(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】作動工具
(51)【国際特許分類】
B25C 1/06 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B25C1/06
(21)【出願番号】P 2022535973
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2020085440
(87)【国際公開番号】W WO2021122270
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-13
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100,9494 Schaan,Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】チャフィック アブ アントゥン
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ビンダー
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル グート
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03578307(EP,A1)
【文献】特開2005-329481(JP,A)
【文献】特開平06-101994(JP,A)
【文献】特開平09-196597(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0060750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C1/00-13/00
B27F7/11;7/36
H02K33/00-33/18
H02K41/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に留め具を打ち込むための取付工具であって、ステータと作動軸に沿って前記ステータに対して移動する作動ピストンとを有し、前記作動ピストンを開始位置から前記作動軸に沿って前記基材まで駆動するようになっている駆動部もまた有し、前記駆動部は、前記作動ピストン上に配置されたピストンコイルと前記ステータ上に配置された第1のステータコイルとを含み
、第1のピストンコイルは、前記作動軸に沿った前記ステータに対する前記作動ピストンの移動中に、前記第1のステータコイルに入る、工具。
【請求項2】
前記ピストンコイルはピストンコイル軸を有し、前記第1のステータコイルは、前記ピストンコイル軸に対して平行に方向付けられた、特に、前記ピストンコイル軸に一致する第1のステータコイル軸を有する、請求項1に記載の工具。
【請求項3】
同じ方向の磁場を発生させ、前記第1のステータコイルへと前記ピストンコイルを加速させるために、同じ方向の電流を供給されることができる前記ピストンコイルと前記第1のステータコイルを備える、請求項2に記載の工具。
【請求項4】
前記駆動部は、前記ステータ上に配置された第2のステータコイルを有し、前記第2のステータコイルは、前記作動軸に沿って前記第1のステータコイルに対してオフセットして配置されており、前記ピストンコイル軸に対して平行に方向付けられた第2のステータコイル軸を有し、前記ピストンコイルが前記第1のステータコイルへと加速された後、同じ方向の磁場を発生させ、前記ピストンコイルを前記第2のステータコイルへと加速させるために、前記ピストンコイルと前記第2のステータコイルに同じ方向の電流を供給されることができ、前記ピストンコイルは、前記第1のステータコイルに対して及び前記第2のステータコイルに対して同じ方向に加速される、請求項3に記載の工具。
【請求項5】
反対の磁場を発生させ、前記第1のステータコイルから前記ピストンコイルを加速させるために、前記ピストンコイルと前記第1のステータコイルに反対方向の電流を供給されることができる、請求項
2に記載の工具。
【請求項6】
前記駆動部は、前記ステータ上に配置された第2のステータコイルを有し、前記第2のステータコイルは、前記作動軸に沿って前記第1のステータコイルに対してオフセットして配置されており、前記ピストンコイル軸に対して平行に方向付けられた第2のステータコイル軸を有し、前記ピストンコイルが前記第1のステータコイルから加速された後、反対の磁場を発生させ、前記第2のステータコイルから前記ピストンコイルを加速させるために、前記ピストンコイルと前記第2のステータコイルに反対方向の電流を供給されることができ、前記ピストンコイルは、前記第1のステータコイルに対して及び前記第2のステータコイルに対して同じ方向に加速される、請求項5に記載の工具。
