(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】フタロニトリル系化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 253/30 20060101AFI20240306BHJP
C07C 255/51 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C07C253/30
C07C255/51
(21)【出願番号】P 2022143502
(22)【出願日】2022-09-09
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0120763
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516298504
【氏名又は名称】コリア クンホ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Korea Kumho Petrochemical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】100,Cheonggyecheon-ro,Jung-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロ,キ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ナム ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,へ ス
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-071643(JP,A)
【文献】特表2023-515375(JP,A)
【文献】米国特許第04132711(US,A)
【文献】J. Org. Chem.,78(20),2013年,p.10567-10571,https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jo401945r
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a
)第1反応部にフタル酸系化合物及びニトリル系化合物を含む混合物を投入して反応させる段階;
(b)前記(a)段階の生成物を前記第1反応部と連結された第2反応部に移送して350~400℃の条件で反応させる段階;及び
(c)前記第2反応部と連結された吐出部でフタロニトリル系化合物を収得する段階を含み、
前記第2反応部は、流体の流れ方向の長さが流体の流れ方向に垂直な平均断面積の平方根の10倍以上であ
り、
前記(a)段階の反応は、260~350℃、40~200barの条件で行われることを特徴とする、フタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項2】
前記第2反応部の容量は、前記第1反応部の容量100体積部を基準として1~50体積部であることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項3】
前記フタル酸系化合物は、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項4】
前記ニトリル系化合物は、シアン化水素、アセトニトリル、アクリロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ピバロニトリル、スクシノニトリル、フマロニトリル、クロトニトリル及びベンゾニトリルからなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項5】
前記(a)段階の混合物は、フタル酸系化合物及びニトリル系化合物で構成されることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項6】
前記(a)段階で、前記ニトリル系化合物の含量は、前記フタル酸系化合物1重量部を基準として1~500重量部であることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項7】
前記(a)段階で、前記混合物の水分含量は、6,000ppm未満であることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項8】
前記(b)段階で、前記第2反応部に移送される前記(a)段階の生成物の流量は、100~5,000ml/minに調節されることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項9】
前記(b)段階で、前記(a)段階の生成物と前記第2反応部の接触時間は、60分以下であることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項10】
前記(b)段階の反応は、40~200barの条件で行われることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項11】
前記(b)段階は、1~500分間行われることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項12】
前記(c)段階は、前記吐出部で収得した生成物からフタロニトリル系化合物を分離精製する段階であることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項13】
前記(c)段階で分離された残部化合物を前記(a)段階に再使用することを特徴とする、請求項
