(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】抗E-セレクチン抗体、組成物および使用の方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240306BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240306BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240306BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240306BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240306BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240306BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240306BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240306BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240306BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240306BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
A61K39/395 N
A61P29/00
A61P19/00
A61P9/00
A61P25/00
A61P7/00
A61P15/00
A61P1/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P7/06
(21)【出願番号】P 2022544058
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 IB2021050464
(87)【国際公開番号】W WO2021148983
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ATCC PTA-126529
【微生物の受託番号】ATCC PTA-126530
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ リーゾナー アプガー
(72)【発明者】
【氏名】シェリル ルビオ バウリ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアンヌ エリザベス―アイリス エルウェル
(72)【発明者】
【氏名】ローラ リン
(72)【発明者】
【氏名】ジャティン ナルラ
(72)【発明者】
【氏名】チュエンレイ パーング
(72)【発明者】
【氏名】デブラ デネネ ピットマン
(72)【発明者】
【氏名】スワプニル ラクヘ
(72)【発明者】
【氏名】チーイー ヴィンセント ユー
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】Immunotechnology,1997年,Vol. 3, Issue 2,pp.107-116
【文献】Blood,2010年,Vol. 116, Issue 10,pp.1779-1786
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトE-セレクチンに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片であって
、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR-1)、配列番号3のアミノ酸配列を含むLCDR-2、配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR-3、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR-1)、配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR-2および配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR-3
を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
請求項1に記載のヒトE-セレクチンに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片であって
、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
請求項1に記載のヒトE-セレクチンに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片であって
、配列番号7または配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)、および配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)
を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
配列番号15または配列番号16のアミノ酸配列を含む抗体重鎖定常領域(CH)、および配列番号14のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖定常領域(CL)を含む、請求項
1から3のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項5】
配列番号1のアミノ酸配列を含むLCおよび配列番号7または配列番号13のアミノ酸配列を含むHCを含む、ヒトE-セレクチンに特異的に結合する単離された抗体。
【請求項6】
ヒトE-セレクチンに特異的に結合する単離された抗体であって:
配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み、配列番号2のアミノ酸配列からなるLCDR-1、配列番号3のアミノ酸配列からなるLCDR-2、および配列番号4のアミノ酸配列からなるLCDR-3を含むVL領域;ならびに配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み、配列番号8のアミノ酸配列からなるHCDR-1、配列番号9のアミノ酸配列からなるHCDR-2、および配列番号10のアミノ酸配列からなるHCDR-3を含むVH領域
を含む、単離された抗体。
【請求項7】
ヒトE-セレクチンに特異的に結合する単離された抗体であって、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126529を有する
プラスミドによって産生されるポリペプチドを構成するアミノ酸配列を含む抗体HC、およびATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126530を有する
プラスミドによって産生されるポリペプチドを構成するアミノ酸配列を含む抗体LCを含む、単離された抗体。
【請求項8】
IgA
1、IgA
2、IgD、IgE、IgM、IgG
1、IgG
2、IgG
3、もしくはIgG
4のFcドメインからなる群から選択されるヒトFcドメイン、カッパもしくはラムダから選択される軽鎖定常領域、もしくはその組み合わせを含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項9】
前記抗体
の重鎖
のアイソタイプがIgG
1、前記軽鎖定常領域がカッパ軽鎖、またはその両方である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項10】
200nM~2nMのK
DでヒトまたはカニクイザルE-セレクチンに結合する、請求項1から
9のいずれか一項に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項11】
E-セレクチンに特異的に結合し、以下から選択される少なくとも1つの検出可能な特徴を示す、請求項1から
10のいずれか一項に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片:
(i)SPRによって測定した場合に、200nM以下のK
Dで、ヒトE-セレクチンに結合すること;
(ii)SPRによって測定した場合に、200nM以下のK
Dで、カニクイザルE-セレクチンに結合すること;
(iii)
Fluorescence―activated
cell sorting(FACS)によって測定した場合に、50nM以下のEC
50で、細胞表面に発現されるE-セレクチンに結合すること;
(iv)ELISAによって測定した場合に、2nM以下のEC
50で、可溶性ヒトE-セレクチンに結合すること;
(v)AlphaLisa
(商標)競合アッセイによって測定した場合に、2nM以下のEC
50で、シアリルルイスAリガンドの可溶性ヒトE-セレクチンへの結合を中和すること;
(vi)1nM~3nMのIC
50で、ヒト血清中の遊離可溶性ヒトE-セレクチンに結合すること;
(vii)静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、100nM以下のIC
50で、シアリルルイスAリガンドの可溶性ヒトE-セレクチンへの結合を中和すること;
(viii)静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、50nM以下のIC
50で、シアリルルイスAリガンドの、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの結合を中和すること;
(ix)静置条件下で測定した場合に、100nM以下のIC
50で、E-セレクチンリガンドを発現する細胞の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの接着を阻害すること;
(x)生理的流動条件下で測定した場合に、100nM以下のIC
50で、E-セレクチンリガンドを発現する細胞の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの接着を阻害すること;
(xi)生理的流動条件下で測定した場合に、6.17nM~18.66nMのIC
50で、鎌形赤血球症(SCD)患者由来の血液細胞の可溶性ヒトE-セレクチンへの接着を阻害すること;
(xii)10mg/kgの用量での
静脈投与投与(IV)後、14.4日間(345時間)の平均半減期を有すること;
(xiii)3mg/kgの用量で
の皮下投与(SC)後、21.5日間(518時間)の平均半減期を有すること;
(xiv)25℃で、Anton Parr法によって測定した場合に、185.7mg/mLで33.4cPの粘度を有すること;
(xv)高濃度における高度の熱安定性および最小の凝集を含めた、商業的に適切な製剤特性を示すこと;ならびに
(xvi)大規模製造条件下で再現性のある発現および純度を示すこと。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする、単離された核酸分子。
【請求項13】
以下のうち少なくとも1つ:
a)ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片のVHおよびVLをコードする核酸配列であって、それぞれ配列番号136の核酸配列および配列番号137の核酸配列を含む核酸配列;
b)ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片のHCおよびLCをコードする核酸配列であって、配列番号206もしくは配列番号138の核酸配列、および配列番号139の核酸配列を含む核酸配列;ならびに
c)ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の
HCおよび
LCをコードする核酸配列であって、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126529を有するプラスミドの
HCの核酸配列、およびATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126530を有するプラスミドの
LCの核酸配列
を含む、単離された核酸分子。
【請求項14】
請求項
12または
13に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項15】
請求項
14に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
抗体またはその抗原結合性断片を作製する方法であって、請求項
15に記載の宿主細胞を、前記抗体またはその抗原結合性断片が前記宿主細胞によって発現される条件下で培養するステップを含む、方法。
【請求項17】
請求項1から
11のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片、および薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
i)配列番号7のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号1のアミノ酸配列を含むLCを含む抗体もしくはその抗原結合性断片、ii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号1のアミノ酸配列を含むLCを含む抗体もしくはその抗原結合性断片、またはiii)それら両方を含む、請求項
17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
E-セレクチンの発現および/またはE-セレクチンのリガンドへの結合によって媒介されるまたはそれと関連する医学的状態、疾患または障害を治療するための、請求項
17または
18に記載の医薬組成物であって、治療有効量の、E-セレクチンに特異的に結合する請求項1から
11のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む、医薬組成物。
【請求項20】
前記医学的状態、疾患または障害がSCDである、請求項
19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項
20に記載の医薬組成物であって、心臓胸部系に影響を及ぼすもの、神経系に影響を及ぼすもの、細網内皮系に影響を及ぼすもの、筋骨格系に影響を及ぼすもの、泌尿生殖器系に影響を及ぼすものおよび胃腸系に影響を及ぼすもの、およびそれらの組合せからなる群から選択されるSCDの少なくとも1つの徴候および/または症状を処置し、予防し、および/または寛解させるための医薬組成物。
【請求項22】
心臓胸部系に影響を及ぼすSCDの少なくとも1つの徴候および/または症状が、慢性拘束性肺疾患、左心室拡張疾患、肺高血圧症、急性胸部症候群、調律異常、突然死、血管閉塞クリーゼ(VOC)、およびそれらの組合せから選択される、請求項
21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
VOCの処置が、i)VOCの持続時間、強度、または両方を減少させることによる急性VOCの処置、ii)VOCの発生の予防もしくは低減、またはiii)それら両方を含む、請求項
22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
E-セレクチンの生物学的活性の減少を必要とする対象において、E-セレクチンの生物学的活性を減少させるための、請求項
17または
18に記載の医薬組成物であって、治療有効量の、E-セレクチンに特異的に結合する請求項1から
11のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む、医薬組成物。
【請求項25】
少なくとも1つの検出可能なE-セレクチンの生物学的活性を減少させ、減少させる活性が、(a)内皮細胞への白血球テザリング;(b)内皮細胞への
白血球の安定な接着の活性化;(c)白血球を停止させる緩徐な
内皮細胞上の白血球ローリング;(d)白血球の効率的な経内皮遊走;(e)E-セレクチンのCD18インテグリンに対する親和性および結合力;(f)急性炎症の部位への白血球の輸送;(g)細胞質カルシウム
の濃度;(h)p38 MAPキナーゼおよびSykキナーゼを活性化するチロシンリン酸化;(i)血液から血管内皮への血小板および白血球の動員;(j)炎症促進性環境の創出、ならびに(k)それらの組合せからなる群から選択される、請求項
24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
治療有効量の少なくとも1つのさらなる治療的に活性な化合物または処置モダリティと組み合わせることを含み、さらなる化合物およびモダリティが、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防をするためのものである、請求項
19から
25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記少なくとも1つのさらなる治療的に活性な化合物が、ペニシリン系予防薬、ヒドロキシウレア(DROXIA(登録商標)、HYDREA(登録商標))、L-グルタミン(ENDARI(登録商標))、クリザンリズマブ(ADAKVEO(登録商標))、ボキセロートル(OXBRYTA(登録商標))、アピキサバン(ELIQUIS(登録商標))、リバーロキサバン(XARELTO(登録商標))、非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛薬、IW-1701、リオシグアト(ADEMPAS(登録商標))、チカグレロル(BRILINTA(登録商標))、メマンチン(NAMENDA(登録商標))、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記少なくとも1つのさらなる治療的に活性な処置モダリティが、酸素補給、鉄キレート化を伴う輸血、骨髄移植、遺伝子治療、CRISPRまたはジンクフィンガー技術による遺伝子編集治療およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
26に記載の医薬組成物。
【請求項29】
治療有効量の請求項1から
11のいずれか一項に記載の抗E-セレクチン抗体を含む、SCDを処置するためのキット。
【請求項30】
相乗的治療有効量の、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である少なくとも1つのさらなる治療的に活性な化合物または処置モダリティをさらに含む、請求項
29に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、そのそれぞれの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2020年1月24日出願の米国仮特許出願第62/965,688号、2020年10月22日出願の米国仮特許出願第63/104,213号、および2020年12月4日出願の米国仮特許出願第63/121,467号の優先権を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2021年1月6日に作成された前記ASCIIコピーは、PC072498A_Sequence_Listing_ST25.txtという名称であり、サイズは1,048,576バイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は、E-セレクチンに特異的に結合する抗体およびその抗原結合性断片、ならびにSCDに関連する血管閉塞クリーゼ(VOC)の処置および予防を含めた鎌状赤血球症(SCD)を処置するための本開示の抗体の使用を含む、組成物、方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
鎌状赤血球症(SCD)は、米国(US)だけで100,000人を超える人に影響を与えている、重症の稀な遺伝障害である(Center for Disease Control and Prevention)。SCDは、集団における実質的な罹患率および死亡率を伴う慢性の状態であり、大きなまだ対処されていない医学的必要性を有する。SCDを有する個体は、進行性の臓器損傷を受け、平均余命が著しく短縮し、生存期間中央値はおよそ56年である(Gardnerら、Blood 2016;128(10)1436~38)。
【0005】
SCDは、異常な形態のヘモグロビン(Hb)-鎌状ヘモグロビン(HbS)の存在を特徴とする。β-グロビン遺伝子(HBB)の一塩基置換の結果、残基6における1つのアミノ酸置換(グルタミン酸の代わりにバリン)がもたらされる(HBS対立遺伝子)。HBSについてホモ接合性の個体は、最も一般的かつ最も重症の形態の鎌状赤血球症(SCD-SS)を有する。SCDのバリアント形態は、個体が1コピーのHBSおよび1コピーの別のHBB遺伝子の変異を有する場合に生じる。1コピーのHBS対立遺伝子および1コピーのヘモグロビンC対立遺伝子(HBC)を有する個体は、SC症(SCD-SC)を有する。個体が1コピーのHBSおよび1コピーのβ-サラセミア対立遺伝子を有する場合、SCDの重症度は、Hbβ+-サラセミア対立遺伝子(SCD-Sβ+-thal)または別の相互作用するHBバリアント(SCD-SVariant)よりも重症であることも多いHbβ°-サラセミア欠失(SCD-Sβ°-thal)を伴うβ-サラセミア対立遺伝子の重症度に依存する(Frenett&Atweh J.Clin.Invest.2007;117:850~858)。
【0006】
SCDの分子病理発生における主な事象は、低酸素圧の条件下でHbSが重合し、赤血球(RBC)が固く鎌状になる傾向である(Fabry&Nagel Blood 1982;60(6)1370~77)。微小毛細血管静脈床における低酸素により、内皮の炎症および好中球の接着、ならびに好中球のローリングおよび流速の低下が導かれる。これらの細胞凝集体は、内皮細胞との相互作用によって脈管構造内に捕捉される。鎌状RBC、白血球、および内皮細胞の接着性相互作用により脈管構造が妨害され、それにより血管閉塞(vaso-occlusion)が導かれる(Zhangら、Blood 2016:127:801~809;Okpala、2006;Frenette&Atweh、J.Clin.Invest.2007;117:850~858)。一酸化窒素恒常性の調節不全がSCDにおける血管機能障害に寄与する(Aslan&Freeman、2007)。血液細胞凝集体により、臨床的には重度の疼痛のエピソードとして顕在化する血管閉塞(vascular obstruction)、臓器梗塞および虚血のエピソードが導かれる。貧血は、血管内皮と鎌状RBC、白血球および血小板の相互作用によって誘発される溶血および血管閉塞(vascular occlusion)に起因する赤血球寿命の短縮の結果として生じる(Reesら、Lancet 2010;376:2018~31)。
【0007】
血管閉塞クリーゼ(VOC)がSCDの最も一般的な臨床所見であり、SCDの罹患率の主要な原因であり、日常機能を妨害する(Ballas&Lusardi、Am.J.Hematol.2005;79:17~25;Pielら、New Engl.J.Med.2017;376:1561~1573;Darbariら、PloS One 2013;8(11):e79923)。VOCは、鎌状RBCとその酸素圧が最低になる後毛細管小静脈内の血管内皮との相互作用によって開始される(Manwani&Frenette、Blood 2013;122(24):3892~8)。これにより、炎症反応を誘発する内皮損傷が導かれ、白血球、血小板およびさらなるRBCの炎症部位への動員が引き起こされる(Zhangら、Blood 2016;127(7):801)。これらの細胞の凝集体により血管閉塞(vascular obstruction)(Turhanら、Proc.Natl.Acad.Sci.2002;99(5):3047~51)および後毛細管小静脈内の血流の緩徐化が導かれ、それにより局所的な組織低酸素症、およびさらなる組織炎症が引き起こされる。これにより、RBCのより多くの脱酸素および鎌状赤血球化、ならびに、時には鎌状細胞の二次動員と呼ばれる閉塞の伝播および血管の閉塞が生じる(Stuart&Nagel、Lancet 2004;364(9942):1343~60)。
【0008】
VOCは、SCDを有する患者において早ければ6カ月齢で顕在化し得るが、年少乳児では年長の小児や成人よりもはるかに稀である(Benjaminら、Amer.Pain Soc.1994;1巻、94頁)。ホモ接合性SCDを有する患者のおよそ60%が重症VOCエピソードを1年当たり少なくとも1件有するが、一部の患者ははるかに多くのエピソードを有する(Plattら、N.Engl.J.Med.1991;325(1);11~6)。この同じ試験において、SCD遺伝子型を有する患者の5.2%が重症VOCエピソードを1年当たり3~10件有し、低い割合(>1%)の患者がエピソードを1年当たり10件以上有した。
【0009】
疼痛は、最初のおよび継続している血管閉塞(vascular occlusion)および虚血の臨床所見であり(Ballas、Hematol.Oncol.Clin.North Am.2005;19(5):785~802)、SCD-SS遺伝子型を有する患者で特に重度であり得、当該患者は他の遺伝子型よりも高い死亡率にさらされることも観察されている(Plattら、N.Engl.J.Med.1994;330(23);1639~44)。
【0010】
血管内皮損傷の領域への白血球の動員には、セレクチンファミリーの接着分子:E-セレクチン(CD62Eとしても公知);P-セレクチン(CD62Pとしても公知);およびL-セレクチン(CD62Lとしても公知)が関与し、これらは全て、炎症反応の一部として完全に調節される(Ernst&Magnani Nat.Rev.Drug Discov.2009;8(8):661~77;Morikisら、Blood 2017;130(19):2101~10)。構造は類似しているが、各セレクチンは異なる分布、リガンド結合キネティクスならびに病理学的および生理機能の両方の多様性を示す。
【0011】
セレクチンファミリーの接着分子およびそれらのリガンドは、鎌状赤血球の変更および活性化された内皮細胞によって促進される、SCDにおける炎症促進性応答の一部である。セレクチンはまた、細胞間接着の最初の接触、内皮上の白血球ローリングおよびインテグリン活性化および細胞遊出の調節においても重大な役割を果たす。炎症を起こした内皮および循環している細胞の凝集体への白血球の接着は、SCDにおける特質事象である。
【0012】
セレクチンファミリーの炭水化物結合性タンパク質は、類似の構造を共有し、各々が、Ca2+依存性(C型)レクチンに特徴的なN末端炭水化物認識ドメイン、続いて、上皮増殖因子(EGF)様ドメイン、補体調節ドメインとの相同性を有する一連の短いコンセンサスリピート、膜貫通ドメイン、および短い細胞質尾部を有する(McEver&Zhu、2010)。セレクチンおよびそれらのリガンドは、血液から血管内皮への血小板および白血球の動員を媒介し、それによって、慢性炎症促進性環境の創出に寄与する。
【0013】
SCDの病態生理は複雑かつ不均一である。症状としては、疼痛発作、慢性貧血、急性胸部症候群、脳卒中、脾臓血球貯留、血管閉塞性急性疼痛事象または発作、腎機能障害、および細菌感染に対する易罹患性が挙げられる(Ashley-Kochら、Am.J.Epidemiol.2000;151:839~845;Steinberg、New Engl.J.Med.1999;340:1021~1030;Pielら、New Engl.J.Med.2017;376:1561~1573)。SCDに伴う急性終末器官合併症には、急性胸部症候群、急性脳卒中、持続勃起症、肝胆道合併症、脾臓血球貯留および急性腎不全が含まれ得る。SCDの累積的侵襲による慢性合併症には、無血管性壊死、肺高血圧症、腎臓の合併症、眼科の合併症、下腿潰瘍および再発性持続勃起症が含まれる(Yawnら、JAMA 2014;312:1033~48)。
【0014】
ヒドロキシウレアは、SCDの予防的治療に関して承認を受けている。機構的に、ヒドロキシウレアは、胎児ヘモグロビン(HbF)濃度を増加させ、疼痛発作の数を減少させる(Characheら、New Engl.J.Med.1995;332:1317~1322)。ヒドロキシウレアはVOCの予防における標準治療とみなされているが、失敗率が約30~35%であり、急性VOCの間の症状の処置に関しては効果がない。ENDARI(L-グルタミン)は予防的SCD処置について最近承認されたが、作用機序が不確実であり、臨床的有用性は大きくない(Quinn、Blood 2018;132:689~693)。急性VOCエピソードに対する現行の処置は、オピオイド鎮痛薬、水和、酸素、および輸血を用いた主に支持的なものである。さらに、大多数の患者がVOCの処置を自宅で行い、直接の医療介入を求めない(Smithら、Ann.Intern.Med.2008;148:94~101;Callaghanら、Blood 2017;130:973)。
【0015】
SCDの予防および処置、特に、患者における再発性および衰弱性のVOCの基礎をなす病態生理に対処する(例えば、炎症および細胞凝集を低減させる)ことの著しい必要が存在したままである。本発明は、E-セレクチンに特異的に結合し、E-セレクチンの機能活性を中和し得る新規の治療用抗体を提供する。これらの抗体がSCDに対する予防的処置として利用される場合には、VOCの発生を防止するまたは低減させるために、ならびにSCDを有する患者における急性VOCを、VOCの持続時間(例えば、VOCの消散までの時間の短縮)、強度および/または重症度を低減させることによって処置するために、有利に使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
【課題を解決するための手段】
【0017】
概要
本発明は、E-セレクチンに特異的に結合する抗体およびその抗原結合性断片、ならびに使用、および関連の方法を提供する。当業者は、慣用的に過ぎない実験を使用して、本明細書に記載される発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物を認識する、またはそれを確認することができる。かかる等価物は、以下の実施形態(E)によって包含される意図である。
E1.E-セレクチン(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルE-セレクチン)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片。
E2.配列番号8、23、52、63、77、92、111、125、9、24、29、38、41、44、53、64、78、93、112、126、10、54、65、79、94、113および127からなる群から選択されるHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列を含む、E1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E3.配列番号2、18、47、68、82、97、106、9、24、29、38、41、44、53、64、78、93、112、126、10、54、65、79、94、113および127からなる群から選択されるLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列を含む、E1からE2のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E4.(a)~(f)
(a)配列番号2、18、47、68、82、97および106の配列からなる群から選択されるLCDR-1アミノ酸配列;
(b)配列番号3、19、48、69、83、98、107および120の配列からなる群から選択されるLCDR-2アミノ酸配列;
(c)配列番号4、20、49、70、84、99、108および121の配列からなる群から選択されるLCDR-3アミノ酸配列;
(d)配列番号8、23、52、63、77、92、111および125の配列からなる群から選択されるHCDR-1アミノ酸配列;
(e)配列番号9、24、29、38、41、44、53、64、78、93、112および126の配列からなる群から選択されるHCDR-2アミノ酸配列;ならびに
(f)配列番号10、54、65、79、94、113および127の配列からなる群から選択されるHCDR-3アミノ酸配列
のうち1つ以上を含む、E1からE3のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E5.以下:
配列番号2のアミノ酸配列を含むLCDR-1、
配列番号3のアミノ酸配列を含むLCDR-2、
配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR-3、
配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR-1、
配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR-2、および
配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR-3
のうち1つ以上を含む、E1からE4のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E6.配列番号11、25、30、35、39、42、45、55、60、66、75、80、90、95、104、114、118、および128からなる群から選択される少なくとも1つの配列のHCDR-1、HCDR-2、およびHCDR-3配列を含む、E1からE5のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E7.配列番号5、21、27、32、50、57、71、73、85、87、100、102、109、116、および122からなる群から選択される少なくとも1つの配列のLCDR-1、LCDR-2、およびLCDR-3配列を含む、E1からE6のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E8.配列番号7、13、22、28、34、37、40、43、51、59、62、74、76、89、91、103、110、117および124からなる群から選択される少なくとも1つの配列のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列を含む、E1からE7のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E9.配列番号1、17、26、31、46、56、67、72、81、86、96、101、105、115および119からなる群から選択される少なくとも1つの配列のLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列を含む、E1からE8のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E10.配列番号11のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列を含む、E1からE9のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E11.配列番号5のLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列を含む、E1からE10のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E12.配列番号7または13のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列を含む、E1からE11のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E13.配列番号1のLCDR-1、LCDR-2、およびLCDR-3配列を含む、E1からE12のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E14.配列番号2のアミノ酸配列を含むLCDR-1、配列番号3のアミノ酸配列を含むLCDR-2、配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR-3、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR-1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR-2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR-3、を含む、E1からE13のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E15.配列番号2のアミノ酸配列を含むLCDR-1、配列番号3のアミノ酸配列を含むLCDR-2、配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR-3を含む、E1からE4のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E16.配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR-1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR-2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR-3を含む、E1からE15のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E17.IGKV1-12*01、IGKV1-13*02、IGKV1-33*01、IGKV1-39*01、IGKV1-5*01、IGKV3-11*01、IGKV3-15*01、IGKV3-20*01、IGKV3D-20*02、およびIGKV4-1*01からなる群から選択されるヒト生殖系列VL配列に由来するVLフレームワーク配列を含む、E1からE16のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E18.IGHV1-2*02、IGHV1-3*01、IGHV1-46*01、IGHV1-69*01、IGHV1-69*02、IGHV1-8*01、IGHV3-7*01、IGHV3-13*01、IGHV3-23*01、IGHV3-23*04、IGHV3-30*01、IGHV3-30*18、IGHV5-10-1*01、IGHV5-10-1*04およびIGHV5-51*01からなる群から選択されるヒト生殖系列VH配列に由来するVHフレームワーク配列を含む、E1からE17のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E19.IGHV1-39*01 VLフレームワーク配列を含む、E1からE18のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E20.IGHV3-07*01 VHフレームワーク配列を含む、E1からE19のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E21.VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含む、E1からE20のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片であって、VLフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも72%同一である、抗体またはその抗原結合性断片。
E22.VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含む、E1からE21のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片であって、VLフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも72%、74%、75%、77%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である、抗体またはその抗原結合性断片。
E23.VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含む、E1からE22のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片であって、VHフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも53%同一である、抗体またはその抗原結合性断片。
E24.VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含む、E1からE23のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片であって、VHフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも53%、58%、60%、63%、71%、72%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である、抗体またはその抗原結合性断片。
E25.配列番号11に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVHドメインを含む、E1からE24のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E26.配列番号11に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なアミノ酸配列を含むVHドメインを含む、E1からE25のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E27.配列番号11のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるVHドメインを含む、E1からE26のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E28.配列番号5に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、E1からE27のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E29.配列番号5に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、E1からE28のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E30.配列番号5のアミノ酸配列を含むVLドメインを含むまたはそれからなる、E1からE29のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E31.配列番号11のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるVHドメインおよび配列番号5のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるVLドメインを含む、E1からE30のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E32.Fcドメインを含む、E1からE31のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E33.Fcドメインが、IgA(例えば、IgA1またはIgA2)、IgD、IgE、IgM、またはIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFcドメインである、E32に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E34.Fcドメインが、IgGのFcドメインである、E33に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E35.IgGが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択される、E34に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E36.IgGがIgG1である、E35に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E37.配列番号7または配列番号13に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1からE36のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E38.配列番号7または配列番号13に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1からE37のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E39.配列番号7または配列番号13のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる重鎖を含む、E1からE38のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E40.配列番号22、28、34、37、40、43、51、59、62、74、76、89、91、103、110、117および124のうちいずれか1つに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1からE39のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E41.配列番号1に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むLCを含む、E1からE40のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E42.配列番号1に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なアミノ酸配列を含むLCを含む、E1からE41のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E43.配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるLCを含む、E1からE42のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E44.配列番号7または配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1からE43のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E45.配列番号1、17、26、31、46、56、67、72、81、86、96、101、105、115および119のうちいずれか1つに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1からE45のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E46.ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-126529を有するプラスミドの挿入物によってコードされるHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3を含む、E1からE45のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E47.ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-126530を有するプラスミドの挿入物によってコードされるLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3を含む、E1からE46のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E48.ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-126529を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるVHドメインを含む、E1からE47のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E49.ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-126530を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるVLドメインを含む、E1からE48のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E50.ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-126529を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるHCアミノ酸配列、およびATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-126530を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるLCアミノ酸配列を含む、E1からE49のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E51.Fc融合タンパク質、モノボディ(monobody)、マキシボディ(maxibody)、二機能性抗体、scFab、scFv、ペプチボディである、E1からE50のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E52.約800nM、700nM、600nM、500nM、400nM、300nM、200nM、175nM、150nM、125nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pMおよび500pMからなる群から選択されるおよその値のKDまたはその値未満のKDで、ヒトE-セレクチンに結合する、E1からE51のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E53.約800nM、700nM、600nM、500nM、400nM、300nM、200nM、175nM、150nM、125nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pMおよび500pMからなる群から選択されるおよその値のKDまたはその値未満のKDで、カニクイザルE-セレクチンに結合する、E1からE52のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E54.約10nM~約200nMのKDでヒトE-セレクチンに結合する、E1からE53のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E55.約68.4+/-3.18nMのKDでヒトE-セレクチンに結合する、E1からE54のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E56.約10nM~約200nMのKDでカニクイザルE-セレクチンに結合する、E1からE55のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E57.約64.9+/-1.13nMのKDでカニクイザルE-セレクチンに結合する、E1からE56のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E58.約92.85nM、約70.3nM、約65.2nM、約61.8nM、約60.5nM、約68.0nM、約21.6nM、約324nM、約54.4nM、約628.5nMおよび2940nMからなる群から選択されるKDでヒトE-セレクチンに結合する、E1からE57のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E59.約138.5nM、約78.3nM、約76.5nM、約81.5nM、約67.8nM、約45.8nM、約243.5nM、約45.4nM、約492nMおよび3145nMの群から選択されるKDでカニクイザルE-セレクチンに結合する、E1からE58のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E60.カニクイザルにおける平均半減期が、10mg/kgの用量でのIV投与後、少なくとも約14.4日間(345時間)である、E1からE59のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E61.カニクイザルにおける平均半減期が、3mg/kgの用量でのIV投与後、少なくとも約12日間(287時間)である、E1からE60のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E62.カニクイザルにおける平均半減期が、3mg/kgの用量でのSC投与後、約21.5日間(518時間)である、E1からE61のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E63.抗薬物抗体を誘導しない、E1からE62のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E64.t-レジトープ(t-regitope)(T-Reg)調整済スコアによって示される、抗体の予測される免疫原性潜在力が、約-30未満である、E1からE63のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E65.t-レジトープ(T-Reg)調整済スコアによって示される、抗体の予測される免疫原性潜在力が、約-45未満であり、0個の非生殖系列T細胞エピトープが存在する、E1からE64のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E66.T-Reg調整済スコアによって示される、抗体の予測される免疫原性潜在力が、約-24、-26、-27、-30、-32、-33、-34、-35、-36、-37、-38、-39、-40、-41、-42、-43、-44、-45、-46、-47および-48からなる群から選択されるT-Reg調整済スコア未満である、E1からE65のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E67.T-Reg調整済スコアによって示される、抗体の予測される免疫原性潜在力が、約-45または-46である、E1からE66のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E68.例えばAC-SINSアッセイ、DNA結合アッセイおよび/またはインスリン結合アッセイによって測定した場合に、多反応性のリスクが低い、E1からE67のいずれか1つに記載の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片。
E69.25℃で、例えば動的光散乱(DLS)によって測定した場合に、約23mg/mLの濃度で約7.97+/-1.83cP、約48mg/mLの濃度で約12.38+/-5.28cP、約90mg/mLの濃度で約4.26+/-0.6cP、約102mg/mLの濃度で約5.58+/-0.99cP、約121mg/mLの濃度で約8.44+/-1.54cP、約140mg/mLの濃度で約9.78+/-2.32cP、約158mg/mLの濃度で約17.47+/-3.24cPおよび約188mg/mLの濃度で約37.99+/-7.03cPからなる群から選択される粘度を有する、E1からE68のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E70.25℃で、例えばDLSによって測定した場合に、約150mg/mL~約190mg/mLの濃度で約15cP~40cPの粘度を有する、E1からE69のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E71.25℃で、例えばAnton Parr法によって測定した場合に、185.7mg/mLで33.4cPの粘度を有する、E1からE70のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E72.例えば競合アッセイによって、例えばOctetバイオセンサーを使用して決定した場合に、ヒトE-セレクチンの3つのエピトープのうち少なくとも1つに結合する、E1からE71のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E73.エピトープのうち少なくとも2つが重複している、E72に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E74.T7、E8、A9、M10、T11、P46、S47、Y48、N82、N83、Q85、E88、E92、Y94、R97、N105、E107、R108、S110、K111、K112、K113、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1つのアミノ酸残基と相互作用する、E1からE73のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E75.3.8Å以内の、T7、E8、A9、T11、P46、S47、Y48、N82、N83、Q85、E92、Y94、N105、E107、R108、S110、K111、K112およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1つのアミノ酸残基と相互作用する、E1からE74のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E76.埋没表面積(Å2)が>5Å2である、T7、E8、A9、T11、P46、S47、Y48、N82、N83、Q85、E88、E92、Y94、R97、E107、R108、S110、K111、K112、K113およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1つのアミノ酸残基と相互作用する、E1からE75のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E77.E8、S47、N82、N83、E88、E92、Y94、N105、E107、R108、S110、K112、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1つのアミノ酸残基と水素結合によって相互作用する、E1からE76のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E78.K111、K112、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1つのアミノ酸残基と塩橋によって相互作用する、E1からE77のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E79.R97、K112、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1つのアミノ酸残基と水を介した水素結合によって相互作用する、E1からE78のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E80.3.8Å以内のsLexアミノ酸残基とも相互作用する、Y48、N82、N83、E92、Y94、R97、N105、E107およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1つのアミノ酸残基と相互作用する、E1からE79のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E81.20mM Tris pH7.5、20mMヒスチジンpH5.8、および20mMグルタミン酸pH4.5からなる群から選択される溶液中、40℃で4週間の保管後、HMMSのパーセンテージおよび/またはパーセンテージLMMSが5%未満であり、任意選択により、分析がaSECによって実施される、E1からE80のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E82.20mM Tris、8.5%スクロースpH7.5、20mMヒスチジン、8.5%スクロース、0.005%EDTA pH5.8および20mMグルタミン酸、8.5%トレハロースpH4.5からなる群から選択される溶液中、4℃または25℃で最大6週間の保管後、HMMSのパーセンテージが5%未満であり、抗体の濃度が約150mg/mlであり、任意選択により、分析がaSECによって実施される、E1からE81のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E83.示差走査熱量測定によって測定した場合に、約65℃以上の、融解温度(Tm1)または抗体のCH2が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE82のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E84.示差走査熱量測定によって測定した場合に、65℃と72℃との間の、融解温度(Tm1)または抗体のCH2が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE83のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E85.示差走査熱量測定によって測定した場合に、約71.7℃の、融解温度(Tm1)または抗体のCH2が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE84のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E86.示差走査熱量測定によって測定した場合に、約74℃以上の、融解温度(Tm2)または抗体のFabが50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE85のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E87.示差走査熱量測定によって測定した場合に、74℃と78℃との間の、融解温度(Tm2)または抗体のFabが50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE86のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E88.示差走査熱量測定によって測定した場合に、約78.2℃の、融解温度(Tm2)または抗体のFabが50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE87のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E89.示差走査熱量測定によって測定した場合に、約82℃以上の、融解温度(Tm3)または抗体のCH3が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE88のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E90.示差走査熱量測定によって測定した場合に、82℃と86℃との間の、融解温度(Tm3)または抗体のCH3が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE89のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E91.示差走査熱量測定によって測定した場合に、約84.3℃の、融解温度(Tm3)または抗体のCH3が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE90のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E92.細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンに対して、例えば、FACSによって測定した場合に、50nM以下、例えば、48nM以下、45nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、0.75nM以下、0.5nM以下、0.25nM以下または0.1nM以下である、EC50として表される結合親和性を有する、E1からE91のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E93.細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンに対して、例えば、FACSによって測定した場合に、約0.66nMである、EC50として表される結合親和性を有する、E1からE92のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E94.細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンに対して、例えば、FACSによって測定した場合に、50nM以下、例えば、48nM以下、45nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、0.75nM以下、0.5nM以下、0.25nM以下または0.1nM以下である、EC50として表される結合親和性を有する、E1からE93のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E95.細胞表面に発現されるヒトP-セレクチンに対して、例えば、FACSによって測定した場合に、350nM以上、例えば、400nM以上、450nM以上、500nM以上、550nM以上、600nM以上、650nM以上である、またはそれよりも大きい、EC50として表される結合親和性を有する、E1からE94のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E96.可溶性ラット、マウスもしくはウサギE-セレクチン、または可溶性ヒトL-もしくはP-セレクチンに対して、弱い結合を有するまたは結合を有さない、E1からE95のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E97.細胞表面に発現されるヒトP-セレクチンに対して、弱い結合を有するまたは結合を有さない、E1からE96のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E98.ラット、マウスもしくはウサギE-セレクチン、または可溶性ヒトL-もしくはP-セレクチンに対して、例えば、SPRによって測定した場合に、405nMまで、結合が実証されない、E1からE97のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E99.