【請求項7】
前記第1のステータコイルと前記第2のステータコイルは、互いに同じ方向に巻かれている、請求項4又は6に記載の工具。
【請求項8】
前記駆動部は第1のコンデンサを有し、前記第1のステータコイル及び/又は前記ピストンコイルは、前記第1のコンデンサの急速放電中に前記第1のステータコイル及び/又は前記ピストンコイルに電流を流し前記磁場を発生させるために、前記コンデンサに電気的に接続可能である、請求項
3~7のいずれか一項に記載の工具。
【請求項9】
前記駆動部は第2のコンデンサを有し、前記第2のステータコイル及び/又は前記ピストンコイルは、前記第2のコンデンサの急速放電中に前記第2のステータコイル及び/又は前記ピストンコイルに電流を流し前記磁場を発生させるために、前記第2のコンデンサに電気的に接続可能である、請求項4、6
及び7のいずれか一項に記載の工具。
【請求項10】
前記作動ピストンの位置を検出するための検出デバイスと、前記検出デバイスによって検出された前記作動ピストンの位置に基づいて前記第2のステータコイルに電流を供給するための制御デバイスとを含む、請求項4、6
、7及び9のいずれか一項に記載の工具。
【請求項11】
前記ピストンコイルと前記第1のステータコイルは互いに直列に電気的に接続されており、互いに同じ方向又は反対方向に巻かれている、請求項1~10のいずれか一項に記載の工具。
【請求項12】
前記ピストンコイルはピストンコイル外径を有し、前記第1のステータコイルは前記ピストンコイル外径よりも大きいステータコイル内径を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の工具。
【請求項13】
前記作動ピストンは軟磁性材料のリラクタンス要素を含み、前記リラクタンス要素は、前記第1のステータコイルによって発生した前記磁場によって前記第1のステータコイルへと加速する、請求項
3~
7のいずれか一項に記載の工具。
【請求項14】
前記リラクタンス要素は、前記作動ピストンの残り部分から前記第1のステータコイルに向かって、前記作動軸を横断する方向に突出する、請求項13に記載の工具。
【請求項15】
留め具を受け入れるように受け部を有し、前記作動ピストン又は前記ステータは、前記受け部に受け入れられた留め具を前記作動軸に沿って前記基材に移動させる、請求項1~14のいずれか一項に記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、基材(被打ち込み材)に留め具を打ち込むための取付工具などの作動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような工具は、多くの場合、作動軸に沿って移動する作動ピストンを有する。作動ピストンは駆動部によって駆動され、駆動部は作動ピストンを加速させる。特許文献1は、電気コンデンサと、作動ピストンに配置されたかご形ロータと、コンデンサの急速放電中に電流が流れ、作動ピストンを加速させる磁場を生成する励起コイルとを有する駆動部を記述している。
【0003】
取付工具は、通常、留め具のための受け部を有し、受け部内に受け入れられた留め具は、受け部から作動軸に沿って基材に移動される。それに対し、動作要素は、駆動部により作動軸に沿って留め具に向けて駆動される。特許文献2は、電気コンデンサ及びコイルを有する駆動部を備えた取付工具を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/104406号パンフレット
【文献】米国特許第6,830,173号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高効率及び/又は良好な取付品質が保証される上記の種類の取付工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
目的は、基材を加工するための好ましくは手持ち式工具であって、ステータと作動軸に沿ってステータに対して移動する作動ピストンとを有し、また、作動ピストンを開始位置から作動軸に沿って基材まで駆動する駆動部を有し、駆動部は、作動ピストン上に配置されたピストンコイルとステータ上に配置された第1のステータコイルとを含み、第1のピストンコイルは、作動軸に沿ったステータに対する作動ピストンの移動中に、第1のステータコイルに入る、手持ち式工具によって達成される。
