(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】発光素子及びこれを用いた発光表示装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/19 20230101AFI20240306BHJP
C07D 213/22 20060101ALI20240306BHJP
C07D 235/08 20060101ALI20240306BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20240306BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240306BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20240306BHJP
H10K 50/13 20230101ALI20240306BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240306BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20240306BHJP
H10K 50/165 20230101ALI20240306BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20240306BHJP
H10K 50/18 20230101ALI20240306BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20240306BHJP
H10K 85/30 20230101ALI20240306BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240306BHJP
H10K 101/10 20230101ALN20240306BHJP
【FI】
H10K50/19
C07D213/22
C07D235/08
C07D401/14
G09F9/30 365
H10K50/12
H10K50/13
H10K50/15
H10K50/16
H10K50/165
H10K50/17 171
H10K50/18
H10K59/12
H10K85/30
H10K85/60
H10K101:10
(21)【出願番号】P 2022204068
(22)【出願日】2022-12-21
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0194800
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0000005
(32)【優先日】2022-01-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】宋 旭
(72)【発明者】
【氏名】朴 塞 美
(72)【発明者】
【氏名】趙 明 宣
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲ミン▼ 亨
(72)【発明者】
【氏名】金 椿 基
(72)【発明者】
【氏名】金 重 根
(72)【発明者】
【氏名】金 炳 秀
(72)【発明者】
【氏名】▲ユ▼ 榮 ▲ジュン▼
(72)【発明者】
【氏名】金 相 範
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0001826(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0052234(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0130355(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0348613(US,A1)
【文献】国際公開第2021/034039(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/067593(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/010824(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0273192(US,A1)
【文献】特開2016-132642(JP,A)
【文献】特開2019-161218(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0072414(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
C07D 401/14
C07D 213/22
C07D 235/08
G09F 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間にn(nは、2以上の自然数)個のスタックを含んでいる発光素子であって、
陰極に接しているn番目のスタックは、第1青色スタックであり、
前記第1青色スタックは、第1正孔輸送層、第1電子阻止層、430nm~480nmの発光ピークを有するボロン系ドーパントを含んでいる第1青色発光層、前記青色発光層に接している第1電子輸送層、及び前記第1電子輸送層と前記陰極にそれぞれ両側が接している電子注入層を含み、
前記第1電子輸送層は、化学式1の第1物質と化学式2の第2物質が混合され、
【化1】
R1及びR2は独立に、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基及び非置換又はアリール置換カルバゾール基の中から選ばれ、
X1、X2及びX3は独立に、N又はCHであり、
X4、X5及びX6のうち少なくとも一つは必ずNであり、残りはCHであり、
【化2】
L1、L2は単結合であるか、フェニル基、ナフチル基の中から選ばれ、
R3、R4、R6はそれぞれ独立にフェニル基、ナフチル基、アントラセン基の中から選ばれ、
R5は単結合であるか、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基から選ばれる、
発光素子。
【請求項2】
前記電子注入層は、金属を含んでいる化合物である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記電子注入層は、LiF又はLiqである、請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記電子注入層の厚さは、前記第1電子輸送層の厚さの1/8~1/100である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1電子輸送層において前記第1物質と前記第2物質との重量比は4:6~6:4である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1電子阻止層は、化学式3の第3物質を含み、
【化3】
L3は、単結合であるか、フェニル基、ナフチル基の中から選ばれ、
R7~R14は重水素に置換され、
R15及びR16はそれぞれ独立に、フェニル基、重水素置換されたフェニル基、ビフェニル基、重水素置換されたビフェニル基、フルオレニル基、重水素置換されたフルオレニル基、ヘテロアリール基、重水素置換されたヘテロアリール基、カルバゾール基、重水素置換されたカルバゾール基、ジベンゾフラン基、重水素置換されたジベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、重水素置換されたジベンゾチオフェン基の中から選ばれる、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
前記n番目のスタックに比べてより前記陽極に隣接したn個のスタックのうち少なくとも一つは、第2青色スタックであり、
前記第2青色スタックは、第2正孔輸送層、第2電子阻止層、430nm~480nmの発光ピークを有するボロン系ドーパントを含んでいる第2青色発光層、及び前記第2青色発光層に接している第2電子輸送層を含み、
前記第2青色スタックと前記第2青色スタックに隣接する次のスタックとの間に、n型電荷生成層及びp型電荷生成層を含む電荷生成ユニットが含まれている、請求項1に記載の発光素子。
【請求項8】
前記第2電子輸送層は、前記第1物質を含み、前記第2物質を含まず、
前記第2電子輸送層は、前記n型電荷生成層と接している、請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
前記p型電荷生成層は、化学式4の第4物質をp型ドーパントとして含み、
【化4】
Aは、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、マロノニトリル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、置換或いは非置換されたアリール基又はヘテロアリール基であり、置換或いは非置換された炭素数1~12のアルキル基、置換或いは非置換された炭素数1~12のアルコキシ基から選ばれ、
Aの置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、シアノ、マロノニトリル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、水素及び重水素の一つを含み、
C1及びC2はそれぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基のうち一つであり、
D1~D4はそれぞれ独立に、単結合又は二重結合で連結し、ハロゲン、シアノ基、マロノニトリル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシのうち一つに置換され、少なくとも2つはシアノ基を含む、
請求項7に記載の発光素子。
【請求項10】
前記電荷生成ユニットを挟んで前記第2青色スタックと隣り合う次のスタックは、少なくとも赤色燐光発光層を含んでいる燐光スタックである、請求項7に記載の発光素子。
【請求項11】
前記燐光スタックは、前記赤色燐光発光層に接して緑色燐光発光層又は黄緑色燐光発光層をさらに含んでいる、請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記n型電荷生成層は、電子輸送性ホストに、アルカリ金属、アルカリ土金属及び遷移金属のいずれか一つをn型ドーパントとして含んでいる、請求項7に記載の発光素子。
【請求項13】