可溶性マウスまたはラットE-セレクチンに対して、例えば、直接結合ELISAによって測定した場合に、ヒトまたはカニクイザルE-セレクチンに対する結合の約>100分の1である弱い非飽和性結合が実証される、E1からE98のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E100.可溶性マウスまたはラットE-セレクチンに対して、例えば、直接結合ELISAによって測定した場合に、133.3nMまでの弱い非飽和性結合が実証される、E1からE99のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E101.2nM以下、例えば、0.010nM以下、0.015nM以下、0.020nM以下、0.025nM以下、0.030nM以下、0.035nM以下、0.040nM以下、0.045nM以下、0.05nM以下、0.055nM以下、0.06nM以下、0.065nM以下、0.070nM以下、0.075nM以下、0.080nM以下、0.085nM以下、0.090nM以下、0.10nM以下、0.12nM以下、0.15nM以下、0.2nM以下、0.5nM以下、0.9nM以下、0.95nM以下、1.0nM以下、1.5nM以下、1.8nM以下または1.9nM以下のEC50で可溶性ヒトE-セレクチンに結合する、E1からE100のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E102.例えば、直接結合ELISAによって測定した場合に、約0.085nM~約0.12nMのEC50で可溶性ヒトE-セレクチンに結合する、E1からE101のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E103.1nM以下、例えば、0.010nM以下、0.015nM以下、0.020nM以下、0.025nM以下、0.030nM以下、0.035nM以下、0.040nM以下、0.045nM以下、0.05nM以下、0.055nM以下、0.06nM以下、0.065nM以下、0.070nM以下、0.075nM以下、0.080nM以下、0.085nM以下、0.090nM以下、0.10nM以下、0.12nM以下、0.15nM以下、0.2nM以下、0.5nM以下、0.9nM以下または0.95nM以下のEC50で可溶性カニクイザルE-セレクチンに結合する、E1からE102のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E104.例えば、直接結合ELISAによって測定した場合に、0.071nM~0.093nMのEC50で可溶性カニクイザルE-セレクチンに結合する、E1からE103のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E105.約1nM~約3nMのIC50、好ましくは約1.2nMのIC50で、ヒト血清中の遊離可溶性ヒトE-セレクチンに結合する、E1からE104のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E106.例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、100nM以下、例えば、95nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下または1nM以下のIC50で、シアリルルイスAリガンドの可溶性ヒトE-セレクチンへの結合を中和する、E1からE105のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E107.例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、約2.87nM~約3.01nMのIC50で、シアリルルイスAリガンドの可溶性ヒトE-セレクチンへの結合を中和する、E1からE106のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E108.例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、100nM以下、例えば、95nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下または1nM以下のIC50で、シアリルルイスAリガンドの可溶性カニクイザルE-セレクチンへの結合を中和する、E1からE107のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E109.例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、約2.39nM~約2.91nMのIC50で、シアリルルイスAリガンドの可溶性カニクイザルE-セレクチンへの結合を中和する、E1からE108のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E110.例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、100nM以下、例えば、95nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下または1nM以下のIC50で、シアリルルイスAリガンドの、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの結合を中和する、E1からE109のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E111.例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、約1.88nM~約2.89nMのIC50で、シアリルルイスAリガンドの、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの結合を中和する、E1からE110のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E112.例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、100nM以下、例えば、95nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下または1nM以下のIC50で、シアリルルイスAリガンドの、細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンへの結合を中和する、E1からE111のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E113.例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、約1.47nM~約2.65nMのIC50で、シアリルルイスAリガンドの、細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンへの結合を中和する、E1からE112のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E114.例えば、静置条件下で測定した場合に、100nM以下、例えば、95nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下または1nM以下のIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE113のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E115.例えば、静置条件下で測定した場合に、約3.36nM~約4.7nMのIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE114のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E116.例えば、静置条件下で測定した場合に、約3.84nMのIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE115に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E117.例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、100nM以下、例えば、95nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下または2nM以下のIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE116のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E118.例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約4.25nM~約4.56nMのIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE117のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E119.例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約4.32nM~約4.35nMのIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE118のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E120.例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、300nM以下、例えば、290nM以下、280nM以下、270nM以下、260nM以下、250nM以下、150nM以下、100nM以下、90nM以下、100nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、20nM以下、20nM以下、5nM以下、2nM以下、または1nM以下のIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、可溶性ヒトE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE119のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E121.例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約13.28nM~約15.94nMのIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、可溶性ヒトE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE120のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E122.例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約9.45nM~約16.33nMのIC50で、活性化されたヒト好中球(例えば、TNF-αで活性化された)の、細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE121のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E123.例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約2.87nM~約4.65nMのIC50で、活性化されたヒト好中球(例えば、TNF-αで活性化された)の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE122のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E124.例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約6.17nM~約18.66nMのIC50で、SCD患者からの血液細胞の、可溶性ヒトE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE123のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E125.例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約12.4nMのIC50で、SCD患者からの血液細胞の、可溶性ヒトE-セレクチンへの接着を阻害する、E1からE124のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
E126.E1からE125のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸配列を含む、単離された核酸分子。
E127.E1からE125のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む、単離された核酸分子。
E128.ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の、VL、VH、またはそれら両方をコードする単離された核酸分子であって、配列番号136の核酸配列、配列番号137の核酸配列、またはそれら両方を含む、単離された核酸分子。
E129.配列番号136の核酸配列、配列番号137の核酸配列、またはそれら両方を含むまたはそれからなる、単離された核酸分子。
E130.配列番号136として示される核酸配列を含むまたはそれからなる、単離された核酸分子。
E131.配列番号137として示される核酸配列を含むまたはそれからなる、単離された核酸分子。
E132.配列番号136、144、146、148、150、151、152、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171および173からなる群から選択される少なくとも1つの核酸配列を含む、ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片のVHをコードする、単離された核酸分子。
E133.配列番号136、144、146、148、150、151、152、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171および173からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一な核酸を含む、ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片のVHをコードする、単離された核酸分子。
E134.配列番号137、145、147、149、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172および174からなる群から選択される少なくとも1つの核酸配列を含む、ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片のVLをコードする、単離された核酸分子。
E135.配列番号137、145、147、149、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172および174からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一な核酸を含む、ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片のVLをコードする、単離された核酸分子。
E136.ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の軽鎖、重鎖、またはそれら両方をコードする、単離された核酸分子であって、配列番号206もしくは138の核酸配列;配列番号139の核酸配列;またはそれら両方を含む、核酸分子。
E137.配列番号206もしくは138の核酸配列、配列番号139の核酸配列、またはそれら両方を含むまたはそれからなる、単離された核酸分子。
E138.配列番号206または138の核酸配列を含むまたはそれからなる、単離された核酸分子。
E139.配列番号139の核酸配列を含むまたはそれからなる、単離された核酸分子。
E140.ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片をコードする単離された核酸分子であって、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126529を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
E141.ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片をコードする単離された核酸分子であって、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126530を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
E142.ヒトE-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片をコードする単離された核酸分子であって、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126529を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、およびATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126530を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
E143.ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126529を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
E144.ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126530を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
E145.ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126529を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、およびATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126530を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
E146.E126からE145のいずれか1つに記載の核酸分子を含む、ベクター。
E147.E126からE145のいずれか1つに記載の核酸分子またはE146に記載のベクターを含む、宿主細胞。
E148.哺乳動物細胞である、E147に記載の宿主細胞。
E149.CHO細胞、HEK-293細胞、NS0細胞、PER.C6(登録商標)細胞またはSp2.0細胞である、E147またはE148に記載の宿主細胞。
E150.抗体またはその抗原結合性断片を作製する方法であって、E147からE149のいずれか1つに記載の宿主細胞を、前記抗体または抗原結合性断片が前記宿主細胞によって発現される条件下で培養するステップを含む、方法。
E151.抗体またはその抗原結合性断片を単離するステップをさらに含む、E150に記載の方法。
E152.E1からE125およびE221のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片、ならびに薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
E153.1.12mg/mL L-ヒスチジン、2.67mg/mL L-ヒスチジン塩酸塩一水和物、85mg/mLスクロース、0.05mg/mLエデト酸二ナトリウム二水和物、0.2mg/mLポリソルベート80 pH5.8を含む、E152に記載の医薬組成物。
E154.20mMヒスチジン、8.5%スクロース、および0.02%ポリソルベート80、0.005%EDTA pH5.8を含む、E152またはE153に記載の医薬組成物。
E155.約25mg/mL、50mg/mL、75mg/mL、100mg/mL、125mg/mL、150mg/mlの抗体またはその抗原結合性断片を含む、E152からE154のいずれか1つに記載の医薬組成物。
E156.約100mg/mLの抗体またはその抗原結合性断片を含む、E155に記載の医薬組成物。
E157.用量が、1mL用量である、E152からE156のいずれか1つに記載の医薬組成物。
E158.SCおよび/またはIV投与に適切である、E152からE157に記載の医薬組成物。
E159.i)配列番号11のHCDR-1、HCDR-2、およびHCDR-3配列ならびに配列番号5のLCDR-1、LCDR-2、およびLCDR-3配列;ii)配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインおよび配列番号5のアミノ酸配列を含むVLドメイン;またはiii)配列番号7もしくは13のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号1のアミノ酸配列を含むLCを含む抗体またはその抗原結合性断片を含む、E152からE158のいずれか1つに記載の医薬組成物。
E160.L-グルタミン(例えば、ENDARI)、抗P-セレクチン抗体(例えば、クリザンリズマブ(ADAKVEO))、HbSをそのR状態(即ち、酸素化状態)に維持するようにモジュレートする化合物、例えば、2-アミノキノリンおよびWO2020/109994(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているもの、HbSの酸素親和性をモジュレートする化合物(例えば、ボキセロートル(OXBRYTA))、2,3-ジスホスホグリセリン酸の生成をモジュレートすることによってHbS重合を標的とする化合物、胎児ヘモグロビンの発現を誘導することによってHbS重合を標的とする化合物(例えば、ヒドロキシウレア、例えば、DROXIA、HYDREA)、機能障害性細胞接着、血管機能障害および/または炎症を標的とする化合物(例えば、ホスホジエステラーゼ-9阻害剤)、血液中の一酸化窒素のレベルを増加させる化合物(例えば、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質、例えば、IW-1701、リオシグアト(ADEMPAS))、静脈内IG、過凝固状態を標的とする化合物(例えば、リオシグアト(ADEMPAS)、アピキサバン(ELIQUIS)、リバーロキサバン(XARELTO))、NMDA受容体結合を遮断する化合物(例えば、メマンチン(NAMENDA))およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、さらなる治療的に活性な化合物を含む、E152からE159のいずれか1つに記載の医薬組成物。
E161.肺炎球菌感染症を予防するためのペニシリン系予防薬、ヒドロキシウレア(例えば、DROXIA、HYDREA)、L-グルタミン(例えば、ENDARI)、クリザンリズマブ(ADAKVEO)、ボキセロートル(OXBRYTA)、アピキサバン(ELIQUIS)、リバーロキサバン(XARELTO)、非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛薬、一般に、オピオイド鎮痛薬、IW-1701、リオシグアト(ADEMPAS)、チカグレロル(BRILINTA)、メマンチン(NAMENDA)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、さらなる治療的に活性な化合物を含む、E152からE159のいずれか1つに記載の医薬組成物。
E162.E-セレクチン活性を低減させるまたは阻害する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のE1からE125、E221のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはE152からE161のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与するステップ、および抗体の投与前のE-セレクチンの活性を、投与後のE-セレクチン活性のレベルと比較するステップを含み、それによって、E-セレクチンの活性を低減させる、方法。
E163.E-セレクチンの活性を低減させるまたは阻害することにより、E-セレクチン活性の除去、阻害または低減によって改善、寛解、阻害または予防される疾患、障害または状態を処置する、E162に記載の方法。
E164.E-セレクチンの活性が、
(a)内皮細胞への白血球テザリング;
(b)内皮細胞への安定な接着の活性化;
(c)白血球を停止させる緩徐なローリング;
(d)白血球の効率的な経内皮遊走;
(e)CD18インテグリンの親和性および結合力;
(f)急性炎症の部位への白血球の輸送;
(g)細胞質カルシウムの増加;
(h)p38 MAPキナーゼおよびSykキナーゼを活性化するチロシンリン酸化の増加;
(i)血液から血管内皮への血小板および白血球の動員;ならびに
(j)炎症促進性環境の創出
からなる群から選択される、E162からE163のいずれか1つに記載の方法。
E165.遊離E-セレクチンのレベルの低減を必要とする対象において、遊離E-セレクチンのレベルを低減させる方法であって、対象に、治療有効量のE1からE125のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはE152からE161のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
E166.E-セレクチンの発現および/もしくはE-セレクチンのリガンドへの結合と関連するまたはそれによって媒介される疾患、障害および/もしくは状態を処置および/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のE1からE125のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはE152からE161のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
E167.疾患、障害および/または状態が、SCD、血管閉塞クリーゼ(VOC)、疼痛、臓器梗塞、虚血、脳卒中、終末器官機能障害、急性胸部および血管閉塞(vascular obstruction)、皮膚疾患(例えば、乾癬)、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ)および糖尿病の合併症からなる群から選択される少なくとも1つである、E166の方法。
E168.VOCが、SCDと関連する、E167に記載の方法。
E169.VOCの発生を予防するまたは低減させることによるSCDに対する予防的処置を含む、E166からE168のいずれか1つに記載の方法。
E170.VOCの持続時間(例えば、VOCが消散するまでの時間の低減)および強度を低減させることによるSCDに対する急性処置を含む、E167からE169のいずれか1つに記載の方法。
E171.処置が、予防的処置である、E166からE170のいずれか1つに記載の方法。
E172.SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状、例えば、心臓胸部系に影響を及ぼすもの(例えば、慢性拘束性肺疾患、左心室拡張疾患、肺高血圧症、急性胸部症候群、調律異常、突然死、血管閉塞クリーゼ)、神経系に影響を及ぼすもの(例えば、出血性卒中、静脈洞血栓症、無症候性脳梗塞、慢性疼痛、急性虚血性脳卒中、増殖性網膜症、眼窩梗塞、認知障害)、細網内皮系に影響を及ぼすもの(例えば、脾臓血球貯留、機能性脾機能低下症、貧血、溶血)、筋骨格系に影響を及ぼすもの(例えば、無血管性壊死、皮膚潰瘍)、泌尿生殖器系に影響を及ぼすもの(例えば、乳頭壊死、タンパク尿、腎不全、血尿、夜尿症、持続勃起症)および胃腸系に影響を及ぼすもの(例えば、胆石症、胆管症、肝障害、腸間膜血管閉塞症(mesenteric vaso-occlusion))を処置する、予防する、および/または寛解させる、E166からE171のいずれか1つに記載の方法。
E173.対象が、ヒトである、E166からE172のいずれか1つに記載の方法。
E174.対象が、SCDを有する患者である、E166からE173のいずれか1つに記載の方法。
E175.対象が、HBSS、HBSC、HBS/β°thal、HBS/β+thalまたはHBS-バリアント遺伝子型を有する、E166からE174のいずれか1つに記載の方法。
E176.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、皮下投与される、E166からE175のいずれか1つに記載の方法。
E177.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、静脈内投与される、E166からE175のいずれか1つに記載の方法。
E178.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に1回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、4ヶ月毎に1回、5ヶ月毎に1回、6ヶ月毎に1回、7ヶ月毎に1回、8ヶ月毎に1回、9ヶ月毎に1回、10ヶ月毎に1回、11ヶ月毎に1回または12ヶ月毎に1回投与される、E166からE177のいずれか1つに記載の方法。
E179.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、1ヶ月に1回投与される、E166からE177のいずれか1つに記載の方法。
E180.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、1週間に1回投与される、E166からE179のいずれか1つに記載の方法。
E181.治療有効量が、約1mg~約800mgの抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の用量を含む、E66からE180のいずれか1つに記載の方法。
E182.用量が、初期固定用量である、E181に記載の方法。
E183.用量が、約1mg~約10mg、約10mg~約20mg、約20mg~約30mg、約30mg~約40mg、約40mg~約50mg、約50mg~約60mg、約60mg~約70mg、約70mg~約80mg、約80mg~約90mg、約90mg~約100mg、約100mg~約150mg、約150mg~約200mg、約200mg~約300mg、約300mg~約400mg、約400mg~約500mg、約500mg~約600mg、約600mg~約700mgまたは約700mg~約800mgの抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片である、E181からE182のいずれか1つに記載の方法。
E184.用量が、約15mg、40mg、100mg、150mg、300mg、500mgまたは600mgの抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片である、E181からE183のいずれか1つに記載の方法。
E185.用量が、約150mgの抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片である、E181からE184のいずれか1つに記載の方法。
E186.用量を、1週間に1回、2週間毎に1回、1カ月に1回、2カ月毎に1回、またはこれらの組み合わせで投与するステップを含む、E181からE185のいずれか1つに記載の方法。
E187.抗体が抗体1444であり、抗原結合性断片が抗体1444の断片である、E162からE186のいずれか1つに記載の方法。
E188.投与が、皮下または静脈内投与である、E162からE187のいずれか1つに記載の方法。
E189.i)配列番号11のHCDR-1、HCDR-2、およびHCDR-3配列ならびに配列番号5のLCDR-1、LCDR-2、およびLCDR-3配列;ii)配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインおよび配列番号5のアミノ酸配列を含むVLドメイン;またはiii)配列番号7もしくは13のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号1のアミノ酸配列を含むLCを含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、E162からE188のいずれか1つに記載の方法。
E190.i)配列番号11のHCDR-1、HCDR-2、およびHCDR-3配列ならびに配列番号5のLCDR-1、LCDR-2、およびLCDR-3配列;ii)配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインおよび配列番号5のアミノ酸配列を含むVLドメイン;またはiii)配列番号7もしくは13のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号1のアミノ酸配列を含むLCを含む抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与するステップを含む、E162からE188のいずれか1つに記載の方法。
E191.対象が、SCDを有する患者である、E162からE190のいずれか1つに記載の方法。
E192.SCDを処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、i)配列番号11のHCDR-1、HCDR-2、およびHCDR-3配列ならびに配列番号5のLCDR-1、LCDR-2、およびLCDR-3配列;ii)配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインおよび配列番号5のアミノ酸配列を含むVLドメイン;またはiii)配列番号7もしくは13のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号1のアミノ酸配列を含むLCを含む抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片、および薬学的に許容できる担体または賦形剤を投与するステップを含む、方法。
E193.SCDの処置が、VOCを含めたSCDの少なくとも1つの症状を処置することを含む、E192に記載の方法。
E194.対象が、SCDを有する患者である、E192からE193のいずれか1つに記載の方法。
E195.抗体またはその抗原結合性断片を皮下および/または静脈内投与するステップを含む、E192からE194のいずれか1つに記載の方法。
E196.前記抗体またはその抗原結合性断片が、約1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、1カ月に2回、1カ月に1回、2カ月毎に1回、3カ月に1回、4カ月毎に1回、5カ月毎に1回、6カ月毎に1回、7カ月毎に1回、8カ月毎に1回、9カ月毎に1回、10カ月毎に1回、11カ月毎に1回または12カ月毎に1回投与される、E192からE195のいずれか1つに記載の方法。
E197.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1カ月に1回、またはこれらの組み合わせで投与される、E192からE196のいずれか1つに記載の方法。
E198.抗体またはその抗原結合性断片が、約1mgから約800mgの間の用量で、投与される、E192からE197のいずれか1つに記載の方法。
E199.前記抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約15mg、約40mg、約100mg、約150mg、約300mg、約500mg、および約600mgからなる群から選択される用量で投与される、E192からE198のいずれか1つに記載の方法。
E200.抗体またはその抗原結合性断片が、治療有効量の、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である、1つ以上のさらなる治療的に活性な化合物または処置モダリティと組み合わせて投与される、E192からE199のいずれか1つに記載の方法。
E201.抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の量、ならびにSCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である治療的に活性な化合物または処置モダリティの量が、一緒になって、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において相乗的効果を達成する量で投与される、E192からE200のいずれか1つに記載の方法。
E202.抗E-セレクチン抗体もしくはその抗原結合性断片の量、ならびに/またはSCDの少なくとも1つの徴候および/もしくは症状の処置および/もしくは予防において有効である治療的に活性な化合物もしくは処置モダリティの量が、各々、組み合わせない場合に投与される投薬量よりも少ない投薬量で投与される、E192からE201のいずれか1つに記載の方法。
E203.さらなる治療的に活性な化合物が、肺炎球菌感染症を予防するためのペニシリン系予防薬、ヒドロキシウレア(例えば、DROXIA、HYDREA)、L-グルタミン(例えば、ENDARI)、クリザンリズマブ(ADAKVEO)、ボキセロートル(OXBRYTA)、アピキサバン(ELIQUIS)、リバーロキサバン(XARELTO)、非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛薬、一般に、オピオイド鎮痛薬、IW-1701、リオシグアト(ADEMPAS)、チカグレロル(BRILINTA)、メマンチン(NAMENDA)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、E192からE202のいずれか1つに記載の方法。
E204.さらなる治療的に活性な化合物が、L-グルタミン(例えば、ENDARI)、抗P-セレクチン抗体(例えば、クリザンリズマブ(ADAKVEO))、HbSをそのR状態(即ち、酸素化状態)に維持するようにモジュレートする化合物、例えば、2-アミノキノリンおよびWO2020/109994(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているもの、HbSの酸素親和性をモジュレートする化合物(例えば、ボキセロートル(OXBRYTA))、2,3-ジホスホグリセリン酸の生成をモジュレートすることによってHbS重合を標的とする化合物、胎児ヘモグロビン(HbF)の発現を誘導することによってHbS重合を標的とする化合物(例えば、ヒドロキシウレア、例えば、DROXIA、HYDREA)、機能障害性細胞接着、血管機能障害および/または炎症を標的とする化合物(例えば、ホスホジエステラーゼ-9阻害剤)、血液中の一酸化窒素のレベルを増加させる化合物(例えば、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質、例えば、IW-1701、リオシグアト(ADEMPAS))、静脈内IG、過凝固状態を標的とする化合物(例えば、リオシグアト(ADEMPAS)、アピキサバン(ELIQUIS)、リバーロキサバン(XARELTO))、NMDA受容体結合を遮断する化合物(例えば、メマンチン(NAMENDA))およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、E192からE203のいずれか1つに記載の方法。
E205.SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防に有用である治療的に活性な処置モダリティが、酸素補給、任意選択により鉄キレート化を伴う輸血、骨髄移植、遺伝子治療(例えば、LentiGlobin(登録商標))、CRISPR(例えば、CTX001)またはジンクフィンガー技術による遺伝子編集治療およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、E192からE204のいずれか1つに記載の方法。
E206.抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片と、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である治療的に活性な化合物または処置モダリティが、同時投与される、E200からE205のいずれか1つに記載の方法。
E207.組み合わせ治療が、同じ投薬レジメンに従って投与される(例えば、両方の治療が毎日投与される)または異なる投薬レジメンに従って投与される(例えば、1つの治療が毎日投与され、他の治療が毎週投与される)、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
E208.組み合わせ治療が、対象に同じまたは異なる経路の投与によって投与される、E200からE207のいずれか1つに記載の方法。
E209.E-セレクチンによって媒介される疾患、障害または状態(例えば、SCD)を処置するための医薬の製造における、E152からE161のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
E210.E-セレクチンの発現および/またはE-セレクチンのリガンドへの結合と関連するまたはそれによって媒介される疾患、障害または状態を処置および/または予防するための医薬の製造における、E1からE125またはE221のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片の使用。
E211.E-セレクチンの発現および/またはE-セレクチンのリガンドへの結合と関連するまたはそれによって媒介される疾患、障害または状態を処置および/または予防するための医薬の製造における、E152からE161のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
E212.医薬としての使用のための、E1からE125もしくはE221のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはE152からE161に記載の医薬組成物。
E213.SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防における使用のための、E1からE125もしくはE221のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはE152からE161のいずれか1つに記載の医薬組成物。
E214.SCDの症状がVOCである、E213に記載の使用のための抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
E215.処置および/または予防が、例えば、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である少なくとも1つの他の治療的に活性な化合物または処置モダリティであるがこれらに限定されないさらなる治療剤をさらに含む、E213からE214のいずれか1つに記載の使用のための抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
E216.さらなる治療剤が、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の予防および/または処置のための標準治療である薬剤(例えば、L-グルタミン、ヒドロキシウレア、輸血および当該分野で公知の任意の他の治療)である、E215に記載の使用のための抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
E217.処置および/または予防が、i)相乗的治療有効量の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片、およびii)相乗的治療有効量のさらなる治療剤を含む、E215から216に記載の使用のための抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
E218.処置および/または予防が、i)相乗的治療有効量の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片、およびii)相乗的治療有効量の処置モダリティを含む、E215またはE216に記載の使用のための抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
E219.SCDを有する患者に投与するために組み合わせにおいて使用される、各化合物の適切な量が、年齢、体重、総体的な健康、投与される化合物、投与の経路、SCDの処置の性質および進行、ならびに他の薬物療法の存在からなる群から選択される少なくとも1つの因子を考慮に入れることによって決定される、E152からE161のいずれか1つに記載の医薬組成物。
E220.E-セレクチンによって媒介される疾患、障害または状態(例えば、SCD)を処置するための医薬としての使用のために製剤化された、E152からE161のいずれか1つに記載の医薬組成物。
E221.抗体0039、0164、0158、0159、0170、0180、0841、1282、1284、1444または1448である、E-セレクチンに特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、短縮型ヒトE-セレクチンと共結晶化した抗E-セレクチン抗体0164のFabの例示的な結晶構造を示す。E-セレクチンは、灰色の表面として示される(右側の分子)。0164 Fab(左側の分子)は、リボンとして示され、VLは薄い灰色、VHは濃い灰色である。
【
図2】
図2は、時間0(T0)における、およびTris緩衝液(TrisT4)、ヒスチジン緩衝液(HisT4)またはグルタミン酸(Glu4)緩衝液中での40℃で4週間にわたる貯蔵後の、最適化抗E-セレクチン抗体0841の3部の質量分析による分析からの例示的なデータを示す。
【
図3】
図3は、強制的分解後の抗体841(0841としても公知)の例示的な競合ELISA分析を示す。抗体841を、時間0(0wk)において、およびTris、HisまたはGlu緩衝液中での40℃で2週間(2wk)または4週間(4wk)にわたるインキュベーション後に、分析した。
【
図4】
図4は、ヒト化抗体0841のVHおよびVL領域についての予測された非生殖系列T細胞エピトープを示す。ヒト生殖系列中には見出されないT細胞エピトープを包含することがEpivax/ISPRIまたはIEDBによって予測されたアミノ酸残基は、下線付きである。
【
図5】
図5は、ヒトE-セレクチンを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞へのシアリルルイスAリガンド接着の例示的な中和を示す。試験した抗体は、抗E-セレクチン抗体164(0164としても公知)、1282、1284、1444および1448ならびにIgGアイソタイプ対照を含んだ。
【
図6】
図6は、カニクイザルE-セレクチンを発現するCHO細胞へのシアリルルイスXリガンド接着の例示的な中和を示す。試験した抗体は、抗E-セレクチン抗体164(0164としても公知)、1282、1284、1444、1448およびIgGアイソタイプ対照を含んだ。
【
図7】
図7は、抗体1282、1284、1444、1448および164(0164としても公知)による、ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞へのHL-60細胞接着の例示的な中和を示す。
【
図8】
図8は、時間0(上のパネル)における、およびTris、HisまたはGlu緩衝液中での40℃で4週間にわたる貯蔵後の、最適化抗E-セレクチン抗体1444の3部の質量分析による分析からの例示的なデータを示す。
【
図9-1】
図9Aは、強制的分解後の、抗体1282の例示的な競合ELISA分析を示す。抗体を、時間0(T0)において、およびTris、HisまたはGlu緩衝液中での40℃で2週間(T2)または4週間(T4)にわたるインキュベーション後に、分析した。
【
図9-2】
図9Bは、強制的分解後の、抗体1284の例示的な競合ELISA分析を示す。抗体を、時間0(T0)において、およびTris、HisまたはGlu緩衝液中での40℃で2週間(T2)または4週間(T4)にわたるインキュベーション後に、分析した。
【
図9-3】
図9Cは、強制的分解後の、抗体1444の例示的な競合ELISA分析を示す。抗体を、時間0(T0)において、およびTris、HisまたはGlu緩衝液中での40℃で2週間(T2)または4週間(T4)にわたるインキュベーション後に、分析した。
【
図9-4】
図9Dは、強制的分解後の、抗体1448の例示的な競合ELISA分析を示す。抗体を、時間0(T0)において、およびTris、HisまたはGlu緩衝液中での40℃で2週間(T2)または4週間(T4)にわたるインキュベーション後に、分析した。
【
図10-1】
図10A~10Dは、最適化抗E-セレクチン抗体サンプルの高濃度サンプルのaSEC分析を示す。150mg/mLの濃度の抗体を、時間0(0)において、ならびにTris/Suc、His/SucまたはGlu/Tre緩衝液中での4℃または25℃で1、2、4、6および7週間にわたる貯蔵後に、分析した。高分子量種のパーセンテージ(%HMMS)を定量化した。
図10Aは、抗体1282についての結果を示す。
【
図11】
図11は、最適化抗E-セレクチン抗体の例示的な粘度曲線を示す。最適化抗体1282、1284、1444および1448の粘度を、DLSビーズベースの方法を使用して測定した。さらなる単一のデータポイントが、Anton Paarコーンプレート法を使用して、各々について提供される。
【
図12】
図12は、ヒトE-セレクチン(rhE-セレクチン)、ホモログP-セレクチンおよびL-セレクチン、ならびにウサギ、ラット、マウス(muE-セレクチン)およびカニクイザル(rcyE-セレクチン)の種ホモログへの最適化抗体1444結合の例示的なSPR分析を示す。
【
図13】
図13は、固定化されたヒトL-セレクチンおよびヒトP-セレクチンへの抗E-セレクチン抗体(0841、1282、1284、1444および1448)の例示的な結合を示す。抗L-セレクチン対照抗体および抗P-セレクチン対照抗体は、それぞれ、ヒトL-セレクチンおよびヒトP-セレクチンに結合した。
【
図14】
図14は、生理学的流動下での組換えE-セレクチンへのSCD患者細胞(ドナー11253およびドナー22358)の接着の例示的な中和を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本開示は、E-セレクチンに特異的に結合し、糖タンパク質または糖脂質上にシアリルルイス(sLex)決定因子を有する炭水化物構造を含むリガンドと相互作用する(例えば、結合する)E-セレクチンの能力が含まれるがこれらに限定されない、E-セレクチンの活性を低減させるまたは阻害する、抗体およびその抗原結合性断片を提供する。本開示は、抗E-セレクチン抗体を作製、調製または産生するためのプロセスもまた提供する。本開示の抗体は、SCD、血管閉塞クリーゼ、疼痛、臓器梗塞、虚血、脳卒中および血管閉塞(vascular obstruction)が含まれるがこれらに限定されない、E-セレクチンの活性(例えば、結合)によって媒介されるまたはそれと関連する障害または状態の診断、予防および/または処置において有用である。本開示は、抗体の発現、ならびに本開示の抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物、例えば、抗体の使用のための医薬の調製および製造をさらに包含する。
【0020】
E-セレクチンに結合する抗体またはその抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドが提供される。抗体重鎖もしくは軽鎖、またはそれら両方をコードするポリヌクレオチドもまた提供される。抗E-セレクチン抗体を発現する宿主細胞が提供される。E-セレクチンに対する抗体を使用する処置の方法が提供される。かかる方法には、SCD、血管閉塞クリーゼ、疼痛、臓器梗塞、虚血、脳卒中、終末器官機能障害、急性胸部および血管閉塞(vascular obstruction)が含まれるがこれらに限定されない、E-セレクチンの発現および/またはsLexリガンドへのE-セレクチンの結合と関連するまたはそれによって媒介される疾患を処置および/または予防する方法が含まれるがこれらに限定されない。
【0021】
いずれの特定の理論に束縛されることも望まないが、セレクチンファミリーの接着分子(例えば、E-セレクチン)およびそれらのリガンドは、全てが、重度の疼痛または血管閉塞クリーゼ(例えば、血管閉塞(vascular obstruction)、臓器梗塞および虚血が含まれる)のエピソードとして臨床的に顕在化するSCDにおける炎症促進性応答の一部である、細胞間接着の最初の接触、内皮上の白血球ローリング、インテグリン活性化および細胞遊出の調節において重大な役割を果たす。したがって、本開示の抗体およびその抗原結合性断片は、E-セレクチン活性に対する選択的な拮抗作用および脈管系における結合を可能にし、したがって、対象における血管閉塞(vaso-occlusion)を低減させるものである。本明細書の実施例に開示されている一部の実施形態では、E-セレクチンに対する抗体およびその抗原結合性断片は、E-セレクチンが溶液中に存在するかまたは細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、SCDを有する患者由来の好中球および/または血液細胞)上に発現されており、そのリガンドが溶液中に存在するかまたは細胞(例えば、HL-60細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、カニクイザル肺微小血管内皮細胞(CLMEC))上に発現されている場合に、E-セレクチンのそのリガンドへの結合を阻害する、中和するまたは低減させることが示されている。
【0022】
ヒト化抗体が含まれる抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、血管閉塞クリーゼ、疼痛、臓器梗塞、虚血、脳卒中および血管閉塞(vascular obstruction)が含まれるSCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の予防、処置、および/または寛解において、単独でまたは第2の治療と組み合わせて使用され得る。
【0023】
本明細書で使用されるセクション見出しは、構成のみを目的としており、記載される主題を限定すると解釈すべきではない。
【0024】
特許出願、特許公開、UniProtKBアクセッション番号を含む、本明細書で引用される全ての参考文献は、各個々の参考文献がその全体が参照によって組み込まれると具体的かつ個々に示されるかのように、本明細書で参照によって組み込まれる。
【0025】
本明細書に記載されるまたは本明細書で言及される技術および手順は、一般に、十分に理解され、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubelら編(2003));シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR 2:A PRACTICAL APPROACH(M.J.MacPherson、B.D.HamesおよびG.R.Taylor編(1995))、HarlowおよびLane編(1988)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,and ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney編(1987));Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney)編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993-8)J.Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999));The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995);ならびにそれらの最新版に記載される広く利用される方法論などの、当業者による従来の方法論を使用して、一般に使用される。
【0026】
本開示は、本発明の例示的な実施形態およびその中に含まれる実施例に関する以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解され得る。
【0027】
本発明の態様または実施形態がマルクーシュ群または他の代替の群分けに関して記載されている場合、本発明は、全体として、しかし群の各メンバーが個別に、および主要群の全ての可能性のある亜群が列挙されている群全体を包含するだけでなく、群のメンバーのうち1つ以上が存在しない主要群もまた包含する。本発明では、特許請求された発明における群のメンバーのいずれか1つ以上の明確な除外も想定される。
【0028】
定義
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、定義を含めた本明細書が支配する。
【0029】
さらに、文脈が他を要求しない限りまたは明白に示されない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数を含むものとする。
【0030】
広範囲の本発明を記載する数値範囲および数値パラメーターは概数であるにもかかわらず、特定の実施例において記載されている数値はできる限り正確に報告される。しかし、あらゆる数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必ず生じるある特定の誤差を本質的に含有する。さらに、本明細書に開示される範囲は全て、その中に包含されるありとあらゆる部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」と述べられた範囲は、最小値である1と最大値である10の間(両端を含む)のありとあらゆる部分範囲;即ち、最小値である1以上から始まる部分範囲、例えば、1~6.1、および最大値である10以下で終わる部分範囲、例えば、5.5~10の全てを含むものとみなされるべきである。
【0031】
本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」には、他が示されない限り、複数の参照対象が含まれる。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「および/または」は、付随する列挙された項目のうち1つ以上のありとあらゆる可能性のある組み合わせ、ならびに、選択肢「または(or)」として解釈される場合には組み合わせの欠如を指し、包含する。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「約」または「およそ」は、例えば、生物学的活性の量、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の長さ、GおよびCヌクレオチドの含量、コドン適応指標、CpGジヌクレオチドの数、用量、時間、温度などの測定可能な値を指し、他の指定のない限り、文脈から他が明らかでない限り、またはかかる数が可能性のある値の100%を超える場合を除き、特定された量のいずれかの方向(より大きいまたはより小さい)に25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%またはさらには0.1%の変動を包含することを意味する。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「寛解させる」は、対象の疾患、障害もしくは状態(例えば、SCD)またはその症状(例えば、血管閉塞クリーゼ)、または基礎をなす細胞応答の検出可能なまたは測定可能な改善を意味する。検出可能なまたは測定可能な改善には、疾患、障害もしくは状態の発生、頻度、重症度、進行もしくは持続時間の主観的もしくは客観的な減少、低減、阻害、抑制、限定もしくは制御、疾患、障害もしくは状態によって引き起こされるまたはそれと関連する合併症の発生、頻度、重症度、進行もしくは持続時間の主観的もしくは客観的な減少、低減、阻害、抑制、限定もしくは制御、疾患、障害もしくは状態の症状の改善、または、疾患、障害もしくは状態の逆転が含まれる。
【0035】
本明細書で使用する場合、「別の」は、少なくとも第2のものまたはそれ以上を意味し得る。本明細書で他に定義されない限り、本発明と併せて使用される科学用語および技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有するものとする。さらに、文脈が他を要求しない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「と関連する」は、存在する場合、互いに、一方のレベルおよび/または形態が他方のレベルおよび/または形態と相関することを指す。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド、遺伝子シグネチャー、代謝産物、微生物など)は、その存在、レベルおよび/または形態が特定の疾患、障害、または状態の発生率および/またはそれに対する易罹患性と相関する場合、その疾患、障害、または状態と関連するとみなされる(例えば、関連性のある集団にわたって)。一部の実施形態では、2つ以上の実体が直接または間接的に相互作用し、その結果、それらの実体が互いに物理的近傍にあるおよび/または物理的近傍のままである場合、それらの実体は互いに物理的に「関連する」。一部の実施形態では、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有結合により連結している;一部の実施形態では、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有結合による連結はしていないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性、およびこれらの組み合わせによって非共有結合により関連している。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「コード配列」は、特定のタンパク質をコードする配列を指す、または、「コード核酸」は、in vitroまたはin vivoにおいて、適切な調節配列の制御下に置かれた(それに作動可能に連結された)場合に、転写され(DNAの場合)、ポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸配列を意味する。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列には、原核生物または真核生物mRNAに由来するcDNA、原核生物または真核生物DNAに由来するゲノムDNA配列、およびさらには合成DNA配列が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0038】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、単語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形および単語「有する(having)/含む(including)」は、述べられた整数または整数の群の包含を意味するが、任意の他の整数または整数の群の除外を意味するものではないと理解されたい。文脈が他を要求しない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。用語「例えば(e.g.)」または「例えば(for example)」の後ろに続く任意の例は、網羅するものでも限定するものでもない。本明細書において実施形態が語「含む(comprising)」と共に記載されている場合はいつでも、「からなる(consisting
of)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)の点で記載される他の類似の実施形態も提供されることが理解される。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「保存的置換」は、1つのアミノ酸の、生物学的、化学的または構造的に類似した残基による置き換えを指す。生物学的に類似したとは、置換により生物学的活性が破壊されないことを意味する。構造的に類似したとは、アミノ酸が、例えば、アラニン、グリシンおよびセリンなど、類似の長さの側鎖を有する、または類似のサイズを有することを意味する。化学的類似性は、残基が同じ電荷を有するまたはどちらも親水性であるもしくは疎水性であることを意味する。特定の例には、イソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニンなどの疎水性残基の別の疎水性残基での置換、または1つの極性残基の別の極性残基での置換、例えば、アルギニンでのリジンの置換、グルタミン酸でのアスパラギン酸の置換、またはグルタミンでのアスパラギンの置換、セリンでのトレオニンなの置換などが含まれる。保存的置換の特定の例には、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの疎水性残基での互いの置換、極性残基での別の極性残基の置換、例えば、アルギニンでのリジンの置換、グルタミン酸でのアスパラギン酸の置換、またはグルタミンでのアスパラギンの置換などが含まれる。典型的には、保存的アミノ酸置換には、例えば、以下の群内での置換が含まれる:グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。「保存的置換」には、非置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することも含まれる。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「発現制御配列」は、核酸の転写を方向づける核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成的もしくは誘導性プロモーターなどのプロモーター、またはエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動可能に連結される。
【0041】
