(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】マイクロミラーバランシングされた眼科顕微鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 3/13 20060101AFI20240306BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61B3/13
G02B21/36
(21)【出願番号】P 2022542734
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2020050727
(87)【国際公開番号】W WO2021144000
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521511575
【氏名又は名称】ハーグ-シュトライト アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】カスパル トリッティバッハ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ツムケール
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-237901(JP,A)
【文献】特開2012-212095(JP,A)
【文献】特開2011-235120(JP,A)
【文献】米国特許第05943118(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00- 3/18
G02B 6/35
19/00-21/00
21/06-21/36
26/00-26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科顕微鏡であって、
i)照明パルス(L1、L2)を生成し、且つ、
a)少なくとも1つの光源(22、22a~22d)、
b)第1及び第2位置に個々に偏向可能であるマイクロミラー(60)の2次元アレイを有する、電子的に制御された空間光変調器(24)、及び
c)照明撮像オプティクス(26)
を有する照明装置(9)と、
ii)
a)顕微鏡オプティクス(14、15)、及び
b)少なくとも1つの電子カメラ(16)
を有する顕微鏡装置(8)と、
iii)制御ユニット(32)と、
を有し、
前記制御ユニット(32)は、前記カメラ(16)の連続するN≦100のフレームサイクルのグループについて、前記空間光変調器(24)のそれぞれのマイクロミラー(60)を時間t1の間に前記第1位置に、時間t2の間に前記第2位置に設定するように構成されており、ここで、0.1<t1/t2<10であ
り、
前記制御ユニット(32)は、前記フレームサイクルに同期した方法で、前記光源(22、22a~22d)をパルス化するように構成されており、
前記制御ユニット(32)は、前記カメラ(16)によって記録されるそれぞれのフレームごとに、少なくとも2つの別個の光パルス(L1、L2)を生成するように構成されており、前記光パルスの1つ(L1)が前記カメラ(16)の積分フェーズに含まれている一方で、他の1つ又は複数の光パルス(L2)が前記積分フェーズの外側に含まれている、眼科顕微鏡。
【請求項2】
0.2<t1/t2<5
である、
請求項1に記載の
眼科顕微鏡。
【請求項3】
N≦10である、請求項1又は2に記載の
眼科顕微鏡。
【請求項4】
N=1である、請求項1から3のいずれか1項に記載の
眼科顕微鏡。
【請求項5】
前記制御ユニット(32)は、
-所与の光パルスの前のダークフェーズにおいて前記
マイクロミラーを所与の構成に設定するように、且つ、
-前記
マイクロミラーが前記所与の構成にある際にのみ前記光パルスを開始するように、
構成されている、請求項
1から4のいずれか1項に記載の
眼科顕微鏡。
【請求項6】
前記光パルス(L1、L2)は、持続時間が等しく、
すべての光パルス(L1、L2)について、前記空間光変調器(24)は、同一の構成(P1、P3)を有しており、且つ、
前記光パルスは、長さが等しいダークフェーズによって分離されている、請求項
1から5のいずれか1項に記載の
眼科顕微鏡。
【請求項7】
前記制御ユニット(32)は、前記光パルス(L1、L2)の間において、前記空間光変調器(24)を前記光パルス(L1、L2)において前記構成(P1、P3)とは反対側の構成(P2、P4)に設定するように適合されている、請求項
6に記載の
眼科顕微鏡。
【請求項8】
眼科顕微鏡であって、
i)照明パルス(L1、L2)を生成し、且つ、
a)少なくとも1つの光源(22、22a~22d)、
b)第1及び第2位置に個々に偏向可能であるマイクロミラー(60)の2次元アレイを有する、電子的に制御された空間光変調器(24)、及び
c)照明撮像オプティクス(26)
を有する照明装置(9)と、
ii)
a)顕微鏡オプティクス(14、15)、及び
b)少なくとも1つの電子カメラ(16)
を有する顕微鏡装置(8)と、
iii)制御ユニット(32)と、
を有し、
前記制御ユニット(32)は、前記カメラ(16)の連続するN≦100のフレームサイクルのグループについて、前記空間光変調器(24)のそれぞれのマイクロミラー(60)を時間t1の間に前記第1位置に、時間t2の間に前記第2位置に設定するように構成されており、ここで、0.1<t1/t2<10であり、
前記光源(22、22a~22d)と前記空間光変調器(24)の間の光強度を計測するように適合された少なくとも1つの光センサ(58a~58d、58)を更に有し、前記制御ユニット(32)は、
-前記光変調器(24)を非透過モードに設定するように、且つ、
-前記光変調器(24)が前記非透過モードにある間に、前記光源(22、22a~22d)の輝度を計測するために前記少なくとも1つの光源(22、22a~22d)をパルス化するように、
構成されている、
眼科顕微鏡。
【請求項9】
眼科顕微鏡であって、
i)照明パルス(L1、L2)を生成し、且つ、
a)少なくとも1つの光源(22、22a~22d)、
b)第1及び第2位置に個々に偏向可能であるマイクロミラー(60)の2次元アレイを有する、電子的に制御された空間光変調器(24)、及び
c)照明撮像オプティクス(26)
を有する照明装置(9)と、
ii)
a)顕微鏡オプティクス(14、15)、及び
b)少なくとも1つの電子カメラ(16)
を有する顕微鏡装置(8)と、
iii)制御ユニット(32)と、
を有し、
前記制御ユニット(32)は、前記カメラ(16)の連続するN≦100のフレームサイクルのグループについて、前記空間光変調器(24)のそれぞれのマイクロミラー(60)を時間t1の間に前記第1位置に、時間t2の間に前記第2位置に設定するように構成されており、ここで、0.1<t1/t2<10であり、
前記光源(22、22a~22d)の輝度を監視する少なくとも1つの光センサ(58a~58d、58)を更に有し、前記制御ユニット(32)は、較正パラメータを生成するために、前記光センサ(58a~58d、58)を利用して前記光源(22、22a~22d)の前記輝度を監視するように、且つ、前記少なくとも1つの光源(22、22a~22d)を制御するために前記較正パラメータを使用するように、適合されている、