【0007】
本発明の有利な態様では、ピストンコイルはピストンコイル軸を有し、第1のステータコイルは、ピストンコイル軸に対して平行に方向付けられた第1のステータコイル軸を有することを特徴とする。第1のステータコイル軸は、好ましくはピストンコイル軸に一致する。また、同じ方向の磁場を発生させ、第1のステータコイルへとピストンコイルを加速させるために、ピストンコイルと第1のステータコイルに同じ方向の電流が供給され得ることが好ましい。駆動部は、特に好ましくは、ステータ上に配置された第2のステータコイルを有し、第2のステータコイルは、作動軸に沿って第1のステータコイルに対してオフセットして配置されており、ピストンコイル軸に対して平行に方向付けられた第2のステータコイル軸を有し、ピストンコイルが第1のステータコイルへと加速された後、同じ方向の磁場を発生させ、ピストンコイルを第2のステータコイルへと加速させるために、ピストンコイルと第2のステータコイルに同じ方向の電流が供給され得る。ピストンコイルは、第1のステータコイルに対して及び第2のステータコイルに対して同じ方向に加速される。
【0008】
有利な態様では、反対の磁場を発生させ、第1のステータコイルからピストンコイルを加速させるために、ピストンコイルと第1のステータコイルに反対方向の電流が供給され得ることを特徴とする。駆動部は、好ましくは、ステータ上に配置された第2のステータコイルを有し、第2のステータコイルは、作動軸に沿って第1のステータコイルに対してオフセットして配置されており、ピストンコイル軸に対して平行に方向付けられた第2のステータコイル軸を有し、ピストンコイルが第1のステータコイルから加速された後、反対の磁場を発生させ、第2のステータコイルからピストンコイルを加速させるために、ピストンコイルと第2のステータコイルに反対方向の電流が供給され得る。ピストンコイルは、第1のステータコイルに対して及び第2のステータコイルに対して同じ方向に加速される。第1のステータコイルと第2のステータコイルは、好ましくは互いに同じ方向に巻かれている。
【0009】
有利な態様では、駆動部は第1のコンデンサを有し、第1のステータコイル及び/又はピストンコイルは、第1のコンデンサの急速放電中に第1のステータコイル及び/又はピストンコイルに電流を流し、磁場を発生させるために、コンデンサに電気的に接続可能であることを特徴とする。駆動部は、好ましくは、第2のコンデンサを有し、第2のステータコイル及び/又はピストンコイルは、第2のコンデンサの急速放電中に第2のステータコイル及び/又はピストンコイルに電流を流し、磁場を発生させるために、第2のコンデンサに電気的に接続可能である。工具は、特に好ましくは、作動ピストンの位置を検出するための検出デバイスと、検出デバイスによって検出された作動ピストンの位置に基づいて第2のステータコイルに電流を供給するための制御デバイスとを含む。
【0010】
有利な態様では、ピストンコイルと第1のステータコイルは互いに直列に電気的に接続されており、互いに同じ方向又は反対方向に巻かれていることを特徴とする。
【0011】
有利な態様では、ピストンコイルはピストンコイル外径を有し、第1のステータコイルはピストンコイル外径よりも大きいステータコイル内径を有することを特徴とする。
【0012】
有利な態様では、作動ピストンは軟磁性材料のリラクタンス要素を含み、リラクタンス要素は、第1のステータコイルによって発生した磁場によって第1のステータコイルへと加速することを特徴とする。リラクタンス要素は、好ましくは、作動ピストンの残り部分から第1のステータコイルに向かって、作動軸を横断する方向に突出する。
【0013】
有利な態様では、工具は、基材に留め具を打ち込むための取付デバイスとして構成されており、留め具を受け入れるように受け部を有し、作動ピストン又はステータは、受け部に受け入れられた留め具を作動軸に沿って基材に移動させ、駆動部は、作動ピストンを作動軸に沿って留め具に駆動する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に於いて、コンデンサは、電荷及び付随するエネルギーを電場に蓄積する電気部品を意味するものと理解されたい。特に、コンデンサは、2つの導電性電極を有し、電極が異なるように帯電された場合、それらの間に電場が生じる。本発明に関連して、留め具は、例えば釘、ピン、クランプ、クリップ、スタッド、特にねじ付きスタッド等を意味するものと理解されたい。
【0015】