前記第1青色スタックは、前記陰極の向かい側において、前記燐光スタックと隣り合い、
p型ドーパントを含んでいるp型電荷生成層と前記第1正孔輸送層が接している、請求項10に記載の発光素子。
【請求項14】
前記n個のスタックは、
前記陽極に接触する第2青色スタックと、
前記第1青色スタックおよび前記第2青色スタックの間に燐光スタックとをさらに含む、請求項1に記載の発光素子。
【請求項15】
前記第2青色スタックは、第2電子輸送層を含み、
前記第2電子輸送層の材料は、前記第1電子輸送層を構成する材料とは異なる、請求項14に記載の発光素子。
【請求項16】
前記燐光スタックは、第3正孔輸送層と、赤色燐光発光層と、緑色燐光発光層と、第3電子輸送層とを含む、請求項14に記載の発光素子。
【請求項17】
前記燐光スタックは、第3正孔輸送層と、赤色燐光発光層と、黄緑色燐光発光層と、緑色燐光発光層と、第3電子輸送層とを含む、請求項14に記載の発光素子。
【請求項18】
複数個のサブ画素を含んでいる基板と、
前記基板上のサブ画素にそれぞれ備えられた薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタと接続し、請求項1~17のいずれか一項による発光素子とを含んでいる、発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子に関するものであり、複数スタックを含んで白色を具現する発光素子において、陰極に隣接している青色スタックの効率を改善し、全体スタック構造において駆動電圧を減らしかつ白色の出射効率を向上させることができる発光素子及びこれを用いた発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、別個の光源を要求しなく、装置のコンパクト化及び鮮明なカラー表示のために別個の光源を備えなく、発光素子を表示パネル内に有する発光表示装置が、競争力のあるアプリケーション(application)として考慮されている。
【0003】
一方、発光表示装置に用いられる発光素子は、画質を示す上でより高い効率が要求されており、複数のスタックを積層する方式が好まれている。しかしながら、スタック別に構成する発光色及び発光原理の相異のため、複数スタックだけでは効率を増加させるのに限界があった。また、効率を上げるために材料を変更するに当たって安定性への考慮がないため、信頼性が低下する問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した問題を解決するために案出されたものであり、内部量子効率の低い蛍光発光層とその周辺構造を変更することにより、駆動電圧及び寿命の両方とも良好なレベルに向上させることができる発光素子及びこれを用いた発光表示装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発光素子及び発光表示装置は、陰極に接している青色蛍光スタックにおいて青色発光層の周辺層の構成を変更することにより、効率の改善、駆動電圧の低減、及び寿命の改善を図ることができる。
【0006】
本発明の一実施例に係る発光素子は、互いに対向する陽極と陰極との間にn(nは、2以上の自然数)個のスタックを含み、陰極に接しているn番目のスタックは、第1青色スタックであり、前記第1青色スタックは、第1正孔輸送層、第1電子阻止層、430nm~480nmの発光ピークを有するボロン系ドーパントを含んでいる第1青色発光層、前記第1青色発光層に接している第1電子輸送層、及び前記第1電子輸送層と前記陰極にそれぞれ両側が接している電子注入層を含み、前記第1電子輸送層は、化学式1の第1物質と、化学式2の第2物質が混合されてよい。
【0007】
また、本発明の一実施例に係る発光表示装置は、複数個のサブ画素を含んでいる基板、前記基板上のサブ画素にそれぞれ備えられた薄膜トランジスタ、及び前記薄膜トランジスタと接続している前記発光素子を含むことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発光素子及びこれを用いた発光表示装置は、次のような効果を有する。
【0009】
第一に、陰極に接している青色スタックにおいて陰極に隣接した無機化合物からなる電子注入層に接している電子輸送層を二重材料で形成することによって、材料の効率向上効果と駆動電圧制御効果を同時に図ることができる。
【0010】
第二に、速い電子移動特性を有する材料の電子輸送層への適用時に、青色蛍光発光層と反対の面で接した電子阻止層の材料を重水素化し、青色蛍光発光層と電子阻止層との界面において電子又は励起子が積もることを防止できるので、寿命を低下させず、効率の改善、輝度の改善及び量子効率の改善効果を得ることができる。
【0011】
第三に、青色蛍光発光層を備えている青色蛍光スタックにおいて、効率改善によって、白色を実現する発光素子で要求される青色スタックの個数を減らすことができるので、同一白色の実現時にスタック数を低減でき、その結果、駆動電圧の減少及び工程の低減によって収率向上が可能である。
【0012】
第四に、青色蛍光スタックと燐光発光スタックとが連結されるスタック構造において、青色蛍光スタックと燐光発光スタックとの間のp型正孔生成層の物性を変更することによって駆動電圧を減らすことができ、複数スタックによって最終実現される発光素子の白色の効率を向上させ、かつ色特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の発光素子を概略的に示す断面図である。
【
図2A】本発明の発光素子の実施例を示す断面図である。
【
図2B】本発明の発光素子の実施例を示す断面図である。
【
図3】第1実験例群~第4実験例群において用いられた発光素子を示す断面図である。
【
図4A】第1実験例群で調べてみた第2物質及び第1物質を、陰極に隣接している電子輸送層にした場合に、青色発光層とその周辺層のエネルギーバンドダイヤグラムと正孔及び電子の輸送特性を示す図である。
【
図4B】第2実験例群で調べてみた第2物質及び第1物質を、陰極に隣接している電子輸送層にした場合に、青色発光層とその周辺層のエネルギーバンドダイヤグラムと正孔及び電子の輸送特性を示す図である。
【
図5A】第1実験例群の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図5B】第2実験例群の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図5C】第3実験例群の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図6A】第4実験例群の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図6B】第4実験例群の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図6C】第4実験例群の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図7】第5及び第6実験例群において用いられた発光素子を示す断面図である。
【
図8】第6実験例群の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図9】青色蛍光スタックの電子輸送層の輸送能力と青色蛍光スタック及び燐光スタック間のp型電荷生成層の正孔生成能力による駆動電圧の変化を概略的に示す図である。
【
図10】第7実験例群及び第8実験例群が適用された発光素子である。
【
図11A】第7実験例群の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図11B】第8実験例群の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図12】本発明の発光表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施例を説明する。明細書全体を通じて同一の参照番号は実質的に同一の構成要素を意味する。以下の説明において、本発明に関連した技術或いは構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を却って曖昧にさせ得ると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。また、以下の説明で使われる構成要素の名称は、明細書作成の容易さを考慮して選択されたものであり、実際の製品の部品名と異なることもある。
【0015】
本発明の様々な実施例を説明するための図面に開示された形状、サイズ、比率、角度、個数などは例示的なものであり、図面に開示された事項に本発明が限定されるものではない。本明細書全体を通じて同一の図面符号は同一の構成要素を示す。また、本発明を説明するとき、関連する公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を却って曖昧にさせ得ると判断される場合に、その詳細な説明は省略する。本明細書上で言及した「含む」、「有する」、「からなる」などが使われる場合に、「~のみ」を付しない限り、他の部分が追加されてもよい。構成要素を単数で表現した場合に、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合を含む。
【0016】
本発明の様々な実施例に含まれる構成要素を解釈するとき、特に明示的記載がなくても誤差範囲を含むものと解釈する。
【0017】
本発明の様々な実施例を説明するとき、位置関係について、例えば、「~上に」、「~上に」、「~下部に」、「~側に」などのように2部分の位置関係が説明される場合に、「直ちに」又は「直接」が使われない以上、2部分の間に一つ以上の他の部分が位置してもよい。
【0018】
本発明の様々な実施例を説明するとき、時間関係について、例えば、「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」などのように時間的先後関係が説明される場合に、「直ぐに」又は「直接」が使われない以上、連続的でない場合も含むことができる。
【0019】
本発明の様々な実施例を説明するとき、「第1~」、「第2~」などが様々な構成要素を述べるために使われてよいが、これらの用語は互いに同一乃至類似の構成要素間を区別するために使われるだけである。したがって、本明細書において、「第1~」と修飾される構成要素は、別に断りのない限り、本発明の技術的思想内で「第2~」と修飾される構成要素と同一であってもよい。
【0020】
本発明の様々な実施例における各特徴が部分的に又は全体的に互いに結合又は組合せ可能であり、技術的に様々な連動及び駆動が可能であり、様々な各実施例が互いに独立して実施可能であってもよく、関連関係をもって共に実施可能であってもよい。