眼科顕微鏡。
【請求項10】
いくつかの光源(22a~22d)を有し、前記制御ユニット(32)は、前記カメラ(16)の積分フェーズの外側において較正計測を実行するように適合されており、前記較正計測は、
-前記空間光変調器(24)を非透過構成に配置するステップと、
-前記光源(22a~22d)の正確に1つをスイッチオンし、且つ、光センサ(58)を利用して輝度信号を計測するステップと、
を有する、請求項
9に記載の
眼科顕微鏡。
【請求項11】
眼科顕微鏡
を動作させる方法であって、前記
眼科顕微鏡は、
i)
a)少なくとも1つの光源(22、22a~22d)、
b)第1及び第2位置に個々に偏向可能であるマイクロミラー(60)の2次元アレイを有する、電子的に制御された空間光変調器(24)、及び
c)照明撮像オプティクス(26)
を有する照明装置(9)と、
ii)
a)顕微鏡オプティクス(14、15)、及び
b)少なくとも1つの電子カメラ(16)
を有する顕微鏡装置(8)と、
iii)制御ユニット(32)と、
を有し、
前記方法は、前記カメラ(16)の連続するN≦100のフレームサイクルのグループについて、前記空間光変調器(24)のそれぞれのマイクロミラー(60)を時間t1の間に前記第1位置に、時間t2の間に前記第2位置に設定するステップを有しており、ここで、0.1<t1/t2<10であ
り、
前記フレームサイクルに同期した方法により、前記光源(22、22a~22d)をパルス化するステップを有し、
前記カメラ(16)によって記録されたそれぞれのフレームごとに、少なくとも2つの別個の光パルス(L1、L2)を生成するステップを有しており、前記光パルスの1つ(L1)が前記カメラ(16)の積分フェーズに含まれている一方で、他の1つ又は複数の光パルス(L2)が前記積分フェーズの外側に含まれている、方法。
【請求項12】
-前記
マイクロミラーを所与の光パルスの前のダークフェーズにおいて所与の構成に設定するステップと、
-前記
マイクロミラーが前記所与の構成にある際にのみ、前記光パルスを開始するステップと、
を有する、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記光パルス(L1、L2)は、持続時間が等しく、
すべての光パルス(L1、L2)について、前記空間光変調器(24)は、同一の構成(P1、P3)を有しており、且つ、
前記光パルスは、長さが等しいダークフェーズによって分離されている、請求項
11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記光パルス(L1、L2)の間において、前記空間光変調器(24)を前記光パルス(L1、L2)において前記構成(P1、P3)とは反対側の構成(P2、P4)に設定するステップを有する、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
眼科顕微鏡を動作させる方法であって、前記眼科顕微鏡は、
i)
a)少なくとも1つの光源(22、22a~22d)、
b)第1及び第2位置に個々に偏向可能であるマイクロミラー(60)の2次元アレイを有する、電子的に制御された空間光変調器(24)、及び
c)照明撮像オプティクス(26)
を有する照明装置(9)と、
ii)
a)顕微鏡オプティクス(14、15)、及び
b)少なくとも1つの電子カメラ(16)
を有する顕微鏡装置(8)と、
iii)制御ユニット(32)と、
を有し、
前記方法は、前記カメラ(16)の連続するN≦100のフレームサイクルのグループについて、前記空間光変調器(24)のそれぞれのマイクロミラー(60)を時間t1の間に前記第1位置に、時間t2の間に前記第2位置に設定するステップを有しており、ここで、0.1<t1/t2<10であり、
前記
眼科顕微鏡は、前記光源(22、22a~22d)と前記空間光変調器(24)の間の光強度を計測するように適合された少なくとも1つの光センサ(58a~58d、58)を更に有し、
前記方法は、
-前記光変調器を非透過モードに設定するステップと、
-前記光変調器が前記非透過モードにある間に、前記光源(22)の輝度を計測するために前記少なくとも1つの光源(22、22a~22d)をパルス化するステップと、
を有する
方法。
【請求項16】
眼科顕微鏡を動作させる方法であって、前記眼科顕微鏡は、
i)
a)少なくとも1つの光源(22、22a~22d)、
b)第1及び第2位置に個々に偏向可能であるマイクロミラー(60)の2次元アレイを有する、電子的に制御された空間光変調器(24)、及び
c)照明撮像オプティクス(26)
を有する照明装置(9)と、
ii)
a)顕微鏡オプティクス(14、15)、及び
b)少なくとも1つの電子カメラ(16)
を有する顕微鏡装置(8)と、
iii)制御ユニット(32)と、
を有し、
前記方法は、前記カメラ(16)の連続するN≦100のフレームサイクルのグループについて、前記空間光変調器(24)のそれぞれのマイクロミラー(60)を時間t1の間に前記第1位置に、時間t2の間に前記第2位置に設定するステップを有しており、ここで、0.1<t1/t2<10であり、
前記
眼科顕微鏡は、少なくとも1つの光センサ(58a~58d、58)を有し、且つ、
前記光センサ(58a~58d、58)を利用して前記光源(22、22a~22d)の輝度を監視し、且つ、較正パラメータを生成するステップと、
前記光源(22、22a~22d)を制御するために前記較正パラメータを使用するステップと、
を有する
方法。
【請求項17】
前記
眼科顕微鏡は、いくつかの光源(22a~22d)を有し、前記方法は、前記カメラ(16)の積分フェーズの外側において較正計測の前記ステップを有し、前記較正計測は、
-前記空間光変調器(24)を非透過構成に配置するステップと、
-前記光源(22a~22d)の正確に1つをスイッチオンし、且つ、光センサ(58)を利用して輝度信号を計測するステップと、
を有し、且つ、
前記光源(22a~22d)は、異なる色を有し、且つ、前記方法は、
異なる色を有する2つの光源が、フレームを記録している間に、同時にスイッチオンされた際に、前記光源(22a~22d)の少なくとも2つの間の望ましい相対輝度を維持するために、前記光源(22a~22d)の前記較正計測を使用するステップを更に有する、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記
眼科顕微鏡は1つの光源を有する、又は、
前記
眼科顕微鏡は複数の光源を有し、すべての前記光源がオンにされる少なくとも1つの時点が前記フレームサイクル内に存在している、請求項
11から