12に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、連続式工程を用いたフタロニトリル系化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フタロニトリル系化合物は、繊維-形成線形重合体の製造において中間体として用いられる重要な化合物である。また、フタロニトリル系化合物は、アミン、酸-アミド及び複合窒素染料など多様な精密化学製品の有機合成中間体として用いられ、それ以外にも可塑剤、アルキド樹脂改質剤、殺虫剤などに用いられる高付加価値原料である。
【0003】
従来では、酸化触媒の存在下でキシレン化合物をアンモニア及び酸素含有気体と接触及び脱水反応させてフタロニトリル系化合物を製造した。しかし、このような方法は、有害な化学物質であるアンモニア気体を用い、高温、高圧で触媒の存在下で行われるアンモ酸化(ammoxidation)反応であるため、工程が複雑であり、高沸点不純物を蒸溜を通じて精製、分離しなければならないので、副産物の除去が難しいという問題点がある。また、このような従来のフタロニトリル系化合物の製造方法は、アンモ酸化反応に用いられる触媒の種類、酸素含有気体の割合によって生成物の収率が変わり、反応温度によって前駆物質であるキシレン化合物の転換率が変動し工程の制御が難しい。
【0004】
したがって、経済的で且つ環境にやさしい方法で高純度のフタロニトリル系化合物を製造する工程に対する要求が増大している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書の記載事項は、上述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、本明細書の一目的は、フタル酸系化合物から高純度のフタロニトリル系化合物を直接製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面によると、(a)前記第1反応部にフタル酸系化合物及びニトリル系化合物を含む混合物を投入して反応させる段階;(b)前記(a)段階の生成物を前記第1反応部と連結された第2反応部に移送して350~400℃の条件で反応させる段階;及び(c)前記第2反応部と連結された吐出部でフタロニトリル系化合物を収得する段階を含み、前記第2反応部は、流体の流れ方向の長さが流体の流れ方向に垂直な平均断面積の平方根の10倍以上である、フタロニトリル系化合物の製造方法を提供する。
【0007】
一実施例において、前記第2反応部の容量は、前記第1反応部の容量100体積部を基準として1~50体積部であってもよい。
【0008】
一実施例において、前記フタル酸系化合物は、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの混合物であってもよい。
【0009】
一実施例において、前記ニトリル系化合物は、シアン化水素、アセトニトリル、アクリロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ピバロニトリル、スクシノニトリル、フマロニトリル、クロトニトリル及びベンゾニトリルからなる群より選択された一つ以上であってもよい。
【0010】
一実施例において、前記(a)段階の混合物は、フタル酸系化合物及びニトリル系化合物で構成され得る。
【0011】
一実施例において、前記(a)段階で、前記ニトリル系化合物の含量は、前記フタル酸系化合物1重量部を基準として1~500重量部であってもよい。
【0012】
一実施例において、前記(a)段階で、前記混合物の水分含量は、6,000ppm未満であってもよい。
【0013】
一実施例において、前記(a)段階の反応は、260~350℃、40~200barの条件で行われ得る。
【0014】
一実施例において、前記(b)段階で、前記第2反応部に移送される前記(a)段階の生成物の流量は、100~5,000ml/minに調節され得る。
【0015】
一実施例において、前記(b)段階で、前記(a)段階の生成物と前記第2反応部の接触時間は、60分以下であってもよい。
【0016】
一実施例において、前記(b)段階の反応は、40~200barの条件で行われ得る。
【0017】
一実施例において、前記(b)段階は、1~500分間行われ得る。
【0018】
一実施例において、前記(c)段階は、前記吐出部で収得した生成物からフタロニトリル系化合物を分離精製する段階であってもよい。
【0019】
一実施例において、前記(c)段階で分離された残部化合物を前記(a)段階で再使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本明細書の一側面によると、フタル酸系化合物から高純度のフタロニトリル系化合物を直接環境にやさしく製造することができる。
【0021】
また、本明細書の他の一側面によると、副産物の生成量が減少し、反応時間が短縮されてフタル酸系化合物からフタロニトリル系化合物を製造する工程をより効率的に行うことができる。
【0022】
本明細書の一側面の効果は、上述した効果に限定されるものではなく、本明細書の詳細な説明又は請求の範囲に記載された構成から推論可能な全ての効果を含むものと理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本明細書の一具体例で用いられたフタロニトリル系化合物の製造システムを簡略に示した図である。
【
図2】
図2は、本明細書の一具体例で用いられたフタロニトリル系化合物の製造システムを簡略に示した図である。
【
図3】
図3は、本明細書の一具体例で用いられたフタロニトリル系化合物の製造システムを簡略に示した図である。
【
図4】