本発明に於いて、軟磁性材料は、高い磁気飽和磁束密度、特に、小さい保磁力を有し、したがって、材料を貫通する磁場を強化する材料を意味するものと理解されたい。特に、ステータフレーム及び/又はピストンフレームの軟磁性材料の飽和磁束密度は、少なくとも1.0T、好ましくは少なくとも1.3T、特に好ましくは少なくとも1.5Tである。本発明に於いて、導電材料は、高い比導電率を有するため、材料を通過する磁場が材料中で渦電流を生成する材料を意味するものと理解されたい。軟磁性及び/又は導電材料は、好ましくは、強磁性材料、特に好ましくは強磁性金属、例えば鉄、コバルト、ニッケル、又は1種以上の強磁性金属材料を主成分とする合金からなる。
【0016】
本発明は、図面中のいくつかの実施例で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】工具のステータ/作動ピストンユニットを示す斜視長手方向断面図である。
【
図3】工具のステータ/作動ピストンユニットを示す長手方向断面図である。
【
図4】工具のステータ/作動ピストンユニットを示す長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、基材(図示せず)を加工するための工具10が長手方向断面図で示されている。工具10は、基材に留め具を打ち込むための手持ち式取付デバイスとして構成されている。工具10は、スタッドガイドとして形成された受け部20を有し、釘として形成された留め具30が、作動軸Aに沿って(
図1の左側の)基材に打ち込むために、受け部20内に受け入れられる。留め具を受け部に供給するために、工具10はマガジン40を含み、マガジン40内に、留め具が留め具ストリップ50の形態で個々に又は集合的に受け入れられ、受け部20に1つずつ搬送される。このために、マガジン40は、ばね装填式供給要素(具体的に図示されない)を有する。
【0019】
工具10は、ピストンプレート70とピストンロッド80とを含む作動ピストン60を有する。作動ピストン60は、留め具30を受け部20から作動軸Aに沿って基材に移動することを意図している。このプロセスにおいて、作動ピストン60は、ガイドシリンダ95内のそのピストンプレート70により作動軸Aに沿って案内される。図示しない実施例では、作動ピストンは、2つ、3つ又はそれより多いガイド要素、例えばガイドロッドにより作動軸に沿って案内される。作動ピストン60は更に、駆動部65によって駆動される。駆動部65は、スイッチング回路200及びコンデンサ300を含む。スイッチング回路200は、予め充電されたコンデンサ300の急速放電を生じさせ、それにより、駆動部65に流れる放電電流を供給する。
【0020】
工具10また、駆動部65が受け入れられるハウジング110と、トリガーとして形成された作動要素130を有するハンドル120と、蓄電池として形成された電気エネルギー貯蔵部140と、制御ユニット150と、トリガースイッチ160と、圧力スイッチ170と、駆動部65に配置された温度センサ180と、制御ユニット150を電気エネルギー貯蔵部140とトリガースイッチ160と圧力スイッチ170と温度センサ180とスイッチング回路200とコンデンサ300とに接続する電気接続線141、161、171、181、201、301とを含む。図示しない実施例において、工具10は、電気エネルギー貯蔵部140の代わりに又は電気エネルギー貯蔵部140に加えて、電力ケーブルにより電気エネルギーを供給される。制御ユニットは、プリント回路基板上で好ましくは相互接続されて1つ以上の電気制御回路、特に1つ以上のマイクロプロセッサを形成する電子部品を含む。
【0021】
工具10が(
図1の左側の)基材(図示しない)に押し付けられると、接触圧力要素(具体的に示されない)が接触圧力スイッチ170を作動し、その結果、接続線171によって制御ユニット150に接触圧力信号を送信する。これによりトリガーされて、制御ユニット150はコンデンサ充電プロセスを開始する。コンデンサ充電プロセスでは、コンデンサ300を充電するために、接続線141によって電気エネルギー貯蔵部140から制御ユニット150に、及び接続線301によって制御ユニット150からコンデンサ300に電気エネルギーが伝導される。この目的のために、制御ユニット150は、電気エネルギー貯蔵部140からの電流をコンデンサ300のための適切な充電電流に変換するスイッチングコンバータ(具体的に示さない)を含む。コンデンサ300が充電されて、作動ピストン60が