17のいずれか1項に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼に対して照明パルスを生成するように適合された照明装置と、眼の画像を記録するカメラを有する顕微鏡装置と、を有する眼科顕微鏡、特にスリットランプ顕微鏡(slit lamp microscopes)に関する。特に、本発明は、照明装置が電子的に制御される空間光変調器を有し、空間光変調器がマイクロミラーの2次元アレイを有する顕微鏡に関する。また、本発明は、そのような装置を動作させる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5943118号明細書は、眼科顕微鏡について記述しており、この眼科顕微鏡は、照明パルスを生成する照明装置と、カメラを有する顕微鏡とを備えている。この装置は、マイクロミラーのアレイを有する電子的に制御される空間光変調器を備え、各マイクロミラーがオン又はオフの位置に電子的に制御されることで、検査対象の眼に任意の照明パターンを生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明によって解決しようとする課題は、このような装置の耐用年数を改善することである。
【0005】
この課題は、独立請求項による装置及び方法によって解決される。
【0006】
従って、本発明は、少なくとも、
i)照明パルスを生成する照明装置であって、照明装置は、検査対象の眼を照明するために個々の光パルスを生成するように適合及び構成されており、少なくとも、
a)少なくとも1つの光源であって、光を生成する照明装置の一部である光源、
b)電子的に制御される空間光変調器であって、この部分は、光を空間的に変調するように構成されており、空間光変調器は、第1及び第2位置に個々に偏向可能であるマイクロミラーの2次元アレイを有し、この文脈において、マイクロミラーは、有利には、1mm2未満の、特に100μm2未満の、面積を有するミラーである、空間光変調器、
c)照明撮像オプティクス(optics)であって、この部分は、眼に対して光を照射するように構成されており、有利には、眼に対して空間光変調器の画像を照射し、これにより、定義された照明パターンを眼の上部において生成する、照明撮像オプティクス、
という要素を含む照明装置と、
ii)顕微鏡装置であって、顕微鏡装置は、眼の画像を記録するように適合されており、少なくとも、
a)顕微鏡オプティクスであって、眼の画像を生成する顕微鏡オプティクス、
b)少なくとも1つの電子カメラであって、顕微鏡オプティクスからの投射された画像を記録するように適合されており、画像が反復的なフレームサイクルで記録され、画像の1フレームがそれぞれのフレームサイクルでカメラによって記録される、電子カメラ、
という要素を有する顕微鏡装置と、
iii)制御ユニットであって、装置の要素の動作を制御している制御ユニットと、
という要素を有する眼科顕微鏡に関する。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、カメラは、カメラがフレームを記録する時間を示す信号を伝送するフレーム信号出力を有する。特に、これは、自身が取得するそれぞれのフレームに対して同期化された、即ち、そのフレームの積分フェーズに対して同期化された、単一パルスを生成することができる。
【0008】
制御ユニットは、カメラの連続するN≦100のフレームサイクルのグループについて、空間光変調器のそれぞれのマイクロミラーを時間t1の間に第1位置に、時間t2の間に第2位置に設定するように構成される。即ち、t1は、あるマイクロミラーがN個の連続するフレームサイクルのグループの間にその第1の位置にある時間に対応し、t2は、あるマイクロミラーが同じN個の連続するフレームサイクルのグループの間にその第2の位置にある時間に対応する。本発明によれば、t1及びt2は、0.1<t1/t2<10という意味でバランスされる(are balanced)。
【0009】
t1及びt2は、通常、マイクロミラーの少なくともいくつかについて異なっており、即ち、t1及びt2は、大部分の一般的なケースにおいて、変調器内のミラーの場所i、jに依存することに留意されたい。
【0010】
本発明は、マイクロミラーの位置をバランシング(balancing)させることによって、そのような空間光変調器の耐用年数が増加することを考慮に入れている。画像又は映像の投影に使用される光変調器の場合、画像又は映像のフレームおよびそれらのRGB-チャンネルが絶えず変化することによって、そのようなバランスは自然に達成される。しかし、眼科顕微鏡では、多くの検査で照明パターンが同一又は類似しているため、ミラーの位置がアンバランスになる。このようなアンバランスは、顕微鏡を検査に使用しないときに、使用しない位置にミラーを移動させることによって補うことができる。しかし、本発明は、装置の使用中、すなわち連続したフレームを記録している間であってもバランシングが可能であるという理解に基づいている。これにより、装置が使用されていないときにバランシングを実施する必要性がなくなる。
【0011】
バランシングは、有利には、各個別のフレームサイクル、すなわちN=1にわたって実施される。これにより、2以上のフレームサイクルにわたってミラー位置を「計画(plan)」する必要がなくなるため、装置の動作が単純化される。
【0012】
t1とt2の比が1に近いほどバランスは良くなる。よって、有利には、0.2<t1/t2<5、特に、0.33<t1/t2<3である。
【0013】
光源は、有利には、パルス化されており、即ち、制御ユニットは、光源をパルス化するように構成されている。有利には、これは、カメラのフレームサイクルに同期した方法で実行されている。
【0014】
顕微鏡が、パルス化された照明を使用している場合には、制御ユニットは、
-所与の光パルスの前のダークフェーズにおいてピクセルを所与の構成に設定するように、且つ、
-ピクセルが望ましい構成にある際にのみ光パルスを開始するように、
適合させることができる。
【0015】
このケースにおいては、ダークフェーズは、光パルスが光変調器をセットアップするために利用される前に位置している。このセットアップは、ある程度の時間を所要し得るが、その理由は、例えば、ピクセルが低速であるからであり、或いは、パターン情報を光変調器内に順番に供給することに時間を所要し、且つ、従って、これは、光パルスの前において最良に実行されるからである。
【0016】
装置は、いくつかの光源と、光変調器の状態とは独立的に、光源と空間光変調器の間の場所における光強度、即ち、光源の輝度、を計測するように適合された少なくとも1つの光検出器と、を更に有することができる。このケースにおいては、方法又は制御ユニットは、少なくとも、
-光変調器を非透過モードに設定するステップであって、このモードにおいては、光は、光源がスイッチオンされた場合にも眼に対して投射されない、ステップと、
-光変調器がこの非透過モードにある間に、この光源の輝度を計測するために1つの光源をパルス化するステップと、
という2つのステップを実行するように適合させることができる。
【0017】
これは、間欠的に―特に、一連の画像フレームを記録している最中に―光源の現時点の輝度を制御することを許容している。次いで、この情報は、例えば、定義された照明を実現するために、フレームを記録している間に、光変調器のピクセルのオン時間においてフレームを記録している間に、光パルスにおける光源を通じた電流を調節するために使用することができる。
【0018】
