(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】正極および電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20240306BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240306BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240306BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/525
H01M4/505
(21)【出願番号】P 2022036829
(22)【出願日】2022-03-10
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正井 航平
(72)【発明者】
【氏名】花▲崎▼ 亮
(72)【発明者】
【氏名】辻子 曜
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-507497(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110590(WO,A1)
【文献】特表2019-515437(JP,A)
【文献】特開2016-091898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層と、正極基材とを含む正極であって、
前記正極活物質層は正極活物質を含み、
前記正極活物質は層状金属酸化物を含み、
前記層状金属酸化物中のリチウムを除く金属元素に対するニッケルの比率は70mol%以上であり、
前記正極活物質層の前記正極基材側の表面付近に存在する正極活物質は、前記正極活物質層の前記正極基材側とは反対側の表面付近に存在する正極活物質に比べ200Å以上500Å以下の範囲で大きい結晶子径を有する、正極。
【請求項2】
前記層状金属酸化物は、式(1):
Li
1-aNi
xMe
1-xO
2 (1)
によって表され、前記式(1)中、
aは、-0.3≦a≦0.3の関係を満たし、
Xは、0.7≦x≦1.0の関係を満たし、
Meは、Co、Mn、Al、Zr、B、Mg、Fe、Cu、Zn、Sn、Na、K、Ba、Sr、Ca、W、Mo、Nb、Ti、Si、V、CrおよびGeからなる群より選択される少なくとも一種を示す、請求項1に記載の正極。
【請求項3】
前記正極活物質層は、第1の正極活物質層と、第2の正極活物質層とを含み、前記第2の正極活物質層は前記第1の正極活物質層に対し前記正極基材側に配置される、請求項1または請求項2に記載の正極。
【請求項4】
前記第2の正極活物質層の厚みをT2、前記第1の正極活物質層の厚みをT1としたとき、T2に対するT1の比(T1/T2)は0.33以上3.0以下である、請求項3に記載の正極。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の正極を含む、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、正極および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2016-207479号公報)には、リチウムニッケル複合酸化物を含む非水系電解質二次電池用正極活物質において高容量を維持しつつサイクル特性と高温保存特性とを向上させることを目的として、結晶子径を100nm~130nmの範囲とすること、およびMgを添加してLi/Me比を上げることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、低結晶子径のHi-Ni系正極活物質は、Hi-Ni系特有の充放電による粒子割れを抑制できるが、高結晶子径の活物質と比較して比表面積が大きくなるため、初期効率が低下する場合があった。一方、高結晶子径のHi-Ni系正極活物質は、低結晶子径材料に比べて初期効率は高くなるものの充放電による粒子割れが起こり易く、耐久性が低下する場合があった。
【0005】
本開示の目的は、電解液との接触が多く、副反応による粒子割れが発生し易い表層側に粒子割れが起こりにくく、耐久性が高い低結晶子径の材料を配置し、基材側には高効率で充放電可能な高結晶子径の材料を配置することにより、耐久性および効率の両方に優れる正極および電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の正極および電池を提供する。