【0021】
本明細書において、「ドープされた」とは、ある層の大部分の重量比を占める物質に、大部分の重量比を占める物質と異なる物性(異なる物性とは、例えば、NタイプとPタイプ、有機物質と無機物質)を有する物質が、重量比30%未満で添加されていることを意味する。言い換えると、「ドープされた」層とは、ある層のホスト物質とドーパント物質を重量比の比重を考慮して分別できる層を意味する。そして、「非ドープされた」とは、「ドープされた」に該当する場合以外の全ての場合を指す。例えば、ある層が単一物質で構成されるか、互いに同一乃至類似の性質を有する物質が混合して構成される場合に、その層は「非ドープされた」層に含まれる。例えば、ある層を構成する物質の少なくとも一つがPタイプであり、その層を構成する物質が全てNタイプでなければ、その層は「非ドープされた」層に含まれる。例えば、ある層を構成する物質の少なくとも一つが有機物質であり、その層を構成する物質が全て無機物質でなければ、その層は「非ドープされた」層に含まれる。例えば、ある層を構成する物質が全て有機物質であるが、その層を構成する物質の少なくともいずれか一つがNタイプであり、他の少なくともいずれか一つがPタイプである場合に、Nタイプの物質が重量比30wt%未満であるか又はPタイプの物質が重量比30wt%未満である場合に、「ドープされた」層に含まれる。
【0022】
以下、図面を参照して本発明の発光素子及びこれを含む発光表示装置について説明する。
【0023】
図1は、本発明の発光素子を概略的に示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、本発明に係る発光素子は、陽極110と陰極200との間にn(nは、2以上の自然数)個以上のスタック(例えば、BS1、PS)を有し、スタックが電荷生成層CGLによって区分される。
【0025】
本発明の発光素子は、少なくとも一つの青色蛍光スタック(例えば、BS1)と燐光スタックPSを有するものを基本構成とし、特定色の効率をさらに必要とする程度によって、該当の発光スタックをさらに構成することができる。これについては、
図2A及び
図2Bで説明する。
【0026】
本発明の発光素子において、陰極200に接しているスタックは、第1青色蛍光スタックBS1である。第1青色蛍光スタックBS1は、第1正孔輸送層HTL1、第1電子阻止層EBL1、430nm~480nmの発光ピークを有するボロン系ドーパントを含んでいる第1青色発光層BEML1と、前記青色発光層BEML1に接している第1電子輸送層ETL1、及び前記第1電子輸送層ETL1と前記陰極200にそれぞれ両側が接している電子注入層180を含む。
【0027】
そして、本発明の発光素子は、陽極110に相対的に近い側に、青色よりも長波長を発光する燐光スタックPSを含む。燐光スタックPSは、少なくとも赤色燐光発光層REML及び緑色燐光発光層GEMLを含む。陽極110及び陰極200の少なくともいずれか一側では、第1青色発光層BEML1から出る光と赤色燐光発光層REML及び緑色燐光発光層GEMLから出る光とを合わせて白色光を出射することができる。
【0028】
図1の赤色燐光発光層REMLの下側及び緑色GEMLの上側にはそれぞれ、正孔関連輸送層及び電子関連輸送層がさらに含まれてよい。
【0029】
発光素子が下部発光方式である場合に、陽極110がITO、IZO又はITZOからなる透明電極であり、陰極200がアルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銀(Ag)、銀合金、マグネシウム(Mg)及びマグネシウム合金のいずれか一つであってよい。
【0030】
発光素子が上部発光方式である場合には、陽極110は、銀、銀盒金、アルミニウムなどの反射性金属を含み、陰極200は、透明電極又は反射性透明電極を薄く形成して構成できる。
【0031】
本発明の発光素子に適用する第1青色蛍光スタックBS1は、寿命と効率の両方を考慮して蛍光方式で発光するスタックである。第1青色発光層BEML1の蛍光材料であるボロン系ドーパントは、燐光青色ドーパントに比べて寿命において安定性があり、他の蛍光ドーパントに比べて外部量子効率を改善したものである。また、本発明の発光素子は、陰極200に接して第1青色蛍光スタックBS1を配置しているので、マイクロキャビティ(microcavity)を用いた共振効果において光学的に青色の出射効率を上げることができる。
【0032】
一方、本発明の発光素子は、白色効率を一定以上確保するために、燐光スタックPSと第1青色蛍光スタックBS1が電荷生成層CGLによって連結されている。本発明の発光素子は、燐光発光メカニズムと蛍光発光メカニズムにおいて有する内部量子効率差を克服するために、陰極200に接している第1青色蛍光スタックBS1の効率を上げようとする。そのための方法として、第1青色蛍光スタックBS1の第1青色発光層BEML1内でTTA(triplet-triplet annihilation)を円滑にすることにより、陰極200における電子注入効率及び第1青色蛍光スタックBS1内で電子輸送効率を上げ、第1青色発光層BEML1内に電子が速く伝達され、第1青色発光層BEML1内に電子及び励起子が制限されるようにする。
【0033】
陰極200からの電子注入のために備えられる電子注入層180は、リチウム(Li)を含む化合物であり、陰極200の内側に位置する有機物構成と接する界面において抵抗を減らして電子注入を円滑にさせる。電子注入層180は、例えば、LiF及びLiqのいずれか一つであってよい。
【0034】
本発明の発光素子は、第1電子輸送層ETL1をなす無機化合物である、電子注入層180と接した第1電子輸送層ETL1の材料を変更して、電子輸送効率を上げる。また、本発明の発光素子は、さらに、第1電子輸送層ETL1が電子輸送効率の高い単一材料を備える場合に、第1電子輸送層ETL1と電子注入層180との界面において物性の差異又は反発力によって、電子が陰極200から第1電子輸送層ETL1に移る上でエネルギーバリアーが増加する現象を解決するために、電子輸送効率の高い下記化学式1の第1物質(C1)と共に他の第2物質(C2)をさらに含む。第2物質(C2)は、下記化学式2の物質であり、電子注入層180をなす物質、例えば、LiF又はLiq(Lithium quinolate)との界面抵抗が大きくなく、エネルギーバリアーが小さい又は殆どない材料である。すなわち、陰極200に最隣接した第1青色蛍光スタックBS1において、第1電子輸送層ETL1は、電子輸送効率の高い第1物質(C1)と、電子注入層180との界面で殆ど反発力無しで電子を注入可能にする第2物質(C2)とを含む混合材料からなる。
【0035】
【0036】
R1及びR2は独立に、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基及びカルバゾール基の中から選ばれる。X1、X2及びX3は独立に、N又はCHである。X4、X5及びX6のうち少なくとも一つは必ずNであり、残りはCHである。
【0037】
ここで、第1電子輸送層ETL1をなす化学式1の第1物質は、構造の外周に位置するそれぞれ対称的なベンゼン環の構造的結合を維持したまま、対称的なベンゼン環の末端にある窒素(N)が、強い電子供与性質によって電子を第1青色発光層EML1に高効率で伝達することができる。
【0038】
【0039】
L1、L2は単結合であるか、フェニル基、ナフチル基の中から選ばれる。R3、R4、R6は、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基の中から選ばれてよい。R5は、単結合であるか、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基の中から選ばれてよい。
【0040】
R3は、フェニレン基、ナフチレン基、アントラリレン基の中から選ばれてよい。R4は、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基の中から選ばれてよい。R5は、単結合であるか、フェニレン基、ナフチレン基、アントラリレン基などのアルキレン基の中から選ばれてよい。R6は、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基などのアルキル基の中から選ばれてよい。
【0041】
一方、本発明の発光素子は、第1電子輸送層ETL1の優れた電子輸送効率により、電子及び励起子が第1青色発光層BEML1と第1電子阻止層EBL1との界面に速く伝達され得る。
【0042】
本発明の発光素子は、さらに他の特徴として、電子が第1電子阻止層EBL1に移って効率が低下し、発光素子の寿命が低下することを防止するために、第1電子阻止層EBL1の材料が重水素に置換された材料を適用できる。
【0043】
例えば、第1電子阻止層EBL1は、下記化学式3のような第3物質(C3)を含んでよい。
【0044】
【0045】
L3は、単結合であるか、フェニル基、ナフチル基の中から選ばれる。R7~R14は重水素でもよい。R7~R14は重水素に置換される。R15及びR16は、フェニル基、重水素置換されたフェニル基、ビフェニル基、重水素置換されたビフェニル基、フルオレニル基、重水素置換されたフルオレニル基、ヘテロアリール基、重水素置換されたヘテロアリール基、カルバゾール基、重水素置換されたカルバゾール基、ジベンゾフラン基、重水素置換されたジベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、重水素置換されたジベンゾチオフェン基の中から選ばれる。重水素置換は、部分的でもよい。好ましい例では重水素置換は全てである。
【0046】
具体的な化学式3の第3物質(C3)の例は、実験と共に後述する。
【0047】
以下では、2スタック構造と3スタック構造の例に本発明の発光素子を適用した例をそれぞれ説明する。ただし、本発明の発光素子は、提示された2、3スタック構造に限定されず、スタック構造内に青色蛍光スタックと燐光スタックを有し、陰極に接しているスタックが青色蛍光スタックであり、電子注入層に接している第1電子輸送層が第1、第2化学式の材料を全て含む構造であれば、4スタック以上適用した構造でも適用可能である。
【0048】
図2A及び
図2Bは、本発明の発光素子の実施例を示す断面図である。
【0049】
図2Aに示すように、本発明の第1実施例に係る発光素子は、基板100上に、互いに対向する陽極110及び陰極200と、陽極110と陰極200との間に順に、燐光スタックPS、電荷生成層CGL、及び青色蛍光スタックBSが備えられた構造である。
【0050】
青色蛍光スタックBSは、