本明細書で使用する場合、薬物、化合物、または医薬組成物の「有効投薬量」または「有効量」という用語は、任意の1つ以上の有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。より具体的な態様では、有効量は、疾患、例えばSCDの少なくとも1つの徴候および/または症状を予防する、軽減する、および/または寛解させる量である。予防的使用について、有益なまたは所望の結果には、リスクを排除もしくは低減させること、重症度を低下させること、または疾患、その合併症、および疾患の発達の間に存在する中間の病理学的表現型の生化学的、組織学的および/もしくは行動学的症状を含む、疾患の開始を遅延させることが含まれる。治療的使用について、有益なまたは所望の結果には、臨床結果、例えば、E-セレクチンに媒介される疾患、障害または状態の少なくとも1つの徴候および/または症状を低減させること、疾患を処置するために要求される他の薬物療法の用量を減少させること、別の薬物療法の効果を増強すること、および/または患者の疾患の進行を遅延させることが含まれる。有効投薬量は、1つ以上の投与で投与され得る。本発明の目的のために、薬物、化合物または医薬組成物の有効投薬量は、予防的処置または治療的処置を直接的または間接的に達成するのに十分な量である。臨床状況において理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効投薬量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効投薬量」は、1つ以上の治療剤を投与する観点から検討され得、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るまたは達成される場合に、有効量で与えられたとみなされ得る。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「機能的」は、生体分子が、それを特徴付ける特性および/または活性を示す形態にあることを指す。生体分子は、2つの機能を有し得る(即ち、二機能性)または多くの機能を有し得る(即ち、多機能性)。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「グリコシル化パターン」は、タンパク質に共有結合により付着した炭水化物単位のパターン(例えば、グリコフォーム)ならびにグリコフォームがタンパク質、より詳細には免疫グロブリンタンパク質のペプチド骨格に共有結合により付着する部位を意味する。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「相同な」または「相同性」は、所与の領域または断片にわたって少なくとも部分的な同一性を共有する、2つ以上の参照実体(例えば、ヌクレオチドまたはポリペプチド配列)を指す。例えば、2つのペプチド内のあるアミノ酸位置が同一なアミノ酸によって占有されている場合、これらのペプチドはその位置において相同である。とりわけ、相同なペプチドは、改変されていないまたは参照ペプチドと関連する活性または機能を保持し、改変されたペプチドは、一般に、改変されていない配列のアミノ酸配列と「実質的に相同な」アミノ酸配列を有する。ポリペプチド、核酸またはその断片について言及する場合、「実質的な相同性」または「実質的な類似性」は、別のポリペプチド、核酸(またはその相補鎖)またはその断片と適切な挿入または欠失を伴って最適にアラインメントした場合に、配列の少なくとも約95%~99%に配列同一性が存在することを意味する。2つの配列間の相同性(同一性)の程度は、コンピュータープログラムまたは数理アルゴリズムを使用して確認され得る。パーセント配列相同性(または同一性)を計算するかかるアルゴリズムでは、一般に、比較領域またはエリアにわたって配列ギャップおよびミスマッチを説明する。例示的なプログラムおよびアルゴリズムを以下に提示する。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は互換的に使用され、ポリヌクレオチド挿入物の取り込みのためのベクターのレシピエントであり得るまたはレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物を意味する。宿主細胞には、「形質転換体」、「形質転換された細胞」、および「形質導入された細胞」が含まれ、これらには、初代の形質転換または形質導入された細胞、および継代の数に関係なく、それに由来する子孫が含まれる。宿主細胞の子孫は、天然の、偶然のまたは意図的な変異に起因して(形態学的に、またはゲノムDNA相補性において)元の親細胞とは必ずしも完全に同一でなくてもよい。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチド(例えば、抗E-セレクチン抗体のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド)でin vivoでトランスフェクトおよび/または形質転換された細胞が含まれる。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「同一性」または「に対して同一」は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子および/もしくはRNA分子)間ならびに/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。「同一性」は、特定の数理モデルのコンピュータープログラム(即ち、「アルゴリズム」)によって扱われるギャップアラインメントを用いて、2つ以上の配列間の同一な一致のパーセントを測定する。
【0047】
一部の実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一である場合、互いに「実質的に同一」であるとみなされる。
【0048】
2つの核酸またはポリペプチド配列のパーセント同一性の計算は、例えば、2つの配列を最適に比較するためにアラインメントすることによって実施され得る(例えば、最適なアラインメントのために第1と第2の配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較のために、同一でない配列を無視することができる)。ある特定の実施形態では、比較のためにアラインメントされた配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで、対応する位置のヌクレオチドを比較する。第1の配列内のある位置が第2の配列内の対応する位置と同じ残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)に占有されている場合、その結果これらの分子は、その位置において同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列を最適にアラインメントするために導入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮に入れた、それらの配列が共有する同一な位置の数の関数である。配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数理アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0049】
パーセント同一性を決定するために、配列のアラインメントを、ワールドワイドウェブncbi.nlm.nih.gov/BLAST/を通じて入手可能なBLASTを含めた方法およびコンピュータープログラムを使用して行うことができる。他のアラインメントプログラムには、Lasergene(登録商標)suite of bioinformatics software内のMegAlign(登録商標)プログラム(DNASTAR(登録商標),Inc.、Madison、WI)が含まれる。別のアラインメントアルゴリズムは、Madison、Wis.、USAのGenetics Computing Group(GCG)パッケージとして入手可能なFASTAである。アラインメントのための他の技術は、Methods in Enzymology、266巻:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996)、Doolittle編、Academic Press、Incに記載されている。配列内のギャップが許容されるアラインメントプログラムが特に興味深い。Smith-Watermanは、配列アラインメント内にギャップが許容されるアルゴリズムの型の1つである。Meth.Mol.Biol.70: 173~187(1997)を参照のこと。また、NeedlemanおよびWunschのアラインメント法を使用するGAPプログラムを使用して配列をアラインメントすることもできる。J.Mol.Biol.48: 443~453(1970)を参照のこと。
【0050】
また、SmithおよびWaterman(1981、Advances in Applied Mathematics 2: 482~489)の局所相同性アルゴリズムを使用して配列同一性を決定するBestFitプログラムも興味深い。ギャップ生成ペナルティは、一般に1~5まで、通常は2~4までにわたり、一部の実施形態では3になる。ギャップ伸長ペナルティは、一般に約0.01から0.20までにわたり、一部の場合では0.10になる。このプログラムは、比較のためにインプットされる配列によって決定されるデフォルトパラメーターを有する。プログラムによって決定されたデフォルトパラメーターを使用して配列同一性を決定することが好ましい。このプログラムは、Madison、WI、USAのGenetics Computing Group(GCG)パッケージでも入手可能である。
【0051】
興味深い別のプログラムはFastDBアルゴリズムである。FastDBは、Current Methods in Sequence Comparison and Analysis、Macromolecule Sequencing and Synthesis、Selected Methods and Applications、127~149頁、1988、Alan R.Liss、Incに記載されている。パーセント配列同一性はFastDBによって以下のパラメーターに基づいて計算される:ミスマッチペナルティ:1.00;ギャップペナルティ(Gap Penalty):1.00;ギャップサイズペナルティ(Gap Size Penalty):0.33;およびジョイニングペナルティ(Joining Penalty):30.0。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「増加させる」、「改善する」、「減少させる」または「低減させる」は、ベースライン測定値、例えば、本明細書に記載される処置を開始する前の同じ個体における測定値、または本明細書に記載される処置の非存在下での対照個体(もしくは複数の対照個体)における測定値などと比較した値を示す。一部の実施形態では、「対照個体」は、処置される個体と同じ形態の疾患または傷害を患っている個体である。一部の実施形態では、「対照個体」は、処置される個体と同じ形態の疾患または傷害を患っていない個体である。
【0053】
本明細書で使用する場合、用語「単離された分子」(分子が、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体もしくはその抗原結合性断片の場合)は、それが引き出された起源または供給源に基づいて、(1)そのネイティブ状態では付随する天然に関連する構成要素と関連していない、(2)同じ種に由来する他の分子を実質的に含まない、(3)異なる種に由来する細胞によって発現される、または(4)天然に存在しない、分子を意味する。したがって、化学的に合成される、またはそれが天然に起源とする細胞とは異なる細胞の系で発現される分子は、その天然には関連する構成要素から「単離された」ものになる。分子を、当該分野で周知の精製技術を使用して単離することにより、天然には関連する構成要素を実質的に含まないものにすることもできる。分子の純度または均一性は、当該分野で周知の多数の手段によってアッセイされ得る。例えば、ポリペプチドサンプルの純度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、および当該分野で周知の技術を使用してゲルを染色してポリペプチドを可視化することを使用してアッセイされ得る。ある特定の目的に関しては、HPLCまたは精製のための当該分野で周知の他の手段を使用することによって、より高い分解能が提供され得る。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「リーダーペプチド」または「リーダー配列」または「リーダーシグナル配列」または「シグナル配列」(本明細書では互換的に使用される)は、核酸分子の5’末端および/またはポリペプチドのN末端もしくはその付近に存在し得、存在する場合には、細胞からのポリペプチドの分泌が含まれるがこれらに限定されない、ポリペプチドの目的地の細胞小器官への輸送を媒介し得る、任意の核酸配列、またはそれによってコードされるアミノ酸配列を意味する。かかるリーダー配列には、例えば、ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACTACAGGTGTCCACTCC(配列番号140)を含む核酸配列およびATGGGATGGAGCTGTATCATCCTCTTCTTGGTGGCAACAGCTACAGGCGTGCACTCC(配列番号141)を含む核酸配列、ならびに、例えば、これらに限定されないが、MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号129)およびMEWSWVFLFFLSVTTGVHS(配列番号130)などの、それによってコードされるアミノ酸配列、または、MGWSCIILFLVATATGAHS(配列番号131)などの他のリーダー配列が含まれるがこれらに限定されない。本発明は、ポリペプチドの、所望の細胞小器官、例えば小胞体への輸送、および/または細胞からの分泌をもたらし得る、これらのおよび当該分野で公知のまたは同定される任意の他のリーダーシグナル(核酸およびアミノ酸配列)を包含する。一般に、シグナルペプチドは成熟ポリペプチドから除去され、および/または成熟ポリペプチドには存在しない。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「残基」は、タンパク質内の位置およびそれの関連するアミノ酸同一性を意味する。例えば、アスパラギン297(Asn297とも呼ばれ、N297とも呼ばれる)は、ヒト抗体IgG1内の残基である。
【0056】
用語「類似性」は、関連する概念であるが、「同一性」とは対照的に、同一の一致および保存的置換一致の両方を含む類似性の尺度を指す。保存的置換は、ポリペプチドには当てはまり、核酸分子には当てはまらないので、類似性は、ポリペプチド配列比較のみに当てはまる。2つのポリペプチド配列が、例えば、20個のうち10個の同一なアミノ酸を有し、残りが全て非保存的置換である場合、パーセント同一性および類似性は、共に50%である。同じ例において、保存的置換が存在する5つのさらなる位置が存在する場合、パーセント同一性は、50%のままであるが、パーセント類似性は、75%(20個のうち15個)である。したがって、保存的置換が存在する場合、2つのポリペプチド配列間の類似性の程度は、その2つの配列間のパーセント同一性よりも高い。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、哺乳動物、より好ましくは、ヒトを意味する。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリなど)、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットもまた含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、対象は患者である。一部の実施形態では、対象は、E-セレクチンのそのリガンドへの結合によって媒介されるまたはそれと関連する疾患、障害または状態のリスクがある。一部の実施形態では、対象は、本明細書に記載される疾患、障害または状態、例えばSCDを有する患者である。一部の実施形態では、対象(例えば、患者)は、SCD、SCDのバリアントまたはSC症を有する。一部の実施形態では、対象(例えば、患者)は、HBSS、HBSC、HBS/β°thal、HBS/β+thal、HBS/HPHP、HBSEまたはHBS-バリアント遺伝子型を有する。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「実質的に純粋」は、目的の種が、存在する優勢な種である(即ち、モル濃度に基づいて、組成物中の任意の他の個々の種よりも豊富である)こと、および、好ましくは、実質的に精製された画分が、存在する全ての高分子種の少なくとも約50パーセント(モル濃度に基づいて)を目的の種(例えば、抗体または受容体を含めた糖タンパク質)が構成する組成物であることを意味する。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種を約80パーセントよりも多く、より好ましくは約85%よりも多く、約90%よりも多く、約95%よりも多く、および約99%よりも多く構成する。最も好ましくは、目的の種は必須の均一性まで精製され(従来の検出方法によって組成物中に夾雑種を検出することができない)、組成物は単一の高分子種から本質的になる。ある特定の実施形態では、実質的に純粋な材料は、少なくとも50%純粋である(即ち、夾雑物を含まない)、より好ましくは、少なくとも90%純粋である、より好ましくは、少なくとも95%純粋である、さらにより好ましくは、少なくとも98%純粋である、および最も好ましくは、少なくとも99%純粋である。
【0059】
本発明によるポリペプチドまたは抗体「断片」または「部分」は、短縮によって、例えば、ポリペプチドのNおよび/またはC末端から1つ以上のアミノ酸を除去することによって作製され得る。1個、2個、3個、4個、5個、最大で10個、最大で20個、最大で30個、最大で40個またはそれよりも多くのアミノ酸を、このようにNおよび/またはC末端から除去することができる。断片は、1つ以上の内部の欠失によっても生成され得る。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「核酸配列」および「ヌクレオチド配列」は、互換的に、モノマー性ヌクレオチドで構成されるまたはモノマー性ヌクレオチドを含む任意の分子を指す。核酸は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであり得る。ヌクレオチド配列は、DNAまたはRNA(例えば、ゲノムDNA、cDNA、アンチセンスDNA、mRNA、tRNA、rRNAなど)であり得る。ヌクレオチド配列は、化学修飾されたものまたは人工的なものであり得る。ヌクレオチド配列には、ペプチド核酸(PNA)、モルフォリノおよびロックド核酸(LNA)、ならびにグリコール核酸(GNA)およびトレオース核酸(TNA)が含まれる。これらの配列は各々、分子の骨格に対する変化により、天然に存在するDNAまたはRNAから識別される。また、ホスホロチオエートヌクレオチドが使用され得る。他のデオキシヌクレオチド類似体には、本開示のヌクレオチド配列に使用され得るメチルホスホネート、ホスホラミデート、ホスホロジチオエート、N3’-P5’-ホスホラミデート、およびオリゴリボヌクレオチド
ホスホロチオエートおよびそれらの2’-0-アリル類似体および2’-0-メチルリボヌクレオチドメチルホスホネートが含まれる。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「核酸構築物」は、組換えDNA技術の使用の結果生じた天然に存在しない核酸分子(例えば、組換え核酸)を指す。核酸構築物は、核酸配列のセグメントを含有するように改変されており、天然に見出されない様式で組み合わされ、配置される、一本鎖または二本鎖のいずれかの核酸分子である。核酸構築物は、「ベクター」(例えば、プラスミド)、即ち、外因的に創出されたDNAを宿主細胞内に送達するように設計された核酸分子である。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「作動可能に連結された」は、ポリヌクレオチド(またはポリペプチド)エレメントの機能的関連性での連結を指す。核酸が別の核酸配列との機能的関連性に置かれている場合、その核酸は作動可能に連結されている。例えば、プロモーターまたは他の転写調節配列(例えば、エンハンサー)は、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている。一部の実施形態では、作動可能に連結されたとは、連結された核酸配列が連続していることを意味する。一部の実施形態では、作動可能に連結されたとは、核酸配列が連続して連結されていることを意味するのではなく、連結されているそれらの核酸配列の間に介在配列が存在することを意味する。
【0063】
本明細書で使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」(本明細書では「核酸分子」とも呼ばれる)は、リン酸ジエステル連結によって接続されたヌクレオチドの配列を指す。ポリヌクレオチドは、本明細書では、5’から3’への方向で示されている。本開示のポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)分子またはリボ核酸(RNA)分子であり得、二本鎖分子、一本鎖分子、低分子(small or short)ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA、低分子(small
or short)干渉RNA(siRNA)、トランス-スプライシングRNA、アンチセンスRNAなどの、核酸の全形態を指す。ポリヌクレオチドがDNA分子である場合、その分子は、遺伝子、cDNA、アンチセンス分子または前述の分子のいずれかの断片であり得る。ヌクレオチド塩基は、本明細書では1文字コード:アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、イノシン(I)およびウラシル(U)で示される。本開示のポリヌクレオチドは、当業者に周知の標準の技術を使用して調製され得る。
【0064】
本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチド(核酸配列またはヌクレオチド配列)によってコードされる「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」という用語は、天然に存在するタンパク質と同様に全長のネイティブ配列、ならびに、部分配列、改変形態またはバリアントがネイティブ全長タンパク質の機能性をある程度保持する限りは、機能的な部分配列、改変形態または配列バリアントを指す。本開示の方法および使用では、ポリヌクレオチド配列によってコードされるかかるポリペプチド、タンパク質およびペプチドは、遺伝子治療を用いた処置を受ける対象において欠陥があるまたはその発現が不十分である、または欠損している内因性タンパク質に対して同一であり得るが、そうである必要はない。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「予防する」または「予防」は、特定の疾患、障害または状態(例えば、SCD)の少なくとも1つの徴候および/または症状(例えば、血管閉塞クリーゼ、疼痛)の発症の遅延、ならびに/または頻度および/もしくは重症度の低減を指す。一部の実施形態では、予防は集団に基づいて評価され、したがって、疾患、障害または状態にかかりやすい集団において、疾患、障害または状態の1つ以上の症状の発達、頻度および/または強度の統計的に有意な減少が観察された場合、薬剤は、特定の疾患、障害または状態を「予防する」とみなされる。予防は、疾患、障害または状態の発症が予め定義された期間にわたって遅延した場合、完了したとみなされ得る。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「組換え」は、クローニング、制限またはライゲーションステップ(例えば、その中に含まれるポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関する)、および/または天然に見出される産物とは別個の構築物を生じさせる他の手順の、種々の組み合わせの産物であるベクター、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは細胞を指す。
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「処置する」または「処置」は、特定の疾患、障害および/または状態(例えば、SCD)の1つ以上の症状、特色および原因を部分的にもしくは完全に軽減する、寛解させる、緩和する、阻害する、その発症を遅延させる、その重症度を低減させる、および/またはその発生率を低減させる、治療を投与することを意味する。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果には、以下のうち1つ以上が含まれるがこれらに限定されない:生存率の改善(死亡率の低減)、組織線維症の量の低減、疾患による損傷の程度の減少、疾患の持続時間の減少、および/または疾患に関連する症状の数、程度、もしくは持続時間の低減。この用語には、疾患の症状、合併症、もしくは生化学的徴候の発症を予防するもしくは遅延させる、症状を軽減する、または疾患、状態もしくは障害のさらなる発達を停止もしくは阻害するために、本発明の化合物または薬剤を投与することが包含される。処置は、予防的なもの(疾患の発症を予防するもしくは遅延させるためまたはその臨床的もしくは無症候性の症状の顕在化を防止するため)または疾患が顕在化した後の症状の治療的抑制もしくは軽減であり得る。一部の実施形態では、疾患、状態または障害はSCDである。
【0068】
抗体
「抗体」または「Ab」は、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、特異的標的または抗原(Ag)、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどを認識しそれに結合することが可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、所与の抗原(例えば、E-セレクチン)に特異的に結合する能力を保持する、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、インタクトな抗体の抗原結合性断片(または部分)および任意の他の改変された立体配置の、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子が含まれるがこれらに限定されない、任意の型の抗体を包含し得る。
【0069】
抗体にはIgG、IgA、またはIgMなどの任意のクラス(またはそのサブクラス)の抗体が含まれ、抗体は任意の特定のクラスのものである必要はない。免疫グロブリンは、その重鎖(HC)の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主要なクラスが存在する:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、およびこれらのうちいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分類される。一部の実施形態では、本開示の抗E-セレクチン抗体は、IgG1抗体である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元立体配置は周知である。
【0070】
抗体は、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット(例えば、スプラーグドーリー(Sprague Dawley)ラット)などが含まれるがこれらに限定されない任意の哺乳動物、または他の動物、例えば、鳥類(例えば、ニワトリ)、魚類(例えば、サメ)およびラクダ科の動物(例えば、ラマ)などに由来し得る。
【0071】
用語「抗原」は、抗原を認識する抗体を産生するため、または発現ライブラリー(例えば、とりわけ、ファージ、酵母またはリボソームディスプレイライブラリー)をスクリーニングするために、免疫適格性脊椎動物の免疫化のために使用される分子実体を指す。本明細書で、抗原は、より広い用語であり、抗体によって特異的に認識される標的分子を含むこと、したがって、抗体を生じさせるための免疫化プロセスにおいて、または抗体を選択するためのライブラリースクリーニングにおいて使用される分子の断片または模倣物を含むことを一般に意図する。したがって、E-セレクチンに結合する本発明の抗体について、そのモノマーおよびマルチマー、例えば、ダイマー、トリマーなどを含む、哺乳動物種(例えば、ヒト、サル(カニクイザルを含む)、マウス、ウサギおよびラット)由来の全長E-セレクチン、E-セレクチンの短縮型および他のバリアント(例えば、細胞外ドメイン)、ならびに可溶性E-セレクチンおよび細胞表面に発現されるE-セレクチンが、本明細書において抗原と呼ばれる。
【0072】
抗体の「抗原結合性断片」は、抗原に(好ましくは、実質的に同じ結合親和性で)特異的に結合する能力を保持する、全長の抗体の1つ以上の断片を指す。全長の抗体の断片によって、抗体の抗原結合機能が発揮され得ることが示されている。抗体の「抗原結合性断片」という用語の範囲内に包含される結合性断片の例には、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)1つのVHドメインからなるdAb断片(Wardら、Nature 1989;341:544~546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ジスルフィド連結されたFvs(dsFv)、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体および細胞内抗体が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、組換え方法を使用して、VLおよびVH領域が対になって一価分子(単鎖Fv(scFv)としても公知)を形成している単一のタンパク質鎖としてそれらが作製されるのを可能にする合成リンカーによって、接合され得る;例えば、Birdら、Science 1988;242:423~426およびHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.1988 USA 85:5879~5883を参照のこと。他の形態の単鎖抗体、例えば、ダイアボディ(diabody)もまた包含される。かかる単鎖抗体もまた抗体の「抗原結合性断片」という用語の範囲内に包含されることが意図される。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間での対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによって、これらのドメインをもう一方の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2つの抗原結合部位を創出する、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1993;90:6444~6448;Poljakら、Structure 1994;2:1121~1123を参照のこと)。
【0073】
抗体「可変ドメイン」は、単独のまたは組み合わせた、抗体軽鎖の可変領域(VL)または抗体重鎖の可変領域(VH)を指す。当該分野で公知のように、重鎖および軽鎖の可変領域は各々、3つの「相補性決定領域」(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。対象可変領域のバリアント、特に、CDR領域の外側(即ち、フレームワーク領域内)のアミノ酸残基に置換を有するものが望まれる場合、適切なアミノ酸置換、好ましくは、保存的アミノ酸置換は、対象可変領域を、対象可変領域と同じカノニカルなクラス内のCDR1およびCDR2配列を含有する他の抗体の可変領域と比較することによって同定され得る(ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.1987;196(4):901~917)。
【0074】
可変ドメイン内の残基は、典型的には、抗体のコンパイルの重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付け体系を提供するKabatに従って番号付けされる。Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MDを参照のこと。この番号付け体系を使用すると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRを短くすること、または可変ドメインのFRまたはCDRへの挿入に対応して、より少ないまたはさらなるアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatに従って残基52a)、ならびに重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatに従って残基82a、82b、および82c)を含み得る。残基のKabat番号付けは、所与の抗体について、抗体の配列の相同性領域を「標準の」Kabatにより番号付けされた配列とアラインメントすることによって決定され得る。Kabat番号付けを割り当てるための種々のアルゴリズムが入手可能である。例えば、Abysis(www.abysis.org)のバージョン2.3.3リリースでインプリメントされるアルゴリズムを使用して、Kabat番号付けを可変領域LCDR-1、LCDR-2、LCDR-3、HCDR-2、およびHCDR-3に割り当てることができ、次いで、AbM定義をHCDR-1に対して使用することができる。
【0075】
ある特定の実施形態では、CDRの最終的な線引きおよび抗体の結合性部位を含む残基の同定は、抗体の構造を解明することおよび/または抗体-リガンド複合体の構造を解明することによって実現される。ある特定の実施形態では、これは、X線結晶構造解析などの当業者に公知の様々な技術のいずれかによって実現され得る。ある特定の実施形態では、様々な解析方法を使用してCDR領域を同定または推定することができる。かかる方法の例には、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、接触定義、およびコンフォメーション定義が含まれるがこれらに限定されない。
【0076】
「相補性決定領域」(CDR)は、Kabat、Chothia、KabatおよびChothiaの両方の集積、AbM、接触、Northおよび/もしくはコンフォメーション定義または当該分野で周知のCDR決定の任意の方法の定義に従って同定され得る。例えば、Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版(超可変領域);Chothiaら、Nature 1989;342:877~883(構造的ループ構造)を参照のこと。特定の抗体中のCDRを構成するアミノ酸残基の同一性は、当該分野で周知の方法を使用して決定され得る。CDRのAbM定義は、KabatとChothiaとの間の妥協であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(Accelrys(登録商標))を使用する。
【0077】
CDRの「接触」定義は、MacCallumら、J.Mol.Biol.1996;262:732~745に示される、観察された抗原接触に基づく。CDRの「コンフォメーション」定義は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基に基づく(例えば、Makabeら、J.Biol.Chem.、2008;283:1156~1166を参照のこと)。Northは、異なる好ましいセットのCDR定義を使用して、カノニカルなCDRコンフォメーションを同定している(Northら、J.Mol.Biol.2011;406:228~256)。CDRの「コンフォメーション定義」と本明細書で呼ばれる別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基として同定され得る(Makabeら、J.Biol.Chem.2008、283:1156~1166)。なお他のCDR境界定義は、上記アプローチのうちの1つに厳密に従わなくてもよいが、それにもかかわらず、Kabat CDRの少なくとも一部分と重複するが、これらは、特定の残基もしくは残基の群またはさらにはCDR全体であっても抗原結合に顕著には影響しないという予測または実験的知見に照らして、短縮または延長され得る。本明細書で使用する場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当該分野で公知の任意のアプローチによって定義されるCDRを指し得る。本明細書で使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されるCDRを利用し得る。1つよりも多くのCDRを含む任意の所与の実施形態について、CDR(または抗体の他の残基)は、Kabat、Chothia、North、拡張型(extended)、AbM、接触および/またはコンフォメーション定義のいずれかに従って定義され得る。
【0078】
「接触残基」は、抗体またはそれが特異的に結合する抗原に関して本明細書で使用する場合、同族抗体/抗原上に存在するアミノ酸残基の重原子に対して4Å以下である、少なくとも1つの重原子(即ち、水素ではない)を含む抗体/抗原上に存在するアミノ酸残基を指す。
【0079】
「フレームワーク」(FR)残基は、CDR残基以外の抗体可変ドメイン残基である。VHまたはVLドメインフレームワークは、以下の構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4でCDRが散在する4つのフレームワークサブ領域FR1、FR2、FR3およびFR4を含む。
【0080】
当該分野で公知のように、抗体の「定常領域」は、単独のまたは組み合わせた、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を指す。
【0081】
用語「IgG Fc領域」、「Fc領域」、「Fcドメイン」および「Fc」は、本明細書で相互交換可能に使用される場合、免疫グロブリン(Ig)分子のパパイン消化によって得られる結晶化可能な断片と相関する、Ig分子の部分を指す。本明細書で使用する場合、これらの用語は、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除外する抗体の定常領域に関し、その領域の部分にさらに関する。したがって、Fcは、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインに対してN末端側の可動性ヒンジ、またはそれらの部分を指す。IgAおよびIgMについて、Fcは、J鎖を含み得る。
【0082】
IgGについて、Fcは、免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ3(Cガンマ2およびCガンマ3)ならびにCγ1(Cガンマ1)とCγ2(Cガンマ2)との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226またはP230からそのカルボキシル末端までを含むと定義され、この番号付けは、Edelmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1969;63(1):78~85のEUインデックスに従い、Kabatら、1991に記載される通りである。典型的には、Fcドメインは、ヒトIgG1定常ドメインのアミノ酸残基約236~約447を含む。例示的なヒト野生型IgG1 Fcドメインアミノ酸配列は、配列番号16および配列番号15に示される(任意選択の末端リジン(K)残基を含む)。Fcポリペプチドは、単離状態にあるこの領域、または抗体もしくはその抗原結合性断片、またはFc融合タンパク質と関連したこの領域を指し得る。
【0083】
重鎖定常ドメインは、Fc領域を含み、IgG重鎖のCH1ドメインおよびヒンジならびにCH2およびCH3(ならびに、任意選択により、IgAおよびIgEのCH4)ドメインをさらに含む。
【0084】
「機能的Fc領域」は、ネイティブ配列のFc領域のエフェクター機能を少なくとも1つ有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合;補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節、B細胞活性化などが含まれる。かかるエフェクター機能は、一般に、Fc領域が結合性ドメイン(例えば、抗体可変ドメインまたはその抗原結合性断片)と組み合わされることを必要とし、また、かかる抗体エフェクター機能を評価するための当該分野で公知の様々なアッセイを使用して評価され得る。
【0085】
本明細書で使用する場合、「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載する。一部の実施形態では、FcγRは、ネイティブヒトFcRである。一部の実施形態では、FcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合し、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体が含まれ、これらの受容体の対立遺伝子バリアントおよび選択的スプライシングを受けた形態が含まれるものである。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)が含まれ、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる、類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン内に免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン内に免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含有する(例えば、Daeron、Annu.Rev.Immunol.1997;15:203~234を参照のこと)。FcRは、例えば、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol 1991;9:457~92;Capelら、Immunomethods 1994;4:25~34;およびde Haasら、J.Lab.Clin.Med.1995;126:330~41に総説されている。今後同定されるものを含めた他のFcRも本明細書の用語「FcR」に包含される。
【0086】
用語「Fc受容体」または「FcR」にはまた、母系IgGの胎児への移行(Guyerら、J.Immunol.1976;117:587およびKimら、J.Immunol.1994;24:249)および免疫グロブリンの恒常性の調節を担う胎児性受容体FcRnも含まれる。FcRnへの結合を測定する方法は公知である(例えば、GhetieおよびWard.、Immunol.Today 1997;18(12):592~598;Ghetieら、Nature Biotechnology、1997;15(7):637~640;Hintonら、J.Biol.Chem.2004;279(8):6213~6216;WO2004/92219を参照のこと)。
【0087】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を果たす白血球である。ある特定の実施形態では、この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を果たす。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、細胞傷害性T細胞、および好中球が含まれる。エフェクター細胞は、ネイティブ供給源から、例えば血液から単離され得る。
【0088】
本明細書で使用する場合、「抗体依存性細胞傷害」または「ADCC」は、分泌されたIgがある特定の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合することにより、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原を担持する標的細胞に特異的に結合することが可能になり、引き続いて、標的細胞が細胞毒で死滅する、細胞傷害性の形態を指す。ADCCの媒介のための主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現し、一方、単球はFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。目的の分子のADCC活性を評価するために、in vitro ADCCアッセイ、例えば、米国特許第5,500,362号、同第5,821,337号または同第6,737,056号に記載されているものなどを実施することができる。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、PBMCおよびNK細胞が含まれる。その代わりにまたはそれに加えて、目的の分子のADCC活性を、in vivoにおいて、例えば、Clynesら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)1998;95:652~656に開示されているものなどの動物モデルにおいて評価することができる。変更されたFc領域アミノ酸配列を有し、ADCC活性が増加または減少したさらなる抗体は、例えば、米国特許第7,923,538号、および米国特許第7,994,290号に記載されている。
【0089】
「増強されたADCC活性」を有する抗体は、in vitroまたはin vivoにおけるADCCの媒介に関して親抗体と比較してより有効である抗体を指し、ここで、抗体と親抗体は少なくとも1つの構造的側面が異なり、また、アッセイに使用された場合、かかる抗体と親抗体の量は基本的に同じである。一部の実施形態では、抗体と親抗体は同じアミノ酸配列を有するが、抗体は脱フコシル化されており、一方、親抗体はフコシル化されている。一部の実施形態では、ADCC活性は、本明細書において開示されているin vitro ADCCアッセイを使用して決定されるが、ADCC活性を決定するための他のアッセイまたは方法、例えば、動物モデルにおけるものなどが意図されている。一部の実施形態では、増強されたADCC活性を有する抗体は、FcガンマRIIIAに対する増強された親和性を有する。
【0090】
「変更された」FcR結合親和性またはADCC活性を有する抗体は、親抗体と比較して増強されたかまたは減弱したFcR結合力および/またはADCC活性を有するものであり、ここで、抗体と親抗体は少なくとも1つの構造的側面が異なる。FcRに対する「結合の増大を示す」抗体は、少なくとも1つのFcRに親抗体よりも良好な親和性で結合する。FcRに対する「結合の減少を示す」抗体は、少なくとも1つのFcRに親抗体よりも低い親和性で結合する。FcRに対する結合の減少を示す、かかる抗体は、FcRに対してはっきりと認められる結合をほとんどまたは全く有さないものであり得、例えば、ネイティブ配列IgG Fc領域と比較してFcRへの結合が0~20パーセントである。
【0091】
「FcγRIIIAに対する増強された親和性」は、抗体がFcγRIIIAに対して親抗体よりも高い親和性を有することを指し、ここで、抗体と親抗体は少なくとも1つの構造的側面が異なる。
【0092】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下で標的細胞が溶解することを指す。古典的補体経路の活性化は、補体系の第1の構成要素(Clq)が、それらの同族抗原に結合している抗体(適切なサブクラスのもの)に結合することによって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoroら、J.Immunol.Methods 1996;202:163に記載されているCDCアッセイを実施することができる。Fc領域アミノ酸配列が変更され、Clq結合能が増大または減少した抗体は、例えば、米国特許第6,194,551号、米国特許第7,923,538号、米国特許第7,994,290号およびWO1999/51642に記載されている。
【0093】
重鎖定常ドメインは、Fc領域を含み、IgG重鎖のCH1ドメインおよびヒンジならびにCH2およびCH3(ならびに任意選択により、IgAおよびIgEのCH4)ドメインをさらに含む。
【0094】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体が重鎖ポリペプチド上にC末端リジン(K)アミノ酸残基を含む(例えば、ヒトIgG1重鎖は末端リジンを含む)場合、リジン残基を切り取り、それにより、C末端リジン残基を欠く重鎖を有する抗体を生じさせることができることが、当業者によって理解される。さらに、抗体重鎖は、リジンをコードしない核酸を使用して作出され得る。したがって、一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体は、そうでなければ存在する末端リジンが存在しない重鎖を含む。
【0095】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片は、Fcドメインを含む。Fcドメインは、IgA(例えば、IgA1またはIgA2)、IgD、IgE、IgMまたはIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)に由来し得る。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体はIgG抗体である。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)はIgG1抗体である。
【0096】
「Fc融合」タンパク質は、1つ以上のポリペプチドがFcポリペプチドに作動可能に連結されたタンパク質である。Fc融合は、免疫グロブリンのFc領域を融合パートナーと組み合わせる。
【0097】
「ネイティブ配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列に対して同一なアミノ酸配列を含む。「バリアントFc領域」は、ネイティブ配列Fc領域のものと少なくとも1つのアミノ酸の改変によって異なるが、それでもなおネイティブ配列Fc領域のエフェクター機能を少なくとも1つ保持するアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも1つのアミノ酸の置換、例えば、ネイティブ配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域における約1個から約10個までのアミノ酸の置換、好ましくは、約1個から約5個までのアミノ酸の置換を有する。本明細書のバリアントFc領域は、好ましくはネイティブ配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域に対して少なくとも約80%の配列同一性、最も好ましくは、それらに対して少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは、それらに対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有することになる。
【0098】
「エピトープ」は、当該分野で周知の任意の方法によって、例えば、従来のイムノアッセイによってまたは本開示の実施例9および10に記載されるように決定される、抗体が特異的に結合する抗原のエリアまたは領域、例えば、抗体と相互作用する残基を含むエリアまたは領域を指す。例えば、HarlowおよびLane、Using Antibodies、a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1999の第11章に記載されるように、抗体-抗原複合体の結晶構造の解明、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成ペプチドに基づくアッセイが含まれる、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングするためおよび特徴付けるための当該分野で公知の方法が多く存在する。さらなる例では、エピトープマッピングを使用して、抗E-セレクチン抗体が結合する配列を決定することができる。エピトープマッピングは種々の供給源、例えば、Pepscan Systems(Edelhertweg 15、8219 PH Lelystad、The Netherlands)から市販されている。あるいは、発見プロセスの間に、抗体の生成および特徴付けにより、望ましいエピトープに関する情報を解明することができる。次いで、この情報から、抗体を同じエピトープへの結合について競合的にスクリーニングすることができる。これを達成するための手法は、競合および交差競合試験を行って、E-セレクチンへの結合について互いに競合するまたは交差競合する抗体、例えば、抗原への結合について競合する抗体を見つけることである。
【0099】
さらに、抗E-セレクチン抗体が結合するエピトープは、系統的なスクリーニングにおいて、E-セレクチン(例えば、ヒトE-セレクチン配列)に由来する重複するペプチドを使用し、抗体の結合を決定することによって決定され得る。遺伝子断片発現アッセイに従って、E-セレクチンをコードするオープンリーディングフレームを無作為にまたは特定の遺伝子構築物によって断片化することができ、E-セレクチンの発現された断片の試験される抗体との反応性を決定する。遺伝子断片を、例えばPCRによって作出し、次いで、in vitroにおいて、放射性アミノ酸の存在下で転写し、タンパク質に翻訳することができる。次いで、抗体の、放射標識したE-セレクチン断片への結合を免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定する。
【0100】
また、ある特定のエピトープを、ファージ粒子(ファージライブラリー)または酵母(酵母ディスプレイ)の表面上にディスプレイされた無作為なペプチド配列の大きなライブラリーを使用して同定することもできる。あるいは、重複するペプチド断片の定義されたライブラリーを試験抗体への結合について単純な結合アッセイで試験することができる。さらなる例では、抗原の変異誘発、ドメインスワッピング実験およびアラニンスキャニング変異誘発を実施して、エピトープ結合のために要求される、十分である、および/または必要である残基を同定することができる。
【0101】
その最も詳細なレベルでは、抗原と抗体との間の相互作用のためのエピトープは、抗原-抗体相互作用中に存在する原子接触を定義する空間座標、ならびに結合熱力学へのそれらの相対的寄与についての情報によって、定義され得る。あまり詳細でないレベルでは、エピトープは、抗原と抗体との間の原子接触を定義する空間座標によって特徴付けられ得る。さらにあまり詳細でないレベルでは、エピトープは、具体的な基準によって、例えば、抗体および抗原中の原子(例えば、重原子、即ち、非水素原子)間の距離によって定義される、それが含むアミノ酸残基によって特徴付けられ得る。さらにあまり詳細でないレベルでは、エピトープは、機能を介して、例えば、他の抗体との競合結合によって、特徴付けられ得る。エピトープはまた、別のアミノ酸による置換(例えば、アラニンスキャニングを使用する)が抗体と抗原との間の相互作用の特徴を変更するアミノ酸残基を含むものとして、より一般に定義され得る。
【0102】
使用されるエピトープマッピング法に依存するエピトープの説明および定義が、異なるレベルの詳細さで得られるという事実から、同じ抗原上の、異なる抗体に対するエピトープの比較は、異なるレベルの詳細さで同様に実施することができるということになる。
【0103】
アミノ酸レベルで記載される、例えば、X線結晶構造解析、核磁気共鳴(NMR)分光法、水素/重水素交換質量分析(H/D-MS)によって決定されるエピトープは、それらが同じアミノ酸残基のセットを含有する場合、同一であると言える。エピトープは、少なくとも1つのアミノ酸がそれらのエピトープによって共有される場合、重複すると言われる。エピトープは、アミノ酸残基がそれらのエピトープによって共有されない場合、別々(独自)であると言われる。
【0104】
抗E-セレクチン抗体を特徴付けるために使用することができるさらに別の方法は、同じ抗原に結合することが分かっている他の抗体を用いた競合アッセイ(例えば、本開示の実施例9に記載されるように)を使用して、抗E-セレクチン抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定することである。競合アッセイは当業者には周知である。競合結合によって特徴付けられるエピトープは、対応する抗体の結合が相互に排他的である場合、即ち、1つの抗体の結合が、他の抗体の同時のまたは連続的な結合を排除する場合、重複していると言われる。エピトープは、抗原が、両方の対応する抗体の結合を同時に受け入れることが可能である場合、別々(独自)であると言われる。
【0105】
エピトープは、線状またはコンフォメーションであり得る。線状エピトープでは、タンパク質と、相互作用する分子(例えば、抗体など)との間の相互作用点は全て、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線状に存在する。「非線状エピトープ」または「コンフォメーションエピトープ」は、エピトープに特異的な抗体が結合する抗原性タンパク質内の連続していないポリペプチド(またはアミノ酸)を含む。
【0106】
抗体の結合親和性は、特定の抗原-抗体相互作用の解離速度を指すKD値として表され得る。KDは、「オフレート(koff)」または「kd」とも呼ばれる解離の速度の、「オンレート(kon)」または「ka」とも呼ばれる会合速度に対する比である。したがって、KDは、koff/kon(またはkd/ka)と等しく、モル濃度(M)として表され、KDが小さいほど、結合の親和性はより強い。抗体についてのKD値は、当該分野で十分に確立された方法を使用して決定され得る。KDを測定するための1つの例示的な方法は、BIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを典型的には使用する、表面プラズモン共鳴(SPR)である。BIAcore動態分析は、それらの表面上に固定化された分子(例えば、エピトープ結合ドメインを含む分子)を有するチップからの、抗原の結合および解離を分析することを含む。抗体のKDを決定するための別の方法は、Bio-Layer Interferometryを使用すること、典型的には、OCTETテクノロジー(Octet QKe system、ForteBio)を使用することによる。あるいは、またはさらに、Sapidyne Instruments(Boise、ID)から入手可能なKinExA(Kinetic Exclusion Assay)アッセイもまた使用され得る。
【0107】
エピトープに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書で相互交換可能に使用される)抗体は、当該分野で十分に理解された用語であり、かかる特異的または優先的結合を決定するための方法もまた、当該分野で周知である。分子(例えば、タンパク質、核酸、抗体など)は、それが代替的な細胞または物質と反応または会合するよりも、特定の細胞または物質と、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、および/またはより高い親和性で反応または会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言われる。抗体が他の物質に結合する場合よりも、より高い親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間で結合する場合、抗体は、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、E-セレクチンエピトープに特異的にまたは優先的に結合する抗体は、それがP-セレクチンおよび/またはL-セレクチンエピトープを含む他のE-セレクチンエピトープまたは非E-セレクチンエピトープに結合する場合よりも、より高い親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間で特定のエピトープに結合する抗体である。したがって、指定されたアッセイ条件下で、特定された結合部分(例えば、抗体もしくはその抗原結合性断片または受容体もしくはそのリガンド結合性断片)は、特定の標的分子に優先的に結合し、試験サンプル中に存在する他の構成要素には、顕著な量では結合しない。一般に、必ずではないが、結合に対する言及は、優先的結合を意味する。
【0108】
種々のアッセイフォーマットが、目的の分子に特異的に結合する抗体またはペプチドを選択するために使用され得る。抗原と特異的に反応する抗体、または、同族リガンドもしくは結合パートナーに特異的に結合する受容体もしくはそのリガンド結合性断片を同定するために使用され得る多くのアッセイの中では、例えば、固相ELISAイムノアッセイ(競合結合ELIAが含まれる)、AlphaLISA(登録商標)イムノアッセイ(Perkin-Elmer)、免疫沈降、BIAcore(商標)(GE Healthcare、Piscataway、NJ)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、Octet(商標)(ForteBio,Inc.、Menlo Park、CA)およびウエスタンブロット分析である。典型的には、特異的または選択的反応は、背景シグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より典型的には、背景の10倍を超える、背景の50を超える、背景の1000倍を超える、またはそれを超える。抗体は、平衡解離定数(KD)が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦100pMである場合、抗原に「特異的に結合する」と言われる。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体は、<70nM(例えば、68.4+/-3.18nM)のKDでE-セレクチン(例えば、ヒトE-セレクチン)に結合する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体は、<68nM(例えば、64.9+/-1.13nM)のKDでE-セレクチン(例えば、カニクイザルE-セレクチン)に結合する。
【0109】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体は、約92.85nM、約70.3nM、約65.2nM、約61.8nM、約60.5nM、約68.0nM、約21.6nM、約324nM、約54.4nM、約628.5nMおよび2940nMからなる群から選択されるKDでヒトE-セレクチンに結合する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体は、約138.5nM、約78.3nM、約76.5nM、約81.5nM、約67.8nM、約45.8nM、約243.5nM、約45.4nM、約492nMおよび3145nMの群から選択されるKDでカニクイザルE-セレクチンに結合する。
【0110】
用語「競合する」は、抗体に関して本明細書で使用する場合、抗原への第1の抗体またはその抗原結合性断片の結合が、第2の抗体またはその抗原結合性断片による同じ抗原の引き続く結合を低減させることを意味する。代替的に、抗原への第2の抗体の結合もまた第1の抗体の存在下で検出可能に減少する場合もあり得るが、そうである必要はない。即ち、第1の抗体は抗原への第2の抗体の結合を阻害し得、その第2の抗体によるそのそれぞれのエピトープへの第1の抗体の結合の阻害は伴わない。しかし、各抗体が他の抗体とその同族エピトープまたはリガンドとの結合を、程度が同じであるかより大きいかより小さいかにかかわらず検出可能に阻害する場合、抗体は、それらのそれぞれのエピトープの結合について互いに「交差競合する」と言える。競合および交差競合抗体のどちらも本発明に包含される。かかる競合または交差競合が起こる機構(例えば、立体障害、コンフォメーション変化、または共通のエピトープもしくはその断片への結合)にかかわらず、本明細書で提供される教示に基づいて、かかる競合および/または交差競合抗体が本明細書に開示される方法に包含され、有用であり得ることが、当業者によって理解される。
【0111】
標準的な競合アッセイが、2つの抗体が互いに競合するかどうかを決定するために使用され得る。抗体競合についての1つの適切なアッセイには、表面プラズモン共鳴(SPR)テクノロジーを使用して、典型的には、バイオセンサーシステム(例えば、BIACOREシステム)を使用して相互作用の程度を測定することができる、Biacoreテクノロジーの使用が関与する。例えば、SPRは、第2の抗体の結合を阻害する1つの抗体の能力を決定するために、in vitro競合的結合阻害アッセイにおいて使用され得る。抗体競合を測定するための別のアッセイは、ELISAベースのアプローチを使用する。
【0112】
さらに、それらの競合に基づいて抗体を「ビニング」するためのハイスループットプロセスが、国際特許出願公開WO2003/48731に記載されている。競合は、1つの抗体(または断片)がE-セレクチンへの別の抗体(または断片)の結合を低減させる場合に存在する。例えば、逐次的な結合競合アッセイが使用され得、異なる抗体は逐次的に添加される。第1の抗体は、飽和に近い結合に到達するまで添加され得る。次いで、第2の抗体が添加される。E-セレクチンへの第2の抗体の結合が検出されない場合、または第1の抗体の非存在下での並行アッセイ(その値が100%と設定され得る)と比較して、顕著に低減される(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約90%の低減)場合、これら2つの抗体は、互いに競合するとみなされる。
【0113】
用語「パラトープ」の定義は、上記の「エピトープ」の定義から視点を逆転させることによって引き出される。したがって、用語「パラトープ」は、抗原に特異的に結合する、抗体のエリアまたは領域、即ち、抗原(E-セレクチンまたはその断片)と接触する抗体のアミノ酸残基を指し、「接触」は本明細書の他の場所で定義されている通りである。所与の抗体/抗原対のパラトープは、常套的な方法によって同定され得る。例えば、抗体と標的分子を組み合わせることができ、抗体/抗原複合体を結晶化することができる。複合体の結晶構造を決定し、抗体とその標的との間の相互作用の特定の部位を同定するために使用することができる。
【0114】
一部の実施形態では、抗体は、「バリアント抗体」である。バリアント抗体は、本明細書、特に表2に開示される特定の配列および断片からの、1、2、3、4、5、最大で10、最大で20、最大で30またはそれよりも多くのアミノ酸置換および/または欠失および/または挿入を含み得る。「欠失」バリアントは、個々のアミノ酸の欠失、アミノ酸の小さい群、例えば、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の欠失、またはより大きいアミノ酸領域の欠失、例えば、特定のアミノ酸ドメインもしくは他の特色の欠失を含み得る。「挿入」バリアントは、個々のアミノ酸の挿入、アミノ酸の小さい群、例えば、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、またはより大きいアミノ酸領域の挿入、例えば、特定のアミノ酸ドメインもしくは他の特色の挿入を含み得る。「置換」バリアントには、好ましくは、1つ以上のアミノ酸の、同じ数のアミノ酸による置き換え、および保存的アミノ酸置換を行うことが関与する。例えば、アミノ酸は、類似の特性を有する代替的アミノ酸、例えば、別の塩基性アミノ酸、別の酸性アミノ酸、別の中性アミノ酸、別の荷電アミノ酸、別の親水性アミノ酸、別の疎水性アミノ酸、別の極性アミノ酸、別の芳香族アミノ酸または別の脂肪族アミノ酸で置換され得る。
【0115】
置換バリアントは、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されている。置換変異誘発のために最も目的とされる部位には、超可変領域が含まれるが、フレームワーク変更もまた企図される。保存的置換は、表1中に示される。かかる置換が生物学的活性における変化を生じる場合、以下に示される「例示的な置換」と称される、またはアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載される、より実質的な変化が導入され得、産物がスクリーニングされ得る。
【0116】
【0117】