[1] 正極活物質層と、正極基材とを含む正極であって、前記正極活物質層は正極活物質を含み、前記正極活物質は層状金属酸化物を含み、前記層状金属酸化物中のリチウムを除く金属元素に対するニッケルの比率は70mol%以上であり、前記正極活物質層の前記正極基材側の表面付近に存在する正極活物質は、前記正極活物質層の前記正極基材側とは反対側の表面付近に存在する正極活物質に比べ200Å以上500Å以下の範囲で大きい結晶子径を有する、正極。
[2] 前記層状金属酸化物は、式(1):Li1-aNixMe1-xO2によって表され、前記式(1)中、aは、-0.3≦a≦0.3の関係を満たし、Xは、0.7≦x≦1.0の関係を満たし、Meは、Co、Mn、Al、Zr、B、Mg、Fe、Cu、Zn、Sn、Na、K、Ba、Sr、Ca、W、Mo、Nb、Ti、Si、V、CrおよびGeからなる群より選択される少なくとも一種を示す、[1]に記載の正極。
[3] 前記正極活物質層は、第1の正極活物質層と、第2の正極活物質層とを含み、前記第2の正極活物質層は前記第1の正極活物質層に対し前記正極基材側に配置される、[1]または[2]に記載の正極。
[4] 前記第2の正極活物質層の厚みをT2、前記第1の正極活物質層の厚みをT1としたとき、T2に対するT1の比(T1/T2)は0.33以上3.0以下である、[3]に記載の正極。
[5] [1]から[4]のいずれかに記載の正極を含む、電池。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電解液との接触が多く、副反応による粒子割れが発生し易い表層側に粒子割れが起こりにくく、耐久性が高い低結晶子径の材料を配置し、基材側には高効率で充放電可能な高結晶子径の材料を配置することにより、耐久性および効率の両方に優れる正極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態における正極の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、正極の製造方法を示す概略フローチャートである。
【
図3】
図3は、本実施形態における電池の構成の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量等に言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量等に限定されない。
【0010】
(正極)
図1は、本実施形態における正極の構成の一例を示す概略図である。正極10は、例えば正極基材11と正極活物質層12とを含む。正極基材11は導電性シートである。正極基材11は、例えばAl合金箔等であってもよい。正極基材11は、例えば10μmから30μmの厚さを有していてもよい。正極基材11の厚さは、定圧厚さ測定器(厚さゲージ)により測定され得る。正極活物質層12は、正極基材11の表面に配置されていてもよい。正極活物質層12は、例えば正極基材11の片面のみに配置されていてもよい。正極活物質層12は、例えば正極基材11の表裏両面に配置されていてもよい。
【0011】
正極活物質層12は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12の厚さは、正極活物質層12の断面SEM画像において測定される。観察面は、正極活物質層12の厚さ方向と平行であり得る。各層の厚さは、それぞれ5箇所以上で測定される。5箇所以上の厚さの算術平均が採用される。
【0012】
正極活物質層12は正極活物質を含む。すなわち正極10は正極活物質を含む。正極活物質層12は、正極基材11側の表面付近において正極活物質1を含み、および正極基材11側とは反対側の表面付近において正極活物質2を含む。正極活物質1は正極活物質2に比べ200Å以上500Å以下の範囲で大きい結晶子径を有する。正極活物質1の結晶子径は正極活物質2の結晶子径に比べ例えば200Å、300Å、400Åまたは500Å大きくてもよい。
【0013】
正極活物質の結晶子径は、式(i):D=Kλ/(βcоsθ)により算出される。式(i)は「シェラーの式」とも称されている。式(i)中「D」は結晶子径を示す。「K」は形状因子を示す。本実施形態においては「K=0.9」である。「λ」はX線の波長を示す。「β」は対象回折ピークのFWHMを示す。FWHMはラジアン単位を有する。「θ」は対象回折ピークのブラッグ(Bragg)角を示す。
【0014】
「β」および「θ」は、XRDプロファイルから求められる。ガラス試料板の表面に、正極活物質(粉末)が配置される。測定時、試料が空気に曝されないように、例えば樹脂フィルム等により試料が覆われる。XRD測定の条件は、例えば下記のとおりである;測定温度:20℃±5℃、X線源:Cu-Kα線(波長 λ=1.5418Å)、検出器:LYNX EYE(Bruker社製)、X線出力:40kV×40mA、ゴニオメータ半径:250mm、測定モード:連続、計数単位:cps、スキャンスピード:0.03°/s、測定開始角度:10°、測定終了角度:120°。XRDプロファイルから、104回折ピークのFWHM(β)、および104回折ピークのブラッグ角(θ)が求められる。「λ」、「β」および「θ」の値が、上記式(V)に代入されることにより、結晶子径が求められる。