図1の第1青色蛍光スタックBS1と同様に、第1正孔輸送層(HTL1)141、第1電子阻止層(EBL1)142、430nm~480nmの発光ピークを有するボロン系ドーパントを含んでいる第1青色発光層(BEML1)143、前記第1青色発光層(BEML1)143に接している第1電子輸送層(ETL1)144、及び前記第1電子輸送層(ETL1)144と前記陰極200にそれぞれ両側が接している電子注入層180を含む。第1電子輸送層(ETL1)144は、上述した化学式1の第1物質(C1)及び化学式2の第2物質(C2)を含む。
【0051】
また、燐光スタックPSは、正孔注入層HIL121、第2正孔輸送層HTL2131、赤色燐光発光層REML132、緑色燐光発光層GEML134、及び第2電子輸送層ETL2135を含む。
【0052】
ここで、青色蛍光スタックBSと燐光スタックPSとの間の電荷生成層CGLは、n型電荷生成層N-CGL及びp型電荷生成層P-CGLを含んでもよい。n型電荷生成層N-CGLは、電子輸送性ホストに、アルカリ金属、アルカリ土金属或いは遷移金属がドープしてなり、電子を生成し、隣接したスタックの電子輸送層に供給する。
図2Aを基準に説明すると、n型電荷生成層N-CGLは、下部の燐光スタックPSの第2電子輸送層ETL2135に、生成された電子を供給する。そして、p型電荷生成層P-CGLは正孔を生成し、上部の青色蛍光スタックBSの第1正孔輸送層HTL1141側に、生成された正孔を供給する。P型電荷生成層p-CGLは、正孔輸送性ホストにp型ドーパントを含む。本発明の発光素子は、青色蛍光スタックBSにおいて、前記第1電子輸送層144に電子輸送効率の高い第1物質(C1)を使用することによって第1青色発光層143に電子が速い速度で供給されることに対応して、p型電荷生成層P-CGLにおいてp型ドーパントとして、正孔輸送効率の高い化学式4の有機ドーパント(第4物質:C4)を使用することをさらに他の特徴とする。
【0053】
【0054】
Aは、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、マロノニトリル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、置換或いは非置換されたアリール基又はヘテロアリール基であり、置換或いは非置換された炭素数1~12のアルキル基、置換或いは非置換された炭素数1~12のアルコキシ基から選ばれる。化学式4においてAの置換基は、シアノ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、水素及び重水素の一つである。C1及びC2はそれぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基のうち一つである。D1~D4はそれぞれ独立に、単結合又は二重結合で連結し、ハロゲン、シアノ基、マロノニトリル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシのうち一つに置換され、少なくとも2つはシアノ基を含む。
【0055】
具体的な化学式4の第4物質(C4)の例は、実験と共に後述する。
【0056】
図2Bによる本発明の第2実施例に係る発光素子は、青色の効率をより向上させるためのものであり、陰極200及び陽極110のそれぞれに接している第1青色蛍光スタックBS1及び第2青色蛍光スタックBS2並びに第1青色蛍光スタックBS1および第2青色蛍光スタックBS2の間の燐光スタックPSを備えている。第1青色蛍光スタックBS1は、前述した
図1及び
図2Aの説明と同一であり、その説明を省略する。
【0057】
第2青色蛍光スタックBS2は、陽極110上に、正孔注入層(HTL)121、第3正孔輸送層(HTL3)122、第2電子阻止層(EBL2)123、第2青色発光層(BEML2)124、及び第3電子輸送層(ETL3)125を含む。
【0058】
そして、燐光スタックPSは、第2正孔輸送層(HTL2)131、燐光発光層(PEML)、及び第2電子輸送層(ETL2)135を含む。
図2Bの第2実施例では、燐光発光層(PEML)は、赤色燐光発光層(REML)132、黄緑色燐光発光層(YGEML)133及び緑色燐光発光層(GEML)134を含んでおり、
図2Aの第1実施例に比べて、赤色燐光発光層(REML)132と緑色燐光発光層(GEML)134の間に黄緑色燐光発光層(YGEML)133をさらに含むことが相違する。第2実施例は第1実施例に比べて、白色表現時に、より様々な色の表現が可能であり、色域を拡大させることができる。
【0059】
第1青色蛍光スタックBS1と燐光スタックPSとの間に第1電荷生成層170が備えられ、燐光スタックPSと第2青色蛍光スタックBS2との間に第2電荷生成層150が備えられる。
【0060】
第1、第2電荷生成層170,150のそれぞれは、下から順に、n型電荷生成層N-CGL171、151及びp型電荷生成層P-CGL173、153が備えられる。
【0061】
以下では、実験から、陰極に近接している青色蛍光スタックにおいて電子輸送層の材料変更による効果について説明する。
【0062】
そして、電子輸送層を形成する化学式1の第1物質(C1)の例として、下記材料ETM-01~ETM-60を挙げることができる。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
そして、化学式1の代表物質としてETM-01は、次の製造法によって得た。
【0094】
【0095】
4-アセチルピリジンを6.0g、49.5mmol、4-ブロモベンズアルデヒドを9.0g、48.6mmolで準備し、2wt%NaOH水溶液200mLと共にフラスコに入れて常温で10時間撹拌し、反応溶液の色変化を確認する。その後、4-アセチルピリジンを6.0g、49.5mmol追加し、NaOH濃度を20wt%となるようにした後に80℃で8時間撹拌する。撹拌した物質を精製しないで水分除去後に、エタノール(ethanol)500mL中に酢酸アンモニウムを36.0g超過で含んでいる溶液に入れ、還流条件で5時間撹拌する。そして、エタノールで再結晶し、第1化合物11g(収率60%)を得た。
【0096】
【0097】
カルバゾール8.1g、48.75mmol、1-トリメチルシリル-3,5-ジブロモベンゼンを6.0g、19.5mmolで準備し、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(O)(Pd2(dba)3)(0.89g、1.0mmol)、トリ-tert-ブチルホスフィンテトラフルオロボレート(0.59g、2.0mmol)、NaOtBu(4.7g、48.8mmol)を乾燥トルエン(200mL)に入れて90℃で10時間撹拌した。反応完了後に、残余NaOtBuはフィルタリング後に酢酸エチルで抽出した。MgSO4で水分を除去し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EA=20:1(v/v))で精製し、第2化合物6.1g(収率65%)を得た。
【0098】
【0099】
第2化合物(4.0g、8.3mmol)をCCl4(70mL)に溶かした後、一塩化ヨウ素溶液(塩化メチル中1.0M、8.3mL、8.3mmol)を0℃で液滴式で注入して1時間撹拌する。その後、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)5wt%水溶液に反応溶液を注ぎ、透明になるまで強く撹拌する。酢酸エチレンで抽出し、MgSO4で水分除去後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EA=20:1(v/v))で精製し、第3化合物(3.6g、収率80%)を得た。
【0100】
【0101】
第3化合物(3g、5.6mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2,-ジオキサボロラン)(2.1g、8.4mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2)(0.21g、0.28mmol)、酢酸カリウム(KOAc)(1.65g、16.8mmol)を入れ、窒素ブローイング(blowing)で不活性雰囲気を造成後に1.4-ジオキサン(30mL)を追加し、130℃で12時間撹拌した。反応が終了すると、酢酸エチルで抽出した後、MgSO4で水分を除去し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EA=7:1(v/v))で精製して第4化合物(2.3g、収率75%)を得た。
【0102】
【0103】
第1化合物(1.8g、4.6mmol)、第4化合物(2.3g、4.3mmol)、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2)(0.048g、0.2mmol)、トリフェニルホスフィノ(PPh3)(0.28g、1.0mmol)、炭酸カリウム(K2CO3)(3.0g、21.5mmol)を丸底フラスコ(round bottom flask)に充填し、不活性雰囲気を造成した後に、ガス除去されたTHF/H2O(35mL/5mL)を入れて70℃で10時間撹拌した。反応が終了すると、ジクロロメタンで抽出した後、MgSO4で水分を除去し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EA=7:1(v/v))で精製してETM-01(2.6g、収率85%)を得た。
【0104】
一方、上の合成法は、化学式1の代表物質ETM-01に関するものであり、他の化学式の物質ETM-02~ETM-60は、初期(1)の第1化合物合成時に窒素置換基数を異ならせるか、(2)の第2化合物合成時にカルバゾール合成数や、フェニル基合成などを異ならせて得ることができる。
【0105】
また、電子輸送層を形成する化学式2の第2物質(C2)の例として、下記材料ETMB-01~ETMB-40を挙げることができる。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
図3は、第1実験例群~第4実験例群において用いられた発光素子を示す断面図である。
【0127】
第1~第4実験例群の実験は、陰極に隣接している青色蛍光スタックの変化について説明するためのものであり、
図3のように、燐光スタックとの連結無しで単位蛍光スタックにおいて行った。
【0128】
図3に示すように、第1実験例群(Ex1-1~Ex1-40)と第2実験例群(Ex2-1~Ex2-60)、第3実験例(Ex3-1~Ex3-60)及び第4実験例(Ex4-1~Ex4-27)で用いた発光素子は、ITOからなる陽極10上に順に、次の構成を含む。