以下の詳細な説明を検討した際に、本発明について更に十分に理解されることになり、且つ、以上において記述されているもの以外の目的について明らかとなろう。このような説明は、添付の図面を参照しており、これらの図面は、以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図2は、照明装置のコンポーネントの一実施形態を示す。
【
図3】
図3は、マイクロミラーに基づいた空間光変調器の概略図である。
【
図4】
図4は、装置の様々なコンポーネントのタイミング図の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、眼科顕微鏡、特にスリットランプ顕微鏡、の一実施形態を示している。
【0021】
顕微鏡は、例えば、机の上に置かれたベース1と、ベース1に取り付けられた平行運動方式で変位可能なステージ2と、第1アーム3と、第2アーム4と、を有する。
【0022】
ステージ2は、ベース1との関係において水平方向x及びzに沿って線形変位させることができる。
【0023】
アーム3及び4は、ステージ2に取り付けられた且つ共通垂直方向回動軸5、即ち、垂直方向y、に平行な軸、を中心として回動する。
【0024】
装置は、患者の頭部を受け入れるためにベース1に取り付けられたヘッドレスト7を更に含むことができる。
【0025】
アーム3は、顕微鏡装置8を担持しており、且つ、アーム4は、スリットランプなどの照明装置9を担持している。
【0026】
顕微鏡装置8は、光軸12を有する。これは、対物レンズ14及びズームオプティクス15などの顕微鏡オプティクス14、15を有しており、これらは、眼10の画像をカメラ16上に、且つ、任意選択により、アイピース(eyepiece)18上に、投射している。これらのコンポーネントの間において光をスプリットするために、ビームスプリッタ20を提供することができる。
【0027】
照明装置9は、構造化された光ビームを検査対象の眼10に対して投射するように適合されている。これは、光源22と、空間光変調器24と、照明撮像オプティクス26と、を有する。
【0028】
例えば、光源22は、例えば、光学スペクトルの赤色、緑色、青色、及び赤外範囲内の異なる波長を放出するいくつかのユニットを有することができる。これらのユニットは、光源22の色を変更するように別個に制御することができる。
【0029】
有利には、光源22は、少なくとも1つのLED及び/又は半導体レーザーを有する。このタイプの光源は、有利であり、その理由は、LED及び半導体レーザーは、迅速且つ正確にパルス化することができるからである。
【0030】
照明撮像オプティクス26は、例えば、アーム4に取り付けられたミラー28を介して、例えば、眼10の前部表面上に、変調器24からの光を投射している。眼10の前部表面は、ターゲットプレーン11において配置されているものと仮定されており、ターゲットプレーン11は、照明撮像オプティクス26との関係における空間光変調器24の光学的に共役な平面である。
【0031】
照明装置9は、ミラー28の上方又は下方において配置することができる。
【0032】
制御ユニット32は、顕微鏡のコンポーネントを制御している。特に、これは、例えば、マイクロプロセッサ34及びメモリ36を有することができる。マイクロプロセッサ34は、後述するように、方法のステップを実行するようにプログラミングされており、且つ、メモリ36は、これを実行するためにデータ及び/又は命令を収容している。
【0033】
カメラ16は、その上部に投射された一連の画像の個々のフレームを記録するように適合されている。
【0034】
これは、フレームが記録される時間を示す信号を伝送するフレーム信号出力38aを有する。また、これは、記録された画像を転送するためのデータ出力38bをも有する。両方の出力38a、38bは、制御ユニット32に接続することができる。
【0035】
カメラ16は、例えば、ソニーのIMXシリーズのカメラなどのように、CCDカメラ又は任意の他の半導体に基づいたカメラであってよい。
【0036】
半導体カメラにおいては、フレームを記録するプロセスは、特定の期間にわたる光学信号の積分を伴っている。積分期間の終了時点において、画像を読み出すことができる。
【0037】
フレーム信号出力38aにおける信号は、この積分フェーズと同期した状態にあり、且つ、カメラタイプに応じて、これは、例えば、積分フェーズの開始時点において又は終了時点において発行することができる。
【0038】
照明装置
図2は、照明装置9の更に詳細な実施形態を示している。これは、定義された鋭い外形の照明フィールドを眼10などのターゲットに対して投射するように設計されている。照明フィールドは、例えば、丸い、矩形の、又はスリットの形状であってよい。照明装置は、本明細書においては、「スリットランプ」と呼称されているが、照明フィールドがスリット形状である必要はまったくない。これは、任意の形状を有することができる。
【0039】
本実施形態において、照明装置9は、異なるスペクトル放出特性を有する4つの光源22a~22dを有する。例えば、これらは、赤外光源、赤色光源、緑色光源、及び青色光源を含み得る。有利には、光源は、LEDである。特に、それぞれの光源は、単一のLEDであってよい。
【0040】
それぞれの光源からの光は、実質的に、コリメーションオプティクス(collimation optics)40a~40dを利用してコリメートされている。
【0041】
同軸状態になるように光源22a~22dからの光を組み合わせるために、3つのダイクロイックミラー(dichroic mirrors)42a、42b、42cが使用されている。
【0042】
組み合わせられた光は、例えば、米国特許第6507434号明細書に記述されているフライアイレンズアレイなどのホモジナイゼーションオプティクス(homogenization optics)44を通過する。
【0043】
また、2つの円筒形レンズ46a、46b、更なるレンズ46c、及びホモジナイゼーションオプティクス44は、協働して1つの方向に沿って光ビームを拡幅しており、これにより、例えば、空間光変調器の通常利用可能なフォームファクタに相対的に良好にマッチングするように、例えば、16:9の幅対高さ比を有する細長い断面をこれに対して付与している。
【0044】
ミラー48は、光をその間にギャップ52を有する2つのプリズム50a、50bの組立体内に偏向している。
【0045】
光ビームは、プリズム50a、ギャップ52、及びプリズム50bを通過し且つ空間光変調器24に到達している。
【0046】
図示の実施形態において、空間光変調器24は、個々に偏向可能なマイクロミラーの2次元アレイを有するDMD(「Digital Micro-mirro Device」)である。制御ユニット32は、例えば、第1及び第2位置の間においてそれぞれのマイクロミラーのアライメントを制御するように適合されている。
【0047】
図3は、このようなDMDの2つのマイクロミラー60の断面図を概略的に示している。それぞれのミラー60は、弾性支持部62によって保持されており、且つ、電極64を利用して偏向可能である。このタイプの装置は、当業者には既知である。
【0048】
マイクロミラー60が第1位置にある状態において、光は、