図4は、本明細書の一具体例で用いられたフタロニトリル系化合物の製造システムを簡略に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[発明を実施するための最良の形態]
以下では、添付した図面を参照して本明細書の一側面を説明する。しかしながら、本明細書の記載事項は種々の異なる形態で具現することができる。したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。また、図面において明細書の一側面を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて類似する部分に対しては類似する図面符号を付与した。
【0025】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとの用語は、「直接的に連結」されている場合だけでなく、それらの間に他の部材を介在して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」との用語は、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく他の構成要素をさらに具備できることを意味する。
【0026】
本明細書で数値的値の範囲が記載されたとき、これの具体的な範囲が異に記述されない限り、その値は有効数字に対する化学での標準規則によって提供された有効数字の精密度を有する。例えば、10は、5.0~14.9の範囲を含み、数字10.0は、9.50~10.49の範囲を含む。
【0027】
以下、添付した図面を参考して本明細書の一実施例を詳しく説明する。
【0028】
フタロニトリル系化合物の製造方法
本明細書の一側面によるフタロニトリル系化合物の製造方法は、(a)前記第1反応部100にフタル酸系化合物及びニトリル系化合物を含む混合物を投入して反応させる段階;(b)前記(a)段階の生成物を前記第1反応部100と連結された第2反応部200に移送して350~400℃の条件で反応させる段階;及び(c)前記第2反応部200と連結された吐出部300でフタロニトリル系化合物を収得する段階を含み、前記第2反応部200は、流体の流れ方向の長さが流体の流れ方向に垂直な平均断面積の平方根の10倍以上であってもよい。
【0029】
前記フタロニトリル系化合物の製造方法は、連続式工程で行われ得、例えば、
図1~
図4に簡略に示したフタロニトリル系化合物の製造システムを用いて行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0030】
前記フタロニトリル系化合物の製造システムは、第1反応部100;前記第1反応部100と連結された第2反応部200;及び前記第2反応部200と連結された吐出部300を含み、前記第2反応部200で、前記第1反応部100方向から前記吐出部300方向に流体の流れが存在し得る。
【0031】
前記第1反応部100は、タンク型反応器であってもよく、撹拌手段(図示せず)を具備することができる。前記第1反応部100でフタル酸系化合物及びニトリル系化合物の反応が一次的に開始及び行われ得る。
【0032】
前記第2反応部200は、流体の流れ方向の長さが流体の流れ方向に垂直な方向に比べて大きい値を有する、一種の管型反応器であってもよく、撹拌手段(図示せず)を具備することができる。例えば、コイル反応器であってもよいが、これに限定されるものではない。
図1~
図4には、前記第2反応部200と細い実線矢印で表記した前記流体の流れ方向が直線で図示されたが、これに限定されるものではなく、前記第2反応部200と流体の流れ方向は、直線以外にもコイル形態などの曲線であってもよい。前記第2反応部200で、前記(a)段階の生成物が追加的に反応し、前記(a)段階の生成物に存在する一部副産物が分解され得る。
【0033】
本明細書で「第2反応部200の長さ」とは、前記第1反応部100と連結された一端から前記吐出部300と連結された他端まで流体が流れる距離を意味する。
【0034】
本明細書で「第2反応部200の断面積」とは、前記流体の流れ方向に垂直な面積を意味する。
【0035】
本明細書で「平均断面積の平方根」は、第2反応部200の断面積が位置によって不変であれば、断面積の平方根を意味することができ、前記第2反応部200の断面積が位置によって変化すれば、下の数学式によって計算されたSsqrt値であってもよい。
【0036】
【0037】
前記式で、Lは、第2反応部200の長さであり、A(x)は、前記第1反応部100と連結された一端(O)から前記吐出部300と連結された他端(L)までの地点(x)による断面積値であり、Ssqrtは、前記平均断面積の平方根を意味する。
【0038】
前記第2反応部200の長さは、平均断面積の平方根の10倍以上、例えば、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、105倍、110倍、115倍、120倍、125倍、130倍、135倍、140倍、145倍、150倍、155倍、160倍、165倍、170倍、175倍、180倍、185倍、190倍、195倍、200倍、205倍、210倍、215倍、220倍、225倍、230倍、235倍、240倍、245倍、250倍、255倍、260倍、265倍、270倍、275倍、280倍、285倍、290倍、295倍、300倍、305倍、310倍、315倍、320倍、325倍、330倍、335倍、340倍、345倍、350倍、355倍、360倍、365倍、370倍、375倍、380倍、385倍、390倍、395倍、400倍、405倍、410倍、415倍、420倍、425倍、430倍、435倍、440倍、445倍、450倍、455倍、460倍、465倍、470倍、475倍、480倍、485倍、490倍、495