図1に示されるその取付準備完了位置にあるとき、工具10は取付準備完了状態にある。コンデンサ300の充電は、工具10を基材に押し付けることによってのみ行われるので、周囲の人の安全性を高めるために、取付プロセスは、取付工具10が基材に押し付けられたときにのみ実行可能になる。図示しない実施例では、制御ユニットは、工具がオンにされるときに、又は工具が基材から持ち上げられるときに、又は先行する打ち込みプロセスが完了するときに、コンデンサ充電プロセスを既に開始している。
【0022】
工具10が取付準備完了状態にある状態で、作動要素130が、例えばハンドル120を保持する手の人差し指を用いて引っ張られることにより作動されると、作動要素130はトリガースイッチ160を作動させ、その結果、接続線161を介して制御ユニット150にトリガー信号を送信する。これによりトリガーされて、制御ユニット150はコンデンサ放電プロセスを開始する。ここで、コンデンサ300に貯蔵された電気エネルギーはスイッチング回路200を介してコンデンサ300から駆動部65に伝導され、コンデンサ300は放電される。
【0023】
この目的のため、
図1に概略的に示されるスイッチング回路200は、コンデンサ300を駆動部65に接続する2つの放電線210、220を含み、このうちの少なくとも1つの放電線210は、常時開の放電スイッチ230によって遮断される。スイッチング回路200は駆動部65及びコンデンサ300と共に、電気発振回路を形成し得る。この発振回路の往復振動及び/又はコンデンサ300の負の充電は、潜在的に駆動部65の効率に悪影響を及ぼし得るが、フリーホイーリングダイオード240を利用して抑制され得る。放電線210、220は、いずれの場合においても、例えば、はんだ付け、溶接、ねじ止め、クランピング又はフォームフィットによって、受け部20に面したコンデンサ300の端面360上に配置されたコンデンサ300の電気接点370、380を介して、キャリアフィルム330上に配置されたコンデンサ300の電極310、320に電気的に接続されている。放電スイッチ230は、好ましくは、高い電流強度を有する放電電流を切り替えるのに適しており、例えばサイリスタとして形成されている。加えて、放電線210、220は、互いに近距離にあるため、それによって誘導される寄生磁場は、極力低く抑えられる。例えば、放電線210、220は組み合わされて母線を形成し、適当な手段、例えばホルダ又はクリップによってまとめて保持される。図示しない実施例において、フリーホイーリングダイオードは、放電スイッチと並列に電気的に接続されている。図示しない更なる実施例においては、回路にフリーホイーリングダイオードは設けられていない。
【0024】
コンデンサ放電プロセスを開始するために、制御ユニット150は接続線201によって放電スイッチ230を閉じ、それによりコンデンサ300の高強度放電電流が駆動部65を通って流れ、作動ピストン60を受け部20及びその中に受け入れられた留め具30に向けて駆動する。作動ピストン60のピストンロッド80が留め具30のヘッド(これ以上は具体的に示さない)に接触すると直ちに、留め具30は作動ピストン60によって基材に打ち込まれる。作動ピストン60の余分な運動エネルギーは、作動ピストン60がそのピストンプレート70と共に制動要素85に対して移動し、停止するまで制動要素85によって制動されることにより、ばね弾性及び/又は減衰材料、例えば、ゴム又はエラストマーの制動要素85によって吸収される。その後、作動ピストン60は、リセットデバイス(これ以上は具体的に示さない)によって取付準備完了位置にリセットされる。
【0025】
図2に、工具、例えば
図1に示される工具10のステータ/作動ピストンユニット400を示す。駆動部/作動ピストンユニット400は、作動軸401に沿って切り開かれて示され、部分的に示される駆動部410と、作動ピストン420と、ステータ430とを含む。作動ピストン420は、ピストン本体421とピストンロッド422とを有し、作動軸401に沿ってステータ430に対して移動する。駆動部410は、作動ピストン420を作動軸401に沿って駆動する。この目的のために、駆動部410は、ピストンコイルコンデンサ(図示せず)及び1つ以上のステータコイルコンデンサ(図示せず)及び作動ピストン420上に配置されたピストンコイル440及びステータ上に配置されたいくつかのステータコイル450を含む。
【0026】