図2の54によって表記されている方向に沿ってプリズム50b内に反射されて戻っている。この方向54に沿って移動する光は、ギャップ52に対する第2プリズム50bのインターフェイスにおける全内部反射に晒されており、且つ、
図2の56によって表記されている方向に反射されている。
【0049】
マイクロミラー60が第2位置にある状態においては、光は、依然としてプリズム50b内に、但し、ギャップ52に対するインターフェイスにおける全内部反射の条件を充足してはいない異なる方向(
図2には示されていない)に沿って、反射されて戻っている。このインターフェイスにおいて依然として反射される小さな部分は、方向56とは異なる方向において移動することになり、従って、以下において記述されている照明撮像オプティクス26により、更に処理されることにはならない。
【0050】
従って、制御ユニット32は、空間光変調器24のそれぞれのピクセル(それぞれのマイクロミラー60)をオン状態及びオフ状態に個々に設定し、これにより、(照明装置のターゲットプレーン11内において配置されているものと仮定されている)ターゲット10における光フィールドの外形及び形状を定義することができる。
【0051】
空間光変調器24のピクセルからの光は、1つ又は複数のレンズを含み得る照明撮像オプティクス26に進入する。そこから、光は、ミラー28を通過してターゲット10に到達することができる。
【0052】
照明撮像オプティクスは、空間光変調器24をターゲット10上に結像しており、即ち、ターゲット10は、空間光変調器24のプレーン62の照明撮像オプティクス26との関係における共役な平面であるターゲットプレーン11に位置している。
【0053】
動作
図4には、カメラ16を利用して一連のフレームを記録するプロセスが示されている。
【0054】
図4の第1ラインに示されているように、カメラは、積分及び処理フェーズを通じて稼動し、これらのフェーズは、少なくとも部分的にオーバーラップすることもできる。
【0055】
それぞれの積分フェーズにおいて、カメラのピクセルは、その上部に入射する光を積分している。次いで、処理フェーズにおいて、制御ユニット32により、個々の信号が、ロックされ、デジタル値に変換され、且つ、読み出されている。この処理は、反復的なフレームサイクルにおいてそれ自体を反復している。
【0056】
有利には、カメラ16は、自由稼動モードにおいて動作しており、即ち、これは、外部トリガ信号を待機することなしに反復的にフレームを記録している。この結果、高フレームレートにおいてカメラ16を動作させることが許容されている。
【0057】
それぞれの積分フェーズは、
図4の第2ラインに示されているように、カメラ同期信号によってマークされる(is marked)。カメラ16が自由稼動モードにおいて動作している場合には、これは、フレーム信号出力38a上の信号である。
【0058】
使用されている特定のハードウェアに応じて、信号「カメラ同期」は、例えば、積分フェーズの開始又は終了と一致し得る。
【0059】
制御ユニット32は、
図4の第3~第5ラインに示されているように、「カメラ同期」信号との同期状態において空間光変調器24及び光源22を動作させる。
【0060】
図示の実施形態において、制御ユニット32は、1つのフレームサイクルにおいて4つの動作フェーズI1、I2、I3、及びI4において照明装置9を動作させている。これらは、それぞれのフレームサイクルにおいて反復される。カメラの積分フェーズが動作フェーズI1内に含まれている一方で、動作フェーズI2~I4が積分フェーズの外側に位置している。
【0061】
動作フェーズI1において、空間光変調器24は、ピクセルの適切な構成(パターン)P1のために構成されている。有利には、この構成は、積分フェーズが開始する前に完全にセットアップされている(
図4の第4ラインを参照されたい)。
【0062】
光源22は、この後にのみ、第1光パルスL1を開始するようにスイッチオンされる(
図4の第5ラインを参照されたい)。
【0063】
図示の例において、構成P1は、積分フェーズの全体にわたって維持されている。また、光源22は、積分フェーズの全体にわたってスイッチオン状態に留まっている(光パルスL1)。
【0064】
積分フェーズが終了した際に、光源22は、スイッチオフされる。
【0065】
積分フェーズは、第1動作フェーズI1よりも短くてよい。
【0066】
動作フェーズI2において、空間光変調器24が第2構成(パターン)P2に設定されている一方で、光源22がスイッチオフ状態に留まっている。
【0067】
動作フェーズI3において、空間光変調器24は、第3構成(パターン)P3に設定されており、且つ、光源22は、光パルスL2を生成するために再度スイッチオンされており、これは、動作フェーズI3の終了時点において又はその前に再度スイッチオフされる。
【0068】
動作フェーズI4において、空間光変調器24は、第4構成(パターン)P4に設定されており、且つ、光源22は、スイッチオフされた状態に留まっている。
【0069】
次いで、プロセスは、フェーズI1~I4と共に、且つ可能な異なる構成P1’、P2’、P3’、P4’と共に反復される。
【0070】
一実施形態において、構成は、以下のとおりである。
-構成P1は、個々のフレームの記録の際に望ましい照明パターンに対応している。これは、積分フェーズの全体にわたって不変の状態に留まることができる。但し、この代わりに、これは、例えば、前記ピクセルの照明輝度を個別に減少させるために、個々のピクセルをそのオン状態からそのオフ状態にスイッチングすることにより、積分フェーズにおいて変更することもできる。
-構成P3は、有利には、構成P1に対応しており、即ち、これは、構成P1と同一のスイッチオン及びオフされるピクセルを有する。これは、フレームレートの2倍において眼の上部において2つの同一の照明パターンを生成し、これにより、上述のようにフリッカを低減している。
-構成P2及びP4は、有利には、構成P1及びP3とは「反対」であり、即ち、ピクセルが構成P1又はP3においてオンである際には、同一のピクセルが構成P2及びP4においてはオフであり且つ逆もまた真である。これは、それぞれのミラーを類似の時間の期間にわたってその両方の位置に規則的に設定することにより、DMD空間光変調器の失敗までの時間を増大させることができるという理解に基づいている。本実施形態は、これを実行するために、光パルスL1、L2の間のダークフェーズを使用している。
【0071】
有利には、動作フェーズI1~I4は、空間光変調器24のミラー60の支持部62内の歪を補償するために、等しい又は類似の長さを有する。有利には、動作フェーズI1~I4の最長のものは、動作フェーズI1~I4の最短のものの長さの10倍超ではなく、特に5倍超ではなく、特に3倍超ではない。
【0072】
図4の方式は、以下のような2つの目的を実現している。
1.空間光変調器24内におけるミラーの偏向をバランシングさせ、これにより、変調器のエージング(aging)を低減する。
2.カメラ16の2倍のフレームレートにおいて光パルスを生成し、これにより、フリッカの低減を許容する。
【0073】