倍、500倍、505倍、510倍、515倍、520倍、525倍、530倍、535倍、540倍、545倍、550倍、555倍、560倍、565倍、570倍、575倍、580倍、585倍、590倍、595倍、600倍、605倍、610倍、615倍、620倍、625倍、630倍、635倍、640倍、645倍、650倍、655倍、660倍、665倍、670倍、675倍、680倍、685倍、690倍、695倍、700倍、715倍、720倍、725倍、730倍、735倍、740倍、745倍、750倍、755倍、760倍、765倍、770倍、775倍、780倍、785倍、790倍、795倍、800倍、805倍、810倍、815倍、820倍、825倍、830倍、835倍、840倍、845倍、850倍、855倍、860倍、865倍、870倍、875倍、880倍、885倍、890倍、895倍、900倍、905倍、910倍、915倍、920倍、925倍、930倍、935倍、940倍、945倍、950倍、955倍、960倍、965倍、970倍、975倍、980倍、985倍、990倍、995倍、1,000倍、これらのうち二つの値の間の範囲又は1,000倍以上であってもよく、一例として、10~1,000倍であってもよいが、これに限定されるものではない。前記第2反応部200の長さが前記範囲を脱すると、反応温度及び/又は反応圧力の変動制御が不十分となって生成物の純度が低下するか、工程に過度な所要時間がかかり生産性が低下し得る。
【0039】
前記第2反応部200の容量は、前記第1反応部100の容量100体積部を基準として1~50体積部、例えば、1体積部、5体積部、10体積部、15体積部、20体積部、25体積部、30体積部、35体積部、40体積部、45体積部、50体積部又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよいが、これに限定されるものではない。前記第2反応部200の容量が前記第1反応部100に比べて過度に大きいと、工程効率が低下し得、過度に小さいと、反応条件制御による生成物の純度向上効果が不十分であり得る。
【0040】
図1は、このようなフタロニトリル系化合物の製造システムを簡略に示したものであって、タンク型反応器である第1反応部100に管型反応器である第2反応部200を連結して反応を行い、生成物を吐出部300で収得することによって反応温度及び/又は反応圧力の変動によって生成物の純度が低下する問題点を改善し得る。前記第1反応部100と第2反応部200は、流量計などのバルブ(図示せず)を用いて前記第2反応部200に移送される前記(a)段階の生成物の投入量(流量)を調節することができる。
【0041】
前記フタロニトリル系化合物の製造システムに対する他の一例である
図2を参考すると、前記第1反応部100と第2反応部200の間及び/又は前記第2反応部200と吐出部300の間に圧力調節部400をさらに含むことができる。前記圧力調節部400をさらに含むと、反応圧力をより精緻に制御することができる。
【0042】
前記フタロニトリル系化合物の製造システムに対する他の一例である
図3を参考すると、前記第1反応部100、第2反応部200及び吐出部300のうち少なくとも一つは温度調節部120、220、320をさらに具備することができる。前記第1反応部100又は第2反応部200の温度調節部120、220は、各反応部100、200を取り囲む形態であって、高温の反応温度を維持することに役に立ち、前記吐出部300の温度調節部320は、前記吐出部300の前端に位置して生成物の冷却に用いられ得るが、これに限定されるものではない。
【0043】
前記フタロニトリル系化合物の製造システムに対する他の一例である
図4を参考すると、上述した温度調節部120、220、320のうち少なくとも一つと圧力調節部400のうち少なくとも一つを含むことができる。前記温度調節部320と圧力調節部400の位置は、相互変更され得る。
【0044】
前記フタロニトリル系化合物の製造システムを用いると、反応温度及び圧力をより精緻に制御し最終製品の純度が高く、総反応時間を下げ生産性が優秀であり得る。
【0045】
前記(a)段階は、前記第1反応部100に反応物を投入して反応させる段階であって、常温で前記混合物を投入した後に反応温度及び反応圧力を設定して一定時間の間撹拌しながら反応させる段階であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記フタル酸系化合物は、芳香族環と2以上のカルボキシル基を有する化合物であってもよい。例えば、前記フタル酸系化合物は、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの混合物であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0047】
前記ニトリル系化合物は、シアン化水素、アセトニトリル、アクリロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ピバロニトリル、スクシノニトリル、フマロニトリル、クロトニトリル及びベンゾニトリルからなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。前記ニトリル系化合物は、反応物であると同時に溶媒であってもよい。
【0048】
前記フタロニトリル系化合物の製造方法は、アンモニア、高濃度の酸素又は触媒などの別途の添加剤を含まずに反応が行われ得る。したがって、前記(a)段階の混合物は、フタル酸系化合物及びニトリル系化合物で構成され得るが、これに限定されるものではない。例えば、前記混合物は、ニトリル系化合物溶媒に固体相であるフタル酸系化合物を溶解させたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0049】