ピストンコイル440は、ピストンコイルコンデンサの急速放電中に、ピストンコイル440に電流を流し、第1の磁場を発生させるために、ピストンコイルコンデンサに電気的に接続され得る。ステータコイル450は、ステータコイルコンデンサの急速放電中に、いずれの場合においてもステータコイル450に電流を流し、いずれの場合においても、第1の磁場と相互作用し、ピストンコイル440とステータコイル450のうちの1つとの間に時限的な斥力を生じさせる第2の磁場を発生させ、作動軸401に沿ってステータ430から出る作動ピストン420を加速させるために、ステータコイルコンデンサに電気的に接続され得る。ピストンコイル440と各々のステータコイル450との間の斥力は、例えば、各々のステータコイル450によって発生する磁場がピストンコイル440によって発生する磁場と逆であることによって生じる。この目的のために、ピストンコイルコンデンサ及びステータコイルコンデンサを例えば図示しない制御ユニットによって制御される対応する時限的な手法で放電することによって、ピストンコイル440とステータコイル450に反対方向の電流が交互に供給されることが好ましい。ピストンコイル440及びステータコイル450はそれぞれ、ピストンコイル軸及びステータコイル軸を有する。ピストンコイル軸及びステータコイル軸は作動軸401に一致し、したがって、互いに平行に方向付けられている。
【0027】
図3に、工具、例えば
図1に示される工具10の駆動部510を示す。駆動部510は、作動軸501に沿って切り開かれて示され、ピストン本体とピストンロッド(図示せず)とを有する作動ピストン520を作動軸501に沿って駆動し、ステータ530に対して移動させる。駆動部510は、作動ピストン520上に配置されたピストンコイル541と、ステータ530上に配置された第1のステータコイル551と、ステータ530上に配置された第2のステータコイル552と、ステータ530上に配置された第3のステータコイル553とを含む。ピストンコイル541は、コンデンサの急速放電中にピストンコイル541に電流を流すために、ピストンコイルコンデンサ(図示せず)に電気的に接続され得る。ピストンコイル541内を流れる電流は、第1の磁場を発生させる。ステータコイル551、552、553は、各々のステータコイルコンデンサの急速放電中にステータコイル551、552、553に電流を流すために、いずれの場合においてもステータコイルコンデンサ(図示せず)に電気的に接続され得る。ステータコイル551、552、553内を流れる電流は、第2の磁場を発生させる。
【0028】
ピストンコイル541及びステータコイル551、552、553はそれぞれ、ピストンコイル軸及びステータコイル軸を有する。ピストンコイル軸及びステータコイル軸は作動軸501に一致し、したがって、互いに平行に方向付けられている。ピストンコイル541及びステータコイル551、552、553は同じ方向に巻かれている。図示しない実施例では、ピストンコイルは、ステータコイルに対して反対方向に巻かれている。コイル541、551、552、553によって発生する磁場が本質的に等しく強いように、ピストンコイル541及びステータコイル551、552、553は、いずれの場合においても同じコイルターン数を有することが好ましい。
【0029】
ピストン520は、例えば鉄又はその合金、例えば鋼などの軟磁性材料からなることが好ましい。ステータ530はステータフレーム535を有する。ステータフレームは、例えば鉄又はその合金、例えば鋼などの軟磁性材料からなることが好ましい。ステータフレーム535はステータコイル551、552、553を取り囲み、作動軸501に対して周方向に延びる。その結果、ステータコイル551、552、553によって発生する磁場はピストンコイル541の領域内で強まり、ステータ530と作動ピストン520との間の加速力は増す。
【0030】
駆動部510は、作動ピストン520を、作動軸501に沿って、
図3に示される開始位置から前方に、(
図3の左側の)基材に向かって駆動するように。開始位置において、ピストンコイル541は第1のステータコイル551内に部分的に突出しており、第1のステータコイルに対して前方にオフセットして配置されている。