【0129】
すなわち、陽極10上に、化学式5のDNTPDとMgF2が重量比1:1に混合され、7.5nmの厚さに蒸着して正孔注入層(HIL)11を形成する。
【0130】
【0131】
次いで、前記正孔注入層11上に、α-NPDを80nmの厚さに蒸着して正孔輸送層(HTL)12を形成する。
【0132】
次いで、前記正孔輸送層12上に、化学式6のTAPCで電子阻止層(EBL)13を20nmの厚さで形成する。
【0133】
【0134】
次いで、前記電子阻止層13上に、化学式8のDABNA-1のボロン系ドーパントが3wt%でドープされた化学式7のMADNが形成され、30nmの厚さで青色発光層(BEML)14を形成する。
【0135】
【0136】
【0137】
次いで、第1実験例群(Ex1-1~Ex1-40)では、それぞれ、上述した化学式2の第2物質(C2)(ETMB-01~ETMB-40)を単一物質にして25nmの厚さを有する電子輸送層(ETL)15を形成する。同一工程によって第2実験例群(Ex2-1~Ex2-60)はそれぞれ、上述した化学式1の第1物質(C1)(ETM-01~ETM-60)を単一物質にして電子輸送層15を25nmの厚さで形成する。これに比べて、第3実験例群(Ex3-1~Ex3-60)は、第1物質(C1)と第2物質(C2)を重量比5:5に混合し、該混合物質により、電子輸送層15を25nmの厚さで形成したものである。第4実験例群(Ex4-1~Ex4~27)は、第2物質(C2)と第1物質(C1)との重量比をそれぞれ1:9~9:1の範囲で別々にし、電子輸送層15を25nmの厚さで形成したものである。
【0138】
次いで、電子輸送層15上に、2nm厚の電子注入層(ETL)16をLiFで形成する。続いて、アルミニウム(Al)成分の陰極20を電子注入層16上に形成する。
【0139】
まず、表1の第1実験例群(Ex1-1~Ex1-40)は、
図3の発光素子構造において、電子輸送層15の物質を化学式2の単一物質にしたものであり、その物質をETMB-01~ETMB-40のうち1つであり、それぞれ、輝度0.1Cd/m
2におけるターンオン電圧と、電流密度10mA/cm
2における駆動電圧、電流密度100mA/cm
2における駆動電圧、電流密度10mA/cm
2における輝度及び外部量子効率を比較評価した。
【0140】
【0141】
第1実験例群(Ex1-1~Ex1-40)では、輝度0.1Cd/m
2におけるターンオン電圧が2.71V~2.89Vと示され、電流密度10mA/cm
2における駆動電圧が3.71V~4.48Vと示され、電流密度100mA/cm
2における駆動電圧が4.62V~6.25Vである。そして、電流密度10mA/cm
2における輝度が2.7Cd/A~4.3Cd/A及び外部量子効率が4.3%~7.0%と示される。表2-1、表2-2の第2実験例群(Ex2-1~Ex1-60)は、
図3の発光素子構造において、電子輸送層15の物質を化学式1の単一物質にしたものであり、その物質をETM-01~ETM-60に変更し、それぞれ輝度0.1Cd/m
2におけるターンオン電圧と、電流密度10mA/cm
2における駆動電圧、電流密度100mA/cm
2における駆動電圧、電流密度10mA/cm
2における輝度及び外部量子効率を比較評価した。
【0142】
【0143】
【0144】
第2実験例群(Ex2-1~Ex2-60)では、輝度0.1Cd/m2におけるターンオン電圧が4.10V~4.29Vと示され、電流密度10mA/cm2における駆動電圧が5.40V~5.80Vと示され、電流密度100mA/cm2における駆動電圧が8.31V~8.70Vである。そして、電流密度10mA/cm2における輝度が2.6Cd/A~4.3Cd/A及び外部量子効率が4.1%~7.0%と示された。
【0145】
第1実験例群(Ex1-1~Ex1-40)と第2実験例群(Ex2-1~Ex2-60)とを比較すれば、輝度及び外部量子効率は類似しているが、ターンオン電圧及び駆動電圧がいずれも第2実験例群(Ex1-1~Ex2-60)において増加することが確認できる。
【0146】
図4A及び
図4Bは、第1実験例群及び第2実験例群のそれぞれで調べてみた第2物質と第1物質を、陰極に隣接している電子輸送層にした場合に、青色発光層及びその周辺層のエネルギーバンドダイヤグラムと正孔及び電子の輸送特性を示す図である。
【0147】
表1の結果及び
図4Aのように、第1実験例群(Ex1-1~Ex1-40)の化学式2の第2物質(C2)を用いる電子輸送層15aは、電子注入層16及び陰極20が有する仕事関数と第2物質(C2)自体のLUMO準位間に小さな差を有し、電子が円滑に伝達されることが分かる。そして、第1実験例群(Ex1-1~Ex1-40)では、また、第2物質(C2)がリチウム化合物と出会う際に反発力がないか或いは殆ど発生しないため、陰極20への電圧供給時にも、第2物質(C2)に電子が移ってくる際にエネルギーバリアーの変化無しで、電子の優れた電子注入特性を示すことが分かる。
【0148】
一方、表2-1、表2-2の結果及び
図4Bのように、第2実験例群(Ex2-1~Ex2-60)で適用する第1物質(C1)からなる電子輸送層15bは、電圧が未印加された初期状態における化学式1の第1物質(C1)は第2物質(C2)と類似のLUMO準位を有し、独自の電子輸送能力が高いが、電子注入層16をなすリチウム化合物に対する反発力が大きいため、陰極20に電圧供給時に、固有のLUMOエネルギー準位に比べて電子注入層16との界面におけるエネルギーバリアーを上げる作用が起き、電子を供給する際にターンオン電圧及び駆動電圧が上昇することが分かる。
【0149】
本発明の発明者らは、第1、第2実験例群の結果を考慮して、電子輸送能力の高い第1物質(C1)と、電子注入層16をなす物質との反発力がなく、電子注入を円滑にする第2物質(C2)とを混合して電子輸送層15を形成した第3実験例群及び第4実験例群の実験を行った。
【0150】
表3-1、表3-2の第3実験例群(Ex3-1~Ex3-60)は、
図3の発光素子構造において、電子輸送層15の物質を、化学式2の第2物質(C2)と化学式1の第1物質(C1)を1:1の重量比にして共蒸着したものである。第2物質(C2)は、表3-1、表3-2に示すように、上述したETMB-04、ETMB-09、ETMB-12、ETMB-17にし、第1物質(C1)はETM-01、ETM-02、ETM-07、ETM-08、ETM-13、ETM-16、ETM-17、ETM-19、ETM-21、ETM-22、ETM-30、ETM-38、ETM-41、ETM-50、ETM-53に変更しつつ実験を行った。各実験例において、それぞれ、輝度0.1Cd/m2におけるターンオン電圧、電流密度10mA/cm
2における駆動電圧、電流密度100mA/cm
2における駆動電圧、電流密度10mA/cm
2における輝度及び外部量子効率を比較評価した。
【0151】
【0152】
【0153】
第3実験例群(Ex3-1~Ex3-60)では、輝度0.1Cd/m2におけるターンオン電圧が2.70V~2.89Vと示され、電流密度10mA/cm2における駆動電圧が3.60V~4.00Vと示され、電流密度100mA/cm2における駆動電圧が4.63V~5.01Vである。そして、電流密度10mA/cm2における輝度が5.3Cd/A~5.9Cd/A及び外部量子効率が8.5%~9.4%と示された。第3実験例群(Ex3-1~Ex3-60)の結果は、特に、輝度0.1Cd/m2におけるターンオン電圧が2.70V~2.89Vのレベルと、その変動範囲が0.19V範囲以内であり、また、第1実験例群(Ex1-1~Ex1-40)に比べて大きくなく、残りの駆動電圧の値も、変動範囲が小さく、第1実験例群(Ex1-1~Ex1-40)に比べて大きくない。また、第3実験例群(Ex3-1~Ex3-60)の輝度又は外部量子効率は、第1実験例群(Ex1-1~Ex1-40)に比べていずれも向上した結果を示しており、多くは2倍レベルに向上することが分かる。第3実験例群(Ex3-1~Ex3-60)の結果を見ると、ターンオン電圧が平均2.8Vレベルであって、第2実験例群(Ex2-1~Ex2-60)との比較時には、ターンオン電圧が平均値4.2Vに比べて66%のレベルに減ることが分かり、残りの駆動電圧もまた、第3実験例群(Ex3-1~Ex3-60)において有意に減ることが分かる。また、第3実験例群(Ex3-1~Ex3-60)の輝度や外部量子効率は、第2実験例群(Ex2-1~Ex-60)に比べていずれも向上した結果を示しており、多くは2倍レベルに向上することが分かる。
【0154】
図5A~
図5Cは、第1実験例~第3実験例の発光スペクトルを示すグラフである。
【0155】
具体的に、
図5Aは、第1実験例群の実験例Ex1-4に対する発光スペクトルであり、
図5Bは、第2実験例群の実験例Ex2-1に対する発光スペクトルであり、
図5Cは、第3実験例群の実験例Ex3-1に対するスペクトルである。
【0156】
それらを比較すると、第3実験例群の
図5Cの青色発光効率が優れていることが確認できる。
【0157】
以下では、
図3の構造に、第2物質(C2)と第1物質(C1)の重量比を別々にして共蒸着して電子輸送層15を形成した第4実験例群(Ex4-1~Ex4-27)を、表4及び
図6A~
図6Cを参照して説明する。
【0158】
図6A~
図6Cは、第4実験例の発光スペクトルを示すグラフである。
【0159】
表4の第4実験例群のうちEx4-1~Ex4-09の実験例は、
図3の発光素子構造において、電子輸送層15の物質を、第2物質(C2)としてETMB-04を用い、第1物質(C1)としてETM-07を用いたものであり、その重量比を1:9、2:8、3:7、4:6、5:5、6:4、7:3、8:2、9:1へと漸次、第2物質(C1)の比を増やして実験したものである。そして、表4の第4実験例群のうちEx4-10~Ex4-18の実験例は、
図3の発光素子構造において、電子輸送層15の物質を第2物質(C2)としてETMB-04を用い、第1物質(C1)としてETM-13を用いたものであり、その重量比を1:9、2:8、3:7、4:6、5:5、6:4、7:3、8:2、9:1へと漸次、第2物質(C1)の比を増やして実験したものである。表4の第4実験例群のうちEx4-19~Ex4-27の実験例は、
図3の発光素子構造において、電子輸送層15の物質を、第2物質(C2)としてETMB-09を用い、第1物質(C1)としてETM-13を用いたものであり、その重量比をそれぞれ1:9、2:8、3:7、4:6、5:5、6:4、7:3、8:2、9:1へと漸次、第2物質(C1)の比を徐々に増やして実験したものである。
【0160】