前記(a)段階で、前記ニトリル系化合物の含量は、前記フタル酸系化合物1重量部を基準として1~500重量部であってもよい。例えば、前記ニトリル系化合物の含量は、前記フタル酸系化合物1重量部を基準として1重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部、60重量部、65重量部、70重量部、75重量部、80重量部、85重量部、90重量部、95重量部、100重量部、105重量部、110重量部、115重量部、120重量部、125重量部、130重量部、135重量部、140重量部、145重量部、150重量部、155重量部、160重量部、165重量部、170重量部、175重量部、180重量部、185重量部、190重量部、195重量部、200重量部、205重量部、210重量部、215重量部、220重量部、225重量部、230重量部、235重量部、240重量部、245重量部、250重量部、255重量部、260重量部、265重量部、270重量部、275重量部、280重量部、285重量部、290重量部、295重量部、300重量部、305重量部、310重量部、315重量部、320重量部、325重量部、330重量部、335重量部、340重量部、345重量部、350重量部、355重量部、360重量部、365重量部、370重量部、375重量部、380重量部、385重量部、390重量部、395重量部、400重量部、405重量部、410重量部、415重量部、420重量部、425重量部、430重量部、435重量部、440重量部、445重量部、450重量部、455重量部、460重量部、465重量部、470重量部、475重量部、480重量部、485重量部、490重量部、495重量部、500重量部又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよい。前記ニトリル系化合物の含量が前記フタル酸系化合物の含量に比べて多いほど生成物の純度が上昇し得るが、前記ニトリル系化合物が過度に多いと、経済的な側面で不利であり得る。
【0050】
前記(a)段階で、前記混合物の水分含量は、6,000ppm未満であってもよい。例えば、前記混合物の水分含量は、6,000ppm未満、5,000ppm未満、4,000ppm未満、3,000ppm未満、2,000ppm未満、1,000ppm未満、750ppm未満、500ppm未満又は250ppm未満であってもよい。前記混合物の水分含量が低いほど生成物の純度が向上され得る。
【0051】
前記(a)段階の反応は、260~350℃、40~200barの条件で行われ得る。例えば、260℃、265℃、270℃、275℃、280℃、285℃、290℃、295℃、300℃、305℃、310℃、315℃、320℃、325℃、330℃、335℃、340℃、345℃、350℃又はこれらのうち二つの値の間の範囲の反応温度で行われ得、40bar、45bar、50bar、55bar、60bar、65bar、70bar、75bar、80bar、85bar、90bar、95bar、100bar、105bar、110bar、115bar、120bar、125bar、130bar、135bar、140bar、145bar、150bar、155bar、160bar、165bar、170bar、175bar、180bar、185bar、190bar、195bar、200bar又はこれらのうち二つの値の間の範囲の反応圧力で行われ得る。前記(a)段階の反応温度が過度に低いと、生成物の純度が下落するか、反応が行われず、反応温度が過度に高いと、副産物の生成が増加して純度が下落し得る。前記(a)段階の反応圧力が過度に低いと、反応が行われず、反応圧力が過度に高いと、安定性が悪くなり得る。
【0052】
前記(a)段階の反応は、1~500分間行われ得る。例えば、前記(a)段階は、1分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、65分、70分、75分、80分、85分、90分、95分、100分、105分、110分、115分、120分、125分、130分、135分、140分、145分又は150分間行われ得、これらの中間範囲を含むことができる。前記(a)段階の反応時間が前記範囲を脱すると、不純物が形成されて純度が減少するか、反応が不十分に行われて収率が減少し得る。
【0053】
前記(b)段階は、前記(a)段階の生成物を前記第2反応部200に移送して反応させる段階であって、前記第2反応部200の反応温度及び反応圧力を設定した後、前記(a)段階の生成物を一定な流量で移送して一定時間の間撹拌しながら反応させる段階であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0054】
前記(b)段階で、前記第2反応部200に移送される前記(a)段階の生成物の流量は、100~5,000ml/minに調節され得る。例えば、100ml/min、200ml/min、300ml/min、400ml/min、500ml/min、600ml/min、700ml/min、800ml/min、900ml/min、1,000ml/min、1,100ml/min、1,200ml/min、1,300ml/min、1,400ml/min、1,500ml/min、1,600ml/min、1,700ml/min、1,800ml/min、1,900ml/min、2,000ml/min、2,100 ml/min、2,200ml/min、2,300ml/min、2,400ml/min、2,500ml/min、2,600ml/min、2,700ml/min、2,800ml/min、2,900ml/min、3,000ml/min、3,100ml/min、3,200ml/min、3,300ml/min、3,400ml/min、3,500ml/min、3,600ml/min、3,700ml/min、3,800ml/min、3,900ml/min、4,000ml/min、4,100ml/min、4,200ml/min、4,300ml/min、4,400ml/min、4,500ml/min、4,600ml/min、4,700ml/min、4,800ml/min、4,900ml/min、5,000ml/min又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよい。前記流量が前記範囲より低いと、前記(a)段階の生成物と前記第2反応部200の接触時間が過度に長くなって工程効率が低下し、副産物が増加して生成物の純度が低下し得、前記流量が前記範囲より高いと、前記接触時間が過度に短くなって生成物の純度が低下し得る。前記流量は、マスフローコントローラ(mass flow controller、MFC)を用いて調節することができるが、これに限定されるものではない。
【0055】
前記(b)段階の反応は、350~400℃の条件で行われ得る。例えば、350℃、355℃、360℃、365℃、370℃、375℃、380℃、385℃、390℃、395℃、400℃又はこれらのうち二つの値の間の範囲の反応温度で行われ得る。前記(b)段階の反応温度が前記範囲より低いと、生成物の純度が下落するか、反応が行われず、反応温度が過度に高いと、副産物の生成が増加して純度が下落し得る。
【0056】
前記(b)段階の反応温度は、前記(a)段階の反応温度より高くてもよい。前記第2反応部200の反応温度を前記第1反応部100に比べて高い350~400℃に設定することによって、前記(a)段階の反応を通じて生成された副産物の一部を分解することができ、分解された副産物が反応して目的生成物に転換され得、それによって、副産物の割合が減少した高い純度のフタロニトリル系化合物を製造することができる。一実施例において、前記分解される副産物は、N-acetyl-3-cyano-benzamide(3-CBAA)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
前記(b)段階で、前記(a)段階の生成物と前記第2反応部20の接触時間は、60分以下であってもよい。例えば、60分以下、55分以下、50分以下、45分以下、40分以下、35分以下、30分以下、25分以下、20分以下、15分以下、10分以下、5分以下又は1分以下であってもよい。前記(a)段階の生成物と前記第2反応部200の接触時間が前記範囲を満足すると、前記(a)段階の反応を通じて生成された副産物の一部が分解されて目的生成物に転換されることによって生成物の純度を増加させ得る。前記接触時間が前記範囲より長くなると、副産物が増加して生成物の純度が低くなり得る。前記接触時間は、前記第2反応部200の体積、前記第2反応部200に移送される前記(a)段階の生成物の流量乃至単位流量当たり反応物と生成物の吐出量のうち少なくとも一つを調節して制御することができるが、これに限定されるものではない。前記接触時間は、前記第2反応部200内での滞留時間(residence time)を意味することができる。
【0058】
前記(b)段階の反応は、40~200barの条件で行われ得る。例えば、40bar、45bar、50bar、55bar、60bar、65bar、70bar、75bar、80bar、85bar、90bar、95bar、100bar、105bar、110bar、115bar、120bar、125bar、130bar、135bar、140bar、145bar、150bar、155bar、160bar、165bar、170bar、175bar、180bar、185bar、190bar、195bar、200bar又はこれらのうち二つの値の間の範囲の反応圧力で行われ得る。前記(b)段階の反応圧力が過度に低いと、反応が行われず、反応圧力が過度に高いと、安定性が低下し得る。前記(b)段階の反応圧力は、前記(a)段階の反応圧力と同一の条件で行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記(b)段階は、1~500分間行われ得る。例えば、前記(b)段階は、1分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、65分、70分、75分、80分、85分、90分、95分、100分、105分、110分、115分、120分、125分、130分、135分、140分、145分、150分、155分、160分、165分、170分、175分、180分、185分、190分、195分、200分、205分、210分、215分、220分、225分、230分、235分、240分、245分、250分、255分、260分、265分、270分、275分、280分、285分、290分、295分、300分、305分、310分、315分、320分、325分、330分、335分、340分、345分、350分、355分、360分、365分、370分、375分、380分、385分、390分、395分、400分、405分、410分、415分、420分、425分、430分、435分、440分、445分、450分、455分、460分、465分、470分、475分、480分、485分、490分、495分又は500分間行われ得、これらの中間範囲を含むことができる。前記(b)段階の反応時間が増加するほど生成物の純度が上昇し得るが、反応時間が過度に長いと、生産性が低下し得る。
【0060】
前記(b)段階は、第1反応部で一定レベルの反応が進行された生成物を第2反応部を用いて高温で分割反応させることによって全体的な反応速度、収率及び純度を改善し得る。