目的1を実現するために、更に一般的な用語において、制御ユニット32は、カメラ16の1つのフレームサイクルにわたって(即ち、積分及び処理フェーズの1つのサイクルにわたって)、即ち、それぞれのフレームごとに、空間光変調器24のそれぞれのマイクロミラー60を時間t1の間にその第1位置に、時間t2の間にその第2の反対側の位置に設定するように構成されていてもよく、この場合に、t1及びt2は、匹敵しており、即ち、この場合に、以下のとおりであり、
0.1<t1/t2<10 (1)
特に、この場合に、以下のとおりであり、
0.2<t1/t2<5 (2)
且つ、特に、この場合に、以下のとおりである。
0.33<t1/t2<3 (3)
【0074】
目的2を実現するために、更に一般的な用語において、制御ユニット32は、カメラ16の1つのフレームサイクルにわたって、即ち、それぞれのフレームごとに、少なくとも2つの別個の光パルスを生成するように構成されていてもよく、この場合に、光パルスの1つは、カメラ16の積分フェーズ内に含まれる一方で、他の1つ又は複数の光パルスは、積分フェーズの外側に含まれる。
【0075】
有利には、光パルスL1、L2は、持続時間が等しく(特に、10%以内である)、且つ、すべての光パルスについて、空間光変調器24は、同一の構成(パターン)を有しており、且つ、光パルスは、長さが等しいダークフェーズによって分離される(即ち、ダークフェーズは、等しい長さを有し、特に、10%以内である)。この結果、フリッカが更に低減される。
【0076】
有利には、光パルスの反復レートは、少なくとも70Hzである。
【0077】
目的1が(例えば、例えば、LCD変調器などの、バランシングされていないピクセル設定の影響を受けにくい空間光変調器が使用されていることを理由として)必要とされていない場合には、空間光変調器24の構成は、動作フェーズI2及びI4において任意のパターンであってよい。
【0078】
目的2が(例えば、カメラ16のフレームレートが、フリッカ現象を回避するために本質的に十分に大きいことを理由して)必要とされていない場合には、動作フェーズI3及びI4を省略することができる。
【0079】
目的1及び2の両方の実現を要する場合には、制御ユニット32は、有利には、光パルスにおいて、光パルスL1、L2の間において、空間光変調器24を構成P1及びP3とは反対の構成P2及びP4に設定するように適合されている。この文脈において、第1及び第2構成とは「反対である」とは、所与のピクセルが、第1構成において時間taにおいてその第1状態にあり、且つ、第2構成において時間tbにおいてその第2状態にある場合に、所与のピクセルが、(10%以上の精度において)時間tbにおいてその第1状態にとなり、且つ、時間taにおいてその第2状態となることを意味している。
【0080】
図4に示されているプロセスがフレーム信号出力38aに同期されることを要する場合には、それぞれの積分フェーズが第1動作フェーズI1の定義された位置内に含まれるように、動作フェーズI1~I4をカメラ16の積分フェーズに同期させる必要がある。
【0081】
これを実行するために、制御ユニット32は、有利には、カメラ16が次のフレームを記録することになる時間を予測するように適合されており、その理由は、例えば、カメラ16の積分フェーズが開始する前に、即ち、―
図4の実施形態においては、カメラ同期パルスが到着する前に―、空間光変調器24を構成する必要があり得るからである。
【0082】
これを目的として、制御ユニット32は、例えば、連続する2つのフレーム間の時間tfの推定値を使用することができる。
【0083】
この時間tfの推定値は、例えば、製造者によって制御ユニット32において保存されている値であってよい。或いは、この代わりに、制御ユニット32は、動作の際にこれを計測することが可能であり、即ち、制御ユニット32は、カメラ16が以前のフレームを記録した時間からこれを判定することができる。
【0084】
次いで、カメラ16が最後のフレームを記録した時間に応じて、即ち、最後のカメラ同期パルスの時間に応じて、次のカメラ同期パルスの、即ち、次の積分フェーズの、時間を予測することができる。
【0085】
この結果、制御ユニット32が次の積分フェーズの予測された時間の前に空間光変調器24及び/又は光源22などの照明装置9の少なくとも一部分を準備することが許容される。
【0086】
マイクロミラーの位置のバランシング
関係式(1)、(2)、又は(3)を参照して上述したように、マイクロミラー60の位置は、有利には、機械的な歪を低減するために、少なくともある程度にバランシングされる。
【0087】
このバランシングは、カメラの連続するN以下のフレームサイクルにわたって発生し、即ち、これは、それぞれの単一フレームサイクルごとには充足されず、且つ、大きな数Nのフレームサイクルわたって合計時間t1及びt2にわたって、関係式(1)、(2)、又は(3)を充足することができるが、この場合に、N≦100である。
【0088】
但し、有利には、関係式(1)、(2)、又は(3)は、非対称な歪を更に低減するために、N≦10などの更に小さな数のサイクルにおいて充足される。
【0089】
最も有利な実施形態においては、N=1であり、即ち、関係式(1)、(2)、又は(3)の意味におるバランシングは、それぞれの単一のフレームサイクルにわたって発生する。これにより、これが2以上のフレームサイクルにわたってミラー位置を「計画」する必要がなくなるため、装置の制御が格段に単純化される。
【0090】
光源が動作している且つカメラが積分している期間において、それぞれのマイクロミラー60の位置は、個々のピクセルごとに生成を要する光の量により与えられる。従って、関係式(1)、(2)、又は(3)を充足するためのバランシングは、有利には、
-カメラが積分していない、且つ/又は、
-光源が点灯されていない、
という条件の少なくとも1つが充足された時間において発生する。
【0091】
但し、有利には、バランシングは、光源が点灯されておらず、これにより、患者の眼内における望ましくなフリッカのリスクが低減されている際に発生する。
【0092】
t1及びt2は、通常、マイクロミラーの少なくともいくつかについて異なっており、即ち、t1及びt2は、大部分の一般的なケースにおいて、変調器内のミラーの場所i、jに依存しており、即ち、t1(i、j)は、i≠i’及び/又はj≠j’の場合には、t1(i’、j’)と異なり得ることに留意されたい。
【0093】
例えば、1つのピクセルは、画像を積分している間、ダーク状態において維持することができると共に、別のピクセルは、画像を積分している間、明るい状態において維持することとができる。場合によっては、ピクセルごとの輝度変調を実現するために、第3ピクセルが、積分の第1部分にわたって明るい状態において維持され得ると共に、積分の第2の部分にわたってダーク状態にスイッチングされ得るというものであってもよい。これらのケースにおいては、時間t1及びt2は、両方又はすべての3つのピクセルタイプについて異なり得る。
【0094】