抗体の生物学的特性における実質的な改変は、(a)例えば、ベータ-シートもしくはらせんコンフォメーションとしての、置換のエリアにおけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩、を維持することに対するそれらの効果が顕著に異なる置換を選択することによって達成される。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて、以下の群へと分けられる:
i.非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
ii.電荷なし極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
iii.酸性(負に荷電):Asp、Glu;
iv.塩基性(正に荷電):Lys、Arg;
v.鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;および
vi.芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。
【0118】
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを、別のクラスと交換することによって行われる。
【0119】
例えば、行われ得る1つの型の置換は、抗体中の化学的に反応性であり得る1つ以上のシステインを、別の残基、例えば、限定なしに、アラニンまたはセリンに変化させることである。例えば、非カノニカルなシステインの置換が存在し得る。置換は、抗体の可変ドメインのCDRもしくはフレームワーク領域中、または定常領域中で行われ得る。一部の実施形態では、システインは、カノニカルである。抗体の適切なコンフォメーションを維持することに関与しない任意のシステイン残基もまた、分子の酸化安定性を改善するためおよび異常な架橋結合を防止するために、一般にはセリンで置換され得る。逆に、システイン結合は、特に、抗体がFv断片などの抗体断片である場合、その安定性を改善するために抗体に付加され得る。
【0120】
「生殖系列化(germlining)」として公知のプロセスでは、VHおよびVL配列中の特定のアミノ酸が、生殖系列VHおよびVL配列中に天然に見出されるアミノ酸と一致するように変異され得る。特に、VHおよびVL配列中のフレームワーク領域のアミノ酸配列は、抗体が投与された場合の免疫原性のリスクを低減させるために、生殖系列配列と一致するように変異され得る。本明細書で使用する場合、用語「生殖系列」は、それらが生殖細胞を介して親から子孫に受け継がれるときの、抗体遺伝子および遺伝子セグメントのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を指す。この生殖系列配列は、B細胞成熟化の過程の間の組換えおよび超変異事象によって変更された、成熟B細胞中の抗体をコードするヌクレオチド配列から識別される。特定の生殖系列を「利用する」抗体は、その生殖系列ヌクレオチド配列またはそれが特定するアミノ酸配列と最も密接にアラインするヌクレオチドまたはアミノ酸配列を有する。かかる抗体は、生殖系列配列と比較して、頻繁に変異される。ヒトVHおよびVL遺伝子についての生殖系列DNA配列は、当該分野で公知である(例えば、「Vbase」ヒト生殖系列配列データベースを参照のこと;Kabat,E.A.ら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91-3242;Tomlinsonら、J.Mol.Biol.1992;227:776~798;およびCoxら、Eur.J.Immunol.1994;24:827~836もまた参照のこと)。
【0121】
E-セレクチンに対する抗体
本開示は、E-セレクチンに結合する抗体およびその抗原結合性断片を提供する。E-セレクチンは、CD62抗原様ファミリーメンバーE(CD62E)、内皮-白血球接着分子1(ELAM-1)または白血球-内皮細胞接着分子2(LECAM2)としても公知である。
【0122】
本明細書で使用する場合、用語「E-セレクチン」には、ヒトE-セレクチンのバリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログが含まれる。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト以外の種からのE-セレクチン、例えば、カニクイザルのE-セレクチン、ならびに異なる形態のE-セレクチンと交差反応する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトE-セレクチンに対して完全に特異的であり得、種交差反応性を示さなくてもよく(例えば、マウスE-セレクチンには結合しない)、他の型の交差反応性を示さなくてもよい(例えば、P-セレクチンおよび/もしくはL-セレクチンには結合しない)。本明細書で使用する場合、用語E-セレクチンは、文脈上他のように定められない限り、天然に存在するヒトE-セレクチンを指す。したがって、「E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片」、「抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片」または他の類似の指定は、E-セレクチン、そのアイソフォーム、断片または誘導体と特異的におよび/または優先的に会合、結合または反応する任意の抗体またはその抗原結合性断片(本明細書で定義される)を意味する。UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号P16581(アミノ酸22~610)によって示される全長成熟形態のヒトE-セレクチンは、本明細書で配列番号132として提供される。UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q00690(アミノ酸22~612)によって示される全長成熟形態のマウスE-セレクチンは、本明細書で配列番号134として提供される。UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号G8F370(アミノ酸22~610)によって示される全長成熟形態のカニクイザルE-セレクチンは、本明細書で配列番号201として提供される。
【0123】
E-セレクチンは内皮細胞上に発現され、L-セレクチンは白血球微絨毛上に構成的に発現され、P-セレクチンは血小板のα-顆粒および内皮細胞のバイベルパラーデ小体に貯蔵される(Tedderら、FASEB J.1995;9:866~873;Kanasら、Blood 1996;88:3259~3287)。これらのセレクチンは全て、糖タンパク質または糖脂質上にシアリルルイス(sLex)決定因子を有する炭水化物構造に結合する(Chaseら、Ann.Biomed.Eng.2012;40(4):849~885)。P-およびL-セレクチンは最適な結合のためにリガンド上の硫酸化もまた要求するが、一方、リガンドに結合するE-セレクチン
は、より許容的であり、シアリルルイス決定因子のみを要求する。P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)は白血球上に発現され、全てのセレクチンに結合する。E-セレクチンは、L-セレクチンリガンド、CD44およびE-セレクチンリガンド-1(ESL-1)を含めたリガンドとも相互作用する(Chaseら、Ann.Biomed.Eng.2012;40(4):849~885;Hidalgoら、Immunity 2007;26(4):477~489)。
【0124】
内皮細胞によるE-セレクチンの発現には、低酸素または炎症性の刺激に応答した新しいタンパク質合成が要求される。E-セレクチンは、内皮への好中球の接着、および、活性化されたαMβ2インテグリンの極性化された発現を生じさせる内皮における活性化シグナルの波の生成に、極めて重要である(Hidalgoら、Nat.Med.2009;15:384~391;Pruensterら、Nat.Commun.2015;6:6915;Manwani、& Frenette、Blood 2014;122:3892~3898)。E-セレクチン欠損マウスは、野生型マウスから識別可能な明白な表現型を示さない(Labowら、Immunity 1994;1:709~720)。
【0125】
内皮細胞E-セレクチンに加えて、可溶性E-セレクチン(sE-セレクチン)が循環中に見出される。循環中へのsE-セレクチン放出の機構は、酵素による切断、または、損傷を受けたもしくは活性化された内皮細胞の排出の結果であり得るが、正確な機構は分かっていない(Roldanら、Thromb.Haemost.2003;90:1007~1020)。sE-セレクチンの濃度は内皮細胞の表面上でのその発現と相関すると思われ、したがって、血漿中E-セレクチン濃度は内皮細胞の損傷または活性化のマーカーになり得る(Leeuwenbergら、Immunology 1992;77(4):543~549;Roldanら、Thromb.Haemost.2003;90:1007~1020)。循環可溶性E-セレクチンレベルのレベルの増加が、高血圧症、糖尿病および高脂血症を含む多数の病態において見出されている(Roldanら、Thromb.Haemost.2003;90:1007~1020)。Katoらは、160名のSCD患者および41名の対照対象に対する試験を行い、SCD患者の血漿中では対照と比較して可溶性E-セレクチンが有意に上昇していることを見出した(中央値74.6.41.5ng/mL、p<0.001)(British J.Haem.2005;130:943~953)。軽度および中等度のレベルの肺高血圧症がsE-セレクチンの直線的濃度と有意に関連し、SCD患者の早期死亡率の相対的なリスクが増加した(RR4.2;95%CI2.0、8.9)(Katoら)。
【0126】
好ましくは、本開示の抗体およびその抗原結合性断片は、E-セレクチンに結合するが、他のセレクチン(例えば、P-セレクチン、L-セレクチン)には結合しない、またはより低い親和性で結合する。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合性断片は、E-セレクチンに特異的に結合し、より好ましくは、ヒトおよび/またはカニクイザルE-セレクチンに特異的に結合する。本開示は、かかる抗体およびその抗原結合性断片を含む組成物、ならびに、治療的および医薬としての使用を含む、かかる抗体の使用もまた提供する。
【0127】
抗E-セレクチン抗体、好ましくは、高親和性抗体(例えば、特異的な抗体)は、E-セレクチンが内皮細胞の表面上に発現されるかまたは可溶性の形態で見出され、E-セレクチンリガンドを発現する標的細胞(例えば、好中球、単球、好酸球、メモリーエフェクターT様リンパ球、ナチュラルキラー細胞、骨髄細胞)と相互作用すると考えられる、脈管系および複数の組織区画において有効であり得る。本開示の抗体およびその抗原結合性断片は、E-セレクチンの、例えば、シアリルルイス(sLex)決定因子を有する糖タンパク質または糖脂質(例えば、α2,3シアリル化およびα1,3またはα1,4フコシル化四糖シアリルルイスx)、シアリルルイスA決定因子、E-セレクチンリガンド-1(ESL-1)、L-セレクチン、CD44、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)、リソソーム膜タンパク質1(LAMP1)、リソソーム膜タンパク質2(LAMP2)、細胞死受容体-3(DR3)およびαMβ2インテグリン(CD11b/CD18;Mac-1)が含まれるリガンドへの結合を阻害する潜在力を有する(Chaseら、Annals Biomed.Engin.2012;40(4):849~859)。いずれの特定の理論に束縛されることも望まないが、E-セレクチン細胞性リガンド相互作用の遮断により、内皮への白血球(例えば、好中球)接着が阻害され、それにより、細胞性凝集体により血流が遮断され、VOCが導かれることが予防される。
【0128】
中和または「遮断」抗体は、E-セレクチンへのその結合が、(i)E-セレクチンもしくはE-セレクチン断片とE-セレクチンリガンド、例えばsLex決定因子との間の相互作用を妨害、制限もしくは阻害する;および/または(ii)E-セレクチン結合の少なくとも1つの生物学的機能の阻害を生じる、抗体を指す。本開示の抗体による中和を決定するためのアッセイは、本明細書の他の場所に記載されおり、当該分野で周知である。
【0129】
E-セレクチンの「生物学的機能」または「生物学的活性」は、白血球テザリング、緩徐なローリングおよび内皮細胞への白血球の安定な接着の活性化、炎症の部位における選択的かつ効率的な血管外遊出シグナル伝達を含む意味である。E-セレクチンの「生物学的機能」または「生物学的活性」には、とりわけ、当該分野で現在公知のまたは後に同定される、PMNの減速および急性炎症の部位への輸送を支持するCD18インテグリンの親和性および結合力、細胞質カルシウム、p38 MAPキナーゼおよびSykキナーゼを活性化するチロシンリン酸化の増加を媒介することが含まれる。E-セレクチンの生物学的機能または生物学的活性は、E-セレクチンとそのリガンドとの間の相互作用によって媒介され得るが、その必要はない。
【0130】
本開示は、E-セレクチンの生物学的活性をモジュレートし得る抗体またはその抗原結合性断片を含む。即ち、本発明は、その抗体が、(a)内皮細胞への白血球テザリングを減少させる;(b)内皮細胞への安定な接着の活性化を減少させる;(c)白血球を停止させる緩徐なローリングを低減させる;(d)白血球の効率的な経内皮遊走を低減させる;(e)CD18インテグリンの親和性および結合力を減少させる;(f)急性炎症の部位への白血球の輸送を低減させる;(g)細胞質カルシウムを減少させる;(h)p38 MAPキナーゼおよびSykキナーゼを活性化するチロシンリン酸化を減少させる;(i)血液から血管内皮への血小板および白血球の動員を低減させる;ならびに/または(j)炎症促進性環境を創出しないような、E-セレクチンに特異的に結合し、少なくとも1つの検出可能なE-セレクチン活性をモジュレートする単離された抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0131】
E-セレクチンの生物学的活性は、E-セレクチン(例えば、可溶性E-セレクチンまたはE-セレクチンを発現するCHO細胞)およびリガンド(例えば、可溶性シアリルルイスリガンドまたは細胞表面に発現されるリガンド(例えば、HL-60細胞上の))を使用して、in vitro静的中和結合アッセイにおいて評価され得る。E-セレクチンの結合はまた、可溶性または細胞表面に発現されるタンパク質を使用し、当該分野で公知であり、本開示の実施例の節に示される生理的流動アッセイで評価され得る。E-セレクチン結合を防止する中和抗体の能力は、漸増濃度の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の非存在下または存在下で、E-セレクチン(例えば、ヒト、カニクイザル)を発現する細胞を可溶性E-セレクチンリガンド(シアリルルイス抗原)または細胞表面に発現される(例えば、HL-60細胞、HUVEC、CLMEC上)E-セレクチンリガンドと共にインキュベートすることによっても評価され得る。
【0132】
一部の実施形態では、本開示の抗E-セレクチン抗体は、配列番号11として示される重鎖可変領域のアミノ酸配列および配列番号5として示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合性断片と、ヒトE-セレクチンへの結合について競合する、および/またはそれと同じエピトープに結合する、抗体を包含する。
【0133】
一部の実施形態では、本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも1つのE-セレクチンリガンド(例えば、シアリルルイス(sLex)決定因子を有する糖タンパク質または糖脂質(例えば、α2,3シアリル化およびα1,3またはα1,4フコシル化四糖シアリルルイスx)、シアリルルイスA決定因子、ESL-1、L-セレクチン、CD44、PSGL-1、LAMP1、LAMP2、DR3およびαMβ2インテグリン(CD11b/CD18;Mac-1))とのE-セレクチンの結合を阻害するまたは低減させる抗体またはその抗原結合性断片を包含する。
【0134】
一部の実施形態では、本開示は、リガンドとのE-セレクチンの結合を阻害するにあたり、配列番号11として示される重鎖可変領域のアミノ酸配列および配列番号5として示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合性断片と競合する抗体またはその抗原結合性断片を包含する。
【0135】
一部の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1重鎖定常領域、例えば、配列番号7または配列番号13(C末端リジンを有さない)として示される抗E-セレクチン重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、カッパ軽鎖定常領域、例えば、配列番号1として示される抗E-セレクチン軽鎖を含む。
【0136】
本開示の抗E-セレクチン抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、単鎖(ScFv)、その変異体、抗体断片(例えば、ドメイン抗体)を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、ならびに、抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、および共有結合により改変された抗体を含む、任意の他の改変された立体配置の、要求される特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子を包含し得る。抗体は、マウス、ラット、ヒト、または任意の他の起源もの(キメラまたはヒト化抗体を含む)であり得る。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体はモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体はヒトまたはヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体はキメラ抗体である。
【0137】
表2は、本明細書に記載されるキメラおよびヒト化抗E-セレクチン抗体のアミノ酸およびヌクレオチド配列を提供する。一般に、具体的に示されない限り、本開示の抗E-セレクチン抗体は、1つ以上のCDRの任意の組み合わせを含み得る。一部の実施形態では、本開示の抗E-セレクチン抗体は、表2に示される1つ以上のVHおよび/またはVL配列と表3の配列番号によって定義される特定の抗体の任意の組み合わせを含み得る。抗E-セレクチンVHおよびVLのCDRを、拡張型H1を伴うKabat定義を使用して定義した。HCDR-1については、最後の残基は、H36位の前の任意の挿入物(即ち、H35a、H35b、H35cなど)を含む。CDRを以下の通り定義した:HCDR-1(H26~H35c)、HCDR-2(H50~H65)、HCDR-3(H95~H102)、LCDR-1(L24~L34)、LCDR-2(L50~L56)、およびLCDR-3(L89~L87)。
【0138】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、表2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含むHC、LC、VLドメイン、および/またはVHドメインを含む。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、表2の核酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一な核酸配列によってコードされるHC、LC、VLドメイン、および/またはVHドメインを含む。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のアミノ酸を含むまたはそれからなるVHドメインを含み得る。
【0171】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11、25、30、35、39、42、45、55、60、66、75、80、90、95、104、114、118および128のうちいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なアミノ酸配列を含み得るVHドメインを含み得る。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11、25、30、35、39、42、45、55、60、66、75、80、90、95、104、114、118および128のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含み得るまたはそれからなり得るVHドメインを含み得る。
【0172】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVLドメインを含み得る。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むまたはそれからなるVLドメインを含み得る。
【0173】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5、21、27、32、50、57、71、73、85、87、100、102、109、116および122のうちいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なアミノ酸配列を含み得るVLドメインを含み得る。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5、21、27、32、50、57、71、73、85、87、100、102、109、116および122のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含み得るまたはそれからなり得るVLドメインを含み得る。
【0174】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号39、42または45のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号21のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号25のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号27のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号30のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号32のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号35のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号50のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号55のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号57のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号60のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号71のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号66のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号73のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号75のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号85のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号80のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号87のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号90のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号100のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号95のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号102のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号104のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号109のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号114のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号116のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号118のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号122のアミノ酸配列を含むVLドメインおよび配列番号128のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。
【0175】
抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5、21、27、32、50、57、71、73、85、87、100、102、109、116および122のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むVLドメインならびに配列番号11、25、30、35、39、42、45、55、60、66、75、80、90、95、104、114、118および128のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメインを含み得る。
【0176】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5、21、27、32、50、57、71、73、85、87、100、102、109、116および122の少なくとも1つのアミノ酸配列に示されるLCDR-1、LCDR-2、およびLCDR-3を含む。
【0177】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11、25、30、35、39、42、45、55、60、66、75、80、90、95、104、114、118および128の少なくとも1つのアミノ酸配列に示されるHCDR-1、HCDR-2、およびHCDR-3をさらに含む。
【0178】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5のアミノ酸配列に示されるLCDR-1、LCDR-2、LCDR-3、ならびに配列番号11のアミノ酸配列に示されるHCDR-1、HCDR-2、およびHCDR-3を含む。
【0179】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2のアミノ酸を含むLCDR-1、配列番号3のアミノ酸配列を含むLCDR-2および配列番号4のアミノ酸を含むLCDR-3を含む。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8のアミノ酸を含むHCDR-1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR-2および配列番号10のアミノ酸を含むHCDR-3を含む。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR-1、配列番号38、41または44のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むHCDR-2および配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR-3を含む。
【0180】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2、18、47、68、82、97または106のうちいずれか1つのアミノ酸を含むLCDR-1、配列番号3、19、48、69、83、98、107または120のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むLCDR-2、および配列番号4、20、49、70、84、99、108または121のアミノ酸を含むLCDR-3を含む。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8、23、52、63、77、92、111または125のアミノ酸を含むHCDR-1、配列番号9、24、29、38、41、44、53、64、78、93、112または126のアミノ酸配列を含むHCDR-2、および配列番号10、54、65、79、94、113または127のアミノ酸を含むHCDR-3を含む。
【0181】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、アクセッション番号PTA-126530を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物によってコードされるアミノ酸配列に示されるLCDR-1、LCDR-2、およびLCDR-3を含む。
【0182】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、アクセッション番号PTA-126529を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物によってコードされるアミノ酸配列に示されるHCDR-1、HCDR-2、およびHCDR-3を含む。
【0183】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、アクセッション番号PTA-126530を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物によってコードされるLCDR-1、LCDR-2、およびLCDR-3アミノ酸配列、ならびにアクセッション番号PTA-126529を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物によってコードされるHCDR-1、HCDR-2、およびHCDR-3アミノ酸配列を含む。
【0184】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、アクセッション番号PTA-126530を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0185】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、アクセッション番号PTA-126529を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0186】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、アクセッション番号PTA-126530を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0187】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、アクセッション番号PTA-126529を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0188】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むLCを含み得る。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0189】
LCは、配列番号1、17、26、31、46、56、67、72、81、86、96、101、105、115、または119のうちいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、抗体LCは、配列番号1、17、26、31、46、56、67、72、81、86、96、101、105、115、または119のうちいずれか1つを含むまたはそれからなるアミノ酸配列を含み得る。
【0190】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7または13のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むHCを含み得る。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7または13のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むまたはそれからなるHCを含み得る。
【0191】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7、13、22、28、34、37、40、43、51、59、62、74、76、89、91、103、110、117または124のうちいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なアミノ酸配列を含む重鎖を含み得る。一部の実施形態では、抗体HCは、配列番号7、13、22、28、34、37、40、43、51、59、62、74、76、89、91、103、110、117または124のうちいずれか1つを含むまたはそれからなるアミノ酸配列を含み得る。
【0192】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるLCおよび配列番号7または配列番号13のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるHCを含む。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片はエフェクター機能を欠く(即ち、エフェクターヌルである)。
【0193】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11、25、30、35、39、42、45、55、60、66、75、80、90、95、104、114、118および128のうちいずれか1つのアミノ酸配列(例えば、配列番号11)を含み、IgG1定常ドメイン(例えば、配列番号15または配列番号16のアミノ酸配列を含むIgG1定常ドメイン)をさらに含むVHドメインを含む重鎖を含み得る。
【0194】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、配列番号15または配列番号16のアミノ酸配列を含むIgG1定常ドメインをさらに含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のアミノ酸配列からなるVHドメインを含み、配列番号15または配列番号16のアミノ酸配列からなるIgG1定常ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体はエフェクター機能を欠く。
【0195】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、(例えば、ヒト)カッパ軽鎖定常領域(例えば、配列番号14のアミノ酸配列によってコードされる)またはラムダ軽鎖定常領域から選択される軽鎖定常領域を有する。
【0196】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5、21、27、32、50、57、71、73、85、87、100、102、109、116および122のうちいずれか1つのアミノ酸配列(例えば、配列番号5)を含むVLドメインを含み、配列番号14のアミノ酸配列を含むカッパ定常ドメインをさらに含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5のアミノ酸配列からなるVLドメインを含み、配列番号14のアミノ酸配列からなるカッパ定常ドメインをさらに含む軽鎖を含む。
【0197】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の定常領域を変更、例えば、変異させて、抗体の特性を改変すること(例えば、Fc受容体結合、抗体のグリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、および/または補体機能のうち1つ以上を増加または減少させること)ができる。
【0198】
一部の態様では、抗体、または抗原結合性断片、バリアントは、全長重鎖(例えば、配列番号7または13のアミノ酸配列のHC)および/または全長軽鎖に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15の保存的もしくは非保存的置換、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15の付加および/または欠失を含む。さらなる態様では、バリアント抗体は、全長重鎖に対して、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を共有し、ここで、前記抗体または抗原結合性断片は、E-セレクチンに特異的に結合する。さらなる態様では、バリアント抗体は、全長軽鎖(例えば、配列番号1のアミノ酸配列のLC)に対して、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を共有し、ここで、前記抗体または抗原結合性断片は、E-セレクチンに特異的に結合する。
【0199】
生殖系列置換
多種多様なアクセプターヒト生殖系列配列が入手可能であり、ヒトにおける使用のために非ヒト種抗体を「ヒト化」するプロセスは当該分野で周知であり、本明細書の他の場所でも議論されている。したがって、マウス、ラットなどからの上記のCDR配列をヒト可変ドメインアミノ酸配列の状況に置くことができることが、当業者によって理解される。そうすることで、元の親(即ち、ドナー)抗体の抗体結合および他の望ましい特徴を保存するためにアクセプターヒト生殖系列配列の変化を一般に行うことができる。CDRおよびフレームワーク領域(FW)の両方を以下の通り操作することができる。
【0200】
ある特定の実施形態では、置換は、(ドナー)CDR残基が、例えば、どちらも全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0073395号およびTownsendら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 2015;112(50):15354~15359に記載されるように、ヒトアミノ酸含量を増加させ、抗体の免疫原性を潜在的に低減させるように、対応するヒト生殖系列(アクセプター)残基で置き換えられる、ヒト生殖系列置換である。
【0201】
抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VHフレームワーク配列を含むVHフレームワークを含み得る。一部の態様では、以下の生殖系列からのVHフレームワークが使用され得る:IGHV1-2*02、IGHV1-3*01、IGHV1-46*01、IGHV1-69*01、IGHV1-69*02、IGHV1-8*01、IGHV3-7*01、IGHV3-13*01、IGHV3-23*01、IGHV3-23*04、IGHV3-30*01、IGHV3-30*18、IGHV5-10-1*01、IGHV5-10-1*04またはIGHV5-51*01(生殖系列の名称は、IMGT生殖系列定義に基づく)。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片には、生殖系列IGHV3-7*01からのVHフレームワーク(配列番号202)が使用される。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片には、CDR領域については生殖系列IGHV3-7*01からのVHフレームワーク(配列番号202)およびフレームワーク領域についてはIGHJ4*01からのVHフレームワーク(配列番号203)が使用される。
【0202】
好ましいヒト生殖系列軽鎖フレームワークは、VκまたはVλ生殖系列に由来するフレームワークである。一部の態様では、以下の生殖系列からのVLフレームワークが使用され得る:IGKV1-12*01、IGKV1-13*02、IGKV1-33*01、IGKV1-39*01、IGKV1-5*01、IGKV3-11*01、IGKV3-15*01、IGKV3-20*01、IGKV3D-20*02およびIGKV4-1*01(生殖系列の名称は、IMGT生殖系列定義に基づく)。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片には、生殖系列IGHV1-39*01からのVLフレームワーク(配列番号204)が使用される。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片には、CDR領域については生殖系列IGHV1-39*01からのVLフレームワーク(配列番号204)およびフレームワーク領域についてはIGKJ1*01からのVLフレームワーク(配列番号205)が使用される。
【0203】
あるいは、またはさらに、フレームワーク配列は、ヒト生殖系列コンセンサスフレームワーク配列、例えば、ヒトVλ1コンセンサス配列、Vκ1コンセンサス配列、Vκ2コンセンサス配列、Vκ3コンセンサス配列、VH3生殖系列コンセンサス配列、VH1生殖系列コンセンサス配列、VH5生殖系列コンセンサス配列、またはVH4生殖系列コンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖系列フレームワークの配列は、種々の公的データベース、例えば、V-base、IMGT、NCBIまたはAbysisから入手可能である。
【0204】
抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VLフレームワーク配列を含むVLフレームワークを含み得る。VLフレームワークは、それが由来した生殖系列との機能的および構造的類似性をなおも保持しつつ、1つ以上のアミノ酸置換、付加または欠失を含み得る。一部の態様では、VLフレームワークは、ヒト生殖系列VLフレームワーク配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VLフレームワーク配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のアミノ酸置換、付加または欠失を含むVLフレームワークを含む。一部の実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加または欠失は、フレームワーク領域中のみにある。一部の実施形態では、パーセント同一性は、本明細書でCDRと定義される部分を除いたVLドメインとの類似性に基づく。
【0205】
ヒト生殖系列VLフレームワークは、例えば、IGKV1-39*01のフレームワークであり得る。ヒト生殖系列VLフレームワークは、例えば、IGKV1-33*01のフレームワークであり得る。ヒト生殖系列VLフレームワークは、Vλ、Vλ1、Vλ3、Vκ、Vκ1、Vκ2またはVκ3を含むヒトコンセンサス配列のうちいずれか1つのフレームワークであり得る。
【0206】
一部の実施形態では、VLフレームワークは、IGK-39*01_IGKJ1*01である。他の類似のフレームワーク領域もまた、配列番号2~4、18~20、47~49、68~70、82~84、97~99、106~108、120および121のCDR;ならびに、それぞれ、IGKV1-12*01、IGKV1-13*02、IGKV1-33*01、IGKV1-39*01、IGKV1-5*01、IGKV3-11*01、IGKV3-15*01、IGKV3-20*01、IGKV3D-20*02、およびIGKV4~1*01のうちいずれか1つのフレームワーク領域に対して99%、97%、97%、96%、80%、76%、74%および66%の同一性を含み得る、以下のVLアミノ酸配列によって特定されるCDR:配列番号5、21、27、32、50、57、71、73、85、87、100、102、109、116、122を含む本発明の有利な抗体を送達することが予測される。一部の実施形態では、パーセント同一性は、本明細書においてCDRとして定義されている部分を除いたVLとの類似性に基づく。
【0207】
抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VHフレームワーク配列を含むVHフレームワークを含み得る。VHフレームワークは、それが由来した生殖系列との機能的および構造的類似性をなおも保持しつつ、1つ以上のアミノ酸置換、付加または欠失を含み得る。一部の態様では、VHフレームワークは、ヒト生殖系列VHフレ0ムワーク配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または10%同一である。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VHフレームワーク配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のアミノ酸置換、付加または欠失を含むVHフレームワークを含む。一部の実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加または欠失は、フレームワーク領域中のみにある。一部の実施形態では、パーセント同一性は、本明細書でCDRと定義される部分を除いたVHドメインとの類似性に基づく。
【0208】
ヒト生殖系列VHフレームワークは、例えば、IGHV3-7*01のフレームワークであり得る。ヒト生殖系列VHフレームワークは、例えば、IGHV1-46*01のフレームワークであり得る。ヒト生殖系列VHフレームワークは、例えば、IGHV1-69*01であり得る。ヒト生殖系列VHフレームワークは、ヒトVH生殖系列コンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖系列VHフレームワークは、VH3、VH5、VH1またはVH4を含むヒト生殖系列コンセンサス配列のフレームワークであり得る。
【0209】
一部の実施形態では、VHフレームワークは、IGHV3-7*01である。他の類似のフレームワーク領域もまた、配列番号8~10、23、24、29、38、41、44、52~54、63~65、77~79、92~94、111~113、125~127のCDR、および以下:それぞれ、DP-54のFW領域に対して92、93、94、95、96、97、98、99%同一性および共通の構造的特色に1つまたは少数のアミノ酸差異を含み得る(Kabat番号付け)、IGHV1-2*02、IGHV1-3*01、IGHV1-46*01、IGHV1-69*01、IGHV1-69*02、IGHV1-8*01、IGHV3-7*01、IGHV3-13*01、IGHV3-23*01、IGHV3-23*04、IGHV3-30*01、IGHV3-30*18、IGHV5~10-1*01、IGHV5~10-1*04、またはIGHV5~51*01を含む、配列番号11、25、30、35、39、42、45、55、60、66、75、80、90、95、104、114、118、128のVHアミノ酸配列のいずれかによって特定されるCDRを含む本発明の有利な抗体を送達することが予測される。一部の態様では、パーセント同一性は、本明細書においてCDRとして定義されている部分を除いたVHドメインとの類似性に基づく。
【0210】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片は、(i)配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むVHドメイン、および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも66%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。これらのVLおよびVH配列の任意の組み合わせも本発明に包含される。
【0211】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片は、(i)配列番号7もしくは配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むHC;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むLCを含む。これらのHCおよびLC配列の任意の組み合わせも本発明に包含される。
【0212】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片は、Fcドメインを含む。Fcドメインは、IgA(例えば、IgA1またはIgA2)、IgG、IgE、またはIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)に由来し得る。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体はIgG1抗体である。
【0213】
抗E-セレクチン抗体の生物学的活性
本開示の抗体またはその抗原結合性断片は、E-セレクチン上のエピトープの結合に加えて、生物学的活性を媒介し得る。即ち、本開示は、E-セレクチンに特異的に結合し、以下から選択される少なくとも1つの検出可能な活性を媒介する単離された抗体またはその抗原結合性断片を含む:
(i)ヒトE-セレクチンに特異的に結合すること
(ii)カニクイザルE-セレクチンに特異的に結合すること;
(iii)可溶性E-セレクチン(例えば、ヒト、カニクイザル)とE-セレクチンリガンド(例えば、シアリルルイスAおよび/またはシアリルルイスXリガンド)との間の相互作用(例えば、結合)を低減させる、阻害するおよび/または中和すること;
(iv)細胞表面に発現されるE-セレクチン(例えば、ヒト、カニクイザル)とE-セレクチンリガンド(例えば、シアリルルイスAおよび/またはシアリルルイスXリガンド)との間の相互作用(例えば、結合)を低減させる、阻害するおよび/または中和すること;
(v)細胞表面に発現されるE-セレクチン(例えば、ヒト、カニクイザル)と細胞表面に発現されるE-セレクチンリガンド(例えば、例えばHL-60細胞上のシアリルルイスAおよび/またはシアリルルイスXリガンド)との間の相互作用(例えば、接着)を低減させる、阻害するおよび/または中和すること;
(vi)可溶性E-セレクチンのE-セレクチンリガンドを発現する細胞(例えば、HL-60)との相互作用(例えば、接着)を低減させる、阻害するおよび/または中和すること;
(vii)静的条件下および生理的流動条件下で、E-セレクチンリガンドを発現する細胞(例えば、HL-60)のE-セレクチンを発現する細胞への接着を低減させる、阻害するおよび/または中和すること;
(viii)生理的流動条件下で、活性化されたヒト好中球のE-セレクチンを発現する細胞(例えば、ヒトおよびカニクイザル)への接着を低減させる、阻害するおよび/または中和すること;
(ix)ヒトE-セレクチンのT7、E8、A9、M10、T11、P46、S47、Y48、N82、N83、Q85、E88、E92、Y94、R97、N105、E107、R108、S110、K111、K112およびK113から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に結合すること;
(x)25℃で、約187mg/mLの濃度で約38+/-7cPの粘度を有すること;
(xi)3mg/kgの用量でSC投与した場合に約21.5日間(518時間)の半減期を有すること;
(xii)高濃度における高度の熱安定性および最小限の凝集を含めた、適切な製剤特性を示すこと;ならびに
(xiii)大規模製造条件で再現性のある発現および純度を示し得ること。
【0214】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、可溶性ヒトE-セレクチンについて、200nM以下、例えば、195nM以下、190nM以下、180nM以下、160nM以下、140nM以下、120nM以下、110nM以下、100nM以下、90nM以下、80nM以下、75nM以下、50nM以下である、KDとして表される結合親和性を有する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、可溶性ヒトE-セレクチンについて、SPRによって測定した場合に、200nM以下である、KDとして表される結合親和性を有する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、可溶性ヒトE-セレクチンについて、例えば、SPRによって測定した場合に、約61.8~約68.4+/-3.18nMである、KDとして表される結合親和性を有する。
【0215】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、可溶性カニクイザルE-セレクチンについて、200nM以下、例えば、195nM以下、190nM以下、180nM以下、160nM以下、140nM以下、120nM以下、110nM以下、100nM以下、90nM以下、80nM以下、75nM以下、50nM以下である、KDとして表される結合親和性を有する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、可溶性カニクイザルE-セレクチンについて、例えば、SPRによって測定した場合に、約64.9+/-1.13nM~約81.5nMである、KDとして表される結合親和性を有する。
【0216】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンに対して、例えば、FACSによって測定した場合に、50nM以下、例えば、48nM以下、45nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、0.75nM以下、0.5nM以下、0.25nM以下または0.1nM以下である、EC50として表される結合親和性を有する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンに対して、例えば、FACSによって測定した場合に、約0.66nMである、EC50として表される結合親和性を有する。
【0217】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンに対して、例えば、FACSによって測定した場合に、50nM以下、例えば、48nM以下、45nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、0.75nM以下、0.5nM以下、0.25nMまたは0.1nM以下である、EC50として表される結合親和性を有する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンに対して、例えば、FACSによって測定した場合に、約0.75nMである、EC50として表される結合親和性を有する。
【0218】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、細胞表面に発現されるヒトP-セレクチンに対して、例えば、FACSによって測定した場合に、350nM以上、例えば、400nM以上、450nM以上、500nM以上、550nM以上、600nM以上、650nM以上またはそれよりも大きい、EC50として表される結合親和性を有する。
【0219】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、可溶性ラット、マウスもしくはウサギE-セレクチンまたは可溶性ヒトL-もしくはP-セレクチンに対して、弱い結合を有するまたは結合を有さない。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、可溶性ラット、マウスもしくはウサギE-セレクチンまたは可溶性ヒトL-もしくはP-セレクチンに対して、例えば、SPRによって測定した場合に、405nMまで、結合が実証されない。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、可溶性マウスまたはラットE-セレクチンに対して、例えば、直接結合ELISAによって測定した場合に、133.3nMまで、弱い非飽和結合(例えば、>100分の1)を示す。
【0220】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、2nM以下、例えば、0.010nM以下、0.015nM以下、0.020nM以下、0.025nM以下、0.030nM以下、0.035nM以下、0.040nM以下、0.045nM以下、0.05nM以下、0.055nM以下、0.06nM以下、0.065nM以下、0.070nM以下、0.075nM以下、0.080nM以下、0.085nM以下、0.090nM以下、0.10nM以下、0.12nM以下、0.15nM以下、0.2nM以下、0.5nM以下、0.9nM以下、0.95nM以下、1nM以下、1.5nM以下、1.8nM以下または1.9nM以下のEC50で可溶性ヒトE-セレクチンに結合する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、直接結合ELISAによって測定した場合に、約0.085nM~約0.12のEC50で可溶性ヒトE-セレクチンに結合する。
【0221】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、シアリルルイスAリガンドの可溶性ヒトE-セレクチンへの結合を、例えば、AlphaLisa同種競合アッセイによって測定した場合に、2nM以下、例えば、0.010nM以下、0.015nM以下、0.020nM以下、0.025nM以下、0.030nM以下、0.035nM以下、0.040nM以下、0.045nM以下、0.05nM以下、0.055nM以下、0.06nM以下、0.065nM以下、0.070nM以下、0.075nM以下、0.080nM以下、0.085nM以下、0.090nM以下、0.10nM以下、0.12nM以下、0.15nM以下、0.2nM以下、0.5nM以下、0.9nM以下、0.95nM以下、1nM以下、1.5nM以下、1.8nM以下または1.9nM以下のEC50で中和する。
【0222】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、1nM以下、例えば、0.010nM以下、0.015nM以下、0.020nM以下、0.025nM以下、0.030nM以下、0.035nM以下、0.040nM以下、0.045nM以下、0.05nM以下、0.055nM以下、0.06nM以下、0.065nM以下、0.070nM以下、0.075nM以下、0.080nM以下、0.085nM以下、0.090nM以下、0.10nM以下、0.12nM以下、0.15nM以下、0.2nM以下、0.5nM以下、0.9nM以下または0.95nM以下のEC50で可溶性カニクイザルE-セレクチンに結合する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、直接結合ELISAによって測定した場合に、0.071nM~0.093nMのEC50で可溶性カニクイザルE-セレクチンに結合する。
【0223】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、約1nM~約3nMのIC50、好ましくは約1.2nMのIC50で、ヒト血清中の遊離可溶性ヒトE-セレクチンに結合する。
【0224】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、100nM以下、例えば、95nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、2nM以下または1nM以下のIC50で、シアリルルイスAリガンドの可溶性ヒトE-セレクチンへの結合を中和する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、約2.87nM~約3.01nMのIC50で、シアリルルイスAリガンドの可溶性ヒトE-セレクチンへの結合を中和する。
【0225】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、100nM以下、例えば、95nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、2nM以下または1nM以下のIC50で、シアリルルイスAリガンドの可溶性カニクイザルE-セレクチンへの結合を中和する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、約2.39nM~約2.91nMのIC50で、シアリルルイスAリガンドの可溶性カニクイザルE-セレクチンへの結合を中和する。
【0226】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、50nM以下、例えば、48nM以下、45nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下または1nM以下のIC50で、シアリルルイスAリガンドの細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの結合を中和する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、約1.88nM~約2.89nMのIC50で、シアリルルイスAリガンドの細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの結合を中和する。
【0227】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、100nM以下、例えば、95nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、2nM以下または1nM以下のIC50で、シアリルルイスAリガンドの細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンへの結合を中和する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、静置条件下で競合ELISAによって測定した場合に、約1.47nM~約2.65nMのIC50で、シアリルルイスAリガンドの細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンへの結合を中和する。
【0228】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、静置条件下で測定した場合に、100nM以下、例えば、95nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、2nM以下または1nM以下のIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの接着を阻害する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、静置条件下で測定した場合に、約3.36nM~約4.7nMのIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの接着を阻害する。
【0229】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、静置条件下で測定した場合に、約3.84nMのIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンへの接着を阻害する。
【0230】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、100nM以下、例えば、95nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、2nM以下または1nM以下のIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの接着を阻害する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約4.25nM~約4.56nMのIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチンへの接着を阻害する。
【0231】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約4.32nM~約4.35nMのIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンへの接着を阻害する。
【0232】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、300nM以下、例えば、290nM以下、280nM以下、270nM以下、260nM以下、250nM以下、150nM以下、100nM以下、90nM以下、100nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、20nM以下、20nM以下、5nM以下、2nM以下、または1nM以下のIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、可溶性ヒトE-セレクチンへの接着を阻害する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約13.28nM~約15.94nMのIC50で、E-セレクチンリガンド(例えば、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンド)を発現する細胞の、可溶性ヒトE-セレクチンへの接着を阻害する。
【0233】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約2.87nM~約4.65nMまたは9.45nM~約16.33nMのIC50で、活性化されたヒト好中球の、細胞表面に発現されるヒトE-セレクチン、または細胞表面に発現されるカニクイザルE-セレクチンへの接着を阻害する。一部の実施形態では、好中球はTNF-αによって活性化される。
【0234】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約6.17nM~約18.66nMのIC50で、SCD患者からの血液細胞の、可溶性ヒトE-セレクチンへの接着を阻害する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、例えば、生理的流動条件下で測定した場合に、約12.4nMのIC50で、SCD患者からの血液細胞の、可溶性ヒトE-セレクチンへの接着を阻害する。
【0235】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば競合アッセイによって、例えばOctetバイオセンサーを使用して決定した場合に、ヒトE-セレクチンの3つのエピトープのうち少なくとも1つに結合する。