【0061】
前記(a)段階及び(b)段階の反応は、カルボキシル基とニトリル基の直接置換反応を通じたジニトリル化(di-nitrilation)であってよく、その一つの例示は、下の反応式のように表現され得る。
【0062】
【0063】
前記反応式で、Rは、フェニレンなど芳香族環であり、R'は、炭素数が1~20であるアルキル基であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基などであってもよい。
【0064】
前記(c)段階は、前記吐出部300で収得した生成物からフタロニトリル系化合物を分離精製する段階であってもよい。前記分離精製は、フタロニトリル系化合物と残部化合物に分離するものであってもよく、蒸溜分離など公知の多様な方法によって行われ得る。前記残部化合物は、例えば、未反応フタル酸系化合物、未反応ニトリル系化合物及びフタル酸系化合物のカルボキシル基のうち一部のみ反応したフタル酸ニトリル系化合物からなる群より選択された一つ以上を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記(c)段階で分離されたフタロニトリル系化合物を除いた残部化合物を前記(a)段階に再使用することができる。本明細書の一実施例によるフタロニトリル系化合物の製造方法は、触媒など別途の添加剤の使用なしに実行できるので、前記残部化合物を別途の精製なしに再使用することができる。
【0066】
前記フタロニトリル系化合物の製造方法は、生成物であるフタロニトリル系化合物の純度が60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上又は95%以上であってもよい。
【0067】
以下、本明細書の実施例に関してより詳しく説明する。ただし、以下の実験結果は、前記実施例のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などによって本明細書の範囲と内容を縮小又は制限して解釈してはならない。下で明示的に提示しない本明細書の多くの具現例のそれぞれの効果は、該当部分で具体的に記載する。
【0068】
反応器
第1反応器:撹拌機が具備された容量100体積部のタンク型反応器
第2反応器:長さが断面積の平方根の670倍である容量6体積部の管型反応器
実施例1
撹拌機が具備された第1反応器にイソフタル酸(isophthalic acid;IPA)75g及びアセトニトリル(acetonitrile;ACN)1,500gを投入した。前記第1反応器の内部に2~3barの圧力で窒素を3回置換した。前記第1反応器を600rpmで撹拌しながら内部温度を280℃に昇温した。反応温度280℃及び反応圧力85~90barを維持しながら1時間の間反応させた後、反応物を1,000ml/minの流量で反応温度350~400℃及び反応圧力85~90barの第2反応器に移送させた。前記第2反応器の末端で収得した生成物を蒸溜塔に移送した後、真空下で蒸溜してアセトニトリル及び酢酸(acetic acid)を除去した。除去されたアセトニトリルは再使用した。残った生成物は気体クロマトグラフィー(gas chromatography;GPC)で分析して純度を確認し、追加精製を通じて副産物を分離したイソフタロニトリル(isophthalonitrile;IPN)を収得した。
【0069】
実施例2
撹拌機が具備された第1反応器にイソフタル酸75~214.3g及びアセトニトリル1,500gを投入した。前記第1反応器の内部に2~3barの圧力で窒素を3回置換した。前記第1反応器を600rpmで撹拌しながら内部温度を280℃に昇温した。反応温度280℃及び反応圧力85~90barを維持しながら1時間の間反応させた後、反応物を1,000ml/minの流量で反応温度400℃及び反応圧力85~90barの第2反応器に移送させた。前記第2反応器の末端で収得した生成物を蒸溜塔に移送した後、真空下で蒸溜してアセトニトリル及び酢酸を除去した。除去されたアセトニトリルは再使用した。残った生成物は、30分間隔で気体クロマトグラフィーで分析して純度を確認し、追加精製を通じて副産物を分離したイソフタロニトリルを収得した。
【0070】
比較例1
撹拌機が具備された第1反応器にイソフタル酸150g及びアセトニトリル1,500gを投入して反応計を形成した。前記第1反応器の内部に2~3barの圧力で窒素を3回置換した。前記第1反応器を600rpmで撹拌しながら内部温度を280℃に昇温した。反応温度280℃及び反応圧力85~90barを維持しながら4時間の間反応させた。反応が終わった後、反応計を室温まで冷却した。その後、反応計を真空下で蒸溜してアセトニトリル及び酢酸を除去した。除去されたアセトニトリルは再使用した。残った生成物は気体クロマトグラフィーで分析して純度を確認し、追加精製を通じて副産物を分離したイソフタロニトリルを収得した。
【0071】
比較例2
撹拌機が具備された第1反応器にイソフタル酸75g及びアセトニトリル1,500gを投入した。前記第1反応器の内部に2~3barの圧力で窒素を3回置換した。前記第1反応器を600rpmで撹拌しながら内部温度を280℃に昇温した。反応温度280℃及び反応圧力85~90barを維持しながら1時間の間反応させた後、反応物を1,000ml/minの流量で反応温度280~300℃及び反応圧力85~90barの第2反応器に移送させた。前記第2反応器の末端で収得した生成物を蒸溜塔に移送した後、真空下で蒸溜してアセトニトリル及び酢酸を除去した。除去されたアセトニトリルは再使用した。残った生成物は気体クロマトグラフィーで分析して純度を確認し、追加精製を通じて副産物を分離したイソフタロニトリルを収得した。