【0015】
正極活物質1の結晶子径は、例えば1000Åから1800Å(100nmから180nm)であってよく、好ましくは1100Åから1600Åであり、より好ましくは1200Åから1400Åである。正極活物質2の結晶子径は、例えば1200Åから2000Å(120nmから200nm)であってよく、好ましくは1300Åから1900Åであり、より好ましくは1400Åから1900Åである。正極活物質1,2の結晶子径は例えば正極活物質1,2を焼成するときの温度の調節により行うことができる。正極活物質1,2の結晶子径は焼成温度に依存し、高温で焼成するほど結晶子径は上昇し易い傾向にある。
【0016】
正極活物質層12は、第1の正極活物質層13と、第2の正極活物質層14とを含み、第2の正極活物質層14は第1の正極活物質層13に対し正極基材11側に配置されていてよい。正極活物質層12は、第1の正極活物質層13と、第2の正極活物質層14とからなる2層構造を有していてよい。第1の正極活物質層13は正極活物質1を含んでいてよく、好ましくは正極活物質2を含まずに正極活物質1を含んでいてよい。第2の正極活物質層14は正極活物質2を含んでいてよく、好ましくは正極活物質1を含まずに正極活物質2を含んでいてよい。
【0017】
第1の正極活物質層13および第2の正極活物質層14は互いに同じ厚さを有していてよく、異なった厚さを有していてよく、それぞれ例えば5μmから195μmの厚さを有していてもよい。第1の正極活物質層13の厚みをT1、第2の正極活物質層14をT2としたとき、T2に対するT1の比(T1/T2)は、例えば0.33以上3.0であってよい。T1、T2は正極活物質層12の厚さと同様にして測定される。
【0018】
正極活物質1,2は層状金属酸化物を含む。層状金属酸化物はニッケルおよび遷移金属を含む。層状金属酸化物中のリチウムを除く金属元素に対するニッケルの比率は70mol%以上であり、好ましくは75mol%以上であり、より好ましくは80mol%以上であり、さらに好ましくは85mol%以上であり、例えば100mol%未満または95mol%以下であってよい。
【0019】
層状金属酸化物は、式(1):Li1-aNixMe1-xO2によって表され、前記式(1)中、aは、-0.3≦a≦0.3の関係を満たし、Xは、0.7≦x≦1.0の関係を満たし、Meは、Co、Mn、Al、Zr、B、Mg、Fe、Cu、Zn、Sn、Na、K、Ba、Sr、Ca、W、Mo、Nb、Ti、Si、V、CrおよびGeからなる群より選択される少なくとも一種を示す。上記層状金属酸化物中のリチウムを除く金属元素に対するニッケルの比率(mol%)は、式(1)中の「x」を100倍した値であり得る。層状金属酸化物は、例えばLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.7Co0.2Mn0.1O2、LiNi0.7Co0.1Mn0.2O2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0020】
正極活物質1,2は、一次粒子からなる凝集粒子(二次粒子)を含むことができる。正極活物質1,2が凝集粒子を含むとき、一次粒子と凝集粒子とは実質的に互いに同一の化学組成を有していてもよいし、互いに異なる化学組成を有していてもよい。一次粒子は表面に皮膜が付着していてよい。皮膜は金属元素を含む。皮膜は実質的に金属元素からなっていてもよい。金属元素は、例えばAl、B、TiおよびYからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。皮膜は非金属元素(例えば酸素、炭素、フッ素等)をさらに含んでいてもよい。
【0021】
正極活物質1,2が凝集粒子を含むとき、正極活物質1,2のBET比表面積は例えば0.5m2/gから1.5m2/gであってよい。正極活物質1,2が凝集粒子を含むとき、正極活物質1,2は、例えば10μmから20μmのD50を有していてもよい。本明細書における「D50」は、体積基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの頻度の累積が50%になる粒子径と定義される。体積基準の粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。
【0022】
