの垂直視差の測定結果を示し、図10A図10Cは、フィールドポイントの水平視差の測定結果を示し、それぞれ、第1、第2、および第3の構成を有するヘッドアップディスプレイのアイボックス内の複数の目の位置に形成されている。
【0117】
当業者が諒解するように、両眼視差は、目の水平方向の分離または瞳孔間距離(視差)から生じる、左右の目によって見られる物体の画像位置の差を指す。水平視差および垂直視差は、各々既知の技法を使用して測定されてもよく、mrad単位の角度で表されてもよい。水平視差と垂直視差を組み合わせた結果として生じる両眼視差は、観察者によって見られる画質の尺度であってもよい。
【0118】
図9Aおよび図10Aは、第1の構成の矩形アイボックスエリアと、それぞれの垂直視差および水平視差が測定されたアイボックス内の円によって表記された15個の目の位置のサンプルとを示す。各円は、アイボックス内のそれぞれの目の位置の場所を示し、各円のサイズは測定された垂直視差または水平視差を表す。したがって、より小さい円は比較的低い視差測定値を表し、より大きい円は比較的高い視差測定値を表す。図9Aおよび図10Aに見られるように、水平視差および垂直視差は、アイボックスの中心点において、すなわち、目がアイボックスの中心に位置するときに最小である。目が中心点から水平方向または垂直方向の両方に移動すると、水平視差および垂直視差が大きくなる。垂直視差は、目の位置が水平中央線から垂直方向に離れるほど大きくなり、水平視差は、目の位置が垂直中央線から水平方向に離れるほど大きくなる。
【0119】
図9Bおよび図10Bは、第2の構成の矩形アイボックスエリアと、垂直視差および水平視差が測定されたアイボックス内の円によって表記された15個の目の位置の同じサンプルとを示す。図9Bおよび図10Bに見られるように、図9Aおよび図10Aと同様に、水平視差および垂直視差は、アイボックスの中心点において、すなわち、目がアイボックスの中心に位置するときに最小である。目が中心点から水平方向または垂直方向の両方に移動すると、水平視差および垂直視差が大きくなる。垂直視差は、目の位置が水平中央線から垂直方向に離れるほど大きくなり、水平視差は、目の位置が垂直中央線から水平方向に離れるほど大きくなる。しかしながら、円のサイズの縮小によって表記されたように、水平視差および垂直視差の量は、図9Aおよび図10Aと比較して中心点から離れた目の位置で減少する。垂直視差および水平視差は、中心点で実質的に同じままであることに留意されたい。
【0120】
図9Cおよび図10Cは、実施形態による、第3の構成の非矩形アイボックスエリアと、非矩形アイボックス内に入る11個の目の位置のサンプルとを示す。したがって、図9Aおよび図10Aならびに図9Bおよび図10Bの矩形アイボックスエリアの角にある15個の目の位置のサンプルからの4つの目の位置が測定から除外されている。図9Cおよび図10Cに見られるように、図9Aおよび図10Aと同様に、水平視差および垂直視差は、アイボックスの中心点において、すなわち、目がアイボックスの中心に位置するときに最小である。目が中心点から水平方向または垂直方向の両方に移動すると、水平視差および垂直視差が大きくなる。垂直視差は、目の位置が水平中央線から垂直方向に離れるほど大きくなり、水平視差は、目の位置が垂直中央線から水平方向に離れるほど大きくなる。しかしながら、円のサイズの縮小によって表記されたように、水平視差および垂直視差の量は、図9Aおよび図9Bならびに図10Aおよび図10Bと比較して中心点から離れた目の位置でさらに減少する。垂直視差および水平視差は、中心点で実質的に同じままであることに留意されたい。したがって、結果は、本開示の非矩形アイボックス内のすべての目の位置において、両眼視差の減少、およびこの改善された画質を示す。
【0121】
図11は、第1の構成(構成A)と比較した、第2および第3の構成(構成「B」および「C」)の各々について、測定された歪み、垂直視差、および水平視差の減少率の表を示す。詳細には、歪み、垂直視差、および水平視差の平均および最大の両方の測定値について、減少率が示されている。
【0122】
HUD体積減少結果
図12は、先の図の第1から第3の構成によるHUD体積最適化作業の結果を示す。示された形状は、少なくとも1つの光学部品を備える光学中継システムが、それぞれ、図6A図6Cの第1~第3の構成および切り取られた光学部品に応じて適合され得る、最適化された(具体的には、最小化された)体積である。第2の構成によって必要とされる体積は、第1の構成の体積よりも最大11%小さくてもよい。第3の構成によって必要とされる体積は、切り取られたアイボックス、したがって切り取られた光学部品のために、第1の構成の体積よりも最大23%小さくてもよい。2番目の行の3D形状は、HUDのカバーガラスが光学素子の切り取りによって可能にされる、よりコンパクトな構成に再配置された追加の最適化作業後の必要な体積を示す。さらなる改善では、第2の構成の体積は第1の構成の体積よりも18%小さく、第3の構成の体積は第1の構成の体積よりも32%小さい。これらの結果は、本開示の切り取られたアイボックスに従って実現可能なHUD体積の大幅な節約を示している。
【0123】
付加的な機能
本明細書に記載された方法およびプロセスは、コンピュータ可読媒体上で具現化されてもよい。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、バッファメモリ、フラッシュメモリ、およびキャッシュメモリなどの、一時的または永続的にデータを記憶するように構成された媒体を含む。「コンピュータ可読媒体」という用語はまた、命令が1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、全体的または部分的に本明細書に記載された方法のいずれか1つまたは複数をマシンに実行させるような、マシンによる実行のための命令を記憶することが可能な任意の媒体または複数の媒体の組合せを含むと解釈されるべきである。
【0124】
「コンピュータ可読媒体」という用語は、クラウドベースのストレージシステムも包含する。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ソリッドステートメモリチップ、光ディスク、磁気ディスク、またはそれらの任意の適切な組合せの例示的な形態の1つまたは複数の有形で非一時的なデータリポジトリ(たとえば、データボリューム)を含むが、それらに限定されない。いくつかの例示的な実施形態では、実行のための命令はキャリア媒体によって伝達されてもよい。そのようなキャリア媒体の例には、一時的な媒体(たとえば、命令を伝達する伝搬信号)が含まれる。
【0125】
添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な修正形態および変形形態が作成され得ることは、当業者には明らかであろう。本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内のすべての修正形態および変形形態を網羅する。

図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12