【0072】
比較例3
撹拌機が具備された第1反応器にイソフタル酸150g及びアセトニトリル1,500gを投入した。前記第1反応器の内部に2~3barの圧力で窒素を3回置換した。前記第1反応器を600rpmで撹拌しながら内部温度を280℃に昇温した。反応温度280℃及び反応圧力85~90barを維持しながら1時間の間反応させた後、反応物を500~1,000ml/minの流量で反応温度280℃及び反応圧力85~90barの第2反応器に移送させた。前記第2反応器の末端で収得した生成物を蒸溜塔に移送した後、真空下で蒸溜してアセトニトリル及び酢酸を除去した。除去されたアセトニトリルは再使用した。残った生成物は気体クロマトグラフィーで分析して純度を確認し、追加精製を通じて副産物を分離したイソフタロニトリルを収得した。
【0073】
比較例4
撹拌機が具備された第1反応器にイソフタル酸75~214.3g及びアセトニトリル1,500gを投入した。前記第1反応器の内部に2~3barの圧力で窒素を3回置換した。前記第1反応器を600rpmで撹拌しながら内部温度を280℃に昇温した。反応温度280℃及び反応圧力85~90barを維持しながら1時間の間反応させた後、反応物を1,000ml/minの流量で反応温度280℃及び反応圧力85~90barの第2反応器に移送させた。前記第2反応器の末端で収得した生成物を蒸溜塔に移送した後、真空下で蒸溜してアセトニトリル及び酢酸を除去した。除去されたアセトニトリルは再使用した。残った生成物は気体クロマトグラフィーで分析して純度を確認し、追加精製を通じて副産物を分離したイソフタロニトリルを収得した。
【0074】
前記実施例及び比較例の反応条件及び気体クロマトグラフィー分析結果を下表1に整理して示した。気体クロマトグラフィー分析結果、副産物としては、3-cyanobenzoic acid(3-CBAc)、3-cyanobenzamide(3-CBAm)及びN-acetyl-3-cyano-benzamide(3-CBAA)が検出された。
【0075】
【0076】
実施例1及び比較例2を参考すると、第2反応器の反応温度が高いほど生成物であるイソフタロニトリルの純度が上昇した。
【0077】
実施例2-1~実施例2-5を参考すると、反応時間が増加するほど生成物であるイソフタロニトリルの純度が上昇した。
【0078】
また、実施例2-5~実施例2-8、及び比較例4を参考すると、イソフタル酸に比べてアセトニトリルの投入量が多いほどイソフタロニトリルの純度が上昇し、第2反応器の反応温度が400℃であり、アセトニトリル投入量がイソフタル酸1重量部を基準として20重量部である実施例2-5の純度が最も高いことを確認した。
【0079】
第2反応器の反応温度が350~400℃である実施例の3-CBAAの割合は、全て1.0%未満であって、第2反応器の反応温度が280~300℃である比較例に比べて副産物である3-CBAAの割合が低いことを確認した。
【0080】
比較例3を参考すると、第1反応器から第2反応器に移送される反応物の流量が増加するほどイソフタロニトリルの純度が上昇した。
【0081】
同一の反応物と反応温度で、第1反応器のみを用いた回分式工程である比較例1と第1反応器及び第2反応器を用いた連続式工程である比較例3を比較すると、連続式工程が回分式工程に比べて短い反応時間にもかかわらずイソフタロニトリルの純度が一層高いことが確認できる。
【0082】
アンモニア、酸触媒など有害化合物質を用いる従来のアンモ酸化反応を用いた製造工程とは異なり、本明細書の一実施例は、別途の触媒や付加物の投入なしにフタル酸系化合物からフタロニトリル系化合物を高い収率で製造することができる。また、連続式工程を用いて回分式反応を行う比較例1に比べて短い反応時間で一層高い純度の生成物を製造することができ、連続式工程の第2反応器の反応温度を高温に設定することによって副産物である3-CBAAの割合を減少させて高い純度のイソフタロニトリルを製造することができる。これは、第1反応器で生成された3-CBAAが高温の第2反応器を通過しながら分解されてイソフタロニトリルに転換されることによる。
【0083】
具体的に、前記実施例は、フタル酸系化合物であるイソフタル酸を反応物として、有機ニトリルであるアセトニトリルを溶媒であると同時に反応物として用いた。これらの混合物に別途の触媒や付加物の投入なしに直接加熱して高温、高圧の反応条件を形成し、酸とニトリルの交換反応を誘導してフタロニトリル系化合物を直接生成した。それと同時に、このような反応をタンク型反応器及び管型反応器に分けて行い、管型反応器の温度を高く設定することによって、より短い時間に高い純度の生成物を製造した。その結果、最終生成物の精製と分離がより容易であった。
【0084】
前述した本明細書の説明は例示のためのものに過ぎず、本明細書の一側面が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本明細書に記載された技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変更が可能なことが理解できるであろう。したがって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型として説明されている各構成要素は分散して実施することもでき、同様に、分散されたものとして説明されている構成要素を結合された形態で実施することもできる。
【0085】
本明細書の範囲は、後述する特許請求の範囲により示されるが、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。
【符号の説明】
【0086】
100:第1反応部
200:第2反応部
300:吐出部
120、220、320:温度調節部
400:圧力調節部