【0236】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、T7、E8、A9、M10、T11、P46、S47、Y48、N82、N83、Q85、E88、E92、Y94、R97、N105、E107、R108、S110、K111、K112、K113およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ヒトE-セレクチンの少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、またはそれよりも多くのアミノ酸残基に結合する。
【0237】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、ヒトE-セレクチンのアミノ酸残基T7、E8、A9、M10、T11、P46、S47、Y48、N82、N83、Q85、E88、E92、Y94、R97、N105、E107、R108、S110、K111、K112およびK113と相互作用する。
【0238】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、3.8Å以内の、T7、E8、A9、T11、P46、S47、Y48、N82、N83、Q85、E92、Y94、N105、E107、R108、S110、K111、K112およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、またはそれよりも多くのアミノ酸残基と相互作用する。
【0239】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、3.8Å以内の、ヒトE-セレクチンのアミノ酸残基T7、E8、A9、T11、P46、S47、Y48、N82、N83、Q85、E92、Y94、N105、E107、R108、S110、K111およびK112と相互作用する。
【0240】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、埋没表面積(Å2)が>5Å2である、T7、E8、A9、T11、P46、S47、Y48、N82、N83、Q85、E88、E92、Y94、R97、E107、R108、S110、K111、K112、K113およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、またはそれよりも多くのアミノ酸残基と相互作用する。
【0241】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、埋没表面積(Å2)が>5Å2である、ヒトE-セレクチンのアミノ酸残基T7、E8、A9、T11、P46、S47、Y48、N82、N83、Q85、E88、E92、Y94、R97、E107、R108、S110、K111、K112およびK113と相互作用する。
【0242】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、E8、S47、N82、N83、E88、E92、Y94、N105、E107、R108、S110、K112、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個またはそれよりも多くのアミノ酸残基と水素結合によって相互作用する。
【0243】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、ヒトE-セレクチンのアミノ酸残基E8、S47、N82、N83、E88、E92、Y94、N105、E107、R108、S110およびK112と水素結合によって相互作用する。
【0244】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、K111、K112、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1つのアミノ酸残基と塩橋によって相互作用する。
【0245】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、ヒトE-セレクチンのアミノ酸残基K111およびK112と塩橋によって相互作用する。
【0246】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、R97、K112、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1つのアミノ酸残基と水を介した水素結合によって相互作用する。
【0247】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、ヒトE-セレクチンのアミノ酸残基R97およびK112と水を介した水素結合によって相互作用する。
【0248】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、3.8Å以内のsLexアミノ酸残基接触部とも相互作用する、Y48、N82、N83、E92、Y94、R97、N105、E107およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトE-セレクチンの少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、またはそれよりも多くのアミノ酸残基と相互作用する。
【0249】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により、結晶構造に従って、3.8Å以内のsLexアミノ酸残基接触部とも相互作用するヒトE-セレクチンのアミノ酸残基Y48、N82、N83、E92、Y94、R97、N105およびE107と相互作用する。
【0250】
抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の、ヒトE-セレクチンの少なくとも1つ、または複数のアミノ酸残基との結合または相互作用は、本明細書の実施例に記載されるように、結合した分子の結晶構造の解析を含めた当該分野で公知の方法に従って決定され得る。
【0251】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、AC-SINSアッセイ、DNA結合アッセイおよび/またはインスリン結合アッセイによって測定した場合に、多反応性のリスクが低い。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、免疫原性リスクが低く、例えば、約-44、-45、-46または-47のT-reg調整済スコアを有する。
【0252】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、IV投与したところ、以下から選択される少なくとも1つの予測されたヒト薬物動態学的(PK)パラメーターを示した:(i)全身クリアランスが約0.15mL/h/kg~約0.39mL/h/kg;(ii)定常状態での見かけの分布容積が22mL/kg~36mL/kg;(iii)平均半減期が約102時間~約345時間。一部の実施形態では、SC投与された抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、約243~約518時間の半減期を示す。
【0253】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の平均半減期は、0.3mg/kgの用量でのIV投与後、少なくとも約102時間(約4.25日)である。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の平均半減期は、0.6mg/kgの用量でのIV投与後、少なくとも約264時間(約11日間)である。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の平均半減期は、1.0mg/kgの用量でのIV投与後、少なくとも約188時間(約7.8日間)である。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の平均半減期は、10mg/kgの用量でのIV投与後、少なくとも約345時間(約14.4日間)である。
【0254】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の平均半減期は、1.0mg/kgの用量でのSC投与後、少なくとも約243時間(約10日間)である。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の平均半減期は、3.0mg/kgの用量でのSC投与後、少なくとも約518時間(約21.5日間)である。
【0255】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、25℃で、例えば動的光散乱(DLS)によって測定した場合に、約23mg/mLの濃度で約7.97+/-1.83cP、約48mg/mLの濃度で約12.38+/-5.28cP、約90mg/mLの濃度で約4.26+/-0.6cP、約102mg/mLの濃度で約5.58+/-0.99cP、約121mg/mLの濃度で約8.44+/-1.54cP、約140mg/mLの濃度で約9.78+/-2.32cP、約158mg/mLの濃度で約17.47+/-3.24cPおよび約188mg/mLの濃度で約37.99+/-7.03cPからなる群から選択される粘度を有する。
【0256】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、25℃で、例えばDLSによって測定した場合に、約150mg/mL~約190mg/mLの濃度で約15cP~40cPの粘度を有する。
【0257】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、25℃で、例えばAnton Parr法によって測定した場合に、185.7mg/mLで33.4cPの粘度を有する。
【0258】
免疫原性
免疫原性は、抗体およびFc融合タンパク質が含まれるタンパク質治療薬の開発および利用に対する主な障壁である。タンパク質配列、投与の経路および頻度、ならびに患者集団が含まれるがこれらに限定されないいくつかの因子が、タンパク質免疫原性に寄与し得る。免疫応答は、典型的には、マウス抗体などの非ヒトタンパク質に対して最も激しいが、主にまたは完全にヒト配列内容を有する治療薬であっても、免疫原性であり得る。免疫原性は、外来として把握される物質に対する複雑な一連の応答であり、これには、中和および非中和抗体の産生、免疫複合体の形成、補体活性化、肥満細胞活性化、炎症ならびにアナフィラキシーが含まれ得る。望まれない免疫応答は、抗原認識を直接妨害すること、エフェクター分子との相互作用を変更すること、または治療薬の血清半減期もしくは組織分布を乱すことによって、抗体およびFc融合タンパク質治療薬の効力を低減させ得る。
【0259】
タンパク質治療薬は、Providence、R.I.のEpivax,Inc.によって提供されるような市販のサービスを使用して、潜在的な免疫原性エピトープの存在を予測するために分析され得る。潜在的な免疫原性エピトープはまた、IEDBコンセンサス法などの方法を使用しても予測され得る。一部の実施形態では、in silicoアルゴリズムが、クラスII MHC分子に結合するエピトープを予測できる。かかるアルゴリズムを用いたポリペプチドのデータセットの分析は、予測されたエピトープを提供する。予測されたエピトープは、自動ペプチド合成または組換えDNA技術の標準的な方法によって調製されるペプチドを作製するために使用される。Epivaxから提供されたスコアリング情報は、集団中に認識された予測されたエピトープがどのように広がっているかの指標を提供し得る。より低いスコアは、より低い免疫原性潜在力を予測する。
【0260】
本明細書で使用する場合、「T-レジトープ」は、天然の調節性T細胞を活性化し、望まれない免疫応答を低減させることが潜在的にできる、モノクローナル抗体フレームワーク領域内のアミノ酸配列である。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、8、7、6、5、4、3、2、1または0の非生殖系列T細胞エピトープを含む。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、免疫原性リスクが低く、例えば、約-45.11、-45.32、-46.16または-46.26のT-reg調整済スコアを有する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、約-45.11のT-reg調整済スコアおよび0の非生殖系列T細胞エピトープを有する。
【0261】
抗E-セレクチン抗体をコードする核酸
本開示は、本明細書に記載される抗体部分および改変抗体を含む本発明の抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドもまた提供する。本発明は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法もまた提供する。当該分野で公知の手順によって、ポリヌクレオチドは作製され得、タンパク質は発現され得る。
【0262】
所望の抗体またはその抗原結合性断片およびかかる抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸の配列は、標準的な配列決定技術を使用して決定され得る。所望の抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸分子は、組換え産生および特徴付けのために、種々のベクター(例えば、クローニングおよび発現ベクター)中に挿入され得る。重鎖または重鎖の抗原結合性断片をコードする核酸分子、および軽鎖または軽鎖の抗原結合性断片をコードする核酸分子は、同じベクターまたは異なるベクター中にクローニングされ得る。
【0263】
一部の実施形態では、本開示は、以下の抗E-セレクチン抗体およびその抗原結合性断片のいずれかのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを提供する:抗体1444、0841、0978、0164、1448、1284、1282、0525、0039、0265_0254、0158、0929_548、0159、0955_0300、0170、0564、0180および0027。一実施形態では、本発明は、抗E-セレクチン抗体1444およびその抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0264】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号7、13、22、28、34、37、40、43、51、59、62、74、76、89、91、103、110、117および124からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上の抗E-セレクチン抗体HCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号7または配列番号13のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる抗E-セレクチン抗体HCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0265】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号1、17、26、31、46、56、67、72、81、86、96、101、105、115および119からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上の抗E-セレクチン抗体LCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる抗E-セレクチン抗体LCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0266】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号11、25、30、35、39、42、45、55、60、66、75、80、90、95、104、114、118および128からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上の抗E-セレクチン抗体VHドメインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号11のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる抗E-セレクチン抗体VHドメインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0267】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号5、21、27、32、50、57、7、73、85、87、100、102、109、116および122からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上の抗E-セレクチン抗体VLドメインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号5のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる抗E-セレクチン抗体VLドメインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0268】
本発明は、抗体1444のHCドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126529を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、抗体1444のLCをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126530を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含むポリヌクレオチドもまた提供する。さらに、本発明は、抗体1444のVHドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126529を有するプラスミドのDNA挿入物によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。本発明は、抗体1444のVLドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126530を有するプラスミドの挿入物によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドをさらに提供する。
【0269】
本発明は、抗体1444のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3をコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126529を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、ならびに抗体1444のLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3をコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126530を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、を含むポリヌクレオチドもまた提供する。
【0270】
本発明は、抗体1444のVHドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126529を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、および、抗体1444のVLドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126530を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含むポリヌクレオチドもまた提供する。
【0271】
本発明は、抗体1444の重鎖をコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126529を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、および、抗体1444の軽鎖をコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-126530を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含むポリヌクレオチドもまた提供する。
【0272】
一部の実施形態では、本開示は、抗E-セレクチン抗体をコードするポリヌクレオチドおよびそのバリアントを提供し、かかるバリアントポリヌクレオチドは、表2に開示される核酸配列のいずれかに対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を共有する。これらの量は限定を意味せず、列挙されたパーセンテージ間の増分は、本開示の一部として具体的に想定される。
【0273】
一実施形態では、VHおよびVLドメインもしくはその抗原結合性断片、または全長HCもしくはLCは、別々のポリヌクレオチドによってコードされる。あるいは、VHおよびVLもしくはその抗原結合性断片、またはHCおよびLCは共に、単一のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0274】
任意のかかる配列に対して相補的なポリヌクレオチドもまた、本開示によって包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コーディングまたはアンチセンス)または二本鎖であり得、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であり得る。RNA分子には、イントロンを含み、一対一の様式でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含まないmRNA分子が含まれる。さらなるコードまたは非コード配列が、本開示のポリヌクレオチド内に存在してもよいがその必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持体材料に連結されてもよいがその必要はない。
【0275】
ポリヌクレオチドは、抗体もしくはその断片をコードする核酸配列を含み得、またはかかる配列のバリアントを含み得る。ポリヌクレオチドバリアントは、コードされたポリペプチドの結合特徴がネイティブ抗体分子と比較して減弱されるような、1つ以上の置換、付加、欠失および/または挿入を含む。バリアント核酸配列によってコードされるポリペプチドの結合特徴に対する影響は、一般に、本明細書に記載されるように評価され得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、いずれの置換、付加、欠失および/もしくは挿入も含まない元の(親)抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも98%の同一性または少なくとも99%の同一性を示す。これらのパーセント同一性は限定を意味せず、列挙されたパーセンテージ間の増分は、本開示の一部として具体的に想定される。
【0276】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が、本明細書に記載されるように、最大の対応を求めてアラインした場合に同じである場合、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、配列類似性の局所的領域を同定および比較するために、比較ウインドウにわたって配列を比較することによって実施される。「比較ウインドウ」は、本明細書で使用する場合、少なくとも約20、通常は30~約75または40~約50連続する位置のセグメントを指し、ここで、配列は、2つの配列を最適にアラインした後に、同じ数の連続する位置の参照配列と比較され得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に開示されるポリヌクレオチドに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%同一である。
【0277】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体VLドメインは、配列番号137、145、147、149、154、165、158、160、162、164、166、168、170、172および174からなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体VLドメインは、配列番号137、145、147、149、154、165、158、160、162、164、166、168、170、172および174からなる群から選択される核酸に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0278】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体VLドメインは、配列番号137の核酸配列に対して少なくとも90%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体VLドメインは、配列番号137の核酸配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0279】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体VHドメインは、配列番号136、144、146、148、150、151、152、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171および173からなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体VHドメインは、配列番号136、144、146、148、150、151、152、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171および173からなる群から選択される核酸に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0280】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体VHドメインは、配列番号136に対して少なくとも90%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体VHドメインは、配列番号136の核酸配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0281】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体HCは、配列番号206または207に対して少なくとも90%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体HCは、配列番号206または138の核酸配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0282】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体LCは、配列番号139に対して少なくとも90%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体LCは、配列番号139の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0283】
ポリヌクレオチドバリアントはまた、またはあるいは、遺伝子、またはその断片もしくは相補体に対して実質的に相同であり得る。かかるポリヌクレオチドバリアントは、抗体をコードする天然に存在するDNA配列(または相補的配列)に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能である。
【0284】
適切な「中程度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中で事前洗浄すること;約50℃~65℃、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)で一晩ハイブリダイズさせること;その後、0.1%SDSを含む2×、0.5×および0.2×SSCの各々で、65℃で20分間2回洗浄すること、を含む。
【0285】
本明細書で使用する場合、「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、以下の条件である:(1)洗浄のために、低いイオン強度および高い温度、例えば、50℃で、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを使用する;(2)ハイブリダイゼーションの間に、変性剤、例えば、ホルムアミド、例えば、50%(v/v)ホルムアミドを、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.5と共に、42℃で使用する;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/mL)、0.1%SDSおよび10%硫酸デキストランを42℃で使用し、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で42℃および50%ホルムアミド中で55℃での洗浄、その後の、EDTAを含む0.1×SSCからなる55℃での高ストリンジェンシー洗浄を使用する。当業者は、例えば、プローブ長さなどの因子に適応するために、必要に応じて、温度、イオン強度などを調整する方法を認識する。
【0286】
遺伝コードの縮重の結果として、本明細書に記載されるポリペプチドのアミノ酸配列をコードする多くのヌクレオチド配列が存在することが、当業者によって理解される。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意のネイティブ遺伝子のヌクレオチド配列に対する最小限の相同性を保有する。即ち、20種の天然アミノ酸をコードする64種の異なるコドンが存在し、一部のアミノ酸はそれをコードするコドンを多数有する(例えば、6種の異なるコドンがロイシンをコードする)。したがって、多数の核酸配列が同じタンパク質配列をコードし得、したがって、同じポリペプチドアミノ酸配列をコードする2つの核酸は、非常に低い核酸配列同一性を共有し得る。したがって、コドン使用の差異に起因して変動するポリヌクレオチドは、本開示によって具体的に企図される。
【0287】
さらに、本明細書で提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本開示の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの1つ以上の変異、例えば、欠失、付加および/または置換の結果として変更された内因性遺伝子である。得られたmRNAおよびタンパク質は、変更された構造または機能を有し得るが、その必要はない。対立遺伝子は、標準的な技術(例えば、ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較)を使用して同定され得る。
【0288】
本開示のポリヌクレオチドは、化学的合成、組換え法またはPCRを使用して得ることができる。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は、当該分野で周知であり、本明細書で詳細に記載する必要はない。当業者は、所望のDNA配列を産生するために、本明細書で提供される配列および市販のDNA合成機を使用することができる。
【0289】
組換え法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、所望の配列を含むポリヌクレオチドが、適切なベクター中に挿入され得、このベクターは、次に、本明細書でさらに議論されるように、複製および増幅に適切な宿主細胞中に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の任意の手段によって、宿主細胞中に挿入され得る。細胞は、直接的取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F交配(F-mating)またはエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入することによって形質転換される。いったん導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(例えば、プラスミド)として細胞内で維持され得、または宿主細胞ゲノム中に組み込まれ得る。そうして増幅されたポリヌクレオチドは、当該分野で周知の方法によって、宿主細胞から単離され得る。例えば、Sambrookら、1989を参照のこと。
【0290】
あるいは、PCRは、DNA配列の再生産を可能にする。PCRテクノロジーは、当該分野で周知であり、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号および同第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction、Mullisら編、Birkauswer Press、Boston、1994に記載されている。
【0291】
RNAは、適切なベクター中の単離されたDNAを使用し、それを適切な宿主細胞中に挿入することによって得ることができる。細胞が複製し、DNAがRNAへと転写される場合、RNAは、例えば、Sambrookら、1989に示される、当業者に周知の方法を使用して単離され得る。
【0292】
本明細書で使用する場合、用語「ベクター」は、目的の1つ以上の遺伝子または配列(例えば、抗E-セレクチン抗体のHC、LC、VH、VLおよび/またはその断片をコードする核酸)を宿主細胞中に送達すること、好ましくは、それを宿主細胞において発現させることが可能な、構築物を意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター(例えば、AAV)、ネイキッドDNAもしくはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドもしくはファージベクター、カチオン性縮合剤と関連したDNAもしくはRNA発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNAもしくはRNA発現ベクター、および特定の真核生物細胞、例えば、産生細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0293】
適切なクローニングおよび発現ベクターは、種々の構成要素、例えば、プロモーター、エンハンサーおよび他の転写調節配列を含み得る。ベクターはまた、異なるベクター中への抗体可変ドメインの引き続くクローニングを可能にするように構築され得る。適切なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築され得、または当該分野で入手可能な多数のクローニングベクターから選択され得る。選択されるクローニングベクターは、使用が意図される宿主細胞に従って変動し得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を保有し得、および/またはベクターを含むクローンを選択する際に使用され得るマーカーの遺伝子を保有し得る。適切な例には、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにシャトルベクター、例えば、pSA3およびpAT28が含まれる。これらおよび多くの他のクローニングベクターが、供給業者、例えば、BioRad、StratageneおよびInvitrogenから入手可能である。
【0294】
発現ベクターがさらに提供される。発現ベクターは、一般に、本開示に従うポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの不可欠な一部として、宿主細胞中で複製可能でなければならないことが暗示される。適切な発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスが含まれるウイルスベクター、コスミド、およびPCT公開番号WO87/04462に開示される発現ベクターが含まれるがこれらに限定されない。ベクター構成要素には、一般に、以下のうち1つ以上が含まれ得るがこれらに限定されない:シグナル配列;複製起点;1つ以上のマーカー遺伝子;適切な転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサーおよびターミネーター)。発現(即ち、翻訳)のために、リボソーム結合部位、翻訳開始部位および停止コドンなどの、1つ以上の翻訳制御エレメントもまた通常は必要とされる。
【0295】
一部の実施形態では、細胞(例えば、単離されたものまたは生物体内にあるもの)に、異種ポリヌクレオチド(例えば、抗E-セレクチン抗体のHC、LC、VHドメイン、VLドメインまたはその抗原結合性断片)をコードする組換え核酸およびAAVカプシドを含む組換えAAV(rAAV)を形質導入する。組換え核酸は、形質導入された細胞内で異種ポリヌクレオチドを発現させるための調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、エクソン、ポリA)をさらに含み得る。組換え核酸は、ウイルス逆位タンデムリピート(ITR)配列をさらに含み得る。一部の実施形態では、AAVカプシドは、当該分野で公知のAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、または任意の他の野生型または組換えAAVカプシドである。ITR配列は、当該分野で公知のAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、または任意の他の野生型または組換えITR配列(例えば、AAV2)であり得る。一部の実施形態では、rAAVは、抗E-セレクチン抗体のHC、LC、VHドメイン、VLドメインまたはその抗原結合性断片をコードする組換え核酸、プロモーター、AAV ITRおよびウイルスカプシドを含む。かかるrAAVは、対象(例えば、患者)におけるE-セレクチンによって媒介される疾患、障害または状態(例えば、SCD)を処置または予防するために、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を細胞において発現させるために適している。
【0296】
目的のポリヌクレオチドを含有するベクターおよび/またはポリヌクレオチド自体は、エレクトロポレーション、塩化カルシウムもしくはポリエチレンイミン(PEI)、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を使用するトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(例えば、ベクターが、ワクシニアウイルスなどの感染性因子である場合)が含まれるいくつかの適切な手段のいずれかによって、宿主細胞中に導入され得る。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入する選択は、宿主細胞の特色に依存する場合が多い。
【0297】
一部の実施形態では、ベクターは、配列番号137、145、147、149、154、165、158、160、162、164、166、168、170、172および174からなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号137の核酸配列に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号137の核酸配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドを含む。
【0298】
一部の実施形態では、ベクターは、配列番号136、144、146、148、150、151、152、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171および173からなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号136に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号136の核酸配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドを含む。
【0299】
一部の実施形態では、ベクターは、i)配列番号136の核酸配列;ii)配列番号137の核酸;またはiii)それら両方を含むポリヌクレオチドを含む。
【0300】
一部の実施形態では、ベクターは、配列番号206または138に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号206または138の核酸配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドを含む。
【0301】
一部の実施形態では、ベクターは、配列番号139に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号139の核酸配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドを含む。
【0302】
一部の実施形態では、ベクターは、i)配列番号206または138の核酸配列;ii)配列番号139の核酸;またはiii)それら両方を含むポリヌクレオチドを含む。
【0303】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は互換的に使用され、ポリヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチド挿入物の取り込みのためのベクターのレシピエントであり得るまたはレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物を意味する。宿主細胞には、「形質転換体」、「形質転換された細胞」、および「形質導入された細胞」が含まれ、これらには、初代の形質転換または形質導入された細胞および継代の数に関係なく、それに由来する子孫が含まれる。宿主細胞の子孫は、天然の、偶然の、または意図的な変異に起因して、(形態学的に、またはゲノムDNA相補性において)元の親細胞とは必ずしも完全に同一でなくてもよい。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチド(例えば、抗E-セレクチン抗体のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド)またはそれを含むベクターでin vivoでトランスフェクトおよび/または形質転換された細胞が含まれる。
【0304】
宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。例示的な真核細胞には、霊長類または非霊長類動物細胞などの哺乳動物細胞;酵母などの真菌細胞;植物細胞;および昆虫細胞が含まれる。
【0305】
抗体またはその抗原結合性断片は、適切な宿主細胞を使用して、組換え作製され得る。本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸は、発現ベクター中にクローニングされ得、これは次いで、組換え宿主細胞における抗体の合成を得るために、さもなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞中に導入され得る。細胞培養、およびタンパク質またはポリペプチドの発現を行いやすい任意の宿主細胞が本発明に従って利用され得る。ある特定の実施形態では、宿主細胞は哺乳動物である。発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当該分野で周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれる。非限定的な例示的な哺乳動物細胞には、NS0細胞、HEK293およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにそれらの誘導体、例えば、293-6EおよびCHO DG44細胞、CHO DXB11、およびPotelligent(登録商標)CHOK1SV細胞(BioWa/Lonza、Allendale、NJ)が含まれるがこれらに限定されない。哺乳動物宿主細胞には、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2)、ベビーハムスター腎臓(BHK、ATCC CCL 10)細胞、サル腎臓細胞(COS)、およびヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)もまた含まれるがこれらに限定されない。本発明に従って使用され得る哺乳動物細胞の他の非限定的な例には、ヒト網膜芽細胞(PER.C6(登録商標);CruCell、Leiden、The Netherlands);SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);浮遊培養下で成長させるためにサブクローニングされたヒト胎児由来腎臓株293(HEK 293)または293細胞(Grahamら、J.Gen Virol.1997;36:59);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.1980;23:243~251);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TR1細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.1982;383:44~68);MRC 5細胞;FS4細胞;ヒトヘパトーマ株(Hep G2);ならびに、BALB/cマウス骨髄腫株(NS0/1、ECACC No:85110503)、NS0細胞およびSp2/0細胞が含まれるがこれらに限定されない、多数の骨髄腫細胞株が含まれる。
【0306】
さらに、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する、任意の数の市販のおよび非商業的に入手可能な細胞株が本発明に従って利用され得る。最適な成長およびポリペプチドまたはタンパク質の発現のために、異なる細胞株は異なる栄養要件を有し得る、および/または異なる培養条件を要求し得、必要に応じて条件を改変することができることが、当業者によって理解されることになる。
【0307】
使用
処置の方法
一部の実施形態では、本開示は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を使用して、E-セレクチンの活性を低減させるまたは阻害するための治療方法であって、治療有効量の、抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。処置される障害は、E-セレクチン活性(例えば、SCD)の除去、阻害または低減によって改善、寛解、阻害または予防される任意の疾患または状態である。
【0308】
抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を使用する処置の方法には、SCD、血管閉塞クリーゼ、疼痛、臓器梗塞、虚血、脳卒中、終末器官機能障害、急性胸部および血管閉塞(vascular obstruction)が含まれるがこれらに限定されない、E-セレクチンの発現および/またはE-セレクチンのリガンド(例えば、sLexAおよび/またはX決定因子)への結合と関連するまたはそれによって媒介される疾患、障害および状態を処置および/または予防する方法が含まれるが、これらに限定されない。本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、他の疾患、障害および状態、例えば、皮膚疾患(例えば、乾癬)、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ)および糖尿病の合併症を処置および/または予防するためにも使用され得る。
【0309】
本開示は、E-セレクチンに特異的に結合し、E-セレクチンの機能活性を中和することが可能な新規の治療用抗体を提供する。これらの抗体は、SCDに対する予防的処置として利用される場合、VOCの発生を予防するまたは低減させるために有利に使用され得る。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)におけるVOCの発生は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置されない対象または対象の群(例えば、SCDを有する患者)におけるVOCの発生と比較して約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低減する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)におけるVOCの発生は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片での処置前の同じ対象におけるVOCの発生と比較して約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低減する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)におけるVOCの発生は、SCDを有さない対象または対象の集団におけるVOCの発生と有意には異ならない。一部の実施形態では、VOCの発生(例えば、VOC事象の数)をある期間にわたって測定する。一部の実施形態では、VOCの発生(例えば、VOC事象の数)を数日間、数週間、数カ月間または数年間にわたって測定する。
【0310】
一部の実施形態では、本開示の抗体またはその抗体結合性断片は、鎌状赤血球と関連する疼痛発作の年率を低減し得る。鎌状赤血球と関連する疼痛発作は、本明細書で言及される場合、医療施設への来訪を生じ得る、および/または経口もしくは非経口麻薬性薬剤もしくは非経口非ステロイド性抗炎症薬を用いた処置を生じ得る、血管閉塞性事象以外に医学的に決定される原因がない疼痛の急性エピソードである。一部の実施形態では、急性胸部症候群、肝臓血球貯留、脾臓血球貯留、および持続勃起症が鎌状赤血球と関連する疼痛発作とみなされる。
【0311】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における鎌状赤血球と関連する疼痛発作の年率は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置されない対象または対象の群(例えば、SCDを有する患者)における鎌状赤血球と関連する疼痛発作の年率よりも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低い。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における鎌状赤血球と関連する疼痛発作の年率は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片での処置前の同じ対象における鎌状赤血球と関連する疼痛発作の年率よりも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低い。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における鎌状赤血球と関連する疼痛発作の年率は、SCDを有さない対象または対象の集団における鎌状赤血球と関連する疼痛発作の年率と有意には異ならない。
【0312】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における第1の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置されない対象または対象の群(例えば、SCDを有する患者)における第1の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値よりも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%長い。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における第1の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片での処置前の同じ対象における第1の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値よりも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%長い。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における第1の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値は、SCDを有さない対象または対象の集団における第1の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値と有意には異ならない。
【0313】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における第2の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置されない対象または対象の群(例えば、SCDを有する患者)における第2の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値より約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%長い。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における第2の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片での処置前の同じ対象における第2の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値より約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%長い。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における第2の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値は、SCDを有さない対象または対象の集団における第2の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値と有意には異ならない。
【0314】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における合併症のない鎌状赤血球と関連する疼痛発作の率の中央値は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置されない対象または対象の群(例えば、SCDを有する患者)における合併症のない鎌状赤血球と関連する疼痛発作の率の中央値よりも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低い。一部の実施形態では、合併症のない発作は、急性胸部症候群、肝臓血球貯留、脾臓血球貯留および/または持続勃起症以外の発作であった。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における合併症のない鎌状赤血球と関連する疼痛発作の率の中央値は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片での処置前の同じ対象における合併症のない鎌状赤血球と関連する疼痛発作の率の中央値より約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低い。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)における合併症のない鎌状赤血球と関連する疼痛発作の率の中央値は、SCDを有さない対象または対象の集団における合併症のない鎌状赤血球と関連する疼痛発作の率の中央値と有意には異ならない。
【0315】
本開示の抗体はまた、SCDを有する患者における急性VOCを、VOCの持続時間(例えば、VOCが消散するまでの時間の低減)、重症度および/または強度を減少させることによって処置するためにも有利に使用され得る。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)におけるVOCの持続時間、重症度および/または強度は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置されない対象または対象の群(例えば、SCDを有する患者)におけるVOCの持続時間、重症度および/または強度と比較して約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低減する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)におけるVOCの持続時間、重症度および/または強度は、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片での処置前の同じ対象におけるVOCの持続時間、重症度および/または強度と比較して約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低減する。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片で処置された対象(例えば、SCDを有する患者)におけるVOCの持続時間、重症度および/または強度は、SCDを有さない対象または対象の集団におけるVOCの持続時間、重症度および/または強度と有意には異ならない。
【0316】
抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片はまた、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状、例えば、心臓胸部系に影響を及ぼすもの(例えば、慢性拘束性肺疾患、左心室拡張疾患、肺高血圧症、急性胸部症候群、調律異常、突然死、血管閉塞クリーゼ)、神経系に影響を及ぼすもの(例えば、出血性卒中、静脈洞血栓症、無症候性脳梗塞、慢性疼痛、急性虚血性脳卒中、増殖性網膜症、眼窩梗塞、認知障害)、細網内皮系に影響を及ぼすもの(例えば、脾臓血球貯留、機能性脾機能低下症、貧血、溶血)、筋骨格系に影響を及ぼすもの(例えば、無血管性壊死、皮膚潰瘍)、泌尿生殖器系に影響を及ぼすもの(例えば、乳頭壊死、タンパク尿、腎不全、血尿、夜尿症、持続勃起症)および胃腸系に影響を及ぼすもの(例えば、胆石症、胆管症、肝障害、腸間膜血管閉塞症(mesenteric vaso-occlusion))を処置する、予防するおよび/または寛解させるためにも使用され得る。
【0317】
一部の実施形態では、本開示は、その抗体が、(a)内皮細胞への白血球テザリングを減少させる;(b)内皮細胞への安定な接着の活性化を減少させる;(c)白血球を停止させる緩徐なローリングを低減させる;(d)白血球の効率的な経内皮遊走を低減させる;(e)CD18インテグリンの親和性および結合力を減少させる;(f)急性炎症の部位への白血球の輸送を低減させる;(g)細胞質カルシウムを減少させる;(h)p38 MAPキナーゼおよびSykキナーゼを活性化するチロシンリン酸化を減少させる;(i)血液から血管内皮への血小板および白血球の動員を低減させる;ならびに/または(j)炎症促進性環境を創出しないような、E-セレクチンに特異的に結合し、少なくとも1つの検出可能なE-セレクチンの生物学的活性をモジュレートする、単離された抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0318】
本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を使用する処置の方法は、予防的および/または治療的処置を含む。処置が状態の臨床所見の前に投与される場合、その処置は予防的とみなされる。例えば、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の投与は、SCDに対する予防的処置(例えば、1つ以上の用量、ある期間にわたって)として利用される場合、VOCを予防する(例えば、VOC事象の頻度を低減させる)ために使用され得る。治療的処置には、例えば、疾患を寛解させるもしくは疾患の重症度を低減させる、または疾患の長さを短縮することが含まれる。例えば、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の投与は、SCDを有する患者における急性VOCを、VOCの持続時間、強度および/または重症度を減少させることによって処置するために使用され得る。
【0319】
一部の実施形態では、処置される対象は、哺乳動物、特にヒト患者、例えば、SCDを有する患者であり得る。対象は、HBB遺伝子のコード配列における1つ以上の変異の結果として、β-グロビンタンパク質が不適切に発現される、例えば、間違ったアミノ酸配列を有することが原因で、処置を必要としている対象であり得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の投与は、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状(例えば、VOC)、SCDのバリアントまたはSC症を処置および/または予防するために使用され得る。抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の投与は、HBSS、HBSC、HBSE、HBS/β°thal、HBS/β+thalまたはHBS-バリアント遺伝子型を有する対象における疾患の少なくとも1つの徴候および/または症状を処置および/または予防するために使用され得る。
【0320】
本開示は、処置および/または予防の定義された方法における使用のための、本明細書で定義される抗E-セレクチン抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物をさらに包含する。本明細書に記載される処置および/または予防の方法に言及する実施形態では、かかる実施形態はまた、その処置および/または予防における使用のための、またはあるいは、SCDの症状を処置および/または予防するための医薬の製造における使用のための、抗E-セレクチン抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物に関するさらなる実施形態もまた含む。
【0321】
組み合わせ治療
本開示の抗体またはその抗原結合性断片は、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である、1つ以上のさらなる治療的に活性な化合物または処置モダリティと組み合わせて投与され得る。本開示は、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状を処置および/または予防する方法であって、それを必要とする患者に、一定量の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片と組み合わせた、一定量の、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である治療的に活性な化合物または処置モダリティを投与するステップを含む、方法を包含する。一部の実施形態では、SCDの症状の処置には、急性VOCの持続時間および強度を減少させることが含まれる。一部の実施形態では、SCDの症状の予防には、VOC事象の頻度を低減させることが含まれる。
【0322】
本発明は、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状を処置および/または予防する方法であって、それを必要とする患者に、一定量の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片、ならびに、一定量の、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である治療的に活性な化合物または処置モダリティを投与するステップを含み、これらの量が一緒になって、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である、方法もまた包含する。
【0323】
別の実施形態では、本発明は、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状を処置および/または予防する方法であって、それを必要とする患者に、一定量の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片、ならびに、一定量の、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である治療的に活性な化合物または処置モダリティを投与するステップを含み、これらの量が一緒になって、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において相乗的効果を達成する、即ち、組み合わせが「相乗的」である(即ち、組み合わせが、2つ以上の個々の治療の単なる相加効果よりも大きい効果を提供する)、方法に関する。かかる相乗的組み合わせ治療では、投与される治療剤をより少ない投薬量で有利に利用し、したがって、種々の単剤療法と関連する可能性のある毒性または合併症を回避することができる。
【0324】
SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防に有用である、さらなる治療的に活性な化合物には、例えば、肺炎球菌感染症を予防するためのペニシリン系予防薬、ヒドロキシウレア(例えば、DROXIA、HYDREA)、L-グルタミン(例えば、ENDARI)、クリザンリズマブ(ADAKVEO)、ボキセロートル(OXBRYTA)、アピキサバン(ELIQUIS)、リバーロキサバン(XARELTO)、非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛薬、一般に、オピオイド鎮痛薬、IW-1701、リオシグアト(ADEMPAS)、チカグレロル(BRILINTA)、メマンチン(NAMENDA)およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0325】
SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防に有用である、さらなる治療的に活性な化合物には、抗P-セレクチン抗体(例えば、クリザンリズマブ(ADAKVEO))、HbSをモジュレートする化合物、HbSの酸素親和性をモジュレートする化合物(例えば、ボキセロートル(OXBRYTA))、2,3-ジホスホグリセリン酸の生成をモジュレートすることによってHbS重合を標的とする化合物、胎児ヘモグロビン(HbF)の発現を誘導することによってHbS重合を標的とする化合物(例えば、ヒドロキシウレア)、機能障害性細胞接着、血管機能障害および/または炎症を標的とする化合物(例えば、ホスホジエステラーゼ-9阻害剤)、血液中の一酸化窒素のレベルを増加させる化合物(例えば、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質、例えば、IW-1701、リオシグアト(ADEMPAS))、静脈内IG、過凝固状態を標的とする化合物(例えば、リオシグアト(ADEMPAS)、アピキサバン(ELIQUIS)、リバーロキサバン(XARELTO))、NMDA受容体結合を遮断する化合物(例えば、メマンチン(NAMENDA))などの化合物が含まれる。