各実験例において、それぞれ、輝度0.1Cd/m2におけるターンオン電圧と、電流密度10mA/cm2における駆動電圧、電流密度100mA/cm2における駆動電圧、電流密度10mA/cm2における輝度及び外部量子効率を比較評価した。
【0161】
【0162】
表4のように、第4実験例群(Ex4-1~Ex2-27)において、第2物質(C2)と第1物質(C1)を4:6~6:4の重量比(wt%)にしたとき(Ex4-4、Ex4-5、Ex4-6、Ex4-13、Ex4-14、Ex4-15、Ex4-22、Ex4-23、Ex4-24)、ターンオン電圧が2.71V~3.04Vへと減少することが確認できる。また、輝度が5.4Cd/A~5.8Cd/Aであり、外部量子効率が8.7%~9.3%と示されることが分かる。これは、
図6A~
図6Cの第4実験例群(Ex4-1~Ex4-27)の発光スペクトルを示すグラフからも分かる。また、第4実験例群(Ex4-1~Ex-47)において、第2物質(C2)と第1物質(C1)を4:6~6:4の重量比(wt%)にしたとき(Ex4-4、Ex4-5、Ex4-6、Ex4-13、Ex4-14、Ex4-15、Ex4-22、Ex4-23、Ex4-24)、いずれも単一材料のみで電子輸送層を構成した第1実験例群又は第2実験例群に比べてターンオン電圧、駆動電圧が減り、輝度と外部量子効率が改善されたことが確認できる。
【0163】
一方、上述した第4実験例群の実験は、また、電子輸送層を構成する第2物質と第1物質は、いずれか一物質がドーパントとして含まれるのではなく両物質が対等又は類似の比率、すなわち、4:6~6:4の重量比で含まれて層をなす時に、駆動電圧、輝度及び外部量子効率のいずれも向上することが確認できる。
【0164】
以下では、陰極に接している青色蛍光スタックにおいて、電子輸送層を化学式9のベンズイミダゾールを含んで構成した例に加え、青色スタックにおいて青色発光層を挟んで電子輸送層と対向している電子阻止層の物質を変更した実験例から、電子阻止層の物質の意義を調べてみる。
【0165】
一方、第5、第6実験例群では、電子阻止層の物質を下記のEBM-01~EBM-12にして実験した。電子阻止層物質EBM-01~EBM-12はいずれもスピロフルオレン物質であり、EBM-01~EBM-04とEBM-05~EMB-12のグループがそれぞれ、重水素に置換されていない点と置換されている点で異なる。
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
図7は、第5及び第6実験例群で用いられた発光素子を示す断面図であり、
図8は、第6実験例群の発光スペクトルを示すグラフである。
【0173】
第5実験例群(Ex5-1~Ex5-42)で用いられた発光素子は、
図7のように、ITOからなる陽極10上に順に、次の構成を含む。
【0174】
すなわち、陽極10上に、化学式5のDNTPDとMgF2が1:1に混合され、7.5nmの厚さに蒸着して正孔注入層(HIL)11を形成する。
【0175】
次いで、前記正孔注入層11上に、α-NPDを80nmの厚さに蒸着して正孔輸送層(HTL)12を形成する。
【0176】
次いで、前記正孔輸送層12上に、上述した化学式3の電子阻止物質で電子阻止層(EBL)23を20nmの厚さで形成する。表5及び表6のように、第5及び第6実験例群において、前記電子阻止物質は、上で取り上げたEBM-01~EBM-12を使用した。続いで、前記電子阻止層23上に、化学式7のMADNと化学式8のDABNA-1のボロン系ドーパントが3wt%でドープされた化学式7のMADNが形成され、30nmの厚さで青色発光層(BEML)14を形成する。
【0177】
そして、第5実験例群(Ex5-1~Ex5~42)は、化学式9のZADN物質を単一物質にして形成するか、化学式1の第1物質(C1)として取り上げた物質を単一物質にして電子輸送層(ETL)25を25nmの厚さで形成したものである。
【0178】
次いで、電子輸送層25上に、2nm厚の電子注入層(ETL)16をLiFで形成する。続いて、アルミニウム(Al)成分の陰極20を電子注入層16上に形成する。
【0179】
一方、表5のように、第5実験例群(Ex5-1~Ex5-42)のうち実験例Ex5-1~Ex5-12は、化学式9のZADN物質で電子輸送層を形成し、電子阻止層として上述のEBM-01~EBM-12の物質を用いたものである。
【0180】
【0181】
そして、実験例Ex5-13~Ex5-27は、電子阻止層物質をいずれもEBM-01とするが、電子輸送層物質をETM-07、ETM-09、ETM-12、ETM-14、ETM-18、ETM-22、ETM-28、ETM-32、ETM-37、ETM-41、ETM-44、ETM-48、ETM-51、ETM-54、ETM-58に変更している。実験例Ex5-28~Ex5-42は、電子阻止層物質をいずれもEBM-03とするが、電子輸送層物質をETM-07、ETM-09、ETM-12、ETM-14、ETM-18、ETM-22、ETM-28、ETM-32、ETM-37、ETM-41、ETM-44、ETM-48、ETM-51、ETM-54、ETM-58に変更している。
【0182】
各実験例において、0.1Cd/m2におけるターンオン電圧、電流密度10mA/cm2における駆動電圧、電流密度100mA/cm2における駆動電圧、電流密度10mA/cm2における輝度及び外部量子効率に加え、55mA/cm2の電流密度条件における寿命を比較評価した。第5実験例群のうちEx5-2の寿命を基準に、残り実験例に対して比較評価を行った。
【0183】
【0184】
第5実験例群(Ex5-1~Ex1-42)において、実験例Ex5-1~Ex5-12はいずれも、電子輸送層材料をZADNとし、電子阻止層の材料のみを異ならせたとき、重水素置換率によって寿命が増加することが確認できる。このとき、輝度条件0.1Cd/m2におけるターンオン電圧が平均約2.8Vであった。これと比較して、実験例Ex5-13~Ex5-42では、電子阻止層が重水素置換されていないスピロフルオレンであるとき、外部量子効率は、電子輸送層の材料が効率の高い化学式1の材料に変更され、8%まで向上することを示すが、ターンオン電圧が平均3.6Vレベルに上昇していることが確認できる。なお、寿命も実験例Ex5-13~Ex5-42において減少している。
【0185】
第6実験例群(Ex6-1~Ex6-60)では、表6のように、電子阻止層の材料をEBM-01~EBM-12に変え、電子輸送層の材料を2つの混合材料に変え、その一つの材料をZADNとし、他の材料をETM-07、ETM-14、ETM-28、ETM-37、ETM-54とし、各実験例において、0.1Cd/m2におけるターンオン電圧、電流密度10mA/cm2における駆動電圧、電流密度100mA/cm2における駆動電圧、電流密度10mA/cm2における輝度及び外部量子効率に加え、55mA/cm2の電流密度条件における寿命を比較評価した。第5実験例群のうちEx5-2の寿命を基準にして残りの実験例に対して比較評価した。電子輸送層の材料は、重量比1:1(5:5)と、同一比で共蒸着した。
【0186】
【0187】
【0188】
第6実験例群(Ex6-1~Ex6-60)の結果を見ると、ターンオン電圧は、輝度条件0.1Cd/m
2において平均約2.8Vレベルであって、第5実験例群(Ex5-1~Ex5-42)に比べて改善され、効率も、8.5~9.0%レベルと、高い外部量子効率を示すことが確認できる。また、電子阻止層の重水素置換率が高いほど寿命が改善され、結果的に、第5実験例のEx5-2よりも高い外部量子効率において類似の寿命を有することが確認できる。
図8は、第3実験例群に対する発光スペクトルが、
図5Cで説明したのと類似のスペクトルを示すことが分かる。
【0189】
そして、第5実験例群と第6実験例群は、陰極に近接している青色蛍光ユニットの電子輸送層に、電子輸送効率が良い第1化学式の第1物質(C1)と、電子注入層との整合性に優れたベンズイミダゾールを含んでいるZADNとを混合した材料を使用したとき、電子注入の外部量子効率が良く、電子の輸送能力が向上して効率が向上することが分かり、電子阻止層を構成する第3物質(C3)に重水素置換部位を多く有するほど寿命特性が良くなることが確認できる。ここで、電子輸送層に混合されたZADNは、上述した化学式2の第2物質(C2)と類似にベンズイミダゾールを含むものであり、電子注入層との整合性が良く、電子注入時に界面抵抗を下げることができる類似の効果を有し、第2化学式の第2物質(C2)でZADNを代替しても同一の効果が予想できる。
【0190】
図9は、青色蛍光スタックにおける電子輸送層の輸送能力と青色蛍光スタック及び燐光スタック間のp型電荷生成層の正孔生成能力による駆動電圧の変化を概略的に示す図である。
【0191】
図9のように、青色蛍光スタックBSと燐光スタックPSが隣接するとき、両スタック間にはn型電荷生成層(N-CGL)とp型電荷生成層(P-CGL)が備えられ、それぞれ、生成された電子を青色蛍光スタックBSに供給及び伝達し、生成された正孔を燐光スタックPSに供給及び伝達する。
【0192】
図9(a)~
図9(c)はいずれも、n型電荷生成層N-CGLが同一の電子生成能力を有する。
【0193】
このうち、
図9(a)は、電子輸送層(ETL)の電子輸送能力に優れ、p型電荷生成層(P-CGL)の正孔生成能力が低下している例であり、n型電荷生成層(N-CGL)で生成された電子を速く青色発光層(BEML)に伝達して消滅させることができるが、p型電荷生成層(P-CGL)で生成された正孔は、燐光赤色発光層REMLに伝達される際に大きい駆動電圧が必要である。また、隣接したスタック間において電子と正孔間の輸送能力の差が発生し、各発光層において先に供給された電子が正孔を遮断して励起作用を阻止するか、或いはその反対の作用が起き、発光層において電子と正孔との再結合率が低下する。
【0194】
図9(b)は、
図9(a)とは逆に、電子輸送層(ETL)の電子輸送能力が低下しており、p型電荷生成層(P-CGL)の正孔生成能力に優れている例であり、p型電荷生成層(P-CGL)で生成された正孔は、燐光スタックPSにおける正孔輸送層(HTL)を介して速く赤色発光層REMLに供給され得るが、電子がn型電荷生成層(N-CGL)から電子輸送層(ETL)を介して青色発光層(BEML)に供給される際には大きい駆動電圧が要求される。
【0195】
図9(c)は、p型電荷生成層(P-CGL)が優れた正孔生成能力を有し、これに対応して青色蛍光ユニットBSの電子輸送層(ETL)も優れた電子輸送能力を有する例であり、この場合、駆動電圧を下げることが期待される。
【0196】