正極活物質層12は、例えば導電材、バインダ等をさらに含んでいてもよい。導電材は例えばカーボンブラック、繊維状炭素等であってよい。正極活物質層12は例えば、実質的に、質量分率で0.1%から10%のバインダと、0.1%から10%の導電材と、残部の正極活物質とからなっていてもよい。
【0023】
(正極の製造方法)
正極10の製造方法は、スラリーの調製(A1)、塗工(B1)、乾燥(C1)および圧縮(D1)を含むことができる。
図2は、正極10の製造方法を示す概略フローチャートである。スラリーの調製(A1)は、活物質粒子とバインダと有機溶媒とを混合することを含むことができる。有機溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。有機溶媒の使用量は任意である。すなわちスラリーは、任意の固形分濃度(固形分の質量分率)を有し得る。スラリーは例えば40%から80%の固形分濃度を有していてもよい。混合は任意の攪拌装置、混合装置、分散装置が使用され得る。
【0024】
塗工(B1)は、スラリーを基材の表面に塗工することにより、塗膜を形成することを含むことができる。本実施形態においては、任意の塗工装置により、スラリーが基材の表面に塗工され得る。例えば、スロットダイコータ、ロールコータ等が使用されてもよい。塗工装置は、多層塗工が可能なものであってもよい。
【0025】
乾燥(C1)は、塗膜を加熱して乾燥させることを含むことができる。本実施形態においては、塗膜が加熱され得る限り、任意の乾燥装置が使用され得る。例えば熱風乾燥機等により、塗膜が加熱されてもよい。塗膜が加熱されることにより、有機溶媒が蒸発し得る。これにより有機溶媒が実質的に除去され得る。
【0026】
圧縮(D1)は、乾燥後の塗膜を圧縮して正極活物質層12を形成することを含むことができる本実施形態においては、任意の圧縮装置が使用され得る。例えば、圧延機等が使用されてもよい。乾燥後の塗膜が圧縮され、正極活物質層12が形成され、正極10が完成する。正極10は、電池の仕様に応じて、所定の平面サイズに切断され得る。正極10は、例えば帯状の平面形状を有するように切断されてもよい。正極10は、例えば矩形状の平面形状を有するように切断されてもよい。
【0027】
(電池)
図3は、本実施形態における電池の一例を示す概略図である。電池は非水電解質二次電池であってよい。
図3に示す電池100は、外装体90を含む。外装体90は、電極体50および電解質(不図示)を収納している。電極体50は、正極集電部材81によって正極端子91に接続されている。電極体50は、負極集電部材82によって負極端子92に接続されている。
図4は、本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。電極体50は巻回型である。電極体50は、正極20、セパレータ40および負極30を含む。すなわち電池100は正極20を含む。正極20は、正極活物質層22と正極基材21とを含む。負極30は、負極活物質層32と負極基材31とを含む。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【0029】
<実施例1から実施例7および比較例1から比較例5>
(正極活物質の調製)
リチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.85Co0.1Mn0.5O2)が空気雰囲気下で焼成され、層状金属酸化物1から層状金属酸化物9が準備された。焼成温度は表1に示される。本実施例においては、焼成温度Aを最も低い温度、焼成温度Hを最も高い温度としたとき、A<B<C<D<E<F<G<Hの関係を有した。
【0030】
層状金属酸化物1から層状金属酸化物9はいずれも一次粒子からなる凝集粒子(二次粒子)を含んでいた。層状金属酸化物1から層状金属酸化物9において凝集粒子の粒度分布(D50)はいずれも同程度であり、大きな差はなかった。結晶子径はX線解析(XRD)で測定した(003)面の回析線の半値幅からシェラーの式(i)を用いて算出した。結晶子サイズは表1に示される。結晶子径は、焼成温度に依存し、高温で焼成するほど上昇する傾向にあった。
【0031】
(正極の作製)
正極の材料として、導電材(カーボンブラック)、バインダ(PVdF)、分散媒(N-メチル-2-ピロリドン)、正極基材(Al箔)、タブ端子(Al薄板)が準備された。 97.6質量部の正極活物質と、1.5質量部の導電材と、0.9質量部のバインダと、所定量の分散媒とが混合されることにより、正極活物質層用スラリーが調製された。第2の正極活物質層用スラリーが基材の一方の面に塗工され、第2の塗膜が形成され、その上に重ねて第1の正極活物質層用スラリーが塗工され、第1の塗膜が形成された。