【0326】
SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状(例えば、VOC)の処置および/または予防に有用である、さらなる治療的に活性な化合物は、HbSをそのR状態(即ち、酸素化状態)に維持するようにモジュレートする化合物、例えば、参照によって本明細書に組み込まれるWO2020/109994に記載されているものである。一部の実施形態では、HbSをそのR状態に維持するようにモジュレートする化合物には、2-アミノキノリン化合物が含まれる。一部の実施形態では、HbSをそのR状態に維持するようにモジュレートする化合物は、任意選択によりそのアミド互変異性体(S)-6-(1-((2-アミノ-6-フルオロキノリン-3-イル)オキシ)エチル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-2(1H)-オンとして固体の形態に調製された6-{(1S)-1-[(2-アミノ-6-フルオロキノリン-3-イル)オキシ]エチル}-5-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-2-オールである。
【0327】
【0328】
SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防に有用である、治療的に活性な処置モダリティには、酸素補給、任意選択により鉄キレート化を伴う輸血、骨髄移植、遺伝子治療(例えば、LentiGlobin(登録商標))、CRISPR(例えば、CTX001)、ジンクフィンガー技術による遺伝子編集治療およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0329】
本開示は、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状(例えば、VOC)の処置および/または予防における使用のための、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である治療的に活性な化合物または処置モダリティ、ならびに薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物を包含する。本開示は、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状(例えば、VOC)の処置および/または予防における使用のための、相乗的治療有効量の抗E-セレクチン抗体、相乗的治療有効量の、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である治療的に活性な化合物または処置モダリティ、ならびに薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物を包含する。組成物は、例えば、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状(例えば、VOC)の処置および/または予防において有効である少なくとも1つの他の治療的に活性な化合物または処置モダリティであるがこれらに限定されないさらなる治療剤をさらに含み得る。
【0330】
当業者は、本明細書で提供される開示に基づいて、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状を処置および/または予防する方法が、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状(例えば、VOC)を処置および/または予防するために、少なくとも1つのさらなる治療剤で以前に処置されたまたはそれを現在受けている患者に、相乗的治療有効量の抗E-セレクチン抗体、ならびに、相乗的治療有効量の、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である治療的に活性な化合物または処置モダリティを投与するステップを包含することを理解する。
【0331】
かかるさらなる治療剤は、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状を処置および/または予防するための標準治療である薬剤を包含する。即ち、本発明の組み合わせ治療は、L-グルタミン、ヒドロキシウレア、輸血(任意選択により鉄キレート化を伴う)および当該分野で公知の任意の他の治療が含まれるがこれらに限定されない異なる治療をすでに受けているSCD患者の治療レジメンに追加され得る。
【0332】
当業者は、公知の方法に従って、SCDを有する患者に投与するために本開示の組み合わせにおいて使用される、各化合物の適切な量、用量または投薬量を、年齢、体重、総体的な健康、投与される化合物、投与の経路、SCDの処置の性質および進行、ならびに他の薬物療法の存在などの因子を考慮に入れて、決定することができる。
【0333】
抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を含む組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、同じ医薬組成物中で対象に投与され得る(例えば、治療薬が共製剤化される)。あるいは、組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、別々の医薬組成物中で対象に同時発生的に投与され得る(例えば、治療が同時投与される)。組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、同じ投薬レジメンに従って(例えば、両方の治療が毎日投与される)または異なる投薬レジメンに従って(例えば、1つの治療が毎日投与され、他の治療が毎週投与される)投与され得る。予防剤または治療剤は、同じまたは異なる経路の投与によって、対象に投与され得る。
【0334】
抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片、および、任意選択によりそのアミド互変異性体(S)-6-(1-((2-アミノ-6-フルオロキノリン-3-イル)オキシ)エチル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-2(1H)-オンとして固体の形態で調製される6-{(1S)-1-[(2-アミノ-6-フルオロキノリン-3-イル)オキシ]エチル}-5-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-2-オールを含む組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、別々の医薬組成物中で対象に同時発生的に投与され得る(例えば、治療が同時投与される)。かかる組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、同じ投薬レジメンに従って(例えば、両方の治療が毎日投与される)または異なる投薬レジメンに従って(例えば、1つの治療が毎日投与され、他の治療が毎週投与される)投与され得る。さらに、かかる予防剤または治療剤は、同じまたは異なる経路の投与によって、対象に投与され得る。
【0335】
抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片、および、任意選択によりそのアミド互変異性体(S)-6-(1-((2-アミノ-6-フルオロキノリン-3-イル)オキシ)エチル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-2(1H)-オンとして固体の形態で調製される6-{(1S)-1-[(2-アミノ-6-フルオロキノリン-3-イル)オキシ]エチル}-5-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-2-オールを含む予防剤または治療剤は、対象におけるVOCの持続時間(例えば、VOCが消散するまでの時間の低減)、重症度および/もしくは強度を低減させるため、鎌状赤血球と関連する疼痛発作の年率を低減させるため、第1の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値を増加させるため、第2の鎌状赤血球と関連する疼痛発作までの時間の中央値を増加させるため、ならびに/または合併症のない鎌状赤血球と関連する疼痛発作の率の中央値を低減させるために、組み合わせで投与され得る。
【0336】
本開示は、処置および/または予防の定義された方法における使用のための、本明細書で定義される抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を含む、組み合わせ治療の予防剤または治療剤をさらに包含する。本明細書に記載される処置および/または予防の方法に言及する実施形態では、かかる実施形態はまた、その処置および/もしくは予防における使用のための、またはあるいは、SCDの少なくとも1つの徴候および/もしくは症状のその処置および/もしくは予防における使用のための医薬の製造のための、抗E-セレクチン抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が含まれる、組み合わせ治療に関するさらなる実施形態もまた含む。
【0337】
本開示は、単独での、または他の治療と組み合わせた、本開示のE-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を必要とする対象への、単独での、または他の治療と組み合わせた、本開示のE-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物の投与のためのプロトコールを提供する。本開示の組み合わせ治療の治療(例えば、予防剤または治療剤)は、対象に、付随的または逐次的に投与され得る。本開示の組み合わせ治療の治療(例えば、予防剤または治療剤)は、周期的にも投与され得る。周期的治療には、治療(例えば、薬剤)のうち1つの副作用を回避もしくは低減させるために治療(例えば、薬剤)のうち1つに対する抵抗性の発達を低減させるため、および/または治療の効力を改善するために、一定期間にわたる第1の治療(例えば、第1の予防剤または治療剤)の投与、その後の、一定期間にわたる第2の治療(例えば、第2の予防剤または治療剤)の投与、およびこの逐次的な投与、を反復すること、即ち、サイクルが関与する。
【0338】
本開示の組み合わせ治療の治療(例えば、予防剤または治療剤)は、対象に同時発生的に投与され得る。用語「同時発生的に」は、治療(例えば、予防剤または治療剤)の投与が正確に同時であることに限定されないが、むしろ、それらが他の方法で投与された場合よりも増加した利益を提供するように他の治療と一緒に本開示の抗体またはそのコンジュゲートが作用できるような順番で、かつそのような時間間隔内に、本開示のE-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物が対象に投与されることを意味する。例えば、各治療は、対象に、同時に、または異なる時点において任意の順序で逐次的に投与され得る;しかし、同時に投与されない場合、これらは、所望の治療効果または予防効果を提供するために、時間的に十分に接近して投与すべきである。各治療は、任意の適切な形態で、任意の適切な経路によって、対象に別々に投与され得る。種々の実施形態では、治療(例えば、予防剤または治療剤)は、15分未満、30分未満、1時間未満離れて、約1時間離れて、約1時間~約2時間離れて、約2時間~約3時間離れて、約3時間~約4時間離れて、約4時間~約5時間離れて、約5時間~約6時間離れて、約6時間~約7時間離れて、約7時間~約8時間離れて、約8時間~約9時間離れて、約9時間~約10時間離れて、約10時間~約11時間離れて、約11時間~約12時間離れて、24時間離れて、48時間離れて、72時間離れて、または1週間離れて、対象に投与される。他の実施形態では、2つ以上の治療(例えば、予防剤または治療剤)は、同じ患者来院内に、投与される。
【0339】
組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、同じ医薬組成物中で対象に投与され得る。あるいは、組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、別々の医薬組成物で、対象に同時発生的に投与され得る。予防剤または治療剤は、同じまたは異なる経路の投与によって、対象に投与され得る。
【0340】
診断的使用
本発明の抗E-セレクチン抗体、抗体組成物および方法は、イムノアッセイ、ならびにE-セレクチン媒介性障害の診断、および処置の評価のための使用を含む、in vitroおよびin vivoの有用性を有する。これらの方法は、E-セレクチンの存在と関連する障害を有するヒト患者を診断、評価および処置するために特に適切である。E-セレクチンの存在と関連するこの障害には、SCD、皮膚疾患(例えば、乾癬)、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ)および糖尿病の合併症が含まれるがこれらに限定されない。
【0341】
本発明は、サンプル中のE-セレクチンの存在を検出するための方法であって、E-セレクチンを含むと疑われるサンプルを、E-セレクチンに対して特異的な抗体と接触させるステップ、および抗体と結合したE-セレクチンの存在を検出するステップを含み、それによって、サンプル中のE-セレクチンを検出する、方法を提供する。E-セレクチンが固体支持体に結合され、サンプルがそれに添加されて、サンプル中のE-セレクチンに抗体を結合させるアッセイが含まれるがこれに限定されない、抗体と結合したE-セレクチンを検出するための方法が、当該分野で周知である。固体支持体に結合した抗体と同じまたはそれとは異なる第2のE-セレクチン抗体が添加され、直接的標識化(即ち、第2の抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされる)によって、または例えば、第2の抗体の定常ドメインと反応し、検出可能な標識を含む、別の種由来の第3の抗体を添加することによって、検出され得る。したがって、このアッセイは、サンプル中のE-セレクチンの存在または非存在を検出するために使用され得る。
【0342】
本発明は、サンプル中のE-セレクチンの濃度を決定するための方法であって、検出可能な標識にカップリングされたE-セレクチンを含む標識された競合相手を提供するステップ;E-セレクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供するステップ;サンプル、抗体および標識された競合相手を組み合わせるステップであって、サンプル中のE-セレクチンが、抗体への結合について、標識された競合相手と競合する、ステップ;ならびに標識の検出によって、抗体に結合していない標識された競合相手の量を測定することによって、このサンプル中のE-セレクチンの濃度を決定するステップ、を含む方法もまた提供する。サンプルの非存在下で抗体に結合した標識された競合相手の量が、サンプルが添加された場合の抗体に結合した標識された競合相手の量と比較される。サンプルの存在下での結合した標識された競合相手の減少の量は、サンプル中に存在する標識されていないE-セレクチンの量の指標であり、その結果、このアッセイは、サンプル中のE-セレクチンの存在およびレベルを評価するために使用され得る。一部の実施形態では、E-セレクチンは、可溶性E-セレクチンである。一部の実施形態では、E-セレクチンは、膜結合型E-セレクチンである。
【0343】
一実施形態では、本発明は、対象において、増加したレベルのE-セレクチンと関連する疾患または障害に対する処置の有効性を評価するための方法であって、対象に処置を投与するステップ、および処置の前に対象から得られたサンプル中のE-セレクチンのレベルを、処置の後に対象から得られた他の点では同一のサンプル中のE-セレクチンのレベルと比較するステップ、を含み、サンプル中のE-セレクチンのレベルが、E-セレクチン特異的抗体を使用して評価され、さらに、処置の前に対象から収集されたサンプル中のE-セレクチンのレベルと比較した、処置の後に対象から収集されたサンプル中のE-セレクチンのより低いレベルが、処置の過程の有効性の指標である、方法を提供する。
【0344】
E-セレクチン特異的抗体または標識された競合相手に関して、「標識された」という用語は、検出可能な物質を抗体または標識された競合相手にカップリングする(即ち、物理的に連結する)ことによる直接的標識化、ならびにそれを直接標識される別の試薬にカップリングすることによる、抗体または標識された競合相手の間接的標識化を含む。間接的標識化の一例には、蛍光標識した二次抗体を使用した一次抗体の検出が含まれる。本発明のポリペプチドの検出のためのin vitro技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光が含まれる。
【0345】
用語「サンプル」は、対象から単離された組織、細胞および生物学的流体(例えば、血液、CSF、尿など)、ならびに対象内に存在する組織、細胞および流体を含む意図である。
【0346】
本明細書に記載される抗体、標識された競合相手、および潜在的な治療的化合物は、様々な検出システムを用いたいくつかの他の均一および不均一イムノアッセイのいずれかとの使用のためにも適切である。
【0347】
組成物
【0348】
本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、医薬組成物として製剤化され得る。医薬組成物は、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態の、薬学的に許容できる担体、賦形剤および/または安定剤(Remington:The Science and practice of Pharmacy、第21版、2005、Lippincott Williams and Wilkins、K.E.Hoover編)をさらに含み得る。本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容できる担体」または「薬学的に許容できる賦形剤」には、活性成分と組み合わされた場合に、成分が生物学的活性を保持することを可能にし、かつ、対象の免疫系とは非反応性である任意の材料が含まれる。
【0349】
例には、リン酸緩衝溶液(PBS)、水、通常の生理食塩水(0.9%)、エマルション(例えば、油/水エマルション)および種々の型の湿潤剤などの標準の医薬担体のいずれかが含まれるがこれらに限定されない。エアロゾルまたは非経口投与のために好ましい希釈剤は、PBSおよび通常の生理食塩水である。
【0350】
許容できる担体、賦形剤、または安定剤は、投薬量および濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンが含まれる抗酸化剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン;グルコース、マンノース、もしくはデキストランが含まれる、単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性物質、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80(PS80)、ポリソルベート60(PS60)、ポリソルベート20(PS20))もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。薬学的に許容できる賦形剤は本明細書にさらに記載される。
【0351】
本開示の医薬化合物には、1つ以上の薬学的に許容できる塩が含まれ得る。かかる塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、非毒性無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来するもの、ならびに非毒性有機酸、例えば、脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族ならびに芳香族スルホン酸などに由来するものが含まれる。塩基付加塩には、アルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどに由来するもの、ならびに非毒性有機アミン、例えば、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものが含まれる。
【0352】
本開示の医薬組成物は、薬学的に許容できる抗酸化剤もまた含み得る。薬学的に許容できる抗酸化剤の例には、以下が含まれる:(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0353】
本開示の医薬組成物において使用され得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、ならびに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが含まれる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えば、レシチンの使用によって、分散物の場合には要求される粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。
【0354】
これらの組成物は、アジュバント、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤もまた含み得る。微生物の存在の防止は、無菌化手順、ならびに種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めること、の両方によって確実にされ得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に含めることが望ましい場合もある。さらに、注射可能な医薬形態の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0355】
医薬組成物は、典型的には、製造および貯蔵の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、高い薬物濃度に適切な、溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは他の秩序立った構造として製剤化され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンの使用によって、分散物の場合には要求される粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含めることが適切である。注射可能な組成物の延長された吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0356】
無菌の注射可能な溶液は、上に列挙した成分のうち1つまたはその組み合わせと共に、適切な溶媒中に活性化合物を要求される量で取り込み、その後、必要に応じて、無菌化精密濾過することによって、調製され得る。
【0357】
一般に、分散物は、基本分散媒および上に列挙したものからの要求される他の成分を含む無菌のビヒクル中に活性化合物を取り込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌の粉末の場合、調製の好ましい方法は、その以前に無菌濾過された溶液から、活性成分プラス任意のさらなる所望の成分の粉末を得る、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0358】
本開示の医薬組成物は、点眼投与に適切な製剤で、調製、包装または販売され得る。かかる製剤は、例えば、水性または油性液体担体中の活性成分の0.1%~1.0%(w/w)溶液または懸濁物を例えば含む点眼薬の形態であり得る。かかる点眼薬は、緩衝剤、塩、または本明細書に記載されるさらなる成分のうち1つ以上の他のものをさらに含み得る。有用な他の点眼投与可能な製剤には、微結晶形態で、またはリポソーム調製物中に、活性成分を含むものが含まれる。
【0359】
本明細書で使用する場合、「さらなる成分」には、以下のうち1つ以上が含まれるがこれらに限定されない:賦形剤;表面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;香味剤;着色剤;防腐剤;生理学的に分解可能な組成物、例えば、ゼラチン;水性ビヒクルおよび溶媒;油性ビヒクルおよび溶媒;懸濁化剤;分散剤または湿潤剤;乳化剤、乳化破壊剤(demulcent);緩衝液;塩;増粘剤;フィラー;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;および薬学的に許容できるポリマー性または疎水性材料。本開示の医薬組成物中に含められ得る他の「さらなる成分」は、当該分野で公知であり、例えば、本明細書で参照によって組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、Genaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1985)に記載されている。
【0360】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、水性緩衝溶液1mL中100mgの抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片を含有するバイアル中に製剤化される。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、水性緩衝溶液1mL中150mgの抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片を含有するバイアル中に製剤化される。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により皮下投与のために、水性緩衝溶液1mL中15mg、40mg、100mg、300mg、または600mgの抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片を含有するバイアル中に製剤化される。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、任意選択により静脈内投与のために、水性緩衝溶液1mL中500mgの抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片を含有するバイアル中に製剤化される。
【0361】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約25mg/mL、50mg/mL、75mg/mL、100mg/mL、125mg/mL、150mg/mlの抗体またはその抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約100mg/mLの抗体またはその抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、SCおよび/またはIV投与に適した医薬組成物は、約100mg/mLの抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片を含む。
【0362】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7または配列番号13のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む無菌の水溶液として、静脈内または皮下製剤で投与される。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む無菌の水溶液として、静脈内または皮下製剤で投与される。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7または配列番号13のアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む無菌の水溶液として、静脈内または皮下製剤で投与される。
【0363】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)またはその抗原結合性断片は、約5mg/mL、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mLの抗体、約25mg/mL、約50mg/mL、約75mg/ml、約100mg/mL、約125mg/mL、または約150mg/mLの抗体またはその抗原結合性断片を含有する無菌の水溶液である静脈内または皮下製剤として投与される。一部の実施形態では、静脈内または皮下製剤は、約5~6の範囲のpHで酢酸ナトリウム、ポリソルベート80、および塩化ナトリウムを含む無菌の水溶液である。一部の実施形態では、静脈内製剤は、pH5.5で、20mM酢酸ナトリウム、0.2mg/mLポリソルベート80および140mM塩化ナトリウムと共に、5または10mg/mLの抗体を含む、無菌の水溶液である。さらに、抗体またはその抗原結合性断片を含む溶液は、多くの他の化合物の中でも、グルタミン酸、ヒスチジン、マンニトール、スクロース、トレハロース、グリシン、ポリ(エチレン)グリコール、EDTA、メチオニン、ポリソルベート80およびそれらの任意の組み合わせ、ならびに当該分野で公知の多くの他の化合物を含み得る。
【0364】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、以下の構成要素を含む:pH5.8で、50mg/mLまたは100mg/mLの本開示の抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)または抗原結合性断片、20mMヒスチジン、8.5%スクロースおよび0.02%ポリソルベート80、0.005%EDTA。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、以下の構成要素を含む:pH5.8で、100mg/mLの本開示の抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)または抗原結合性断片、10mMヒスチジン、5%スクロースおよび0.01%ポリソルベート80。
【0365】
一部の実施形態では、医薬組成物は、100mg/mLの濃度の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体1444)、1.12mg/mL L-ヒスチジン、2.67mg/mL L-ヒスチジン塩酸塩一水和物、85mg/mLスクロース、0.05mg/mLエデト酸二ナトリウム二水和物および0.2mg/mLポリソルベート80 pH5.8を公称充填体積1.0mLで含む。かかる医薬組成物は、SCまたはIV投与に適したものである。
【0366】
かかる医薬組成物は、液体製剤として、または凍結乾燥された粉末として、提供され得る。粉末が最大体積で再構成される場合、組成物は、同じ製剤を保持する。あるいは、粉末は、半分体積で再構成され得、その場合、組成物は、同じ構成要素を含むが、濃度が2倍である。
【0367】
治療剤に関して、この薬剤が例えば組み合わせ治療において使用される小分子である場合、これは、当該分野で周知のように、例えば、生理的に許容できるカチオンまたはアニオンと組み合わせた、生理的に許容できるエステルまたは塩の形態で、医薬組成物中に存在し得る。
【0368】
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で公知のまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、かかる調製方法は、活性成分を、担体または1つ以上の他の補助成分と関連させるステップ、および次いで、必要な場合または望ましい場合、産物を所望の単回用量単位または複数用量単位へと成形または包装するステップを含む。
【0369】
一部の実施形態では、本開示の組成物は、エンドトキシンおよび/または関連の発熱性物質を実質的に含まない、発熱物質を含まない製剤である。エンドトキシンには、微生物の内側に制限される毒素が含まれ、これは、微生物が破壊または死亡した場合に放出される。発熱性物質には、細菌および他の微生物の外膜からの、発熱誘導性の熱安定性物質(糖タンパク質)もまた含まれる。これらの物質は、ヒトに投与されると、発熱、低血圧およびショックを引き起こし得る。潜在的な有害作用に起因して、静脈内投与される医薬薬物溶液から、低い量のエンドトキシンでさえも除去することが有利である。食品医薬品局(「FDA」)は、静脈内薬物適用のための、単一の1時間の期間における、体重1キログラム当たり1用量当たり、5エンドトキシン単位(EU)の上限を設定している(The United States Pharmacopeial Convention、Pharmacopeial Forum 26(1):223(2000))。治療的タンパク質が、体重1キログラム当たり数百または数千ミリグラムの量で投与される場合、微量のエンドトキシンでさえも除去することが有利である。一実施形態では、組成物中のエンドトキシンおよび発熱物質のレベルは、10EU/mg未満、または5EU/mg未満、または1EU/mg未満、または0.1EU/mg未満、または0.01EU/mg未満、または0.001EU/mg未満である。別の実施形態では、組成物中のエンドトキシンおよび発熱物質のレベルは、約10EU/mg未満、または約5EU/mg未満、または約1EU/mg未満、または約0.1EU/mg未満、または約0.01EU/mg未満、または約0.001EU/mg未満である。
【0370】
投薬および投与
本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬または無菌の組成物を調製するために、抗体は、薬学的に許容できる担体または賦形剤(上記を参照のこと)と混合される。治療剤および診断剤の製剤は、例えば、凍結乾燥された粉末、スラリー、水溶液、ローションまたは懸濁物の形態の、生理学的に許容できる担体、賦形剤または安定剤と混合することによって調製され得る(例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw-Hill、New York、N.Y.;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott,Williams,and Wilkins、New York、N.Y.;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems、Marcel Dekker、NY;WeinerおよびKotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety、Marcel Dekker,Inc.、New York、N.Y.を参照のこと)。
【0371】
治療薬のために投与レジメンを選択することは、実体の血清または組織ターンオーバー速度、症状のレベル、実体の免疫原性、および生物学的マトリックス中の標的細胞のアクセス可能性が含まれるいくつかの因子に依存する。ある特定の実施形態では、投与レジメンは、許容できるレベルの副作用と合致した、患者に送達される治療薬の量を最大化する。したがって、送達される生物製剤の量は、特定の実体、および処置されている状態の重症度に一部依存する。抗体、サイトカインおよび小分子の適切な用量を選択する際のガイダンスは、入手可能である(例えば、Wawrzynczak、1996、Antibody Therapy、Bios Scientific Pub.Ltd、Oxfordshire、UK;Kresina(編)、1991、Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis、Marcel Dekker、New York、N.Y.;Bach(編)、1993、Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases、Marcel Dekker、New York、N.Y.;Baertら、New Engl.J.Med.2003;348:601~608;Milgromら、New Engl.J.Med.1999;341:1966~1973;Slamonら、New Engl.J.Med.2001;344:783~792;Beniaminovitzら、New Engl.J.Med.2000;342:613~619;Ghoshら、New Engl.J.Med.2003;348:24~32;Lipskyら、New Engl.J.Med.2000;343:1594~1602を参照のこと)。
【0372】
適切な用量の決定は、例えば、当該分野で公知の、または処置に影響を与えると疑われるもしくはは処置に影響を与えると予測される、パラメーターまたは因子を使用して、臨床医によってなされる。一般に、用量は、最適な用量よりもいくらか少ない量で開始し、任意の負の副作用と比較して所望のまたは最適な効果が達成されるまで、その後小さい増分ずつ増加される。特定の投薬プロトコールは、著しい望ましくない副作用を回避する最大用量または投薬頻度を伴うものであり得る。
【0373】
「E-セレクチンとの相互作用を低減させる、減少させる、中和するまたは阻害する」は、この用語を本明細書で使用する場合、E-セレクチンのリガンドとの相互作用を、あらゆる治療介入前の相互作用のレベルと比較して低減させる、減少させる、中和するまたは阻害することを意味する。本明細書で使用する場合、「遊離E-セレクチン」は、結合していない、またはさもなくば別の分子(例えば、遊離または細胞表面に発現されるE-セレクチンリガンド)との複合体中に存在しないE-セレクチンを意味する。
【0374】
E-セレクチンのレベルには、対象における遊離E-セレクチンのレベルが含まれ、このレベルは、本明細書で開示される方法または当該分野で公知の遊離E-セレクチンのレベルを評価するための任意の他の方法を使用して、評価される。
【0375】
一実施形態では、遊離E-セレクチンのレベルは、本開示の抗E-セレクチン抗体の投与前の対象におけるE-セレクチンのレベルと比較して低減される。一実施形態では、遊離E-セレクチンのレベルは、遊離E-セレクチンと関連するまたはそれによって媒介される疾患、障害または状態に対象が罹患していることと関連するまたはそれを示す標準的なレベルの遊離E-セレクチンと比較して低減される。
【0376】
一部の実施形態では、本開示は、遊離E-セレクチンによって媒介されるまたはそれと関連する検出可能な有害作用の減少または完全な欠如が存在するレベルまで、遊離E-セレクチンのレベルを低減させることを包含する。一部の実施形態では、E-セレクチンの機能活性、例えば、(a)内皮細胞への白血球テザリング;(b)内皮細胞への安定な接着の活性化;(c)白血球を停止させる緩徐なローリング;(d)白血球の経内皮遊走;(e)CD18インテグリンの親和性および結合力;(f)急性炎症の部位への白血球の輸送;(g)細胞質カルシウムの増加;(h)p38 MAPキナーゼおよびSykキナーゼを活性化するチロシンリン酸化の増加;(i)血液から血管内皮への血小板および白血球の動員;ならびに/または(j)炎症促進性環境を創出することを中和するために、有効用量の抗E-セレクチン抗体が投与される。
【0377】
本明細書で使用する場合、薬物、化合物または医薬組成物の「有効投薬量」、「有効用量」、「有効量」または「治療有効量」は、任意の1つ以上の有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的使用について、有益なまたは所望の結果には、リスクを排除もしくは低減させること、発生の頻度を低減させること(例えば、ある期間にわたって、例えば、週に1回、月に1回、年に1回)、重症度を低下させること、および/または疾患、その合併症、および疾患の発達の間に存在する中間の病理学的表現型の生化学的、組織学的および/もしくは行動学的症状を含む、疾患の発症を遅延させることが含まれる。治療的使用について、有益なまたは所望の結果には、検出可能な臨床結果、例えば、VOCの速度を低減もしくは減少させること、またはE-セレクチンの発現から生じる1つ以上の症状を低減させること、疾患を処置するために要求される他の薬物療法の用量を減少させること、別の薬物療法の効果を増強すること、および/もしくは患者の疾患の進行を遅延させること、が含まれる。有効投薬量は、1つ以上の投与で投与され得る。本発明の目的のために、薬物、化合物、または医薬組成物の有効投薬量は、予防的処置または治療的処置を直接的または間接的に達成するのに十分な量である。臨床状況において理解されるように、薬物、化合物、または医薬組成物の有効投薬量は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効投薬量」は、1つ以上の治療剤を投与する観点から検討され得、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るまたは達成される場合に、有効量で与えられたとみなされ得る。
【0378】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体の有効用量は、SCD、皮膚疾患(例えば、乾癬)、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ)および糖尿病の合併症を有する患者に投与される。
【0379】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)の有効用量は、SCD、血管閉塞クリーゼ、疼痛、臓器梗塞、虚血、脳卒中、終末器官機能障害、急性胸部および血管閉塞(vascular obstruction)が含まれるがこれらに限定されない、E-セレクチンの発現および/またはE-セレクチンのリガンド(例えば、sLexAおよび/またはX決定因子)への結合と関連するまたはそれによって媒介される疾患、障害および状態を処置および/または予防するために投与される。
【0380】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)の有効用量は、SCDに対する予防的処置として利用される場合、VOCの発生を予防するまたは低減させるために投与される。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)の予防的投与は、1回投与される。一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)の予防的投与は、継続的に投与される(例えば、ある期間にわたって1回以上の投薬)。
【0381】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)の有効用量は、SCDを有する患者における急性VOCを、VOCの持続時間、強度および/または重症度を減少させることによって処置するために投与される。
【0382】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)の有効用量は、SCDの少なくとも1つの徴候および/または症状、例えば、心臓胸部系に影響を及ぼすもの(例えば、慢性拘束性肺疾患、左心室拡張疾患、肺高血圧症、急性胸部症候群、調律異常、突然死、血管閉塞クリーゼ)、神経系に影響を及ぼすもの(例えば、出血性卒中、静脈洞血栓症、無症候性脳梗塞、慢性疼痛、急性虚血性脳卒中、増殖性網膜症、眼窩梗塞、認知障害)、細網内皮系に影響を及ぼすもの(例えば、脾臓血球貯留、機能性脾機能低下症、貧血、溶血)、筋骨格系に影響を及ぼすもの(例えば、無血管性壊死、皮膚潰瘍)、泌尿生殖器系に影響を及ぼすもの(例えば、乳頭壊死、タンパク尿、腎不全、血尿、夜尿症、持続勃起症)および胃腸系に影響を及ぼすもの(例えば、胆石症、胆管症、肝障害、腸間膜血管閉塞症(mesenteric vaso-occlusion))を処置する、予防するおよび/または寛解させるために投与される。
【0383】
一部の実施形態では、方法または使用は、約1mg~約800mgの用量を投与することを含む。一部の実施形態では、方法または使用は、約1mg~800mgの用量を初期固定用量として投与することを含む。一部の実施形態では、方法または使用は、約1mg~約2mg、約2mg~約5mg、約5mg~約10mg、約10mg~約20mg、約20mg~約30mg、約30mg~約40mg、約40mg~約50mg、約50mg~約60mg、約60mg~約70mg、約70mg~約80mg、約80mg~約90mg、約90mg~約100mg、約100mg~約150mg、約150mg~約200mg、約200mg~約300mg、約300mg~約400mg、約400mg~約500mg、約500mg~約600mg、約600mg~約700mgまたは約700mg~約800mgの用量を任意選択により初期固定用量として投与することを含む。一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗E-セレクチン抗体もしくはその抗原結合性断片またはその医薬組成物の約15mg、40mg、100mg、150mg、300mg、500mgまたは600mgの用量を投与することを含む。一部の実施形態では、用量は、初期固定用量である。
【0384】
一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗E-セレクチン抗体もしくはその抗原結合性断片またはその医薬組成物の約150mgの用量を投与することを含む。一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗E-セレクチン抗体もしくはその抗原結合性断片またはその医薬組成物の約150mgの用量を毎週投与することを含む。一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗E-セレクチン抗体(例えば、抗体1444)もしくはその抗原結合性断片またはその医薬組成物の約150mgの用量を、毎週、皮下投与することを含む。
【0385】
一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物の約0.01mg/kg~約30mg/kgの用量を、任意選択により初期用量として投与することを含む。初期用量には、1つ以上の引き続く用量が後に続き得る。一部の実施形態では、1つ以上の引き続く用量は、毎週、1週間おき、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎または12週間毎の少なくともいずれかで投与され得る。
【0386】
初期用量には、1つ以上の引き続く用量が後に続き得る。一部の実施形態では、引き続く用量は、抗E-セレクチン抗体の、初期用量と比較して同じ用量、より少ない用量またはより多い用量である。一部の実施形態では、1つ以上の引き続く用量は、毎週、1週間おき、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎または12週間毎の少なくともいずれかで投与され得る。特定の投薬プロトコールは、著しい望ましくない副作用を回避する最大用量または投薬頻度を伴うものである。
【0387】
本開示の医薬組成物は、当該分野で公知の種々の方法のうち1つ以上を使用して1つ以上の経路の投与によっても投与され得る。当業者には理解されるように、投与の経路および/または形式は所望の結果に応じて変動する。本開示の抗体のために選択される投与の経路には、例えば、注射または注入による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経口経路の投与が含まれる。非経口投与は、通常は注射による、経腸および局部投与以外の投与形式であり得、限定なしに、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入が含まれる。あるいは、本開示の組成物は、非経口でない経路、例えば、局部、表皮または粘膜投与経路によって、例えば、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下または局部に投与され得る。
【0388】
一部の実施形態では、本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は静脈内投与される。一部の実施形態では、本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は皮下投与される。
【0389】
一部の実施形態では、本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、毎週、静脈内または皮下投与される。一部の実施形態では、本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、約15mg、約40mg、約100mg、約150mg、約300mg、または約600mgの単位用量で、毎週、皮下投与される。一部の実施形態では、本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、約150mgまたは約500mgの単位用量で、毎週、静脈内投与される。
【0390】
一部の実施形態では、対象は、本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を毎週投与され、疾患(例えば、SCD)の少なくとも1つの徴候および/または症状の処置および/または予防において有効である、治療的に活性な化合物または処置モダリティを毎日、毎週、隔週、毎月、または必要に応じて投与される。本開示は、本開示の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を単独で、または他の治療と組み合わせて、それを必要とする対象に投与するためのプロトコールを提供する。本開示の組み合わせ治療の治療(例えば、予防剤または治療剤)は、対象に、付随的または逐次的に投与され得る。本開示の組み合わせ治療の治療(例えば、予防剤または治療剤)は、周期的にも投与され得る。
【0391】
一部の実施形態では、抗E-セレクチン抗体もしくはその抗原結合性断片またはそれを含む医薬組成物は、約1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、1カ月に2回、1カ月に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、4カ月毎に1回、5カ月毎に1回、6カ月毎に1回、7カ月毎に1回、8カ月毎に1回、9カ月毎に1回、10カ月毎に1回、11カ月毎に1回または12カ月毎に1回、投与される。
【0392】
一部の実施形態では、用量の一部は、静脈内ボーラスによって投与され、用量の残りは、抗体製剤の注入によって投与される。例えば、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の0.01mg/kg静脈内注射は、ボーラスとして与えられ得、抗体用量の残りは、静脈内注射によって投与され得る。所定の用量の抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、1時間半~2時間~5時間の期間にわたって、投与され得る。
【0393】
必要であれば、組成物は、可溶化剤、および、注射部位の疼痛を和らげるためのリドカインなどの局所麻酔薬もまた含み得る。さらに、例えば、吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル化剤を伴う製剤の使用により、経肺投与もまた使用され得る。例えば、それぞれの全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,019,968号、同第5,985,320号、同第5,985,309号、同第5,934,272号、同第5,874,064号、同第5,855,913号、同第5,290,540号、および同第4,880,078号;およびPCT公開第WO92/19244号、同第WO97/32572号、同第WO97/44013号、同第WO98/31346号、および同第WO99/66903号を参照のこと。
【0394】
キット
本開示は、本明細書に記載される抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片のいずれかまたは全てを含むキットもまた提供する。本開示のキットは、本明細書に記載される抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片および本明細書に記載される本開示の方法のいずれかに従った使用に関する指示を含む1つ以上のコンテナを含む。一般に、これらの指示は、上記の治療的処置のための抗体の投与に関する記載を含む。一部の実施形態では、キットは、単回投薬の投与単位を生じさせるために提供される。ある特定の実施形態では、キットは、乾燥タンパク質を有する第1のコンテナおよび水性製剤を有する第2のコンテナの両方を含み得る。ある特定の実施形態では、アプリケーター、例えば、単一のおよび複数チャンバーの事前充填シリンジまたはデバイス(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ(lyosyringe))を含むキットが含まれる。
【0395】
一部の実施形態では、キットは、抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片を含むアプリケーターを含み、ここで、アプリケーターは、患者(例えば、SCDを有する患者)による自己投与のために設計されたまたはそれが許容できるものである。一部の実施形態では、自己投与は皮下投与による。
【0396】
抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の使用に関する指示は、一般に、意図した処置のための投薬量、投薬スケジュール、および投与の経路(例えば、SCまたはIV)に関する情報を含む。コンテナは、単位用量、バルク包装(例えば、多用量包装)またはサブ単位用量であり得る。本開示のキット中に供給される指示は、典型的には、ラベルまたは添付文書(例えば、キット中に含まれる紙シート)上の書面による指示であるが、機械可読指示(例えば、磁気または光学保存ディスク上で運搬される指示)もまた許容できる。
【0397】
本開示のキットは、適切な包装中にある。適切な包装には、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性包装(例えば、密封Mylarまたはプラスチックバッグ)などが含まれるがこれらに限定されない。特定のデバイス、例えば、インヘラー、経鼻投与デバイス(例えば、アトマイザー)または注入デバイス、例えば、ミニポンプと組み合わせた使用のための包装もまた企図される。キットは、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、コンテナは、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。コンテナもまた、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、コンテナは、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性な薬剤は、本開示の抗E-セレクチン抗体である。コンテナは、さらなる治療剤をさらに含み得る。
【0398】
一実施形態では、本発明は、SCDの症状の処置または予防において有効である第2の治療的に活性な化合物または処置モダリティをさらに含むキットを含み、ここで、抗E-セレクチン抗体および第2の化合物またはモダリティの量が一緒になって、SCDの症状の処置または予防において相乗的効果を達成する、即ち、組み合わせが「相乗的」である(即ち、組み合わせが、2つ以上の個々の治療の単なる相加効果よりも大きい効果を提供する)。相乗的組み合わせ治療を含むかかるキットにより、投与される治療剤をより少ない投薬量で有利に利用し、したがって、種々の単剤療法と関連する可能性のある毒性または合併症を回避することができる。
【0399】
一部の実施形態では、キットは、例えば、ペニシリン、ヒドロキシウレア(例えば、DROXIA、HYDREA)、L-グルタミン(例えば、ENDARI)、クリザンリズマブ(ADAKVEO)、ボキセロートル(OXBRYTA)、アピキサバン(ELIQUIS)、リバーロキサバン(XARELTO)、非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛薬、一般に、オピオイド鎮痛薬、IW-1701、リオシグアト(ADEMPAS)、チカグレロル(BRILINTA)またはメマンチン(NAMENDA)が含まれる、SCDの徴候および/または症状の処置または予防のために有用な少なくとも1つのさらなる治療的に活性な化合物をさらに含み得る。
【0400】
キットは、任意選択により、さらなる構成要素、例えば、緩衝液および説明情報を提供し得る。通常、キットは、コンテナ、およびコンテナ上にあるまたはそれと関連したラベルまたは添付文書を含む。
【0401】
本開示は、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかまたは全てを含む診断用キットもまた提供する。診断用キットは、例えば、サンプル中のE-セレクチンの存在を検出するために有用である。一部の実施形態では、診断用キットは、個体をE-セレクチンに媒介される疾患、障害または状態を発生するリスクにさらす可能性がある不顕性の疾患、障害または状態を有する個体を同定するために使用され得る。一部の実施形態では、診断用キットは、E-セレクチンに媒介される疾患、障害または状態を有する疑いがある個体におけるE-セレクチンの存在および/またはレベルを検出するために使用され得る。
【0402】
本開示の診断用キットは、本明細書に記載される抗E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片および本明細書に記載される本開示の方法のいずれかに従った使用に関する指示を含む1つ以上のコンテナを含む。一般に、指示は、E-セレクチンに媒介される疾患、障害または状態、例えばSCDを患っていることが疑われるまたは分かっている患者におけるVOCおよびまたはHbS、HbC、Hbβ+-サラセミア、Hbβ°-サラセミアもしくは他のHbバリアントが含まれる異常な形態のβ-グロビンと関連するまたはそれによって媒介される任意の他の状態のリスクがあるまたはそれを有する疑いがある個体におけるE-セレクチンの存在を検出するための、E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片の使用に関する記載を含む。一部の実施形態では、例示的な診断用キットは、例えば、E-セレクチン抗体またはその抗原結合性断片、陰性対照サンプル、陽性対照サンプルなどの試薬、およびキットの使用に関する指図を含有するように構成され得る。
【0403】
生物学的寄託
抗E-セレクチン抗体1444の重鎖および軽鎖は、2019年12月6日に、ブダペスト条約による条項に従ってAmerican Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、Va.20110~2209、USAに寄託された。
【0404】
【0405】
これらの寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条項およびその規則(ブダペスト条約)の規定の下で行われた。これは、寄託の日から30年間にわたって寄託物の生存可能な培養物の維持を保証する。寄託物は、Pfizer Inc.とATCCとの間での同意を条件として、ブダペスト条約の条項の下でATCCによって入手可能にされ、これは、関連する米国特許の発行の際、または任意の米国もしくは外国の特許出願の公衆への公開の際のいずれか早い方の時点における、公衆への寄託物の培養物の子孫の恒久的かつ無制限の入手可能性を保証し、米国特許商標庁長官が米国特許法122条およびそれに従う長官規則(特に886 OG 638に関連した米国特許規則1.14を含む)に従って資格ありと決定した者への子孫の入手可能性を保証する。
【0406】
本出願の譲受人は、寄託にかかる材料の培養物が、適切な条件下で培養した場合に万一死んだり失われたり破壊されたりしたときには、通知があり次第それらの材料が同一物の別のもので速やかに置き換えられることに同意している。寄託された材料の入手可能性は、その特許法に従って任意の政府の権限の下で与えられた権利に違反して本発明を実施することの許諾として解釈すべきではない。
【0407】
一般技術
本発明は、当然変動し得る、それを作製する特定の合成方法に限定されないことを理解すべきである。本明細書で他に定義されない限り、本発明と併せて使用される科学用語および技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有するものとする。さらに、文脈が他を要求しない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションと併せて使用される術語体系、ならびにそれらの技術は、当該分野で周知かつ一般に使用されるものである。
【0408】
本発明の実施は、他に示されない限り、当業者の技術範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を使用する。かかる技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993~1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);SambrookおよびRussell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(2001);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、NY(2002);HarlowおよびLane、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(1998);Coliganら、Short Protocols in Protein Science、John Wiley & Sons、NY(2003);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)などの文献中で完全に説明されている。
【0409】
酵素反応および精製技術は、当該分野で一般に達成されるように、または本明細書に記載されるように、製造業者の仕様書に従って実施される。本明細書に記載される分析化学、生化学、免疫学、分子生物学、合成有機化学ならびに医薬品化学および薬化学と併せて使用される術語体系、ならびにそれらの実験室手順ならびに技術は、当該分野で周知かつ一般に使用されるものである。標準的な技術が、化学的合成、化学的分析、医薬の調製、製剤および送達、ならびに患者の処置のために使用される。
【0410】
等価物
上述の説明および以下の実施例は、本開示のある特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らによって企図される最良の形態を記載する。しかし、上述がテキスト中に出現し得ることがどんなに詳述されても、本開示が多くの方法で実施され得、本開示が添付の特許請求の範囲およびその任意の等価物に従って実施されるべきであることが、理解される。
【0411】
開示された教示は、種々の適用、方法、キットおよび組成物に関して記載されてきたが、種々の変化および改変が、本明細書の教示および以下の特許請求される開示から逸脱することなしになされ得ることが理解される。以下の実施例は、開示された教示をよりよく説明するために提供されるのであって、本明細書に提示された教示の範囲を限定することを意図しない。本明細書の教示は、これらの例示的な実施形態に関して記載されてきたが、当業者は、これらの例示的な実施形態の多数のバリエーションおよび改変が過度の実験なしに可能であることを容易に理解する。全てのかかるバリエーションおよび改変は、本明細書の教示の範囲内である。
【0412】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書で引用される全ての参考文献、ならびにまだ引用されていない範囲までその中で引用される参考文献は、それらの全体が本明細書で参照によって組み込まれる。組み込まれた文献および類似の資料のうち1つ以上が、定義された用語、用語の用法、記載された技術などが含まれるがこれらに限定されない本出願とは異なるまたはそれと矛盾する場合、本出願が支配する。
【実施例】
【0413】
本発明がより良く理解され得るように、以下の実施例が示される。これらの実施例は、例示のみを目的としており、本発明の範囲をいかなる方法によっても限定しないと解釈すべきである。
【0414】
(実施例1)
ヒトE-セレクチンに結合するラットモノクローナル抗体の単離
Spraque Dawleyラットを、Rappid IP免疫化法を使用して、可溶性ヒトE-セレクチン細胞外ドメイン(Uniprot P16581 残基22~556;配列番号133)で免疫化した。ハイブリドーマ上清を、直接結合HRP-ELISAを使用して、可溶性ヒト(配列番号133)およびマウス(配列番号135)のE-セレクチン細胞外ドメインならびに短縮型ヒトE-セレクチン(UniProtKB P16581 残基22~178;配列番号197)および短縮型マウスE-セレクチン(UniProtKB Q00690 残基22~178;配列番号199)E-セレクチンへの結合についてスクリーニングした。結合子のセットのうち、可溶性および短縮型ヒトE-セレクチンに結合した6つの抗体(0039、0158、0159、0164、0170および0180)を選択し、可溶性および短縮型マウスE-セレクチンに結合した1つの抗体(0027)を選択した。これら7つの抗体を、分子クローニングおよびサブ配列分析のために選択した。
【0415】
(実施例2)
ラット抗E-セレクチン抗体重鎖および軽鎖可変領域のクローニング
ヒトE-セレクチンに結合した抗E-セレクチン抗体(抗体0039、0158、0159、0164、0170および0180)またはマウスE-セレクチンに結合した抗E-セレクチン抗体(抗体0027)の重鎖(HC)および軽鎖(LC)可変領域を、SMART(登録商標)cDNA合成システム(Clontech Laboratories Inc.、Mountain View、California)を使用してクローニングし、その後PCR増幅した。cDNAを、RNEasyキット(Qiagen)およびSMART(登録商標)IIAオリゴ(Clontech Laboratories Inc.)をSuperscript(商標)III逆転写酵素(Invitrogen)と共に使用して、およそ500,000個のハイブリドーマ細胞(各クローン0027、0039、0158、0159、0164、0170および0180についての)から単離した1μgの総RNAから合成した。次いで、cDNAを、SMART(登録商標)IIAオリゴ配列にアニールするプライマーおよびラット定常領域特異的プライマー(軽鎖についてはラットカッパ、重鎖についてはラットIgG1)をQ5(登録商標)High-Fidelity 2X Master Mix(New England Biolabs Inc.)と共に使用するPCRによって増幅した。重鎖および軽鎖PCR産物を、pCR4-TOPOベクター(Invitrogen)中にサブクローニングし、核酸配列を決定した。この方法は、DNA配列の事前の知識が要求されないという点で有利である。さらに、得られたDNA配列は、縮重PCRプライマーの使用によって変更されない。
【0416】