以上で説明した通り、電子輸送層(ETL)は、化学式1の第1物質(C1)にするときに、優れた電子輸送能力が期待できるものであり、少なくとも燐光スタックに接している青色蛍光スタックBSは、電子輸送層(ETL)の材料として化学式1の第1物質(C1)およびp型電荷生成層(P-CGL)のp型ドーパント材料として化学式4の第4物質(C4)を含み、
図9(c)の例を実現することができる。
【0197】
第7実験例群では、化学式4の第4物質(C4)と比較して異なる物性を有するPD-01~PD-03が提示されており、化学式4の第4物質(C4)の例として、PD-04~PD-36を挙げることができる。
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
図10は、第7実験例群及び第8実験例群が適用された発光素子であり、
図11A及び
図11Bは、それぞれ第7実験例群及び第8実験例群の発光スペクトルを示すグラフである。
【0211】
以下、第7実験例群(Ex7-1~Ex7-44)及び第8実験例群(Ex81~Ex8-54)の発光素子は、
図10の積層構造によるものであり、次の順序で形成される。
【0212】
基板300上に、ITO成分の陽極310を形成する。
【0213】
次いで、MgF2の成分を5nm蒸着して正孔注入層321を形成する。
【0214】
次いで、DNTPDの成分を100nm蒸着して第1正孔輸送層322を形成する。
【0215】
次いで、TCTA成分を5nm蒸着して第1電子阻止層323を形成する。
【0216】
次いで、MADNをホスト(bh)にし、DABNA-1を青色ドーパント(bd)にして5wt%ドープし、20nm厚の第1青色発光層324を形成する。
【0217】
次いで、上述したETM-01~ETM-60の材料からいずれかを選び、15nmの厚さで第1電子輸送層325を形成する。
【0218】
次いで、Bphenをホストとし、それにリチウム(Li)を2wt%ドープして、15nm厚の第1のn型電荷生成層(N-CGL1)351を形成する。
【0219】
次いで、DNTPBをホストとし、上述したPD-01~PD-36から選択される1つのp型ドーパントを20wt%ドープして、7nm厚の第1のp型電荷生成層(P-CGL1)353を形成する。
【0220】
第1のn型電荷生成層(N-CGL1)351および第1のp型電荷生成層(P-CGL1)は、第1の電荷生成層350を構成する。
【0221】
次いで、BPBPAを20nm厚に蒸着して第2正孔輸送層331を形成する。
【0222】
次いで、BPBPA、TPBiをホストとして用いるが、それらを1:1の重量比にし、それにIr(piq)2acacを5wt%でドープして、10nm厚の赤色燐光発光層332を形成する。
【0223】
次いで、CBP、TPBiをホストとして用いるが、それらを1:1の重量比にし、PO-01を15wt%ドープして、20nm厚の黄緑色燐光発光層333を形成する。
【0224】
次いで、CBP、TPBiをホストとして用いるが、それらを1:1の重量比にし、Ir(ppy)3を15wt%でドープして、10nm厚の緑色燐光発光層334を形成する。
【0225】
次いで、TPBiを20nm厚に蒸着して、第2電子輸送層335を形成する。
【0226】
次いで、Bphenをホストとし、それにLiを3wt%でドープして、第2のn型電荷生成層(N-CGL2)371を形成する。
【0227】
次いで、DNTPDをホストとし、上述したPD-01~PD-03のp型ドーパントのいずれか一つを20wt%ドープし、第2のp型電荷生成層(P-CGL2)373を形成する。
【0228】
第2のn型電荷生成層(N-CGL2)371および第2のp型電荷生成層(P-CGL2)373は、第1の電荷生成層370を構成する。
【0229】
次いで、DNTPDを100nm厚にして第3正孔輸送層341を形成する。
【0230】
次いで、TCTAを5nm厚にして第2電子阻止層342を形成する。
【0231】
次いで、MADNをホストとし、DABNA-1を5wt%でドープして、第2青色発光層343を200nmの厚さで形成する。
【0232】
次いで、ZADNを20nm厚にして第3電子輸送層344を形成する。
【0233】
次いで、LiFを1.5nm厚にして電子注入層380を形成する。
【0234】
次いで、Alを100nm厚にして陰極400を形成することで、発光素子を形成する。
【0235】
下記の実験例では、特に、
図10の発光素子のうち、第1n型電荷生成層351の両側にある第1電子輸送層324と第1のp型電荷生成層353の材料を変更して実験したものである。
【0236】
第7実験例群の各実験例Ex7-1~Ex7-44は、
図10の発光素子において、次の対照表1のように、第1のp型電荷生成層のp型ドーパントと第1電子輸送層の材料を変更しながら実験した。
【0237】
【0238】
そして、表7のように、第7実験例群(Ex7-1~Ex7-44)は、次の結果を有する。
【0239】
【0240】
第7実験例群のうち、実験例Ex7-1~Ex7-27は、p型有機ドーパントをPD-01、Pd-02、PD-03のいずれか一つを適用したものであり、駆動電圧は約12V前後と示されており、青色の出射効率(B_Efficiency)が平均約4.2Cd/Aであることが分かる。第7実験例群のうち、実験例Ex7-28~Ex7-44は、第1電子輸送層の材料がZADNの単一材料である場合の素子特性を示すものであり、駆動電圧は12Vをやや超えるレベルを、出射効率は大きく変化しないことを示している。
【0241】
以下では、正孔輸送能力に優れた化学式4の第4物質(C4)をp型ドーパントとして第8実験例群(Ex8-1~Ex8-54)の実験に適用した場合を説明する。第8実験例群の実験例で適用した第1のp型電荷生成層のp型ドーパントは、PD-04、PD-06、PD-12、PD-20、PD-22、PD-30とし、それぞれに対して第1電子輸送層の材料をETM-02、ETM-07、ETM-14、ETM-22、ETM-28、ETM-35、ETM-37、ETM-46、ETM-54に変更しつつ実験した。
【0242】
第8実験例群の各実験例Ex8-1~Ex8-54は、
図10の発光素子において、次の対照表2のように、第1のp型電荷生成層のp型ドーパントと第1電子輸送層の材料を別々にして実験した。
【0243】
【0244】
そして、第8実験例群(Ex8-1~Ex8-54)の結果は、次の表8-1、表8-2の通りである。
【0245】
【0246】
【0247】
表8-1、表8-2の第8実験例群(Ex8-1~Ex8-54)において、青色の出射効率(B_Efficiency)は4.2Cd/Aのレベルを示し、駆動電圧は平均11.3Vのレベルと、第7実験例群(Ex7-1~Ex7-44)に比べて約0.7V減少することが確認できる。
図11Aは、第7実験例群のうちEx7-1に対応する白色発光スペクトルを示しており、
図11Bは、第8実験例群のうちEx8-1に対応する白色発光スペクトルを示している。
【0248】
第7実験例群と第8実験例群のそれぞれに関し、白色発光スペクトルは、発光素子内に青色発光層を二重に備えているので青色の出射効率が高く、燐光発光スタックに赤色燐光発光層、黄緑色燐光発光層及び緑色燐光発光層を備える。
【0249】
すなわち、第7及び第8実験例群の実験結果は、すなわち、n型電荷生成層を挟んで隣り合っている電子輸送層とp型電荷生成層がそれぞれ、電子輸送性と正孔生成能力のいずれにも優れた材料を使用時に、出射効率を一定以上に維持でき、駆動電圧が減少することが確認できる。
【0250】
以下では、上述した発光素子を適用した発光表示装置を説明する。
【0251】
図12は、本発明の発光表示装置を示す断面図である。
【0252】
上述した発光素子は、複数のサブ画素に共通に適用して、白色光を出射することができる。
【0253】
図12に示すように、本発明の発光表示装置は、それぞれが赤色の光R、緑色の光G、青色の光B、白色の光Wをそれぞれ出射する複数個のサブ画素R_SP、G_SP、B_SP、W_SPを有する基板100と、前記基板100に共通に備えられる発光素子OLEDと、前記サブ画素のそれぞれに備えられ、発光素子OLEDの前記陽極110に接続されている薄膜トランジスタTFT、及び前記サブ画素の少なくともいずれか一つの前記陽極110の下側に備えられているカラーフィルター109R、109G、109Bを含むことができる。
【0254】
同図の例は、白色サブ画素W_SPを含んでいる例を説明しているが、これに限定されず、白色サブ画素W_SPが省略され、赤色、緑色及び青色サブ画素R_SP、G_SP、B_SPのみを備えた構造も可能であろう。場合によって、赤色、緑色、青色のサブ画素に代えて、組み合わせて白色を表現できるシアン(cyan)サブ画素、マゼンタ(magenta)サブ画素及びイエロー(yellow)サブ画素の組合せも可能である。
【0255】
前記薄膜トランジスタTFTは、一例として、ゲート電極102と、半導体層104と、前記半導体層104の両側に接続されたソース電極106a及びドレイン電極106bとを含む。そして、前記半導体層104のチャネルが位置している部位の上部には、ソースドレイン電極106a,106bとの直接的な接続を防止するためにチャネル保護層105がさらに備えられてよい。
【0256】
前記ゲート電極102と半導体層104との間には、ゲート絶縁膜103が備えられる。
【0257】
前記半導体層104は、例えば、酸化物半導体、非晶質シリコン及び多結晶シリコンのいずれか一つであるか、先に列挙したそれらのうち2個以上の組合せからなってもよい。例えば、前記半導体層104が酸化物半導体である場合に、薄膜トランジスタの形成に必要な加熱温度を下げることができるので、基板100の使用自由度が高く、フレキシブル表示装置への適用に有利であろう。
【0258】
また、前記薄膜トランジスタTFTのドレイン電極106bは、陽極110と、第1、第2保護膜107、108内に備えられたコンタクトホールCT領域で接続されてよい。
【0259】
前記第1保護膜107は、一次的に、前記薄膜トランジスタTFTを保護するために備えられ、その上部にカラーフィルター109R、109G、109Bが備えられてよい。
【0260】
前記複数個のサブ画素は、赤色サブ画素、緑色サブ画素、青色サブ画素及び白色サブ画素を含むとき、前記カラーフィルター109R、109G、109Bは、白色サブ画素W_SPを除く残りのサブ画素に、第1~第3カラーフィルター109R、109G、109Bとして個別に備えられ、前記陽極110を通過して出射される白色光を各波長別に通過させる。そして、前記第1~第3カラーフィルター109R、109G、109Bを覆いながら、前記陽極110の下側に第2保護膜108が設けられている。陽極110はコンタクトホール(CT)を通って薄膜トランジスタTFTに接続されている。
【0261】