図3において、コイル541、551は円形の記号を備え、円内の点は、図面の平面から流出する電流を表し、円内の十字は、図面の平面に流入する電流を表す。ピストンコイル541と第1のステータコイル551には反対方向の電流が供給され、したがって、反対の磁場を発生させる。そのため、ピストンコイル541は第1のステータコイル551から前方に加速する。ピストンコイル541が第2のステータコイル552に完全に入ると直ちに、ピストンコイル541と第2のステータコイル552に反対方向の電流が供給され、そのため、ピストンコイル541が第1のステータコイル551から加速した後、ピストンコイル541は第2のステータコイル552から更に一層前方に加速する。ピストンコイル541が第3のステータコイル553に完全に入ると直ちに、ピストンコイル541と第3のステータコイル553に反対方向の電流が供給され、そのため、ピストンコイル541が第2のステータコイル552から加速した後、ピストンコイル541は第3のステータコイル553から更に前方に加速する。
【0031】
総じて、ピストンコイル541は3回連続して前方に加速する。図示しない実施例では、開始位置におけるピストンコイルは、第1のステータコイルに対して後方にオフセットして配置されており、ピストンコイルと第1のステータコイルには同じ方向の電流が供給され、そのため、ピストンコイルは第1のステータコイルへと加速する。ピストンコイル541は、第1のステータコイル551のステータコイル内径よりも大きいピストンコイル外径を有する。作動ピストン520が前方に移動すると、ピストンコイル541は第2のステータコイル552に入り、第2のステータコイル552及び第3のステータコイル553を完全に通過する。
【0032】
作動ピストン520は、作動ピストン520の周方向突起として形成された、軟磁性材料の2つのリラクタンス要素525を有する。
図3に示される作動ピストン520の開始位置において、リラクタンス要素525は、いずれの場合においてもステータコイル551、552、553のうちの1つによって発生する磁場によって各々のステータコイル551、552、553へと加速する。これにより、作動ピストン520の全体的な前方加速が増す。
【0033】
ピストンコイル541、542、543が互いに入ることにより、作動ピストン520によってカバーされる比較的長時間及び/又は比較的長距離にわたって送電が行われる。そのため、十分なエネルギー伝達のために比較的小さい最大力しか必要とされない。これにより、駆動部510の全ての構成要素に対する機械負荷が減少する。加えて、比較的小さい最大電流が必要とされる。加えて、生じる廃熱はいくつかのコイルにわたって分配され、駆動部519の冷却を容易にする。
【0034】
図4において、作動ピストン520及びステータ530は、作動軸501に沿った作動ピストン520の第1の終端位置に示される。ピストンコイル541は、作動軸501に沿って、第3のステータコイル553に対して前方にオフセットして配置されている。第1のピストンコイル541と第3のステータコイル553に同じ方向の電流を供給することにより、作動ピストン520を開始位置に移動させるために後方に加速させることが可能である。これには、ピストンコイル541又は第3のステータコイル553の極性反転又は別々の通電を必要とする。
【0035】
図5に、
図3に示される駆動部510の電気回路図が示されている。駆動部510は、第1のコンデンサ561と、第2のコンデンサ562と、第3のコンデンサ563と、3つのフリーホイーリングダイオード590を有するスイッチング回路570と、第1のスイッチ571と、第2のスイッチ572と、第3のスイッチ573と、作動ピストン上に配置されたピストンコイル541と、ステータ上に配置された第1のステータコイル551と、ステータ上に配置された第2のステータコイル552と、ステータ上に配置された第3のステータコイル553とを含む。ピストンコイル541は、各コンデンサ561、562、563がピストンコイルコンデンサとなるように、各々のコンデンサ561、562、563の急速放電中にピストンコイル541に電流を流すために、各コンデンサ561、562、563に電気的に接続され得る。ステータコイル551、552、553はまた、各コンデンサ561、562、563がまた、ステータコイルコンデンサとなるように、各々のコンデンサ561、562、563の急速放電中にステータコイル551、552、553に電流を流すために、いずれの場合においてもコンデンサ561、562、563のうちの1つに電気的に接続され得る。
【0036】