可変重領域(抗体0039のVH(配列番号60のアミノ酸配列)、抗体0158のVH(配列番号75のアミノ酸配列)、抗体0159のVH(配列番号90のアミノ酸配列)、抗体0164のVH(配列番号35のアミノ酸配列)、抗体0170のVH(配列番号104のアミノ酸配列)、抗体0180のVH(配列番号118のアミノ酸配列)および抗体0027のVH(配列番号128のアミノ酸配列))を、エフェクター機能を無効にするように変異させたヒトIgG1定常領域(Leu234Ala、Leu235AlaおよびGly237Ala、EU番号付け;米国特許第5,624,821号)(配列番号15のアミノ酸配列)を含むpTT5哺乳動物発現ベクター中にクローニングして、キメラ重鎖を産生した。可変軽領域(抗体0039のVL(配列番号57のアミノ酸配列)、抗体0158のVL(配列番号73のアミノ酸配列)、抗体0159のVL(配列番号87のアミノ酸配列)、抗体0164のVL(配列番号32のアミノ酸配列)、抗体0170のVL(配列番号102のアミノ酸配列)、抗体0180のVL(配列番号116のアミノ酸配列)および抗体0027のVL(配列番号122のアミノ酸配列))を、ヒトカッパの定常領域(配列番号14のアミノ酸配列)を含むpTT5哺乳動物発現ベクター中にクローニングして、キメラ軽鎖を産生した。
【0417】
(実施例3)
抗E-セレクチン抗体の結合および中和
ヒトE-セレクチン細胞外ドメイン(配列番号133のアミノ酸配列プラス10His精製テイル)およびマウスE-セレクチン細胞外ドメイン(配列番号135のアミノ酸配列プラス10His精製テイル)への抗E-セレクチン抗体の結合を、組換え抗原結合ELISAをHPR検出と共に使用して測定した。384ウェルMaxisorpプレートを使用して、ヒトおよびマウスのHisタグ化組換えE-セレクチンポリペプチドを捕捉した。ポリペプチドを、変動する濃度のキメラ抗体と共にインキュベートし、HRP標識された抗ヒトIgG1抗体を用いて検出した。抗体0039、0158、0159、0164、0170および0180は、それぞれ0.02nM、0.03nM、0.02nM、0.02nM、0.01nMおよび0.01nMのEC50で、ヒトE-セレクチンに結合した。これらの抗体のいずれも、>133nMのEC50で、マウスE-セレクチンに結合することはなかった。抗体0027は、0.02nMのEC50で、マウスE-セレクチンに結合したが、>133nMのEC50で、ヒトE-セレクチンに結合することはなかった。
【0418】
抗E-セレクチン抗体の中和能力を、AlphaLISA均一競合アッセイで測定した。ここで、抗体は、ヒトE-セレクチン細胞外ドメイン(配列番号133のアミノ酸配列プラス10His精製テイル)、マウスE-セレクチン細胞外ドメイン(配列番号135のアミノ酸配列プラス10His精製テイル)またはカニクイザルE-セレクチン細胞外ドメイン(配列番号175のアミノ酸配列プラス10His精製テイル)のシアリルルイスAリガンドとの相互作用と競合した。この実験のために、1μLの抗体を、384ウェルプレートのウェルに添加し、その後、1μLのシアリルルイスA-PAA-ビオチンを、1.75nMの最終濃度になるように添加した。これを室温で15分間インキュベートし、その後、7nMの最終濃度になるように添加した1.4μLのヒト、マウスまたはカニクイザルE-セレクチンを添加した。これを室温で15分間再度インキュベートした。これに、1.4μLのAlphaLISAビーズを添加して(Ni-ドナー/SA-アクセプター)、10μg/mLの最終アッセイ濃度にした。これを、暗中で室温で少なくとも10時間インキュベートした。次いで、プレートを、AlphaLISAプロトコール(Envision)を使用して読み取った。
【0419】
ヒト、マウスおよびカニクイザルE-セレクチンの中和のEC50を、キメラ抗E-セレクチン抗体0027、0158、0159、0164、0170および0180について測定した。抗体0039、0158、0159、0164、0170および0180は、ヒトE-セレクチンに対して<1nMのEC50値を有したが、抗体0027は、ヒトE-セレクチンを中和せず、>133nMのEC50を有した。抗体0158、0159、0164、0170および0180は、カニクイザルE-セレクチンに対して<1nMのEC50値を有し、抗体0039は、カニクイザルE-セレクチンに対して>63nMのEC50を有し、抗体0027は、カニクイザルE-セレクチンを中和せず、>133nMのEC50を有した。抗体0027は、マウスE-セレクチンに対して1nMのEC50値を有したが、抗体0039、0158、0159、0164、0170および0180は、マウスE-セレクチンを中和せず、>133nMのEC50を有した(表4)。
【0420】
【0421】
(実施例4)
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用した抗E-セレクチンの動態評価
ヒト(配列番号133のアミノ酸配列)、マウス(配列番号135のアミノ酸配列)およびカニクイザル(配列番号175のアミノ酸配列)E-セレクチン細胞外ドメインタンパク質を調製した。各タンパク質は、精製に利用したC末端の10残基ヒスチジンタグを含んだ。抗ヒトFcセンサーチップを、製造業者のプロトコールに従って、カルボキシメチル化デキストランコーティングされたセンサーチップ(CM5)(カタログ番号BR100530、GE Healthcare)の4つ全てのフローセルへの抗ヒトIgG抗体(カタログ番号BR-1008-39、GE Healthcare)のアミンカップリングによって調製した。フローセルを、400mMの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)および100mMのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の1:1混合物を、10μL/分の流速で7分間注入することによって活性化した。抗ヒトIgG抗体を、10mMの酢酸ナトリウムpH5.0中で25μg/mLに希釈し、10μL/分で7分間にわたって全てのフローセル上に注入した。全てのフローセルを、1Mのエタノールアミン-HCl(ETH)で10μL/分で7分間遮断した。捕捉抗体の最終固定化レベルは、およそ10,000レゾナンスユニット(RU)であった。固定化および反応速度論のためのランニング緩衝液は、HBS-EP+(10mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)pH7.4、150mMの塩化ナトリウム、3mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.05%(v/v)Tween-20)であった。
【0422】
ヒト、カニクイザルおよびマウスE-セレクチンへの抗体の結合を特徴付けるために、抗体を、HBS-EP+中で0.5μg/mLになるように希釈し、10μL/分の流速で30秒間~1分間にわたってフローセル2、3および4上に固定化された抗ヒトIgGによって捕捉して、70~300RUの捕捉レベルを達成した。フローセル1は参照表面として使用した。抗体捕捉後、流速を50μL/分に増加させ、緩衝液、またはHBS-EP+中15nM~405nMの範囲の濃度のE-セレクチンタンパク質を、1.0分間の会合期間にわたって全てのフローセル上に注入し、次いで、6~15分間解離させた。各捕捉された抗体について収集されたHBS-EP+緩衝液サイクルを、二重参照に使用した(Myszka DG.J.Mol.Recognition 1999;12(5):279~84)。各サイクルの終了時に、抗IgG表面全体を、3MのMgCl2の30秒間のパルスおよびイオン性緩衝液(1.83MのMgCl2、0.92Mの尿素、1.83MのグアニジンHCl、pH7.4)の30秒間のパルスによって再生した(Andersson K.Analy.Chem.1999;71(13):2475~81)。動態アッセイを、10ヘルツ(Hz)の収集速度で25℃でBIAcore(商標)T200機器(GE Healthcare)で実施した。速度定数および親和性を、BIAcore(商標)T200 Evaluationソフトウェアバージョン3.0(GE Healthcare)で1:1結合モデルにデータをフィットさせることによって決定した。
【0423】
結合親和性を、固定化された抗ヒトIgGに抗体を最初に結合させることによって、抗体0039、0158、0159、0164、0170および0180に対してヒトおよびカニクイザルE-セレクチンについて、ならびにマウスE-セレクチン抗体0027について決定した。抗体捕捉後、E-セレクチンタンパク質の希釈物を上に流し、会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、t1/2およびKD値を、ヒト、カニクイザルおよびマウスE-セレクチンへの結合について決定した(表5~7)。このSPR分析では、ヒトE-セレクチンに対する抗体0039、0158、0159、0164、0170および0180の親和性(KD)は、それぞれ68.0nM、21.6nM、324nM、54.4nM、628nMおよび2940nMであった。カニクイザルE-セレクチンに対するキメラ抗体0039、0159、0164、0170および0180の親和性KDは、それぞれ45.8nM、243.5nM、45.4nM、492nMおよび3145nMであった。抗体0158は、カニクイザルE-セレクチンへの結合を示さなかった。マウスE-セレクチンへのキメラ抗体0027の親和性KDは、1.2nMであった。
【0424】
【0425】
【0426】
【0427】
(実施例5)
静置結合アッセイにおける抗E-セレクチン抗体のリガンド結合の中和
リガンド結合を中和する抗E-セレクチン抗体の能力を、競合酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用する静置中和アッセイにおいて評価して、E-セレクチンを発現するように操作されたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)へのシアリルルイス抗原の中和を評価した。
【0428】
簡潔に述べると、ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞を、培養培地(10%透析胎仔ウシ血清、100nMのメトトレキサートおよび100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを補充したMEM(最小必須培地)アルファ培地)中で成長させ、96ウェル組織培養プレート中に1ウェル当たり12,500細胞で播種し、37℃、5%CO2で48時間インキュベートして、コンフルエントな単層を形成した。プレートを、カルシウムマグネシウムなしのリン酸緩衝溶液(PBS)200μLで引き続いて2回洗浄した。抗E-セレクチン抗体0039、0158、0159、0164、0170および0180またはIgG1アイソタイプ対照を、ビオチン化シアリルルイスAポリアクリルアミド(Carbosynth LLC;OS45446)の小さい合成コンジュゲートの存在下で、ストレプトアビジン/西洋ワサビペルオキシダーゼと共にアッセイに添加し(合計100μL)、37℃、5%CO2で2時間インキュベートした。次いで、プレートを、カルシウムマグネシウムなしのPBS 200μLで2回洗浄した。インキュベーション後、細胞を、2mMの塩化カルシウムを含む洗浄緩衝液(50mMのTRIS[トリスアミノメタン]、150mMの塩化ナトリウム;0.05%ポリソルベート20、pH7.4;2mMの塩化カルシウム)200μLで2回洗浄した。シグナルを、100μLの1-Step Ultra TMB基質(Thermo Scientific、34028)を添加し、室温で30分間インキュベートすることによって発生させた。反応を、2Mの硫酸を使用して停止させ、吸光度を450nmで読み取った(Spectramax M5e)。データを、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン8.0.2)を使用して分析およびグラフ化した。推定された最大半量阻害濃度(IC50)値を、分析から導出した(表8)。
【0429】
試験した抗体は、細胞表面で発現されたヒトE-セレクチンへのリガンド結合を抗体用量依存的に中和した。中和アッセイにおいてキメラ抗体0039、0164、0158、0159、0170および0180について推定されたIC50値は、それぞれ3.76nM、2.77nM、2.87nM、3.24nM、2.3nMおよび3.83nMであった。抗体0027は、細胞表面で発現されたヒトE-セレクチンへのシアリルルイスAポリアクリルアミドリガンド結合の結合を中和しなかった。ヒトIgG対照抗体は、これらのアッセイにおいて効果を実証しなかった。
【0430】
(実施例6)
静置接着アッセイにおける抗E-セレクチン抗体の細胞結合の阻害
静置条件下でのヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞へのE-セレクチンリガンドを発現する細胞の接着を阻害するキメラ抗E-セレクチン抗体0039、0164、0158、0159、0170および0180の能力を評価した。
【0431】
ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞を、アルファ培地(MEM[最小必須培地]アルファ培地、Corning)/10%透析胎仔ウシ血清(GIBCO)/100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシン(Gibco)/100nMのメトトレキサート中で培養し、37℃、5%CO2および95%湿度で維持した。HL-60細胞(Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンドを発現するヒト前骨髄球性細胞株)を、RPMI/グルタミン成長培地(Gibco)/10%胎仔ウシ血清(Gibco)/100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシン(Gibco)中で、37℃、5%CO2および95%湿度で維持した。ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞を、96ウェル平底黒色プレート中に11,500細胞/ウェルの密度で播種し、加湿インキュベーター中で37℃、5%CO2および95%空気で48時間インキュベートして、コンフルエントな単層を形成した。
【0432】
静置接着中和アッセイのために、対数期にあるHL-60細胞を、PBS中で3回洗浄し、500μLのPBSおよび等しい体積の2μMのカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル蛍光色素[(CFSE)(ThemoFisher)]中に再懸濁した。細胞を、暗中で室温で10分間インキュベートした。標識化を、氷上で5分間にわたる4mLの冷HL-60成長培地の添加によって停止させた。標識されたHL-60細胞を、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)/1%ウシ血清アルブミン(BSA)/0.1%アジ化ナトリウム中で3回洗浄し、静置接着アッセイにおける使用のために400,000細胞/mLの密度で再懸濁した。
【0433】
抗E-セレクチンキメラ抗体0039、0164、0158、0159、0154、0170および0180、陰性対照抗P-セレクチン抗体ならびに対照ヒトIgGを、HBSS/1%BSA/0.1%アジ化ナトリウム中に連続的に(1333nM~1.83nMの範囲の濃度)希釈した。各抗体について抗体なしの対照を調製した。E-セレクチンCHO細胞単層を、HBSS/1%BSA/0.1%アジ化ナトリウムで穏やかに3回洗浄し、100μLの細胞懸濁物をウェルに添加し、氷上で1時間インキュベートした。1ウェル当たり50μL(20,000個)のCFSE標識されたHL-60細胞を、抗体を除去することなく添加した。標識されたHL-60細胞を、CHO細胞単層と共に、加湿インキュベーター中で37℃、5%CO2および95%空気で1時間インキュベートした。プレートを、HBSS/1%BSA/0.1%アジ化ナトリウムで3回洗浄し、100μLのHBSS/1%Triton-X100を添加し、暗中で10分間インキュベートした。結合したHL-60細胞の蛍光を、Spectramax i3X(Molecular Devices)を使用して494/521ナノメートルの励起/発光波長で測定して、接着したHL-60細胞の数を決定した。背景結合を、細胞なしの対照ウェルからのシグナルを使用して減算し、%接着を、ヒトIgG対照を100%として使用して決定した。推定されたEC50値を、GraphPad Prismスイートにおいて決定した。
【0434】
静置接着条件下では、抗体0158および0164は、16.5nMで>50%阻害で、ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞へのHL-60細胞接着を阻害した。抗体0159は、49.4nMで>50%阻害で、ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞へのHL-60細胞接着を阻害した。抗体0170および0180は、444nMで>50%阻害で、ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞へのHL-60接着を阻害した。抗体0039は、1333nMまでの濃度では、ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞へのHL-60細胞接着を阻害しなかった。陰性対照抗体は、HL-60細胞の接着を阻害しなかった(表8)。
【0435】
(実施例7)
抗E-セレクチン抗体の細胞表面結合(FACS)
E-セレクチンまたはP-セレクチンを発現するように操作された細胞への抗体結合を、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して評価した。カニクイザルとの種交差反応性も評価した。
【0436】
ヒトE-セレクチンまたはP-セレクチンを発現するCHO細胞を、10%透析胎仔ウシ血清(GIBCO)、100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシン(Gibco)を補充したアルファ培地(MEM[最小必須培地]アルファ培地、Corning)中で培養した。ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞については、成長培地に100nMのメトトレキサートもまた補充した。カニクイザルE-セレクチンを発現するCHO細胞を、10%熱不活性化胎仔ウシ血清(GIBCO)、100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンおよび125μg/mLのZeocin(GIBCO)を補充したR1培地(RIダルベッコ改変イーグル培地/ハムF12改変)中で培養した。細胞を、加湿インキュベーター中で37℃、5%CO2および95%空気で成長培地中で維持した。メトトレキサートまたはZeocinを、実験のための培養前に培地から除去した。CHO-Eセレクチン細胞またはP-セレクチン細胞を、クエン酸食塩水(135mMのKCl、15mMのクエン酸ナトリウム)を使用してT-150フラスコから剥離し、剥離した細胞への1mMの最終濃度になるまでのCaCl2の添加によって即座に再石灰化した。成長培地を、剥離した細胞に即座に添加し、次いで、300×gで室温で5分間遠心分離して、細胞をペレット化した。細胞を、濡れた氷上で5分間、1%の最終濃度のウシ血清アルブミン(BSA;Sigma-Aldrich)、1mMの最終濃度の塩化カルシウムおよび0.1%の最終濃度のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝溶液(PBS)、pH7.4からなる冷CHO緩衝液中で、96ウェルV底プレート中にプレートした。インキュベーション後、細胞を、300×gで4℃で2分間遠心分離して、緩衝液を除去した。
【0437】
試験抗体溶液を、CHO緩衝液を希釈剤として使用する連続希釈(1333.3nM~0.0022nMの範囲)を用いて調製し、100μLを添加し、指定された体積の連続希釈した抗体中でインキュベートし、氷上で45分間インキュベートした。インキュベーション後、抗体を除去し、細胞を、300×gで4℃で1分間の遠心分離によって3回洗浄し、冷CHO緩衝液中に再懸濁した。洗浄した細胞を、100μLの1:1000希釈のAPCコンジュゲートしたAffiniPure F(ab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ(Jackson Immunoresearch)と共に濡れた氷上で30分間インキュベートした。細胞を、フローサイトメトリー分析のためのCHO緩衝液中での再懸濁の前に、3回または4回洗浄した。640ナノメートルのレーザー線を使用するBecton Dickinson LSRFortessa機器を使用して、細胞蛍光データを獲得した。細胞の幾何平均蛍光を、FlowJoソフトウェアパッケージ(FlowJo、LLC)によって分析し、抗体濃度に対してプロットした。推定されたEC50値を、Prismスイート(GraphPad、バージョン8)において非線形回帰分析を使用して計算した(表8)。
【0438】
キメラ抗体0039、0164、0158、0159、0154、0170および0180は、1.99nM~4.99nMの範囲の推定されたEC50値で、CHO細胞上の細胞表面で発現されたヒトE-セレクチンへの結合を示した(表8)。抗体0039、0164、0158、0159、0170および0180は、3.37~13.98の範囲の推定されたEC50値で、カニクイザルE-セレクチンを発現するCHO細胞にも結合した。抗体0164、0158、0159、0154、0170および0180は、CHOが発現したヒトP-セレクチンには結合せず、E-セレクチンに対する選択性を示した。抗体0039は、推定されたEC50値>354nMで、CHOが発現したヒトP-セレクチンへの最小限の結合を示した。
【0439】
【0440】
(実施例8)
生理学的流動アッセイを使用した抗E-セレクチン抗体のex vivo中和
ex vivo細胞接着を、BioFlux(商標)プレート/チャンバー(Fluxion Biosciences、48ウェル低剪断、0~20ダイン/cm2;910-0004)を使用するBioFlux(商標)システム(Fluxion、San Francisco、CA、USA)を使用して、生理学的流動条件下で分析した。接着アッセイを、組換えの精製した可溶性E-セレクチンまたはP-セレクチンタンパク質およびヒトHL-60細胞(ATCC CCL-240)を使用して実施した。HL-60細胞は、Eセレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスリガンドを発現する。HL-60細胞を、10%胎仔ウシ血清(Gibco);1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を含むRPMI/グルタミン成長培地(Gibco)中で、37℃、5%CO2および95%湿度で維持した。細胞を、灌流前に37℃で維持し、BioFlux(商標)アッセイを室温で実施した。最初に、活性化された内皮細胞の表面を模倣するために、フローチャンバーを、等しい量のヒトE-セレクチンおよびP-セレクチン可溶性組換えタンパク質の両方でコーティングした。BioFlux(商標)フローマイクロチャネルを、PBS中で調製した10μg/mLの可溶性組換えヒトP-セレクチン(R&D Systems、ADP3)およびE-セレクチン(R&D Systems、ADP1)の各々でコーティングし、1ダイン/cm2で5分間灌流し、室温で1時間インキュベートし、PBSで1ダイン/cm2で3~5分間洗浄した。E-セレクチンキメラ抗体0039、0158、0159、0164、0170および0180を、PBS中に希釈し、プレートを、1ダイン/cm2で1時間、試験物品(1.6~1000nMの濃度)またはビヒクル対照で処置した。HL-60細胞を、1000rpmで5分間遠心分離し、Calcein AM(Calcein;Life Technologies(商標);C3099)で30分間染色し、リン酸緩衝溶液(PBS;Gibco)で2回洗浄し、PBS中に約3×106細胞/mLの濃度になるように再懸濁した。希釈した抗体ストックもまた、フローチャンバー中での灌流前に細胞懸濁物に添加した。100μLのHL-60細胞のアリコートを、1ダイン/cm2の生理学的剪断流動で、各チャネル中で10分間灌流した。PBSを、1ダイン/cm2で2~3分間灌流して、非接着細胞を除去した。接着細胞を、Nikon Eclipse Ti-S(NIS-Elements BR 3.2 64ビット)倒立ステージ位相差蛍光顕微鏡を40×の倍率で使用して可視化およびカウントした。細胞カウントを、リン酸緩衝液ビヒクル対照に対して標準化した。各実験は、1条件当たり2つのウェルを有する。データを、GraphPad Prism(8.0.2)を使用してグラフ化および分析した。推定された最大半量阻害濃度(IC50)値を、分析から導出した。
【0441】
脈管構造を介した血流をex vivoで模倣するために設計したこれらの研究では、E-セレクチン抗体0039、0164、0158、0159、0170および0180は、それぞれ264.7nM、1.7nM、17.9nM、21nM、74.2nMおよび224.7nMの推定されたIC50値で、可溶性組換えE-セレクチンタンパク質へのHL-60細胞の接着を中和した(表9)。
【0442】
【0443】
(実施例9)
抗E-セレクチン抗体のエピトープグループ分け
6つの中和キメラ抗体(0039、0158、0159、0164、0170および0180)を、Octetバイオセンサーを使用した競合アッセイに基づいて、エピトープビンにグループ分けした。抗ヒトFC(AHC)コーティングされた先端を、7つの抗体のうち1つを20μg/mLで含むウェルに600秒間移して、第1の抗体を抗ヒトFCに結合させた。先端を、300nMのヒトE-セレクチン細胞外ドメイン(配列番号133プラス10His精製テイル)を含む第2のウェルに移し、100秒間会合させた。最後に、先端を、第2の抗体を含む第3のウェルに100秒間移した。抗体を、第2の抗体が、第1の抗体によって生成されたシグナルを上回る、バイオセンサーシグナルにおける増加を示した場合には、非競合的とスコアリングし、第2の抗体がシグナルにおけるさらなる増加を生成しなかった場合には、競合的とスコアリングした(表10)。
【0444】
これらの競合データに基づくと、抗体0159、0164、0170および0180は、1つのエピトープ群を規定し、0158は、第2のエピトープ群を規定し、0039は、第3のエピトープ群を規定した。第1の群および第2の群は、部分的に重複し、第2および第3の群は部分的に重複し、第1および第3の群は非重複である。表10中、「+」は、第2の抗体(列の見出しによって示される)が、第1の抗体(行の見出しによって示される)の存在下で結合したことを示している。「-」は、シグナルにおける増加が第2の抗体の添加の際に観察されなかったことを示している。
【0445】
【0446】
(実施例10)
結晶構造およびエピトープ
抗E-セレクチンキメラ抗体0164のFab断片を、全長IgGをパパインで切断し、プロテインA樹脂を使用してFcを除去することによって得た。Fabを、1:1のモル比で短縮型ヒトE-セレクチン(実施例1に記載される)と混合し、得られた複合体を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。複合体の結晶が、200mMの酢酸カルシウムpH7.5、20%PEG 3350中で形成した。データを、Advanced Photon Sourceにおいて、ビームライン17-IDにおいて2.68Åまで収集した。構造を、分子置換によって解明し、0.243/0.252のR/Rfreeまで精緻化した(
図1)。結晶構造は、空間群P3121の非対称単位中に、単一の0164 Fab断片に結合した単一コピーのE-セレクチンを有する。
【0447】
結晶構造に基づいて、抗体0164と相互作用するE-セレクチンの残基を、以下に基づいて決定した:i)3.8Å以内にある残基、ii)0164抗体残基およびE-セレクチン残基の対間の相互作用に起因して埋没した標準化された表面積(Å2)>5Å2、iii)塩橋の形成、iv)水素結合の形成、またはv)水媒介性の水素結合の形成。その番号付けが成熟ヒトE-セレクチン配列(配列番号132)に基づく残基のリストは、T7、E8、A9、M10、T11、P46、S47、Y48、N82、N83、Q85、E88、E92、Y94、R97、N105、E107、R108、S110、K111、K112およびK113を含む(表11)。
【0448】
X線結晶解析による、E-セレクチンの、その天然のリガンドシアリルルイスX(sLeX)との相互作用は、PDB構造(1g1t)中に示される(www.rcsb.org/structure/1g1tを参照のこと)。この構造では、sLeXの3.8Å以内にあり、抗体0164との相互作用と類似するE-セレクチン残基は、配列番号132の番号付けに基づいて、Y48、N82、N83、E92、Y94、R97、N105およびE107である。それらもまたsLexの3.8オングストローム以内にあるさらなる残基は、E80、E98およびD106である(配列番号132の番号付けに基づく)。sLexのエピトープと抗体0164との著しい重複を考慮すると、この抗体によって実証された中和活性は、sLeXおよび他の類似のリガンド、例えば、シアリルルイスA(sLeA)の、E-セレクチンとの相互作用を直接遮断したことの結果である可能性が高い。
【0449】
【0450】
(実施例11)
ラット抗E-セレクチン抗体のヒト化
ラットキメラ中和抗体0039、0158、0159、0164、0170および0180のヒト化バージョンを、相補性決定領域(CDR)グラフトによって生成した(本明細書の以下で「CDRグラフトした」と呼ばれる)。抗体0039、0158、0164および0180について、重鎖CDRを、ヒトDP-54フレームワーク領域上にグラフトした(VH3サブ群)。ヒト化抗体0039は、位置48におけるメチオニン、位置49におけるグリシンおよび位置78におけるバリンを含むラットアミノ酸残基を含んだ。ヒト化抗体0158は、位置24におけるバリン、位置48におけるメチオニン、位置49におけるグリシン、位置73におけるスレオニンおよび位置78におけるバリンを含むラットアミノ酸残基を含んだ。ヒト化抗体0164は、位置71におけるアラニン、位置78におけるアラニンおよび位置94におけるメチオニンを含むラットアミノ酸残基を含んだ。ヒト化抗体0180は、位置48におけるイソロイシン、位置49におけるグリシン、位置69におけるロイシン、位置71におけるセリン、位置73におけるスレオニン、位置78におけるアラニンおよび位置94におけるイソロイシンを含むラットアミノ酸残基を含んだ。
【0451】
抗体0159について、重鎖CDRを、DP-7フレームワーク領域上にグラフトした(VH1サブ群)。ヒト化抗体0159は、位置24におけるバリン、位置69におけるロイシン、位置78におけるアラニンおよび位置94におけるメチオニンを含むラットアミノ酸残基を含んだ。
【0452】
抗体0170について、重鎖CDRを、DP-10フレームワーク領域上にグラフトした(VH1サブ群)。ヒト化抗体0170は、位置24におけるバリン、位置69におけるイソロイシン、位置73におけるスレオニンおよび位置94におけるバリンを含むラットアミノ酸残基を含んだ。
【0453】
6つ全てのヒト化抗体に、JH4 J-セグメント(配列番号6のアミノ酸配列)をグラフトした。
【0454】
抗体0039、0158、0164、0170および0180について、軽鎖CDRを、ヒトDPK9フレームワーク領域上にグラフトした(VKIサブ群)。ヒト化抗体0039は、L87においてラットアミノ酸残基システインを含んだ。ヒト化抗体0158は、位置4においてラットアミノ酸残基メチオニンを含んだ。ヒト化抗体0164および180は、位置87においてラットアミノ酸残基フェニルアラニンを含んだ。ヒト化抗体0170は、位置48におけるメチオニンおよび位置87におけるフェニルアラニンを含むラットアミノ酸残基を含んだ。
【0455】
抗体0159について、軽鎖CDRを、ヒトDPK1フレームワーク領域上にグラフトした(VKIサブ群)。
【0456】
ヒト化VH領域を、エフェクター機能変異したヒトIgG1定常領域(配列番号16のアミノ酸配列)に接合させ、次いで、独占所有権のある発現ベクター中にサブクローニングして、CDRグラフトした重鎖 配列番号51(0039 CDRグラフト;抗体0525の重鎖)、配列番号62(0158 CDRグラフト;抗体265_254の重鎖)、配列番号76(0159 CDRグラフト;抗体0929_0548の重鎖)、配列番号22(0164 CDRグラフト;抗体0841の重鎖)、配列番号91(0170 CDRグラフト;抗体0955_0300の重鎖)および配列番号110(0180 CDRグラフト;抗体0564の重鎖)を生成した。
【0457】
ヒト化VL領域を、ヒトカッパ定常領域(配列番号14のアミノ酸配列)に融合させ、次いで、独占所有権のある発現ベクター中にサブクローニングして、CDRグラフトした軽鎖 配列番号46(0039 CDRグラフト;抗体0525の軽鎖)、配列番号67(0158 CDRグラフト;抗体0265_0254の軽鎖)、配列番号81(0159 CDRグラフト;抗体0929_0548の軽鎖)、配列番号17(0164 CDRグラフト;抗体0841の軽鎖)、配列番号96(0170 CDRグラフト;抗体0955_0300の軽鎖)および配列番号105(0180 CDRグラフト;抗体0564の軽鎖)を創出した。
【0458】
【0459】
(実施例12)
表面プラズモン共鳴を使用したヒト化抗E-セレクチンの動態評価
ヒトおよびカニクイザルE-セレクチンに対する結合親和性を、実施例4に記載された方法と類似の方法でSPRを使用して、ヒト化抗体0841(HC配列番号22、LC配列番号17)について決定した。これは、固定化された抗ヒトIgGに抗体を最初に結合させることによって実施した。抗体捕捉後、E-セレクチンタンパク質の希釈物を上に流し、会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、t1/2およびKD値を、ヒトおよびカニクイザルE-セレクチンへの結合について決定した(表13)。このSPR分析では、ヒトE-セレクチンおよびカニクイザルE-セレクチンに対するヒト化抗E-セレクチン抗体0841の親和性は、それぞれ92.85nMおよび138.5nMであった。
【0460】
【0461】
(実施例13)
ヒト化抗E-セレクチン抗体(0841)の細胞表面結合(FACS)
抗体結合を、E-セレクチンを発現するように操作された細胞のフローサイトメトリー(FACS)を使用して評価した。カニクイザルとの種交差反応性も評価した。
【0462】
ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞を、培養培地(Gibco)中に10%透析胎仔ウシ血清(GIBCO)および100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを補充したアルファ培地(MEM[最小必須培地]アルファ培地、Corning)中で培養した。ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞については、成長培地に100nMのメトトレキサートもまた補充した。カニクイザルE-セレクチンを発現するCHO細胞を、10%熱不活性化胎仔ウシ血清(GIBCO)、100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンおよび125μg/mLのZeocin(GIBCO)を補充したR1培地(RIダルベッコ改変イーグル培地/ハムF12改変)中で培養した。細胞を、加湿インキュベーター中で37℃、5%CO2および95%空気で、成長培地中で維持した。メトトレキサートまたはZeocinを、実験のための培養前に培地から除去した。CHO-Eセレクチン細胞を、クエン酸食塩水(135mMのKCl、15mMのクエン酸ナトリウム)を使用してT-150フラスコから剥離し、剥離した細胞への1mMの最終濃度になるまでのCaCl2の添加によって即座に再石灰化した。成長培地を、剥離した細胞に即座に添加し、次いで、300×gで室温で5分間遠心分離して、細胞をペレット化した。細胞を、濡れた氷上で5分間、1%の最終濃度のウシ血清アルブミン(BSA;Sigma-Aldrich)、1mMの最終濃度の塩化カルシウムおよび0.1%の最終濃度のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝溶液(PBS)、pH7.4からなる冷CHO緩衝液中で、96ウェル丸底プレート中にプレートした。インキュベーション後、細胞を、300×gで4℃で2分間遠心分離して、緩衝液を除去した。
【0463】
試験抗体溶液を、CHO緩衝液を希釈剤として使用する連続希釈(1333.3nM~0.0022nMの範囲)を用いて調製し、100μLを、指定された体積の連続希釈した抗体中に添加し、氷上で45分間インキュベートした。インキュベーション後、抗体を除去し、細胞を、300×gで4℃で1分間の遠心分離によって3回洗浄し、冷CHO緩衝液中に再懸濁した。洗浄した細胞を、再懸濁し、100μLの1:1000希釈のAPCコンジュゲートしたAffiniPureF(ab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ(Jackson Immunoresearch)と共に濡れた氷上で30分間インキュベートした。細胞を、フローサイトメトリー分析のためのCHO緩衝液中での再懸濁の前に、3回または4回洗浄した。640ナノメートルのレーザー線を使用するBecton Dickinson LSRFortessa機器を使用して、細胞蛍光データを獲得した。細胞の幾何平均蛍光を、FlowJoソフトウェアパッケージ(FlowJo、LLC)によって分析し、抗体濃度に対してプロットした。推定されたEC50値を、GraphPad Prismスイートにおいて非線形回帰分析を使用して計算した。
【0464】
CHO細胞の表面上に発現されたヒトおよびカニクイザルE-セレクチンへのヒト化抗体0841の結合は、それぞれ1.62および1.54nMの推定されたEC50値で類似であった(表14)。同じアッセイにおいて抗体0164について推定されたEC50値は、CHOで発現されたヒトおよびカニクイザルE-セレクチンについて、それぞれ1.39および1.73nMの推定されたEC50値で類似であった(表14)。
【0465】
(実施例14)
ヒトまたはカニクイザルE-セレクチンを発現するCHO細胞へのリガンド結合のヒト化抗E-セレクチン抗体中和
静置リガンド細胞接着アッセイでは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートしたE-セレクチンリガンドおよびE-セレクチン抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞上に発現されたヒトまたはカニクイザルE-セレクチンへの結合について競合する。リガンド結合を中和する抗E-セレクチン抗体の能力を、競合酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用する静置中和アッセイにおいて評価して、ヒトまたはカニクイザルE-セレクチンを発現するように操作されたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)へのシアリルルイス抗原の中和を評価した。
【0466】
ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞を、培養培地(10%透析胎仔ウシ血清、100nMのメトトレキサートおよび100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを補充したMEM(最小必須培地)アルファ培地)中で成長させ、カニクイザルE-セレクチンを発現するCHO細胞を、10%熱不活性化胎仔ウシ血清(GIBCO)、100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンおよび125μg/mLのZeocin(GIBCO)を補充したR1培地(RIダルベッコ改変イーグル培地/ハムF12改変)中で培養した。E-セレクチンを発現するCHO細胞を、96ウェル組織培養プレート中に1ウェル当たり12,500細胞で播種し、37℃、5%CO2で48時間インキュベートして、コンフルエントな単層を形成した。プレートを、カルシウムマグネシウムなしのPBS 200μLで引き続いて2回洗浄した。抗E-セレクチン抗体またはIgG1アイソタイプ対照を、ビオチン化シアリルルイスAポリアクリルアミド(Carbosynth LLC、OS45446)またはビオチン化シアリルルイスXポリアクリルアミド(Glycotech、01-045)の小さい合成コンジュゲートの存在下で、ストレプトアビジン/西洋ワサビペルオキシダーゼと共にアッセイに添加し(合計100μL)、37℃、5%CO2で2時間インキュベートした。次いで、プレートを、カルシウムマグネシウムなしのPBS 200μLで2回洗浄した。インキュベーション後、細胞を、2mMの塩化カルシウムを含む洗浄緩衝液(50mMのTRIS[トリスアミノメタン]、150mMの塩化ナトリウム;0.05%ポリソルベート20、pH7.4;2mMの塩化カルシウム)200μLで2回洗浄した。シグナルを、100μLの1-Step Ultra TMB基質(Thermo Scientific、34028)を添加し、室温で30分間インキュベートすることによって発生させた。反応を、2Mの硫酸を使用して停止させ、吸光度を450nmで読み取った(Spectramax M5e)。データを、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン8.0.2)を使用して分析およびグラフ化した。推定された最大半量阻害濃度(IC50)値を、分析から導出した。
【0467】
ヒト化抗体0841による、CHO細胞の表面上に発現されたヒトおよびカニクイザルE-セレクチンへのシアリルルイスリガンド結合の中和は、それぞれ3.81および1.74nMの推定されたIC50値で類似であった(表14)。同じアッセイにおいて0164について推定されたIC50値は、CHOで発現されたヒトおよびカニクイザルE-セレクチンについて、それぞれ5.17および2.00nMの推定されたIC50値で類似であった。
【0468】
(実施例15)
生理学的流動下での細胞接着のヒト化抗E-セレクチン抗体中和
ex vivo細胞ローリング/接着研究を実施して、生理学的流動システムを使用してCHO-ヒトE-セレクチン細胞へのHL-60細胞の接着を阻害する抗体0841および0164の有効性および中和活性を評価した。
【0469】
CHO-ヒトE-セレクチン細胞を、アルファ培地/10%透析胎仔ウシ血清(GIBCO)/ペニシリン/ストレプトマイシン(1×)および100nMのメトトレキサート中で、37℃、5%CO2および95%湿度で維持した。BioFlux(商標)プレートを、1ダイン/cm2の流速でPBS中50μg/mLのフィブロネクチンでコーティングし、室温で1時間インキュベートした。ヒトE-セレクチンを発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(ヒトCHO-E-セレクチン細胞)を、1:1の比の0.05%トリプシン-エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびStemPro Accutase(Gibco;A1110501)による37℃で5分間の処置によってアッセイのために調製し、等しい体積の成長培地で中和し、収集し、1000rpmで5分間遠心分離し、成長培地中に約30×106細胞/mLの最終濃度になるように再懸濁した。プレートを、1ダイン/cm2で室温で2~3分間、CHO-ヒトE-セレクチン成長培地で2回灌流した。全ての培地を除去し、30μLのCHO-ヒトE-セレクチン細胞(約30×106細胞/mL)を、3~4ダイン/cm2で25秒間灌流した。プレートを機器から取り出し、5%CO2インキュベーター中で37℃で1時間インキュベートした。培地を除去し、500μLの新たな成長培地を添加し、細胞を、5%CO2インキュベーター中で37℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、CHO-E単層を、BioFlux機器上で新たな成長培地を用いて洗浄した(3~4ダイン/cm2)。PBS中の抗体0841(連続希釈)、アイソタイプ対照抗体およびIgG1対照抗体(200nM)、ならびにビヒクル対照を、1ダイン/cm2で1時間灌流した。
【0470】
HL-60細胞を、10%胎仔ウシ血清(Gibco);および1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を含むRPMI/グルタミン成長培地(Gibco)中で、37℃、5%CO2および95%湿度で維持した。細胞を、灌流前に37℃で維持した。HL-60細胞を、1000rpmで5分間遠心分離し、Calcein AM(Life Technologies(商標);C3099)で30分間染色し、リン酸緩衝溶液(PBS;Gibco)で2回洗浄し、PBS中に約3×106細胞/mLの濃度になるように再懸濁した。希釈した抗体ストックもまた、フローチャンバー中での灌流前に細胞懸濁物に添加した。100μLのHL-60細胞のアリコートプラス阻害剤を、1ダイン/cm2の生理学的剪断流動で、各チャネル中で10分間灌流した。PBSを、1ダイン/cm2で2~3分間灌流して非接着細胞を除去し、プレートを画像化し、分析した。アッセイを室温で実施した。
【0471】
抗体0841および0164は、生理学的流動条件下で、それぞれ4.17および3.73nMの推定されたIC50値で、ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞へのHL-60細胞の中和を阻害した(表14)。
【0472】
【0473】
(実施例16)
ヒト化抗E-セレクチンの生物物理学的特徴付け
熱安定性
示差走査熱量測定を使用して、ヒト化抗体0841(配列番号22のHCアミノ酸配列および配列番号17のLCアミノ酸配列を含む)の安定性を決定した。この分析のために、0.3mg/mLのサンプルを、Autosampler(Malvern Instruments,Inc.)を用いて、MicroCal VP-Capillary DSCのサンプルトレイ中に分配し、10℃で5分間平衡化し、次いで、1時間当たり100℃の速度で、110℃までスキャンした。16秒間のフィルタリング期間を選択した。生データをベースライン補正し、タンパク質濃度を標準化した。Origin Software 7.0(OriginLab Corporation、Northampton、MA)を使用して、データを、適切な数の遷移を有するMN2-State Modelにフィットさせた。以下の表15は、Tris/Suc緩衝液(20mMのTris、8.5%スクロース、pH7.5)、His/Suc緩衝液(20mMのヒスチジン、8.5%スクロース、0.005%EDTA、pH5.8)およびGlu/Tre緩衝液(20mMのグルタミン酸、8.5%トレハロース、pH4.5)中での分子の融解温度(Tm1~Tm4およびFAB)を示している。この分子は、良好な安定性を示し、CH2ドメインにおける第1の遷移(Tm1)は、Tris/SucおよびGlu/Tre緩衝液中では、65℃よりも高く、Glu/Tre緩衝液中では、65℃をほんの少し下回った。
【0474】
【0475】
強制的分解
ヒト化抗体0841を、40℃での4週間の強制的分解研究のために、3つの緩衝液中に広範に透析した:Tris(20mMのTris、pH7.5)、His(20mMのヒスチジン、pH5.8)およびGlu(20mMのグルタミン酸、pH4.5)。透析後、サンプル濃度を5mg/mLに調整した。T0、T2およびT4週の時点で、サンプルを、分析的サイズ排除クロマトグラフィー(aSEC)、画像化キャピラリー電気泳動(iCE)およびバイオアッセイ試験のために取った。
【0476】
加熱したサンプルの凝集状態を、aSECによって決定した。サンプルを、20mMのリン酸ナトリウム、400mMのアルギニン、pH7.2を移動相として用いて、Agilent 1260 HPLCシステム(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)に接続されたYMC-Pack Diol-200カラム(300×8.0mm、孔サイズ200Å)上に注入した。0.75mL/分の流速で20分間にわたるアイソクラチックプログラムを、サンプル溶出のためにaSECカラムに適用し、データを、Agilent OpenLAB Data Analysisソフトウェアを使用して分析して、凝集体、目的のタンパク質および低分子量種のピーク面積を積分および定量化した。全てのサンプルが、%HMMS(高分子量種)および%LMMS(低分子量種)における最小限の変化を示した、即ち、パーセンテージは、5%未満であった(表16)。
【0477】
【0478】
iCEを使用して、強制的分解サンプルの電荷ベースの不均一性を検出した。iCEは、高電圧下でタンパク質荷電種を分離し、吸光度を280nmで検出する。担体である両性電解質がpH勾配を生じ、その正味の荷電がゼロになるまで、タンパク質が移動する。電気泳動図を分析して、酸性種、主要種および塩基性種についてpI値およびピーク面積を決定した。PrinCE Autosamplerを備えたProtein Simple iCE3機器を使用して、サンプルを分析した。タンパク質を、水中で2mg/mLになるように希釈した。サンプル希釈剤は、0.01mg/mLのpIマーカー4.65、0.01mg/mLのpIマーカー9.5、4.0%Pharmalyte pH3~10、0.25%メチルセルロースおよび2.0Mの尿素を含んだ。サンプルは、2mg/mLのタンパク質15μLおよび85μLのサンプル希釈剤を含んだ。サンプルに、1500ボルトで1分間、次いで、3000ボルトで6分間、焦点を当てた。Empowerソフトウェアをデータ分析に使用した。
【0479】
iCE分析において高いパーセンテージの酸性種/塩基性種を有するサンプルについては、さらなる質量分析による分析が、CDR領域上の配列責任を同定するために要求された。ヒスチジンおよびグルタミン酸緩衝液中のサンプルの分析は、酸性種および塩基性種における典型的な増加を示した。しかし、Tris緩衝液中の安定な抗体について期待されたものよりも大きい、塩基性種における増加が存在し、これは、可能な化学的改変を示唆している(表17)。3つ全ての緩衝液中のサンプルを、質量分析3部分析およびペプチドマッピングを使用してさらに分析した。
【0480】
【0481】
質量分析による分析
3部の質量分析による分析のために、抗体を、FabALACTICAを使用して消化した。50μgの抗体mAbを、100~150mMのNaPO4 pH7.0に、25μLの体積になるように添加した。1.5μLのFabALACTICA酵素(40U/μL)を添加し、穏やかに振盪しながら37℃で一晩(16~18時間)インキュベートした。この後に、50μLの8M Guan-HCl、12.5μLの1M DTTおよび12.5μLの150mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0を添加した。これを、穏やかに振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。7~8μg(約15μL)を、3部液体クロマトグラフィーマススペクトロメトリー(LC-MS)分析に使用した。
【0482】
LC-MS分析を、Waters H-Class(Waters、Milford、MA)UPLCに連結されたBruker maXis II質量分析器(Bruker、Billerica、MA)を使用して実施した。FabALACTICAで消化し、還元したサンプルを、300μL/分の流速で、65℃に維持したWaters BEH C4(1.7Å、2.1×150mM)カラム上で分離した。移動相Aは、5%のアセトニトリルおよび0.05%のTFAを含む水であり、移動相Bは、50:50のアセトニトリル:2-プロパノールおよび0.05%TFAであった。質量分析器を、ポジティブMSのみのモードで実行し、データをoTOF制御ソフトウェアで獲得した。TOF-MSシグナルを、Compass DataAnalysis v 4.2(Bruker)においてMaximum Entropyを使用してデコンボリュートした。4週の時点(T4W)におけるグルタミン酸、ヒスチジンおよびTris緩衝液中の強制的分解0841サンプルの分析は、時間0(T0)におけるサンプルと比較して類似のプロファイルを示した(
図2)。PyroE-Fd(N末端にピログルタミン酸(PyroE)を有するIgG重鎖由来のFd断片)は、T4Wサンプルにおいて、特にTris緩衝液中で、僅かな増加を示した(約3.5%)。さらに、約5%のFd D/Pクリップ(アスパラギン酸/プロリン(D/P)部位が切断されたFd断片)が、T0およびT4Wサンプルにおいて検出された。
【0483】
LC-MSによるペプチドマッピング
サンプル安定性をさらに調査するために、ペプチドマッピングLC-MSを利用した。ペプチドマッピングのために、抗体0841の変性および還元を、5MのGuan:HCl NaAc、pH5.0、10mMのTCEP中で37℃で1時間実施した。反応混合物を、100mMのMES、pH6.0、0.5mMのTCEP緩衝液で10倍希釈した。次に、LysC/トリプシンミックスを1:10の比で添加し、その後、37℃で一晩消化した。反応を0.5%TFA/H2O(最終濃度)でクエンチした。次いで、この消化混合物を、LC-MS分析のためにThermo Scientific Orbitrap Fusion Lumos上に注入した。
【0484】
LC-MSペプチドマッピング分析を、Waters H-Class(Waters、Milford、MA)UPLCに連結されたOrbitrap Fusion Lumos質量分析器(Thermo Scientific、Waltham、MA)を使用して実施した。消化したサンプルを、200μL/分の流速で、60℃に維持したWaters BEH C18(300Å、1.7um 2.1×150mM)カラム上で分離した。移動相Aは、水中0.05%のTFAであり、移動相Bは、アセトニトリル中0.05%のTFAであった。ペプチドを、勾配:0.5%~35%のBを使用して、135分間かけてカラムから溶出させた。質量分析器を、300から1600m/zまでスキャンするポジティブMSのみのモードで実行し、データをXcaliburソフトウェアで獲得した。データ分析およびデータベース検索を、Xcaliburソフトウェア(Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)およびPeaks AB(Bioinformatics Solutions Inc、Toronto、Canada)の両方を使用して実施した。
【0485】
Tris、ヒスチジンおよびグルタミン酸緩衝液についてのT4Wサンプルの高忠実度ペプチドマッピング分析は、配列IDPAN*GNTIYAEK(NG脱アミド部位は下線付きである;配列番号176)を有するHC CDR2ペプチドにおける微量の脱アミド(<1%)を同定した。NGは、一般的な脱アミド部位であるが、この場合には、大抵は安定であった。潜在的脱アミド(スクシンイミド-Nの形態)が、配列TSQNIN*RYLNWYQQKPGK(NR脱アミド部位は下線付きである;配列番号177)を有するLC CDR1ペプチドにおいて検出され、脱アミドは、Tris T4Wサンプルにおいて約5.1%まで増加した(MS2スペクトルが示したN(30)R部位が、脱アミド部位である可能性が最も高かったが、N28およびN34もまた、微量の脱アミドを潜在的に有し得た)(表18)。
【0486】
【0487】
競合結合ELISA
強制的分解サンプルの安定性をさらに評価するために、ストレスをかけたサンプルの活性を、競合結合ELISAにおいて評価した。ここでは、T0、T2WおよびT4Wサンプルの安定性を、ヒトE-セレクチンへの結合についてビオチン化キメラ抗体0164(HC配列番号34およびLC配列番号31を含む)と競合するそれらの能力について比較した。ヒトE-セレクチンを、500μg/mLのCa/Mgを含むPBS中で貯蔵し、1μg/mLの濃度のCa/Mgを含むPBSで希釈した。これを、384ウェルMaxiSorpプレートに添加し、密封し、穏やかに振盪しながら4℃で一晩インキュベートした。次の日、各ウェル中の試薬を除去し、その後、50μLの遮断緩衝液(Ca/Mgを含むPBS中1%のBSA)を各ウェルに添加した。ウェルを密封し、穏やかに振盪しながら室温で約1時間インキュベートした。0.2mg/mLの出発濃度で、抗体0841を、合計12個の濃度になるように、Ca/Mgを含むPBSによる1/3希釈のステップで連続希釈した。
【0488】
ビオチン化抗体0164を、2%BSA/Ca/Mgwを含むPBS中で0.04μg/mLになるように希釈した。等しい体積の希釈した抗体0841を、ビオチン化抗体0164と混合した。次に、洗浄プレートを、各洗浄のために80μLを使用して、3サイクルにわたってTITERTEK上でPBST(0.05%Tween)を含む1%BSAで遮断した。プレートを、ペーパータオル上でタップして水気を切った。抗体0841およびビオチン標識された抗体0164の混合物25μLを、二連のウェルで384ウェルプレートの各ウェルに添加し、穏やかに振盪しながら室温で2~4時間インキュベートした。洗浄ステップを、3サイクルの2回の洗浄で反復した。次いで、希ストレプトアビジン-HRP(遮断緩衝液中に約1/7500希釈)を各ウェルに添加し、プレートを、穏やかに振盪しながら室温で約40分間~1時間インキュベートした。洗浄ステップを、3サイクルの2回の洗浄で再度反復し、タップして乾燥させ、その後、25μLのTMB基質(1構成要素のHRPマイクロウェル基質)を添加した。この後、色が飽和(発色を観察することによって決定される)に達したときに、0.18Mの硫酸25μLを添加して反応を停止させた。次いで、プレートのOD450測定値をEnvisionプレートリーダーで読み取り、データをGraphPad、Prism7で分析した。
【0489】
競合結合結果は
図3に示され、3つの緩衝液のいずれにおいても、T0サンプルとT2WサンプルとT4Wサンプルとの間で差異は見られなかった。これらのデータは、抗体0841が、高温条件(即ち、40℃)下での貯蔵後にE-セレクチンに結合するその能力を保持したことを実証している。
【0490】
高濃度安定性
ヒト化抗体0841を、3つの緩衝液、Tris/Suc(20mMのTris、8.5%スクロース、pH7.5)、His/Suc(20mMのヒスチジン、8.5%スクロース、0.005%EDTA、pH5.8)およびGlu/Tre(20mMのグルタミン酸、8.5%トレハロース、pH4.5)中に広範に透析した。透析後、サンプルを、スピンフィルター濃縮器を使用して150mg/mLに濃縮し、4℃および25℃で貯蔵した。T0、T1、T2、T4およびT6週の時点で、サンプルを、リアルタイムaSEC分析のために取った。
【0491】
高濃度サンプルの凝集状態を、強制的分解分析について上記したように、aSECによって決定した。4℃および25℃で貯蔵したサンプルは、3つ全ての緩衝液条件下で、HMMSのパーセンテージにおける増加をほとんど伴わずに(<5%)、T6週(T6W)の時点で高濃度で安定であった(表19)。
【0492】
【0493】
T0、T3(T3W)およびT6週の時点で、サンプルを、iCEおよびキャピラリーゲル電気泳動(CGE)によって分析した。iCEを使用して、強制的分解研究で使用した方法と類似の方法を使用して、高濃度サンプルの電荷ベースの不均一性を検出した。%酸性種および%塩基性種における最小限の変化が、His/SucおよびGlu/Tre緩衝液中で25℃での6週間の貯蔵にわたって観察され、酸性種および塩基性種におけるより大きい変化は、Tris/Suc緩衝液と関連した(表20)。
【0494】
【0495】
CGEを実施して、抗体0841の高濃度サンプルの断片化を決定した。サンプルを、Perkin ElmerのLabChip Touch HT Protein Express Assayを使用して解析した。アッセイを、製造業者の指示に従ってセットアップし、改変法を使用してサンプルを調製した。簡潔に述べると、1mg/mLのサンプル5μLを、非還元性(nrCGE)についてはヨードアセトアミドを含み、または還元性CGEについてはジチオスレイトールを含むサンプル緩衝液35μLと混合し、70℃で10分間インキュベートした。加熱後、70μLの脱イオン水を、Touchシステムでの分析の前に、各サンプルに添加した。各サンプルについての断片化のサイズおよびレベルを、LabChip GXソフトウェアを使用して定量化した。
【0496】
%断片化および%HMMSの定量化は、高濃度の抗体0841が、3つ全ての緩衝液中で安定であったことを実証した(表21)。
【0497】
【0498】
(実施例17)
ヒト化抗E-セレクチンのin silico免疫原性リスクおよびT細胞エピトープ予測
ヒト化抗E-セレクチン抗体0841の免疫原性リスクを、MHCIIペプチド結合の予測のためのin silicoツールを使用して予測した。これらのツールを以下のために使用した:(1)配列中の各個々のペプチドについての潜在的MHCII結合のエピトープ同定、(2)潜在的MHCIIペプチド結合子のリスクを評価するためのエピトープ分類、および(3)MHCII結合関連の免疫原性リスクを有する配列全体の全体的リスクを予測するための全体的配列スコア。これらの方法は以下に記載される。
【0499】
エピトープ同定
配列を2つのプロトコール(以下に記載される)を使用して分析して、エピトープを同定した。いずれかのプロトコールについて本明細書に記載される規則によってフラグ付けされた任意の配列を、エピトープとみなした。これらの方法は、主にアミノ酸9マーのレベルで、配列を試験する。
【0500】
プロトコール1:ISPRI/EpiMatrix
配列を、ISPRIソフトウェアパッケージ(ISPRI v 1.8.0、EpiVax Inc.、Providence、RI(2017);Schafer JRAら(1998)Vaccine 16(19):1880~84)でのEpiMatrix分析に供した。生結果は、8つの異なるHLA型に対する各9マーアミノ酸断片の結合の可能性のランキングを提供した。したがって、各9マーについて、8つの予測(「観測」)が存在した。これらの9マーを、配列の各個々の直線的な番号付け位置で開始して生成した(したがって、同じ9マーが同じ配列中に1回よりも多く存在することが可能であった)。任意の4つの観測が、9マーが結合子の上位5%にあることを示した場合(少なくとも4つのHLA型について、それが結合子の上位5%にあると予測されたことを意味する)、その9マーを、予測されたエピトープ(「エピトープ」)とみなした。あるいは、8つの予測のうちいずれか1つが、9マーが結合子の上位1%にあることを示した場合、この9マーも、予測されたエピトープとみなした。
【0501】
プロトコール2:IEDBコンセンサス法
配列を、IEDB(Vita R.ら、Nucleic Acids Res.2015;28(43):D405~12;IEDB MHC-II Binding Predictions、www.iedb.org)においてMHC-II binding Consensus method(Wang P.ら(2010)BMC Bioinformatics 11:568;Wang P.ら(2008)PLoS Comput.Biol.4(4)、e1000048)を使用する分析に供した。ソフトウェアのアウトプットは、結果を15マーずつ配置した。コンセンサススコアおよびパーセンタイルランキングを、15マーおよびHLA型の各組み合わせについて提供した。各15マーのコンセンサスが由来した個々のスコアは、15マー中に見出される特定の9マーのランキングであった:コンセンサスのために使用される各方法は、15マー内の9マーについてのパーセンタイルランクを報告した。15マー全体についての値として取られたコンセンサスは、中央値スコアを有する9マーについての予測であった。9マーを、(a)それが15マーを代表するコンセンサスとして選択された場合、および(b)検討されているHLA型に対する結合子の上位10%中にパーセンタイルランキングを有した場合、ならびに基準(a)および(b)が、同じ9マーについて3つ以上の別個のHLA型(即ち、3つの観測)について生じた場合、エピトープとして分類した。検討したHLA型は、DRB1*01、1*03、1*04、1*07、1*08、1*11、1*13および1*15であり、これらは、標準的なISPRI/EpiMatrix報告では、同じHLA型であった。このように、プロトコール1との比較の容易さのために、この方法の一次アウトプットは、15マーのランキングであったが、本発明者らは、データを再解釈して、予測された9マーエピトープのリストを得た。
【0502】
エピトープ分類
各エピトープを、生殖系列または非生殖系列エピトープとして分類した。抗体について、本発明者らは、抗体内でのその位置(例えば、CDRまたは非CDR)に基づいて、各エピトープをさらに分類した。本発明者らは、IMGT(www.imgt.org)から得たヒトVドメインの配列をフィルタリングして、偽遺伝子またはオープンリーディングフレーム(ORF)としてアノテーションされた生殖系列を除去した。残りの配列中に見出される任意の予測された9マーエピトープを、生殖系列エピトープとみなした。JもしくはC領域(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)またはこれらの領域間の接合部中に見出されるエピトープもまた、生殖系列エピトープとして分類した。さもなければ、エピトープは、非生殖系列エピトープとして分類した。可変ドメイン残基を、Kabatの番号付けシステム(Kabat EAら(1991)US Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91-3242)に基づいて番号付けした。番号付け後、CDRを、以下の残基を含むと定義した:CDR-H1(例えばH35Aであるが、H36未満の挿入を含むH26~H35)、CDR-H2(H50~H65包含的)、CDR-H3(H95~H102包含的)、CDR-L1(L24~L34包含的)、CDR-L2(L50~L56包含的)、CDR-L3(L89~L97、包含的)。予測された9マーエピトープは、そのアミノ酸のうちいずれか1つがCDR領域の一部であった場合、CDRエピトープであった。CDR-H1についての本発明者らの選択した開始位置(H26)は、Kabatのアノテーションを使用する一部の他の刊行物とは異なることに留意されたい。
【0503】
全体的配列スコア(T-reg調整済スコア)
個々の鎖について、または抗体VHおよびVLドメインの対形成について、全体的スコアを、以下のように、構成成分9マーの各々を合計することによって計算した。9マーおよびHLA型の全ての個々の組み合わせ(「観測」)を、9マーがエピトープであったかどうかにかかわりなく試験した。特定の観測が、そのペプチドが所与のHLA型に対する結合子の上位5%にあることを示した場合、この観測についてのEpiMatrix Zスコアを、タンパク質配列全体と関連する中間合計に加算した。試験した観測の総数もまた記録した。唯一の例外は、ISPRIによって「T-レジトープ」として同定された9マーについての全ての観測が、ゼロのEpiMatrixスコアを有すると仮定したことであった。中間合計では、0.05*2.2248のベースラインスコアを、各観測(T-レジトープを含む)から減算した。最終スコアは、以下のように計算した:
【0504】
T-reg調整済スコア=(中間合計)*1000/(観測の数)
【0505】
より低いスコアは、より低い予測される免疫原性潜在力を示した。スコアは、ISPRI/EpiMatrixからの予測のみを含み、IEDBからの情報は含まなかったことに留意されたい。したがって、IEDBによって予測されたがISPRIによっては予測されなかったいずれの強いHLA結合子も、スコアに寄与しなかった。理論上、配列は、多くのIEDB予測されたHLA結合子を含み得、EpiMatrixもまた同じ配列を結合子である可能性が高いと予測しない場合、好ましいT-reg調整済スコアをなおも有する。
【0506】