ここで、前記基板100から薄膜トランジスタTFT、カラーフィルター109R、109G、109B及び第1、第2保護膜107,108までを、薄膜トランジスタアレイ基板1000という。
【0262】
発光素子OLEDは、発光部BHを定義するバンク119を含む薄膜トランジスタアレイ基板1000上に形成される。発光素子OLEDは、一例として、透明な陽極110と、これに対向する反射性電極の陰極200と、前記陽極110と陰極200との間に、
図1A~
図2、及び
図5で説明しているように、第1、第2電荷生成層150,170によって区分されるスタックのうち、青色発光スタックS1,S3のそれぞれに、化学式2の電子阻止物質からなる電子阻止層123、142、ボロン系青色ドーパントを有する青色発光層124、143、及び化学式1の電子輸送物質を含んでいる電子輸送層125、144からなる電子輸送及び阻止ユニットETBUを含んでいることに特徴がある。
【0263】
前記陽極110は各サブ画素別に区分されており、発光素子OLEDの残りの層は、サブ画素別に区分されることなく表示領域全体に一体型に備えられる。
【0264】
一方、前記陽極110と陰極200との間の内部スタックOSを含む発光素子OLEDは、すなわち、
図1~
図3で説明した発光素子の構造を含むことができ、
図7で用いた発光素子の構造を含むこともでき、
図10で用いた発光素子の構造を含むこともできる。或いは、各実験例の電子輸送層と、電子阻止層及びp型有機ドーパントを、他の位置のスタックや電荷生成層内に位置させて用いることもできる。
【0265】
発光素子OLED内の内部スタックOSが少なくとも青色蛍光スタックと燐光スタックを有し、陰極に接している青色蛍光スタックの電子輸送層が、電子輸送性の高い化学式1の第1物質と、電子注入層との反撥力を有しなく、電子注入効率に優れた第2物質とを含む混合材料からなる特徴を有する。
【0266】
そして、本発明の発光素子OLEDのさらに他の特徴は、電子輸送層が前記化学式1の第1物質を含む場合に、青色蛍光発光層を挟んで対向している電子阻止層の材料は重水素置換され、電子輸送層の材料が有する電子輸送の優れた効率により、電子が電子阻止層と青色蛍光発光層との界面に積もることを防止できる。
【0267】
また、本発明の発光素子OLEDのさらに他の特徴は、n型電荷生成層を挟んで両側に位置している電子輸送層とp型電荷生成層をそれぞれ、電子輸送効率および正孔生成効率に優れた材料とすることにより、正孔と電子の供給バランスを維持して駆動電圧を減らすことができる。この場合、電子輸送層は、化学式1の材料のうち一つを用いることができ、p型電荷生成層のドーパントは、化学式4の材料のうち一つを用いることができる。
【0268】
本発明の発光素子において、速い電子移動特性を有する材料を電子輸送層に適用時に、青色蛍光発光層と反対の面で接している電子阻止層の材料を重水素に置換することにより、青色蛍光発光層と電子阻止層との界面において電子や励起子が積もることを防止でき、寿命を低下させなく、駆動電圧、輝度改善及び量子効率改善の効果を得ることができる。
【0269】
そして、青色蛍光発光層を備えている青色蛍光スタックにおいて、効率改善により、白色を実現する発光素子で要求される青色スタックの個数を減らすことができ、同一白色具現時にスタック数を節減でき、その結果、駆動電圧の減少及び工程の低減によって収率向上が可能である。
【0270】
本発明の発光素子及び発光表示装置は、陰極に接している青色蛍光スタックにおいて青色発光層の周辺層の構成を変更することによって効率改善と駆動電圧低減及び寿命改善を図ることができる。
【0271】
本発明の一実施例に係る発光素子は、互いに対向する陽極と陰極との間にn(nは、2以上の自然数)個のスタックを含み、陰極に接しているn番目のスタックは、第1青色スタックであり、前記第1青色スタックは、第1正孔輸送層、第1電子阻止層、430nm~480nmの発光ピークを有するボロン系ドーパントを含んでいる第1青色発光層、前記第1青色発光層に接している第1電子輸送層、及び前記第1電子輸送層と前記陰極にそれぞれ両側が接している電子注入層を含み、前記第1電子輸送層は化学式1の第1物質と化学式2の第2物質とが混合される。
【0272】
【0273】
R1及びR2は独立に、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基及びカルバゾール基の中から選ばれる。X1、X2及びX3は独立に、N又はCHである。X4、X5及びX6のうち少なくとも一つは必ずNであり、残りはCHである。
【0274】
【0275】
L1、L2は独立に、単結合でもよい。L1、L2は独立に、フェニル基、ナフチル基の中から選ばれてよい。L1、L2は独立に、フェニレン基、ナフチレン基から選ばれてよい。
【0276】
R3、R4、R6は独立にフェニル基、ナフチル基、アントラセン基の中から選ばれてよい。R5は単結合であるか、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基の中から選ばれてよい。
【0277】
R3は、フェニレン基、ナフチレン基、アントラリレン基の中から選ばれてよい。R4は、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基の中から選ばれてよい。R5は、単結合であるか、フェニレン基、ナフチレン基、アントラリレン基などのアルキレン基の中から選ばれてよい。R6は、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基などのアルキル基の中から選ばれてよい。
【0278】
前記電子注入層は、金属を含む化合物であってよい。
【0279】
前記電子注入層は、LiF又はLiqであってよい。
【0280】
前記電子注入層の厚さは、前記第1電子輸送層の厚さの1/8~1/100であってよい。
【0281】
前記第1電子輸送層において、前記第1物質と前記第2物質の重量比は4:6~6:4であってよい。
【0282】
前記第1電子阻止層は、化学式3の第3物質を含むことができる。
【0283】
【0284】
L3は単結合であり得る。L3は、フェニル基、ナフチル基の中から選ばれてよい。L3は、フェニレン基、ナフチレン基の中から選ばれてよい。R7~R14は、重水素であり得る。R7~R14は、重水素に置換されてもよい。R15及びR16は、フェニル基、重水素置換されたフェニル基、ビフェニル基、重水素置換されたビフェニル基、フルオレニル基、重水素置換されたフルオレニル基、ヘテロアリール基、重水素置換されたヘテロアリール基、カルバゾール基、重水素置換されたカルバゾール基、ジベンゾフラン基、重水素置換されたジベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、重水素置換されたジベンゾチオフェン基の中から選ばれる。
【0285】
前記n番目のスタックに比べてより前記陽極に隣接しているスタックのうち少なくとも一つは、第2青色スタックであり、前記第2青色スタックは、第2正孔輸送層、第2電子阻止層、430nm~480nmの発光ピークを有するボロン系ドーパントを含んでいる第2青色発光層、及び前記第2青色発光層に接している第2電子輸送層を含み、前記第2青色スタックと前記第2青色スタックに隣接する次のスタックとの間に、n型電荷生成層及びp型電荷生成層を含む電荷生成ユニットが含まれてよい。
【0286】
前記第2電子輸送層は、前記第1物質を含み、前記第2物質を含まず、前記第2電子輸送層は前記n型電荷生成層に接してよい。
【0287】
前記p型電荷生成層は、化学式4の第4物質をp型ドーパントとして含むことができる。
【0288】
【0289】
Aは、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、マロノニトリル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、置換或いは非置換されたアリール基又はヘテロアリール基であり、置換或いは非置換された炭素数1~12のアルキル基、置換或いは非置換された炭素数1~12のアルコキシ基から選択され、Aの置換基は、化学式2のいずれか1つを含んでもよく、Aの置換基は、ハロゲン、シアノ、マロノニトリル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシから選ばれ、置換基はそれぞれ独立に、水素及び重水素の一つである。C1及びC2はそれぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基のうち一つである。D1~D4はそれぞれ独立に、単結合又は二重結合で連結し、ハロゲン、シアノ基、マロノニトリル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシのうち一つに置換され、少なくとも2つはシアノ基を含む。
【0290】
前記電荷生成ユニットを挟んで前記第2青色スタックと隣り合った次のスタックは、少なくとも赤色燐光発光層を含む燐光スタックであってよい。
【0291】
前記赤色燐光発光層に接して緑色燐光発光層又は黄緑色燐光発光層をさらに含むことができる。
【0292】
前記n型電荷生成層は、電子輸送性ホストに、アルカリ金属、アルカリ土金属及び遷移金属のいずれか一つをn型ドーパントとして含むことができる。
【0293】
前記第1青色スタックは、前記陰極の向かい側において、前記燐光スタックと隣り合い、前記p型ドーパントを含んでいるp型電荷生成層と前記第1正孔輸送層が接してよい。
【0294】
また、本発明の一実施例に係る発光表示装置は、複数個のサブ画素を含んでいる基板と、前記基板上のサブ画素にそれぞれ備えられた薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタと接続している前記発光素子を含むことができる。
【0295】
一方、以上で説明した本発明は、上述した実施例及び添付の図面に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であるということが、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって明白であろう。
【符号の説明】
【0296】
100:基板
110、310:陽極
121、321:正孔注入層
180、380:電子注入層
122、322、131、331、141、341:正孔輸送層
123、323、142、342:電子阻止層
125、135、144、325、335、344:電子輸送層
124、143、324、343:青色発光層
132、332:赤色発光層
133、333:黄緑色発光層
134、334:緑色発光層
200、400:陰極