第1のコンデンサ561は、第1のスイッチ571の入力に電気的に接続されている。第1のスイッチ571の出力は、第1のステータコイル551の入力に電気的に接続される、好ましくは永久的に接続されている。第1のステータコイル551の出力は、コンタクトブラシとして形成された第1の電気ステータ接点531に電気的に接続されている、好ましくは永久的に接続されている。第2のコンデンサ562は、第2のスイッチ572の入力に電気的に接続されている。第2のスイッチ572の出力は、第2のステータコイル552の入力に電気的に接続されている、好ましくは永久的に接続されている。第2のステータコイル552の出力は、コンタクトブラシとして形成された第2の電気ステータ接点533に電気的に接続されている、好ましくは永久的に接続されている。第3のコンデンサ563は、第3のスイッチ573の入力に電気的に接続されている。第3のスイッチ573の出力は、第3のステータコイル553の入力に電気的に接続されている、好ましくは永久的に接続されている。第3のステータコイル553の出力は、コンタクトブラシとして形成された第3の電気ステータ接点534に電気的に接続されている、好ましくは永久的に接続されている。
【0037】
ピストンコイル541の入力は、コンタクトレールとして形成され、作動ピストンが有する第1のピストン接点544に電気的に接続されている、好ましくは永久的に接続されている。作動ピストンが作動軸に沿って移動すると、第1のピストン接点544は、ステータ接点531、533、543に沿って電気的に伝導性の状態で摺動する。1つ以上の第1のばね(図示せず)が第1のピストン接点544に向かってステータ接点531、533、534に荷重をかける。図示しない実施例では、追加的に又は代替的に、ばねは第1のステータ接点に向かって第1のピストン接点に荷重をかける。ピストンコイル541の出力は、コンタクトレールとして形成され、作動ピストンが有する第2のピストン接点545に電気的に接続されている、好ましくは永久的に接続されている。作動ピストンが作動軸に沿って移動すると、第2のピストン接点545は、接地接点532に沿って電気的に伝導性の状態で摺動する。ステータ530は接地接点532を有し、接地接点532は、コンタクトブラシとして形成され、コンデンサ561、562、563もまた電気的に接続される地電位(図示せず)に電気的に接続される。第2のばね(図示せず)は、第2のピストン接点545に向かって接地接点532に荷重をかける。図示しない実施例では、追加的に又は代替的に、ばねは、接地接点に向かって第2のピストン接点に荷重をかける。ピストン接点544、545は、作動ピストンの残り部分に強固に接続されており、作動ピストンの残り部分と共に移動する。図示しない実施例では、第1及び/又は第2のステータ接点はスリップリングとして形成されている。
【0038】
ピストンコイル541及びステータコイル551、552、553によるコンデンサ561、562、563の各々の急速放電は、スイッチング回路570によって、第1に、第1のコンデンサ561が充電されると第1のスイッチ571が閉じられ、第1のステータコイル551及びピストンコイル541が第1のコンデンサ561に電気的に接続されることにより起動され得る。その後、電流が第1のコンデンサ561から第1のスイッチ571を通り、第1のステータコイル551を通り、第1のステータ接点531及び第1のピストン接点544を通り、ピストンコイル541を通り、最後に第2のピストン接点545及び接地接点532を通って第1のコンデンサ561に流れる。第1のコンデンサ562が充電されると、ピストンコイル541が第2のステータコイル552に完全に入ると直ちに第2のスイッチ572は閉じられ、第2のステータコイル552及びピストンコイル541は第2のコンデンサ562に電気的に接続される。その後、電流が第2のコンデンサ562から第2のスイッチ572を通り、第2のステータコイル552を通り、第2のステータ接点533及び第1のピストン接点544を通り、ピストンコイル541を通り、最後に第2のピストン接点545及び接地接点532を通って第2のコンデンサ562に流れる。第3のコンデンサ563が充電されると、ピストンコイル541が第3のステータコイル553に完全に入ると直ちに第3のスイッチ573は閉じられ、第3のステータコイル553及びピストンコイル541は第3のコンデンサ563に電気的に接続される。その後、電流が第3のコンデンサ563から第3のスイッチ573を通り、第3のステータコイル553を通り、第3のステータ接点534及び第1のピストン接点544を通り、ピストンコイル541を通り、最後に第2のピストン接点545及び接地接点532を通って第3のコンデンサ563に流れる。
【0039】
本発明について、図面に示す一連の実施例及び図示しない実施例を用いて記述してきた。各種の実施例の個々の特徴は、互いに矛盾しない限り、個々に又は互いの所望の組み合わせで適用され得る。本発明による工具はまた、例えばハンマードリルなどの他の用途に使用され得ることに留意されたい。