これらのツールを使用して、ヒト化抗体0841(配列番号25のVHアミノ酸配列および配列番号21のVLアミノ酸配列を含む)における非生殖系列T細胞エピトープの数および全体的配列スコアを予測した。2つのプロトコールを使用して、8つの非生殖系列エピトープが、VHおよびVL配列において同定された(H27:YNIRSSYMH(配列番号178)、H63:FKIRFTISA(配列番号179)、H65:IRFTISADN(配列番号180)、L29:INRYLNWYQ(配列番号181)、L46:LLIYNANSL(配列番号182)、L47:LIYNANSLQ(配列番号183)、L48:IYNANSLQT(配列番号184)およびL49:YNANSLQTG(配列番号185))(
図4)。さらに、全体的配列スコアは、-30.34であった。エピトープの数および全体的配列スコアにおける低減は、配列の全体的免疫原性リスクを減少させると予測される。
【0507】
(実施例18)
ヒト化抗E-セレクチン抗体の最適化
抗体0841の構造ベースの合理的変異誘発
抗E-セレクチン抗体0841は、対象に投与した場合に免疫原性のリスクを増加させ得るいくつかの予測されたT細胞エピトープを含んだ。これらには、VHおよびVL配列中に含まれる8つの非生殖系列エピトープが含まれた(H27:YNIRSSYMH、H63:FKIRFTISA、H65:IRFTISADN、L29:INRYLNWYQ、L46:LLIYNANSL、L47:LIYNANSLQ、L48:IYNANSLQTおよびL49:YNANSLQTG)。さらに、熱強制的分解後の抗体のペプチドマッピングは、L30位置においてNR脱アミド責任を同定した。L30におけるNR脱アミド責任に加えて、重鎖位置H54におけるNG部位、位置L52におけるNS部位および位置L92におけるNS部位が含まれる、他の潜在的責任部位が同定された。構造ベースの最適化法を利用して、予測されたT細胞エピトープおよび配列責任部位を除去した。
【0508】
しかし最初は、CDR-L2をDPK9 CDR-L2(AASSLQS(配列番号3))に生殖系列化し、CDR-H2の末端を(H59~H65 YVDSVKG(配列番号186))のDP-54配列に生殖系列化するさらなるヒト化抗体0978(配列番号28のHCアミノ酸配列および配列番号26のLCアミノ酸配列を含む)を生成した。抗体0978は、実施例16に記載される競合結合アッセイを使用して、抗体0841と類似の結合を維持することが示された。これら2つのストレッチを生殖系列化することで、予測されたT細胞エピトープのうち5つ(H63:FKIRFTISA(配列番号179)、L46:LLIYNANSL(配列番号182)、L47:LIYNANSLQ(配列番号183)、L48:IYNANSLQT(配列番号184)およびL49:YNANSLQTG(配列番号185))を除去したが、新たな予測されたT細胞エピトープ(H63:VKGRFTISA(配列番号187))を導入した。さらに、L2の変異は、位置L52における潜在的NS責任部位を除去したが、H2の末端の変異は、位置H61において、別の潜在的責任部位であるDS部位を付加した。構造ベースの最適化を、E-セレクチンのc型レクチンドメイン(残基22~178)に結合した抗体0164のx線結晶構造を使用して抗体0978に対して実施して、残りの3つの予測されたT細胞エピトープおよび配列責任を除去した。
【0509】
変異誘発に適切な位置を決定するために、親和性における変化および安定性における変化の両方についての変異の計算的予測を、Discovery Studio 4.5(Dassault Systems Biovia Corp.)およびFoldXを使用して行った。許容される変異は、Discovery Studio法およびFoldX法の両方についてΔΔG>1kcal/molを有するとは予測されない変異である。これらの予測から、予測されたT細胞エピトープおよび配列責任を除去しつつ、結合および安定性に対して最小限の影響を有すると予測される残基のセットが同定され、表22に示された。
【0510】
【0511】
このセットの変異を使用して、表22において同定された3つの配列責任および3つのT細胞エピトープを除去する4つの最適化された構築物を生成した。これらの構築物は、抗体1282(配列番号43のHCアミノ酸配列および配列番号1のLCアミノ酸配列を含む)、抗体1284(配列番号40のHCアミノ酸配列および配列番号1のLCアミノ酸配列を含む)、抗体1444(配列番号13のHCアミノ酸配列および配列番号1のLCアミノ酸配列を含む)および抗体1448(配列番号37のHCアミノ酸配列および配列番号1のLCアミノ酸配列を含む)である。抗体0978と比較した変異が表23に示される。これらの変異体の結合親和性は、実施例16に記載される競合結合アッセイを使用して抗体0978と類似であることが確認された。
【0512】
【0513】
(実施例19)
最適化抗E-セレクチン抗体(0164、0841、1282、1284、1444、1448)の中和
細胞表面E-セレクチンを発現するCHOへのリガンド結合の中和
静置リガンド細胞接着アッセイでは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートしたE-セレクチンリガンド(シアリルルイス抗原)およびE-セレクチン抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞上に発現されたヒトまたはカニクイザルE-セレクチンへの結合について競合する。リガンド結合を中和する抗E-セレクチン抗体の能力を、競合酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用する静置中和アッセイにおいて評価して、ヒトまたはカニクイザルE-セレクチンを発現するように操作されたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)へのシアリルルイス抗原の中和を評価した。
【0514】
ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞を、10%(体積/体積)透析胎仔ウシ血清、100nMのメトトレキサートおよび100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを補充した培養培地(MEM(最小必須培地)アルファ培地)中で成長させた。カニクイザルE-セレクチンを発現するCHO細胞を、10%熱不活性化胎仔ウシ血清(GIBCO)、100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンおよび125μg/mLのZeocin(GIBCO)を補充したR1培地(RIダルベッコ改変イーグル培地/ハムF12改変)中で培養した。
【0515】
E-セレクチンを発現するCHO細胞を、96ウェル組織培養プレート中に1ウェル当たり12,500細胞で播種し、37℃、5%CO
2で48時間インキュベートして、コンフルエントな単層を形成した。プレートを、カルシウムマグネシウムなしのPBS 200μLで引き続いて2回洗浄した。抗E-セレクチン抗体またはIgG1アイソタイプ対照(IgG対照)を、ビオチン化シアリルルイスAポリアクリルアミド(Carbosynth LLC、OS45446)またはビオチン化シアリルルイスXポリアクリルアミド(Glycotech、01-045)の小さい合成コンジュゲートの存在下で、ストレプトアビジン/西洋ワサビペルオキシダーゼと共にアッセイに添加し(合計100μL)、37℃、5%CO
2で2時間インキュベートした。次いで、プレートを、カルシウムおよびマグネシウムなしのPBS 200μLで2回洗浄した。インキュベーション後、細胞を、2mMの塩化カルシウムを含む洗浄緩衝液(50mMのTRIS[トリスアミノメタン]、150mMの塩化ナトリウム;0.05%ポリソルベート20、pH7.4;2mMの塩化カルシウム)200μLで2回洗浄した。シグナルを、100μLの1-Step Ultra TMB基質(Thermo Scientific、34028)を添加し、室温で30分間インキュベートすることによって発生させた。反応を、2Mの硫酸を使用して停止させ、吸光度を450nmで読み取った(Spectramax M5e)。データを、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン8.0.2)を使用して分析およびグラフ化した。分析から導出した推定された最大半量阻害濃度(IC
50)値は、ヒトE-セレクチンについては1.38~2.89nMの範囲であり、カニクイザルE-セレクチンについては1.85~2.65nMの範囲であった(
図5および
図6)(表24)。
【0516】
【0517】
上記方法と類似の方法を使用するさらなる静置中和アッセイでは、抗体1444は、それぞれ1.88nM~2.33nMおよび1.47nM~1.49nMの推定されたIC50値で、CHO細胞によって発現されたヒトまたはカニクイザルE-セレクチンタンパク質の両方へのリガンド結合を中和した。
【0518】
可溶性組換えタンパク質へのリガンド結合の中和
組換えヒスチジンタグ化E-セレクチン;カニクイザルE-セレクチン(Sino Biologicals;190169-C08H)およびヒトE-セレクチン(Sino Biologicals;13025-H08H)ストック溶液を、カルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝溶液(PBS)中で3μg/mLの最終濃度になるように調製した。1ウェル当たり100μLの希釈した組換えE-セレクチンタンパク質を、Ni-NTA HisSorb 96ウェルプレート(Qiagen、35061)中に添加し、プレートを、オービタルシェーカー上で室温で2時間インキュベートした。合成E-セレクチンリガンドであるシアリルルイスAポリアクリルアミドビオチン(GlycoTech corporation 01-044)を、ストレプトアビジンHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)(Ultra Streptavidin HRP、Thermo Scientific N504)にコンジュゲートし、2mMの塩化カルシウムを含むアッセイ希釈剤(BD OptEIA緩衝液;BD Biosciences、555213)中に希釈した。
【0519】
抗体(IgG1対照、0160、1282、1284、1444および1448)の2倍濃縮したストック溶液もまた、2mMの塩化カルシウムを含むアッセイ希釈剤中で作製した。インキュベーション後、プレートを、2mMの塩化カルシウムを含む洗浄緩衝液(50mMのTRIS[トリスアミノメタン];150mMの塩化ナトリウム、0.05%ポリソルベート20、pH7.4;2mMの塩化カルシウム)200μLで5回洗浄した。この後に、抗体(IgG1対照、0160、1282、1284、1444および1448)およびHRPコンジュゲートしたシアリルルイスAの混合物100μLを、二連で添加し、プレートを、オービタルシェーカー上で室温で2時間インキュベートした。最終抗体濃度は、200nM~0.09nMの範囲であり、HRPコンジュゲートしたシアリルルイスAの最終濃度は、5μg/mLであった。プレートを前述のように洗浄し、1ウェル当たり100μLの1-Step Ultra TMB基質(Thermo Scientific、34028)を添加し、室温で5分間インキュベートした。反応を、2Mの硫酸100μLで停止させ、吸光度を450nmで読み取った(Spectramax M5e)。データを、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン8.0.2)を使用して分析およびグラフ化した。推定された最大半量阻害濃度(IC50)値を、分析から導出した(表25)。
【0520】
推定された最大半量阻害濃度(IC50)値を分析から導出したところ、可溶性組換えヒトE-セレクチンへのリガンド結合の抗体中和については2.96nM~3.59nMの範囲であり、可溶性組換えカニクイザルE-セレクチンへのリガンド結合の抗体中和については2.74nM~3.29nMの範囲であった。
【0521】
【0522】
上記方法と類似の方法を使用するさらなる静置中和アッセイでは、抗体1444は、それぞれ2.87nM~2.91nMおよび2.39nM~2.45nMの推定されたIC50値で、ヒトまたはカニクイザルE-セレクチンタンパク質の両方へのリガンド結合を中和した。
【0523】
(実施例20)
表面プラズモン共鳴を使用した最適化抗E-セレクチンの動態評価
ヒトおよびカニクイザルE-セレクチンに対する結合親和性を、実施例4と類似の方法でSPRを使用して、最適化抗体1282、1284、1444および1448について決定した。これは、固定化された抗ヒトIgGに抗体を最初に結合させることによって実施した。抗体捕捉後、E-セレクチンタンパク質の希釈物を上に流し、会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、t1/2およびKD値を、ヒトおよびカニクイザルへの結合について決定した(表26)。このSPR分析では、ヒトE-セレクチンに対する1282、1284、1444および1448の親和性は、それぞれ70.3nM、65.2nM、61.8nMおよび60.5nMであった。カニクイザルE-セレクチンに対する1282、1284、1444および1448の親和性は、それぞれ78.3nM、76.5nM、81.5nMおよび67.8nMであった。
【0524】
【0525】
(実施例21)
最適化抗E-セレクチン抗体(0164、0841、1282、1284、1444および1448)の細胞表面結合(FACS)および中和
FACSによる細胞表面結合
膜結合したE-セレクチンへの抗体0841、0164、1282、1284、1444および1448の結合を、FACSによって分析した。ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞を、10%の最終濃度の透析胎仔ウシ血清(GIBCO)およびペニシリン/ストレプトマイシン(1×)を補充し、メトトレキサートを補充したアルファ培地(MEM[最小必須培地]アルファ培地、50-012-PC、Corning)中で培養した。簡潔に述べると、解凍した細胞を、100nMのメトトレキサートの存在下で最初に成長させた。引き続く培養について、メトトレキサートを成長培地から除外した。
【0526】
内皮細胞を、凍結ストックから解凍し、無菌0.1%ゼラチン溶液(Sigma、ES-006-B)で再コーティングしたT-25フラスコ(Corning、353108)中に最初にプレートした。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、Endothelial Cell Growth Medium(Sigma Aldrich、211-500)中で成長させたが、カニクイザル肺微小血管内皮細胞(CLMEC)は、Complete Monkey Endothelial Cell Medium(Cell Biologics、MK1168)中で成長させた。細胞を、90%コンフルエンシーに達した時点で分割し、0.1%ゼラチンで事前コーティングした3つのT-175フラスコ中にプレートした。
【0527】
ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞株を、無酵素Cell Dissociation Buffer(GIBCO、13151014)を使用して、コンフルエントなフラスコから剥離した。成長培地を、剥離した細胞に即座に添加し、次いで、300×gで室温で5分間遠心分離して、細胞をペレット化した。次いで、細胞を、1%の最終濃度のウシ血清アルブミン(BSA;Sigma-Aldrich、A3059)、1mMの最終濃度の塩化カルシウムおよび0.1%の最終濃度のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝溶液(PBS)、pH7.4からなる冷CHO緩衝液中に再懸濁した。
【0528】
初代細胞HUVECまたはCLMECについて、90%コンフルエンシーの培養物を、成長培地をEndothelial Cell Basal Medium(Sigma-Aldrich、210-500)で置き換えることによって血清飢餓させた。細胞を、加湿インキュベーター中で37℃、5%CO2および95%空気で2時間インキュベートした。血清飢餓の直後に、10ng/mLのヒト組織壊死因子-アルファ(TNF-α;GIBCO)を含むEndothelial Cell Basal Mediumを細胞に添加して、E-セレクチン発現を誘導した。4時間のTNF-α刺激後、細胞を、クエン酸食塩水(135mMの塩化カリウム、15mMのクエン酸ナトリウム)を使用して剥離し、1mMの最終濃度になるまでの塩化カルシウムの添加によって、即座に再石灰化した。細胞を、300×gで4℃で遠心分離し、濡れた氷中で15分間、4%パラホルムアルデヒド(PFA;Electron Microscopy Sciences、15710)を含むPBS中での再懸濁によって固定した。PFAを、遠心分離によって除去し、細胞を、CHO緩衝液中に一晩再懸濁した。
【0529】
CHO細胞を用いた結合研究は、2行の96ウェル丸底プレートを使用して二連で実施したが、初代内皮細胞を用いた結合研究は、単一行の96ウェルV底プレート中で実施した。プレートを、300×gで4℃で2分間遠心分離し、細胞を再懸濁し、濡れた氷上で10分間のCHO緩衝液中でのインキュベーションによって遮断した。インキュベーション後、細胞を、300×gで4℃で2分間遠心分離して、緩衝液を除去した。次いで、各ウェル中の細胞ペレットを、再懸濁し、指定された体積の連続希釈した抗体(ヒトIgG1対照、0841、1282、1284、1444および1448)中でインキュベートし、濡れた氷上で30分間インキュベートした。試験抗体溶液を、CHO緩衝液を希釈剤として使用する3倍希釈シリーズ(1333nM~0.0226nM)によって調製した。抗体とのインキュベーション後、細胞を、300×gで4℃で1分間の遠心分離によって3回洗浄し、冷CHO緩衝液中に再懸濁した。洗浄した細胞を、再懸濁し、100μLの1:1000希釈のAlexaFluor647コンジュゲートしたヤギ抗ヒトF(ab’)2断片(Fcγ断片特異的抗体、[Jackson Immunoresearch、109-606-170]と共に濡れた氷上で45分間(CHO細胞)または30分間(内皮細胞)インキュベートした。細胞を、フローサイトメトリー分析のためのCHO緩衝液中での再懸濁の前に、3回または4回洗浄した。640ナノメートルのレーザー線を使用するBecton Dickinson LSRFortessa機器を使用して、細胞蛍光データを獲得した。細胞の幾何平均蛍光を、FlowJoソフトウェアパッケージ(FlowJo、LLC)によって分析し、抗体濃度に対してプロットした。推定されたEC50値を、Prismスイート(GraphPad、バージョン8)において非線形回帰分析を使用して計算した。
【0530】
抗体0841、1282、1284、1444および1448は、nM未満~低いnMの範囲の類似の推定されたEC50値で、ヒトE-セレクチンを発現するように操作されたCHO細胞に結合した(表27)。対照ヒトIgGは、ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞へのいずれの結合も示さなかった。
【0531】
抗体0164、1282、1284、1444および1448は、TNF-αで4時間処置してE-セレクチンの発現を誘導したHUVECおよびCLMEC上の細胞表面ヒトおよびカニクイザルE-セレクチンに結合した。結合が検出されなかったIgG1アイソタイプ対照と比較して、TNF-αで活性化されたHUVECまたはCLMECの細胞表面上の内因性に発現されたE-セレクチンへの結合が観察された。高い蛍光背景が観察され、EC50値は計算しなかった(表27)。
【0532】
【0533】
(実施例22)
最適化抗E-セレクチン抗体による細胞接着の静置中和
E-セレクチンは、血球の表面上に発現されたシアル化ルイス改変リガンドに結合する。この研究では、ヒト前骨髄球性細胞株(HL-60)を、E-セレクチンリガンドの細胞供給源として使用した。細胞表面E-セレクチン(CHO細胞上の)へのHL-60細胞の接着に対する抗体0164、1282、1284、1444および1448の中和活性を、静置中和接着アッセイで評価した。
【0534】
ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞を、100nMのメトトレキサートを補充した新たな成長培地中で成長させた。細胞のこの初回継代の後、メトトレキサートを、引き続く培養のために成長培地から除外した。カニクイザルE-セレクチンを発現するCHO細胞を、R1培地中で培養した。細胞のこの初回継代の後、Zeocinを、引き続く培養のために成長培地から除外した。
【0535】
対数期にあるHL-60細胞を、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル蛍光色素(CFSE)標識化キット(ThemoFisher、65-0850-84)を使用して標識した。標識されたHL-60細胞を、静置接着アッセイにおける使用のために、400,000細胞/mLの密度で、CHO緩衝液(PBS、pH7.4/1%ウシ血清アルブミン(BSA)/1mMの塩化カルシウム(CaCl2)/0.1%アジ化ナトリウム(NaN3))中に再懸濁した。
【0536】
静置条件下で、E-セレクチン発現CHO細胞へのHL-60細胞の細胞接着を阻害する抗体0164、1282、1284、1444および1448の能力を評価した。簡潔に述べると、CHO細胞を、100,000細胞/ウェルの密度で2行の96ウェル(技術的複製)平底黒色プレート上に播種し、加湿インキュベーター中で37℃、5%CO2および95%空気でコンフルエントな単層を(典型的には24時間後に)形成させた。細胞単層を、CHO緩衝液を使用して穏やかに洗浄し、次いで、指定されたウェルを、3倍希釈シリーズ(200μg/mLまたは1333nM~0.003μg/mLまたは0.022nMの範囲)で、抗体溶液(0164、1282、1284、1444および1448)と共にインキュベートした。適切な体積のCFSE標識されたHL-60細胞懸濁物(400,000細胞/mL)を、最終抗体濃度(200μg/mLまたは1333nM~0.003μg/mLまたは0.022nMの範囲)が維持されるように、ウェルに即座に添加した。標識されたHL-60細胞を、加湿インキュベーター中で37℃、5%CO2および95%空気で45分間、CHO細胞単層と共にインキュベートした。インキュベーション後、プレートを、CHO緩衝液で3回洗浄し、結合したHL-60細胞の蛍光を、Spectramax i3X(Molecular Devices)を使用して494/521ナノメートルの励起/発光波長で測定した。蛍光単位を、抗体濃度の関数としてプロットし、IC50を、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン8.0.2)を使用する非線形回帰分析を使用して推定した。
【0537】
これらの抗体についての推定されたIC
50値は類似しており、3.4nM~6.2nMの範囲であった(
図7)(表28)。
【0538】
【0539】
上記方法と類似の方法を使用するさらなる静置中和アッセイでは、抗体1444は、それぞれ3.36nMおよび3.84nMの推定されたIC50値で、細胞表面ヒトおよびカニクイザルE-セレクチンの両方へのHL-60接着を中和した(表38)。
【0540】
(実施例23)
最適化抗E-セレクチン抗体の内因性ヒトE-セレクチン結合
最適化抗E-セレクチン抗体1282、1284、1444および1448によるヒト血漿中のE-セレクチン結合阻害の分析を、IP-LC/MS/MS法を使用して実施した。この方法は、ヒト血清中の遊離可溶性ヒトE-セレクチンまたはカニクイザル血清中の遊離可溶性サルE-セレクチンを定量化した。この方法は、250μLのPBS中50μLの血清を使用し、これを、1.0μgのビオチン化抗E-セレクチン抗体0164と共に、4℃で一晩インキュベートした(コールドルーム中、500rpmで振盪)。インキュベーション後、30μLのInvitrogen T1ストレプトアビジン磁気ビーズを各サンプルに添加し、その後、室温で40分間インキュベートした(1000rpmで振盪)。次いで、Hamilton Microlabstarを使用して、磁気ビーズをPBS/0.05%Tween-20で2回洗浄し、その後、PBSで1回洗浄した。次いで、可溶性E-セレクチンを、30mMの塩酸(HCl)145μLを用いてビーズから溶出させ、1MのTris HCl、pH8 32μLで中和した。引き続いて、50fmolの安定なアイソトープ標識された(SIL)内部標準を添加し、その後、ジチオスレイトール(DTT、10μL×50mM)を添加した。60℃で35分間インキュベートした後、サンプルを、ヨードアセトアミド(IAA、10μL×100mM)の添加前に、室温まで冷却させた。次いで、サンプルを、暗中に30分間置き、これに、1μgのPromega LysC/トリプシン(10μL×100μg/mL)を添加し、次いで、37℃で一晩消化した。
【0541】
一晩のインキュベーション後、50μLの調製したサンプルを、nano ESILC-MS/MS上に注入した。定量化を、可溶性E-セレクチンについてのトリプシンペプチド(CSSLAVLEK(配列番号193))をモニタリングすることによって実施した。この定量化は、抗体1282、1284、1444および1448が、それぞれ2.4nM、1.1nM、1.2nMおよび1.8nMのIC50ならびにそれぞれ4.9nM、4.8nM、6.5nMおよび8.6nMのIC90で、ヒトE-セレクチンの類似の阻害を有したことを示した。
【0542】
(実施例24)
ヒト化抗E-セレクチンの生物物理学的特徴付け
熱安定性
示差走査熱量測定を使用して、4つの最適化抗E-セレクチン抗体1282、1284、1444および1448の安定性を決定した。実施例16に記載される方法と類似のDSC法を使用した。以下の表29は、Tris/スクロース(「Tris/Suc」)緩衝液(20mMのTris、8.5%スクロース、pH7.5)、ヒスチジン/スクロース(「His/Suc」)緩衝液(20mMのヒスチジン、8.5%スクロース、0.005%EDTA、pH5.8)およびグルタミン酸/トレハロース(「Glu/Tre」)緩衝液(20mMのグルタミン酸、8.5%トレハロース、pH4.5)中でのこれらの分子の融解温度(Tm1~Tm3およびFAB)を示している。4つ全ての分子が、良好な安定性を実証し、CH2ドメインにおける第1の遷移(Tm1)は、Tris/Suc、His/SucおよびGlu/Tre緩衝液中では、65℃よりも高かった。これらの分子は、His/SucおよびGlu/Tre緩衝液中では安定性における僅かな増加を示し、Tris/Suc緩衝液中では安定性における僅かな減少を示した。
【0543】
【0544】
強制的分解
最適化抗E-セレクチン抗体1282、1284、1444および1448を、3つの緩衝液:Tris(20mMのTris、pH7.5)、His(20mMのヒスチジン、pH5.8)およびGlu(20mMのグルタミン酸、pH4.5)中への広範な透析によって、40℃での4週間の強制的分解研究のために調製した。透析後、サンプル濃度を5mg/mLに調整する。T0、T2およびT4週の時点で、サンプルを、aSEC、iCEおよびバイオアッセイ試験のためにアリコート化した。
【0545】
強制的分解サンプルの凝集状態を、実施例16に記載されるaSECによって決定した。全てのサンプルが、T4週の時点において、最小限の変化、5%未満のLMMS種および1%未満のHMMS種を示した(表30)。
【0546】
【0547】
画像化キャピラリー等電点電気泳動(iCE)を使用して、強制的分解サンプルの電荷ベースの不均一性を検出した。これは、実施例16で使用した方法と類似の方法を使用して実施した。iCE分析において高い%の酸性種/塩基性種を有するサンプルについては、さらなる質量分析による分析が、CDR領域中の配列責任を同定するために要求された。Tris、HisおよびGlu緩衝液中のサンプルの分析は、酸性種および塩基性種における典型的な増加を示した(表31)。抗体1444を、ヒト化0841との比較のために、質量分析3部分析およびペプチドマッピングを使用してさらに分析した。
【0548】
【0549】
【0550】
質量分析による分析
3部の質量分析による分析を、最適化抗体1444に対して実施した。T4WにおけるGlu、HisおよびTris緩衝液中での抗体1444の強制的分解の分析は、T0と比較して類似のプロファイルを示した。ストレスをかけたサンプルにおいて、低レベルのscFc(単鎖Fc)酸化およびD/Pクリップが観察され、低レベルのoxi_Fd(酸化されたFd)が検出され、微量のFd+HexNAc(糖化されたFd)が検出され、微量Fd D/Pクリップ(D/P部位が切断されたFd断片)が検出され、低レベルのPyroE Fd(N末端にピログルタミン酸を有するFd断片)が観察された(
図8)。
【0551】
ペプチドマッピングを、実施例16で使用した方法と類似の方法を使用して、抗体1444について実施した。Tris、HisまたはGlu緩衝液中のT0およびT4週の強制的分解サンプルの高忠実度ペプチドマッピング分析は、痕跡レベルのみの異性化および脱アミドが、抗E-セレクチン抗体1444 HC CDR 2ペプチドIDPANGNTIYVDSVTGR(配列番号194)において検出されたことを示した(表32)。全てのサンプルが、>96%のレギュラーペプチドを有し、1%未満が脱アミドペプチドとして見出され、2%未満が異性化含有ペプチド(IsoD)として見出された。軽鎖位置30における化学的に不安定なモチーフはGluに変異させたので、この最適化されたバリアントは、かかるモチーフをもはや含まない。LC CDR1ペプチドTSQNIERYLNWYQQKPGK(配列番号195)について、改変は検出されなかった。
【0552】
【0553】
強制的分解サンプルの安定性をさらに評価するために、ストレスをかけたサンプル(抗体1282、1284、1444、1448)の活性を、競合結合ELISAで評価した。ここで、T0、T2WおよびT4Wサンプルを、ヒトE-セレクチンへの結合についてビオチン化キメラ抗体0164と競合するそれらの能力について比較した。この方法は、実施例16に記載される方法と類似であった。競合結合結果は、
図9A~9Dに示され、T0サンプルとT2WサンプルとT4Wサンプルとの間で差異は見られず、これは、E-セレクチンに結合する抗体の能力が高温インキュベーション後に安定していたことを示している。
【0554】
高濃度安定性
最適化抗E-セレクチン抗体1282、1284、1444および1448を、3つの緩衝液、Tris/Suc(20mMのTris、8.5%スクロース、pH7.5)、His/Suc(20mMのヒスチジン、8.5%スクロース、0.005%EDTA、pH5.8)およびGlu/Tre(20mMのグルタミン酸、8.5%トレハロース、pH4.5)中に広範に透析した。透析後、サンプルを、スピンフィルター濃縮器を使用して150mg/mLに濃縮し、4℃および25℃で貯蔵した。時間ゼロ(T0)、1週(T1W)、2週(T2W)、4週(T4W)、6週(T6W)および7週(T7W)の時点で、サンプルを、リアルタイムaSEC分析のためにアリコート化し、T0、T3およびT7週の時点におけるiCEおよびCGE分析を、研究の終了時に実施した。
【0555】
高濃度サンプルの凝集状態を、実施例16に記載したように、aSECによって決定した。4℃および25℃のサンプルは、3つ全ての緩衝液条件において、HMMSにおける増加をほとんど伴わずに(合計の<5%)、全ての時点において良好な高濃度安定性を示した(
図10A~10D)。
【0556】
iCEを使用して、実施例16に記載される方法と類似の方法を使用して、高濃度サンプルの電荷ベースの不均一性を検出した。%酸性種および%塩基性種における最小限の変化が、7週間の研究にわたって、Tris/Suc、His/SucおよびGlu/Tre緩衝液中で25℃で貯蔵した抗体において見られた(表33)。
【0557】
【0558】
【0559】
CGE分析を実施して、最適化抗体1282、1284、1444および1448の高濃度サンプルの断片化を決定した。この分析は、実施例16に記載される方法と類似の方法を使用して実施した。%断片化および%HMMSの定量化は、3つ全ての緩衝液中で、25℃で、抗体1282、1284、1444および1448について良好な高濃度安定性を実証した(表34)。
【0560】
【0561】
【0562】
粘度
最適化抗体1282、1284、1444および1448の粘度を、以下のDLS(動的光散乱)ビーズベースの方法を使用して測定した。PBS中のタンパク質を、メンブレンカセットデバイス10K MWCO(Thermo Scientific)を使用して、20mMのヒスチジン、85mg/mLのスクロース、0.05mg/mLのEDTA、pH6.0に対して広範に透析した。タンパク質を透析から回収し、0.2μMシリンジフィルターを使用して濾過した。タンパク質を、Vivaspin遠心濃縮器10K MWCO(GE Healthcare)を使用して濃縮した。タンパク質体積が低減され、タンパク質濃度が増加したので、サンプルアリコート(12μL)を濃縮器残余分から取り出した。300nmビーズ(Nanosphere、Thermo Scientific)を、タンパク質サンプルおよび緩衝液ブランクに添加した。ビーズを、20mMのヒスチジン、85mg/mLのスクロース、0.05mg/mLのEDTA、pH6.0中に1:10希釈し、0.75μLの希釈されたビーズを、タンパク質サンプル中にスパイクした。タンパク質/ビーズおよび緩衝液/ビーズサンプルを、穏やかにボルテックスすることによって混合した。8μLのサンプルを、DLSによる分析のために1536ウェルプレート(SensoPlate、ガラス底、Greiner Bio-One)に移した。プレートを、光学的に透明なテープで密封し、2000RPMで2分間遠心分離して、泡を除去した。
【0563】
DLS測定を、DynaPro Plate Reader(Wyatt Technology、Santa Barbara、Calif.)を使用して行った。サンプルを25℃でインキュベートし、15回の連続的な25秒獲得で測定した。許容できる減衰曲線を有したビーズの半径を、データ獲得のために平均した。粘度を、Stokes-Einstein方程式に基づいて計算した。サンプル粘度を、公称ビーズ半径で除算した測定された見かけの半径×0.893センチポアズ(cP)として計算し、0.893センチポアズは、25℃での水の粘度である。
【0564】
高濃度製剤は、より高頻度および低頻度の投薬を可能にする、抗体にとっての望ましい特性である。最適化抗体は全て、良好な粘度プロファイルを示し、それらの粘度は、およそ160mg/mLまで、20cPに達しなかった。この測定値を確認するために、各最適化抗体についての単一の濃度でのさらなる粘度測定を、以下に記載されるAnton Paar法を使用して実施した。
【0565】
タンパク質サンプルを、50kDa分子量カットオフAmicon遠心濾過ユニット(EMD Millipore、Billerica、MA)を使用して、170~180mg/mLの標的に濃縮した。タンパク質濃度を、SoloVPE Variable Pathlength System(C Technologies,Inc、Bridgewater、NJ)での280nm分析によって決定した。粘度測定を、25℃で150rpmの一定の回転速度で、MCR-302血流計(Anton Paar USA Inc.、Ashland、VA)上でCP25-1円錐およびプレートを使用して実施した。各々10秒間の合計10個の測定値を、サンプル1つ当たり収集し、データを、Rheoplus(Anton Paar USA Inc.)V 3.62ソフトウェアを使用して分析した。1282の粘度を179.5mg/mLで測定したところ、36.29cPであった。1284の粘度を171.9mg/mLで測定したところ、27.38cPであった。1444の粘度を185.7mg/mLで測定したところ、33.43cPであった。1448の粘度を186.8mg/mLで測定したところ、33.35cPであった。これらの測定値の全てが、DLS粘度測定値の曲線フィットに良好にフィットし、その精度を強化している(
図11)。
【0566】
(実施例25)
最適化抗E-セレクチンのin silico免疫原性リスクおよびT細胞エピトープ予測
最適化抗E-セレクチン抗体1282、1284、1444および1448の免疫原性リスクを、in silicoツールを使用して予測して、MHCIIペプチド結合を予測した。使用した方法は、実施例17に記載される方法と類似であった。最適化抗体は、ヒト化抗体0841についての-30.34から、抗体1282についての-46.26、抗体1284についての-46.16、抗体1444についての-45.11および抗体1448についての-45.32のスコアまで減少する、改善された全体的配列スコアを示した。さらに、8つの予測された非生殖系列T細胞エピトープを、最適化抗体において除去した(表35)。
【0567】
【0568】
(実施例26)
最適化抗E-セレクチン抗体の自己相互作用および多反応性
最適化抗体1444(配列番号13のHCアミノ酸配列および配列番号1のLCアミノ酸配列を含む)、1282(配列番号43のHCアミノ酸配列および配列番号1のLCアミノ酸配列を含む)、1284(配列番号40のHCアミノ酸配列および配列番号1のLCアミノ酸配列を含む)および1448(配列番号37のHCアミノ酸配列および配列番号1のLCアミノ酸配列を含む)を、DNAおよびインスリンへの結合について試験し、さらに、AC-SINSアッセイ(親和性捕捉自己相互作用ナノ粒子分光法;Liuら(2014)mAbs 6:483~92)において自己相互作用について試験した。AC-SINSアッセイでは、金ナノスフェア上に捕捉されたmAbは、それらが互いに結合し、それによって、ビーズをクラスター化させる場合、吸光度最大におけるシフトを誘導する。このアッセイにおける高いスコアは、低いまたは不十分な溶解度および非特異的膜相互作用と相関することが示唆されてきた(Liuら、mAbs 2014;6:483~92)。抗体1282、1284、1444および1448は、陰性対照のものと匹敵する、非常に低いAC-SINSスコアおよびDNA/インスリンスコアを有した(表36)。これらのデータは、これらの抗体が、陰性対照のものと類似して、多反応性のリスクが低いことを示している。
【0569】
【0570】
(実施例27)
表面プラズモン共鳴を使用した最適化抗E-セレクチンの交差反応性評価
ヒトおよびカニクイザルE-セレクチンに対する結合親和性を、実施例20に記載されるSPRを使用して、最適化抗体1444(配列番号13のHCアミノ酸配列および配列番号1のLCアミノ酸配列を含む)について決定した。405nMの高い分析物濃度を用いた類似の方法を使用して、本発明者らは、実施例5に記載される方法と類似の方法を使用して、ラットE-セレクチン、マウスE-セレクチン、ウサギE-セレクチン、ヒトL-セレクチンおよびヒトP-セレクチンのホモログに対するこの抗体の結合親和性もまた評価した。25℃では、405nMまで、ラットE-セレクチン、マウスE-セレクチン、ウサギE-セレクチン、ヒトL-セレクチンおよびヒトP-セレクチンへの抗体1444の結合は観察されなかった(
図12)。抗体1444は、68.35+/-3.18nMのK
DでヒトE-セレクチンに結合し、64.9+/-1.13nMのK
DでカニクイザルE-セレクチンに結合した。
【0571】
(実施例28)
抗体1282、1284、1444および1448のプレートベースの直接結合ELISA分析
直接結合ELISAを使用して、種々の固定化された可溶性組換えセレクチンへの抗体0841、1282、1284、1444および1448の結合を特徴付けた。組換えヒスチジンタグ化ヒトP-セレクチン、E-セレクチンまたはL-セレクチン(Sino Biologicals)、マウスE-セレクチン(Sino Biologicals)、ラットE-セレクチン(Sino Biologicals)およびカニクイザルE-セレクチン(Sino Biologicals)ストック溶液を、カルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝溶液中で1μg/mLの最終濃度になるように調製した。対照は、L-セレクチン指向性抗体(BioLegend;304811)またはP-セレクチン指向性抗体または陰性対照IgGを含んだ。1ウェル当たり100μLの希釈した組換えセレクチンタンパク質を、Ni-NTA HisSorb 96ウェルプレート(Qiagen;35061)中に添加した。プレートを、オービタルシェーカー上で室温で2時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、200μLの洗浄緩衝液(50mMのTRIS[トリスアミノメタン];150mMの塩化ナトリウム;0.05%ポリソルベート20、pH7.4)で3回洗浄した。非特異的結合を減少させるために、プレートを、200μLの遮断緩衝液(BD OptEIA緩衝液;555213;BD Biosciences)で処置し、オービタルシェーカー上で室温で1時間インキュベートし、上記のように洗浄した。抗体(IgG1対照抗体、抗E-セレクチン抗体、抗P-セレクチン抗体または抗L-セレクチン抗体)を、4倍希釈シリーズ(BD OptEIA緩衝液中で作製した、133.33nM~0.004の範囲)で二連で、1ウェル当たり100μLで反応に添加し、オービタルシェーカー上で1時間インキュベートし、上記のように洗浄した。100μLの特異的検出抗体(以下に記載される)を添加し、1時間インキュベートした:
・ IgG1対照、0841、1282、1284、1444、1448、抗マウス-E-セレクチンおよび抗P-セレクチン抗体は、1対25000または1対50000希釈のペルオキシダーゼコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG Fcガンマ(Jackson ImmunoResearch Lab;109-035-008)を使用して検出した;
・ 抗L-セレクチンおよび抗ラット-E-セレクチン抗体は、1対25000希釈のペルオキシダーゼコンジュゲートしたAffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L);(Jackson ImmunoResearch Lab)を使用して検出した。
【0572】
プレートを洗浄し、1ウェル当たり100μLの1-Step Ultra TMB基質(Thermo Scientific)を添加し、室温で5分間インキュベートした。反応を、2Mの硫酸100μLで停止させ、吸光度を450nmで読み取った(Spectramax M5e)。データを、GraphPad Prismソフトウェア(8.0.2)を使用して分析およびグラフ化した。推定された最大半量濃度(EC50)値を、分析から導出した。
【0573】
固定化されたヒトL-セレクチンまたはヒトP-セレクチンへの用量依存的結合が、それぞれ0.362nMおよび0.081nMの推定されたEC
50値で、L-セレクチンまたはP-セレクチン指向性抗体で観察された。対照的に、可溶性ヒトL-セレクチンまたはP-セレクチンタンパク質との0841、1282、1284、1444または1448の交差反応性は観察されなかった(
図13)。これらの研究は、抗体(例えば、1444)が、ヒトL-セレクチンまたはP-セレクチンへの結合の観察を伴わずに、E-セレクチンに選択的に結合することを実証している。
【0574】
マウスE-セレクチンおよびラットE-セレクチンへの用量依存的結合が、低い~ナノモル濃度未満の結合(それぞれ0.153nMおよび0.0139nM)で、対照ラットまたはマウス抗E-セレクチン抗体で観察された。対照的に、マウスおよびラットE-セレクチンへの0841、1282、1284、1444または1448の弱い結合が観察され、結合曲線は、陽性対照抗体と比較して右にシフトした。結合曲線は、対照ラットまたはマウスE-セレクチン指向性抗体と比較して、より弱い、非飽和性のまたは可変な結合を示した(表37)。
【0575】
【0576】
上記方法と類似の方法を使用するさらなる直接結合ELISAでは、抗体1444は、0.085のEC50で、固定化された可溶性組換えヒトE-セレクチンに結合し、0.071~0.075nMのEC50で、固定化された可溶性組換えカニクイザルE-セレクチンに結合した(表38)。
【0577】
(実施例29)
静脈内または皮下投与後のサルにおける最適化抗体1444の薬物動態
最適化抗体1444の薬物動態研究を、静脈内および皮下投与を使用してカニクイザルにおいて実施した。血清抗体1444(配列番号7のHCアミノ酸配列(これは末端リジンを含む)および配列番号1のLCアミノ酸配列を含む)濃度の定量化を、Meso-Scale Discovery(登録商標)(MSD)アッセイプラットフォーム上でのイムノアッセイを使用して決定した。このアッセイでは、抗E-セレクチン抗体1444を定量化するために、ビオチン化ヤギ抗ヒト免疫グロブリンG(IgG)を、遮断されたストレプトアビジンコーティングされた小スポットプレート上に結合させた。抗E-セレクチン抗体1444を、リガンドである組換えヒト可溶性E-セレクチンによって捕捉した。結合した抗E-セレクチン抗体1444を、ルテニル化(ruthenylated)ヤギ抗ヒトIgGを用いて検出した。プレートを、MSD SECTOR Imager 6000で読み取り、最終検出を、ルテニウム標識されたヤギ抗ヒトIgG抗体およびトリプロピルアミン(TPA)を使用することによって実施して、MSD機器内で、結合した抗E-セレクチン抗体1444の量を示す電気化学発光シグナルを生成した。サンプル濃度を、5パラメーターロジスティック方程式を使用してフィットさせた標準曲線からの内挿によって決定した(標準曲線のための重み付け式は、1/y^2である)。100%血清中での定量化の範囲は、40.0ng/mL~2560ng/mLであった。
【0578】
各々2匹の動物への0.3、0.6、1、3または10mg/kgでの静脈内(IV)投与の後、抗体1444は、それぞれ0.39、0.31、0.15、0.18および0.18mL/h/kgの、時間0から最後の測定可能な濃度まで計算した平均全身性クリアランス(CL0-tlast)、ならびにそれぞれ25、22、27、35および36mL/kgの、定常状態における見かけの分布容積(Vss(0-tlast))を示した。抗体1444は、用量依存的薬物動態を示し、クリアランスは、用量が増加するにつれて減少し、標的媒介性薬物処分を示している。0.3、0.6、1、3または10mg/kgでのIV投与についての平均半減期(t1/2)は、それぞれ102、264、188、287および345時間であった。
【0579】
各々2匹の動物への1または3mg/kgでの皮下(SC)投与の後、抗体1444は、1mg/kgでの抗体のIV投与と比較した場合、1mg/kgでのSC投与の後に50%の平均バイオアベイラビリティ(%F)を有した。3mg/kgでの抗体1444のSC投与の後、抗体1444は、3mg/kgでの抗体1444のIV投与と比較した場合、65%の平均%Fを有した。1および3mg/kgでの抗体1444のSC投与についての平均半減期(t1/2)は、それぞれ243および518時間であった。
【0580】
リガンド結合アッセイを検証して、Meso Scale Discoveryプラットフォームで、カニクイザル血清中の抗薬物抗体(ADA)の存在を検出した。この方法では、カニクイザル血清中にスパイクしたマウスモノクローナル抗抗体1444抗体からなる2つの異なる濃度での陽性対照、およびプールした正常カニクイザル血清からなる陰性対照を、各プレート上に含めて、アッセイ性能をモニタリングした。抗体1444に対するADA誘導の全発生率は、全ての用量群にわたって0%(0/18匹の動物)であった。
【0581】
(実施例30)
生理学的流動アッセイにおける最適化抗体1444による細胞接着のex vivo中和
ex vivo細胞接着実験を、組換えタンパク質または細胞単層でコーティングされたミクロ流体チャネルの内側で実施して、E-セレクチンリガンドを発現する細胞の接着を阻害する抗体1444の有効性および中和活性を評価した。細胞接着を、BioFlux(商標)(S/N-008-0180-08)システム(Fluxion、San Francisco、CA、USA)を使用して、生理学的流動条件下で分析した。接着アッセイを、組換えの精製した可溶性E-セレクチンもしくはP-セレクチンタンパク質、または細胞表面上にE-セレクチン(ヒトまたはカニクイザル)を発現するように操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を使用して実施した。E-セレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスXリガンドを発現するヒトHL-60細胞、E-セレクチンリガンドを発現する精製されたヒト好中球、または鎌状赤血球症を有する患者から得た全血を使用して、組換えE-セレクチンおよびP-セレクチンタンパク質、ならびにE-セレクチンを発現するCHO細胞への接着を試験した。
【0582】
BioFlux(商標)プレート/チャンバー(Fluxion Biosciences、48ウェル低剪断、0~20ダイン/cm2;910-0004)を、これらの研究で使用した。ヒトE-セレクチンを発現するCHO細胞(ヒトCHO-E、Pfizer)またはカニクイザルE-セレクチンを発現するCHO細胞(カニクイザルCHO-E、Pfizer)およびHL-60細胞を、そのそれぞれの成長培地中で、37℃、5%CO2および95%湿度で維持した。HL-60細胞または精製されたヒト好中球を使用する研究では、細胞を、1000rpmで5分間遠心分離し、Calcein AM(Calcein;Life Technologies(商標);C3099)で30分間染色し、カルシウムおよびマグネシウムを含むリン酸緩衝溶液(PBS)(Gibco;カタログ番号14040-133)で2回洗浄し、フローチャンバー中での灌流前に、PBS中に3×106細胞/mLの濃度になるように再懸濁した。細胞を、灌流前に37℃で維持し、BioFlux(商標)アッセイを室温で実施した。接着細胞を、Nikon Eclipse Ti-S(NIS-Elements BR 3.2 64ビット)倒立ステージ位相差蛍光顕微鏡を40×の倍率で使用して可視化およびカウントした。細胞カウントを、リン酸緩衝液ビヒクル対照に対して標準化した。各実験は、1条件当たり2つのウェルを有した。データを、GraphPad Prism(8.0.2)を使用してグラフ化および分析した。分析から導出した推定された最大半量阻害濃度(IC50)値を、小数点から有効数字2桁に四捨五入した。推定されたIC50値を、データをビヒクル対照(=100%、阻害なし)に対して標準化することによって計算した。
【0583】
組換えE-セレクチンへの細胞接着の中和
最初に、活性化された内皮細胞の表面を模倣するために、フローチャンバーを、等しい量のヒトE-セレクチンおよびP-セレクチン可溶性組換えタンパク質の両方でコーティングした。BioFlux(商標)フローマイクロチャネルを、PBS中で調製した20μg/mLの可溶性組換えヒトP-セレクチンおよびE-セレクチン(Sino Biologicals)の各々でコーティングし、1ダイン/cm2で5分間灌流し、室温で1時間インキュベートし、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)/PBSで1ダイン/cm2で3~5分間洗浄した。プレートを、PBS中の抗体1444を含む試験物品(0.78~200nMの濃度)、アイソタイプ陰性対照抗体(200nM)、陽性対照抗Eセレクチン抗体(200nM)、およびビヒクル対照で、1ダイン/cm2で1時間処置した。100μLのHL-60細胞のアリコートを、各チャネル中で、1ダイン/cm2の生理学的剪断流動で10分間灌流した。PBSを、1ダイン/cm2で2~3分間灌流し、非接着細胞を除去し、記載されたように分析した。
【0584】
抗体1444(0.78~200nM)、アイソタイプ陰性対照抗体またはビヒクルを、チャンバー中で灌流して、E-セレクチン結合を阻害した。これらの研究では、E-セレクチンリガンド、PSGL-1および他のシアリルルイスXリガンドを発現するHL-60細胞を、1ダイン/cm2で流した。抗体1444は、15.26nMの推定されたIC50値で、精製された可溶性ヒトE-セレクチンタンパク質へのHL-60細胞接着を低減させた。アイソタイプ陰性対照は、このアッセイにおいて効果を有さなかった。陽性対照抗Eセレクチン抗体は、HL-60接着を約43%低減させた。
【0585】
上記方法と類似の方法を使用するさらなる流動接着中和アッセイでは、抗体1444は、13.28nM~15.94nMの推定されたIC50値で、組換えヒトE-セレクチンタンパク質へのHL-60接着を中和した(表38)。
【0586】
E-セレクチンを発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞への細胞接着の中和
BioFlux(商標)プレートを、1ダイン/cm2の流速でPBS中100μg/mLのフィブロネクチン(Advanced BioMatrix、カタログ番号5050-1MG)でコーティングし、室温で1時間インキュベートした。E-セレクチンを発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(ヒトまたはカニクイザルCHO-E)を、1:1の比の0.05%トリプシン-エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(Gibco、25300054)およびStemPro Accutase(Gibco;A1110501)による37℃で5分間の処置によってアッセイのために調製し、等しい体積の成長培地で中和し、収集し、1000rpmで5分間遠心分離し、そのそれぞれの成長培地中に60×106細胞/mLの最終濃度になるように再懸濁した。プレートを、1ダイン/cm2で室温で2~3分間、250μLのCHO成長培地で2回灌流し、全ての培地を除去し、10~20μLのCHO-E細胞(60×106細胞/mL)を、2~3ダイン/cm2で15秒間灌流した。プレートを機器から取り出し、5%CO2インキュベーター中で37℃で1時間インキュベートした。培地を除去し、500μLの新たな成長培地を添加し、細胞を、5%CO2インキュベーター中で37℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、CHO-E単層を、BioFlux機器上で新たな成長培地を用いて洗浄した(3~4ダイン/cm2)。プレートを、PBS中の抗体1444を含む試験物品(0.78~200nMの濃度)、アイソタイプ陰性対照抗体(200nM)、陽性対照である市販の抗Eセレクチン抗体(200nM)、およびビヒクル対照で、1ダイン/cm2で1時間の灌流によって処置した。100μLのHL-60細胞のアリコートを、1ダイン/cm2の生理学的剪断流動で、各チャネル中で10分間灌流した。PBSを、1ダイン/cm2で2~3分間灌流して非接着細胞を除去し、プレートを、記載されたように画像化し、分析した。
【0587】
E-セレクチンは、内皮細胞表面上で発現される。E-セレクチン(ヒトまたはカニクイザル)を発現するCHO細胞を、フローチャンバーの表面に結合させて、細胞単層を形成した。抗体1444を、チャンバー中で灌流し(0.78~200nM)、HL-60細胞を、1ダイン/cm2の生理学的流動下で灌流した。陰性対照には、アイソタイプ陰性対照抗体およびビヒクルが含まれた。抗E-セレクチン抗体1444は、4.41nMの推定されたIC50値で、ヒトCHO-E-セレクチン細胞へのHL-60細胞の細胞接着を中和した。さらに、カニクイザルE-セレクチンを発現する細胞へのHL-60の中和についての推定されたIC50値は、4.34nMであった。アイソタイプ陰性対照抗体は、ヒトまたはカニクイザルのいずれのE-セレクチンを発現するCHO細胞へのHL-60結合も中和しなかった。200nMでの陽性対照抗体試験は、ヒトE-セレクチンを発現する細胞へのHL-60接着を、約44%低減させた。
【0588】
上記方法と類似の方法を使用するさらなる流動接着中和アッセイでは、抗体1444は、それぞれ4.25nM~4.56nMおよび4.32nM~4.35nMの推定されたIC50値で、ヒトまたはカニクイザルE-セレクチン発現CHO細胞へのHL-60接着を中和した(表38)。
【0589】
E-セレクチンを発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞への精製された好中球接着の中和
ヒトおよびカニクイザルCHO細胞単層を、記載されたようにBiofluxプレート上で調製した。全血を、4人の健康なボランティアドナー(Pfizer)から得、各々3mLをプールし、好中球を、製造業者のプロトコールに従ってMiltenyi Kit(MACSxpress全血好中球単離キット、ヒト、130-104-434)を使用して精製した。
【0590】
PBS中の抗体1444を含む試験物品(0.78~200nMの濃度)、アイソタイプ陰性対照抗体(200nM)、陽性対照抗Eセレクチン抗体(200nM)、およびビヒクル対照を、1ダイン/cm2で1時間灌流した。精製された好中球を、Calceinで染色し、アッセイ前に37℃で10分間、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)(Biotang Inc、50-751-5681)で処置した。好中球を、300×gで室温で10分間収集し、PBS(カルシウムおよびマグネシウムを含む)中に再懸濁した。好中球を、1ダイン/cm2で10分間灌流した。PBSを、1ダイン/cm2で2~3分間灌流して非接着細胞を除去し、プレートを画像化し、分析した。
【0591】
好中球は、E-セレクチンリガンドを発現し、E-セレクチンは、内皮への好中球接着を媒介する。ex vivoの生理学的流動下でのE-セレクチン(ヒトまたはカニクイザル)を発現するCHO単層へのヒト好中球の抗E-セレクチン抗体中和を評価した。抗体1444、アイソタイプ陰性対照抗体またはビヒクルを、チャンバー中に灌流した。ヒト好中球を、4人の健康なドナーから精製し、プールし、TNF-αで活性化された(10ng/mL)好中球を、このアッセイで評価した。抗体1444は、2.87nMの推定されたIC50値で、ヒトCHO-E-セレクチン細胞への活性化されたヒト好中球の接着を中和した。カニクイザルCHO-E-セレクチン細胞への活性化されたヒト好中球の接着の中和についての推定されたIC50は、16.33nMであった。
【0592】
上記方法と類似の方法を使用するさらなる流動接着中和アッセイでは、抗体1444は、それぞれ4.65nMおよび9.45nMの推定されたIC50値で、ヒトまたはカニクイザルE-セレクチン発現CHO細胞への活性化されたヒト好中球の接着を中和した(表38)。
【0593】
SCD血球接着の中和
SCDにおける炎症促進性応答は、鎌状赤血球および活性化された内皮細胞における変更によって促進される(Manwani DおよびFrenette PS Blood 2013;122(24):3892~98)。赤血球鎌状化、溶血および内皮細胞機能障害は、炎症および細胞活性化をもたらし、SCD病理発生に寄与する。SCDを有する2人のドナー由来の全血を、CalcienおよびHoechstで標識して、ローリングおよび接着を可視化した。簡潔に述べると、血液を、到着の24時間後にアッセイし、1mMの塩化カルシウム、1mMの塩化マグネシウム、10mMのN-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-エタンスルホン酸、0.25%BSA、0.1%グルコース、pH7.4を含むHBSS(ハンクス平衡塩溶液)緩衝液で、15%のヘマトクリットになるように希釈した。血球を、アッセイの前に37℃で30分間、CalceinおよびHoechst(Thermo Scientific、カタログ番号33342)色素(1:1000)で染色した。フローチャンバーを、PBS中で調製した20μg/mLの可溶性組換えヒトE-セレクチンおよびP-セレクチンタンパク質(Sino Biologicals)の各々で1ダイン/cm2で5分間コーティングし、室温で1~2時間インキュベートし、0.1%BSA/PBSで1ダイン/cm2で3~5分間洗浄した。
【0594】
両方のドナー由来の血液を、組換えヒトE-セレクチンおよびP-セレクチンタンパク質への接着について評価した。抗体1444を含む試験物品、PBS中の抗P-セレクチン抗体対照(0.78~200nM)、アイソタイプ陰性対照抗体(200nM)、対照抗E-セレクチン抗体(200nM)、またはビヒクルを、1ダイン/cm2で1時間流した。希釈されたSCD血液を、0.6ダイン/cm2で10分間流した。PBSを、1ダイン/cm2で2~3分間灌流して非接着細胞を除去し、プレートを画像化し、分析した。推定されたIC50値を、上記のように計算した。推定されたIC20、IC80およびIC90を、以下の式に基づいて計算した:(IC50
*効果)/(100-効果)。計算は、EmaxTmodel[E=(Emax+C)/(C+EC50)]に基づく。
【0595】
アイソタイプ陰性対照抗体は、結合を中和しなかった。200mMで試験した陽性対照抗体は、細胞結合接着を、10~35%の間で低減させた。抗体1444は、12.4nMの平均で、6.17nMおよび18.66nMの推定されたIC
50値で、組換えE-セレクチンへのヒトSCD細胞の結合を中和した(
図14)。IC
20、IC
80およびIC
90値は、それぞれ3.1nM、49.6nMおよび111.6nMであると推定された。可溶性E-セレクチンおよびP-セレクチンタンパク質コーティングされたチャンバーを使用する類似の生理学的流動条件下でのP-セレクチン阻害と比較して、細胞接着のより高い中和が、E-セレクチン阻害で観察された。
【0596】
【0597】
【0598】
(実施例31)
最適化抗E-セレクチン抗体1444の細胞表面結合(FACS)および中和
E-セレクチンは、内皮細胞表面上で発現され、内皮細胞機能障害、例えば、炎症応答の条件下では、循環血球は、リガンド-接着分子相互作用を介して血管内皮に接着する。細胞表面で発現されたE-セレクチンに結合する抗体1444の能力を評価した。これらの研究では、膜結合したヒトまたはカニクイザルE-セレクチンを発現するCHO細胞株を使用して、細胞表面で発現されたE-セレクチンへの抗体1444の結合を特徴付けた。
【0599】
細胞表面上にE-セレクチン(ヒトまたはカニクイザル)またはヒトP-セレクチンを発現するCHO細胞およびトランスフェクトされていない対照CHO細胞(CHO-DUKX)を、抗体1444、アイソタイプ対照IgG1および2つの対照P-セレクチン抗体を使用するFACS分析によって評価した。抗体1444は、0.66~2.33nMの推定されたEC50で、ヒトE-セレクチンに結合した(6回の実験に基づく)。抗体1444は、0.75~1.37nMの推定されたEC50で、カニクイザルE-セレクチンに結合した(6回の実験に基づく)。抗体1444は、対照CHO-DUKXには結合せず、これは、検出可能な細胞表面結合の非存在を示している。さらに、抗体1444は、細胞表面P-セレクチンに結合しなかった。CHO-P-セレクチン細胞への対照抗P-セレクチン抗体の用量依存的結合が観察され、これは、P-セレクチンの発現を示している。アイソタイプ対照IgG1では結合は観察されなかった(表38)。
【0600】
(実施例32)
カニクイザルにおける忍容性および毒物動態学的研究
カニクイザルは、E-セレクチン結合および/または生物学的活性を阻害する抗体1444の能力を評価するために設計したin vitro薬理学研究に基づく唯一の薬理学的に適切な非臨床種であった。ヒトおよびカニクイザルE-セレクチンに対する結合親和性は、マウス、ウサギまたはラット由来のE-セレクチンへの強力な結合の非存在とは対照的に、評価したアッセイにわたって類似であった。in vitro機能的アッセイでは、抗体1444は、可溶性組換えヒトE-セレクチンタンパク質および細胞により発現された組換えヒトまたはカニクイザルE-セレクチンへのヒト前骨髄球性細胞の細胞接着を、用量依存的に中和した。さらに、抗体1444は、低いnM範囲の推定された50%阻害濃度(IC50)値で、ヒトおよびカニクイザルの細胞E-セレクチンの両方への精製された好中球の接着を中和した。30mg/kgのSC用量は、353μg/mLの全体的最大観察濃度(Cmax)および92,500μg・h/mLの、時間0から336時間までの濃度-時間曲線下面積(AUC336)と関連した;一方で、100mg/kgのIV用量は、693μg/mLの全体的Cmaxおよび108,000μg・h/mLのAUC336と関連した。抗体1444を、1カ月にわたり最大で200mg/kg/週IVの毎週1回の用量で雄性および雌性カニクイザルに投与し、同様に許容された。in vitroヒト補体成分1q(C1q)および結晶化可能断片ガンマFc受容体(FcγR)結合アッセイならびに組織交差反応性評価は、安全性の懸念をもたらさなかった。
【0601】
(実施例33)
動物における薬物動態学的および産物代謝
単回用量PKおよび反復用量TKを、抗体1444のIVおよび/またはSC投薬後に、カニクイザルにおいて評価した。カニクイザルにおける単回IV投薬の後、用量依存的クリアランス(CL)を観察したところ、飽和性の標的媒介性薬物処分(TMDD)と一致していた。0.3~10mg/kgの用量範囲の単回IV投薬の後、抗体1444は、それぞれおよそ0.39~0.15mL/h/kgおよび22~36mL/kgの、平均CLおよび平均VSSを示した。1mg/kgまたは3mg/kgでの抗体1444の単回SC用量の後、Tmaxを、それぞれ72および96時間の時点で観察し、SCバイオアベイラビリティは>50%であった。3mg/kg IVでの抗体1444の推定されたT1/2は、およそ12日間であった。
【0602】
1カ月のGLP反復用量毒性研究では、反復SCおよびIV投薬の後に、全身性曝露(最大観察濃度[Cmax]および濃度-時間曲線下面積[AUC]によって評価した)において、見かけの性関連の差異は存在しなかった。全身性曝露は、用量の増加とともに増加し(SC)、反復SCおよびIV投薬の後により高かった。抗体1444を、1カ月にわたり15もしくは50mg/kg/週SCまたは200mg/kg/週IVの毎週1回の用量で雄性および雌性カニクイザルに投与した(5つの合計用量)。15および50mg/kg/週での毎週1回の反復投薬の後、平均Tmaxは、1日目および22日目の用量後、72時間と112時間との間であった。全身性曝露は、それぞれ15(SC)、50(SC)および200(IV)mg/kg/週について、5.5、3.2および1.9の平均蓄積率(AUC168、22日目/1日目)で、反復投薬後により高かった。
【0603】
ヒトにおける予測された有効な用量は、150mgでの抗体1444の単回SC投与である。150mgのSC投薬における予測された最小有効濃度および曝露は、それぞれ、平均濃度(Cav[1~168時間])については14μg/mLであり、AUC168については2400μg・h/mLである。
【0604】
(実施例34)
動物におけるE-セレクチンレベル、凝集体およびICAM-1発現
可溶性E-セレクチンを、0.3~10mg/kgの範囲の抗体1444の用量後に、液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリー(LC-MS)によって、カニクイザル由来の血清において特徴付けた。抗体1444は、濃度依存的様式で、E-セレクチンの有効な結合を示し、可溶性E-セレクチンに対する>90%の阻害効果が全ての用量群において観察され、これは、抗体1444のin vivo E-セレクチン結合活性を示している。
【0605】
抗体1444による投薬後、血液を、カニクイザルから収集し、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して分析して、細胞の凝集体および接着マーカーを検出した。単球-血小板凝集体および好中球-血小板凝集体を試験した。このFACS分析では、CD14を使用して、サイズスキャンを使用して単球と好中球とを識別し、CD41を使用して、単球-血小板凝集体および好中球-血小板凝集体を検出した。抗体1444は、処置後のカニクイザルにおいて、単球-血小板および好中球-血小板凝集体の減少に対して効果を示した。
【0606】
白血球細胞間接着分子1(ICAM-1)発現を、抗体1444の投薬後に、FACS分析を使用してカニクイザル由来の白血球において試験した。ICAM-1における減少が、投薬後に観察された。
【配列表】