本技法は、単一の光源のみが存在している場合に、或いは、いくつかの光源が存在しているが、これらがオーバーラップした方式でスイッチオンされている場合に、即ち、フレームサイクル内において、すべての光源がスイッチオンされる(特に、カメラが、画像を積分している、即ち、フレームを記録している)少なくとも1つの時点が存在している場合に、特に重要である。これは、RGBプロジェクタシステムとは対照的であり、この場合には、色チャネルが連続的に投射されており、即ち、1つの色チャネルのみが一時点において有効であり、このようなシステムにおいては、バランシングは、更に容易に実現される。
【0095】
輝度及び/又は色の監視
照明装置9は、1つ又は複数の光源の輝度を監視するための少なくとも1つの光センサを更に有することができる。
【0096】
このようなセンサは、その効率が温度に伴って且つ光源の年齢に応じて変化するのに伴って、光源22a~22dの輝度を監視及び制御することを許容している。
【0097】
特に、制御ユニット32は、較正パラメータを生成するために光源の輝度を監視するように、且つ、例えば、光源に対する電流を調節することにより、光源を制御するためにこれらの較正パラメータを使用するように、適合させることができる。
【0098】
例えば、且つ、
図2に示されているように、それぞれの1つの光源22a、22b、22c、22dに帰される1つのこのような光センサ58a、58b、58c、58dが存在していてもよく、これは、その光源から光の一部分を受け取るように、且つその輝度を示す信号を生成するように位置決めされている。
【0099】
但し、有利には、いくつかの光源22a~22dのすべてから光を計測するように位置決めされた単一の光センサ58が存在し得る。これは、例えば、すべての光源22a~22dからの光が最後のダイクロイックビームスプリッタであるダイクロイックビームスプリッタ42cのスプリアス反射を使用することによって組み合わせられている位置において配置されたセンサ58により、実現することができる。これは、空間光変調器24に向かってすべての光を投射するように最適化されている。但し、これは、実際には、理想的なダイクロイックビームスプリッタではないことから、それぞれの光源からの光の小さな部分は、照明装置の光軸から外に反射され、且つ、光センサ58を利用して輝度を監視するために使用することができる。
【0100】
この実施形態において、個々の光源の輝度を個々に計測するために、制御ユニット32は、カメラ16の積分フェーズの外側において較正計測を実行するように装備することができる。このような較正計測は、
-空間光変調器24を非透過構成に配置するステップと、
-光源22a~22dの正確に1つをスイッチオンし、且つ、光センサ58を利用してこの光源の輝度信号を計測するステップと、
というステップを有することができる。
【0101】
この方式は、言及されているように、装置がいくつかの光源のすべてから光を計測するように位置決めされた光センサ58を有している際に、最良に実行される。特に、この光センサは、光源の光を組み合わせるために使用されている最後のダイクロイックビームスプリッタからオフ軸光を受け取るように構成されている。
【0102】
このような較正フェーズは、同一のフレームサイクルにおいて又はカメラ16の別個のフレームサイクルにおいて、すべての光源について順番に実行されている。
【0103】
較正フェーズは、例えば、動作フェーズI2又はI4において、その直前において、又はその直後において、挿入することができる。
【0104】
任意選択により、構成I2及びI4内のパターンは、式(1)の条件を維持するために、ミラーが較正フェーズにおいてそのオフ位置において消費している時間について補償するように適合させることができる。
【0105】
この種の監視は、照明装置が赤色、緑色、及び青色LEDなどの異なる色のいくつかの光源22a~22dを有している際に、特に有用である。このケースにおいては、これらの光源のそれぞれのものの輝度を監視することが可能であり、この結果、有利には、制御ループ内において、望ましいスペクトル組成(即ち、正常な白色光の望ましい色温度などの色調)を維持するために、光源の相対輝度値の調節が許容される。
【0106】
従って、有利には、光源22a~22dは、異なる色を有する(即ち、その中心波長が少なくとも20nmだけ異なっている)。このケースにおいて、装置の制御ユニットによって実行される方法は、前記少なくとも2つの光源が、カメラを利用してフレームを記録しつつ、同時にスイッチオンされた際に、光源22a~22dの少なくとも2つのものの間の望ましい相対輝度を維持するために、光源22a~22dの較正計測を使用するステップを有することができる。
【0107】
注記
以上の実施形態において、照明装置9は、例えば、2つの、3つの、4つの、又は場合によっては、更に多い数の光源などの、いくつかの個々の光源22a~22dを有する。但し、これは、白色LEDなどの単一の光源のみを有することもできる。
【0108】
本発明の第1の態様においては、カメラ16は、照明装置9をトリガするためのマスタ信号を生成しており、即ち、
図3の信号「カメラ同期」は、カメラ16によって生成されている。但し、本発明の他の実装形態においては、カメラ16は、トリガモードにおいて動作していてもよく、即ち、これは、外部トリガを受け取った際にフレームを積分している。このケースにおいては、制御ユニット32は、例えば、トリガ信号を生成し、これにより、カメラ16を利用してフレームの記録をトリガしてもよく、即ち、
図4の信号「カメラ同期」は、カメラ16によって生成されなくてもよく、且つ、制御ユニット32によって生成され得る。
【0109】
以上、本発明の現時点において好適である実施形態について図示及び記述したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、且つ、他の方法で、添付の請求項の範囲内において様々に実施及び実施され得ることを明白に理解されたい。
上述の実施形態は下記のようにも記載され得るが下記には限定されない。
[構成1]
眼科顕微鏡であって、
i)照明パルス(L1、L2)を生成し、且つ、
a)少なくとも1つの光源(22、22a~22d)、
b)第1及び第2位置に個々に偏向可能であるマイクロミラー(60)の2次元アレイを有する、電子的に制御された空間光変調器(24)、及び
c)照明撮像オプティクス(26)
を有する照明装置(9)と、
ii)
a)顕微鏡オプティクス(14、15)、及び
b)少なくとも1つの電子カメラ(16)
を有する顕微鏡装置(8)と、
iii)制御ユニット(32)と、
を有し、
前記制御ユニット(32)は、前記カメラ(16)の連続するN≦100のフレームサイクルのグループについて、前記空間光変調器(24)のそれぞれのマイクロミラー(60)を時間t1の間に前記第1位置に、時間t2の間に前記第2位置に設定するように構成されており、ここで、0.1<t1/t2<10である、眼科顕微鏡。
[構成2]
0.2<t1/t2<5であり、特に0.33<t1/t2<3である、及び/又は、
t1/t2>0.6 又は t1/t2<0.4である、
構成1に記載の顕微鏡。
[構成3]
N≦10である、構成1又は2に記載の顕微鏡。
[構成4]
N=1である、構成1から3のいずれか1項に記載の顕微鏡。
[構成5]
前記制御ユニット(32)は、特に、前記フレームサイクルに同期した方法で、前記光源(22、22a~22d)をパルス化するように構成されている、構成1から4のいずれか1項に記載の顕微鏡。