【0032】
圧延機により、第1の塗膜および第2の塗膜が圧縮され、第1の正極活物質層(上層)および第2の正極活物質層(下層)が形成された。これにより正極原反が製造された。正極原反が所定サイズに切断されることにより正極が製造された。正極にタブ端子が接合された。第1の正極活物質層および第2の正極活物質層における正極活物質の組合せは表1に示される。
【0033】
(試験セル(非水電解質二次電池)の製造)
負極の材料として、負極活物質(黒鉛)、バインダ(CMC、SBR)、分散媒(水)、負極基材(Cu箔)、タブ端子(Ni薄板)が準備された。98質量部の負極活物質と、1質量部のCMCと、1質量部のSBRと、所定量の分散媒とが混合されることにより、負極スラリーが調製された。負極スラリーが負極基材の表面に塗布され、乾燥されることにより、負極活物質層が形成された。圧延機により、負極活物質層が圧縮された。これにより負極原反が製造された。負極原反が所定サイズに切断されることにより負極が製造された。負極にタブ端子が接合された。
【0034】
セパレータとして、ポリオレフィン製の多孔質シートが準備された。正極と負極との間にセパレータが介在するように、正極とセパレータと負極とが積層された。これにより電極体が形成された。外装体として、Alラミネートフィルム製のパウチが準備された。電極体が外装体に収納された。電解液が準備された。電解液は、溶媒〔EC/EMC=3/7(体積比)〕、支持電解質〔LiPF6(1mоl/L)〕、添加剤〔VC(質量分率で0.3%)〕を含んでいた。電解液が外装体に注入された。外装体が密閉された。以上より試験セルが製造された。
【0035】
25℃の温度環境下において、初期充放電が実施された。0.2mA/cm2の電流により、正極電位が4.3V(vs.Li+/Li)に到達するまで、試験セルが定電流方式で充電された。続いて、電流が0.04mA/cm2に到達するまで、試験セルが定電圧方式で充電された。これにより初期充電容量が測定された。10分間の休止を挟んで、0.2mA/cm2の電流により、正極電位が2.6V(vs.Li+/Li)に到達するまで、試験セルが定電流方式で放電された。本実施例においては、全ての試験セルにおいて、同程度の比容量が確認された。なお本実施例における電流[mA/cm2]は、正極の面積により正規化されている。
【0036】
(初期効率)
試験セルを微充電した後、活性化処理を行い、放電した。放電後に設計上の上下限電圧まで充放電を行った。この際行った充電時の容量を初回充電容量、放電時の容量を初回放電容量と定義する。初期効率は、初回充電容量に対する初回放電容量の比率で算出した。試験セルのSOC(stateof charge)が50%に調整された。本実施例におけるSOCは、初期放電容量に対する、その時点の充電容量の百分率を示す。SOCの調整後、試験セルが放電された。充電容量が放電容量で除されることにより、初期効率が算出された。本実施例においては、89%以上の値を示した場合を「〇」、89%未満の値を示した場合を「×」とした。初期効率は、下記表1に示される。
【0037】
(容量維持率)
供試電池のSOCを100%に調整した。SOC調整後、60℃の恒温槽に電池を保存しつつ充放電を400サイクル繰り返した。50回充放電を繰り返すごとに容量を計測するために、試験時より低レートの充放電を1回行って容量を計測した後、低レートで充電を行い、セル仕様の上限電圧まで充電した。充電後はレートを試験用に戻し、再び50回充放電を行った。以下、同様の操作を試験での充放電のサイクル回数が400サイクルに達するまで繰り返した(容量を確認する目的の充放電はサイクル回数に含まない)。試験前後の放電容量から容量維持率が算出された。供試電池のSOCが95%(400C)に調整された。SOCの調整後、60℃に設定された恒温槽内で供試電池が60日間保存された。保存前後で供試電池の放電容量が測定された。保存前後の放電容量から容量維持率が算出された。本実施例においては、89%以上の値を示した場合を「〇」、89%未満の値を示した場合を「×」とした。容量維持率は、表1に示される。
【0038】
【0039】
本実施例においては、初期効率および容量維持率がいずれも「○」で示される場合、出力特性と耐久性とが両立されているとみなされる。上記表1に示されるように、実施例1から実施例7は、初期効率と容量維持率とが両立されている。
【符号の説明】
【0040】
1,2 正極活物質、10,20 正極、11,21 正極基材、12,22 正極活物質層、13 第1の正極活物質層、14 第2の正極活物質層、30 負極、31 負極基材、32 負極活物質層、40 セパレータ、50 電極体、81 正極集電部材、82 負極集電部材、90 外装体、91 正極端子、92 負極端子、100 電池。