[構成6]
前記制御ユニット(32)は、
-所与の光パルスの前のダークフェーズにおいて前記ピクセルを所与の構成に設定するように、且つ、
-前記ピクセルが前記所与の構成にある際にのみ前記光パルスを開始するように、
構成されている、構成5に記載の顕微鏡。
[構成7]
前記制御ユニット(32)は、前記カメラ(16)によって記録されるそれぞれのフレームごとに、少なくとも2つの別個の光パルス(L1、L2)を生成するように構成されており、前記光パルスの1つ(L1)が前記カメラ(16)の前記積分フェーズに含まれている一方で、他の1つ又は複数の光パルス(L2)が前記積分フェーズの外側に含まれている、構成5又は6に記載の顕微鏡。
[構成8]
前記光パルス(L1、L2)は、持続時間が等しく、
すべての光パルス(L1、L2)について、前記空間光変調器(24)は、同一の構成(P1、P3)を有しており、且つ、
前記光パルスは、長さが等しいダークフェーズによって分離されている、構成7に記載の顕微鏡。
[構成9]
前記制御ユニット(32)は、前記光パルス(L1、L2)の間において、前記空間光変調器(24)を前記光パルス(L1、L2)において前記構成(P1、P3)とは反対側の構成(P2、P4)に設定するように適合されている、構成8に記載の顕微鏡。
[構成10]
前記光源(22、22a~22d)と前記空間光変調器(24)の間の光強度を計測するように適合された少なくとも1つの光センサ(58a~58d、58)を更に有し、前記制御ユニット(32)は、
-前記光変調器(24)を非透過モードに設定するように、且つ、
-前記光変調器(24)が前記非透過モードにある間に、前記光源(22、22a~22d)の輝度を計測するために前記少なくとも1つの光源(22、22a~22d)をパルス化するように、
構成されている、構成1から9のいずれか1項に記載の顕微鏡。
[構成11]
前記光源(22、22a~22d)の輝度を監視する少なくとも1つの光センサ(58a~58d、58)を更に有し、前記制御ユニット(32)は、較正パラメータを生成するために、前記光センサ(58a~58d、58)を利用して前記光源(22、22a~22d)の前記輝度を監視するように、且つ、前記少なくとも1つの光源(22、22a~22d)を制御するために前記較正パラメータを使用するように、適合されている、構成1から10のいずれか1項に記載の顕微鏡。
[構成12]
いくつかの光源(22a~22d)を有し、前記制御ユニット(32)は、前記カメラ(16)の積分フェーズの外側において較正計測を実行するように適合されており、前記較正計測は、
-前記空間光変調器(24)を非透過構成に配置するステップと、
-前記光源(22a~22d)の正確に1つをスイッチオンし、且つ、光センサ(58)を利用して輝度信号を計測するステップと、
を有する、構成11に記載の顕微鏡。
[構成13]
眼科顕微鏡、特に、構成1から12のいずれか1項に記載の前記眼科顕微鏡、を動作させる方法であって、前記装置は、
i)
a)少なくとも1つの光源(22、22a~22d)、
b)第1及び第2位置に個々に偏向可能であるマイクロミラー(60)の2次元アレイを有する、電子的に制御された空間光変調器(24)、及び
c)照明撮像オプティクス(26)
を有する照明装置(9)と、
ii)
a)顕微鏡オプティクス(14、15)、及び
b)少なくとも1つの電子カメラ(16)
を有する顕微鏡装置(8)と、
iii)制御ユニット(32)と、
を有し、
前記方法は、前記カメラ(16)の連続するN≦100のフレームサイクルのグループについて、前記空間光変調器(24)のそれぞれのマイクロミラー(60)を時間t1の間に前記第1位置に、時間t2の間に前記第2位置に設定するステップを有しており、ここで、0.1<t1/t2<10である、方法。
[構成14]
特に、前記フレームサイクルに同期した方法により、前記光源(22、22a~22d)をパルス化するステップを有する、構成13に記載の方法。
[構成15]
-前記ピクセルを所与の光パルスの前のダークフェーズにおいて所与の構成に設定するステップと、
-前記ピクセルが前記所与の構成にある際にのみ、前記光パルスを開始するステップと、
を有する、構成14に記載の方法。
[構成16]
前記カメラ(16)によって記録されたそれぞれのフレームごとに、少なくとも2つの別個の光パルス(L1、L2)を生成するステップを有しており、前記光パルスの1つ(L1)が前記カメラ(16)の前記積分フェーズに含まれている一方で、他の1つ又は複数の光パルス(L2)が前記積分フェーズの外側に含まれている、構成14又は15に記載の方法。
[構成17]
前記光パルス(L1、L2)は、持続時間が等しく、
すべての光パルス(L1、L2)について、前記空間光変調器(24)は、同一の構成(P1、P3)を有しており、且つ、
前記光パルスは、長さが等しいダークフェーズによって分離されている、構成16に記載の方法。
[構成18]
前記光パルス(L1、L2)の間において、前記空間光変調器(24)を前記光パルス(L1、L2)において前記構成(P1、P3)とは反対側の構成(P2、P4)に設定するステップを有する、構成17に記載の方法。
[構成19]
前記装置は、前記光源(22、22a~22d)と前記空間光変調器(24)の間の光強度を計測するように適合された少なくとも1つの光センサ(58a~58d、58)を更に有し、
前記方法は、
-前記光変調器を非透過モードに設定するステップと、
-前記光変調器が前記非透過モードにある間に、前記光源(22)の輝度を計測するために前記少なくとも1つの光源(22、22a~22d)をパルス化するステップと、
を有する構成12から18のいずれか1項に記載の方法。
[構成20]
前記顕微鏡は、少なくとも1つの光センサ(58a~58d、58)を有し、且つ、
前記光センサ(58a~58d、58)を利用して前記光源(22、22a~22d)の輝度を監視し、且つ、較正パラメータを生成するステップと、
前記光源(22、22a~22d)を制御するために前記較正パラメータを使用するステップと、
を有する、構成12から19のいずれか1項に記載の方法。
[構成21]
前記顕微鏡は、いくつかの光源(22a~22d)を有し、前記方法は、前記カメラ(16)の積分フェーズの外側において較正計測の前記ステップを有し、前記較正計測は、
-前記空間光変調器(24)を非透過構成に配置するステップと、
-前記光源(22a~22d)の正確に1つをスイッチオンし、且つ、光センサ(58)を利用して輝度信号を計測するステップと、
を有し、且つ、
特に、前記光源(22a~22d)は、異なる色を有し、且つ、前記方法は、前記2つの光源が、フレームを記録している間に、同時にスイッチオンされた際に、前記光源(22a~22d)の少なくとも2つの間の望ましい相対輝度を維持するために、前記光源(22a~22d)の前記較正計測を使用するステップを更に有する、構成20に記載の方法。
[構成22]
前記顕微鏡は1つの光源を有する、又は、
前記顕微鏡は複数の光源を有し、すべての前記光源がオンにされる少なくとも1つの時点が前記フレームサイクル内に存在している、構成1から21のいずれか1項に記載の顕微鏡の方法。